説明

ベンゾオキサジン誘導体及びその使用

1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、X、Y及びmが本明細書で定義されている式(I)の化合物、又はその薬学的に許容されうる塩、溶媒和物若しくはプロドラッグ。また提供されるものは、これらの化合物を含有する組成物、薬剤の製造におけるこれらの化合物の使用、並びに式(I)の化合物の調製方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾオキサジン誘導体、関連する組成物、薬剤の調製におけるそれらの使用、及びその調製方法に関する。
【0002】
脳における主要な調節的神経伝達物質としての神経伝達物質5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)の作用は、5−HT1、5−HT2、5−HT3、5−HT4、5−HT5、5−HT6及び5−HT7と称される幾つかのレセプターファミリーにより仲介される。脳における高レベルの5−HT6レセプターmRNAに基づいて、中枢神経系障害の病理及び治療に5−HT6レセプターが役割を果たすと記載されてきた。特に、5−HT2及び5−HT6選択的リガンドは、パーキンソン病、ハンチントン病、不安、うつ、躁うつ病、精神病、てんかん、強迫反応障害、感情障害、片頭痛、アルツハイマー病(認知記憶の亢進)、睡眠障害、食欲不振、食欲亢進及び肥満のような摂食障害、不安発作、静坐不能、注意欠陥多動障害(ADHD)、注意力欠陥障害(ADD)、コカイン、エタノール、ニコチン及びベンゾジアゼピンのような薬物乱用からの退薬、統合失調症のような特定のCNS障害、また、水頭症のような脊髄損傷及び/又は頭部損傷に関連する障害の治療に潜在的に有用であると確認されている。そのような化合物は、腸機能障害のような特定の胃腸(GI)障害の治療に使用されることも期待されている。例えば、B. L. Roth et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1994, 268, pages 1403-14120、D. R. Sibley et al., Mol. Pharmacol., 1993, 43, 320-327、A. J. Sleight et al., Neurotransmission, 1995, 11, 1-5 及び A. J. Sleight et al., Serotonin ID Research Alert, 1997.2, 2(3), 115-8を参照すること。
【0003】
幾つかの5−HT6モジュレーターが開示されているが、上記で示された5−HT6及び/又は他の5−ヒドロキトリプタミンレセプターを調節するのに有用である化合物の必要性が引き続き存在している。
【0004】
本発明は、式(I):
【0005】
【化23】

【0006】
〔式中、
mは、0〜3であり;
Xは、N又はCHであり;
Yは、−SO2−又は−CH2−であり;
1は、それぞれ独立して、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、シアノ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、−SO2a、−C(=O)−NRbc、−SO2−NRbc、−SRb、−N(Rb)−C(=O)−Rc、−C(=O)−Rb又は−N(Rb)−SO2−Raであり、
ここで、
aは、それぞれ独立して、アルキル又はハロアルキルであり、
b及びRcは、それぞれ独立して、水素、アルキル又はハロアルキルであり、
2は、アルキル、ハロ、ハロアルキル、アルコキシ若しくはシアノで場合により置換されているアリール又はヘテロアリールであり;
3及びR4は、それぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキル又はアルコキシアルキルであるか、或いはR3及びR4は、それらが結合している炭素と一緒になって、N、O及びSから選択されるヘテロ原子を場合により含む環原子3〜6個の環式基を形成してもよく;そして
5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、水素又はアルキルであるか、或いはR9と、R5、R6、R7又はR8のうちの1つは、それらが結合している原子と一緒になって、環原子5〜7個のヘテロシクロアミノ環を形成する〕で示される化合物、或いは
薬学的に許容されうるその塩、又は溶媒和物若しくはプロドラッグを提供する。
【0007】
本発明は、また、式(I)の化合物の調製方法、式(I)の化合物を含む組成物及び式(I)の化合物の使用方法を提供する。
【0008】
主題の化合物は、ベンゾオキサジン環系の2位に2,2−ジアルキル置換基又は他の二置換を含み、これは、驚くべきことに、ベンゾオキサジン環系の2位に水素のみが存在する化合物で見られるよりも、5−ヒドロキシトリプタミンレセプター、特に5−HT−6に対してより大きい親和性をもたらすことになる。
【0009】
特記のない限り、明細書及び請求の範囲を含むこの出願に使用される下記の用語は、下記に示す定義を有する。明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形は、文脈から明白に示される場合を除いて、複数の対象を含むことに注意しなければならない。
【0010】
「アゴニスト」は、別の化合物又はレセプター部位の活性を増強する化合物を意味する。
【0011】
「アルキル」は、炭素原子と水素原子のみからなり、1〜12個の炭素原子を有する一価直鎖状又は分岐鎖状飽和炭化水素部分を意味する。「低級アルキル」は、炭素原子1〜6個のアルキル基を意味する。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、オクチル、ドデシルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0012】
「アルキレン」は、炭素原子1〜6個の直鎖状飽和二価炭化水素基、又は炭素原子3〜6個の分岐鎖状飽和二価炭化水素基を意味し、例えばメチレン、エチレン、2,2−ジメチルエチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ブチレン、ペンチレンなどである。
【0013】
「アルコキシ」は、式:−ORの部分を意味し、ここで、Rは本明細書で定義されたアルキル部分である。アルコキシ部分の例には、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
「アルコキシアルキル」は、式:Rab−の部分を意味し、ここで、Raは、本明細書で定義されたアルコキシであり、そしてRbは、本明細書で定義されたアルキレンである。例示的なアルコキシアルキル部分には、メトキシエチル、エトキシエチル、2,3−ジメトキシプロピルなどが含まれる。
【0015】
「アンタゴニスト」は、別の化合物又はレセプター部位の作用を減少又は防止する化合物を意味する。
【0016】
「アリール」は、単環式、二環式又は三環式芳香族環からなる一価環式芳香族炭化水素部分を意味する。アリール基は、場合により、本明細書で定義されたように置換されていることができる。アリール部分の例には、場合により置換されているフェニル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、インデニル、ペンタレニル、アズレニル、オキシジフェニル、ビフェニル、メチレンジフェニル、アミノジフェニル、ジフェニルスルフィジル、ジフェニルスルホニル、ジフェニルイソプロピリデニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフラニル、ベンゾジオキシリル、ベンゾピラニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサジノニル、ベンゾピペラジニル、ベンゾピペラジニル、ベンゾピロリジニル、ベンゾモルホリニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニルなど(部分的に水素化されているこれらの誘導体も含む)が含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
「アリールアルキル」及び「アラルキル」は、置き換えて使用されてもよく、基−Rabを意味し、ここで、Raはアルキレン基であり、そしてRbは本明細書で定義されたアリール基であり、例えば、ベンジル、フェニルエチル、3−(3−クロロフェニル)−2−メチルフェニルなどがアリールアルキルの例である。
【0018】
「シクロアルキル」は、単環式又は二環式環からなる一価飽和炭素環式部分を意味する。シクロアルキルは、特に示されていない限り、1個以上の置換基で場合により置換されていることができ、ここで、置換基は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである。シクロアルキル部分の例に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなど(部分的に不飽和のこれらの誘導体も含む)が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
「シクロアルキルアルキル」は、式:−R′−R″の基を意味し、ここで、R′はアルキレンであり、そしてR″は本明細書で定義されたシクロアルキルである。
【0020】
「ヘテロアルキル」は、1、2又は3個の水素原子が、−ORa、−NRbc及び−S(O)nd(ここでnは、0〜2の整数である)からなる群より独立して選択される置換基で置換されている、本明細書中で定義されているアルキル基を意味し、ヘテロアルキル基の結合点は、炭素原子を介していることが理解され、ここで、Raは、水素、アシル、アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルであり;Rb及びRcは、互いに独立して、水素、アシル、アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルであり;そしてnが0の場合、Rdは、水素、アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルであり、nが1又は2の場合、Rdは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである。代表的な例には、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチルエチル、3−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、2−メチルスルホニルエチル、アミノスルホニルメチル、アミノスルホニルエチル、アミノスルホニルプロピル、メチルアミノスルホニルメチル、メチルアミノスルホニルエチル、メチルアミノスルホニルプロピルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
「ヒドロキシアルキル」は、式:HO−Rc−の基を意味し、ここでRcは本明細書で記載されているアルキレンである。例示的なヒドロキシアルキル部分には、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピルなどが含まれる。
【0022】
「ヘテロアリール」は、N、O又はSから選択される1、2又は3個の環ヘテロ原子を含有し、残りの環原子がCである、少なくとも1個の芳香族環を有する環原子5〜12個の単環式又は二環式基を意味し、ここで、ヘテロアリール基の結合点が芳香族環上にあることが理解される。ヘテロアリール環は、本明細書で定義されたように、場合により置換されていてもよい。ヘテロアリール基の例には、場合により置換されているイミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピラジニル、チエニル、ベンゾチエニル、チオフェニル、フラニル、ピラニル、ピリジル、ピロリル、ピラゾリル、ピリミジル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾピラニル、インドリル、イソインドリル、トリアゾリル、トリアジニル、キノキサリニル、プリニル、キナゾリニル、キノリジニル、ナフチリジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アゼピニル、ジアゼピニル、アクリジニルなど(部分的に水素化されているこれらの誘導体も含む)が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
用語「ハロ」及び「ハロゲン」は、置き換えて使用されてもよく、置換基フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味する。
【0024】
「ハロアルキル」は、1個以上の水素が同一又は異なるハロゲンで置換されている、本明細書で定義されたアルキルを意味する。例示的なハロアルキルには、−CH2Cl、−CH2CF3、−CH2CCl3、ペルフルオロアルキル(例えば、−CF3)などが含まれる。
【0025】
「ヘテロシクロアミノ」は、飽和環を意味し、ここで、少なくとも1つの環原子がN、NH又はN−アルキルであり、そして残りの環原子がアルキレン基を形成する。
【0026】
「ヘテロシクリル」は、1、2又は3個、又は4個のヘテロ原子(窒素、酸素又は硫黄から選択される)を含む、1〜3個の環からなる一価飽和基を意味する。ヘテロシクリル環は、場合により、本明細書で定義されたように置換されていてもよい。ヘテロシクリル部分の例には、場合により置換されているピペリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼピニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キヌクリジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、チアジアゾリルイジニル、ベンゾチアゾリジニル、ベンゾアゾリルイジニル、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホニルスルホン、ジヒドロキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
「場合により置換されている」は、「アリール」、「フェニル」、「ヘテロアリール」又は「ヘテロシクリル」と関連して使用されるとき、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アシルアミノ、モノ−アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、−COR(ここで、Rは、水素、アルキル、フェニル又はフェニルアルキルである)、−(CR′R″)n−COOR(ここで、nは0〜5の整数であり、R′及びR″は、独立して、水素又はアルキルであり、そしてRは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル又はフェニルアルキルである)、又は−(CR′R″)n−CONRab(ここで、nは0〜5の整数であり、R′及びR″は、独立して、水素又はアルキルであり、そして、Ra及びRbは、互いに独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル又はフェニルアルキルである)から選択される1〜4つの置換基、好ましくは1又は2つの置換基で独立して場合により置換されているアリール、フェニル、ヘテロアリール又はヘテロシクリルを意味する。
【0028】
「離脱基」は、有機合成化学においてそれに慣習的に伴なう意味を有する基、すなわち置換反応条件下で置換されうる原子又は基を意味する。離脱基の例には、ハロゲン、アルカン−又はアリーレンスルホニルオキシ、例えばメタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、チオメチル、ベンゼンスルホニルオキシ、トシルオキシ及びチエニルオキシ、ジハロホスフィノイルオキシ、場合により置換されているベンジルオキシ、イソプロピルオキシ、アシルオキシなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
「モジュレーター」は、標的と相互作用する分子を意味する。相互作用には、本明細書で定義したアゴニスト、アンタゴニストなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
「場合による」又は「場合により」は、後に続く記載の事象又は状況が起こってもよいが起こる必要もなく、そしてその記載が、その事象又は状況が起こる場合と起こらない場合とを含むことを意味する。
【0031】
「疾患状態」は、あらゆる疾患、状態、症状又は適応症を意味する。
【0032】
「不活性有機溶媒」又は「不活性溶媒」は、関連して記載されている反応条件下で不活性な溶媒を意味し、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、塩化メチレン又はジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、ジオキサン、ピリジンなどが含まれる。特記のない限り、本発明の反応に使用される溶媒は不活性溶媒である。
【0033】
「薬学的に許容されうる」は、一般的に安全で、非毒性であり、生物学的にも、それ以外にも望ましくないものでない、医薬組成物の調製に有用であることを意味し、ヒトに対する薬学的使用と同様に獣医学用に許容されうることを含む。
【0034】
化合物の「薬学的に許容されうる塩」は、本明細書で定義されたように薬学的に許容され、親化合物の所望の薬理学的活性を有する塩を意味する。そのような塩には下記が含まれる:
塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などのような無機酸により形成される酸付加塩、又は酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸,フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸などのような有機酸により形成される酸付加塩;或いは
親化合物に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン若しくはアルミニウムイオンで置換されているか、又は有機若しくは無機塩基と配位するかのいずれかの場合に形成される塩。許容されうる有機塩基には、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミンなどが含まれる。許容されうる無機塩基には、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムが含まれる。 好ましい薬学的に許容されうる塩は、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、酒石酸、クエン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、及びマグネシウムより形成される塩である。 薬学的に許容されうる塩に参照される全てのものには、同じ酸付加塩の本明細書で定義される溶媒付加形態(溶媒和物)又は結晶形(多形)が含まれることを理解するべきである。
【0035】
用語「プロ−ドラッグ」及び「プロドラッグ」は、本明細書中で置き換えて使用されてもよく、そのようなプロドラッグが哺乳類の被験者に投与される場合、式Iの活性親剤をインビボで放出するあらゆる化合物を意味する。式Iの化合物のプロドラッグは、修飾がインビボで開裂して親化合物を放出しうるように、式Iの化合物に存在する1個以上の官能基を修飾することにより調製される。プロドラッグは、式Iの化合物におけるヒドロキシ、アミノ又はスルフヒドリル基が、インビボで開裂してそれぞれ遊離ヒドロキシル、アミノ又はスルフヒドリル基を再生しうる任意の基と結合している、式Iの化合物を含む。プロドラッグの例には、エステル(例えば、アセテート、ホルメート及びベンゾエート誘導体)、式Iの化合物のヒドロキシ官能基のカルバメート(例えば、N,N−ジメチルアミノカルボニル)、アミノ官能基のN−アシル誘導体(例えば、N−アセチル)、N−マンニッヒ塩基、シッフ塩基及びエナミノン、並びに式Iの化合物のケトン及びアルデヒド官能基のオキシム、アセタール、ケタール及びエノールエステルなどが含まれるが、これらに限定されない(Bundegaard, H. "Design of Prodrugs" p1-92, Elesevier, New York-Oxford (1985)などを参照すること)。
【0036】
「保護基」は、多官能化合物において1個の反応部位を、合成化学でそれと慣習的に関連する意味において、化学反応が別の非保護反応部位で選択的に実施されうるように選択的にブロックする基を意味する。本発明の特定の方法は、反応体に存在する反応性窒素原子及び/又は酸素原子をブロックする保護基に依存する。例えば、用語「アミノ保護基」及び「窒素保護基」は、本明細書中で置き換え可能に使用され、合成処理中の望ましくない反応に対して、窒素原子を保護することを意図する有機基を意味する。例示的な窒素保護基には、トリフルオロアセチル、アセトアミド、ベンジル(Bn)、ベンジルオキシカルボニル(カルボベンジルオキシ、CBZ)、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル(BOC)などが含まれるが、これらに限定されない当業者は、除去の容易さ及び続く反応に耐える能力のためにどのように基を選択するかを知っている。
【0037】
「溶媒和物」は、溶媒の化学量論的量又は非化学量論的量のいずれかを含有する溶媒付加形態を意味する。幾つかの化合物は、溶媒分子を一定のモル比で結晶質固体中に捕捉する傾向があり、したがって溶媒和物が形成される。溶媒が水の場合、形成される溶媒和物は水和物であり、溶媒がアルコールの場合、形成される溶媒和物はアルコラートである。水和物は、1個以上の水の分子と、水がその分子状態をH2Oに維持する1個の物質との組み合わせにより形成され、そのような組み合わせにより1個以上の水和物が形成できる。
【0038】
「患者」は哺乳動物及び非哺乳動物を意味する。哺乳動物は、ヒト;チンパンジー及び他の類人猿及びサル類のような人類以外の霊長類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ及びブタのような家畜;ウサギ、イヌ及びネコのような愛玩動物;ラット、マウス及びモルモットのような齧歯類を含む実験動物などを含む哺乳類のあらゆる構成員を意味するが、これらに限定されない。非哺乳動物の例には、トリなどが含まれるが、これらに限定されない。用語「患者」は特定の年齢又は性別を意味しない。
【0039】
「治療有効量」は、疾患状態を治療するために患者(被検者ともいう)に投与される場合、疾患状態に対してそのような治療を行うために十分な化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、治療されている疾患状態、治療される疾患の重篤度、被検者の年齢及び相対的な健康状態、投与の経路及び形態、診察にあたる医師又は獣医の判断、並びに他の要因に応じて変化する。
【0040】
変形を参照する場合、用語「上記で定義されたもの」及び「本明細書で定義されたもの」には、変形の広範囲の定義と、存在するのであれば、好ましい、より好ましい、最も好ましい定義とが参照として含まれる。
【0041】
疾患状態を「治療する」又は疾患状態の「治療」は下記を含む:
(i)疾患状態の予防、すなわち疾患状態に暴露される又は罹患しやすくなっているが、まだ疾患状態の症状を経験又は表していない被検者において、疾患状態の臨床症状を進展させないこと、
(ii)疾患状態の阻害、すなわち疾患状態又はその臨床症状の進展を制止すること、或いは
(iii)疾患状態の緩和、すなわち疾患状態又はその臨床症状を一時的又は永久的に後退させること。
【0042】
化学反応を参照する場合、用語「処理する」、「接触させる」及び「反応させる」は、2つ以上の試薬を、適切な条件下で加えるか又は混合して、表示及び/又は目的生成物を生成することを意味する。表示及び/又は目的生成物を生成する反応が、最初に加えられた2つの試薬の組み合わせから直接もたらされる必要はないこと、すなわち混合物中に生成された1つ以上の中間体が存在してよく、最終的にそれが表示及び/又は目的生成物の形成につながることを理解すべきである。
【0043】
一般に、本出願書で使用される命名法は、IUPAC系統的命名法を生み出すBeilstein InstituteコンピュータシステムであるAUTONOM(商標)v.4.0に基づく。便宜上、本明細書で記載された代表的なベンゾオキサジン化合物の位置のIUPACによる番号付けが、下記の式により示される。
【0044】
【化24】

【0045】
本明細書で示される化学構造は、ISIS(登録商標)v.2.2を使用して作成した。本明細書の化学構造における炭素、窒素又は酸素原子でのあらゆる空原子価(open valency)は、水素の存在を示すと理解されるべきである。
【0046】
本発明は、式(I):
【0047】
【化25】

【0048】
〔式中、
mは、0〜3であり;好ましくは、mは0又は1であり;
Xは、N又はCHであり;好ましくは、XはNであり;
Yは、−SO2−又は−CH2−であり;好ましくはYは−SO2−であり;
1は、それぞれ独立して、ハロ、アルキル、ハロ−アルキル、アルコキシ、シアノ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、−SO2a、−C(=O)−NRbc、−SO2−NRbc、−SRb、−N(Rb)−C(=O)−Rc、−C(=O)−Rb又は−N(Rb)−SO2−Raであり、
ここで、
aは、それぞれ独立して、アルキル又はハロアルキルであり、
b及びRcは、それぞれ独立して、水素、アルキル又はハロアルキルであり;
2は、アルキル、ハロ、ハロアルキル、アルコキシ若しくはシアノで場合により置換されているアリール又はヘテロアリールであり;
3及びR4は、それぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキル又はアルコキシアルキルであるか、或いは
3及びR4は、それらが結合している炭素と一緒になって、N、O及びSから選択されるヘテロ原子を場合により含む環原子3〜6個の環式基を形成してもよく;好ましくはR3及びR4はアルキルであり;そして
5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、水素又はアルキルであるか、或いはR9と、R5、R6、R7又はR8のうちの1つは、それらが結合している原子と一緒になって、環原子5〜7個のヘテロシクロアミノ環を形成する〕で示される化合物、或いは
薬学的に許容されうるその塩、又は溶媒和物若しくはプロドラッグを提供する。
【0049】
本発明の範囲は、存在しうる種々の異性体のみならず、形成されうる異性体の種々の混合物も包含することが理解されるべきである。更に本発明の範囲は、また、式Iの化合物の溶媒和物及び塩も包含する。R1、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9のいずれかがアルキルである場合、これらは好ましくは低級アルキル、すなわちC1〜C6アルキル、より好ましくはC1〜C4アルキルである。
【0050】
特定の実施態様において、Yは−SO2−である。
【0051】
特定の実施態様において、mは0又は1である。
【0052】
特定の実施態様において、XはNである。
【0053】
特定の実施態様において、R1は、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、シアノ、ヒドロキシアルキル又はアルコキシアルキルである。
【0054】
特定の実施態様において、R2はハロフェニルである。
【0055】
特定の実施態様において、Yは−SO2−であり、mは0又は1であり、XはNであり、R1は、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、シアノ、ヒドロキシアルキル又はアルコキシアルキルであり、そしてR2はハロフェニルである。
【0056】
特定の実施態様において、R2は、アリール、好ましくは、場合により置換されているフェニル又は場合により置換されているナフチルである。より好ましくは、R2は、フェニル、2−フルオロフェニル、2−クロロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、4−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3,5−ジクロロフェニル、2,6−ジクロロフェニル、2,4−ジクロロフェニル、3−メタンスルホニルアミノフェニル、2−メタンスルホニルフェニル、2−カルバモイルフェニル、3−メタンスルホニルフェニル、4−メタンスルホニルフェニル、3−フルオロフェニル、ナフチル、2,4−ジフルオロフェニル、2−シクロフェニル、2−クロロ−4−フルオロフェニル、2−メチル−5−フルオロフェニル又は5−クロロナフチルである。特定の実施態様において、R2は、フェニル又はハロ−置換フェニルである。より好ましくは、R2は、フェニル、又は2−ハロフェニル、3−ハロフェニル若しくは4−ハロフェニルのようなハロフェニルである。特定の実施態様において、R2は、2−クロロ−置換フェニル又は2−フルオロ−置換フェニルであってもよい。
【0057】
特定の実施態様において、R3及びR4はアルキルである。さらに別の実施態様において、R3及びR4は、それらが結合している炭素と一緒になって、N、O及びSから選択されるヘテロ原子を場合により含む環原子3〜6個の環式基を形成してもよい。特定の実施態様において、R3及びR4はメチルであるか、或いはR3及びR4は、それらが結合している炭素と一緒になって、シクロブチル環又は基を形成してもよい。
【0058】
特定の実施態様において、式(I)の化合物は、より詳細には式(II):
【0059】
【化26】

【0060】
〔式中、
nは0〜5であり;好ましくはnは0〜2であり;
10は、それぞれ独立して、アルキル、ハロ、ハロアルキル、アルコキシ又はシアノであり;そして
m、R1、R3、R4及びR9は、本明細書で定義されたとおりである〕で示される化合物である。
【0061】
式IIの化合物の特定の実施態様において、nは0又は1である。
【0062】
式IIの化合物の特定の実施態様において、R10はハロである。
【0063】
式IIの化合物の特定の実施態様において、nは0又は1であり、そしてR10はハロである。
【0064】
式Iの代表的な化合物のうちの幾つかが、融点又は質量スペクトル分子イオンデータと共に、下記の表1で示されている。融点は、特に指定がない限り、対応する塩酸塩のものである。
【0065】
【表1】













【0066】
本発明の別の態様は、式(I)の化合物の治療有効量と、薬学的に許容されうる担体とを含む組成物を提供する。
【0067】
本発明のなお別の態様は、式(I)の化合物の治療有効量を被検者に投与することを含む、CNS疾患状態の被検者を治療する方法を提供する。好ましくは、疾患状態は、精神病、統合失調症、躁うつ病、神経障害、記憶障害、注意力欠陥障害、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病及びハンチントン病を含む。
【0068】
本発明のさらに別の態様は、式(I)の化合物の治療有効量を被検者に投与することを含む、胃腸管疾患の被検者を治療する方法を提供する。
【0069】
本発明の別の態様は、式(I)の化合物を生成する方法を提供する。
【0070】
実施態様において、式Iの特定の化合物(以降、式iの化合物と言う)は、
【0071】
【化27】

【0072】
a)式a:
【0073】
【化28】

【0074】
の化合物を、式b:
【0075】
【化29】

【0076】
の化合物と反応させて、式c:
【0077】
【化30】

【0078】
の化合物を得る工程、
b)式cの化合物の環化を実施して、式d:
【0079】
【化31】

【0080】
の化合物とする工程、
c)式dの化合物を還元して、式e:
【0081】
【化32】

【0082】
の化合物とする工程、
d)式eの化合物を、式f:
【0083】
【化33】

【0084】
の化合物と反応させて、式g:
【0085】
【化34】

【0086】
の化合物を得る工程、
e)式gの化合物を、式h:
【0087】
【化35】

【0088】
の化合物と反応させて、式iの化合物を得る工程、
(式中、R1、R3、R4、R9、R10、m及びnは、本明細書上記で定義されているとおりである)
を含む方法に従って調製できる。
【0089】
別の実施態様において、式Iの特定の化合物(以降、式mの化合物と言う)は、
【0090】
【化36】

【0091】
a)式d:
【0092】
【化37】

【0093】
の化合物を、式j:
【0094】
【化38】

【0095】
の化合物と反応させて、式k:
【0096】
【化39】

【0097】
の化合物を得る工程、
b)式kの化合物を還元して、式l:
【0098】
【化40】

【0099】
の化合物とする工程、
c)式lの化合物を、式h:
【0100】
【化41】

【0101】
の化合物と反応させて、式mの化合物を得る工程、
(式中、R1、R3、R4、R9、R10、m及びnは、本明細書上記で定義されているとおりである)
を含む方法に従って調製できる。
【0102】
さらに別の実施態様において、式Iの特定の化合物(以降、式qの化合物と言う)は、
【0103】
【化42】

【0104】
a)式g:
【0105】
【化43】

【0106】
の化合物を、式n:
【0107】
【化44】

【0108】
と反応させて、式o:
【0109】
【化45】

【0110】
の化合物を得る工程、
b)式oの化合物を脱水して、式p:
【0111】
【化46】

【0112】
の化合物とする工程、
c)式pの化合物を脱水素化して、式qの化合物を得る工程、
(式中、R1、R3、R4、R9、R10、m及びnは、本明細書上記で定義されているとおりである)
を含む方法に従って調製できる。
【0113】
下記で示され、記載されている例示の合成反応スキームは、これらの方法を更に説明する。
【0114】
これらの化合物の調製に使用される出発材料及び試薬は、一般的に、Aldrich Chemical Co.のような商業供給者から入手可能であるか、又は Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis; Wiley & Sons: New York, 1991, Volumes 1-15; Rodd's Chemistry of Carbon Compounds, Elsevier Science Publishers, 1989, Volumes 1-5 and Supplementals; 及び Organic Reactions. Wiley & Sons: New York, 1991, Volumes 1-40のような参考文献に記載の手順に従って当業者に既知の方法により調製される。下記の合成反応スキームは、本発明の化合物を合成することができる幾つかの方法を例示しているに過ぎず、これらの反応スキームに対して種々の変更を行うことができ、本出願に含まれる開示内容に参考として当業者に示唆されることになる。
【0115】
合成反応スキームの出発材料及び中間体を、所望であれば、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどを含むが、それらには限定されない従来の技術を使用して、単離及び精製することができる。そのような材料を、物理定数及びスペクトルデータを含む従来の手段を使用して特徴付けすることができる。
【0116】
特記のない限り、本明細書に記載される反応は、好ましくは不活性雰囲気下、大気圧で約−78℃〜約150℃、より好ましくは約0℃〜約125℃の反応温度範囲、最も好ましく、かつ好都合には約室温(周囲温度)、例えば約20℃で実施される。
【0117】
下記のスキームAは、R1、R3、R4、m及びnが本明細書で定義された式(I)の特定の化合物の調製に使用できる一つの合成手順を説明する。
【0118】
【化47】

【0119】
スキームAの工程1において、オルトアミノフェノールaを酸ハロゲン化物bとの反応によりNアルキル化して、ベンズアミド化合物cを得る。この反応は、無水で極性の非プロトン性溶媒において、アミン塩基の存在下、低下した温度で実施することができる。酸ハロゲン化物bは、例えば、2−ブロモ−2−メチルプロピオニルブロミド(R3及びR4がそれぞれメチルである場合)、2−ブロモ−2−(2−ヒドロキシエチル)−ブチロイルブロミド(R3及びR4がそれぞれ2−ヒドロキシエチルである場合)、2−ブロモ−2−(2−メトキシエチル)−プロピオニルブロミド(R3が2−メトキシエチルであり、R4がメチルである場合)、1−ブロモ−シクロブタンカルボニルブロミド(R3及びR4がそれらが共有している炭素と一緒になってシクロブチル環を形成する場合)などを含むことができる。酸ハロゲン化物bの臭素基は、多くの場合に、クロロ又は他の離脱基で置換されてもよい。
【0120】
工程2において、ベンズアミド(bemzamide)化合物cは、環化を受けてベンゾオキサジノン化合物dを形成する。この環化は、ベンズアミド化合物cを炭酸カリウムのような穏やかな塩基の存在下、極性で非プロトン性の溶媒の条件で加熱して達成することができる。
【0121】
工程2のベンゾオキサジノン化合物dを工程3で還元してベンゾオキサジンeを得る。工程4(原文のまま)の還元は、例えば、ボラン又はボラン錯体、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、ラネーニッケル/ヒドラジンなどのような還元剤を使用してもよい。
【0122】
工程4において、ベンゾオキサジンeはアリールスルホニルハロゲン化物fで処理するスルホニル化反応を受けて、アリールスルホニルベンゾオキサジンgが得られる。工程4のスルホニル化反応は、アミン塩基の存在下、極性で非プロトン性の溶媒条件で容易に実施することができる。アリールスルホニルハロゲン化物fが、ピリジンスルホニルクロリド、チエンスルホニルクロリド、フランスルホニルクロリドなどのようなヘテロアリールスルホニルクロリドで置換されてもよいことを留意するべきである。
【0123】
工程5において、アミノ化反応は、アリールスルホニルベンゾオキサジンgをパラジウム触媒の存在下、非極性の溶媒条件でピペラジン化合物hにより処理して、ピペラジニルアリールスルホニルベンゾオキサジンiを得ることによって、実施される。化合物iは、XがNであり、Yが−SO2−であり、R2が場合により置換されているフェニルであり、そしてR5、R6、R7及びR8が水素である本発明の式(I)の化合物である。化合物iは、より詳細には上記で記載された式(II)の化合物である。
【0124】
9が水素である場合、BOC保護又は他の適切な保護戦略を使用して、ピペラジンiの対応する環窒素を保護することができ、このBOC又は他の保護基を取り除くための脱保護は、工程5においてアミノ化反応の後で実施することができる。
【0125】
この開示を検討するにあたり、上記の手順に対する多くの変形が可能であり、当業者によって提案される。そのような変形の一つが、スキームBで示されており、Yが−SO2−の代わりに−CH2−である式(I)の化合物を提供するために使用できる。
【0126】
【化48】

【0127】
スキームBの工程1において、ベンゾオキサジノンd(上記のスキームAで記載されたように調製)は、臭化ベンジルjとの反応によりNベンジル化を受けて、N−ベンジルベンゾオキサジノン化合物kが得られる。次にN−ベンジルベンゾオキサジノン化合物kを工程2で還元して、N−ベンジルベンゾオキサジンlを得る。次にN−ベンジルベンゾオキサジンlは、ピペラジンhとの反応によりアミノ化を受けて(スキームAで示されている)、ピペラジニルベンジルベンゾオキサジンmを提供し、これは、XがNであり、Yが−CH2−であり、R2が場合により置換されているフェニルであり、そしてR5、R6、R7及びR8が水素である式(I)の化合物である。R9が水素である場合、上記で示したように、アミノ化反応の間に適切な保護/脱保護戦略を使用してもよい。
【0128】
スキームAの手順の別の変形が、スキームCで示されており、XがNの代わりにCHである式(I)の化合物を調製するために使用できる。
【0129】
【化49】

【0130】
スキームCの工程1において、アリールスルホニルベンゾオキサジンg(上記のスキームAの工程4で記載されたように調製)を、n−ブチルリチウムのようなアルキルリチウム試薬により、無水で極性の非プロトン性条件及びドライアイス/アセトン温度で処理して、リチオ化中間体(図示せず)を生じ、これは、化合物gの臭素基がリチウムで置換されている。次にこのリチオ化中間体を、複素環式ケトンnとその場で直接反応させアルキル化を実施して、ヘテロシクリル置換アリールスルホニルベンゾオキサジンoを得る。複素環式ケトンnは、例えば、示されているピペリドン、あるいはピロリジノン又はアゼピノンを含んでもよく、これらは全て市販されている。R9が水素である場合、Boc保護又は他の除去しうる保護戦略を使用して、複素環式ケトンnの露出した窒素及びヘテロシクリル置換アリールスルホニルベンゾオキサジンoの対応する窒素を保護することができる。
【0131】
工程2において、ヘテロシクリル置換アリールスルホニルベンゾオキサジンoを緩酸で処理することより脱水して、ヘテロシクリル部分が部分的に不飽和である、化合物pを得る。特定の実施態様において、この脱水は、同時に起こることができ、工程2が不必要になる。
【0132】
工程3において、工程3(原文のまま)の化合物pを水素化して置換ベンゾオキサジン化合物qを得る。この反応は、白金又はパラジウム触媒を穏やかなエタノール条件下で使用する水素化により達成することができる。ベンゾオキサジン化合物qは、XがCHであり、Yが−SO2−であり、そしてR2が場合により置換されているフェニルである式(I)の化合物である。
【0133】
スキームCの手順は、アリールスルホニルベンゾオキサジンgの代わりにN−ベンジルベンゾオキサジノン化合物kを使用して、XがCHであり、Yが−SO2−であり、そしてR2が場合により置換されているフェニルである式(I)の化合物を得ることもできる。
【0134】
式Iの化合物を生成する更に詳細な記述が、下記の実施例部分で記載されている。
【0135】
本発明の化合物は、5−HT1、5−HT2、5−HT3、5−HT4、5−HT5、5−HT6及び/又は5−HT7を含む1つ以上の5−ヒドロキシトリプタミンレセプターに親和性を有する。化合物は、一般に選択的5−HT6レセプター親和性を有し、そのような化合物は、パーキンソン病、ハンチントン病、不安、うつ、躁うつ病、精神病、てんかん、強迫反応障害、感情障害、片頭痛、アルツハイマー病(認知記憶の亢進)、睡眠障害、食欲不振、食欲亢進及び肥満のような摂食障害、不安発作、注意欠陥多動性障害(ADHD)、注意力欠陥障害(ADD)、コカイン、エタノール、ニコチン及びベンゾジアゼピンのような薬物乱用からの退薬、統合失調症のような特定のCNS障害、また、水頭症のような脊髄損傷及び/又は頭部損傷に関連する障害の治療において有用であると期待されている。そのような化合物は、腸機能障害のような特定の胃腸(GI)障害の治療に使用されることも期待されている。
【0136】
本発明の化合物の薬理学は、当該技術で確認されている手順により測定された。ラジオリガンド結合及び機能アッセイにおける5−HT6レセプターに対する試験化合物の親和性を測定するインビトロ技術が、実施例4に記載されている。
【0137】
本発明は、少なくとも1個の本発明の化合物、或いはその個別の異性体、異性体のラセミ若しくは非ラセミ混合物又は薬学的に許容されうる塩若しくは溶媒和物を、少なくとも1種の薬学的に許容されうる担体、場合により他の治療及び/又は予防成分と一緒に含む医薬組成物を含む。
【0138】
一般に、本発明の化合物は、同様の効用をもつ薬剤の許容されているあらゆる投与方法によって、治療有効量が投与される。適切な用量範囲は、治療される疾患の重篤度、被検者の年齢及び相対的な健康状態、使用する化合物の効力、投与経路及び形態、投与が目的とする適応症並びに係る医師の選択及び経験のような数多くの要因に応じて、典型的には1日当たり1〜500mg、好ましくは1日当たり1〜100mg、最も好ましくは1日当たり1〜30mgである。そのような疾患を治療する当該技術における通常の技術のうちの一つにより、必要以上に試験を行うことなく、個人的な知識及び本出願の開示により、ある特定の疾患に対する本発明の化合物の治療有効量を確定することが可能となる。
【0139】
一般的に、本発明の化合物は、経口(頬側及び舌下を含む)、直腸内、鼻腔内、局所、経肺、経膣若しくは非経口(筋肉内、動脈内、脊髄内、皮下及び静脈内を含む)投与に適切なものを含む医薬製剤として又は吸入若しくは通気による投与に適切な形態で投与される。好ましい投与方法は、一般的に、苦痛の程度に従って調整できる都合のよい1日用量レジメンを使用する経口である。
【0140】
本発明の化合物の1個又は複数を、従来の佐薬、担体又は希釈剤の1種以上と一緒に医薬組成物及び単位投薬形態にすることができる。医薬組成物及び単位投薬形態は、従来の成分を従来の割合で、追加の活性化合物若しくは有効成分と共に又はなしで含むことができ、単位投薬形態は、使用される1日投与量の意図される範囲に相応する活性成分のあらゆる適切な有効量を含むことができる。医薬組成物は、錠剤若しくは充填カプセル剤、半固形剤、粉末剤、持続性放出製剤のような固体として、又は液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤若しくは経口用の充填カプセル剤のような液体として;又は直腸内若しくは膣内投与用の坐剤の形態;又は非経口的使用の注射用滅菌液剤の形態で使用することができる。したがって、活性成分を1錠当たり約1mg、より広くは約0.01〜約100mg含有する製剤が、適切で代表的な単位投薬形態である。
【0141】
本発明の化合物は、多種多様の経口投与投薬形態で配合することができる。医薬組成物及び投薬形態は、活性成分として、1個若しくは複数の本発明の化合物、又は薬学的に許容されうるその塩を含むことができる。薬学的に許容されうる担体は、固体又は液体のいずれかであってよい。固体形態の調合剤には、粉末剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤及び分散性顆粒剤が含まれる。固体担体は、希釈剤、風味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩解剤又はカプセル化材料としても作用することができる1種以上の物質であってよい。粉末剤では、担体は、一般に微粉化した活性成分との混合物である微粉化した固体である。錠剤では、活性成分は、一般的に、必要な結合能力を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形状及び大きさに成形される。粉末剤及び錠剤は、好ましくは活性化合物を約1〜約70%含有する。適切な担体には、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ロウ、ココアバターなどが含まれるが、これらに限定されない。用語「調合剤」は、担体を有するか又は有しない活性成分がそれと関連する担体により周囲を囲まれているカプセル剤を提供する、担体としてのカプセル化材料を有する活性化合物の製剤を含むことを意図している。同様に、カシェ剤及びトローチ剤が含まれる。錠剤、粉末剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤及びトローチ剤は、経口投与に適切な固体形態であってよい。
【0142】
経口投与に適切な他の形態には、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水性液剤、水性懸濁剤を含む液体形態の調合剤、又は使用の直前に液体形態の調合剤に変換されることが意図される固体形態の調合剤が含まれる。乳剤は、溶液、例えば、プロピレングリコール水溶液で調製されることができるか、又は例えばレシチン、ソルビタンモノオレエート若しくはアカシアのような乳化剤を含有することができる。水性液剤は、活性成分を水に溶解し、適切な着色剤、風味剤、安定剤及び増粘剤を加えることにより調製できる。水性懸濁剤は、微粉化した活性成分を、天然又は合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び他の周知の懸濁剤のような粘性材料と共に水に分散することにより調製できる。固体形態の調合剤は、液剤、懸濁剤及び乳剤を含み、活性成分に加えて、着色剤、風味剤、安定剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有してもよい。
【0143】
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注射、例としてはボーラス注入又は持続注入による)のために配合することができ、アンプル剤、充填済注射器(pre-filled syringes)、防腐剤を添加した小量注入容器又は多用量容器に単位用量形態で存在できる。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤又は乳剤、例えばポリエチレングリコール水溶液中の液剤のような形態をとることができる。油性又は非水性担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)及び注射用有機エステル類(例えば、オレイン酸エチル)を含み、防腐剤、湿潤剤、乳化剤若しくは懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤のような配合剤を含有してよい。あるいはまた、活性成分は、滅菌固体の無菌分離によるか、又は適切なビヒクル、例えば滅菌した、発熱物質を含まない水を用いて、使用前の構成用溶液から凍結乾燥することにより得られる粉末形態であってよい。
【0144】
本発明の化合物は、軟膏剤、クリーム剤若しくはローション剤として又は経皮パッチ剤として表皮に局所投与するために配合することができる。例えば、軟膏剤及びクリーム剤を、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を加え、水性又は油性基剤を用いて配合することができる。ローション剤を、水性又は油性基剤を用いて配合することができ、また一般的に、1種以上の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤又は着色剤も含有する。口腔内の局所投与に適切な製剤には、風味付けした基剤、通常、スクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性剤を含むトローチ剤;ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアのような不活性基剤中に活性成分を含むパステル剤;並びに適切な液体担体中に活性成分を含む洗口剤が含まれる。
【0145】
本発明の化合物は坐剤として投与するために配合できる。脂肪酸グリセリド又はココアバターの混合物のような低融点ロウを最初に溶融し、活性成分を例えば撹拌により均質に分散する。次に均質溶融混合物を、都合のよい大きさの成形型に注いで、冷却及び凝固させる。
【0146】
本発明の化合物は膣内投与用に配合することができる。活性成分に加えて、そのような担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレーが適切であることは、当該技術で既知である。
【0147】
本発明の化合物は鼻腔内投与用に配合することができる。液剤又は懸濁剤を、従来の方法、例えば、滴瓶、ピペット又はスプレーを用いて直接鼻腔に適用する。製剤は単回投与又は多回投与形態で提供することができる。後者の滴瓶又はピペットの場合、液剤又は懸濁剤の適切で所定の容量を患者が投与することで、それを達成することができる。スプレーの場合、例えば計量噴霧スプレーポンプを用いて達成することができる。
【0148】
本発明の化合物は、特に、鼻腔内投与を含む、気道へのエアゾール投与用に配合してもよい。化合物は、一般的に、例えば5μ以下のオーダーの小さい粒径を有する。そのような粒径は、当該技術で既知の方法、例えば微粉砕により得ることができる。活性成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン若しくはジクロロテトラフルオロエタン、又は二酸化炭素、或いは他の適切なガスのような適切な噴射剤を用いた加圧パックで提供される。エアゾールは、また、レシチンのような界面活性剤を都合よく含有してもよい。薬剤の用量は、計量弁により制御してもよい。あるいはまた、活性成分は、乾燥粉末の形態で、例えば、乳糖、デンプン、デンプン誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリジン(PVP)のような適切な粉末基剤中の化合物の粉末混合物で提供されてもよい。粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成する。粉末組成物は、吸入器により粉末剤が投与される、例えばゼラチン又はブリスターパックの例えば、カプセル又はカートリッジのような単位用量形態で存在してよい。
【0149】
所望であれば、製剤は、活性成分の持続的又は制御的放出投与に適合するように、腸溶剤皮を用いて調製できる。例えば本発明の化合物は、経皮又は皮下薬剤送達装置に配合できる。これらの送達系は、化合物の持続放出が必要であり、患者の治療レジメンに対するコンプライアンスが重要である場合に有益である。経皮送達系における化合物は、多くの場合、皮膚付着固体支持体に結合されている。目的の化合物は、また、浸透向上剤、例えばアゾン(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)と組み合わせることができる。持続的放出送達系は、手術又は注入により皮下層に皮下的に挿入される。皮下インプラントは、脂質可溶膜、例えばシリコーンゴム又は生物分解性ポリマー、例えばポリ乳酸で化合物を包み込む。
【0150】
医薬調合剤は、好ましくは単位投薬形態である。そのような形態では、調合剤は、活性成分の適切な量を含有する単位用量に細分化されている。単位投薬形態は、パッケージ調合剤であることができ、そのパッケージは、パケット錠剤、カプセル剤及びバイアル又はアンプル中の粉末剤のような調合剤の別個の分量を含有する。また、単位投薬形態は、それ自体カプセル剤、錠剤、カシェ剤又はトローチ剤であることができるか、又はこれらのうちのいずれかの適切な数のパッケージ形態であることができる。
【0151】
他の適切な医薬担体及びその製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, edited by E. W. Martin, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Pennsylvaniaに記載されている。本発明の化合物を含有する代表的な医薬製剤は、実施例6〜12に記載されている。
【0152】
実施例
下記の調製例及び実施例は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施できるために示されている。これらは、本発明の範囲を制限すると考えられるべきではなく、本発明の例示及び代表例としてのみ考えられるべきである。
【0153】
実施例1
4−(2−フルオロ−ベンゼンスルホニル)−2,2−ジメチル−8−ピペラジン−1−イル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ〔1,4〕オキサジン
この実施例は、下記のスキームDの合成手順を使用して、式(I)の化合物を生成する方法を例示している。
【0154】
【化50】

【0155】
工程1
2−ブロモ−N−(3−ブロモ−2−ヒドロキシ−フェニル)−2−メチル−プロピオンアミド
【0156】
【化51】

【0157】
ピリジン(1.8ml、22.3mmol)を、無水CH2Cl2(200ml)中の2−アミノ−6−ブロモ−フェノール(4.198g、22.3mmol)の溶液に加えた。混合物を氷で冷却し、次に2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルブロミド(2.8ml、22.6mmol)の溶液をゆっくりと加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、CH2Cl2及び水に注いだ。有機層を水で洗浄し、乾燥し、真空下で濃縮して、粗2−ブロモ−N−(3−ブロモ−2−ヒドロキシ−フェニル)−2−メチル−プロピオンアミドを得て、それを精製しないで工程2で直接使用した。
【0158】
工程2
8−ブロモ−2,2−ジメチル−4H−ベンゾ〔1,4〕オキサジン−3−オン
【0159】
【化52】

【0160】
工程1の2−ブロモ−N−(3−ブロモ−2−ヒドロキシ−フェニル)−2−メチル−プロピオンアミドをDMF(200ml)に溶解し、DMF溶液にK2CO3(6.3g、45.58mmol)を加えた。混合物を150℃で一晩加熱し、次に冷却し、水/酢酸エチルの混合物に注いだ。有機画分をブラインで洗浄した。MgSO4で乾燥した後、有機画分を真空下で濃縮し、得られた褐色の残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、8−ブロモ−2,2−ジメチル−4H−ベンゾ〔1,4〕オキサジン−3−オンを白色の固体(84.6%)として得た。MS:(M−H)-256。
【0161】
工程3
8−ブロモ−2,2−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ〔1,4〕オキサジン
【0162】
【化53】

【0163】
工程2の8−ブロモ−2,2−ジメチル−4H−ベンゾ〔1,4〕オキサジン−3−オン(768.30mg、3.0mmol)を無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解し、溶液を加熱還流した。THF中の10Mボランジメチルスルフィド(BH3.DMS)0.3mlを反応混合物に滴加し、反応混合物を還流下で1時間加熱し続けた。次に10%エタノール性HClの溶液を反応混合物に白色の沈殿物が現われるまで滴加し、その後、還流を10分間続けた。反応混合物を冷却し、沈殿物を濾過により除去し、エーテルで洗浄し、空気乾燥して、8−ブロモ−2,2−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ〔1,4〕オキサジン塩酸塩770mg(92%)を白色の固体として得た。MS:(M+H)280。
【0164】
工程4
8−ブロモ−4−(2−フルオロ−ベンゼンスルホニル)−2,2−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ〔1,4〕オキサジン
【0165】
【化54】

【0166】
8−ブロモ−2,2−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ〔1,4〕オキサジン塩酸塩(518mg、2.41mmol)を塩化メチレン5mlに溶解し、次にそれにピリジン(253.85g、3.21mmol)を加えた。反応混合物を室温で撹拌し、2−フルオロベンゼンスルホニルクロリド(416.37mg、2.14mmol)を反応混合物に滴加し、その後、室温での撹拌を2時間続けた。次に反応混合物を1時間加熱還流し、室温に冷却した。反応混合物を塩化メチレン5mlで希釈し、10%HCl水溶液を加えた。有機層を、分離し、水、次に飽和NaHCO3で洗浄し、乾燥した(Na2SO4)。溶媒を減圧下で除去し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中EtOAc、5%〜20%)により精製して、8−ブロモ−4−(2−フルオロ−ベンゼンスルホニル)−2,2−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ〔1,4〕オキサジン610g(71.3%)を油状物として得て、それを放置して凝固させた。MP:108.0〜110.1℃。MS:(M+H)401。
【0167】
工程5
4−〔4−(2−フルオロ−ベンゼンスルホニル)−2,2−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ〔1,4〕オキサジン−8−イル〕−ピペラジン−1−カルボン酸tert-ブチルエステル
【0168】
【化55】

【0169】
トルエン5mL中の8−ブロモ−4−(2−フルオロ−ベンゼンスルホニル)−2,2−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ〔1,4〕オキサジン(450mg、1.124mmol)及び1−Boc−ピペラジン(209.4mg、1.124mmol)の溶液を、トルエン5ml中のPd2(dba)3(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、20.59mg、0.022mmol)BINAP(2,2′−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1′−ビナフチル、35.0mg、0.056mmol)及びNaOt−Bu(151.26mg、1.57mmol)の温かい脱ガスした混合物に加えた。撹拌しながら、溶液を90℃で2時間加熱し、次に室温に冷ました。酢酸エチルを反応に加え、次にそれをセライトで濾過した。濾液を、水(2×15ml)、ブライン(1×15ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、その後、有機画分を真空下で濃縮した。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(15%〜30%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、4−〔4−(2−フルオロ−ベンゼンスルホニル)−2,2−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ〔1,4〕オキサジン−8−イル〕−ピペラジン−1−カルボン酸tert-ブチルエステル470mg(0.93mmol)を得た。MS:(M+H)506。
【0170】
工程6
4−(2−フルオロ−ベンゼンスルホニル)−2,2−ジメチル−8−ピペラジン−1−イル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ〔1,4〕オキサジン
【0171】
【化56】

【0172】
4−〔4−(2−フルオロ−ベンゼンスルホニル)−2,2−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ〔1,4〕オキサジン−8−イル〕−ピペラジン−1−カルボン酸tert-ブチルエステル(470mg、0.93mmol)をエタノール3mlに溶解した。この溶液に10%エタノール性塩酸溶液1mlを加えた。混合物を100℃(蒸気浴)で15分間加熱し、次に室温に冷却し、その時点で白色の結晶質固体が形成された。固体を濾過により収集し、減圧下、70℃で乾燥して、4−(2−フルオロ−ベンゼンスルホニル)−2,2−ジメチル−8−ピペリジン−1−イル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ〔1,4〕オキサジン160mgを塩酸塩として得た。MP:222.9〜227.1℃。MS:(M+H)479。
【0173】
溶液を室温に冷まし、濾過し、真空炉で乾燥した後、4−ベンジル−8−ピペラジン−1−イル−4H−ベンゾ〔1,4〕オキサジン−3−オン塩酸塩0.115gを明黄色の粉末として収集した。MS:324(M+H)+、mp=235.9〜236.2℃。
【0174】
工程4で2−フルオロベンゼンスルホニルクロリドを適切な置換ベンゼンスルホニルクロリドと又はピリジンスルホニルクロリドと代えるか、並びに/或いは工程2で2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルブロミドを1−ブロモ−シクロブタンカルボニルブロミドと代えて、上記の手順を使用して、幾つかの追加の化合物を調製した。これらの化合物は上記の表1で示されている。
【0175】
実施例5
この実施例は式(I)の化合物のインビトロ放射性リガンド結合試験を例示する。
【0176】
本発明の化合物のインビトロでの結合活性を下記のように測定した。リガンド親和性の二重測定は、組み換えヒト5−HT6レセプターを安定して発現しているHEK293細胞に由来する細胞膜における、〔3H〕LSDの結合を競争させることにより行った。この細胞株は、Monsma et al., Molecular Pharmacology, Vol. 43 pp. 320-327 (1993)で記載された方法により調製した。
【0177】
全ての測定を、反応容量250マイクロリットル中に50mMトリス−HCl、10mM MgSO4、0.5mM EDTA、1mM アスコルビン酸を含有するpH7.4で37℃のアッセイ緩衝液で行った。〔3H〕LSD(5nM)(競争リガンド)及び膜を含有するアッセイ管を振とう水浴中、37℃で60分間インキュベートし、Packard 96ウェル細胞採取機を使用してPackard GF-Bプレート(0.3%PEIで予め浸漬した)上に濾過し、氷冷50mMトリス−HCl中で3回洗浄した。結合した〔3H〕LSDを、Packard TopCountを使用して1分当たりの放射能カウントとして測定した。
【0178】
3H〕LSDの結合部位からの置換を、濃度−結合データを4パラメータロジスティック方程式に当てはめることにより定量化した。
【0179】
【化57】

【0180】
(式中、Hillは、Hillスロープであり、〔ligand〕は、競争放射性リガンドの濃度であり、そしてIC50は、放射性リガンドの最大半減特異的結合を生み出す放射性リガンドの濃度である)。特異的結合領域は、Bmaxパラメータと基底パラメータの差である。
【0181】
実施例5の手順を使用して、式(I)の化合物を試験し、5−HT6アンタゴニストであることが判明した。驚くべきことに、R3及びR4がメチルであるか、又はR3及びR4が一緒になってシクロブチル基を形成する式(I)の化合物は、R3及びR4が水素である対応する化合物よりも、約半対数オーダー以上の良好な親和性を5−HT6に対して示す。この予期しない結果は、表2で示されるpKi値によりさらに詳しく説明される。
【0182】
【表2】

【0183】
実施例6
本発明の化合物の認識力向上特性は、動物の認識力モデルである物体認識タスクモデルにおいてありうる。4か月齢の雄 Wistarラット(Charles River, The Netherlands)を使用した。化合物は毎日調製し、生理食塩水に溶解し、3回の投与により試験した。投与は、常に、T1の60分前に腹腔内(注入容量1ml/kg)に行った。化合物の注入の30分後に臭化水素酸スコポラミンを注入した。2つの等しい試験群は24匹のラットからなり、2回の実験により試験した。投与試験の順序は、無作為に決定した。実験は、二重盲検プロトコールを使用して実施した。全てのラットを各投与条件で1回処置した。物体認識試験は、Ennaceur, A., Delacour, J., 1988, A new one-trial test for neurobiological studies of memory in rats. 1: Behavioral data. Behav. Brain Res. 31, 47-59に記載されたように実施した。
【0184】
本発明を特定の実施態様を参照して記載してきたが、種々の変更を行ってよく、本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り同等物を置換してよいことが、当業者により理解されるべきである。加えて、多くの変更を、特定の状況、材料、物質の組成、方法、加工工程が本発明の目的、精神及び範囲に適合するように行ってよい。そのような変更は、全て本明細書に添付された特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


〔式中、
mは、0〜3であり;
Xは、N又はCHであり;
Yは、−SO2−又は−CH2−であり;
1は、それぞれ独立して、ハロ、C1〜C12アルキル、ハロ−C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1〜C6アルキル、C1〜C12アルコキシ−C1〜C12アルキル、−SO2a、−C(=O)−NRbc、−SO2−NRbc、−SRb、−N(Rb)−C(=O)−Rc、−C(=O)−Rb又は−N(Rb)−SO2−Raであり、
ここで、
aは、それぞれ独立して、C1〜C12アルキル又はハロ−C1〜C12アルキルであり、
b及びRcは、それぞれ独立して、水素、C1〜C12アルキル又はハロ−C1〜C12アルキルであり、
2は、C1〜C12アルキル、ハロ、ハロ−C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ若しくはシアノで場合により置換されているアリール又はヘテロアリールであり;
3及びR4は、それぞれ独立して、C1〜C12アルキル、ヒドロキシ−C1〜C6アルキル又はC1〜C12アルコキシ−C1〜C12アルキルであるか、或いはR3及びR4は、それらが結合している炭素と一緒になって、N、O及びSから選択されるヘテロ原子を場合により含む環原子3〜6個の環式基を形成してもよく;そして
5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、水素又はC1〜C12アルキルであるか、或いは
9と、R5、R6、R7又はR8のうちの1つとは、それらが結合している原子と一緒になって、環原子5〜7個のヘテロシクロアミノ環を形成する〕で示される化合物、或いは
薬学的に許容されうるその塩、又は溶媒和物若しくはプロドラッグ。
【請求項2】
Yが−SO2−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
XがNである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
2がアリールである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
2が、場合により置換されているフェニルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
3及びR4がC1〜C12アルキルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
mが0又は1である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
1が、ハロ、C1〜C12アルキル、ハロ−C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1〜C6アルキル又はC1〜C12アルコキシ−C1〜C12アルキルである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
2がハロフェニルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
2が、2−ハロフェニル、3−ハロフェニル又は4−ハロフェニルである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
2が、2−フルオロフェニル又は2−クロロフェニルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
3及びR4がメチルである、請求項6記載の化合物。
【請求項13】
3及びR4が、それらが結合している炭素と一緒になって、N、O及びSから選択されるヘテロ原子を場合により含む環原子3〜6個の環式基を形成してもよい、請求項6に記載の化合物。
【請求項14】
3及びR4が、それらが結合している炭素と一緒になって、シクロブチル基を形成してもよい、請求項6に記載の化合物。
【請求項15】
式(II):
【化2】


〔式中、
nは、0〜5であり;
10は、それぞれ独立して、C1〜C12アルキル、ハロ、ハロ−C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ又はシアノであり;そして
m、R1、R3、R4及びR9は、請求項1で記載されているとおりである〕で示される化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
nが0又は1である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
10がハロである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
式i:
【化3】


で示される化合物の調製方法であって、
a)式a:
【化4】


の化合物を、式b:
【化5】


の化合物と反応させて、式c:
【化6】


の化合物を得る工程、
b)式cの化合物の環化を実施して、式d:
【化7】


の化合物とする工程、
c)式dの化合物を還元して、式e:
【化8】


の化合物とする工程、
d)式eの化合物を、式f:
【化9】


の化合物と反応させて、式g:
【化10】


の化合物を得る工程、
e)式gの化合物を、式h:
【化11】


の化合物と反応させて、式iの化合物を得る工程、
(式中、R1、R3、R4、R9、R10、m及びnは、請求項15で定義されているとおりである)
を含む方法。
【請求項19】
式m:
【化12】


で示される化合物の調製方法であって、
a)式d:
【化13】


の化合物を、式j:
【化14】


の化合物と反応させて、式k:
【化15】


の化合物を得る工程、
b)式kの化合物を還元して、式l:
【化16】


の化合物とする工程、
c)式lの化合物を、式h:
【化17】


の化合物と反応させて、式mの化合物を得る工程、
(式中、R1、R3、R4、R9、R10、m及びnは、請求項15で定義されているとおりである)
を含む方法。
【請求項20】
式q:
【化18】


で示される化合物の調製方法であって、
a)式g:
【化19】


の化合物を、式n:
【化20】


と反応させて、式o:
【化21】


の化合物を得る工程、
b)式oの化合物を脱水して、式p:
【化22】


の化合物とする工程、
c)式pの化合物を脱水素化して、式qの化合物を得る工程、
(式中、R1、R3、R4、R9、R10、m及びnは、請求項15で定義されているとおりである)
を含む方法。
【請求項21】
請求項18〜20のいずれかに記載の方法により調製される化合物。
【請求項22】
請求項1の化合物の有効量を薬学的に許容されうる担体と混合して含む医薬組成物。
【請求項23】
中枢神経系疾患状態の患者を治療するのに有用な薬剤の製造における、請求項1〜17のいずれかに記載の式Iの化合物の使用。
【請求項24】
疾患状態が、精神病、統合失調症、躁うつ病、神経障害、記憶障害、注意力欠陥障害、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、摂食障害及びハンチントン病から選択される、請求項23記載の使用。
【請求項25】
胃腸管障害の患者を治療するのに有用な薬剤の製造における、請求項1〜17のいずれかに記載の式Iの化合物の使用。
【請求項26】
請求項及び明細書に記載される発明。

【公表番号】特表2007−513904(P2007−513904A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543432(P2006−543432)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013557
【国際公開番号】WO2005/058847
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】