説明

ベンゾジアゼピンブロモドメイン阻害剤

本発明は、式(I)のベンゾジアゼピン化合物
【化1】


その調製方法、そのような化合物を含んでなる医薬組成物およびその治療的使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾジアゼピン化合物、その調製プロセス、そのような化合物を含んでなる医薬組成物、および治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
真核生物のゲノムは細胞核内で高度に組織化されている。二本鎖DNAの長い鎖は、ヌクレオソームを形成するためにヒストンタンパク質(ほとんどはヒストンH2A、H2B、H3およびH4の2つのコピーを含む)の八量体に巻きついている。次いでこの基本単位はさらに、ヌクレオソームの凝集およびフォールディングにより圧縮されて、非常に凝縮されたクロマチン構造を形成する。様々な異なる状態の凝縮が可能であり、この構造の緊密度は細胞周期の間、変化し、細胞分裂のプロセスの間、最もコンパクトになる。クロマチン構造は、遺伝子転写を調節する際に重要な役割を果たすが、非常に凝縮されたクロマチンからは効率的に起こり得ない。クロマチン構造は、ヒストンタンパク質、特にヒストンH3およびH4に対すて、通常、コアヌクレオソーム構造を超えて拡がるヒストンテール内での一連の翻訳後修飾によって制御される。これらの修飾には、アセチル化、メチル化、リン酸化、ユビキチン化およびSUMO化が含まれる。これらの後成的マーカーは、ヒストンテール内の特異的残基上に標識を取り付ける、特異的酵素によって書き出され、消去され、それによって、後成的コードを形成し、次いでそれは、細胞に読み取られて、クロマチン構造の遺伝子特異的調節およびそれによる転写を可能にする。
【0003】
その修飾によって、静電気が変化してDNAとヒストン八量体との相互作用が緩まるため、ヒストンアセチル化は、通常、遺伝子転写の活性化と関連する。この物理的変化に加えて、特異的タンパク質はヒストン内でアセチル化リシン残基と結合して、後成的コードを読み取る。ブロモドメインは、ヒストンとの関連に限らないが、通常、アセチル化リシン残基と結合するタンパク質内の小さい(約110アミノ酸)特徴的なドメインである。ブロモドメインを含有することが知られている約50タンパク質のファミリーが存在し、それらは細胞内で様々な機能を有する。
【0004】
ブロモドメインを含有するタンパク質のさいてきなBetファミリーは、近接して2つのアセチル化リシン残基に結合できるタンデムブロモドメインを含有する4つのタンパク質(BRD2、BRD3、BRD4およびBRD−t)を含み、相互作用の特異性を増加させる。BRD2およびBRD3は、活性な転写遺伝子と共にヒストンと会合することが報告されており、転写伸長の促進にに関与するとされ(非特許文献1(Leroyら,Mol.Cell.2008 30(1):51−60))、一方、BRD4は、pTEF−B複合体が誘導的遺伝子にリクルートするのに関与し、それに伴いRNAポリメラーゼのリン酸化が生じ、転写生産が増加するようである(非特許文献2(Hargreavesら,Cell,2009 138(1):129−145))。また、BRD4およびBRD3はNUT(睾丸中の核タンパク質)と融合して、上皮腫瘍の高度な悪性形態において、新規な融合癌遺伝子BRD4−NUTを形成することが報告されている(非特許文献3(Frenchら,Cancer Research,2003,63,304−307)および非特許文献4(Frenchら,Journal of Clinical Oncology,2004,22(20),4135−4139))。データでは、BRD−NUT融合タンパク質が発癌の原因であることが示唆されている(非特許文献5(Oncogene,2008,27,2237−2242))。BRD−tは睾丸および卵巣において一意的に発現される。全てのファミリーメンバーは、細胞周期の局面を制御または実行する機能の一部を有すると報告されており、細胞分裂の間、染色体との複合体に存在することが示されており、これらのことから、後成的メモリの維持における役割が示唆される。加えて、一部のウイルスは、ウイルス複製のプロセスの一部として、それらのタンパク質を使用して、それらのゲノムを宿主細胞クロマチンにつなぎ止める(非特許文献6(Youら,Cell,2004 117(3):349−60))。
【0005】
特許文献1(特開2008−156311号公報)は、ウイルス感染/増殖に対して有用性を有するBRD2ブロモドメイン結合剤と言われているベンズイミダゾール誘導体を開示している。
【0006】
特許文献2(国際公開第2009/084693A1号パンフレット)は、アセチル化ヒストンと、抗癌剤として有用であると言われているブロモドメイン含有タンパク質との間の結合を阻害すると言われている一連のチエノトリアゾロジアゼピン誘導体を開示している。
【0007】
ブロモドメインと、その同種アセチル化タンパク質との結合を阻害する化合物、より具体的には、アセチル化リシン残基に対する最適なファミリーのブロモドメインの結合を阻害する化合物が見出されている。このような化合物は、本明細書中で「ブロモドメイン阻害剤」と称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−156311号公報
【特許文献2】国際公開第2009/084693A1号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Leroyら,Mol.Cell.2008 30(1):51−60
【非特許文献2】Hargreavesら,Cell,2009 138(1):129−145
【非特許文献3】Frenchら,Cancer Research,2003,63,304−307
【非特許文献4】Frenchら,Journal of Clinical Oncology,2004,22(20),4135−4139
【非特許文献5】Oncogene,2008,27,2237−2242
【非特許文献6】Youら,Cell,2004 117(3):349−60
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様において、式(I)の化合物またはその塩
【化1】

【0011】
が提供される。
【0012】
本発明の第2の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩と、1種以上の医薬的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤とを含んでなる、医薬組成物が提供される。
【0013】
本発明の第3の態様において、治療、特にブロモドメイン阻害剤が適応される疾患または病態の治療に使用するための式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩が提供される。
【0014】
本発明の第4の態様において、被験体においてブロモドメイン阻害剤が適応される疾患または病態を治療する方法であって、治療的に有効な量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩を、それを必要とする被験体投与することを含んでなる、前記方法が提供される。
【0015】
本発明の第5の態様において、ブロモドメイン阻害剤が適応される疾患または病態を治療するための薬剤の製造における式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩の使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、2−[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]−N−エチルアセトアミドである式(I)の化合物
【化2】

【0017】
またはその塩に関する。
【0018】
本発明は、遊離塩基としておよびその塩として、例えばその医薬的に許容可能な塩として式(I)の化合物を含むことが理解されるだろう。
【0019】
一実施形態において、2−[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]−N−エチルアセトアミドである化合物が提供される。
【0020】
薬剤におけるそれらの潜在的使用のために、式(I)の化合物の塩は望ましくは医薬的に許容可能である。別の実施形態において、2−[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]−N−エチルアセトアミドである化合物またはその医薬的に許容可能な塩が提供される。
【0021】
好適な医薬的に許容可能な塩としては酸または塩基付加塩が挙げられ得る。好適な塩に関する概説については、Bergeら,J.Pharm.Sci.,66:1−19,(1977)を参照のこと。典型的に、医薬的に許容可能な塩は、必要に応じて所望の酸または塩基を用いることによって容易に調製できる。得られる塩は溶液から沈殿して、濾過により収集され得るか、または溶媒の蒸発により回収され得る。
【0022】
医薬的に許容可能な塩基付加塩は、例えば結晶化および濾過によって通常単離される塩基付加塩を得るために、任意に好適な溶媒中で、式(I)の化合物と、好適な無機または有機塩基(例えばトリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、コリン、アルギニン、リシンまたはヒスチジン)とを反応させることによって形成できる。医薬的に許容可能な塩基塩としては、アンモニウム塩、ナトリウムおよびカリウムのものなどのアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウムのものなどのアルカリ土類金属塩、ならびにイソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミンおよびN−メチル−D−グルカミンなどの第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミンの塩を含む、有機塩基との塩が挙げられる。
【0023】
医薬的に許容可能な酸付加塩は、例えば結晶化および濾過によって通常単離される塩を得るために、任意に有機溶媒などの好適な溶媒中で、式(I)の化合物と、好適な無機または有機酸(例えば臭化水素酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、コハク酸、マレイン酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、安息香酸、サリチル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸(例えば2−ナフタレンスルホン酸、またヘキサン酸))との反応によって形成できる。式(I)の化合物の医薬的に許容可能な酸付加塩は、例えば、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩(例えば2−ナフタレンスルホン酸塩)またはヘキサン酸塩を含み得るか、またはそれらであり得る。
【0024】
他の医薬的に許容可能でない塩、例えばギ酸塩、シュウ酸塩またはトリフルオロ酢酸塩が、例えば、式(I)の化合物の単離において使用されてもよく、本発明の範囲内に含まれる。
【0025】
本発明は、その範囲内において、式(I)の化合物の塩の全ての可能な化学量論および非化学量論形態を含む。
【0026】
多くの有機化合物は、溶媒中でそれらが反応するその溶媒と錯体を形成でき、またはそれらが溶媒から沈殿もしくは結晶化するその溶媒と錯体を形成できることが理解されるだろう。これらの錯体は「溶媒和物」として知られている。例えば、水との錯体は「水和物」として知られている。高い沸点を有するおよび/または水素結合を形成できる溶媒、例えば水、キシレン、N−メチルピロリジノン、メタノールおよびエタノールが溶媒和物を形成するために使用されてもよい。溶媒和物の同定方法には、限定されないが、NMRおよび微量分析が含まれる。式(I)の化合物の溶媒和物は本発明の範囲内である。
【0027】
本発明は、その範囲内において、式(I)の化合物の溶媒和物の全ての可能な化学量論および非化学量論形態を含む。
【0028】
本発明は、受容者への投与時に、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩、あるいはその活性代謝産物または活性残基を(直接または間接的に)与えることができる、式(I)の化合物およびその医薬的に許容可能な塩の全てのプロドラッグを包含する。そのような誘導体は、過度の実験を必要とせずに当業者に認識可能である。しかし、参照は、Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery,5th Edition,Vol 1:Principles and Practiceの教示に対してなされる(その文献はこのような誘導体を教示する範囲で本明細書に参照として組み込まれる)。
【0029】
式(I)の化合物は結晶形態または非結晶形態であってもよい。さらに、式(I)の化合物の結晶形態の一部は多型体として存在してもよく、本発明の範囲内に含まれる。式(I)の化合物の多型体形態は、限定されないが、X線粉末回折(XRPD)パターン、赤外線(IR)スペクトル、ラマンスペクトル、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)および固体核磁気共鳴(SSNMR)を含む、多くの従来の分析技術を用いて特徴付けられ、識別され得る。
【0030】
式(I)の化合物は、実質的に他の異性体を含まない(すなわち鏡像異性的に純粋)ように単離された個々の異性体であるので、10%未満、特に約1%未満、例えば約0.1%未満の他の鏡像異性体が存在する。
【0031】
異性体の分離は、当業者に公知の従来の技術によって、例えば分別結晶、クロマトグラフィーまたはHPLCによって達成され得る。
【0032】
式(I)の化合物は数個の互変異性型のうちの1つで存在し得る。本発明は、個々の互変異性体としてまたはそれらの混合物として、いずれにせよ式(I)の化合物の全ての互変異性体を包含することは理解されるだろう。
【0033】
式(I)の化合物またはその塩の溶媒和物、異性体および多型体は本発明の範囲内に含まれることは上述から理解されるだろう。
【0034】
式(I)の化合物およびその医薬的に許容可能な塩は、標準的な化学を含む、種々の方法によって作製され得る。例示の一般的合成方法を以下に記載し、次いで式(I)の特定の化合物を、処理実施例において調製する。これらのプロセスは本発明のさらなる態様を形成する。
【0035】
式(I)の化合物は、反応スキーム1に従って、室温にてHATUまたはHBTUおよびDIEAの存在下で、式(II)の化合物とEtNHとの反応によって調製できる。代替として、式(I)の化合物は、式(II)の化合物と塩化オキサリルとを反応させ、続いてトリエチルアミンの存在下でEtNHを添加することによって調製できる。
【化3】

【0036】
式(II)の化合物は反応スキーム2に従って調製できる。適切な反応条件は、式(III)の化合物と、アルカリ性水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化リチウムとを反応させることを含む。
【化4】

【0037】
式中、RはメチルなどのC1−6アルキルを表す。
【0038】
式(III)の化合物は、反応スキーム3に従って、式(IV)の化合物とAcOHとを反応させることによって調製できる。
【化5】

【0039】
式(IV)の化合物は、反応スキーム4に従って、15℃以下で式(VI)の化合物とヒドラジンとを反応させ、続いて0℃にて得られたヒドラゾン(V)とMeCOClとの反応によって調製できる。通常、ヒドラゾン(V)はさらに精製せずに使用され、例えば0℃にてMeCOClと反応される。
【化6】

【0040】
RがC1−6アルキル(例えばメチル)である式(VI)の化合物は、反応スキーム5に従って、ローソン試薬(Lawesson‘s reagent)またはP10での処理によって式(VII)の化合物から調製できる。好適な反応条件は、例えば70℃にて1,2−ジクロロエタン中で式(VIII)の化合物とP10とを反応させることを含む。
【化7】

【0041】
式(VII)の化合物は、反応スキーム6に従って、式(IX)の化合物とトリエチルアミンなどの有機塩基とを反応させ、続いて得られたアミン(VIII)と酢酸との反応によって調製できる。通常、アミン(VIII)はさらに精製せずに使用され、例えば60℃にてAcOHと反応される。
【化8】

【0042】
式(IX)の化合物は、反応スキーム7に従って、式(XI)の化合物と保護されたアスパラギン酸由来の塩化アシル(X)とを反応させることによって調製できる。
【化9】

【0043】
式(XI)の化合物は、Synthesis 1980,677−688に記載される手順に従って調製できる。式(X)の塩化アシルは、J.Org.Chem.,1990,55,3068−3074およびJ.Chem.Soc.Perkin Trans.1,2001,1673−1695に記載される手順に従って調製できる。
【0044】
代替として、式(I)の化合物は反応スキーム8に従って調製できる。
【化10】

【0045】
式中、RはメチルなどのC1−4アルキルを表す。
【0046】
式(IIIA)の化合物は、反応スキーム9に従って、例えば室温にてHATUおよびDIEAの存在下で式(IVA)の化合物とEtNHとを反応させることによって調製できる。
【化11】

【0047】
式(IVA)の化合物は反応スキーム10に従って調製できる。好適な反応条件は、式(VI)の化合物と、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性水酸化物とを反応させることを含む。
【化12】

【0048】
上記プロセスに記載した化合物の1つ以上の官能基を保護することは有益であり得ることは当業者によって理解されるだろう。保護基およびそれらの除去手段の例は、T.W.Greene 「Protective Groups in Organic Synthesis」(第4版,J.Wiley and Sons,2006)に見出され得る。好適なアミン保護基としては、アシル(例えばアセチル、カルバメート(例えば2’,2’,2’−トリクロロエトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルまたはt−ブトキシカルボニル)およびアリールアルキル(例えばベンジル)が挙げられ、それらは、加水分解(例えばジオキサン中の塩酸またはジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸などの酸を用いること)によって除去され得るか、または必要に応じて還元的(例えばベンジルまたはベンジルオキシカルボニル基の水素化分解または酢酸中の亜鉛を用いる2’,2’,2’−トリクロロエトキシカルボニル基の還元的除去)によって除去され得る。他の好適なアミン保護基としては、塩基触媒加水分解により除去され得るトリフルオロアセチル(−COCF)が挙げられる。
【0049】
上記の経路のいずれの場合も、種々の基および部分が分子内に導入される合成工程の正確な順序は変更されてもよいことが理解されるだろう。プロセスの一段階で導入される基または部分が、その後の変換および反応に影響を与えないことを保証し、それに応じて合成工程の順序を選択することは当業者の範囲内であろう。
【0050】
上記の特定の中間体化合物は新規であり、従って本発明のさらなる態様を形成すると考えられる。
【0051】
式(I)の化合物およびその塩はブロモドメイン阻害剤であるので、ブロモドメインが適応される疾患または病態の治療において潜在的有用性を有すると考えられる。
【0052】
従って、本発明は、治療に使用するための式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩を提供する。式(I)の化合物またはその医薬的塩は、ブロモドメイン阻害剤が適応される疾患または病態の治療に使用するためとなり得る。
【0053】
一実施形態において、ブロモドメインが適応される疾患または病態の治療に使用するための式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩が提供される。別の実施形態において、慢性自己免疫病態および/または炎症病態の治療に使用するための化合物またはその医薬的に許容可能な塩が提供される。さらなる実施形態において、正中線癌(midline carcinoma)などの癌の治療に使用するための化合物またはその医薬的に許容可能な塩が提供される。
【0054】
一実施形態において、ブロモドメイン阻害剤が適応される疾患または病態を治療するための薬剤の製造における式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩の使用が提供される。別の実施形態において、慢性自己免疫病態および/または炎症病態を治療するための薬剤の製造における式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩の使用が提供される。さらなる実施形態において、正中線癌などの癌を治療するための薬剤の製造における式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩の使用が提供される。
【0055】
一実施形態において、被験体においてブロモドメイン阻害剤が適応される疾患または病態を治療する方法であって、治療的に有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩を、それを必要とする被験体に投与することを含んでなる、前記方法が提供される。別の実施形態において、被験体において慢性自己免疫病態および/または炎症病態を治療する方法であって、治療的に有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩を、それを必要とする被験体に投与することを含んでなる、方法が提供される。さらなる実施形態において、被験体において正中線癌などの癌を治療する方法であって、治療的に有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩を、それを必要とする被験体に投与することを含んでなる、方法が提供される。
【0056】
一実施形態において、それを必要とする被験体は哺乳動物、特にヒトである。
【0057】
本明細書で使用する場合、用語「有効量」は、例えば研究者または臨床医によって求められる組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的反応を引き起こす薬物または薬剤の量を意味する。さらに、用語「治療的に有効量」は、そのような量を受容していない対応する被験体と比較して、疾患、症状、もしくは副作用の改善された治療、治癒、予防、または寛解を生じる量、または疾患もしくは障害の進行の速度を減少させる量を意味する。この用語はまた、その範囲内において、正常な生理学的機能を高めるのに有効な量を含む。
【0058】
ブロモドメイン阻害剤は、全身または組織炎症、感染または低酸素に対する炎症反応、細胞活性化および増殖、脂質代謝、線維症に関連する種々の疾患または病態の治療、ならびにウイルス感染の予防および治療に有用であると考えられている。
【0059】
ブロモドメイン阻害剤は、リウマチ性関節炎、骨関節炎、急性痛風、乾癬、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)、ぜんそく、慢性閉塞性気道疾患、肺炎、心筋炎、心膜炎、筋炎、湿疹、皮膚炎、脱毛症、白斑、水疱性皮膚疾患、腎炎、血管炎、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、鬱病、網膜炎、ブドウ膜炎、強膜炎、肝炎、膵炎、原発性胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎、アジソン病、下垂体炎、甲状腺炎、I型糖尿病および移植器官の急性拒絶などの種々の慢性自己免疫病態および炎症病態の治療に有用であり得る。
【0060】
ブロモドメイン阻害剤は、急性痛風、巨細胞性動脈炎、ループス腎炎を含む腎炎、糸球体腎炎などの臓器病変を伴う血管炎、巨細胞性動脈炎を含む血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、結節性多発動脈炎、ベーチェット病、川崎病、高安動脈炎および移植器官の急性拒絶などの種々の急性炎症病態の治療に有用であり得る。
【0061】
ブロモドメイン阻害剤は、細菌、ウイルス、真菌、寄生生物またはそれらの毒素による感染に対する炎症反応を含む疾患または病態、例えば敗血症、敗血症症候群、敗血性ショック、内毒素血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、多臓器不全症候群、毒素性ショック症候群、急性肺損傷、ARDS(成人呼吸窮迫症候群)、急性腎不全、劇症肝炎、熱傷、急性膵炎、手術後症候群、サルコイドーシス、ヘルクスハイマー反応、脳炎、脊髄炎、髄膜炎、マラリア、インフルエンザなどのウイルス感染に関連するSIRS、帯状疱疹、単純ヘルペスおよびコロナウイルスの予防または治療に有用であり得る。
【0062】
ブロモドメイン阻害剤は、心筋梗塞、脳血管虚血(脳卒中)、急性冠症候群、腎臓再灌流障害、臓器移植、冠動脈バイパス移植、心臓−肺バイパス処置などの虚血−再灌流障害に関連する病態および肺、腎臓、肝臓、胃腸または末梢四肢塞栓症の予防または治療に有用であり得る。
【0063】
ブロモドメイン阻害剤は、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症およびアルツハイマー病などのAPO−A1の調節による脂質代謝の障害の治療に有用であり得る。
【0064】
ブロモドメイン阻害剤は、特発性肺線維症、腎線維症、術後狭窄、ケロイド形成、強皮症および心筋線維症などの線維性病態の治療に有用であり得る。
【0065】
ブロモドメイン阻害剤は、ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルスおよび他のDNAウイルスなどのウイルス感染の予防および治療に有用であり得る。
【0066】
ブロモドメイン阻害剤は、血液癌(例えば白血病)、肺癌、乳癌、結腸癌を含む上皮癌、正中線癌、間葉癌、肝臓腫瘍、腎腫瘍および神経学的腫瘍を含む癌の治療に有用であり得る。
【0067】
ブロモドメイン阻害剤は、ドライアイなどの眼科適応症の治療に有用であり得る。
【0068】
一実施形態において、ブロモドメイン阻害剤が適応される疾患または病態は、敗血症、熱傷、膵炎、大外傷、出血および虚血などの全身性炎症反応症候群に関連する疾患から選択される。この実施形態において、ブロモドメイン阻害剤は、SIRS、急性肺障害、ARDS、急性腎障害、肝障害、心外傷および胃腸障害の発症を含む、ショック状態、多臓器機能不全の発症の発生率および死亡率を減少させるために診断の時点で投与される。別の実施形態において、ブロモドメイン阻害剤は、高リスクの敗血症、出血、広範な組織損傷、SIRSまたはMODSに関連する外科手術または他の処置前に投与される。特定の実施形態において、ブロモドメイン阻害剤が適応される疾患または病態は、敗血症、敗血症症候群、敗血性ショックおよび/または内毒素血症である。別の実施形態において、ブロモドメイン阻害剤は、急性または慢性膵炎の治療に適応される。別の実施形態において、ブロモドメインは熱傷の治療に適応される。
【0069】
一実施形態において、ブロモドメイン阻害剤が適応される疾患または病態は、単純ヘルペス感染および再活性化、ヘルペス、帯状疱疹感染および再活性化、水痘、帯状疱疹、ヒトパピローマウイルス、子宮頸部新生物、急性呼吸器疾患を含むアデノウイルス感染、ならびに牛痘および天然痘およびアフリカブタコレラウイルスなどのポックスウイルス感染から選択される。1つの特定の実施形態において、ブロモドメイン阻害剤は、皮膚または子宮頸部上皮のヒトパピローマウイルス感染の治療に適応される。
【0070】
用語「ブロモドメイン阻害剤が適応される疾患または病態」は、上記の疾患状態のいずれかまたは全てを含むことを意図する。
【0071】
治療に使用するために、式(I)の化合物およびその医薬的に許容可能な塩はそのままの化学物質として投与され得ることも可能であるが、医薬組成物として活性成分が提供されることが一般的である。
【0072】
従って、本発明は、さらなる態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩と、1種以上の医薬的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤とを含んでなる、医薬組成物を提供する。
【0073】
このように、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩を含んでなる、ブロモドメイン阻害剤が適応される疾患または病態を治療するための医薬組成物が提供される。
【0074】
このような医薬組成物に使用される担体、希釈剤または賦形剤は、組成物の他の成分と適合性があり、その受容者に有害ではないという意味で許容可能でなければならない。本発明の別の態様によれば、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩と、1種以上の医薬的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤とを混合することを含んでなる、医薬組成物を調製するプロセスもまた提供される。医薬組成物は本明細書に記載される病態のいずれかを治療するのに使用され得る。
【0075】
式(I)の化合物およびその医薬的に許容可能な塩は医薬組成物に使用することを意図されるので、それらは各々好ましくは実質的に純粋な形態、例えば少なくとも60%の純度、より好適には少なくとも75%の純度、好ましくは少なくとも85%の純度、特に少なくとも98%の純度(重量ベースでの重量%)で提供されることは容易に理解されるだろう。
【0076】
医薬組成物は、単位投薬あたり所定量の活性成分を含有する単位投薬形態で提供され得る。好ましい単位投薬組成物は、活性成分の日用量またはサブ用量またはその適切な画分を含有するものである。従って、このような単位投薬は1日に1回より多く投与されてもよい。好ましい単位投薬組成物は、本明細書の上記に記載したように、(1日に1回より多く投与するための)活性成分の日用量またはサブ用量またはその適切な画分を含有するものである。
【0077】
医薬組成物は、任意の適切な経路、例えば経口(口腔または舌下を含む)、直腸、吸入、鼻腔内、局所(口腔、舌下または経皮を含む)、膣内または非経口(皮下、筋肉内、静脈内または皮内を含む)経路による投与に適合され得る。そのような組成物は、薬剤の分野において公知の任意の方法、例えば活性成分と担体または賦形剤とを混合することによって調製され得る。
【0078】
一実施形態において、医薬組成物は経口投与に適合される。
【0079】
一実施形態において、医薬組成物は非経口投与、特に静脈内投与に適合される。
【0080】
非経口投与に適合される医薬組成物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬および組成物を意図される受容者の血液と等張にする溶質を含有し得る水性および非水性滅菌注射液、ならびに懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液を含む。組成物は、単位投薬または複数回投薬容器、例えば密閉アンプルおよびバイアルに提供されてもよく、使用の直前に、滅菌液担体、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即座の注射溶液および懸濁剤が、滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製されてもよい。
【0081】
経口投与に適合される医薬組成物は、カプセル剤または錠剤、粉末または顆粒、水性または非水性液体中の溶剤または懸濁剤、食用泡状物またはホイップ、あるいは水中油液体エマルションまたは油中水液体エマルションなどの別個の単位として調製されてもよい。
【0082】
例えば、錠剤またはカプセル剤の形態の経口投与のために、活性薬物成分が、経口、非毒性の医薬的に許容可能な不活性担体、例えばエタノール、グリセロール、水などと混合されてもよい。錠剤またはカプセル剤に組み込むのに好適な粉末は、化合物を(例えば微粒子化により)好適な微細サイズに低減し、食用炭水化物(例えばデンプンまたはマンニトール)などの同様に調製した医薬担体と混合することによって調製され得る。矯味矯臭剤、防腐剤、分散剤および着色剤も存在してもよい。
【0083】
カプセル剤は、上記のように粉末混合物を調製し、形成したゼラチンシースを充填することによって作製され得る。コロイド状シリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは固体ポリエチレングリコールなどの流動促進剤および潤滑剤が、充填操作の前に粉末混合物に適合されてもよい。寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムなどの崩壊剤または可溶化剤もまた、カプセルが摂取される場合の薬剤の利用可能性を改良するために添加されてもよい。
【0084】
さらに、所望または必要な場合、好適な結合剤、流動促進剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、崩壊剤および着色剤もまた、混合物に組み込まれてもよい。好適な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、グルコースまたはβ−ラクトースなどの天然糖、コーンシロップ、アカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウムなどの天然および合成ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの投薬形態に使用される潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、限定されないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製すること、顆粒化または乾燥圧縮し(slugging)、潤滑剤および崩壊剤を錠剤内に添加すること、および圧入することによって処方される。粉末混合物は、好適に粉末状にした化合物と、上記のような希釈剤または基剤、任意に、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、またはポリビニルピロリドンなどの結合剤、パラフィンなどの溶液遅延剤、第四級塩などの吸収促進剤、および/またはベントナイト、カオリンもしくはリン酸二カルシウムなどの吸収剤とを混合することによって調製される。粉末混合物は、シロップ剤、デンプン糊、アラビアゴム粘液(acadia mucilage)またはセルロースもしくはポリマー材料の溶液などの結合剤で湿潤させて、それをふるいにかけて圧縮することによって顆粒化され得る。顆粒化の代わりとして、粉末混合物を打錠機に通し、不均一な形状の塊を与え、それを破砕して顆粒を形成することができる。錠剤成形型に粘着するのを防ぐために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、または鉱油を添加することによって、顆粒を潤滑させることができる。次いで潤滑した混合物を圧縮して錠剤を与える。本発明の化合物を、易流動性の不活性の担体と組合わせ、次いで直接圧縮して、粒状化または乾燥圧縮ステップを行わずに錠剤を与えることもできる。セラックシーリング層、糖またはポリマー材料の層、およびワックスの光沢層からなる透明または不透明な保護層が存在してよい。異なる投薬単位を区別できるようにするために、これらのコーティングに色素を添加することができる。
【0085】
例えば、溶剤、シロップ剤、およびエリキシル剤などの経口用液剤は、所与の量が、予め指定された量の化合物を含むように、投薬単位形態で調製することができる。シロップ剤は、化合物を適切な風味を有する水溶液中に溶解させることによって調製することができ、エリキシル剤は、非毒性のアルコールビヒクルを使用して調製される。懸濁液は、化合物を非毒性のビヒクル中に分散させることによって製剤化することができる。例えば、エトキシ化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテルなどの可溶化剤および乳剤、保存剤、例えばペパーミント油または天然甘味剤もしくはサッカリンなどの香味添加剤、あるいは他の人口甘味剤等も同様に添加することができる。
【0086】
経口投与用の投薬単位組成物は、所望によりマイクロカプセル中に封入することができる。製剤は、例えばポリマー、ワックスなどで粒状材料をコーティングするまたは埋め込むことによって、放出を延長または遅延させるようにするやり方で調製することもできる。
【0087】
式(I)の化合物およびその医薬的に許容可能な塩はまた、例えば、小型単層小胞、大型単層小胞、および多重膜小胞などのリポソーム送達系の形態で投与することもできる。リポソームは、例えば、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から形成することができる。
【0088】
局所投与に適合する医薬組成物は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル、または油として製剤化することができる。
【0089】
目、または他の外組織、例えば口および皮膚などの治療では、組成物は好ましくは局所用軟膏またはクリームとして塗布される。軟膏を与える製剤の場合、活性成分はパラフィン系または水混和性クリームベースと共に使用することができる。あるいは、活性成分は、水中油クリームベースまたは油中水ベースのクリームと共に与えるように製剤化することもできる。
【0090】
目の局所塗布に適合する医薬組成物には、活性成分が適切な担体、特に水性溶媒に溶解または懸濁した点眼剤が含まれる。
【0091】
鼻腔または吸入投与のための投薬形態は簡便にはエアロゾル、溶液、懸濁剤、ゲルまたは乾燥粉末として製剤化され得る。
【0092】
吸入投与に好適および/または適合する組成物に関して、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩は、例えば微粒子化によって得た、粒径が低減した形態で存在することが好ましい。サイズが低減した(例えば微粒子化した)化合物または塩の好ましい粒径は、(例えばレーザー回折を用いて測定した場合)約0.5〜約10ミクロンのD50値により規定される。
【0093】
例えば吸入投与のためのエアロゾル製剤は、医薬的に許容可能な水性または非水性溶媒中に活性物質の溶液または微細懸濁液を含んでもよい。エアロゾル製剤は、カートリッジの形態をとり得るかまたは使用するために噴霧装置もしくは吸入器に充填される、密閉容器内の滅菌形態で単回または複数回用量で提供されてもよい。あるいは、密閉容器は、単回用量の、容器の内容物が使い尽くされると処分されることを意図する絞り弁が装着されている鼻吸入器またはエアロゾルディスペンサー(例えば計量式吸入器)などの単一の調剤装置であってもよい。
【0094】
投薬形態がエアロゾルディスペンサーを含む場合、それは好ましくは、圧縮空気、二酸化炭素などの圧力下で好適な推進剤、またはヒドロフルオロカーボン(HFC)などの有機推進剤を含有する。好適なHFC推進剤としては、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンおよび1,1,1,2−テトラフルオロエタンが挙げられる。エアロゾル投薬形態はまた、ポンプ噴霧器の形態をとってもよい。加圧エアロゾルは、活性化合物の溶液または懸濁液を含有してもよい。これは、追加の賦形剤、例えば懸濁化製剤の分散特性および均一性を改良するために共溶媒および/または界面活性剤の組み込みを必要としてもよい。溶液製剤はまた、エタノールなどの共溶媒の添加を必要としてもよい。
【0095】
吸入投与に好適および/または適合する医薬組成物に関して、その医薬組成物は吸入可能な乾燥粉末組成物であってもよい。そのような組成物は、ラクトース、グルコース、トレハロース、マンニトールまたはデンプンなどの粉末基剤、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩(好ましくは粒径が低減した形態、例えば微粒子形態)と、任意にL−ロイシンもしくは別のアミノ酸および/またはステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸の金属塩などの性能修飾剤を含んでもよい。好ましくは、吸入可能な乾燥粉末組成物は、ラクトース、例えばラクトース一水和物と、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩との乾燥粉末混合物を含む。そのような組成物は、例えば英国特許第2242134A号明細書に記載されているGlaxoSmithKlineによって市販されているDISKUS(登録商標)装置などの適切な装置を用いて患者に投与されてもよい。
【0096】
式(I)の化合物およびその医薬的に許容可能な塩は、流体ディスペンサー、例えば分配ノズルまたは分配オリフィスを有する流体ディスペンサーから送達するための流体製剤として製剤化され得、使用者が流体ディスペンサーのポンプ機構に付与した力の適用時に、その分配ノズルまたは分配オリフィスを通して定量の流体製剤が分配される。このような流体ディスペンサーには一般に定量される複数回用量の流体製剤のリザーバーが設けられ、順次ポンプが作動する時に、その用量が分配可能になる。分配ノズルまたはオリフィスは、流体製剤を鼻腔内に噴霧分配するために使用者の鼻孔に挿入するように構成され得る。上述の種類の流体ディスペンサーは国際公開第2005/044354A1号に記載され、例示されている。
【0097】
治療有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩は、例えば、動物の年齢および体重、治療を必要とする正確な病態およびその重症度、製剤の性質、ならびに投与経路を含む、多くの要因に依存し、最終的に担当医または獣医の判断による。医薬組成物において、経口または非経口投与のための各投薬単位は、遊離塩基として算出して、好ましくは0.01〜3000mg、より好ましくは0.5〜1000mgの式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩を含む。鼻腔または吸入投与のための各投薬単位は、遊離塩基として算出して、好ましくは0.001〜50mg、より好ましくは0.01〜5mgの式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩を含む。
【0098】
式(I)の化合物およびその医薬的に許容可能な塩は、(成人患者について)例えば遊離塩基として算出して、0.01mg〜3000mg/日または0.5〜1000mg/日の式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩の経口または非経口用量で、あるいは0.001〜50mg/日または0.01〜5mg/日の式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩の鼻腔または吸入用量で1日に1回投与されてもよい。この量は、1日に1回与えられてもよく、またはより通常は、1日あたりサブ用量の回数(2回、3回、4回、5回または6回など)で与えられてもよく、それにより全日用量は同じとなる。有効量のその医薬的に許容可能な塩は、有効量の式(I)の化合物自体の割合として決定されてもよい。
【0099】
このように、a)0.01〜3000mgの式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩、および(b)0.1〜2gの1種以上の医薬的に許容可能な担体、希釈剤および/または賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0100】
式(I)の化合物およびその医薬的に許容可能な塩は、単独で、または他の治療剤と組合わされて利用され得る。このように本発明による組合せ治療は、少なくとも1つの式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩の投与、および少なくとも1種の他の医薬的に活性な薬剤の使用を含む。好ましくは、本発明による組合せ治療は、少なくとも1つの式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩と、少なくとも1種の他の医薬的に活性な薬剤との投与を含む。式(I)の化合物およびその医薬的に許容可能な塩と、他の医薬的に活性な薬剤は、単一の医薬組成物中で一緒に投与されてもよく、または別個に投与されてもよく、別個に投与される場合、これは同時または任意の順序で連続して行われてもよい。式(I)の化合物およびその医薬的に許容可能な塩と、他の医薬的に活性な薬剤の量、ならびに投与の相対的タイミングは所望の組合わせた治療効果を達成するために選択される。このように、さらなる態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩と、少なくとも1種の他の医薬的に活性な薬剤とを含む組合せが提供される。一実施形態において、1種以上の他の治療活性剤と一緒に式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩を含む組合せ医薬品が提供される。
【0101】
このように、一態様において、本発明による式(I)の化合物および医薬組成物は、例えば、抗生物質、抗ウイルス、糖質コルチコステロイド、ムスカリン性アンタゴニストおよびβ−2アゴニストから選択される1種以上の他の治療剤と組み合わせて、またはそれらを含んで使用され得る。
【0102】
式(I)の化合物およびその医薬的に許容可能な塩が、通常、吸入、静脈内、経口または鼻腔内経路によって投与される他の治療剤と組合わされて投与される場合、得られる医薬組成物は同じ経路によって投与され得ることは理解されるだろう。代替として、組成物の個々の成分は異なる経路によって投与されてもよい。
【0103】
本発明の一実施形態は、1種または2種の他の治療剤を含む組合せを含む。
【0104】
必要に応じて、治療成分の活性および/または安定性および/または物理特性(例えば溶解度)を最適化するために、他の治療成分が、塩の形態で、例えばアルカリ金属もしくはアミン塩としてまたは酸付加塩として、またはプロドラッグ、またはエステル、例えば低級アルキルエステルとして、または溶媒和物、例えば水和物として使用されてもよいことは、当業者にとって自明であろう。また、必要に応じて、光学的に純粋な形態で治療成分が使用されてもよいことも自明であろう。
【0105】
上記に参照した組合せは、医薬組成物の形態で使用するために簡便に提供され得るので、医薬的に許容可能な希釈剤または担体と共に上記の組合せを含む医薬組成物は本発明のさらなる態様を表す。
【0106】
式(I)の化合物は以下に記載する方法または同様の方法によって調製され得る。従って、以下の中間体および実施例は式(I)の化合物の調製を例示するためのものであり、決して本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【実施例】
【0107】
全体的な実験の詳細
全ての温度は℃で表す。
【0108】
略語
TLC 薄層クロマトグラフィー
AcOH 酢酸
AcCl 塩化アセチル
PPTS p−トルエンスルホン酸ピリジニウム
DCM ジクロロメタン
1,2−DCE 1,2−ジクロロエタン
DIC ジイソプロピルカルボジイミド
DIEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMAP 4−ジメチルアミノピリジン
Fmoc 9H−フルオレン−9−イルメチル)オキシ]カルボニル
HATU O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HBTU O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
EtO ジエチルエーテル
EtOAc 酢酸エチル
i−PrO ジ−イソプロピルエーテル
Config. 絶対配置
ローソン試薬 2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチア−2,4−ジホスフェタン−2,4−ジスルフィド
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
Rt 保持時間
THF テトラヒドロフラン
RT 室温
Pd/C パラジウム炭素
LC/MSは、2種類の装置で実施した分析用HPLCによる分析を指す:
a)Supelcosil LCABZ+PLUSカラム(3μm、3.3cm×4.6mm ID)では、0.1%HCOHおよび0.01M酢酸アンモニウム水溶液(溶媒A)、ならびに95%アセトニトリルおよび0.05%HCOH水溶液(溶媒B)で、3mL/分の流速で以下の溶出勾配0〜0.7分 0%B、0.7〜4.2分 0→100%B、4.2〜5.3分 100%B、5.3〜5.5分 100→0%Bを用いて溶出する。質量スペクトル(MS)を、エレクトロスプレー陽イオン化[([M+H]および[M+NH分子イオンを得るためにES+ve]またはエレクトロスプレー陰イオン化[([M−H]分子イオンを得るためにES−ve]モードを用いてFisons VG Platform質量分析計で記録した。この装置からの分析データを以下のフォーマット:[M+H]または[M−H]で与える。
【0109】
b)Chromolith Performance RP18カラム(100×4.6mm id)では、0.01M酢酸アンモニウム水溶液(溶媒A)および100%アセトニトリル(溶媒B)で、5mL/分の流速で以下の溶出勾配0〜4分 0→100%B、4〜5分 100%Bを用いて溶出する。質量スペクトル(MS)を、大気圧化学陽イオン化[MH分子イオンを得るためにAP+ve]または大気圧化学陰イオン化[(M−H)分子イオンを得るためにAP−ve]モードを用いてmicromass Platform−LC質量分析計で記録した。この装置からの分析データを、両方の質量分析源の間で特定するために先行してアクロニムAPCIを行い、以下のフォーマット:[M+H]または[M−H]で与える。
【0110】
LC/HRMS:分析用HPLCを、Uptisphere−hscカラム(3μm 33×3mm id)で、0.01M酢酸アンモニウム水溶液(溶媒A)および100%アセトニトリル(溶媒B)を用いて1.3mL/分の流速で以下の溶出勾配0〜0.5分 5%B、0.5〜3.75分 5→100%B、3.75〜4.5 100%B、4.5〜5 100→5%B、5〜5.5 5%Bにて溶出して行った。質量スペクトル(MS)を、エレクトロスプレー陽イオン化[MH分子イオンを得るためにES+ve]またはエレクトロスプレー陰イオン化[(M−H)分子イオンを得るためにES−ve]モードを用いてmicromass LCT質量分析計で記録した。
【0111】
マスディレクテッドオートプレプ(mass directed auto−prep)HPLCは、物質が、8mL/分の流速で以下の勾配溶出条件:0〜1.0分 5%B、1.0〜8.0分 5→30%B、8.0〜8.9分 30%B、8.9〜9.0分 30→95%B、9.0〜9.9分 95%B、9.9〜10分 95→0%Bを利用する、0.1%HCOH水溶液および95%MeCN、5%水(0.5% HCOH)を用いるHPLCABZ+5μmカラム(5cm×10mm i.d.)上での高速液体クロマトグラフィーによって精製される方法を指す。Gilson 202画分回収器を、対象の質量を検出する時にVG Platform質量分析計で起動した。
【0112】
プロトンNMRH NMR)スペクトルを、内部標準として溶媒を用いてBruker Avance 300 DPX分光計で周囲温度にて記録し、プロトン化学シフトを所定の溶媒においてppmで表す。以下の略語を複数のNMRシグナル:s=一重項、d=二重項、t=三重項、q=四重項、dd=双二重項(double doublet)、m=多重項で使用する。
【0113】
TLC(薄層クロマトグラフィー)は、シリカゲル60 F254でコーティングしたMerckにより販売されているTLCプレートの使用を指す。
【0114】
実施例1:2−[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]−N−エチルアセトアミド
【化13】

【0115】
室温にて、THF中の[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]酢酸(調製については、中間体1を参照)(16.0g、40mmol)の溶液に、DIEA(14mL、80mmol)、その後、HATU(30.4g、80mmol)を加えた。反応混合物を、3時間、この温度にて攪拌し、エチルアミン(40mL、THF中2M、80mmol)を加えた。減圧下で濃縮させる前に、混合物を48時間、攪拌した。粗物質を、水中で懸濁し、DCMで抽出した。有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。粗固体を、SiOでのクロマトグラフィー(DCM/MeOH95/5)によって精製し、得られた固体をMeCN中で再結晶化した。固体を次いでDCM中に溶解し、i−PrOで沈殿させ、標題化合物(8g、47%の収率)を白色の固体として得た。
【0116】
=0.48(DCM/MeOH:90/10)。Mp>140°C(粘着性となる)。H NMR(300MHz,CDCl)δ7.53−7.47(m,2H),7.39(d,J=8.9Hz,1H),7.37−7.31(m,2H),7.20(dd,J=2.9and8.9Hz,1H),6.86(d,J=2.9Hz,1H),6.40(m,1H),4.62(m,1H),3.80(s,3H),3.51(dd,J=7.3および14.1Hz,1H),3.46−3.21(m,3H),2.62(s,3H),1.19(t,J=7.3Hz,3H).LC/MS:m/z424[M(35Cl)+H],Rt2.33min。
【0117】
中間体1:[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]酢酸
【化14】

【0118】
室温にて、THF(450mL)中のメチル[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]アセテート(調製については、中間体2を参照)(28g、68mmol)の溶液に、1NのNaOH(136mL、136mmol)を加えた。反応混合物を、冷却する前に、5時間、この温度で攪拌し、1NのHCl(136mL)でクエンチした。THFを減圧下で取り除き、水層をDCMで抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。粗固体を、CHCN中で再結晶化し、標題化合物(23.9g、89%の収率)を淡黄色の粉末として得た。H NMR(300MHz,CDCl)δ7.55−7.48(m,2H),7.41(d,J=8.9Hz,1H),7.38−7.31(m,2H),7.22(dd,J=2.9and8.9Hz,1H),6.90(d,J=2.9Hz,1H),4.59(dd,J=6.9and6.9Hz,1H),3.81(s,3H),3.70(dd,J=6.9and25.7Hz,1H),3.61(dd,J=6.9and25.7Hz,1H),2.63(s,3H).LC/MS:m/z397[M(35Cl)+H],Rt2.11min。
【0119】
中間体2:メチル[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]アセテート
【化15】

【0120】
クルードのメチル[(3S)−2−[(1Z)−2−アセチルヒドラジノ]−5−(4−クロロフェニル)−7−(メチルオキシ)−3H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル]アセテート(調製については、中間体3を参照)(34g、79mmol)を、THF(200mL)中に懸濁し、AcOH(200mL)を室温にて加えた。反応混合物を濃縮乾固する前に、この温度で一晩攪拌した。残渣を飽和NaHCO中に懸濁し、DCMで抽出した。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。粗固体をSiOでのクロマトグラフィー(DCM/MeOH:90/10)によって精製し、標題化合物(28g、86%の収率)を黄色の粉末として得た。
【0121】
H NMR(300MHz,CDCl)δ7.54−7.47(m,2H),7.40(d,J=8.8Hz,1H),7.37−7.31(m,2H),7.22(dd,J=2.8and8.8Hz,1H),6.89(d,J=2.8Hz,1H),4.61(dd,J=6.4and7.8Hz,1H),3.82(s,3H),3.78(s,3H),3.66(dd,J=7.8and16.9Hz,1H),3.60(dd,J=6.4and16.9Hz,1H),2.62(s,3H).LC/MSm/z411[M(35Cl)+H],Rt2.88min。
【0122】
中間体3:メチル[(3S)−2−[2−アセチルヒドラジノ]−5−(4−クロロフェニル)−7−(メチルオキシ)−3H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル]アセテート
【化16】

【0123】
0℃にてTHF(800mL)中のメチル[(3S)−5−(4−クロロフェニル)−7−(メチルオキシ)−2−チオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル]アセテート(調製については、中間体4を参照)(30.2g、77.7mmol)の懸濁液に、ヒドラジン一水和物(11.3mL、233mmol)を滴下して加えた。反応混合物を、0℃に冷却する前に、4時間、0℃から15℃の間で攪拌した。EtN(32.4mL、230mmol)を次いでゆっくりと加え、AcCl(16.3mL、230mmol)を滴下して加えた。混合物を室温まで加温し、1時間攪拌し、次いで、水でクエンチし、減圧下で濃縮した。得られた水層を次いでDCMで抽出し、有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、粗標題化合物(34g、100%の収率)を得て、それをさらに精製せずに用いた。LC/MS:m/z 429[M(35Cl)+H],Rt2.83min。
【0124】
中間体4:メチル[(3S)−5−(4−クロロフェニル)−7−(メチルオキシ)−2−チオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル]アセテート
【化17】

【0125】
室温にて、1,2−DCE(1.5L)中のP10(85.8g、190mmol)およびNaCO(20.5g、190mmol)の懸濁液を、メチル[(3S)−5−(4−クロロフェニル)−7−(メチルオキシ)−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル]アセテート(調製については、中間体5を参照)(40g、107mmol)を加える前に、1時間、攪拌した。得られた混合物を、冷却し濾過する前に、4時間、65℃で攪拌した。固体を、DCMで洗浄し、濾過物を飽和NaHCOで洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。標題化合物を、DCM/i−PrOの混合物から沈殿させ、濾過した。濾過物を次いで、濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOH:98/2)により精製し、別のバッチの生成物を得た。2つの画分を合わせて標題化合物(30.2g、73%)を黄色の粉末として得た。LC/MS:m/z 389[M(35Cl)+H],Rt3.29min。
【0126】
中間体5:メチル[(3S)−5−(4−クロロフェニル)−7−(メチルオキシ)−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル]アセテート
【化18】

【0127】
DCM(500mL)中のクルードのメチルN−[2−[(4−クロロフェニル)カルボニル]−4−(メチルオキシ)フェニル]−N−{[(9H−フルオレン−9−イルメチル)オキシ]カルボニル}−L−α−アスパラギネート(asparaginate)(調製については、中間体6を参照)(推定0.2mol)の溶液に、EtN(500mL、3.65mol)を加え、得られた混合物を、濃縮する前に24時間、還流した。得られたクルードのアミンを1,2−DCE(1.5L)中に溶解し、AcOH(104mL、1.8mol)を注意して加えた。次いで反応混合物を、真空中で濃縮する前に、2時間、60℃で攪拌し、DCM中に溶解した。有機層を1NのHClで洗浄し、水層をDCM(×3)で抽出した。合わせた有機層を2度、水および食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。粗固体を、MeCN中で再結晶化し、標題化合物(51g)を淡黄色の固体として得た。濾過物を濃縮し、MeCN中で再結晶化し、別の10gの中間体9を得た(全体:回収した中間体12に基づき61g、69%の収率)。R=0.34(DCM/MeOH:95/5)。LC/MS m/z 373[M(35Cl)+H],Rt2.76min。
【0128】
中間体6:メチルN−[2−[(4−クロロフェニル)カルボニル]−4−(メチルオキシ)フェニル]−N−{[(9H−フルオレン−9−イルメチル)オキシ]カルボニル}−L−α−アスパラギネート
【化19】

【0129】
CHCl(410mL)中のメチルN−{[(9H−フルオレン−9−イルメチル)オキシ]カルボニル}−L−α−アスパルチルクロリド(J.Org.Chem.1990,55,3068−3074およびJ.Chem.Soc.Perkin Trans.1 2001,1673−1695から調製)(221g、0.57mol)および[2−アミノ−5−(メチルオキシ)フェニル](4−クロロフェニル)メタノン(調製については、中間体7を参照)(133g、0.5mol)の混合物を、冷却する前に、1.5時間、60℃で攪拌し、減圧下で濃縮し、さらに精製せずに用いた。LC/MS:m/z 613[M(35Cl)+H],Rt=3.89min。
【0130】
中間体7:[2−アミノ−5−(メチルオキシ)フェニル](4−クロロフェニル)メタノン
【化20】

【0131】
0℃にて、トルエン(560mL)/エーテル(200mL)混合物中の2−メチル−6−(メチルオキシ)−4H−3,1−ベンゾオキサジノン−4−オン(調製については、中間体8を参照)(40.0g、0.21mol)の溶液に、4−クロロフェニル臭化マグネシウム(170mL、EtO中1M、0.17mol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を室温まで加温し、1NのHClでクエンチする前に、1時間、攪拌した。水層をEtOAc(3×)で抽出し、合わせた有機物を食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。粗化合物を次いで、EtOH(400mL)に溶解し、6NのHCl(160mL)を加えた。反応混合物を、減圧下で濃縮する前に、2時間、還流した。得られた固体を濾過し、EtOAcに懸濁する前に、エーテルで2度、洗浄し、1NのNaOHで中和した。水層を、EtOAc(3×)で抽出し、合わせた有機物を、食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。標題化合物を、黄色の固体(39g、88%の収率)として得て、さらに精製せずに用いた。
【0132】
中間体8:2−メチル−6−(メチルオキシ)−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン
【化21】

【0133】
5−メトキシアントラニル酸(7.8g、46.5mmol)の溶液を、冷却する前に、2時間15分、無水酢酸(60mL)中で還流し、減圧下で濃縮した。粗残渣を次いで、濾過する前に、トルエンの存在下で2度、濃縮し、エーテルで洗浄し、標題化合物(6.8g、77%の収率)をベージュ色の固体として得た;LC/MS:m/z 192[M+H],Rt1.69min。
【0134】
生物検定法において使用するための基準化合物の調製
本明細書において参照されるLC−MS法AおよびBの実験詳細は以下の通りである:
LC/MS(方法A)は、Supelcosil LCABZ+PLUSカラム(3μm、3.3cm×4.6mm ID)で、0.1% HCOHおよび0.01M酢酸アンモニウム水溶液(溶媒A)、ならびに95%アセトニトリルおよび0.05%HCOH水溶液(溶媒B)を用いて、3mL/分の流速で以下の溶出勾配0〜0.7分 0%B、0.7〜4.2分 0→100%B、4.2〜5.3分 100%B、5.3〜5.5分 100→0%Bを用いて溶出する実施した。質量スペクトル(MS)を、エレクトロスプレー陽イオン化[([M+H]および[M+NH分子イオンを得るためにES+ve]またはエレクトロスプレー陰イオン化[([M−H]分子イオンを得るためにES−ve]モードを用いてFisons VG Platform質量分析計で記録した。この装置からの分析データは以下のフォーマット:[M+H]または[M−H]で与える。
【0135】
LC/MS(方法B)は、Sunfire C18カラム(30mm×4.6mm i.d.3.5μmパッキング直径)で、0.1%v/vトリフルオロ酢酸水溶液(溶媒A)および0.1%v/vトリフルオロ酢酸のアセトニトリル溶液(溶媒B)を用いて、3ml/分の流速で以下の溶出勾配0〜0.1分 3%B、0.1〜4.2分 3〜100%B、4.2〜4.8分 100%B、4.8〜4.9分 100〜3%B、4.9〜5.0分 3%Bを用いて30℃で溶出を実施した。UV検出は210nm〜350nmの波長から平均化したシグナルであり、質量スペクトルを、陽イオンエレクトロスプレーイオン化を用いて質量分析計で記録した。イオン化データは整数まで四捨五入した。
【0136】
LC/HRMS:分析用HPLCを、Uptisphere−hscカラム(3μm 33×3mm id)で、0.01M酢酸アンモニウム水溶液(溶媒A)および100%アセトニトリル(溶媒B)を用いて、1.3mL/分の流速で以下の溶出勾配0〜0.5分 5%B、0.5〜3.75分 5→100%B、3.75〜4.5 100%B、4.5〜5 100→5% B、5〜5.5 5%Bを用いて溶出を実施した。質量スペクトル(MS)を、エレクトロスプレー陽イオン化[MH分子イオンを得るためにES+ve]またはエレクトロスプレー陰イオン化[(M−H)分子イオンを得るためにES−ve]モードを用いて、micromass LCT質量分析計で記録した。
【0137】
TLC(薄層クロマトグラフィー)は、シリカゲル60F254でコーティングしたMerckによって販売されているTLCプレートの使用を指す。
【0138】
シリカクロマトグラフィー技術は、自動化(FlashmasterまたはBiotage SP4)技術または予め充填したカートリッジ(SPE)での手動クロマトグラフィーまたは手動で充填したフラッシュカラムのいずれかを含む。
【0139】
基準化合物A:2−メチル−6−(メチルオキシ)−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン
【化22】

【0140】
5−メトキシアントラニル酸(ランカスター(Lancaster))(41.8g、0.25mol)の溶液を、減圧下で濃縮する前に、3.5時間、無水酢酸(230mL)中で還流した。粗化合物を、次いで、濾過する前に、トルエンの存在下で2回濃縮し、エーテルで2度洗浄し、標題化合物(33.7g、71%の収率)を茶色の固体として得た。LC/MS(方法A):m/z 192[M+H],Rt1.69min。
【0141】
基準化合物B:[2−アミノ−5−(メチルオキシ)フェニル](4−クロロフェニル)メタノン
【化23】

【0142】
0℃にて、トルエン/エーテル(2/1)混合物(760mL)中の2−メチル−6−(メチルオキシ)−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン(調製については、基準化合物Aを参照)(40.0g、0.21mol)の溶液に、4−クロロフェニル臭化マグネシウム(170mL、EtO中1M、0.17mol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を、室温まで加温し、1NのHCl(200mL)でクエンチする前に1時間、攪拌した。水層をEtOAc(3×150mL)で抽出し、合わせた有機物を食塩水(100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。次いで粗化合物を、EtOH(400mL)に溶解し、6NのHCl(160mL)を加えた。反応混合物を、1/3の体積に濃縮する前に、2時間、還流した。得られた固体を濾過し、EtOAc中で懸濁する前に、エーテルで2度洗浄し、1NのNaOHで中和した。水層を、EtOAc(3×150mL)で抽出し、合わせた有機物を食塩水(150mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。標題化合物を黄色の固体(39g、88%の収率)として得た。LC/MS(方法A):m/z 262[M+H]+,Rt2.57min。
【0143】
基準化合物C:メチルN−[2−[(4−クロロフェニル)カルボニル]−4−(メチルオキシ)フェニル]−N−{[(9H−フルオレン−9−イルメチル)オキシ]カルボニル}−L−α−アスパラギネート
【化24】

【0144】
メチルN−{[(9H−フルオレン−9−イルメチル)オキシ]カルボニル}−L−α−アスパルチルクロリド(Int.J.Peptide Protein Res.1992,40,13−18)(93g、0.24mol)をCHCl(270mL)に溶解し、[2−アミノ−5−(メチルオキシ)フェニル](4−クロロフェニル)メタノン(調製については、基準化合物Bを参照)(53g、0.2mol)を加えた。得られた混合物を、冷却する前に、1時間、60℃で攪拌し、60%の体積に濃縮した。エーテルを0℃で加え、得られた沈殿物を濾過し、取り除いた。濾過物を減圧下で濃縮し、さらに精製せずに用いた。
【0145】
基準化合物D:メチル[(3S)−5−(4−クロロフェニル)−7−(メチルオキシ)−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル]アセテート
【化25】

【0146】
DCM(500mL)中のメチルN1−[2−[(4−クロロフェニル)カルボニル]−4−(メチルオキシ)フェニル]−N2−{[(9H−フルオレン−9−イルメチル)オキシ]カルボニル}−L−α−アスパラギネート(調製については、基準化合物Cを参照)(推定0.2mol)の溶液に、EtN(500mL、3.65mol)を加え、得られた混合物を、濃縮する前に24時間、還流した。得られたクルードのアミンを、1,2−DCE(1.5L)に溶解し、AcOH(104mL、1.8mol)を注意して加えた。反応混合物を、次いで、真空中で濃縮する前に、2時間、60℃で攪拌し、DCMに溶解した。有機層を、1NのHClで洗浄し、水層をDCM(×3)で抽出した。合わせた有機層を水および食塩水で2度洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。粗固体を、MeCN中で再結晶化し、標題化合物(51g)を淡黄色の固体として得た。濾過物を濃縮し、MeCN中で再結晶化し、別の10gの所望の生成物を得た。R=0.34(DCM/MeOH:95/5)。
【0147】
HRMS(M+H)191835ClNについての計算値373.0955;実測値373.0957。
【0148】
基準化合物E:メチル[(3S)−5−(4−クロロフェニル)−7−(メチルオキシ)−2−チオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル]アセテート
【化26】

【0149】
室温にて、1,2−DCE(700mL)中のP10(36.1g、81.1mmol)およびNaCO(8.6g、81.1mmol)の懸濁液を、メチル[(3S)−5−(4−クロロフェニル)−7−(メチルオキシ)−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル]アセテート(調製については、基準化合物Dを参照)(16.8g、45.1mmol)を加える前に、2時間、攪拌した。得られた混合物を、冷却し、濾過する前に、2時間、70℃で攪拌した。固体を、DCMで2度洗浄し、濾過物を、飽和NaHCOおよび食塩水で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOH:99/1)によって精製し、標題化合物(17.2g、98%の収率)を、黄色がかった固体として得た。LC/MS(方法A):m/z 389[M(35Cl)+H],Rt2.64min。
【0150】
HRMS(M+H)191835ClNSについての計算値389.0727;実測値389.0714。
【0151】
基準化合物F:メチル[(3S)−2−[2−アセチルヒドラジノ]−5−(4−クロロフェニル)−7−(メチルオキシ)−3H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル]アセテート
【化27】

【0152】
0℃にて、THF(300mL)中のメチル[(3S)−5−(4−クロロフェニル)−7−(メチルオキシ)−2−チオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル]アセテート(調製については、基準化合物Eを参照)(9.0g、23.2mmol)の懸濁液に、ヒドラジン一水和物(3.4mL、69.6mmol)を滴下して加えた。反応混合物を、0℃で冷却する前に、5℃から15℃の間で5時間攪拌した。次いでEtN(9.7m、69.6mmol)をゆっくりと加え、塩化アセチル(7.95mL、69.6mmol)を滴下して加えた。次いで混合物を、減圧下で濃縮する前に、16時間、室温まで加温した。粗生成物をDCMに溶解し、水で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮し、粗標題化合物(9.7g、98%の収率)を得て、それをさらに精製せずに用いた。R=0.49(DCM/MeOH:90/10)。
【0153】
基準化合物G:メチル[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]アセテート
【化28】

【0154】
クルードのメチル[(3S)−2−[(1Z)−2−アセチルヒドラジノ]−5−(4−クロロフェニル)−7−(メチルオキシ)−3H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル]アセテート(調製については、基準化合物Fを参照)(推定9.7g)を、THF(100ml)に懸濁し、AcOH(60mL)を室温で加えた。反応混合物を、減圧下で濃縮する前に、2日間、この温度にて攪拌した。粗固体を、i−PrO中で粉砕し、濾過し、標題化合物(3工程に渡って8.7g、91%)をオフホワイト色の固体として得た。
【0155】
HRMS(M+H)2120ClNについての計算値411.1229;実測値411.1245。
【0156】
基準化合物H:[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]酢酸
【化29】

【0157】
室温にて、THF(130mL)中のメチル[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]アセテート(調製については、基準化合物Gを参照)(7.4g、18.1mmol)の溶液に、1NのNaOH(36.2mL、36.2mmol)を加えた。反応混合物を、1NのHCl(36.2mL)でクエンチする前に、5時間、この温度で攪拌し、真空中で濃縮した。次いで水を加え、水層をDCM(×3)で抽出し、合わせた有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮し、標題化合物(7g、98%の収率)を淡黄色の固体として得た。
【0158】
基準化合物I:1,1−ジメチルエチル[5−({[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]アセチル}アミノ)ペンチル]カルバメート
【化30】

【0159】
[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]酢酸(調製については、基準化合物Hを参照)(1.0g、2.5mmol)、HATU(1.9g、5mmol)およびDIPEA(0.88ml、5mmol)の混合物を、室温で80分間攪拌し、これに、1,1−ジメチルエチル(4−アミノブチル)カルバメート(1.05ml、5.0mmol、Aldrichから市販されている)を加えた。反応混合物を、濃縮する前に、2時間、室温で攪拌した。残渣をジクロロメタン中に取り、1NのHClで洗浄した。水層をジクロロメタンで2度抽出した。有機層を、1Nの水酸化ナトリウムで洗浄し、その後、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣を、ジクロロメタン/メタノール(95/5)を用いて、シリカでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、標題化合物を、黄色の固体(1.2g)として得た。LC/MS(方法A):rt=3.04min。
【0160】
基準化合物J:N−(5−アミノペンチル)−2−[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]アセトアミドトリフルオロアセテート
【化31】

【0161】
ジクロロメタン(3ml)中の1,1−ジメチルエチル[5−({[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]アセチル}アミノ)ペンチル]カルバメート(調製については、基準化合物Hを参照)(0.2g、0.34mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(0.053m、0.68mmol)を0℃で滴下して加えた。反応混合物を、3時間、0℃から室温で攪拌した。反応混合物を濃縮乾固し、標題化合物を吸湿性の黄色の油(200mg)として得た。
【0162】
LC/MS(方法A):rt=2.33min。
【0163】
HRMS(M+H)2529ClNについての計算値481.2119;実測値481.2162。
【0164】
基準化合物K:Alexa Fluor 488−N−(5−アミノペンチル)−2−[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]アセトアミドの5−および6−異性体の混合物
【化32】

【0165】
N−(5−アミノペンチル)−2−[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]アセトアミドトリフルオロアセテート(調製については、基準化合物Jを参照)(7.65mg、0.013mmol)を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(300μl)に溶解し、エッペンドルフ遠心チューブ中のAlexa Fluor 488 カルボン酸スクシンイミジルエステル(5mg、7.77μmol、Invitrogenから市販の5および6の異性体の混合物、製造番号A−20100)に加えた。ヒューニッヒ塩基(7.0μl、0.040mmol)を加え、混合物を一晩、ボルテックスで混合した。18時間後、反応混合物を蒸発乾固し、残渣をDMSO/水(50%、<1ml合計)に再溶解し、分取Phenomenex Jupiter C18カラムに付与して、10ml/分の流速で150分に渡って95%A:5%Bから100%B(A=0.1%の水中のトリフルオロ酢酸、B=0.1%TFA/90%アセトニトリル/10%水)の勾配で溶出した。同じ系を用いて、不純物画分を合わせて、再精製した。画分を合わせ、蒸発させ、標題生成物(2.8mg)を、示した2つの位置異性体の混合物として得た。LC/MS(方法B):,MH+=999,rt=1.88min。
【0166】
生物学的試験方法
蛍光異方性結合アッセイ
ブロモドメイン2、3および4に対する式(I)の化合物の結合を、蛍光異方性結合アッセイを用いて評価した。
【0167】
ブロモドメインタンパク質、蛍光リガンド(上記の基準化合物Kを参照)および種々の試験化合物を一緒にインキュベートして、試験化合物の非存在下で蛍光リガンドが有意に(>50%)結合し、十分な濃度の有効な阻害剤の存在下で結合していない蛍光リガンドの異方性が結合値と測定可能な程度に異なるような条件下で、熱力学的平衡に到達させる。
【0168】
全てのデータを、各プレートで16個の高いコントロールウェルおよび16個の低いコントロールウェルの平均に正規化した。次いで以下の式の4つのパラメータ曲線フィットを適用した:
y=a+((b−a)/(1+(10×/10c)d)
式中、「a」は最小値であり、「b」はヒル勾配(Hill slope)であり、「c」はpIC50であり、「d」は最大値である。
【0169】
組換えヒトブロモドメイン(ブロモドメイン2(1−473)、ブロモドメイン3(1−435)およびブロモドメイン4(1−477))を、N末端において6個のHis標識を有する大腸菌細胞(pET15bベクター内)で発現させた。His標識化ブロモドメインを、0.1mg/mlリゾチームおよび超音波処理を用いて大腸菌細胞から抽出した。次いでブロモドメインを、20Cv以上で、線形10〜500mMイミダゾール勾配で溶出する、HisTRAP HPカラムでのアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。さらなる精製を、Superdex200分取グレートサイズ排除カラムにより完了した。精製したタンパク質を20mM HEPES pH7.5および100mM NaCl中で−80℃にて保存した。
【0170】
ブロモドメイン2についてのプロトコル:全ての成分を、ブロモドメイン2、75nM、蛍光リガンド 5nMの最終濃度で50mMのHEPES pH7.4、150mmのNaClおよび0.5mMのCHAPSのバッファー組成に溶解した。10μlのこの反応混合物を、マイクロマルチドロップを用いて、Greiner384ウェルブラック低容量マイクロタイタープレート中で100nlの種々の濃度の試験化合物またはDMSOビヒクル(1%最終)を含有するウェルに加え、暗所で室温にて60分平衡化した。蛍光異方性をEnvision(λex=485nm、λEM=530nm;二色性−505nM)で読み取った。
【0171】
ブロモドメイン3についてのプロトコル:全ての成分を、ブロモドメイン3、75nM、蛍光リガンド 5nMの最終濃度で50mMのHEPES pH7.4、150mmのNaClおよび0.5mMのCHAPSのバッファー組成に溶解した。10μlのこの反応混合物を、マイクロマルチドロップを用いて、Greiner384ウェルブラック低容量マイクロタイタープレート中で100nlの種々の濃度の試験化合物またはDMSOビヒクル(1%最終)を含有するウェルに加え、暗所で室温にて60分平衡化した。蛍光異方性をEnvision(λex=485nm、λEM=530nm;二色性−505nM)で読み取った。
【0172】
ブロモドメイン4についてのプロトコル:全ての成分を、ブロモドメイン4、75nM、蛍光リガンド 5nMの最終濃度で50mMのHEPES pH7.4、150mmのNaClおよび0.5mMのCHAPSのバッファー組成に溶解した。10μlのこの反応混合物を、マイクロマルチドロップを用いて、Greiner384ウェルブラック低容量マイクロタイタープレート中で100nlの種々の濃度の試験化合物またはDMSOビヒクル(1%最終)を含有するウェルに加え、暗所で室温にて60分平衡化した。蛍光異方性をEnvision(λex=485nm、λEM=530nm;二色性−505nM)で読み取った。
【0173】
実施例1は、上記のBRD2、BRD3およびBRD4アッセイの各々においてpIC50≧6.0を有した。
【0174】
LPS刺激性全血を測定するTNFαレベルアッセイ
細菌性リポ多糖(LPS)などのtoll様受容体のアゴニストによる単球細胞の活性化により、TNFαを含む重要な炎症性メディエータの生成が生じる。そのような経路は、様々な自己免疫および炎症性疾患の病態生理学に重要であると広く認められている。
【0175】
試験する化合物を希釈して、様々な適切な濃度を得て、1μlの希釈ストックを96プレートのウェルに加える。全血(130μl)の添加後、プレートを37℃(5%CO2)にて30分間インキュベートし、その後、10μlの2.8μg/ml LPSを添加し、完全RPMI1640(最終濃度=200ng/ml)に希釈し、ウェルあたり140μlの全体積を得る。さらに37℃にて24時間のインキュベーション後、140μlのPBSを各ウェルに加える。プレートを密閉し、10分間振盪し、次いで遠心分離(2500rpm×10分)する。100μlの上清を除去し、TNFαレベルを、即座にまたは−20℃での保存後のいずれかで免疫学的検定により(典型的にメソスケールディスカバリー(MesoScale Discovery)技術により)アッセイした。各化合物についての用量反応曲線をデータから生成し、IC50値を算出した。
【0176】
実施例1は上記のアッセイにおいて、pIC50>6.0を有することを見出した。
【0177】
これらのデータは、上記のアッセイにおいて試験した実施例1が重要な炎症性メディエータTNFαの生成を阻害することを実証する。これは、このような化合物が、炎症性疾患において臨床的に有益になる可能性がある、強力な抗炎症性プロファイルを有することを示唆する。
【0178】
インビボでのマウス内毒素血モデル
動物に投与した高用量のエンドトキシン(細菌性リポ多糖)は、強力な炎症反応、心臓血管機能の異常調節、臓器不全および最終的に死亡を含む深刻なショック症候群を生じる。このパターンの反応は、ヒトの敗血症および敗血性ショックと非常に類似しており、顕著な細菌感染に対する身体の反応は同様に生命を脅かす危険性がある。
【0179】
式(I)の化合物およびその医薬的に許容可能な塩を試験するために、8匹のBalb/cオスのマウスの群に、腹腔内注射により致死量の15mg/kg LPSを与えた。90分後、動物にビヒクル(非発熱性水中の20%シクロデキストリン 1%エタノール)または化合物(10mg/kg)を静脈内投与した。動物の生存を4日にモニターした。
【0180】
4日に生存している動物の数(多重反復実験に渡って合計した)
ビヒクル 4/66(6%)
実施例1 24/56(52%)
これらのデータは、上記のモデルにおいて試験した実施例1が、静脈内投与後に顕著な動物の生存効果を生じたことを実証している。これは、式(I)の化合物がヒトにおける炎症反応に対して十分な効果についての可能性を有することを示唆している。
【0181】
限定されないが、本明細書に記載した特許および特許出願を含む全ての文献は、各々の個々の文献が具体的かつ個々に完全に記載されているように本明細書に参照として組み込まれることを示すように、本明細書に参照として組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]−N−エチルアセトアミドである式(I)の化合物
【化1】

またはその塩。
【請求項2】
2−[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]−N−エチルアセトアミドである式(I)の化合物
【化2】

またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項3】
2−[(4S)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(メチルオキシ)−4H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ベンゾジアゼピン−4−イル]−N−エチルアセトアミドである式(I)の化合物
【化3】

【請求項4】
請求項2に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩と、1種以上の医薬的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項5】
請求項3に記載の式(I)の化合物と、1種以上の医薬的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項6】
1種以上の他の治療活性剤と共に請求項2に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩を含んでなる、組合せ医薬品。
【請求項7】
治療に使用するための請求項2に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項8】
治療に使用するための請求項3に記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
ブロモドメイン阻害剤が適応される疾患または病態の治療における使用のための、請求項2に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項10】
前記疾患または病態が、慢性自己免疫病態および/または炎症性病態である、請求項9に記載の使用のための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項11】
前記疾患または病態が癌である、請求項9に記載の使用のための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項12】
ブロモドメイン阻害剤が適応される疾患または病態を治療するための薬剤の製造における、請求項2に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩の使用。
【請求項13】
ブロモドメイン阻害剤が適応される疾患または病態の治療方法であって、請求項2に記載の治療有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩を、それを必要とする被験体に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項14】
前記疾患または病態が、慢性自己免疫病態および/または炎症性病態である、請求項13に記載の治療方法。
【請求項15】
前記疾患または病態が癌である、請求項13に記載の治療方法。
【請求項16】
前記被験体がヒトである、請求項13〜15のいずれか一項に記載の治療方法。
【請求項17】
ブロモドメインと、請求項2に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容可能な塩とを接触させることを含んでなる、ブロモドメインを阻害する方法。

【公表番号】特表2013−510107(P2013−510107A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537329(P2012−537329)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061518
【国際公開番号】WO2011/054553
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(509329523)グラクソスミスクライン エルエルシー (38)
【Fターム(参考)】