ベンダムスチン塩酸塩の新規固体形態
ベンダムスチン塩酸塩の新規の固体形態ならびにそれを調製し、使用する方法が記載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンダムスチン含有組成物、ベンダムスチンを含む医薬組成物、それらを再現性良く作製するためのプロセス、およびそれらを使用して患者を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品有効成分(API)は、種々の異なる形態、たとえば、化学誘導体、溶媒和物、水和物、共結晶、または塩において調製することが可能である。APIはまた、それらが非晶質でありえ、異なる結晶多形体として、および/または異なる溶媒和または水和状態で存在しうる点で、異なる固体形態において調製することが可能である。APIの形態を変化させることにより、その物理特性を変化させることが可能である。たとえば、APIの固体形態は、典型的には、熱力学的に安定な方の固体形態が熱力学的に安定でない方の固体形態より可溶性が低いように、異なる溶解度を有する。固体形態はまた、貯蔵寿命、バイオアベイラビリティ、形態、蒸気圧、密度、色、および圧縮率などの特性が異なりうる。したがって、APIの固体状態のバリエーションは、その物理および薬理特性を調節するための多数の方法の1つである。
【0003】
ベンダムスチン、4−{5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチル−2−ベンジミダゾリル}酪酸:
【化1】
【0004】
が、ドイツ民主共和国(GDR)において1963年に最初に合成され、商標名Cytostasan(登録商標)の下で1971年から1992年までそこで入手可能であった。たとえば、ベンダムスチン塩酸塩一水和物の合成について記載する、W.OzegowskiおよびD.Krebs、IMET3393 γ−[1−methyl−5−bis−(β−chloroethyl)−aminobenzimidazolo−(2)]−butyryl chloride,a new cytostatic agent of the group of benzimidazole nitrogen mustards. Zbl.Pharm.110,(1971年) Heft 10、1013−1019頁を参照のこと。当時から、それは商標名Ribomustin(登録商標)の下、ドイツで市場化されている。ベンダムスチンは、慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、および乳癌などの疾患の治療において治療的有用性を有することが示されているアルキル化剤である。
【0005】
ベンダムスチンが有効であることが示されている一方、それは特に水溶液中で不安定であり、その調製および投与における技術的困難につながることが知られている。したがって、研究者は、ベンダムスチンの調製および安定性を改善する方法ならびにその調合について検討している。たとえば、独国特許第159877号明細書は、ビス−ヒドロキシル前駆体を塩化チオニルと反応させた後、水から再結晶化することによる、ベンダムスチン遊離塩基を調製するための方法を開示する。
【0006】
独国特許第34727号明細書は、ベンダムスチンの誘導体を調製する方法を開示する。記述される誘導体は、1−位置の置換基においてベンダムスチンと異なる。
【0007】
独国特許第80967号明細書は、ベンダムスチン塩酸塩一水和物、アスコルビン酸、および水の注射可能な調製物を開示する。独国特許第80967号明細書は、ベンダムスチンなどの化合物の凍結乾燥が、化合物が処理条件に耐えられるだけの十分な安定性がある場合にのみ可能であることを記載する。独国特許第80967号明細書に記載の調製物は凍結乾燥されない。
【0008】
独国特許第159289号明細書は、凍結乾燥を回避するベンダムスチン塩酸塩の使用準備済の注射可能溶液を開示する。独国特許第159289号明細書は、1,2−プロピレングリコールまたはエタノール中のベンダムスチン塩酸塩の無水溶液について記載する。
【0009】
Cephalon,Inc.(Frazer,PA)に交付された2006年1月12日出願の米国特許出願第11/330,868号明細書は、ベンダムスチン塩酸塩を含む凍結乾燥医薬組成物を調製する方法を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
APIの異なる固体形態の潜在的な利点およびベンダムスチンの有効性を考慮すると、ベンダムスチン塩酸塩の新規の固体形態を同定し、調製するという需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ベンダムスチン塩酸塩の固体形態ならびにそれらを調製する方法が記載される。たとえば、一部の実施形態では、本発明は、ベンダムスチン塩酸塩の形態1、ベンダムスチン塩酸塩の形態3、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、非晶質ベンダムスチン塩酸塩、またはこれらの混合物の少なくとも1つを含むベンダムスチン塩酸塩の固体形態を対象とする。ベンダムスチン塩酸塩のこの固体形態は、次の反射:25.1、24.9、22.9、22.0、および/または14.1±0.2度2θの1つ以上を含むX線粉末回折パターンを生成するか、あるいは次の反射:16.8、17.5、18.5、24.9、および/または28.3±0.2度2θの1つ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成するものでありうる。あるいは、ベンダムスチン塩酸塩の固体形態は、次の反射:26.1、27.9、および/または28.1±0.2度2θの1つ以上を含むX線粉末回折パターンを生成しうるか、あるいは次の反射:10.6、15.6、および/または19.8±0.2度2θの1つ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成する。他の実施形態は、次の反射:10.8、15.5、20.5、および/または23.6±0.2度2θの1つ以上を含むX線粉末回折パターンを生成しうるか、あるいは次の反射:10.3、19.6、20.7、21.2、25.8および/または27.6±0.2度2θの1つ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成しうる。
【0012】
本発明の別の実施形態は、上記のようなベンダムスチン塩酸塩の固体形態を含む組成物を対象とする。特定の実施形態では、組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む医薬組成物である。他の実施形態では、組成物は、凍結乾燥組成物である。特定の実施形態では、組成物は、ベンダムスチン塩酸塩の単一の固体形態を含み、他の固体形態を実質的に含まない。あるいは、組成物は、固体形態の混合物、たとえばベンダムスチン塩酸塩の結晶形態と非晶質ベンダムスチンの混合物を含有しうる。したがって、組成物は、たとえば、次の反射:7.98、10.58、15.43、19.64、および/または19.89±0.2度2θの1つ以上を含むX線粉末回折パターンを生成する凍結乾燥組成物でありうる。
【0013】
組成物を調製する方法および、慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫または乳癌の治療における用途としてそれを使用する方法についても記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ベンダムスチン塩酸塩の1H NMRスペクトルである。
【図2】ベンダムスチン塩酸塩の形態1のX線粉末回折(XRPD)である。
【図3】ベンダムスチン塩酸塩の形態1の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムである。
【図4】ベンダムスチン塩酸塩の形態1の熱重量分析(TGA)サーモグラムである。
【図5】ベンダムスチン塩酸塩の形態1の重量測定による蒸気収着(Gravimetric Vapor Sorption)(GVS)トレースである。
【図6】ベンダムスチン塩酸塩の形態2のX線粉末回折である。
【図7A】ベンダムスチン塩酸塩の形態2のDSCサーモグラムである。
【図7B】2℃/分の加熱速度を使用するベンダムスチン塩酸塩の形態2のDSCサーモグラムである。
【図8】ベンダムスチン塩酸塩の形態2のTGAサーモグラムである。
【図9】ベンダムスチン塩酸塩の形態2のGVSトレースである。
【図10】ベンダムスチン塩酸塩の形態3のX線粉末回折である。
【図11】ベンダムスチン塩酸塩の形態4のX線粉末回折である。
【図12】ベンダムスチン塩酸塩の形態4のDSCサーモグラムである。
【図13】非晶質ベンダムスチン塩酸塩のX線粉末回折である。
【図14】非晶質ベンダムスチン塩酸塩、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、およびマンニトール(ロット番号426804)を含む本発明の一実施形態のX線粉末回折である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
例示的な実施形態の詳細な説明
結晶性ベンダムスチン塩酸塩の4つの多形体は、本明細書で開示される(本明細書中で形態1、形態2、形態3、および形態4と称される)。また、非晶質(すなわち非結晶)ベンダムスチン塩酸塩が説明される。ベンダムスチン塩酸塩のこれらの固体形態に関するスペクトルデータが図1〜14に示され、かつこれらの形態の各々を調製する方法が示される。
【0016】
好ましい実施形態は、形態1、形態2、形態3、形態4、またはこれらの混合物を含むベンダムスチン塩酸塩の固体形態である。より好ましい実施形態は、形態1、形態3、形態4、非晶質ベンダムスチン塩酸塩、またはこれらの混合物であるベンダムスチン塩酸塩の固体形態である。他の実施形態では、本発明の固体形態は、ベンダムスチン塩酸塩の形態2をさらに含む場合がある。これらの多形性固体形態は、たとえばX線粉末回折によって同定され、かつ各多形形態の特性を示す1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれより多い反射ピークによって特徴づけられる場合がある。4つの結晶多形体(形態1、形態2、形態3、形態4)および非晶質ベンダムスチン塩酸塩はまた、そのDSCサーモグラム、TGAサーモグラム、および/またはGVSトレースを参照することによって同定することが可能であり、それらは図1〜14に示される。記載の各多形体または多形体の混合物、および非晶質ベンダムスチン塩酸塩を含むベンダムスチンの固体形態を作製する方法は、本明細書中に記載の技術を用いて実施することが可能である。
【0017】
本明細書中に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態のいずれかは、ベンダムスチン塩酸塩を含む組成物の成分でありうる。一部の実施形態では、本明細書中に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態の少なくとも1つを含むこれらの組成物は、ベンダムスチン塩酸塩の他の固体形態を実質的に含まない。
【0018】
本発明の特定の好ましい実施形態は、少なくとも部分的にX線粉末回折によって特徴づけることが可能である。当該技術分野で公知のように、結晶固体は、ディフラクトグラム(diffractogram)と称されるもので表される、特有の回折ピークパターンを生成する。所与の結晶材料におけるピーク帰属、たとえば度2θ値は、ディフラクトグラムを得るために使用される計装および特定の他の要素、たとえば試料調製に応じてやや変動しうる。それに対し、これらの変動は+/−0.2度2θ以下である必要があり、回折におけるピーク間の相対間隔は、使用される計装または試料調製の方法などと無関係に、常に同じとなる。
【0019】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む医薬組成物である。好ましい賦形剤は、たとえば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、デキストロース、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、またはこれらの混合物を含む。より好ましい薬学的賦形剤は、マンニトールである。
【0020】
本発明の別の実施形態は、ベンダムスチン塩酸塩の形態1、形態2、形態3、形態4、またはこれらの混合物を含む医薬組成物である。より好ましい実施形態は、ベンダムスチン塩酸塩の形態1、形態3、形態4、非晶質、またはこれらの混合物を含む組成物、好ましくは医薬組成物である。他の実施形態では、医薬組成物は、形態2またはベンダムスチン塩酸塩をさらに含む。本発明のより好ましい実施形態は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩とともに形態1、形態2、形態3、および形態4の1つ以上を含む医薬組成物である。
【0021】
本発明の別の実施形態は、本明細書中に記載のベンダムスチン塩酸塩の少なくとも1つの固体形態を含む凍結乾燥組成物である。本発明の好ましい凍結乾燥組成物は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩とベンダムスチン塩酸塩の少なくとも1つの結晶形態の混合物を含むものを含む。本発明のより好ましい凍結乾燥組成物は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩とベンダムスチン塩酸塩の形態4の混合物を含むものを含む。
【0022】
本発明の凍結乾燥組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含みうる。好ましい賦形剤は、たとえば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、デキストロース、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、またはこれらの混合物を含む。より好ましい薬学的賦形剤は、マンニトールである。本発明の好ましい凍結乾燥組成物は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、および好ましくはマンニトールである少なくとも1つ薬学的に許容される賦形剤の混合物を含む。本質的に非晶質ベンダムスチン塩酸塩、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、およびマンニトールからなる凍結乾燥組成物はより好ましい(たとえば図14を参照)。
【0023】
形態1は、短冊状粒子からなる白色粉末として特徴づけられた。形態1は、X線粉末回折(XRPD)によると結晶であり、1H NMRスペクトルは分子の構造に一致し、かつ純度は97.2%であった。熱分析は、融解事象(ピーク=170℃)に対応する開始の167℃(ΔH103J/g)で吸熱を示した。この温度を超えると、分解が生じた。試料は、XRPD(図13)によると、180℃(融解)への加熱時、非晶質になり、周囲温度への冷却時、非晶質状態を保持した。形態1は、低い吸湿性を有することが見出され、それは0〜90%の間の相対湿度(RH)で0.7%の重量増加を示した。これは、周囲条件下での再分析時、XRPDパターンにおける有意な変化をもたらさなかった。40℃/75%RHでの1週間の保存または40℃/11%RHでの3週間の保存の間では、有意な変化は全く認められなかった。XRPDからのデータは、下記に示される。
【0024】
【表1】
【0025】
形態1は、25℃/94%RHでの2か月間の保存の間、ベンダムスチン塩酸塩の水和物(形態2)に変換された。水溶解度は2.16の溶液pHで4.5mg/mlであったが、この実験における試料に対して有意な分解が生じた。水性条件下、UVにより、この材料に対して見出されたpKa値は、0.88(塩基)、4.17(酸)および6.94(塩基)であった。見出されたLogP値は1.10であるとともに、pH7.4のLogDは0.68であった。この形態の単一の結晶構造が得られた。
【0026】
ベンダムスチンHClの形態1の単一の結晶構造の表示
【化2】
【0027】
【表2】
【0028】
形態1は、光での分解に対して形態2より安定であることが示された。
【0029】
形態2(一水和物)は、棒状粒子からなる白色粉末として特徴づけられた。形態2は、XRPDによると結晶であり、純度は98.3%であった。XRPDデータは下記に示される。
【0030】
【表3】
【0031】
熱分析は、水分損失により、開始の37℃で幅広い吸熱を示した。これは周囲温度〜100℃の間での加熱時の5.2%の重量減少に対応し、それは水の1.2当量の減少および形態4への変換に一致した。試料は、GVS分析の間、10〜15%RHで4%の取り込みを示し、それは水の1モルに一致した。GVSサイクル後のXRPD再分析時、14°2θでのピークが認められた。このピークは形態1の存在を示唆し、それは部分的変換がGVS実験の間に生じたことを示唆している。純粋な形態1を25℃/94%RHで1か月保存後、試料は形態2への変換プロセスの最中であったことから、同様のXRPDトレースが認められた。40℃/75%RHでの1か月の保存後、XRPDによると、試料に対する有意な変化は全く認められなかったが、40℃/11%RHでの1か月間では試料はあまり結晶化しなかった。光安定性実験の間では、結晶化度および純度における有意な低下が認められた。
【0032】
先行技術のレビューによると、ベンダムスチン塩酸塩の一水和物が以前に調製されていることが示される。W.OzegowskiおよびD.Krebs、上記を参照のこと。その一水和物は、152〜56℃の報告された融点を有する。この融点は、ベンダムスチン塩酸塩の形態2で認められる融点(153〜157℃と観察された)と類似する。確実ではないが、形態2および先行技術で報告されたベンダムスチン塩酸塩一水和物が同じ多形体であると考えられる。しかし、さらなる特性化の詳細、たとえばXRPDについては全く報告されていないか、または、先行技術において報告されたベンダムスチン塩酸塩一水和物に対して利用できないことから、先に報告された一水和物が形態2のベンダムスチン塩酸塩であったか否かについては知られていない。
【0033】
形態1、形態2および1:1混合物の最大で6週間の保存では、高湿度で保存後に、形態1が2に変換することのみが示された(60℃/95%RH、25℃/94%RHおよび場合によって4℃/88%RH(それぞれ、6、6および2週間に対応))。これらの試験では、6週間後、形態2から形態1への変換が全く認められなかった。動的要素は、試験された6週間以内での完全な熱力学的安定性を判定することを極めて困難にし、両形態は、4℃/34〜76%RH、25℃/43〜75%RHおよび60℃/11〜75%RHで、6週間、動的に安定であった。
【0034】
形態3は、XRPDによると部分的に結晶である白色粉末として特徴づけられた。XRPDの再分析に対し、周囲条件下での1か月の保存後、有意な変化は全く認められなかったが、40℃/75%RHで1週間の間に形態2への変換が生じた。純度は95.9%であった。形態3におけるXRPDデータは下記に示される。
【0035】
【表4】
【0036】
形態4は、XRPDによると結晶である白色粉末として特徴づけられた。熱分析は、153℃での融解(ピーク=157℃)による吸熱を示した。形態4は、周囲条件下で、24時間の間に形態2に変換された。形態4におけるXRPDデータは下記に示される。
【0037】
【表5】
【0038】
非晶質ベンダムスチン塩酸塩は、約50℃のガラス転移温度を有し、周囲条件下で24時間の間に粘着性を示すようになり、それが吸湿性であることが示される。また、部分的結晶化が、場合によって形態2および3の混合物に対し、40℃/75%RHで1週間の間に生じた。GVSの湿度サイクルを経た後、非晶質ベンダムスチン塩酸塩は、形態2に変換された。
【0039】
本発明の好ましい医薬組成物は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩を含む。ベンダムスチン塩酸塩は、主にベンダムスチン塩酸塩の非晶質形態からなる組成物または非晶質ベンダムスチン塩酸塩を含む組成物、ならびに結晶形態、たとえば結晶性ベンダムスチン塩酸塩の形態1、形態2、形態3、形態4、またはこれらの混合物として提供されうる。本発明の好ましい医薬組成物は、実質的に結晶性ベンダムスチン塩酸塩を含まないベンダムスチン塩酸塩を含む。
【0040】
好ましい実施形態では、形態1、形態2、形態3、形態4、および非晶質ベンダムスチン塩酸塩の少なくとも1つ、ならびに少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が提供される。好ましくは、医薬組成物は、形態1、形態3、形態4、および非晶質ベンダムスチン塩酸塩の少なくとも1つ、ならびに少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む。非晶質ベンダムスチン塩酸塩の形態4、および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物がより好ましい。
【0041】
薬学的に許容される賦形剤は、当該技術分野で公知であり、たとえばその内容全体が本明細書中に援用される米国特許出願第11/267,010号明細書中に記載されるものを含む。これらの医薬組成物は、液体溶液または懸濁液、ならびに固体形態、たとえば、カプセル、タブレット、ロゼンジ、トローチ、粉末、懸濁剤などのいずれかとしての注射可能物として調製することが可能である。
【0042】
好ましい実施形態では、医薬組成物は、昇華され、好ましくは凍結乾燥(freeze−dried)または凍結乾燥(lyophilized)組成物である。形態1、形態2、形態3、形態4、またはこれらの混合物を含有するベンダムスチン塩酸塩の、かかる昇華され、好ましくは凍結乾燥(freeze−dried)または凍結乾燥(lyophilized)調製物を調製する方法はまた、本発明の範囲内に含まれる。形態1、形態3、形態4、非晶質ベンダムスチン塩酸塩、またはこれらの混合物を含有するベンダムスチン塩酸塩の、かかる昇華され、好ましくは凍結乾燥(freeze−dried)または凍結乾燥(lyophilized)調製物を調製する方法はまた、本発明の範囲内に含まれる。形態2をさらに含有するベンダムスチン塩酸塩の、かかる昇華され、好ましくは凍結乾燥(freeze−dried)または凍結乾燥(lyophilized)調製物を調製する方法はまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0043】
凍結乾燥は、水の化合物への添加、その後の得られる懸濁液または溶液の凍結、および化合物からの水の昇華を含む。好ましい実施形態では、少なくとも1つの有機溶媒が懸濁液/溶液にさらに加えられる。他の好ましい実施形態では、懸濁液/溶液は、凍結乾燥賦形剤をさらに含む。本発明のベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥調製物は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩をさらに含みうる。
【0044】
典型的な凍結乾燥手順では、水、薬学的に許容される凍結乾燥賦形剤、有機溶媒、および化合物が結合され、溶液が形成され、次いでそれは好ましくは無菌濾過方法を用いて滅菌される。次いで、この溶液は、標準の凍結乾燥機器および技術を用いて凍結乾燥される。
【0045】
本発明の好ましい実施形態がベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥を含む一方、他の昇華技術もまた利用可能であることが想定される。たとえば、ベンダムスチン塩酸塩の記載される形態の1つ以上が溶媒中に溶解、分散または懸濁され、得られる混合物(溶液、分散液または懸濁液である)が凍結され、溶媒が昇華によって除去されうる。
【0046】
凍結乾燥賦形剤は、凍結乾燥プロセスの間に使用される場合、改善された特性、たとえば、改善された処理特性、溶解度特性などを有する凍結乾燥産物をもたらす任意の薬学的に許容される賦形剤でありうる。凍結乾燥賦形剤は、たとえば、膨張性薬剤であってもよく、好適な膨張性薬剤は当該技術分野で公知である。好適な凍結乾燥賦形剤の例として、たとえば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、デキストロース、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、またはこれらの混合物があげられる。凍結乾燥賦形剤はまた、薬学的に許容される抗酸化剤、たとえば、アスコルビン酸、アセチルシステイン、システイン、亜硫酸水素ナトリウム、ブチル−ヒドロキシアニソール、ブチル−ヒドロキシトルエン、またはα−酢酸トコフェロールなどを含みうる。好ましい凍結乾燥賦形剤は、マンニトールである。
【0047】
本発明での使用が意図される溶媒は、ベンダムスチンを著しく分解することなくベンダムスチン塩酸塩を有する安定な溶液を形成し、かつ凍結乾燥を通じて蒸発/昇華可能な水および有機溶媒を含む。好適な有機溶媒の例として、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、またはこれらの混合物があげられる。好ましい有機溶媒は、tert−ブタノールである。
【0048】
本発明の一実施形態は、ベンダムスチン塩酸塩の少なくとも1つの結晶形態を含む凍結乾燥組成物を調製する方法である。好ましくは、ベンダムスチン塩酸塩の結晶形態は、ベンダムスチン塩酸塩の形態1、ベンダムスチン塩酸塩の形態2、ベンダムスチン塩酸塩の形態3、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、またはこれらの混合物である。本発明の他の実施形態では、凍結乾燥組成物は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩をさらに含む。本発明のより好ましい方法は、ベンダムスチン形態4と非晶質ベンダムスチン塩酸塩の混合物を含む凍結乾燥組成物を生成する。
【0049】
ベンダムスチン塩酸塩の少なくとも1つの結晶形態を含む凍結乾燥組成物を調製する好ましい方法は、ベンダムスチン塩酸塩を少なくとも1つの溶媒と結合させ、溶液を形成し、次いで溶液を凍結乾燥化する工程を含む。一部の実施形態では、溶液は、少なくとも1つの凍結乾燥賦形剤をさらに含む。好ましい凍結乾燥賦形剤は、たとえば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、デキストロース、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、またはこれらの混合物を含む。より好ましくは、薬学的に許容される賦形剤は、マンニトールである。一部の実施形態では、溶媒は、水、有機溶媒、またはこれらの混合物である。好ましくは、有機溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、またはこれらの混合物である。より好ましくは、有機溶媒は、tert−ブタノールである。特定の実施形態では、溶媒は、水と有機溶媒の混合物、たとえば約1:1〜約3:1(v/v)、好ましくは約7:3(v/v)の水と有機溶媒の比を有する混合物である。
【0050】
本明細書中に記載の方法のいずれかに従って生成される凍結乾燥組成物はまた、本発明の範囲内に含まれる。本明細書中に記載の凍結乾燥手順に従って調製され、非晶質ベンダムスチン塩酸塩、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、およびマンニトールを含む1つのかかる組成物のX線粉末回折が図14に示される。この回折に対応するXPRDデータは、下記に示される。
【0051】
【表6】
【0052】
また、本発明の範囲内に、たとえば、慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、または乳癌などの疾患を本発明の医薬組成物で治療する方法が含まれる。好ましくは、本発明の固体形態を使用し、慢性リンパ性白血病が治療される。また、本発明の固体形態を使用し、無痛性B細胞非ホジキンリンパ腫、特に、たとえばリツキシマブまたはリツキシマブを含有するレジメンでの治療の間または6か月以内に進行している無痛性B細胞非ホジキンリンパ腫を治療する方法が好ましい。特定の実施形態では、本方法は、本発明の医薬組成物を患者に直接的に治療有効量で投与する工程を含む(たとえば、医薬組成物が錠剤またはカプセルである場合)。他の実施形態では、本方法は、本発明の医薬組成物を、たとえば組成物を投与前に水または別の溶媒に溶解させることにより、投与前に修飾する工程を含む。これらの実施形態では、本方法は、患者に、本発明の医薬組成物から調製される調製物を治療有効量で投与する工程を含む。好ましくは、調製物は、注射可能調製である。注射可能調製物は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内(intrasternally)、くも膜下(intrathecally)、病巣内(intralesionally)、頭蓋内に、または注入を介して投与してもよい。本発明の組成物および注射可能調製物を使用する治療に適した他の症状は、小細胞肺癌、過増殖性疾患、および自己免疫病、たとえば関節リウマチ、多発性硬化症、およびループスを含む。
【0053】
好ましくは、投与される用量は、静脈内に投与される約100mg/m2もしくは約120mg/m2である。静脈内に投与される約25mg/m2、60mg/m2、50mg/m2および90mg/m2の用量はまた、本発明の範囲内に含まれる。好ましくは、用量は、約30分間もしくは約60分間かけて静脈内に投与される。また、用量が28日周期で1日目および2日名に投与される投与の方法が好ましい。一部の実施形態では、用量は、1〜6または1〜8周期で投与される。
【0054】
本明細書中に記載の注射可能調製物は、たとえば当該技術分野で公知の技術に従って調合される無菌の注射可能水性または油性の懸濁液または溶液としての無菌注射可能調製物の形態である。典型的には、形態1、形態2、形態3、形態4、または非晶質ベンダムスチン塩酸塩の少なくとも1つ、好ましくは形態1、形態3、形態4、または非晶質ベンダムスチン塩酸塩の少なくとも1つを含有する本発明の医薬組成物は、凍結乾燥粉末として調合され、それはたとえば、50mLもしくは20mLのバイアルあたり100mgの薬剤を有するバイアル内に提供することが可能である。注射可能調製物は、凍結乾燥(freeze−dried)または凍結乾燥(lyophilized)組成物を無菌注射用水で再構成し、次いで薬学的に許容される静脈内溶液、たとえば、0.9%塩化ナトリウム、水中5%デキストロース(D5W)、乳酸リンガー溶液、または0.45%塩化ナトリウム/2.5%デキストロースなどでさらに希釈することによって調製することが可能である。
【0055】
好ましくは、本明細書中に記載のベンダムスチン塩酸塩の医薬組成物は、たとえば滅菌水で、注射可能調製物中で、約20分未満で再構成される。より好ましくは、再構成は、約10分未満、最も好ましくは約5分で生じる。
【0056】
典型的な再構成プロセスであれば、好ましくは無菌で、100mgのベンダムスチン塩酸塩を20mLの無菌注射用水で再構成することを含むことになる。これは5mg/mLのベンダムスチン塩酸塩濃度を有する澄んだ無色から淡黄色の溶液をもたらす。凍結乾燥ベンダムスチン塩酸塩が再構成されている場合、ベンダムスチン塩酸塩は約5分以内に完全に溶解する必要がある。(5mg/mLの濃度に基づく)必要用量に対して必要とされる容量は、無菌で回収し、注入用の0.9%塩化ナトリウム(または他の薬学的に許容される静脈内溶液)の500mLの注入バッグに移してもよい。好ましくは、再構成された溶液は、再構成の30分以内に注入バッグに移される。移した後、注入バッグの内容物は、徹底的に混合される。静脈内注入による投与は、典型的には約30分間〜約60分間にわたって提供される。
【0057】
本発明の医薬組成物が1つ以上の抗新生物剤(anti−neoplastic agent)と併せて投与可能であり、ここで抗新生物剤は、本発明の組成物の投与に対して前、同時、または後に投与されることが想定される。薬学的に許容される抗新生物剤は、当該技術分野で公知である。好ましい抗新生物剤は、その全体は参照により本明細書中に援用される、2006年1月12日に出願された同時係属中の米国特許出願第11/330,868号明細書中に開示されるものである。
【0058】
ベンダムスチンの治療有効量は、従来の技術の使用により、担当診断医によって容易に決定することが可能である。有効用量は、疾患または障害の進行のタイプおよび範囲、特定の患者の全体健康、ベンダムスチンの生物学的有効性、ベンダムスチンの調合、ならびにベンダムスチンの複数の形態の投与の経路を含む複数の要素に依存して変化しうる。ベンダムスチンはまた、所望される効果が得られるまで、漸増するより低い用量レベルで投与することが可能である。
【0059】
用語
用語「抗溶媒」は、本明細書で使用される場合、化合物が実質的に不可溶性である溶媒を意味する。
【0060】
用語「結晶」は、本明細書で使用される場合、分子の規則的に繰り返す配置または外面(external face planes)を有することを意味する。
【0061】
用語「結晶組成物」は、本明細書で使用される場合、X線粉末回折によって分析される場合、ピークの特徴的パターンを提供する固体化合物または化合物の混合物を示し、これは、限定はされないが、多形体、溶媒和物、水和物、共結晶、および脱溶媒和された溶媒和物を含む。
【0062】
用語「単離する」は、本明細書で使用される場合、溶媒、抗溶媒、または溶媒と抗溶媒の混合物から化合物を分離し、固体、半固体またはシロップを提供することを意味する。これは、典型的には、遠心分離、真空を伴う場合または伴わない場合での濾過、陽圧下での濾過、蒸留、蒸発あるいはこれらの組み合わせなどの手段によって行われる。単離は、精製(その間に、単離物の化学的純度、キラルまたは化学的純度およびキラル純度が増大する)を伴うかまたは伴わない場合もある。精製は、典型的には、結晶化、蒸留、抽出、酸性、塩基性もしくは中性アルミナを通す濾過、酸性、塩基性もしくは中性炭を通す濾過、キラル定常期が詰め込まれたカラムでのカラムクロマトグラフィー、多孔質紙、プラスチックもしくはグラスバリアを通す濾過、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、再結晶化、順相高性能液体クロマトグラフィー、逆相高性能液体クロマトグラフィー、粉砕などの手段によって行われる。
【0063】
用語「薬学的に許容される賦形剤」は、本明細書で使用される場合、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張性および吸収遅延剤などを含む。医薬活性物質におけるかかる媒体および作用剤の使用は、当該技術分野で周知であり、たとえば、Remington:「The Science and Practice of Pharmacy、第20版;Gennaro A.R.編;Lippincott Williams & Wilkins(Philadelphia,PA)、2000年があげられる。任意の従来の媒体または作用剤が活性成分に適合しないような場合を除き、治療組成物におけるその使用が考えられる。補助活性成分もまた、組成物中に組み込んでもよい。
【0064】
用語「溶液」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの溶媒および溶媒中に少なくとも部分的に溶解された少なくとも1つの化合物を含有する混合物を示す。
【0065】
用語「溶媒和物」は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義される溶質および有機溶媒によって形成される可変化学量論の結晶組成物を意味する。
【0066】
用語「溶媒」は、本明細書で使用される場合、別の物質、典型的には固体を完全または部分的に溶解させる能力がある物質、典型的には液体を意味する。本発明の実施のための溶媒は、限定はされないが、水、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ブタノール、tert−ブタノール、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ギ酸、ヘプタン、ヘキサン、イソプロパノール、メタノール、メチルエチルケトン(ブタノン)、1メチル−2−ピロリジノン、メシチレン、ニトロメタン、ポリエチレングリコール、プロパノール、2−プロパノン、プロピオニトリル、ピリジン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、これらの混合物などを含む。
【0067】
用語「昇華」は、本明細書で使用される場合、中間の液体段階を伴わない固相から気相への転移を示す。
【0068】
用語「実質的に含まない」は、ベンダムスチン塩酸塩の特定の形態を含有する組成物に関して本明細書で使用される場合、化合物の他の形態を「実質的に含まない」一方、列挙される形態が、ベンダムスチン塩酸塩の他の列挙される形態の10%未満、好ましくは5%未満、特に2%未満および最も好ましくは1%未満に関連することを意味する。
【0069】
用語「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、確立された薬物動態学的方法および技術に従って測定される場合、所与の投与経路での所与の薬剤に関連した、意図される生理的効果をもたらすのに必要とされる、決定される量を示す。適切な特定の治療有効量は、従来の技術の使用により、当業者としての担当診断医によって容易に決定されうる。有効用量は、疾患または障害の進行のタイプおよび範囲、特定の患者の全体健康状態、選択される化合物の相対的な生物学的有効性、活性物質と適切な賦形剤との調合、および投与の経路を含む複数の要素に応じて変化することになる。
【0070】
計装
X線粉末回折(XRPD)
ベンダムスチン塩酸塩の新規の結晶形態は、特定の結晶形態のフィンガープリント(fingerprint)を生成するXRPDによって特徴づけられている。2θ値の測定値は、典型的には±0.2°以内の精度である。
【0071】
Bruker AXS/Diemens D5000
X線粉末回折パターンは、CuKα放射(40kV、40mA)、θ−θゴニオメーター、自動発散および受光スリット、グラファイト二次モノクロメーターおよびシンチレーション計数管を使用し、Siemens D5000回折計で収集された。機器は、認証されたコランダム標準(NIST1976)を使用して性能検査される。
【0072】
周囲条件
周囲条件下で実行される試料は、平板標本として調製された。約35mgの試料は、研磨されたバックグラウンド0(510)のシリコンウエーハ内に切断された空洞に緩やかに詰め込まれ、Mylarカバーが試料上に設けられた。分析の間、試料はそれ自体の面で回転された。
【0073】
Bruker AXS C2 GADDS
X線粉末回折パターンは、CuKα放射(40kV、40mA)、自動化XYZステージ、オートサンプルポジショニング(autosample positioning)用レーザービデオ顕微鏡およびHiStar二次元領域検出器を使用し、Bruker AXS C2 GADDS回折計で収集された。X線光学は、0.3mmのピンホールコリメータと連携した単一のGoebel多層ミラーからなる。
【0074】
ビーム発散、すなわち試料に対するX線ビームの有効なサイズは、約5mmであった。θ−θ連続走査モードは、3.2°〜29.7°の有効な2θ範囲を与える20cmの試料−検出器距離の場合に用いられる。典型的にいえば、試料はX線ビームに120秒間暴露されることになる。
【0075】
周囲条件
周囲条件下で実行される試料は、粉砕されていない粉末を使用し、平板標本として調製された。約1〜2mgの試料は、スライドグラス上に軽く押し付けられ、平面が得られた。
【0076】
非周囲条件
非周囲条件下で実行される試料は、熱伝導性化合物とともにシリコンウエーハ上に載せられた。次いで、試料は、約20℃/分で適切な温度に加熱され、次いでデータ収集が開始される前に約1分間、等温的に保持された。
【0077】
単一の結晶X線回折(SCXRD)
選択された結晶は、パラトーン(paratone)油でコーティングされ、Bruker SMART CCD回折計で急速冷凍された。データは、Oxford Cryosystems Cryostream冷却装置を備えたBruker AXS 1K SMART CCD回折計で収集された。構造は、SHELXSまたはSHELXDプログラムのいずれかを使用して解明され、Bruker AXS SHELXTL一式の一部としてのSHELXLプログラムを用いて精密化された。特に指定のない限り、炭素に結合される水素原子は、幾何学的に配置され、ライディング(riding)等方性変位パラメータを用いて精密化可能であった。ヘテロ原子に結合される水素原子は、差フーリエ合成で位置づけられ、等方性変位パラメータで自由に精密化可能であった。
【0078】
1H NMR
1H NMRスペクトルは、オートサンプラーを備えたBruker製400MHz用機器で収集され、DRX400コンソールによって制御された。自動化実験が、標準のBrukerに負荷される実験値を使用し、Topspin v1.3(パッチレベル6)で作動するICON−NMR v4.0.4(ビルド1)を使用して得られた。非ルーチンの分光においては、データは、Topspinの単独使用を通じて得られた。特に指定のない限り、試料はd6−DMSOで調製された。オフライン分析は、ACD SpecManager v9.09(ビルド7703)を使用して実施された。
【0079】
示差走査熱量測定(DSC)
DSCデータは、50位置のオートサンプラーを備えたTA Instruments Q1000で収集された。機器は、認証されたインジウムを使用し、エネルギーおよび温度較正のために較正された。典型的には、0.5〜2mgの各試料は、ピンホールが設けられた(pin−holed)密封アルミニウムパンで、25℃から200℃へ10℃/分で加熱された。50ml/分での窒素パージが試料上で維持された。機器制御ソフトウェアはThermal Advantage v4.6.6であり、データは、Universal Analysis v4.3Aを使用して分析された。
【0080】
熱重量分析(TGA)
TGAデータは、16位置のオートサンプラーを備えたTA Instruments Q500 TGAで収集された。機器は、認証されたアルメル(Alumel)を使用し、温度較正された。典型的には、1〜2mgの各試料は、予め風袋を量った(pre−tared)白金るつぼ上のピンホールが設けられた密封アルミニウムDSCパンに負荷され、周囲温度から200℃へ10℃/分で加熱された。60ml/分での窒素パージが試料上で維持された。機器制御ソフトウェアはThermal Advantage v4.6.6であり、データは、Universal Analysis v4.3Aを使用して分析された。
【0081】
純度分析
純度分析は、ダイオードアレイ検出器を備えたAgilent HP1100シリーズシステム上でChemStationソフトウェアvB.02.01−SR1を使用して実施された。
【0082】
【表7】
【0083】
HPLCによる熱力学的水溶解度
水溶解度は、十分な化合物を0.25mlの水中に懸濁することによって測定され、最大最終濃度≧10mg/mlの化合物の親遊離形態(parent free−form)がもたらされた。懸濁液は、25℃で24時間(特に指定のない限り)平衡化され、その後、pHが測定された。次いで、懸濁液は、グラスファイバのCフィルタを通して濾過され、96ウェルプレートに入れられた。次いで、濾過液は100倍に希釈された。定量は、DMSO中、約0.1mg/mlの標準溶液に関連したHPLCによって行われた。さまざまな容量の標準の希釈および不希釈の試料溶液が注入された。溶解度は、標準注入における主なピークの場合と同じ保持時間で見出されるピークの取り込みによって判定されるピーク面積を用いて計算された。
【0084】
【表8】
【0085】
重量測定による蒸気収着(GVS)
収着等温線が、CFRSorpソフトウェアによって制御されるHiden IGASorp水分収着分析計を使用して得られた。試料温度は、Huber再循環水槽によって25℃で維持された。水分は、乾燥窒素流と湿った窒素流を250ml/分の全流速で混合することによって制御された。相対湿度は、試料付近に位置する較正されたVaisala RHプローブ(0〜95%RHの動的範囲)によって測定された。%RHの関数としての試料の重量変化(質量緩和)は、微量天秤(精度±0.001mg)によって常時モニタリングされた。典型的には、1〜3mgの試料は、周囲条件下で風袋を量った(tared)メッシュステンレス鋼バスケット内に入れられた。試料は、40%RHおよび25℃(典型的な室内条件)で負荷および無負荷にされた。水分収着等温線は、下記の概要に従って作成された(2回の走査で1つの全サイクルが得られる)。標準等温線は、25℃、10%RHの間隔で0〜90%RH範囲にわたって作成された。
【0086】
【表9】
【0087】
ソフトウェアでは、質量緩和のモデルを伴う最小自乗最小化手法が使用され、漸近値が予測される。測定される質量緩和値は、次の%RH値が選択される前にソフトウェアによって予測される5%以内でなければならない。最小平衡化時間は1時間に、また最大平衡化時間は4時間に設定された。
【0088】
pKaの測定および予測
データは、D−PASを備えたSirius GlpKa機器で収集された。測定は、UVにより、水溶液中、25℃でなされた。化合物は、最初に5mg/mlでDMSOに溶解され、ここで50μl(0.25mg)がpH1.3〜9.0の滴定のために使用された。滴定媒体は、0.15M KCl(水性)で、イオン強度調整(ISA)がなされた。データは、Refinement Proソフトウェアv1.0を使用して精密化された。pKa値の予測は、ACD pKa予測ソフトウェアv9を使用してなされた。
【0089】
LogPの判定
データは、オクタノール:イオン強度調整(ISA)水の3つの比を用い、Sirius GlpKa機器での電位差滴定によって収集され、LogP、Log Pion、およびLogD値が得られた。データは、Refinement Proソフトウェアv1.0を使用して精密化された。ACD v9およびSyracuse KOWWIN v1.67ソフトウェアを使用し、LogP値の予測がなされた。
【0090】
ベンダムスチン塩酸塩(粗)の調製
工程1:4−{5−[ビス−(2−ヒドロキシ−エチル)−アミノ]−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−yl}−酪酸エチルエステル(27.0kg)が270kgのクロロホルムに溶解された。0〜5℃に冷却後、19.2kgの塩化チオニルが約1時間かけて加えられた。混合物は、25℃±5℃に温められ、20〜24時間撹拌された。次いで、75.6kgの塩酸(32%水溶液)が加えられた。相分離後、有機(下方)相が除去された。生成物は水相中で保持された。
【0091】
工程2:塩酸中の活性炭の懸濁液が、工程1で得られた水相に加えられた。混合物は、85〜90℃に1時間かけて加熱され、還流下で4〜5時間撹拌された。次いで、懸濁液は濾過され、水性塩酸ですすがれた。溶媒は、減圧下、65℃以下の温度で蒸留除去された。108kg〜324kg(108kgが好ましい)の温かい(35〜45℃)脱イオン水が加えられ、結晶化が誘導された。
【0092】
結晶化後、混合物は、20℃±5℃に冷却され、さらに1〜2時間または一晩撹拌された。生成物は、フィルタドライヤでの濾過によって回収され、108〜324kg(108kgが好ましい)の脱イオン水および108〜216kg(108kgが好ましい)の冷却アセトンで、それぞれ3回に分けて洗浄された。粗生成物は、フィルタドライヤにおいて、少なくとも1時間の還流下で、54〜108kg(54kgが好ましい)のアセトンで4回ずつ処理された。懸濁液は濾過され、生成物は、減圧下、40℃以下の温度で乾燥され、21.4kg±2.1kgのベンダムスチン塩酸塩(粗)が得られた(70%±10%、乾燥物質として計算)。
【0093】
工程3(オプション):工程2から得られた生成物は、塩酸(32%水溶液)に溶解され、加熱され、少なくとも4時間還流された(85〜90℃)。色を改善するため、活性炭が塩酸に加えられ、混合物は加熱され、少なくとも4時間還流されうる(85〜90℃)。活性炭とともに、懸濁液は濾過され、水性塩酸ですすがれた。溶媒は、減圧下、65℃以下の温度で蒸留除去された。次いで、混合物は脱イオン水で希釈された。15分以内に結晶化が全く生じなかった場合、混合物は播種された。結晶化後、懸濁液は40℃±5℃で1時間撹拌され、次いで20℃±5℃に冷却された。20℃±5℃でさらに1〜2時間攪拌後、生成物は、濾過によって収集され、冷却脱イオン水で3回および冷却アセトンで少なくとも3回洗浄された。粗生成物は、少なくとも1時間の還流下で、アセトンで4回処理された。懸濁液は濾過され、生成物は、減圧下、40℃以下の温度で乾燥された。ベンダムスチン塩酸塩(粗)の収率は80%±10%であった。
【0094】
精製ベンダムスチン塩酸塩の調製
ベンダムスチンHCl(粗)(15.0kg)は、室温で、エタノール/水(vol/vol=97/3)中の0.45kgの活性炭で懸濁された。混合物は、75〜80℃まで迅速に温められ、還流条件下において10分以下で撹拌された。混合物は濾過され、活性炭が除去された。濾過後、33.0kgの濾過されたアセトンは、40〜50℃で迅速に加えられ、結晶化が誘導された。
【0095】
結晶化後、混合物は、40〜50℃で30〜60分間撹拌され、次いで0〜5℃に冷却され、少なくともさらに30分間または一晩撹拌された。精製物は、濾過によって収集され、45kgの冷却アセトンで3回洗浄された。その後、粗生成物は、少なくとも1時間の還流下で、30kgのアセトンで4回ずつ処理された。懸濁液は濾過され、生成物は減圧下、40℃以下の温度で乾燥され、11.3±1.5kgのベンダムスチン塩酸塩が得られた(75%±10%)。
【0096】
ベンダムスチン塩酸塩のバルク溶液(1L)の調製
無菌条件下で、注射用水(「WFI」、全バッチサイズの約65%)は、ミキサーを備えたステンレス鋼の複合容器に移された。複合タンク内でのWFIの温度が、15〜25℃に調節された。マンニトール(25.5g)が複合容器に加えられ、最低5分間混合される間、溶液温度が15〜25℃で維持された。三級ブチルアルコール(「TBA」、234.2g)が複合容器に加えられた。溶液は、15〜25℃で最低5分間混合された。精製ベンダムスチンHCl(15.0g)が複合容器に加えられ、最低10分間混合される間、溶液温度が15〜25℃で維持された。バッチを1Lにするのに十分な注射用水USPが加えられ、最低10分間混合された。バルク溶液は、1〜2バールの窒素を使用し、0.22μmのフィルタを通す濾過によって滅菌された。
【0097】
ベンダムスチン塩酸塩の濾過されたバルク溶液の凍結乾燥
工程1:調合した無菌濾過ベンダムスチンHClのバルク溶液は、完全自動化された充填/ストッパリング装置によって充填された。バイアルは、続いてストッパリングステーションに移され、そこでは、予め滅菌されたストッパーで部分的にストッパリングがなされた。ベンダムスチンHCl製剤は、20cc タイプIのホウケイ酸塩のチュービンググラス・アンバーバイアル(tubing glass amber vial)内に、約6.47g(6.67mL)まで充填された。充填され、部分的にストッパリングがなされたバイアルは、凍結乾燥領域内に位置する凍結乾燥機に移された。
【0098】
工程2:工程1からの、充填され、部分的にストッパリングがなされたバイアルは、生成物充填トレイ(product−filled tray)で装填することが可能な8つの棚(shelve)を備えた凍結乾燥機に移される。充填され、部分的にストッパリングがなされた製剤バイアルは凍結乾燥された。ベンダムスチンHCl製剤の凍結乾燥の間に用いられる凍結乾燥サイクルの概要は、下記の表1に提供される。
【0099】
【表10】
【0100】
凍結乾燥サイクルの最後に、チャンバ圧は、無菌濾過窒素で約0.6バールに昇圧された。バイアルは、油圧作動的に、無菌濾過窒素雰囲気下で棚をストッパリング位置に調節することにより、ストッパリングがなされた。バイアルのストッパリング後、棚は上昇され、チャンバは、未装填においては、無菌濾過空気が充填され(backfilled)、大気圧にされた。この方法により、約100mgのベンダムスチンHCl/バイアルがもたらされる。
【0101】
ベンダムスチン塩酸塩の溶液の調製
50mgのベンダムスチン塩酸塩の形態1は、スクリュートップバイアル内で秤量された。溶媒が、透明溶液が得られるまで一定分量で加えられた(さらに50℃まで加熱)。観察結果が表2に記録されている。
【0102】
【表11】
【0103】
成熟実験
約10mgの形態1のベンダムスチン塩酸塩は、表3にあげられる溶媒中でスラリー化された。スラリーは、50℃および周囲温度で、交互に4時間で、48時間振とうされた。次いで、任意の固体材料が、濾過によって単離され、XRPDによって分析された。溶液は蒸発させておいた。結果は、下記の表3に示される。
【0104】
【表12】
【0105】
急速蒸発によるベンダムスチンの結晶化
ベンダムスチン塩酸塩をエタノール、酢酸、メタノール、ホルムアミド、DMF、DMSO、およびDMAに入れた溶液を、キャップなしバイアルの溶液を蒸発させ、乾燥させておくことにより、周囲条件下で蒸発させておいた(本明細書中で「急速蒸発」と称される)。得られた固体は、XRPDによって分析された。結果は表4に示される。
【0106】
【表13】
【0107】
遅延蒸発(Slow evaporation)によるベンダムスチンの結晶化
ベンダムスチン塩酸塩をエタノール、酢酸、メタノール、ホルムアミド、DMF、DMSO、およびDMAに入れた溶液を、周囲条件下でキャップ付きバイアル(バイアルキャップはピンホールを有する)の溶液を蒸発させ、乾燥させておくことにより、周囲条件下で蒸発させておいた。蒸発の速度は、小穴を有する気密性フィルムカバーの使用によって制限された。得られた固体は、XRPDによって分析された。結果は表5に示される。
【0108】
【表14】
【0109】
抗溶媒による結晶化
トルエンは、ベンダムスチン塩酸塩をエタノール、酢酸、メタノール、ホルムアミド、DMF、DMSO、およびDMAに入れた溶液に対する抗溶媒として加えられ、結晶化が促進された。加えられるトルエンの容量および抗溶媒の添加に対する観察結果は、表6に記録されている。固体は濾過によって単離された。得られた固体は、XRPDによって分析された。結果は表6に示される。
【0110】
【表15】
【0111】
ベンダムスチン塩酸塩の形態1からの形態2の調製
1mLの水が30mgのベンダムスチン塩酸塩の形態1に加えられ、混合物は25℃に温められ、透明溶液が得られた。約4分後、形態2が白色固体として溶液から沈殿した。固体は、濾過によって回収された。
【0112】
ベンダムスチン塩酸塩の形態1および2の安定性
10mgのベンダムスチン塩酸塩の形態1(A)、ベンダムスチン塩酸塩の形態2(B)、および形態1および2の1:1混合物(C)が、表7にあげられる条件下で保存された。試料は、1日目、2週目、および6週目時点で、XRPDによって分析された。結果は、表7Aに示される。高湿度条件(約90%RH)下で、ベンダムスチン塩酸塩の形態1の形態2への変換が認められた。この変換の速度は、温度とともに増加するようにみられる。形態1および2の純度は、4℃/87%RH(5)および60℃/75%RH(13)での6週間の保存後測定された。純度の低下は大して認められなかった。
【0113】
【表16】
【0114】
【表17】
【0115】
ベンダムスチン塩酸塩の光安定性
ベンダムスチン塩酸塩の形態1および形態2の試料は、Suntest Light Box内で、25℃に設定された黒体温度、250ワット/m2の光強度で1週間ストレスが加えられた。保護用にホイルで包まれた各試料のブランクもまた、実験において含められた。実験後、試料はXRPDによって分析され、純度はHPLCによって測定された。結晶化度と純度の双方における有意な低下が、光ストレス試験の間、形態2において認められた。それに対し、形態1は、純度におけるわずかな低下を示しただけであった。表8を参照のこと。
【0116】
【表18】
【0117】
特定の実施形態では、本発明は、ベンダムスチン塩酸塩の形態1、ベンダムスチン塩酸塩の形態2、ベンダムスチン塩酸塩の形態3、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、またはこれらの混合物を含む医薬組成物を対象とする。本発明はまた、ベンダムスチン塩酸塩がベンダムスチン塩酸塩の形態1である医薬組成物を対象とする。本発明はまた、ベンダムスチン塩酸塩がベンダムスチン塩酸塩の形態2である医薬組成物を対象とする。本発明はまた、ベンダムスチン塩酸塩がベンダムスチン塩酸塩の形態3である医薬組成物を対象とする。本発明はまた、ベンダムスチン塩酸塩がベンダムスチン塩酸塩の形態4である医薬組成物を対象とする。本発明はまた、非晶質ベンダムスチン塩酸塩をさらに含む医薬組成物を対象とする。
【0118】
本発明の他の実施形態は、ベンダムスチン塩酸塩の形態1、ベンダムスチン塩酸塩の形態2、ベンダムスチン塩酸塩の形態3、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、またはこれらの混合物であるベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、ベンダムスチン塩酸塩がベンダムスチン塩酸塩の形態1である結晶形態を対象とする。本発明はまた、ベンダムスチン塩酸塩がベンダムスチン塩酸塩の形態2である結晶形態を対象とする。本発明はまた、ベンダムスチン塩酸塩がベンダムスチン塩酸塩の形態3である結晶形態を対象とする。本発明はまた、ベンダムスチン塩酸塩がベンダムスチン塩酸塩の形態4である結晶形態を対象とする。
【0119】
本発明の他の実施形態は、次の反射:25.12、24.85、22.92、21.97、および/または14.05±0.2度2θの1つ以上を含むX線粉末回折パターンを生成するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、次の反射:16.82、17.51、18.45、24.85、および/または28.33±0.2度2θの1つ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、実質的に図2に示されるX線粉末回折パターンを有するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、本明細書中に示されるベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を含む医薬組成物を対象とする。
【0120】
本発明の他の実施形態は、次の反射:10.64、20.12、20.45、および/または23.11±0.2度2θの1つ以上を含むX線粉末回折パターンを生成するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、次の反射:10.17、15.06、18.82、20.95、25.20、26.54、および/または29.05±0.2度2θの1つ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、実質的に図6に示されるX線粉末回折パターンを有するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、本明細書中に示されるベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を含む医薬組成物を対象とする。
【0121】
本発明の他の実施形態は、次の反射:26.08、27.85、および/または28.11±0.2度2θの1つ以上を含むX線粉末回折パターンを生成するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、次の反射:10.58、15.55、および/または19.75±0.2度2θの1つ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、実質的に図10に示されるX線粉末回折パターンを有するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、本明細書中に示されるベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を含む医薬組成物を対象とする。
【0122】
本発明の他の実施形態は、次の反射:10.83、15.52、20.45、および/または23.58±0.2度2θの1つ以上を含むX線粉末回折パターンを生成するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、次の反射:10.27、19.64、20.73、21.23、25.81および/または27.63±0.2度2θの1つ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、実質的に図11に示されるX線粉末回折パターンを有するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、本明細書中に示されるベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を含む医薬組成物を対象とする。
【0123】
本発明の他の実施形態は、ベンダムスチン塩酸塩の形態1、ベンダムスチン塩酸塩の形態2、ベンダムスチン塩酸塩の形態3、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、またはこれらの混合物を含む凍結乾燥組成物を対象とする。特定の実施形態では、ベンダムスチン塩酸塩は、ベンダムスチン形態1である。他の実施形態では、ベンダムスチン塩酸塩は、ベンダムスチン形態2である。他の実施形態では、ベンダムスチン塩酸塩は、ベンダムスチン形態3である。他の実施形態では、ベンダムスチン塩酸塩は、ベンダムスチン形態4である。本発明はまた、非晶質ベンダムスチン塩酸塩をさらに含む、本明細書中に記載の凍結乾燥組成物を対象とする。
【0124】
本発明の好ましい実施形態は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩、ベンダムスチン塩酸塩の形態2、および薬学的に許容される賦形剤を含む、本明細書中に記載の凍結乾燥組成物を含む。
【0125】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を含む凍結乾燥組成物を調製するための方法であって、ベンダムスチン塩酸塩を少なくとも1つの溶媒と結合させ、混合物を形成する工程と、
混合物を凍結乾燥化する工程と、を含む、方法が含まれる。好ましくは、本発明の方法は、溶液が凍結乾燥賦形剤をさらに含むものを含む。好ましくは、凍結乾燥賦形剤は、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、デキストロース、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、またはこれらの混合物である。より好ましくは、凍結乾燥賦形剤はマンニトールである。好ましくは、本発明の方法は、溶媒が、水、有機溶媒、またはこれらの混合物であるものを含む。好ましくは、有機溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、またはこれらの混合物である。より好ましくは、有機溶媒は、tert−ブタノールである。本発明の他の方法では、溶媒は、水と有機溶媒の混合物である。本発明の好ましい方法では、水と有機溶媒の比は約1:1(v/v)である。本発明の好ましい方法では、水と有機溶媒の比は約2:1(v/v)である。本発明の好ましい方法では、水と有機溶媒の比は約3:1(v/v)である。本発明の好ましい方法では、水と有機溶媒の比は約7:3(v/v)である。
【0126】
本発明の好ましい方法では、ベンダムスチン塩酸塩の結晶形態は形態1である。本発明の他の好ましい方法では、ベンダムスチン塩酸塩の結晶形態は形態2である。本発明のさらに他の好ましい方法では、ベンダムスチン塩酸塩の結晶形態は形態3である。本発明のさらに他の好ましい方法では、ベンダムスチン塩酸塩の結晶形態は形態4である。本発明の他の好ましい方法は、凍結乾燥組成物が非晶質ベンダムスチン塩酸塩をさらに含むものを含む。
【0127】
また、本発明の範囲内に、慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫または乳癌を治療する方法であって、それを必要とする患者に、本明細書中に記載の組成物から調製される調製物を治療有効量で投与する工程を含む、方法が含まれる。
【0128】
また、本発明の範囲内に、形態1のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩を、エタノール、酢酸エチル、tert−ブチルメチルエーテル、イソ−プロピルアルコール、酢酸イソプロピル、ジクロロメタン、酢酸メチル、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ヘプタン、トルエン、メタノール、ジオキサン、ジエチルエーテル、アニソール、ニトロメタン、またはジ−イソプロピルエーテルに入れた溶液を提供する工程と、溶液を周囲条件下で蒸発させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0129】
また、本発明の範囲内に、形態1のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩を、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、またはジメチルアミンに入れた溶液を提供する工程と、溶液を周囲条件下で乾燥するまで迅速に蒸発させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0130】
また、本発明の範囲内に、形態1のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩を、エタノール、酢酸、メタノール、またはジメチルスルホキシドに入れた溶液を提供する工程と、溶液を周囲条件下で乾燥するまで徐々に蒸発させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0131】
また、本発明の範囲内に、形態1のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩を、酢酸、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、またはジメチルアミンに入れた溶液を提供する工程と、結晶化を誘発するのに十分な量のトルエンを加える工程と、を含む、方法が含まれる。
【0132】
また、本発明の範囲内に、形態2のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩を、ジメチルホルムアミド、メタノール、またはジメチルアミンに入れた溶液を提供する工程と、溶液を周囲条件下で蒸発させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0133】
また、本発明の範囲内に、形態2のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩を、酢酸またはメタノールに入れた溶液を提供する工程と、溶液を周囲条件下で乾燥するまで迅速に蒸発させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0134】
また、本発明の範囲内に、形態2のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩をメタノールに入れた溶液を提供する工程と、溶液を周囲条件下で乾燥するまで緩徐に蒸発させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0135】
また、本発明の範囲内に、形態2のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ある量の形態1のベンダムスチン塩酸塩を提供する工程と、形態1を形態2に変換するだけの十分な期間、少なくとも約88%の相対湿度で同量を保存する工程と、を含む、方法が含まれる。
【0136】
また、本発明の範囲内に、形態2のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩の形態1を水と結合させ、溶液を形成する工程と、形態2の溶液からの沈殿を可能にする工程と、を含む、方法が含まれる。
【0137】
また、本発明の範囲内に、形態3のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ある量の非晶質ベンダムスチン塩酸塩を提供する工程と、非晶質ベンダムスチン塩酸塩を形態3に変換するだけの十分な期間、約40℃および約75%の相対湿度で同量を保存する工程と、を含む、方法が含まれる。
【0138】
また、本発明の範囲内に、形態4のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ある量の形態2のベンダムスチン塩酸塩を提供する工程と、形態2を形態4に変換するだけの十分な期間、約100℃まで形態2を加熱する工程と、を含む、方法が含まれる。
【0139】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の医薬組成物を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩の形態1を調製する工程と、形態1を薬学的に許容される賦形剤と結合させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0140】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の医薬組成物を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩の形態2を調製する工程と、形態2を薬学的に許容される賦形剤と結合させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0141】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の医薬組成物を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩の形態3を調製する工程と、形態3を薬学的に許容される賦形剤と結合させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0142】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の医薬組成物を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩の形態4を調製する工程と、形態4を薬学的に許容される賦形剤と結合させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0143】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥組成物を調製する方法であって、形態1のベンダムスチン塩酸塩を溶媒と結合させ、混合物を形成する工程と、混合物を凍結乾燥化する工程と、を含む、方法が含まれる。本発明によると、形態1のベンダムスチン塩酸塩は、本明細書中に記載の方法のいずれかに従って調製される。
【0144】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥組成物を調製する方法であって、形態2のベンダムスチン塩酸塩を溶媒と結合させ、混合物を形成する工程と、混合物を凍結乾燥化する工程と、を含む、方法が含まれる。本発明によると、形態1のベンダムスチン塩酸塩は、本明細書中に記載の方法のいずれかに従って調製される。
【0145】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥組成物を調製する方法であって、形態3のベンダムスチン塩酸塩を溶媒と結合させ、混合物を形成する工程と、混合物を凍結乾燥化する工程と、を含む、方法が含まれる。本発明の特定の方法では、形態3のベンダムスチン塩酸塩は、ある量の非晶質ベンダムスチン塩酸塩を提供し、非晶質ベンダムスチン塩酸塩を形態3に変換するだけの十分な期間、約40℃および約75%の相対湿度で同量を保存することによって調製される。
【0146】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥組成物を調製する方法であって、形態4のベンダムスチン塩酸塩を溶媒と結合させ、混合物を形成する工程と、混合物を凍結乾燥化する工程と、を含む、方法が含まれる。本発明の特定の方法では、形態4のベンダムスチン塩酸塩は、ある量の形態2のベンダムスチン塩酸塩を提供し、形態2を形態4に変換するだけの十分な期間、約100℃まで形態2を加熱することによって調製される。
【0147】
また、本発明の範囲内に、非晶質ベンダムスチン塩酸塩を含む凍結乾燥組成物が含まれ、ここで前記組成物は、任意の結晶性ベンダムスチン塩酸塩を実質的に含まない。
【0148】
ベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥組成物を調製する好ましい方法では、記載される混合物は、凍結乾燥賦形剤をさらに含む。好ましくは、凍結乾燥賦形剤は、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、デキストロース、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、またはこれらの混合物である。より好ましい方法では、凍結乾燥賦形剤は、マンニトールである。
【0149】
ベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥組成物を調製する好ましい方法では、溶媒は、水、有機溶媒、またはこれらの混合物である。好ましくは、有機溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、またはこれらの混合物である。より好ましい方法では、有機溶媒は、tert−ブタノールである。
【0150】
ベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥組成物を調製する好ましい方法では、溶媒は、水と有機溶媒の混合物である。好ましくは、水と有機溶媒の比は約1:1(v/v)である。また、水と有機溶媒の比が約2:1(v/v)である方法は好ましい。他の好ましい方法では、水と有機溶媒の比は約3:1(v/v)である。他の好ましい方法では、水と有機溶媒の比は約7:3(v/v)である。
【0151】
当業者が理解するように、上記教示内容を考慮すると、本発明の極めて多くの修飾および変形が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、本明細書中で詳述される以外で実施することは可能であり、かつ、本発明の範囲は、すべてのかかる変形を包含するように意図されていることは理解されている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンダムスチン含有組成物、ベンダムスチンを含む医薬組成物、それらを再現性良く作製するためのプロセス、およびそれらを使用して患者を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品有効成分(API)は、種々の異なる形態、たとえば、化学誘導体、溶媒和物、水和物、共結晶、または塩において調製することが可能である。APIはまた、それらが非晶質でありえ、異なる結晶多形体として、および/または異なる溶媒和または水和状態で存在しうる点で、異なる固体形態において調製することが可能である。APIの形態を変化させることにより、その物理特性を変化させることが可能である。たとえば、APIの固体形態は、典型的には、熱力学的に安定な方の固体形態が熱力学的に安定でない方の固体形態より可溶性が低いように、異なる溶解度を有する。固体形態はまた、貯蔵寿命、バイオアベイラビリティ、形態、蒸気圧、密度、色、および圧縮率などの特性が異なりうる。したがって、APIの固体状態のバリエーションは、その物理および薬理特性を調節するための多数の方法の1つである。
【0003】
ベンダムスチン、4−{5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチル−2−ベンジミダゾリル}酪酸:
【化1】
【0004】
が、ドイツ民主共和国(GDR)において1963年に最初に合成され、商標名Cytostasan(登録商標)の下で1971年から1992年までそこで入手可能であった。たとえば、ベンダムスチン塩酸塩一水和物の合成について記載する、W.OzegowskiおよびD.Krebs、IMET3393 γ−[1−methyl−5−bis−(β−chloroethyl)−aminobenzimidazolo−(2)]−butyryl chloride,a new cytostatic agent of the group of benzimidazole nitrogen mustards. Zbl.Pharm.110,(1971年) Heft 10、1013−1019頁を参照のこと。当時から、それは商標名Ribomustin(登録商標)の下、ドイツで市場化されている。ベンダムスチンは、慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、および乳癌などの疾患の治療において治療的有用性を有することが示されているアルキル化剤である。
【0005】
ベンダムスチンが有効であることが示されている一方、それは特に水溶液中で不安定であり、その調製および投与における技術的困難につながることが知られている。したがって、研究者は、ベンダムスチンの調製および安定性を改善する方法ならびにその調合について検討している。たとえば、独国特許第159877号明細書は、ビス−ヒドロキシル前駆体を塩化チオニルと反応させた後、水から再結晶化することによる、ベンダムスチン遊離塩基を調製するための方法を開示する。
【0006】
独国特許第34727号明細書は、ベンダムスチンの誘導体を調製する方法を開示する。記述される誘導体は、1−位置の置換基においてベンダムスチンと異なる。
【0007】
独国特許第80967号明細書は、ベンダムスチン塩酸塩一水和物、アスコルビン酸、および水の注射可能な調製物を開示する。独国特許第80967号明細書は、ベンダムスチンなどの化合物の凍結乾燥が、化合物が処理条件に耐えられるだけの十分な安定性がある場合にのみ可能であることを記載する。独国特許第80967号明細書に記載の調製物は凍結乾燥されない。
【0008】
独国特許第159289号明細書は、凍結乾燥を回避するベンダムスチン塩酸塩の使用準備済の注射可能溶液を開示する。独国特許第159289号明細書は、1,2−プロピレングリコールまたはエタノール中のベンダムスチン塩酸塩の無水溶液について記載する。
【0009】
Cephalon,Inc.(Frazer,PA)に交付された2006年1月12日出願の米国特許出願第11/330,868号明細書は、ベンダムスチン塩酸塩を含む凍結乾燥医薬組成物を調製する方法を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
APIの異なる固体形態の潜在的な利点およびベンダムスチンの有効性を考慮すると、ベンダムスチン塩酸塩の新規の固体形態を同定し、調製するという需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ベンダムスチン塩酸塩の固体形態ならびにそれらを調製する方法が記載される。たとえば、一部の実施形態では、本発明は、ベンダムスチン塩酸塩の形態1、ベンダムスチン塩酸塩の形態3、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、非晶質ベンダムスチン塩酸塩、またはこれらの混合物の少なくとも1つを含むベンダムスチン塩酸塩の固体形態を対象とする。ベンダムスチン塩酸塩のこの固体形態は、次の反射:25.1、24.9、22.9、22.0、および/または14.1±0.2度2θの1つ以上を含むX線粉末回折パターンを生成するか、あるいは次の反射:16.8、17.5、18.5、24.9、および/または28.3±0.2度2θの1つ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成するものでありうる。あるいは、ベンダムスチン塩酸塩の固体形態は、次の反射:26.1、27.9、および/または28.1±0.2度2θの1つ以上を含むX線粉末回折パターンを生成しうるか、あるいは次の反射:10.6、15.6、および/または19.8±0.2度2θの1つ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成する。他の実施形態は、次の反射:10.8、15.5、20.5、および/または23.6±0.2度2θの1つ以上を含むX線粉末回折パターンを生成しうるか、あるいは次の反射:10.3、19.6、20.7、21.2、25.8および/または27.6±0.2度2θの1つ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成しうる。
【0012】
本発明の別の実施形態は、上記のようなベンダムスチン塩酸塩の固体形態を含む組成物を対象とする。特定の実施形態では、組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む医薬組成物である。他の実施形態では、組成物は、凍結乾燥組成物である。特定の実施形態では、組成物は、ベンダムスチン塩酸塩の単一の固体形態を含み、他の固体形態を実質的に含まない。あるいは、組成物は、固体形態の混合物、たとえばベンダムスチン塩酸塩の結晶形態と非晶質ベンダムスチンの混合物を含有しうる。したがって、組成物は、たとえば、次の反射:7.98、10.58、15.43、19.64、および/または19.89±0.2度2θの1つ以上を含むX線粉末回折パターンを生成する凍結乾燥組成物でありうる。
【0013】
組成物を調製する方法および、慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫または乳癌の治療における用途としてそれを使用する方法についても記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ベンダムスチン塩酸塩の1H NMRスペクトルである。
【図2】ベンダムスチン塩酸塩の形態1のX線粉末回折(XRPD)である。
【図3】ベンダムスチン塩酸塩の形態1の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムである。
【図4】ベンダムスチン塩酸塩の形態1の熱重量分析(TGA)サーモグラムである。
【図5】ベンダムスチン塩酸塩の形態1の重量測定による蒸気収着(Gravimetric Vapor Sorption)(GVS)トレースである。
【図6】ベンダムスチン塩酸塩の形態2のX線粉末回折である。
【図7A】ベンダムスチン塩酸塩の形態2のDSCサーモグラムである。
【図7B】2℃/分の加熱速度を使用するベンダムスチン塩酸塩の形態2のDSCサーモグラムである。
【図8】ベンダムスチン塩酸塩の形態2のTGAサーモグラムである。
【図9】ベンダムスチン塩酸塩の形態2のGVSトレースである。
【図10】ベンダムスチン塩酸塩の形態3のX線粉末回折である。
【図11】ベンダムスチン塩酸塩の形態4のX線粉末回折である。
【図12】ベンダムスチン塩酸塩の形態4のDSCサーモグラムである。
【図13】非晶質ベンダムスチン塩酸塩のX線粉末回折である。
【図14】非晶質ベンダムスチン塩酸塩、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、およびマンニトール(ロット番号426804)を含む本発明の一実施形態のX線粉末回折である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
例示的な実施形態の詳細な説明
結晶性ベンダムスチン塩酸塩の4つの多形体は、本明細書で開示される(本明細書中で形態1、形態2、形態3、および形態4と称される)。また、非晶質(すなわち非結晶)ベンダムスチン塩酸塩が説明される。ベンダムスチン塩酸塩のこれらの固体形態に関するスペクトルデータが図1〜14に示され、かつこれらの形態の各々を調製する方法が示される。
【0016】
好ましい実施形態は、形態1、形態2、形態3、形態4、またはこれらの混合物を含むベンダムスチン塩酸塩の固体形態である。より好ましい実施形態は、形態1、形態3、形態4、非晶質ベンダムスチン塩酸塩、またはこれらの混合物であるベンダムスチン塩酸塩の固体形態である。他の実施形態では、本発明の固体形態は、ベンダムスチン塩酸塩の形態2をさらに含む場合がある。これらの多形性固体形態は、たとえばX線粉末回折によって同定され、かつ各多形形態の特性を示す1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれより多い反射ピークによって特徴づけられる場合がある。4つの結晶多形体(形態1、形態2、形態3、形態4)および非晶質ベンダムスチン塩酸塩はまた、そのDSCサーモグラム、TGAサーモグラム、および/またはGVSトレースを参照することによって同定することが可能であり、それらは図1〜14に示される。記載の各多形体または多形体の混合物、および非晶質ベンダムスチン塩酸塩を含むベンダムスチンの固体形態を作製する方法は、本明細書中に記載の技術を用いて実施することが可能である。
【0017】
本明細書中に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態のいずれかは、ベンダムスチン塩酸塩を含む組成物の成分でありうる。一部の実施形態では、本明細書中に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態の少なくとも1つを含むこれらの組成物は、ベンダムスチン塩酸塩の他の固体形態を実質的に含まない。
【0018】
本発明の特定の好ましい実施形態は、少なくとも部分的にX線粉末回折によって特徴づけることが可能である。当該技術分野で公知のように、結晶固体は、ディフラクトグラム(diffractogram)と称されるもので表される、特有の回折ピークパターンを生成する。所与の結晶材料におけるピーク帰属、たとえば度2θ値は、ディフラクトグラムを得るために使用される計装および特定の他の要素、たとえば試料調製に応じてやや変動しうる。それに対し、これらの変動は+/−0.2度2θ以下である必要があり、回折におけるピーク間の相対間隔は、使用される計装または試料調製の方法などと無関係に、常に同じとなる。
【0019】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む医薬組成物である。好ましい賦形剤は、たとえば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、デキストロース、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、またはこれらの混合物を含む。より好ましい薬学的賦形剤は、マンニトールである。
【0020】
本発明の別の実施形態は、ベンダムスチン塩酸塩の形態1、形態2、形態3、形態4、またはこれらの混合物を含む医薬組成物である。より好ましい実施形態は、ベンダムスチン塩酸塩の形態1、形態3、形態4、非晶質、またはこれらの混合物を含む組成物、好ましくは医薬組成物である。他の実施形態では、医薬組成物は、形態2またはベンダムスチン塩酸塩をさらに含む。本発明のより好ましい実施形態は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩とともに形態1、形態2、形態3、および形態4の1つ以上を含む医薬組成物である。
【0021】
本発明の別の実施形態は、本明細書中に記載のベンダムスチン塩酸塩の少なくとも1つの固体形態を含む凍結乾燥組成物である。本発明の好ましい凍結乾燥組成物は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩とベンダムスチン塩酸塩の少なくとも1つの結晶形態の混合物を含むものを含む。本発明のより好ましい凍結乾燥組成物は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩とベンダムスチン塩酸塩の形態4の混合物を含むものを含む。
【0022】
本発明の凍結乾燥組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含みうる。好ましい賦形剤は、たとえば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、デキストロース、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、またはこれらの混合物を含む。より好ましい薬学的賦形剤は、マンニトールである。本発明の好ましい凍結乾燥組成物は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、および好ましくはマンニトールである少なくとも1つ薬学的に許容される賦形剤の混合物を含む。本質的に非晶質ベンダムスチン塩酸塩、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、およびマンニトールからなる凍結乾燥組成物はより好ましい(たとえば図14を参照)。
【0023】
形態1は、短冊状粒子からなる白色粉末として特徴づけられた。形態1は、X線粉末回折(XRPD)によると結晶であり、1H NMRスペクトルは分子の構造に一致し、かつ純度は97.2%であった。熱分析は、融解事象(ピーク=170℃)に対応する開始の167℃(ΔH103J/g)で吸熱を示した。この温度を超えると、分解が生じた。試料は、XRPD(図13)によると、180℃(融解)への加熱時、非晶質になり、周囲温度への冷却時、非晶質状態を保持した。形態1は、低い吸湿性を有することが見出され、それは0〜90%の間の相対湿度(RH)で0.7%の重量増加を示した。これは、周囲条件下での再分析時、XRPDパターンにおける有意な変化をもたらさなかった。40℃/75%RHでの1週間の保存または40℃/11%RHでの3週間の保存の間では、有意な変化は全く認められなかった。XRPDからのデータは、下記に示される。
【0024】
【表1】
【0025】
形態1は、25℃/94%RHでの2か月間の保存の間、ベンダムスチン塩酸塩の水和物(形態2)に変換された。水溶解度は2.16の溶液pHで4.5mg/mlであったが、この実験における試料に対して有意な分解が生じた。水性条件下、UVにより、この材料に対して見出されたpKa値は、0.88(塩基)、4.17(酸)および6.94(塩基)であった。見出されたLogP値は1.10であるとともに、pH7.4のLogDは0.68であった。この形態の単一の結晶構造が得られた。
【0026】
ベンダムスチンHClの形態1の単一の結晶構造の表示
【化2】
【0027】
【表2】
【0028】
形態1は、光での分解に対して形態2より安定であることが示された。
【0029】
形態2(一水和物)は、棒状粒子からなる白色粉末として特徴づけられた。形態2は、XRPDによると結晶であり、純度は98.3%であった。XRPDデータは下記に示される。
【0030】
【表3】
【0031】
熱分析は、水分損失により、開始の37℃で幅広い吸熱を示した。これは周囲温度〜100℃の間での加熱時の5.2%の重量減少に対応し、それは水の1.2当量の減少および形態4への変換に一致した。試料は、GVS分析の間、10〜15%RHで4%の取り込みを示し、それは水の1モルに一致した。GVSサイクル後のXRPD再分析時、14°2θでのピークが認められた。このピークは形態1の存在を示唆し、それは部分的変換がGVS実験の間に生じたことを示唆している。純粋な形態1を25℃/94%RHで1か月保存後、試料は形態2への変換プロセスの最中であったことから、同様のXRPDトレースが認められた。40℃/75%RHでの1か月の保存後、XRPDによると、試料に対する有意な変化は全く認められなかったが、40℃/11%RHでの1か月間では試料はあまり結晶化しなかった。光安定性実験の間では、結晶化度および純度における有意な低下が認められた。
【0032】
先行技術のレビューによると、ベンダムスチン塩酸塩の一水和物が以前に調製されていることが示される。W.OzegowskiおよびD.Krebs、上記を参照のこと。その一水和物は、152〜56℃の報告された融点を有する。この融点は、ベンダムスチン塩酸塩の形態2で認められる融点(153〜157℃と観察された)と類似する。確実ではないが、形態2および先行技術で報告されたベンダムスチン塩酸塩一水和物が同じ多形体であると考えられる。しかし、さらなる特性化の詳細、たとえばXRPDについては全く報告されていないか、または、先行技術において報告されたベンダムスチン塩酸塩一水和物に対して利用できないことから、先に報告された一水和物が形態2のベンダムスチン塩酸塩であったか否かについては知られていない。
【0033】
形態1、形態2および1:1混合物の最大で6週間の保存では、高湿度で保存後に、形態1が2に変換することのみが示された(60℃/95%RH、25℃/94%RHおよび場合によって4℃/88%RH(それぞれ、6、6および2週間に対応))。これらの試験では、6週間後、形態2から形態1への変換が全く認められなかった。動的要素は、試験された6週間以内での完全な熱力学的安定性を判定することを極めて困難にし、両形態は、4℃/34〜76%RH、25℃/43〜75%RHおよび60℃/11〜75%RHで、6週間、動的に安定であった。
【0034】
形態3は、XRPDによると部分的に結晶である白色粉末として特徴づけられた。XRPDの再分析に対し、周囲条件下での1か月の保存後、有意な変化は全く認められなかったが、40℃/75%RHで1週間の間に形態2への変換が生じた。純度は95.9%であった。形態3におけるXRPDデータは下記に示される。
【0035】
【表4】
【0036】
形態4は、XRPDによると結晶である白色粉末として特徴づけられた。熱分析は、153℃での融解(ピーク=157℃)による吸熱を示した。形態4は、周囲条件下で、24時間の間に形態2に変換された。形態4におけるXRPDデータは下記に示される。
【0037】
【表5】
【0038】
非晶質ベンダムスチン塩酸塩は、約50℃のガラス転移温度を有し、周囲条件下で24時間の間に粘着性を示すようになり、それが吸湿性であることが示される。また、部分的結晶化が、場合によって形態2および3の混合物に対し、40℃/75%RHで1週間の間に生じた。GVSの湿度サイクルを経た後、非晶質ベンダムスチン塩酸塩は、形態2に変換された。
【0039】
本発明の好ましい医薬組成物は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩を含む。ベンダムスチン塩酸塩は、主にベンダムスチン塩酸塩の非晶質形態からなる組成物または非晶質ベンダムスチン塩酸塩を含む組成物、ならびに結晶形態、たとえば結晶性ベンダムスチン塩酸塩の形態1、形態2、形態3、形態4、またはこれらの混合物として提供されうる。本発明の好ましい医薬組成物は、実質的に結晶性ベンダムスチン塩酸塩を含まないベンダムスチン塩酸塩を含む。
【0040】
好ましい実施形態では、形態1、形態2、形態3、形態4、および非晶質ベンダムスチン塩酸塩の少なくとも1つ、ならびに少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が提供される。好ましくは、医薬組成物は、形態1、形態3、形態4、および非晶質ベンダムスチン塩酸塩の少なくとも1つ、ならびに少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む。非晶質ベンダムスチン塩酸塩の形態4、および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物がより好ましい。
【0041】
薬学的に許容される賦形剤は、当該技術分野で公知であり、たとえばその内容全体が本明細書中に援用される米国特許出願第11/267,010号明細書中に記載されるものを含む。これらの医薬組成物は、液体溶液または懸濁液、ならびに固体形態、たとえば、カプセル、タブレット、ロゼンジ、トローチ、粉末、懸濁剤などのいずれかとしての注射可能物として調製することが可能である。
【0042】
好ましい実施形態では、医薬組成物は、昇華され、好ましくは凍結乾燥(freeze−dried)または凍結乾燥(lyophilized)組成物である。形態1、形態2、形態3、形態4、またはこれらの混合物を含有するベンダムスチン塩酸塩の、かかる昇華され、好ましくは凍結乾燥(freeze−dried)または凍結乾燥(lyophilized)調製物を調製する方法はまた、本発明の範囲内に含まれる。形態1、形態3、形態4、非晶質ベンダムスチン塩酸塩、またはこれらの混合物を含有するベンダムスチン塩酸塩の、かかる昇華され、好ましくは凍結乾燥(freeze−dried)または凍結乾燥(lyophilized)調製物を調製する方法はまた、本発明の範囲内に含まれる。形態2をさらに含有するベンダムスチン塩酸塩の、かかる昇華され、好ましくは凍結乾燥(freeze−dried)または凍結乾燥(lyophilized)調製物を調製する方法はまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0043】
凍結乾燥は、水の化合物への添加、その後の得られる懸濁液または溶液の凍結、および化合物からの水の昇華を含む。好ましい実施形態では、少なくとも1つの有機溶媒が懸濁液/溶液にさらに加えられる。他の好ましい実施形態では、懸濁液/溶液は、凍結乾燥賦形剤をさらに含む。本発明のベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥調製物は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩をさらに含みうる。
【0044】
典型的な凍結乾燥手順では、水、薬学的に許容される凍結乾燥賦形剤、有機溶媒、および化合物が結合され、溶液が形成され、次いでそれは好ましくは無菌濾過方法を用いて滅菌される。次いで、この溶液は、標準の凍結乾燥機器および技術を用いて凍結乾燥される。
【0045】
本発明の好ましい実施形態がベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥を含む一方、他の昇華技術もまた利用可能であることが想定される。たとえば、ベンダムスチン塩酸塩の記載される形態の1つ以上が溶媒中に溶解、分散または懸濁され、得られる混合物(溶液、分散液または懸濁液である)が凍結され、溶媒が昇華によって除去されうる。
【0046】
凍結乾燥賦形剤は、凍結乾燥プロセスの間に使用される場合、改善された特性、たとえば、改善された処理特性、溶解度特性などを有する凍結乾燥産物をもたらす任意の薬学的に許容される賦形剤でありうる。凍結乾燥賦形剤は、たとえば、膨張性薬剤であってもよく、好適な膨張性薬剤は当該技術分野で公知である。好適な凍結乾燥賦形剤の例として、たとえば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、デキストロース、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、またはこれらの混合物があげられる。凍結乾燥賦形剤はまた、薬学的に許容される抗酸化剤、たとえば、アスコルビン酸、アセチルシステイン、システイン、亜硫酸水素ナトリウム、ブチル−ヒドロキシアニソール、ブチル−ヒドロキシトルエン、またはα−酢酸トコフェロールなどを含みうる。好ましい凍結乾燥賦形剤は、マンニトールである。
【0047】
本発明での使用が意図される溶媒は、ベンダムスチンを著しく分解することなくベンダムスチン塩酸塩を有する安定な溶液を形成し、かつ凍結乾燥を通じて蒸発/昇華可能な水および有機溶媒を含む。好適な有機溶媒の例として、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、またはこれらの混合物があげられる。好ましい有機溶媒は、tert−ブタノールである。
【0048】
本発明の一実施形態は、ベンダムスチン塩酸塩の少なくとも1つの結晶形態を含む凍結乾燥組成物を調製する方法である。好ましくは、ベンダムスチン塩酸塩の結晶形態は、ベンダムスチン塩酸塩の形態1、ベンダムスチン塩酸塩の形態2、ベンダムスチン塩酸塩の形態3、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、またはこれらの混合物である。本発明の他の実施形態では、凍結乾燥組成物は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩をさらに含む。本発明のより好ましい方法は、ベンダムスチン形態4と非晶質ベンダムスチン塩酸塩の混合物を含む凍結乾燥組成物を生成する。
【0049】
ベンダムスチン塩酸塩の少なくとも1つの結晶形態を含む凍結乾燥組成物を調製する好ましい方法は、ベンダムスチン塩酸塩を少なくとも1つの溶媒と結合させ、溶液を形成し、次いで溶液を凍結乾燥化する工程を含む。一部の実施形態では、溶液は、少なくとも1つの凍結乾燥賦形剤をさらに含む。好ましい凍結乾燥賦形剤は、たとえば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、デキストロース、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、またはこれらの混合物を含む。より好ましくは、薬学的に許容される賦形剤は、マンニトールである。一部の実施形態では、溶媒は、水、有機溶媒、またはこれらの混合物である。好ましくは、有機溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、またはこれらの混合物である。より好ましくは、有機溶媒は、tert−ブタノールである。特定の実施形態では、溶媒は、水と有機溶媒の混合物、たとえば約1:1〜約3:1(v/v)、好ましくは約7:3(v/v)の水と有機溶媒の比を有する混合物である。
【0050】
本明細書中に記載の方法のいずれかに従って生成される凍結乾燥組成物はまた、本発明の範囲内に含まれる。本明細書中に記載の凍結乾燥手順に従って調製され、非晶質ベンダムスチン塩酸塩、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、およびマンニトールを含む1つのかかる組成物のX線粉末回折が図14に示される。この回折に対応するXPRDデータは、下記に示される。
【0051】
【表6】
【0052】
また、本発明の範囲内に、たとえば、慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、または乳癌などの疾患を本発明の医薬組成物で治療する方法が含まれる。好ましくは、本発明の固体形態を使用し、慢性リンパ性白血病が治療される。また、本発明の固体形態を使用し、無痛性B細胞非ホジキンリンパ腫、特に、たとえばリツキシマブまたはリツキシマブを含有するレジメンでの治療の間または6か月以内に進行している無痛性B細胞非ホジキンリンパ腫を治療する方法が好ましい。特定の実施形態では、本方法は、本発明の医薬組成物を患者に直接的に治療有効量で投与する工程を含む(たとえば、医薬組成物が錠剤またはカプセルである場合)。他の実施形態では、本方法は、本発明の医薬組成物を、たとえば組成物を投与前に水または別の溶媒に溶解させることにより、投与前に修飾する工程を含む。これらの実施形態では、本方法は、患者に、本発明の医薬組成物から調製される調製物を治療有効量で投与する工程を含む。好ましくは、調製物は、注射可能調製である。注射可能調製物は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内(intrasternally)、くも膜下(intrathecally)、病巣内(intralesionally)、頭蓋内に、または注入を介して投与してもよい。本発明の組成物および注射可能調製物を使用する治療に適した他の症状は、小細胞肺癌、過増殖性疾患、および自己免疫病、たとえば関節リウマチ、多発性硬化症、およびループスを含む。
【0053】
好ましくは、投与される用量は、静脈内に投与される約100mg/m2もしくは約120mg/m2である。静脈内に投与される約25mg/m2、60mg/m2、50mg/m2および90mg/m2の用量はまた、本発明の範囲内に含まれる。好ましくは、用量は、約30分間もしくは約60分間かけて静脈内に投与される。また、用量が28日周期で1日目および2日名に投与される投与の方法が好ましい。一部の実施形態では、用量は、1〜6または1〜8周期で投与される。
【0054】
本明細書中に記載の注射可能調製物は、たとえば当該技術分野で公知の技術に従って調合される無菌の注射可能水性または油性の懸濁液または溶液としての無菌注射可能調製物の形態である。典型的には、形態1、形態2、形態3、形態4、または非晶質ベンダムスチン塩酸塩の少なくとも1つ、好ましくは形態1、形態3、形態4、または非晶質ベンダムスチン塩酸塩の少なくとも1つを含有する本発明の医薬組成物は、凍結乾燥粉末として調合され、それはたとえば、50mLもしくは20mLのバイアルあたり100mgの薬剤を有するバイアル内に提供することが可能である。注射可能調製物は、凍結乾燥(freeze−dried)または凍結乾燥(lyophilized)組成物を無菌注射用水で再構成し、次いで薬学的に許容される静脈内溶液、たとえば、0.9%塩化ナトリウム、水中5%デキストロース(D5W)、乳酸リンガー溶液、または0.45%塩化ナトリウム/2.5%デキストロースなどでさらに希釈することによって調製することが可能である。
【0055】
好ましくは、本明細書中に記載のベンダムスチン塩酸塩の医薬組成物は、たとえば滅菌水で、注射可能調製物中で、約20分未満で再構成される。より好ましくは、再構成は、約10分未満、最も好ましくは約5分で生じる。
【0056】
典型的な再構成プロセスであれば、好ましくは無菌で、100mgのベンダムスチン塩酸塩を20mLの無菌注射用水で再構成することを含むことになる。これは5mg/mLのベンダムスチン塩酸塩濃度を有する澄んだ無色から淡黄色の溶液をもたらす。凍結乾燥ベンダムスチン塩酸塩が再構成されている場合、ベンダムスチン塩酸塩は約5分以内に完全に溶解する必要がある。(5mg/mLの濃度に基づく)必要用量に対して必要とされる容量は、無菌で回収し、注入用の0.9%塩化ナトリウム(または他の薬学的に許容される静脈内溶液)の500mLの注入バッグに移してもよい。好ましくは、再構成された溶液は、再構成の30分以内に注入バッグに移される。移した後、注入バッグの内容物は、徹底的に混合される。静脈内注入による投与は、典型的には約30分間〜約60分間にわたって提供される。
【0057】
本発明の医薬組成物が1つ以上の抗新生物剤(anti−neoplastic agent)と併せて投与可能であり、ここで抗新生物剤は、本発明の組成物の投与に対して前、同時、または後に投与されることが想定される。薬学的に許容される抗新生物剤は、当該技術分野で公知である。好ましい抗新生物剤は、その全体は参照により本明細書中に援用される、2006年1月12日に出願された同時係属中の米国特許出願第11/330,868号明細書中に開示されるものである。
【0058】
ベンダムスチンの治療有効量は、従来の技術の使用により、担当診断医によって容易に決定することが可能である。有効用量は、疾患または障害の進行のタイプおよび範囲、特定の患者の全体健康、ベンダムスチンの生物学的有効性、ベンダムスチンの調合、ならびにベンダムスチンの複数の形態の投与の経路を含む複数の要素に依存して変化しうる。ベンダムスチンはまた、所望される効果が得られるまで、漸増するより低い用量レベルで投与することが可能である。
【0059】
用語
用語「抗溶媒」は、本明細書で使用される場合、化合物が実質的に不可溶性である溶媒を意味する。
【0060】
用語「結晶」は、本明細書で使用される場合、分子の規則的に繰り返す配置または外面(external face planes)を有することを意味する。
【0061】
用語「結晶組成物」は、本明細書で使用される場合、X線粉末回折によって分析される場合、ピークの特徴的パターンを提供する固体化合物または化合物の混合物を示し、これは、限定はされないが、多形体、溶媒和物、水和物、共結晶、および脱溶媒和された溶媒和物を含む。
【0062】
用語「単離する」は、本明細書で使用される場合、溶媒、抗溶媒、または溶媒と抗溶媒の混合物から化合物を分離し、固体、半固体またはシロップを提供することを意味する。これは、典型的には、遠心分離、真空を伴う場合または伴わない場合での濾過、陽圧下での濾過、蒸留、蒸発あるいはこれらの組み合わせなどの手段によって行われる。単離は、精製(その間に、単離物の化学的純度、キラルまたは化学的純度およびキラル純度が増大する)を伴うかまたは伴わない場合もある。精製は、典型的には、結晶化、蒸留、抽出、酸性、塩基性もしくは中性アルミナを通す濾過、酸性、塩基性もしくは中性炭を通す濾過、キラル定常期が詰め込まれたカラムでのカラムクロマトグラフィー、多孔質紙、プラスチックもしくはグラスバリアを通す濾過、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、再結晶化、順相高性能液体クロマトグラフィー、逆相高性能液体クロマトグラフィー、粉砕などの手段によって行われる。
【0063】
用語「薬学的に許容される賦形剤」は、本明細書で使用される場合、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張性および吸収遅延剤などを含む。医薬活性物質におけるかかる媒体および作用剤の使用は、当該技術分野で周知であり、たとえば、Remington:「The Science and Practice of Pharmacy、第20版;Gennaro A.R.編;Lippincott Williams & Wilkins(Philadelphia,PA)、2000年があげられる。任意の従来の媒体または作用剤が活性成分に適合しないような場合を除き、治療組成物におけるその使用が考えられる。補助活性成分もまた、組成物中に組み込んでもよい。
【0064】
用語「溶液」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの溶媒および溶媒中に少なくとも部分的に溶解された少なくとも1つの化合物を含有する混合物を示す。
【0065】
用語「溶媒和物」は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義される溶質および有機溶媒によって形成される可変化学量論の結晶組成物を意味する。
【0066】
用語「溶媒」は、本明細書で使用される場合、別の物質、典型的には固体を完全または部分的に溶解させる能力がある物質、典型的には液体を意味する。本発明の実施のための溶媒は、限定はされないが、水、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ブタノール、tert−ブタノール、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ギ酸、ヘプタン、ヘキサン、イソプロパノール、メタノール、メチルエチルケトン(ブタノン)、1メチル−2−ピロリジノン、メシチレン、ニトロメタン、ポリエチレングリコール、プロパノール、2−プロパノン、プロピオニトリル、ピリジン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、これらの混合物などを含む。
【0067】
用語「昇華」は、本明細書で使用される場合、中間の液体段階を伴わない固相から気相への転移を示す。
【0068】
用語「実質的に含まない」は、ベンダムスチン塩酸塩の特定の形態を含有する組成物に関して本明細書で使用される場合、化合物の他の形態を「実質的に含まない」一方、列挙される形態が、ベンダムスチン塩酸塩の他の列挙される形態の10%未満、好ましくは5%未満、特に2%未満および最も好ましくは1%未満に関連することを意味する。
【0069】
用語「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、確立された薬物動態学的方法および技術に従って測定される場合、所与の投与経路での所与の薬剤に関連した、意図される生理的効果をもたらすのに必要とされる、決定される量を示す。適切な特定の治療有効量は、従来の技術の使用により、当業者としての担当診断医によって容易に決定されうる。有効用量は、疾患または障害の進行のタイプおよび範囲、特定の患者の全体健康状態、選択される化合物の相対的な生物学的有効性、活性物質と適切な賦形剤との調合、および投与の経路を含む複数の要素に応じて変化することになる。
【0070】
計装
X線粉末回折(XRPD)
ベンダムスチン塩酸塩の新規の結晶形態は、特定の結晶形態のフィンガープリント(fingerprint)を生成するXRPDによって特徴づけられている。2θ値の測定値は、典型的には±0.2°以内の精度である。
【0071】
Bruker AXS/Diemens D5000
X線粉末回折パターンは、CuKα放射(40kV、40mA)、θ−θゴニオメーター、自動発散および受光スリット、グラファイト二次モノクロメーターおよびシンチレーション計数管を使用し、Siemens D5000回折計で収集された。機器は、認証されたコランダム標準(NIST1976)を使用して性能検査される。
【0072】
周囲条件
周囲条件下で実行される試料は、平板標本として調製された。約35mgの試料は、研磨されたバックグラウンド0(510)のシリコンウエーハ内に切断された空洞に緩やかに詰め込まれ、Mylarカバーが試料上に設けられた。分析の間、試料はそれ自体の面で回転された。
【0073】
Bruker AXS C2 GADDS
X線粉末回折パターンは、CuKα放射(40kV、40mA)、自動化XYZステージ、オートサンプルポジショニング(autosample positioning)用レーザービデオ顕微鏡およびHiStar二次元領域検出器を使用し、Bruker AXS C2 GADDS回折計で収集された。X線光学は、0.3mmのピンホールコリメータと連携した単一のGoebel多層ミラーからなる。
【0074】
ビーム発散、すなわち試料に対するX線ビームの有効なサイズは、約5mmであった。θ−θ連続走査モードは、3.2°〜29.7°の有効な2θ範囲を与える20cmの試料−検出器距離の場合に用いられる。典型的にいえば、試料はX線ビームに120秒間暴露されることになる。
【0075】
周囲条件
周囲条件下で実行される試料は、粉砕されていない粉末を使用し、平板標本として調製された。約1〜2mgの試料は、スライドグラス上に軽く押し付けられ、平面が得られた。
【0076】
非周囲条件
非周囲条件下で実行される試料は、熱伝導性化合物とともにシリコンウエーハ上に載せられた。次いで、試料は、約20℃/分で適切な温度に加熱され、次いでデータ収集が開始される前に約1分間、等温的に保持された。
【0077】
単一の結晶X線回折(SCXRD)
選択された結晶は、パラトーン(paratone)油でコーティングされ、Bruker SMART CCD回折計で急速冷凍された。データは、Oxford Cryosystems Cryostream冷却装置を備えたBruker AXS 1K SMART CCD回折計で収集された。構造は、SHELXSまたはSHELXDプログラムのいずれかを使用して解明され、Bruker AXS SHELXTL一式の一部としてのSHELXLプログラムを用いて精密化された。特に指定のない限り、炭素に結合される水素原子は、幾何学的に配置され、ライディング(riding)等方性変位パラメータを用いて精密化可能であった。ヘテロ原子に結合される水素原子は、差フーリエ合成で位置づけられ、等方性変位パラメータで自由に精密化可能であった。
【0078】
1H NMR
1H NMRスペクトルは、オートサンプラーを備えたBruker製400MHz用機器で収集され、DRX400コンソールによって制御された。自動化実験が、標準のBrukerに負荷される実験値を使用し、Topspin v1.3(パッチレベル6)で作動するICON−NMR v4.0.4(ビルド1)を使用して得られた。非ルーチンの分光においては、データは、Topspinの単独使用を通じて得られた。特に指定のない限り、試料はd6−DMSOで調製された。オフライン分析は、ACD SpecManager v9.09(ビルド7703)を使用して実施された。
【0079】
示差走査熱量測定(DSC)
DSCデータは、50位置のオートサンプラーを備えたTA Instruments Q1000で収集された。機器は、認証されたインジウムを使用し、エネルギーおよび温度較正のために較正された。典型的には、0.5〜2mgの各試料は、ピンホールが設けられた(pin−holed)密封アルミニウムパンで、25℃から200℃へ10℃/分で加熱された。50ml/分での窒素パージが試料上で維持された。機器制御ソフトウェアはThermal Advantage v4.6.6であり、データは、Universal Analysis v4.3Aを使用して分析された。
【0080】
熱重量分析(TGA)
TGAデータは、16位置のオートサンプラーを備えたTA Instruments Q500 TGAで収集された。機器は、認証されたアルメル(Alumel)を使用し、温度較正された。典型的には、1〜2mgの各試料は、予め風袋を量った(pre−tared)白金るつぼ上のピンホールが設けられた密封アルミニウムDSCパンに負荷され、周囲温度から200℃へ10℃/分で加熱された。60ml/分での窒素パージが試料上で維持された。機器制御ソフトウェアはThermal Advantage v4.6.6であり、データは、Universal Analysis v4.3Aを使用して分析された。
【0081】
純度分析
純度分析は、ダイオードアレイ検出器を備えたAgilent HP1100シリーズシステム上でChemStationソフトウェアvB.02.01−SR1を使用して実施された。
【0082】
【表7】
【0083】
HPLCによる熱力学的水溶解度
水溶解度は、十分な化合物を0.25mlの水中に懸濁することによって測定され、最大最終濃度≧10mg/mlの化合物の親遊離形態(parent free−form)がもたらされた。懸濁液は、25℃で24時間(特に指定のない限り)平衡化され、その後、pHが測定された。次いで、懸濁液は、グラスファイバのCフィルタを通して濾過され、96ウェルプレートに入れられた。次いで、濾過液は100倍に希釈された。定量は、DMSO中、約0.1mg/mlの標準溶液に関連したHPLCによって行われた。さまざまな容量の標準の希釈および不希釈の試料溶液が注入された。溶解度は、標準注入における主なピークの場合と同じ保持時間で見出されるピークの取り込みによって判定されるピーク面積を用いて計算された。
【0084】
【表8】
【0085】
重量測定による蒸気収着(GVS)
収着等温線が、CFRSorpソフトウェアによって制御されるHiden IGASorp水分収着分析計を使用して得られた。試料温度は、Huber再循環水槽によって25℃で維持された。水分は、乾燥窒素流と湿った窒素流を250ml/分の全流速で混合することによって制御された。相対湿度は、試料付近に位置する較正されたVaisala RHプローブ(0〜95%RHの動的範囲)によって測定された。%RHの関数としての試料の重量変化(質量緩和)は、微量天秤(精度±0.001mg)によって常時モニタリングされた。典型的には、1〜3mgの試料は、周囲条件下で風袋を量った(tared)メッシュステンレス鋼バスケット内に入れられた。試料は、40%RHおよび25℃(典型的な室内条件)で負荷および無負荷にされた。水分収着等温線は、下記の概要に従って作成された(2回の走査で1つの全サイクルが得られる)。標準等温線は、25℃、10%RHの間隔で0〜90%RH範囲にわたって作成された。
【0086】
【表9】
【0087】
ソフトウェアでは、質量緩和のモデルを伴う最小自乗最小化手法が使用され、漸近値が予測される。測定される質量緩和値は、次の%RH値が選択される前にソフトウェアによって予測される5%以内でなければならない。最小平衡化時間は1時間に、また最大平衡化時間は4時間に設定された。
【0088】
pKaの測定および予測
データは、D−PASを備えたSirius GlpKa機器で収集された。測定は、UVにより、水溶液中、25℃でなされた。化合物は、最初に5mg/mlでDMSOに溶解され、ここで50μl(0.25mg)がpH1.3〜9.0の滴定のために使用された。滴定媒体は、0.15M KCl(水性)で、イオン強度調整(ISA)がなされた。データは、Refinement Proソフトウェアv1.0を使用して精密化された。pKa値の予測は、ACD pKa予測ソフトウェアv9を使用してなされた。
【0089】
LogPの判定
データは、オクタノール:イオン強度調整(ISA)水の3つの比を用い、Sirius GlpKa機器での電位差滴定によって収集され、LogP、Log Pion、およびLogD値が得られた。データは、Refinement Proソフトウェアv1.0を使用して精密化された。ACD v9およびSyracuse KOWWIN v1.67ソフトウェアを使用し、LogP値の予測がなされた。
【0090】
ベンダムスチン塩酸塩(粗)の調製
工程1:4−{5−[ビス−(2−ヒドロキシ−エチル)−アミノ]−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−yl}−酪酸エチルエステル(27.0kg)が270kgのクロロホルムに溶解された。0〜5℃に冷却後、19.2kgの塩化チオニルが約1時間かけて加えられた。混合物は、25℃±5℃に温められ、20〜24時間撹拌された。次いで、75.6kgの塩酸(32%水溶液)が加えられた。相分離後、有機(下方)相が除去された。生成物は水相中で保持された。
【0091】
工程2:塩酸中の活性炭の懸濁液が、工程1で得られた水相に加えられた。混合物は、85〜90℃に1時間かけて加熱され、還流下で4〜5時間撹拌された。次いで、懸濁液は濾過され、水性塩酸ですすがれた。溶媒は、減圧下、65℃以下の温度で蒸留除去された。108kg〜324kg(108kgが好ましい)の温かい(35〜45℃)脱イオン水が加えられ、結晶化が誘導された。
【0092】
結晶化後、混合物は、20℃±5℃に冷却され、さらに1〜2時間または一晩撹拌された。生成物は、フィルタドライヤでの濾過によって回収され、108〜324kg(108kgが好ましい)の脱イオン水および108〜216kg(108kgが好ましい)の冷却アセトンで、それぞれ3回に分けて洗浄された。粗生成物は、フィルタドライヤにおいて、少なくとも1時間の還流下で、54〜108kg(54kgが好ましい)のアセトンで4回ずつ処理された。懸濁液は濾過され、生成物は、減圧下、40℃以下の温度で乾燥され、21.4kg±2.1kgのベンダムスチン塩酸塩(粗)が得られた(70%±10%、乾燥物質として計算)。
【0093】
工程3(オプション):工程2から得られた生成物は、塩酸(32%水溶液)に溶解され、加熱され、少なくとも4時間還流された(85〜90℃)。色を改善するため、活性炭が塩酸に加えられ、混合物は加熱され、少なくとも4時間還流されうる(85〜90℃)。活性炭とともに、懸濁液は濾過され、水性塩酸ですすがれた。溶媒は、減圧下、65℃以下の温度で蒸留除去された。次いで、混合物は脱イオン水で希釈された。15分以内に結晶化が全く生じなかった場合、混合物は播種された。結晶化後、懸濁液は40℃±5℃で1時間撹拌され、次いで20℃±5℃に冷却された。20℃±5℃でさらに1〜2時間攪拌後、生成物は、濾過によって収集され、冷却脱イオン水で3回および冷却アセトンで少なくとも3回洗浄された。粗生成物は、少なくとも1時間の還流下で、アセトンで4回処理された。懸濁液は濾過され、生成物は、減圧下、40℃以下の温度で乾燥された。ベンダムスチン塩酸塩(粗)の収率は80%±10%であった。
【0094】
精製ベンダムスチン塩酸塩の調製
ベンダムスチンHCl(粗)(15.0kg)は、室温で、エタノール/水(vol/vol=97/3)中の0.45kgの活性炭で懸濁された。混合物は、75〜80℃まで迅速に温められ、還流条件下において10分以下で撹拌された。混合物は濾過され、活性炭が除去された。濾過後、33.0kgの濾過されたアセトンは、40〜50℃で迅速に加えられ、結晶化が誘導された。
【0095】
結晶化後、混合物は、40〜50℃で30〜60分間撹拌され、次いで0〜5℃に冷却され、少なくともさらに30分間または一晩撹拌された。精製物は、濾過によって収集され、45kgの冷却アセトンで3回洗浄された。その後、粗生成物は、少なくとも1時間の還流下で、30kgのアセトンで4回ずつ処理された。懸濁液は濾過され、生成物は減圧下、40℃以下の温度で乾燥され、11.3±1.5kgのベンダムスチン塩酸塩が得られた(75%±10%)。
【0096】
ベンダムスチン塩酸塩のバルク溶液(1L)の調製
無菌条件下で、注射用水(「WFI」、全バッチサイズの約65%)は、ミキサーを備えたステンレス鋼の複合容器に移された。複合タンク内でのWFIの温度が、15〜25℃に調節された。マンニトール(25.5g)が複合容器に加えられ、最低5分間混合される間、溶液温度が15〜25℃で維持された。三級ブチルアルコール(「TBA」、234.2g)が複合容器に加えられた。溶液は、15〜25℃で最低5分間混合された。精製ベンダムスチンHCl(15.0g)が複合容器に加えられ、最低10分間混合される間、溶液温度が15〜25℃で維持された。バッチを1Lにするのに十分な注射用水USPが加えられ、最低10分間混合された。バルク溶液は、1〜2バールの窒素を使用し、0.22μmのフィルタを通す濾過によって滅菌された。
【0097】
ベンダムスチン塩酸塩の濾過されたバルク溶液の凍結乾燥
工程1:調合した無菌濾過ベンダムスチンHClのバルク溶液は、完全自動化された充填/ストッパリング装置によって充填された。バイアルは、続いてストッパリングステーションに移され、そこでは、予め滅菌されたストッパーで部分的にストッパリングがなされた。ベンダムスチンHCl製剤は、20cc タイプIのホウケイ酸塩のチュービンググラス・アンバーバイアル(tubing glass amber vial)内に、約6.47g(6.67mL)まで充填された。充填され、部分的にストッパリングがなされたバイアルは、凍結乾燥領域内に位置する凍結乾燥機に移された。
【0098】
工程2:工程1からの、充填され、部分的にストッパリングがなされたバイアルは、生成物充填トレイ(product−filled tray)で装填することが可能な8つの棚(shelve)を備えた凍結乾燥機に移される。充填され、部分的にストッパリングがなされた製剤バイアルは凍結乾燥された。ベンダムスチンHCl製剤の凍結乾燥の間に用いられる凍結乾燥サイクルの概要は、下記の表1に提供される。
【0099】
【表10】
【0100】
凍結乾燥サイクルの最後に、チャンバ圧は、無菌濾過窒素で約0.6バールに昇圧された。バイアルは、油圧作動的に、無菌濾過窒素雰囲気下で棚をストッパリング位置に調節することにより、ストッパリングがなされた。バイアルのストッパリング後、棚は上昇され、チャンバは、未装填においては、無菌濾過空気が充填され(backfilled)、大気圧にされた。この方法により、約100mgのベンダムスチンHCl/バイアルがもたらされる。
【0101】
ベンダムスチン塩酸塩の溶液の調製
50mgのベンダムスチン塩酸塩の形態1は、スクリュートップバイアル内で秤量された。溶媒が、透明溶液が得られるまで一定分量で加えられた(さらに50℃まで加熱)。観察結果が表2に記録されている。
【0102】
【表11】
【0103】
成熟実験
約10mgの形態1のベンダムスチン塩酸塩は、表3にあげられる溶媒中でスラリー化された。スラリーは、50℃および周囲温度で、交互に4時間で、48時間振とうされた。次いで、任意の固体材料が、濾過によって単離され、XRPDによって分析された。溶液は蒸発させておいた。結果は、下記の表3に示される。
【0104】
【表12】
【0105】
急速蒸発によるベンダムスチンの結晶化
ベンダムスチン塩酸塩をエタノール、酢酸、メタノール、ホルムアミド、DMF、DMSO、およびDMAに入れた溶液を、キャップなしバイアルの溶液を蒸発させ、乾燥させておくことにより、周囲条件下で蒸発させておいた(本明細書中で「急速蒸発」と称される)。得られた固体は、XRPDによって分析された。結果は表4に示される。
【0106】
【表13】
【0107】
遅延蒸発(Slow evaporation)によるベンダムスチンの結晶化
ベンダムスチン塩酸塩をエタノール、酢酸、メタノール、ホルムアミド、DMF、DMSO、およびDMAに入れた溶液を、周囲条件下でキャップ付きバイアル(バイアルキャップはピンホールを有する)の溶液を蒸発させ、乾燥させておくことにより、周囲条件下で蒸発させておいた。蒸発の速度は、小穴を有する気密性フィルムカバーの使用によって制限された。得られた固体は、XRPDによって分析された。結果は表5に示される。
【0108】
【表14】
【0109】
抗溶媒による結晶化
トルエンは、ベンダムスチン塩酸塩をエタノール、酢酸、メタノール、ホルムアミド、DMF、DMSO、およびDMAに入れた溶液に対する抗溶媒として加えられ、結晶化が促進された。加えられるトルエンの容量および抗溶媒の添加に対する観察結果は、表6に記録されている。固体は濾過によって単離された。得られた固体は、XRPDによって分析された。結果は表6に示される。
【0110】
【表15】
【0111】
ベンダムスチン塩酸塩の形態1からの形態2の調製
1mLの水が30mgのベンダムスチン塩酸塩の形態1に加えられ、混合物は25℃に温められ、透明溶液が得られた。約4分後、形態2が白色固体として溶液から沈殿した。固体は、濾過によって回収された。
【0112】
ベンダムスチン塩酸塩の形態1および2の安定性
10mgのベンダムスチン塩酸塩の形態1(A)、ベンダムスチン塩酸塩の形態2(B)、および形態1および2の1:1混合物(C)が、表7にあげられる条件下で保存された。試料は、1日目、2週目、および6週目時点で、XRPDによって分析された。結果は、表7Aに示される。高湿度条件(約90%RH)下で、ベンダムスチン塩酸塩の形態1の形態2への変換が認められた。この変換の速度は、温度とともに増加するようにみられる。形態1および2の純度は、4℃/87%RH(5)および60℃/75%RH(13)での6週間の保存後測定された。純度の低下は大して認められなかった。
【0113】
【表16】
【0114】
【表17】
【0115】
ベンダムスチン塩酸塩の光安定性
ベンダムスチン塩酸塩の形態1および形態2の試料は、Suntest Light Box内で、25℃に設定された黒体温度、250ワット/m2の光強度で1週間ストレスが加えられた。保護用にホイルで包まれた各試料のブランクもまた、実験において含められた。実験後、試料はXRPDによって分析され、純度はHPLCによって測定された。結晶化度と純度の双方における有意な低下が、光ストレス試験の間、形態2において認められた。それに対し、形態1は、純度におけるわずかな低下を示しただけであった。表8を参照のこと。
【0116】
【表18】
【0117】
特定の実施形態では、本発明は、ベンダムスチン塩酸塩の形態1、ベンダムスチン塩酸塩の形態2、ベンダムスチン塩酸塩の形態3、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、またはこれらの混合物を含む医薬組成物を対象とする。本発明はまた、ベンダムスチン塩酸塩がベンダムスチン塩酸塩の形態1である医薬組成物を対象とする。本発明はまた、ベンダムスチン塩酸塩がベンダムスチン塩酸塩の形態2である医薬組成物を対象とする。本発明はまた、ベンダムスチン塩酸塩がベンダムスチン塩酸塩の形態3である医薬組成物を対象とする。本発明はまた、ベンダムスチン塩酸塩がベンダムスチン塩酸塩の形態4である医薬組成物を対象とする。本発明はまた、非晶質ベンダムスチン塩酸塩をさらに含む医薬組成物を対象とする。
【0118】
本発明の他の実施形態は、ベンダムスチン塩酸塩の形態1、ベンダムスチン塩酸塩の形態2、ベンダムスチン塩酸塩の形態3、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、またはこれらの混合物であるベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、ベンダムスチン塩酸塩がベンダムスチン塩酸塩の形態1である結晶形態を対象とする。本発明はまた、ベンダムスチン塩酸塩がベンダムスチン塩酸塩の形態2である結晶形態を対象とする。本発明はまた、ベンダムスチン塩酸塩がベンダムスチン塩酸塩の形態3である結晶形態を対象とする。本発明はまた、ベンダムスチン塩酸塩がベンダムスチン塩酸塩の形態4である結晶形態を対象とする。
【0119】
本発明の他の実施形態は、次の反射:25.12、24.85、22.92、21.97、および/または14.05±0.2度2θの1つ以上を含むX線粉末回折パターンを生成するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、次の反射:16.82、17.51、18.45、24.85、および/または28.33±0.2度2θの1つ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、実質的に図2に示されるX線粉末回折パターンを有するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、本明細書中に示されるベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を含む医薬組成物を対象とする。
【0120】
本発明の他の実施形態は、次の反射:10.64、20.12、20.45、および/または23.11±0.2度2θの1つ以上を含むX線粉末回折パターンを生成するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、次の反射:10.17、15.06、18.82、20.95、25.20、26.54、および/または29.05±0.2度2θの1つ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、実質的に図6に示されるX線粉末回折パターンを有するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、本明細書中に示されるベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を含む医薬組成物を対象とする。
【0121】
本発明の他の実施形態は、次の反射:26.08、27.85、および/または28.11±0.2度2θの1つ以上を含むX線粉末回折パターンを生成するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、次の反射:10.58、15.55、および/または19.75±0.2度2θの1つ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、実質的に図10に示されるX線粉末回折パターンを有するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、本明細書中に示されるベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を含む医薬組成物を対象とする。
【0122】
本発明の他の実施形態は、次の反射:10.83、15.52、20.45、および/または23.58±0.2度2θの1つ以上を含むX線粉末回折パターンを生成するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、次の反射:10.27、19.64、20.73、21.23、25.81および/または27.63±0.2度2θの1つ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、実質的に図11に示されるX線粉末回折パターンを有するベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を対象とする。本発明はまた、本明細書中に示されるベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を含む医薬組成物を対象とする。
【0123】
本発明の他の実施形態は、ベンダムスチン塩酸塩の形態1、ベンダムスチン塩酸塩の形態2、ベンダムスチン塩酸塩の形態3、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、またはこれらの混合物を含む凍結乾燥組成物を対象とする。特定の実施形態では、ベンダムスチン塩酸塩は、ベンダムスチン形態1である。他の実施形態では、ベンダムスチン塩酸塩は、ベンダムスチン形態2である。他の実施形態では、ベンダムスチン塩酸塩は、ベンダムスチン形態3である。他の実施形態では、ベンダムスチン塩酸塩は、ベンダムスチン形態4である。本発明はまた、非晶質ベンダムスチン塩酸塩をさらに含む、本明細書中に記載の凍結乾燥組成物を対象とする。
【0124】
本発明の好ましい実施形態は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩、ベンダムスチン塩酸塩の形態2、および薬学的に許容される賦形剤を含む、本明細書中に記載の凍結乾燥組成物を含む。
【0125】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を含む凍結乾燥組成物を調製するための方法であって、ベンダムスチン塩酸塩を少なくとも1つの溶媒と結合させ、混合物を形成する工程と、
混合物を凍結乾燥化する工程と、を含む、方法が含まれる。好ましくは、本発明の方法は、溶液が凍結乾燥賦形剤をさらに含むものを含む。好ましくは、凍結乾燥賦形剤は、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、デキストロース、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、またはこれらの混合物である。より好ましくは、凍結乾燥賦形剤はマンニトールである。好ましくは、本発明の方法は、溶媒が、水、有機溶媒、またはこれらの混合物であるものを含む。好ましくは、有機溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、またはこれらの混合物である。より好ましくは、有機溶媒は、tert−ブタノールである。本発明の他の方法では、溶媒は、水と有機溶媒の混合物である。本発明の好ましい方法では、水と有機溶媒の比は約1:1(v/v)である。本発明の好ましい方法では、水と有機溶媒の比は約2:1(v/v)である。本発明の好ましい方法では、水と有機溶媒の比は約3:1(v/v)である。本発明の好ましい方法では、水と有機溶媒の比は約7:3(v/v)である。
【0126】
本発明の好ましい方法では、ベンダムスチン塩酸塩の結晶形態は形態1である。本発明の他の好ましい方法では、ベンダムスチン塩酸塩の結晶形態は形態2である。本発明のさらに他の好ましい方法では、ベンダムスチン塩酸塩の結晶形態は形態3である。本発明のさらに他の好ましい方法では、ベンダムスチン塩酸塩の結晶形態は形態4である。本発明の他の好ましい方法は、凍結乾燥組成物が非晶質ベンダムスチン塩酸塩をさらに含むものを含む。
【0127】
また、本発明の範囲内に、慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫または乳癌を治療する方法であって、それを必要とする患者に、本明細書中に記載の組成物から調製される調製物を治療有効量で投与する工程を含む、方法が含まれる。
【0128】
また、本発明の範囲内に、形態1のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩を、エタノール、酢酸エチル、tert−ブチルメチルエーテル、イソ−プロピルアルコール、酢酸イソプロピル、ジクロロメタン、酢酸メチル、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ヘプタン、トルエン、メタノール、ジオキサン、ジエチルエーテル、アニソール、ニトロメタン、またはジ−イソプロピルエーテルに入れた溶液を提供する工程と、溶液を周囲条件下で蒸発させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0129】
また、本発明の範囲内に、形態1のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩を、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、またはジメチルアミンに入れた溶液を提供する工程と、溶液を周囲条件下で乾燥するまで迅速に蒸発させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0130】
また、本発明の範囲内に、形態1のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩を、エタノール、酢酸、メタノール、またはジメチルスルホキシドに入れた溶液を提供する工程と、溶液を周囲条件下で乾燥するまで徐々に蒸発させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0131】
また、本発明の範囲内に、形態1のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩を、酢酸、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、またはジメチルアミンに入れた溶液を提供する工程と、結晶化を誘発するのに十分な量のトルエンを加える工程と、を含む、方法が含まれる。
【0132】
また、本発明の範囲内に、形態2のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩を、ジメチルホルムアミド、メタノール、またはジメチルアミンに入れた溶液を提供する工程と、溶液を周囲条件下で蒸発させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0133】
また、本発明の範囲内に、形態2のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩を、酢酸またはメタノールに入れた溶液を提供する工程と、溶液を周囲条件下で乾燥するまで迅速に蒸発させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0134】
また、本発明の範囲内に、形態2のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩をメタノールに入れた溶液を提供する工程と、溶液を周囲条件下で乾燥するまで緩徐に蒸発させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0135】
また、本発明の範囲内に、形態2のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ある量の形態1のベンダムスチン塩酸塩を提供する工程と、形態1を形態2に変換するだけの十分な期間、少なくとも約88%の相対湿度で同量を保存する工程と、を含む、方法が含まれる。
【0136】
また、本発明の範囲内に、形態2のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩の形態1を水と結合させ、溶液を形成する工程と、形態2の溶液からの沈殿を可能にする工程と、を含む、方法が含まれる。
【0137】
また、本発明の範囲内に、形態3のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ある量の非晶質ベンダムスチン塩酸塩を提供する工程と、非晶質ベンダムスチン塩酸塩を形態3に変換するだけの十分な期間、約40℃および約75%の相対湿度で同量を保存する工程と、を含む、方法が含まれる。
【0138】
また、本発明の範囲内に、形態4のベンダムスチン塩酸塩を調製する方法であって、ある量の形態2のベンダムスチン塩酸塩を提供する工程と、形態2を形態4に変換するだけの十分な期間、約100℃まで形態2を加熱する工程と、を含む、方法が含まれる。
【0139】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の医薬組成物を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩の形態1を調製する工程と、形態1を薬学的に許容される賦形剤と結合させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0140】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の医薬組成物を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩の形態2を調製する工程と、形態2を薬学的に許容される賦形剤と結合させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0141】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の医薬組成物を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩の形態3を調製する工程と、形態3を薬学的に許容される賦形剤と結合させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0142】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の医薬組成物を調製する方法であって、ベンダムスチン塩酸塩の形態4を調製する工程と、形態4を薬学的に許容される賦形剤と結合させる工程と、を含む、方法が含まれる。
【0143】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥組成物を調製する方法であって、形態1のベンダムスチン塩酸塩を溶媒と結合させ、混合物を形成する工程と、混合物を凍結乾燥化する工程と、を含む、方法が含まれる。本発明によると、形態1のベンダムスチン塩酸塩は、本明細書中に記載の方法のいずれかに従って調製される。
【0144】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥組成物を調製する方法であって、形態2のベンダムスチン塩酸塩を溶媒と結合させ、混合物を形成する工程と、混合物を凍結乾燥化する工程と、を含む、方法が含まれる。本発明によると、形態1のベンダムスチン塩酸塩は、本明細書中に記載の方法のいずれかに従って調製される。
【0145】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥組成物を調製する方法であって、形態3のベンダムスチン塩酸塩を溶媒と結合させ、混合物を形成する工程と、混合物を凍結乾燥化する工程と、を含む、方法が含まれる。本発明の特定の方法では、形態3のベンダムスチン塩酸塩は、ある量の非晶質ベンダムスチン塩酸塩を提供し、非晶質ベンダムスチン塩酸塩を形態3に変換するだけの十分な期間、約40℃および約75%の相対湿度で同量を保存することによって調製される。
【0146】
また、本発明の範囲内に、ベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥組成物を調製する方法であって、形態4のベンダムスチン塩酸塩を溶媒と結合させ、混合物を形成する工程と、混合物を凍結乾燥化する工程と、を含む、方法が含まれる。本発明の特定の方法では、形態4のベンダムスチン塩酸塩は、ある量の形態2のベンダムスチン塩酸塩を提供し、形態2を形態4に変換するだけの十分な期間、約100℃まで形態2を加熱することによって調製される。
【0147】
また、本発明の範囲内に、非晶質ベンダムスチン塩酸塩を含む凍結乾燥組成物が含まれ、ここで前記組成物は、任意の結晶性ベンダムスチン塩酸塩を実質的に含まない。
【0148】
ベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥組成物を調製する好ましい方法では、記載される混合物は、凍結乾燥賦形剤をさらに含む。好ましくは、凍結乾燥賦形剤は、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、デキストロース、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、またはこれらの混合物である。より好ましい方法では、凍結乾燥賦形剤は、マンニトールである。
【0149】
ベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥組成物を調製する好ましい方法では、溶媒は、水、有機溶媒、またはこれらの混合物である。好ましくは、有機溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、またはこれらの混合物である。より好ましい方法では、有機溶媒は、tert−ブタノールである。
【0150】
ベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥組成物を調製する好ましい方法では、溶媒は、水と有機溶媒の混合物である。好ましくは、水と有機溶媒の比は約1:1(v/v)である。また、水と有機溶媒の比が約2:1(v/v)である方法は好ましい。他の好ましい方法では、水と有機溶媒の比は約3:1(v/v)である。他の好ましい方法では、水と有機溶媒の比は約7:3(v/v)である。
【0151】
当業者が理解するように、上記教示内容を考慮すると、本発明の極めて多くの修飾および変形が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、本明細書中で詳述される以外で実施することは可能であり、かつ、本発明の範囲は、すべてのかかる変形を包含するように意図されていることは理解されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンダムスチン塩酸塩の形態1、ベンダムスチン塩酸塩の形態3、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、非晶質ベンダムスチン塩酸塩、またはこれらの混合物の少なくとも1つを含むベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項2】
ベンダムスチン塩酸塩の形態1を含む、請求項1に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項3】
ベンダムスチン塩酸塩の形態3を含む、請求項1に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項4】
ベンダムスチン塩酸塩の形態4を含む、請求項1に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項5】
非晶質ベンダムスチン塩酸塩を含む、請求項1に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項6】
ベンダムスチン塩酸塩の形態2をさらに含む、上記請求項のいずれか一項に記載の固体形態。
【請求項7】
次の反射:25.1、24.9、22.9、22.0、および/または14.1±0.2度2θの1若しくはそれ以上を含むX線粉末回折パターンを生成する、請求項1に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項8】
次の反射:16.8、17.5、18.5、24.9、および/または28.3±0.2度2θの1若しくはそれ以上を含むX線粉末回折パターンを生成する、請求項7に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項9】
次の反射:26.1、27.9、および/または28.1±0.2度2θの1若しくはそれ以上を含むX線粉末回折パターンを生成する、請求項1に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項10】
次の反射:10.6、15.6、および/または19.8±0.2度2θの1若しくはそれ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成する、請求項9に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項11】
次の反射:10.8、15.5、20.5、および/または23.6±0.2度2θの1若しくはそれ以上を含むX線粉末回折パターンを生成する、請求項1に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項12】
次の反射:10.3、19.6、20.7、21.2、25.8および/または27.6±0.2度2θの1若しくはそれ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成する、請求項11に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項13】
上記請求項のいずれか一項に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態を含む組成物。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態を含み、ベンダムスチン塩酸塩の他の固体形態を実質的に含まない、組成物。
【請求項15】
前記組成物は、医薬組成物であり、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項16】
前記薬学的に許容される賦形剤は、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、デキストロース、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、またはこれらの混合物である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記賦形剤はマンニトールである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態を含む凍結乾燥組成物。
【請求項19】
前記組成物は、ベンダムスチン塩酸塩の他の固体形態を実質的に含まない、請求項18に記載の凍結乾燥組成物。
【請求項20】
非晶質ベンダムスチン塩酸塩およびベンダムスチン塩酸塩の形態4の混合物を含む、請求項18に記載の凍結乾燥組成物。
【請求項21】
次の反射:7.98、10.58、15.43、19.64、および/または19.89±0.2度2θの1若しくはそれ以上を含むX線粉末回折パターンを生成する、請求項20に記載の凍結乾燥組成物。
【請求項22】
慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫または乳癌の治療における使用を目的とした、請求項13〜21のいずれか一項に記載の組成物または凍結乾燥組成物
【請求項23】
前記非ホジキンリンパ腫は、無痛性B細胞非ホジキンリンパ腫である、請求項22に記載の組成物または凍結乾燥組成物。
【請求項24】
少なくとも1つのベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を含む凍結乾燥組成物を調製するための方法であって、
ベンダムスチン塩酸塩を少なくとも1つの溶媒と結合させ、溶液を形成する工程と、
前記溶液を凍結乾燥化する工程と、
を含む、方法。
【請求項25】
前記溶液は、少なくとも1つの凍結乾燥賦形剤をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記凍結乾燥賦形剤は、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、デキストロース、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、またはこれらの混合物である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記凍結乾燥賦形剤はマンニトールである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記溶媒は、水、有機溶媒、またはこれらの混合物である、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、またはこれらの混合物である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記有機溶媒はtert−ブタノールである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記溶媒は、水と有機溶媒の混合物である、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記水対前記有機溶媒の比は、約7:3(v/v)である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ベンダムスチン塩酸塩の前記結晶形態は、ベンダムスチン塩酸塩の形態1、ベンダムスチン塩酸塩の形態2、ベンダムスチン塩酸塩の形態3、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、またはこれらの混合物である、請求項24〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記凍結乾燥組成物は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記凍結乾燥組成物は、ベンダムスチン塩酸塩の形態4と非晶質ベンダムスチン塩酸塩の混合物を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記凍結乾燥組成物は、マンニトールをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項24〜36のいずれか一項に記載の方法に従って調製される凍結乾燥組成物。
【請求項1】
ベンダムスチン塩酸塩の形態1、ベンダムスチン塩酸塩の形態3、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、非晶質ベンダムスチン塩酸塩、またはこれらの混合物の少なくとも1つを含むベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項2】
ベンダムスチン塩酸塩の形態1を含む、請求項1に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項3】
ベンダムスチン塩酸塩の形態3を含む、請求項1に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項4】
ベンダムスチン塩酸塩の形態4を含む、請求項1に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項5】
非晶質ベンダムスチン塩酸塩を含む、請求項1に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項6】
ベンダムスチン塩酸塩の形態2をさらに含む、上記請求項のいずれか一項に記載の固体形態。
【請求項7】
次の反射:25.1、24.9、22.9、22.0、および/または14.1±0.2度2θの1若しくはそれ以上を含むX線粉末回折パターンを生成する、請求項1に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項8】
次の反射:16.8、17.5、18.5、24.9、および/または28.3±0.2度2θの1若しくはそれ以上を含むX線粉末回折パターンを生成する、請求項7に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項9】
次の反射:26.1、27.9、および/または28.1±0.2度2θの1若しくはそれ以上を含むX線粉末回折パターンを生成する、請求項1に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項10】
次の反射:10.6、15.6、および/または19.8±0.2度2θの1若しくはそれ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成する、請求項9に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項11】
次の反射:10.8、15.5、20.5、および/または23.6±0.2度2θの1若しくはそれ以上を含むX線粉末回折パターンを生成する、請求項1に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項12】
次の反射:10.3、19.6、20.7、21.2、25.8および/または27.6±0.2度2θの1若しくはそれ以上をさらに含むX線粉末回折パターンを生成する、請求項11に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態。
【請求項13】
上記請求項のいずれか一項に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態を含む組成物。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態を含み、ベンダムスチン塩酸塩の他の固体形態を実質的に含まない、組成物。
【請求項15】
前記組成物は、医薬組成物であり、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項16】
前記薬学的に許容される賦形剤は、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、デキストロース、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、またはこれらの混合物である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記賦形剤はマンニトールである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のベンダムスチン塩酸塩の固体形態を含む凍結乾燥組成物。
【請求項19】
前記組成物は、ベンダムスチン塩酸塩の他の固体形態を実質的に含まない、請求項18に記載の凍結乾燥組成物。
【請求項20】
非晶質ベンダムスチン塩酸塩およびベンダムスチン塩酸塩の形態4の混合物を含む、請求項18に記載の凍結乾燥組成物。
【請求項21】
次の反射:7.98、10.58、15.43、19.64、および/または19.89±0.2度2θの1若しくはそれ以上を含むX線粉末回折パターンを生成する、請求項20に記載の凍結乾燥組成物。
【請求項22】
慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫または乳癌の治療における使用を目的とした、請求項13〜21のいずれか一項に記載の組成物または凍結乾燥組成物
【請求項23】
前記非ホジキンリンパ腫は、無痛性B細胞非ホジキンリンパ腫である、請求項22に記載の組成物または凍結乾燥組成物。
【請求項24】
少なくとも1つのベンダムスチン塩酸塩の結晶形態を含む凍結乾燥組成物を調製するための方法であって、
ベンダムスチン塩酸塩を少なくとも1つの溶媒と結合させ、溶液を形成する工程と、
前記溶液を凍結乾燥化する工程と、
を含む、方法。
【請求項25】
前記溶液は、少なくとも1つの凍結乾燥賦形剤をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記凍結乾燥賦形剤は、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、グリシン、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、グリセリン、デキストロース、デキストラン、トレハロース、ヘタスターチ、またはこれらの混合物である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記凍結乾燥賦形剤はマンニトールである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記溶媒は、水、有機溶媒、またはこれらの混合物である、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、またはこれらの混合物である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記有機溶媒はtert−ブタノールである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記溶媒は、水と有機溶媒の混合物である、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記水対前記有機溶媒の比は、約7:3(v/v)である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ベンダムスチン塩酸塩の前記結晶形態は、ベンダムスチン塩酸塩の形態1、ベンダムスチン塩酸塩の形態2、ベンダムスチン塩酸塩の形態3、ベンダムスチン塩酸塩の形態4、またはこれらの混合物である、請求項24〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記凍結乾燥組成物は、非晶質ベンダムスチン塩酸塩をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記凍結乾燥組成物は、ベンダムスチン塩酸塩の形態4と非晶質ベンダムスチン塩酸塩の混合物を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記凍結乾燥組成物は、マンニトールをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項24〜36のいずれか一項に記載の方法に従って調製される凍結乾燥組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2011−515472(P2011−515472A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501846(P2011−501846)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/001956
【国際公開番号】WO2009/120386
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(509021085)セファロン、インク. (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/001956
【国際公開番号】WO2009/120386
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(509021085)セファロン、インク. (24)
【Fターム(参考)】
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