説明

ベーンポンプ用キャップとその製造方法

【解決手段】 キャップ5は、ベーン4の端部に摺動自在に嵌合される本体部分5aと、この本体部分に一体の円弧状部分5bとを備えている。上記本体部分5aの端部摺動面5gと円弧状部分5bの端部摺動面5cとを同一平面で連続させてあり、これら両端部摺動面5c、5gをポンプ室11の摺動壁面に摺接させてベーン前後の空間を区画できるようにしてある。本体部分の一方の端部摺動面には、該端部摺動面5gよりも凹んだ、キャップ製造用のゲート部5fを除去した際の切削凹部5hを形成してある。
【効果】 キャップ5がベーン4から突出された際に、上記切削凹部5hをベーンから突出させることにより該切削凹部5hを介してベーン4前後の空間を連通させることができる。ベーンポンプの仕様に応じて、切削凹部5hを突出しない位置に形成しておけば、ベーン4前後の空間を連通させないようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベーンポンプに関し、より詳しくは、ベーンの端部に設けられるベーンポンプ用キャップとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベーンポンプとして、略円形のポンプ室を備えたハウジングと、ポンプ室の中心に対して偏心した位置で回転するロータと、ロータの直径方向に形成された溝に沿って往復動し、ポンプ室を複数の空間に区画しながら回転するベーンと、当該ベーンの端部にそれぞれベーンの長手方向に出没自在に連結され、ポンプ室の内周面に摺接するキャップとを備えたベーンポンプが知られている。(特許文献1)
上記特許文献1においては、図4に示すように、上記キャップ50は、ベーン40に形成した係合孔40a内に摺動自在に嵌合される本体部分50aと、この本体部分に一体に連設されてベーンの端部よりも突出する円弧状部分50bとを備え、上記円弧状部分50bにおける先端の円弧状摺動面が上記ポンプ室の内周面に摺接し、また円弧状部分50bにおける両側の端部摺動面50cがポンプ室の摺動壁面に摺接するようになっている。
また上記本体部分50aはベーン40側に突出する2つの脚部50dを備えており、各脚部50dもベーン40の係合孔40a内に摺動自在に嵌合されるようになっている。そしてベーン40の係合孔40a内には、両脚部50dの中間となる位置に、補強用のリブ40cが設けられている。
【0003】
そして上記本体部分50a及び2つの脚部50dが係合孔40a内に嵌合された際には、キャップ50の円弧状部分50bのベーン側端面50eがベーン40の端面40dに当接してその退没が規制されるようになっている。
他方、キャップ50はベーンポンプの運転中、円弧状部分50bの先端の円弧状摺動面がポンプ室の内周面に摺接しながらベーン40に対して突出されるようになるが、上記本体部分50aはベーン40の端面40dから突出することはなく、それによってキャップ50がベーン40から離脱されるのを防止している。
【0004】
ところで従来、上記キャップ50は次のようにして製造されている。
先ず、上記キャップ50の成型用空間を多数備えた型枠(図示せず)が準備され、該型枠内に形成された各キャップの成型用空間内にそれぞれゲート部を介して合成樹脂材料が注入されて硬化される。このとき、直角度などを含めた寸法安定性を確保するために、断面円形状のゲート部50fを、キャップ50の本体部分50aにおける一方の端面から、該本体部分5bの長手方向に向けて形成することが好ましい。
そして次に、硬化したキャップ50を上記型枠内から取り出したら、該キャップ50のゲート部50fを、上記円弧状部分50bの端部摺動面50cよりも引っ込んだ本体部分50a寄りの位置で切断している。このように、ゲート部50fを円弧状部分50bの端部摺動面50cよりも引っ込んだ位置で切断すれば、該ゲート部50fがポンプ室の摺動壁面に当接してしまうのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−226165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1のベーンポンプにおいては、上記ベーン40が遠心力によっていずれか一方のキャップ50側に移動された際には、上述したように当該キャップ50は上記円弧状部分50bのベーン側端面50eがベーン40の端面40dに当接されてベーン側への退没が規制され、また他方のキャップ50はベーン40から突出されるようになる。
そしてベーン40から突出される側のキャップ50においては、上記円弧状部分50bのベーン側端面50eが、ベーン40の端面40dから離隔されてその間に間隙が形成されるようになっており、該間隙を介して一方の高圧の空間から低圧の空間に向けて気体を逃がすことができるようになっている。
しかしながら、その反面、低圧の空間に逃げた気体は、再び圧縮されながらポンプ室から排出されるようになる。つまり高圧となった空間から低圧の空間に気体を逃がすと、毎回、その逃げた気体を再び圧縮させなければならず、その結果、特にアイドリング時などのエンジンの低速回転時に、駆動トルクが大きくなるという欠点が生じることが判明した。
つまりベーンポンプの仕様によって、上記間隙を介して高圧の空間から低圧の空間に向けて気体を逃がすことが要求される場合と、気体を逃がさないことが要求される場合とがあり、従来のキャップ50の構成やその製造方法では、両方の要求に容易に応えることが困難であった。
本発明は上述した事情に鑑み、キャップがベーンから突出されて、上記円弧状部分のベーン側端面と、ベーンの端面とが離隔した際に、その間隙を開放することができるキャップと閉鎖することができるキャップとを容易に提供することができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1の発明における製造方法は、ベーンの端部に摺動自在に嵌合される本体部分と、この本体部分に一体に連設されてベーンの端部よりも突出する円弧状部分とを備え、上記円弧状部分における円弧状摺動面がポンプ室の内周面に摺接し、また円弧状部分における両側の端部摺動面がポンプ室の摺動壁面に摺接するようになっているベーンポンプ用キャップの製造方法であって、
上記キャップは、型枠内に形成されたキャップの成型用空間内にゲート部を介して合成樹脂材料を注入して硬化させ、硬化したキャップを上記型枠内から取り出したら、該キャップのゲート部を切断して製造されるようになっているベーンポンプ用キャップの製造方法において、
上記型枠内に形成された成型用空間は、上記キャップの円弧状部分用成型用空間と本体部分用成型用空間とを備え、上記円弧状部分用成型用空間における両端面と本体部分用成型用空間における両端面とを同一平面に形成して、上記円弧状部分における両側の端部摺動面と本体部分の両側の端部摺動面とをポンプ室の摺動壁面に摺接可能に設定し、また上記ゲート部は本体部分の一方の端部から該本体部分用成型用空間に連通しており、硬化したキャップを上記型枠内から取り出したら、該キャップのゲート部を端部摺動面よりも突出した位置で切断し、しかる後、突出したゲート部を端部摺動面よりも凹んだ位置まで切削することを特徴とするものである。
また請求項4の発明におけるキャップは、ベーンの端部に摺動自在に嵌合される本体部分と、この本体部分に一体に連設されてベーンの端部よりも突出する円弧状部分とを備え、上記円弧状部分における円弧状摺動面がポンプ室の内周面に摺接し、また円弧状部分における両側の端部摺動面がポンプ室の摺動壁面に摺接するようになっているベーンポンプ用キャップにおいて、
上記本体部分の両側に、上記円弧状部分における両側の端部摺動面と同一平面で連続する端部摺動面を連設して、円弧状部分の端部摺動面と本体部分の端部摺動面とをポンプ室の摺動壁面に摺接するようにし、また本体部分の一方の端部摺動面には、該端部摺動面よりも凹んだ、キャップ製造用のゲート部を除去した際の切削凹部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
上述した本発明の製造方法によれば、突出したゲート部を端部摺動面よりも凹んだ位置まで切削するに際して、その切削条件を適宜に調整することにより、残存する端部摺動面の長さを、上記ベーン側端面とベーンの端面との間に形成される最大間隙よりも大きく設定したり小さく設定したりすることができ、それによって容易に上記間隙を開放することができるキャップと閉鎖することができるキャップとを製造することができる。
また本発明のキャップによれば、残存する端部摺動面の長さを零若しくは短くしたキャップにおいては、該キャップがベーンから突出されて上記円弧状部分のベーン側端面とベーンの端面とが離隔されて間隙が形成された際に、上記切削凹部を介してポンプ室の高圧の空間と低圧の空間とを連通させることができるようになり、したがって高圧の空間の圧力を低圧の空間に逃がすことができる。そしてこれによって、ベーンの破損を防止することができる。
他方、残存する端部摺動面の長さを長くしたキャップにおいては、上記間隙が形成された際に、上記切削凹部を介してポンプ室の高圧の空間と低圧の空間とが連通されてしまうことを防止することができるので、高圧の空間の圧力が低圧の空間に逃げるのを防止することができる。そしてこれによって、アイドリング時などのエンジンの低速回転時に、駆動トルクが大きくなるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施例のベーンポンプ1の正面図。
【図2】図1におけるII−IIでの断面図。
【図3】本実施例におけるベーン4及びキャップ5についての拡大斜視図。
【図4】従来のベーン40及びキャップ50についての拡大斜視図。
【図5】キャップ5の製造に用いる型枠20を説明する説明図。
【図6】型枠20から取り出したキャップ5を示し、(a)は左側面図を、(b)は要部の正面図を示す。
【図7】ゲート部5fを除去した状態のキャップ5を示し、(a)は左側面図を、(b)は要部の正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図1、図2において、ベーンポンプ1は図示しない自動車のエンジンの側面に固定され、図示しないブレーキ装置の倍力装置に負圧を発生させるようになっている。
上記ベーンポンプ1は下記ポンプ室11の形成されたハウジング2と、ポンプ室11の中心に対して偏心した位置に設けられ、エンジンの駆動力によって回転するロータ3と、上記ロータ3によってポンプ室11を常に複数の空間に区画しながら回転するベーン4と、当該ベーン4の両端に連結されてベーンと共にポンプ室11を区画するキャップ5と、上記ハウジング2と共に上記ポンプ室11を閉鎖するカバー6とを備えている。
上記ハウジング2には、ポンプ室11の上方に上記ブレーキの倍力装置と連通して当該倍力装置からの気体を吸引するための吸気通路7と、ポンプ室11の下方に倍力装置から吸引された気体を排出するための排出通路8とがそれぞれ設けられている。そして、上記吸気通路7には特にエンジン停止の際、倍力装置の負圧を保持するために逆止弁9が設けられている。
【0011】
上記ハウジング2は略円形の内周面11aを備えたポンプ室11と、上記ポンプ室11に隣接して上記ロータ3を保持する軸受部12とから構成され、上記ロータ3はポンプ室11内で回転する円筒状のロータ部13と、上記軸受部12によって軸支される軸部14とから構成されている。
上記軸部14は上記軸受部12より外部に突出し、この突出した先端部はカップリング15を介してエンジンのカムシャフトに連結されている。
上記ロータ部13の外周面13aの一部は、上記ポンプ室11の内周面11aの一部と相互に接触するように設けられており、このロータ部13と内周面11aとが接触する位置に隣接して、ロータ部13の回転方向上流側には上記吸気通路7が形成され、下流側には上記排出通路8が形成されている。
また、ロータ部13の中央には中空部13bが形成され、ロータ部13の直径方向には当該ロータ部13を貫通する溝13cが形成されており、上記ベーン4を当該溝13cに沿って摺動自在に往復動させるようになっている。
【0012】
次に、上記軸部14にはその中央に潤滑油を流通させる給油通路16が形成され、この給油通路16は所要位置から軸部14の直径方向に分岐して、当該軸部14の外周面14aに開口するようになっている。
また上記軸受部12の下方には、上記軸部14との摺動部に上記ポンプ室11と上記給油通路16とを連通させる給油溝17が形成されており、給油通路16の開口部と給油溝17とが一致すると、給油通路16からの潤滑油が給油溝17を介してポンプ室11内へと流入するようになっている。
さらに、上記ロータ3に形成された溝13cの底面は、ポンプ室11とベーン4とが摺接する面よりも若干軸部14側に形成されており、上記ベーン4と当該底面とによって油通路18が形成されている。
このため、上記給油溝17からポンプ室11内に流入する潤滑油の一部は、上記油通路18からロータ部13の中空部13b内に流入し、その後ベーン4と溝13cとの間からロータ部13の外周側へと流出し、またその他の潤滑油はロータ3とポンプ室11の内壁との間からロータ部13の外周側へと流出する。
【0013】
次に、上記ベーン4は長方形の板状に形成され、上記ロータ部13の溝13c内に往復動自在に設けられている。上記ベーン4の長手方向の両側面は摺動面となっており、一方の摺動面は上記カバー6の摺動壁面に摺接し、他方の摺動面はポンプ室11における軸受部12側の摺動壁面と摺接するようになっている。
また、上記ベーン4は中空構造を有しており、図1、図2に示すように、ベーン4の両端部にその端部の長手方向(図2の左右方向)に沿って係合孔4aが形成され、ここに後述するキャップ5の本体部分5aが摺動自在に嵌合されるようになっている。またベーン4内部には、上記係合孔4aと直交するベーン4の両側面に沿う長手方向(図2の上下方向)に2本の係合孔4bが形成されており、両係合孔4bの間はリブ4cとして形成されている。
【0014】
上記キャップ5は樹脂製となっており、図2、図3に示すようにベーン4の係合孔4aに摺動自在に嵌合される本体部分5aと、該本体部分5aに一体に連設されて上記ポンプ室11の内周面11aに常時接触する断面略半円形状の円弧状部分5bとを備えている。
そして上記本体部分5aのベーン側端部は断面円弧状に形成してあり、また該本体部分5aにはベーン4側へ突出する2つの脚部5dを設けてある。各脚部5dは、上記リブ4cを挟んで2つ設けられた係合孔4bにそれぞれ摺動自在に嵌合されるようになっている。
上記円弧状部分5bの両側の表面は端部摺動面5cとなっており、一方の端部摺動面5cは上記カバー6の摺動壁面に摺接し、他方の端部摺動面5cはポンプ室11における軸受部12側の摺動壁面と摺接するようになっている。
また本体部分5aの両側は、図4に示す従来の本体部分50aに比較してその両側に延長してあり、その両側の各表面を上記円弧状部分5bにおける各端部摺動面5cと同一平面で連続させることによって、本体部分5aの両側に端部摺動面5gを形成してある。
したがって、上記ベーン4の両側の摺動面と、各キャップ5における円弧状部分5bの端部摺動面5c及び本体部分5aの端部摺動面5gとがポンプ室11の摺動壁面に摺接すると同時に、各キャップ5の円弧状部分5bにおける先端の円弧状摺動面がポンプ室11の内周面11aに摺接することによって、該ポンプ室11を複数の空間に区画するようになる。
また上記本体部分5aの端部摺動面5gは、上記円弧状部分5bの両側摺動面5cの表面に連続させて同一平面として形成してあるが、一方の端部摺動面5gにはベーン4側の位置に、後に詳述するキャップ製造時のゲート部5f(図5)を除去した際の切削凹部5h(図3、図7)が形成されている。
【0015】
図1に示すように、上記ベーン4が遠心力によっていずれか一方のキャップ5側(図1では上方のキャップ側)に移動された際には、当該キャップ5は、上記円弧状部分5bのベーン側端面5eがベーン4の一方の端面4dに当接されてベーン4側への退没が規制されるようになり、これに伴って他方のキャップ5(図1では下方のキャップ)はベーン4から突出されるようになる。このとき、キャップ5がベーン4の端面4dから突出されても、キャップ5の本体部分5aが係合孔4aから離脱することがないように設定してあることは勿論である。
【0016】
そして上記キャップ5がベーン4から突出されると、上記円弧状部分5bのベーン側端面5eとベーン4の端面4dとは離隔して両者間に間隙が生じることになるが、本実施例では、その間隙が生じてもポンプ室11の高圧の空間から低圧の空間に向けて気体を逃がすことがないように設定してある。
より具体的には、上記本体部分5aにおける端部摺動面5gのベーン方向の長さL(図7)を、上記ベーン側端面5eとベーン4の端面4dとの間に生じる最大間隙δ(図1、図2)よりも大きく設定してある。
換言すれば、上記ベーン側端面5eとベーン4の端面4dとの間に間隙δが生じたとしても、本体部分5aの全域が係合孔4aから離脱することがないので、該本体部分5aによってその間隙δを閉鎖することができ、それによってポンプ室11の高圧の空間と低圧の空間との間の連通を遮断することができるようにしてある。
【0017】
このとき、図3、図7に示すように、特に切削凹部5hを形成した側の本体部分5aにおける端部摺動面5gのベーン方向の長さLは、その切削凹部5hを形成する位置によって調整してある。本実施例では、上記長さLを上記最大間隙δよりも大きく設定してあるので、キャップ5がベーン4から突出されたとしても、上記切削凹部5hがベーン4の外部に突出されることがなく、この切削凹部5hを介してポンプ室11の高圧の空間と低圧の空間とを連通させることがない。
これに対し、図示実施例とは異なり、切削凹部5hを形成する位置を円弧状部分5b側に寄せれば上記長さLを短くすることができ、例えば本体部分5aにおける端部摺動面5gの全域を除去するように切削凹部5hを形成した場合には、図4に示した従来技術と同様に、切削凹部5hがベーン4の外部に突出されることになるので、該切削凹部5hを介してポンプ室11の高圧の空間と低圧の空間とを連通させることが可能となる。
【0018】
次に、上記構成を有するキャップ5の製造方法を説明する。
図5において、型枠20内に形成されたキャップの成型用空間は、上記キャップ5の本体部分5aを成形するための本体部分用成型用空間5a’と、円弧状部分5bを成形するための円弧状部分用成型用空間5b’と、脚部5dを成形するための脚部用成型用空間5d’とを備えている。
上記円弧状部分用成型用空間5b’における両端面5c’と、本体部分用成型用空間5a’における両端面5g’とはそれぞれ同一平面に形成してあり、それによってキャップ5の円弧状部分5bにおける両側の端部摺動面5cと本体部分5aの両側の端部摺動面5gとが同時にポンプ室11の摺動壁面に摺接するように設定してある。
また上記型枠20に形成されて各成型用空間に連通する断面円形状のゲート部5fは、直角度などを含めたキャップ5の寸法安定性を確保するために、本体部分用成型用空間5a’の長手方向一側から該本体部分用成型用空間5a’内に連通させている。
【0019】
キャップ5を製造する際には、先ず熱可塑性の合成樹脂材料が上記ゲート部5fを介して本体部分用成型用空間5a’、円弧状部分用成型用空間5b’および脚部用成型用空間5d’に注入される。
上記合成樹脂材料が硬化したら、多数のキャップ5が一斉に型枠20内から取り出され、次に、各キャップ5はゲート部5fを切断することによって個々のキャップ5に分離される。このとき、ゲート部5fは、図6に示すように、本体部分5aの端部摺動面5gよりも所要量突出した位置で切断されることになる。またキャップ5に残存しているゲート部5fは、断面円形で、本体部分5aのベーン側端部(図6の下方側端部)よりも僅かに小さく該端部からはみ出ることがないように形成されている。
このようにして各キャップ5を別個に分離したら、次にエンドミルなどの切削工具によりキャップ5に残存しているゲート部5fを上記端部摺動面5gの表面よりも凹んだ位置まで切削する。切削工具がエンドミルの場合、図7に示されているように、これによって形成される切削凹部5hと端部摺動面5gとの境界部分5iは断面円弧状となる。また、その境界部分5iよりもベーン側の部分(図7の下方側部分)における端部摺動面5gは、完全に除去されている。
【0020】
このとき、円弧状部分5bの端部摺動面5cと本体部分5aの端部摺動面5gとは同一平面として残存され、前述したように図示実施例では、上記本体部分5aにおける端部摺動面5gのベーン方向の長さLは、上記ベーン側端面5eとベーン4の端面4dとの間の最大間隙δよりも大きく設定してある。
上記長さLを調整するのは容易であり、例えばエンドミルの直径を大きくすれば、エンドミルの回転中心を異ならせることなく上記長さLを小さく、若しくは零にすることができる。そして上記長さLを零若しくは小さくすれば、前述したようにキャップ5がベーン4から突出した際に、切削凹部5hを介してポンプ室11の高圧の空間と低圧の空間とを連通させることができ、またその時の連通路の流路面積は、上記長さLの大きさや切削凹部5hの深さによって適宜に調整することができる。
【0021】
なお、上記実施例では1枚のベーン4を備えたベーンポンプ1を用いて説明を行ったが、従来知られるような複数枚のベーンを備えたベーンポンプであっても適用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 ベーンポンプ 3 ロータ
4 ベーン 4a、4b 係合孔
4c リブ 4d 端面
5 キャップ 5a 本体部分
5b 円弧状部分 5c、5g 端部摺動面
5d 脚部 5e ベーン側端面
5f ゲート部 5h 切削凹部
5i 境界部分 11 ポンプ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベーンの端部に摺動自在に嵌合される本体部分と、この本体部分に一体に連設されてベーンの端部よりも突出する円弧状部分とを備え、上記円弧状部分における円弧状摺動面がポンプ室の内周面に摺接し、また円弧状部分における両側の端部摺動面がポンプ室の摺動壁面に摺接するようになっているベーンポンプ用キャップの製造方法であって、
上記キャップは、型枠内に形成されたキャップの成型用空間内にゲート部を介して合成樹脂材料を注入して硬化させ、硬化したキャップを上記型枠内から取り出したら、該キャップのゲート部を切断して製造されるようになっているベーンポンプ用キャップの製造方法において、
上記型枠内に形成された成型用空間は、上記キャップの円弧状部分用成型用空間と本体部分用成型用空間とを備え、
上記円弧状部分用成型用空間における両端面と本体部分用成型用空間における両端面とを同一平面に形成して、上記円弧状部分における両側の端部摺動面と本体部分の両側の端部摺動面とをポンプ室の摺動壁面に摺接可能に設定し、
また上記ゲート部は本体部分の一方の端部から該本体部分用成型用空間に連通しており、硬化したキャップを上記型枠内から取り出したら、該キャップのゲート部を端部摺動面よりも突出した位置で切断し、しかる後、突出したゲート部を端部摺動面よりも凹んだ位置まで切削することを特徴とするベーンポンプ用キャップの製造方法。
【請求項2】
上記切削された本体部分の端部摺動面におけるベーン方向の長さは、キャップがベーンの端面から突出された際に生じる円弧状部分のベーン側端面とベーンの端面との間の間隙よりも、大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ用キャップの製造方法。
【請求項3】
上記切削された本体部分の端部摺動面におけるベーン方向の長さは、キャップがベーンの端面から突出された際に生じる円弧状部分のベーン側端面とベーンの端面との間の間隙よりも、小さく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ用キャップの製造方法。
【請求項4】
ベーンの端部に摺動自在に嵌合される本体部分と、この本体部分に一体に連設されてベーンの端部よりも突出する円弧状部分とを備え、上記円弧状部分における円弧状摺動面がポンプ室の内周面に摺接し、また円弧状部分における両側の端部摺動面がポンプ室の摺動壁面に摺接するようになっているベーンポンプ用キャップにおいて、
上記本体部分の両側に、上記円弧状部分における両側の端部摺動面と同一平面で連続する端部摺動面を連設して、円弧状部分の端部摺動面と本体部分の端部摺動面とをポンプ室の摺動壁面に摺接するようにし、また本体部分の一方の端部摺動面には、該端部摺動面よりも凹んだ、キャップ製造用のゲート部を除去した際の切削凹部が形成されていることを特徴とするベーンポンプ用キャップ。
【請求項5】
上記切削凹部が形成された本体部分の端部摺動面におけるベーン方向の長さは、キャップがベーンの端面から突出された際に生じる円弧状部分のベーン側端面とベーンの端面との間の間隙よりも、大きく設定されていることを特徴とする請求項4に記載のベーンポンプ用キャップの製造方法。
【請求項6】
上記切削凹部が形成された本体部分の端部摺動面におけるベーン方向の長さは、キャップがベーンの端面から突出された際に生じる円弧状部分のベーン側端面とベーンの端面との間の間隙よりも、小さく設定されていることを特徴とする請求項4に記載のベーンポンプ用キャップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−247191(P2011−247191A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121740(P2010−121740)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000207791)大豊工業株式会社 (152)
【Fターム(参考)】