説明

ベーンポンプ

【解決手段】 ベーンポンプ1に供給される潤滑油は、給油通路11の軸方向給油孔11a、直径方向給油孔11b、軸方向給油溝11cを介してポンプ室2Aに供給される。気体通路13は、ロータ3の軸部3Bの外周面に形成されて一端部が外部空間に連通される気体溝13aから構成してあり、かつこの気体溝の他端部は、上記ロータの回転により軸方向給油溝11cに間欠的に重合連通されるようになっている。
【効果】 気体通路を溝状の気体溝13aから構成しているので、従来装置のように気体通路13を貫通孔から構成する場合に比較して目詰まりが起こりにくいので、その流路面積を小さくすることができる。したがって気体通路から空気がポンプ室内に吸い込まれることを可及的に防止して、エンジンの駆動トルクが増大するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベーンポンプに関し、より詳しくは、ロータ内部に潤滑油の流通する給油通路が形成され、ロータの回転によって間欠的に潤滑油をポンプ室内に供給するベーンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、略円形のポンプ室を備えたハウジングと、ポンプ室の中心に対して偏心した位置で回転するロータと、ロータによって回転し、ポンプ室を常に複数の空間に区画するベーンと、上記ロータの回転により間欠的にポンプ室と連通する給油通路と、上記ロータの回転により上記給油通路がポンプ室と連通したときに、該ポンプ室と外部空間とを連通させる気体通路とを備え、
さらに上記給油通路は、上記ロータの軸部にその直径方向に設けられた直径方向給油孔と、上記ハウジングに設けられてポンプ室に連通するとともに、ロータの回転により上記直径方向給油孔の開口が間欠的に重合連通される軸方向給油溝とを備えたベーンポンプが知られている。(特許文献1)
このベーンポンプにおいては、上記気体通路は、上記ロータの軸部にその直径方向に設けられて上記給油通路に連通する直径方向気体孔と、上記ハウジングに設けられて外部空間に連通するとともに、ロータの回転により上記直径方向気体孔の開口が間欠的に重合連通される軸方向気体溝とを備え、上記直径方向気体孔は、直径方向給油孔が軸方向給油溝に連通された際に、軸方向気体溝に連通されるようになっている。
【0003】
上記ベーンポンプにおいては、給油通路の直径方向給油孔が軸方向給油溝に連通された状態でロータが停止した際には、ポンプ室内部の負圧により給油通路内部の潤滑油がポンプ室内に引き込まれるようになる。そして仮に、多量の潤滑油がポンプ室内に引き込まれると、次にベーンポンプを始動する際に、その潤滑油を排出するためにベーンに過大な荷重が加わり、ベーンが破損するおそれがある。
しかるに上記構成を有するベーンポンプにおいては、給油通路の直径方向給油孔が軸方向給油溝に連通された状態でロータが停止した際には、これと同時に気体通路の直径方向気体孔が軸方向気体溝に連通されるようになっているので、気体通路から外部空間の空気をポンプ室内に流入させることができる。したがって、それによってポンプ室内の負圧を解消することができるので、ポンプ室内に大量の潤滑油が入り込むのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−226164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記ベーンポンプにおいては、エンジンのアイドリング時のように油圧ポンプから給油通路に供給される潤滑油の油圧が低い時に、気体通路から外部空間の空気がポンプ室内に吸い込まれてしまい、エンジンの駆動トルクを増大させてしまうことが判明した。
ところで、上記気体通路を構成する直径方向気体孔の流路面積は、油圧ポンプから給油通路に供給される潤滑油の油圧が高い時に、その潤滑油が気体通路を介して外部空間に、すなわちエンジンの内部空間に漏洩するのを低減するために、できるだけ小さな流路面積となるように設定されている。他方、該直径方向気体孔はロータの直径方向に穿設された孔であるので、その孔径をあまり小さくすると目詰まりが起こりやすくなる。
したがって上記構成のベーンポンプにおいては、気体通路を構成する直径方向気体孔の流路面積を小さくすることには一定の限界があった。
【0006】
上述した直径方向気体孔に対して、軸方向気体溝は溝であるので、貫通孔よりも目詰まりが起こりにくく、したがって直径方向気体孔に比較すればその流路面積を小さなものとすることができる。しかしながら特許文献1の構成の場合、軸方向気体溝の幅は、軸方向給油溝の幅に一致させなければならず、その流路面積を小さくすることに、やはり一定の限界があった。
これをより詳細に説明すると、軸方向気体溝の幅は、上記直径方向給油孔が軸方向給油溝に連通された状態でロータが停止した際に、これと同時に直径方向気体孔が軸方向気体溝に連通されるようにしなければならないので、直径方向給油孔が軸方向給油溝に重合して連通している間は、必ず直径方向気体孔がこの軸方向気体溝に重合して連通した状態となる幅に設定しなければならない。つまり、軸方向気体溝の幅は、軸方向給油溝の幅に一致させなければならない。
しかるに、上記軸方向給油溝の幅は、これを横切る直径方向給油孔とのオーバーラップ時間を考慮して、ポンプ室に必要量の潤滑油を供給できる幅に設定しなければならない。したがってこの軸方向給油溝の幅は、むやみに小さくすることができず、その結果、軸方向気体溝の幅も小さくすることができなかった。
本発明はそのような事情に鑑み、上記気体通路の流路面積を従来に比較してより小さく設定することができるようにして、気体通路から空気がポンプ室内に吸い込まれることを可及的に防止し、それによってエンジンの駆動トルクが増大するのを防止できるようにしたベーンポンプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、略円形のポンプ室を備えたハウジングと、ポンプ室の中心に対して偏心した位置で回転するロータと、ロータによって回転し、ポンプ室を常に複数の空間に区画するベーンと、上記ロータの回転により間欠的にポンプ室と連通する給油通路と、上記ロータの回転により上記給油通路がポンプ室と連通したときに、該ポンプ室と外部空間とを連通させる気体通路とを備え、
さらに上記給油通路は、上記ロータの軸部にその直径方向に設けられた直径方向給油孔と、上記ハウジングに設けられてポンプ室に連通するとともに、ロータの回転により上記直径方向給油孔の開口が間欠的に重合連通される軸方向給油溝とを備えたベーンポンプにおいて、
上記気体通路を、上記ロータの外周面に形成されて一端部が外部空間に連通される気体溝から構成し、かつこの気体溝の他端部を、上記ロータの回転により軸方向給油溝に間欠的に重合連通させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、上記気体通路は、上記ロータの外周面に形成されて一端部が外部空間に連通される気体溝から構成されている。そしてこの気体溝の他端部を、上記ロータの回転により軸方向給油溝に間欠的に重合連通させるようにしてあるので、この気体溝の幅は、従来装置のように、軸方向給油溝の幅に一致させる必要はない。つまり、上記直径方向給油孔が軸方向給油溝に連通された状態でロータが停止した際に、これと同時に気体溝が軸方向給油溝に連通していれば良いので、該気体溝の幅は、軸方向給油溝の幅に一致させる必要はない。
そして上述したように、溝は貫通孔よりも目詰まりが起こりにくいので、従来の直径方向気体孔に比較してその流路面積を小さなものとすることができる。したがって、気体通路から空気がポンプ室内に吸い込まれることを可及的に防止することができるので、エンジンの駆動トルクが増大するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例を示すベーンポンプの正面図。
【図2】図1におけるII−IIでの断面図。
【図3】図2におけるIII−IIIでの断面図。
【図4】本発明の第2実施例を示す図3と同様な部分での断面図。
【図5】本発明の第3実施例を示す図3と同様な部分での断面図。
【図6】回転数と駆動トルクとの関係を試験した試験結果図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図1、図2は本発明にかかるベーンポンプ1を示し、このベーンポンプ1は図示しない自動車のエンジンの側面に固定され、図示しないブレーキ装置の倍力装置に負圧を発生させるようになっている。
このベーンポンプ1は略円形のポンプ室2Aの形成されたハウジング2と、ポンプ室2Aの中心に対して偏心した位置でエンジンの駆動力によって回転するロータ3と、上記ロータ3によって回転し、ポンプ室2Aを常に複数の空間に区画するベーン4と、上記ポンプ室2Aを閉鎖するカバー5とを備えている。
上記ハウジング2には、ポンプ室2Aの上方に上記ブレーキの倍力装置と連通して倍力装置からの気体を吸引するための吸気通路6と、ポンプ室2Aの下方に倍力装置から吸引された気体を排出するための排出通路7とがそれぞれ設けられている。そして、上記吸気通路6には特にエンジン停止の際、倍力装置の負圧を保持するために逆止弁8が設けられている。
【0011】
上記ロータ3はポンプ室2A内で回転する円筒状のロータ部3Aを備え、当該ロータ部3Aの外周はポンプ室2Aの内周面に接するように設けられ、当該ロータ部3Aの回転に対して上流側に上記吸気通路6が位置し、ロータ部3Aよりも下流側に排出通路7が形成されている。
またロータ部3Aには直径方向に溝9が形成されており、上記ベーン4を当該溝9内に沿ってロータ3の軸方向と直交する方向に摺動自在に移動させるようになっている。そしてロータ部3Aの中央に形成された中空部3aとベーン4との間には、後述する給油通路からの潤滑油が流入するようになっている。
さらに、上記ベーン4の両端にはキャップ4aが設けられており、このキャップ4aを常にポンプ室2Aの内周面に摺接させながら回転させることで、ポンプ室2Aを常時2または3つの空間に区画するようになっている。
具体的に言うと、図1の状態ではポンプ室2Aはベーン4によって図示左右方向に区画されており、さらに図示右方側の空間では、ポンプ室はロータ部3Aによって上下方向に区画され、合計で3つの空間に区画されている。
この図1の状態からロータ3の回転によってベーン4がポンプ室2Aの中心とロータ3の回転中心とを結ぶ位置の近傍まで回転すると、ポンプ室2Aは上記吸気通路6側の空間と、排出通路7側の空間との2つの空間に区画されることとなる。
【0012】
図2は上記図1におけるII−II部についての断面図を示しており、この図においてハウジング2におけるポンプ室2Aの図示右方側には、上記ロータ3を構成する軸部3Bを軸支するための軸受部2Bが形成されており、上記軸部3Bは上記ロータ部3Aと一体に回転するようになっている。
そして上記ポンプ室2Aの左端には上記カバー5が設けられており、上記ロータ部3Aおよびベーン4の図示左方側の端面はこのカバー5に摺接しながら回転するようになっており、また上記ベーン4の右方側の端面はポンプ室2Aの軸受部2B側の内面に摺接しながら回転するようになっている。
また上記ロータ3に形成された溝9の底面9aは、ポンプ室2Aとベーン4の摺接する面よりも若干軸部3B側に形成されており、ベーン4と当該底面9aとの間に間隙が形成されている。
さらに、上記軸部3Bはハウジング2の軸受部2Bより図示右方側に突出しており、この突出した位置にはエンジンのカムシャフトによって回転するカップリング10が連結され、上記ロータ3は上記カムシャフトの回転によって回転するようになっている。
【0013】
そして軸部3Bにはその内部に潤滑油を流通させる給油通路11を形成してあり、この給油通路11は給油パイプ12を介して図示しないエンジンによって駆動される油圧ポンプに接続されている。
上記給油通路11は、軸部3Bの軸方向に形成した軸方向給油孔11aと、この軸方向給油孔11aに連通して軸部3Bの直径方向に穿設した直径方向給油孔11bとを備えている。
また上記ハウジング2の軸受部2Bには、上記軸部3Bとの摺動部に上記ポンプ室2Aと上記直径方向給油孔11bとを連通させるように形成された給油通路11を構成する軸方向給油溝11cが形成されている。本実施例では、当該軸方向給油溝11cは上記軸受部2Bの図2で示す下方に1本だけ形成してあり、その左端部はポンプ室2A内に連通し、右端部は上記直径方向給油孔11bの開口部を所要量だけ右方に越えた位置で閉止されている。
この構成により、図2に示すように直径方向給油孔11bの開口部が軸方向給油溝11cに重合して連通すると、軸方向給油孔11aからの潤滑油が直径方向給油孔11bおよび軸方向給油溝11cを介してポンプ室2A内へと流入し、上記ベーン4と溝9の底面9aとの間隙から、ロータ3の中空部3a内に流入するようになる。
【0014】
そして本実施例のベーンポンプ1は、ロータ3の回転により上記給油通路11がポンプ室2Aと連通したときに、より具体的には直径方向給油孔11bの開口部が軸方向給油溝11cに重合した際に、上記ポンプ室2Aを外部空間に連通させる気体通路13を備えている。
上記気体通路13は、上記ロータ3における軸部3Bの外周面に形成した2本の気体溝13a、13aを備えており、各気体溝13a、13aは、直径方向給油孔11bの開口部に隣接した位置から軸部3Bの軸方向に沿って図2の右方に伸びて、それぞれの右端部が外部空間に連通している。
他方、各気体溝13a、13aの左端部は、直径方向給油孔11bの開口部に連通することなくその手前の隣接位置で閉止されているが、各気体溝13a、13aの左端部は、上記直径方向給油孔11bの開口部を所要量だけ右方に越えた位置で閉止されている軸方向給油溝11cの右端部に間欠的に重合可能となっている。
すなわち上記気体溝13aの形成位置は、軸部3Bの円周方向について、上記軸方向給油孔11bの開口部と同じ位置に設けてあり、このため上記給油通路11の直径方向給油孔11bが軸方向給油溝11cと連通するのと同時に、気体溝13aも軸方向給油溝11cと連通するようになっている。
【0015】
図3は、図2のIII−III部における断面図で、同図に示すように、本実施例では上記各気体溝13aは、軸部3Bの外周面を平坦に削設して断面D字形の溝に形成してあるが、その幅は、上記軸方向給油溝11cの幅に影響されることなくそれよりも充分に小さく形成することにより、従来装置の直径方向気体孔に比較してその流路面積を小さく設定してある。
他方、上記軸部3Bの円周方向を基準として、各気体溝13aの幅は、直径方向給油孔11bの開口部の幅(直径)よりも大きくし、かつ直径方向給油孔11bの開口部の両端縁を前後に越えた位置まで形成することが好ましい。このように各気体溝13aの幅を設定すれば、直径方向給油孔11bの開口部が軸方向給油溝11cと僅かに連通するような状態で回転が停止された場合であっても、気体溝13aを確実に軸方向給油溝11cと連通させることができる。
【0016】
上記気体溝13aの断面形状は、上述した断面D字形に限定されるものではなく、図4に示す断面四角形状や、図5に示す断面三角形状など、適宜の断面形状でよいが、いずれの場合であっても各気体溝13aの幅と直径方向給油孔11bの開口部との関係は、上述したように設定することが好ましい。
上記各形状の気体溝13aは、ロータ3の製造後に切削加工によってそれぞれ形成することができることは勿論であるが、ロータ3を鍛造や焼結によって製造する場合には、ロータ3の製造時に同時に気体溝13aを形成することが望ましく、それによって製造コストの低減を図ることができる。
【0017】
以上の構成を有するベーンポンプ1について、以下にその動作を説明すると、従来のベーンポンプ1と同様、エンジンの作動によってロータ3が回転すると、それに伴ってロータ3の溝9内を往復動しながらベーン4も回転し、当該ベーン4によって区画されたポンプ室2Aの空間はロータ3の回転に応じてその容積を変化させる。
その結果、上記吸気通路6側のベーン4によって区画された空間では、容積が増大してポンプ室2A内に負圧が生じ、吸気通路6を介して倍力装置から気体が吸引されて倍力装置に負圧が生じる。そして吸引された気体はその後排出通路7側の空間の容積が減少することで圧縮され、排出通路7より排出されるようになっている。
一方、ベーンポンプ1の始動とともに潤滑油がエンジンによって駆動される油圧ポンプから給油パイプ12を介して給油通路11に供給されており、この潤滑油はロータ3の回転によって直径方向給油孔11bとハウジング2の軸方向給油溝11cとが連通したときに、ポンプ室2A内に流入するようになっている。
ポンプ室2Aに流入した潤滑油は、上記ロータ部3Aに形成された溝9部の底面9aとベーン4との間隙からロータ部3Aの中空部3aへと流入し、この潤滑油はロータ部3Aと溝9との間隙や、ベーン4とカバー5との間隙からポンプ室2A内に噴出してこれらの潤滑とポンプ室2Aのシールを行っており、その後潤滑油は上記気体とともに排出通路7から排出されるようになっている。
【0018】
上記運転状態からエンジンを停止させると、それに応じてロータ3が停止し、倍力装置からの吸気が終了する。
ここで、ロータ3の停止によってベーン4によって区画された上記吸気通路6側の空間は負圧状態のまま停止することとなるが、このとき上記直径方向給油孔11bの開口部と軸方向給油溝11cとが一致していなければ、軸方向給油孔11a内の潤滑油がポンプ室2A内に流入してしまうことはない。
これに対し、直径方向給油孔11bの開口部と軸方向給油溝11cとが一致した状態でロータ3が停止すると、ポンプ室2Aは負圧となっているため、給油通路11内の潤滑油がポンプ室2A内に大量に流入しようとする。
しかしながら、上記直径方向給油孔11bの開口部と軸方向給油溝11cとが一致した際には、これと同時に上記気体溝13aが軸方向給油溝11cに一致するようになっているので、この気体孔13aから大気が流入されてポンプ室2A内の負圧を解消するようになり、それによって大量の潤滑油がポンプ室2A内に流入するのを防止することができる。
【0019】
図6は回転数と駆動トルクとの関係を試験した試験結果図で、◇印は従来装置を、□印は本発明装置を示している。同図において、従来装置の気体通路は直径方向気体孔を備えており、その気体孔の直径は、目詰まりを防止することを考慮して最小の1.5mmとしてあり、したがって従来の気体通路の流路面積は1.77mmとなる。
これに対して、本発明の気体通路13は、図3ないし図5で示した断面形状を有する溝状の気体溝13aであるので、従来の孔形状に比較して目詰まりが起こりにくく、したがってその流路面積を従来の気体通路の流路面積よりも小さい0.91mmに設定した。なお、試験に用いた断面形状は、図3の断面D字形の気体溝13aを用いたが、その他の断面形状でも同等の試験結果が得られている。
【0020】
上記試験結果から理解されるように、従来装置(◇)では、エンジン回転数が1000回転以下となるに従って駆動トルクが大きくなっている。これは、エンジン回転数が1000回転以下となるに従ってポンプ室2Aに吸い込まれる空気量が増大し、ベーン4の回転に伴って吸い込んだ空気を再びポンプ室2Aの外部に排出するために、ポンプ室2Aに吸い込まれる空気量の増大に伴って駆動トルクが大きくなるからである。
上記従来装置に対し、本発明例(□)のように、気体孔13aの流路面積を小さくすると、エンジン回転数が低下しても駆動トルクの増大を抑制することができる。これは、ポンプ室2Aに吸い込まれる空気量を低減できることを示している。
【0021】
なお、上記各実施例では1枚のベーン4を備えたベーンポンプ1を用いて説明を行っていたが、従来知られるような複数枚のベーン4を備えたベーンポンプ1であっても適用可能であり、またその用途も倍力装置に負圧を発生させるためだけに限られないのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0022】
1 ベーンポンプ 2 ハウジング
2A ポンプ室 2B 軸受部
3 ロータ 3A ロータ部
3B 軸部 4 ベーン
11 給油通路 11a 軸方向給油孔
11b 直径方向給油孔 11c 軸方向給油溝
13 気体通路 13a 気体溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円形のポンプ室を備えたハウジングと、ポンプ室の中心に対して偏心した位置で回転するロータと、ロータによって回転し、ポンプ室を常に複数の空間に区画するベーンと、上記ロータの回転により間欠的にポンプ室と連通する給油通路と、上記ロータの回転により上記給油通路がポンプ室と連通したときに、該ポンプ室と外部空間とを連通させる気体通路とを備え、
さらに上記給油通路は、上記ロータの軸部にその直径方向に設けられた直径方向給油孔と、上記ハウジングに設けられてポンプ室に連通するとともに、ロータの回転により上記直径方向給油孔の開口が間欠的に重合連通される軸方向給油溝とを備えたベーンポンプにおいて、
上記気体通路を、上記ロータの外周面に形成されて一端部が外部空間に連通される気体溝から構成し、かつこの気体溝の他端部を、上記ロータの回転により軸方向給油溝に間欠的に重合連通させることを特徴とするベーンポンプ。
【請求項2】
上記気体溝の幅は、上記ロータの軸部の円周方向を基準として、上記直径方向給油孔の開口部の幅よりも大きく、かつ直径方向給油孔の開口部の両端縁を前後に越えた位置まで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。
【請求項3】
上記気体溝の断面形状は、上記ロータの軸部の外周面を平坦に削設した断面D字形と、断面四角形状と、断面三角形状とのいずれかであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベーンポンプ。
【請求項4】
上記気体溝は、上記ロータの製造時に同時に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のベーンポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−231675(P2011−231675A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102248(P2010−102248)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000207791)大豊工業株式会社 (152)
【Fターム(参考)】