説明

ペット看護装置

【課題】 ペットの生体データを利用した身体状態の把握ができ、生体状態に応じて濃縮酸素が供給できるペット看護装置の提供。
【解決手段】 本発明のペット看護装置は、ペット用に室内に設置したトレイ状のエアマットと、エアマットに設けられた生体情報検出手段と、ペットに装着された温度測定部を有するICタグと、ICタグの情報を読取る読取り部とを備え、生体データとICタグの温度情報に基づきペットの状態を監視する監視装置と、濃縮酸素供給手段とからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット、特に小型のイヌなどの室内用ペットの座位,横臥等における心拍数、呼吸数、体温等の生体情報(生体データ)を測定し、濃縮酸素を供給するペット看護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、室内でのペット、特に小型のイヌがペットとして飼われるようになっていて、この室内用ペットの寿命が延びている。例えば、イヌの平均寿命は、1990年の8.6歳に比べ11.9歳と3歳も延び、ネコも9.9歳と3倍に延びている。こうした状況で、イヌ,ネコ等のペットの看護、特にターミナルケアの必要性が高まっている。
【0003】
ターミナルケアには、ペットの生体情報を把握する必要がある。生態情報を得る方法として、センサーモジュールをペットに装着して心拍、心拍変化率を測定し、ペットの生体状態を無線で把握する装置が提案されている(特許文献1)。しかしながら、体温を測定するものでなく、センサー部は電極を含み、必ずペットの皮膚と接触するもので少なからず不快感を与えるものである。
【特許文献1】特開2004−138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ペットに不快感を与えることなく、生体データを利用し、それに基づいて濃縮酸素を供給するペット看護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のペット看護装置は、ペット用に室内に設置したトレイ状のエアマットと、エアマットに設けられた生体情報検出手段と、ペットに装着された温度測定部を有するICタグと、ICタグの情報を読取る読取り部とを備え、生体データと前記ICタグの温度情報に基づき前記ペットの状態を監視する監視装置と、濃縮酸素供給手段とからなることを特徴とする。また、本発明のペット看護装置は、ペット用に室内に設置したトレイ状のエアマットと、エアマットに設けられた生体情報検出手段と、ペットに装着された温度測定部を有するICタグと、ICタグの情報を読取る読取り部とを備え、生体データとICタグの温度情報に基づき前記ペットの状態を監視する監視装置と、濃縮酸素供給手段とからなることを特徴とするペット看護装置であって、生体情報検出手段で検出された生体情報に基づき、濃縮酸素供給手段による濃縮酸素の流量及び/または濃縮酸素濃度を調整することを特徴とする。また、本発明のペット看護装置はペット用に室内に設置したトレイ状のエアマットと、エアマットに設けられた生体情報検出手段を含むペットの状態を監視する監視装置と、酸素濃縮装置からなることを特徴とする。また、本発明のペット看護装置は、ペット用に室内に設置したトレイ状のエアマットと、エアマットに設けられた生体情報検出手段を含むペットの状態を監視する監視装置と、濃縮酸素供給手段とからなることを特徴とするペット看護装置であって、生体情報検出手段で検出された生体情報に基づき、濃縮酸素供給手段による濃縮酸素の流量及び/または濃縮酸素濃度を調整すること を特徴とする。また、ペット用洋服は、上記ペット看護装置に使用する温度測定部を有するICタグを備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
ペットの生体情報、特に呼吸数など生体情報に応じて適切な濃縮酸素を供給でき、特にペットにとって十分なターミナルケアが行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明の一実施例を示す図である。なお、本発明は、実施例に限定されるものではない。図1(a)において、ペットPが飼育されている室内等の部屋で、ペット用に室内に設置した生体データ測定用専用エアマット2を床の上に設置し、コネクタ4a、エアチューブ4を経てパソコンなどの機能を有する端末装置5とデータ測定用専用エアマット2とを接続し、生体データ測定用専用エアマット2の圧力変化を端末装置5に伝達できるようにしている。エアチューブがペットPにより食いちぎられないように、金属細線でエアチューブ4を被覆しておいたり、測定しない場合には、コネクタ4aを生体データ測定用専用エアマット2から外すようにする。なお、この生体データ測定用専用エアマット2はペットの躾用のトレイも兼用するようにしてもよい。また、重量センサ(不図示)を設けて、就寝時や安静時に体重測定できるようにすれば、ペットの成育のトレンド情報が得られる。また、孔部を有する透明なアクリル等プラスチック製のカバー1000により、ペットPを覆うようにして、図1(b)に示す酸素濃縮装置300から酸素供給孔1000aを経て30〜90%に濃縮された酸素がプラスチック製のカバー1000内に1〜5L/分流れるようにしている。
【0008】
なお、酸素濃縮装置300は、図1(b)において示されるように、RAM,ROM等の記憶部に記憶された制御プログラム、動作の諸条件を読出し、酸素濃縮装置300全体の制御を行なう制御部(CPU)310、原料空気から30〜90%に酸素を濃縮するための濃縮酸素発生ユニット311、30〜90%に濃縮された酸素を貯める製品タンク312、濃縮流量調整バルブ313、流量設定部(不図示)、酸素濃度設定部(不図示)等で構成され、防音性、防振製を考慮して筐体内に実装されている。濃縮酸素発生ユニット311、製品タンク312、濃縮流量調整バルブ313は、エア配管で連通としている。
【0009】
濃縮酸素発生ユニット311は、公知の構成、すなわち、コンプレッサー(空気圧縮手段)、コンプレッサーを冷却するブロア、均圧弁、主に窒素等を吸着するゼオライトを収納する吸着筒、大気開放弁等で構成される。
【0010】
ペット(小型のイヌ等)Pは、通常の状態で生体データ測定用専用エアマット2の上で横臥して就寝する。端末装置5には、圧力変化を検出する圧力センサと、その検出信号を処理して獣医師サイト7へLAN等専用回線またはインターネット等の情報通信ネットワーク8を介して伝送する制御監視装置、ICタグ読み取り部34が設けられている。端末装置5と獣医師サイト7の管理用コンピュータ(制御装置)11とは、情報通信ネットワーク8で、相互に情報が伝送できるようになっている。また、会員サーバー9とも情報通信ネットワーク8で相互に情報が伝送できるようになっている。会員サーバ9では、ペットPの情報、出産情報などが記憶される。
【0011】
獣医師サイト7にはサーバー(データ処理装置)9を設置し、ペットのID(血糖,予防接種履歴等)と関連付けして、ペットPの生体情報の測定データの収集、集計、データ分析等を行う。また、獣医師10の机上には管理パソコン11を設置し、獣医師10がペットPの健康状態を把握、監視するとともに、緊急時の被験者異常通報を受けたり、電話器により適宜看護婦の待機部屋に指示を出したり、ハンディナースコールで連絡したりすることができるようになっている。
【0012】
図2は、生体データ測定用専用エアマット2と端末装置5のブロック図である。圧力がエアチューブ4を介して微差圧センサ20と絶対圧力センサ21に入力される。ペットPの身体に起因する振動がエアマット2に伝達されるので、エアマット2の内部圧力が変化する。微差圧センサ20は圧力変動分を検出し、また、絶対圧力センサ21はエアマット2の内部圧力の絶対圧力を検出する。絶対圧力センサ21はペットPがエアマット2上にいるかを検出するために設けられている。
【0013】
微差圧センサ20としては、例えば、圧力の変化を受ける受圧面と対抗電極との間の静電容量変化を検知して差圧を検出するコンデンサマイクロフォン型差圧計が用いられる。コンデンサマイクロフォン型差圧計はエアマット2内部の微小な圧力変動を検出できる。
【0014】
微差圧センサ20の検出信号は監視制御装置30を構成するゲイン制御部31に与えられる。ゲイン制御部31は微差圧センサ20の検出信号のレベルを所定範囲の信号レベルに調整する。ペットPの姿勢の種類によってエアマット2に伝わる心拍や呼吸などの振動の強さが異なるために、微差圧センサ20の出力信号の強度(レベル)が異なる。ゲイン制御部31は姿勢によって異なる信号レベルを所定レベルの信号になるようにゲインを調整し、心拍フィルタ32、呼吸フィルタ33に出力する。また、ゲイン制御部31のゲイン値が姿勢判別部36に加えられる。ゲイン制御部31によって所定レベルに変換された微差圧センサ20の出力信号を心拍フィルタ32、呼吸フィルタ33に加えることにより、これら心拍フィルタ32、呼吸フィルタ33から心拍信号、呼吸信号などの被ペットP験者6の生体データが得られる。心拍フィルタ32、呼吸フィルタ33から得られたペットPの生体データはA/D変換部35でデジィタル信号に変換されデータ処理部37に入力される。
【0015】
また、ペットPに装着された洋服200に装着された温度センサ付きICタグ100から、温度情報をICタグ読取り部34で間歇的(例えば10〜30分ごと)に読み取る。ICタグ100の構成は、以下に説明する。
【0016】
<ICタグの構成>
図3において、101は、ICタグ読み取り部34からの信号を受け、ロジック部110を所定のフローで動作させるプログラムが記憶され、コンピュータで読取り可能な記憶媒体であるRAMである。102はEEPROMで、温度センサ106のそれぞれに対応するオフセット値,温度補正値などが記憶されている。また、体温情報も記憶可能である。なお、ロジック部110は、より複雑な処理フローの制御が可能なCPUとしてもよい。温度センサ106としては、温度変化に対してほぼリニアにアナログ出力し、小型化・ICタグとの一体化が可能で、35〜42℃の間で温度分解能が0.05℃である、半導体型の温度センサ、例えばC−MOS温度センサが好ましく用いられるが、サーミスタ型、サーモパイル(熱電対)型でも可能である。
【0017】
103は、ペットPに設けられた温度測定部を有するICタグ(IRID)100の体温情報を取得するための送受信回路、103aはアンテナ、104は電源部である。この電源部104は、コイルを有するアンテナ部103aを介して、体温情報を読取られる時に温度測定部を有するICタグ100の各部に電源を供給する。あるいは、小型の電池であってもよい。107はA/D変換部であり、温度センサ106と発振回路(不図示)で発生した体温信号をA/D変換するものである。ICタグ100は、アンテナ103aを含めて5mm×5mm、厚さ1.5mm程度の大きさである。なお、ICタグ100は、生体を通過可能な周波数の電磁波での通信(送受信)可能なものであれば、どのような周波数でもよいが、好ましくは13.56MHzの電磁波で送信可能になっている。間違ったペットPの情報を取得しないようにしたり、アンテナ103aから出力される信号を暗号化処理可能にしてセキュリティ機能を持たせることができる。
【0018】
<生体情報取得の処理フロー>
図4のフローチャートに基づいて生体情報取得の処理フローの一例を説明する。エアマット2上にペットPがいる(横臥,仰臥状態)ことを条件に測定を開始する。10〜60分毎に、差圧センサ(相対圧センサ)20と絶対圧力センサ21で圧力信号を取得(検出)する(ステップS1)。取得した圧力信号の特徴により、心拍数、呼吸数等を識別化し、心拍数、呼吸数等を演算する(ステップS2)。1回の圧検出時間は、2〜5分程度である。また、体温情報は、10〜60分毎に、ICタグ100にICタグ読取り部34から13.56MHzの電磁波を送信(送受信距離は、10cm〜1m程度)し、その信号と同期して得られる温度センサ106の体温情報を読取る(ステップS3)。これらの生体情報は、記憶部44に記憶される(ステップS4)。この生体情報は閾値と比較される。例えば、体温の場合、上限値が42.0℃、下限値が35.5℃としている。また、心拍は、例えば、上限値が150拍/分、下限値が60拍/分、呼吸数は、例えば、上限値が100/分、下限値が40/分としている。なお、ペットの種類、大きさに応じてこれらの閾値(上限値/下限値)は適宜設定変更可能としている。これらの生体情報のうち少なくとも1つの情報が異常と判断されると、アラームを発生させ(ステップS6)、管理サイト/医療サイト7の獣医師10に報知するようにしている。なお、獣医師10の携帯電話などに報知するようにしてもよい。異常と判断されたペットPの容体を確認後、リセット(ステップS7)する。異常が無い場合は、ステップS1に戻り、測定終了の指示入力があるまで生体情報の 測定を繰り返す。測定され、記憶部44に記憶される生体情報は、平均値、最大値、最小値、最多値を求めて、ペットPのIDとともにそれらのデータも記憶部44、サーバー9に記憶する。記憶部44に記憶された、心拍数、呼吸数、体温等の生体情報は、図6に示すように表示部36にトレンド表示される。表示部36では、心拍数、呼吸数、体温を同時に1時間(60分)毎にトレンド表示しているが、このうち1つまたは任意の組合せで表示可能にしてもよい。また、解熱剤などの投薬データをメモ情報として、日時とともに入力部45で入力しておくことで、表示部36の生体情報のトレンド表示と併せて表示可能となる。管理サイト/医療サイト7の表示部(不図示)でも同様の表示ができるようになっている。
【0019】
なお、圧力検出に基づく解析時間(所定時間)は2〜5分間でなく、任意の時間に設定できる。解析時間は1就寝分のデータ解析に都合のよい時間でよく、また、1就寝分でなく、所定の就寝時間内を設定することもできる。システムの規模、解析速度等により最適な条件とする。データ処理部37は、例えば、ペットPの健康状態を次のような判断基準に基づき判定する。すなわち、体温、心拍数、呼吸数が予め設定していた健康とされる数値範囲内であれば、健康(異常なし)である。また、所定の数値範囲以外にある時は、アラームを発生し、酸素濃縮装置300を駆動させ、濃縮酸素を発生させる。飼育者(家族)は、カバー1000をかぶせ、酸素濃縮装置300から酸素供給孔1000aを経て30〜90%に濃縮された酸素がプラスチック製のカバー1000内に1〜5L/分流れるようにして、ペットPの様子(体温、心拍数、呼吸数)を見る。必要に応じて、 酸素濃度、酸素流量を調整する。
【0020】
次に就寝中の異常監視と緊急通報について説明する。端末装置5のデータ処理部37は、所定時間(2〜5分間)分の生体データを解析して心拍数、呼吸数等を算出し、また、ICタグからの温度情報から、これらが異常といえる既定値の範囲を越えた場合に体温値異常、心拍数異常、呼吸数異常として表示装置38へ表示するとともに、緊急通報として管理パソコン11に通報する。この時も、酸素濃縮装置300を駆動させ、濃縮酸素を発生させる。飼育者(家族)は、カバー1000をかぶせ、酸素濃縮装置300から酸素供給孔1000aを経て30〜90%に濃縮された酸素がプラスチック製のカバー1000内に1〜5L/分流れるようにして、ペットPの様子(体温、心拍数、呼吸数)を見る。必要に応じて、 酸素濃度、酸素流量を調整する。データ処理部37は心拍数異常、呼吸数異常として表示装置38へ表示すると共にブザーを鳴動させるようにする。データ処理部37は、体動に関しては一定時間以上続くと発作と認識して同様に表示とブザー応答を行い、情報通信ネットワーク8を介して管理サイト/医療サイト7の管理パソコン11へ通報する。これを受けて管理サイト/医療サイト7の獣医師10が対処方法を情報通信ネットワーク8や電話、FAXなどでフィードバックする。なお、端末装置5と携帯電話等と生体情報,アラーム情報の通信をするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係るブロック図である。
【図3】本発明の実施例に係る温度測定部を有するICタグのブロック図である。
【図4】本発明の実施例に係る処理フローを示す図である。
【符号の説明】
【0022】
2・・・エアマット、4・・・エアチューブ、5・・・端末装置、P・・・ペット、7・・・管理サイト、8・・・情報通信ネットワーク、9・・・データサーバー、10・・・獣医師、100・・・ICタグ、101・・・RAM、102・・・EEPROM、103・・・送信受信回路、103a・・・アンテナ、106・・・サーミスタ 200・・・ペット用洋服、300・・・酸素濃縮装置、1000・・・カバー



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペット用に室内に設置したトレイ状のエアマットと、前記エアマットに設けられた生体情報検出手段と、ペットに装着された温度測定部を有するICタグと、前記ICタグの情報を読取る読取り部とを備え、前記生体データと前記ICタグの温度情報に基づき前記ペットの状態を監視する監視装置と、濃縮酸素供給手段とからなることを特徴とするペット看護装置。
【請求項2】
ペット用に室内に設置したトレイ状のエアマットと、前記エアマットに設けられた生体情報検出手段と、ペットに装着された温度測定部を有するICタグと、前記ICタグの情報を読取る読取り部とを備え、前記生体データと前記ICタグの温度情報に基づき前記ペットの状態を監視する監視装置と、濃縮酸素供給手段とからなることを特徴とするペット看護装置であって、
前記生体情報検出手段で検出された生体情報に基づき、濃縮酸素供給手段による濃縮酸素の流量及び/または濃縮酸素濃度を調整すること を特徴とするペット看護装置。
【請求項3】
ペット用に室内に設置したトレイ状のエアマットと、前記エアマットに設けられた生体情報検出手段を含むペットの状態を監視する監視装置と、酸素濃縮装置からなることを特徴とするペット看護装置。
【請求項4】
ペット用に室内に設置したトレイ状のエアマットと、前記エアマットに設けられた生体情報検出手段を含むペットの状態を監視する監視装置と、濃縮酸素供給手段とからなることを特徴とするペット看護装置であって、
前記生体情報検出手段で検出された生体情報に基づき、濃縮酸素供給手段による濃縮酸素の流量及び/または濃縮酸素濃度を調整すること を特徴とするペット看護装置。
【請求項5】
請求項1〜2のいずれかに記載の温度測定部を有するICタグを備えたペット用洋服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−312720(P2007−312720A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147647(P2006−147647)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】