ペプチドが結合された、イノシン置換アンチセンスオリゴマー化合物および方法
治療的なオリゴマー−ペプチド結合体およびこの結合体を使用する方法が開示される。この結合体は、(a)実質的に荷電していないオリゴヌクレオチドアナログ化合物であって、化合物が結合することが意図される標的核酸領域において、4以上連続したシトシン塩基と相補的である塩基の列を含む塩基配列を有する、化合物、および(b)標的細胞への該化合物の取り込みを高めるのに効果的な、この化合物に結合されたアルギニンリッチペプチドを含む。この化合物中の塩基の列は、この塩基の列における連続したグアニン塩基の数を3個以下に制限するように列中に配置された少なくとも1個のイノシン塩基を含む。この結合体は、アルギニンリッチペプチドによって、化合物単独よりも大きな細胞取り込みを有し、そしてイノシンによるグアニン置換がない結合体よりも活性が実質的により大きいアンチセンス活性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、アンチセンスオリゴマー化合物およびこのような化合物の使用方法に関し、このアンチセンスオリゴマー化合物は、(i)細胞へのこのオリゴマーの取り込みを高めるのに効果的なアルギニンリッチペプチドに結合されており、そして(ii)G塩基の列が、1個より以上のイノシン塩基によって壊れている。
【0002】
(参考文献)
【0003】
【表1A】
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
アンチセンスオリゴマーは、現在臨床研究中のアンチセンス薬物の数により証明され、そしてアンチセンスオリゴマーの多くの潜在的制限が過去数年にわたって首尾よく対処されたという事実(非特許文献1、非特許文献2)によって補助されるたように、製薬として大きな可能性を提供する。新規な荷電していないオリゴマーバックボーンは、細胞への取り込みを改善して、ヌクレアーゼ分解への抵抗性を高めるために開発された(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。いくつかのオリゴマー構造(例えば、モルホリノベースの構造)に関しては、修飾されたバックボーンは、その標的核酸への高められた結合親和性を与えるとわかった(非特許文献4、非特許文献5)。
【0005】
より近年では、種々のアルギニンリッチペプチドが、荷電していないオリゴヌクレオチドの細胞(哺乳動物細胞を含む)への取り込みレベルを劇的に上昇させることができるということが見出された(例えば、2003年4月29日に出願された、共有に係る米国特許出願第60/466,703号および2004年4月29日に出願した、「Compositions for Enhancing Transport of Molecules into Cells」に関する対応する米国特許出願(これらの両方はそれらの全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。この知見には、選択されたタンパク質の発現を妨害することが意図されるもの、プレプロセシングされたmRNAにおける特定のドナースプライス部位またはアクセプタースプライス部位を妨害することを目的とするもの、およびウイルス遺伝子の発現妨害または一本鎖ウイルスゲノムの複製妨害によってウイルス感染を処置するように設計されたものを含め、種々のアンチセンスオリゴマーの治療的な可能性をかなり増やす可能性がある。
【0006】
いくつかのアンチセンス適用において、オリゴマーアンチセンスが指向される最適標的化配列は、一続きの4個以上のシトシン塩基を含み得る。その場合には、このオリゴマーは、4個以上の相補的なグアニン塩基の対応する列を含む。重要な例として、c−mycタンパク質に関する最適標的配列は、一続きの4個のシトシン塩基を含むc−myc RNAのAUG開始部位を含んでいる領域である。c−mycの開始コドン領域に指向されたアンチセンスオリゴマーは、癌の処置、多嚢胞腎病の処置(例えば、その全体が本明細書中に参考として援用される、共有に係る米国特許第6,875,747号(特許文献1)を参照のこと)、冠状動脈血管再狭窄の処置(例えば、その全体が本明細書中に参考として援用される、共有に係るPCT特許出願WO00/44897(2000年8月3日公開;特許文献2)を参照のこと)および癌治療(例えば、その全体が本明細書中に参考として援用される、共有に係る米国特許出願US−2003−0087861−A1(2003年5月8日公開;特許文献3)を参照のこと)を含め、多くの重要な治療適用を有する。
【特許文献1】米国特許第6,875,747号明細書
【特許文献2】国際公開第00/44897号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0087861号明細書
【非特許文献1】Devi,G.R.(2002).”Prostate cancer:status of current treatments and emerging antisense−based therapies.”Curr Opin Mol Ther 4(2):138−48
【非特許文献2】Stein,D.A.,D.E.Skilling,et al.(2001).”Inhibition of Vesivirus infections in mammalian tissue culture with antisense morpholino oligomers.” Antisense Nucleic Acid Drug Dev 11(5):317−25.
【非特許文献3】Hudziak,R.M.,E.Barofsky,et al.(1996).”Resistance of morpholino phosphorodiamidate oligomers to enzymatic degradation.” Antisense Nucleic Acid Drug Dev 6(4)267−72.
【非特許文献4】Iversen,P.L.(2001).Phosphoramidite Morpholino Oligomers.Antisense Drug Technology.S.T.Crooke.New York,Marcel Dekker,Inc.
【非特許文献5】Summerton,J.and D.Weller(1997).”Morpholino antisense oligomers:design,preparation,and properties.”Antisense Nucleic Acid Drug Dev 7(3):187− 95.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
驚くべきことに、現在、オリゴマーの細胞取り込みを高める試みにおいて、一続きの4個以上のシトシン塩基を有するアンチセンス化合物にアルギニンリッチペプチドを結合させることにより、この化合物のアンチセンス活性ならびにこの化合物を精製する能力がひどく損なわれることが分かった。この課題の基礎は理解されていないにもかかわらず、これは、オリゴマー中のGカルテットの形成を促進し、従って、この化合物の溶解性および/またはその標的核酸との結合能力を低下させる様式での、正に荷電したペプチドとオリゴマー化合物との間の相互作用に関連するようである。それゆえ、その細胞内標的に関するこの化合物のアンチセンス活性を損なわずこの化合物をアルギニンリッチペプチドと結合させることによって、このようなアンチセンスオリゴマー化合物の細胞取り込みを高めることは有用である。
【0008】
特に、癌、多嚢胞腎病または冠状動脈血管(coronary−vessel)再狭窄の処置において化合物の治療的な活性を高めることを目的として、アンチセンス活性の損失なしに上記のc−mycアンチセンス化合物の細胞取り込みを高めることは有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明の方法は、1つの局面において、実質的に荷電していないオリゴヌクレオチドアナログ化合物と該化合物の標的細胞への取り込みを高めるのに効果的なアルギニンリッチペプチドとの結合体を形成することによって該化合物の細胞取り込みを高めるための方法において改善を含み、該化合物は、該化合物が結合することが意図される標的核酸領域において、4以上連続したシトシン塩基と相補的である塩基の列を含む。この改善は、該塩基の列における連続したグアニン塩基の数を3以下に(好ましくは2以下に)制限するためにイノシン塩基で、前記化合物における該塩基の列において少なくとも1個のグアニン塩基を置換することを含む。
【0010】
この改善は、置換が、陽イオン性イオン交換樹脂への結合体の結合および該陽イオン性イオン交換樹脂からの結合体の遊離を含む精製工程中の前記結合体の水溶性を、該イノシン置換がない同じ結合体と比較して高めるのに効果的であり得る。前記標的核酸領域が、開始コドンをmRNAに含む場合、この改善は、該mRNAによってコードされるタンパク質の翻訳を妨害する前記結合体の能力を、前記イノシン置換のない同じ結合体と比較して高めるに効果的であり得る。前記標的核酸領域が、プレプロセシングされたmRNA中にドナースプライス部位またはアクセプタースプライス部位を含む場合、前記改善は、該標的領域でmRNAスプライシングをマスキングする前記結合体の能力を、前記イノシン置換がない同じ結合体と比較して高めるのに効果的であり得る。
【0011】
前記標的核酸領域が、ウイルス複製に関与する、ウイルスにコードされるシス作用性エレメントを含む場合、前記改善は、ウイルス複製をブロックする前記結合体の能力を、前記イノシン置換がない同じ結合体と比較して高めるのに効果的であり得る。
【0012】
例示的な実施形態では、前記アルギニンリッチペプチドは、少なくとも6個のXサブユニット、少なくとも2個のYサブユニットおよび多くても3個のZサブユニットを含め、Xサブユニット、Yサブユニットおよび必要に応じたZサブユニットから選択される8〜16個のサブユニットを含み、ここで、該サブユニットの50%より多くがXサブユニットであり、そしてここで
(a)各々のXサブユニットは、アルギニンまたはアルギニンアナログを独立して表し、該アナログは、構造R1N=C(NH2)R2の側鎖を含む陽イオン性αアミノ酸であり、ここで、R1は、HまたはRであり;R2はR、NH2、NHRまたはNR2であり、ここで、Rは低級アルキルまたは低級アルケニルであって、酸素または窒素をさらに含むことができ;R1とR2とは、一緒に環を形成し得;そして、側鎖は、R1またはR2により該アミノ酸に連結され;
(b)各々のYサブユニットは、中性アミノ酸−C(O)−(CHR)n−NH−を独立して表し、ここで(i)nが2〜7であり、そして各々のRが独立してHまたはメチルであるか、または(ii)nは1であり、そして、Rは、置換されたかまたは非置換の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびアラルキルから選択される中性の側鎖であり、ここで、該中性の側鎖は、置換されたアルキル、アルケニルおよびアルキニルから選択される場合、4個全ての炭素原子について多くとも1個のヘテロ原子を含み;そして
(c)各々のZサブユニットは、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリジン、ヒスチジン、リジン、メチオニン、セリンおよびトレオニンから選択されるアミノ酸を独立して表す。
【0013】
また、例示的な実施形態では、前記オリゴヌクレオチドアナログ化合物は、1個のサブユニットのモルホリノ窒素と隣接したサブユニットのモルホリノ3位の環外炭素との間のリン含有結合により連結されるモルホリノサブユニットから構成されるモルホリノオリゴマーである。前記モルホリノサブユニットは、構造:
【0014】
【化4】
に従う、荷電していないホスホロジアミデート結合で結合されてもよく、ここで、Y1=Oであり、Z=Oであり、Pjは、塩基特異的水素結合によってポリヌクレオチド中の塩基と結合するのに効果的なプリン塩基対合部分またはピリミジン塩基対合部分であり、そして、Xは、アルキル、アルコキシ、チオアルコキシまたはアルキルアミノである。
【0015】
別の局面では、本発明は、治療的なオリゴマー−ペプチド結合体を含み、この結合体は、(a)化合物が結合することが意図される標的核酸領域において、4個以上連続したシトシン塩基と相補的である塩基の列を含む塩基配列を有する実質的に荷電していないオリゴヌクレオチドアナログ化合物、および(b)標的細胞への該化合物の取り込みを高めるのに効果的な、該化合物に結合されたアルギニンリッチペプチドから構成される。該化合物における該塩基の列は、該塩基の列における連続したグアニン塩基の数を3個以下に(好ましくは2個以下に)制限するように該列中に配置される少なくとも1個のイノシン塩基を含む。結合体の例示的実施形態は、上記の通りである。
【0016】
特に、ヒトのc−myc mRNAのAUG開始部位を含む領域への結合によるc−mycタンパク質の翻訳の妨害において使用するために、該化合物の標的配列は、配列番号2〜配列番号10と同定される配列のうちの1つを含み得る。前記化合物に結合されたアルギニンリッチペプチドは、配列番号16、配列番号17または配列番号18と同定される配列を含み得る。
【0017】
また開示されるのは、被験体の標的細胞中のc−myc発現の阻害に応答性の病理学的状態を有する被験体を処置する方法である。該方法を実施する際に、ちょうど記載した種類の結合体は、治療有効量で該被験体に投与される。該結合体は、アルギニンリッチペプチドがないアンチセンス化合物単独よりも大きな細胞取り込みを有し、かつ、c−myc翻訳の妨害において、1個以上のイノシン塩基がない同じ結合体よりも活性が高い。該方法で使用する結合体の例示的実施形態は、上記の通りである。
【0018】
膀胱癌を処置する際に使用するためには、前記結合体は、経尿道送達により投与されてよく、そして、該方法は、シスプラチン抗癌化合物を前記患者に投与することをさらに含み得る。
【0019】
血管形成術手順後の血管損傷部位での冠状動脈再狭窄の危険度を減らす際に使用するためには、前記結合体は、例えば、薬物放出ステントを介して、または薬物を運ぶ微小泡の静脈内注射によって、脈管内送達により投与されてもよい。
【0020】
冠状動脈バイパス形成手術の間に配置される伏在静脈を保護する際に使用するためには、前記結合体は、該静脈を外科的に配置する前に該静脈を前記結合体にさらすことにより投与されてもよい。
【0021】
多嚢胞腎病を処置するためには、前記結合体は、経口投与または非経口投与によって前記被験体に投与されてもよい。
【0022】
以下の発明の詳細な説明が添付図面とともに読まれれば、発明のこれらおよび他の目的および特徴は、より完全に明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
「アルキル」とは、分岐状であっても、直鎖状であっても、または環状(シクロアルキル)であってもよい、炭素および水素を含む完全に飽和した一価性のラジカルをいう。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−ブチル、t−ブチル、n−ヘプチル、イソプロピル、シクロプロピル、シクロペンチル、エチルシクロペンチルおよびシクロヘキシルである。一般に好ましいのは、1〜6個の炭素原子を有しているアルキル基(「低級アルキル」と称され、メチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、イソアミル、n−ペンチルおよびイソペンチルにより例示される)である。一実施形態において、低級アルキルとは、C1−C4アルキルをいう。
【0024】
「アルケニル」とは、分岐状であっても、直鎖状であっても、または環状であってもよい、炭素および水素を含む不飽和の一価性のラジカルをいう。アルケニル基は、一不飽和でもよく、または多価不飽和でもよい。一般に好ましいのは、「低級アルケニル」と称される、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基である。
【0025】
「アリール」とは、一般に、単一の環(例えば、ベンゼン)または2個の縮合環(例えば、ナフチル)を有する、置換されたか非置換の一価性の芳香族ラジカルをいう。この用語は、ヘテロアリール基を含み、ヘテロアリール基は、環において1個以上の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を有する芳香族環基(例えば、フリル、ピロール、ピリジルおよびインドール)である。「置換された」とは、アリール基中の1個以上の環水素がハロゲン化物(例えば、フッ素、塩素または臭素)によって;1個または2個の炭素原子を含んでいる低級アルキル基によって;ニトロ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、メトキシ、ハロメトキシ、ハロメチルまたはハロエチルによって置換されていることを意味する。好ましい置換基としては、ハロゲン、メチル、エチルおよびメトキシが挙げられる。一般に好ましいのは単一環を有するアリール基である。
【0026】
「アラルキル」とは、アリール基によってさらに置換された、アルキル(好ましくは低級(C1−C4、好ましくは、C1−C2)アルキル置換基をいう;例は、ベンジル(−CH2C6H5)およびフェネチル(−CH2CH2C6H5)である。
【0027】
「複素環」とは、環原子が炭素、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される、非芳香族環(好ましくは5員〜7員の環)をいう。好ましくは、環原子は、3〜6個の炭素原子を含む。このような複素環としては、例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリンが挙げられる。
【0028】
用語「置換される」とは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基またはアルカリール基に関して、ヘテロ原子含有置換基(例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、チオール、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、イミノ、オキソ(ケト)、ニトロ、シアノなど)またはさまざまな酸もしくはエステル(例えば、カルボン酸、スルホン酸もしくはリン酸またはカルボン酸エステル、スルホン酸エステルもしくはリン酸エステル)による、水素原子の置換をいう。
【0029】
「アンチセンスオリゴマー化合物」または「アンチセンスオリゴマーアナログ」または「アンチセンス化合物」または「オリゴマーアナログ化合物」とは全て、実質的に荷電しておらず、代表的には、8塩基と40塩基との間の長さを有し、かつ一本鎖標的核酸(例えば、プロセシングもしくはプレプロセシングされたmRNA転写産物、または一本鎖ウイルスゲノムRNAもしくはDNA)と相補的であるかまたは実質的に相補的である塩基配列を有する、核酸アナログをいう。この化合物は、結合されていない形態であってもよく、または結合された形態(例えば、アルギニンリッチペプチドに結合される)であってもよい。
【0030】
「モルホリノオリゴマー」とは、図1に示される形態のモルホリノサブユニット構造から構成されるオリゴヌクレオチドアナログであり、ここで、(i)これらの構造は、リン含有結合によって一緒に連結されており(1〜3原子長、好ましくは2原子長)、そして好ましくは荷電しておらず、1個のサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接したサブユニットの5’環外炭素に連結している、そして(ii)PiおよびPjは、塩基特異的水素結合によってポリヌクレオチド中の塩基と結合するのに効果的なプリン塩基対合部分またはピリミジン塩基対合部分である。このプリン塩基対合部分またはピリミジン塩基対合部分は、代表的には、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシルまたはチミンである。モルホリノオリゴマーの合成、構造および結合の特徴は、米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,521,063号および同第5,506,337号において、詳述される。これらの全ては本明細書中に参考として援用される。
【0031】
2原子結合を有する、図1Bに示されるサブユニットは、図2Bに示されるように、6原子反復単位バックボーンのために使用される。これらの構造において、5’モルホリノ炭素をリン基に連結している原子Y1は、硫黄、窒素、炭素または、好ましくは酸素であり得る。リンからペンダントするX部分は、塩基に特異的な水素結合を妨害しない任意の安定な基である。好ましい基としては、アルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、およびアルキルアミノ(環状アミンを含む)が挙げられ、塩基に特異的な結合が崩壊しない限り、これらの全てはさまざまに置換され得る。アルキル、アルコキシおよびチオアルコキシは好ましくは、1〜6個の炭素原子を含む。アルキルアミノとは好ましくは、低級アルキル(C1〜C6)置換をいい、そして環状アミンは好ましくは、必要に応じて、酸素、窒素および硫黄から選択される1〜2個のさらなるヘテロ原子を含んでいる、5員〜7員の窒素複素環である。Zは、硫黄または酸素であって、好ましくは酸素である。
【0032】
好ましいモルホリノオリゴマーは、ホスホロジアミデートに連結されたモルホリノオリゴマーであり、本明細書において、PMOと称される。このようなオリゴマーは、図2Bに示される形態のモルホリノサブユニット構造から構成され、ここで、この構造は、ホスホロジアミデート結合によって一緒に連結され、ここで、X=NH2、NHRまたはNR2(ここで、Rは、低級アルキル、好ましくはメチルである)であり、Y=Oであり、そしておよびZ=Oであり、ホスホロジアミデート結合は、1個のサブユニットのモルホリノ窒素を隣接したサブユニットの5’環外炭素に結合し、PiおよびPjは、塩基特異的水素結合によってポリヌクレオチド中の塩基に結合するのに効果的なプリン塩基対合部分またはピリミジン塩基対合部分である。また好ましいのは、交互のホスホロジアミデート結合を有する構造であり、ここで、図2Bにおいて、X=低級アルコキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)であり、Y=NHまたはNRであり、ここでRは低級アルキルであり、そしてZ=Oである。
【0033】
モルホリノベースのオリゴマーの望ましい化学的特性としては、相補的塩基標的核酸(標的RNAが挙げられる)と、(8〜14塩基程度の短いオリゴマーとさえ)高いTmを有して、選択的にハイブリダイズする能力、、哺乳動物細胞に能動輸送される能力、およびオリゴマー:RNAヘテロ二重鎖がRNAse分解に耐える能力が挙げられる。
【0034】
「実質的に荷電していない」モルホリノオリゴマーは、4個全ての(好ましくは10個全ての、より好ましくは20個全ての)荷電していないサブユニット間結合について、多くても1個の荷電したサブユニット間結合を含む。任意の荷電した結合は、好ましくは、荷電したホスホルアミデート(またはチオホスホルアミデート)結合である(例えば、図2Bに示される結合であって、ここで、XはO−またはS−である)。好ましくは、モルホリノオリゴマーは、完全に荷電していない。
【0035】
「アミノ酸サブユニット」は、好ましくは1個のα−アミノ酸残基(すなわち、−CO−CHR−NH−)である;これはまた、βアミノ酸または他のアミノ酸残基(例えば、−CO−CH2CHR−NH−)であってもよく、ここで、Rは側鎖である。
【0036】
「Gカルテット」は、Gカルテットの存在によって安定化される分子間四重鎖構造および分子内四重鎖構造をグアニンリッチ核酸に採らせ得る積み重なった平面水素結合グアニンテトラマーからなる。
【0037】
用語「非天然アミノ酸」とは、β−アラニン(β−Ala)または6−アミノヘキサン酸(Ahx)のような、天然で見つかるタンパク質に存在しないアミノ酸をいう
(II.化合物−輸送体結合体)
本発明は、一つの局面では、実質的に荷電していないオリゴヌクレオチドアナログ化合物と、それに対して結合された、標的細胞へのこの化合物の取り込みを高めるのに効果的なアルギニンリッチペプチドとから構成される、治療的なオリゴマー−ペプチド結合体を含む。この化合物は、この化合物が結合することが意図される標的核酸領域において、4個以上連続したシトシン塩基と相補的である塩基の列を含む方法において、この列は、この列における連続したグアニン塩基の数を3個以下に制限するようにこの列中に配置される少なくとも1個のイノシン塩基を含む。好ましくは、塩基の列は、少なくとも2個のイノシン塩基を含み、そしてこの列における連続したグアニンの数は2以下である。
【0038】
以下から分かるように、イノシン塩基は、標的シトシン塩基と相補的であるが、通常のG−C塩基対よりも安定性が低いWatson−Crick塩基対を形成し、陽イオン性イオン交換樹脂への結合体の結合および陽イオン性イオン交換樹脂からの結合体の遊離を含む精製工程中の結合体の溶解性を、このイノシン置換がない同じ結合体と比較して高めるのに有用である。この溶解性を高めることは、実用的な精製法によって精製された結合体を得る際に重要である。本発明の別の特徴によれば、イノシン塩基置換はまた、以下によって証明されるように、その標的核酸に関して化合物の活性を高めるのに効果的である:
(i)標的核酸領域が開始コドンをmRNAに含む場合、置換は、mRNAによってコードされるタンパク質の翻訳を妨害する結合体の能力を高めるのに効果的である;
(ii)標的核酸領域が、プレプロセシングされたmRNA中にドナースプライス部位またはアクセプタースプライス部位を含む場合、置換は、前記標的領域でmRNAスプライシングをマスキングする結合体の能力を高めるのに効果的である;および
(iii)標的核酸領域が、ウイルス複製に関与する、ウイルスにコードされるシス作用性エレメントを含む場合、置換は、ウイルス複製をブロックする結合体の能力を、イノシン置換がない同じ結合体と比較して高めるのに効果的である。
【0039】
イノシン塩基で置換されたオリゴマー−ペプチド結合体の高められたアンチセンス活性を実証するための方法は、代表的には、mRNA翻訳、プレプロセシングされたmRNAのスプライスの精度またはウイルス複製の阻害を測定するように設計された無細胞翻訳アッセイおよび組織培養に基づくアッセイである。
【0040】
無細胞翻訳アッセイは、翻訳能力のある細胞溶解産物(例えば、ウサギ網状赤血球溶解産物)および(例えば、アンチセンスオリゴマー標的配列がすぐ上流に配置されたホタルルシフェラーゼ)を含む投入mRNAからなる。種々のプラスミド構造物は、レポーターmRNAを生成するために用いられ得る。アンチセンスオリゴマーは無細胞翻訳反応物に加えられ、そしてレポーター遺伝子シグナルの相対的な阻害はアンチセンス活性の尺度である。本発明を記載するために使用する無細胞翻訳アッセイのより詳細な説明は、実施例4および5に示される。
【0041】
mRNAの翻訳阻害を示すように設計された組織培養に基づくアッセイは、翻訳産物(例えば、タンパク質)が量的に測定され得るネイティブな細胞遺伝子または細胞株に安定してトランスフェクションされたレポーター遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴマーを使用する。標的mRNAの翻訳阻害の程度の測定は、免疫学的な方法を使用したタンパク質発現のレポーター遺伝子シグナル出力または定量を含めた種々の分析法を使用して実行され得る。
【0042】
プレプロセシングされたmRNAスプライシングの阻害は、スプライスドナー部位またはスプライスアクセプター部位を標的としたアンチセンスオリゴマーで処理された細胞におけるサザンブロットまたは定量的ポリメラーゼ連鎖反応により、誤ってスプライシングされたmRNAのレベルを測定することにより示され得る。代替のアプローチ(例えば、Kang,Choら,1998を参照のこと)は、誤ったスプライシングを引き起こす変異したヒトβ−グロビンイントロンにより中断されるルシフェラーゼ遺伝子を有するプラスミドによって安定してトランスフェクションされた細胞株を利用する。このイントロン中の変異を標的としたアンチセンスオリゴマーは、機能的なルシフェラーゼレポータータンパク質のスプライシングの修正およびアップレギュレーションに結果としてなる。
【0043】
ウイルス複製に関係するシス作用性エレメントを標的とするアンチセンスオリゴマーの高められた活性は、標準的な組織培養に基づくウイルス複製アッセイまたはウイルスレプリコンを使用して示され得る。アンチセンスオリゴマーの存在下でのウイルス複製の阻害は、アンチセンスオリゴマーの存在下で複製されたウイルスの力価を決定することにより測定される。ウイルスレプリコン系は、全長の感染性ウイルスクローンの誘導体を利用し、ここで、ウイルスの構造遺伝子は、部分的または完全のいずれかで、レポーター遺伝子により置換されている。レプリコンは、通常、トランスフェクションによって、複製能力のあるウイルスに感染している細胞に導入される。このレプリコンは、レポーター遺伝子の増幅およびレポーターシグナル(例えば、ルシフェラーゼ活性)の増加に結果となる、ウイルスの複製機構によって認識される必須のシス作用性複製エレメントをコードする。
【0044】
(A.アルギニンリッチポリペプチド部分)
実質的に荷電していないアンチセンスオリゴマー化合物の生体膜を通した取り込みを高めるために本発明で使用されるアルギニンリッチペプチドは、一般に、8〜13個のXサブユニット、2〜4個の連続したYサブユニット、Xサブユニットの中に単独で散在するYサブユニットを含め、XおよびYから選択される10〜15個のサブユニットからなる部分を含み、そして薬剤が連結される必要に応じたリンカーサブユニットを含む。Xは、構造R1N=C(NH2)R2の側鎖部分を含むアミノ酸サブユニットを表し(図3Aを参照のこと)、ここで、R1は、HまたはRであり;R2はR、NH2、NHRまたはNR2であり、ここで、Rは低級アルキルまたは低級アルケニルであって、酸素または窒素をさらに含むことができ;R1とR2とは、一緒に環を形成し得;そして、側鎖部分は、R1またはR2によりこのアミノ酸サブユニットに連結される。
【0045】
選択された実施形態では、各々のXについては、側鎖部分は、グアニジル(HN=C(NH2)NH−)、アミジニル(HN=C(NH2)C<)、2−アミノジヒドロピリミジル、2−アミノテトラヒドロピリミジル、2−アミノピリジニルおよび2−アミノピリミドニル(2−aminopyrimidonyl)(それぞれ、可能な結合部位を示す、図3B〜図3G)からなる群から独立して選択される。構造3D、構造3Eおよび構造3Gにおいて、アミノ酸サブユニットに対する側鎖の連結が、環の−NH−基のいずれかによって、および示される炭素原子のいずれかによって起こり得ることに注意されたい。1つの実施形態では、アミノ酸サブユニットアルギニン(Arg)においてのように、側鎖部分はグアニジルである。
【0046】
Yは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルおよびアルカリールからなる群から選択される側鎖を有する疎水性アミノ酸サブユニットを表し、これらのいずれもが、置換されても置換されなくてもよい;置換されたアルキル、置換されたアルケニルおよび置換されたアルキニルから側鎖が選択される場合、Yは、6つ全ての炭素原子について多くても1個のヘテロ原子を含む。選択された実施形態では、Yは、置換されたかまたは非置換の、アリール、アラルキルおよびアルカリールからなる群から選択される、側鎖を有する疎水性アミノ酸サブユニットを表す。他の実施態様において、各々のYは、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンからなる群から選択される。1つの好ましい実施形態では、各々のYは、フェニルアラニン(PheまたはF)サブユニットである。他の好ましい実施形態では、Yサブユニットは、非天然のアミノ酸6−アミノヘキサン酸(Ahx)である。XサブユニットおよびYサブユニットは、本明細書において、「陽イオン性サブユニット」および「疎水性サブユニット」と称されてもよい。
【0047】
上記の如く、XサブユニットがYサブユニットの間を中断していないという点で、Yサブユニットは連続しているか、または、Xサブユニットの間で単独で散在するかのいずれかである。しかしながら、連結サブユニットは、Yサブユニットの間にあってもよい。1つの実施形態では、Yサブユニットは、輸送体の末端にある;他の実施形態では、それらは、Xサブユニットが隣接している。
【0048】
好ましくは、輸送体はペプチドであり、ここで、アミノ酸はペプチド結合で連結される。アミノ酸は、d−アミノ酸、l−アミノ酸、非天然アミノ酸またはそれらの組合せであり得る。送達されるべき化合物は、検出のために使用される化合物(例えば、蛍光化合物)であってもよいが、しかし、それは、好ましくは生物活性物質(例えば、治療用薬剤または診断薬剤)である。この種の薬剤としては、核酸または核酸アナログ(特に、アンチセンスオリゴヌクレオチド)が挙げられる。
【0049】
本願明細書において示されるように、上記の通りの輸送体部分は、結合した荷電していないオリゴマー化合物の細胞への侵入を、結合した輸送体部分がないこの化合物の取り込みと比較して、そして疎水性サブユニットYを欠いている結合した輸送体部分による取り込みと比較して、大いに高める。このような高められた取り込みは、好ましくは、疎水性サブユニットYを欠いている結合した輸送体部分によるこの薬剤の取り込みと比較した、哺乳動物細胞への化合物の取り込みにおける少なくとも2倍の増加、好ましくは4倍の増加によって証明される。取り込みは、結合していない化合物と比較して、好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは少なくとも40倍高められる。
【0050】
輸送体部分の更なる利点は、おそらく、正に荷電した輸送体部分と負に荷電した核酸との間での静電的相互作用による、アンチセンスオリゴマーとその標的核酸配列との間で二重鎖を安定させるその予想される能力である。輸送体中の荷電したサブユニットの数は、上記のように、14個未満であり、好ましくは8個および11個との間である。なぜなら、荷電したサブユニット数があまりに多いと、配列特異性の低減に至るかもしれないからである。
【0051】
組織培養および無細胞系の両方で測定したところ、輸送体部分もまた、アンチセンスオリゴマーの有効濃度を低下させて、アンチセンス活性を達成する。無細胞翻訳系は、その標的と結合して立体的妨害により下流配列の翻訳を阻害するアンチセンスオリゴマーの能力に対する、輸送体部分の高められた効果を評価する独立した手段を提供する。アルギニンリッチペプチド−PMO結合体のアンチセンス活性を試験するように設計された無細胞翻訳アッセイは、結合していないPMOと比較して、アンチセンス活性における10倍と500倍との間の改善を実証する(実施例5、ならびに図6および図7を参照のこと)。
【0052】
(B.オリゴマーアンチセンス化合物)
上記の如く、1つの実施形態では、アンチセンスオリゴマー化合物は、ポリヌクレオチドの標的配列に対して塩基特異的に結合し得る合成オリゴマー(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドアナログ)である。バックボーン構造か、環構造か、またはより低い頻度では、天然のポリヌクレオチドの塩基構造が修飾されているこの種のアナログは周知であり、そしてこれには、荷電したアナログ(例えばホスホロチオネートに結合したオリゴヌクレオチド)および荷電していないアナログ(例えば、メチルホスホネートおよびペプチド核酸)を含む。連結部分における置換に依存して、いくつかのアナログ(例えば、N3’→P5’ホスホルアミデート)は、荷電していても荷電してなくてもよい。
【0053】
好ましい実施形態では、上記で定義した通り、このポリマーは、長さが約8〜40サブユニットのモルホリノオリゴマーである。より代表的には、このオリゴマーは、長さが約10〜30サブユニットまたは約12〜25サブユニットである。いくつかの適用に関しては、例えば、(例えば、長さが約8〜12サブユニットの)抗細菌性の短いオリゴマーは、特に本願明細書において開示されるようなペプチド輸送体に結合させた場合、特に有利であり得る。好ましくは、オリゴマーは、上記でも規定した、荷電していないホスホロジアミデートに結合したモルホリノオリゴマー(PMO)である。このPMOは、任意の配列のものであり得、ここで、この支持される塩基対合基としては、標準的または改変されたA塩基、T塩基、C塩基、G塩基、I塩基およびU塩基が挙げられる。
【0054】
本発明の一局面によれば、オリゴマー化合物が指向される標的核酸配列としては、4以上連続したシトシン塩基の領域が挙げられる。この標的領域はmRNA中のAUG開始部位の一部であってもよく、ここで、mRNAによってコードされる選択されたタンパク質の発現を阻害または妨害することが望ましい。あるいは、これは、プレプロセシングされたmRNA中にドナースプライス部位もしくはアクセプタースプライス部位を含んでもよく、またはこれらに隣接していてもよく、ここで、スプライシング変異ポリペチドを作製する目的、または不完全もしくは不活性なペプチドを作製する目的のいずれかで、その部位での正しいスプライシングを妨害することが望ましい。さらに別の実施形態では、この標的は、ウイルスゲノム中のシス作用性エレメントであってもよく、ここで、オリゴマー(これは、+ウイルスゲノム鎖または−ウイルスゲノム鎖のいずれかを標的とし得る)の結合は、ウイルス感染細胞中でのウイルス複製を妨害するのに効果的である。
【0055】
これらの3個の標的タイプの各々において4個以上のグアニン塩基の列を含んでいる例示的な標的配列は、当業者に周知の公の配列データベースにおいて見出され得る。下記の1つの例示的な標的配列は、AUG開始部位をヒトc−myc mRNAに含む。しかしながら、この配列および標的化オリゴマー化合物において作製されるイノシンによるさまざまなグアニン置換は、本発明の利点を達成するために、4個以上のシトシン塩基の列で任意の標的配列を標的とする場合にオリゴマー化合物がどのようにして改変され得るかの例示であることが理解される。
【0056】
輸送体は、従来技術において、当業者が利用可能な種々の方法により、送達されるべき化合物に連結され得る。例示的な方法は、下記の実施例1において提供され、そして図4A〜図4Dにおいて図示される。これらの例のうちの1つにおいて、輸送体は、側鎖チオールが連結のために使われる単一のシステイン残基を含んでいるペプチドである。結合位置は、輸送体に沿ってさまざまな場所に存在し得る。選択された実施形態において、それは、輸送体の末端にある。代表的には、それは、輸送体の疎水性残基と隣接している。複数の輸送体は、所望により、単一化合物に結合され得る。
【0057】
このリンカーはまた、PMOの5’末端およびペプチド輸送体のC末端に結合した、2個のβ−Ala残基および/またはAhx残基のうちの任意の組合せであり得る。好ましい実施形態は、図4Dで示すように、Ahx残基をペプチド輸送体のC末端に結合し、そしてβ−Ala残基をPMOの5’末端に結合することである。
【0058】
化合物がPMOである場合、輸送体は、実施例3にて説明したように、そして図4Aに示すように、例えば、5’−ヒドロキシル基により、またはアミンキャッピング部分により、PMOの5’末端に結合され得る。あるいは、輸送体は、図4Bに示すように、例えば、モルホリノ環窒素により、または末端結合もしくは内部結合のいずれかのサブユニット間結合の側鎖により、3’末端に結合され得る。リンカーはまた、例えば、カルボジイミドによって促進される縮合により形成される、輸送体ペプチドのカルボキシ末端とPMOのアミン基またはヒドロキシ基との間の直接結合を含み得る。
【0059】
リンカーは、通常の使用条件下で切断可能でないリンカー(例えば、チオエーテル結合またはカルバメート結合を含む)から選択され得る。いくつかの実施形態では、輸送体部分とインビボで切断可能である化合物との連結を含むことが所望され得る。インビボで切断可能である結合は当該分野において公知であり、例えば、カルボン酸エステル(これは、酵素によって加水分解される)およびジスルフィド(これはグルタチオンの存在下で切断される)を含む。適切な波長の照射の適用によって、インビボで、光分解的に切断可能な結合(例えば、オルト−ニトロフェニルエーテル)を切断することもまた可能であり得る。
【0060】
例えば、試薬N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)またはスクシンイミジルオキシカルボニルα−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)を使用したジスルフィドリンカーを有する結合体の調製は、図4Cにおいて例示される。切断可能なジスルフィド基をさらに含む例示的なヘテロ二官能性連結剤は、N−ヒドロキシスクシンイミジル3−[(4−アジドフェニル)ジチオ]プロピオネートおよび(VaninおよびJi 1981)に記載される他のものを含む。
【0061】
以下のセクションで考察されるPMO、ペプチド結合PMOおよび例示的な輸送体ペプチドの配列の表を、表1として以下で提供する。一般に、ペプチドは、N末端アミノ基およびC末端のアミンを含む(例えば、NH2−RRRRRRRRRFFC−CONH2 配列番号16)。イノシンで置換されたグアニン残基を、太字で示す。
【0062】
【表1】
(C.オリゴマー化合物におけるイノシン置換)
本発明を支持して実施され、以下に報告する研究では、化合物の細胞取り込みを高めることを目的として、4個以上のグアニン塩基の列を有する(すなわち、一続きの4個以上のシトシン塩基を有する配列を標的とする)オリゴマー化合物にアルギニンリッチペプチドを連結することが、2つの重大な課題を生じることが観察された。これらの課題はいずれも予想外であった。第一に、アルギニンリッチポリペチドの存在によって、陽イオン性イオン交換樹脂での精製プロセス中に結合体の凝集が生じた。第二に、標的に対するこの化合物のアンチセンス活性は、かなり低下していた。
【0063】
実施例2および実施例3にて説明したように、結合体の凝集は、c−myc PMO(AVI−4126、配列番号1)のようなGリッチPMOに結合したアルギニンリッチペプチドの合成において、克服するには大きなハードルである。ペプチド結合c−myc PMOの最初の調製物は、その後の分析において矛盾を生じた。結合体の質量スペクトルは予想通りだったが、分析用の強陽イオン交換(SCX)HPLCは、全く異なる保持時間を有するいくつかの異なるピークを与えた。複数のピークは、結合体の異なる凝集形態に対応した。実施例4および実施例5に記載されている結果は、グアニンリッチなPMO配列がc−myc PMOの強陽イオン交換(SCX)HPLCにおいて観察される凝集に関係していること、および連続したグアニン塩基のうちの1個以上をイノシン塩基で置換することにより、この凝集が低減したかまたはなくなったことを実証する。表1に列挙するように、AVI−5126(配列番号12)についての1つの例示的な構造は、3個のイノシン残基を含んでおり、凝集に非常に有利な条件下でさえ、凝集したものを形成しない。
【0064】
アルギニンリッチな輸送体ペプチドがPMOに結合されるときに観察される凝集現象は、この種類の核酸アナログに限定されない。アルギニンリッチポリペチドに結合される場合、他のモルホリノバックボーン、メチルホスホネート、ホスホロチオエートおよびホスホジエステル(すなわち、DNAおよびRNA)およびPNAを含め、他の荷電していない核酸または核酸アナログには全て、凝集の同じ可能性があり、それゆえ、本発明のイノシンによるグアニン塩基置換によって改善される可能性がある。
【0065】
(D.イノシンで置換されたアルギニンリッチペプチドの改善された立体妨害特性)
c−myc遺伝子を標的とする、イノシンで置換されたPMOを、実施例4に記載される無細胞ウサギ網状赤血球溶解産物(RRL)アッセイにおいて試験した。この実施例で記載されており、図6に示されるように、イノシンによるグアニン置換の数の増加は、翻訳阻害の減少と相関した。4個のイノシンによるグアニン置換を有するPMO(配列番号10)は、翻訳の阻害が最も効果なく、一方、イノシンによるグアニン置換を1個だけ有するPMO(配列番号2および配列番号3)は、全てのイノシン含有PMOのうちで最も効果的であった。イノシン置換なしのコントロールのc−myc PMO(配列番号1)は、このアッセイにおいて最も高い阻害レベルを有した。イノシン含有PMOについて観察された翻訳阻害の減少は、3個の水素結合を有するG:C塩基対合と比較した、I:C塩基対合の間での1個の水素結合の喪失と一貫している。標的化PMOとその標的との間でのより低いTmは、RRLアッセイが測定する立体的妨害の相対的な損失で役割を果たし得る。
【0066】
上で記載されているイノシンによるグアニン置換を有するc−myc PMOsのうちの3個は、(RAhxR)4送達ペプチドに連結され、そして実施例4に記載されているのと同じpCNmyclucプラスミドおよびRRL系を使用して、無細胞翻訳を阻害する能力について試験された。図7に示され、そして実施例5に記載されているように、最少の阻害のPMOは、イノシン置換のないコントロールペプチドに結合されたc−myc PMO配列(配列番号14)であることが観察された。対照的に、イノシン置換を有する化合物は、かなり大きな翻訳阻害を示した。図7において示すのは、2個または3個のイノシン置換を有する(RahxR)4ペプチドPMO結合体(配列番号11〜配列番号13)である。ペプチド結合された、イノシンで置換されたPMOの改善された翻訳阻害は、実施例4に記載され、図6に示されるような、結合していないPMOを用いて観察される阻害の低減と著しく異なっている。
【0067】
アルギニンリッチペプチドがアンチセンスPMOに与える高められた立体的妨害の阻害は、結合されていない、イノシンで置換されたPMOを用いて観察される減少した立体的妨害の特性を完全に克服する。実施例5に記載された結果および図7に示される結果の両方に基づいて、イノシン置換を有するPMOは、イノシンで置換されていないPMOと比較して立体的妨害の特性を有意に高めた。
【0068】
(III.適用)
本発明の結合体は、脈管増殖の障害(例えば、再狭窄)の処置に有用である。脈管損傷の領域は、例えば、ステント挿入の有無にかかわらず、脈管介入(例えば、冠状動脈バルーン血管形成術)後の脈管内腔の再狭窄または再度の狭まりを含む。再狭窄は、血管形成術によって処置される病変のうちの約30%〜60%、およびこの手順後3〜6ヵ月以内にステントを用いて処置される病変のうちの約20%に起こると考えられている(例えば、Devi,N.B.ら,Cathet Cardiovasc Diagn 45(3):337−45,1998を参照のこと。狭窄症はまた、冠状動脈バイパス手術後に起こることができ、ここで、心臓手術は、血液が、詰まった動脈周辺をコース変更、すなわち「バイパス」して、心臓への血液および酸素の供給を改善するために行われる。そのような場合、狭窄症は、移植された血管セグメントで、特に交換された血管の接合部に起こり得る。狭窄症は、また、透析のために作製される吻合の接合部で起こり得る。
【0069】
この局面において、PMO結合体(好ましくは、c−mycを標的とするもの)は、コーティングしたステントにおいて用いられるか、または伏在静脈の処置のためにエキソビボで浸漬することによって用いられるか、さもなくば、脈管損傷部位に送達される。微小な泡状の組成物は、血栓症または脈管損傷の領域(例えば、損傷を受けた内皮)(例えば、PCT公開第WO 2000/02588号を参照のこと)ならびに選択された器官(例えば、肝臓および腎臓)への結合された分子(例えば、オリゴヌクレオチド)の送達において特に有用であることが見出されている。好ましい抗再狭窄組成物は、Ahx−βAlaリンカー(例えば、配列番号12)によって(RAhxR)4輸送体ペプチドに結合された、イノシン置換された抗c−myc PMOである。
【0070】
本願明細書において記載されているc−myc遺伝子を標的としているPMO結合体はまた、癌一般、特に膀胱癌の処置に有用である。化学療法と併用した、PMO結合体(好ましくはc−mycを標的とするもの)の経尿道投与は、(Knapp,Mataら 2003)に記載され、そして共有に係る同時係属中の米国出願10/151,008(これは、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、高められた抗癌活性を提供する。好ましい抗癌組成物は、Ahx−βAlaリンカー(例えば、配列番号12)により(RAhxR)4輸送体ペプチドに結合した、イノシンで置換された抗c−myc PMOである。
【0071】
以下の実施例は、限定をせずに、本発明の各種実施形態を例示する。
【実施例】
【0072】
(実施例1:PMOへのペプチド合成および結合)
ペプチドを、本明細書中でSPPSと称される、Fmoc固相ペプチド合成(Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis)によって合成した。p−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂を、C末端に酸を有するペプチドの合成のために用い、その一方で、Rink Amide MBHA樹脂を、ペプチドアミドのために用いた。両方の樹脂は、Novabiochem(San Diego,CA)から入手可能である。代表的合成サイクルを、20%のピペリジンによるN末端脱保護から始めた。それから、N−α−Fmoc保護されたアミノ酸を、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)の存在下で2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)を用いた活性化によって、成長中のペプチド鎖に連結した。アルギニン側鎖を、2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Pbf)保護基、トリチルを有するシステインおよびt−ブトキシカルボニル(Boc)を有するリジン側鎖を用いて保護した。所望の配列においてカルボキシからアミノの方向でアミノ酸の全てが付加されるまで、サイクルを繰り返した。ペプチジル樹脂を2.5% H2O、2.5%トリイソプロピルシラン(TIS)および95%トリフルオロ酢酸(TFA)の溶液で処理することによって、合成樹脂からの切断および側鎖の脱保護を同時に実行した。システイン残基を含んでいるペプチドに関しては、2.5%の1,2−エタンジチオール(EDT)を切断カクテルに添加した。粗製ペプチドを、10倍過剰のジエチルエーテルを使用した沈殿により単離した。Source 15S樹脂(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)を利用している強陽イオン交換HPLCを精製のために使用し、続いてAmberchrom 300M樹脂(Tosoh Bioscience,Montgomeryville,PA)を使用した逆相脱塩を行った。脱塩されたペプチドを凍結乾燥し、そしてマトリックス支援レーザ脱離電離飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF MS)、強い陽イオン交換高速液体クロマトグラフ(SCX HPLC)およびキャピラリー電気泳動法(CE)によって正体および純度を分析した。
【0073】
様々なC末端疎水性結合を含んでいるペプチドを以下の通りに調製した。ペプチドを、SPPS中にペプチドのC末端に天然および/または非天然のアミノ酸の組合せを含めることによって、PMOのアミン基またはヒドロキシ基との直接縮合のために調製した。具体的には、結合は、1または2の残基の異なる組合せにおいて使用される、アミノ酸グリジン、β−アラニンおよび/または6−アミノヘキサン酸から構成された。ペプチド合成は、他の点では他のペプチド酸の合成と同一であった。
【0074】
PMOのアミン基またはヒドロキシ基との直接的縮合のためにアミン基がマスクされたペプチドを、以下の通りに調製した。遊離のペプチドアミノ基は、PMOのアミンまたはヒドロキシ基とペプチドのカルボキシ末端との直接的縮合を妨害するので、マスキングされなければならない。1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘクス−1−イリデン)エチル(Dde)アミン側鎖保護基を用いることにより、アミン側鎖を含むペプチド配列(例えば、rTatおよびpTat(表1))を調製した。ペプチド合成は、他の点では他のペプチド酸の合成と同一であった。リジンDde基は、樹脂切断および他のアミノ酸側鎖保護基の脱保護に耐えた。側鎖アミンは、結合を通してDdeによってマスキングされるままであり、その後、DMF中の2%ヒドラジンを用いた処理によって脱保護される。
【0075】
PMOの5’末端での輸送体ペプチドの結合を、以下の通りにアミド結合によって実行した。ペプチド−酸(15μmol)、HBTU(14.25μmol)およびHOBt(15μmol)を200μlのNMPに溶かし、そしてDIEA(22.5μmol)を加えることにより、C末端反応性のペプチド−ベンゾトリアゾリルエステルを調製した。DIEAの添加の直後に、ペプチド溶液を、DMSO中の5’−ピペラジン官能基化した3’−アセチル−PMOの12mM溶液1mlに加えた。30℃にて180分後に、反応物を4倍過剰の水で希釈した。粗製結合体を最初にCM−Sepharose弱陽イオン交換カラム(Sigma,St.Louis,MO)に通して、結合していないPMOを取り除き、次いで、逆相カラム(HLBカラム,Waters,Milford,MA)に通して、精製した。結合体を凍結乾燥し、そしてMALDI−TOF MS、SCX HPLCおよびCEにより分析した。
【0076】
(実施例2:アルギニンリッチペプチドに結合した場合にGリッチオリゴマーはG四重鎖凝集物を形成する)
本実施例は、冠状動脈バイパス移植(CABG)の臨床応用のための、c−myc遺伝子を標的とするアルギニンリッチペプチド−PMO結合体の開発を詳述する。本実施例で記載されているプロジェクトの目的は、受け入れられる収率および純度を有する、結合体の合成および精製のためのプロセスを開発することであった。さらに、結合体の分析のための方法は、結合体を特徴づけなければならず、そして合成プロセス全体にわたって、そしてクリニックにおいて使用されるいかなる製剤においても不純物を識別しなければならない。製品中に残存する遊離ペプチドの量の定量は、おそらく最も重要分析能力である。なぜなら、遊離ペプチドは、結合体または遊離PMOよりも毒性が高い可能性があるからである。
【0077】
以下に示されるように、分子内Gカルテットの形成による凝集は、c−myc PMO(AVI−4126、配列番号1)のようなGリッチPMOに結合したアルギニンリッチペプチドの合成において克服しようとする大きなハードルであることが明らかである。これを考慮すると、この化合物の更なる開発の前に、いくつかの課題を解決する必要がある。第一に、凝集していない形態の結合体を生じることは可能であるか。第二に、所定のサンプルの形態の正確な評価を与える、凝集もせず、脱凝集もしない分析法を開発することは可能であるか。最後に、注射緩衝液(例えば、PBS)において処方された場合に、結合体は、あるとすればどのような凝集形態をとるのか。
【0078】
cmyc PMOに結合されたペプチドの最初の調製物は、その後の分析において、明白な矛盾を生じた。質量スペクトルは予想通りだった。しかし、分析用の強陽イオン交換(SCX)HPLCは、全く異なる保持時間を有するいくつかの異なるピークを与えた。複数のピークは、異なる凝集形態の結合体に対応した。
【0079】
凝集の証拠は、分取用SCX HPLCによってそれを精製する際の最初の試みから得られる。118 OD260のR9F2Ahx−cmyc(配列番号15)を20mlのSource 15S HPLCカラムにローディングし、そしてpH4.75のKH2PO4緩衝液中で流し、1.5M KClで溶出させた。緩衝液Aおよび緩衝液Bは両方とも、25%のアセトニトリル(ACN)を含んでいた。結合体は、カラムから1個の主なピークとして溶出し、遊離ペプチドの直後に溶出したが、その後の画分分析により、後で溶出するピークが豊富になったことが分かった。後で溶出するピークは、マルチマー凝集形態の結合体に対応する。後で溶出するピークが、荷電の増加に起因した、より長い保持時間を有するマルチマー凝集形態の結合体であるという証拠は、塩気のある条件のSCX精製が凝集体形態に有利であり、低塩条件が遊離形態に有利であるという観察により提供された。塩がGカルテットにより四重鎖GROの形成を高めることは公知である。1.5MのKCl中のSCX HPLCカラムに結合体をローディングすることにより、2個の後で溶出するピークのうちの2個目のピークが富化され、そして早期の凝集していないピークの量が減少した。2M塩化グアニジニウムまたは6M尿素のいずれかにおけるローディングにより、後で溶出するピークの量が大いに低減し、早期に溶出するピークは影響を受けないままであった。従って、分子の集合状態は、ローディング環境を変えることにより操作され得る。これにより、後で溶出するピークが凝集した形態の結合体に対応し、伝統的な脱凝集剤である尿素およびグアニジニウムは、樹脂にローディングされるので、この結合体を脱凝集する際に明らかに効果的であるというさらなる証拠が提供された。
【0080】
分析用SCX HPLCに対する熱の影響は、凝集に関するさらなる証拠を提供した。このクロマトグラフィーを、カラムオーブンに入れたSource 15S tricorn SCXカラムを使用して実行した。金属陽イオンがクロマトグラフィーから完全に排除され、そしてグアニジニウムで置き換えられる場合、カラムに熱をかけることにより、後で溶出するピークが消える。凝集した結合体のパーセンテージは、カラムの温度が室温から65℃まで上昇するにつれて減少する。ナトリウムをクロマトグラフィー全体にわたって陽イオンとして用いた場合、「融解」現象は観察されない。このことは、凝集したものを金属陽イオンが安定させることを示唆する。カリウムが偏在し、凝集体形態が優勢であった上記のSCX精製の試みの文脈を考慮すれば、このことは、つじつまがあう。
【0081】
しかしながら、結合体の凝集形態がずっと長い保持時間を有するという事実は、分子が相互作用しており、アルギニン側鎖上の電荷がイオン交換樹脂との相互作用にまだ利用され得ることを示唆した。ペプチド部分が相互作用に関係していない場合に結合体分子のPMO部分が互いに相互作用してマルチマー凝集体を形成するならば、これはまさにその通りであろう。
【0082】
凝集体の問題は、c−myc PMO配列に、または少なくともグアニンリッチオリゴマー(GRO)に特有のようである。低いG含有量を有する配列に対して類似したペプチドを結合することは、凝集の問題を提示しない。連続した一続きのGと他のPMOとの結合体は、SCX HPLC上に同じタイプの凝集体を示す。PMOとペプチドとの間のリンカーは、凝集にいかなる影響をも及ぼすようではない。N−(4−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)チオエーテル結合は、Gly2−Ahx、Ahx2またはAhxアミド連鎖に非常に類似したSCX溶出パターンを与える。最後に、本発明者らのc−myc結合体において使用される、より最近のペプチドである(RAhxR)4−は、以前のR9F2−よりも58%長いが、より短いペプチドと同じ凝集体SCX溶出パターンを与える。従って、凝集は、いかなるアルギニンリッチペプチドを用いても起こり、そして現在まで使用される結合の全てについて起こる。様々な結合を有する同じペプチドが「低G」PMO配列に結合された場合には凝集が観察されないので、本発明者らは、この現象を、c−myc PMO配列のGリッチな性質によるものであると考える。
【0083】
結合されたGROを用いて観察される観察された凝集は、連続的な一続きのグアニンを有するDNAおよびRNAにみられるG四重鎖構造を形成するPMO−PMO相互作用と一貫している。上記のcmyc 20マーPMOのPMO配列(配列番号1)は、5’−ACG TTG AGG GGC ATC GTC GC−3’であり、その一続きの4個のGは、8位〜11位にわたる。凝集程度に対する異なる陽イオンの効果がSCX HPLCによって測定される場合、G四重鎖構造の形成についての証拠が提供される。陽イオン性相互作用がDNAおよびRNAの四重鎖を協調させることにとって重要であることは、周知である。
【0084】
(実施例3:イノシンによるグアニン置換は、アルギニンリッチペプチドに結合したGリッチなオリゴマーの凝集を防止する)
グアニンリッチ核酸配列が、Gカルテットの存在下で安定化される分子間四重鎖構造または分子内四重鎖構造を採り得ることが長く認識されてきた(図5を参照のこと)。Gカルテットは、積み重ねられた平面状の水素結合したグアニンテトラマーであり、グアニンリッチ核酸に四重鎖構造を形成させる。いくつかの生物学的に重要なGリッチ配列はインビトロにおいて生理学的条件下でGカルテットを形成し得るので、インビボでの四重鎖形成の潜在的役割が調査されている。さらに、特異的Gカルテット結合タンパク質を記載している報告の数は、現在、かなりのものである(ShaferおよびSmirnov,2000)。
【0085】
熱力学的考慮事項および反応速度的考慮事項の両方に依存して、Gリッチオリゴマー(GRO)は、種々の可能な四重鎖構造を形成し得る。形成される構造は、オリゴヌクレオチドの塩基配列および濃度、ならびにアニーリングに使用する条件(温度および緩衝液)、特にK+およびNa+のような一価の陽イオンの存在により影響され得る。四重鎖は、1分子、2分子または4分子のオリゴヌクレオチドにより形成され得、これらは、それぞれ、モノマー構造、ダイマー構造およびテトラマー構造と称される。モノマー四重鎖およびダイマー四重鎖は、いす形(横方向のループ)またはバスケット形(斜めのループ)になるそれらのループ領域の配置に基づいて、さらに分類されている。四重鎖の4個の鎖の相対的な鎖配向(5’から3’への極性)は、平行、逆平行または混合型であり得る(Dapic,Abdomerovicら,2003)。
【0086】
G四重鎖構造を促進する水素結合相互作用を破壊するために、c−myc PMO(配列番号1)の4個のG内の異なる位置でイノシンによりグアニンを置換した9つのPMOを合成した。イノシンを含んでいるPMOを、配列番号2〜配列番号10として表1に列挙する。ペプチドとの結合後、非常に凝集性のSCX HPLC条件下で分析を行った。条件は最大限に凝集性であるので、これらは、各々の分子の相対的な凝集傾向の厳密な試験であるはずである。
【0087】
トリフルオロ酢酸塩としてのAc−(Arg−Ahx−Arg)4−Ahx−βAla−OHペプチドを、表1に列挙した未改変のcmyc PMO 20マー配列およびイノシンで改変した9つのcmyc PMO 20マー配列(配列番号1〜10)に結合させた。結合を、NMP/DMSO中でのHBTUカップリングを使用して、通常の様式で実施した。反応は、35℃にて180分間進行した。反応混合物を3mlのH2Oで希釈し、2mlのCM−Sepharoseカラムにローディングし、2mlのACNおよび1mlのH2Oによって洗浄した。結合体を、4mlの2Mの塩化グアニジニウムによって溶出させた。イオン交換カラムから溶出した塩分のある結合体溶液を、2mlのWaters HLB逆転相カラムにローディングすることにより脱塩し、4mlのH2Oによって洗浄し、そして4mlの50% ACNによって溶出させた。最後に、この溶液を凍結乾燥した。
【0088】
MALDI−TOF MSによる結合体の分析によって、N−1が切断されたPMO配列に起因する主な不純物であるきれいな生成物が示唆された。HPLCを、Bio−Rad BioLogic HR HPLCシステムを使用して実施した。全ての実施のために使用したカラムは、Tricorn Source 15S 4.6/100 PE(Amersham Biosciences;製品17−5182−01)であった。使用した緩衝系は、pH7.5の25% ACN中の10mMのNa2HPO4であり、1.5M NaClによって溶出させた。サンプルを全て、緩衝液A中でローディングした。20〜75% B/14カラム体積勾配にて1ml/分の流量を、全ての実施に用いた。クロマトグラフィーの結果を、積分したピーク値として下記の表2に示す。化学的不純物および約7%の積分合計を表している小さいピークが全てのクロマトグラムに存在した点に留意するべきである。
【0089】
イノシンによるグアニン置換は、凝集の相対量に明らかな影響を及ぼした。9位または10位におけるたった1個のグアニンの置換については、凝集形態における結合体のパーセントは、79%から平均56%まで低下した。2個の置換を有する配列のうちの3個(I8、I10)、(I8、I11)および(I9、I11)は、凝集した結合体が平均20%であるクロマトグラムを有した。一続きの4個のGのうちの2個の中心グアニンを置換することは、より大きな効果を有し、凝集物は2.7%のみであった。グアニン(I9、I10)のうちの3個以上が置換される場合、凝集は全く除去された。
【0090】
【表2】
(実施例4:イノシンによるグアニン置換を有するPMOを用いた無細胞翻訳の阻害)
ホタルルシフェラーゼ(fLUC)についてのコード配列を、Sal I部位Not I部位において、プラスミドpCi−Neo(Promega)のマルチクローニングサイトにサブクローン化し、得られたプラスミドをpCNlucrと名づけた。ヒトc−myc遺伝子のATG開始コドンを取り囲んでいる30塩基対合領域(5’−AGCCTCCCGCGACGATGCCCCTCAACGTTA−3’(配列番号29)、Genbank登録番号V00568)をpCNlucrのNhe I部位およびSal I部位にサブクローン化し、そしてpCNmyclucと名づけた。これにより、c−mycコード配列は、fLUC遺伝子のアミノ酸コード配列とフレームがあって配置された(c−myc:fLUC)。c−mycのこの領域を標的とするPMO(AVI−4126)を、配列番号1として列挙する。イノシンで置換されたグアニン残基の数および位置が様々であって、c−myc開始コドン領域を標的とする、イノシンで置換されたPMOを、配列番号2〜配列番号10として列挙する。
【0091】
上で記載されている全てのプラスミドは、c−myc:fLUCの上流にT7 RNAポリメラーゼプロモーターを有する。そして、T7ポリメラーゼに基づくMegascriptキットおよびプロトコル(Ambion)を使用し、Notlを用いた線状化後にこのプラスミドからRNAが生成されることを許容した。PMO、(RAhxR)4−PMOまたは水に加えて12μlのヌクレアーゼ処理済みウサギ網状赤血球溶解産物(Promega)とともに、各々の反応中、1nMの最終濃度で転写されたRNAを使用してインビトロ翻訳を実施した。10μlの翻訳反応物を、製造業者の指示に従って、50μlのルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega)と混合し、そして発光をFLx800マイクロプレートルミノメーター(BIO−TEC Instruments)に読み取った。反応物を、発光機能および125の感度設定を使用したKC Juniorプログラム(BIO−TEC)を用いて相対光単位についてアッセイした。各々の列の最初のウェルおよび最後のウェルに水のコントロール反応物を含めて、12個の反応物を一度にアッセイした。PMOまたは(RAhxR)4−PMOの濃度の関数として各々の反応(n=3)によって得られた相対光単位(RLU)は、図6および図7に示すように表された。
【0092】
c−myc遺伝子を標的とする、イノシンで置換された様々なPMOを、上記の無細胞ウサギ網状赤血球溶解産物(RRL)アッセイにおいて試験した。図6に示すように、イノシンによるグアニン置換の数を増やすことは、翻訳の減少した阻害と相関した。イノシンによるグアニン置換を4個有するPMO(配列番号10)は、翻訳を阻害することに最も効果がなかった。IによるG置換を1個だけ有するPMO(配列番号2および配列番号3)は、全てのイノシン含有PMOの中で最も効果的であった。最も効果的なPMOは、イノシン置換のないコントロールのc−myc PMO(配列番号1)であった。イノシン含有PMOを用いて観察される翻訳阻害の減少は、3個の水素結合を有するG:C塩基対合と比較した、I:C塩基対合の間での1個の水素結合の損失に起因することが提唱される。
【0093】
(実施例5:イノシン置換ペプチド−PMO結合体を用いた無細胞翻訳の阻害向上)
イノシンによる様々なグアニン置換を有する3個の異なるc−myc PMOを(RahxR)4送達ペプチドに結合させ、そして実施例4に記載の同じpCNmyclucプラスミドおよびRRL系を用いて、それらが無細胞翻訳を阻害する能力を試験した。図7に示すように、最少阻害性のPMOは、イノシン置換のないコントロールペプチドが結合されたc−myc PMO配列(配列番号14)であることが観察されたイノシン置換を有する化合物は、かなり有意に大きな翻訳阻害を示した。図7に示すのは、2個または3個のイノシン置換を有するRahxRペプチドPMO結合体(配列番号11〜配列番号13)である。ペプチドに結合されイノシンで置換されたPMOの改善された翻訳阻害は、実施例3に記載されていて、図6に示される、結合していないPMOを用いて観察される阻害低下とは極めて対照的である。アルギニンリッチペプチドがアンチセンスPMOに与える高められた立体妨害阻害は、結合していないイノシン置換されたPMOについて観察される立体妨害特性の低下を完全に克服する。図7に示される結果に基づいて、イノシン置換を有するPMOは、イノシン置換がされていないPMOよりも大きな程度まで予想外に高められる。アルギニンリッチペプチドがイノシン置換されたPMOに与える立体妨害特性を高める機構は、現在わかっていない。しかしながら、これらの改善されたアンチセンスPMOの合成および治療可能性の両方における有用性は大いにある。
【0094】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1A】図1A〜図1Dは、ポリマー形成に適した5原子連結基(A)、6原子連結基(B)および7原子連結基(C〜D)を有する、いくつかの好ましいモルホリノ型サブユニットを示す。
【図1B】図1A〜図1Dは、ポリマー形成に適した5原子連結基(A)、6原子連結基(B)および7原子連結基(C〜D)を有する、いくつかの好ましいモルホリノ型サブユニットを示す。
【図1C】図1A〜図1Dは、ポリマー形成に適した5原子連結基(A)、6原子連結基(B)および7原子連結基(C〜D)を有する、いくつかの好ましいモルホリノ型サブユニットを示す。
【図1D】図1A〜図1Dは、ポリマー形成に適した5原子連結基(A)、6原子連結基(B)および7原子連結基(C〜D)を有する、いくつかの好ましいモルホリノ型サブユニットを示す。
【図2A】図2A〜図2Dは、それぞれ、図1のサブユニットA〜Dを使用して構築される例示的なモルホリノオリゴヌクレオチドの反復するサブユニット部分を示す。
【図2B】図2A〜図2Dは、それぞれ、図1のサブユニットA〜Dを使用して構築される例示的なモルホリノオリゴヌクレオチドの反復するサブユニット部分を示す。
【図2C】図2A〜図2Dは、それぞれ、図1のサブユニットA〜Dを使用して構築される例示的なモルホリノオリゴヌクレオチドの反復するサブユニット部分を示す。
【図2D】図2A〜図2Dは、それぞれ、図1のサブユニットA〜Dを使用して構築される例示的なモルホリノオリゴヌクレオチドの反復するサブユニット部分を示す。
【図3A】図3A〜図3Gは、本発明で使用されるアルギニンリッチペプチドの各種実施形態において使用するための例示的なX側鎖構造を示す。
【図3B】図3A〜図3Gは、本発明で使用されるアルギニンリッチペプチドの各種実施形態において使用するための例示的なX側鎖構造を示す。
【図3C】図3A〜図3Gは、本発明で使用されるアルギニンリッチペプチドの各種実施形態において使用するための例示的なX側鎖構造を示す。
【図3D】図3A〜図3Gは、本発明で使用されるアルギニンリッチペプチドの各種実施形態において使用するための例示的なX側鎖構造を示す。
【図3E】図3A〜図3Gは、本発明で使用されるアルギニンリッチペプチドの各種実施形態において使用するための例示的なX側鎖構造を示す。
【図3F】図3A〜図3Gは、本発明で使用されるアルギニンリッチペプチドの各種実施形態において使用するための例示的なX側鎖構造を示す。
【図3G】図3A〜図3Gは、本発明で使用されるアルギニンリッチペプチドの各種実施形態において使用するための例示的なX側鎖構造を示す。
【図4A】図4A〜図4Dは、オリゴマー−ペプチド結合体およびそれらの調製方法を示し、ここで、図4Cは、インビボで切断可能な結合体の調製を示し、そして図4Dは、6−アミノヘキサン酸/β−アラニンリンカーを有する結合体の調製を示す。
【図4B】図4A〜図4Dは、オリゴマー−ペプチド結合体およびそれらの調製方法を示し、ここで、図4Cは、インビボで切断可能な結合体の調製を示し、そして図4Dは、6−アミノヘキサン酸/β−アラニンリンカーを有する結合体の調製を示す。
【図4C】図4A〜図4Dは、オリゴマー−ペプチド結合体およびそれらの調製方法を示し、ここで、図4Cは、インビボで切断可能な結合体の調製を示し、そして図4Dは、6−アミノヘキサン酸/β−アラニンリンカーを有する結合体の調製を示す。
【図4D】図4A〜図4Dは、オリゴマー−ペプチド結合体およびそれらの調製方法を示し、ここで、図4Cは、インビボで切断可能な結合体の調製を示し、そして図4Dは、6−アミノヘキサン酸/β−アラニンリンカーを有する結合体の調製を示す。
【図5】図5は、PMOがオリゴマーバックボーンの分子間モルホリン残基または分子内モルホリン残基を表すGカルテット塩基対の模式図である。
【図6】図6は、様々な、結合していないイノシン置換したc−mycオリゴマーおよびイノシン置換したc−mycオリゴマーを用いた無細胞ウサギ網状赤血球溶解産物翻訳阻害の結果をグラフで示す。
【図7】図7は、イノシン置換があるかまたはない、アルギニンリッチペプチドに結合したc−myc PMOを使用した無細胞翻訳の阻害を表す。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、アンチセンスオリゴマー化合物およびこのような化合物の使用方法に関し、このアンチセンスオリゴマー化合物は、(i)細胞へのこのオリゴマーの取り込みを高めるのに効果的なアルギニンリッチペプチドに結合されており、そして(ii)G塩基の列が、1個より以上のイノシン塩基によって壊れている。
【0002】
(参考文献)
【0003】
【表1A】
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
アンチセンスオリゴマーは、現在臨床研究中のアンチセンス薬物の数により証明され、そしてアンチセンスオリゴマーの多くの潜在的制限が過去数年にわたって首尾よく対処されたという事実(非特許文献1、非特許文献2)によって補助されるたように、製薬として大きな可能性を提供する。新規な荷電していないオリゴマーバックボーンは、細胞への取り込みを改善して、ヌクレアーゼ分解への抵抗性を高めるために開発された(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。いくつかのオリゴマー構造(例えば、モルホリノベースの構造)に関しては、修飾されたバックボーンは、その標的核酸への高められた結合親和性を与えるとわかった(非特許文献4、非特許文献5)。
【0005】
より近年では、種々のアルギニンリッチペプチドが、荷電していないオリゴヌクレオチドの細胞(哺乳動物細胞を含む)への取り込みレベルを劇的に上昇させることができるということが見出された(例えば、2003年4月29日に出願された、共有に係る米国特許出願第60/466,703号および2004年4月29日に出願した、「Compositions for Enhancing Transport of Molecules into Cells」に関する対応する米国特許出願(これらの両方はそれらの全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。この知見には、選択されたタンパク質の発現を妨害することが意図されるもの、プレプロセシングされたmRNAにおける特定のドナースプライス部位またはアクセプタースプライス部位を妨害することを目的とするもの、およびウイルス遺伝子の発現妨害または一本鎖ウイルスゲノムの複製妨害によってウイルス感染を処置するように設計されたものを含め、種々のアンチセンスオリゴマーの治療的な可能性をかなり増やす可能性がある。
【0006】
いくつかのアンチセンス適用において、オリゴマーアンチセンスが指向される最適標的化配列は、一続きの4個以上のシトシン塩基を含み得る。その場合には、このオリゴマーは、4個以上の相補的なグアニン塩基の対応する列を含む。重要な例として、c−mycタンパク質に関する最適標的配列は、一続きの4個のシトシン塩基を含むc−myc RNAのAUG開始部位を含んでいる領域である。c−mycの開始コドン領域に指向されたアンチセンスオリゴマーは、癌の処置、多嚢胞腎病の処置(例えば、その全体が本明細書中に参考として援用される、共有に係る米国特許第6,875,747号(特許文献1)を参照のこと)、冠状動脈血管再狭窄の処置(例えば、その全体が本明細書中に参考として援用される、共有に係るPCT特許出願WO00/44897(2000年8月3日公開;特許文献2)を参照のこと)および癌治療(例えば、その全体が本明細書中に参考として援用される、共有に係る米国特許出願US−2003−0087861−A1(2003年5月8日公開;特許文献3)を参照のこと)を含め、多くの重要な治療適用を有する。
【特許文献1】米国特許第6,875,747号明細書
【特許文献2】国際公開第00/44897号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0087861号明細書
【非特許文献1】Devi,G.R.(2002).”Prostate cancer:status of current treatments and emerging antisense−based therapies.”Curr Opin Mol Ther 4(2):138−48
【非特許文献2】Stein,D.A.,D.E.Skilling,et al.(2001).”Inhibition of Vesivirus infections in mammalian tissue culture with antisense morpholino oligomers.” Antisense Nucleic Acid Drug Dev 11(5):317−25.
【非特許文献3】Hudziak,R.M.,E.Barofsky,et al.(1996).”Resistance of morpholino phosphorodiamidate oligomers to enzymatic degradation.” Antisense Nucleic Acid Drug Dev 6(4)267−72.
【非特許文献4】Iversen,P.L.(2001).Phosphoramidite Morpholino Oligomers.Antisense Drug Technology.S.T.Crooke.New York,Marcel Dekker,Inc.
【非特許文献5】Summerton,J.and D.Weller(1997).”Morpholino antisense oligomers:design,preparation,and properties.”Antisense Nucleic Acid Drug Dev 7(3):187− 95.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
驚くべきことに、現在、オリゴマーの細胞取り込みを高める試みにおいて、一続きの4個以上のシトシン塩基を有するアンチセンス化合物にアルギニンリッチペプチドを結合させることにより、この化合物のアンチセンス活性ならびにこの化合物を精製する能力がひどく損なわれることが分かった。この課題の基礎は理解されていないにもかかわらず、これは、オリゴマー中のGカルテットの形成を促進し、従って、この化合物の溶解性および/またはその標的核酸との結合能力を低下させる様式での、正に荷電したペプチドとオリゴマー化合物との間の相互作用に関連するようである。それゆえ、その細胞内標的に関するこの化合物のアンチセンス活性を損なわずこの化合物をアルギニンリッチペプチドと結合させることによって、このようなアンチセンスオリゴマー化合物の細胞取り込みを高めることは有用である。
【0008】
特に、癌、多嚢胞腎病または冠状動脈血管(coronary−vessel)再狭窄の処置において化合物の治療的な活性を高めることを目的として、アンチセンス活性の損失なしに上記のc−mycアンチセンス化合物の細胞取り込みを高めることは有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明の方法は、1つの局面において、実質的に荷電していないオリゴヌクレオチドアナログ化合物と該化合物の標的細胞への取り込みを高めるのに効果的なアルギニンリッチペプチドとの結合体を形成することによって該化合物の細胞取り込みを高めるための方法において改善を含み、該化合物は、該化合物が結合することが意図される標的核酸領域において、4以上連続したシトシン塩基と相補的である塩基の列を含む。この改善は、該塩基の列における連続したグアニン塩基の数を3以下に(好ましくは2以下に)制限するためにイノシン塩基で、前記化合物における該塩基の列において少なくとも1個のグアニン塩基を置換することを含む。
【0010】
この改善は、置換が、陽イオン性イオン交換樹脂への結合体の結合および該陽イオン性イオン交換樹脂からの結合体の遊離を含む精製工程中の前記結合体の水溶性を、該イノシン置換がない同じ結合体と比較して高めるのに効果的であり得る。前記標的核酸領域が、開始コドンをmRNAに含む場合、この改善は、該mRNAによってコードされるタンパク質の翻訳を妨害する前記結合体の能力を、前記イノシン置換のない同じ結合体と比較して高めるに効果的であり得る。前記標的核酸領域が、プレプロセシングされたmRNA中にドナースプライス部位またはアクセプタースプライス部位を含む場合、前記改善は、該標的領域でmRNAスプライシングをマスキングする前記結合体の能力を、前記イノシン置換がない同じ結合体と比較して高めるのに効果的であり得る。
【0011】
前記標的核酸領域が、ウイルス複製に関与する、ウイルスにコードされるシス作用性エレメントを含む場合、前記改善は、ウイルス複製をブロックする前記結合体の能力を、前記イノシン置換がない同じ結合体と比較して高めるのに効果的であり得る。
【0012】
例示的な実施形態では、前記アルギニンリッチペプチドは、少なくとも6個のXサブユニット、少なくとも2個のYサブユニットおよび多くても3個のZサブユニットを含め、Xサブユニット、Yサブユニットおよび必要に応じたZサブユニットから選択される8〜16個のサブユニットを含み、ここで、該サブユニットの50%より多くがXサブユニットであり、そしてここで
(a)各々のXサブユニットは、アルギニンまたはアルギニンアナログを独立して表し、該アナログは、構造R1N=C(NH2)R2の側鎖を含む陽イオン性αアミノ酸であり、ここで、R1は、HまたはRであり;R2はR、NH2、NHRまたはNR2であり、ここで、Rは低級アルキルまたは低級アルケニルであって、酸素または窒素をさらに含むことができ;R1とR2とは、一緒に環を形成し得;そして、側鎖は、R1またはR2により該アミノ酸に連結され;
(b)各々のYサブユニットは、中性アミノ酸−C(O)−(CHR)n−NH−を独立して表し、ここで(i)nが2〜7であり、そして各々のRが独立してHまたはメチルであるか、または(ii)nは1であり、そして、Rは、置換されたかまたは非置換の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびアラルキルから選択される中性の側鎖であり、ここで、該中性の側鎖は、置換されたアルキル、アルケニルおよびアルキニルから選択される場合、4個全ての炭素原子について多くとも1個のヘテロ原子を含み;そして
(c)各々のZサブユニットは、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリジン、ヒスチジン、リジン、メチオニン、セリンおよびトレオニンから選択されるアミノ酸を独立して表す。
【0013】
また、例示的な実施形態では、前記オリゴヌクレオチドアナログ化合物は、1個のサブユニットのモルホリノ窒素と隣接したサブユニットのモルホリノ3位の環外炭素との間のリン含有結合により連結されるモルホリノサブユニットから構成されるモルホリノオリゴマーである。前記モルホリノサブユニットは、構造:
【0014】
【化4】
に従う、荷電していないホスホロジアミデート結合で結合されてもよく、ここで、Y1=Oであり、Z=Oであり、Pjは、塩基特異的水素結合によってポリヌクレオチド中の塩基と結合するのに効果的なプリン塩基対合部分またはピリミジン塩基対合部分であり、そして、Xは、アルキル、アルコキシ、チオアルコキシまたはアルキルアミノである。
【0015】
別の局面では、本発明は、治療的なオリゴマー−ペプチド結合体を含み、この結合体は、(a)化合物が結合することが意図される標的核酸領域において、4個以上連続したシトシン塩基と相補的である塩基の列を含む塩基配列を有する実質的に荷電していないオリゴヌクレオチドアナログ化合物、および(b)標的細胞への該化合物の取り込みを高めるのに効果的な、該化合物に結合されたアルギニンリッチペプチドから構成される。該化合物における該塩基の列は、該塩基の列における連続したグアニン塩基の数を3個以下に(好ましくは2個以下に)制限するように該列中に配置される少なくとも1個のイノシン塩基を含む。結合体の例示的実施形態は、上記の通りである。
【0016】
特に、ヒトのc−myc mRNAのAUG開始部位を含む領域への結合によるc−mycタンパク質の翻訳の妨害において使用するために、該化合物の標的配列は、配列番号2〜配列番号10と同定される配列のうちの1つを含み得る。前記化合物に結合されたアルギニンリッチペプチドは、配列番号16、配列番号17または配列番号18と同定される配列を含み得る。
【0017】
また開示されるのは、被験体の標的細胞中のc−myc発現の阻害に応答性の病理学的状態を有する被験体を処置する方法である。該方法を実施する際に、ちょうど記載した種類の結合体は、治療有効量で該被験体に投与される。該結合体は、アルギニンリッチペプチドがないアンチセンス化合物単独よりも大きな細胞取り込みを有し、かつ、c−myc翻訳の妨害において、1個以上のイノシン塩基がない同じ結合体よりも活性が高い。該方法で使用する結合体の例示的実施形態は、上記の通りである。
【0018】
膀胱癌を処置する際に使用するためには、前記結合体は、経尿道送達により投与されてよく、そして、該方法は、シスプラチン抗癌化合物を前記患者に投与することをさらに含み得る。
【0019】
血管形成術手順後の血管損傷部位での冠状動脈再狭窄の危険度を減らす際に使用するためには、前記結合体は、例えば、薬物放出ステントを介して、または薬物を運ぶ微小泡の静脈内注射によって、脈管内送達により投与されてもよい。
【0020】
冠状動脈バイパス形成手術の間に配置される伏在静脈を保護する際に使用するためには、前記結合体は、該静脈を外科的に配置する前に該静脈を前記結合体にさらすことにより投与されてもよい。
【0021】
多嚢胞腎病を処置するためには、前記結合体は、経口投与または非経口投与によって前記被験体に投与されてもよい。
【0022】
以下の発明の詳細な説明が添付図面とともに読まれれば、発明のこれらおよび他の目的および特徴は、より完全に明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
「アルキル」とは、分岐状であっても、直鎖状であっても、または環状(シクロアルキル)であってもよい、炭素および水素を含む完全に飽和した一価性のラジカルをいう。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−ブチル、t−ブチル、n−ヘプチル、イソプロピル、シクロプロピル、シクロペンチル、エチルシクロペンチルおよびシクロヘキシルである。一般に好ましいのは、1〜6個の炭素原子を有しているアルキル基(「低級アルキル」と称され、メチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、イソアミル、n−ペンチルおよびイソペンチルにより例示される)である。一実施形態において、低級アルキルとは、C1−C4アルキルをいう。
【0024】
「アルケニル」とは、分岐状であっても、直鎖状であっても、または環状であってもよい、炭素および水素を含む不飽和の一価性のラジカルをいう。アルケニル基は、一不飽和でもよく、または多価不飽和でもよい。一般に好ましいのは、「低級アルケニル」と称される、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基である。
【0025】
「アリール」とは、一般に、単一の環(例えば、ベンゼン)または2個の縮合環(例えば、ナフチル)を有する、置換されたか非置換の一価性の芳香族ラジカルをいう。この用語は、ヘテロアリール基を含み、ヘテロアリール基は、環において1個以上の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を有する芳香族環基(例えば、フリル、ピロール、ピリジルおよびインドール)である。「置換された」とは、アリール基中の1個以上の環水素がハロゲン化物(例えば、フッ素、塩素または臭素)によって;1個または2個の炭素原子を含んでいる低級アルキル基によって;ニトロ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、メトキシ、ハロメトキシ、ハロメチルまたはハロエチルによって置換されていることを意味する。好ましい置換基としては、ハロゲン、メチル、エチルおよびメトキシが挙げられる。一般に好ましいのは単一環を有するアリール基である。
【0026】
「アラルキル」とは、アリール基によってさらに置換された、アルキル(好ましくは低級(C1−C4、好ましくは、C1−C2)アルキル置換基をいう;例は、ベンジル(−CH2C6H5)およびフェネチル(−CH2CH2C6H5)である。
【0027】
「複素環」とは、環原子が炭素、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される、非芳香族環(好ましくは5員〜7員の環)をいう。好ましくは、環原子は、3〜6個の炭素原子を含む。このような複素環としては、例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリンが挙げられる。
【0028】
用語「置換される」とは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基またはアルカリール基に関して、ヘテロ原子含有置換基(例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、チオール、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、イミノ、オキソ(ケト)、ニトロ、シアノなど)またはさまざまな酸もしくはエステル(例えば、カルボン酸、スルホン酸もしくはリン酸またはカルボン酸エステル、スルホン酸エステルもしくはリン酸エステル)による、水素原子の置換をいう。
【0029】
「アンチセンスオリゴマー化合物」または「アンチセンスオリゴマーアナログ」または「アンチセンス化合物」または「オリゴマーアナログ化合物」とは全て、実質的に荷電しておらず、代表的には、8塩基と40塩基との間の長さを有し、かつ一本鎖標的核酸(例えば、プロセシングもしくはプレプロセシングされたmRNA転写産物、または一本鎖ウイルスゲノムRNAもしくはDNA)と相補的であるかまたは実質的に相補的である塩基配列を有する、核酸アナログをいう。この化合物は、結合されていない形態であってもよく、または結合された形態(例えば、アルギニンリッチペプチドに結合される)であってもよい。
【0030】
「モルホリノオリゴマー」とは、図1に示される形態のモルホリノサブユニット構造から構成されるオリゴヌクレオチドアナログであり、ここで、(i)これらの構造は、リン含有結合によって一緒に連結されており(1〜3原子長、好ましくは2原子長)、そして好ましくは荷電しておらず、1個のサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接したサブユニットの5’環外炭素に連結している、そして(ii)PiおよびPjは、塩基特異的水素結合によってポリヌクレオチド中の塩基と結合するのに効果的なプリン塩基対合部分またはピリミジン塩基対合部分である。このプリン塩基対合部分またはピリミジン塩基対合部分は、代表的には、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシルまたはチミンである。モルホリノオリゴマーの合成、構造および結合の特徴は、米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,521,063号および同第5,506,337号において、詳述される。これらの全ては本明細書中に参考として援用される。
【0031】
2原子結合を有する、図1Bに示されるサブユニットは、図2Bに示されるように、6原子反復単位バックボーンのために使用される。これらの構造において、5’モルホリノ炭素をリン基に連結している原子Y1は、硫黄、窒素、炭素または、好ましくは酸素であり得る。リンからペンダントするX部分は、塩基に特異的な水素結合を妨害しない任意の安定な基である。好ましい基としては、アルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、およびアルキルアミノ(環状アミンを含む)が挙げられ、塩基に特異的な結合が崩壊しない限り、これらの全てはさまざまに置換され得る。アルキル、アルコキシおよびチオアルコキシは好ましくは、1〜6個の炭素原子を含む。アルキルアミノとは好ましくは、低級アルキル(C1〜C6)置換をいい、そして環状アミンは好ましくは、必要に応じて、酸素、窒素および硫黄から選択される1〜2個のさらなるヘテロ原子を含んでいる、5員〜7員の窒素複素環である。Zは、硫黄または酸素であって、好ましくは酸素である。
【0032】
好ましいモルホリノオリゴマーは、ホスホロジアミデートに連結されたモルホリノオリゴマーであり、本明細書において、PMOと称される。このようなオリゴマーは、図2Bに示される形態のモルホリノサブユニット構造から構成され、ここで、この構造は、ホスホロジアミデート結合によって一緒に連結され、ここで、X=NH2、NHRまたはNR2(ここで、Rは、低級アルキル、好ましくはメチルである)であり、Y=Oであり、そしておよびZ=Oであり、ホスホロジアミデート結合は、1個のサブユニットのモルホリノ窒素を隣接したサブユニットの5’環外炭素に結合し、PiおよびPjは、塩基特異的水素結合によってポリヌクレオチド中の塩基に結合するのに効果的なプリン塩基対合部分またはピリミジン塩基対合部分である。また好ましいのは、交互のホスホロジアミデート結合を有する構造であり、ここで、図2Bにおいて、X=低級アルコキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)であり、Y=NHまたはNRであり、ここでRは低級アルキルであり、そしてZ=Oである。
【0033】
モルホリノベースのオリゴマーの望ましい化学的特性としては、相補的塩基標的核酸(標的RNAが挙げられる)と、(8〜14塩基程度の短いオリゴマーとさえ)高いTmを有して、選択的にハイブリダイズする能力、、哺乳動物細胞に能動輸送される能力、およびオリゴマー:RNAヘテロ二重鎖がRNAse分解に耐える能力が挙げられる。
【0034】
「実質的に荷電していない」モルホリノオリゴマーは、4個全ての(好ましくは10個全ての、より好ましくは20個全ての)荷電していないサブユニット間結合について、多くても1個の荷電したサブユニット間結合を含む。任意の荷電した結合は、好ましくは、荷電したホスホルアミデート(またはチオホスホルアミデート)結合である(例えば、図2Bに示される結合であって、ここで、XはO−またはS−である)。好ましくは、モルホリノオリゴマーは、完全に荷電していない。
【0035】
「アミノ酸サブユニット」は、好ましくは1個のα−アミノ酸残基(すなわち、−CO−CHR−NH−)である;これはまた、βアミノ酸または他のアミノ酸残基(例えば、−CO−CH2CHR−NH−)であってもよく、ここで、Rは側鎖である。
【0036】
「Gカルテット」は、Gカルテットの存在によって安定化される分子間四重鎖構造および分子内四重鎖構造をグアニンリッチ核酸に採らせ得る積み重なった平面水素結合グアニンテトラマーからなる。
【0037】
用語「非天然アミノ酸」とは、β−アラニン(β−Ala)または6−アミノヘキサン酸(Ahx)のような、天然で見つかるタンパク質に存在しないアミノ酸をいう
(II.化合物−輸送体結合体)
本発明は、一つの局面では、実質的に荷電していないオリゴヌクレオチドアナログ化合物と、それに対して結合された、標的細胞へのこの化合物の取り込みを高めるのに効果的なアルギニンリッチペプチドとから構成される、治療的なオリゴマー−ペプチド結合体を含む。この化合物は、この化合物が結合することが意図される標的核酸領域において、4個以上連続したシトシン塩基と相補的である塩基の列を含む方法において、この列は、この列における連続したグアニン塩基の数を3個以下に制限するようにこの列中に配置される少なくとも1個のイノシン塩基を含む。好ましくは、塩基の列は、少なくとも2個のイノシン塩基を含み、そしてこの列における連続したグアニンの数は2以下である。
【0038】
以下から分かるように、イノシン塩基は、標的シトシン塩基と相補的であるが、通常のG−C塩基対よりも安定性が低いWatson−Crick塩基対を形成し、陽イオン性イオン交換樹脂への結合体の結合および陽イオン性イオン交換樹脂からの結合体の遊離を含む精製工程中の結合体の溶解性を、このイノシン置換がない同じ結合体と比較して高めるのに有用である。この溶解性を高めることは、実用的な精製法によって精製された結合体を得る際に重要である。本発明の別の特徴によれば、イノシン塩基置換はまた、以下によって証明されるように、その標的核酸に関して化合物の活性を高めるのに効果的である:
(i)標的核酸領域が開始コドンをmRNAに含む場合、置換は、mRNAによってコードされるタンパク質の翻訳を妨害する結合体の能力を高めるのに効果的である;
(ii)標的核酸領域が、プレプロセシングされたmRNA中にドナースプライス部位またはアクセプタースプライス部位を含む場合、置換は、前記標的領域でmRNAスプライシングをマスキングする結合体の能力を高めるのに効果的である;および
(iii)標的核酸領域が、ウイルス複製に関与する、ウイルスにコードされるシス作用性エレメントを含む場合、置換は、ウイルス複製をブロックする結合体の能力を、イノシン置換がない同じ結合体と比較して高めるのに効果的である。
【0039】
イノシン塩基で置換されたオリゴマー−ペプチド結合体の高められたアンチセンス活性を実証するための方法は、代表的には、mRNA翻訳、プレプロセシングされたmRNAのスプライスの精度またはウイルス複製の阻害を測定するように設計された無細胞翻訳アッセイおよび組織培養に基づくアッセイである。
【0040】
無細胞翻訳アッセイは、翻訳能力のある細胞溶解産物(例えば、ウサギ網状赤血球溶解産物)および(例えば、アンチセンスオリゴマー標的配列がすぐ上流に配置されたホタルルシフェラーゼ)を含む投入mRNAからなる。種々のプラスミド構造物は、レポーターmRNAを生成するために用いられ得る。アンチセンスオリゴマーは無細胞翻訳反応物に加えられ、そしてレポーター遺伝子シグナルの相対的な阻害はアンチセンス活性の尺度である。本発明を記載するために使用する無細胞翻訳アッセイのより詳細な説明は、実施例4および5に示される。
【0041】
mRNAの翻訳阻害を示すように設計された組織培養に基づくアッセイは、翻訳産物(例えば、タンパク質)が量的に測定され得るネイティブな細胞遺伝子または細胞株に安定してトランスフェクションされたレポーター遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴマーを使用する。標的mRNAの翻訳阻害の程度の測定は、免疫学的な方法を使用したタンパク質発現のレポーター遺伝子シグナル出力または定量を含めた種々の分析法を使用して実行され得る。
【0042】
プレプロセシングされたmRNAスプライシングの阻害は、スプライスドナー部位またはスプライスアクセプター部位を標的としたアンチセンスオリゴマーで処理された細胞におけるサザンブロットまたは定量的ポリメラーゼ連鎖反応により、誤ってスプライシングされたmRNAのレベルを測定することにより示され得る。代替のアプローチ(例えば、Kang,Choら,1998を参照のこと)は、誤ったスプライシングを引き起こす変異したヒトβ−グロビンイントロンにより中断されるルシフェラーゼ遺伝子を有するプラスミドによって安定してトランスフェクションされた細胞株を利用する。このイントロン中の変異を標的としたアンチセンスオリゴマーは、機能的なルシフェラーゼレポータータンパク質のスプライシングの修正およびアップレギュレーションに結果としてなる。
【0043】
ウイルス複製に関係するシス作用性エレメントを標的とするアンチセンスオリゴマーの高められた活性は、標準的な組織培養に基づくウイルス複製アッセイまたはウイルスレプリコンを使用して示され得る。アンチセンスオリゴマーの存在下でのウイルス複製の阻害は、アンチセンスオリゴマーの存在下で複製されたウイルスの力価を決定することにより測定される。ウイルスレプリコン系は、全長の感染性ウイルスクローンの誘導体を利用し、ここで、ウイルスの構造遺伝子は、部分的または完全のいずれかで、レポーター遺伝子により置換されている。レプリコンは、通常、トランスフェクションによって、複製能力のあるウイルスに感染している細胞に導入される。このレプリコンは、レポーター遺伝子の増幅およびレポーターシグナル(例えば、ルシフェラーゼ活性)の増加に結果となる、ウイルスの複製機構によって認識される必須のシス作用性複製エレメントをコードする。
【0044】
(A.アルギニンリッチポリペプチド部分)
実質的に荷電していないアンチセンスオリゴマー化合物の生体膜を通した取り込みを高めるために本発明で使用されるアルギニンリッチペプチドは、一般に、8〜13個のXサブユニット、2〜4個の連続したYサブユニット、Xサブユニットの中に単独で散在するYサブユニットを含め、XおよびYから選択される10〜15個のサブユニットからなる部分を含み、そして薬剤が連結される必要に応じたリンカーサブユニットを含む。Xは、構造R1N=C(NH2)R2の側鎖部分を含むアミノ酸サブユニットを表し(図3Aを参照のこと)、ここで、R1は、HまたはRであり;R2はR、NH2、NHRまたはNR2であり、ここで、Rは低級アルキルまたは低級アルケニルであって、酸素または窒素をさらに含むことができ;R1とR2とは、一緒に環を形成し得;そして、側鎖部分は、R1またはR2によりこのアミノ酸サブユニットに連結される。
【0045】
選択された実施形態では、各々のXについては、側鎖部分は、グアニジル(HN=C(NH2)NH−)、アミジニル(HN=C(NH2)C<)、2−アミノジヒドロピリミジル、2−アミノテトラヒドロピリミジル、2−アミノピリジニルおよび2−アミノピリミドニル(2−aminopyrimidonyl)(それぞれ、可能な結合部位を示す、図3B〜図3G)からなる群から独立して選択される。構造3D、構造3Eおよび構造3Gにおいて、アミノ酸サブユニットに対する側鎖の連結が、環の−NH−基のいずれかによって、および示される炭素原子のいずれかによって起こり得ることに注意されたい。1つの実施形態では、アミノ酸サブユニットアルギニン(Arg)においてのように、側鎖部分はグアニジルである。
【0046】
Yは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルおよびアルカリールからなる群から選択される側鎖を有する疎水性アミノ酸サブユニットを表し、これらのいずれもが、置換されても置換されなくてもよい;置換されたアルキル、置換されたアルケニルおよび置換されたアルキニルから側鎖が選択される場合、Yは、6つ全ての炭素原子について多くても1個のヘテロ原子を含む。選択された実施形態では、Yは、置換されたかまたは非置換の、アリール、アラルキルおよびアルカリールからなる群から選択される、側鎖を有する疎水性アミノ酸サブユニットを表す。他の実施態様において、各々のYは、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンからなる群から選択される。1つの好ましい実施形態では、各々のYは、フェニルアラニン(PheまたはF)サブユニットである。他の好ましい実施形態では、Yサブユニットは、非天然のアミノ酸6−アミノヘキサン酸(Ahx)である。XサブユニットおよびYサブユニットは、本明細書において、「陽イオン性サブユニット」および「疎水性サブユニット」と称されてもよい。
【0047】
上記の如く、XサブユニットがYサブユニットの間を中断していないという点で、Yサブユニットは連続しているか、または、Xサブユニットの間で単独で散在するかのいずれかである。しかしながら、連結サブユニットは、Yサブユニットの間にあってもよい。1つの実施形態では、Yサブユニットは、輸送体の末端にある;他の実施形態では、それらは、Xサブユニットが隣接している。
【0048】
好ましくは、輸送体はペプチドであり、ここで、アミノ酸はペプチド結合で連結される。アミノ酸は、d−アミノ酸、l−アミノ酸、非天然アミノ酸またはそれらの組合せであり得る。送達されるべき化合物は、検出のために使用される化合物(例えば、蛍光化合物)であってもよいが、しかし、それは、好ましくは生物活性物質(例えば、治療用薬剤または診断薬剤)である。この種の薬剤としては、核酸または核酸アナログ(特に、アンチセンスオリゴヌクレオチド)が挙げられる。
【0049】
本願明細書において示されるように、上記の通りの輸送体部分は、結合した荷電していないオリゴマー化合物の細胞への侵入を、結合した輸送体部分がないこの化合物の取り込みと比較して、そして疎水性サブユニットYを欠いている結合した輸送体部分による取り込みと比較して、大いに高める。このような高められた取り込みは、好ましくは、疎水性サブユニットYを欠いている結合した輸送体部分によるこの薬剤の取り込みと比較した、哺乳動物細胞への化合物の取り込みにおける少なくとも2倍の増加、好ましくは4倍の増加によって証明される。取り込みは、結合していない化合物と比較して、好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは少なくとも40倍高められる。
【0050】
輸送体部分の更なる利点は、おそらく、正に荷電した輸送体部分と負に荷電した核酸との間での静電的相互作用による、アンチセンスオリゴマーとその標的核酸配列との間で二重鎖を安定させるその予想される能力である。輸送体中の荷電したサブユニットの数は、上記のように、14個未満であり、好ましくは8個および11個との間である。なぜなら、荷電したサブユニット数があまりに多いと、配列特異性の低減に至るかもしれないからである。
【0051】
組織培養および無細胞系の両方で測定したところ、輸送体部分もまた、アンチセンスオリゴマーの有効濃度を低下させて、アンチセンス活性を達成する。無細胞翻訳系は、その標的と結合して立体的妨害により下流配列の翻訳を阻害するアンチセンスオリゴマーの能力に対する、輸送体部分の高められた効果を評価する独立した手段を提供する。アルギニンリッチペプチド−PMO結合体のアンチセンス活性を試験するように設計された無細胞翻訳アッセイは、結合していないPMOと比較して、アンチセンス活性における10倍と500倍との間の改善を実証する(実施例5、ならびに図6および図7を参照のこと)。
【0052】
(B.オリゴマーアンチセンス化合物)
上記の如く、1つの実施形態では、アンチセンスオリゴマー化合物は、ポリヌクレオチドの標的配列に対して塩基特異的に結合し得る合成オリゴマー(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドアナログ)である。バックボーン構造か、環構造か、またはより低い頻度では、天然のポリヌクレオチドの塩基構造が修飾されているこの種のアナログは周知であり、そしてこれには、荷電したアナログ(例えばホスホロチオネートに結合したオリゴヌクレオチド)および荷電していないアナログ(例えば、メチルホスホネートおよびペプチド核酸)を含む。連結部分における置換に依存して、いくつかのアナログ(例えば、N3’→P5’ホスホルアミデート)は、荷電していても荷電してなくてもよい。
【0053】
好ましい実施形態では、上記で定義した通り、このポリマーは、長さが約8〜40サブユニットのモルホリノオリゴマーである。より代表的には、このオリゴマーは、長さが約10〜30サブユニットまたは約12〜25サブユニットである。いくつかの適用に関しては、例えば、(例えば、長さが約8〜12サブユニットの)抗細菌性の短いオリゴマーは、特に本願明細書において開示されるようなペプチド輸送体に結合させた場合、特に有利であり得る。好ましくは、オリゴマーは、上記でも規定した、荷電していないホスホロジアミデートに結合したモルホリノオリゴマー(PMO)である。このPMOは、任意の配列のものであり得、ここで、この支持される塩基対合基としては、標準的または改変されたA塩基、T塩基、C塩基、G塩基、I塩基およびU塩基が挙げられる。
【0054】
本発明の一局面によれば、オリゴマー化合物が指向される標的核酸配列としては、4以上連続したシトシン塩基の領域が挙げられる。この標的領域はmRNA中のAUG開始部位の一部であってもよく、ここで、mRNAによってコードされる選択されたタンパク質の発現を阻害または妨害することが望ましい。あるいは、これは、プレプロセシングされたmRNA中にドナースプライス部位もしくはアクセプタースプライス部位を含んでもよく、またはこれらに隣接していてもよく、ここで、スプライシング変異ポリペチドを作製する目的、または不完全もしくは不活性なペプチドを作製する目的のいずれかで、その部位での正しいスプライシングを妨害することが望ましい。さらに別の実施形態では、この標的は、ウイルスゲノム中のシス作用性エレメントであってもよく、ここで、オリゴマー(これは、+ウイルスゲノム鎖または−ウイルスゲノム鎖のいずれかを標的とし得る)の結合は、ウイルス感染細胞中でのウイルス複製を妨害するのに効果的である。
【0055】
これらの3個の標的タイプの各々において4個以上のグアニン塩基の列を含んでいる例示的な標的配列は、当業者に周知の公の配列データベースにおいて見出され得る。下記の1つの例示的な標的配列は、AUG開始部位をヒトc−myc mRNAに含む。しかしながら、この配列および標的化オリゴマー化合物において作製されるイノシンによるさまざまなグアニン置換は、本発明の利点を達成するために、4個以上のシトシン塩基の列で任意の標的配列を標的とする場合にオリゴマー化合物がどのようにして改変され得るかの例示であることが理解される。
【0056】
輸送体は、従来技術において、当業者が利用可能な種々の方法により、送達されるべき化合物に連結され得る。例示的な方法は、下記の実施例1において提供され、そして図4A〜図4Dにおいて図示される。これらの例のうちの1つにおいて、輸送体は、側鎖チオールが連結のために使われる単一のシステイン残基を含んでいるペプチドである。結合位置は、輸送体に沿ってさまざまな場所に存在し得る。選択された実施形態において、それは、輸送体の末端にある。代表的には、それは、輸送体の疎水性残基と隣接している。複数の輸送体は、所望により、単一化合物に結合され得る。
【0057】
このリンカーはまた、PMOの5’末端およびペプチド輸送体のC末端に結合した、2個のβ−Ala残基および/またはAhx残基のうちの任意の組合せであり得る。好ましい実施形態は、図4Dで示すように、Ahx残基をペプチド輸送体のC末端に結合し、そしてβ−Ala残基をPMOの5’末端に結合することである。
【0058】
化合物がPMOである場合、輸送体は、実施例3にて説明したように、そして図4Aに示すように、例えば、5’−ヒドロキシル基により、またはアミンキャッピング部分により、PMOの5’末端に結合され得る。あるいは、輸送体は、図4Bに示すように、例えば、モルホリノ環窒素により、または末端結合もしくは内部結合のいずれかのサブユニット間結合の側鎖により、3’末端に結合され得る。リンカーはまた、例えば、カルボジイミドによって促進される縮合により形成される、輸送体ペプチドのカルボキシ末端とPMOのアミン基またはヒドロキシ基との間の直接結合を含み得る。
【0059】
リンカーは、通常の使用条件下で切断可能でないリンカー(例えば、チオエーテル結合またはカルバメート結合を含む)から選択され得る。いくつかの実施形態では、輸送体部分とインビボで切断可能である化合物との連結を含むことが所望され得る。インビボで切断可能である結合は当該分野において公知であり、例えば、カルボン酸エステル(これは、酵素によって加水分解される)およびジスルフィド(これはグルタチオンの存在下で切断される)を含む。適切な波長の照射の適用によって、インビボで、光分解的に切断可能な結合(例えば、オルト−ニトロフェニルエーテル)を切断することもまた可能であり得る。
【0060】
例えば、試薬N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)またはスクシンイミジルオキシカルボニルα−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)を使用したジスルフィドリンカーを有する結合体の調製は、図4Cにおいて例示される。切断可能なジスルフィド基をさらに含む例示的なヘテロ二官能性連結剤は、N−ヒドロキシスクシンイミジル3−[(4−アジドフェニル)ジチオ]プロピオネートおよび(VaninおよびJi 1981)に記載される他のものを含む。
【0061】
以下のセクションで考察されるPMO、ペプチド結合PMOおよび例示的な輸送体ペプチドの配列の表を、表1として以下で提供する。一般に、ペプチドは、N末端アミノ基およびC末端のアミンを含む(例えば、NH2−RRRRRRRRRFFC−CONH2 配列番号16)。イノシンで置換されたグアニン残基を、太字で示す。
【0062】
【表1】
(C.オリゴマー化合物におけるイノシン置換)
本発明を支持して実施され、以下に報告する研究では、化合物の細胞取り込みを高めることを目的として、4個以上のグアニン塩基の列を有する(すなわち、一続きの4個以上のシトシン塩基を有する配列を標的とする)オリゴマー化合物にアルギニンリッチペプチドを連結することが、2つの重大な課題を生じることが観察された。これらの課題はいずれも予想外であった。第一に、アルギニンリッチポリペチドの存在によって、陽イオン性イオン交換樹脂での精製プロセス中に結合体の凝集が生じた。第二に、標的に対するこの化合物のアンチセンス活性は、かなり低下していた。
【0063】
実施例2および実施例3にて説明したように、結合体の凝集は、c−myc PMO(AVI−4126、配列番号1)のようなGリッチPMOに結合したアルギニンリッチペプチドの合成において、克服するには大きなハードルである。ペプチド結合c−myc PMOの最初の調製物は、その後の分析において矛盾を生じた。結合体の質量スペクトルは予想通りだったが、分析用の強陽イオン交換(SCX)HPLCは、全く異なる保持時間を有するいくつかの異なるピークを与えた。複数のピークは、結合体の異なる凝集形態に対応した。実施例4および実施例5に記載されている結果は、グアニンリッチなPMO配列がc−myc PMOの強陽イオン交換(SCX)HPLCにおいて観察される凝集に関係していること、および連続したグアニン塩基のうちの1個以上をイノシン塩基で置換することにより、この凝集が低減したかまたはなくなったことを実証する。表1に列挙するように、AVI−5126(配列番号12)についての1つの例示的な構造は、3個のイノシン残基を含んでおり、凝集に非常に有利な条件下でさえ、凝集したものを形成しない。
【0064】
アルギニンリッチな輸送体ペプチドがPMOに結合されるときに観察される凝集現象は、この種類の核酸アナログに限定されない。アルギニンリッチポリペチドに結合される場合、他のモルホリノバックボーン、メチルホスホネート、ホスホロチオエートおよびホスホジエステル(すなわち、DNAおよびRNA)およびPNAを含め、他の荷電していない核酸または核酸アナログには全て、凝集の同じ可能性があり、それゆえ、本発明のイノシンによるグアニン塩基置換によって改善される可能性がある。
【0065】
(D.イノシンで置換されたアルギニンリッチペプチドの改善された立体妨害特性)
c−myc遺伝子を標的とする、イノシンで置換されたPMOを、実施例4に記載される無細胞ウサギ網状赤血球溶解産物(RRL)アッセイにおいて試験した。この実施例で記載されており、図6に示されるように、イノシンによるグアニン置換の数の増加は、翻訳阻害の減少と相関した。4個のイノシンによるグアニン置換を有するPMO(配列番号10)は、翻訳の阻害が最も効果なく、一方、イノシンによるグアニン置換を1個だけ有するPMO(配列番号2および配列番号3)は、全てのイノシン含有PMOのうちで最も効果的であった。イノシン置換なしのコントロールのc−myc PMO(配列番号1)は、このアッセイにおいて最も高い阻害レベルを有した。イノシン含有PMOについて観察された翻訳阻害の減少は、3個の水素結合を有するG:C塩基対合と比較した、I:C塩基対合の間での1個の水素結合の喪失と一貫している。標的化PMOとその標的との間でのより低いTmは、RRLアッセイが測定する立体的妨害の相対的な損失で役割を果たし得る。
【0066】
上で記載されているイノシンによるグアニン置換を有するc−myc PMOsのうちの3個は、(RAhxR)4送達ペプチドに連結され、そして実施例4に記載されているのと同じpCNmyclucプラスミドおよびRRL系を使用して、無細胞翻訳を阻害する能力について試験された。図7に示され、そして実施例5に記載されているように、最少の阻害のPMOは、イノシン置換のないコントロールペプチドに結合されたc−myc PMO配列(配列番号14)であることが観察された。対照的に、イノシン置換を有する化合物は、かなり大きな翻訳阻害を示した。図7において示すのは、2個または3個のイノシン置換を有する(RahxR)4ペプチドPMO結合体(配列番号11〜配列番号13)である。ペプチド結合された、イノシンで置換されたPMOの改善された翻訳阻害は、実施例4に記載され、図6に示されるような、結合していないPMOを用いて観察される阻害の低減と著しく異なっている。
【0067】
アルギニンリッチペプチドがアンチセンスPMOに与える高められた立体的妨害の阻害は、結合されていない、イノシンで置換されたPMOを用いて観察される減少した立体的妨害の特性を完全に克服する。実施例5に記載された結果および図7に示される結果の両方に基づいて、イノシン置換を有するPMOは、イノシンで置換されていないPMOと比較して立体的妨害の特性を有意に高めた。
【0068】
(III.適用)
本発明の結合体は、脈管増殖の障害(例えば、再狭窄)の処置に有用である。脈管損傷の領域は、例えば、ステント挿入の有無にかかわらず、脈管介入(例えば、冠状動脈バルーン血管形成術)後の脈管内腔の再狭窄または再度の狭まりを含む。再狭窄は、血管形成術によって処置される病変のうちの約30%〜60%、およびこの手順後3〜6ヵ月以内にステントを用いて処置される病変のうちの約20%に起こると考えられている(例えば、Devi,N.B.ら,Cathet Cardiovasc Diagn 45(3):337−45,1998を参照のこと。狭窄症はまた、冠状動脈バイパス手術後に起こることができ、ここで、心臓手術は、血液が、詰まった動脈周辺をコース変更、すなわち「バイパス」して、心臓への血液および酸素の供給を改善するために行われる。そのような場合、狭窄症は、移植された血管セグメントで、特に交換された血管の接合部に起こり得る。狭窄症は、また、透析のために作製される吻合の接合部で起こり得る。
【0069】
この局面において、PMO結合体(好ましくは、c−mycを標的とするもの)は、コーティングしたステントにおいて用いられるか、または伏在静脈の処置のためにエキソビボで浸漬することによって用いられるか、さもなくば、脈管損傷部位に送達される。微小な泡状の組成物は、血栓症または脈管損傷の領域(例えば、損傷を受けた内皮)(例えば、PCT公開第WO 2000/02588号を参照のこと)ならびに選択された器官(例えば、肝臓および腎臓)への結合された分子(例えば、オリゴヌクレオチド)の送達において特に有用であることが見出されている。好ましい抗再狭窄組成物は、Ahx−βAlaリンカー(例えば、配列番号12)によって(RAhxR)4輸送体ペプチドに結合された、イノシン置換された抗c−myc PMOである。
【0070】
本願明細書において記載されているc−myc遺伝子を標的としているPMO結合体はまた、癌一般、特に膀胱癌の処置に有用である。化学療法と併用した、PMO結合体(好ましくはc−mycを標的とするもの)の経尿道投与は、(Knapp,Mataら 2003)に記載され、そして共有に係る同時係属中の米国出願10/151,008(これは、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、高められた抗癌活性を提供する。好ましい抗癌組成物は、Ahx−βAlaリンカー(例えば、配列番号12)により(RAhxR)4輸送体ペプチドに結合した、イノシンで置換された抗c−myc PMOである。
【0071】
以下の実施例は、限定をせずに、本発明の各種実施形態を例示する。
【実施例】
【0072】
(実施例1:PMOへのペプチド合成および結合)
ペプチドを、本明細書中でSPPSと称される、Fmoc固相ペプチド合成(Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis)によって合成した。p−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂を、C末端に酸を有するペプチドの合成のために用い、その一方で、Rink Amide MBHA樹脂を、ペプチドアミドのために用いた。両方の樹脂は、Novabiochem(San Diego,CA)から入手可能である。代表的合成サイクルを、20%のピペリジンによるN末端脱保護から始めた。それから、N−α−Fmoc保護されたアミノ酸を、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)の存在下で2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)を用いた活性化によって、成長中のペプチド鎖に連結した。アルギニン側鎖を、2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Pbf)保護基、トリチルを有するシステインおよびt−ブトキシカルボニル(Boc)を有するリジン側鎖を用いて保護した。所望の配列においてカルボキシからアミノの方向でアミノ酸の全てが付加されるまで、サイクルを繰り返した。ペプチジル樹脂を2.5% H2O、2.5%トリイソプロピルシラン(TIS)および95%トリフルオロ酢酸(TFA)の溶液で処理することによって、合成樹脂からの切断および側鎖の脱保護を同時に実行した。システイン残基を含んでいるペプチドに関しては、2.5%の1,2−エタンジチオール(EDT)を切断カクテルに添加した。粗製ペプチドを、10倍過剰のジエチルエーテルを使用した沈殿により単離した。Source 15S樹脂(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)を利用している強陽イオン交換HPLCを精製のために使用し、続いてAmberchrom 300M樹脂(Tosoh Bioscience,Montgomeryville,PA)を使用した逆相脱塩を行った。脱塩されたペプチドを凍結乾燥し、そしてマトリックス支援レーザ脱離電離飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF MS)、強い陽イオン交換高速液体クロマトグラフ(SCX HPLC)およびキャピラリー電気泳動法(CE)によって正体および純度を分析した。
【0073】
様々なC末端疎水性結合を含んでいるペプチドを以下の通りに調製した。ペプチドを、SPPS中にペプチドのC末端に天然および/または非天然のアミノ酸の組合せを含めることによって、PMOのアミン基またはヒドロキシ基との直接縮合のために調製した。具体的には、結合は、1または2の残基の異なる組合せにおいて使用される、アミノ酸グリジン、β−アラニンおよび/または6−アミノヘキサン酸から構成された。ペプチド合成は、他の点では他のペプチド酸の合成と同一であった。
【0074】
PMOのアミン基またはヒドロキシ基との直接的縮合のためにアミン基がマスクされたペプチドを、以下の通りに調製した。遊離のペプチドアミノ基は、PMOのアミンまたはヒドロキシ基とペプチドのカルボキシ末端との直接的縮合を妨害するので、マスキングされなければならない。1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘクス−1−イリデン)エチル(Dde)アミン側鎖保護基を用いることにより、アミン側鎖を含むペプチド配列(例えば、rTatおよびpTat(表1))を調製した。ペプチド合成は、他の点では他のペプチド酸の合成と同一であった。リジンDde基は、樹脂切断および他のアミノ酸側鎖保護基の脱保護に耐えた。側鎖アミンは、結合を通してDdeによってマスキングされるままであり、その後、DMF中の2%ヒドラジンを用いた処理によって脱保護される。
【0075】
PMOの5’末端での輸送体ペプチドの結合を、以下の通りにアミド結合によって実行した。ペプチド−酸(15μmol)、HBTU(14.25μmol)およびHOBt(15μmol)を200μlのNMPに溶かし、そしてDIEA(22.5μmol)を加えることにより、C末端反応性のペプチド−ベンゾトリアゾリルエステルを調製した。DIEAの添加の直後に、ペプチド溶液を、DMSO中の5’−ピペラジン官能基化した3’−アセチル−PMOの12mM溶液1mlに加えた。30℃にて180分後に、反応物を4倍過剰の水で希釈した。粗製結合体を最初にCM−Sepharose弱陽イオン交換カラム(Sigma,St.Louis,MO)に通して、結合していないPMOを取り除き、次いで、逆相カラム(HLBカラム,Waters,Milford,MA)に通して、精製した。結合体を凍結乾燥し、そしてMALDI−TOF MS、SCX HPLCおよびCEにより分析した。
【0076】
(実施例2:アルギニンリッチペプチドに結合した場合にGリッチオリゴマーはG四重鎖凝集物を形成する)
本実施例は、冠状動脈バイパス移植(CABG)の臨床応用のための、c−myc遺伝子を標的とするアルギニンリッチペプチド−PMO結合体の開発を詳述する。本実施例で記載されているプロジェクトの目的は、受け入れられる収率および純度を有する、結合体の合成および精製のためのプロセスを開発することであった。さらに、結合体の分析のための方法は、結合体を特徴づけなければならず、そして合成プロセス全体にわたって、そしてクリニックにおいて使用されるいかなる製剤においても不純物を識別しなければならない。製品中に残存する遊離ペプチドの量の定量は、おそらく最も重要分析能力である。なぜなら、遊離ペプチドは、結合体または遊離PMOよりも毒性が高い可能性があるからである。
【0077】
以下に示されるように、分子内Gカルテットの形成による凝集は、c−myc PMO(AVI−4126、配列番号1)のようなGリッチPMOに結合したアルギニンリッチペプチドの合成において克服しようとする大きなハードルであることが明らかである。これを考慮すると、この化合物の更なる開発の前に、いくつかの課題を解決する必要がある。第一に、凝集していない形態の結合体を生じることは可能であるか。第二に、所定のサンプルの形態の正確な評価を与える、凝集もせず、脱凝集もしない分析法を開発することは可能であるか。最後に、注射緩衝液(例えば、PBS)において処方された場合に、結合体は、あるとすればどのような凝集形態をとるのか。
【0078】
cmyc PMOに結合されたペプチドの最初の調製物は、その後の分析において、明白な矛盾を生じた。質量スペクトルは予想通りだった。しかし、分析用の強陽イオン交換(SCX)HPLCは、全く異なる保持時間を有するいくつかの異なるピークを与えた。複数のピークは、異なる凝集形態の結合体に対応した。
【0079】
凝集の証拠は、分取用SCX HPLCによってそれを精製する際の最初の試みから得られる。118 OD260のR9F2Ahx−cmyc(配列番号15)を20mlのSource 15S HPLCカラムにローディングし、そしてpH4.75のKH2PO4緩衝液中で流し、1.5M KClで溶出させた。緩衝液Aおよび緩衝液Bは両方とも、25%のアセトニトリル(ACN)を含んでいた。結合体は、カラムから1個の主なピークとして溶出し、遊離ペプチドの直後に溶出したが、その後の画分分析により、後で溶出するピークが豊富になったことが分かった。後で溶出するピークは、マルチマー凝集形態の結合体に対応する。後で溶出するピークが、荷電の増加に起因した、より長い保持時間を有するマルチマー凝集形態の結合体であるという証拠は、塩気のある条件のSCX精製が凝集体形態に有利であり、低塩条件が遊離形態に有利であるという観察により提供された。塩がGカルテットにより四重鎖GROの形成を高めることは公知である。1.5MのKCl中のSCX HPLCカラムに結合体をローディングすることにより、2個の後で溶出するピークのうちの2個目のピークが富化され、そして早期の凝集していないピークの量が減少した。2M塩化グアニジニウムまたは6M尿素のいずれかにおけるローディングにより、後で溶出するピークの量が大いに低減し、早期に溶出するピークは影響を受けないままであった。従って、分子の集合状態は、ローディング環境を変えることにより操作され得る。これにより、後で溶出するピークが凝集した形態の結合体に対応し、伝統的な脱凝集剤である尿素およびグアニジニウムは、樹脂にローディングされるので、この結合体を脱凝集する際に明らかに効果的であるというさらなる証拠が提供された。
【0080】
分析用SCX HPLCに対する熱の影響は、凝集に関するさらなる証拠を提供した。このクロマトグラフィーを、カラムオーブンに入れたSource 15S tricorn SCXカラムを使用して実行した。金属陽イオンがクロマトグラフィーから完全に排除され、そしてグアニジニウムで置き換えられる場合、カラムに熱をかけることにより、後で溶出するピークが消える。凝集した結合体のパーセンテージは、カラムの温度が室温から65℃まで上昇するにつれて減少する。ナトリウムをクロマトグラフィー全体にわたって陽イオンとして用いた場合、「融解」現象は観察されない。このことは、凝集したものを金属陽イオンが安定させることを示唆する。カリウムが偏在し、凝集体形態が優勢であった上記のSCX精製の試みの文脈を考慮すれば、このことは、つじつまがあう。
【0081】
しかしながら、結合体の凝集形態がずっと長い保持時間を有するという事実は、分子が相互作用しており、アルギニン側鎖上の電荷がイオン交換樹脂との相互作用にまだ利用され得ることを示唆した。ペプチド部分が相互作用に関係していない場合に結合体分子のPMO部分が互いに相互作用してマルチマー凝集体を形成するならば、これはまさにその通りであろう。
【0082】
凝集体の問題は、c−myc PMO配列に、または少なくともグアニンリッチオリゴマー(GRO)に特有のようである。低いG含有量を有する配列に対して類似したペプチドを結合することは、凝集の問題を提示しない。連続した一続きのGと他のPMOとの結合体は、SCX HPLC上に同じタイプの凝集体を示す。PMOとペプチドとの間のリンカーは、凝集にいかなる影響をも及ぼすようではない。N−(4−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)チオエーテル結合は、Gly2−Ahx、Ahx2またはAhxアミド連鎖に非常に類似したSCX溶出パターンを与える。最後に、本発明者らのc−myc結合体において使用される、より最近のペプチドである(RAhxR)4−は、以前のR9F2−よりも58%長いが、より短いペプチドと同じ凝集体SCX溶出パターンを与える。従って、凝集は、いかなるアルギニンリッチペプチドを用いても起こり、そして現在まで使用される結合の全てについて起こる。様々な結合を有する同じペプチドが「低G」PMO配列に結合された場合には凝集が観察されないので、本発明者らは、この現象を、c−myc PMO配列のGリッチな性質によるものであると考える。
【0083】
結合されたGROを用いて観察される観察された凝集は、連続的な一続きのグアニンを有するDNAおよびRNAにみられるG四重鎖構造を形成するPMO−PMO相互作用と一貫している。上記のcmyc 20マーPMOのPMO配列(配列番号1)は、5’−ACG TTG AGG GGC ATC GTC GC−3’であり、その一続きの4個のGは、8位〜11位にわたる。凝集程度に対する異なる陽イオンの効果がSCX HPLCによって測定される場合、G四重鎖構造の形成についての証拠が提供される。陽イオン性相互作用がDNAおよびRNAの四重鎖を協調させることにとって重要であることは、周知である。
【0084】
(実施例3:イノシンによるグアニン置換は、アルギニンリッチペプチドに結合したGリッチなオリゴマーの凝集を防止する)
グアニンリッチ核酸配列が、Gカルテットの存在下で安定化される分子間四重鎖構造または分子内四重鎖構造を採り得ることが長く認識されてきた(図5を参照のこと)。Gカルテットは、積み重ねられた平面状の水素結合したグアニンテトラマーであり、グアニンリッチ核酸に四重鎖構造を形成させる。いくつかの生物学的に重要なGリッチ配列はインビトロにおいて生理学的条件下でGカルテットを形成し得るので、インビボでの四重鎖形成の潜在的役割が調査されている。さらに、特異的Gカルテット結合タンパク質を記載している報告の数は、現在、かなりのものである(ShaferおよびSmirnov,2000)。
【0085】
熱力学的考慮事項および反応速度的考慮事項の両方に依存して、Gリッチオリゴマー(GRO)は、種々の可能な四重鎖構造を形成し得る。形成される構造は、オリゴヌクレオチドの塩基配列および濃度、ならびにアニーリングに使用する条件(温度および緩衝液)、特にK+およびNa+のような一価の陽イオンの存在により影響され得る。四重鎖は、1分子、2分子または4分子のオリゴヌクレオチドにより形成され得、これらは、それぞれ、モノマー構造、ダイマー構造およびテトラマー構造と称される。モノマー四重鎖およびダイマー四重鎖は、いす形(横方向のループ)またはバスケット形(斜めのループ)になるそれらのループ領域の配置に基づいて、さらに分類されている。四重鎖の4個の鎖の相対的な鎖配向(5’から3’への極性)は、平行、逆平行または混合型であり得る(Dapic,Abdomerovicら,2003)。
【0086】
G四重鎖構造を促進する水素結合相互作用を破壊するために、c−myc PMO(配列番号1)の4個のG内の異なる位置でイノシンによりグアニンを置換した9つのPMOを合成した。イノシンを含んでいるPMOを、配列番号2〜配列番号10として表1に列挙する。ペプチドとの結合後、非常に凝集性のSCX HPLC条件下で分析を行った。条件は最大限に凝集性であるので、これらは、各々の分子の相対的な凝集傾向の厳密な試験であるはずである。
【0087】
トリフルオロ酢酸塩としてのAc−(Arg−Ahx−Arg)4−Ahx−βAla−OHペプチドを、表1に列挙した未改変のcmyc PMO 20マー配列およびイノシンで改変した9つのcmyc PMO 20マー配列(配列番号1〜10)に結合させた。結合を、NMP/DMSO中でのHBTUカップリングを使用して、通常の様式で実施した。反応は、35℃にて180分間進行した。反応混合物を3mlのH2Oで希釈し、2mlのCM−Sepharoseカラムにローディングし、2mlのACNおよび1mlのH2Oによって洗浄した。結合体を、4mlの2Mの塩化グアニジニウムによって溶出させた。イオン交換カラムから溶出した塩分のある結合体溶液を、2mlのWaters HLB逆転相カラムにローディングすることにより脱塩し、4mlのH2Oによって洗浄し、そして4mlの50% ACNによって溶出させた。最後に、この溶液を凍結乾燥した。
【0088】
MALDI−TOF MSによる結合体の分析によって、N−1が切断されたPMO配列に起因する主な不純物であるきれいな生成物が示唆された。HPLCを、Bio−Rad BioLogic HR HPLCシステムを使用して実施した。全ての実施のために使用したカラムは、Tricorn Source 15S 4.6/100 PE(Amersham Biosciences;製品17−5182−01)であった。使用した緩衝系は、pH7.5の25% ACN中の10mMのNa2HPO4であり、1.5M NaClによって溶出させた。サンプルを全て、緩衝液A中でローディングした。20〜75% B/14カラム体積勾配にて1ml/分の流量を、全ての実施に用いた。クロマトグラフィーの結果を、積分したピーク値として下記の表2に示す。化学的不純物および約7%の積分合計を表している小さいピークが全てのクロマトグラムに存在した点に留意するべきである。
【0089】
イノシンによるグアニン置換は、凝集の相対量に明らかな影響を及ぼした。9位または10位におけるたった1個のグアニンの置換については、凝集形態における結合体のパーセントは、79%から平均56%まで低下した。2個の置換を有する配列のうちの3個(I8、I10)、(I8、I11)および(I9、I11)は、凝集した結合体が平均20%であるクロマトグラムを有した。一続きの4個のGのうちの2個の中心グアニンを置換することは、より大きな効果を有し、凝集物は2.7%のみであった。グアニン(I9、I10)のうちの3個以上が置換される場合、凝集は全く除去された。
【0090】
【表2】
(実施例4:イノシンによるグアニン置換を有するPMOを用いた無細胞翻訳の阻害)
ホタルルシフェラーゼ(fLUC)についてのコード配列を、Sal I部位Not I部位において、プラスミドpCi−Neo(Promega)のマルチクローニングサイトにサブクローン化し、得られたプラスミドをpCNlucrと名づけた。ヒトc−myc遺伝子のATG開始コドンを取り囲んでいる30塩基対合領域(5’−AGCCTCCCGCGACGATGCCCCTCAACGTTA−3’(配列番号29)、Genbank登録番号V00568)をpCNlucrのNhe I部位およびSal I部位にサブクローン化し、そしてpCNmyclucと名づけた。これにより、c−mycコード配列は、fLUC遺伝子のアミノ酸コード配列とフレームがあって配置された(c−myc:fLUC)。c−mycのこの領域を標的とするPMO(AVI−4126)を、配列番号1として列挙する。イノシンで置換されたグアニン残基の数および位置が様々であって、c−myc開始コドン領域を標的とする、イノシンで置換されたPMOを、配列番号2〜配列番号10として列挙する。
【0091】
上で記載されている全てのプラスミドは、c−myc:fLUCの上流にT7 RNAポリメラーゼプロモーターを有する。そして、T7ポリメラーゼに基づくMegascriptキットおよびプロトコル(Ambion)を使用し、Notlを用いた線状化後にこのプラスミドからRNAが生成されることを許容した。PMO、(RAhxR)4−PMOまたは水に加えて12μlのヌクレアーゼ処理済みウサギ網状赤血球溶解産物(Promega)とともに、各々の反応中、1nMの最終濃度で転写されたRNAを使用してインビトロ翻訳を実施した。10μlの翻訳反応物を、製造業者の指示に従って、50μlのルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega)と混合し、そして発光をFLx800マイクロプレートルミノメーター(BIO−TEC Instruments)に読み取った。反応物を、発光機能および125の感度設定を使用したKC Juniorプログラム(BIO−TEC)を用いて相対光単位についてアッセイした。各々の列の最初のウェルおよび最後のウェルに水のコントロール反応物を含めて、12個の反応物を一度にアッセイした。PMOまたは(RAhxR)4−PMOの濃度の関数として各々の反応(n=3)によって得られた相対光単位(RLU)は、図6および図7に示すように表された。
【0092】
c−myc遺伝子を標的とする、イノシンで置換された様々なPMOを、上記の無細胞ウサギ網状赤血球溶解産物(RRL)アッセイにおいて試験した。図6に示すように、イノシンによるグアニン置換の数を増やすことは、翻訳の減少した阻害と相関した。イノシンによるグアニン置換を4個有するPMO(配列番号10)は、翻訳を阻害することに最も効果がなかった。IによるG置換を1個だけ有するPMO(配列番号2および配列番号3)は、全てのイノシン含有PMOの中で最も効果的であった。最も効果的なPMOは、イノシン置換のないコントロールのc−myc PMO(配列番号1)であった。イノシン含有PMOを用いて観察される翻訳阻害の減少は、3個の水素結合を有するG:C塩基対合と比較した、I:C塩基対合の間での1個の水素結合の損失に起因することが提唱される。
【0093】
(実施例5:イノシン置換ペプチド−PMO結合体を用いた無細胞翻訳の阻害向上)
イノシンによる様々なグアニン置換を有する3個の異なるc−myc PMOを(RahxR)4送達ペプチドに結合させ、そして実施例4に記載の同じpCNmyclucプラスミドおよびRRL系を用いて、それらが無細胞翻訳を阻害する能力を試験した。図7に示すように、最少阻害性のPMOは、イノシン置換のないコントロールペプチドが結合されたc−myc PMO配列(配列番号14)であることが観察されたイノシン置換を有する化合物は、かなり有意に大きな翻訳阻害を示した。図7に示すのは、2個または3個のイノシン置換を有するRahxRペプチドPMO結合体(配列番号11〜配列番号13)である。ペプチドに結合されイノシンで置換されたPMOの改善された翻訳阻害は、実施例3に記載されていて、図6に示される、結合していないPMOを用いて観察される阻害低下とは極めて対照的である。アルギニンリッチペプチドがアンチセンスPMOに与える高められた立体妨害阻害は、結合していないイノシン置換されたPMOについて観察される立体妨害特性の低下を完全に克服する。図7に示される結果に基づいて、イノシン置換を有するPMOは、イノシン置換がされていないPMOよりも大きな程度まで予想外に高められる。アルギニンリッチペプチドがイノシン置換されたPMOに与える立体妨害特性を高める機構は、現在わかっていない。しかしながら、これらの改善されたアンチセンスPMOの合成および治療可能性の両方における有用性は大いにある。
【0094】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1A】図1A〜図1Dは、ポリマー形成に適した5原子連結基(A)、6原子連結基(B)および7原子連結基(C〜D)を有する、いくつかの好ましいモルホリノ型サブユニットを示す。
【図1B】図1A〜図1Dは、ポリマー形成に適した5原子連結基(A)、6原子連結基(B)および7原子連結基(C〜D)を有する、いくつかの好ましいモルホリノ型サブユニットを示す。
【図1C】図1A〜図1Dは、ポリマー形成に適した5原子連結基(A)、6原子連結基(B)および7原子連結基(C〜D)を有する、いくつかの好ましいモルホリノ型サブユニットを示す。
【図1D】図1A〜図1Dは、ポリマー形成に適した5原子連結基(A)、6原子連結基(B)および7原子連結基(C〜D)を有する、いくつかの好ましいモルホリノ型サブユニットを示す。
【図2A】図2A〜図2Dは、それぞれ、図1のサブユニットA〜Dを使用して構築される例示的なモルホリノオリゴヌクレオチドの反復するサブユニット部分を示す。
【図2B】図2A〜図2Dは、それぞれ、図1のサブユニットA〜Dを使用して構築される例示的なモルホリノオリゴヌクレオチドの反復するサブユニット部分を示す。
【図2C】図2A〜図2Dは、それぞれ、図1のサブユニットA〜Dを使用して構築される例示的なモルホリノオリゴヌクレオチドの反復するサブユニット部分を示す。
【図2D】図2A〜図2Dは、それぞれ、図1のサブユニットA〜Dを使用して構築される例示的なモルホリノオリゴヌクレオチドの反復するサブユニット部分を示す。
【図3A】図3A〜図3Gは、本発明で使用されるアルギニンリッチペプチドの各種実施形態において使用するための例示的なX側鎖構造を示す。
【図3B】図3A〜図3Gは、本発明で使用されるアルギニンリッチペプチドの各種実施形態において使用するための例示的なX側鎖構造を示す。
【図3C】図3A〜図3Gは、本発明で使用されるアルギニンリッチペプチドの各種実施形態において使用するための例示的なX側鎖構造を示す。
【図3D】図3A〜図3Gは、本発明で使用されるアルギニンリッチペプチドの各種実施形態において使用するための例示的なX側鎖構造を示す。
【図3E】図3A〜図3Gは、本発明で使用されるアルギニンリッチペプチドの各種実施形態において使用するための例示的なX側鎖構造を示す。
【図3F】図3A〜図3Gは、本発明で使用されるアルギニンリッチペプチドの各種実施形態において使用するための例示的なX側鎖構造を示す。
【図3G】図3A〜図3Gは、本発明で使用されるアルギニンリッチペプチドの各種実施形態において使用するための例示的なX側鎖構造を示す。
【図4A】図4A〜図4Dは、オリゴマー−ペプチド結合体およびそれらの調製方法を示し、ここで、図4Cは、インビボで切断可能な結合体の調製を示し、そして図4Dは、6−アミノヘキサン酸/β−アラニンリンカーを有する結合体の調製を示す。
【図4B】図4A〜図4Dは、オリゴマー−ペプチド結合体およびそれらの調製方法を示し、ここで、図4Cは、インビボで切断可能な結合体の調製を示し、そして図4Dは、6−アミノヘキサン酸/β−アラニンリンカーを有する結合体の調製を示す。
【図4C】図4A〜図4Dは、オリゴマー−ペプチド結合体およびそれらの調製方法を示し、ここで、図4Cは、インビボで切断可能な結合体の調製を示し、そして図4Dは、6−アミノヘキサン酸/β−アラニンリンカーを有する結合体の調製を示す。
【図4D】図4A〜図4Dは、オリゴマー−ペプチド結合体およびそれらの調製方法を示し、ここで、図4Cは、インビボで切断可能な結合体の調製を示し、そして図4Dは、6−アミノヘキサン酸/β−アラニンリンカーを有する結合体の調製を示す。
【図5】図5は、PMOがオリゴマーバックボーンの分子間モルホリン残基または分子内モルホリン残基を表すGカルテット塩基対の模式図である。
【図6】図6は、様々な、結合していないイノシン置換したc−mycオリゴマーおよびイノシン置換したc−mycオリゴマーを用いた無細胞ウサギ網状赤血球溶解産物翻訳阻害の結果をグラフで示す。
【図7】図7は、イノシン置換があるかまたはない、アルギニンリッチペプチドに結合したc−myc PMOを使用した無細胞翻訳の阻害を表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に荷電していないオリゴヌクレオチドアナログ化合物と該化合物の標的細胞への取り込みを高めるのに効果的なアルギニンリッチペプチドとの結合体を形成することによって該化合物の細胞取り込みを高めるための方法であって、該化合物は、該化合物が結合することが意図される標的核酸領域において、4個以上連続したシトシン塩基と相補的である塩基の列を含む方法において、改善が、該塩基の列における連続したグアニン塩基の数を3個以下に制限するために、前記化合物における該塩基の列において少なくとも1個のグアニン塩基をイノシン塩基に置換することを含む、改善。
【請求項2】
前記イノシン置換が、前記列における連続したグアニン塩基の数を2個以下に制限するのに効果的である、請求項1に記載の改善。
【請求項3】
少なくとも2個のイノシン塩基が前記塩基の列において置換される、請求項1に記載の改善。
【請求項4】
前記置換が、陽イオン性イオン交換樹脂への結合体の結合および該陽イオン性イオン交換樹脂からの結合体の遊離を含む精製工程中の前記結合体の水溶性を、該イノシン置換がない以外は同じ結合体と比較して高めるのに効果的である、請求項1に記載の改善。
【請求項5】
前記標的核酸領域が、開始コドンをmRNAに含み、そして前記置換は、該mRNAによってコードされるタンパク質の翻訳を妨害する前記結合体の能力を、前記イノシン置換がない以外は同じ結合体と比較して高めるのに効果的である、請求項1に記載の改善。
【請求項6】
前記標的核酸領域が、プレプロセシングされたmRNA中にドナースプライス部位またはアクセプタースプライス部位を含み、そして前記置換は、該標的領域でmRNAスプライシングをマスキングする前記結合体の能力を、前記イノシン置換がない以外は同じ結合体と比較して高めるのに効果的である、請求項1に記載の改善。
【請求項7】
前記標的核酸領域が、ウイルス複製に関与する、ウイルスにコードされるシス作用性エレメントを含み、そして前記置換は、ウイルス複製をブロックする前記結合体の能力を、前記イノシン置換がない以外は同じ結合体と比較して高めるのに効果的である、請求項1に記載の改善。
【請求項8】
請求項1に記載の改善であって、前記アルギニンリッチペプチドが、少なくとも6個のXサブユニット、少なくとも2個のYサブユニットおよび多くても3個のZサブユニットを含め、Xサブユニット、Yサブユニットおよび必要に応じたZサブユニットから選択される8〜16個のサブユニットを含み、ここで、該サブユニットの50%より多くがXサブユニットであり、そしてここで
(a)各々のXサブユニットが、アルギニンまたはアルギニンアナログを独立して表し、該アナログは、構造R1N=C(NH2)R2の側鎖を含む陽イオン性αアミノ酸であり、ここで、R1は、HまたはRであり;R2はR、NH2、NHRまたはNR2であり、ここで、Rは低級アルキルまたは低級アルケニルであって、酸素または窒素をさらに含むことができ;R1とR2とは、一緒に環を形成し得;そして、側鎖は、R1またはR2により該アミノ酸に連結され;
(b)各々のYサブユニットが、中性アミノ酸−C(O)−(CHR)n−NH−を独立して表し、ここで(i)nが2〜7であり、そして各々のRが独立してHまたはメチルであるか、または(ii)nは1であり、そして、Rは、置換されたかまたは非置換の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびアラルキルから選択される中性の側鎖であり、ここで、該中性の側鎖は、置換されたアルキル、アルケニルおよびアルキニルから選択される場合、4個全ての炭素原子について多くとも1個のヘテロ原子を含み;そして
(c)各々のZサブユニットが、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリジン、ヒスチジン、リジン、メチオニン、セリンおよびトレオニンから選択されるアミノ酸を独立して表す、改善。
【請求項9】
前記オリゴヌクレオチドアナログ化合物が、1個のサブユニットのモルホリノ窒素と隣接したサブユニットのモルホリノ3位の環外炭素との間のリン含有結合により連結されるモルホリノサブユニットから構成されるモルホリノオリゴマーである、請求項8に記載の改善。
【請求項10】
前記モルホリノサブユニットが、構造:
【化1】
に従う、荷電していないホスホロジアミデート結合で結合され、ここで、Y1=Oであり、Z=Oであり、Pjは、塩基特異的水素結合によってポリヌクレオチド中の塩基と結合するのに効果的なプリン塩基対合部分またはピリミジン塩基対合部分であり、そして、Xは、アルキル、アルコキシ、チオアルコキシまたはアルキルアミノである、請求項9に記載の改善。
【請求項11】
治療的なオリゴマー−ペプチド結合体であって、
(a)化合物が結合することが意図される標的核酸領域において、4個以上連続したシトシン塩基と相補的である塩基の列を含む塩基配列を有する、実質的に荷電していないオリゴヌクレオチドアナログ化合物、および
(b)標的細胞への該化合物の取り込みを高めるのに効果的な、該化合物に結合されたアルギニンリッチペプチドであって、ここで該化合物における該塩基の列は、該塩基の列における連続したグアニン塩基の数を3個以下に制限するように該列中に配置される少なくとも1個のイノシン塩基を含む、アルギニンリッチペプチド
を含む、治療的なオリゴマー−ペプチド結合体。
【請求項12】
前記化合物中の1個以上のイノシン塩基の位置が、前記列中の連続したグアニン塩基の数を2個以下に制限するようなものである、請求項11に記載の結合体。
【請求項13】
前記化合物が、前記塩基の列中に少なくとも2個のイノシン塩基を含む、請求項12に記載の結合体。
【請求項14】
請求項11に記載の結合体であって、前記アルギニンリッチペプチドが、少なくとも6個のXサブユニット、少なくとも2個のYサブユニットおよび多くても3個のZサブユニットを含め、Xサブユニット、Yサブユニットおよび必要に応じたZサブユニットから選択される8〜16個のサブユニットを含み、ここで、該サブユニットの50%より多くがXサブユニットであり、そしてここで
(a)各々のXサブユニットが、アルギニンまたはアルギニンアナログを独立して表し、該アナログは、構造R1N=C(NH2)R2の側鎖を含む陽イオン性αアミノ酸であり、ここで、R1は、HまたはRであり;R2はR、NH2、NHRまたはNR2であり、ここで、Rは低級アルキルまたは低級アルケニルであって、酸素または窒素をさらに含むことができ;R1とR2とは、一緒に環を形成し得;そして、側鎖は、R1またはR2により該アミノ酸に連結され;
(b)各々のYサブユニットが、中性アミノ酸−C(O)−(CHR)n−NH−を独立して表し、ここで(i)nが2〜7であり、そして各々のRが独立してHまたはメチルであるか、または(ii)nは1であり、そして、Rは、置換されたかまたは非置換の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびアラルキルから選択される中性の側鎖であり、ここで、該中性の側鎖は、置換されたアルキル、アルケニルおよびアルキニルから選択される場合、4個全ての炭素原子について多くとも1個のヘテロ原子を含み;そして
(c)各々のZサブユニットが、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリジン、ヒスチジン、リジン、メチオニン、セリンおよびトレオニンから選択されるアミノ酸を独立して表す、結合体。
【請求項15】
前記オリゴヌクレオチドアナログ化合物が、1個のサブユニットのモルホリノ窒素と隣接したサブユニットのモルホリノ3位の環外炭素との間のリン含有結合により連結されるモルホリノサブユニットから構成されるモルホリノオリゴマーである、請求項14に記載の結合体。
【請求項16】
前記モルホリノサブユニットが、構造:
【化2】
に従う、荷電していないホスホロジアミデート結合で結合され、ここで、Y1=Oであり、Z=Oであり、Pjは、塩基特異的水素結合によってポリヌクレオチド中の塩基と結合するのに効果的なプリン塩基対合部分またはピリミジン塩基対合部分であり、そして、Xは、アルキル、アルコキシ、チオアルコキシまたはアルキルアミノである、請求項15に記載の結合体。
【請求項17】
陽イオン性イオン交換樹脂への結合体の結合および陽イオン性イオン交換樹脂からの結合体の遊離を含む精製工程中に、前記1個以上のイノシン塩基を含まないこと以外は同じ結合体よりも大きな水溶性を有する、請求項11に記載の結合体。
【請求項18】
プレプロセシングされたmRNAの前記標的核酸領域中の選択されたドナースプライス部位またはアクセプタースプライス部位での、該プレプロセシングされたmRNAのプロセシングを妨害するのに使用するための、請求項11に記載の結合体であって、このようなmRNAのスプライス部位プロセシングを妨害する際に、前記1個以上のイノシン塩基がないこと以外は同じ結合体よりも活性である、結合体。
【請求項19】
標的核酸領域がウイルス複製にとって必須のシス作用性エレメントを含むウイルスに感染した細胞におけるウイルス複製の妨害において使用するための、請求項11に記載の結合体であって、このようなウイルス複製を妨害する際に、前記1個以上のイノシン塩基がないこと以外は同じ結合体よりも活性である、結合体。
【請求項20】
標的核酸領域が開始コドンを含むmRNAによってコードされるタンパク質の翻訳の妨害において使用するための、請求項11に記載の結合体であって、このような翻訳を妨害する際に、前記1個以上のイノシン塩基がないこと以外は同じ結合体よりも活性である、結合体。
【請求項21】
前記化合物が、(i)ヒトのc−myc mRNAのAUG開始部位を含む領域を標的としており、そして該化合物が、(ii)が配列番号2〜10からなる群から選択される標的化配列を含む、請求項20に記載の結合体。
【請求項22】
前記ペプチドが、配列番号16、配列番号17および配列番号18からなる群から選択される配列を含む、請求項21に記載の結合体。
【請求項23】
前記ペプチドが、配列番号16、配列番号17および配列番号18からなる群から選択される配列を含む、請求項11に記載の結合体。
【請求項24】
被験体の標的細胞中のc−myc発現の阻害に応答性の病理学的状態を有する被験体を処置する方法であって、該方法は、治療有効量のオリゴマー−ペプチド結合体を該被験体に投与する工程を包含し、
該オリゴマー−ペプチド結合体は、
(a)mRNA開始コドンを含む標的mRNA領域において、4個以上連続したシトシン塩基と相補的である塩基の列を含む塩基配列を有する実質的に荷電していないオリゴヌクレオチドアナログ化合物、および
(b)該標的細胞への該化合物の取り込みを高めるのに効果的な、該化合物に結合されたアルギニンリッチペプチド
から構成され、ここで
(i)該化合物の塩基配列は、該塩基の列において、該塩基の列における連続したグアニン塩基の数を3個以下に制限するように該列中に配置される少なくとも1個のイノシン塩基を含み、そして
(ii)該結合体は、このような翻訳を妨害する際に、前記1個以上のイノシン塩基がないこと以外は同じ結合体よりも活性である、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、前記アルギニンリッチペプチドが、少なくとも6個のXサブユニット、少なくとも2個のYサブユニットおよび多くても3個のZサブユニットを含め、Xサブユニット、Yサブユニットおよび必要に応じたZサブユニットから選択される8〜16個のサブユニットを含み、ここで、該サブユニットの50%より多くがXサブユニットであり、そしてここで
(a)各々のXサブユニットが、アルギニンまたはアルギニンアナログを独立して表し、該アナログは、構造R1N=C(NH2)R2の側鎖を含む陽イオン性αアミノ酸であり、ここで、R1は、HまたはRであり;R2はR、NH2、NHRまたはNR2であり、ここで、Rは低級アルキルまたは低級アルケニルであって、酸素または窒素をさらに含むことができ;R1とR2とは、一緒に環を形成し得;そして、側鎖は、R1またはR2により該アミノ酸に連結され;
(b)各々のYサブユニットが、中性アミノ酸−C(O)−(CHR)n−NH−を独立して表し、ここで(i)nが2〜7であり、そして各々のRが独立してHまたはメチルであるか、または(ii)nは1であり、そして、Rは、置換されたかまたは非置換の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびアラルキルから選択される中性の側鎖であり、ここで、該中性の側鎖は、置換されたアルキル、アルケニルおよびアルキニルから選択される場合、4個全ての炭素原子について多くとも1個のヘテロ原子を含み;そして
(c)各々のZサブユニットが、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリジン、ヒスチジン、リジン、メチオニン、セリンおよびトレオニンから選択されるアミノ酸を独立して表す、方法。
【請求項26】
前記オリゴヌクレオチドアナログ化合物が、1個のサブユニットのモルホリノ窒素と隣接したサブユニットのモルホリノ3位の環外炭素との間のリン含有結合により連結されるモルホリノサブユニットから構成されるモルホリノオリゴマーである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記モルホリノサブユニットが、構造:
【化3】
に従う、荷電していないホスホロジアミデート結合で結合され、ここで、Y1=Oであり、Z=Oであり、Pjは、塩基特異的水素結合によってポリヌクレオチド中の塩基と結合するのに効果的なプリン塩基対合部分またはピリミジン塩基対合部分であり、そして、Xは、アルキル、アルコキシ、チオアルコキシまたはアルキルアミノである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物が、配列番号2〜配列番号10からなる群から選択される標的化配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ペプチドが、配列番号16、配列番号17および配列番号18からなる群から選択される配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物が、配列番号2〜配列番号10からなる群から選択される標的化配列を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
膀胱癌を処置する際に使用するための、請求項24に記載の方法であって、前記結合体が経尿道送達により投与され、そして、該方法が、シスプラチン抗癌化合物を前記患者に投与することをさらに含む、方法。
【請求項32】
血管形成術手順後の血管損傷部位での冠状動脈再狭窄の危険度を減らす際に使用するための、請求項24に記載の方法であって、前記結合体が、脈管内送達により投与される、方法。
【請求項33】
前記血管形成術手順が、血管損傷部位でのステントの配置を含み、そして前記結合体が、該ステントからの放出により投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
冠状動脈バイパス形成手術の間に配置される伏在静脈を保護する際に使用するための、請求項24に記載の方法であって、前記結合体が、該静脈を外科的に配置する前に該静脈を該結合体にさらすことにより投与される、方法。
【請求項35】
多嚢胞腎病を処置するための、請求項24に記載の方法であって、前記結合体が、経口投与または非経口投与によって前記被験体に投与される、方法。
【請求項1】
実質的に荷電していないオリゴヌクレオチドアナログ化合物と該化合物の標的細胞への取り込みを高めるのに効果的なアルギニンリッチペプチドとの結合体を形成することによって該化合物の細胞取り込みを高めるための方法であって、該化合物は、該化合物が結合することが意図される標的核酸領域において、4個以上連続したシトシン塩基と相補的である塩基の列を含む方法において、改善が、該塩基の列における連続したグアニン塩基の数を3個以下に制限するために、前記化合物における該塩基の列において少なくとも1個のグアニン塩基をイノシン塩基に置換することを含む、改善。
【請求項2】
前記イノシン置換が、前記列における連続したグアニン塩基の数を2個以下に制限するのに効果的である、請求項1に記載の改善。
【請求項3】
少なくとも2個のイノシン塩基が前記塩基の列において置換される、請求項1に記載の改善。
【請求項4】
前記置換が、陽イオン性イオン交換樹脂への結合体の結合および該陽イオン性イオン交換樹脂からの結合体の遊離を含む精製工程中の前記結合体の水溶性を、該イノシン置換がない以外は同じ結合体と比較して高めるのに効果的である、請求項1に記載の改善。
【請求項5】
前記標的核酸領域が、開始コドンをmRNAに含み、そして前記置換は、該mRNAによってコードされるタンパク質の翻訳を妨害する前記結合体の能力を、前記イノシン置換がない以外は同じ結合体と比較して高めるのに効果的である、請求項1に記載の改善。
【請求項6】
前記標的核酸領域が、プレプロセシングされたmRNA中にドナースプライス部位またはアクセプタースプライス部位を含み、そして前記置換は、該標的領域でmRNAスプライシングをマスキングする前記結合体の能力を、前記イノシン置換がない以外は同じ結合体と比較して高めるのに効果的である、請求項1に記載の改善。
【請求項7】
前記標的核酸領域が、ウイルス複製に関与する、ウイルスにコードされるシス作用性エレメントを含み、そして前記置換は、ウイルス複製をブロックする前記結合体の能力を、前記イノシン置換がない以外は同じ結合体と比較して高めるのに効果的である、請求項1に記載の改善。
【請求項8】
請求項1に記載の改善であって、前記アルギニンリッチペプチドが、少なくとも6個のXサブユニット、少なくとも2個のYサブユニットおよび多くても3個のZサブユニットを含め、Xサブユニット、Yサブユニットおよび必要に応じたZサブユニットから選択される8〜16個のサブユニットを含み、ここで、該サブユニットの50%より多くがXサブユニットであり、そしてここで
(a)各々のXサブユニットが、アルギニンまたはアルギニンアナログを独立して表し、該アナログは、構造R1N=C(NH2)R2の側鎖を含む陽イオン性αアミノ酸であり、ここで、R1は、HまたはRであり;R2はR、NH2、NHRまたはNR2であり、ここで、Rは低級アルキルまたは低級アルケニルであって、酸素または窒素をさらに含むことができ;R1とR2とは、一緒に環を形成し得;そして、側鎖は、R1またはR2により該アミノ酸に連結され;
(b)各々のYサブユニットが、中性アミノ酸−C(O)−(CHR)n−NH−を独立して表し、ここで(i)nが2〜7であり、そして各々のRが独立してHまたはメチルであるか、または(ii)nは1であり、そして、Rは、置換されたかまたは非置換の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびアラルキルから選択される中性の側鎖であり、ここで、該中性の側鎖は、置換されたアルキル、アルケニルおよびアルキニルから選択される場合、4個全ての炭素原子について多くとも1個のヘテロ原子を含み;そして
(c)各々のZサブユニットが、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリジン、ヒスチジン、リジン、メチオニン、セリンおよびトレオニンから選択されるアミノ酸を独立して表す、改善。
【請求項9】
前記オリゴヌクレオチドアナログ化合物が、1個のサブユニットのモルホリノ窒素と隣接したサブユニットのモルホリノ3位の環外炭素との間のリン含有結合により連結されるモルホリノサブユニットから構成されるモルホリノオリゴマーである、請求項8に記載の改善。
【請求項10】
前記モルホリノサブユニットが、構造:
【化1】
に従う、荷電していないホスホロジアミデート結合で結合され、ここで、Y1=Oであり、Z=Oであり、Pjは、塩基特異的水素結合によってポリヌクレオチド中の塩基と結合するのに効果的なプリン塩基対合部分またはピリミジン塩基対合部分であり、そして、Xは、アルキル、アルコキシ、チオアルコキシまたはアルキルアミノである、請求項9に記載の改善。
【請求項11】
治療的なオリゴマー−ペプチド結合体であって、
(a)化合物が結合することが意図される標的核酸領域において、4個以上連続したシトシン塩基と相補的である塩基の列を含む塩基配列を有する、実質的に荷電していないオリゴヌクレオチドアナログ化合物、および
(b)標的細胞への該化合物の取り込みを高めるのに効果的な、該化合物に結合されたアルギニンリッチペプチドであって、ここで該化合物における該塩基の列は、該塩基の列における連続したグアニン塩基の数を3個以下に制限するように該列中に配置される少なくとも1個のイノシン塩基を含む、アルギニンリッチペプチド
を含む、治療的なオリゴマー−ペプチド結合体。
【請求項12】
前記化合物中の1個以上のイノシン塩基の位置が、前記列中の連続したグアニン塩基の数を2個以下に制限するようなものである、請求項11に記載の結合体。
【請求項13】
前記化合物が、前記塩基の列中に少なくとも2個のイノシン塩基を含む、請求項12に記載の結合体。
【請求項14】
請求項11に記載の結合体であって、前記アルギニンリッチペプチドが、少なくとも6個のXサブユニット、少なくとも2個のYサブユニットおよび多くても3個のZサブユニットを含め、Xサブユニット、Yサブユニットおよび必要に応じたZサブユニットから選択される8〜16個のサブユニットを含み、ここで、該サブユニットの50%より多くがXサブユニットであり、そしてここで
(a)各々のXサブユニットが、アルギニンまたはアルギニンアナログを独立して表し、該アナログは、構造R1N=C(NH2)R2の側鎖を含む陽イオン性αアミノ酸であり、ここで、R1は、HまたはRであり;R2はR、NH2、NHRまたはNR2であり、ここで、Rは低級アルキルまたは低級アルケニルであって、酸素または窒素をさらに含むことができ;R1とR2とは、一緒に環を形成し得;そして、側鎖は、R1またはR2により該アミノ酸に連結され;
(b)各々のYサブユニットが、中性アミノ酸−C(O)−(CHR)n−NH−を独立して表し、ここで(i)nが2〜7であり、そして各々のRが独立してHまたはメチルであるか、または(ii)nは1であり、そして、Rは、置換されたかまたは非置換の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびアラルキルから選択される中性の側鎖であり、ここで、該中性の側鎖は、置換されたアルキル、アルケニルおよびアルキニルから選択される場合、4個全ての炭素原子について多くとも1個のヘテロ原子を含み;そして
(c)各々のZサブユニットが、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリジン、ヒスチジン、リジン、メチオニン、セリンおよびトレオニンから選択されるアミノ酸を独立して表す、結合体。
【請求項15】
前記オリゴヌクレオチドアナログ化合物が、1個のサブユニットのモルホリノ窒素と隣接したサブユニットのモルホリノ3位の環外炭素との間のリン含有結合により連結されるモルホリノサブユニットから構成されるモルホリノオリゴマーである、請求項14に記載の結合体。
【請求項16】
前記モルホリノサブユニットが、構造:
【化2】
に従う、荷電していないホスホロジアミデート結合で結合され、ここで、Y1=Oであり、Z=Oであり、Pjは、塩基特異的水素結合によってポリヌクレオチド中の塩基と結合するのに効果的なプリン塩基対合部分またはピリミジン塩基対合部分であり、そして、Xは、アルキル、アルコキシ、チオアルコキシまたはアルキルアミノである、請求項15に記載の結合体。
【請求項17】
陽イオン性イオン交換樹脂への結合体の結合および陽イオン性イオン交換樹脂からの結合体の遊離を含む精製工程中に、前記1個以上のイノシン塩基を含まないこと以外は同じ結合体よりも大きな水溶性を有する、請求項11に記載の結合体。
【請求項18】
プレプロセシングされたmRNAの前記標的核酸領域中の選択されたドナースプライス部位またはアクセプタースプライス部位での、該プレプロセシングされたmRNAのプロセシングを妨害するのに使用するための、請求項11に記載の結合体であって、このようなmRNAのスプライス部位プロセシングを妨害する際に、前記1個以上のイノシン塩基がないこと以外は同じ結合体よりも活性である、結合体。
【請求項19】
標的核酸領域がウイルス複製にとって必須のシス作用性エレメントを含むウイルスに感染した細胞におけるウイルス複製の妨害において使用するための、請求項11に記載の結合体であって、このようなウイルス複製を妨害する際に、前記1個以上のイノシン塩基がないこと以外は同じ結合体よりも活性である、結合体。
【請求項20】
標的核酸領域が開始コドンを含むmRNAによってコードされるタンパク質の翻訳の妨害において使用するための、請求項11に記載の結合体であって、このような翻訳を妨害する際に、前記1個以上のイノシン塩基がないこと以外は同じ結合体よりも活性である、結合体。
【請求項21】
前記化合物が、(i)ヒトのc−myc mRNAのAUG開始部位を含む領域を標的としており、そして該化合物が、(ii)が配列番号2〜10からなる群から選択される標的化配列を含む、請求項20に記載の結合体。
【請求項22】
前記ペプチドが、配列番号16、配列番号17および配列番号18からなる群から選択される配列を含む、請求項21に記載の結合体。
【請求項23】
前記ペプチドが、配列番号16、配列番号17および配列番号18からなる群から選択される配列を含む、請求項11に記載の結合体。
【請求項24】
被験体の標的細胞中のc−myc発現の阻害に応答性の病理学的状態を有する被験体を処置する方法であって、該方法は、治療有効量のオリゴマー−ペプチド結合体を該被験体に投与する工程を包含し、
該オリゴマー−ペプチド結合体は、
(a)mRNA開始コドンを含む標的mRNA領域において、4個以上連続したシトシン塩基と相補的である塩基の列を含む塩基配列を有する実質的に荷電していないオリゴヌクレオチドアナログ化合物、および
(b)該標的細胞への該化合物の取り込みを高めるのに効果的な、該化合物に結合されたアルギニンリッチペプチド
から構成され、ここで
(i)該化合物の塩基配列は、該塩基の列において、該塩基の列における連続したグアニン塩基の数を3個以下に制限するように該列中に配置される少なくとも1個のイノシン塩基を含み、そして
(ii)該結合体は、このような翻訳を妨害する際に、前記1個以上のイノシン塩基がないこと以外は同じ結合体よりも活性である、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、前記アルギニンリッチペプチドが、少なくとも6個のXサブユニット、少なくとも2個のYサブユニットおよび多くても3個のZサブユニットを含め、Xサブユニット、Yサブユニットおよび必要に応じたZサブユニットから選択される8〜16個のサブユニットを含み、ここで、該サブユニットの50%より多くがXサブユニットであり、そしてここで
(a)各々のXサブユニットが、アルギニンまたはアルギニンアナログを独立して表し、該アナログは、構造R1N=C(NH2)R2の側鎖を含む陽イオン性αアミノ酸であり、ここで、R1は、HまたはRであり;R2はR、NH2、NHRまたはNR2であり、ここで、Rは低級アルキルまたは低級アルケニルであって、酸素または窒素をさらに含むことができ;R1とR2とは、一緒に環を形成し得;そして、側鎖は、R1またはR2により該アミノ酸に連結され;
(b)各々のYサブユニットが、中性アミノ酸−C(O)−(CHR)n−NH−を独立して表し、ここで(i)nが2〜7であり、そして各々のRが独立してHまたはメチルであるか、または(ii)nは1であり、そして、Rは、置換されたかまたは非置換の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびアラルキルから選択される中性の側鎖であり、ここで、該中性の側鎖は、置換されたアルキル、アルケニルおよびアルキニルから選択される場合、4個全ての炭素原子について多くとも1個のヘテロ原子を含み;そして
(c)各々のZサブユニットが、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリジン、ヒスチジン、リジン、メチオニン、セリンおよびトレオニンから選択されるアミノ酸を独立して表す、方法。
【請求項26】
前記オリゴヌクレオチドアナログ化合物が、1個のサブユニットのモルホリノ窒素と隣接したサブユニットのモルホリノ3位の環外炭素との間のリン含有結合により連結されるモルホリノサブユニットから構成されるモルホリノオリゴマーである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記モルホリノサブユニットが、構造:
【化3】
に従う、荷電していないホスホロジアミデート結合で結合され、ここで、Y1=Oであり、Z=Oであり、Pjは、塩基特異的水素結合によってポリヌクレオチド中の塩基と結合するのに効果的なプリン塩基対合部分またはピリミジン塩基対合部分であり、そして、Xは、アルキル、アルコキシ、チオアルコキシまたはアルキルアミノである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物が、配列番号2〜配列番号10からなる群から選択される標的化配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ペプチドが、配列番号16、配列番号17および配列番号18からなる群から選択される配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物が、配列番号2〜配列番号10からなる群から選択される標的化配列を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
膀胱癌を処置する際に使用するための、請求項24に記載の方法であって、前記結合体が経尿道送達により投与され、そして、該方法が、シスプラチン抗癌化合物を前記患者に投与することをさらに含む、方法。
【請求項32】
血管形成術手順後の血管損傷部位での冠状動脈再狭窄の危険度を減らす際に使用するための、請求項24に記載の方法であって、前記結合体が、脈管内送達により投与される、方法。
【請求項33】
前記血管形成術手順が、血管損傷部位でのステントの配置を含み、そして前記結合体が、該ステントからの放出により投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
冠状動脈バイパス形成手術の間に配置される伏在静脈を保護する際に使用するための、請求項24に記載の方法であって、前記結合体が、該静脈を外科的に配置する前に該静脈を該結合体にさらすことにより投与される、方法。
【請求項35】
多嚢胞腎病を処置するための、請求項24に記載の方法であって、前記結合体が、経口投与または非経口投与によって前記被験体に投与される、方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2008−509701(P2008−509701A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527563(P2007−527563)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/018213
【国際公開番号】WO2005/115479
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(504147955)アビ バイオファーマ, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/018213
【国際公開番号】WO2005/115479
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(504147955)アビ バイオファーマ, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]