説明

ペプチド

本発明は、細胞浸透性ペプチドならびに細胞浸透性ペプチドおよびカーゴ分子のコンジュゲートを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペプチド、排他的にではないが、特に、細胞浸透性ペプチドに、そして細胞浸透性ペプチドおよびカーゴ分子のコンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
必須RNA配列を標的化するオリゴヌクレオチド(ON)は、細胞における遺伝子発現の調節において、そして潜在的な療法剤として、多くの適用が見出されている1、2。RNアーゼH誘導性アンチセンスONおよびRISC誘導性siRNA試薬に勝る、立体障害性ONの機械的な利点は、特異性がより高いことであり、これは、正しくないRNAへのONの結合が、望ましくないオフターゲット生物学的影響を誘発する可能性が低いためである。第二に、はるかにより広い範囲の合成ON類似体が使用可能であり、これは宿主RNA切断酵素による分子認識の必要がないためである。
【0003】
立体障害性剤として有用なON類似体の中で最も主要なものは、非荷電主鎖を持つもの、例えばペプチド核酸(PNA)およびホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)である。PNAおよびPMO ONはどちらも、療法剤の開発に向けたRNAターゲティング適用のため、in vivoで用いられてきている。細胞培養において、PNAおよびPMOはどちらもかなり劣ってしか細胞に進入しないことが観察され、そしてしたがって、細胞送達を増進する方法を開発することに多くの努力が払われてきた。特に有用であったのは、PNAまたはPMOにコンジュゲート化した際、ペプチドとしてのこれらの観察される細胞転位置力を利用可能であることが期待される、細胞浸透性ペプチド(CPP)、例えばペネトラチン、Tat(48−60)、トランスポータン、および(R−Ahx−R)(Ahx=アミノヘキシル)の付着である6−9
【0004】
立体障害性ONの活性を評価するのに有用なアッセイは、Koleおよび同僚らによって確立されたものであり、これはHeLa pLuc705細胞の核において18マーの合成ONによって異常なサラセミアβグロビンイントロン(705部位)をスプライス修正(splice correction)し、そして続いてレポーター・ホタル(firefly)ルシフェラーゼを上方制御することを伴う10。このアッセイは、非常に高いダイナミックレンジを有するため、非常に低い活性レベルさえ、陽性発光読み取り値として測定可能である。705スプライス部位をターゲティングするCPP−PNAコンジュゲートがこのアッセイで試験されてきており、そして添加されるトランスフェクション剤の非存在下で、HeLa pLuc705細胞とCPP−PNAコンジュゲートをインキュベーションすると、いくつかの異なるCPPに関して中程度の活性レベルが報告されている一方、PNA単独では不活性である11−13。本発明者らの研究室では、アッセイにおける有意な活性を見るためには、Tat−PNAまたは(Lys)−PNAコンジュゲートは、エンドソーム溶解性(endosomolyitc)剤である100μMクロロキンとの同時インキュベーションを必要とする一方、(R−Ahx−R)−PNAおよび(R−Ahx−R)−PMO構築物では、クロロキンの非存在下で、μM範囲の活性を得ることが可能であることが見出された7、16
【0005】
本発明者らはまた、既知のCPPペネトラチンのN末端に6つのArg残基が付加された新規CPPも報告している17、18。HIV−1のトランス活性化応答要素RNAに相補的なPNAにジスルフィド・コンジュゲート化されたR−ペネトラチン(R6Pen)は、ルシフェラーゼ発現を阻害するために核送達およびTAR RNAへの結合を必要とする、Tat依存性トランス活性化阻害のHeLa細胞ルシフェラーゼレポーターアッセイにおいて、有意な活性を示した18
【0006】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、主に、ジストロフィン遺伝子におけるナンセンスまたはフレームシフト突然変異によって引き起こされるX連鎖筋障害であり、生存男性出生3500のうち、約1の頻度で生じ、そして可能性がある療法が非常に必要とされている29。DMD患者が、重度で進行性の筋萎縮を患う一方、より穏やかなベッカー型筋ジストロフィーは、インフレーム欠失によって引き起こされ、短くなったが部分的に機能を有するタンパク質の発現を生じる。配列特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド(ON)が、突然変異ジストロフィンmRNAのリーディングフレームを修正するターゲティングエクソンスキッピングを誘導して、ベッカー型筋ジストロフィーのものと類似の活性を持つ、より短いジストロフィン型が産生されるようにすることが示されてきている30、31。細胞モデルにおいて、エクソン23中にナンセンス突然変異を含有するmdxジストロフィー性マウスモデル31−33において、そしてイヌモデルにおいて、エクソンスキッピングアプローチに関して極めて有望であることを示す研究が行われている。ONが筋細胞核中のジストロフィン・プレmRNAに結合する結果、「立体障害」機構によって、スプライシングパターンの改変を引き起こす、生物学的活性が達成される。
【0007】
エクソンスキッピングの効率を決定する最も重要な要因の1つは、ON化学である。最も広く用いられているのは、2’−O−メチルホスホロチオエート(2’OMePS)である。この主鎖は、筋内注射を伴って、DMD患者におけるジストロフィン・プレmRNAのエクソン51をターゲティングする第I相臨床試験で用いられている34。ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)を用いて、類似の第I相試験が行われている35。in vivo研究によって、2’OmePSに比較して、PMOを用いると、より高いレベルのエクソンスキッピングおよびジストロフィン発現の回復があることが示唆されてきている35。PMOは非イオン性分子であり、そしてターゲット細胞の細胞内分子と望ましくない相互作用を形成する可能性がより低いと見なされる。
【0008】
YinおよびWoodは、mdxマウスへの筋内注射によって、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる別の非イオン性類似体を調べており、そしてエクソンスキッピングおよびジストロフィン産生の有意な誘導を見出した23。PMOおよびPNAはどちらも、高い配列特異性を持つ非毒性ON類似体と見なされ、薬剤開発のための重要な潜在能力を有する。これまでのところ、PMOのみが臨床試験使用を認可された型で産生されており、そしてPNAの療法的開発は立ち後れている。
【0009】
いくつかの研究グループが、非イオン性ON(PNAまたはPMOなど)とコンジュゲート化された際、細胞内への送達を補助し(しかし、イオン性型では補助しない)、そしてしたがって、ONの生物学的活性をブーストする、CPP(ときに、膜転位置ペプチドと呼ばれる)の設計に携わっている。PMOの場合、天然および非天然アミノ酸両方を含有するペプチド、(R−Ahx−R)−Ahx−Bが、PMOとコンジュゲート化されると、多くの細胞およびin vivoモデルにおいて、より高いレベルの立体障害活性が生じることが開示されてきている36。これは、マウスmdx DMD研究において調べられている37
【0010】
in vivo適用に有用であるためには、有効なスプライス修正、例えばKoleらのスプライス修正ルシフェラーゼアッセイによって測定された際の約0.90μM以下のEC50を可能にするために、CPPが、特に、PNAまたはPMOなどのカーゴに付着した際に、細胞および核膜に有効に浸透することが立証されることが好ましい。さらに、細胞浸透前の分解に抵抗するため、CPPは優れた血清安定性を持たなければならない。療法的適用のため、CPPはまた、低毒性でなければならない。
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、一連の有望な細胞浸透性ペプチドを同定した。該ペプチドは、細胞および核膜を渡るカーゴの移動を促進する、キャリアー部分として作用しうる。ペプチド−カーゴ・コンジュゲートもまた提供する。
【0012】
5つの新規ペプチドシリーズを調製し、そしてこれらをペプチド−PNAおよびペプチド−PMOカーゴ・コンジュゲートとして試験した。ペプチドおよび付着したカーゴを、図15、16、17、18および25に示し、そして以下に要約する:
Pip−1[配列番号10〜20];
Pip−2a、Pip−2b、Pip−2c[配列番号21〜23];
Pip−3a、Pip−3b[配列番号24〜25];
Pip−4a、Pip−4b、Pip−4c、Pip−4d、Pip−4e、Pip−4f、Pip4g、Pip−4h[配列番号26〜31および216〜221];
Pip−5a、Pip−5b、Pip−5c、Pip−5d、Pip−5e、Pip−5f、Pip−5g、Pip−5h、Pip5j、Pip−5k、Pip−5l、Pip−5m、Pip−5n、Pip−5o[配列番号222〜229および230〜239]。
【0013】
Pip−2a[配列番号21]、Pip−2b[配列番号22]、Pip−3a[配列番号24]、Pip−4b[配列番号27]、Pip−4c[配列番号28]、Pip−5a[配列番号222]、Pip−5b[配列番号223]、およびPip−5c[配列番号224]はすべて、HeLa細胞ルシフェラーゼ・スプライス修正アッセイにおいて、高レベルのスプライス修正を示し(図15)、ペプチド−PNAコンジュゲートが核に浸透し、そしてPNA分子が機能することを示す。
【0014】
Pip−2a[配列番号21]、Pip−2b[配列番号22]およびPip−3a[配列番号24]は、高い血清安定性を示す(血清とともにインキュベーションした際、タンパク質分解に耐性である)。
【0015】
Pip−5シリーズ(a〜o)は、PNADMDおよびPMODMD両方を用いて、マウスmdx筋管において高いエクソンスキッピング活性を示した(図17および18)。
したがって、CPP−PNAまたはCPP−PMOコンジュゲートの細胞浸透性ペプチド構成要素、ならびに実質的に類似の配列同一性および構造を有するペプチドは、PNA、PMOを含むアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、ペプチドおよびタンパク質、ならびに小分子などのカーゴの、細胞および核浸透を促進する際に有用であると期待される。
【0016】
したがって、本発明は、細胞膜、例えば哺乳動物細胞の形質膜および/または哺乳動物細胞の核膜に渡る、こうしたカーゴの取り込みを促進する際に有用なペプチドを提供する。該ペプチドは、「細胞浸透性ペプチド」と称することも可能であり、そして膜を渡るカーゴの輸送を促進するため、該ペプチドをカーゴにコンジュゲート化することも可能である。
【0017】
本発明記載のペプチドは、化学的に隣接する単一分子である配列を有する。ペプチド配列は、アミノ酸および場合による非アミノ酸、例えばアミノヘキシルスペーサーで構成されてもよい。例えば、ペプチドのある部分では、アミノヘキシルスペーサーが第一のアミノ酸のC末端および第二のアミノ酸のN末端に化学的に結合され、それによって2つのアミノ酸を化学的に連結していてもよい。
【0018】
ペプチドには、修飾および非天然存在アミノ酸が含まれてもよい。
各ペプチドは、以下の直線配置:
N末端[ドメイン1]−[ドメイン2]−[ドメイン3]−[ドメイン4]C末端
の4つのドメインを含むか、または該ドメインからなる。
【0019】
各ドメインは、共通の配列特性を有するが、各ドメインの正確な配列は、変動および修飾が可能である。したがって、各ドメインには、ある範囲の配列が可能である。ありうるドメイン配列各々の組み合わせによって、本発明の一部を形成する、ある範囲のペプチド配列が生じる。
【0020】
コアペプチド配列は、ドメイン1〜3の隣接アミノ酸(および場合によるスペーサー)配列によって示される。ドメイン4は、カーゴへの連結を可能にするように配置される、場合によるリンカー配列である。いくつかの態様において、ドメイン4は存在しなくてもよく、例えば配列がなくてもよい。
【0021】
以下の説明において、標準的一文字アミノ酸暗号を用いる。非天然アミノ酸およびスペーサー分子は、以下の一文字暗号を用いて称される。
X=アミノヘキシル、β−アラニル、p−アミノベンゾイル、イソニペコチル、または4−アミノブチリル
B=ベータアラニン
hR=ホモアルギニン
d=D−アミノ酸(D−アミノ酸はL−アミノ酸によって置き換え可能である)
ドメイン1は、アルギニンリッチ配列であり、そして長さ4、5、6、7、8またはそれより多いアミノ酸であってもよい。好ましくは、ドメイン1は6アミノ酸を有する。好ましくは、これらはスペーサー基(例えばアミノヘキシル)によって間隔が空けられる。場合によって、これらのスペーサーは、ドメイン中に存在するアミノ酸の数には算入されない。スペーサー基には、アミノヘキシル、β−アラニル、p−アミノベンゾイル、イソニペコチルおよび4−アミノブチリルなどの非天然メチレンリッチスペーサーが含まれてもよい。
【0022】
好ましくは、ドメイン1は、陽イオン性アミノ酸のいくつかを分離する疎水性アミノ酸またはスペーサー基を伴う2以上の陽イオン性アミノ酸を有する。好ましい態様において、陽イオン性アミノ酸はアルギニン(R)である。好ましくは、ドメイン1は、少なくとも3つのアルギニン残基、より好ましくは少なくとも4つのアルギニン残基を有する。いくつかの態様において、ドメイン1は、5、6またはそれより多いアルギニン残基を含有する。
【0023】
ドメイン1は、好ましくは、12残基未満、より好ましくは10残基未満の最大長、および6残基の最小長を有する(それぞれの長さには、場合によって、スペーサー基、例えばX、および非天然アミノ酸が含まれてもよい)。好ましいドメイン1配列は:
(RXR) 式中、n=2、3または4; [配列番号74〜76]
(RBR) 式中、n=2、3または4; [配列番号77〜79]
RXRRXRIdR; [配列番号80]
RXRRBRRXR; [配列番号81]
RBRRXRRBR;または[配列番号82]
(R) 式中、m=5、6、7または8; [配列番号82〜85]
の群より選択される。
【0024】
ドメイン2は、アミノ酸配列ILFQ[配列番号86]、またはILIQ[配列番号202]を含有する。より好ましくは、ドメイン2は、アミノ酸配列ILFQN[配列番号87]またはILFQY[配列番号88]、ILIQN[配列番号299]またはILIQY[配列番号296]を含有する。ILFQまたはILIQ配列は、配列のNまたはC末端の一方または両方に、1、2、3、4または5つのさらなるアミノ酸を含有してもよい。好ましくは、N末端にはアミノ酸がないか、1つまたは2つのアミノ酸があり、そしてC末端にはアミノ酸がないか、1つまたは2つのアミノ酸がある。こうしたものとして、ドメイン2は、長さ4、5、6、7、8、9または10アミノ酸であってもよい。ドメイン2は、好ましくは疎水性ドメインである。
【0025】
ドメイン2は、好ましくは10残基未満、より好ましくは7残基未満の最大長、および3残基、より好ましくは4残基の最小長を有する(それぞれの長さには、場合によって、スペーサー基、例えばX、および非天然アミノ酸が含まれてもよい)。
【0026】
さらなるアミノ酸は、任意のタイプであってもよい。ドメイン2のN末端では、好ましい配列には、IdK、IH、IR、IdR、例えば1つの疎水性および1つの陽イオン性アミノ酸が含まれる。ドメイン2配列のC末端では、好ましいアミノ酸には、NおよびY、例えば陽イオン性でもまた疎水性でもないものが含まれる。
【0027】
ドメイン2の一般的な配列表示を以下に提供する:
ドメイン2=ZILFQZ[配列番号89]
ドメイン2=ZILIQZ[配列番号297]
=Iまたはアミノ酸なし
=K、dK、H、Rまたはアミノ酸なし
=N、Y。
【0028】
したがって、好ましいドメイン2配列は:
配列番号 配列番号
IKILFQN 90 IKILFQY 91
IdKILFQN 92 IdKILFQY 93
IHILFQN 94 IHILFQY 95
IRILFQN 96 IRILFQY 97
IILFQN 98 IILFQY 99
KILFQN 100 KILFQY 101
dKILFQN 102 dKILFQY 103
HILFQN 104 HILFQY 105
RILFQN 106 RILFQY 107
ILFQN 108 ILFQY 109
の群、または:
配列番号 配列番号
IKILIQN 135 IKILIQY 136
IdKILIQN 137 IdKILIQY 138
IHILIQN 139 IHILIQY 140
IRILIQN 141 IRILIQY 142
IILIQN 143 IILIQY 144
KILIQN 145 KILIQY 146
dKILIQN 147 dKILIQY 148
HILIQN 149 HILIQY 150
RILIQN 151 RILIQY 152
ILIQN 153 ILIQY 154
の群より選択される。
【0029】
ドメイン3は陽イオン性ドメインであり、そして好ましくは:
RRMKWHK[配列番号110]
dRRMKWHK[配列番号111]
dRHMKWHK[配列番号155]、
dKRMKWHK[配列番号156]、
dRRWKWHK[配列番号157]、
dKHWKWHK[配列番号158]、
RXRBRXR[配列番号159]、
RXRXRXR[配列番号160]、
RXRRXR[配列番号161]、
RBRXRBR[配列番号162]、
RXRBRX[配列番号163]、または
(RXR) 式中、n=2、3または4;[配列番号74〜76]
より選択される配列を有する。
【0030】
好ましくは、ドメイン3は、陽イオン性アミノ酸のいくつかを分離する疎水性アミノ酸またはスペーサー基を伴う2以上の陽イオン性アミノ酸を有する。好ましい態様において、陽イオン性アミノ酸はアルギニン(R)である。好ましくは、ドメイン3は、少なくとも3つのアルギニン残基、より好ましくは少なくとも4つのアルギニン残基を有する。いくつかの態様において、ドメイン3は、4、5、6またはそれより多いアルギニン残基を含有する。
【0031】
いくつかの態様において、ドメイン3は、4アミノ酸の最小長および15アミノ酸の最大長を有する(場合によって、スペーサー基、例えばX、および非天然アミノ酸を除く)。いくつかの態様において、スペーサー基を含む最小長は5以上であり、そしてスペーサー基を含む最大長は9以下である。
【0032】
ドメイン1および3におけるアミノヘキシルおよびベータアラニンの使用は、ペプチドの免疫原性を最小限にするのを補助する点で好適である。
ドメイン4は、カーゴへのペプチドの化学的連結を可能にするよう配置されたリンカー配列である。ドメイン4配列はまた、カーゴからペプチドのドメイン1〜3部分を分離するスペーサーとしても作用しうる。ある範囲のリンカー配列が可能であり、これには、ジスルフィド、チオエーテルまたはチオール−マレイミド連結の形成を可能にするC末端システイン残基を有する配列が含まれる。カーゴにペプチドを連結する他の方法には、オキシムを形成するC末端アルデヒドの使用、ペプチド上の塩基性アミノ酸とのモルホリノ連結のクリック反応または形成が含まれ、これに、XまたはBまたはXBまたはBXを含むドメイン3前のスペーサー配列が続いてもよい。
【0033】
ドメイン4リンカー配列は、長さ1、2、3、4または5あるいはそれより多いアミノ酸であってもよい(スペーサー基を含む)。ドメイン4リンカー配列は:BCys、XCys、Cys、GGCys、BBCys、BXCys、XBCys、X、XX、B、BB、BXまたはXBの群より選択されてもよい。任意のBまたはXを別のスペーサーによって置換してもよく、これは例えば、4−アミノブチリル(Aib)およびイソニコペコチルより選択可能である。
【0034】
ドメイン4のリンカー配列は、ペプチドが付着されるカーゴの一部を形成してもよい。いくつかの態様において、カーゴは、ドメイン3配列のC末端に直接付着する。こうしたものとして、いくつかの態様において、ドメイン4配列はまったく必要でないか、またはカーゴおよびドメイン3配列の連結によって提供される。
【0035】
上記にしたがって、本発明記載のペプチドは以下のように表されることも可能であり:
ILFQZRMKWHKZ[配列番号112]
ILFQZHMKWHKZ[配列番号164]
ILFQZRWKWHKZ[配列番号165]
ILFQZHWKWHKZ[配列番号166]
ILFQZRXRBRXRZ[配列番号167]
ILFQZRXRXRXRZ[配列番号168]
ILFQZRXRRXRZ[配列番号169]
ILFQZRBRXRBRZ[配列番号170]
ILFQZRXRBRXRZ[配列番号171]
ILFQZRXRBRXZ[配列番号172]
ILIQZRMKWHKZ[配列番号173]
ILIQZHMKWHKZ[配列番号174]
ILIQZRWKWHKZ[配列番号175]
ILIQZHWKWHKZ[配列番号176]
ILIQZRXRBRXRZ[配列番号177]
ILIQZRXRXRXRZ[配列番号178]
ILIQZRXRRXRZ[配列番号179]
ILIQZRBRXRBRZ[配列番号180]
ILIQZRXRBRXRZ[配列番号181]
ILIQZRXRBRXZ[配列番号182]
そして好ましいペプチドは配列:
ILFQZRMKWHK[配列番号113]
ILFQZHMKWHK[配列番号183]
ILFQZRWKWHK[配列番号184]
ILFQZHWKWHK[配列番号185]
ILFQZRXRBRXR[配列番号186]
ILFQZRXRXRXR[配列番号187]
ILFQZRXRRXR[配列番号188]
ILFQZRBRXRBR[配列番号189]
ILFQZRXRBRXR[配列番号190]
ILFQZRXRBRX[配列番号191]
ILIQZRMKWHK[配列番号192]
ILIQZHMKWHK[配列番号193]
ILIQZRWKWHK[配列番号194]
ILIQZHWKWHK[配列番号195]
ILIQZRXRBRXR[配列番号196]
ILIQZRXRXRXR[配列番号197]
ILIQZRXRRXR[配列番号198]
ILIQZRBRXRBR[配列番号199]
ILIQZRXRBRXR[配列番号200]
ILIQZRXRBRX[配列番号201]
式中:
=(RXR) 式中、n=2、3、または4; (RBR) 式中、n=2、3、または4; (R) 式中、m=5、6、7または8; RXRRXRIdR[配列番号80]; RXRRBRRXR[配列番号81];あるいはRBRRXRRBR[配列番号82];
=Iまたはアミノ酸なし
=K、dK、H、Rまたはアミノ酸なし
=N、Y
=RまたはdR、KまたはdK
=リンカー
を有する。
【0036】
好ましいペプチドは、配列番号10〜33または配列番号208〜210(図15)、配列番号34〜73(図16)または配列番号242〜295(図25)、配列番号112または113または配列番号164〜201の1つより選択される配列を含むか、または該配列からなってもよい。好ましいペプチドは、C末端に、BCys、XCys、Cys、GGCys、BBCys、BXCysまたはXBCys、X、XX、B、BB、BXまたはXBの1つのドメイン4リンカー配列を有してもよい。
【0037】
本発明記載のペプチドは、配列番号34〜73または配列番号242〜295のいずれか1つより選択されてもよい。
カーゴ分子を除いて、本発明記載のペプチドは、30アミノ酸、より好ましくは15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30アミノ酸の1つの最大長、および10アミノ酸、より好ましくは10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20アミノ酸の1つの最小長を有してもよい(最大長および最小長は、場合によって、いかなるスペーサー分子、例えばアミノヘキシル基も除くが、非天然または修飾アミノ酸を含む)。
【0038】
本発明記載のペプチドは、ペプチドが、ペプチドのN末端またはC末端のいずれか、好ましくはC末端で、ペプチドに化学的に連結した(好ましくは共有結合した)カーゴ分子をさらに含む、ペプチド−カーゴ・コンジュゲートとして提供されてもよい。化学連結は、ジスルフィド結合、チオエーテルまたはチオール−マレイミド連結を介してもよい。
【0039】
カーゴ分子は、任意の小分子、例えば、小分子薬剤、ペプチド、環状ペプチド、タンパク質、薬学的剤または療法剤であってもよい(例えば5,000Da未満、好ましくは3000Da未満または1000Da未満の分子量)。カーゴ分子は、核酸、アンチセンスオリゴヌクレオチド(PNA、PMO、LNAなど)、またはsiRNAであってもよい。好ましいカーゴ分子は、PNAまたはPMOなどの電気的に中性なオリゴヌクレオチド類似体である。
【0040】
1つの態様において、カーゴはPNA705(配列番号114)である。別の態様において、カーゴはPNADMD(配列番号115)である。別の態様において、カーゴはPMODMD[配列番号206]である。カーゴ分子は、PNADMD[配列番号115]またはPMODMD[配列番号206]の1つに対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有してもよい。リジン残基をこれらのPNAまたはPMO分子の一端または両端に付加して、水溶性を改善してもよい。N末端にシステインを付加して、チオエーテルコンジュゲート化のためのジスルフィド結合形成またはブロモアセチル化を可能にしてもよい。
【0041】
本発明記載のペプチドを、カーゴ分子を伴いまたは伴わず、単離または精製型で提供してもよい。
ペプチドの誘導体もまた、本発明の一部を形成する。ペプチド誘導体には、所定のペプチド配列(例えば、配列番号10〜33または配列番号208〜210または配列番号34〜73または配列番号242〜295の1つ)の変異体であって、全長ペプチドに対して実質的なアミノ酸配列同一性(例えば90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)を有し、そして好ましくは同じかまたはより優れたスプライス修正活性および/または血清安定性を有する前記変異体が含まれる。ペプチド誘導体は、配列番号10〜33または配列番号208〜210または配列番号34〜73または配列番号242〜295の1つより、1、2または3多いかまたは少ない、アミノ酸またはスペーサー分子を有してもよい。
【0042】
配列同一性パーセント(%)は、配列を整列させ、そして最大配列同一性を達成するために必要であればギャップを導入した後、そしていかなる保存的置換も配列同一性の一部と見なさずに、所定の列挙した配列(配列番号によって称される)中の残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基(場合によってスペーサー基を含む)の割合と定義される。配列同一性は、好ましくは、それぞれの配列の全長に渡って計算される。
【0043】
アミノ酸配列同一性パーセントを決定するための整列は、当業者に知られる多様な方式で達成可能であり、これには例えば、ClustalW 1.82、T−coffeeまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを用いるものがある。こうしたソフトウェアを用いる場合、好ましくは、例えば、ギャップペナルティおよび伸長ペナルティに関するデフォルトパラメータを用いる。ClustalW 1.82のデフォルトパラメータは:タンパク質ギャップオープンペナルティ=10.0、タンパク質ギャップ伸長ペナルティ=0.2、タンパク質マトリックス=Gonnet、タンパク質/DNA ENDGAP=−1、タンパク質/DNA GAPDIST=4である。
【0044】
ペプチド誘導体はまた、例えば、以下の群内のアミノ酸間であってもよい、保存的アミノ酸置換も含んでもよい:
(i)グリシン、アラニン、セリン、スレオニン;
(ii)グルタミン酸およびアスパラギン酸;
(iii)アルギニン、ヒスチジンおよびリジン;
(iv)アスパラギンおよびグルタミン;
(v)イソロイシン、ロイシンおよびバリン;
(vi)フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン。
【0045】
本発明記載のペプチドは、好ましくは、KoleらのHeLa細胞スプライシング修正モデル10において、高い活性を示す。好ましくは、このアッセイで確立されるEC50は、1μM未満、より好ましくは0.9μM未満、より好ましくは0.8μM未満、さらにより好ましくは0.7μM未満、さらにより好ましくは0.6μM未満である。本発明記載のペプチドは、好ましくは、R6Penまたは(R−Ahx−R)の1つと比較して、HeLa細胞スプライシング修正モデルにおいて、より高いかまたは同じ活性を示す(すなわちペプチドはより低いかまたは同じEC50を有する)。
【0046】
本発明記載のペプチドは、好ましくは、R6Penと比較して、血清(例えばマウスまたはヒト血清)中で、1時間後、血清安定性増加を示し、そして好ましくは、(R−Ahx−R)と同等かまたはそれより高い血清安定性を示す。0、15、30、60および120分で採取し、そして50μLのHO/CHCN(50/50)中の10% DCAで希釈した10μLアリコットを含み、20%マウス血清を含有するPBS中、37℃で血清安定性を測定してもよい。試料を混合し、そして−20℃で維持して、沈殿した血清タンパク質を遠心分離(13000rpm、5分間)によって分離して、そしてMALDI−TOF質量分析によってペプチド分解に関して上清を分析する。
【0047】
本発明のペプチドおよびペプチドコンジュゲートにおいて、アミノ酸、アミノ酸スペーサーおよびカーゴ分子はすべて、好ましくは、共有結合によって化学的に連結される。
本発明記載のペプチドおよびペプチド−カーゴ・コンジュゲートは、医学的治療法において使用するために提供されてもよい。医学的治療は、好ましくは、細胞および場合によって細胞の核内へのカーゴ分子の送達を必要としうる。
【0048】
したがって、疾患の治療において使用するため、ペプチドおよび/またはペプチド−カーゴ・コンジュゲートを提供する。疾患の治療のための薬剤の製造におけるペプチドおよび/またはペプチド−カーゴ・コンジュゲートの使用もまた提供する。疾患状態の治療が必要な患者または被験体の治療法であって、患者または被験体に、療法的有効量のペプチドおよび/またはペプチド−カーゴ・コンジュゲートを投与する工程を含む、前記方法もまた提供する。好ましくは、ペプチド−カーゴ・コンジュゲートのカーゴ構成要素は、疾患を治療するか、防止するかまたは軽減することが可能な活性剤(例えば薬学的剤)を含む。
【0049】
治療すべき疾患には、薬学的または療法的分子による細胞および/または核膜の浸透改善が、療法効果改善につながりうるいかなる疾患も含まれうる。治療すべき疾患には、(全体にまたは部分的に)スプライシング不全によって引き起こされる疾患状態、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、メンケス病38、β−サラセミア39、前頭側頭型痴呆症、パーキンソン症および脊髄性筋萎縮症を軽減するタウタンパク質のスプライス修正39、ハンチントン−グリフォード早老症症候群40、血管拡張性失調症変異(ATM)41、または癌が含まれてもよい。こうした場合、ペプチドカーゴは、スプライシング欠陥を防止するかまたは修正し、そして/または正しくスプライシングされたmRNA分子の産生(例えばその数)を増加させることが可能な、オリゴヌクレオチド、PNA、PMOまたはLNAを含んでもよい。
【0050】
PNADMDまたはPMODMDのいずれかにコンジュゲート化された本発明記載のペプチドは、心臓および腹筋においてスプライス修正の優れた有効性を示し、ジストロフィン線維の産生を導くことが示された。DMDを患う患者においては、心不全および肺不全が主な死因であるため、本発明記載のペプチドは、エクソンスキッピングを誘導して、正常なジストロフィンの産生を導くことが可能なオリゴヌクレオチド(例えばPNAまたはPMO)にコンジュゲート化させることによって、DMDの治療に特に有用である。さらに、PMODMDは、PNADMDに対して、エクソンスキッピングアッセイにおいて、均一により高い活性を示すため、ペプチド−PMODMDコンジュゲートは、DMDの治療に特に有用であると見なされる。
【0051】
治療すべき患者または被験体は、任意の動物またはヒトであってもよい。患者または被験体は、非ヒト哺乳動物であってもよいが、より好ましくはヒト患者である。患者または被験体は、男性または女性であってもよい。
【0052】
本発明の側面にしたがった薬剤および薬学的組成物を、いくつかの経路による投与のために配合してもよく、経路には、限定されるわけではないが、非経口、静脈内、動脈内、筋内、腫瘍内、口腔および鼻が含まれる。薬剤および組成物を液体または固体型で配合してもよい。液体配合物は、ヒトまたは動物の体の選択される領域への注射による投与のために配合されてもよい。
【0053】
投与は好ましくは、個体に対して利益を示すのに十分な量である、「療法的有効量」である。投与される実際の量、ならびに投与の速度および時間経過は、治療中の疾患の性質および重症度に応じるであろう。治療の処方、例えば投薬量に関する決定などは、開業医および他の医師の責任内であり、そして典型的には、治療しようとする障害、個々の患者の状態、送達部位、投与法および医師に知られる他の要因を考慮する。上述の技術およびプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第20版, 2000, Lippincott, Williams & Wilkins刊行に見出されうる。
【0054】
ペプチドおよびペプチド−カーゴ・コンジュゲートはまた、in vitro法で使用するためにも提供される。例えば、スプライス修正アッセイまたは血清安定性アッセイにおけるペプチドおよび/またはペプチド−カーゴ・コンジュゲートの使用を提供する。
【0055】
用語「in vitro」は、培養中の細胞を用いた実験を含むよう意図され、一方、用語「in vivo」は、損なわれていない(intact)多細胞生物を用いた実験を含むよう意図される。
【0056】
本発明記載のペプチドをコードする核酸もまた提供する。本発明記載のペプチドをコードする核酸に機能可能であるように連結された制御配列、例えばプロモーターを有する核酸ベクター、例えばプラスミドもまた提供する。ベクターは、好ましくは、適切な細胞、例えば哺乳動物、細菌または真菌細胞内にトランスフェクションされた際、ペプチドを発現可能である。核酸を単離または精製型で提供してもよい。
【0057】
本明細書において、用語「機能可能であるように連結された」には、制御配列の影響または調節下で、ヌクレオチドコード配列の発現を行う方式で、選択されたヌクレオチド配列および制御ヌクレオチド配列が共有結合した状況が含まれてもよい。したがって、制御配列が、選択されたヌクレオチド配列の一部またはすべてを形成するヌクレオチドコード配列の転写を達成可能であるならば、制御配列は、選択されたヌクレオチド配列に、機能可能であるように連結されている。適切な場合、生じた転写物を次いで、所望のペプチドに翻訳してもよい。
【0058】
上記にしたがって、本発明の以下の側面および態様を提供する。
本発明の1つの側面において、配置:
N末端[ドメイン1]−[ドメイン2]−[ドメイン3]C末端
を有する、少なくとも3つのドメインで構成されるアミノ酸配列構造を有するペプチドであって:
1.ドメイン1が少なくとも4つのアルギニン残基および1以上のXまたはB残基を含み;
2.ドメイン2が、配列ILFQ[配列番号86]、またはILIQ[配列番号202]を含み;
3.ドメイン3が、少なくとも3つのアルギニン残基および1以上のXまたはB残基を有する配列を含むか、あるいは配列MKWHK[配列番号203]、またはWKWHK[配列番号204]を含むかいずれかである
前記ペプチドを提供する。
【0059】
ドメイン1および3において、アルギニン残基は、好ましくは、ドメイン1および3の各々の隣接一次配列中で2より多いアルギニン残基が隣接しないように、1つまたは2つの疎水性残基、例えば配列X、XX、B、BB、XBまたはBX中の1つまたは2つのアミノヘキシル(X)またはベータアラニン(B)残基によって間隔を空けられている。
【0060】
本発明の別の側面において、配置:
N末端[ドメイン1]−[ドメイン2]−[ドメイン3]C末端
を有する、少なくとも3つのドメインで構成される一次配列構造を有するペプチドであって:
(i)ドメイン1が:
RXRRBRRXR[配列番号81]
RBRRXRRBR[配列番号82]、または
RXRRXR[配列番号74]
より選択される配列を含み
(ii)ドメイン2が:
ILFQ[配列番号86]、または
ILIQ[配列番号202]
より選択される配列を含み
(iii)ドメイン3が:
RXRBRXR[配列番号159]
RBRXRBR[配列番号162]
RXRRXR[配列番号161]
RXRXRXR[配列番号160]
RXRBRX[配列番号163]
MKWHK[配列番号203]、または
WKWHK[配列番号204]
より選択される配列を含む
式中、X=アミノヘキシル、B=βアラニン
前記ペプチドを提供する。
【0061】
いくつかの態様において、ドメイン2は、ILFQY[配列番号88]、またはILIQY[配列番号296]より選択される配列を含む。いくつかの態様において、ドメイン2は、ZILFQZ[配列番号89]、またはZILIQZ[配列番号297]、式中、Z=Iまたはアミノ酸なし、Z=K、dK、H、Rまたはアミノ酸なし、Z=NまたはY、より選択される配列を含む。
【0062】
いくつかの態様において、ドメイン3は、ZMKWHK[配列番号298]、またはZWKWHK[配列番号299]、式中、Z=R、dR、KまたはdK(式中、d=D−アミノ酸)、およびZ=R、HまたはK、より選択される配列を含む。いくつかの態様において、ドメイン3は:
dRRMKWHK[配列番号111]
dRHMKWHK[配列番号155]、
dRRWKWHK[配列番号157]、
dKRMKWHK[配列番号156]、または
dKHWKWHK[配列番号158]
より選択される配列を含む。
【0063】
いくつかの態様において、ドメイン1は、(RXR) 式中、n=2、3または4;[配列番号74〜76]、またはRXRRXRIdR[配列番号80]より選択される配列を含む。
【0064】
いくつかの態様において、ペプチドは、天然アミノ酸、XおよびB残基を含めて、30残基の最大長を有する。いくつかの態様において、ドメイン1は6〜11残基の長さを有し、ドメイン2は4〜9残基の長さを有し、そしてドメイン3は4〜15残基の長さを有し、長さには、天然アミノ酸、XおよびB残基が含まれる。
【0065】
いくつかの態様において、ペプチドは、配列番号242〜295(図25)の1つより選択される配列を含むか、または該配列からなる。いくつかの態様において、ペプチドは、配列番号242〜295(図25)の1つに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むか、または該配列からなる。
【0066】
いくつかの態様において、ペプチドは、Pip−5e、Pip−5jまたはPip−5l(配列番号230、234または236)の1つのドメイン1〜3またはドメイン1〜4の配列、あるいはPip−5e、Pip−5jまたはPip−5l(配列番号230、234または236)の1つのドメイン1〜3またはドメイン1〜4の配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むか、または該配列からなる。
【0067】
いくつかの態様において、ペプチドは:
ILFQZRMKWHK[配列番号113]
ILFQZHMKWHK[配列番号183]
ILFQZRWKWHK[配列番号184]
ILFQZHWKWHK[配列番号185]
ILFQZRXRBRXR[配列番号186]
ILFQZRXRXRXR[配列番号187]
ILFQZRXRRXR[配列番号188]
ILFQZRBRXRBR[配列番号189]
ILFQZRXRBRXR[配列番号190]
ILFQZRXRBRX[配列番号191]
ILIQZRMKWHK[配列番号192]
ILIQZHMKWHK[配列番号193]
ILIQZRWKWHK[配列番号194]
ILIQZHWKWHK[配列番号195]
ILIQZRXRBRXR[配列番号196]
ILIQZRXRXRXR[配列番号197]
ILIQZRXRRXR[配列番号198]
ILIQZRBRXRBR[配列番号199]
ILIQZRXRBRXR[配列番号200]
ILIQZRXRBRX[配列番号201]
式中:
=(RXR) 式中、n=2、3、または4; (RBR) 式中、n=2、3、または4; (R) 式中、m=5、6、7または8; RXRRXRIdR[配列番号80]; RXRRBRRXR[配列番号81];またはRBRRXRRBR[配列番号82];
=Iまたはアミノ酸なし
=K、dK、H、Rまたはアミノ酸なし
=N、Y
=RまたはdR、KまたはdK
式中、d=D−アミノ酸
の1つより選択される配列を含むか、または該配列からなる。
【0068】
いくつかの態様において、ペプチドは、配列番号34〜73(図16)の1つより選択される配列を含むか、または該配列からなる。いくつかの態様において、ペプチドは、配列番号34〜73(図16)の1つに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むか、または該配列からなる。
【0069】
いくつかの態様において、ペプチドは、C末端にリンカー配列をさらに含む。リンカー配列は、BCys、XCys、Cys、GGCys、BBCys、BXCys、XBCys、BX、またはXBより選択されてもよい。
【0070】
いくつかの態様において、ペプチドは、カーゴ分子に化学的にコンジュゲート化されている。コンジュゲート化はペプチドのC末端であってもよい。
カーゴ分子は、核酸、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)、ロック化核酸(LNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(short interfering RNA)(siRNA)、ペプチド、環状ペプチド、タンパク質、または薬剤より選択されてもよい。カーゴ分子は5,000Da未満の分子量を有してもよい。いくつかの態様において、カーゴ分子は、PNADMD[配列番号115]またはPMODMD[配列番号206]あるいはPNADMD[配列番号115]またはPMODMD[配列番号206]の一方に少なくとも90%の配列同一性を有する分子である。
【0071】
本発明のさらなる側面において、本発明記載のペプチドを含む、薬学的組成物または薬剤を提供する。薬学的組成物または薬剤は、薬学的に許容されうる希釈剤、アジュバントまたはキャリアーをさらに含んでもよい。
【0072】
本発明の別の側面において、疾患の治療法において使用するための本発明記載のペプチドを提供する。本発明の別の側面において、疾患の治療において使用するための薬剤の製造における、本発明記載のペプチドの使用を提供する。
【0073】
本発明のさらなる側面において、患者に、本発明記載のペプチドを投与する工程を含む、治療が必要な患者における疾患の治療法を提供する。
ペプチド模倣体
既知の薬学的または生物学的活性化合物に対する模倣体の設計は、「リード」化合物に基づく薬学的剤および療法剤の開発に対する既知のアプローチである。これは、活性化合物の合成が困難であるかまたは高価である場合、あるいは特定の投与法には望ましくない場合に、望ましい可能性もあり、例えばいくつかのペプチドは、消化管中のプロテアーゼによって迅速に分解される傾向があるため、口腔組成物には適していない活性剤でありうる。模倣体設計、合成および試験は、ターゲット特性に関して、多数の分子をランダムにスクリーニングすることを回避するため、一般的に用いられる。
【0074】
所定のターゲット特性を有する化合物から模倣体を設計する際に、一般的に取られるいくつかの工程がある。第一に、ターゲット特性を決定する際に必須であり、そして/または重要である、化合物の特定の部分を決定する。ペプチドの場合、これはペプチド中のアミノ酸残基を体系的に変化させることによって、例えば各残基を順に置換することによって、実行可能である。化合物の活性領域を構成するこれらの部分または残基は、その「ファルマコフォア」として知られる。
【0075】
ファルマコフォアが発見されたならば、ある範囲の供給源、例えば分光学的技術、X線回折データおよびNMR由来のデータを用いて、その物理的特性、例えば立体化学、結合、サイズおよび/または電荷にしたがって、構造をモデリングする。コンピュータ分析、類似性マッピング(原子間の結合よりも、ファルマコフォアの電荷および/または体積をモデリングする)および他の技術が、このモデリングプロセスにおいて使用可能である。
【0076】
このアプローチの変形として、リガンドおよびその結合パートナーの三次元構造をモデリングする。これは、リガンドおよび/または結合パートナーが、結合した際に、コンホメーションを変化させる場合に特に有用であり、模倣体設計において、モデルがこれを考慮することが可能になる。
【0077】
次いで、ファルマコフォアを模倣する化学基を移植可能であるテンプレート分子を選択する。テンプレート分子およびその上に移植される化学基は、好適には、模倣体の合成が容易であり、模倣体が薬理学的に許容されうる可能性が高く、そして模倣体がin vivoで分解されない一方、リード化合物の生物学的活性を維持するように、選択可能である。次いで、このアプローチで発見された単数または複数の模倣体をスクリーニングして、これらがターゲット特性を有するかどうか、またはどの程度の度合いでこれを示すかを見てもよい。次いで、さらなる最適化または修飾を行って、in vivoまたは臨床試験のための、1以上の最終模倣体に到達してもよい。
【0078】
本発明に関して、ペプチド構造を修飾し、場合によってその後、スプライス修正アッセイまたはエクソンスキッピングアッセイにおいて、および/または血清安定性アッセイにおいて、修飾ペプチドを試験する工程を含む方法を提供する。ペプチドまたはペプチド模倣体のこの修飾プロセスを、所望に応じて、所望のスプライス修正またはエクソンスキッピング活性および/または血清安定性を有するペプチドが同定されるまで、何回でも反復してもよい。
【0079】
使用する修飾工程は、ペプチドまたはペプチド模倣体の長さの一部切除(truncating)(これはより短い長さのペプチドまたはペプチド模倣体を合成する工程を含んでもよい)、1以上のアミノ酸残基または化学基の置換、ならびに/あるいは安定性、分解に対する耐性、細胞膜を渡る輸送および/または体からのクリアランスに対する耐性を増加させるためのペプチドまたはペプチド模倣体の化学的修飾を含んでもよい。
【0080】
本発明には、こうした組み合わせが明らかに許容されえないかまたは明白に回避される場合を除いて、記載する側面および好ましい特徴の組み合わせが含まれる。
本明細書で用いるセクション見出しは、構造化の目的のみのためであり、そして記載する主題を限定すると見なされないものとする。
【0081】
本発明の側面および態様は、ここで、付随する図を参照することによって、例示されるであろう。さらなる側面および態様は、当業者には明らかであろう。本文中に言及されるすべての文書が本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
本発明の原理を例示する態様および実験が、ここで、付随する図を参照して、論じられるであろう:
【図1】CPP−PNAコンジュゲートのスプライス修正活性。コンジュゲートの非存在下でOptiMEM中でインキュベーションした対照HeLa pLuc705細胞から生じた発光と比較した、OptiMEMおよび1μMのコンジュゲート1a〜1e(A)または2a〜2g(B)(表1−図3を参照されたい)中で4時間インキュベーションしたHeLa pLuc705細胞から生じた発光の倍増加として、活性レベルを示す。先に報告されるように、トランスフェクション20時間後に、ルシフェラーゼ発現を定量化した19。提示するデータは、少なくとも3つの実験からの平均であり、そしてエラーバーを示す。
【図2】ATP枯渇(ATP)または低温(4℃)の効果によって測定されるように、エネルギー依存機構による内在化を示す、R6Pen−PNAコンジュゲート、R6Pen−S−S−KPNA705K(ジスルフィド連結)およびR6Pen−S−C−KPNA705K(安定連結)のスプライス修正活性。細胞をOptiMEM中、4℃または37℃で30分間(温度依存性)、あるいは10mM NaNおよび6mM 2−デオキシ−D−グルコースを補充したOptiMEM中、37℃で(ATP枯渇)プレインキュベーションし、そして適切なように4℃または37℃で、1μMコンジュゲートと1時間さらにインキュベーションした。次いで、細胞を洗浄し、そしてDMEM完全培地中で23時間、インキュベーションを続け、そしてルシフェラーゼアッセイを、図1におけるように実行した。
【図3】表1−CPP−PNAコンジュゲートの命名、配列(配列番号116〜128)およびMALDI−TOF質量分析データ。
【図4】MALDI−TOF質量分析による、20%血清中に1時間置いた(R−Ahx−R)C−ss−CK−PNA705−K(m/z 6944.36)の安定性、コンジュゲートがこれらの条件下で大部分安定であったことを示す。
【図5】MALDI−TOF質量分析による、20%血清中に1時間置いたR6PenC−ss−CK−PNA705−K(m/z 8524.14)の安定性、コンジュゲートがこれらの条件下で完全に切断されたことを示す。
【図6】MALDI−TOF質量分析による、20%血清中に1時間置いたPip1−ss−CK−PNA705−K(m/z 8391.16)の安定性、コンジュゲートがこれらの条件下で完全に切断されたことを示す。
【図7】MALDI−TOF質量分析による、20%血清中に1時間置いたPip2b−ss−CK−PNA705−K(m/z 8480.17)の安定性、コンジュゲートがこれらの条件下で大部分安定であったことを示す。
【図8】ペプチド−PNAコンジュゲートによるルシフェラーゼ活性の用量依存性上方制御。HeLa pLuc705細胞を、増加する濃度(0.3〜0.4〜0.6〜0.8〜1.2μM)のPip−2b−PNA705(別名、Pip−2b−ss−CK−PNA705−K、図7を参照されたい)およびPip−3a−PNA705コンジュゲートと4時間インキュベーションした。ルシフェラーゼ発現を20時間後に定量化し、そして未処理細胞に対して標準化して、発光の倍増加値を生じた。
【図9】RT−PCRアッセイによって判断した際の用量依存性スプライシング修正。上部バンドは異常なRNA転写物であり、そして下部バンドはスプライシング修正されたRNA転写物である。UTは未処理HeLa細胞由来のRNAを示す。
【図10】ペプチド−PNAコンジュゲート、Pip−2b−PNA705およびPip−3a−PNA705に関して、図9中のゲル(RT−PCRアッセイ)をスキャニングすることによってEC50がどのように決定されるかを示すグラフ。
【図11A】(A)ジストロフィンRNAに関する入れ子(nested)RT−PCRアッセイを用いた、増加する濃度のPip−3a−PNADMDで処理した分化マウスmdx筋芽細胞で見られるエクソンスキッピング。
【図11B】(B)(R−X−R)−PNADMD、Pip−1−PNADMD、Pip−3a−PNADMDで処理した分化マウスmdx筋芽細胞におけるエクソンスキッピング活性の比較。すべての構築物は安定なチオエーテル連結を有する。
【図12】1μM濃度のCPP−PNA705コンジュゲート:Pip−2b−PNA705、(R−Ahx−R)−PNA705、および(R−Ahx−R)Ahx−βAla−PMOでのHeLa pLuc705細胞の処理を伴って発光測定によって判断した際のルシフェラーゼ産生の倍増加。
【図13】PNADMDおよび多様なCPP−PNADMD構築物をmdxマウスの前脛骨筋に注射した後、nmoleあたりのジストロフィン陽性線維数を示すグラフ。
【図14】R6Pen−PNA705、Pip−1−PNA705、Pip−2a−PNA705、Pip−2b−PNA705および(R−Ahx−R)−PNA705候補CPP−PNAに関する、37℃および4℃での、HeLa pLuc705細胞におけるスプライス修正アッセイ由来のルシフェラーゼ発現(相対光単位/μgタンパク質)。
【図15A】ドメイン1〜4およびPNA705またはPNADMDカーゴに関するペプチド配列を含む、試験したペプチドコンジュゲートを示す表。HeLa細胞ルシフェラーゼ・スプライス修正アッセイにおける、コンジュゲートに関するEC50を提供する。1時間の安定性を血清安定性アッセイにおいて評価した。
【図15B】ドメイン1〜4およびPNA705またはPNADMDカーゴに関するペプチド配列を含む、試験したペプチドコンジュゲートを示す表。HeLa細胞ルシフェラーゼ・スプライス修正アッセイにおける、コンジュゲートに関するEC50を提供する。1時間の安定性を血清安定性アッセイにおいて評価した。
【図15C】ドメイン1〜4およびPNA705またはPNADMDカーゴに関するペプチド配列を含む、試験したペプチドコンジュゲートを示す表。HeLa細胞ルシフェラーゼ・スプライス修正アッセイにおける、コンジュゲートに関するEC50を提供する。1時間の安定性を血清安定性アッセイにおいて評価した。
【図15D】ドメイン1〜4およびPNA705またはPNADMDカーゴに関するペプチド配列を含む、試験したペプチドコンジュゲートを示す表。HeLa細胞ルシフェラーゼ・スプライス修正アッセイにおける、コンジュゲートに関するEC50を提供する。1時間の安定性を血清安定性アッセイにおいて評価した。
【図16】本発明記載のドメイン1〜3ペプチド配列を示す表。
【図17A】マウスmdx筋管における、PNADMDカーゴにコンジュゲート化されたある範囲のPipペプチドに関するエクソンスキッピング活性を示す表。
【図17B】マウスmdx筋管における、PNADMDカーゴにコンジュゲート化されたある範囲のPipペプチドに関するエクソンスキッピング活性を示す表。
【図18】マウスmdx筋管における、PMODMDカーゴにコンジュゲート化されたある範囲のPipペプチドに関するエクソンスキッピング活性を示す表。
【図19】前脛骨筋(TA)、四頭筋、腓腹筋(gas)、二頭筋、横隔膜筋(diaph)、心筋(心臓)および腹壁筋(腹部)における、PNADMDにコンジュゲート化されたPip−2bおよび(R−Ahx−R)に関するジストロフィン陽性線維数の定量化を示すチャート。これは、心臓および腹部により多数のジストロフィン陽性線維があることを示す。
【図20】PMO−ペプチドコンジュゲート化における工程を例示する図。
【図21】ジストロフィンRNAに関する入れ子RT−PCRアッセイを用いた、Bペプチド−PMODMD、Pip−5−PMODMDおよびPip−5f−PNADMDの1または2μM濃度で処理した分化マウスmdx筋芽細胞で見られるエクソンスキッピング。
【図22】Pip−5e−PMODMD(上部)またはPip−5f−PMODMD(下部)をmdxマウスに筋内注射した後の、前脛骨筋における非常に強いジストロフィン染色を示す顕微鏡写真。
【図23】PMODMDのある範囲のPipコンジュゲートをmdxマウスの前脛骨筋に筋内注射した後のジストロフィン陽性線維の平均パーセントを示すチャート。バーは標準誤差を示す。Bは「Bペプチド」PMOコンジュゲート対照を示す。
【図24】Bペプチドに比較した、Pip−5e、Pip−5j、Pip−5l、Pip−5nおよびPip−2bによって産生されるジストロフィンの相対量を示すウェスタンブロット。野生型マウス(100%c57)およびmdxマウスの対照もまた示す。
【図25】本発明記載のドメイン1〜3ペプチド配列を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0083】
本発明の1以上の態様の詳細を、例として、本発明を実行するために本発明者らによって意図される最適な様式の特定の詳細を含めて、以下の付随する説明に示す。当業者には、本発明がこれらの特定の詳細に限定されることなく実行可能であることが明らかであろう。
【0084】
本発明者らは、改善された細胞浸透性ペプチドを設計しようとしてきた。特に、本発明者らは、a)タンパク質分解に対して安定化され、そしてしたがってin vivoでの使用に適しており、b)ルシフェラーゼ・モデル・イントロンをターゲティングするPNA配列にコンジュゲート化された際、HeLa細胞核活性モデルにおいて、R6Penおよび(R−Ahx−R)よりも増進した活性を有し、そしてc)マウスmdxモデルにおいて、エクソン23をターゲティングするPNAにコンジュゲート化された際、裸のPNAよりも増進した活性を示すCPPを探し求めてきた。
【0085】
これを考慮して、本発明者らは、以前開示されたR6Penといくつかの重要な側面が異なる、PNA内在化ペプチド(Pip)と呼ばれる一連のペプチドを設計してきた。
1)HeLa細胞スプライシング修正モデルにおけるPNA705コンジュゲートとしてのこれらの活性はより高く(μM未満)、
2)これらはタンパク質分解に対して有意な耐性を有し((R−Ahx−R)C−KPNA705Kと同様)、そして
3)これらは、マウスmdxモデルにおいて、a)分化マウス筋芽細胞とのインキュベーションおよびb)mdxマウスの前脛骨筋への直接注射によって、PNADMDコンジュゲートとしての活性を有する。
【0086】
これらの特性はいずれもR6Penには当てはまらない。エクソン23をターゲティングするPNAのPip−2aおよびPip−2bコンジュゲートのin vivoでの活性は、裸のPNA、(R−Ahx−R)にコンジュゲート化されたPNA、またはPip1(生物学的に不安定なペプチド)にコンジュゲート化されたPNAに比較して2〜3倍高い。
【0087】
Pip2b−PNAは、細胞取り込みにおいてエネルギー依存性であるようであり、そして他の陽イオン性ペプチド、例えば(R−Ahx−R)と同じかまたは類似のエンドソーム経路を通じて、細胞に進入する可能性が高い。
【0088】
Pip−2b−PNA705の活性は、(R−Ahx−R)−PNA705または(R−Ahx−R)−PMO705のいずれよりも、HeLa細胞モデルにおいて、数倍高い。
【0089】
ペプチド
ある範囲の候補細胞浸透性ペプチドを構築し、そしてPNAカーゴにコンジュゲート化した。
【0090】
ルシフェラーゼアッセイのためのPNAカーゴは、18マー塩基配列CCTCTTACCTCAGTTACA[配列番号114]を有するPNA705であり、そしてジスルフィド結合によってペプチドに連結されている。
【0091】
mdxマウスにおけるエクソン23スキッピングのためのPNAカーゴは、20マー塩基配列GGCCAAACCTCGGCTTACCT[配列番号115]を有するPNADMDであり、そしてチオエーテル連結によってペプチドに連結されている。
【0092】
これらのコア配列は、N末端CKおよびC末端KまたはKKKなどのさらなるNおよび/またはC末端配列を有して、例えば以下のカーゴ:CK−PNA705−KまたはCK−PNA705−Kを生じてもよい。さらなるN末端配列は、ペプチドのドメイン4とのジスルフィドまたはチオエーテル連結を可能にしうる。アミノ酸のさらなるC末端配列は、コンジュゲートの水溶性を増進しうる。
【0093】
PNAおよびCPPのコンジュゲート化は、ジスルフィド結合形成またはチオエーテルコンジュゲート化のいずれかによった。
HeLa pLuc705細胞におけるスプライス修正
CPP−オリゴヌクレオチド・コンジュゲートの活性を評価するのに有用なアッセイが、Koleらによって確立されてきている10。アッセイは、18マー合成オリゴヌクレオチドによる異常なβ−グロビンイントロンのスプライス修正(705部位)およびそれに続くホタル・ルシフェラーゼの上方制御を伴う。アッセイは複雑でなく、そして高いダイナミックレンジを有する。
【0094】
コンジュゲートを、指数関数的に増殖しているHeLa pLuc705細胞を含む1mL OptiMEM培地中で4時間インキュベーションした(24ウェルプレート中、1.25x10細胞/ウェルで植え付け、そして一晩培養した)。次いで、コンジュゲートを除去し、そして完全培地(DMEM/10%ウシ胎児血清)中で20時間インキュベーションを続けた。細胞をPBSで2回洗浄し、そして300μLのレポーター溶解緩衝液(Promega)で溶解した。ルシフェラーゼアッセイ系基質(Promega)を用いて、10μLの細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を定量化した。BCATMタンパク質アッセイキット(Pierce)を用いて、細胞タンパク質濃度を測定した。すべての実験を3つ組で行った。3つの複製物に渡って、各データ点を平均した。
【0095】
R6Penペプチドのいくつかの変異体、ならびにHis、PheおよびArg残基を含有するいくつかの複合ペプチドのPNA705コンジュゲートのスプライス修正活性をまず報告する(図1および表1、図3)。
【0096】
一連の修飾R6Penペプチドを合成し、そして先に記載されるのと同じ方式で19、KPNA705Kにジスルフィドコンジュゲート化し、そしてMALDI−TOF質量分析によって性質決定した(表1−図3)。R6Pen−S−S−KPNA705K(1a)は、1μMで、バックグラウンドの120倍の発光増加を示した(図1A)。ペプチドのC末端の二重グリシンスペーサーの欠失(ドメイン4)(1b)は、活性に非常にわずかな影響しかなかった(100倍増加)。対照的に、N末端の6アルギニン残基内に3つのAhxスペーサーを挿入すると(ドメイン1)(1c)、活性の有意な増加が生じた(200倍まで)。GGスペーサー(ドメイン4)を加えたRRMKWKK塩基性領域(ドメイン3)を(R−Ahx)で置換すると(1e)、活性を維持するが増加させず(110倍)、しかし塩基性領域のみをSV40由来の核局在化シグナル(NLS)(PKKKRKV)で置換すると(1d)、幾分有害であった(60倍)。ペプチド部分のC末端の塩基性ドメインおよびGGリンカー(ドメイン3に加えて4)が(R−Ahx)によって置換されているさらなる変異体(1e)は、HeLa pLuc705スプライス修正アッセイにおいて、優れた活性を維持した。これらの結果によって、2つの塩基性領域内には絶対的な配列必要性はなく、そして活性レベルはより微妙な要因、例えば陽イオン性電荷間隔および疎水性配列の部分に応じる可能性があることが示される。SV40 NLS配列の負の効果は、核孔複合体への結合のためである可能性もあった。
【0097】
HeLa pLuc705スプライス修正アッセイにおいて、PMOの活性を増進させることが報告された別のペプチドは、Rである21。しかし、R−PMO705の活性レベルは、(R−Ahx−R)−PMO705に比較して穏やかであることが見出された16。両親媒性ペプチドにおいてヒスチジン残基を付加すると、細胞内へのDNA送達が促進されることが示されてきている22。本発明者らは、His、PheまたはAhx残基のブロックに各側が囲まれたRモチーフを含有する一連のペプチドを合成し、これらをPNA705にジスルフィドコンジュゲート化した(表1−図3)。この場合、PNAの各端には、1つのさらなるLys残基しか存在しなかった。興味深いことに、R6Pen−S−S−KPNA705K(2a)に比較すると、H−S−S−KPNA705K(2b)は、1μM濃度のスプライス修正アッセイにおいて、類似の優れた活性を有することが見出された(120倍、図1B)。対照的に、より多数のHis残基および/またはAhxスペーサーを含有する、合成された他のペプチド−PNAコンジュゲート(2c〜2g)はすべて、より低い活性レベルを有した(25〜75倍増加)。したがって、Hモチーフは、妥当なCPPであり、そしてKPNA705Kとのジスルフィド連結コンジュゲートは、例えば(R−Ahx−R)−S−S−KPNA705Kより有意に高い活性(1μMでおよそ10倍の増加、データ未提示)を示す。しかし、こうしたモチーフは、十分に高い活性を示さず、そして多くの隣接R残基があるため、in vivoでの使用に十分に安定である可能性は低い。この研究によって、HeLa細胞スプライス修正アッセイにおいて妥当な活性を有するいくつかのペプチドが、ありうる療法的使用の候補として、より好ましくないことがわかる。
【0098】
(R−Ahx−R)−PMOが、エネルギー依存性機構で、HeLa細胞によって内在化することが以前報告されてきており、これはスプライス修正アッセイの活性が4℃で消滅したためであった16。本発明者らが、ジスルフィド連結R6Pen−S−S−KPNA705Kまたは安定連結R6Pen−S−C−KPNA705K19に関して、4℃でスプライス修正アッセイを行うと、どちらの場合でも、37℃での活性に比較して、活性の劇的な喪失があった(図2)。また、細胞のATPが枯渇すると、活性の実質的な減少が見られた。低温での類似の活性喪失が、H−S−S−KPNA705Kに関して見られた(データ未提示)。これらのデータは、エネルギー依存性エンドサイトーシス経路を通じて、これらのコンジュゲートが細胞内在化されることを暗示するが、経路の正確な性質は、各場合で、まだ決定されていない。
【0099】
したがって、一連の新規ペプチド(PNA内在化ペプチド、Pip)を設計した。
図8は、Pip−2bおよびPip−3a PNA705コンジュゲートによるルシフェラーゼ活性の用量依存性上方制御を示す。未処理細胞に比較した発光の倍増加として活性を示す。
【0100】
図12は、(R−Ahx−R)−PNA705および(R−Ahx−R)AhxB−PMO705コンジュゲートに比較した際のホタル・ルシフェラーゼ上方制御アッセイにおけるPip−2b−PNA705コンジュゲートの高レベルの活性を示す。活性は、未処理細胞に比較した発光の倍増加として示される。
【0101】
以下のプロトコルにしたがって行ったHeLa細胞スプライス修正アッセイを用いて、図14に示す結果を得た。
指数関数的に増殖しているHeLa pLuc705細胞(24ウェルプレート中、1.75x10細胞/ウェルで植え付け、そして一晩培養したもの)を、OptiMEM中、37℃または4℃で30分間プレインキュベーションした。
【0102】
次いで、1μMの多様なペプチド−PNAコンジュゲートの存在下、37℃(白色バー)または4℃(グレーのバー)で1時間、細胞をインキュベーションした。23時間後にルシフェラーゼ発現を定量化し、そしてRLU/μgタンパク質として表した。各実験を3つ組で行い、そしてエラーバー(標準偏差)を示す。
【0103】
結果を図14に示す。Pip−1、Pip−2aおよびPip−2b PNA705コンジュゲートは、対照R6Penおよび(R−Ahx−R)PNA705と比較して、37℃で、かなりより高いルシフェラーゼ上方制御を示した。しかし、4℃では、すべてのCPP−PNAコンジュゲートがその活性の大部分を失った。これは、これらのペプチド−PNAのすべてがエネルギー依存経路によって内在化されることを示し、これはエンドサイトーシスと一致する。しかし、ペプチドのPipシリーズは、R6Penに比較してPNA705にコンジュゲート化した際、このアッセイにおいて、はるかにより高い活性レベルを示し、そしてこれは次に、(R−Ahx−R)PNA705よりはるかに高い活性を有する。
【0104】
スプライス修正のRT−PCR分析
また、RT−PCRを用いて、KoleらのHeLa pLuc705ルシフェラーゼ・スプライス修正アッセイにおいてスプライス修正を評価してもよい。
【0105】
スプライス修正のRT−PCR分析を行うため、1mLのTRI試薬(Ambion)を用いて、各コンジュゲート濃度に対応する3つ組ウェル由来の、合わせた細胞溶解物300μL(3x100μL)から総RNAを抽出した。順方向プライマー5’TTG ATA TGT GGA TTT CGA GTC GTC3’[配列番号133]および逆方向プライマー5’TGT CAA TCA GAG TGC TTT TGG CG3’[配列番号134]によってプライミングし、プラチナTaq DNAポリメラーゼを伴うSuperScript III One−Step RT−PCR系(Invitrogen)を用いて、0.5μg RNAテンプレートを含む25μL中で、RT−PCRを行った。最初のcDNA合成を55℃で30分間行って、その後、95℃30秒間、58℃1分間および68℃1分間を30周期分、行った。2%アガロースゲル上で産物を分析し(図9)、そしてGene Tools分析ソフトウェア(SynGene)を用いたスキャニングの後、異常なPCR産物のグラフ分布からEC50値を計算した(図10)。
【0106】
図9は、Pip−2b−PNA705およびPip−3a−PNA705に関するRT−PCRによって決定した際の、HeLa pLucルシフェラーゼアッセイにおける用量依存性スプライス修正を示す。EC50測定を図10に示す。
【0107】
結果は図8に示すルシフェラーゼ上方制御アッセイ結果と一致する。
PNA705とのPip−2aからPip−5cコンジュゲートに関するスプライス修正のEC50値を図15に示す。Pip−2a、Pip−2b、Pip−2c、Pip−3a、Pip−4b、Pip−4c、Pip−5a、Pip−5bおよびPip−5cコンジュゲートはすべて、0.8μM未満のEC50値を示し、一方、Pip−3b−PNA705はわずかにより悪く、そしてPip−4a−PNA705およびPip−4d−PNA705はかなりより悪かった。これらの結果は、ドメイン2が配列特異性を有することをさらに立証する。最適な配列は、ドメイン2中にILFQNまたはILFQYのいずれかを含有する。
【0108】
血清安定性アッセイ
20%マウス血清を含有するPBS中、37℃で、CPP−PNAコンジュゲート(20μM)をインキュベーションした。0、15、30、60および120分で10μLのアリコットを採取し、そして50μLのHO/CHCN(50/50)中の10% DCAで希釈した。試料を混合し、そして−20℃で維持した。遠心分離(13000rpm、5分間)によって沈殿血清タンパク質を分離し、そしてMALDI−TOF質量分析によって上清を分析した。
【0109】
雌Balb/cマウス由来の新鮮血餅の遠心分離(3x30分間、13000rpm、4℃)によってマウス血清を調製した。
MALDI−TOF質量分析による1時間の20%血清中の(R−Ahx−R)C−ss−CK−PNA705−K(m/z 6944.36)安定性を図4に示し、これは、これらの条件下では、(R−Ahx−R)C−ss−CK−PNA705−Kの軽度の血清タンパク質分解のみがあることを示す。
【0110】
MALDI−TOF質量分析による1時間の20%血清中のR6PenC−ss−CK−PNA705−K(m/z 8524.14)安定性を図5に示す。これは、R6Penが、1時間以内に該ペプチド内の少なくとも1つの内部位置で完全に切断されて、主要なおよびいくつかの少量の産物を生じることを示す。該ペプチドのさらなる分解が1時間後に起こる。PNAカーゴ構成要素は安定である。
【0111】
MALDI−TOF質量分析による1時間の20%血清中のPip1−ss−CK−PNA705−K(m/z 8391.16)安定性を図6に示す。これは、Pip1ペプチドがR6Penに比較して十分な安定性を獲得しておらず、そしてなお1時間後には完全に切断されることを示す。
【0112】
MALDI−TOF質量分析による1時間の20%血清中のPip2b−ss−CK−PNA705−K(m/z 8480.17)安定性を図7に示す。これは、Pip2bは、1時間後には主に改変されず、そして少量の切断産物しかないことを示す。したがって、安定性は、これらの条件下で、(R−Ahx−R)−PNAと類似である。
【0113】
これらの結果は、Pip2b−PNAが、血清タンパク質分解に対して、in vivo研究の候補となるのに十分な安定性を有することを示す。MALDI−TOF質量分析によって判断した際、血清タンパク質分解に対する類似の安定性は、Pip−2a−PNA、Pip−3a−PNAおよびPip−3b−PNAに関してもまた見られた(データ未提示)。
【0114】
分化H2K mdx細胞におけるエクソンスキッピング
YinおよびWoodは、PNAおよびPNAコンジュゲートを用いて、トランスフェクション剤の存在下で、培養マウスmdx筋芽細胞におけるエクソン23のある程度のスキッピングを達成した23。同じアプローチを行って、本発明記載のペプチドの、ペプチド−PNAコンジュゲートの細胞浸透に対する効果を評価してもよい。この場合、ペプチド−PNAコンジュゲートのインキュベーションは、トランスフェクション剤の非存在下である。
【0115】
DMD mdxモデルにおけるエクソン23スキッピング実験で用いるべきPNA 20マーは:GGCCAAACCTCGGCTTACCT[配列番号115](PNADMD)である。
【0116】
血清枯渇(5%ウマ血清を含むDMEM)の2日後、ゼラチンコーティング24ウェルプレート中に植え付けた集密(confluent)H2K mdx細胞から筋管を得た。CPP−PNAコンジュゲートを0.5mL OptiMEM中で4時間、筋管とインキュベーションし、そして次いで、1mLのDMEM/5%ウマ血清培地と交換してさらにインキュベーションした。20時間後、筋管をPBSで2回洗浄し、そして0.5mLのTRI試薬で総RNAを抽出した。RT−PCR分析前に、RNA調製物をRNアーゼ不含DNアーゼ(2U)およびプロテイナーゼK(20μg)で処理した。順方向プライマー5’CAG AAT TCT GCC AAT TGC TGAG3’[配列番号129]および逆方向プライマー5’TTC TTC AGC TTG TGT CAT CC3’[配列番号130]によってプライミングし、プラチナTaq DNAポリメラーゼを伴うSuperScript III One−Step RT−PCR系(Invitrogen)を用いて、1μg RNAテンプレートを含む25μL中で、RT−PCRを行った。最初のcDNA合成を55℃で30分間行って、その後、95℃30秒間、55℃1分間および68℃80秒間を30周期分、行った。次いで、RT−PCR産物(1μL)を鋳型として用い、0.5U Super TAQポリメラーゼ(HT Biotechnologies)を含む25μL中で、そして順方向プライマー5’CCC AGT CTA CCA CCC TAT CAG AGC3’[配列番号131]および逆方向プライマー5’CCT GCC TTT AAG GCT TCC TT3’[配列番号132]によってプライミングして、二次PCRを行った。周期条件は、95℃1分間、57℃1分間および72℃80秒間を25周期であった。2%アガロースゲル電気泳動によって産物を調べ、そしてGene Tools分析ソフトウェア(SynGene)を用いたスキャニングの後。エクソン22スキッピングの相対量を、コンジュゲートの所定の濃度で、3回の実験の複製物に渡って平均した割合として表した。
【0117】
図11Aは、Pip3a−PNADMDの用量を増加させつつ、RT−PCRによって決定した際の、分化マウスmdx筋芽細胞における、エクソン23スキッピングおよびエクソン22、23二重スキッピングの増加を示す。図11Bは、Pip3a−PNADMDに関してRT−PCRによって決定した際の分化マウスmdx筋芽細胞におけるエクソン23スキッピングを示す。同等のコンジュゲート濃度では、(R−Ahx−R)−PNADMDに関しては活性はまったく見られず、そしてPip−1−PNADMDに関しては、非常に弱いエクソン23スキッピングが見られた(しかしエクソン22、23二重スキッピングは見られなかった)。
【0118】
これらの結果は、Pip−3a−PNADMDが、このモデルにおいて優れた活性を有することを示す。Pip−2a−PNADMDおよびPip−2b−PNADMDに関して、類似の結果が予測される。
【0119】
アガロースゲルのスキャニングによって、1μmおよび2μMで添加されたコンジュゲートで、エクソンスキッピングレベル(スキッピングされないものに比較したエクソン23欠失の%)を決定し、そして結果を図17に示す。PNADMDのチオエーテルコンジュゲートとしてのPip−2a、Pip−2b、Pip−4b、Pip−4c、Pip−4e、Pip−4f、Pip−4gおよびPip−4hはすべて、2μMで30%以上、そして1μMで16〜27%のエクソンスキッピングを示した。改変されたドメイン2を持つPip−3aおよびPip−3bコンジュゲートは、わずかにより活性でなかった。再び、最適ペプチドはすべて、ドメイン2に配列ILFQNまたはILFQYを含有した。ドメイン1は、間隔が空いた5つまたは6つのArg残基を含有し、そして結果は、いくつかのアミノヘキシル(X)スペーサーをベータ−Ala(B)またはIle(I)のいずれかによって置換可能であることを示した。
【0120】
PNADMDのコンジュゲートとして、さらなるPipペプチドシリーズを合成した(Pip−5a〜Pip−5g)。Pip−5a〜Pip−5gはすべて、RXRRBRRXR[配列番号81]のドメイン1およびILFQY[配列番号88]またはILIQY[配列番号296](Pip−5g)のドメイン2を有した。Pip−5a〜Pip−5dおよびPip−5gは各々、ドメイン3の配列中にわずかな変動を有するが、最初の2つの位で2つの塩基性残基を、第三の位でMまたはWを維持し、その後、各場合で、KWHKが続いた。Pip−5eおよびPip−5fの場合、ドメイン3が有意に改変されて、XまたはB残基のいずれかによって間隔を空けられた4つのArg残基を生じた。Pip−5a、Pip−5b、Pip−5e、Pip−5fおよびPip−5g PNADMDコンジュゲートはすべて、2μMで30%以上の優れたエクソンスキッピングを示した。Pip−5cおよびPip−5dコンジュゲートはわずかに劣っていた。これらの結果は、ドメイン3が、間隔が空いたArg残基からなってもよく、そしてドメイン2がILFQYまたはILIQYであってもよいことを示した。
【0121】
Pip−5hは、より短いドメイン1および3を含有し、各場合で間隔が開いた4つのArg残基のみ(RXRRXR[配列番号74])を含有する一方、最適なドメイン2(ILFQY[配列番号88])を維持した。Pip−5h−PNADMDは、例えばPip−5e−PNADMDと比較した際、それぞれ、1および2μmの両方で、エクソンスキッピング%に関して、より低い活性を示した。この結果は、ドメイン1の4つのArg残基が、mdx筋肉細胞における最適エクソンスキッピングには不十分であることを示す。
【0122】
したがって、合成が単純であるため(異なるアミノ酸が最小数であり、そしてLysまたはHis残基あるいはD−アミノ酸をまったく含まない)、Pip−5eおよびPip−5fが最適な配列である。
【0123】
mdxマウスにおけるPNAによるエクソンスキッピングおよびジストロフィン発現の回復
YinおよびWoodは、mdxマウスの前脛骨筋内へのPNAおよびPNA−コンジュゲートの単回筋内注射によって、mdxマウスにおいて、エクソン23の効率的なスキッピングを達成した23。同じアプローチで、Pip−PNADMDコンジュゲートの効果を評価した。
【0124】
DMD mdxモデルにおけるエクソン23スキッピング実験で、PNA20マーGGCCAAACCTCGGCTTACCT[配列番号115](PNADMD)を用いた。
YinおよびWoodのプロトコル23にしたがってエクソンスキッピングが評価可能であり、該プロトコルは以下のように要約可能である。
【0125】
8週齢の雄mdxマウス(数は3匹)に、生理食塩水および水中の5μgのPNAまたはCPP−PNAコンジュゲートを投与し;総体積は、前脛骨筋内への40μl筋内注射である。注射3週間後に組織を採取した。
【0126】
ウサギポリクローナル抗体(ジストロフィンタンパク質のC末端をターゲットとする)を用いた免疫組織化学によって組織をアッセイし、そして核をDAPIで対比染色する。Alex vision LEソフトウェアを用いて、蛍光顕微鏡によって、ジストロフィン陽性線維を計数する。
【0127】
最初の結果を図13に示す。PNAとのPip2aおよびPip2bコンジュゲート[配列番号32および33]は、Pip−1−PNADMD、(R−Ahx−R)−PNADMDまたは裸のPNADMDよりも、mdxマウス中でかなり優れたエクソンスキッピング活性を示す。
【0128】
(R−Ahx−R)−PMOコンジュゲートが、腹腔内投与後のmdxマウスにおいて、いくつかの筋肉タイプで、有意な活性を示すことに注目すべきである24。したがって、PNADMDに対するPip−2aおよびPip−2bコンジュゲート、およびそれに続いてPip−3およびPip−4コンジュゲートが、直接筋肉注射以外の送達経路、例えば腹腔内または静脈内経路によって、有意な活性を示す可能性が高いと推定するのが合理的であり、そしてしたがって、こうした実験が進行中である。
【0129】
最終用量25mg/kgで生理食塩水を用いた80μl用量のPNA−ペプチドコンジュゲート(Pip−2b−PNADMDまたは(RXR)4−PNADMD)を、mdxマウスに注射した。CO吸入によって、注射2週間後にマウスを屠殺し、そして組織を取り除き、そして液体窒素で冷却したイソペンタン中で瞬間凍結し(snap−frozen)、そして−80℃で保存した。
【0130】
免疫組織化学およびジストロフィン陽性線維計数:
100μm間隔で、前脛骨筋(TA)、四頭筋、腓腹筋、二頭筋、腹壁および横隔膜筋および心筋の筋肉長の少なくとも2/3から、8μmの切片を切り出した。次いで、ジストロフィン・カルボキシル末端領域に対するポリクローナル抗体2166を用いて、ジストロフィン発現に関して切片を調べた(抗体は、Kay Davies教授のご厚意によって提供された)。Zeiss AxioVision蛍光顕微鏡を用いて、1つの切片中のジストロフィン陽性線維の最大数を計数した。介在する筋肉部分をRT−PCR分析およびウェスタンブロットのため、または免疫組織化学のための連続切片としてのいずれかで収集した。ヤギ抗ウサギIgG Alexa Fluro594(Molecular Probe、英国)によって、ポリクローナル抗体を検出した。
【0131】
タンパク質抽出およびウェスタンブロット
収集した部分を1.5mlのポリプロピレン・エッペンドルフ試験管(Anachem、英国)中、ドライアイス上に置いた。125mmol/l Tris−HCl(pH=6.8)、10%ドデシル硫酸ナトリウム、2mol/l尿素、20%グリセロール、および5% 2−メルカプトエタノールを含有する、150μlのタンパク質抽出緩衝液で、組織部分を溶解した。混合物を5分間煮沸し、そして遠心分離した。上清を収集し、そしてBradfordアッセイ(Sigma、英国)によって、タンパク質濃度を定量化した。陽性対照としての正常C57BL6マウス由来の多様な量のタンパク質、および処置または未処置mdxマウスの筋肉由来の対応する量のタンパク質を、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動ゲル(4%スタッキング、6%分離)上に装填した。試料を80mAで4時間電気泳動し、そして50V、4℃で一晩、ニトロセルロースにトランスファーした。次いで、膜を洗浄し、そして5%スキムミルクでブロッキングし、そしてジストロフィンタンパク質を検出するため、DYS1(ジストロフィンR8反復に対するモノクローナル抗体、1:200、NovoCastra、英国)で、そして装填対照としてβ−アクチニン(モノクローナル抗体、1:5000、Sigma、英国)で探査した(probed)。西洋ワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼ・コンジュゲート化ウサギ抗マウスIgGおよびECLウェスタンブロッティング分析系(Amersham Pharmacia Biosciences、英国)によって、結合一次抗体を検出した。処置mdx筋肉から得たバンドの強度をImage Jソフトウェアによって測定し;定量化はバンド強度および面積に基づき、そしてこれをC57BL6マウスの正常筋肉由来のものと比較する。
【0132】
結果は、どちらのコンジュゲートも、TA、四頭筋、腓腹筋、二頭筋および横隔膜において、中央部有核筋肉線維数の類似の増加を誘導するが、Pip−2b−PNADMDは心臓および腹部で有意により高い線維数を有することを示した(図19)。
【0133】
別のカーゴPMOオリゴヌクレオチドのPipコンジュゲートの合成
PMO 25マーM23D(+7−18)(5’−GGCCAAACCTCGGCTTACCTGAAAT−3’[配列番号206])(PMODMD)は、mdxマウスにおけるエクソンスキッピングに適したオリゴヌクレオチド類似体として一般的に用いられる37、42、43、44。これらの例の多くでは、Bペプチド(配列RXRRBRRXRRBRXB[配列番号207])をPMODMDにコンジュゲート化し、そして裸のPMODMDに比較して、mdxマウスにおいて筋内または静脈内送達によるエクソンスキッピングおよびジストロフィン産生が有意に増進されることが示された。Bペプチド((RXR)XBとは、B単位によるXの2つの置換によってのみ異なる)は、現在、DMD治療のためのPMOと組み合わせたコンジュゲート化の臨床試験開発に関して、主要な候補ペプチドである43
【0134】
本発明者らは、Moultonら45によって記載される方法に基づいた、チオエーテル(チオマレイミド)連結を介したPMOオリゴヌクレオチドのペプチドコンジュゲートの調製法を開発した。この方法は、一端に、アミン反応性N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルを、そしてもう一端にスルフィドリル反応性マレイミド基を含有する、ヘテロ二重官能性クロスリンカーであるN−[γ−マレイミドブチリルオキシエステル(GMBS)の使用を伴う。まず、5’−アミノ連結25マーPMODMD(Gene Tools Inc)の5’−一級アミンを、GMBSとの反応によって活性化した(図20)。続いて、PMOリンカー中間体を、チオマレイミド連結を通じてペプチドに付着させた。しかし、精製は、ヘプタフルオロ酪酸(HFBA)緩衝液の使用を伴う単回HPLC分離を使用しており、Moultonら45によって記載されるものよりもはるかにより単純であった。
【0135】
したがって、20%アセトニトリルを含有する50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)100μl中に1000nmoleのPMODMDを溶解した(10mMストックになる)。100mM GMBSストック溶液をDMSO中で調製した。1.5ml微量遠心管中の10μlの10mM PMODMD溶液に、20%アセトニトリルを含有する50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)13μlを添加した。2μlのGMBS溶液(2倍モル過剰)を添加し、混合物をボルテックスし、そして暗所中、室温で1時間インキュベーションした。750μlの冷アセトン(30倍過剰)を添加して産物を沈殿させ、これを室温で13,000rpmで2分間遠心分離して収集した。デカンテーションによってアセトンを取り除き、そして残渣を空気中で30分間乾燥させた。20%アセトニトリルを含有する50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)30μl中で、PMO−リンカー産物を溶解させた(100%回収されると仮定すると、2mM溶液になる)。20μlの10mMペプチドチオール(2倍モル過剰)を添加し、試験管をボルテックスし、そして暗所中、室温で2時間インキュベーションした。必要であれば、反応混合物を4℃で一晩保存してもよい。次いで、緩衝液A、水中の0.1%HFBA、および緩衝液B、0.1%HFBA中の90%アセトニトリル(勾配:20分間に38〜50%B)を用いた、Jupiter C18カラム(250x10mm)上、260nmでの検出を用いて、産物を精製した。産物を収集し、凍結乾燥し、そして滅菌水中で溶解した。メタノール/クエン酸二アンモニウム中2,6−ジヒドロキシアセトフェノン(20mg/ml)のマトリックスを用いて、Voyager DE Pro上のMALDI−TOF質量分析によって産物を分析した。
【0136】
Pip−5e〜Pip−5o、Pip−2bおよび対照BペプチドをPMODMDのコンジュゲートとして合成した(図18)。
分化H2K mdx細胞におけるエクソンスキッピング(PMOコンジュゲート)
分化H2K mdxマウス細胞に0.5μM、1μmおよび2μMで添加されたコンジュゲートで、エクソンスキッピングレベル(スキッピングされないものに比較したエクソン23欠失の%)を決定し、そしてPip−PNAに関して記載される方法によって、アガロースゲルをスキャニングした。
【0137】
最初の観察は、PMOコンジュゲートに関するエクソン23スキッピングのレベルが、同じPipペプチドが付着したPNAコンジュゲートに関するものの少なくとも2倍であることである(例えば、Pip−5f−PNADMDに比較したPip−5f−PMODMD、図21)。3つの濃度レベルすべての結果を考慮して、特に活性が高いコンジュゲートは、Pip−5e−PMODMDおよびPip−5j−PMODMDであるが、Pip−5m−PMODMDを除くコンジュゲートはすべて、2μM濃度で非常に高いエクソンスキッピング活性を有した。Bペプチド−PMODMDは、優れたPip−5e−PMODMDおよびPip5j−PMODMDコンジュゲートよりわずかにより活性でなかった。エクソンスキッピングレベルを図18に示す。
【0138】
mdxマウスにおける、PMO−コンジュゲートによるエクソンスキッピングおよびジストロフィン発現回復
筋内注射によって、Pip−PMOコンジュゲートのin vivo活性を決定した。生理食塩水(40μl)中、5μgのPMO−ペプチドコンジュゲートをmdxマウスの前脛骨筋内に注射し、そして上述のように注射した2週間後に組織を採取した。
【0139】
試験したPMODMDコンジュゲートのすべて(Pip−2b、Pip−5e、Pip−5f、Pip−5j、Pip−5k、Pip−5l、Pip−5m、Pip−5nおよびPip−5o、ならびにBペプチド対照)は、ジストロフィン陽性線維に関して有意な染色を示した(例えば、Pip−5eおよびPip−5f、図22)。ジストロフィン陽性線維の平均パーセントの計算によって、Pipコンジュゲートのいくつかは、Bペプチドコンジュゲートよりも有意により高い値を有することが示され、特にPip−5eおよびPip−5jならびにPip−5lおよびPip−5nがそうであった(図23)。
【0140】
正常対照と比較して、ウェスタンブロッティングによって、産生されたジストロフィン量を定量化し、そしてPip−5e、Pip−5j、Pip−5lおよびPip−2bは、BペプチドまたはPip−5nよりもはるかにより高いレベルのジストロフィンタンパク質産生を示した(図24)。
【0141】
RT−PCRによって、すべての構築物に関して、エクソンスキッピングの有意なレベルが見られた(データ未提示)。
静脈内投与
また、mdxマウスの尾静脈内への静脈内注射によって、エクソンスキッピングを評価してもよい42。mdxマウスに、最終用量25mg/kgで、生理食塩水とともに80μl用量のPMO−ペプチド・コンジュゲート(Pip5e−PMODMDまたはB−PMODMD)を注射した。CO吸入によって、注射1週間後にマウスを屠殺し、そして組織を取り除き、そして液体窒素で冷却したイソペンタン中で瞬間凍結し、そして−80℃で保存した。
【0142】
上述のように免疫組織化学および線維計数を行った。特に、心臓組織において、ほとんどすべての心筋細胞は、免疫染色によって、そしてRNAレベルで、修正されていることが期待された。
【0143】
心筋において、Pip−5e−PMODMDがB−PMODMDよりも有意により高いジストロフィン産生を有することを示す、予備的データが得られた(データ未提示)。
環状抗癌ペプチドに対するPipペプチドのコンジュゲート化
Pipペプチドは、ペプチドカーゴの細胞送達を増進するのに適切である。
【0144】
キナーゼCDK4は、キナーゼ活性自体に関連しないようである、癌発展に非常に重要な役割を有する。癌細胞において、CDK1がCDK4とほぼ同等に同時発現されるという最近の発見46のため、この関係は、何らかの点で、癌細胞において重要であるが、正常細胞においては重要でないという仮説が導かれている。
【0145】
CDK4の疎水性領域を模倣するペプチドが設計されており(Theryte Ltd)、そしてこれらは弱い抗癌活性を有し、そして癌細胞死を引き起こすことが示されてきている(Theryteの開示されないデータ)。さらなる構造活性研究後、活性化合物、シクロ−[PRPvalklclklalPRG]([配列番号300]−17マーの環状ペプチド、式中、括弧内の小文字はD−アミノ酸であり、そして大文字はL−アミノ酸である)を持つTHR−87が生じてきている。CDK4の位置は細胞核中であると予期されるため、細胞送達そしてしたがって抗癌活性を増進させる目的で、本発明者らは、癌細胞において試験するため、単一D−cys残基からジスルフィド連結を通じて、THR−87をPip−5fペプチドにコンジュゲート化した。
【0146】
5mMの濃度でHPLC等級の水中に環状ペプチドを溶解することによって、THR−87のC末端Cysを活性化した。水性炭酸水素アンモニウム溶液(1M)を添加して、0.1M緩衝液の全体濃度にした。次いで、10当量の2−アルドリチオール溶液(10mg/ml)を添加し、溶液をボルテックスし、そして室温で2時間放置した。緩衝液A、水中の0.1%TFA、および緩衝液B、0.1%TFA中の90%アセトニトリル(勾配:20分間に5%〜35%B)を用いた、Jupiter C18逆相カラム(250x10mm)上、218nmでの検出を用いて、産物をRP−HPLCによって精製した。産物を凍結乾燥し、そして次いで、0.1%TFA中に溶解した。アセトニトリル/3%水性トリフルオロ酢酸溶液中のα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(10mg/ml)のマトリックスを用いて、Voyager DE Pro上のMALDI−TOF質量分析によって産物を分析した。Pip−5fをTHR−87にコンジュゲート化するため、0.1%TFA中の10μl(100nmole)の10mM THR−87溶液を微量遠心管中に入れた。次いで、ホルムアミド(250μl)を添加し、そして試験管をボルテックスした。チオール活性化ペプチド(200nmole)をTHR−87溶液に添加し、そしてボルテックスし、そして次いで、50μlの酢酸アンモニウム(10mM)を添加した。試験管をボルテックスし、そして室温で1時間放置した。緩衝液A、水中の5mM HCl、および緩衝液B、90%アセトニトリル、10%水、5mM HCl(勾配:20分間に10%〜50%B)を用いた、Jupiter C18カラム(250x10mm)上、218nmでの検出を用いて、産物をRP−HPLCによって精製した。産物を凍結乾燥し、そして次いで、水中に溶解した。高速真空を用いて、溶液を乾燥させた(3回)。滅菌水中に残渣を溶解し、そして0.22μmフィルターを通過させた。アセトニトリル/3%水性トリフルオロ酢酸中のα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(10mg/ml)のマトリックスを用いて、Voyager DE Pro上のMALDI−TOF質量分析によって産物を分析した。アミノ酸分析によってペプチド濃度を決定した。
【0147】
Pip−5f−THR−87コンジュゲートは、増進された抗癌活性を有すると予期される。
参考文献
【0148】
【化1−1】

【0149】
【化1−2】

【0150】
【化1−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配置:
N末端[ドメイン1]−[ドメイン2]−[ドメイン3]C末端
を有する、少なくとも3つのドメインで構成される一次配列構造を有するペプチドであって:
(i)ドメイン1が:
RXRRBRRXR[配列番号81]
RBRRXRRBR[配列番号82]、または
RXRRXR[配列番号74]
より選択される配列を含み、
(ii)ドメイン2が:
ILFQ[配列番号86]、または
ILIQ[配列番号202]
より選択される配列を含み、
(iii)ドメイン3が:
RXRBRXR[配列番号159]
RBRXRBR[配列番号162]
RXRRXR[配列番号161]
RXRXRXR[配列番号160]
RXRBRX[配列番号163]
MKWHK[配列番号203]、または
WKWHK[配列番号204]
より選択される配列を含む
式中、X=アミノヘキシル、B=ベータアラニン
前記ペプチド。
【請求項2】
ドメイン2がILFQY[配列番号88]、またはILIQY[配列番号296]より選択される配列を含む、請求項1のペプチド。
【請求項3】
ドメイン2が:
ILFQZ[配列番号89]、または
ILIQZ[配列番号297]
より選択される配列を含む
式中、Z=Iまたはアミノ酸なし、Z=K、dK、H、Rまたはアミノ酸なし、Z=NまたはY
請求項1または2のペプチド。
【請求項4】
ドメイン3が:
MKWHK[配列番号298]、または
WKWHK[配列番号299]
より選択される配列を含む
式中、Z=R、dR、KまたはdK(式中、d=D−アミノ酸)
=R、HまたはK
請求項1〜3のいずれか一項のペプチド。
【請求項5】
ドメイン3が:
dRRMKWHK[配列番号111]
dRHMKWHK[配列番号155]
dRRWKWHK[配列番号157]
dKRMKWHK[配列番号156]、または
dKHWKWHK[配列番号158]
より選択される配列を含む、請求項1〜3のいずれか一項のペプチド。
【請求項6】
ドメイン1が:
(RXR) 式中、n=2、3または4[配列番号74〜76]、または
RXRRXRIdR[配列番号80]
より選択される配列を含む、請求項1〜5のいずれか一項のペプチド。
【請求項7】
天然アミノ酸、XおよびB残基を含めて、最大長30残基を有する、請求項1〜6のいずれか一項のペプチド。
【請求項8】
ドメイン1が6〜11残基の長さを有し、ドメイン2が4〜9残基の長さを有し、そしてドメイン3が4〜15残基の長さを有し、長さに天然アミノ酸、XおよびB残基が含まれる、請求項1〜7のいずれか一項のペプチド。
【請求項9】
配列番号242〜295(図25)の1つより選択される配列を含むか、または該配列からなる、請求項1〜8のいずれか一項のペプチド。
【請求項10】
配列番号242〜295(図25)の1つに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むか、または該配列からなる、請求項1〜8のいずれか一項のペプチド。
【請求項11】
Pip−5e、Pip−5jまたはPip−5l(配列番号230、234または236)の1つのドメイン1〜3またはドメイン1〜4の配列、あるいはPip−5e、Pip−5jまたはPip−5l(配列番号230、234または236)の1つのドメイン1〜3またはドメイン1〜4の配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むか、または該配列からなる、請求項1〜8のいずれか一項のペプチド。
【請求項12】
ILFQZRMKWHK[配列番号113]
ILFQZHMKWHK[配列番号183]
ILFQZRWKWHK[配列番号184]
ILFQZHWKWHK[配列番号185]
ILFQZRXRBRXR[配列番号186]
ILFQZRXRXRXR[配列番号187]
ILFQZRXRRXR[配列番号188]
ILFQZRBRXRBR[配列番号189]
ILFQZRXRBRXR[配列番号190]
ILFQZRXRBRX[配列番号191]
ILIQZRMKWHK[配列番号192]
ILIQZHMKWHK[配列番号193]
ILIQZRWKWHK[配列番号194]
ILIQZHWKWHK[配列番号195]
ILIQZRXRBRXR[配列番号196]
ILIQZRXRXRXR[配列番号197]
ILIQZRXRRXR[配列番号198]
ILIQZRBRXRBR[配列番号199]
ILIQZRXRBRXR[配列番号200]
ILIQZRXRBRX[配列番号201]
式中:
=(RXR) 式中、n=2、3、または4; (RBR) 式中、n=2、3、または4; (R) 式中、m=5、6、7または8; RXRRXRIdR[配列番号80]; RXRRBRRXR[配列番号81];またはRBRRXRRBR[配列番号82];
=Iまたはアミノ酸なし
=K、dK、H、Rまたはアミノ酸なし
=N、Y
=RまたはdR、KまたはdK
式中、d=D−アミノ酸
の1つより選択される配列を含むか、または該配列からなる、請求項1〜8のいずれか一項のペプチド。
【請求項13】
配列番号34〜73(図16)の1つより選択される配列を含むか、または該配列からなる、請求項1〜8のいずれか一項のペプチド。
【請求項14】
配列番号34〜73(図16)の1つに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むか、または該配列からなる、請求項1〜8のいずれか一項のペプチド。
【請求項15】
C末端にリンカー配列をさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項のペプチド。
【請求項16】
リンカー配列がBCys、XCys、Cys、GGCys、BBCys、BXCys、XBCys、BX、またはXBより選択される、請求項15のペプチド。
【請求項17】
カーゴ分子に化学的にコンジュゲート化されている、請求項1〜16のいずれか一項のペプチド。
【請求項18】
コンジュゲート化がペプチドのC末端である、請求項16のペプチド。
【請求項19】
カーゴ分子が、核酸、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)、ロック化核酸(LNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)、ペプチド、環状ペプチド、タンパク質、または薬剤より選択される、請求項17または18のペプチド。
【請求項20】
カーゴ分子が5,000Da未満の分子量を有する、請求項19のペプチド。
【請求項21】
カーゴ分子が、PNADMD[配列番号115]またはPMODMD[配列番号206]あるいはPNADMD[配列番号115]またはPMODMD[配列番号206]の一方に少なくとも90%の配列同一性を有する分子である、請求項19または20のペプチド。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項記載のペプチドを含む、薬学的組成物または薬剤。
【請求項23】
薬学的に許容されうる希釈剤、アジュバントまたはキャリアーをさらに含む、請求項22の薬学的組成物または薬剤。
【請求項24】
疾患の治療法において使用するための請求項1〜21のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項25】
疾患の治療において使用するための薬剤の製造における、請求項1〜21のいずれか一項記載のペプチドの使用。
【請求項26】
患者に、請求項1〜21のいずれか一項記載のペプチドを投与する工程を含む、治療が必要な患者における疾患の治療法。
【請求項27】
疾患が、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、メンケス病、β−サラセミア、前頭側頭型痴呆症、パーキンソン症、脊髄性筋萎縮症、ハンチントン−グリフォード早老症症候群、血管拡張性失調症変異(ATM)、または癌より選択される、請求項22〜24のいずれか一項のペプチド、使用または方法。
【請求項28】
請求項1〜21のいずれか一項記載のペプチドまたはペプチド−カーゴ・コンジュゲートをコードする、単離核酸。
【請求項29】
請求項1〜21のいずれか一項記載のペプチドまたはペプチドカーゴ・コンジュゲートをコードする核酸に機能可能であるように連結された制御配列を有する、核酸ベクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2011−523557(P2011−523557A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512190(P2011−512190)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001261
【国際公開番号】WO2009/147368
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(597166578)メディカル リサーチ カウンシル (60)
【Fターム(参考)】