説明

ペルフルオル有機化合物の医用エマルジョン及びその製法

本発明は、薬剤、特に、血液損失、低酸素性及び虚血性状態を治療するための、血液酸素供給を改善するための及び分離された潅流臓器及び組織を保存するための薬物に関する。本発明の、ペルフルオル有機化合物の医用エマルジョンは、急速に排出可能なペルフルオル有機化合物、例えば、ペルフルオルデカリン、ペルフルオルアクチルブロミド、過弗素化三級アミンの混合物の形で表わされるペルフルオル有機添加剤及び水‐塩分散液の形での燐脂質を含む。前記のペルフルオルデカリン又はペルフルオルアクチルブロミドは、10:1〜1:10の範囲の比率で、急速に排出可能なペルフルオル有機化合物の組成物中に含有される。過弗素化三級アミンの混合物は、ペルフルオロトリプロピルアミン及びその副生成物:シス‐及びトランス‐異性体ペルフルオル‐1‐プロピル‐3,4‐ジメチルピロリドン及びペルフルオル‐1‐プロピル‐4‐メチルピペリジンの混合物の形で表わされる。本発明のエマルジョンの製法は、燐脂質の水‐塩分散液を製造すること、その中のペルフルオル有機化合物を高圧で均一化すること及び最終エマルジョンの加熱殺菌にある。その非凍結状態で+4℃の温度での本発明のエマルジョンの貯蔵寿命は、少なくとも6ヶ月間に等しく、その間は、前記のエマルジョンと生理学的媒体(血液、血漿又は血清)との生物適合性は保存される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物物理学及び医学の分野、特に、血液損失、低酸素症及び虚血状態の治療用及び同様に血液酸素輸送改善及び分離された潅流臓器及び組織の保存用の薬剤に関する。
【0002】
略語、参照、単位及び用語の一覧
界面活性剤 界面‐活性物質
P‐268、F‐268 プロキサノール(Proxanol)268、プルロニック(Pluronic)268
PFD ペルフルオロデカリン
PFMHP ペルフルオロメチルシクロヘキシルピペリジン
PFOB ペルフルオロオクチルブロミド
F1 ペルフルオロトリプロピルアミン及びその副生成物、シス‐及びトランス‐異性体:ペルフルオロ‐1‐プロピル‐3,4‐ジメチルピロリドン及びペルフルオロ‐1‐プロピル‐4‐メチルピペリジンの混合物を表わす有機性液体
PFCs 複数のフルオロカーボン、複数のフルオロカーボン化合物
PFTBA ペルフルオロトリブチルアミン
PFTPA(PAF‐3) ペルフルオロトリプロピルアミン
大豆‐P 大豆燐脂質
卵‐P 卵脂質
n 波長指数
Cv エマルジョン中のフルオロカーボンの容量的含量(ml/dl)
a 平均粒度
λ 波長
Ip リアクトゲニティ(reactogenity)指数
フルオロカーボン化合物のエマルジョンを含有する潅流媒体を開発することにおける成功は、選択されたPFCs及びこれらのPFCsをベースとするエマルジョンの物理‐化学的特性及びその製法にも大きく依存する。
【0003】
薬効目的のPFCsは、異なった系統のフルオロカーボン化合物を表わす。これらは、外観的には、水の約2倍重い極めて高密度を有する澄明な無色の無臭液体である。異常に強力なC‐F結合(485.6KJ/モル)は、これらの化合物の分子間力が極めて弱いという事実に結び付く。弱い分子間力は、それらの異常に強力なガス溶解能力、その内でも血液ガス溶解能力において証明される。
【0004】
PFCsは、強力なC‐F結合の結果として、化学的不活性によって特徴付けられる。それらは水に難溶性であり、生体において代謝的基礎を形成しない。PFCsの化学的不活性は、生物学的不活性とは同一視され得ない。PFCをベースとするエマルジョンの静脈内注射で、これらのエマルジョンは臓器及び組織中に保留され、その滞留時間は、PFCの性質及びエマルジョンの用量に依存する。
【0005】
異なった系統の過弗素化化合物の生物学的特性についての調査により、排出速度は一連の関連した物理‐化学的パラメーター、つまり、構造及び分子量、沸騰温度、蒸気圧及びヘキサン中の臨界溶解温度(T臨界)に依存することが示された。T臨界は、試験されるべき化合物及びヘキサンの同一容量が混合する温度である。T臨界は、脂質中の相対的PFC溶解性の値として考慮され、その値は膜への通過率を特徴付ける。T臨界が低くなればなるほど、化合物がより良好に脂質中に溶け、かつより急速にそれが生体から排出される。第1表に、薬効適用のためのPFCsの選択基準として用いられる物理‐化学的パラメーターを示す。
【0006】
第1表
異なった化合物のヘキサン中の臨界溶解温度(T臨界)、蒸気圧(P)及び半‐分解時間(t1/2)の値[1]。
【0007】
【表1】

【0008】
前記のデータから、T臨界及びt1/2の間の強力な相関を見ることができる。この相関は、蒸気圧については認められない。大部分は、T臨界及び分子量は相互に連結される。PFCsの最適分子量は、460〜520の範囲である。全般的に、薬効的PFCsについて示された全選択基準は相互に矛盾していないが、量的特徴を有する。最近は、ペルフルオロカーボンエマルジョンの開発及び試験に関係する研究者は、比較的限られた数の化合物にかれらの注意を向けている。第2表及び第3表に、最も広範囲のPFCsの構造式及び物理‐化学的主要特性を示す。
【0009】
第2表
最も広範囲で有望なPFVsの構造式
【表2】

【0010】
異なったPFCsの第一の生物学的特性を試験する場合には、重要な要求が公式化された:同一視不可能な混合物の不在。未知特性を有する混合物は、静脈内注射した際に、基本的物質の真の反応状況(臓器内の保留、毒性、生体の異なった系への影響)を歪曲し得る。
【0011】
第3表
薬効的製剤のベースを形成するPFCsの物理‐化学的特性
【表3】

【0012】
注意:PFD/PFTPAは、製剤フルオソル(Fluosol)‐DAのベースである;PFD/PFMHPは、製剤ペルフトラン(Perftoran)について;PFOB/PFDBは、製剤オキシゲント(Oxygent)について。
【0013】
液体PFCsは、種々の水溶性の、生物学的活性物質用の不十分な溶剤である。この理由のために、酸素輸送媒体として適用するためのPFCsは、微細に分配されたエマルジョンが得られるまで、乳化剤水溶液中で分散される。
【0014】
PFCsのガス交換能力は、エマルジョン中の全酸素含量に従って決定される。酸素濃度は、ヘンリーの(Henry's)法則に従い、酸素圧に正比例する。PFCs中のガスの物理的溶解性の原則は、ペルフルオロカーボンにも及ぶ。エマルジョン中に溶解した酸素量はフルオロカーボン相に依存し、粒度には依存しない、即ち、フルオロカーボンエマルジョン中に溶解した酸素量は、各相のガス量値の合計によって計算される数値に概算する(水相中の酸素量プラスPFCs中の酸素量)。また、PFC及び血漿の混合物中の不活性ガス含量は、各相のガス量の合計法則に従う。従って、エマルジョン中の各ガス含量は、画分PFC/H2Oの部分的ガス圧及び容量比によるその溶解性の物理的法則に従って計算され得る。このことは、ペルフルオロカーボンエマルジョン中の酸素含量が高ければ高いほど、その部分圧又はその張力(pO2)及びフルオロカーボン相の比率が高くなる。
【0015】
体に注射する際に、各製剤の特異的(機能的)作用は、LD50値によって及び、主に、リアクトゲニティとして現われる副作用の欠如によっても決定される製剤の適合性によって決定される。PFCエマルジョンのLD50値の大きさは、粒度に極めて依存する。平均粒度は0.2μmを越えてはならない。大粒子(平均粒度0.4μm以上)の比率で3%〜10%の増加は、2つの因子によって言及されるエマルジョンのLD50値を減少させる。ペルフルオロカーボンエマルジョンの可能なリアクトゲニティの検知は、静脈内注射のためのペルフルオロカーボンエマルジョンをベースとする製薬学的形を開発する際に解決されるべきであった最も困難な問題の1つである。リアクトゲニティ製剤を使用する際に、アレルギー反応がヒトに出現することがあり、それは、皮膚の僅かな発赤から呼吸停止及び心拍動停止を伴うアナフィラキシー反応まで、それ自体異なった経緯で現われる。
【0016】
殆どの研究者は、リアクトゲニティが、大抵は、エマルジョンのフルオロカーボンベースの分散のために使用されかつ粒子の周りに(表面的)吸収層を形成する乳化剤の性質に依存するという意見である。第一世代のエマルジョンのリアクトゲニティは、オキシエチレン及びポリオキシプロピレンの非イオン性ブロックポリマー、プルロニックF68(F‐68)によって引き起こされ、かつ天然燐脂質によるその交換は、リアクトゲニティ問題を完全に解決するということが断固として信じられている。この意見は、完全には正しくなく、それというのも、脂肪エマルジョンは、天然燐脂質による安定化にも拘らず、リアクトゲニティを有するからである。ペルフルオロカーボンエマルジョンのリアクトゲニティは、乳化剤及び安定剤としての燐脂質の使用によって簡単には排除され得ない。実際に、PFCエマルジョンのリアクトゲニティは、何よりも、乳化粒子の表面特性によって、即ち、粒子を安定させる乳化剤層の状態によって作用されることが明らかになった。しかし、化学的構造、界面活性剤分子の性質及び分散系の安定性及び可能な二次反応の2つを決定する重要なパラメーターに加えて、界面活性剤とエマルジョン粒子の油核との結合強度、表面上の分子位置、その充填密度、血流中に存在するタンパク質及び他の生物学的活性分子に関する吸収特性の優勢及び最後に、エマルジョン粒子の大きさが役割を果たす。最後のパラメーターが、特に挙げられるべきである。ブロックコポリマー、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンによってのみ安定化された製剤、ペルフトラン及びF‐68に最も近い原型であるプロキサノール中のエマルジョンの平均粒度における減少は、二次反応における急速な減少に結び付く。このことから、エマルジョンの開発、組成及び製法において、表面的現象(2つの不均一系、エマルジョン及び血液又は血漿の相互作用)は、静脈内注射されたエマルジョンの反応に決定的な役割を果たすことが明らかである。これによって、油核及びまた後者と共同する界面活性剤の組成は実験的に選択され、かつ使用される技術の支持性も試験されるべきである。
【0017】
薬効目的のための本発明によるペルフルオロカーボンエマルジョン及びその製法を開発する場合に、各組成及び各技術的要素を、生物学的作用について、動物モデルによって試験した。ペルフルオロカーボンエマルジョンを注射した際に、ウサギのリアクトゲニティ反応は、末梢血液中の中性好性白血球における急速な減少によって表わされることが知られている。ペルフルオロカーボンエマルジョンの可能なリアクトゲニティを評価する場合には、リアクトゲニティ指数Ipを試験中に使用し、この指数は、式: Ip=Ck/Cv に従って計算され、式中のCk及びCvは、対照群及び試験群での初期水準に相対する好中球(%)を示す。5及び20分間後に、Ipが3よりも少ない場合には、リアクトゲニティ確率は最小である[3]。
【0018】
ペルフルオロカーボンエマルジョンを製造するための異なった方法が公知である。ペルフルオロカーボンエマルジョンを含み、その中のペルフルオロカーボンベースは油相である水中油エマルジョンは、エネルギーにおいて高コストで製造される。油相の微分散は超音波によって又は機械的に行なわれる。
【0019】
超音波の作用下に、分散は、2つの理由を有する強力な局部圧変化の摩擦力によって行なわれる。第一に、局部圧縮及び膨張が波の通過と共に液体中で交互に生じる。第二に、空洞現象が起き、即ち、水中に溶けたガスで充填される空洞の形成及び崩壊が起きる。超‐微細エマルジョンを製造するために必要である超音波作用のエネルギー及び力は、分散に加えて、C‐F結合が破壊されるほど大きい。結果として、毒性濃度のF-イオン約3〜5ミリモルがエマルジョンの水相中に出現する。そのような高濃度のF-を有するエマルジョンは、血液置換のために又は潅流臓器を保存することに使用することはできない。過剰なF-イオンを、イオン交換樹脂の通過によって除去することが必要である。超音波によって分散されたエマルジョンの第二の不利な点は、著しく高い分散範囲にあり、それというのも、平均粒度0.1μmで、大きい粒子比率は、0.4μm以上及び0.01μm以下の大きさで見出されるからである。
【0020】
振盪又は強力な攪拌による機械的分散によって、生物医学的適用には受け入れられない1ミリメートル以上の粒度を有する、粗大にしか分散されないエマルジョンが得られる。微細に分配されたエマルジョンを製造するために、高圧下に分散媒体中に微細孔を通じて分散相の物質の強力な通過(押出し)を使用し、その結果として、液体噴射が乱れて小滴が生じる。分散は、圧力勾配及び水圧摩擦力によって行なわれる。エマルジョンは、通例、高圧ホモジナイザー中で製造される。得られるエマルジョンの安定化は、界面活性物質又は乳化剤によって達成される。これらの物質の安定化作用は、2つの理由によって説明される:第一に、相の間の過剰な表面エネルギーでの減少によって又は表面張力の減少によって、第二に、粒子の安定性を保証しかつ粒子の接触又は付着又は凝集を予防する構造的、機械的バリヤー(吸収層)の形成によって。
【0021】
多くの界面活性剤の中で、少数のみが、静脈内注射用の製剤の製造に適用するための要求を満たす(第4表)。
【0022】
第4表
ペルフルオロカーボンエマルジョンの製造のための一般的界面活性物質
【表4】

【0023】
ここで、主に2つの乳化剤、つまり、プロキサノール‐268(プルロニックF‐68)及び天然燐脂質(卵及び大豆燐脂質等)を、ペルフルオロカーボンエマルジョンを製造するために使用する。
【0024】
プロキサノール構造は、極性頭(親水性部分)及び非‐極性尾(疎水性部分)を有する水溶性界面活性剤の特異的な分子特性に相応しない。プロキサノールの場合には、親水性分子特性は、2つのポリオキシドエチレン鎖によって決定され、その水素結合はH2O分子で形成される。ポリプロピレンポリオキシドのメチル基は、その分子の脂肪親和性を必要条件とする。F‐68及びp‐268についてのポリオキシドエチレン/ポリオキシドポリプロピレンの比率は、平均して同一であり、80:20である。これらの乳化剤の安定化作用は、主に、フルオロカーボン粒子の周りの界面‐活性剤分子によって形成される保護膜の立体効果によって作用される。それによって、界面活性剤分子の最大部分は、吸収層で結合される界面活性剤に加えて、水相中で種々のミセル構造を形成し、それらの中で、フルオロカーボン化合物を含有しないそれらも形成する。吸収層中及び水相のミセル中の界面活性剤分子間に動的平衡が存在し、これは、一方で、吸収層の安定化のために要求され、かつ他方で、長期間の貯蔵中で吸収層中の界面活性剤の分子充填密度を妨害する。
【0025】
燐脂質は天然起源の化合物の混合物を表わし、その一般的構造を第4表に示す。燐脂質は水に不溶性であり、同時に、異なったフルオロカーボン化合物に関して脂肪親和性の乏しい物質であるが、それらはホスファチジルコリン粒子の二重層中でPFD及びPFTPAによって部分的に溶解される。水相中での燐脂質及びフルオロカーボン化合物の共同作用は、二重特性を有する。燐脂質のラメラ構造中にフルオロカーボン化合物を含有すること及び(又は)粒子表面に不可逆的に結合される燐脂質の単層を形成することが可能である。不均一粒子は、フルオロカーボン化合物及び燐脂質を含むエマルジョン中で可能であり、即ち、その粒子は燐脂質を含む及び燐脂質を含まない保護層で被覆される。この不均一性は、特殊事情及び/又はフルオロカーボン相に比較して過剰な燐脂質を製造することに原因を帰すことができる。
【0026】
微細に分配されたエマルジョンについて、微細性を減少させる(粒子粗大化)ために決定する機構は、分散媒体を通じるフルオロカーボン化合物の分子の拡散による、小粒子から大粒子の分散相の等温蒸留又は分子物質蒸留である。この方法は、エマルジョンの"オストワルド熟成(Ostwald ripening)"又は"再凝縮"と称する。この方法の推進力は、大粒子に比較して小粒子上への飽和蒸気圧を増大させることである。また、この場合には、重要なパラメーターは、水性媒体中のフルオロカーボン化合物の溶解性の水準である。再凝縮の防止は、ペルフルオロカーボンエマルジョンの抵抗性凝集状態を得るために、即ち、粒子の微細性及び単一性を得るために決定的に重要である。不安定化、つまり、分子拡散及び僅少な凝結及び凝集への主要な方法は、フルオロカーボン相が20容量%以下である、相対的に薄いエマルジョン、及びフルオロカーボン相が50容量%である、もっと高く濃縮されたエマルジョンの特徴的な2つである。
【0027】
ペルフルオロカーボンエマルジョンの安定化方法は公知である。コロイド系の安定化の基本的原則は、それらの分解機構の防止を意味する。PFC/燐脂質をベースとするエマルジョン中の糖及び陰電荷を有する助乳化剤(燐脂質の少数成分)の添加は、吸収層中での界面活性剤分子の立体的相互作用を変化させることによって、及び粒子間の静電気的析力を増加させることによっても粒子の凝結を防止する。
【0028】
分子拡散によって引き起こされるペルフルオロカーボンエマルジョンの主要な分解過程を減少させることは、より高い沸騰温度を有し、この過程を遅延させるフルオロカーボンベースに、二番目に少ない水溶性の成分(付加的なフルオロカーボン化合物)の添加によって達成される。
【0029】
この安定化の原則は、製剤フルオソル‐DA、ペルフトラン及びオキシゲントの開発で使用される。編集されたデータは、挙げられた製剤の組成及び物理‐化学特性に従って、次の表5に表わされる。
【0030】
第5表
製剤フルオソル‐DA(日本)、ペルフトラン(ロシア)及びオキシゲント(USA)の組成に従って編集されたデータ/2/。
【0031】
【表5】

【0032】
最初の2つの製剤において、フルオロカーボン化合物ペルフルオロトリプロピルアミン及びペルフルオロメチルシクロヘキサンピペリジンを、より高い沸騰温度及びより少ない水溶性を有する補足剤として、油相の最大比率を有するペルフルオロデカリンに加える。燐脂質補足剤(フルオソル‐DA)を有する水溶性プルロニックF‐68又はその原型プロキサノール‐268(ペルフトラン)を、乳化剤として使用する。それらは、それらの物理‐化学特性に従って、相互に少し異なっている。それらは第一世代の製剤に属し、その一般的な不利な点は、不十分な安定性の故に、それらを凍結貯蔵しなければならないという事実にある。より高い沸騰温度を有し、より少ない水溶性であるペルフルオロデシルブロミドを、オキシゲント(ペルフルオロオクチルブロミド)のフルオロカーボンベースに加える。第二世代に属するオキシゲントの利点は、非‐凍結状態での貯蔵によって決定される。更に、製剤のフルオロカーボンベースであるペルフルオロオクチルブロミドは、ペルフルオロデカリンと殆ど同じ速度で(t1/2〜4及び7日間に相応する)、生体から急速に排出される。
【0033】
オキシゲントは、組成に関してやや異なっている注入媒体の商標名である。
【0034】
乳化剤は、微細性のために要求されるH2O/PFC系で、表面の中間相張力を低下させることに寄与するだけではない。乳化剤特性における変化は、分子拡散速度に影響し得る。それらの分子中に、弗素化された、疎水性の非‐弗素化の親水性部分を有する弗素化界面活性剤は、今後は有望であると考慮される。フルオロカーボン化合物のための弗素化界面活性剤の合成での大きな成功は、最近、フランスの化学者によって達成された[4]。合成の弗素化界面活性剤の一般的構造は、過弗素化鎖及び極性頭の組み合わせを表わす。炭化水素鎖は、これらの要素の結合として使用される。極性頭は、天然物質又はそれらの誘導体から選択される。極性頭としてアルコール又は糖誘導体を含有する弗素化界面活性剤は、プルロニックF‐68と相乗作用を有する。極性頭として、弗素化界面活性剤中での燐脂質、糖ホスフェート又はホスファチジルコリンの使用は、乳化剤として天然燐脂質を含有するフルオロカーボンエマルジョンの安定性を増加させる。新規の混合弗素化界面活性剤群は、安定化のために提案された[4]。この弗素化界面活性剤群の分子は、2種の直鎖成分、つまり、炭化水素成分及び過弗素化成分のブロックを表わす。これらの化合物の一般式は、次のようである:
CnF2n+1CmH2m+1 又は CnF2n+1CH=CHCmH2m+1
発明者は、これらの分子を"合せ釘(dowel)"と称し、これは文字通り、"ばね"又は"結合要素"を意味する。
【0035】
この意見は、一般的な直鎖RH‐RF構造を有する弗素化界面活性剤の分子が、強化要素の役割を果たし、その炭化水素末端がペルフルオロカーボン粒子を被覆する脂質中に入り込み、かつその他方の弗素化末端が油相中に入り込むこと、即ち、RH‐RF分子が、界面活性剤表面層の接着特性を改善することを説いている。
【0036】
最近は、ペルフルオロデカリン及びペルフルオロオクチルブロミドが、それらが他のフルオロカーボン化合物に比較して生体からより急速に排出されるという理由で、生医学的エマルジョンを製造するための最も受け入れられた化合物である。
【0037】
特許[5、6]が公知であり、この際、血液置換剤の組成物が記載されていて、そのフルオロカーボンベースは、2種(ペルフルオロデカリン/ペルフルオロメチルシクロヘキシルピペリジン又はペルフルオロデカリン/ペルフルオロトリブチルアミン又はペルフルオロオクチルブロミド/ペルフルオロメチルシクロヘキシルピペリジン)、又は3種(ペルフルオロオクチルブロミド/ペルフルオロデカリン/ペルフルオロメチルシクロヘキシルピペリジン又はペルフルオロオクチルブロミド/ペルフルオロデカリン/ペルフルオロトリブチルアミン)又は更に4種(ペルフルオロオクチルブロミド/ペルフルオロデカリン/ペルフルオロメチルシクロヘキシルピペリジン/ペルフルオロトリブチルアミン)のフルオロカーボン化合物の、異なった比率での混合物を表わす。これらの混合物は、水溶性乳化剤プロキサノールP‐268によって分散する。この乳化剤の使用は、前記の混合物をプラスの温度で貯蔵することを可能にさせない。更に、これらの乳化剤は、融解後に、+4°での限定貯蔵期間(せいぜい、1ヶ月間)を有する。このことはそれらの主要な不利な点である。
【0038】
弗素化界面活性剤を有するエマルジョンは、特許‐保護されている。現今では、弗素化界面活性剤を含有するミクロ‐エマルジョン[7]は、それらが生体内で十分には安定していないという理由で、もはや注入媒体として応用されない。混合弗素化界面活性剤により製造されるペルフルオロカーボンエマルジョンの他の組成物は公知であり、前記の界面活性剤は、分子中に弗素親和性部分及び脂肪親和性部分を含有する[8]。これらのエマルジョンは、実際に、平均粒度を、プラスの温度で、しかし、ほんの3ヶ月以内で維持する。
【0039】
リポシン(liposyn)の10%脂肪エマルジョンを、燐脂質給源として、エマルジョン製造に用いる特許[9]が公知である。フルオロカーボン化合物の3群は、フルオロカーボンベースとして特許‐保護されている。ペルフルオロシクロアルカン又はペルフルオロアルキルシクロアルカンは第一群に属する(それらの中で、特に、ペルフルオロデカリン、ペルフルオロメチルデカリン、ペルフルオロペルヒドロフェナントレン)。第二群は、ペルフルオロアルキル‐飽和の複素環状化合物を包含する。第三群は、過弗素化の三級アミン及び実際には、特に、ペルフルオロトリブチルアミン、ペルフルオロトリプロピルアミンを包含する。ペルフルオロオクチルブロミドも、適用可能なフルオロカーボン化合物に属する。しかし、10%リポシンにより安定したペルフルオロデカリンエマルジョンを製造することは未だ不可能である。その最長貯蔵期間は25日間である。
【0040】
もう1つの特許[10]では、卵燐脂質をエマルジョン製造に使用する。フルオロカーボン相の比率は、10〜50容量%の範囲内で変化し、燐脂質のそれは0.5〜7質量%で変化する。その特許では、油相として、広汎な群の化合物から、PFCsの1種、つまり、1〜24個の弗素原子を有するペルフルオロヒドロフェナントレン群、ペルフルオロデカリン、ペルフルオロオクチルブロミド、ペルフルオロメチルアダマンタン及びペルフルオロペルヒドロフェナントレンだけが選択され、使用される。
【0041】
前記の2つの特許における主要な焦点は、製造されたフルオロカーボンエマルジョンの使用によって、異なった臓器及び系を保存するための方法にある。生理学的試験の開始で、エマルジョンを、晶質溶液及び/又は膠質活性物質(アルブミン、ヒドロキシエチル澱粉)と混合させる。提案されたエマルジョンは、実際には、第二世代のエマルジョンに属するが、本質的な欠点を有する。2つの特許では、エマルジョン安定性について、即ち、粒度を長期貯蔵(1ヶ月以上)で維持することについての試験結果は示されない。ここに挙げた2つの特許[9、10]は、この際、原型として見なされる。
【0042】
本発明によるエマルジョンに最も近い原型は、[11]で挙げられたエマルジョンである。原型として見なされるこのエマルジョンは、第二世代に属し、急速に排出される40〜50容量%の量のフルオロカーボン化合物及び5〜10容量%の高沸騰化合物の過弗素化補足剤を含有する。急速に排出されるフルオロカーボン化合物として、ペルフルオロデカリン又はペルフルオロオクチルブロミド(主成分)が使用され、かつ補足剤として、ペルフルオロメチルシクロヘキシルピペリジンが使用される。乳化剤は卵又は大豆燐脂質である。
【0043】
ペルフルオロシクロヘキシルピペリジンは、エマルジョンを安定化させ、主成分(ペルフルオロデカリン又はペルフルオロオクチルブロミド)の分子拡散(再凝縮)速度を減少させ、異なった組成のエマルジョン、つまり、ペルフトランを製造するために使用される。特許[11]から公知のエマルジョンの主要な欠点は、0.2μm以上の比較的大きい平均粒度である。
【0044】
この発明の目的は、エマルジョンの安定性を増加させること、及びエマルジョンの品質を改善すること、即ち、非‐凍結状態で少なくとも6〜12ヶ月間の貯蔵で、生物学的媒体(血液、血漿又は血清)との生物適合性を得ることにある。
【0045】
薬効目的のための本発明によるエマルジョンは、急速に排出されるペルフルオロデカリン又はペルフルオロオクチルブロミド及び過弗素化補足剤及び燐脂質も含有する。このエマルジョンは、混合されたペルフルオロデカリン又はペルフルオロオクチルブロミドの組成物が急速に排出される成分として使用されること、過弗素化補足剤が過弗素化三級アミンの混合物を表わすこと及び燐脂質が水‐塩媒体中の分散液として使用されることを特徴とする。
【0046】
更に、このエマルジョンは、フルオロカーボン化合物の全濃度が、2〜40容量%の範囲にあることを特徴とする。
【0047】
更に、このエマルジョンは、その組成物が急速に排出されるペルフルオロデカリン又はペルフルオロオクチルブロミドを10:1〜1:10の比率で含有すること、過弗素化補足剤がフルオロカーボン化合物の全含量の1%〜50%であり、かつペルフルオロ‐1‐プロピル‐3,4‐ジメチルピロリドン及びペルフルオロ‐1‐プロピル‐4‐メチルピペリジンのシス‐及びトランス‐異性体及び付加的なペルフルオロ‐N‐メチルシクロヘキシルピペリジン及びその副生成物も含有することを特徴とする。
【0048】
更に、このエマルジョンは、水‐塩媒体中の卵及び大豆燐脂質又はこれらの脂質の混合物の分散液を0.2〜5質量%の濃度で含有することを特徴とする。
【0049】
更に、このエマルジョンは、水‐塩媒体中の燐脂質分散液が、燐脂質全含量の1〜15%のアジュバントを含有することを特徴とする。植物油がアジュバントとして使用され、実際には、大豆、ヒマワリ種子又はヒマシ油又はこれらの油の混合物が、有効比率で、2倍又は3倍の混合物として使用される。
【0050】
更に、このエマルジョンは、水‐塩媒体が注射用水中の塩化‐及び燐酸‐ナトリウム及び‐カリウム及び単糖類マンニトールも含有し、水‐塩媒体中の成分濃度が、100〜350モスモル(mosmol)/lの範囲の浸透圧を有することを特徴とする。
【0051】
更に、このエマルジョンは、平均粒度が0.2μmを越えず、0.06〜0.2μmの範囲にあることを特徴とする。
【0052】
均一化による本発明によるエマルジョンの製法は、この方法が、水‐塩媒体中の燐脂質分散液、燐脂質分散液中の均一化、製造されたエマルジョンの加熱殺菌及びその後の、+4℃の温度での非‐凍結状態での少なくとも6ヶ月間の貯蔵を含む多段階を包含することを特徴とする。
【0053】
更に、本発明による製法は、水‐塩媒体中の燐脂質分散液が、少なくとも100atmの高圧での均一化及びその後の殺菌によって製造されることを特徴とする。
【0054】
更に、本発明による製法は、燐脂質分散液中のフルオロカーボン化合物が、300〜650atmの圧力で均一化されることを特徴とする。
【0055】
更に、本発明による製法は、燐脂質分散液及びエマルジョンが100℃の温度で殺菌されることを特徴とする。
【0056】
前記のように、本発明の目的は、エマルジョンの安定性を増加させ、エマルジョン品質を改善し、即ち、非‐凍結状態での6〜12ヶ月間の貯蔵での生物学的媒体(血液、血漿又は血清)中での生物適合性を得ることにある。生物適合性という用語は、異なった変化を包含し、エマルジョンに関して明確にされるべきである。前記の特許[8〜11]では、生物適合性によって、選択されたPFCsの比較的高い排出、エマルジョンが通過潅流される組織及び臓器を保護する能力及び動物に対する比較的低い毒性(貫流血液の少なくとも2容量)が理解される。これらの考えは、相互に排他的ではないが、第一段階、即ち、血流中の血漿及び血液との粒子の相互作用を反映しない。本発明では、生物適合性は、エマルジョンと生物学的媒体(血液、血漿又は血清)との相互作用(反応)の重大性の水準から始まる。この相互作用の結果は、生体内ばかりでなく、特に試験管内での試験で、貯蔵中の吸収層への障害及び血流中へのエマルジョンの浸透を模擬する一連の因子の影響でのエマルジョンの安定化水準によって評価され得る。
【0057】
エマルジョンの品質及び安定性は、通例、粒度に基づいて特徴付けられ、実際には、平均粒度は0.2〜0.3μmを越えるべきではない。そのような研究は、静脈内注射用の生物薬効的な分散化製剤には十分ではない。このことは、フルオロカーボン粒子が外来物質として、血漿中に見出されるタンパク質及び他の化合物分子と、及び血球とも血流中への浸透中に相互作用するという事実に基づいている。相互作用の一般的特徴は、粒子表面の特性に依存している。エマルジョンの機能的活性(ガス輸送機能)は、本質的には、乳化粒子の表面と血液及び血漿との適合性に依存し、それというのも、反応カスケードは、例えば、外来表面上の補体の系活性化中に開始され、前記の反応カスケードは、血管痙縮及び局部血流中の干渉によって引き起こされる。また、試験管内のエマルジョン安定性は、粒子の周りの界面活性剤の吸収層の特性(強度、表面の局在論等)によって大いに影響されることも注目されるべきである。ここで挙げた内容の意味において、エマルジョン安定性の問題は、構造的詳細を評価せずに、粒子試験の化学的コロイド常法によるだけで解明され得る。粒度及び粒子構造の全体についての情報を得ることができる簡単な方法及び研究のこの観点での開発は、極めて時事的である。従って、構造という用語それ自体は、エマルジョンに関して明確にされることが意図される。
【0058】
試験管内及び生体内でのエマルジョン安定性の試験における経過は、構造という用語の拡大及び拡張及び構造の試験法の開発にも結び付けられる。製剤又は物質の安定性という用語は、多様な製剤又はこの物質の特性の安定性によって決定される。エマルジョンの特性を決定するパラメーターは、エマルジョンの安定性を十分には特徴付けない。この側での試験では、エマルジョンの構造の特殊性を考慮するエマルジョンの安定性についての考えが拡大された。
【0059】
炭素エマルジョンの安定性は、通例、貯蔵中のエマルジョン粒度の変更後に評価される。この純粋に化学的なコロイド研究は、不十分である。製剤のベースを表わし、静脈内注射用の使用に意図されるエマルジョンについて、エマルジョン安定性に関する情報は、試験管内試験で極めて重要であるばかりでなく、血流中を通過する際のエマルジョン安定性を予想する可能性である。この情報は、エマルジョン構造についての考えが明確に決定され得る場合に得ることができる。エマルジョンの粒子は、2‐層球状物の形を有し、その中央にPFC(粒子核)があり、その表面上に乳化剤層(外殻)がある[12]。乳化剤の外殻厚は薄く、粒径の5〜10%である。しかし、血流中のエマルジョンの反応(血漿タンパク質及び血球との相互作用、排出速度等)及び長期間貯蔵中の安定性は、粒子の周りの界面‐活性物質の濃度及び状態に極めて依存する。この理由のために、それらの作用又は他の作用の場合で試験されるべき媒体中の粒度及び構造的変化についての情報を、同時に得ることが必要である。
【0060】
注入媒体のベースとしてのエマルジョンにおける構造的変化の理論的説明及び分析について、次の考えが強調されるべきである[13]:
1)エマルジョン及びそれらの変化の"全構造"は、平均粒度及び粒度による分配によって特徴付けられる。
【0061】
2)"微細構造"は、外殻中の乳化剤状態及び乳化剤とPFCsとの相互作用、界面活性剤分子の相互位置、それらの配置、充填密度、酸化度及び構造分子の相状態の程度によって特徴付けられる。
【0062】
今日まで、全研究者は、全体的に不十分である"一般構造"の分析に限定してきたが、それというのも、エマルジョン安定性、生物適合性及び特に、粒子表面特性及び粒子の吸収力が、微細構造によって決定されるからである。
【0063】
本発明によるエマルジョンを原型と比較し、かつ特に、製造されたエマルジョンの異なった貯蔵時間での一般的構造における変化を特徴付けるパラメーターについて試験した。
【0064】
第二に、エマルジョンへの破壊的因子の作用は、評価されるべきエマルジョンの微細構造状態を可能にする条件下に模擬された。つまり、水での希釈の形の"ストレス作用"が使用され、天然エマルジョンに比較したパラメーターにおける特異的変化が受け入れられた。エマルジョンの水希釈は、界面活性剤の吸収層(外殻)と分散媒体中の界面活性剤分子との間の所定の平衡を妨害する。この理由について、準安定系(フルオロカーボンエマルジョン)の安定性を維持すること又はその分解に関する特異的な予想的有意味を有するからである。
【0065】
更に、微細構造における変化及び系モデルとしての血清との接触中のエマルジョンの適合性の変化を試験した(試験管内試験でのエマルジョンの生物適合性の試験)。2種の不均一分散系、血清及びフルオロカーボンエマルジョンの相互作用は、血流中への浸透中の表面粒子特性での変化及び貯蔵中のエマルジョンでの微細構造変化を特徴付ける。一般構造及び微細構造での変化を、12ヶ月間中の同等の期間で試験した。
【0066】
貯蔵中の前記の状態パラメーターでの変化を検知するために、測定中に試験されるべき系への付加的な妨害を導入されない方法及び研究が必要とされた。そうして、光学的試験法が選択され、試験されかつ現像された。
【0067】
一般構造を評価するために、濁り法又は濁りスペクトル法[14]が発明者によって選択された。この方法は、遠心分離及び分別後に試験されるべきエマルジョン中の粒度分布を評価するためにも使用された。フルオロカーボン化合物の周りの吸収層中の界面活性剤分子の相互関係での変化によって引き起こされた、エマルジョンの微細構造での及び粒子表面特性の変化を、生理学的食塩溶液に対して、試験されるべきエマルジョンと血清との相互作用指数(Kτ)を見出すために、間接法で評価した:相対的濁度Kτ=τ1/τ2、τ1及びτ2は、混合物の成分の比率における相応する変化を伴う、血清/エマルジョン及び血清/生理学的食塩溶液の混合物の濁度を意味する[15]。更に、計算及び実測‐τ値は、乳化粒子の自然の恒存性を確認するために比較された:τ計算=ΣNi□τi(ΣNi=1)、τi及びNiは、排出画分の濁度又は比率を意味し、かつτ実験は、分別前の同じエマルジョン試料の濁度を意味する。
【0068】
I.本発明によるエマルジョンの具体的組成物を次に示す。
【0069】
組成物1
エマルジョンは、次の組成:注射用蒸留水中の塩化ナトリウム2ミリモル(115mg/l)、1回‐置換の燐酸二水素カリウム2ミリモル(無水塩310mg/l)、2回‐置換の燐酸二水素ナトリウム7.5ミリモル(無水塩460mg/l)、マンニット318ミリモル(マンニトール58g/l)の水‐塩媒体中の、卵燐脂質及びアジュバントとして、その濃度が卵燐脂質の全含量の15%であるヒマシ油を含有する5%燐脂質分散液で、乳化状態で安定化させた、ペルフルオロデカリン及びペルフルオロオクチルブロミドを比率1:1で含有するフルオロカーボン相(C)40容量%を、フルオロカーボン化合物全含量の50%の量の、ペルフルオロトリプロピルアミン及びその副生成物:ペルフルオロ‐1‐プロピル‐3,4‐ジメチルピロリドン及びペルフロオロ‐1‐プロピル‐4‐メチルピペリジンのシス‐及びトランス‐異性体の混合物としての、過弗素化補足剤と共に含有する。浸透圧は310モスモル/lであった。エマルジョン粒子の平均直径は0.195μmであった。
【0070】
組成物2
組成物1によるエマルジョンは、次の組成:注射用蒸留水中の、1回‐置換の燐酸二水素ナトリウム2ミリモル(無水塩276mg/l)、2回‐置換の燐酸二水素ナトリウム7.5ミリモル(無水塩460mg/l)、マンニット278ミリモル(マンニトール50g/l)の水‐塩媒体中の、大豆燐脂質及びアジュバントとして、その濃度が卵燐脂質の全含量の10%である大豆油を含有する25%燐脂質分散液で、乳化状態で安定化された、ペルフルオロデカリン及びペルフルオロオクチルブロミドを比率10:1で含有するフルオロカーボン相(Cv)20容量%を、フルオロカーボン化合物全含量の25%の量の、付加的なペルフルオロ‐N‐メチルシクロヘキシルピペリジンと共に、ペルフルオロトリプロピルアミン及びその副生成物:ペルフルオロ‐1‐プロピル‐3,4‐ジメチルピロリドン及びペルフロオロ‐1‐プロピル‐4‐メチルピペリジンのシス‐及びトランス‐異性体の混合物としての補足剤と共に含有したことを特徴とした。浸透圧は270モスモル/lであった。エマルジョン粒子の平均直径は0.1μmであった。
【0071】
組成物3
組成物1によるエマルジョンは、次の組成:注射用蒸留水中の、1回‐置換の燐酸二水素ナトリウム1ミリモル(無水塩138mg/l)、2回‐置換の燐酸二水素ナトリウム3.7ミリモル(無水塩230mg/l)、マンニット100ミリモル(マンニトール18g/l)の水‐塩媒体中の、大豆及び卵燐脂質及びアジュバントとして、その濃度が燐脂質の全含量の5%であるヒマワリ種子油を含有する2%燐脂質分散液で、乳化状態で安定化された、ペルフルオロデカリン及びペルフルオロオクチルブロミドを比率1:10で含有するフルオロカーボン相(Cv)15容量%を、フルオロカーボン化合物の全含量の5%の量の、付加的なペルフルオロ‐N‐メチルシクロヘキシルピペリジンと共に、ペルフルオロトリプロピルアミン及びその副生成物:ペルフルオロ‐1‐プロピル‐3,4‐ジメチルピロリドン及びペルフロオロ‐1‐プロピル‐4‐メチルピペリジンのシス‐及びトランス‐異性体の混合物としての補足剤と共に含有したことを特徴とした。浸透圧は105モスモル/lであった。エマルジョン粒子の平均直径は、0.08μmであった。
【0072】
組成物4
組成物1によるエマルジョンは、次の組成:注射用蒸留水中の、1回‐置換の燐酸二水素ナトリウム1ミリモル(無水塩138mg/l)、2回‐置換の燐酸二水素ナトリウム3.7ミリモル(無水塩230mg/l)、マンニット90ミリモル(マンニトール13g/l)の水‐塩媒体中の、卵燐脂質及びアジュバントとして、その濃度が卵燐脂質の全含量の2%であるヒマワリ種子油及び大豆油を含有する2%燐脂質分散液で、乳化状態で安定化された、ペルフルオロデカリン及びペルフルオロオクチルブロミドを比率2:1で含有するフルオロカーボン相(Cv)10容量%を、フルオロカーボン化合物の全含量の0.2%の量の、付加的なペルフルオロ‐N‐メチルシクロヘキシルピペリジンと共に、ペルフルオロトリプロピルアミン及びその副生成物:ペルフルオロ‐1‐プロピル‐3,4‐ジメチルピロリドン及びペルフロオロ‐1‐プロピル‐4‐メチルピペリジンのシス‐及びトランス‐異性体の混合物としての補足剤と共に含有したことを特徴とした。浸透圧は100モスモル/lであった。エマルジョン粒子の平均直径は、0.07μmであった。
【0073】
組成物5
組成物1によるエマルジョンは、次の組成:注射用蒸留水中の、塩化ナトリウム2ミリモル(無水塩115mg/l)、1回‐置換の燐酸二水素ナトリウム2ミリモル(無水塩276mg/l)、2回‐置換の燐酸二水素ナトリウム7.5ミリモル(無水塩460mg/l)、マンニット318ミリモル(マンニトール58g/l)の水‐塩媒体中の、大豆燐脂質及びアジュバントとして、その濃度が大豆燐脂質の全含量の5%である大豆及びヒマシ油を含有する0.2%燐脂質分散液で、乳化状態で安定化された、ペルフルオロデカリン及びペルフルオロオクチルブロミドを比率1:2で含有するフルオロカーボン相(Cv)2容量%を、フルオロカーボン化合物の全含量の10%の量の、付加的なペルフルオロ‐N‐メチルシクロヘキシルピペリジンと共に、ペルフルオロトリプロピルアミン及びその副生成物:ペルフルオロ‐1‐プロピル‐3,4‐ジメチルピロリドン及びペルフロオロ‐1‐プロピル‐4‐メチルピペリジンのシス‐及びトランス‐異性体の混合物としての補足剤と共に含有したことを特徴とした。浸透圧は350モスモル/lであった。エマルジョン粒子の平均直径は、0.06μmであった。
【0074】
組成物6
組成物1によるエマルジョンは、次の組成:注射用蒸留水中の、1回‐置換の燐酸二水素ナトリウム2ミリモル(無水塩276mg/l)、2回‐置換の燐酸二水素ナトリウム7.5ミリモル(無水塩460mg/l)、マンニット200ミリモル(マンニトール36g/l)の水‐塩媒体中の、その濃度が燐脂質の全含量の4%である、大豆燐脂質及びアジュバントとしてのヒマワリ種子、大豆及びヒマシ油を含有する2%燐脂質分散液で、乳化状態で安定化された、ペルフルオロデカリン及びペルフルオロオクチルブロミドを比率4:1で含有するフルオロカーボン相(Cv)10容量%を、フルオロカーボン化合物の全含量の4%の量の、ペルフルオロトリプロピルアミン及びその副生成物:ペルフルオロ‐1‐プロピル‐3,4‐ジメチルピロリドン及びペルフロオロ‐1‐プロピル‐4‐メチルピペリジンのシス‐及びトランス‐異性体の混合物としての補足剤と共に含有したことを特徴とした。浸透圧は225モスモル/lであった。エマルジョン粒子の平均直径は、0.09μmであった。
【0075】
次の第6表において、本発明によるエマルジョンの組成物を、組成物1〜6により表わす。
【0076】
第6表
フルオロカーボンエマルジョンの組成物1〜6
【表6】

【0077】
II 本発明によるエマルジョンの組成物の製法の具体的態様及びエマルジョンの物理‐化学的パラメーターを次に示す。
【0078】
例1 エマルジョンを無菌条件下に製造した。
1.1 製造のために、エマルジョン1lを1%燐脂質分散液に対してPFC10容量%で製造した。
1.2 第一段階分散液製造:無菌の丸底フラスコに、卵脂質の10%アルコール溶液100mlを充填した。アルコールを回転蒸発機で蒸留させた。ヒマシ油1g(アジュバント濃度、卵脂質含量の10%)及び塩水溶液900mlを加えた。
1.3 無発熱原水を、塩水溶液を製造するために使用した。1回‐置換の燐酸二水素ナトリウム、2回‐置換の燐酸二水素ナトリウム及び結晶性マンニットを含有する粉末を、乾燥室中110℃で2時間乾燥させた。その後に、1回‐置換の無水燐酸二水素ナトリウム0.138g、2回‐置換の無水燐酸二水素ナトリウム0.523g及びマンニット50.0gを、無菌条件下に、積層装置中で、無発熱原水1l中に溶かした。得られた塩水溶液を、ミリポール社(Millipor Company)製の孔径0.4μmの無菌フィルターを通して導入させた。
【0079】
1.4 植物油及び塩水溶液の混合物を、乳白黄色の均一懸濁液が得られるまで、機械的に攪拌した。得られた燐脂質懸濁液を高圧ホモジナイザーの無菌容器に加えた。
【0080】
1.5 ホモジナイザーを、先に、過熱水蒸気及びアルコール500mlで殺菌し、無発熱原の熱水500mlで洗浄した。
【0081】
1.6 燐脂質懸濁液を、半透明の均一性液体が得られるまで、100atmの圧力で4時間ホモジナイザーを通して導入させた。得られた分散液をガラス容器中にデカントした。ガラス容器を無菌の不活性ガス(窒素、アルゴン又は窒素と二酸化炭素の混合物)で2〜4分間処理した。
【0082】
1.7 ガラス容器をゴム栓で塞ぎ、アルミニウムキャップで覆った。その後に、容器を100℃で1時間加熱殺菌した。次の製造段階まで、容器を室温で貯蔵した。
【0083】
1.8 PFCsを次の段階で処理した。PFD72mlをPFOB8mlと混合させた。ペルフルオロトリプロピルアミン20mlを、この組成物80ml中に加えた。フルオロカーボンの補足剤と共に、PFD及びPFOBを含む、取得した組成物を、薬用アルコール同容量と混合させた。ペルフルオロカーボン相を、分離ロートによって、より重いアルコールから分離させた。分離された混合物を、無発熱原水3倍容量と混合させ、振盪し、かつ分離ロート中で分離させた(フルオロカーボン比重は水比重を実際に2倍超過する)。
【0084】
1.9 その後に、エマルジョンを製造した。燐脂質分散液900ml及び処理したフルオロカーボン混合物100ml(PFD/PFOB=9/1+PFTPA−20%を含む組成物)をホモジナイザーに加えた。内容物を機械的に攪拌し、500atmの圧力で分散させ、全容量を、乳白光色の次微エマルジョンの半透明で帯黄色の液体が得られるまで、小室に8回流通させた。エマルジョンを、ガラス容器中に各々100mlでデカントさせた。ガラス容器をゴム栓で塞ぎ、アルミニウムキャップで覆った。
【0085】
1.10 容器中のエマルジョンを100℃で1時間加熱殺菌し、その後に冷却し、4℃で1年間貯蔵した。
【0086】
得られたエマルジョンは、次の組成を有した:フルオロカーボン相(Cv)10容量%、PFD対PFOBの比率9/1、フルオロカーボン混合物中のPFTPAの相対含量20%、卵燐脂質の濃度1質量%、ヒマシ油濃度0.1%(アジュバントとして懸濁液中の相対的ヒマシ油含量、卵燐脂質の全含量の10%)。ロット番号1。
【0087】
ロットの粘度を、粘度計測器BΠЖ‐2型により測定し、0.953cP(センチポアズ)であった。フルオロカーボン相の同一含量を有するペルフトランに比較して、粘度は2.5cP(センチポアズ)であった。
【0088】
例2
エマルジョンを、例1と同様の組成で製造した。大豆及びヒマシ油の1:1の比率の混合物をアジュバントとして選択した。エマルジョンは次の組成を有した:Cv10容量%、PFD/PFOB9:1、PFTPAの相対含量20%、卵燐脂質濃度1質量%、相対的アジュバント含量(大豆/ヒマシ油1:1)10%。ロット番号2。
【0089】
例3
エマルジョンを、例1と同様の組成で、しかし、フルオロカーボン含量20容量%を有する800mlの容量で製造した。大豆燐脂質の10%アルコール溶液200mlを、丸底フラスコに加えた。アルコールを回転蒸発機中で蒸留させた。アジュバント(大豆及びヒマシ油1:2の比率で、アジュバント濃度は卵燐脂質の15%)3gを加えた。塩水溶液は、無水の1回‐置換の燐酸二水素ナトリウム0.276g、無水の2回‐置換の燐酸二水素ナトリウム1.046g及びマンニット10.0gを含有した。塩水溶液1lを、アジュバントと共にフラスコに加え、ホモジナイザー中で振盪して分散させ、ガラス容器中にデカントし、例1に置けるように殺菌した。フルオロカーボン相を製造した。PFOB40mlをPFD160mlに加えた。この量から、組成物160mlを取り、PFTPA40mlと混合させた。清浄後に、得られたペルフルオロカーボン混合物を、大豆燐脂質の分散液800mlと共にホモジナイザーに滴加した。得られたエマルジョンをデカントし、殺菌した。
【0090】
エマルジョンは、次の組成を有した:Cv=20容量%、PFD/PFOB比率8:2、PFTPAの相対含量20%、大豆燐脂質濃度2質量%、相対的アジュバント含量(大豆/ヒマシ油1:2)15%。ロット番号3。
【0091】
例4
エマルジョンを、例1におけるように、しかし、PFD対PFOB比率8:2で製造した。PFMHP30mlを組成物170mlに加え、振盪によって混合させ、通常通りに清浄し、大豆燐脂質(例3におけるように得た)及び同じアジュバント:(大豆及びヒマシ油比率1:2で、大豆燐脂質含量の15%の量で)を含む分散液800mlと共にホモジナイザー中に滴加した。エマルジョンを400atmの圧力で分散させた。
【0092】
エマルジョンは、次の組成を有した:C=20容量%、PFD/PFOB比率8:2、PFMPの相対含量15%、大豆燐脂質濃度2質量%、相対的アジュバント含量(大豆/ヒマシ油1:2)15%。ロット番号4。
【0093】
例5
エマルジョンを、卵燐脂質の異なった量の添加を伴うだけで、例1におけるように製造した。卵燐脂質50mlを丸底フラスコに加えた。アルコールを回転蒸発機で蒸発させた。ヒマワリ種子油0.6g及び食塩溶液0.5gを加え、振盪によって混合させ、150atmの圧力で均一化させた。PFD/PFOBの比率5:5での組成物を、PFD25ml及びPFOB25mlの混合によって製造した。混合物49.5mlをPFTPA0.5mlと混合させた。混合物50mlを、清浄後に、卵燐脂質の懸濁液0.95lと共に、ホモジナイザーに加えた。予備懸濁液の均一化を350atmの圧力で行なった。微細分配エマルジョンのデカント及び殺菌は、規定の規則に従って行なわれた。
【0094】
エマルジョンは、次の組成を有した:C=5容量%、PFD/PFOB比率5:5、PFTPAの相対含量1%、卵燐脂質濃度0.5質量%、相対的アジュバント含量ヒマワリ種子油12%。ロット番号5。
【0095】
例6
大豆燐脂質の10%アルコール溶液50mlを、丸底フラスコに加えた。アルコールを前記の方法で蒸留させた。大豆油0.6g及び塩溶液950mlを加えた。混合後に、分散液をホモジナイザー中180atmの圧力で製造した。殺菌後に、分散液を、エマルジョンを製造するために使用した。PFD及びPFOB(比率5:5で)の組成物を、PFD25ml及びPFOB25mlの混合によって製造した。この組成物49.5mlに、PFMHP0.5mlを加えた。アルコール50mlでの清浄後に、混合物を、大豆燐脂質分散液950mlと共にホモジナイザー中で処理した。均一化を、前記のように2段階で、第一段階では、200atmの圧力で、第二段階では、500atmの圧力で行なった。
【0096】
得られたエマルジョンは、次の組成を有した:C=5容量%、PFD/PFOB比率5:5、PFMHPの相対含量1%、大豆燐脂質濃度0.5質量%、相対的アジュバント含量(大豆油)12%。ロット番号6。
【0097】
例7
懸濁液を大豆燐脂質0.2質量%の濃度で製造した。更に、大豆燐脂質のアルコール溶液20mlを回転蒸発機に加えた。アルコールを蒸留させた。アジュバントとして、大豆及びヒマワリ種子油の比率1:1での混合物をそれに加えた。食塩溶液980mlの添加と共に、分散及び殺菌を、例6におけるように行なった。
【0098】
PFD/PFOBの組成物を、PFD4ml及びPFOB16mlの混合(比率2:8で)によって製造した。混合物19mlに、PFMHP1mlを際得た。得られた3成分の混合物20mlを、懸濁液980mlと共に均一化させた。均一化は、前例におけるように行なわれた。殺菌及びデカントは、標準方法で行なわれた。
【0099】
得られたエマルジョンは、次の組成を有した:Cv=20容量%、PFD/PFOB比率2:8、PFMHPの相対含量5%、大豆燐脂質濃度0.2質量%、相対的アジュバント含量(大豆/ヒマワリ種子油1:1)1%。ロット番号7。
【0100】
例8
エマルジョンを製造するために、卵燐脂質の40質量%懸濁液を、5質量%の濃度で製造した。卵燐脂質のアルコール溶液500mlを、フラスコへの添加で加えた。アルコールを蒸留させた。アジュバントとしてのヒマシ油2.5g及び食塩溶液600mlをそれに加えた。混合後に、帯黄‐白色の均一媒体が得られるまで、ホモジナイザー中200atmの圧力で分散化を行なった。殺菌は前記のように行なわれた。
【0101】
組成物を、PFD4ml及びPFOB360ml(比率1:9で)との混合によって製造した。PFMHP40mlを混合物360mlに加えた。得られた3成分混合物400mlを、卵燐脂質懸濁液600mlと共に、2段階で、第一段階では、250atmで、第二段階では、600atmの圧力で均一化させた。殺菌及びデカントは標準方法で行なわれた。
【0102】
エマルジョンは、次の組成を有した:C=40容量%、PFD/PFOB比率1:9、PFMHPの相対含量10%、卵燐脂質濃度5質量%、相対的アジュバント含量(ヒマシ油)5%。ロット番号8。
【0103】
例9
フルオロカーボン相を、PFD40ml及びPFOB360mlから混合させた。80ml(実際に、PFMHP40ml及び有機液体40ml)を混合物320mlに加えた。乳化剤懸濁液は、卵燐脂質4.2質量%、大豆燐脂質4.2質量%及び、ヒマシ油及びヒマワリ種子油を比率9:1で含むアジュバント4.2g、即ち、卵燐脂質の全含量の5%を含有した。
【0104】
エマルジョンを製造するために、懸濁液600mlを3成分の混合物400mlと共にホモジナイザーに加えた。均一化、デカント及び殺菌は、前例におけるように行なわれた。
【0105】
エマルジョンは、次の組成を有した:C=40容量%、PFD/PFOB比率1:9、PFMHP及び有機液体の相対含量20%、燐脂質濃度(卵及び大豆燐脂質1:1)5質量%、相対的アジュバント含量(ヒマシ油及びヒマワリ種子油9:1)0.25%。ロット番号9。
【0106】
第7表
ロット(例1〜9)による得られたエマルジョンの組成
【表7】

【0107】
全ロットの組成を表7に示す。
【0108】
第8表に、平均粒度の試験結果を、自然の(非希釈)及び水‐希釈のエマルジョンについて、異なった貯蔵時間で示す。
【0109】
第8表
例1、3、4、5、8及び9からの自然の及び水‐希釈のフルオロカーボンエマルジョンについての波長指数及び平均粒度
【表8】

【0110】
値nは、最小二乗法により計算された。nの決定における平均誤差二乗は、0.01〜0.03である。その結果、nの決定における誤差=0.3〜1%である。パラメーターnは、濁りスペクトル法の特性関数であり、少なくとも3〜5点により計算される。微細分配エマルジョンについて、nは、平均粒度aと明白に関連される[14]。
【0111】
得られた結果により、平均パラメーターn及びaは、実際に、12ヶ月の貯蔵の場合には、変化しない。ストレス作用としての水希釈は粒度に殆ど影響しない。値aにおける僅かな増加が、大豆燐脂質を有するエマルジョンについて、9〜12ヵ月後に認められた。1年間までの貯蔵で、燐脂質分散液を有するフルオロカーボンエマルジョンの全ロットについての波長指数の変化範囲は、3.4〜2.7であった。これは、0.11から0.15〜0.195までの平均粒度における増加に相応する。
【0112】
粒度により粒子分配を試験するために、試験すべき媒体の分別を使用した。エマルジョンを緩和条件下に(1500rpm)遠心分離させ、3画分に(正確に)分離した:上画分は試料容量の20%、中画分は60%及び低画分は20%(図1)。図1から検知され得るように、原型として用いられる炭素エマルジョンは、粒度により異なる3画分とは別に、遊離燐脂質を含有する軽い画分を有し、その結果として、吸収層の油相に対する弱い結合及び吸収層で結合されない界面活性剤が確証される。各画分について、a及びnの値が測定された。本発明による組成物の分別されたエマルジョンについて挙げられたパラメーターは、1〜12ヶ月間の貯蔵と共に表9に示される。n及びaは、上及び中画分についての貯蔵間に変化を示さないことが明らかである。低画分の場合には、aは、貯蔵時間の増加と共に、粒度において僅かな増加が認められた。このことは、粒度の分配幅における拡張に繋がる。従って、最高分配幅は、0.06〜0.19μmの範囲であった。
【0113】
得られた結果は、自然の及び水‐希釈のエマルジョン(ストレス作用)の平均粒度が、12ヶ月間以内に僅かに増加し、0.20μm以下の許容限界内で留まったことを確証した。
【0114】
第9表
12ヶ月間の貯蔵での、例1,3、4、5、8及び9からのエマルジョンについての粒度の分配幅を特徴付けるパラメーターn及びa(上、中、低=遠心分離後の画分)
【表9】

【0115】
【表10】

【0116】
粒度の分配幅における増加で確認された拡張は、比較的大きい粒子を有するエマルジョンで見出されることによって引き起こされた。12ヶ月間の貯蔵後のエマルジョンの分別中に、低画分での粒度が0.12から0.198μmに増加した。全体で、結果は、オストワルド分解機構(又は分子蒸留)と一致する。そのような比較的大きい粒子の比率は低い(〜10%)ので、このことは、平均粒度での増加を減損させなかった。均等の粒子沈降だけがエマルジョンの分別中に認められたことが強調されるべきであり、その結果として、遊離燐脂質の欠如が1年間の貯蔵後ですら確認される。従って、エマルジョン中の粒子分配は、単一様相で存続した。得られた結果は、1〜12ヶ月間以内の貯蔵で、得られたエマルジョンの全体構造の維持を示す。
【0117】
粒子と血清との相互作用指数Kτは、次の第10表に示され、前記の血清は比率1:1での5%アルブミン溶液の添加によって変性されていた。
【0118】
フルオロカーボンエマルジョンと血清との、エマルジョン微細構造を特徴付ける相互作用は、12ヶ月間の貯蔵について、卵燐脂質を有するフルオロカーボンエマルジョンでの僅かな変化範囲を示した(血清‐エマルジョン比率1:0.05及び1:0.1)。比率が1:0.10に増加する場合には、Kτ及びKτ/2の変化範囲も広くなった。大豆燐脂質を有するフルオロカーボンエマルジョンについては、Kτの小変化範囲が、6ヶ月間までの貯蔵でのみ存続した。前記のように、確認された変化は、多分、エマルジョンの異なった貯蔵時間での連続試験内で血清混合物を規格化することを極めて難しくさせるという事実に基づいている。同時に、特定のより狭い限度内での各ロットについてのエマルジョンと血清との相互作用の変化範囲の維持は、粒子表面特性が、長期間貯蔵(6〜9ヶ月間)で殆ど変化しないことを示す。エマルジョン中の遊離燐脂質の不在での貯蔵終了で、Kτの突然の変化は、粒子と血清の高分子との間の付加的な相互作用の発生によって引き起こされ得る。この仮想を調べるために、フルオロカーボンエマルジョンの構造的全体の評価のための付加的な独立したパラメーターである、濁り度τの実測値及び計算値を計算した(第11表)[13]。
【0119】
第10表
温度+4℃で異なった貯蔵時間のエマルジョンと血清との相互作用指数
【表11】

【0120】
物理的観点から、τは、共同効果及び多重分散が無いならば、少しの粒子の場合において、分散系についての光線の損失の合計を意味する。非希釈及び水‐希釈エマルジョンに関するτの実測値及び計算値の一致は、粒子と血清の高分子との間の相互作用が+4℃で9〜12ヶ月間の貯蔵後ですら殆ど変化せずに存続することを証明する。従って、Kτの突然の変化は、多分、ペルフルオロカーボン/燐脂質の付加的な超分子構造が水性分散剤中に現われ、エマルジョン中と同じフルオロカーボン対燐脂質の比率が生じるという事実と連結している。
【0121】
第11表
異なった貯蔵時間でのエマルジョンの濁り度の実測値及び計算値
【表12】

【0122】
フルオロカーボンエマルジョンの本発明による組成物及び製法の利点について何事かを説明する前に、血流中を流れる際のエマルジョンのガス輸送機能を発揮するための主条件は、粒子の粒子特性の維持及びリアクトゲニティの無いことということを強調すべきである。コロイド化学及び生物理学の観点から、血流へのエマルジョンの通過は、分散剤特性における変化に繋がるべきストレス作用として考慮され得る。この作用は、次の確認、つまり、エマルジョンの希釈及び分散剤中の遊離乳化剤の濃度での減少に繋がり得る(高速相)。この過程の結果として、粒子表面への界面活性剤の分子結合の弱少化が作用される(低速相)。このフルオロカーボンへの界面活性剤の結合の弱少化は、粒子と血漿高分子との接触及び相互作用によって更になお損なわれ、その結果として、吸収層の組成又は粒子破壊が変化され得る。前記の連続法は、簡素化の典型である。
【0123】
この側の試験で、エマルジョンの水での希釈により、第一相、つまり、エマルジョンの希釈及び粒子の周りの遊離乳化剤濃度における減少が仮想される。得られるエマルジョンと血漿との相互作用の試験により、第二相、つまり、粒子表面の特性への血清高分子の接触作用が仮想される。1年間以内の貯蔵ですら、エマルジョン粒子はそれらの微細構造を維持し、水での希釈は粒度に影響せず、その結果として、粒子核、ペルフルオロカーボンへの界面活性剤の吸収層の強力な結合が確認されたことが明らかであった。また、エマルジョン粒子と血清との相互作用指数(測定誤差の限界内)が変化なく維持され、その結果として、粒子表面特性の維持が確立された。計算値τ(分別後)は、実測値(分別前)と一致し、その結果として、粒子特性(粒子構造)の維持及びエマルジョン中の遊離燐脂質の不在は、1年間の貯蔵後に確証された。
【0124】
使用される規律的研究は、血流を通過する際のエマルジョンの安定性に関する予想の正確性を著しく増加させる。同一組成の幾つかのロットからリアクトゲニティ指数(Ip)の安定性及び決定の平行試験の結果は、前記された内容の確認に用いられる。指数Ipは、方法[3]により決定された。
【0125】
例10
例2による組成物を有する同一エマルジョンの4ロットを製造した:フルオロカーボンベース9±1容量%、PFD対PFOB比率9:1、有機液体の補足剤20%、卵燐脂質1質量%、アジュバント(ヒマシ油及び大豆油1:1)卵燐脂質濃度の8%。
【0126】
次の第12表に、これらのロットのn及びaの値を、異なった貯蔵時間で表わす。
【0127】
第12表
異なった貯蔵時間での同一組成PFD/PFOB/F1/卵燐脂質のエマルジョンの波長指数n及び平均粒度a
【表13】

【0128】
第13表
同一組成PFD/PFOB/F1/卵燐脂質を有するエマルジョンの遠心分離による分別中の、粒度による粒子の分配幅を特徴付ける波長指数n及び平均粒度a
【表14】

【0129】
得られるデータにより、自然の及び水‐希釈のエマルジョンの、全ての場合における平均粒度は、6ヶ月間の貯蔵時間で変化せずに維持され、0.06〜0.17μmの範囲でであった。示された組成の自然の及び水‐希釈のエマルジョンの粒度の分配幅は、示された試験時間で、実際に少しも変化しなかった(第13表)。相対的測定誤差(±10%)に関して、得られたエマルジョンと変性化血清との相互作用指数Kτは、狭い限度内で変化した(次の第14表参照)。
第14表
同一組成PFD/PFOB/F1/卵燐脂質のエマルジョンとアルブミン(80%)で変性された血清との相互作用指数Kτ
【表15】

【0130】
第15表
同一組成PFD/PFOB/F1/卵燐脂質(試験のために、卵燐脂質の分散液を使用した)のエマルジョンのリアクトゲニティ指数
【表16】

【0131】
導かれた結果は、本発明によるエマルジョン及び製法が、非凍結状態での貯蔵中及び試験管内での連続ストレス作用(水‐希釈、アルブミンで富化された血清との相互作用)中に損なわれることなく、エマルジョン微細構造の高品質を可能にすることを確証する。全体的に同一エマルジョンパターンのリアクトゲニティ試験の結果は、仮想試験の結果を確証する。試験での時点ではなく、リアクトゲニティ指数は臨界値3を越えた(第15表参照)。
【0132】
例11
低フルオロカーボン含量5容量%を有するエマルジョンの構造の完全性及びリアクトゲニティの試験
エマルジョンは、次の組成を有した:PFD/PFOB1:1、PFMHP1%、大豆燐脂質0.5%、アジュバントとしての大豆油12%、0.03〜0.12μmの範囲の粒度の分配幅、初期リアクトゲニティ1.61.6ヶ月間の貯蔵後の、4ロットの自然の及び水‐希釈の同一エマルジョンの平均粒度での変化(表16参照)及びリアクトゲニティの変化(表17参照)を試験した。示されたデータから検知可能であるように、本発明により使用される組成物中の粒度での増加及び製法は、低リアクトゲニティが得られることを保証する。
【0133】
第16表
同一組成PFD/PFOB/F1/大豆燐脂質の自然の及び水‐希釈のエマルジョンの波長指数n及び平均粒度a
【表17】

【0134】
第17表
非‐凍結状態での6ヶ月間の貯蔵後の低フルオロカーボン含量を有するエマルジョンのリアクトゲニティIp
【表18】

【0135】
例12
フルオロカーボン10容量%を含有する、18ヶ月間以内のエマルジョンの長期間貯蔵は、PFD/PFOB比率8:2、有機液体20%、卵燐脂質2%及びアジュバントとしてのヒマシ油10%を有する。異なった貯蔵時間及び水希釈での平均粒度の試験結果は、表18に示される。アルブミンで50%まで富化された血清とのエマルジョンの相互作用の開発は、表19に示される。
【0136】
第18表
非‐凍結状態で異なった貯蔵時間での、自然の及び水‐希釈のエマルジョンPFD/PFOB/F1/卵燐脂質の波長指数n及び平均粒度a
【表19】

【0137】
第19表
異なった貯蔵時間でのアルブミン(50%)で変性された血清とのエマルジョンPFD/PFOB/F1/卵燐脂質の相互作用Kτ
【表20】

【0138】
前記のデータから明らかなように、得られるエマルジョンは、測定可能な物理‐化学的特性を維持する。この事実の結果として、18ヶ月間貯蔵後のエマルジョンのリアクトゲニティは1.5である。
【0139】
例13
原型、オキシゲントAF0104(製造社Alliance Therapeutic, USA)及び本発明による方法によって製造されたエマルジョンを、それらの品質に関して比較した。比較は、水希釈での波長指数及び平均粒度における変化の関数として行なわれた。
【0140】
異なった無水フルオロカーボン含量と比較されるべきエマルジョンにおいて、フルオロカーボン対燐脂質の同一比率が維持された。示されたエマルジョンは、製法によって異なる。結果として、エマルジョンPFOB‐2(本発明による製法によって製造された)は、遠心分離後に、遊離燐脂質相を含有せず(図16参照)、吸収層中のオキシゲント及び原型PFO‐1は、遠心分離中に容易に浮かぶ非‐結合の遊離燐脂質を含んだ(図1A参照)。この理由について、オキシゲントの平均粒度は、水でのエマルジョンの希釈中に0.35〜0.15に減少し、燐脂質凝集物及びエマルジョン粒子が分解するからである。
【0141】
原型エマルジョン(PFOB‐1)では、そのような粗凝集物は明らかに失われていた。しかし、それらの存在は、遠心分離結果とは別に、自然の及び希釈されたエマルジョンについて付加的な規則により決定される計算及び実測濁り度パラメーター間の大きな相違を示す。本発明による製法によるエマルジョンについて、実測及び計算濁り度値の実際に完全な一致が認められた(第21表参照)。物理的観点から、決定されるべきパラメーターは、共同効果及び多重散布がない場合に、個々の粒子における光線力の損失の合計を表わす。オキシゲント及び原型についての実測及び計算濁り度値の不一致は、付加的規則の非‐達成、即ち、挙げられた分散系中で粒子と光線束との間で付加的な相互作用が起こることを確証する。この相互作用を、オキシゲント及び原型の水希釈中で明らかに検知することができ、その結果として、粒子型の均一化は達成されないが、フルオロカーボンエマルジョンの粒子に加えて燐脂質の異なったミセル構造は達成される。エマルジョンPFOB‐2及びPFD/PFOB(ロット番号5‐03)について、粒子と光源束との相互作用が、非‐凍結状態での1ヶ月間の貯蔵後ですら付加的規則を達成した。
【0142】

【0143】
図1:製法の機能としての画分中のフルオロカーボンエマルジョンの分離:A原型による(エマルジョンは遊離燐脂質を含有する)、B本発明による方法による(エマルジョンは異なった大きさの粒子だけを含有する)。1、2、3は、上、中及び低画分を意味する。1aは上画分中の遊離燐脂質を意味する。
【0144】
第20表
非希釈及び水‐希釈(1:1)エマルジョンの異なったフルオロカーボンエマルジョンの組成、波長指数n及び平均粒度a
【表21】

【0145】
第21表
付加的規則による実測及び計算濁り度値の一致
【表22】

【0146】
従って、示された例は、原型及び本発明に最も近いエマルジョンと比較して、本発明によるエマルジョンの前記の組成及び前記の製法の完全な一連の利点を示す。このことは、その後の相乗効果なので可能である。
【0147】
1.PFD及びPFOBは主成分として選択され、それというのも、これらのペルフルオロカーボンが、それらの生物学的及び物理‐化学的特性により生物学的に認容可能であることを証明し、かつフルオロカーボン粒子を蓄積する生体からの、即ち、網内系の細胞からの、立証された急速な排出を有するからである。
【0148】
2.有効比率でのPFD及びPFOBの一般使用は混合油相に通じ、その特性は、中枢から末梢へ漸次変化する。このことは、本質的に低い蒸気圧を有する成分中で、低脂肪親和性及び非親水性の三級アミンを使用し(第1表参照)、従って、水相中へのPFD及びPFOBの脂肪親和性分子の拡散を減少させることを可能にする。このことは、エマルジョン分解、オストワルド熟成の主機構の速度を遅くさせ、かつフルオロカーボンエマルジョンの選択された組成の安定性を増加させる。
【0149】
3.エマルジョンの組成へのPFOBの導入は、それらの酸素吸収力を、同一フルオロカーボン含量で拡大させ、付加的なx‐線コントラスト特性を与える。
【0150】
4.PFOB/PFD及び三級アミンの混合物は、粒子の周りの界面活性剤の吸収層のより強力な結合の結果としての最終形態の低粘度に寄与し、その結果として、エマルジョンの水相中の燐脂質の遊離ミセル形態を除くことが可能になる。
【0151】
5.燐脂質に加えて、異なった物理‐化学的特性の油の使用は、少量の燐脂質を有する粒子の周りの稠密な膜様吸収層の形成を促進させ、かつフルオロカーボンを含まないミセル構造を予防する。
【0152】
6.使用される水‐塩媒体の特性は、粒子表面上での陰電荷を保証し、その結果として、貯蔵及び輸送中の粒子の融合を予防する。
【0153】
7.高度に検量されたエマルジョン(狭い粒子分布を有する)の製造を保証する技術的製法に加えて、前記の方法は、分子蒸留を弱め、エマルジョンの高い安定性を促進させる。
【0154】
8.粒子の凝集欠如及び燐脂質のミセル型は、吸収特性及び血流中の補体を活性化させるエマルジョンの特性を保証し、その結果として、低リアクトゲニティが作用され、本発明による組成のエマルジョンの増加された生物適合性が促進される。
【0155】
III 本発明によるエマルジョンの生物薬効的使用のための試験を次に示す。
【0156】
試験1
大量血液置換用のエマルジョンの使用のために、例1(節II)により製造されたフルオロカーボンエマルジョンでの容量置換を、ネムブタール(Nembutal)麻酔法で、体重250〜300gの健康なウイスターラット(n=20)で行なった。大量血液置換後の生存能力及び血液損失の同等化後に得られる肝臓ミトコンドリア収得(方法[16]参照)を測定した。大量血液置換後の膠質浸透圧を保証するために、エマルジョンを、注入前に、ヒトアルブミン20%と、アルブミン1部対エマルジョン6部の比率で混合させ、アルブミン最終濃度3.5%が達成された(エマルジョンはフルオロカーボンの10容量%を有したという事実に対して)。血液置換中、ラットは、透明なプレクシガラスフード下に供給されたFiO=0.5までの酸素で富化された空気を吸入した。フードは、その後に固定された動物の頭部を覆った。血液3.5mlを、静脈洞(右前庭の)から採取し、エマルジョン3.5mlを静脈洞中に注入した。10分間後に、血液3.5mlを採取し、同量のエマルジョンを注入した。採取された量の血液が、平均して、動物の体重の少なくとも3.5%になるまで、この工程を繰り返す;例えば、採取された血液量及び注入されたエマルジョンが、体重250gについて、各々8.8mlであった。血液置換前及びその後に、末梢血管中のヘモグロビン、酸素の部分圧及び動脈及び静脈血液中のpH値を測定した。この連続試験において、血液置換後のヘモグロビン濃度は、平均1.9ほど下がった。対照群(n=20)では、塩化ナトリウム0.15モル及びアルブミン3.5%の溶液を、エマルジョンの代わりに注入した。核磁気共鳴分光計で、末梢血液中のフルオロカーボン含量を測定した。血液置換後に、動物を、FiO=0.5まで酸素で富化された空気を供給した小室中に置いた。
【0157】
試験群(血液置換の)では、全動物は生存し、かつヘモグロビン、赤血球及び白血球値は、5日間以内に、標準値に戻された。対照群では、3頭の動物が死んだ。5日間後に、全動物をネムブタール麻酔下に殺し、ミトコンドリアを肝臓から分離した。肝臓ミトコンドリアの呼吸を、閉鎖された恒温操作小室中27℃で偏光測定法で記録した。活性状態での呼吸率(ATP合成で)及び3‐ヒドロオキシブチレートによるNAD‐依存性基質の酸化でのATP合成率は、スクシネート酸化の20%活性化で、平均して1.5ほど減少したことが確証された。これらのデータは、非常な虚血性障害を確証する。血液置換の5日間後に分離した肝臓ミトコンドリア中で、全呼吸率及びATP合成の、平均して25%の活性化が観察され、その結果として、既往症での重い低酸素症が示された。
【0158】
試験2
全処理を、前例におけるように、しかし、20%フルオロカーボンエマルジョンを使用して行なった。ヘモグロビン含量は、初期値に比べて3倍減少され、平均して血液の65〜70容量%が置換された。採取された血液及び注入された血液置換剤の容量は、体重250gについて、各々12.25mlであった。試験群では、全動物が生存し、対照群では5頭の動物が死んだ。
【0159】
試験3
全処理を例1におけるように行なった。しかし、各群の5頭の動物を、血液置換の6時間後、1日間後及び3日間後に殺した。肝臓ミトコンドリアを分離し、燐酸化呼吸を記録した。対照群において、呼吸率及びNAD‐依存性基質及びスクシネートの酸化での燐酸化の平均50%以上の急速な抑制が確認され、それによって、ミトコンドリアへの重大な虚血性障害が特徴付けられる。試験群では、血液置換の6時間後に燐酸化呼吸の40%活性化が確認され、それは1日間維持され、かつ血液置換の3日間後に多くとも25%であった。そのような変化は、保存され、低酸素症に罹り、虚血には罹らなかった肝臓ミトコンドリアを特徴づける。
【0160】
試験4
この試験は、出血性ショック後のイヌにおける腎臓の保存に関係した。腎臓の保存は、2つの腎臓を取り出された動物への腎臓移植後の腎臓蘇生術によって(試験は、保健省(Health Ministry)の倫理委員会からの特別許可後に行なわれた)及び血液置換の1時間後に、腎臓中のアデニルヌクレオチドの、及びラクテート及びピルベート含量の評価によっても確認された。10頭のイヌを各群において各々5頭のイヌで試験した。
【0161】
試験過程:体重20kgのイヌから、呼吸調整を伴った挿管法麻酔下に、腿動脈から噴出させて血液400mlを除去し、その結果として、急速な圧力低下(50〜60mmQSまで)、二重心臓収縮及び血漿中の20ミリモルまで増加したラクテート濃度が起きた。血液採取の1時間後に、その量が血液損失を15容量%ほど超過する血液置換剤、つまり、試験群では、アルブミン補足剤3.5%までを有する例1による10%炭素エマルジョン(例14におけるように)及び対照群では、血漿増量剤ポリグルシンを動物に供給した。もう1時間後に、動物を殺し、腎臓を取り出した。1つを移植用に、他方を腎臓組織のエネルギー変化を試験するために使用した。
【0162】
対照群では、ATP対ADPの比率が3倍減少し、エネルギー変化([ATP]+1/2[ADP])/([ATP]+[ADP]+[AMP])は0.45に減少した。試験群では(フルオロカーボンエマルジョンによる血液置換)、ATP対ADPの比率は多くて2倍減少し、エネルギー変化は0.65〜0.70に減少した。腎臓組織中のラクテート対ピルベートの比率は、対照群では25〜30に増加し、試験群では多くて6に増加した。
【0163】
全例において、血流中への移植組織の包含直後に、フルオロカーボンエマルジョンで処理されたイヌの移植腎臓を受けた動物で、放尿が認められた。対照群では、急速な組織浮腫及び完全な血流停止(ネフローゼ)を伴った再潅流(reperfusion)損害の展開が、5例の内2例で認められた。対照群の3例で、移植腎臓中の血流が回復した。放尿は数時間後にやっと認められた。
【0164】
これらのデータは、本発明によるフルオロカーボンエマルジョンの使用でのイヌにおける出血性ショックの治療が、虚血性及び連続する再潅流損害からの臓器のより良好な保護を保証することを証明する。
【0165】
試験5
この試験は、潅流されたウサギの心臓を保存するための、例2により製造されたフルオロカーボンエマルジョンの使用に関した。使用前に(1〜2時間)、フルオロカーボンエマルジョン400mlを、クレブス(Krebs)‐ヘンセライト(Henseleit)の等張溶液200mlと、比率2:1で混合させた。血清アルブミンの20%溶液80mlを、混合物600mlに加えた。比較試験用の対照組成物は、マンニトール7.2gの補足剤を有する塩溶液600ml及び20%アルブミン溶液80mlを含んだ。これらの組成物は、ウサギの心臓を保存するための潅流媒体として使用された。ランゲンドルフ(Langendorff)潅流を37℃で循環法により行なった。心臓収縮の拍動及び振幅が維持された時間を記録した。対照及び試験のために、8つの心臓を各々使用した。フルオロカーボンをベースとする潅流液の使用中、分離したウサギの心臓の収縮力は、少なくとも6〜8時間維持された。しかし、対照組成物での潅流中、心臓停止までの収縮の拍動及び振幅での著しい減少が認められた。
【0166】
最後に、本発明によるエマルジョンの利点は、原型及び本発明に最も近いエマルジョンに比較して、次のようであることが挙げられるべきである。
【0167】
フルオロカーボンエマルジョンの本発明による組成及び製法は、フルオロカーボン化合物2〜40容量%を含有し、生理学的に認容可能な水‐塩溶液中の燐脂質分散液で安定化される、0.06〜0.195μmの範囲の規定された粒度を有する微細分配の検量されたエマルジョンを保証する。非‐凍結状態で18ヶ月間の貯蔵を有するフルオロカーボンエマルジョンの高度の微細性及び微細構造の製造が示され、その結果として、低リアクトゲニティで示される高い生物適合性を得ることが可能である。開発されたエマルジョンは生物薬効目的に、つまり、多量の血液損失の代用に、出血性ショックを治療するために、虚血性再潅流損害を防止するために、移植組織のための臓器を治療するためにかつ分離した臓器の潅流保護のために適合可能である。開発されたエマルジョンは、極めて明白な酸素輸送及び流動学的特性を有し、これは、酸素‐依存性ミトコンドリア機能への虚血性損害の予防及び排除、及び血液置換中の組織での好気性エネルギー交換の支持及び出血性ショックの治療も保証する。
【0168】
参考文献


【特許請求の範囲】
【請求項1】
急速に排出されるフルオロカーボン化合物、例えば、ペルフルオロデカリン又はペルフルオロオクチルブロミド、フルオロカーボン補足剤及び燐脂質を含有する薬効目的用のフルオロカーボンエマルジョンにおいて、ペルフルオロデカリン又はペルフルオロオクチルブロミドの組成物は、急速に排出される成分として使用され、この際、フルオロカーボン補足剤は過弗素化三級アミンの混合物を表わし、かつ燐脂質は、水‐塩媒体中の分散液として使用されることを特徴とする、ペルフルオル有機化合物の医用エマルジョン。
【請求項2】
フルオロカーボン化合物2〜40容量%を含有する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項3】
急速に排出されるフルオロカーボン化合物の組成物は、ペルフルオロデカリン及びペルフルオロオクチルブロミドを、10:1〜1:10の比率で含有する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項4】
フルオロカーボン補足剤は、急速に排出されるフルオロカーボン化合物の組成物の全含量の1〜50%を含有する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項5】
過弗素化三級アミンの混合物は、ペルフルオロトリプロピルアミン及びその副生成物、つまり、ペルフルオロ‐1‐プロピル‐3,4‐ジメチルピロリドン及びペルフルオロ‐1‐プロピル‐4‐メチルピペリジンのシス‐及びトランス‐異性体を含有する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項6】
過弗素化三級アミンの混合物は、更に、ペルフルオロ‐N‐メチルシクロヘキシルピペリジン及びその副生成物を含有する、請求項1又は5に記載のエマルジョン。
【請求項7】
0.2〜5質量%の濃度で水‐塩媒体中の燐脂質分散液を含有する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項8】
水‐塩媒体中の燐脂質分散液は、卵又は大豆燐脂質又はそれらの脂質の混合物を含有する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項9】
水‐塩媒体中の燐脂質分散液は、アジュバントとして、植物油を、燐脂質の全含量の1〜15%の量で含有する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項10】
大豆油はアジュバントとして用いられる、請求項9に記載のエマルジョン。
【請求項11】
ヒマワリ種子油はアジュバントとして用いられる、請求項9に記載のエマルジョン。
【請求項12】
ヒマシ油はアジュバントとして用いられる、請求項9に記載のエマルジョン。
【請求項13】
有効比率で挙げられた油の混合物は、2倍又は3倍の混合物の形で、アジュバントとして用いられる、請求項9に記載のエマルジョン。
【請求項14】
水‐塩媒体の組成物は、塩化ナトリウム及び塩化カリウム及び燐酸ナトリウム及び燐酸カリウム及び単糖類マンニトールも注射用蒸留水中で含有する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項15】
水‐塩媒体中の成分の濃度は、100〜350モスモル/lの範囲の浸透圧を有する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項16】
平均粒度は0.2μmを越えず、0.06〜0.2μmの範囲にある、請求項1から15までのいずれか1項に記載のエマルジョン。
【請求項17】
高圧下での均一化を包含するフルオロカーボンエマルジョンを製造する方法において、多数の段階、つまり、水‐塩媒体中で燐脂質分散液を製造する第一段階、燐脂質分散液中でのフルオロカーボン化合物の均一化の第二段階、製造されたエマルジョンの加熱殺菌の第三段階及び非‐凍結状態で+4℃で少なくとも6ヶ月間の連続貯蔵の第四段階で行なわれることを特徴とする、フルオロカーボンエマルジョンの製法。
【請求項18】
水‐塩媒体中の燐脂質分散液は、少なくとも100atmの高圧での均一化に引き続き、加熱殺菌によって製造される、請求項17に記載の製法。
【請求項19】
燐脂質分散液中のフルオロカーボン化合物は、300〜650atmの圧力で均一化される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
燐脂質分散液は、100℃で殺菌される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
フルオロカーボンエマルジョンは、100℃で殺菌される、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2007−525536(P2007−525536A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501743(P2007−501743)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【国際出願番号】PCT/RU2005/000058
【国際公開番号】WO2005/089739
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(506297131)
【氏名又は名称原語表記】Evgeny Pavlovich Germanov
【住所又は居所原語表記】ul. Godovikova, 2−96, Moscow, 129085, Russian Federation
【出願人】(506297072)
【氏名又は名称原語表記】Irina Nikolaevna Kuznetsova
【住所又は居所原語表記】per. Ulyana Gromova, 8−67, St. Petersburg, 191036, Russian Federation
【出願人】(506297120)
【氏名又は名称原語表記】Evgeny Ilich Maievsky
【住所又は居所原語表記】Microraion AB, 1−17, Puschino, Moskovskaya obl., 142290, Russian Federation
【Fターム(参考)】