説明

ペルフルオロポリエーテル側基を有する反応性フッ素化コポリマーを用いたコーティング組成物

各種の基材に、疎水性、疎油性、染み抵抗性、またはそれらの組合せを付与するために使用することができる、コーティング組成物が記載されている。コーティング組成物には、アミノ樹脂と反応性フッ素化コポリマーとが含まれる。その反応性フッ素化コポリマーには、ペルフルオロポリエーテル側基、さらにはアミノ樹脂と反応することが可能な側基が含まれる。その反応性フッ素化コポリマーのペルフルオロポリエーテル側基は、少なくとも750g/モルの分子量を有する。そのコーティング組成物を使用した物品および物品の調製方法もまた記載されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
フルオロケミカルは、各種の材料に対して疎水性、疎油性、および染み抵抗性のような性質を付与するために使用されてきた。たとえば、過フッ素化エーテル化合物は、布地にそれらの性質を付与するために用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
過フッ素化エーテル化合物はそのような効果を有してはいるが、それらの化合物のいくつかのものが、分解してより低分子量の物質となったり、あるいはそれらの化合物のいくつかが、生体から迅速には排出されない可能性のある、より低分子量の化合物を含んでいたりするという点で、問題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0003】
アミノ樹脂と、ペルフルオロポリエーテル側基、さらにはそのアミノ樹脂と反応することが可能な側基を有する反応性フッ素化コポリマーとを含むコーティング組成物が提供される。反応性フッ素化コポリマー中に含まれるペルフルオロポリエーテル基、またはそれらのペルフルオロポリエーテル基の分解生成物は、生体から効果的に排出されることが可能であると考えられる。そのコーティング組成物は、基材に対して疎水性、疎油性、汚れ抵抗性、染み抵抗性、撥水・撥油性、溶媒抵抗性、クリーニングの容易さ、またはそれらの組合せを付与するために使用することができる。
【0004】
本発明の一つの態様では、反応性フッ素化コポリマーとアミノ樹脂とを含むコーティング組成物を提供する。その反応性フッ素化コポリマーには、ペルフルオロポリエーテル側基、さらにはアミノ樹脂と反応することが可能な側基が含まれる。その反応性フッ素化コポリマーは、ペルフルオロポリエーテルモノマーおよび架橋性モノマーを含むモノマー混合物からの反応生成物である。そのペルフルオロポリエーテルモノマーは式I:
f1O[Rf2O]n[Rf3O]m(Rf4)AQC(R1)=CH2

[式中、Rf1は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロアルキルであり;Rf2は、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンであり;Rf3は、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンであり;Rf4は、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンであり;Aは、カルボニルオキシまたはカルボニルイミノであり;Qは、アルキレン、ヒドロキシ置換アルキレン、ヘテロアルキレン、ヒドロキシ置換ヘテロアルキレン、アリーレン、ヒドロキシ置換アリーレン、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、オキシ、イミノ、またはそれらの組合せから選択される、2価の結合基であり;R1は、1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり;nは2〜25の整数であり;mは、0以上25までの整数であり;そして、ペルフルオロポリエーテル基、Rf1O[Rf2O]n[Rf3O]m(Rf4)−の少なくとも90重量パーセントは、少なくとも750g/モルの分子量を有する]のものである。その架橋性モノマーは、ヒドロキシ官能性モノマー、酸官能性モノマー、酸官能性モノマーの塩、またはそれらの組合せから選択される。
【0005】
本発明の別な態様では、基材とその基材の主表面に塗布された硬化組成物とを有する物品、およびその物品を調製するための方法を提供する。その硬化組成物は、反応性フッ素化コポリマーとアミノ樹脂との反応生成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
アミノ樹脂と反応性フッ素化コポリマーとを含むコーティング組成物が提供される。その反応性フッ素化コポリマーには、ペルフルオロポリエーテル側基、さらにはアミノ樹脂と反応することが可能な側基が含まれる。その反応性フッ素化コポリマーのペルフルオロポリエーテル側基は、少なくとも750g/モルの分子量を有する。
【0007】
定義
本明細書で使用するとき、単数形(「a」、「an」、「the」)は「少なくとも1つ」と置きかえ可能に使用され、記述された要素の1つまたは複数を意味する。
【0008】
本明細書で使用するとき、「アルキル」という用語は、アルカンの1価ラジカルを指す。そのアルキルは、直鎖状、分岐状、環状、またはそれらの組合せであってよく、典型的には1〜30個の炭素原子を含む。いくつかの実施態様においては、そのアルキル基には、1〜20、1〜14、1〜10、4〜10、4〜8、1〜6、または1〜4個の炭素原子を含む。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチル、n−ヘプチル、およびエチルヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0009】
本明細書で使用するとき、「アルキレン」という用語は、アルカンの2価ラジカルを指す。そのアルキレンは、直鎖状、分岐状、環状、またはそれらの組合せであってよい。そのアルキレンには典型的には1〜200個の炭素原子が含まれる。いくつかの実施態様においては、そのアルキレンには、1〜100、1〜80、1〜50、1〜30、1〜20、1〜10、1〜6、または1〜4個の炭素原子が含まれる。そのアルキレンのラジカル中心は、同一の炭素原子上にあってもよいし(すなわち、アルキリデン)異なった炭素原子の上にあってもよい。
【0010】
本明細書で使用するとき、「アルコキシカルボニル」という用語は、式−(CO)ORの1価の基を指し、ここでRはアルキル基である。一例を挙げれば、エトキシカルボニルである。
【0011】
本明細書で使用するとき、「アリーレン」という用語は、1〜5個の環を有する炭素環芳香族化合物の2価のラジカルを指し、ここでそれらの環は、結合されていても、縮合されていても、またはそれらの組合せとなっていてもよい。いくつかの実施態様においては、そのアリーレン基は、3環まで、2環まで、または1環の芳香族環を有している。たとえば、アリーレン基がフェニレンであってもよい。
【0012】
本明細書で使用するとき、「カルボニル」という用語は、式−(CO)−の2価の基を指すが、ここでその炭素原子は酸素原子に二重結合により結合している。
【0013】
本明細書で使用するとき、「カルボキシ」という用語は、式−(CO)OHの1価の基を指す。
【0014】
本明細書で使用するとき、「カルボニルイミノ」という用語は、式−(CO)NRd−の2価の基を指すが、ここでRdは水素またはアルキルである。
【0015】
本明細書で使用するとき、「カルボニルオキシ」という用語は、式−(CO)O−の2価の基を指す。
【0016】
本明細書で使用するとき、「フルオロカルボニル」という用語は、式−(CO)Fの1価の基を指す。
【0017】
本明細書で使用するとき、「ヘテロアルキレン」という用語は、1個または複数の炭素原子が硫黄、酸素、またはNRdで置換された2価のアルキレンを指すが、ここでRdは水素またはアルキルである。そのヘテロアルキレンは、直鎖状、分岐状、環状、またはそれらの組合せであってよく、400個までの炭素原子、そして30個までのヘテロ原子を含むことができる。いくつかの実施態様においては、そのヘテロアルキレンが、300個までの炭素原子、200個までの炭素原子、100個までの炭素原子、50個までの炭素原子、30個までの炭素原子、20個までの炭素原子、または10個までの炭素原子を含む。
【0018】
本明細書で使用するとき、「イミノ」という用語は、式−NRd−の2価の基を指すが、ここでRdは水素またはアルキルである。
【0019】
本明細書で使用するとき、「オキシ」という用語は、式−O−の2価の基を指す。
【0020】
本明細書で使用するとき、「ペルフルオロアルキル」という用語は、すべての水素原子がフッ素原子に置換されたアルキル基を指す。
【0021】
本明細書で使用するとき、「ペルフルオロアルキレン」という用語は、すべての水素原子がフッ素原子に置換されたアルキレン基を指す。
【0022】
本明細書で使用するとき、「ペルフルオロポリエーテル」という用語は、少なくとも2個の炭素原子が酸素原子に置換され、そしてすべての水素原子がフッ素原子で置換されているアルキルである1価の基を指す。それらの酸素原子は少なくとも1個の炭素原子により分断されている。
【0023】
本明細書で使用するとき、「反応性フッ素化コポリマー」という用語は、アミノ樹脂と反応することが可能な側基を有するコポリマーを指す。側基には、ヒドロキシ、酸基、酸基の塩、またはそれらの組合せが含まれる。
【0024】
コーティング組成物
コーティング組成物には、アミノ樹脂と反応性フッ素化コポリマーとが含まれる。その反応性フッ素化コポリマーは、ペルフルオロポリエーテルモノマーおよび架橋性モノマーを含むモノマー混合物からの反応生成物である。その架橋性モノマーは、ヒドロキシ官能性モノマー、酸官能性モノマー、酸官能性モノマーの塩、またはそれらの組合せから選択される。
【0025】
そのペルフルオロポリエーテルモノマーは式Iで表され:
f1O[Rf2O]n[Rf3O]m(Rf4)AQC(R1)=CH2

ここで、Rf1は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロアルキルであり;Rf2は、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンであり;Rf3は、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンであり;Rf4は、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンであり;Aは、カルボニルオキシまたはカルボニルイミノであり;Qは、アルキレン、ヒドロキシ置換アルキレン、ヘテロアルキレン、ヒドロキシ置換ヘテロアルキレン、アリーレン、ヒドロキシ置換アリーレン、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、オキシ、イミノ、またはそれらの組合せから選択される2価の結合基であり;R1は、水素または1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり;nは、2〜25の整数であり;そしてmは、0〜25の整数である。ペルフルオロポリエーテル基、Rf1O[Rf2O]n[Rf3O]m(Rf4)−の少なくとも90重量パーセントは、少なくとも750g/モルの分子量を有する。
【0026】
式Iにおける基Rf1は、直鎖状または分岐状の1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロアルキルである。いくつかの実施態様においては、Rf1は、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、2〜4個の炭素原子、または3個の炭素原子を有する。代表的なRf1基としては、CF3CF2−、CF3CF2CF2−、CF3CF(CF3)−、CF3CF(CF3)CF2−、CF3CF2CF2CF2−、CF3CF2CF(CF3)−、CF3CF2CF(CF3)CF2−、CF3CF(CF3)CF2CF2−、などが挙げられる。いくつかの例においては、Rf1がCF3CF2CF2−である。
【0027】
基Rf2およびRf3はそれぞれ独立して、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のペルフルオロアルキレン基である。いくつかの実施態様においては、ペルフルオロアルキレン基には1、2、または3個の炭素原子を含む。好適なペルフルオロアルキレン基としては、−CF2−、−CF(CF3)−、−CF2CF2−、−CF(CF3)CF2−、−CF2CF2CF2−、−CF(CF3)CF2CF2−、−CF2CF2CF2CF2−、および−CF2C(CF32−などを挙げることができる。
【0028】
いくつかのペルフルオロポリエーテルモノマーにおいては、mが0に等しく、式Iの中には−Rf3O−基が存在しない。すなわち、その化合物は次式で表され、
f1O[Rf2O]n(Rf4)AQC(R1)=CH2
ここでnは、2〜25の整数である。好適な例としては、−[CF2CF2O]n−(ここでnは4〜25の整数)、−[CF(CF3)O]n−(ここでnは4〜25の整数)、−[CF(CF3)CF2O]n−(ここでnは3〜25の整数)、−[CF2CF2CF2O]n−(ここでnは3〜25の整数)、−[CF(CF3)CF2CF2O]n−(ここでnは2〜25の整数)、または−[CF2CF2CF2CF2O]n−(ここでnは2〜25の整数)などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0029】
別なペルフルオロポリエーテルモノマーにおいては、mが1〜25の整数に等しく、Rf2基がRf3基とは異なっている。[Rf2O]n[Rf3O]m基の例としては、−[CF2O]n[CF2CF2O]m−、−[CF2O]n[CF(CF3)CF2O]m−、−[CF2O]n[CF2CF2CF2O]m−、−[CF2CF2O]n[CF2O]m−、−[CF2CF2O]n[CF(CF3)CF2O]n−、−[CF2CF2O]n[CF2CF2CF2O]m−(ここで、n+mは、少なくとも4の整数に等しい)などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。その他の好適な例としては、−[CF2CF2CF2O]n[CF2CF(CF3)O]m−および[CF2CF2CF2O]n[CF(CF3)CF2O]m−(ここでn+mは、少なくとも3の整数)が挙げられる。
【0030】
式Iにおける基Rf4は、直鎖状または分岐状の1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンである。いくつかの実施態様においては、Rf4は2個または3個の炭素原子を有する。Rf4基の例としては、−CF2−、−CF(CF3)−、−CF2CF2−、−CF2CF2CF2−、CF(CF3)CF2−、などが挙げられる。いくつかの化合物においては、Rf4基が−CF(CF3)−である。
【0031】
いくつかの実施態様においては、ペルフルオロポリエーテルモノマーが、式CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)−(ここでnは3〜25の整数)のペルフルオロポリエーテル基を有する。たとえば、nは、少なくとも4の、少なくとも5の、または少なくとも6の整数である。nの数値の例を挙げれば、25まで、20まで、15まで、10まで、8まで、または7までとすることができる。いくつかのモノマーにおいては、nは、4〜20、5〜15、6〜10、6〜9、6〜8、または6〜7の整数である。
【0032】
式Iにおける基Aは、カルボニルオキシまたはカルボニルイミノである。いくつかの実施態様においては、Aはカルボニルイミノ基である。式Iにおける基Qは、アルキレン、ヒドロキシ置換アルキレン、ヘテロアルキレン、ヒドロキシ置換ヘテロアルキレン、アリーレン、ヒドロキシ置換アリーレン、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、オキシ、イミノ、またはそれらの組合せ、から選択される2価の結合基である。
【0033】
好適なA−Q基としては、以下のものを含むが(これらに限定される訳ではない)、ここでアステリスク(*)印は、ペルフルオロポリエーテル基にA−Qが結合する位置を示している:*−(CO)NRa(CH2uO(CO)−、*−(CO)O(CH2uO(CO)−、*−(CO)NRa(CH2uO(CO)NRa(CO)−、*−(CO)NRa(CH2uO(CO)NRa(CH2uO(CO)−、*−(CO)NRa(CH2uO(CO)NRa(CRa2uAr1−、*−(CO)NRa(CH2u−、*−(CO)O(CH2u−,*−(CO)NRaAr1(CH2u−、または*−(CO)NRa(Ck2kO)p(CO)−、それらは非置換であっても、ヒドロキシで置換されていてもよい。それぞれのuは、独立して1〜12の整数であり;Ar1はアリーレンたとえばフェニレンであり;それぞれのRa基は独立して、水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキルであり;kは1〜3の整数であり;そしてpは1〜10の整数である。いくつかの例においては、Raが水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはヘキシルであり、uが、2、3、4、6、8、10、または11の整数である。
【0034】
式Iにおける基A−Qの具体例としては、*−(CO)OCH2CH(OH)CH2O(CO)−、*(CO)NHCH2CH2O(CO)−、*−(CO)NHCH2−、*−(CO)OCH2−、または*−(CO)N(CH3)CH2CH2O(CO)−などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。いくつかの反応性フッ素化コポリマーにおいては、A−Q基が、*−(CO)NHCH2CH2O(CO)−である。
【0035】
式Iにおける基R1は、水素または1〜4個の炭素原子を有するアルキルとすることができる。いくつかの例においては、R1が水素またはメチルである。
【0036】
ペルフルオロポリエーテルモノマーの例を挙げれば(これらに限定される訳ではない)、CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)−(CO)NRaCH2CH2O(CO)−CH=CH2またはCF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)−(CO)NRaCH2CH2O(CO)−C(CH3)=CH2などがあるが、ここで、nは3〜25であり、Raは水素、メチル、エチル、プロピルまたはブチルである。
【0037】
ペルフルオロポリエーテル基の少なくとも90重量パーセントは、少なくとも750g/モルの分子量を有する。典型的には、ペルフルオロポリエーテル基の分子量は、750〜5000g/モルの範囲である。いくつかのペルフルオロポリエーテルモノマーにおいては、ペルフルオロポリエーテル基の少なくとも90重量パーセントは、750〜3000g/モルの範囲、750〜2500g/モルの範囲、750〜2000g/モルの範囲、または750〜1500g/モルの範囲、の分子量を有する。低い分子量の物質は、たとえば真空蒸留法を用いて除去することができる。
【0038】
反応性フッ素化コポリマーを調製するために使用されるモノマー混合物は、複数のペルフルオロポリエーテルモノマーを含んでいてもよい。いくつかの実施態様においては、そのモノマー混合物には複数のペルフルオロポリエーテルモノマーを含み、それぞれのペルフルオロポリエーテルモノマーは、少なくとも750g/モルの分子量のペルフルオロポリエーテル基を含む。他の実施態様においては、モノマー混合物には、ペルフルオロポリエーテルモノマーの混合物を含み、ペルフルオロポリエーテル基の少なくとも90重量パーセントは、少なくとも750g/モルの分子量を有する。ペルフルオロポリエーテルモノマーの中のペルフルオロポリエーテル基の、たとえば少なくとも93重量パーセント、少なくとも95重量パーセント、少なくとも97重量パーセント、少なくとも98重量パーセント、または少なくとも99重量パーセントが、少なくとも750g/モルの分子量を有する。
【0039】
この反応性フッ素化コポリマーは、生体から効果的に除去することが可能なペルフルオロポリエーテル基を有していると考えられる。このペルフルオロポリエーテル基から形成される可能性のあるフルオロケミカル分解生成物は、生体から効果的に除去することが可能であると考えられる。具体的には、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー化反応生成物から誘導される少なくとも750g/モルの分子量を有するペルフルオロポリエーテル基、またはそのようなペルフルオロポリエーテル基からの分解生成物は、生体から効果的に除去することが可能であると考えられる。
【0040】
ペルフルオロポリエーテルモノマーのペルフルオロポリエーテル部分は、たとえば、ヘキサフルオロプロピレンオキシドをオリゴマー化させて、フルオロカルボニル基末端を有するペルフルオロポリエーテルを形成させることにより、調製することができる。この物質を真空蒸留することにより、750g/モル未満の分子量を有するペルフルオロポリエーテル基を除去することが可能である。そのフルオロカルボニル基は、カルボキシまたはアルコキシカルボニル基に転換させることが可能である。ペルフルオロポリエーテルモノマーは、たとえば、カルボキシ、アルコキシカルボニル、またはフルオロカルボニル末端のペルフルオロポリエーテルを、結合基A−Qおよびエチレン性不飽和基を導入することが可能な反応剤と反応させることによって、調製することができる。好適な反応と反応剤の例は、欧州特許第870 778号明細書および米国特許第3,553,179号明細書にも開示されている(それら特許の開示を、参照により本明細書に援用する)。
【0041】
たとえば、式PF−(CO)NHCH2−CH=CH2のペルフルオロポリエーテルモノマー(ここでPFはペルフルオロポリエーテル基)は、カルボキシまたはアルコキシカルボニル末端の過フッ素化ポリエーテルをH2NCH2CH=CH2と反応させることによって調製することができる。式PF−(CO)NH−C64−CH2CH2=CH2のペルフルオロポリエーテルモノマーは、カルボキシまたはアルコキシカルボニル末端の過フッ素化ポリエーテルをH2N−C64−CH2CH=CH2と反応させることによって調製することができる。カルボキシまたはアルコキシカルボニル末端の過フッ素化ポリエーテルをHOCH2CH2=CH2と反応させることによって、式PF−(CO)OCH2CH=CH2のペルフルオロポリエーテルモノマーが得られる。式PF−(CO)NHCH2CH2O(CO)C(CH3)=CH2のペルフルオロポリエーテルモノマーは、まずカルボキシまたはアルコキシカルボニル末端の過フッ素化ポリエーテルをエタノールアミンと反応させて、アルコール末端のPF−(CO)NHCH2CH2OHを調製し、次いでそのアルコールをメタクリル酸またはメタクリル酸無水物と反応させることによって、ペルフルオロポリエーテルモノマーを調製することができる。同様にして、式PF−(CO)NHCH2CH2O(CO)CH=CH2のペルフルオロポリエーテルモノマーは、まずカルボキシまたはアルコキシカルボニル末端の過フッ素化ポリエーテルをエタノールアミンと反応させて、アルコール末端のPF−(CO)NHCH2CH2OHを調製し、次いでそのアルコールをアクリル酸または塩化アクリロイルと反応させることによって、ペルフルオロポリエーテルモノマーを調製することができる。
【0042】
モノマー混合物中のペルフルオロポリエーテルモノマーの量は典型的には、モノマー混合物中の全てのモノマーと各種連鎖移動剤の重量を基準にして、3〜95重量パーセントの範囲である。いくつかの実施態様においては、そのモノマー混合物には、モノマー混合物中の全てのモノマーと各種連鎖移動剤の重量を基準にして、少なくとも5重量パーセント、少なくとも10重量パーセント、少なくとも15重量パーセント、少なくとも20重量パーセント、少なくとも25重量パーセント、少なくとも30重量パーセント、少なくとも40重量パーセント、または少なくとも50重量パーセントのペルフルオロポリエーテルモノマーを含む。そのモノマー混合物には、モノマー混合物中の全てのモノマーと各種連鎖移動剤の重量を基準にして、90重量パーセントまで、85重量パーセントまで、80重量パーセントまで、75重量パーセントまで、または70重量パーセントまでのペルフルオロポリエーテルモノマーを含む。
【0043】
ペルフルオロポリエーテルモノマーに加えて、反応性フッ素化コポリマーを調製するために使用するモノマー混合物には架橋性モノマーを含む。その架橋性モノマーは、アミノ樹脂と反応することが可能な基を有している。好適な架橋性モノマーとしては、ヒドロキシ官能性モノマー、酸官能性モノマー、酸官能性モノマーの塩、またはそれらの組合せを挙げることができる。いくつかの実施態様においては、それらの官能基は、コーティング組成物中に硬化剤が含まれているような場合には、その硬化剤と反応することもできる。
【0044】
架橋性モノマーは、モノマー混合物中の全てのモノマーと各種連鎖移動剤の重量を基準にして、95重量パーセントまでの量で存在させることができる。たとえば、モノマー混合物には、モノマー混合物中の全てのモノマーと各種連鎖移動剤の重量を基準にして、90重量パーセントまで、80重量パーセントまで、70重量パーセントまで、60重量パーセントまで、50重量パーセントまで、40重量パーセントまで、または30重量パーセントまでの架橋性モノマーを含むことができる。そのモノマー混合物には、モノマー混合物中の全てのモノマーと各種連鎖移動剤の重量を基準にして、少なくとも5重量パーセント、少なくとも10重量パーセント、少なくとも20重量パーセント、少なくとも30重量パーセント、少なくとも40重量パーセント、または少なくとも50重量パーセントの架橋性モノマーを含むことができる。
【0045】
いくつかの例示的な反応性フッ素化コポリマーを調製する場合、そのモノマー混合物には、モノマー混合物中のモノマーと各種連鎖移動剤の重量を基準にして、10〜90重量パーセントのペルフルオロポリエーテルモノマー、および10〜90重量パーセントの架橋性モノマーを含む。他の例示的な反応性フッ素化コポリマーの場合には、そのモノマー混合物には、モノマー混合物中のモノマーと各種連鎖移動剤の重量を基準にして、20〜80重量パーセントのペルフルオロポリエーテルモノマーおよび20〜80重量パーセントの架橋性モノマー、または50〜75重量パーセントのペルフルオロポリエーテルモノマーおよび25〜50重量パーセントの架橋性モノマーを含む。
【0046】
ヒドロキシ官能性架橋性モノマーの例を非限定的に挙げれば、ヒドロキシメチルアクリルアミド、ヒドロキシメチルメタクリルアミド、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、グリセロールアクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、アリルアルコール、ヒドロキシ含有ポリエチレンオキシドをベースとしたモノマー、ならびにそれらの組合せなどがある。
【0047】
好適な酸官能性架橋性モノマーとしては次式の不飽和カルボン酸が挙げられる(これらに限定される訳ではない):
23C=C(R2)(CO)OH
ここで、それぞれのR2は独立して、水素またはC1~6アルキルであり、R3は水素または非置換もしくはカルボキシ基で置換されたC1~6アルキルである。代表的な酸官能性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定される訳ではない。
【0048】
酸官能性架橋性モノマーは、次式で表されるカルボキシアルキルアクリレートであってもよい:
CH2=C(R2)(CO)OCv2v(CO)OH
ここで、R2は水素またはC1~6アルキルであり、添字のvは2〜8の整数である。代表例としては、2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、2−カルボキシプロピルアクリレート、2−カルボキシプロピルメタクリレート、5−カルボキシペンチルアクリレート、5−カルボキシペンチルメタクリレート、などが挙げられる。
【0049】
その酸官能性架橋性モノマーは部分的または完全に中和されて塩を形成していてもよい。好適な塩としては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、またはC1~6アルキル(そのアルキル基は非置換であっても、ヒドロキシで置換されていてもよい)で置換されたアンモニウムイオンから選択される、カチオンを有するものが挙げられる。具体的なカチオンとしては、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ストロンチウムイオン、アンモニウムイオン、およびテトラアルキルアンモニウムイオン(ここでそのアルキル基は非置換であっても、ヒドロキシで置換されていてもよい)(たとえば、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、もしくはジメチルヒドロキシエチルアンモニウムイオン)などが挙げられるが、それらに限定される訳ではない。
【0050】
いくつかの反応性フッ素化コポリマーにおいては、架橋性モノマーの少なくともいくつかは、酸官能性モノマーまたは酸官能性モノマーの塩である。それらの架橋性モノマーを含むコポリマーは、ヒドロキシ官能性架橋性モノマーのみを用いて調製したコポリマーに比較して、水系コーティング組成物の中により溶解しやすい、またはより分散しやすい傾向がある。
【0051】
水溶性のアミノ樹脂を含むコーティング組成物においては、架橋性モノマーの少なくとも幾分かは、典型的には、ヒドロキシ官能性モノマーである。そのようなコーティング組成物は、ヒドロキシ官能性架橋性モノマー無しで調製した硬化組成物に比較して、改良された光学的透明度を有する硬化コーティングを与える。
【0052】
いくつかの用途においては、架橋性モノマーにヒドロキシ官能性モノマーと酸官能性モノマーとを含み、ここでそのモノマー混合物中でのヒドロキシ官能性モノマーの重量パーセントが、酸官能性モノマーの重量パーセントよりも高い。他の用途においては、その架橋性モノマーにヒドロキシ官能性モノマーと酸官能性モノマーの塩とを含み、ここでそのモノマー混合物中でのヒドロキシ官能性モノマーの重量パーセントが酸官能性モノマーの塩の重量パーセントよりも高い。さらに別な用途においては、架橋性モノマーにヒドロキシ官能性モノマー、酸官能性モノマー、および酸官能性モノマーの塩を含み、そのモノマー混合物中のヒドロキシ官能性モノマーの重量パーセントが、酸官能性モノマーと酸官能性モノマーの塩との合計の重量パーセントよりも高い。
【0053】
たとえば、モノマー混合物中のヒドロキシ官能性架橋性モノマーの重量パーセントが、酸官能性架橋性モノマー、酸官能性モノマーの塩、またはそれらの組合せの重量パーセントの、少なくとも1.1倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2.0倍、少なくとも2.5倍、または少なくとも3.0倍とすることができる。
【0054】
反応性フッ素化コポリマーを調製するために使用するモノマー混合物の中に、その他の非フッ素化コモノマーが含まれていてもよい。たとえば、モノマー混合物としては、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の炭化水素エステル、たとえば、n−ブチルメタクリレートまたはアクリレート、イソブチルメタクリレートまたはアクリレート、オクタデシルメタクリレートまたはアクリレート、ラウリルメタクリレートまたはアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートまたはアクリレート、シクロデシルメタクリレートまたはアクリレート、イソボルニルメタクリレートまたはアクリレート、フェニルメタクリレートまたはアクリレート、ベンジルメタクリレートまたはアクリレート、アダマンチルメタクリレートまたはアクリレート、トリルメタクリレートまたはアクリレート、3,3−ジメチルブチルメタクリレートまたはアクリレート、(2,2−ジメチル−1−メチル)プロピルメタクリレートまたはアクリレート、シクロペンチルメタクリレートまたはアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートまたはアクリレート、t−ブチルメタクリレートまたはアクリレート、セチルメタクリレートまたはアクリレート、ステアリルメタクリレートまたはアクリレート、ベヘニルメタクリレートまたはアクリレート、イソオクチルメタクリレートまたはアクリレート、n−オクチルメタクリレートまたはアクリレート、4−エチルシクロヘキシルメタクリレートまたはアクリレート、2−エトキシエチルメタクリレートまたはアクリレート、テトラヒドロピレニルメタクリレートまたはアクリレート、またはそれらの組合せなどを挙げることができる。
【0055】
さらに、非フッ素化コモノマーの例としては、アリルエステルたとえば、酢酸アリルおよびヘプタン酸アリル;アルキルビニルエーテルたとえば、セチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、および2−クロロエチルビニルエーテル;エチレン性不飽和ニトリルたとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−クロロアクリロニトリル、2−クロロメタクリロニトリル、2−シアノエチルアクリレートまたはメタクリレート;スチレンおよびその誘導体たとえば、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−シアノメチルスチレン、ジビニルベンゼン、およびN−ビニルカルバゾール;低級オレフィン炭化水素たとえば、エチレン、プロピレン、イソブテン、3−クロロ−1−イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロブタジエン、ジクロロブタジエン、および2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはそれらの組合せのメタクリレート;塩素含有モノマーたとえば、塩化ビニルまたは塩化ビニリデン;ならびに、ビニルエステルたとえば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルイソブチレート、ビニルスクシネート、ビニルステアレート、およびジビニルカーボネートなどが挙げられる。
【0056】
さらに他の非フッ素化コモノマーの例としては、重合性基を有するシリコーンが挙げられる。好適な物質としては、たとえばアクリレートまたはメタクリレート官能性のシリコーン、たとえば日本国東京の信越化学工業(株)から商品名「X−22−164B]として市販されているものが挙げられる。
【0057】
いくつかの実施態様においては、反応性フッ素化コポリマーを調製するのに使用されるモノマー混合物には、ペルフルオロポリエーテルモノマーに加えて、他のフッ素化モノマーが含まれる。フッ素化コモノマーとしては、次式のものが挙げられるが:
f5−Q1−C(R5)=CH2
ここでRf5は、3〜6個の炭素原子の直鎖状、分岐状、または環状のペルフルオロ脂肪族基であり;R5は、水素または1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり;そしてQ1は、1〜20個の炭素原子を有し、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、スルホニル、スルホニルイミノ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、オキシ、イミノ、またはそれらの組合せの群より選択される、非フッ素化2価結合基である。基Q1には通常、フリーラジカル重合反応を妨害するような官能基を含まない。
【0058】
フッ素化コモノマーの代表例としては、CF3CF2CF2CF2CH2CH2O(CO)CR5=CH2、CF3CF2CF2CF2CH2O(CO)CR5=CH2、CF3CF2CF2CF2SO2N(CH3)CH2CH2O(CO)CR5=CH2、CF3CF2CF2CF2SO2N(C25)CH2CH2O(CO)CR5=CH2、CF3CF2CF2CF2SO2N(CH3)CH2CH2O(CO)CR5=CH2、C613CH2O(CO)CR5=CH2、およびC613CH2CH2O(CO)CR5=CH2(ここでR5は、水素またはメチル)などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0059】
反応性フッ素化コポリマーは一般に、フリーラジカル重合により調製される。その重合反応は、重合開始剤から重合開始用のフリーラジカルを発生させることで、開始される。有用な重合開始剤の例を、非限定的に挙げれば、アゾ化合物たとえば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスバレロニトリル、アゾビス(2−シアノ吉草酸)、および2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩;ヒドロペルオキシドたとえば、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、およびtert−アミルヒドロペルオキシド;ジアルキルペルオキシドたとえば、ジ−tert−ブチルペルオキシドおよびジクミルペルオキシド;ペルオキシエステルたとえば、tert−ブチルペルベンゾエートおよびジ−tert−ブチルペルオキシフタレート;ならびにジアシルペルオキシドたとえば、ベンゾイルペルオキシドおよびラウロイルペルオキシドなどがある。その他の有用な重合開始剤としては、レドックス系たとえば、過硫酸塩と重亜硫酸塩との組合せ、またはアスコルビン酸と過酸化水素との組合せなどが挙げられる。重合反応はさらに、モノマー混合物を化学線照射たとえば紫外線照射に暴露させることによって開始させることも可能である。
【0060】
モノマー混合物中に存在させる重合開始剤の量は、その重合開始剤のタイプと分子量に依存して、各種変化させることができる。重合開始剤は通常、モノマー混合物中の全てのモノマーと各種連鎖移動剤の重量を基準にして、0.1〜5重量パーセントの量で存在させる。たとえば、重合開始剤は、モノマー混合物中の全てのモノマーと各種連鎖移動剤の重量を基準にして、0.1〜3重量パーセント、0.1〜2重量パーセント、または0.1〜1重量パーセントの量とすることができる。
【0061】
重合反応を連鎖移動剤の存在下で行わせ、分子量の調節、反応性フッ素化コポリマーの性質の調節、あるいはそれを組み合わせて実施することができる。連鎖移動剤は通常、重合反応を停止させる機能を有している。使用する連鎖移動剤の量は、モノマー混合物中のモノマー(すなわち、ペルフルオロポリエーテルモノマー、架橋性モノマー、およびその他のコモノマー)の全モルの、0.005〜0.30当量の範囲とすることができる。いくつかの用途においては、使用する連鎖移動剤の量を、モノマー混合物中のモノマーの全モル数あたり、0.01〜0.30当量の範囲、0.005〜0.25当量の範囲、0.01〜0.25当量の範囲、または0.01〜0.20当量の範囲とすることができる。その連鎖移動剤は、50g/モル未満から10,000g/モルを超えるまでの分子量を有していてよい(すなわち、連鎖移動剤は、エタンチオールのような小分子に相当するようなものから、ポリマー材料に相当するようなものまで、広い分子量の範囲とすることができる)。
【0062】
いくつかの実施態様においては、連鎖移動剤には、チオール化合物たとえば、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、n−オクタンチオール、tert−ドデカンチオール、2−メルカプトエチルエーテル、2−メルカプトイミダゾールなどが含まれる。連鎖移動剤が、ポリマー材料たとえば、日本国東京の信越化学工業(株)から商品名「KF−2001」として市販されているメルカプトシリコーンのようなものであってもよい。そのような連鎖移動剤は、アミノ樹脂と反応できるような官能基を有していない。他の実施態様においては、連鎖移動剤が、アミノ樹脂と反応することが可能な官能基を含む。官能性の連鎖移動剤たとえば、3−チオプロピオン酸、2−メルカプトエタノール、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、およびメルカプトプロパンジオールを使用することにより、反応性フッ素化コポリマーの分子量を調節すると同時に、さらなる架橋サイトを得ることができる。
【0063】
共重合反応は、有機フリーラジカル反応に適した各種溶媒の中で実施することができる。モノマーは、溶媒中に各種適切な濃度で存在させることができる。いくつかの実施態様においては、モノマーと各種連鎖移動剤とを合計して、モノマー混合物の全量を基準にして、5〜90重量パーセントの量で存在させる。
【0064】
重合反応のための好適な溶媒の例としては、直鎖状、分岐状、または環状脂肪族の溶媒たとえば、ヘキサン、ヘプタン、およびシクロヘキサン;芳香族溶媒たとえば、ベンゼン、トルエン、およびキシレン;エーテルたとえば、ジエチルエーテルおよびジイソプロピルエーテル;エステルたとえば、酢酸エチルおよび酢酸ブチル;アルコールたとえば、エタノールおよびイソプロパノール;ケトンたとえば、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン;スルホキシドたとえば、ジメチルスルホキシド;アミドたとえば、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミド;ハロゲン化溶媒たとえば、メチルクロロホルム、ヒドロフルオロエーテルたとえばミネソタ州セントポール(St.Paul,MN)の3M・カンパニー(3M Company)から商品名「HFE−7100」および「HFE−7200」として市販されているもの、トリクロロエチレン、トリフルオロエチレン、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)のデュポン・ケミカル・カンパニー(Dupont Cheical Co.)から商品名「フレオン(FREON)」として市販されている溶媒、およびそれらの組合せなどが挙げられる。
【0065】
重合反応は、フリーラジカル重合プロセスに適した温度ならいかなる温度で実施してもよい。温度は典型的には、25℃〜200℃の範囲である。具体的な温度は、溶媒や重合開始剤などのいくつかの変数に依存する。
【0066】
反応性フッ素化コポリマーを水中に分散させてもよい。いくつかの実施態様においては、非フッ素化界面活性剤たとえば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、またはそれらの組合せを用いて、分散体を安定化させる。ノニオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシアルキレン界面活性剤たとえば、ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte,NC)のクラリアント(Clariant)から商品名「エマルソゲン(EMULSOGEN)EPN207」として、およびニュージャージー州ブリッジウォーター(Birdgewater,NJ)のICIから商品名「トゥイーン(TWEEN)80」として市販されている、ポリオキシエチレン界面活性剤が挙げられる。その他のノニオン性界面活性剤としては、オルガノシリコーンたとえば、ウェストバージニア州サウス・チャールストン(South Charleston,WV)のOSi・スペシャルティズ(OSi Specialties)から商品名「シルウェット(SILWET)L−77」として市販されているものが挙げられる。好適なアニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。好適なカチオン性界面活性剤としては、イリノイ州シカゴ(Chicago,IL)のアクゾ・ノーベル・サーフェス・ケミストリー(Akzo Nobel Surface Chemistry)から商品名「アルクワッド(ARQUAD)T−50」および「エトクワッド(ETHOQUAD)18−25」として市販されているものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。両性界面活性剤例を挙げれば、ラウリルアミンオキシドおよびコカミドプロピルベタインなどがある。非フッ素化界面活性剤は通常、反応性フッ素化コポリマーの重量を基準にして、1〜25重量パーセントの量で存在させる。いくつかの用途においては、非フッ素化界面活性剤を、反応性フッ素化コポリマーの重量を基準にして、2〜10重量パーセントの量で存在させる。
【0067】
別な方法として、反応性フッ素化コポリマーを有機溶媒の中に分散または溶解させることも可能である。好適な有機溶媒としては、アルコールたとえば、イソプロパノール、メトキシプロパノール、およびtert−ブタノール;ケトンたとえば、イソブチルメチルケトンおよびメチルエチルケトン;エーテルたとえば、イソプロピルエーテル;エステルたとえば、酢酸ブチルおよび酢酸メトキシプロパノール;ならびに、部分フッ素化溶媒たとえば、3Mから商品名「HFE−7100」および「HFE−7200」として市販されているヒドロフルオロエーテルなどが挙げられる。
【0068】
コーティング組成物のその他の成分は典型的には、反応性フッ素化コポリマーの分散体または溶液と相溶性があるように、選択する。その他の成分を選択して、分散させるかまたは溶解させるかのいずれかをさせることもできる。コーティング組成物中の水または有機溶媒の量は、たとえば所望の固形分含量または粘度レベルに応じて変化させることができる。
【0069】
コーティング組成物中に含まれるアミノ樹脂は、ホルムアルデヒドを尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、またはアセチルグアナミンと反応させて得られる各種広範な物質のいずれであってもよい。そのような化合物は周知であって、たとえば、カーク=オスマー『エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジー(Encyclopedia of Chemical Technology)』第4版、第2巻(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)、2000)、p.604〜637に記載がある。そのような物質の代表例を挙げれば(それらに限定される訳ではない)、メチロール化メラミンたとえば、マサチューセッツ州スプリングフィールド(Springfield,MA)のサーフェス・スペシャルティーズ・インコーポレーテッド(Surface Specialities,Inc.)から商品名「レジメーン(RESIMENE)747」として市販されているもの;メチロール化ベンゾグアミン;メチロール化アセチルグアナミン;メチロール化尿素たとえば、ジメチロール尿素、ジメチロールエチレン尿素、テトラメチロールアセチレン尿素、およびジメチロールプロピレン尿素;テトラヒドロ−5−アルキル−S−トリアゾンのジメチロール誘導体;グリオキサール樹脂たとえば、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素(DMDHEU)およびテトラメチロールグリコルリル;上述のもののメチル化誘導体;ならびに尿素樹脂たとえば、N,N’−ビス(メトキシメチル)尿素などがある。メチロールアクリルアミドおよびメチロールメタクリルアミドポリマーも、このタイプのアミノ樹脂に含まれる。
【0070】
いくつかの用途においては、水性コーティング組成物の中に、水不溶性のアミノ樹脂を使用するのが好ましいが、その理由は、それらによって、貯蔵期間が長くすることができるからである。好適な水不溶性メチロール化メラミンとしては、マサチューセッツ州スプリングフィールド(Springfield,MA)のサーフェス・スペシャルティーズ・インコーポレーテッド(Surface Specialities,Inc.)から商品名「レジメーン(RESIMENE)747」として市販されているようなものが挙げられる。水不溶性のアミノ樹脂のいくつかは、そのコーティング組成物に水溶性の硬化剤を添加することにより、水性コーティング組成物の中に分散または溶解させることが可能となる。すなわち、その硬化剤を用いることにより、水性コーティング組成物には元々不溶性のアミノ樹脂の相溶性を改良することができる。
【0071】
コーティング組成物においては、反応性フッ素化コポリマーとアミノ樹脂を、各種適切な重量比で使用することができる。コーティング組成物における反応性フッ素化コポリマーのアミノ樹脂に対する重量比は、典型的には50:50以下である。いくつかの実施態様においては、反応性フッ素化コポリマーのアミノ樹脂に対する重量比は、45:55以下、40:60以下、35:65以下、30:70以下、25:75以下、20:80以下、15:85以下、10:90以下、5:95以下、4:96以下、または3:97以下である。
【0072】
反応性フッ素化コポリマーのアミノ樹脂に対する重量比が10:90以下であるようないくつかの用途においては、そのモノマー混合物の中には各種の架橋性モノマーを加えることができる(すなわち、その反応性フッ素化コポリマーが、ヒドロキシ基、酸基、酸基の塩、またはそれらの組合せから選択される側基を有することができる)。たとえば、反応性フッ素化コポリマーのアミノ樹脂に対する重量比が10:90未満または5:95未満であるような、いくつかの水性コーティング組成物においては、そのモノマー混合物の中に各種の架橋性モノマーが含まれていてよい。
【0073】
反応性フッ素化コポリマーのアミノ樹脂に対する重量比が10:90より大、または15:85より大であるような、いくつかの用途においては、ヒドロキシ官能性モノマーの重量パーセントが、モノマー混合物中の、酸官能性モノマーの重量パーセントより大、酸官能性モノマーの塩の重量パーセントより大、または酸官能性モノマープラス酸官能性モノマーの塩重量パーセントより大である。たとえば、反応性フッ素化コポリマーのアミン樹脂に対する重量比が10:90より大であるような、水性コーティング組成物においては、ヒドロキシ官能性モノマーの重量パーセントは、そのモノマー混合物中に含まれる、酸官能性モノマーの重量パーセントより大、酸官能性モノマーの塩の重量パーセントより大、またはその他各種の架橋性モノマーの重量パーセントより大である。
【0074】
そのコーティング組成物には、アミノ樹脂および反応性フッ素化コポリマーに加えて、さらに硬化剤が含まれていてもよい。その硬化剤は、硬化剤なしの類似のコーティング組成物に比較して、そのガラス転移温度を上げるか、架橋密度を上げるか、またはそれらを組合せることによって、硬化させたコーティング組成物の硬度および/または耐摩耗性を上げるようなポリマー材料であってよい。いくつかの用途においては、硬化剤によって、硬化させたコーティング組成物のガラス転移温度を少なくとも80℃にまで上げる。いくつかの用途においては、硬化剤がアミノ樹脂、反応性フッ素化コポリマー、またはそれらの組合せと反応して架橋密度が上がることによって、硬化させたコーティング組成物の硬度を上げることが可能となる。
【0075】
コーティング組成物においては、単一の硬化剤を用いてもよいし、あるいは硬化剤を組み合わせて用いてもよい。一般的には、硬化剤の量は、アミノ樹脂と反応性フッ素化コポリマーとを合わせた重量を基準にして、5〜80重量パーセントである。いくつかの用途においては、存在させる硬化剤の量は、アミノ樹脂および反応性フッ素化コポリマーの重量を基準にして、70重量パーセントまで、60重量パーセントまで、50重量パーセントまで、40重量パーセントまで、30重量パーセントまで、20重量パーセントまでの量である。
【0076】
いくつかの用途においては、硬化剤のアミノ樹脂に対する重量比は通常、少なくとも10:90、少なくとも15:85、少なくとも20:80、少なくとも30:70、少なくとも40:60、少なくとも50:50、または少なくとも55:45である。たとえば、硬化剤のアミノ樹脂に対する重量比は、20:80から80:20までの範囲、または35:65から65:35までの範囲とすることができる。
【0077】
硬化させたコーティング組成物のガラス転移温度を上昇させることが可能な、好適な硬化剤の例としては、アルキルメタクリレート(たとえば、C1~4アルキル基を有するアルキルメタクリレート)のコポリマー;アルキルメタクリレートと、シクロアルキルアクリレート(たとえば、C3~7シクロアルキル基を有するシクロアルキルアクリレート)とのコポリマー;硬いビニルモノマー(たとえば、スチレンおよびメチルスチレン)と官能性ビニルモノマー(たとえば、アリルアルコール)とのコポリマー;アミノ樹脂と反応することが可能な基を有するモノマー(たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、およびクロトン酸)のホモポリマー;ならびに、官能性モノマー(すなわち、アミノ樹脂と反応することが可能な基を有するモノマー)とイタコン酸およびマレイン酸のモノアルキルエステル(ここでそのアルキル基は8個までの炭素原子を有する)、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、またはアクリロニトリルから選択されるモノマーとのコポリマーなどが挙げられる。
【0078】
硬化させたコーティングの架橋密度を上昇させることによって機能する硬化剤の例としては、ポリオール(たとえば、プロパンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、トリメタノールプロパン、またはポリエステルポリオール)、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、ポリアミン、ジアミンたとえばジアミノジフェニルスルホン、およびウレタンジオールなどが挙げられる。
【0079】
水性コーティング組成物においては、水溶性硬化剤を使用することによって、もともとは水不溶性であったアミノ樹脂を分散または溶解させることができる(すなわち、その硬化剤が、アミノ樹脂と水性コーティング組成物との相溶性を改良する)。いくつかの用途においては、そのような硬化剤を添加することによって、硬化剤を使用せずに形成させた硬化コーティングに比較して、得られるコーティングの光学的透明度を改良することができる。
【0080】
より可撓性のあるコーティングが望ましい場合には、ポリエステルポリオールおよびウレタンジオール硬化剤を単独、または他の硬化剤と組み合わせて使用する。少なくともいくつかの用途においては、比較的低濃度のポリエステルポリオールまたはウレタンジオールを使用することによって、硬度を犠牲にすることなく硬化させたコーティングの可撓性を向上させ、各種ポリマー基材に対する硬化させたコーティングの接着性を改良し、コーティング組成物の成膜性を改良し、またはそれらの改良の組合せを得ることが可能となる。
【0081】
いくつかの用途においては、ポリエステルポリオールを硬化剤として使用するが、その理由は、ポリエステルポリオールは、他の硬化剤たとえばスチレンのホモポリマーおよびコポリマーの場合よりも、黄変しにくいからである。市販されている有用なポリエステルポリオールとしては、コネチカット州ノーウォーク(Norwalk,CT)のキング・インダストリーズ(King Industries)から商品名「K−フレックス(K−FLEX)188」として販売されているものが挙げられる。
【0082】
いくつかの水性コーティング組成物においては、硬化剤がウレタンジオールであって、たとえばコネチカット州ノーウォーク(Norwalk,CT)のキング・インダストリーズ(King Industries)から商品名「K−フレックス(K−FLEX)UD−350W」として市販されている水溶性材料である。水溶性ウレタンジオールは多くの場合、水性コーティング組成物へのアミノ樹脂の溶解性または分散性を向上させる。すなわち、水溶性ウレタンジオールを使用して、ウレタンジオールが存在しなければ水不溶性であるようなアミノ樹脂が、溶解または分散できるようにする。
【0083】
硬化させたコーティングは、水性分散体中または有機溶媒中の反応性フッ素化コポリマー、アミノ樹脂、およびその他の成分たとえば硬化剤を反応することによって、調製することができる。好適な反応条件は典型的には、室温(すなわち、20℃〜25℃)〜200℃である。コーティング組成物は室温や80℃未満の温度でも硬化させることが可能ではあるが、硬化組成物の撥水・撥油性は、より高い硬化温度を使用した方が改良される傾向がある。いくつかの用途においては、硬化温度は、少なくとも80℃または少なくとも100℃である。コーティング組成物はウェブ上に塗布し、炉の中で乾燥させることもできる。その炉では、空気または窒素の流れを作るようにしてもよい。別な方法として、その炉を減圧下で運転して、副生物、水、溶媒、またはそれらの組合せを除去することもできる。
【0084】
その他の例においては、アミノ樹脂のヒドロキシまたはアルコキシ基を置きかえることによって形成される副生物(すなわち、水またはアルコール)よりも高い沸点を有する有機溶媒中で、硬化させたコーティングを調製することも可能である。好適な溶媒としては、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、トリフルオロトルエンなどを挙げることができるが、それらに限定される訳ではない。減圧を用いて、副生物を除去することも可能である。
【0085】
触媒を使用して、硬化させたコーティング組成物を形成することも可能である。いくつかの用途においては、酸触媒たとえばp−トルエンスルホン酸を使用する。酸触媒がブロックされた触媒であってもよいが、その場合は、酸触媒をブロッキング剤たとえばアミンと組み合わせて、それが高温で解離して酸触媒が発生する。そのようなブロックされた酸触媒を使用することによって、触媒をコーティング組成物に組み込んでも、早く硬化してしまうことがないようにすることができる。そのコーティング組成物は、ブロックされた酸触媒を使用することによってその貯蔵期間を長くすることが可能となる(すなわち、コーティング組成物を、調製し室温で硬化することなく長期間保存することが可能となる)。そのコーティング組成物を、触媒がブロッキング剤から解離させるのに充分な温度にすると、硬化を開始させることができる。好適なブロックされた触媒の例としては、コネチカット州ノーウォーク(Norwalk,CT)のキング・インダストリーズ(King Industries)から商品名「ナキュア(NACURE)」および「K−キュア(K−CURE)」として市販されているものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。触媒の量が、硬化温度に影響を与える可能性がある。
【0086】
他のタイプの酸触媒としては、ルイス酸があるが、このものは紫外線照射により活性化することができる。それらの触媒は、紫外線照射に暴露させると酸を発生することができる。このタイプのものは、たとえば、熱の影響を受けやすい基材と共に使用することができる。そのような触媒としては、ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,NY)のチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から、商品名「ユーボックス(UVOX)」として市販されているものがあるが、これに限定される訳ではない。
【0087】
いくつかのコーティング組成物においては、硬化プロセスの間に、ペルフルオロポリエーテル部分が、表面に配向または「ブルーミング」する可能性がある。理論に捕らわれることを望むものではないが、ペルフルオロポリエーテル部分が少なくとも幾分かは配向するコーティングの方が、ペルフルオロポリエーテル部分が全く配向を示さない硬化コーティングに比較して、より良好な撥水・撥油性を有する傾向がある、と考えられる。いくつかの用途においては、高温(たとえば、少なくとも80℃の温度)で硬化させたコーティングの方が、より低温たとえば室温で硬化させたコーティングよりもより高い撥水・撥油性を示す。
【0088】
コーティングの硬度は、充填剤たとえばコロイダルシリカ、アルミナ、ガラス粒子、またはセラミック粒子を加えることによって、増強することができる。通常は、そのような充填剤を、コーティング組成物の中の反応性フッ素化コポリマー、アミノ樹脂、およびその他の物質と混合してから、そのコーティング組成物を硬化させる。硬化をした後では、そのコーティングは複合材料となる。カップリング剤、たとえばシランカップリング剤をコーティング組成物に加えることによって、コーティング中の、その充填剤と反応性フッ素化コポリマー、アミノ樹脂、硬化剤、およびその他の有機物質との間の接着性を向上させることができる。
【0089】
シランカップリング剤は、少なくとも一つの加水分解可能なシラン部分と、少なくとも一つの重合性または反応性部分とを有する化合物である。その重合性または反応性部分には典型的には、メタクリレート、アクリレート、アリル、スチリル、アミノ、またはエポキシ官能性のいずれかを含む。加水分解可能なシラン部分は通常、縮合反応によってヒドロキシ官能性無機含有基材と反応することが可能な、アルコキシシリル(たとえば、エトキシシリルまたはメトキシシリル)である。そのような物質は、E.P.プロイデマン(E.P.Pleuddeman)、『シラン・カップリング・エージェンツ(Silane Coupling Agents)』(プレナム・プレス(Plenum Press)、ニューヨーク(New York)、1982)p.20〜23および97に記載されている。シランカップリング剤の量は典型的には、反応性フッ素化コポリマーの重量を基準にして、3〜5重量パーセントである。
【0090】
所望により、コーティング組成物において使用されることが公知の各種のその他の成分を加えることができる。たとえば、顔料または染料を加えて、着色コーティングとすることができる。コーティング組成物には、たとえば、UV安定剤、粘度変性剤、レベリング剤、緩衝剤、難燃または静電気防止のための薬剤、殺菌剤、蛍光漂白剤、金属イオン封鎖剤、金属塩、膨潤剤のような添加剤、またはそれらの組合せがさらに含まれていてもよい。
【0091】
そのコーティング組成物は、各種従来の方法を用いて基材に塗布することができる。たとえば、コーティング組成物を基材の上に、ブラシ塗布、ロール塗布、スプレーなどをすることができる。他の例では、基材をコーティング組成物の中に浸漬したり、あるいはコーティング組成物を用いてスピンコーティングしたりすることもできる。平坦な基材に塗布する場合には、コーティングを、たとえば、ナイフコーティング法またはバーコーティング法で塗布して、均質なコーティング層を得ることができる。
【0092】
コーティング組成物は、基材に各種所望の厚みで塗布することができる。たとえば、硬化させたコーティングの厚みを、表面に耐摩耗性および低表面エネルギーを与えるには充分な厚みである数マイクロメートルのオーダーの厚みとすることができる。基材に対して、コーティング組成物の単一層または連続層を塗布することによって、より厚いコーティング(たとえば、約20マイクロメートル以上まで)を得ることができる。複数層を塗布することも可能であって、たとえば、第1層を積極的に硬化させることなく(たとえば、約60℃)乾燥させてから、第2層を塗布する。この手順を繰り返して、所望のコーティング厚みを得る。次いでそのコーティングを、高温(たとえば、80℃〜200℃)で加熱して硬化させることができる。
【0093】
硬化させたコーティングは通常、少なくとも90度の水との後退接触角、そして少なくとも60度のヘキサデカンとの後退接触角を有している。その硬化させたコーティングは、コーティング組成物中に含まれる反応性フッ素化コポリマーが低レベルであっても撥水・撥油性を示す(たとえば、反応性フッ素化コポリマーのアミノ樹脂に対する比が10:90以下のコーティング組成物でも、撥水・撥油性を示しうる硬化させたコーティングを形成することが可能である)。
【0094】
硬化させたコーティングは、光学的に明澄とすることができる(すなわち、その硬化させたコーティングは、曇りがほとんどまたは全く無いようにすることができる)。硬化させたコーティングは、いくつかの用途においては、基材に光沢仕上げを与える。
【0095】
いくつかの実施態様においては、その汚れ抵抗性および染み抵抗性は耐久性がある(すなわち、そのコーティングが容易に摩耗したり、洗濯によって除去されたりすることはない)。その硬化させたコーティングは多くの場合、ASTM標準D4060において満足のいく耐摩耗性を有している。その硬化させたコーティングは多くの場合、ASTM標準G−155サイクル1耐候性試験条件に暴露させたときに、満足のいく耐候性を有している。
【0096】
コーティング可能な基材のタイプとしては、ポリマー、ガラス、金属、木材、またはセラミック材料などから加工した、硬質および軟質両方の基材が挙げられる。その基材は、多層であってもよいし、あるいは複合材料であってもよい。そのコーティング組成物は広く各種の基材に塗布して、その表面に次に記す性質の一つまたは複数を付与することができる:疎水性、疎油性、溶媒抵抗性、撥水・撥油性、汚れ抵抗性、クリーニングの容易さ、または染み抵抗性。いくつかの実施態様においては、その硬化させたコーティングは、表面に艶のある外観を与えながらも、食品、かび、飲料の染みなどに対する抵抗性を与えることができる。硬化させたコーティングは、少なくともいくつかの実施態様においては、落書きによる汚れや染みに対して抵抗性のある表面を与える。
【0097】
基材の代表例としては、視力矯正用眼鏡、サングラス、光学機器、照明器、腕時計のガラスなど;プラスチック製窓枠;標識;装飾表面たとえば壁紙;床材たとえばビニル床材、木製床材、積層床材、および複合材料の床材;カウンターの甲板;コンクリート;内装または外装壁;医療機器;浴室およびキッチン備品などが挙げられる。このコーティング組成物は、航空機、艇体、およびその他の海水環境に暴露される表面の上に、保護コーティングとして塗布することもできる。このコーティング組成物は、自動車用艶出し剤、床用艶出し剤、および自動車のトップコートに使用することもできる。さらに、このコーティング組成物は、カーペット、紙、不織布、織布など、可撓性のある基材に塗布することも可能である。
【実施例】
【0098】
特に断らない限り、すべての溶媒と反応剤は、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI)のアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Co.)から得ることができる。
【0099】
用語
本明細書において使用する場合:
「AA]は、アクリル酸を指す;
「BMA」は、n−ブチルメタクリレートを指す;
「HEMA」は2−ヒドロキシエチルメタクリレートを指す;
「HFPOA」は、調製例2に記載したような、オリゴマー性ヘキサフルオロプロピレンオキシドアルコールのアクリル酸エステルを指す;
「HFPOMA」は、調製例3に記載したような、オリゴマー性ヘキサフルオロプロピレンオキシドアルコールのメタクリル酸エステルを指す;
「KF−2001」は、日本国東京の信越化学工業(株)から入手可能なメルカプトシリコーンで、その分子量が約8000g/モルで、約4モルパーセントのメルカプタンを含んでいる(すなわち、SH当量が約2000g/モル)ものを指す;
「MAA」は、メタクリル酸を指す;
「MeFBSEMA」は、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルノナフルオロブタンスルホンアミドのメタクリル酸エステルを指し、このものは、米国特許第2,803,615号明細書に記載の方法により調製することができる(この特許を参照により本明細書に援用する);
「ナキュア(NACURE)2558」は、コネチカット州ノーウォーク(Norwalk,CT)のキング・インダストリーズ・インコーポレーテッド(King Industries Inc.)から入手可能な、ブロック酸触媒の溶液を指す;
「ノルブロック(NORBLOC)」は、ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,NY)のチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から入手可能な、アクリレート官能性UV安定剤のノルブロック(NORBLOC)7966のことを指す;
「PEGMA」は、数平均分子量が約526g/モルのポリ(エチレングリコール)メタクリレートを指す;
「レジメーン(RESIMENE)747」は、マサチューセッツ州スプリングフィールド(Springfield,MA)のサーフェス・スペシャルティーズ・インコーポレーテッド(Surface Specialities,Inc.)から入手可能な、メチル化メラミン−ホルムアルデヒドコポリマーを指す;
「シルウェット(SILWET)L−77」は、ウェストバージニア州サウス・チャールストン(South Charleston,WV)のOSi・スペシャルティズ(OSi Specialties)から入手可能な、ノニオン性界面活性剤を指す;
「SIMAC」は、日本国東京の信越化学工業(株)から商品名「X−22−164B」として入手可能な、メタクリル変性シリコーンを指す;
「UD350W」は、コネチカット州ノーウォーク(Norwalk,CT)のキング・インダストリーズ・インコーポレーテッド(King Industries Inc.)から得られる、ウレタンジオールの水性混合物、K−フレックス(K−FLEX)UD−350Wを指す;
「バゾ(VASO)64」は、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)を指し、このものは、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)のデュポン・ケミカル・カンパニー(Dupont Cheical Co.)から入手可能である;
「バゾ(VASO)67」は、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を指し、このものは、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)のデュポン・ケミカル・カンパニー(Dupont Cheical Co.)から入手可能である。
【0100】
方法
脱イオン水およびヘキサデカンに対する前進および後退接触角は、モデル100ゴニオメーター(ニュージャージー州マウンテン・レイクス(Mountain Lakes,NJ)のレイム−ハート・インコーポレーテッド(Rame−Hart,Inc.)から入手可能)を用いて、空気中室温で測定した。
【0101】
調製例1:F[CF(CF3)CF2O]6.3CF(CF3)C(O)N(H)CH2CH2OHの調製
末端フルオロカルボニル基を有するヘキサフルオロプロピレンオキシドオリゴマーの混合物(米国特許第3,350,808号明細書の一般的な記載に従って調製可能、その特許の開示を参照により本明細書に援用する)を、真空蒸留により分留することが可能であるが、その真空蒸留には、パッキング(ニュージャージー州バインランド(Vineland,NJ)のエース・グラス・インコーポレーテッド(Ace Glass Inc.)から商品名「PRO−PAK」として入手可能)を充填し、自動式還流調節蒸留ヘッド(ニュージャージー州バインランド(Vineland,NJ)のエース・グラス・インコーポレーテッド(Ace Glass Inc.)から入手可能)とドライアイス−アセトン浴中で冷却した受器とを取り付けた、銀コーティングした真空ジャケットカラム(ニュージャージー州バインランド(Vineland,NJ)のエース・グラス・インコーポレーテッド(Ace Glass Inc.)から入手可能)を使用した。そのカラムでは、還流状態で約1時間保って平衡状態としてから、留出物を抜き出す。気相ガスクロマトグラフィーによる測定で、残留している物質が化学量論量に達するまで、低沸点成分の流出を続ける。蒸留したときに残留した物質を、エタノールアミンと反応させて式F[CF(CF3)CF2O]6.3CF(CF3)C(O)N(H)CH2CH2OHを有するアルコールを形成させるが、この反応は米国特許第3,274,244号明細書に一般的な記載がある(この特許の開示を参照により本明細書に援用する)。
【0102】
調製例2:HFPOAの調製
F[CF(CF3)CF2O]6.3CF(CF3)C(O)N(H)CH2CH2OC(O)CH=CH2
機械式撹拌器、還流冷却器、滴下ロート、および窒素ガス源に接続したホースアダプターを取り付けた3口丸底フラスコの中で、調製例1のアルコール生成物(600g)を酢酸エチル(600g)およびトリエチルアミン(57.9g)に加えた。その混合物を窒素雰囲気下で撹拌し、加熱して40℃とした。滴下ロートから滴下により、塩化アクリロイル(51.75g)を約30分かけて添加した。その混合物を40℃で一夜撹拌した。次いでその混合物を放冷して室温とし、その混合物を分液ロート中で、2NのHCl水溶液300mLを用いて2回、次いで5重量パーセントのNaHCO3水溶液を用いて洗浄した。その有機相をMgSO4上で乾燥させてから、濾過した。ロータリーエバポレーターを使用して揮発成分を除去すると、生成物が得られた。
【0103】
調製例3:HFPOMAの調製
F[CF(CF3)CF2O]6.3CF(CF3)C(O)N(H)CH2CH2OC(O)C(CH3)=CH2
調製例1のアルコール生成物(1035g)を、5000mLの(機械式撹拌器、デジタル温度計、および窒素ガス源に接続したホースアダプターを取り付けた)フラスコの中で、メチルtert−ブチルエーテル(5mL)中4−メトキシフェノール(0.5g)、無水メタクリル酸(158g)、および濃硫酸(約10滴)の溶液に加えた。その混合物を室温で一夜撹拌した。次いでその混合物を、脱イオン水(1000mL)を用いて1回洗浄してから、メチルtert−ブチルエーテル(250mL)を加えた。その有機相を、10重量パーセントのNaHCO3水溶液(1000mL)を用いて1回洗浄した。4−メトキシフェノール(0.5g)のメチルtert−ブチルエーテル(5mL)溶液を、その有機相に加え、次いでロータリーエバポレーターを使用して揮発成分を除去すると、生成物が得られた。
【0104】
調製例4:ストック架橋剤溶液の調製
ビーカー中の脱イオン水に、電磁撹拌しながら、UD−350W(固形分88重量パーセントの水性分散体、97g)を添加した。約2分後に、レジメーン(RESIMENE)747(固形分98重量パーセントの溶液、104g)を加え、それに続けて、ナキュア(NACURE)2558(固形分25重量パーセントの溶液、36.7g)とシルウェット(SILWET)L−77(3g)とを加えた。次いでその混合物を約10分間撹拌して、ストック架橋剤溶液を得たが、このものの全固形分含量は30重量パーセントであった。
【0105】
実施例1:コポリマー、HFPOA/MeFBSEMA/MAA/HEMAの調製
125mLのねじ蓋付きガラスビンに、MeFBSEMA(6g)、調製例2のアクリル酸エステル(6g)、MAA(2g)、HEMA(5.4g)、2−メルカプトエタノール(0.6g)、イソプロピルアルコール(46.7g)、およびバゾ(VASO)67(0.14g)を仕込んだ。その混合物を1分間窒素ガスでパージしてから、そのビンを密栓した。そのビンを、ラウンダ−O−メーター(LAUNDER−O−METER)(イリノイ州シカゴ(Chicago,IL)のアトラス・エレクトリック・デバイス・カンパニー(Atlas Electric Device Co.)から入手可能)に入れ、水浴温度を60℃に設定して一夜放置した。次いでその混合物を丸底フラスコに移し、N,N−ジメチルアミノエタノール(2.48g)を加えた。その混合物を電磁撹拌しながら65℃に加熱し、脱イオン水(46.7g)をフラスコに徐々に加えた。水浴の温度を55℃に設定し、ロータリーエバポレーターを用いて、より揮発性の成分を除去すると、68gの反応生成物の水溶液が得られた。
【0106】
実施例2:コポリマー、HFPOA/MeFBSEMA/MAA/HEMAの調製
マントルヒーター、電磁撹拌バー、還流冷却器、および窒素ガス源に接続したホースアダプターを取り付けた、500mLの丸底フラスコに、調製例2のアクリル酸エステル生成物(30g)、MAA(5g)、HEMA(13.5g)、2−メルカプトエタノール(1.5g)、イソプロピルアルコール(116.7g)、およびバゾ(VASO)67(0.35g)を仕込んだ。そのフラスコを水アスピレーターを用いて減圧とし、窒素ガスを用いて再充填した。このプロセスをさらに2回繰り返した。次いでその混合物を、窒素雰囲気下で撹拌し、65℃で一夜加熱した。N,N−ジメチルアミノエタノール(5.33g)、次いで脱イオン水(116.7g)をこの順で、フラスコに加えた。水浴の温度を55℃に設定し、ロータリーエバポレーターを用いて、より揮発性の成分を除去すると、141gの反応生成物の水溶液が得られた。
【0107】
実施例3:シリコーン含有HFPOメタクリレートコポリマーの調製
マントルヒーター、電磁撹拌バー、還流冷却器、および窒素ガス源に接続したホースアダプターを取り付けた、500mLの丸底フラスコに、以下のモノマーを下記の重量比で仕込んだ:調製例3において調製したHFPOMA(30.9重量パーセント)、MAA(10.3重量パーセント)、およびHEMA(27.8重量パーセント)。次いで、メルカプトシリコーンのKF−2001を、KF−2001の濃度を、モノマーとメルカプトシリコーン混合物の30.9重量パーセントに等しくするのに充分な量で添加した。イソプロピルアルコールを、溶解されている化学種の濃度を24.4重量パーセントとするに充分な量で添加した。次いでバゾ(VASO)67を、全モノマーとメルカプトシリコーンの重量を基準にして、バゾ(VASO)67が1重量パーセントの混合物となるような量で添加した。そのフラスコを、水アスピレーターを用いて減圧とし、窒素ガスを用いて再充填した。このプロセスをさらに2回繰り返した。次いでその混合物を、窒素雰囲気下で撹拌し、65℃で一夜加熱した。その混合物に、N,N−ジメチルアミノエタノールを、混合物中のMAAの量と等モルになるような量で、一度に添加した。その混合物を15分間撹拌してから、脱イオン水を、イソプロピルアルコールの重量と等重量になるような量で、フラスコに徐々に添加した。水浴の温度を50℃に設定し、ロータリーエバポレーターを用いて、より揮発性の成分を除去すると、反応生成物の水溶液が得られた。
【0108】
実施例4〜5:シリコーン含有HFPOメタクリレートコポリマーの調製
実施例4〜5のそれぞれにおいて、マントルヒーター、電磁撹拌バー、還流冷却器、および窒素ガス源に接続したホースアダプターを取り付けた、500mLの丸底フラスコに、表1に記載の重量比でモノマーを添加した。その重量パーセントは、モノマー混合物中のモノマーと連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)の重量を基準にして計算したものである。次いで2−メルカプトエタノールを、2−メルカプトエタノールの濃度が3重量パーセントのモノマー混合物と等しくするのに充分な量で添加した(すなわち、モノマー混合物中のモノマーと連鎖移動剤の合計量を基準にして)。イソプロピルアルコールを、全モノマー濃度を24.4重量%とするのに充分な量で添加した。次いでバゾ(VASO)67を、全モノマーの重量を基準にして、バゾ(VASO)67が1重量パーセントの混合物となるような量で添加した。それぞれのフラスコを、水アスピレーターを用いて減圧とし、窒素ガスを用いて再充填した。このプロセスをさらに2回繰り返した。次いでそれぞれの混合物を、窒素雰囲気下で撹拌し、65℃で一夜加熱した。それぞれの混合物に、N,N−ジメチルアミノエタノールを、混合物中のMAAの量と等モルになるような量で、一度に添加した。それぞれの混合物を15分間撹拌してから、脱イオン水を、イソプロピルアルコールの重量と等重量になるような量で、それぞれの実施例のフラスコに徐々に添加した。水浴の温度を50℃に設定し、ロータリーエバポレーターを用いて、より揮発性の成分を除去すると、反応生成物の水溶液が得られた。その組成を表1に示す。
【0109】
【表1】

【0110】
実施例6〜18:HFPOモノマー含有コポリマーの調製
実施例6〜18のそれぞれにおいて、マントルヒーター、電磁撹拌バー、還流冷却器、および窒素ガス源に接続したホースアダプターを取り付けた、500mLの丸底フラスコに、表2に記載の重量比でモノマーを添加した。次いで2−メルカプトエタノールを、モノマー混合物中のモノマープラス連鎖移動剤の重量を基準にして、2−メルカプトエタノール濃度を3重量パーセントに等しくするのに充分な量で添加した。イソプロピルアルコールを、全モノマー濃度を24.4重量%とするのに充分な量で添加した。次いでバゾ(VASO)64を、全モノマーの重量を基準にして、バゾ(VASO)64が1重量パーセントの混合物となるような量で添加した。それぞれのフラスコを、水アスピレーターを用いて減圧とし、窒素ガスを用いて再充填した。このプロセスをさらに2回繰り返した。次いでそれぞれの混合物を、窒素雰囲気下で撹拌し、65℃で一夜加熱した。実施例11を除いて、それぞれの混合物にN,N−ジメチルアミノエタノールを、混合物中のMAAまたはAAの量と等モルになるような量で、一度に添加した。それぞれの混合物を15分間撹拌してから、脱イオン水を、イソプロピルアルコールの重量と等重量になるような量で、それぞれの実施例のフラスコに徐々に添加した。水浴の温度を50℃に設定し、ロータリーエバポレーターを用いて、より揮発性の成分を除去すると、反応生成物の水溶液が得られた。それらのコーティング組成を表2に示したが、ここで「N/A]は、その成分がその混合物の中に含まれていないことを意味している。そのモノマー濃度は、モノマー混合物中のモノマーおよび連鎖移動剤の全重量を基準にしたものであった。
【0111】
【表2】

【0112】
実施例19〜33:HFPO含有コポリマーの硬化させたコーティング
実施例1〜18のコポリマー水溶液生成物のそれぞれを、ストック調製例3のストック架橋剤溶液と、表3に示したような、それぞれのコポリマー溶液とストック架橋剤溶液の全固形分顔料を基準にした重量比で、混合した。得られた溶液のそれぞれを、厚み2mmのポリエステルフィルムの上に、#4マイヤー(Meyer)コーティングロッドを用いて、コーティングした。それぞれのコーティングを、強制空気循環炉を用いて、3分間145〜150℃で乾燥させた。それぞれのコーティングのコーティング組成、ならびに水およびヘキサデカンとのそれぞれの前進および後退接触角を表3に示す。
【0113】
【表3】

【表4】

【0114】
実施例56〜91:硬化させたHFPO含有コポリマーのコーティングの表面耐摩耗性
実施例16〜36のそれぞれのコーティングについて、耐摩耗性の試験を行ったが、そのためは、ASTM標準D4060−01(2001年版)に従って実施した一定の摩耗試験回数の前後において、パーマネントブラックマーキングペン(イリノイ州ベルウッド(Bellwood,IL)のサンフォード(Sanford)製、商品名「シャーピー(SHARPIE)」)のインキのそのコーティングの表面上における撥油性を観察した。それぞれのコーティングのインキ撥油性の評価は、摩耗されたコーティングの部分と摩耗されていない部分との境界を通過させてマーキングペンから塗布したときの、インキの連続線を観察することにより行った。評点「A」は、コーティングの摩耗された部分の表面上ではインキが連続膜を形成しなかったことを示し、評点{B]は、インキがコーティングの上で連続膜を形成したことを示している。データを表3に示す。表3において、「N/A」は試験を行わなかったことを意味している。
【0115】
【表5】

【表6】

【0116】
実施例93〜108:硬化させたHFPO含有コポリマーのコーティングの耐候性
実施例40〜55のそれぞれのコーティングについて、耐候性の試験を行ったが、それには、ASTM標準G−155−00aサイクル1(2000年版)に従って実施した、耐候性試験条件下に、表4に示したような所定の時間暴露させた後での、パーマネントブラックマーキングペン(イリノイ州ベルウッド(Bellwood,IL)のサンフォード(Sanford)製、商品名「シャーピー(SHARPIE)」)のインキのそのコーティングの表面上における撥油性を観察した。それぞれのコーティングのインキ撥油性の評価は、摩耗されたコーティングの部分と摩耗されていない部分とを通過させてマーキングペンから塗布したときの、インキの連続線を観察することにより行った。マーキングペンのインキ撥油性は、耐候性試験条件下に暴露させる前のそれぞれの試料についても評価した。評点「3」は、暴露させたコーティングの表面上でインキが細い不連続な膜を形成したことを示し、評点「2」は、暴露させたコーティングの表面上でインキがより広い不連続な膜を形成したことを示し、評点「1」は、暴露させたコーティングの表面上でインキが部分的に連続した膜を形成したことを示し、評点「0」は、暴露させたコーティングの表面上でインキが連続した膜を形成したことを示している。データを表4に示す。表4において、「N/A」は、その時間の長さでは耐候性試験を行わなかったことを意味している。
【0117】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性フッ素化コポリマーおよびアミノ樹脂を含むコーティング組成物であって、前記反応性フッ素化コポリマーが、ペルフルオロポリエーテル側基および前記アミノ樹脂と反応することが可能な側基を有し、ここで、前記反応性フッ素化コポリマーが、
(a)式I:
f1O[Rf2O]n[Rf3O]m(Rf4)AQC(R1)=CH2

[式中、
f1は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロアルキルであり;
f2は、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンであり;
f3は、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンであり;
f4は、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンであり;
Aは、カルボニルオキシまたはカルボニルイミノであり;
Qは、アルキレン、ヒドロキシ置換アルキレン、ヘテロアルキレン、ヒドロキシ置換ヘテロアルキレン、アリーレン、ヒドロキシ置換アリーレン、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、オキシ、イミノ、またはそれらの組合せ、から選択される2価の結合基であり;
1は、水素または1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり;
nは、2〜25の整数であり;
mは0以上で25までの整数であり;そして
ペルフルオロポリエーテル基、Rf1O[Rf2O]n[Rf3O]m(Rf4)−の少なくとも90重量パーセントは、少なくとも750g/モルの分子量を有する]
のペルフルオロポリエーテルモノマー;および
(b)ヒドロキシ官能性モノマー、酸官能性モノマー、酸官能性モノマーの塩、またはそれらの組合せから選択される、架橋性モノマー;
を含むモノマー混合物の反応生成物である、コーティング組成物。
【請求項2】
f1が、CF3CF2−、CF3CF2CF2−、CF3CF(CF3)−、CF3CF(CF3)CF2−、CF3CF2CF2CF2−、CF3CF2CF(CF3)−、CF3CF2CF(CF3)CF2−、またはCF3CF(CF3)CF2CF2−から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
f1−が、CF3CF2CF2−またはCF3CF(CF3)−である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
f2およびRf3が独立して、基−CF2−、−CF(CF3)−、−CF2CF2−、−CF(CF3)CF2−、−CF2CF2CF2−、−CF(CF3)CF2CF2−、−CF2CF2CF2CF2−、または−CF2C(CF32−から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
mが0に等しく、そしてRf2が、−CF(CF3)CF2−または−CF2CF2CF2−である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
f4が、−CF2−、−CF(CF3)−、−CF2CF2−、−CF2CF2CF2−、または−CF(CF3)CF2−である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
1が、水素またはメチルから選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
Aがカルボニルイミノである、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
AQが、非置換であってもヒドロキシで置換されていてもよい、*−(CO)NRa(CH2uO(CO)−、*−(CO)O(CH2uO(CO)−、*−(CO)NRa(CH2uO(CO)NRa(CO)−、*−(CO)NRa(CH2uO(CO)NRa(CH2uO(CO)−、*−(CO)NRa(CH2uO(CO)NRa(CRa2uAr1−、*−(CO)NRa(CH2u−、*−(CO)O(CH2u−,*−(CO)NRaAr1(CH2u−、または*−(CO)NRa(Ck2kO)p(CO)−
[式中、
それぞれのuは、独立して1〜12の整数であり;
Ar1は、アリーレンであり;
それぞれのRa基は独立して、水素、または1〜6個の炭素原子を有するアルキルであり;
kは、1〜3の整数であり;そして
pは、1〜10の整数である]
から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記ペルフルオロポリエーテルモノマーが、CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)−(CO)NRaCH2CH2O(CO)−CH=CH2またはCF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)−(CO)NRaCH2CH2O(CO)−C(CH3)=CH2
[式中、
nは、3〜25;そして
aは、水素、メチル、エチル、プロピルまたはブチルである]
から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記酸官能性モノマーが、次式の化合物
23C=C(R2)(CO)OH
またはその塩
[式中、
それぞれのR2は独立して、水素またはC1~6アルキルであり;そして
3は、水素、または非置換もしくはカルボキシ基で置換されたC1~6アルキルである]を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記酸官能性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、またはそれらの塩を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記ヒドロキシ官能性モノマーが、ヒドロキシメチルアクリルアミド、ヒドロキシメチルメタクリルアミド、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、グリセロールアクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、アリルアルコール、ヒドロキシ含有ポリエチレンオキシドをベースとしたモノマー、またはそれらの組合せ、から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
前記架橋性モノマーがヒドロキシ官能性モノマーを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
前記アミノ樹脂が、メチロール化メラミン、メチロール化尿素、メチロール化ベンゾグアナミン、またはメチロール化アセトグアナミンから選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
硬化剤をさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項17】
前記硬化剤が水溶性であり、前記硬化剤が、前記コーティング組成物中への前記アミノ樹脂の溶解性を向上させる、請求項16に記載のコーティング組成物。
【請求項18】
基材と、前記基材の表面上の硬化させたコーティングとを含む物品であって、前記硬化させたコーティングが、反応性フッ素化コポリマーおよびアミノ樹脂を含むコーティング組成物の反応生成物を含み、前記反応性フッ素化コポリマーが、ペルフルオロポリエーテル側基および前記アミノ樹脂と反応することが可能な側基を有し、ここで、前記反応性フッ素化コポリマーが、
(a)式I:
f1O[Rf2O]n[Rf3O]m(Rf4)AQC(R1)=CH2

[式中、
f1は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロアルキルであり;
f2は、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンであり;
f3は、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンであり;
f4は、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンであり;
Aは、カルボニルオキシまたはカルボニルイミノであり;
Qは、アルキレン、ヒドロキシ置換アルキレン、ヘテロアルキレン、ヒドロキシ置換ヘテロアルキレン、アリーレン、ヒドロキシ置換アリーレン、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、オキシ、イミノ、またはそれらの組合せ、から選択される2価の結合基であり;
1は、水素または1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり;
nは、2〜25の整数であり;
mは0以上で25までの整数であり;そして
ペルフルオロポリエーテル基、Rf1O[Rf2O]n[Rf3O]m(Rf4)−の少なくとも90重量パーセントは、少なくとも750g/モルの分子量を有する]
のペルフルオロポリエーテルモノマー;および
(b)ヒドロキシ官能性モノマー、酸官能性モノマー、酸官能性モノマーの塩、またはそれらの組合せから選択される、架橋性モノマー;
を含むモノマー混合物の反応生成物である、物品。
【請求項19】
前記コーティング組成物が、硬化剤をさらに含む、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
物品を製造する方法であって:
第一の主表面を有する基材を提供する工程;
前記基材の第一の主表面にコーティング組成物を塗布する工程;および
前記コーティング組成物を硬化させる工程、を含み、前記コーティング組成物が、反応性フッ素化コポリマーおよびアミノ樹脂を含み、前記反応性フッ素化コポリマーが、ペルフルオロポリエーテル側基および前記アミノ樹脂と反応することが可能な側基を有し、ここで、前記反応性フッ素化コポリマーが、
(a)式I:
f1O[Rf2O]n[Rf3O]m(Rf4)AQC(R1)=CH2

[式中、
f1は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロアルキルであり;
f2は、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンであり;
f3は、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンであり;
f4は、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンであり;
Aは、カルボニルオキシまたはカルボニルイミノであり;
Qは、アルキレン、ヒドロキシ置換アルキレン、ヘテロアルキレン、ヒドロキシ置換ヘテロアルキレン、アリーレン、ヒドロキシ置換アリーレン、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、オキシ、イミノ、またはそれらの組合せ、から選択される2価の結合基であり;
1は、水素または1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり;
nは、2〜25の整数であり;
mは0以上で25までの整数であり;そして
ペルフルオロポリエーテル基、Rf1O[Rf2O]n[Rf3O]m(Rf4)−の少なくとも90重量パーセントは、少なくとも750g/モルの分子量を有する]
のペルフルオロポリエーテルモノマー;および
(b)ヒドロキシ官能性モノマー、酸官能性モノマー、酸官能性モノマーの塩、またはそれらの組合せから選択される、架橋性モノマー;
を含むモノマー混合物の反応生成物である、方法。

【公表番号】特表2007−514861(P2007−514861A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545734(P2006−545734)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/040999
【国際公開番号】WO2005/061638
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】