説明

ペースト状材料の充填装置

【課題】ペースト状の材料、特に、高粘度のペースト状の材料をシリンジに充填する装置を提供する。
【解決手段】ペースト状材料の充填装置は、ペースト状の材料Mが収納された、シリンジ30が嵌合される貫通穴25を有する収納容器10と、貫通穴の内壁とシリンジとの間に配置される、常態において開放状態でかつ所定の減圧環境下において固定状態に切り替わるシリンジ固定手段(固定部材40)と、内部を減圧状態にすることが可能な、収納容器及びシリンジを収納する真空チャンバ50と、真空チャンバ内で収納容器内の材料を加圧することによって、貫通穴を介して材料をシリンジ内に供給する加圧供給手段55と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状の材料、特に、高粘度のペースト状の材料を、シリンジ等に充填する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野や工業分野で利用される材料において、内部に気泡を含まない材料が要求されている。そして、内部に気泡を含まない材料を製造することが可能な装置として、材料が収容された容器を自転及び公転させる装置が知られている(特許文献1参照)。この装置によると、自転及び公転の遠心力を利用して材料に内在する気泡を取り除くことができるとともに、材料を高精度に混練脱泡することが可能になる。
【0003】
また、医療分野や工業分野では、ペースト状の材料を精度よく吐出する技術が要請されており、かかる要請に応えるために高精度のディスペンサやシリンジ容器の開発が進められている。
【0004】
なお、材料を混練脱泡するために利用される容器と、エンドユーザがこの材料を利用するための容器とが異なることがあり、容器間で材料を移送する必要があった(特許文献2参照)。
【特許文献1】 特許第3896449号公報
【特許文献2】 特開2004−182255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、粘度が高い材料ほど流動抵抗が大きくなるため、これを移送するため(例えば押し出すため)に必要な圧力が大きくなる。そして、材料に大きな圧力を加える程、移送経路に大きな圧力がかかるため、移送中に部材間の脱落を防止するために、部材間を強く固定する必要がある。
【0006】
しかし、部材間を強く固定するほど、これを取り外す労力が増すため、作業効率が低下することがあった。
【0007】
本発明の目的は、粘度が高い材料であっても、効率よくシリンジに充填することを可能にするペースト状材料の充填装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係るペースト状材料の充填装置は、
ペースト状の材料が収納された、シリンジが嵌合される貫通穴を有する収納容器と、
前記貫通穴の内壁と前記シリンジとの間に配置される、常態において開放状態でかつ所定の減圧環境下において固定状態に切り替わるシリンジ固定手段と、
内部を減圧状態にすることが可能な、前記収納容器及びシリンジを収納する真空チャンバと、
前記真空チャンバ内で前記収納容器内の材料を加圧することによって、前記貫通穴を介して前記材料を前記シリンジ内に供給する加圧供給手段と、
を有する。
【0009】
本発明によると、真空チャンバ内を減圧することにより、固定部材が固定状態となり、シリンジと収納容器とが固定される。そのため、材料をシリンジ充填する際に、シリンジが収納容器から外れることを防止することができる。また、本発明によると、真空チャンバを減圧環境から開放することにより、固定部材が開放状態となり、シリンジの着脱を容易に行うことができる。
【0010】
(2)本発明に係るペースト状材料の充填装置は、
ペースト状の材料が収納された、シリンジに嵌合するノズルを有する収納容器と、
前記ノズルの外壁と前記シリンジとの間に配置される、常態において開放状態でかつ所定の減圧環境下において固定状態に切り替わるシリンジ固定手段と、
内部を減圧状態にすることが可能な、前記収納容器及びシリンジを収納する真空チャンバと、
前記真空チャンバ内で前記収納容器内の材料を加圧することによって、前記ノズルを介して前記材料を前記シリンジ内に供給する加圧供給手段と、
を有する。
【0011】
本発明によると、真空チャンバ内を減圧することにより、固定部材が固定状態となり、シリンジと収納容器とが固定される。そのため、材料をシリンジ充填する際に、シリンジが収納容器から外れることを防止することができる。また、本発明によると、真空チャンバを減圧環境から開放することにより、固定部材が開放状態となり、シリンジの着脱を容易に行うことができる。
【0012】
(3)このペースト状材料の充填装置において、
前記シリンジ固定手段は、固定状態において、前記シリンジと前記容器との間をふさぐように構成されていてもよい。
【0013】
これによると、材料をシリンジに充填する際に、材料がもれることを防止することができる。
【0014】
(4)このペースト状材料の充填装置において、
前記シリンジ固定手段は、固定状態において、前記シリンジと前記容器との間に隙間ができるように構成されていてもよい。
【0015】
(5)このペースト状材料の充填装置において、
前記シリンジ固定手段は、気体を内包する構造となっており、内包気体圧力と前記真空チャンバ内の圧力との差によって前記気体が膨張収縮可能に形成されていてもよい。
【0016】
(6)このペースト状材料の充填装置において、
前記収納容器は、有底筒状の本体と、前記本体の内壁に沿って摺動可能な押圧治具とを有し、
前記加圧供給手段は、
前記押圧治具を前記材料に押し付けることによって、前記材料を加圧してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を適用した実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、以下の実施の形態で説明するすべての構成が本発明にとって必須であるとは限らない。また、本発明は、以下の内容を自由に組み合わせたものを含むものとする。
【0018】
1.第1の実施の形態
図1〜図5(B)は、本発明を適用した第1の実施の形態に係るペースト状材料の充填装置1について説明するための図である。なお、ペースト状材料の充填装置1は、収納容器10に収納されたペースト状の材料Mを、シリンジ30に供給して充填する装置である。本実施の形態に適用可能な材料Mは特に限定されるものではない。ただし、ペースト状材料の充填装置1によると、特に高粘度材料あるいは高チクソ性材料であっても、短時間で、かつ、内部に空気を巻き込まないように、シリンジに充填することが可能になる。具体的には、材料Mには、ペースト状の半田、歯科用印象材料、歯科用セメント(穴埋め剤等)、接着剤、粘性の強い液状の薬剤等が含まれる。
【0019】
本実施の形態に係るペースト状材料の充填装置1は、図1に示すように、ペースト状の材料Mが収納される収納容器10を含む。収納容器10は有底筒状の容器本体12を有し、その内部に材料Mが収納される。収納容器10は、また、押圧治具20を有する。押圧治具20は、容器本体12の内壁(内側面)に沿って摺動可能に構成されている。押圧治具20の外周にはシール部材(オーリング21)が設けられており、これにより、押圧治具20が容器本体12内を摺動可能になるとともに、押圧治具20の周囲から材料Mがもれ出ることを防止することができる。なお、収納容器10(容器本体12及び押圧治具20)の構成材料は特に限定されないが、収納容器10は、例えば金属や樹脂によって構成することができる。
【0020】
押圧治具20は、図1に示すように、第1及び第2の面22,24を有する。なお、第1及び第2の面22,24は、互いに反対方向を向く面である。そして、押圧治具20には、第1及び第2の面22,24を貫通する貫通穴25が形成されている。押圧治具20では、図1に示すように、貫通穴25は複数形成されている。ただし、貫通穴25は、1つのみ形成されていてもよい(図示せず)。
【0021】
本実施の形態では、収納容器10(押圧治具20)にシリンジ30が取り付けられる。シリンジ30は、その内部空間が、貫通穴25を介して収納容器10の内部空間(材料Mが収納される空間)に連通するように取り付けられる。また、本実施の形態では、シリンジ30は、先端部32が貫通穴25に嵌合するように(先端部32が貫通穴25内部に配置されるように)、押圧治具20に取り付ける。
【0022】
本実施の形態では、シリンジ30は、押圧治具20の第1の面22側から取り付けられている。また、シリンジ30は、その先端(先端部32の先端)が第2の面24と面一になるように、押圧治具20に取り付けられている。ただし本発明はこれに限られるものではなく、シリンジ30は、その先端が第2の面24側に突出するように取り付けられていてもよく、その先端が貫通穴25の内側に配置されるように取り付けられていてもよい(図示せず)。
【0023】
なお、本実施の形態では、図1に示すように、1つの押圧治具20に、複数のシリンジ30が取り付けられている。ただし本発明はこれに限られるものではなく、1つの押圧治具20に、1つのシリンジ30のみを取り付けることも可能である。
【0024】
本実施の形態に係るペースト状材料の充填装置1は、固定部材40を有する。固定部材40は、シリンジ30を収納容器10に固定する役割を果たす。固定部材40は、貫通穴25の内壁とシリンジ30との間に配置される。本実施の形態では、固定部材40は筒状(円筒状や角筒状)に構成されており、シリンジ30を囲むように設けられている。言い換えると、固定部材40は貫通穴25に嵌合されており、シリンジ30は固定部材40の貫通穴に嵌合されている。
【0025】
本実施の形態では、固定部材40は、常態(大気圧下)において開放状態となってシリンジ30と緩やかに嵌合し、所定の減圧環境下において固定状態に切り替わってシリンジ30を固定するように構成されている。なお、図2(A)は常態(開放状態)、図2(B)は減圧環境(固定状態)における、収納容器10とシリンジ30、及び、固定部材40を示す図である。
【0026】
固定部材40は、図2(A)に示すように、常態(大気圧下)において内側面の径が先端部32の径よりも大きくなるように構成されている。これにより、常態において、シリンジ30を、固定部材40の内側面との間に空間(隙間)ができるように取り付けることができ、固定部材40に緩く嵌合させることができる。また、固定部材40は、図2(B)に示すように、減圧環境下において膨張し、所定の減圧環境下においてシリンジ30と貫通穴25とを押圧して、シリンジ30と収納容器10(押圧治具20)とを固定することが可能に構成されている。本実施の形態では、固定部材40は、膨張して、シリンジ30と貫通穴25との間をふさぐように構成されている(図2(B)参照)。これにより、材料Mがシリンジ30と貫通穴25との間から漏れることを防止することができる。
【0027】
本実施の形態では、固定部材40は、図2(A)及び図2(B)に示すように、伸縮性部材の内部に気泡42を有する構成となっている。そして、固定部材40は、気泡42の圧力と後述する真空チャンバ50内の圧力との差によって気泡42が膨張収縮可能に形成されている。すなわち、固定部材40は、減圧環境において気泡42が膨張し、気泡42の膨張に伴って伸縮性部材が伸長することにより、固定部材40の外形が変形(膨張)するように構成されている。具体的には、真空チャンバ50内が気泡42の圧力よりも低い状態になるにつれて、気泡42が徐々に膨張し、固定部材40(伸縮性部材)が伸長かつ膨張する。固定部材40の外形は貫通穴25によって規制されるため、固定部材40は、貫通穴25の内側に向かって膨張することになる。そのため、固定部材40の全体の総体積が大きくなり、固定部材40が貫通穴25の内壁面とシリンジ30とを押圧して、容器10にシリンジ30が固定される。気泡42の径や体積率、固定部材40(伸縮性部材)の材料を調整することにより、固定部材40を、気泡42の膨張に伴って変形可能に構成することができる(図2(A)及び図2(B)参照)。
【0028】
なお、固定部材40に含まれる気泡42の形状や、気泡42の量(気泡42が占める体積率)、気泡42の分布、気泡42の内圧は特に限定されるものではない。また、固定部材40には、図2(A)及び図2(B)に示すように複数の気泡42(不連続の複数の気泡:独立気泡)が含まれているが、一つのみ含まれていてもよい。気泡42の形状は、例えば球形をなしていてもよく、筒状(パイプ状)や螺旋形状となっていてもよい。なお、固定部材40を構成する材料(伸縮性部材)は特に限定されるものではないが、例えば樹脂などの弾性体によって構成することができる。
【0029】
本実施の形態では、固定部材40を、押圧治具20から脱落しないように配置する。例えば、固定部材40の端部(上端部)には、貫通穴25よりも径が広いつば部が形成されていてもよい。あるいは、貫通穴25の端部は、固定部材40よりも径が狭くなっていてもよい。あるいは、固定部材40は接着剤などにより貫通穴25に接着してもよい。これにより、固定部材40が、押圧治具20から脱落することを防止することができる。
【0030】
本実施の形態に係るペースト状材料の充填装置1は、図1に示すように、真空チャンバ50を含む。真空チャンバ50には、収納容器10及びシリンジ30、並びに、固定部材40が収容される。なお、真空チャンバ50は気密に構成されており、接続具51及び吸込管53を介して接続されたポンプ52によって、内部を減圧することが可能になっている。真空チャンバ50には図示しない扉部が構成されており、外扉部を介して、収納容器10等を収納することが可能になる。
【0031】
本実施の形態に係るペースト状材料の充填装置1は、図1に示すように、真空チャンバ50内で材料Mを加圧することによって、貫通穴25を介して材料Mをシリンジ30内に供給する加圧供給手段55を含む。本実施の形態では、加圧供給手段55は、機械的に押圧治具20を材料Mに向かって押し下げる押し下げ機構として構成されている。すなわち、加圧供給手段55によって押圧治具20を押し下げることによって、押圧治具20の第2の面24と容器本体12の内壁面とによって材料Mを加圧し、貫通穴25を通じて材料Mをシリンジ30内に供給する(図4(A)及び図4(B)参照)。なお、加圧供給手段55は図示しないアクチュエータを有し、これにより押圧治具の押し下げ量を制御することができる。
【0032】
本実施の形態に係るペースト状材料の充填装置1は、以上のように構成されている。以下、ペースト状材料の充填装置1を利用したペースト状材料の充填方法について説明する。図3は、このペースト状材料の充填方法について説明するためのフローチャート図である。
【0033】
本実施の形態に係るペースト状材料の充填方法は、収納容器10にシリンジ30を取り付ける工程を含む(ステップS10)。シリンジ30は、固定部材40を介して取り付ける。本工程は、常態環境下で、すなわち、固定部材40を開放状態として行う(図2(A)参照)。そのため、シリンジ30を取り付ける工程を効率よく行うことができる。なお、本工程は、真空チャンバ50の内部で行ってもよい。
【0034】
本実施の形態に係るペースと状材料の充填方法は、収納容器10及びシリンジ30が収容された真空チャンバ50内を減圧する工程(ステップS12)を含む。本工程では、真空チャンバ50内を減圧することによって固定部材40を固定状態に切り替え、シリンジ30と収納容器10とを固定する(図2(B)参照)。すなわち、本工程では、真空チャンバ内を減圧することにより、真空チャンバ50内の圧力と気泡42の内圧との差を大きくして固定部材40(気泡42)を膨張させ、固定部材40によって貫通穴25とシリンジ30とを押圧して、シリンジ30を収納容器10に固定する。
【0035】
本実施の形態に係るペースト状材料の充填方法は、真空チャンバ50内で材料Mを加圧することによって、材料Mをシリンジ内に供給する工程(ステップS14)を含む。本工程では、図4(A)及び図4(B)に示すように、貫通穴25を介して、シリンジ30内に材料Mを供給する。なお、本実施の形態では、本工程を、減圧された真空チャンバ50内で行う。そのため、固定部材40によってシリンジ30と収納容器10とが固定された状態で材料Mを加圧することができ、材料Mを加圧する工程で、シリンジ30が収納容器10(押圧治具20)から外れることを防止することができる。
【0036】
なお、本工程は、以下の各工程を含んでいると解してもよい。すなわち、図1に示すように、収納容器10及び押圧治具20を、収納容器10と第2の面24とが対向するように位置合わせする工程と、図4(A)に示すように、収納容器10と押圧治具20(第2の面24)とを近接させて第2の面24を材料Mに接触させる工程と、図4(B)に示すように、収納容器10と押圧治具20とをさらに近接させることによって、押圧治具20及び収納容器10の内壁面で材料Mを押圧する工程である。
【0037】
本実施の形態に係るペースト状材料の充填方法は、真空チャンバ50内を、減圧環境から開放して常態に戻すことをさらに含んでいてもよい。真空チャンバ50内を常態に戻すことによって、固定部材40が開放状態となり、シリンジ30を容易に取り外すことができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、真空チャンバ50内を減圧環境から開放する際に、図5(A)及び図5(B)に示すように、真空チャンバ50内の気圧の変化を利用して、材料Mの上端54及び下端56を近接させてもよい。上端54がシリンジ30内壁を密閉するように(蓋状となるように)材料Mを供給すると、真空チャンバ50内の気圧が上昇したときに上端54が下端56に向かって押し付けられるため、上端54と下端56とを近接させることができる。本実施の形態では、図5(A)及び図5(B)に示すように、シリンジ30が押圧治具20に取り付けられた状態で、真空チャンバの真空を解除してもよい。また、本実施の形態では、第2の面24が材料Mに接触した状態で、真空チャンバの真空を解除してもよい。これによると、材料Mの上端54を、材料Mの下端56に向けて移動させることができる。すなわち、材料Mをシリンジ30の先端側に移動させることができる。そのため、特にシリンジ30の先端側に気泡が含まれないように、材料Mを充填することができる。
【0039】
次に、本実施の形態に係るペースト状材料の充填装置1、及び、ペースト状材料の充填方法が奏する作用効果について説明する。
【0040】
本実施の形態に係るペースト状材料の充填装置1によると、固定部材40を膨張させることによって、押圧治具20とシリンジ30とを固定することができる。そして、真空チャンバ50内を減圧した状態で材料Mを加圧することにより、固定部材40で押圧治具20とシリンジ30とが固定された状態で、材料Mをシリンジ30に供給することができる。そのため、材料Mをシリンジ30に供給する工程で、シリンジ30が収納容器10から外れることを防止することができる。特に、材料Mを強く加圧した場合でも、シリンジ30が収納容器10から外れることを防止することができるため、粘性の高い材料をシリンジ30に充填することが可能になり、また、材料Mを強く加圧することが可能になるため、シリンジ30に材料Mを充填するために必要な時間を短くすることができる。
【0041】
また、本実施の形態によると、真空チャンバ50内を減圧することによって、シリンジ30と収納容器10とが固定される。そのため、常態において、シリンジ30と収納容器10とを強く固定する必要がなくなることから、常態におけるシリンジ30の着脱が容易になり、作業効率を高めることができる。
【0042】
また、本実施の形態によると、固定部材40は、真空チャンバ50内を減圧するだけで、開放状態及び固定状態を切り替えることができる。すなわち、固定部材40を切り替えるために、特別な機構(機械的な機構など)を利用する必要性がなくなる。そのため、装置構成を単純にすることができる。
【0043】
また、本実施の形態によると、押圧治具20(貫通穴25)及びシリンジ30(先端部32)の寸法精度が低い場合であっても、シリンジ30を押圧治具20に固定することが可能になるとともに、形状が異なるシリンジであっても固定することが可能になる。
【0044】
また、本実施の形態によると、固定部材40を膨張させることから、押圧治具20及びシリンジ30の寸法精度が低い場合にも、貫通穴25の内部の隙間を完全にふさぐことが可能になり、材料Mの漏れを防止することができる。
【0045】
また、本実施の形態に係るペースト状材料の充填方法では、シリンジ30内部に材料Mを移動させる工程を、減圧環境下で行う。そのため、シリンジ30内に気泡が入り込むことを防止することができる。
【0046】
なお、押圧治具20が、複数の貫通穴25が同じ形状となるように構成されている場合、材料Mが、すべての貫通穴25から、同じ大きさの圧力を受けて押し出される。そして、すべての貫通穴25に、同じ形の30を取り付けることで、すべてのシリンジ30に同じ量の材料Mを充填することができる。すなわち、複数のシリンジ30に、同時並行して、材料Mを同量ずつ充填することができるため、シリンジ30に材料Mを充填する処理を、効率よく行うことができる。
【0047】
また、本実施の形態によると、シリンジ30に充填される材料Mの量を、収納容器10と押圧治具20との間隔によって制御することができる。そのため、シリンジ30に、正確な量の材料Mを充填することが可能になる。
【0048】
以下、本実施の形態の変形例について説明する。図6は、変形例に係るペースト状材料の充填装置について説明するための図である。
【0049】
本実施の形態に係るペースト状材料の充填装置は、図6に示すように、貫通穴25の内側に、シリンジ30の先端部32を囲むように設けられた、第1及び第2の補助部材46,48を含む。第1及び第2の補助部材46,48は、固定部材40の上下に(固定部材40を挟むように)配置される。すなわち、シリンジ30は、固定部材40と、第1及び第2の補助部材46,48とを介して、押圧治具20に取り付けられる。なお、第1及び第2の補助部材46,48は、真空中で変形(膨張)しないように構成されている。第1及び第2の補助部材46,48の材料は特に限定されるものではなく、例えば樹脂や金属によって構成することができる。第1及び第2の補助部材46,48は、固定部材40よりも硬質の材料で構成されていてもよい。また、第1及び第2の補助部材46,48は、内部に気泡を含まないように構成されていてもよい。
【0050】
本実施の形態に係るペースト状材料の充填装置によると、固定部材40が上下方向に膨張することを防止することができる。そのため、固定部材40を幅方向に(すなわち、貫通穴25をふさぐ方向に)膨張させることが可能になり、押圧治具20とシリンジ30とを確実に固定することができる。また、このペースト状材料の充填装置によると、固定部材40の上下方向への膨張を制限することができるため、過度な変形による固定部材40の破裂を防止することができる。
【0051】
なお、他の変形例として、ペースト状材料の充填装置は、第1及び第2の補助部材46,48のいずれか一方のみを有していてもよい(図示せず)。
【0052】
2.第2の実施の形態
以下、本発明を適用した第2の実施の形態に係るペースト状材料の充填装置2について説明する。図7(A)〜図7(C)は、ペースト状材料の充填装置2について説明するための図である。
【0053】
本実施の形態に係るペースト状材料の充填装置2は、図7(A)に示すように、材料Mが収納された収納容器110を含む。収納容器110は、容器本体112を有する。容器本体112には、ノズル115が構成されている。ノズル115は容器本体112内に連通しており、ペースト状材料の充填装置2では、ノズル115を介して、材料Mがシリンジ30に充填される。なお、ペースト状材料の充填装置2では、シリンジ30は、ノズル115の外側に嵌合するように取り付けられる。
【0054】
本実施の形態に係るペースト状材料の充填装置2は、図7(A)〜図7(C)に示すように、ノズル115の外壁とシリンジ30との間に配置されるシリンジ固定手段140を含む。固定手段140は、図7(B)に示すように常態において開放状態で、かつ、図7(C)に示すように所定の減圧環境下において固定常態に切り替わる。ペースト状材料の充填装置2は、間隔をあけて配置された複数の固定手段140を含み、固定状態において、ノズル115とシリンジ30との間に隙間が生じるように構成されている。これにより、シリンジ30内を充分減圧することができ、空気を巻き込まないように、材料Mをシリンジ30に充填することができる。
【0055】
本実施の形態に係るペースト状材料の充填装置2は、材料Mを加圧する加圧手段をさらに含む(図示せず)。加圧手段は、例えば、収納容器110及びシリンジ30を回転させて、収納容器110に収納された材料Mに、シリンジ30の先端方向に向かう遠心力を作用させる装置として構成することができる。
【0056】
ペースト状材料の充填装置2を利用した場合でも、シリンジ30を容易に着脱することが可能になり、また、材料Mをシリンジ30に供給する際に、シリンジ30が収納容器110(ノズル115)から外れることを防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】ペースト状材料の充填装置について説明するための図。
【図2】ペースト状材料の充填装置について説明するための図。
【図3】ペースト状材料の充填方法を説明するためのフローチャート図。
【図4】ペースト状材料の充填装置について説明するための図。
【図5】ペースト状材料の充填装置について説明するための図。
【図6】変形例に係るペースト状材料の充填装置について説明するための図。
【図7】ペースト状材料の充填装置について説明するための図。
【符号の説明】
【0058】
1…充填装置、 2…充填装置、 10…収納容器、 12…容器本体、 20…押圧治具、 21…オーリング、 22…第1の面、 24…第2の面 25…貫通穴、 30…シリンジ、 32…先端部、 40…固定部材、 42…気泡、 44…第1の補助部材、 46…第2の補助部材、 50…真空チャンバ、 52…ポンプ、 54…上端、 56…下端、 55…加圧供給手段、 110…収納容器、 112…容器本体、 115…ノズル、 140…固定手段、 M…材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペースト状の材料が収納された、シリンジが嵌合される貫通穴を有する収納容器と、
前記貫通穴の内壁と前記シリンジとの間に配置される、常態において開放状態でかつ所定の減圧環境下において固定状態に切り替わるシリンジ固定手段と、
内部を減圧状態にすることが可能な、前記収納容器及びシリンジを収納する真空チャンバと、
前記真空チャンバ内で前記収納容器内の材料を加圧することによって、前記貫通穴を介して前記材料を前記シリンジ内に供給する加圧供給手段と、
を有するペースト状材料の充填装置。
【請求項2】
ペースト状の材料が収納された、シリンジに嵌合するノズルを有する収納容器と、
前記ノズルの外壁と前記シリンジとの間に配置される、常態において開放状態でかつ所定の減圧環境下において固定状態に切り替わるシリンジ固定手段と、
内部を減圧状態にすることが可能な、前記収納容器及びシリンジを収納する真空チャンバと、
前記真空チャンバ内で前記収納容器内の材料を加圧することによって、前記ノズルを介して前記材料を前記シリンジ内に供給する加圧供給手段と、
を有するペースト状材料の充填装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のペースト状材料の充填装置において、
前記シリンジ固定手段は、固定状態において、前記シリンジと前記容器との間をふさぐように構成されているペースト状材料の充填装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のペースト状材料の充填装置において、
前記シリンジ固定手段は、固定状態において、前記シリンジと前記容器との間に隙間ができるように構成されているペースト状材料の充填装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のペースト状材料の充填装置において、
前記シリンジ固定手段は、気体を内包する構造となっており、内包気体圧力と前記真空チャンバ内の圧力との差によって前記気体が膨張収縮可能に形成されているペースト状材料の充填装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のペースト状材料の充填装置において、
前記収納容器は、有底筒状の本体と、前記本体の内壁に沿って摺動可能な押圧治具とを有し、
前記加圧供給手段は、
前記押圧治具を前記材料に押し付けることによって、前記材料を加圧するペースト状材料の充填装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−113862(P2009−113862A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313973(P2007−313973)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(393030408)株式会社シンキー (34)
【Fターム(参考)】