説明

ホイールアライメント用ミニチュア模型

【課題】ホイールアライメントの内容や必要性をわかりやすく説明することが可能なミニチュア模型を簡単な構成で提供する。
【解決手段】 ミニチュア模型として持ち運び可能な大きさで形成された車体1と、車体1に支持され、かつ、車体1の幅方向に延びるホイール取付部材2と、平面略L字形をなし、その屈曲部で前記ホイール取付部材2の両端部に鉛直な枢軸6を介して回動自在に取り付けられた左右の回動アーム5と、前記左右の回動アーム5の車体1の外方向に延びる一方の片5aの外端に車軸7を介して回動可能に取り付けられたホイール8と、前記左右の回動アーム5の他方の片5bの先端部分同士を鉛直な枢軸9を介して互いに連結する伸縮軸10と、この伸縮軸10を伸縮操作する回動操作部11とからなる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のホイールアライメントの必要性、アライメントが狂っている状態での車輌の走行状態を事前に顧客に理解してもらうための、もしくは、アライメント作業完了後に顧客に対してアライメント修正内容を説明するためのミニチュア模型に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のホイールアライメントとしてトー調整やキャンバ調整がある。トーは、車を上から見たとき、図3に示すように、進行方向(矢印)に向かう車体を基準として、ホイールの先端部が車体の内側に入っている場合をトーインといい、逆に、図4に示すように、外側に向いている場合をトーアウトという。
【0003】
また、キャンバとは、ホイールの中心線が鉛直線をなす角度をいい、車体の前方から見てホイールの上端が車体の外側に傾斜している場合をポジティブキャンバと呼び、内側に傾斜している場合をネガティブキャンバと呼んでいる。
【0004】
これらトーやキャンバのアライメントは、4輪後輪駆動車(FR車)や4輪前輪駆動車(FF車)、4輪駆動車、スポーツカー、貨物車などの車種や使用条件によって適宜の値に設定される。例えば、FR車ではトーイン傾向にして直進安定性を図るが、FF車ではもともと直進安定性が優れているので、トーはゼロまたはアウト気味にしてコーナリング時のアンダーステア特性を緩和する。また、キャンバは、FF車ではネガティブ側に設定することで旋回性能の向上を図ることができるが、荷重時にはネガティブ側にずれる傾向にあるので貨物車ではポジティブ側に設定するなど、車種や使用条件、使用目的によってそれぞれ好ましい値に設定している。
【0005】
従来より、トーやキャンバを検査するためのホイールアライメントテスタが知られており(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)、このホイールアライメントテスタで検査したあと、検査データを参照して車種に適応したトーやキャンバのアライメント調整を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−18864号公報
【特許文献2】特開2000−230818号公報
【特許文献3】特表2008−512291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ハンドルぶれやハンドルの偏向、直進走行性の不具合などで自家用自動車を修理工場に持ち込む使用者の多くは、ホイールアライメントについての専門的な知識が薄く、そのため、不都合の原因となるホイールの現在の状態やそのアライメント調整の必要性を事前に理解してもらうのに、あるいは、調整後にアライメント内容を説明するのに、ホイールの状態を手で図を描くなどして大変な苦労を要していた。
【0008】
そこで本発明は、上記の課題を解決し、ホイールアライメントの内容や必要性をわかりやすく説明することが可能なミニチュア模型を、簡単な構成で、かつ、低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明では次のような技術的手段を講じた。すなわち、本発明のホイールアライメント用ミニチュア模型は、ミニチュア模型として持ち運び可能な大きさで形成された車体と、車体に支持され、かつ、車体の幅方向に延びるホイール取付部材と、平面略L字形をなし、その屈曲部で前記ホイール取付部材の両端部に鉛直な枢軸を介して回動自在に取り付けられた左右の回動アームと、前記左右の回動アームの、車体の外方向に延びる一方の片の外端に車軸を介して回動可能に取り付けられたホイールと、前記左右の回動アームの他方の片の先端部分同士を鉛直な枢軸を介して互いに連結する伸縮軸と、この伸縮軸を伸縮操作する回動操作部とからなる構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、伸縮軸を伸縮させることにより、ホイールのトーインやトーアウトの状態をミニチュア模型で具現させることができ、顧客に対してアライメント調整の必要性や、調整後におけるアライメント内容をミニチュア模型で示しながらわかりやすく説明することが可能となる。加えて、回動操作部を回動させるだけで伸縮軸が伸縮してトーインやトーアウトを具現させることができるので、操作が容易であり、かつ、その構成が簡単であるから低コストで提供できるなど、種々の効果がある。
【0011】
本発明において、ホイール取付部材は、車体の幅方向の中央位置において、ホイール取付部材の長手方向中央が一点で固定されるとともに、車体に対するホイール取付部材の角度が調整可能に取り付けられるようにしてもよい。
これにより、ホイール取付部材は車体に対し、左右対称に取り付けられるだけでなく、車体に対し斜めに傾斜させて取り付けることができるようになり、そのような取付状態で生じる不具合の説明が簡単に行えるようになる。
【0012】
本発明において、車体が透明な材料からなる板材で形成され、ホイール取付部材が車体の下面側に配置されている構成とするのがよい。
これにより、板状車体の表面をフラットな状態に維持できてミニチュア模型の外観をスマートに形成できるとともに、トー調整時に回動部材や伸縮軸を含む運動機構全体の動きを車体上方から透視することができ、顧客の理解を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るミニチュア模型の一実施例を示す斜視図である。
【図2】上記ミニチュア模型の平面図である。
【図3】上記ミニチュア模型のトーイン時の状態を示す一部の平面図である。
【図4】上記ミニチュア模型のトーアウト時の状態を示す一部の平面図である。
【図5】上記ミニチュア模型で内輪差を解説する場合を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るホイールアライメント説明用のミニチュア模型を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明のミニチュア模型の斜視図であり、図2は平面図であり、図3〜図5はそれぞれ動作を示す平面図である。
【0015】
本発明のミニチュア模型は、アクリル樹脂やガラスなどの透明な材料で作られた平面視長方形の車体1を備えている。車体1はミニチュア模型として持ち運びできるように適切な大きさと強度をもつ板材で形成されており、通常は一人で持ち運びできるように一辺が50cm以下の寸法としてある。例えば、板厚1cm、短辺10cm、長辺22cm程度の方形のアクリル板で形成し、片手で持ちながら説明できる大きさにしてある。車体1の幅方向(左右方向)の中央には、車体の中心線を示す色ライン1aが引いてある。
【0016】
車体1の下面に、車体1の前後方向に所定の間隔をあけて車体の幅方向(左右方向)に延びる前後一対の棒杆状のホイール取付部材2、2が取り付けられている。この取り付け手段は問わないが、図1に示すように、ホイール取付部材2の長手方向の中央部に、上方に延びるネジ軸3を設け、このネジ軸3を車体1に設けた貫通孔を貫通して車体1の上面に突出させて、その突出したネジ軸3に締め付けナット部材4で締め付けることにより、ホイール取付部材2を車体1に一本のネジ軸3とナット部材4のみで簡単に取り付けることができるようにしてある。このとき、車体1の長手方向に対してホイール取付部材2が直交するようにして左右均等(対称)に取り付けるのが正常な取り付け方であるが、故意に斜めになるように角度を調整して取り付けることにより、車体1に対しドライブシャフト(ホイール取付部材2)が誤って斜めに取り付けられた場合の不具合が説明できるようにしてある。
【0017】
それぞれのホイール取付部材2、2の両端部には、平面視で略L字形をなす回動アーム5が鉛直な枢軸6を介して回動自在に取り付けられている。枢軸6はL字形の回動アーム5の屈曲部に形成されており、回動アーム5の車体の外方向に延びる一方の片5aの外端には、車軸7を介してホイール8が回動可能に取り付けられている。
【0018】
さらに、左右の回動アーム5、5の他方の片5b、5bの先端部分を鉛直な枢軸9、9を介して互いに連結する伸縮軸10と、この伸縮軸10を伸縮操作する回動操作部11とが設けられている。
【0019】
伸縮軸10は、回動操作部11を回動することにより伸縮できるものであればどのような構造のものでもよいが、本実施例では、一般に「ターンバックル」と呼ばれている構造のものを採用した。この「ターンバックル」は、回動操作部11を中間部に備えたシャフト12の一端に右ネジ13を、他端に左ネジ(逆ネジ)14を設けて、それぞれのネジを受軸15、15のネジ孔に螺入して構成されている。そして、それぞれの受軸15、15が前記回動アーム5、5の他方の片5b、5bに枢軸9を介して連結されている。
【0020】
次いで、上記ミニチュア模型の動作について説明する。
図2は、トーがゼロの状態、すなわち、車体1の進行方向(矢印)に沿った線を基準とし、対をなす左右のホイール8、8が平行となっている状態を示す。
この状態から、回動操作部11を回動して左右の伸縮軸10を均等に縮小させると、図3に示すように、左側の回動アーム5が枢軸6を支点として時計方向に回動すると共に、右側の回動アーム5が枢軸6を支点として反時計方向に回動する。これにより、回動アーム5、5の車体の外方向に延びる一方の片5aに、車軸7を介して取り付けられたホイール8、8の進行方向先端部が車体の内側に向いたトーインの状態を具現することができる。
【0021】
また、回動操作部11を前記とは逆方向に回動して左右の伸縮軸10を均等に伸長させると、図4に示すように、左右の回動アーム5、5が前記とは逆方向に回動する。これにより、ホイール8、8の進行方向先端部が車体の外側に向いたトーアウトの状態を具現することができる。
【0022】
このようにして、伸縮軸10を均等に伸縮させることにより、ホイール8のトーインやトーアウトの状態をミニチュア模型で具現させることができ、顧客に対してアライメント調整の必要性や、調整後におけるアライメント内容を、ミニチュア模型で示しながらわかりやすく説明することが可能となる。
【0023】
また、一方のホイール8(およびこれに連結される一方の回動アーム5)を手で固定したまま、他方のホイール8を開放した状態で回動操作部11を正逆いずれかに回転させることにより、一方のホイール8はトーゼロに維持しつつ、他方のホイール8をトーイン、トーアウトの状態にすることもできるので、そのような片側ホイールのみの不具合状態をわかりやすく説明することが可能になる。
【0024】
また、ホイール取付部材2が車体1の下面側に配置されているので、板状の車体1の表面をフラットな状態に維持できてミニチュア模型の外観をスマートに形成できるとともに、車体1がガラスやアクリル樹脂などの透明な材料で形成されているので、トー調整時に回動部材5や伸縮軸10を含む機構の全体の動きを車体上方から透視でき、顧客の理解を高めることができる。
【0025】
また、本ミニチュア模型では、旋回時における内輪差の現象をわかりやすく解説するのにも役立てることができる。
内輪差とは、4輪車がカーブを回るときの内側前輪と後輪が描く軌跡の差をいうものであって、ハンドル操作を誤れば、後輪が前輪より内側を回るため、前輪で避けられたものが、後輪の位置では避けられずに衝突するようなことが発生する。
本ミニチュア模型では、図5に示すように、前輪すなわち、前部のホイール8、8を同一方向に向けてコーナリング状態にし、これをテーブル等の平面上で走行させることにより、前部ホイールの内輪が描く軌跡L1と、後部ホイールが描く軌跡L2との差を目で確認することができ、内輪差の現象をわかりやすく解説することができる。
【0026】
上記実施例において、左右のホイール8、8を取り付けるホイール取付部材2は一体的な棒杆材で形成して部品の省力化を図ったが、これに代えて、ホイール取付部材2を右用と左用の二つに分割してそれぞれ車体1に取り付けるようにすることも可能である。
【0027】
以上本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施形態に特定されるものではない。例えば、上記実施例において、車体1を透明な材料からなる板材で形成したが、透視できない板材、または枠組で車体を形成することも可能である。また、前後のホイールにトー調整可能な機構を組み付けたが、前方のホイールのみトー調整可能なホイールとして形成することも可能である。その他本発明では、その目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のミニチュア模型は、自動車のホイールアライメントの必要性を顧客に理解してもらうための用具として利用される。
【符号の説明】
【0029】
1 車体
2 ホイール取付部材
5 回動アーム
5a 回動アームの一方の片
5b 回動アームの他方の片
6 枢軸
7 車軸
8 ホイール
9 枢軸
10 伸縮軸
11 回動操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミニチュア模型として持ち運び可能な大きさで形成された車体と、
前記車体に支持され、かつ、前記車体の幅方向に延びるホイール取付部材と、
平面略L字形をなし、その屈曲部で前記ホイール取付部材の両端部に鉛直な枢軸を介して回動自在に取り付けられた左右の回動アームと、
前記左右の回動アームの前記車体の外方向に延びる一方の片の外端に車軸を介して回動可能に取り付けられたホイールと、
前記左右の回動アームの他方の片の先端部分同士を鉛直な枢軸を介して互いに連結する伸縮軸と、
前記伸縮軸を伸縮操作する回動操作部とを備えたホイールアライメント用ミニチュア模型。
【請求項2】
前記ホイール取付部材は、前記車体の幅方向の中央位置において、前記ホイール取付部材の長手方向中央が一点で固定されるとともに、前記車体に対する前記ホイール取付部材の角度が調整可能に取り付けられる請求項1に記載のホイールアライメント用ミニチュア模型。
【請求項3】
前記車体が透明な材料からなる板材で形成され、前記ホイール取付部材が車体の下面側に配置されている請求項1または請求項2に記載のホイールアライメント説明用ミニチュア模型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−68762(P2013−68762A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206821(P2011−206821)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(590003021)東洋精器工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】