説明

ホイールクレーンのジブ収納装置

【課題】収納作業の簡易化を図るとともに、重量や空気抵抗の低減化ひいては燃費の改善に寄与し得るホイールクレーンのジブ収納装置を提供する。
【解決手段】ジブ収納装置50は、使用時にブーム13の先端に装着されるジブ20を、不使用時に車体1上の所定位置に縦置き姿勢で収納するものであって、上記車体上の所定位置に設けられ、上記ジブを縦置き姿勢で載置して支持する支持部51と、この支持部上に上記ジブを巻上装置によりブームの先端から吊り下げた状態で巻下げるジブ巻下収納時にジブの回転を防止しつつジブの巻下を案内する回転防止兼巻下案内手段52とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールクレーンのジブ収納装置に関し、特に、使用時にブームの先端に装着される比較的長さの短いジブを、不使用時に車体後部などに縦置き姿勢で収納するものに係わる。
【背景技術】
【0002】
一般に、ホイールクレーンにおいては、車体上に基端が揺動可能に支持されたブームとは別に、このブームの長さを補うための比較的長さの長い長尺ジブを装備したり、吊り荷の最大荷重を高めるための比較的長さの短い短尺ジブを装備したりすることがある。
【0003】
そして、この種のジブのうち、長尺ジブを不使用時に収納するジブ収納装置としては、ブームの外側面などにジブを重ね合わせた状態で固定して収納するもの、あるいは特許文献1に開示されているように、車体フレーム上に支持部を設け、この支持部上にジブを前後方向に横置きにした状態で固定して収納するものなどが知られている。
【0004】
また、短尺ジブを不使用時に収納するジブ収納装置としては、車体後部に上方が開口する箱形の収納ボックスを設置し、不使用時にブームの先端から取り外したジブを、ブームの先端から垂下した巻上装置のフックを用いて一旦吊り上げ、上部旋回体を略180度旋回させた後、ジブを巻上装置により吊り下げた状態で上記収納ボックス内に巻下げて縦置き姿勢で収納するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−151078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来のジブ収納装置のうち、後者の短尺ジブ用のものでは、巻上装置によりブームの先端からジブを吊り下げた状態で収納ボックス内に収納する際にジブが巻上装置のフックと共に回転することから、ジブを収納ボックス内に所定の状態で収納するためにクレーン運転者以外の作業員の補助が必要になるという問題がある。また、収納ボックスは、ジブの下半分以上を収納する必要があることから大型になり、その分重量増加やクレーン走行時の空気抵抗の増加ひいては燃費の増加を招くという問題もある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、上述の如く短尺ジブを不使用時に車体上の所定位置に縦置き姿勢で収納するに当たり、簡単な構成でかつクレーン運転者一人でも容易に短尺ジブの収納を行い得るように構成することにより、収納作業の簡易化を図るとともに、重量や空気抵抗の低減化ひいては燃費の改善に寄与し得るホイールクレーンのジブ収納装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、使用時にブームの先端に装着されるジブを、不使用時に車体上の所定位置に縦置き姿勢で収納するホイールクレーンのジブ収納装置として、上記車体上の所定位置に設けられ、上記ジブを縦置き姿勢で載置して支持する支持部と、この支持部上に上記ジブを巻上装置によりブームの先端から吊り下げた状態で巻下げるジブ巻下収納時にジブの回転を防止しつつジブの巻下を案内する回転防止兼巻下案内手段とを備える構成にする。
【0009】
この構成では、ジブの不使用時にブームの先端から取り外したジブを巻上装置により一旦吊り上げた状態から車体上の所定位置に巻下げて収納するジブ巻下収納時には、回転防止兼巻下案内手段によってジブの回転を防止しつつジブの巻下が案内され、ジブが上記所定位置に設けた支持部上に縦置き姿勢で確実に載置して収納されるため、クレーン運転者一人でも容易にかつ安全にジブの収納作業を行うことができる。しかも、ジブを支持部上に載置したときには、上記回転防止兼巻下案内手段によりジブの横転が規制されるため、ジブの収納姿勢を安定させることができる上、支持部の構成ひいてはジブ収納装置の構成を簡単かつコンパクトなものにすることができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のホイールクレーンのジブ収納装置において、上記回転防止兼巻下案内手段の具体的な形態を提供するものである。すなわち、回転防止兼巻下案内手段を、ジブ側又は車体側に設けられた上下方向に延びる長孔又は凹条部と、この長孔又は凹条部に挿入可能に車体側又はジブ側に設けられた凸部とによって構成する。この構成では、ジブ側又は車体側に設けられた上下方向に延びる長孔又は凹条部と、この長孔又は凹条部に挿入可能に車体側又はジブ側に設けられた凸部とによって回転防止兼巻下案内手段が簡単に構成される上、ジブの回転を防止しつつジブの巻下を案内する機能が確実に発揮される。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載のホイールクレーンのジブ収納装置において、上記ジブの好ましい具体的な形態を提供するものである。すなわち、ジブは、複数のシーブを回転可能に支持する支軸と、この支軸の両端にそれぞれ一端が連結された左右一対のフット部材と、この各フット部材と支軸の連結部側にそれぞれ一端が回動可能に連結された左右一対のサスペンションロッドと、上記各フット部材の中間部にブラケットを介してそれぞれ一端が回動可能に連結された左右一対の脚部材とを有しており、ジブの使用時には上記各フット部材の他端及び上記各サスペンションロッドの他端をそれぞれブーム先端の所定部位に結合することでジブがブーム先端に装着され、上記各脚部材はフット部材側に重ね合わせた状態に固定される一方、ジブの不使用時には左右それぞれで上記サスペンションロッドと上記脚部材とをフット部材側に共に重ね合わせかつシーブ側を上側にした状態でジブが上記支持部上に載置して収納され、更に、ジブをブームの先端から取り外して地上などに置くとき上記各脚部材は、その他端が接地するようにフット部材から張り出した状態で固定される構成にする。この構成では、ジブの不使用時にジブの左右それぞれでジブを構成する3つの部材のうち、サスペンションロッドと脚部材とをフット部材側に共に重ね合わせかつシーブ側を上側にした縦置き状態でジブが支持部上に載置して収納されるため、ジブの収納スペースを可及的に小さくすることができる。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3記載のホイールクレーンのジブ収納装置において、上記ジブの各フット部材の他端を、ジブの使用時にその他端に形成した凹部がブーム先端のシーブを支持する支軸の端部に外嵌した状態でピンにより結合し、上記支持部は、車体上の所定位置に水平に設けられた外径が上記支軸のそれと略同一の支持棒を有し、ジブの不使用時に上記ジブの各フット部材の凹部が支持棒に外嵌した状態でピンにより結合することでジブの各フット部材を支持する構成にする。この構成では、ジブの各フット部材の他端に形成した凹部は、ジブの使用時にブーム先端のシーブ支軸の端部に、ジブの不使用時に支持部の支持棒にそれぞれ外嵌した状態で同じピンにより結合されるため、ピンの保管が不要になる。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項4記載のホイールクレーンのジブ収納装置において、上記支持棒の両端部にそれぞれ上方に延びる左右一対の垂直部材の下端を固定し、この各垂直部材の上部に上下方向に延びる長孔を設け、この長孔は、上記ジブ巻下収納時にジブの各フット部材中間部のブラケットに設けたピン孔に対向し、このピン孔及び長孔にピンを挿入することでこのピンと共に上記回転防止兼巻下案内手段の機能を発揮するように構成する。この構成では、車体側の支持棒の両端部にそれぞれ下端が固定された左右一対の垂直部材の上部に設けた長孔と、この長孔及びジブの各フット部材中間部のブラケットに設けたピン孔に挿入したピンとによって回転防止兼巻下案内手段が簡単に構成される上、回転防止兼巻下案内手段の機能、つまりジブの回転を防止しつつジブの巻下を案内する機能が確実に発揮される。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項5記載のホイールクレーンのジブ収納装置において、上記各垂直部材の下部に、上記ジブ巻下収納時にジブの各フット部材の凹部側端部に接触して各フット部材の凹部が支持部の支持棒に外嵌するように案内するガイド板を設ける構成にする。この構成では、ジブを巻上装置により一旦吊り上げた状態から車体上の所定位置に巻下げて収納するジブ巻下収納時には、回転防止兼巻下案内手段によってジブの回転を防止しつつジブの巻下が案内されるだけでなく、各垂直部材の下部に設けたガイド板にジブの各フット部材の凹部側端部が接触して各フット部材の凹部が上記所定位置に設けた支持部の支持棒に外嵌するように案内されるため、上記回転防止兼巻下案内手段を構成する長孔とピンとの間に隙間がある場合でもジブの所定位置でかつ各フット部材の凹部が所定位置に設けた支持部の支持棒に外嵌する縦置き姿勢での収納をより確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明におけるホイールクレーンのジブ収納装置によれば、ジブを巻上装置により一旦吊り上げた状態から車体上の所定位置に巻下げて収納するジブ巻下収納時には、回転防止兼巻下案内手段によってジブの回転を防止しつつジブの巻下が案内され、ジブが上記所定位置に設けた支持部上に縦置き姿勢で確実に載置して収納されるため、クレーン運転者一人でも容易にかつ安全にジブの収納作業を行うことができ、収納作業の容易化及び効率化を図ることができる。しかも、ジブを支持部上に載置したときには、回転防止兼巻下案内手段によりジブの横転が規制されるため、ジブの収納姿勢を安定させることができる上、支持部の構成ひいてはジブ収納装置の構成を簡単かつコンパクトなものにすることができる。その結果、重量やクレーン走行時の空気抵抗の減少化ひいては燃費の改善を図ることができるという効果をも奏するものである。
【0016】
特に、請求項2に係る発明では、ジブ側又は車体側に設けられた上下方向に延びる長孔又は凹条部と、この長孔又は凹条部に挿入可能に車体側又はジブ側に設けられた凸部とによって回転防止兼巻下案内手段を簡単に構成することができる上、ジブの回転を防止しつつジブの巻下を案内する機能を確実に発揮することができるので、実施化を図る上で有効なものである。
【0017】
請求項3に係る発明では、ジブの不使用時にジブの左右それぞれでジブを構成する3つの部材のうち、サスペンションロッドと脚部材とをフット部材側に共に重ね合わせかつシーブ側を上側にした縦置き状態でジブが支持部上に載置して収納されるため、ジブの収納スペースを可及的に小さくすることができ、ジブ収納装置の小型・軽量化ひいては燃費の改善をより図ることができる。
【0018】
請求項4に係る発明では、ジブの各フット部材の他端に形成した凹部は、ジブの使用時にブーム先端のシーブ支軸の端部に、ジブの不使用時に支持部の支持棒にそれぞれ外嵌した状態で同じピンにより結合されるため、ピンの保管が不要になり、実用性に優れた効果を奏するものである。
【0019】
請求項5に係る発明では、車体側の支持棒の両端部にそれぞれ下端が固定された左右一対の垂直部材の上部に設けた長孔と、この長孔及びジブの各フット部材中間部のブラケットに設けたピン孔に挿入したピンとによって回転防止兼巻下案内手段を簡単に構成することができる上、ジブの回転を防止しつつジブの巻下を案内する機能を確実に発揮することができるので、実施化を図る上で有効なものである。
【0020】
さらに、請求項6に係る発明では、ジブ巻下収納時に回転防止兼巻下案内手段によってジブの回転を防止しつつジブの巻下が案内されるだけでなく、各垂直部材の下部に設けたガイド板にジブの各フット部材の凹部側端部が接触して各フット部材の凹部が車体上の所定位置に設けた支持部の支持棒に外嵌するように案内されるため、上記回転防止兼巻下案内手段を構成する長孔とピンとの間に隙間がある場合でもジブの所定位置でかつ各フット部材の凹部が所定位置に設けた支持部の支持棒に嵌合する縦置き姿勢での収納をより確実に行うことができ、収納作業の容易・迅速化をより図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明の実施形態に係るホイールクレーンの側面図である。
【図2】図2は上記ホイールクレーンの車体後部の拡大図である。
【図3】図3は図2のX―X線に沿って見た矢視図である。
【図4】図4は図2のジブ収納装置付近の拡大図である。
【図5】図5は図4のY−Y線に沿って見た矢視図である。
【図6】図6は図4のZ−Z線に沿って見た矢視図である。
【図7】図7は上記ジブ収納装置の取付前の状態を示し、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。
【図8】図8はブームの先端に装着されたジブを取り外すときの状態を示す説明図である。
【図9】図9は上記ジブをジブ収納装置に収納する作業を説明するための説明図である。
【図10】図10は同じく説明図である。
【図11】図11は同じく説明図である。
【図12】図12は同じく説明図である。
【図13】図13は同じく説明図である。
【図14】図14は図13のジブ収納装置付近の拡大図である。
【図15】図15は図14の状態からジブを少し巻下げた状態を示す図14相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態である実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明の一実施形態に係るジブ収納装置を装備したホイールクレーンの全体構成を示し、1は1軸の前輪2及び2軸の後輪3,4を有する下部走行体であって、この下部走行体1の前端部及び後端部にはそれぞれアウトリガ5,6が設けられているとともに、下部走行体1上には上部旋回体11が旋回可能に設けられている。
【0024】
上記上部旋回体11には、運転室を構成するキャブ12が設けられているとともに、伸縮可能なブーム13の基端が起伏可能に支持されている。このブーム13のトップブーム13aの先端部には、図8に拡大詳示するように、アイドラシーブ14及びポイントシーブ15が設けられているとともに、作業内容に応じて、長さの比較的長い長尺ジブ(図示せず)、あるいは長さの比較的短い短尺ジブ20が装着されるようになっている。尚、長尺ジブは、主としてブーム13の長さを補うために使用されるものであり、不使用時にはブーム13のベースブーム13bの側面などに沿った状態で収納されるようになっている。
【0025】
上記短尺ジブ20は、吊り荷の最大荷重を高めるためのものあって、複数(図5では2つ)のシーブ21を回転可能に支持する支軸22と、この支軸22の両端にそれぞれ一端が連結された左右一対のフット部材23と、この各フット部材23と支軸22との連結部側のブラケット24にそれぞれ一端がピン25により回動可能に連結された左右一対のサスペンションロッド26と、上記各フット部材23の中間部にブラケット27を介してそれぞれ一端がピン28により回動可能に連結された左右一対の脚部材29とを有している。そして、短尺ジブ20の使用時には、図8及び図9に示すように、上記各フット部材23の他端及び上記各サスペンションロッド26の他端をそれぞれブーム13のトップブーム13a先端の所定部位に結合することで短尺ジブ20がブーム13のトップブーム13a先端に装着され、上記各脚部材29はフット部材23側に重ね合わせた状態に固定される。このとき、巻上装置のワイヤ30は、ブーム13のトップブーム13a先端のアイドラシーブ14を通して短尺ジブ20のシーブ21に至り、このシーブ21と吊りフック31との間を往復して吊りフック31を3本掛け又は4本掛けで支持するようになっている。一方、短尺ジブ20の不使用時には、図2ないし図6に示すように、左右それぞれで上記サスペンションロッド26と上記脚部材29とをフット部材23側に共に重ね合わせかつシーブ21側を上側にした縦置き状態で短尺ジブ20がジブ収納装置50を介して下部走行体1の後端部に収納される。このとき、巻上装置のワイヤ30は、図11ないし図13に示すように、ブーム13のトップブーム13a先端のアイドラシーブ14及びポイントシーブ15を通して吊りフック31に至り、この吊りフック31を2本掛けで支持するようになっている。更に、短尺ジブ20をブーム13のトップブーム13a先端から取り外して地上などに置くとき上記各脚部材29は、図8に示すように、その他端に設けたローラ32が接地するようにフット部材23から略直角に張り出した状態で固定されるようになっている。
【0026】
上記短尺ジブ20の各サスペンションロッド26は、中空の鞘材26aと、この鞘材26a内に挿入された内材26bとからなる。鞘材26aにはその長手方向に延びかつ横方向に貫通する長孔33が設けられている一方、内材26bには、この長孔33に対応して3つの貫通孔34a,34b,34cが長手方向に所定間隔毎に設けられており、この3つの貫通孔34a〜34cのうちの1つ及び長孔33にピン35を挿入することにより、短尺ジブ20の使用時でのサスペンションロッド26の長さ寸法ひいては短尺ジブ20のオフセット角度が3段階に変更可能に設けられている。短尺ジブ20の不使用時には、サスペンションロッド26は、鞘材26a内に内材26bの大部分を挿入して長さが最小にされる。このとき、ピン35が3つの貫通孔34a〜34cのいずれに挿入されていてもピン35と長孔33との相対位置が変化することでサスペンションロッド26の長さが最小になるが、サスペンションロッド26の長さを最小に維持するためにピン35は貫通孔34cと長孔33とに挿入される。
【0027】
また、上記短尺ジブ20の各フット部材23の他端(つまり支軸22との連結部側と反対側の端)には凹部36が形成されており、短尺ジブ20の使用時には短尺ジブ20の各フット部材23の他端は、この凹部36がブーム13のトップブーム13a先端のポイントシーブ15を支持する支軸37の端部に外嵌した状態で結合ピン38により結合されている。各フット部材23中間部のブラケット27はL字形のものであり、このブラケット27の中間部には脚部材29の一端をピン28により連結するためのピン孔(図示せず)が、ブラケット27の一端部には脚部材29をフット部材23側に重ね合わせた状態で固定するためのピン孔39aが、ブラケット27の他端部には脚部材29をフット部材23から略直角に張り出した状態で固定するためのピン孔39b(図4参照)がそれぞれ設けられている。ピン孔39a,39bのいずれか一方は、脚部材29をフット部材23側に重ね合わせた状態又はフット部材23から略直角に張り出した状態のとき脚部材29に設けたピン孔41(図4参照)と対向し、かつこのピン孔41と共にピン42を挿入することで脚部材29を固定するようになっている。
【0028】
一方、上記ジブ収納装置50は、図2ないし図7に示すように、下部走行体1の後端部に設けられ、上記短尺ジブ20を縦置き姿勢で載置して支持する支持部51と、この支持部51上に短尺ジブ20を巻上装置によりブーム13の先端から吊り下げた状態で巻下げるジブ巻下収納時に短尺ジブ20の回転を防止しつつ短尺ジブ20の巻下を案内する回転防止兼巻下案内手段52とを備えている。
【0029】
上記支持部51は、下部走行体1の最後部の横フレーム7に取り付けられた取付部材53と、この取付部材53の上部に車幅方向に水平に設けられた円管からなる支持棒54とを有している。支持棒54の外径は、上記ブーム13のトップブーム13a先端のポイントシーブ15を支持する支軸37の外径と略同一に設定されており、短尺ジブ20の不使用時でかつジブ収納装置50での収納時には短尺ジブ20の各フット部材23の凹部36が支持棒54に外嵌した状態で結合ピン38により結合することで短尺ジブ20の各フット部材23を固定状態で支持するようになっている。
【0030】
上記回転防止兼巻下案内手段52は、支持部51の支持棒54の両端部から上方に延びる左右一対の垂直部材55,55を有している。この各垂直部材55は、支持棒54及び取付部材53に固着された下端側から前方斜め上向きに延びる下部傾斜部55aと、この下部傾斜部55aから鉛直上方に延びる上部垂直部55bとからなる。左右一対の垂直部材55,55同士は、上下2箇所の位置(詳しくは上部垂直部55bの上端位置と下部傾斜部55aの上端位置)で水平な連結部材56,57を介して連結されている。この各垂直部材55の上部垂直部55bには上下方向に延びる長孔58が設けられており、この長孔58は、上記ジブ巻下収納時に短尺ジブ20の各フット部材23中間部のブラケット27のピン孔39bに対向し、左右それぞれでこのピン孔39b及び長孔58に長尺ピン59を挿入して左右のブラケット27,27間及び垂直部材55,55間に跨がって長尺ピン59を架け渡すことでこの長尺ピン59と共に回転防止兼巻下案内手段52の機能を発揮するようになっている。
【0031】
上記各垂直部材55の下部傾斜部55cの外側面には、上記ジブ巻下収納時に短尺ジブ20の各フット部材23の凹部36側端部に接触して各フット部材23の凹部36が支持部51の支持棒54に外嵌するように案内するガイド板61が側方に突出して設けられている。また、各垂直部材55の上部垂直部55bにはその前縁の上下2箇所にそれぞれ略C字状のベルト通し部62が設けられており、ジブ収納装置50により短尺ジブ20を縦置き姿勢で収納するとき、各ベルト通し部62を通して2本の締結ベルト63,63により短尺ジブ20とジブ収納装置50の垂直部材55とを締結するようになっている。
【0032】
さらに、上記支持部51の支持棒54には各垂直部材55より内側近傍位置からそれぞれ後方上向きに延びる左右一対の取付プレート64,64の基端部が固着されており、この各取付プレート64の先端部にはピン孔65が設けられている。そして、ジブ収納装置50により短尺ジブ20を縦置き姿勢で収納するとき、上記ピン孔65は、短尺ジブ20の各サスペンションロッド26の鞘材26aの端部にブーム13のトップブーム13a先端とのピン結合のために設けたピン孔66と対向し、この両ピン孔65,66に上記ピン結合を取り外したときのピン67を挿入することで各サスペンションロッド26がそれぞれ取付プレート64に固定されるようになっている。
【0033】
次に、上記ホイールクレーンにおいて、ブーム13の先端に装着された短尺ジブ20を、下部走行体1の後端部に設けたジブ収納装置50により縦置き姿勢で収納する場合の作業手順を、図9ないし図15などを参照しながら説明する。
【0034】
上記短尺ジブ20を用いた作業が終了した後、先ず、図9に示すように、ブーム13を最縮小状態よりも少し伸長した状態で起伏角度が略零になるまで下げ、短尺ジブ20のシーブ21から巻上装置のワイヤ30を介して垂下する吊りフック31を接地させる。この状態において、短尺ジブ20の各脚部材29をフット部材23側に重ね合わせた位置からフット部材23から略直角に張り出した位置にまでピン28回りに回動し、この位置でピン42により固定する。また、吊りフック31を取り外すとともに、この吊りフック31に関連する過巻防止リミットスイッチや重錘などの装備品(いずれも図示せず)を取り外す。
【0035】
続いて、図10に示すように、ブーム13を下げて短尺ジブ20のシーブ21及び各脚部材29のローラ32を接地させる。この状態において、短尺ジブ20の各フット部材23及び各サスペンションロッド26とブーム13先端との結合をそれぞれ外して短尺ジブ20をブーム13先端から切り離する。このとき、図8に拡大詳示するように、短尺ジブ20の各サスペンションロッド26を最小長さに縮小し、ピン35を長孔33及び貫通孔34cに挿入する。また、ブーム13を最縮小状態にまで縮小する。
【0036】
次いで、図11に示すように、ブーム13先端のポイントシーブ15と吊りフック31との間で巻上装置のワイヤ30を巻き掛けて吊りフック31を取り付けた後、ブーム13を略水平状態(起伏角度が略零の状態)にまで上げる。この状態で吊りフック31に関連する過巻防止リミットスイッチや重錘などの装備品を取り付ける。
【0037】
続いて、図12に示すように、ブーム13の先端から吊り下げた吊りフック31及び吊りベルト68により短尺ジブ20の各フット部材23の凹部36側端部を吊り上げ、短尺ジブ20の各脚部材29のローラ32が地面から若干離れた状態にする。この状態で短尺ジブ20の各脚部材29をフット部材23側に重ね合わせた位置に回動し、この位置でピン42により固定する。そして、吊りフック31を下げて短尺ジブ20を一旦横倒しにし、吊りフック31の吊り上げ箇所(詳しくは吊りベルト68の掛け止め位置)を短尺ジブ20のシーブ21側に変更した後、吊りフック31により短尺ジブ20をシーブ側21を上側にした状態で吊り上げる。
【0038】
次いで、図13に示すように、上部旋回体11を略180度旋回し、巻上装置の吊りフック31により吊り上げた短尺ジブ20を下部走行体1の後端部に設けたジブ収納装置50の上方に移動させる。
【0039】
しかる後、巻上装置により短尺ジブ20の各フット部材23中間部のブラケット27のピン孔39bがそれぞれ上記ジブ収納装置50の各垂直部材55の長孔58の上側部位に対向する位置にまで短尺ジブ20をゆっくり巻下げる。その際、短尺ジブ20は吊りフック31と共に鉛直線回りに自由に回転するので、短尺ジブ20の各フット部材23中間部のブラケット27をジブ収納装置50の各垂直部材55の上部垂直部55bの上端部と適宜接触させて大凡の位置合わせを行う。
【0040】
続いて、図14に示すように、短尺ジブ20の左右それぞれで上記ピン孔39bとジブ収納装置50の垂直部材50の長孔58の上側部位とを対向させ、この両孔39b,58に長尺ピン59を挿入して短尺ジブ20の左右のブラケット27,27間及びジブ収納装置50の左右の垂直部材55,55間に跨がって長尺ピン59を架け渡す。その際、短尺ジブ20は、吊りフック31で吊り下げ状態にあるため、ピン孔39bと長孔58との位置合わせを軽い力で容易に行うことができる。
【0041】
次いで、巻上装置により短尺ジブ20をゆっくり下げる。このとき、短尺ジブ20は、上記長尺ピン59とジブ収納装置50の各垂直部材55の長孔58とが係合しているため、回動することなく、垂直部材55の長孔58に沿って降下する。
【0042】
更に、短尺ジブ20を巻下げると、図15に示すように、短尺ジブ20の左右それぞれでフット部材23の凹部36側端部がジブ収納装置50の垂直部材55側面のガイド板61に接触して、フット部材23の凹部36がジブ収納装置50の支持部51の支持棒54に外嵌するように案内される。このため、上述した長尺ピン59と垂直部材55の長孔58との間に隙間によるガタ付きがある場合でも短尺ジブ20は、その各フット部材23の凹部36がジブ収納装置50の支持部51の支持棒54に外嵌する所定位置に縦置き姿勢で確実に載置して収納されることになり、短尺ジブ20の収納作業を容易にかつ確実・迅速に行うことができる。
【0043】
しかる後、図4ないし図6に示すように、短尺ジブ20の各フット部材23の凹部36側端部を、それぞれ結合ピン38によりジブ収納装置50の支持部51の支持棒54に結合する。また、短尺ジブ20の各サスペンションロッド26のフリー側の一端を、それぞれジブ収納装置50の取付プレート64にピン67により結合する。更に、短尺ジブ20とジブ収納装置50の各垂直部材55とを2本の締結ベルト63,63により締結し、これにより、短尺ジブ20とジブ収納装置50の各垂直部材55との間のガタ付きをなくして走行時の振動や騒音の発生を防止する。最後に、短尺ジブ20から吊りベルト68を取り外す。
【0044】
以上のような作業手順の場合、特に、巻上装置によりブーム13の先端から短尺ジブ20を吊り下げた状態でジブ収納装置50の支持部51上に巻下げて収納するときには、長尺ピン59とジブ収納装置50の各垂直部材55の長孔58との係合によって短尺ジブ20の回動ないし回転を防止しつつ長孔58に沿って短尺ジブ20の巻下が案内され、短尺ジブ20がジブ収納装置50の支持部51上に縦置き姿勢で確実に載置して収納されるため、クレーン運転者一人でも容易にかつ安全に短尺ジブ20の巻下収納作業を行うことができる。すなわち、クレーン運転者は、巻上装置により短尺ジブ20の各フット部材23中間部のブラケット27のピン孔39bがジブ収納装置50の各垂直部材55の長孔58の上側部位に対向する位置にまで短尺ジブ20をゆっくり巻下げたときに一旦キャブ12内から出て、下部走行体1上において、短尺ジブ20の左右それぞれで上記ピン孔39bとジブ収納装置50の垂直部材50の長孔58の上側部位とを対向させ、この両孔39b,58に長尺ピン59を挿入して短尺ジブ20の左右のブラケット27,27間及びジブ収納装置50の左右の垂直部材55,55間に跨がって長尺ピン59を架け渡す作業を自らすることによって、短尺ジブ20の巻下収納作業を容易にかつ安全に行うことができる。
【0045】
しかも、短尺ジブ20をジブ収納装置50の支持部51上に載置したときには、上記長尺ピン59とジブ収納装置50の各垂直部材55の長孔58との係合によって短尺ジブ20の横転が規制されるため、短尺ジブ20の収納姿勢を安定させることができる上、支持部51の構成ひいてはジブ収納装置50の構成を簡単かつコンパクトなものにすることができ、重量やクレーン走行時の空気抵抗の減少化ひいては燃費の改善を図ることができる。
【0046】
特に、本実施形態の場合、短尺ジブ20の不使用時に短尺ジブ20の左右それぞれで短尺ジブ20を構成する3つの部材のうち、サスペンションロッド26と脚部材29とをフット部材23側に共に重ね合わせかつシーブ21側を上側にした縦置き状態で短尺ジブ20が支持部51上に載置して収納されるため、短尺ジブ20の収納スペースを可及的に小さくすることができ、ジブ収納装置50の小型・軽量化ひいては燃費の改善をより図ることができる。
【0047】
また、短尺ジブ20の各フット部材23の端部に形成した凹部36は、短尺ジブ20の使用時にブーム13先端のポイントシーブ用支軸37の端部に、短尺ジブ20の不使用時にジブ収納装置50の支持部51の支持棒54にそれぞれ外嵌した状態で同じ結合ピン38により結合されるため、結合ピン38の保管が不要になり、実用性に優れた効果を奏するものである。
【0048】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,その他種々の形態を包含するものである.例えば、上記実施形態では、ジブ収納装置50の各垂直部材55の上部垂直部55bに上下方向に延びる長孔58を設けるとともに、短尺ジブ20の各フット部材23中間部のブラケット27にピン孔39bを設け、短尺ジブ20の左右それぞれでこのピン孔39b及び長孔58に長尺ピン59を挿入して左右のブラケット27,27間及び垂直部材55,55間に跨がって長尺ピン59を架け渡すことで回転防止兼巻下案内手段52の機能を発揮するように構成したが、本発明は、これに限らず、例えば短尺ジブ20の左右それぞれでピン孔39b及び長孔59に別々の通常のピンを挿入することで回転防止兼巻下案内手段52の機能を発揮するように構成したり、あるいはジブ収納装置50側にピン孔を、短尺ジブ20側に長孔をそれぞれ設け、このピン孔と長孔とにピンを挿入することで回転防止兼巻下案内手段52の機能を発揮するように構成したりしても良い。また、長孔とピンとの代わりに,リンク機構などを用いて構成し、あるいはピンの代わりに,車体側又はジブ側に凸部を設けて構成しても良い。
【0049】
さらに、上記実施形態では、短尺ジブ20を縦置き姿勢で載置して支持する支持部51として、円管からなる支持棒54を有する構成にしたが,本発明は,この支持棒54の代わりに,例えば水平な台座を有し、この台座上に短尺ジブ20を載置して支持するように構成しても良いのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1 下部走行体(車体)
13 ブーム
15 ポイントシーブ
20 短尺ジブ
21 シーブ
22 支軸
23 フット部材
26 サスペンションロッド
27 ブラケット
29 脚部材
31 吊りフック(巻上装置)
36 凹部
37 支軸
38 結合ピン
39b ピン孔
50 ジブ収納装置
51 支持部
52 回転防止兼巻下案内手段
54 支持棒
55 垂直部材
58 長孔
59 長尺ピン(凸部)
61 ガイド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時にブームの先端に装着されるジブを、不使用時に車体上の所定位置に縦置き姿勢で収納するホイールクレーンのジブ収納装置であって、
上記車体上の所定位置に設けられ、上記ジブを縦置き姿勢で載置して支持する支持部と、
この支持部上に上記ジブを巻上装置によりブームの先端から吊り下げた状態で巻下げるジブ巻下収納時にジブの回転を防止しつつジブの巻下を案内する回転防止兼巻下案内手段とを備えたことを特徴とするホイールクレーンのジブ収納装置。
【請求項2】
上記回転防止兼巻下案内手段は、ジブ側又は車体側に設けられた上下方向に延びる長孔又は凹条部と、この長孔又は凹条部に挿入可能に車体側又はジブ側に設けられた凸部とからなる請求項1記載のホイールクレーンのジブ収納装置。
【請求項3】
上記ジブは、複数のシーブを回転可能に支持する支軸と、この支軸の両端にそれぞれ一端が連結された左右一対のフット部材と、この各フット部材と支軸の連結部側にそれぞれ一端が回動可能に連結された左右一対のサスペンションロッドと、上記各フット部材の中間部にブラケットを介してそれぞれ一端が回動可能に連結された左右一対の脚部材とを有しており、ジブの使用時には上記各フット部材の他端及び上記各サスペンションロッドの他端をそれぞれブーム先端の所定部位に結合することでジブがブーム先端に装着され、上記各脚部材はフット部材側に重ね合わせた状態に固定される一方、ジブの不使用時には左右それぞれで上記サスペンションロッドと上記脚部材とをフット部材側に共に重ね合わせかつシーブ側を上側にした状態でジブが上記支持部上に載置して収納され、更に、ジブをブームの先端から取り外して地上などに置くとき上記各脚部材は、その他端が接地するようにフット部材から張り出した状態で固定されるように構成されている請求項1又は2記載のホイールクレーンのジブ収納装置。
【請求項4】
上記ジブの各フット部材の他端は、ジブの使用時にその他端に形成した凹部がブーム先端のシーブを支持する支軸の端部に外嵌した状態でピンにより結合されており、上記支持部は、車体上の所定位置に水平に設けられた外径が上記支軸のそれと略同一の支持棒を有し、ジブの不使用時に上記ジブの各フット部材の凹部が支持棒に外嵌した状態でピンにより結合することでジブの各フット部材を支持するようになっている請求項3記載のホイールクレーンのジブ収納装置。
【請求項5】
上記支持棒の両端部にはそれぞれ上方に延びる左右一対の垂直部材の下端が固定され、この各垂直部材の上部には上下方向に延びる長孔が設けられており、この長孔は、上記ジブ巻下収納時にジブの各フット部材中間部のブラケットに設けたピン孔に対向し、このピン孔及び長孔にピンを挿入することでこのピンと共に上記回転防止兼巻下案内手段の機能を発揮するようになっている請求項4記載のホイールクレーンのジブ収納装置。
【請求項6】
上記各垂直部材の下部には、上記ジブ巻下収納時にジブの各フット部材の凹部側端部に接触して各フット部材の凹部が支持部の支持棒に外嵌するように案内するガイド板が設けられている請求項5記載のホイールクレーンのジブ収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−241035(P2011−241035A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113838(P2010−113838)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】