説明

ホイール組付けロボット搬送システム

【課題】 (イ)従来搬送システムにおける、フィーダーまたはローラーコンベア搬送においてはワークに位置ずれが生じること、(ロ)各機の故障が生じたときに修理が困難であること、(ハ)各フィーダの予備品の数が多くなること、の何れか少なくとも1つを解決できるホイール組付けロボット搬送システムの提供。
【解決手段】 リム溶接部位置決めステーション11、リム溶接部ヘリウムリークテストステーション12、リムバルブ穴抜きステーション13、リムバルブ穴コインおよびリムのディスクへの仮嵌入ステーション14、リムのディスクへの本嵌入ステーション15の各ステーション間位置A、B、C、Dに汎用ロボット20を配置して、該汎用ロボット20によりステーション間のワーク30の搬送、位置決めを行うようにしたホイール組付けロボット搬送システム10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイール組付けロボット搬送システム(装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリム溶接部検査からディスクへの本嵌入までのホイール組付け搬送システムは、実開昭62−172528号公報に示すように、あるいは、図3、図4に示すように、フィーダーまたはローラーコンベアーによっていた。
図3に示すように、従来、リムは、ステーション1でリム溶接部の位置決めをし、ステーション2でリム溶接部のヘリウムリークテストを行い、ステーション3でリムのバルブ穴抜きを行い、ステーション4でリムの嵌入位置決めをし、ステーション5でリムのバルブ穴コインをし、ステーション6でリムのディスクへの仮嵌入をし、ステーション7でリムのディスクへの本嵌入をしていた。リム溶接部のヘリウムリークテストは、内部を真空にしたリムにリム外側からヘリウムを吹きつけリム内部に洩れるヘリウムをディテクタで検出し溶接部に欠陥があることを検出する。ステーション3のリムバルブ穴抜きは、ステーション2におけるリムの溶接部位置を維持したままリムを両側から挟みフィーダでステーション3に搬送してバルブ穴抜きする。ステーション4のリムの嵌入位置決めは、バルブ穴を検知してリムの嵌入位置決めをする。ステーション5のバルブ穴コインはバルブ穴角部の面取りをするためのコイニングである。
ステーション1の溶接部位置決めは目視と手作業であるが、ステーション2〜7の各ステーションでの作業は自動である。また、ステーション間のワークの搬送は、ステーション3とステーション4との間のワークの搬送を除き、フィーダーによる搬送であり、ステーション3とステーション4との間のワークの搬送はローラーコンベアによる搬送となっていた。ステーション1、2、3は第1のトランスファーフィーダーの中に配置されており、ステーション5、6、7は第1のトランスファーフィーダーとは別のフィーダーである第2のトランスファーフィーダーの中に配置されていた(図4)。たとえば、ステーション5、6でトランスファーフィーダー8のグリッパー9でワークを横方向両側から挟んでフィーダー8を1ピッチ前進させてステーション5のワークをステーション6に、ステーション6のワークをステーション7に搬送して、ワークを放し、ついでフィーダー8を1ピッチ後退させることを繰り返していた。
【0003】
しかし、従来の、ワーク搬送およびワーク位置決めには、以下の問題があった。
(イ)各ステーション間の搬送をフィーダーまたはローラーコンベアによって行っているため、フィーダー搬送におけるワークの位置ずれ(フィーダーのグリッパーでワークを掴んで送っては放すことを繰り返すので、搬送のたびに少しづつワークの位置がずれる)や、ローラーコンベア搬送におけるワークの位置ずれが生じていた。
フィーダー搬送における位置ずれが許容量を超えると、次工程での設備停止、不良品発生に直接つながっていた。
ローラーコンベア搬送の場合、バルブ穴抜きのためにステーション3でワークは位置決めされているが、次工程にローラーコンベア搬送するので、搬送後の再位置決め(ステーション4の位置決めがこの再位置決めになる)が必要となっていた。
(ロ)トランスファーフィーダーの中に各ステーションの各機がレイアウトされているので(たとえば、フィーダー8の中にコイン機5、仮嵌入機6、本嵌入機7がレイアウトされているので)、フィーダーの中の各機が故障した場合、フィーダーが故障機へのアクセスの障害になって、故障機の修理が困難であった。
(ハ)フィーダーがそれぞれ専用機であるため、予備品(たとえば、グリッパー)の共通化ができなかった。そのため、予備品の数が多くなり、コストアップを招いていた。
【特許文献1】実開昭62−172528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする問題点は、(イ)従来搬送システムにおける、フィーダーまたはローラーコンベア搬送においてはワークに位置ずれが生じること、(ロ)各機の故障が生じたときに修理が困難であること、(ハ)各フィーダの予備品の数が多くなること、等の問題である。
【0005】
本発明の目的は、上記問題点(イ)〜(ハ)の少なくとも一つを解決できるホイール組付けロボット搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) リム溶接部位置決めステーション、リム溶接部ヘリウムリークテストステーション、リムバルブ穴抜きステーション、リムバルブ穴コインおよびリムのディスクへの仮嵌入ステーション、リムのディスクへの本嵌入ステーションの各ステーション間位置に汎用ロボットを配置して、該汎用ロボットによりステーション間のワークの搬送、位置決めを行うようにしたホイール組付けロボット搬送システム。
(2) 前記汎用ロボットの手首にグリップを取り付けた(1)記載のホイール組付けロボット搬送システム。
(3) 各工程機を、それぞれ単独で配置した(1)記載のホイール組付けロボット搬送システム。
(4) 前記グリップを何れの前記汎用ロボットに対しても共通とした(2)記載のホイール組付けロボット搬送システム。
(5) リムバルブ穴コインとリムのディスクへの仮嵌入を同じステーションに統合した(1)記載のホイール組付けロボット搬送システム。
(6) リムバルブ穴抜きステーションとリムバルブ穴コインステーションとの間の、リムの嵌入位置決めステーションは廃止した(1)記載のホイール組付けロボット搬送システム。
【発明の効果】
【0007】
上記(1)のホイール組付けロボット搬送システムによれば、従来のフィーダー搬送とローラーコンベアを汎用ロボットによりワークをつかみ搬送するロボット搬送に変えたので、ワークの搬送の位置、姿勢の精度を高精度、高自由度とすることができる。これにより、搬送位置ずれがなくなり、位置ずれが原因による設備停止、加工不良が減少する。これによって、上記(イ)の課題が解決される。
また、各ステーション間にロボットがあるだけで、ステーションまわりにフィーダーが無いので、各工程機のまわりが空いており、各工程機へのアクセスが容易である。その結果、メンテナンス性が向上し、故障機の修理が容易になる。これによって、上記(ロ)の課題が解決される。
また、汎用ロボット、グリップ(グリッパー)は共用化できるので、ひとつの汎用ロボット、グリッパーに対して予備品をもっておけば、全ロボット、全グリッパーの何れに故障が生じても予備品を用いて修理できる。その結果、予備品の数を少なくすることができる。これによって、上記(ハ)の課題が解決される。
従来のフィーダー搬送とローラーコンベアをロボット搬送に変えたので、各工程機の配置の位置の自由度が向上し、全工程機が占める占有面積が約半分になる。
上記(2)のホイール組付けロボット搬送システムによれば、汎用ロボットの手首にグリップを取り付けたので、グリップを高精度グリップとすることにより、ワーク搬送の高精度化をより一層はかることができる。
上記(3)のホイール組付けロボット搬送システムによれば、各工程機を、それぞれ単独で配置したので、従来のように、フィーダーの中に複数、直列に並べて配置する必要がなくなり、各工程機の配置の位置の自由度が向上する。
上記(4)のホイール組付けロボット搬送システムによれば、グリップを何れの汎用ロボットに対しても共通構造としたので、グリップを共用化でき、予備品の数を少なくすることができる。
上記(5)のホイール組付けロボット搬送システムによれば、リムバルブ穴コインおよびリムのディスクへの仮嵌入を1つのステーションに統合したので、従来あったリムバルブ穴コインステーションとリムのディスクへの仮嵌入ステーションとの間のフィーダーを廃止することができる(「フィーダーを廃止することができる」ということは、「フィーダーが不要になる」という意味である。)。
上記(6)のホイール組付けロボット搬送システムによれば、ローラコンベア搬送をロボット搬送に変えたので、従来あった、リムバルブ穴抜きステーションとリムバルブ穴コインステーションとの間の、リムの嵌入位置決めステーションを廃止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のホイール組付けロボット搬送システムを、図1、図2を参照して、説明する。ホイールはスチールホイールでもアルミホイールであってもよい。
本発明のホイール組付けロボット搬送システム10は、リム溶接部の検査からリムのディスクへの本嵌入までに、リム溶接部位置決めステーション11、リム溶接部ヘリウムリークテストステーション12、リムバルブ穴抜きステーション13、リムバルブ穴コインおよびリムのディスクへの仮嵌入ステーション14、リムのディスクへの本嵌入ステーション15の5つのステーションを有している。各ステーション間位置A、B、C、Dに、それぞれ、汎用ロボット20を配置して、汎用ロボット20によりステーション間のワーク(リム、仮嵌入工程後はリムをディスクに嵌入したホイール)30の搬送、位置決めを行うようにしている。5つのステーション間に4つのロボット20が配置される。
【0009】
位置Aのロボット20は、リム溶接部位置決めステーション11からリム溶接部ヘリウムリークテストステーション12にワーク30を搬送するロボットであり、位置Bのロボット20は、リム溶接部ヘリウムリークテストステーション12からリムバルブ穴抜きステーション13にワーク30を搬送するロボットであり、位置Cのロボット20は、リムバルブ穴抜きステーション13からリムバルブ穴コインおよびリムのディスクへの仮嵌入ステーション14にワーク30を搬送するロボットであり、位置Dのロボット20は、リムバルブ穴コインおよびリムのディスクへの仮嵌入ステーション14からリムのディスクへの本嵌入ステーション15にワーク30を搬送するロボットである。
【0010】
汎用ロボット20は、市販の、6自由度をもつ関節型ロボットである。ロボット20の基台は固定であるが、ロボット手首は、ロボットアームが走査できる範囲で自由な位置、姿勢をとり得る。
汎用ロボット20の手首には、ロボットハンドとしてのグリップ(グリッパーともいう)21が取り付けられる。グリップ21はロボット20に着脱可能で、ホイール組付けシステムに対して専用のグリップである。グリップ21はワーク30を外周側から、かつ、両側から挟んで掴んだり放したりする。
【0011】
各ステーション間位置A、B、C、Dのロボット20は、何れのステーション間のロボットにも同じ構造のロボット(ただし、ロボットに入力する搬送用データは異なる)が用いられる。また、何れのステーション間位置A、B、C、Dのロボット20のグリップ21も同じ構造のグリップ21である。
グリップ21によるワーク把持とロボット20によるワーク搬送のため、ローラーコンベアやフィーダーなどにあったワークとコンベア、フィーダとの接触、衝突による騒音は大幅に抑えられる。
【0012】
各工程機11、12、13、14、15(各ステーションと同じ位置のため、各ステーションと同じ符号を付す)は、それぞれ単独で配置してあり、フィーダーの中に並べて配置していない。
従来のロボットは、人が行っていた作業を自動化するために用いられるが、本発明のロボット搬送は、それと異なり、従来既にフィーダーやローラーコンベアのように機械化されていたホイール組付け搬送システムを、高精度に位置決めかつ搬送するために、ロボット搬送に切り替えたものである。各ステーションにおける各工程機は従来機と同じか本質的に同じであるが、ステーション間の搬送部分が、従来のフィーダーやローラーコンベアから、汎用ロボット20と専用グリップ21との組み合わせに取り替えられたものに相当する。
各工程機11、12、13、14、15を、それぞれ単独に配置することにより、各工程機11、12、13、14、15の配置の自由度が高まり、図2のように配置した場合には、全工程機11、12、13、14、15の配置に要するスペースが縦、横、16m、5mとなり、全工程機11、12、13、14、15の配置占有面積が従来に比べて約50%か、それ以下となっている。
【0013】
本発明では、リムバルブ穴コインおよびリムのディスクへの仮嵌入を同じステーション14に統合してあり、従来別々のステーションであった、リムバルブ穴コインステーションとリムのディスクへの仮嵌入ステーションが、同じステーションに配置されて統合してある。
【0014】
従来の、リムバルブ穴抜きステーション3とリムバルブ穴コインステーション5との間の、リムの嵌入位置決めステーション4は不要となり、本発明では、リムバルブ穴抜きステーション13、リムバルブ穴コインおよびリムのディスクへの仮嵌入ステーション14との間には、従来あったリムの嵌入位置決めステーション4がない。
【0015】
つぎに、本発明のホイール組付けロボット搬送システムの作用・効果を説明する。
本発明では、従来のフィーダー搬送とローラーコンベアを、汎用ロボット20と専用グリップ21によりワーク30をつかみ搬送するロボット搬送に変えたので、ワーク30の搬送の位置、姿勢の精度が大幅に向上する。これにより、搬送位置ずれがなくなり、位置ずれが原因による設備停止、加工不良がなくなる。これによって、前述の(イ)の課題が解決される。また、ロボット20による搬送のため、各工程機の配置の自由度が大幅に向上する。
【0016】
また、各ステーション間位置A、B、C、Dにロボット20があるだけで、ステーション、各工程機まわりにフィーダーが無いので、各工程機のまわりが空いており、各工程機への作業者のアクセスが容易である。その結果、各工程機およびロボット20のメンテナンス性が向上し、故障機の修理が容易になる。これによって、前述の(ロ)の課題が解決される。
【0017】
また、汎用ロボット20は、互いに共用化でき、グリップ21も、互いに共用化できるので、ひとつの汎用ロボット20、グリップ21に対してそれぞれ予備品をもっておけば、全ロボット20、全グリップ21の何れに故障が生じてもその予備品を用いて修理できる。その結果、予備品の数を少なくすることができる。これによって、前述の(ハ)の課題が解決される。
従来のフィーダー搬送とローラーコンベアをロボット20によるワーク搬送に変えたので、各工程機の配置の位置の自由度が向上し、全工程機が占める占有面積が約半分になる。
【0018】
汎用ロボット20の手首にグリップ21を取り付けたので、グリップ21を専用の高精度グリップとすることができるようになり、ワーク搬送の位置、姿勢の高精度化をより一層はかることができる。
また、各工程機11、12、13、14、15を、それぞれ単独で配置したので、従来のように、フィーダーの中に複数、直列に並べて配置する必要がなくなり、各工程機11、12、13、14、15の配置の位置の自由度が向上する。
【0019】
また、リムバルブ穴コインおよびリムのディスクへの仮嵌入を1つのステーション14に統合したので、従来のリムバルブ穴コインステーション5とリムのディスクへの仮嵌入ステーション6との間のフィーダー8が不要になる。
また、ローラーコンベア搬送をロボット搬送に変えたので、従来あった、リムバルブ穴抜きステーション3とリムバルブ穴コインステーション5との間の、リムの嵌入位置決めステーション4が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のホイール組付けロボット搬送システムのリム溶接部検査から本嵌入までの各工程を示す工程図である。
【図2】本発明のホイール組付けロボット搬送システムのリム溶接部検査から本嵌入までの各ステーションと搬送ロボット配置を示す配置図である。
【図3】従来のホイール組付けロボット搬送システムのリム溶接部検査から本嵌入までの各工程を示す工程図である。
【図4】従来のリムバルブ穴コインからリムディスク本嵌入までのトランスファーフィーダーとその中に配置された各工程の配置図である。
【符号の説明】
【0021】
10 ホイール組付けロボット搬送システム
11 リム溶接部位置決めステーション
12 リム溶接部ヘリウムリークテストステーション
13 リムバルブ穴抜きステーション
14 リムバルブ穴コインおよびリムのディスクへの仮嵌入ステーション
15 リムのディスクへの本嵌入ステーション
20 汎用ロボット
21 グリップ
30 ワーク
A、B、C、D ステーション間位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リム溶接部位置決めステーション、リム溶接部ヘリウムリークテストステーション、リムバルブ穴抜きステーション、リムバルブ穴コインおよびリムのディスクへの仮嵌入ステーション、リムのディスクへの本嵌入ステーションの各ステーション間位置に汎用ロボットを配置して、該汎用ロボットによりステーション間のワークの搬送、位置決めを行うようにしたホイール組付けロボット搬送システム。
【請求項2】
前記汎用ロボットの手首にグリップを取り付けた請求項1記載のホイール組付けロボット搬送システム。
【請求項3】
各工程機を、それぞれ単独で配置した請求項1記載のホイール組付けロボット搬送システム。
【請求項4】
前記グリップを何れの前記汎用ロボットに対しても共通とした請求項2記載のホイール組付けロボット搬送システム。
【請求項5】
リムバルブ穴コインおよびリムのディスクへの仮嵌入を同じステーションに統合した請求項1記載のホイール組付けロボット搬送システム。
【請求項6】
リムバルブ穴抜きステーションとリムバルブ穴コインステーションとの間の、リムの嵌入位置決めステーションは廃止した請求項1記載のホイール組付けロボット搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−932(P2006−932A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176456(P2004−176456)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】