ホウ素分離システム
【課題】簡単な構成および低コストで、ホウ素を含有する原水を、ホウ素と処理水とに分離することができる。
【解決手段】ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含む原水が供給されると、供給された原水に電圧を印加し、還元によってホウ素を生成する化学処理槽16aと、化学処理槽16aで生成されたホウ素を回収する回収槽21とを備える。
【解決手段】ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含む原水が供給されると、供給された原水に電圧を印加し、還元によってホウ素を生成する化学処理槽16aと、化学処理槽16aで生成されたホウ素を回収する回収槽21とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素を含有する原水を、ホウ素と処理水とに分離するホウ素分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ素は、ガラス産業やメッキ産業等において工業材料として広く利用される物質である。一方、ホウ素は、神経障害や消化器異常等、人体に悪影響を及ぼす物質として知られている。そのため、ホウ素の排水基準値は10mg/L、環境基準値は1mg/Lと規定されており、ホウ素を含有する産業排水からはホウ素を除去する必要がある。
【0003】
海水には、4〜5mg/Lの濃度でホウ素が存在している。したがって、仮に、海水から水道水を生産しようとする場合には、海水からホウ素を除去する必要がある。また、海水からホウ素を選択的に回収することができれば、海水から回収したホウ素を工業材料として利用することができる。日本では、工業材料のホウ素の略100%を海外から輸入しており、海水からホウ素を回収できれば、このホウ素の回収は有効である。
【0004】
ホウ素含有水をホウ素と処理水とに分離する方法としては、「凝集沈殿法」、「イオン交換樹脂法」または「逆浸透膜法」が知られている。「凝集沈殿法」は、ホウ酸イオンを含む水中にカルシウム系またはアルミニウム系の凝集剤を注入し、凝集剤にホウ素を取り込んで共沈させる方法である(例えば、特許文献1参照)。また、「イオン交換樹脂法」は、水中に溶解している多様な形態のホウ酸イオンをイオン交換樹脂により捕捉、除去、回収する方法である(例えば、特許文献2参照)。また、「逆浸透膜法」は、酢酸セルロース系またはポリアミド系の逆浸透膜で処理する方法である。
【特許文献1】特開2003−236562号公報
【特許文献2】特開平9−314130号公報
【特許文献3】特開平9−290275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、凝集沈殿法では、ホウ素の回収率が低く、しかも大量に発生したホウ素を含む汚泥を処理している。また、イオン交換樹脂法では、大量のイオン交換樹脂が必要である。さらに、逆浸透膜法では、ホウ素の除去率が45〜75%であり、通常は2段階の複雑な処理が必要である。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、簡単な構成および低コストで、ホウ素を含有する原水を、ホウ素と処理水とに分離するホウ素分離システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴に係るホウ素分離システムは、ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含む原水が供給されると、供給された原水に電圧を印加し、還元によってホウ素を生成する化学処理槽と、前記化学処理槽で生成されたホウ素を回収する回収槽とを備える。
【0008】
また、本発明の他の特徴に係るホウ素分離システムは、ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含む原水を、ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含む濃縮液とホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含まない処理水とに分離する第1の分離手段と、前記分離手段から濃縮液が供給されると、供給された濃縮液に電圧を印加し、還元によってホウ素を生成する化学処理槽と、前記化学処理槽で生成されたホウ素を回収する回収槽とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な構成および低コストで、ホウ素を含有する原水を、ホウ素と処理水とに分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の各実施形態に係るホウ素分離システムについて説明する。このホウ素分離システムは、ホウ素含有水である原水を、ホウ素とホウ素を含まない処理水とに分離する。ホウ素は、水に溶けやすい性質であるため、ホウ素含有水は、ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩としてホウ素を含んでいる。そのため、本発明に係るホウ素分離システムは、ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩からホウ素を生成した後、ホウ素を回収する。例えば、このホウ素分離システムで分離された処理水は、有害物質であるホウ素が除去されているため、水道水として利用することができる。また例えば、ホウ素分離システムで分離されたホウ素は、回収後に工業材料として利用することができる。なお、以下の説明において、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0011】
〈第1の実施形態〉
図1に示すように、第1の実施形態に係るホウ素分離システム1aは、原水に含まれる不純物を除去する処理手段である原水槽11、前処理手段13および調整槽14と、ホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩を含む原水に電圧を印加して電気化学的な処理を施し、還元によってホウ素を生成する化学処理槽である電解槽16aと、生成されたホウ素を含むホウ素含有水を、ホウ素と処理水とに分離する分離手段18と、電解槽16aで原水から電極に析出されたホウ素を回収する回収槽21とを備えている。
【0012】
原水槽11は、処理対象として供給される原水を一時貯水し、貯水する原水が含む不純物(夾雑物や砂)をスクリーニングや沈降により原水から不純物を除去する。原水槽11で不純物が除去された原水は、ポンプ12によって前処理手段13に送水される。
【0013】
前処理手段13は、原水をろ過することによって原水槽11で除去することのできない不純物を除去し、調整槽14に送水する。この前処理手段13は、例えば、(1)原水に凝集剤を注入して不純物を沈澱させて砂ろ過する処理、(2)原水に凝集剤を注入して不純物を浮上させて分離する処理、(3)原水に凝集剤を注入して精密ろ過膜(MF膜)でろ過する処理、または、(4)原水に凝集剤を注入して限界ろ過膜(UF膜)でろ過する処理を実行する手段である。
【0014】
前処理手段13では、原水槽11で除去できない沈降しにくい不純物を除去することができるが、ホウ素分離システム1aの分離対象であるホウ素は、この前処理手段13によっても分離することはできない。したがって、前処理手段13から送水される原水は、ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含んでいる。
【0015】
調整槽14は、前処理手段13でろ過された原水を一時貯水する。その後、調整槽14で貯水された原水は、ポンプ15によって、電解槽16aに送水される。
【0016】
電解槽16aでは、送水される原水に電圧を印加して、還元によって原水に含まれるホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩からホウ素を生成して不溶化する。例えば、電解槽16aに供給された原水がホウ酸を含む場合、下記の式(1)に示す反応が起こる。また、電解槽16aに供給された原水がホウ酸イオンを含む場合、下記の式(2)に示す反応が起こる。
【0017】
H3BO3(aq)+ 3H++ 3e- → B + 3H2O ・・・(1)
H3BO3- + H2O+ 3e- → B + 4OH- ・・・(2)
ここで、電解槽16aにおける反応電位は、標準電位と、原水に含まれる反応物質の濃度に応じて定められる。例えば、ホウ酸を含む原水に関する式(1)の場合の標準電位は−0.87V(25℃)であり、この場合の印加電圧は、標準電位と、電解槽16a中のホウ酸H3BO3,水素イオンH+,ホウ素Bおよび水H2Oの濃度に応じて定められる。また、ホウ酸イオンを含む原水に関する式(2)の場合の標準電位は−1.79V(25℃)であり、この場合の印加電圧は、標準電位と、ホウ酸イオンH3BO3-,水H2O,ホウ素B,水酸化物イオンOH-の濃度に応じて定められる。
【0018】
電解槽16aはホウ素含有水が供給されると、電極近傍で(1)および(2)の反応によりホウ素が析出して、一部は電極に付着し、残りはホウ素含有水として分離手段18へ送水される。電極近傍に析出したホウ素は、定期的、例えば、分離手段18の洗浄時に電極の電位を一時的に反転または短絡させることで、電極付近に付着した析出物を除去し、電極近傍のホウ素含有水を析出物と共にライン19aを介して回収槽21へと送水する。この操作により、電極に析出していたホウ素及び電極近傍で還元されていたホウ素の回収とともに、電極の性能を回復することができる。電解槽16aには、ホウ素を回収する回収槽21と分離手段18が接続されている。電極近傍から離れたホウ素は、(1)および(2)の逆反応により、一部はホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩に戻るが、一部は析出したホウ素のまま、分離手段18へ送水される。
【0019】
分離手段18はホウ素含有水の脱塩が主目的であるが、電解槽16aで除去した残りのホウ素含有水が供給されると、析出したホウ素がそのままの形態であれば、分離手段18で供給されたホウ素含有水をホウ素と処理水とに分離する。また、分離手段18は、処理水をライン19dから排出する。このとき、分離手段18は、原水から一部のホウ素を分離するが、ホウ素のみを選択して回収することは困難であるため、実際には、ライン19bから排出されるのは、原水から処理水が分離された後の濃縮液となる。
【0020】
例えば、分離手段18は、逆浸透膜(RO膜)のような分離膜であり、電解槽で析出したホウ素がそのままの形状であれば分離することができる。また、RO膜はホウ酸やホウ酸イオンまたはホウ酸塩である場合には、分子が小さいため、一部はRO膜を透過してしまうが、電解槽16a及び回収槽21においてあらかじめホウ素を回収しているので、ホウ酸やホウ酸イオンまたはホウ酸塩として残っている量が少なく、システムとしては高いホウ素回収効率となる。
【0021】
ライン19bには、図1に示すようにライン19cが接続されおり、例えば、濃縮液のホウ素の濃度が高いときには、分離手段18から排出された濃縮液は、ライン19bを介して調整槽14に供給される。この場合、濃縮液を調整槽14に返送するか否かは、ライン19bに接続されるバルブ20bとライン19cに接続されるバルブ20cの開閉により調節する。具体的には、バルブ20bを閉とし、バルブ20cを開としたときに、濃縮液を調整槽14に返送することができる。なお、バルブ20b,20cによってライン19b,19cの流量の割合をコントロールし、同時に分離手段18から排出された濃縮液の一部を排出し、残りを調整槽14に返送することも可能である。
【0022】
上述した第1の実施形態に係るホウ素分離システム1aでは、電解槽16aにおいて還元によってホウ素を原水から分離し、電解槽16aで原水から分離したホウ素を回収槽21で回収することができる。
【0023】
なお、図1に示すホウ素分離システム1aの回収槽21で回収された回収物にはホウ素以外の不純物も含まれるので、回収物は図示しない精製工程に運ばれ、精製条件を整えることで、不純物が取り除かれ純度の高いホウ素を得ることができる。
【0024】
〈第2の実施形態〉
図2に示すように、第2の実施形態に係るホウ素分離システム1bは、図1に示した第1の実施形態に係るホウ素分離システム1aと比較して、調整槽14の後段に電解槽16aを備えず、原水槽11と前処理手段13の間に電解槽16bが設置されている点で異なる。また、ホウ素分離システム1bでは、分離手段18から排出された濃縮液は、調整槽14ではなく、電解槽16bに返送される。
【0025】
電解槽16bでは、図1に示した電解槽16aと同様に原水に電圧を印加するが、電解槽16bには前処理手段13で不純物を除去する前の原水が送水されるため、電解槽16bに供給される原水の方が、前処理手段13の後段に設置される電解槽16aに供給される原水よりも多くの不純物が含まれており電解質濃度が高い。したがって、前処理手段13の前段に電解槽16bを設置した場合、電解槽16bでの導電率が高くなるため、印加電圧を低くすることができる。
【0026】
上述した第2の実施形態に係るホウ素分離システム1bでは、電解槽16bにおいて還元によってホウ素を原水から分離し、電解槽16bで原水から分離したホウ素を回収槽21で回収することができる。
【0027】
また、第2の実施形態に係るホウ素分離システム1bでは、電解槽16bは電解質濃度の高い原水に電圧を印加するため、第1の実施形態に係るホウ素分離システム1aの場合と比較して、印加電圧を低減し、省電力を実現することができる。
【0028】
なお、図2に示すホウ素分離システム1bの回収槽21で回収された回収物にはホウ素以外の不純物も含まれるので、回収物は図示しない精製工程に運ばれ、精製条件を整えることで、不純物が取り除かれ純度の高いホウ素を得ることができる。
【0029】
〈第3の実施形態〉
図3に示すように、第3の実施形態に係るホウ素分離システム1cは、図1に示した第1の実施形態に係るホウ素分離システム1aと比較して、調整槽14の後段に電解槽16aを備えず、ライン19c上に電解槽16cが設置されている点で異なる。
【0030】
電解槽16cでは、図1に示した電解槽16aと同様に原水に電圧を印加するが、電解槽16bには分離手段18で処理水が分離された後のホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含む濃縮液が送水されるため、電解槽16cに供給される濃縮液の方が、分離手段18の前段に設置される電解槽16aに供給される原水よりも電解質濃度が高い。したがって、分離手段18の後段に電解槽16cを設置した場合、電解槽16cでの導電率が高くなるため、印加電圧を低くすることができる。
【0031】
上述した第3の実施形態に係るホウ素分離システム1cは、電解槽16cにおいて還元によってホウ素を原水から分離し、電解槽16cで原水から分離したホウ素を回収槽21で分離することができる。
【0032】
また、第3の実施形態に係るホウ素分離システム1cでは、電解槽16cは電解質濃度の高い濃縮液に電圧を印加するため、第1の実施形態に係るホウ素分離システム1aの場合と比較して、印加電圧を低減し、省電力を実現することができる。
【0033】
なお、図3に示すホウ素分離システム1cの回収槽21で回収された回収物にはホウ素以外の不純物も含まれるので、回収物は図示しない精製工程に運ばれ、精製条件を整えることで、不純物が取り除かれ純度の高いホウ素を得ることができる。
【0034】
〈第4の実施形態〉
図4に示すように、第4の実施形態に係るホウ素分離システム1dは、ホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩を含む原水を、ホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩を含むホウ酸含有水と、ホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩以外の不純物を含む不純物含有水とに分離する第1の分離手段22aと、第1の分離手段22aで分離されたホウ酸含有水に電圧を印加して電気化学的な処理を施し、還元によってホウ素を生成する化学処理槽である電解槽16dと、生成されたホウ素を含むホウ素含有水を、ホウ素と処理水とに分離する第2の分離手段22bと、第2の分離手段22bでホウ素含有水から分離されたホウ素を回収する回収槽21とを備えている。
【0035】
第1の分離手段22aは、ホウ酸含有水を電解槽16dに送水し、不純物含有水をライン19eから排出する。第1の分離手段22aは、逆浸透膜のような分離膜であるが、例えば、原水からホウ酸、ホウ酸イオンおよびホウ酸塩以外の不純物を分離することができるナノろ過膜(NF膜)のような分離膜を用いることでポンプ動力を低減することもできる。
【0036】
図4に示すように、ライン19eにはライン19fが接続されており、第1の分離手段22aから排出された不純物含有水を、ライン19fを介して調整槽14に循環し、第1の分離手段22aで再び分離処理を行なうこともできる。例えば、第1の分離手段22aにおける分離の精度が低い場合、複数回の分離処理を行なうことで不純物含有水からホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩を分離することができる。不純物含有水をラインfを介して調整槽14に返送するためには、バルブ20eを閉にし、バルブ20fを開にすればよい。
【0037】
電解槽16dでは、図1に示した電解槽16aと同様にホウ酸含有水に電圧を印加し、還元によってホウ素を生成する。そして、回収槽21にてホウ素が回収される。
【0038】
上述した第4の実施形態に係るホウ素分離システム1dでは、電解槽16dにおいて還元によってホウ素を生成し、電解槽16dで原水から分離したホウ素を回収槽21で回収することができる。
【0039】
また、第4の実施形態に係るホウ素分離システム1dでは、電解槽16dは、第1の分離手段22aで他の不純物を分離したホウ酸含有水からホウ酸を生成するため、第1の実施形態にかかるホウ素分離システム1aの場合と比較して、回収するホウ素の純度を向上することができる。
【0040】
なお、図4に示すホウ素分離システム1dの回収槽21で回収された回収物にはホウ素以外の不純物も含まれるので、回収物は図示しない精製工程に運ばれ、精製条件を整えることで、不純物が取り除かれ純度の高いホウ素を得ることができる。
【0041】
〈第5の実施形態〉
図5に示すように、第5の実施形態に係るホウ素分離システム2aは、図1に示した第1の実施形態に係るホウ素分離システム1aと比較して、電解槽16aとポンプ17の間に晶析槽23が設置されている点と、晶析槽23に回収槽21が設置されている点で異なる。また、ホウ素分離システム2aでは、ライン19cを有していない。
【0042】
この晶析槽23は、電解槽16aで生成されたホウ素(電解槽16aの電極付近に付着し、定期的に除去された析出物としてのホウ素を含む)を含有した原水が供給されると、この原水を貯水するとともに、ホウ素がホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩に戻る前に、原水の温度やpHを変化させたり、助剤を添加することで、ホウ素の不溶化を促進させる。
【0043】
第1の実施形態では、電解槽16aで生成されたホウ素の一部がホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩に戻ることが考えられたが、電解槽16aで生成されたホウ素が晶析槽23で不溶化の促進がなされるため、ホウ素として存在させることが可能となる。
【0044】
晶析槽23で不溶化されたホウ素の回収は、晶析槽23でホウ素を沈降させ、底部に溜まったホウ素を回収槽21に回収することで可能となる。このように晶析槽23を利用した場合、この晶析槽23において十分にホウ素を回収することができるため、濃縮液を調整槽14に返送する必要がなくなる。
【0045】
上述した第5の実施形態に係るホウ素分離システム2aでは、このように晶析槽23でホウ素の不溶化を促進させることで、回収槽21におけるホウ素の回収効率を向上させることができる。
【0046】
なお、図5に示すホウ素分離システム2aの回収槽21回収された回収物にはホウ素以外の不純物も含まれるので、回収物は図示しない精製工程に運ばれ、精製条件を整えることで、不純物が取り除かれ純度の高いホウ素を得ることができる。また、電解槽16aの電極付近に付着し、定期的に除去された析出物としてのホウ素の回収は、第1の実施形態のように電解槽16aに回収槽21を接続して回収しても良い。
【0047】
〈第6の実施形態〉
図6に示すように、第6の実施形態に係るホウ素分離システム2bは、図2に示した第2の実施形態に係るホウ素分離システム1bと比較して、電解槽16bとポンプ17の間に、電解槽16bから供給される原水を貯水し、この原水の温度やpHを変化させたり、助剤を添加することで、ホウ素の不溶化を促進させる晶析槽23が設置されている点と、晶析槽23に回収槽21が設置されている点で異なる。また、ホウ素分離システム2bでは、ライン19cを有していない。
【0048】
上述した第6の実施形態に係るホウ素分離システム2bでは、第5の実施形態のように晶析槽23でホウ素の不溶化を促進させることで、回収槽21におけるホウ素の回収効率を向上させることができる。また、このように晶析槽23を利用した場合、この晶析槽23において十分にホウ素を回収することができるため、濃縮液を調整槽14に返送する必要がなくなる。
【0049】
なお、図6に示すホウ素分離システム2bの回収槽21で回収された回収物にはホウ素以外の不純物も含まれるので、回収物は図示しない精製工程に運ばれ、精製条件を整えることで、不純物が取り除かれ純度の高いホウ素を得ることができる。
【0050】
〈第7の実施形態〉
図7に示すように、第7の実施形態に係るホウ素分離システム2cは、図3に示した第2の実施形態に係るホウ素分離システム1cと比較して、電解槽16cとポンプ17の間に、電解槽16bから供給される原水を貯水し、この原水に熱や薬品を加えたり、圧力を低下させることで、ホウ素の不溶化を促進させる晶析槽23が設置されている点と、晶析槽23に回収槽21が設置されている点で異なる。
【0051】
上述した第7の実施形態に係るホウ素分離システム2cでは、第5の実施形態のように晶析槽23でホウ素の不溶化を促進させることで、回収槽21におけるホウ素の回収効率を向上させることができる。
【0052】
なお、図7に示すホウ素分離システム2cの回収槽21で回収された回収物にはホウ素以外の不純物も含まれるので、回収物は図示しない精製工程に運ばれ、精製条件を整えることで、不純物が取り除かれ純度の高いホウ素を得ることができる。
【0053】
〈第8の実施形態〉
図8に示すように、第8の実施形態に係るホウ素分離システム2dは、図4に示した第4の実施形態に係るホウ素分離システム1dと比較して、電解槽16dとポンプ17の間に、電解槽16bから供給される原水を貯水し、この原水に熱や薬品を加えたり、圧力を低下させることで、ホウ素の不溶化を促進させる晶析槽23が設置されている点と、晶析槽23に回収槽21が設置されている点で異なる。また、ホウ素分離システム2dでは、ライン19cを有していない。
【0054】
上述した第8の実施形態に係るホウ素分離システム2dでは、第5の実施形態のように晶析槽23でホウ素の不溶化を促進させることで、回収槽21におけるホウ素の回収効率を向上させることができる。また、このように晶析槽23を利用した場合、この晶析槽23において十分にホウ素を回収することができるため、濃縮液を調整槽14に返送する必要がなくなる。
【0055】
なお、図8に示すホウ素分離システム2dの回収槽21で回収された回収物にはホウ素以外の不純物も含まれるので、回収物は図示しない精製工程に運ばれ、精製条件を整えることで、不純物が取り除かれ純度の高いホウ素を得ることができる。
【0056】
〈第9の実施形態〉
図9に示すように、第9の実施形態に係るホウ素分離システム3aは、図1に示した第1の実施形態に係るホウ素分離システム1aと比較して、ポンプ17と分離手段18の間に吸着剤注入手段24を備えている点で異なる。また、ホウ素分離システム3aでは、電解槽16aではなく、分離手段18に回収槽21が接続されている。
【0057】
この吸着剤注入手段24は、電解槽16aで生成したホウ素(電解槽16aの電極付近に付着し、定期的に除去された析出物としてのホウ素を含む)を含む原水に、ホウ素を吸着する吸着剤を注入する。この吸着剤は、例えば、粉末活性炭や、磁性担体の表面にホウ素を吸着する物質をコーティングした粒子である。この吸着剤注入手段24が原水に注入する吸着剤は、ホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩を吸着することは困難であるが、電解槽16aで生成したホウ素を吸着しやすい性質があるので、電解槽16aで生成したホウ素を吸着剤で吸着させることができる。
【0058】
分離手段18では、このホウ素が吸着した吸着剤を分離する。吸着剤は大きさをコントロールして製造することができるので、分離手段18で容易に分離し、回収槽21で回収することができる。
【0059】
また、分離手段としては、処理水を水道水として利用できる水質を求めるのであれば、ホウ素が吸着した吸着剤以外の不純物除去のために、逆浸透膜(RO膜)を使用するが、ホウ素の分離回収を主たる目的とし吸着剤の分離を行うのであれば、吸着剤の大きさに応じて、精密ろ過膜(MF膜)、限界ろ過膜(UF膜)等を使用することで、ろ過に必要な圧力が低くなり、ポンプ動力を低減することができる。
【0060】
上述した第9の実施形態に係るホウ素分離システム3aでは、このように吸着剤注入手段24によって注入された吸着剤にホウ素を吸着させて分離することで、分離手段18におけるホウ素の分離効率が向上する。
【0061】
なお、図9に示すホウ素分離システム3aは、回収槽21を内部に備える構成であるが、ホウ素分離システムから排出されるホウ素の回収はシステムの外部で行なってもよい。
【0062】
また、電解槽16aの電極付近に付着し、定期的に除去された析出物としてのホウ素の回収は、第1の実施形態のように電解槽16aに回収槽21を設けて回収しても良い。ホウ素を回収して精製する工程を外部に設けることにより、純度の高いホウ素を得ることができる。
【0063】
〈第10の実施形態〉
図10に示すように、第10の実施形態に係るホウ素分離システム3bは、図2に示した第2の実施形態に係るホウ素分離システム1bと比較して、ポンプ17と前処理手段13の間に、ホウ素を吸着する吸着剤を原水に注入する吸着剤注入手段24を備えている点で異なる。また、ホウ素分離システム3bでは、電解槽16bではなく、前処理手段13に設けられたろ過膜に回収槽21が接続されている。
【0064】
上述した第10の実施形態に係るホウ素分離システム3bでは、第9の実施形態のように吸着剤注入手段24によって注入された吸着剤にホウ素を吸着させて分離することで、分離手段18におけるホウ素の分離効率が向上する。
【0065】
なお、図10に示すホウ素分離システム3bは、回収槽21を内部に備える構成であるが、ホウ素分離システムから排出されるホウ素の回収はシステムの外部で行なってもよい。ホウ素を回収して精製する工程を外部に設けることにより、純度の高いホウ素を得ることができる。
【0066】
〈第11の実施形態〉
図11に示すように、第11の実施形態に係るホウ素分離システム3cは、図3に示した第3の実施形態に係るホウ素分離システム1cと比較して、ポンプ17と調整槽14の間に、ホウ素を吸着する吸着剤を原水に注入する吸着剤注入手段24と、ホウ素と処理水とを分離する分離手段25とを備えている点で異なる。また、ホウ素分離システム3cでは、回収槽21が分離手段25の後段に設けられている。
【0067】
この第11の実施形態に係るホウ素分離システム3cでは、吸着剤注入手段24が電解槽16cで濃縮液に電圧を印加して生成されたホウ素を含む濃縮液に吸着剤を注入し、吸着剤にホウ素を吸着させる。分離手段25では、吸着剤によって吸着されたホウ素と、処理水とを分離して、ホウ素を回収槽21に排出し、処理水は調整槽14に循環させる。
【0068】
上述した第11の実施形態に係るホウ素分離システム3cでは、第9の実施形態のように吸着剤注入手段24によって注入された吸着剤で吸着されたホウ素を分離することで、分離手段25におけるホウ素の分離効率が向上する。
【0069】
なお、図11に示すホウ素分離システム3cは、回収槽21を内部に備える構成であるが、ホウ素分離システムから排出されるホウ素の回収はシステムの外部で行なってもよい。ホウ素を回収して精製する工程を外部に設けることにより、純度の高いホウ素を得ることができる。
【0070】
〈第12の実施形態〉
図12に示すように、第12の実施形態に係るホウ素分離システム3dは、図4に示した第4の実施形態に係るホウ素分離システム1dと比較して、ポンプ15と第2の分離手段22bの間に、ホウ素を吸着する吸着剤を原水に注入する吸着剤注入手段24を備えている点で異なる。また、ホウ素分離システム3bでは、電解槽16bではなく、第2の分離手段22bに回収槽21が接続されている。
【0071】
上述した第12の実施形態に係るホウ素分離システム3dでは、第9の実施形態のように吸着剤注入手段24によって注入された吸着剤で吸着されたホウ素を分離することで、第2の分離手段22bにおけるホウ素の分離効率が向上する。
【0072】
なお、図12に示すホウ素分離システム3dは、回収槽21を内部に備える構成であるが、ホウ素分離システムから排出されるホウ素の回収はシステムの外部で行なってもよい。ホウ素を回収して精製する工程を外部に設けることにより、純度の高いホウ素を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図5】本発明の第5の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図6】本発明の第6の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図7】本発明の第7の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図8】本発明の第8の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図9】本発明の第9の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図10】本発明の第10の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図11】本発明の第11の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図12】本発明の第12の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0074】
1a〜3d…ホウ素分離システム
11…原水槽(処理手段)
12…ポンプ
13…前処理手段(処理手段)
14…調整槽(処理手段)
15…ポンプ
16a〜16d…電解槽(化学処理槽)
17…ポンプ
18…分離手段
19a〜19f…ライン
20b〜20f…バルブ
21…回収槽
22a,22b…分離手段
23…晶析槽
24…吸着剤注入手段
25…分離手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素を含有する原水を、ホウ素と処理水とに分離するホウ素分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ素は、ガラス産業やメッキ産業等において工業材料として広く利用される物質である。一方、ホウ素は、神経障害や消化器異常等、人体に悪影響を及ぼす物質として知られている。そのため、ホウ素の排水基準値は10mg/L、環境基準値は1mg/Lと規定されており、ホウ素を含有する産業排水からはホウ素を除去する必要がある。
【0003】
海水には、4〜5mg/Lの濃度でホウ素が存在している。したがって、仮に、海水から水道水を生産しようとする場合には、海水からホウ素を除去する必要がある。また、海水からホウ素を選択的に回収することができれば、海水から回収したホウ素を工業材料として利用することができる。日本では、工業材料のホウ素の略100%を海外から輸入しており、海水からホウ素を回収できれば、このホウ素の回収は有効である。
【0004】
ホウ素含有水をホウ素と処理水とに分離する方法としては、「凝集沈殿法」、「イオン交換樹脂法」または「逆浸透膜法」が知られている。「凝集沈殿法」は、ホウ酸イオンを含む水中にカルシウム系またはアルミニウム系の凝集剤を注入し、凝集剤にホウ素を取り込んで共沈させる方法である(例えば、特許文献1参照)。また、「イオン交換樹脂法」は、水中に溶解している多様な形態のホウ酸イオンをイオン交換樹脂により捕捉、除去、回収する方法である(例えば、特許文献2参照)。また、「逆浸透膜法」は、酢酸セルロース系またはポリアミド系の逆浸透膜で処理する方法である。
【特許文献1】特開2003−236562号公報
【特許文献2】特開平9−314130号公報
【特許文献3】特開平9−290275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、凝集沈殿法では、ホウ素の回収率が低く、しかも大量に発生したホウ素を含む汚泥を処理している。また、イオン交換樹脂法では、大量のイオン交換樹脂が必要である。さらに、逆浸透膜法では、ホウ素の除去率が45〜75%であり、通常は2段階の複雑な処理が必要である。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、簡単な構成および低コストで、ホウ素を含有する原水を、ホウ素と処理水とに分離するホウ素分離システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴に係るホウ素分離システムは、ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含む原水が供給されると、供給された原水に電圧を印加し、還元によってホウ素を生成する化学処理槽と、前記化学処理槽で生成されたホウ素を回収する回収槽とを備える。
【0008】
また、本発明の他の特徴に係るホウ素分離システムは、ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含む原水を、ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含む濃縮液とホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含まない処理水とに分離する第1の分離手段と、前記分離手段から濃縮液が供給されると、供給された濃縮液に電圧を印加し、還元によってホウ素を生成する化学処理槽と、前記化学処理槽で生成されたホウ素を回収する回収槽とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な構成および低コストで、ホウ素を含有する原水を、ホウ素と処理水とに分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の各実施形態に係るホウ素分離システムについて説明する。このホウ素分離システムは、ホウ素含有水である原水を、ホウ素とホウ素を含まない処理水とに分離する。ホウ素は、水に溶けやすい性質であるため、ホウ素含有水は、ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩としてホウ素を含んでいる。そのため、本発明に係るホウ素分離システムは、ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩からホウ素を生成した後、ホウ素を回収する。例えば、このホウ素分離システムで分離された処理水は、有害物質であるホウ素が除去されているため、水道水として利用することができる。また例えば、ホウ素分離システムで分離されたホウ素は、回収後に工業材料として利用することができる。なお、以下の説明において、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0011】
〈第1の実施形態〉
図1に示すように、第1の実施形態に係るホウ素分離システム1aは、原水に含まれる不純物を除去する処理手段である原水槽11、前処理手段13および調整槽14と、ホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩を含む原水に電圧を印加して電気化学的な処理を施し、還元によってホウ素を生成する化学処理槽である電解槽16aと、生成されたホウ素を含むホウ素含有水を、ホウ素と処理水とに分離する分離手段18と、電解槽16aで原水から電極に析出されたホウ素を回収する回収槽21とを備えている。
【0012】
原水槽11は、処理対象として供給される原水を一時貯水し、貯水する原水が含む不純物(夾雑物や砂)をスクリーニングや沈降により原水から不純物を除去する。原水槽11で不純物が除去された原水は、ポンプ12によって前処理手段13に送水される。
【0013】
前処理手段13は、原水をろ過することによって原水槽11で除去することのできない不純物を除去し、調整槽14に送水する。この前処理手段13は、例えば、(1)原水に凝集剤を注入して不純物を沈澱させて砂ろ過する処理、(2)原水に凝集剤を注入して不純物を浮上させて分離する処理、(3)原水に凝集剤を注入して精密ろ過膜(MF膜)でろ過する処理、または、(4)原水に凝集剤を注入して限界ろ過膜(UF膜)でろ過する処理を実行する手段である。
【0014】
前処理手段13では、原水槽11で除去できない沈降しにくい不純物を除去することができるが、ホウ素分離システム1aの分離対象であるホウ素は、この前処理手段13によっても分離することはできない。したがって、前処理手段13から送水される原水は、ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含んでいる。
【0015】
調整槽14は、前処理手段13でろ過された原水を一時貯水する。その後、調整槽14で貯水された原水は、ポンプ15によって、電解槽16aに送水される。
【0016】
電解槽16aでは、送水される原水に電圧を印加して、還元によって原水に含まれるホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩からホウ素を生成して不溶化する。例えば、電解槽16aに供給された原水がホウ酸を含む場合、下記の式(1)に示す反応が起こる。また、電解槽16aに供給された原水がホウ酸イオンを含む場合、下記の式(2)に示す反応が起こる。
【0017】
H3BO3(aq)+ 3H++ 3e- → B + 3H2O ・・・(1)
H3BO3- + H2O+ 3e- → B + 4OH- ・・・(2)
ここで、電解槽16aにおける反応電位は、標準電位と、原水に含まれる反応物質の濃度に応じて定められる。例えば、ホウ酸を含む原水に関する式(1)の場合の標準電位は−0.87V(25℃)であり、この場合の印加電圧は、標準電位と、電解槽16a中のホウ酸H3BO3,水素イオンH+,ホウ素Bおよび水H2Oの濃度に応じて定められる。また、ホウ酸イオンを含む原水に関する式(2)の場合の標準電位は−1.79V(25℃)であり、この場合の印加電圧は、標準電位と、ホウ酸イオンH3BO3-,水H2O,ホウ素B,水酸化物イオンOH-の濃度に応じて定められる。
【0018】
電解槽16aはホウ素含有水が供給されると、電極近傍で(1)および(2)の反応によりホウ素が析出して、一部は電極に付着し、残りはホウ素含有水として分離手段18へ送水される。電極近傍に析出したホウ素は、定期的、例えば、分離手段18の洗浄時に電極の電位を一時的に反転または短絡させることで、電極付近に付着した析出物を除去し、電極近傍のホウ素含有水を析出物と共にライン19aを介して回収槽21へと送水する。この操作により、電極に析出していたホウ素及び電極近傍で還元されていたホウ素の回収とともに、電極の性能を回復することができる。電解槽16aには、ホウ素を回収する回収槽21と分離手段18が接続されている。電極近傍から離れたホウ素は、(1)および(2)の逆反応により、一部はホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩に戻るが、一部は析出したホウ素のまま、分離手段18へ送水される。
【0019】
分離手段18はホウ素含有水の脱塩が主目的であるが、電解槽16aで除去した残りのホウ素含有水が供給されると、析出したホウ素がそのままの形態であれば、分離手段18で供給されたホウ素含有水をホウ素と処理水とに分離する。また、分離手段18は、処理水をライン19dから排出する。このとき、分離手段18は、原水から一部のホウ素を分離するが、ホウ素のみを選択して回収することは困難であるため、実際には、ライン19bから排出されるのは、原水から処理水が分離された後の濃縮液となる。
【0020】
例えば、分離手段18は、逆浸透膜(RO膜)のような分離膜であり、電解槽で析出したホウ素がそのままの形状であれば分離することができる。また、RO膜はホウ酸やホウ酸イオンまたはホウ酸塩である場合には、分子が小さいため、一部はRO膜を透過してしまうが、電解槽16a及び回収槽21においてあらかじめホウ素を回収しているので、ホウ酸やホウ酸イオンまたはホウ酸塩として残っている量が少なく、システムとしては高いホウ素回収効率となる。
【0021】
ライン19bには、図1に示すようにライン19cが接続されおり、例えば、濃縮液のホウ素の濃度が高いときには、分離手段18から排出された濃縮液は、ライン19bを介して調整槽14に供給される。この場合、濃縮液を調整槽14に返送するか否かは、ライン19bに接続されるバルブ20bとライン19cに接続されるバルブ20cの開閉により調節する。具体的には、バルブ20bを閉とし、バルブ20cを開としたときに、濃縮液を調整槽14に返送することができる。なお、バルブ20b,20cによってライン19b,19cの流量の割合をコントロールし、同時に分離手段18から排出された濃縮液の一部を排出し、残りを調整槽14に返送することも可能である。
【0022】
上述した第1の実施形態に係るホウ素分離システム1aでは、電解槽16aにおいて還元によってホウ素を原水から分離し、電解槽16aで原水から分離したホウ素を回収槽21で回収することができる。
【0023】
なお、図1に示すホウ素分離システム1aの回収槽21で回収された回収物にはホウ素以外の不純物も含まれるので、回収物は図示しない精製工程に運ばれ、精製条件を整えることで、不純物が取り除かれ純度の高いホウ素を得ることができる。
【0024】
〈第2の実施形態〉
図2に示すように、第2の実施形態に係るホウ素分離システム1bは、図1に示した第1の実施形態に係るホウ素分離システム1aと比較して、調整槽14の後段に電解槽16aを備えず、原水槽11と前処理手段13の間に電解槽16bが設置されている点で異なる。また、ホウ素分離システム1bでは、分離手段18から排出された濃縮液は、調整槽14ではなく、電解槽16bに返送される。
【0025】
電解槽16bでは、図1に示した電解槽16aと同様に原水に電圧を印加するが、電解槽16bには前処理手段13で不純物を除去する前の原水が送水されるため、電解槽16bに供給される原水の方が、前処理手段13の後段に設置される電解槽16aに供給される原水よりも多くの不純物が含まれており電解質濃度が高い。したがって、前処理手段13の前段に電解槽16bを設置した場合、電解槽16bでの導電率が高くなるため、印加電圧を低くすることができる。
【0026】
上述した第2の実施形態に係るホウ素分離システム1bでは、電解槽16bにおいて還元によってホウ素を原水から分離し、電解槽16bで原水から分離したホウ素を回収槽21で回収することができる。
【0027】
また、第2の実施形態に係るホウ素分離システム1bでは、電解槽16bは電解質濃度の高い原水に電圧を印加するため、第1の実施形態に係るホウ素分離システム1aの場合と比較して、印加電圧を低減し、省電力を実現することができる。
【0028】
なお、図2に示すホウ素分離システム1bの回収槽21で回収された回収物にはホウ素以外の不純物も含まれるので、回収物は図示しない精製工程に運ばれ、精製条件を整えることで、不純物が取り除かれ純度の高いホウ素を得ることができる。
【0029】
〈第3の実施形態〉
図3に示すように、第3の実施形態に係るホウ素分離システム1cは、図1に示した第1の実施形態に係るホウ素分離システム1aと比較して、調整槽14の後段に電解槽16aを備えず、ライン19c上に電解槽16cが設置されている点で異なる。
【0030】
電解槽16cでは、図1に示した電解槽16aと同様に原水に電圧を印加するが、電解槽16bには分離手段18で処理水が分離された後のホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含む濃縮液が送水されるため、電解槽16cに供給される濃縮液の方が、分離手段18の前段に設置される電解槽16aに供給される原水よりも電解質濃度が高い。したがって、分離手段18の後段に電解槽16cを設置した場合、電解槽16cでの導電率が高くなるため、印加電圧を低くすることができる。
【0031】
上述した第3の実施形態に係るホウ素分離システム1cは、電解槽16cにおいて還元によってホウ素を原水から分離し、電解槽16cで原水から分離したホウ素を回収槽21で分離することができる。
【0032】
また、第3の実施形態に係るホウ素分離システム1cでは、電解槽16cは電解質濃度の高い濃縮液に電圧を印加するため、第1の実施形態に係るホウ素分離システム1aの場合と比較して、印加電圧を低減し、省電力を実現することができる。
【0033】
なお、図3に示すホウ素分離システム1cの回収槽21で回収された回収物にはホウ素以外の不純物も含まれるので、回収物は図示しない精製工程に運ばれ、精製条件を整えることで、不純物が取り除かれ純度の高いホウ素を得ることができる。
【0034】
〈第4の実施形態〉
図4に示すように、第4の実施形態に係るホウ素分離システム1dは、ホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩を含む原水を、ホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩を含むホウ酸含有水と、ホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩以外の不純物を含む不純物含有水とに分離する第1の分離手段22aと、第1の分離手段22aで分離されたホウ酸含有水に電圧を印加して電気化学的な処理を施し、還元によってホウ素を生成する化学処理槽である電解槽16dと、生成されたホウ素を含むホウ素含有水を、ホウ素と処理水とに分離する第2の分離手段22bと、第2の分離手段22bでホウ素含有水から分離されたホウ素を回収する回収槽21とを備えている。
【0035】
第1の分離手段22aは、ホウ酸含有水を電解槽16dに送水し、不純物含有水をライン19eから排出する。第1の分離手段22aは、逆浸透膜のような分離膜であるが、例えば、原水からホウ酸、ホウ酸イオンおよびホウ酸塩以外の不純物を分離することができるナノろ過膜(NF膜)のような分離膜を用いることでポンプ動力を低減することもできる。
【0036】
図4に示すように、ライン19eにはライン19fが接続されており、第1の分離手段22aから排出された不純物含有水を、ライン19fを介して調整槽14に循環し、第1の分離手段22aで再び分離処理を行なうこともできる。例えば、第1の分離手段22aにおける分離の精度が低い場合、複数回の分離処理を行なうことで不純物含有水からホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩を分離することができる。不純物含有水をラインfを介して調整槽14に返送するためには、バルブ20eを閉にし、バルブ20fを開にすればよい。
【0037】
電解槽16dでは、図1に示した電解槽16aと同様にホウ酸含有水に電圧を印加し、還元によってホウ素を生成する。そして、回収槽21にてホウ素が回収される。
【0038】
上述した第4の実施形態に係るホウ素分離システム1dでは、電解槽16dにおいて還元によってホウ素を生成し、電解槽16dで原水から分離したホウ素を回収槽21で回収することができる。
【0039】
また、第4の実施形態に係るホウ素分離システム1dでは、電解槽16dは、第1の分離手段22aで他の不純物を分離したホウ酸含有水からホウ酸を生成するため、第1の実施形態にかかるホウ素分離システム1aの場合と比較して、回収するホウ素の純度を向上することができる。
【0040】
なお、図4に示すホウ素分離システム1dの回収槽21で回収された回収物にはホウ素以外の不純物も含まれるので、回収物は図示しない精製工程に運ばれ、精製条件を整えることで、不純物が取り除かれ純度の高いホウ素を得ることができる。
【0041】
〈第5の実施形態〉
図5に示すように、第5の実施形態に係るホウ素分離システム2aは、図1に示した第1の実施形態に係るホウ素分離システム1aと比較して、電解槽16aとポンプ17の間に晶析槽23が設置されている点と、晶析槽23に回収槽21が設置されている点で異なる。また、ホウ素分離システム2aでは、ライン19cを有していない。
【0042】
この晶析槽23は、電解槽16aで生成されたホウ素(電解槽16aの電極付近に付着し、定期的に除去された析出物としてのホウ素を含む)を含有した原水が供給されると、この原水を貯水するとともに、ホウ素がホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩に戻る前に、原水の温度やpHを変化させたり、助剤を添加することで、ホウ素の不溶化を促進させる。
【0043】
第1の実施形態では、電解槽16aで生成されたホウ素の一部がホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩に戻ることが考えられたが、電解槽16aで生成されたホウ素が晶析槽23で不溶化の促進がなされるため、ホウ素として存在させることが可能となる。
【0044】
晶析槽23で不溶化されたホウ素の回収は、晶析槽23でホウ素を沈降させ、底部に溜まったホウ素を回収槽21に回収することで可能となる。このように晶析槽23を利用した場合、この晶析槽23において十分にホウ素を回収することができるため、濃縮液を調整槽14に返送する必要がなくなる。
【0045】
上述した第5の実施形態に係るホウ素分離システム2aでは、このように晶析槽23でホウ素の不溶化を促進させることで、回収槽21におけるホウ素の回収効率を向上させることができる。
【0046】
なお、図5に示すホウ素分離システム2aの回収槽21回収された回収物にはホウ素以外の不純物も含まれるので、回収物は図示しない精製工程に運ばれ、精製条件を整えることで、不純物が取り除かれ純度の高いホウ素を得ることができる。また、電解槽16aの電極付近に付着し、定期的に除去された析出物としてのホウ素の回収は、第1の実施形態のように電解槽16aに回収槽21を接続して回収しても良い。
【0047】
〈第6の実施形態〉
図6に示すように、第6の実施形態に係るホウ素分離システム2bは、図2に示した第2の実施形態に係るホウ素分離システム1bと比較して、電解槽16bとポンプ17の間に、電解槽16bから供給される原水を貯水し、この原水の温度やpHを変化させたり、助剤を添加することで、ホウ素の不溶化を促進させる晶析槽23が設置されている点と、晶析槽23に回収槽21が設置されている点で異なる。また、ホウ素分離システム2bでは、ライン19cを有していない。
【0048】
上述した第6の実施形態に係るホウ素分離システム2bでは、第5の実施形態のように晶析槽23でホウ素の不溶化を促進させることで、回収槽21におけるホウ素の回収効率を向上させることができる。また、このように晶析槽23を利用した場合、この晶析槽23において十分にホウ素を回収することができるため、濃縮液を調整槽14に返送する必要がなくなる。
【0049】
なお、図6に示すホウ素分離システム2bの回収槽21で回収された回収物にはホウ素以外の不純物も含まれるので、回収物は図示しない精製工程に運ばれ、精製条件を整えることで、不純物が取り除かれ純度の高いホウ素を得ることができる。
【0050】
〈第7の実施形態〉
図7に示すように、第7の実施形態に係るホウ素分離システム2cは、図3に示した第2の実施形態に係るホウ素分離システム1cと比較して、電解槽16cとポンプ17の間に、電解槽16bから供給される原水を貯水し、この原水に熱や薬品を加えたり、圧力を低下させることで、ホウ素の不溶化を促進させる晶析槽23が設置されている点と、晶析槽23に回収槽21が設置されている点で異なる。
【0051】
上述した第7の実施形態に係るホウ素分離システム2cでは、第5の実施形態のように晶析槽23でホウ素の不溶化を促進させることで、回収槽21におけるホウ素の回収効率を向上させることができる。
【0052】
なお、図7に示すホウ素分離システム2cの回収槽21で回収された回収物にはホウ素以外の不純物も含まれるので、回収物は図示しない精製工程に運ばれ、精製条件を整えることで、不純物が取り除かれ純度の高いホウ素を得ることができる。
【0053】
〈第8の実施形態〉
図8に示すように、第8の実施形態に係るホウ素分離システム2dは、図4に示した第4の実施形態に係るホウ素分離システム1dと比較して、電解槽16dとポンプ17の間に、電解槽16bから供給される原水を貯水し、この原水に熱や薬品を加えたり、圧力を低下させることで、ホウ素の不溶化を促進させる晶析槽23が設置されている点と、晶析槽23に回収槽21が設置されている点で異なる。また、ホウ素分離システム2dでは、ライン19cを有していない。
【0054】
上述した第8の実施形態に係るホウ素分離システム2dでは、第5の実施形態のように晶析槽23でホウ素の不溶化を促進させることで、回収槽21におけるホウ素の回収効率を向上させることができる。また、このように晶析槽23を利用した場合、この晶析槽23において十分にホウ素を回収することができるため、濃縮液を調整槽14に返送する必要がなくなる。
【0055】
なお、図8に示すホウ素分離システム2dの回収槽21で回収された回収物にはホウ素以外の不純物も含まれるので、回収物は図示しない精製工程に運ばれ、精製条件を整えることで、不純物が取り除かれ純度の高いホウ素を得ることができる。
【0056】
〈第9の実施形態〉
図9に示すように、第9の実施形態に係るホウ素分離システム3aは、図1に示した第1の実施形態に係るホウ素分離システム1aと比較して、ポンプ17と分離手段18の間に吸着剤注入手段24を備えている点で異なる。また、ホウ素分離システム3aでは、電解槽16aではなく、分離手段18に回収槽21が接続されている。
【0057】
この吸着剤注入手段24は、電解槽16aで生成したホウ素(電解槽16aの電極付近に付着し、定期的に除去された析出物としてのホウ素を含む)を含む原水に、ホウ素を吸着する吸着剤を注入する。この吸着剤は、例えば、粉末活性炭や、磁性担体の表面にホウ素を吸着する物質をコーティングした粒子である。この吸着剤注入手段24が原水に注入する吸着剤は、ホウ酸、ホウ酸イオン、または、ホウ酸塩を吸着することは困難であるが、電解槽16aで生成したホウ素を吸着しやすい性質があるので、電解槽16aで生成したホウ素を吸着剤で吸着させることができる。
【0058】
分離手段18では、このホウ素が吸着した吸着剤を分離する。吸着剤は大きさをコントロールして製造することができるので、分離手段18で容易に分離し、回収槽21で回収することができる。
【0059】
また、分離手段としては、処理水を水道水として利用できる水質を求めるのであれば、ホウ素が吸着した吸着剤以外の不純物除去のために、逆浸透膜(RO膜)を使用するが、ホウ素の分離回収を主たる目的とし吸着剤の分離を行うのであれば、吸着剤の大きさに応じて、精密ろ過膜(MF膜)、限界ろ過膜(UF膜)等を使用することで、ろ過に必要な圧力が低くなり、ポンプ動力を低減することができる。
【0060】
上述した第9の実施形態に係るホウ素分離システム3aでは、このように吸着剤注入手段24によって注入された吸着剤にホウ素を吸着させて分離することで、分離手段18におけるホウ素の分離効率が向上する。
【0061】
なお、図9に示すホウ素分離システム3aは、回収槽21を内部に備える構成であるが、ホウ素分離システムから排出されるホウ素の回収はシステムの外部で行なってもよい。
【0062】
また、電解槽16aの電極付近に付着し、定期的に除去された析出物としてのホウ素の回収は、第1の実施形態のように電解槽16aに回収槽21を設けて回収しても良い。ホウ素を回収して精製する工程を外部に設けることにより、純度の高いホウ素を得ることができる。
【0063】
〈第10の実施形態〉
図10に示すように、第10の実施形態に係るホウ素分離システム3bは、図2に示した第2の実施形態に係るホウ素分離システム1bと比較して、ポンプ17と前処理手段13の間に、ホウ素を吸着する吸着剤を原水に注入する吸着剤注入手段24を備えている点で異なる。また、ホウ素分離システム3bでは、電解槽16bではなく、前処理手段13に設けられたろ過膜に回収槽21が接続されている。
【0064】
上述した第10の実施形態に係るホウ素分離システム3bでは、第9の実施形態のように吸着剤注入手段24によって注入された吸着剤にホウ素を吸着させて分離することで、分離手段18におけるホウ素の分離効率が向上する。
【0065】
なお、図10に示すホウ素分離システム3bは、回収槽21を内部に備える構成であるが、ホウ素分離システムから排出されるホウ素の回収はシステムの外部で行なってもよい。ホウ素を回収して精製する工程を外部に設けることにより、純度の高いホウ素を得ることができる。
【0066】
〈第11の実施形態〉
図11に示すように、第11の実施形態に係るホウ素分離システム3cは、図3に示した第3の実施形態に係るホウ素分離システム1cと比較して、ポンプ17と調整槽14の間に、ホウ素を吸着する吸着剤を原水に注入する吸着剤注入手段24と、ホウ素と処理水とを分離する分離手段25とを備えている点で異なる。また、ホウ素分離システム3cでは、回収槽21が分離手段25の後段に設けられている。
【0067】
この第11の実施形態に係るホウ素分離システム3cでは、吸着剤注入手段24が電解槽16cで濃縮液に電圧を印加して生成されたホウ素を含む濃縮液に吸着剤を注入し、吸着剤にホウ素を吸着させる。分離手段25では、吸着剤によって吸着されたホウ素と、処理水とを分離して、ホウ素を回収槽21に排出し、処理水は調整槽14に循環させる。
【0068】
上述した第11の実施形態に係るホウ素分離システム3cでは、第9の実施形態のように吸着剤注入手段24によって注入された吸着剤で吸着されたホウ素を分離することで、分離手段25におけるホウ素の分離効率が向上する。
【0069】
なお、図11に示すホウ素分離システム3cは、回収槽21を内部に備える構成であるが、ホウ素分離システムから排出されるホウ素の回収はシステムの外部で行なってもよい。ホウ素を回収して精製する工程を外部に設けることにより、純度の高いホウ素を得ることができる。
【0070】
〈第12の実施形態〉
図12に示すように、第12の実施形態に係るホウ素分離システム3dは、図4に示した第4の実施形態に係るホウ素分離システム1dと比較して、ポンプ15と第2の分離手段22bの間に、ホウ素を吸着する吸着剤を原水に注入する吸着剤注入手段24を備えている点で異なる。また、ホウ素分離システム3bでは、電解槽16bではなく、第2の分離手段22bに回収槽21が接続されている。
【0071】
上述した第12の実施形態に係るホウ素分離システム3dでは、第9の実施形態のように吸着剤注入手段24によって注入された吸着剤で吸着されたホウ素を分離することで、第2の分離手段22bにおけるホウ素の分離効率が向上する。
【0072】
なお、図12に示すホウ素分離システム3dは、回収槽21を内部に備える構成であるが、ホウ素分離システムから排出されるホウ素の回収はシステムの外部で行なってもよい。ホウ素を回収して精製する工程を外部に設けることにより、純度の高いホウ素を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図5】本発明の第5の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図6】本発明の第6の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図7】本発明の第7の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図8】本発明の第8の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図9】本発明の第9の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図10】本発明の第10の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図11】本発明の第11の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【図12】本発明の第12の実施形態に係るホウ素分離システムの構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0074】
1a〜3d…ホウ素分離システム
11…原水槽(処理手段)
12…ポンプ
13…前処理手段(処理手段)
14…調整槽(処理手段)
15…ポンプ
16a〜16d…電解槽(化学処理槽)
17…ポンプ
18…分離手段
19a〜19f…ライン
20b〜20f…バルブ
21…回収槽
22a,22b…分離手段
23…晶析槽
24…吸着剤注入手段
25…分離手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含む原水が供給されると、供給された原水に電圧を印加し、還元によってホウ素を生成する化学処理槽と、
前記化学処理槽で生成されたホウ素を回収する回収槽と、
を備えることを特徴とするホウ素分離システム。
【請求項2】
原水に含まれる夾雑物を除去する処理手段を備え、
前記化学処理槽は、前記処理手段の後段に設けられ、前記処理手段で夾雑物が除去された後の原水に電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載のホウ素分離システム。
【請求項3】
ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含む原水を、ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含むホウ酸含有水と、ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩以外の不純物を含む不純物含有水とに分離する分離手段と、
前記第1の分離手段で分離されたホウ酸含有水が供給されると、供給されたホウ酸含有水に電圧を印加し、還元によってホウ素を生成する化学処理槽と、
前記化学処理槽で生成されたホウ素を回収する回収槽と
を備えることを特徴とするホウ素分離システム。
【請求項4】
前記化学処理槽の後段に設置され、前記化学処理槽から供給されるホウ素含有水を貯水してホウ素の不溶化を促進させる晶析槽を備え、
前記回収槽は前記晶析槽で不溶化が促進されたホウ素を回収することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のホウ素分離システム。
【請求項5】
前記化学処理槽の後段に設置され、前記化学処理槽から流出されるホウ素含有水に、ホウ素を吸着する吸着剤を注入する吸着剤注入手段を備え、
前記回収槽はホウ素を吸着した前記吸着剤を回収することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のホウ素分離システム。
【請求項1】
ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含む原水が供給されると、供給された原水に電圧を印加し、還元によってホウ素を生成する化学処理槽と、
前記化学処理槽で生成されたホウ素を回収する回収槽と、
を備えることを特徴とするホウ素分離システム。
【請求項2】
原水に含まれる夾雑物を除去する処理手段を備え、
前記化学処理槽は、前記処理手段の後段に設けられ、前記処理手段で夾雑物が除去された後の原水に電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載のホウ素分離システム。
【請求項3】
ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含む原水を、ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩を含むホウ酸含有水と、ホウ酸、ホウ酸イオンまたはホウ酸塩以外の不純物を含む不純物含有水とに分離する分離手段と、
前記第1の分離手段で分離されたホウ酸含有水が供給されると、供給されたホウ酸含有水に電圧を印加し、還元によってホウ素を生成する化学処理槽と、
前記化学処理槽で生成されたホウ素を回収する回収槽と
を備えることを特徴とするホウ素分離システム。
【請求項4】
前記化学処理槽の後段に設置され、前記化学処理槽から供給されるホウ素含有水を貯水してホウ素の不溶化を促進させる晶析槽を備え、
前記回収槽は前記晶析槽で不溶化が促進されたホウ素を回収することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のホウ素分離システム。
【請求項5】
前記化学処理槽の後段に設置され、前記化学処理槽から流出されるホウ素含有水に、ホウ素を吸着する吸着剤を注入する吸着剤注入手段を備え、
前記回収槽はホウ素を吸着した前記吸着剤を回収することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のホウ素分離システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−69399(P2010−69399A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238500(P2008−238500)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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