説明

ホストバスアダプタ用ドライバプログラム

【課題】
冗長化されたパスを持つディスクアレイ装置等のI/Oデバイス装置に対してオペレーティングシステムのインストールを行う際に、オペレーティングシステムをインストールするための構成変更を不要とするホストバスアダプタ用ドライバプログラムを提供する。
【解決手段】
システム装置との間に冗長化された複数の接続パスを持つI/Oデバイス装置へオペレーティングシステムをインストールする際に、ホストバスアダプタ用ドライバプログラムが、I/Oデバイス装置への冗長化された複数の接続パスの内で一つの接続パスのみを有効にし、その他の接続パスを仮想的な閉塞状態とすることにより、オペレーティングシステムのインストーラに対してI/Oデバイス装置への単一パス接続を保障する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータのPCIバス等に接続され、I/Oデバイス装置と接続するホストバスアダプタ用ドライバプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、販売されているディスクアレイ装置等のI/Oデバイス装置では単一のI/Oデバイスを複数台組み合わせることにより、高速性、大容量性及び高信頼性を実現している。
【0003】
さらに前記に加え、システム装置とI/Oデバイス装置間の冗長性を確保するために、システム装置に複数のホストバスアダプタを搭載し、I/Oデバイス装置と複数のパス接続を行うことにより冗長性の確保し、高信頼性及びインターフェースの高速化を図っている。
【0004】
上記のようなシステム構成は、システム通常稼動中にハードウェア障害が発生した場合でもシステムを停止させることなく運用を継続できるため非常に有用である。
【0005】
しかし、システム装置に対してオペレーティングシステムのインストール作業を行う際には、冗長化されたパス接続を解除し、単一パス接続とした上でインストール作業を行う必要がある。これは、オペレーティングシステムをインストールする際に起動されるインストーラが、冗長化されたパス接続に対応していないために発生する問題である。
【0006】
この問題を回避するため、ユーザはシステム構成定義の変更、及びケーブル挿抜を行うことによりシステム装置とI/Oデバイス装置間の単一パス接続を保障し、その上でオペレーティングシステムのインストール作業を行わなければならない。
【0007】
さらに、システム構成定義の変更、及びケーブル挿抜を行うことにより、オペレーティングシステムのインストール後に接続パス状態の再検証が必要となり、作業に多大の時間が必要となっていた。
【0008】
【特許文献1】特開2004−185093
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、オペレーティングシステムのインストール時にシステム装置とI/Oデバイス間の接続パス単一化を自動で行い、ユーザに対するシステム構成定義の変更、及びケーブル挿抜作業を不要とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、2つ以上のホストバスアダプタを持つシステム装置から、2つ以上の接続パスを介してI/Oデバイス装置に接続されるシステムにおいて、システム装置からI/Oデバイス装置に接続される接続パスを管理し、2つ以上の接続パスが検出された場合には、2つ目以降の接続パスを仮想的に閉塞状態とする機能を持つホストバスアダプタ用ドライバプログラムを提供する。すなわち、ホストバスアダプタ用ドライバプログラムが、オペレーティングシステムのインストーラに対してI/Oデバイス装置への接続パスが単一となることを保障する。
【0011】
本ホストバスアダプタ用ドライバプログラムをオペレーティングシステムのインストールに使用することによって、ユーザによるシステム構成定義、及び物理的なケーブル挿抜での接続パスの単一化が不要となり、ユーザはシステム構成を意識することなく、オペレーティングシステムのインストール作業を行うことが出来る。
【0012】
本ホストバスアダプタ用ドライバプログラムは、オペレーティングシステムのインストールだけでなく、通常運用中に動作させてもよい。すなわち、ホストバスアダプタ用ドライバプログラムがオペレーティングシステムの設定情報を参照し、オペレーティングシステムのインストール実行中、通常運用中かを判定する機能を持ち、通常運用時はパスの冗長化された構成を使用可能とする。
【0013】
本発明のホストバスアダプタ用ドライバプログラムは、どのようなプロトコルを制御するホストバスアダプタにインストールしても良い。例えば、ファイバチャネルによって、またはEthernet(登録商標)ケーブルによってI/Oデバイス装置と接続しても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、冗長化されたパスを持つシステムに対するオペレーティングシステムのインストールにおいて、ユーザは本ホストバスアダプタ用ドライバの使用するのみで、システム構成定義、及び物理的なケーブル挿抜の作業無しでインストールを実施できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明について図面を参照して説明する。
【0016】
図5は本発明に係るホストバスアダプタ用ドライバプログラムの処理を含むシステム全体の処理フロー図であり、以下、図5も参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明を実施したホストバスアダプタ用ドライバを含むオペレーティングシステムインストール時のシステムブロック構成図である。接続するI/Oデバイス装置はディスクアレイ装置を例とする。
【0018】
インストール媒体10は、ホストバスアダプタ用ドライバ13を含んだインストーラ14、オペレーティングシステム11、仮想閉塞機能無効化プログラム12から構成され、CD−ROM等の外部媒体やネットワークを介して、ホストシステム装置20にデータを転送する。
【0019】
ホストシステム装置20は、プロセッサ21、システムメモリ22、ホストバスアダプタ24〜25から構成される。
【0020】
ディスクアレイ装置40は、複数のアレイコントローラ44〜45、複数のディスクユニット41〜43から構成され、各ディスクユニットは1つ以上のアレイコントローラと接続される。
【0021】
プロセッサ21は、ホストバスアダプタ24〜25、接続ケーブル30〜31、アレイコントローラ44〜45を介してディスクユニット41〜43に対してアクセスすることが出来る。
【0022】
接続ケーブル30、31は、ファイバチャネルケーブル、またはEthernet(登録商標)ケーブルを使用する。
【0023】
インストーラ14は、ユーザからの要求によって起動され、CD/DVD等の外部媒体やネットワーク接続を介して転送され、プロセッサ21で処理され、インストーラ14およびインストーラ14に含まれるホストバスアダプタ用ドライバ13をホストシステム20内のシステムメモリ22に格納する(ステップ501)。
【0024】
インストール媒体10からのインストーラ14がシステムメモリ22に格納されたものをインストーラ29、ホストバスアダプタ用ドライバ13をホストバスアダプタ用ドライバ28とする。
【0025】
システムメモリ22に格納されたインストーラ29は、ディスクアレイ装置40にSCSI(Small Computer System Interface)コマンドを発行するために、ホストバスアダプタ用ドライバ28を起動する(ステップ502)。
【0026】
ホストバスアダプタ用ドライバ28はインストーラ29に起動された後、起動元のインストーラ29に対して仮想閉塞機能抑止テーブルが定義されているかチェックする。
【0027】
仮想閉塞機能抑止テーブルは、仮想閉塞機能無効化プログラム12が実行された際に作成するため、システムメモリ22上のインストーラ29には定義されていない(ステップ503)。このため、仮想閉塞機能が有効状態で動作が継続される(ステップ504)。
【0028】
ホストバスアダプタ用ドライバ28は、ホストバスアダプタ24〜25を使用して、ディスクアレイ装置40との通信可否をチェックする。図1の構成では、ホストバスアダプタ24はアレイコントローラ44へ、ホストバスアダプタ25はアレイコントローラ45との通信可否をチェックする。
【0029】
ホストバスアダプタ用ドライバ28は、ホストバスアダプタ24からのアレイコントローラ44への通信が確立した時点で、ホストバスアダプタ24を介してアレイコントローラ44に対してSCSIコマンドを発行し、アレイコントローラ44配下に接続されているディスクユニット41のディスク番号51、ディスク識別情報52を読み出し(ステップ505)、システムメモリ22内のパス情報管理テーブル23へ登録する(ステップ507,508)。
【0030】
ディスク番号、ディスク識別情報はディスクユニット単位に一意の情報であり、接続されているアレイコントローラが異なっても応答される値は同一であるものとする。
【0031】
さらに、ホストバスアダプタ24のWorld Wide Name26(http://www-6.ibm.com/jp/storage/basic/lesson/2_44.html参照)とホストバスアダプタ24に接続されているディスクアレイ装置40のアレイコントローラ44からWorld Wide Name46取得し、システムメモリ22内のパス情報管理テーブル23に登録する(ステップ509,510)。
【0032】
ディスクユニット41の情報取得後、ディスクユニット42に対して同様にディスク番号53、ディスク識別情報54を取得、使用するホストバスアダプタ、アレイコントローラのWorld Wide Name26、46を取得し、システムメモリ22内のパス情報管理テーブル23へ登録する。
【0033】
図4は、パス情報管理テーブル23の構造を示したものである。
【0034】
ホストバスアダプタ用ドライバ28は、アレイコントローラ44配下のディスクユニット検索終了後(ステップ511)、ホストバスアダプタ24に他のアレイコントローラとの通信が確立しないことを確認後(ステップ512)、ホストバスアダプタ25に接続されているディスクアレイ装置40のアレイコントローラ45との通信が可否をチェックする。
【0035】
ホストバスアダプタ25からのアレイコントローラ45への通信が確立を確認後、ホストバスアダプタ25を介してアレイコントローラ45に対してSCSIコマンドを発行し、アレイコントローラ45配下に接続されているディスクユニット41のディスク番号51、ディスク識別情報52を取得する。
【0036】
パス情報管理テーブル23にアレイコントローラ45を介して取得したディスク番号51、ディスク識別情報52を登録する際、既にアレイコントローラ44から取得した同一のディスク番号、ディスク識別情報が登録されているため、ホストバスアダプタ用ドライバ28はアレイコントローラ45から取得したディスク番号51、ディスク識別情報52をパス情報管理テーブル23への登録を抑止する(ステップ506)。
【0037】
パス情報管理テーブル23上に一致するディスク番号、ディスク識別情報が存在しない場合のみ、ディスク識別情報、ディスク番号、ホストバスアダプタ25のWorld Wide Name27、アレイコントローラ45のWorld Wide Name47を、パス情報管理テーブル23へ登録する(ステップ506〜510)。
【0038】
図1の場合では、アレイコントローラ44から接続されていないディスクユニット43のディスク番号55、ディスク識別情報56のみホストバスアダプタ25のWorld Wide Name27、アレイコントローラ45のWorld Wide Name47と共にパス情報管理テーブル23へ登録する。
【0039】
ホストバスアダプタ用ドライバ28は、アレイコントローラ45配下のディスクユニット検索終了後(ステップ511)、ホストバスアダプタ25に他のアレイコントローラとの通信が確立しないことを確認し(ステップ512)、他にホストバスアダプタが接続されていないことを確認し(ステップ513)、ディスクユニット検索を終了し、インストーラ29からのインストールパス選択を行うためのSCSIコマンドを受け付ける(ステップ514)。
【0040】
インストーラ29が発行したSCSIコマンドを受け付けたホストバスアダプタ用ドライバ28は、各ディスクユニットに対して、パス情報管理テーブル23にWorld Wide Nameが格納されているホストバスアダプタ、アレイコントローラからのみアクセスを許可する。パス情報管理テーブル23に登録されていないパスへのアクセスはホストバスアダプタ用ドライバ28が仮想的に閉塞状態とし、インストーラ29からのSCSIコマンドに対して異常終了を報告する(ステップ515、516)。これにより、物理的に冗長化されたパス接続であるが、インストーラ29からディスクユニットに対する接続パスが仮想的に単一であることを保障する。
【0041】
図2は、インストーラ29から見える仮想的なディスクユニット41〜43との接続構成である。
【0042】
インストーラ29は、ユーザ指定または自動でインストール先のディスクユニットを決定後、インストール媒体10からオペレーティングシステム11、および仮想閉塞機能無効化プログラム12をホストシステム装置20を介して、ディスクアレイ装置40のディスクユニットにインストールする(ステップ517)。
【0043】
図3は、ディスクユニット41にオペレーティングシステムをインストールしたケースを示す。
【0044】
オペレーティングシステムインストール後、オペレーティングシステム60からホストバスアダプタ24〜25を使用可能とするために、インストーラ29はホストバスアダプタ用ドライバ28をオペレーティングシステム60に組み込む。
【0045】
さらに、オペレーティングシステム60が起動した際に、仮想閉塞機能無効化プログラム63が自動実行されるように登録し(ステップ518)、インストール動作を完了する(ステップ519)。
【0046】
インストール完了後、ホストシステム装置20からディスクユニット41内のオペレーティングシステム60を起動する(ステップ520)。
【0047】
その際に使用されるホストバスアダプタ用ドライバ62は、起動元のオペレーティングシステム60に対して仮想閉塞機能抑止テーブルが定義されているかチェックする。この時点では、仮想閉塞抑止テーブルは作成されていないため、インストール時同様に冗長化されたパス構成を隠蔽して(仮想閉塞機能が有効状態で)動作する(ステップ521、522)。
【0048】
オペレーティングシステム60起動後、インストーラ29に登録された仮想閉塞機能無効化プログラム63が自動実行され(ステップ523)、仮想閉塞機能無効化プログラム63によって、ディスクユニット41内のオペレーティングシステム60内に仮想閉塞抑止テーブル61を作成する(ステップ524)。さらに、オペレーティングシステム60の仮想閉塞機能無効化プログラム63の自動起動を解除する(ステップ525)。
【0049】
仮想閉塞抑止テーブル61が作成されたことにより、ホストバスアダプタ用ドライバ62は、冗長化されたパス構成の隠蔽を抑止し(ステップ526)、通常動作を可能とする(ステップ527)。
【0050】
オペレーティングシステム60を再起動した際は、ホストバスアダプタ用ドライバ62はオペレーティングシステム60内に登録されている仮想閉塞抑止テーブル61の登録を確認し、冗長化されたパス構成の動作を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係るホストバスアダプタ用ドライバが動作するホストシステム装置とこれに接続するディスクアレイ装置のブロック構成図である。
【図2】インストーラから見える仮想的なディスクユニットとの接続構成図である。
【図3】オペレーティングシステムをインストールしたディスクユニットを説明する図である。
【図4】パス情報管理テーブルの構造を示す図である。
【図5】本発明に係るホストバスアダプタ用ドライバの処理を含むシステム全体の処理フロー図である。
【符号の説明】
【0052】
10 インストール媒体
11 オペレーティングシステム
12 仮想閉塞機能無効化プログラム
13 ホストバスアダプタ用ドライバ
14 インストーラ
20 ホストシステム装置
21 プロセッサ
22 システムメモリ
23 パス情報管理テーブル
24 ホストバスアダプタ
25 ホストバスアダプタ
26 World Wide Name
27 World Wide Name
40 ディスクアレイ装置
41、42、43 ディスクユニット
44、45 アレイコントローラ
46、47 World Wide Name
51、53、55 ディスク番号
52、54,56 ディスク識別情報
60 オペレーティングシステム
61 仮想閉塞抑止テーブル
62 ホストバスアダプタ用ドライバ
63 仮想閉塞機能無効化プログラム
70 パス情報管理テーブル
71 ディスク番号登録テーブル
72 ディスク識別情報登録テーブル
73 ホストバスアダプタWorld Wide Name登録テーブル
74 アレイコントローラWorld Wide Name登録テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
I/Oデバイス装置との接続を行うホストバスアダプタを2つ以上備えたシステム装置における前記ホストバスアダプタ用ドライバプログラムであって、システム装置との間に冗長化された複数の接続パスを持つI/Oデバイス装置へオペレーティングシステムをインストールする際に、前記I/Oデバイス装置への冗長化された複数の接続パスの内で一つの接続パスのみを有効にし、その他の接続パスを仮想的な閉塞状態とする機能を有することを特徴とするホストバスアダプタ用ドライバプログラム。
【請求項2】
I/Oデバイス装置からデバイス識別情報を読み取り、冗長化された接続パスを判定して各I/Oデバイス装置対応に接続パスを1つのみ登録した管理テーブルを作成する機能を有し、オペレーティングシステムのインストーラに対してI/Oデバイス装置への単一パス接続を保障することを特徴とする請求項1記載のホストバスアダプタ用ドライバプログラム。
【請求項3】
オペレーティングシステムのインストールか通常運用かを判別し、通常運用中は冗長化接続パスの使用を可能とする機能を有することを特徴とする請求項2記載のホストバスアダプタ用ドライバプログラム。
【請求項4】
システム装置との間に冗長化された接続パスを持つI/Oデバイス装置へのオペレーティングシステムのインストール方法であって、前記I/Oデバイス装置への冗長化された接続パスの内で一つの接続パスのみを有効とし、単一パス接続環境でオペレーティングシステムをインストールすることを特徴とするオペレーティングシステムのインストール方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−148714(P2007−148714A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341364(P2005−341364)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】