説明

ホッパのシャッター構造

【課題】 田植機に搭載された施肥装置において、肥料等の粒剤を保持する施肥ホッパの底部に設置される落下停止用シャッターの動作範囲が大きいため、シャッターを設置できないことがあった。
【解決手段】 ホッパ26の底部に設ける落下口30を開閉するシャッター31であって、該シャッターをホッパ内に収納し、該シャッターを曲面状のプレート31aで構成し、シャッターの曲率中心に回動軸32を設け、該回動軸をホッパ外側へ突出し、該回動軸に操作部材32aを設けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ホッパの底部に設ける落下口を開閉するシャッターの構造に関し、特に、ホッパ内に肥料や薬剤や種子等を収納し、該ホッパの下部に繰出装置を配置し、該繰出装置に対してホッパを着脱自在に設けた施肥装置や播種装置等のシャッターの構成に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、田植機の後部に施肥機を搭載し、田植えを行うと同時に、施肥ホッパ内の粒状肥料或いは薬剤などの粒状物をフロートに取り付けられた作溝器より圃場へ散布する田植機は公知となっている。特に施肥機を機体前後略中央に搭載するミッドマウント式の施肥機では、運転席後部に肥料等を収納する施肥ホッパを配設している。該施肥ホッパの底部に設けた落下口に板状のシャッターを設け、該シャッターを水平方向にスライドさせることにより落下口を開閉できるようにし、作業を終了したときやホッパを外して移動する時等では閉じ、作業時や余った肥料を排出するときにはシャッターを開けるように構成していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の板状のシャッターをスライドさせて開閉する構成では、落下口を完全に開くためには、シャッターの幅方向(摺動方向)の長さのスペースが水平方向に必要であり、側条施肥機付き田植機のように、施肥機と座席の間の空間が小さい制約の多い機械では、十分に開くことができなかったり、操作し辛い位置となっていた。また、シャッターを開けた状態では邪魔になったり、複数のホッパを連設した場合では、シャッターの開閉量を調節するとき全て同じ開度に調節することが難しかったのである。
【0004】
【課題を解決するための手段】この発明は、前述の課題を解消するために次の技術的な手段を講じた。即ち、請求項1においては、ホッパの底部に設ける落下口を開閉するシャッターであって、該シャッターをホッパ内に収納し、該シャッターを曲面状のプレートで構成し、シャッターの曲率中心に回動軸を設け、該回動軸をホッパ外側へ突出し、該回動軸に操作部材を設けた。また、請求項2 においては、前記ホッパの底部に複数の落下口を設けて、各落下口にそれぞれシャッターを設け、各シャッターの回動軸をホッパ外側で連結杆により連結した。
【0005】
【発明の実施の形態】つぎに本発明のシャッターを有するホッパを乗用田植機に付設した施肥装置に適用した実施例について説明する。図1は側条施肥装置付き田植機の全体側面図、図2はホッパの一部正面図、図3はホッパの側面図一部断面図、図4はホッパの正面図、図5はホッパの蓋体を取り外した状態の平面図である。図1に基づき田植機の全体構成から説明する。1は走行車体、2は機体前部の左右両側に配置した一対の操向用駆動前輪、3は左右一対の走行駆動後輪である。
【0006】4はエンジンで、本実施例では車体1の前後中間部の車体フレ−ム5上に搭載されている。6はフロントミッションケ−ス、7はリヤ−フレ−ム、8は左右一対の後輪伝動ケ−スで、前記リヤ−フレ−ム7の左右端に取り付けられ、この後輪伝動ケ−ス8の入力軸が前側に突出し前記フロントミッションケ−ス6側から左右別に入力される。9は伝動軸である。
【0007】10は後輪駆動軸で、後輪伝動ケ−ス8の外側に突出し前記後輪3が駆動される構成になっている。11は車体1に張設された搭乗フロアであり、合成樹脂材で出来ており、エンジン4の上側を覆うカバ−12が一体的に形成されている。13はダッシュボードで、走行車体の左右中央前部位置に立設構成されている。
【0008】14は操縦ハンドルで、前記ダッシュボード13の上部にハンドル支軸を介して設けられている。15は操縦座席で、前記エンジンカバ−12の上部に設けられている。
【0009】16は車体フレ−ム5に左右一対形成された支柱である。17は昇降リンク機構で、上リンク18aと下リンク18bの基端部が前記支柱16の下側位置に枢着され、両リンクの自由端部である後端が縦リンク18cで枢結されて平行リンク状態に構成され、上リンク18aが油圧装置19で上下作動される構成になっている。
【0010】20は植付部で、前記縦リンク18cにロ−リング自在に前側左右中央部が支持された植付伝動ケ−ス21に、苗載置台22と該苗載置台22から苗を分離係合して下部側の圃場に植付ける苗植付装置23を装着し、下部側には圃場表土面上を滑走して整地する中央部整地フロ−ト24a,側部整地フロ−ト24bを装備している。
【0011】この植付部20の苗植付装置23へ苗を供給する苗載置台22が側面視で前側が上位になる傾斜姿勢に構成している。25は施肥装置で、粒状肥料を収納する施肥ホッパ26とこの施肥ホッパ26の下位に一体的に設けた肥料繰出装置27と繰り出された肥料を空気搬送する搬送パイプ28と搬送された粒状肥料を圃場面下に排出するための作溝器29等からなり、このうち作溝器29は前記整地フロ−ト24に装着され、前記搬送パイプ28は可撓性の樹脂パイプで自由に屈曲できるようにしている。また、肥料繰出装置27は苗植付装置23と同じ条数分配置されており、例えば、6条植えの場合、六つの肥料繰出装置27と苗植付装置23と図4に示すホッパ26を二つ設けている。
【0012】次に、本発明の施肥ホッパ26について詳述する。図2〜図5に示すように、施肥ホッパ26は肥料繰出装置27の上部に取り付けられるようにしており、容易に着脱できるように、ワンタッチ係止具34が前面に設けられている。施肥ホッパ26は下部をV字状に構成して、その底部に落下口30を設けており、本実施例では底部に三つの落下口30・30・30を設け、上部は連通して一つの収納部から分岐して各落下口30・30・30に至るようにし、上方の開口部は蓋体35で閉じられるようにしている。各落下口30・30・30にはシャッター31・31・31が設けられる。但し、シャッター31と落下口30の間には漏れが生じることがなく、スムースに摺動できるようにシール部材が適宜配設される。
【0013】該シャッター31は、曲面状で落下口30を開閉するプレート31aと、該プレート31aの両側に固定した支持ステー31b・31bよりなり、該支持ステー31b・31bの先端部における前記プレート31aの曲率中心の位置に回動軸32が貫通固定されている。プレート31aは落下口30よりも若干大きく構成して完全に閉じられる大きさとしている。そして、落下口30の上面形状はプレート31aの曲率に合わせた形状として、閉じたときに漏れないようにしている。前記回動軸32は落下口30の上方に配置され、一端がホッパ26の側面に回転自在に支持され、他端はホッパ26の他側面を貫通して外方へ延設されて、操作部材となるレバー部32aを構成している。
【0014】そして、三つのシャッター31・31・31のレバー部32a・32a・32aは連結杆33により互いに枢結されて、いずれか一つのレバー部32aにはレバーガイド36によってガイドされて『開』位置と『閉』位置、または、任意位置で固定できるようにしており、該レバーガイド36はホッパ26より突設されている。なお、シャッター31の開閉方向は左右または前後方向と限定するものではないが、複数のシャッターを連動する構成とする場合には、落下口30・30・・・が配設される方向と平行に連結杆33を配置し、該連結杆33と直角方向に回動軸32が配置される。
【0015】次に、シャッター31の開閉について、図2R>2〜図4を参照しながら説明する。シャッター31は施肥ホッパ26の内側底部から内側左右側方にかけて図2の矢印101a・101bの円弧方向に摺動可動であり、矢印101a方向にスライドさせればシャッター31は肥料落下口30をふさぎ、矢印101bの方向にスライドさせれば肥料落下口30は開放される。そして、シャッター31・31・31は連結杆31により連結されているので、図2において、レバー部32aを矢印103a方向に回転させれば、シャッター31・31・31は矢印101aの方向に動き落下口30・30・30を同時に閉じることができ、レバー部32aを矢印102b方向に回転させれば、シャッター31・31・31は矢印101bの方向に動き、落下口30・30・30を同時に開くことができる。
【0016】上述のとおり、シャッター31・31・31は施肥ホッパ26内の底部において摺動する構造としたことで、シャッター31・31・31は開閉した状態において、ホッパの外側に出ることがなく、開閉のためのスペースが不要となり省スペースとすることができる。
【0017】また、図4に示したように、それぞれの施肥ホッパ26に設けられたシャッター31はレバー部32a・32a・32aを介して、連結杆33で連結しているので、すべてのシャッター31・31・31を同時に動かすことが可能となり、操作性が向上し、閉め忘れもなくすことかができ、作業後に残りの肥料を取り出すときやメンテナンス時等において、一つのレバー部32aを操作するだけで全ての落下口30・30・30を閉じることができ、ワンタッチ係止具34を外せばホッパ26を容易に外して持ち運びができ、連結構造も簡単とすることができるのである。但し、レバー部32aと連結杆33の連結を解除することにより、別々にシャッター30を開閉するようにすることもできる。
【0018】
【発明の効果】本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0019】即ち、請求項1に示す如く、ホッパの底部に設ける落下口を開閉するシャッターであって、該シャッターをホッパ内に収納し、該シャッターを曲面状のプレートで構成し、シャッターの曲率中心に回動軸を設け、該回動軸をホッパ外側へ突出し、該回動軸に操作部材を設けたことで、シャッターは外側から操作部材により開閉操作でき、開けた状態おいてホッパの外側に出ることがなくなり、田植機の施肥装置のように設置場所や大きさ、形状等に制約の多くも、シャッターの開閉に対してシャッターが邪魔にならず、設置のための自由度も大きくすることができる。また、落下口を完全に開閉することができて、落下量の調整範囲も従来と変わることがなく、開閉構造も簡単にできる。
【0020】また、請求項2に示す如く、前記ホッパの底部に複数の落下口を設けて、各落下口にそれぞれシャッターを設け、各シャッターの回動軸をホッパ外側で連結杆により連結したので、施肥装置に設けられた複数の施肥ホッパのシャッターの開閉操作を同時に行うことができ、同じ開口量とすることができて、多条施肥機等に搭載した場合等では、同時に複数の条を同量施肥することができ、素早く作業を行うことができ、操作性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】側条施肥装置付き田植機の全体側面図である。
【図2】ホッパの一部正面図である。
【図3】ホッパの側面図一部断面図である。
【図4】ホッパの正面図である。
【図5】ホッパの蓋体を取り外した状態の平面図である。
【符号の説明】
25 施肥装置
26 施肥ホッパ
31 シャッター
32 回動軸
33 連結杆

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ホッパの底部に設ける落下口を開閉するシャッターであって、該シャッターをホッパ内に収納し、該シャッターを曲面状のプレートで構成し、シャッターの曲率中心に回動軸を設け、該回動軸をホッパ外側へ突出し、該回動軸に操作部材を設けたことを特徴とするホッパのシャッター構造。
【請求項2 】 前記ホッパの底部に複数の落下口を設けて、各落下口にそれぞれシャッターを設け、各シャッターの回動軸をホッパ外側で連結杆により連結したことを特徴とする請求項1記載のホッパのシャッター構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2002−305927(P2002−305927A)
【公開日】平成14年10月22日(2002.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−118033(P2001−118033)
【出願日】平成13年4月17日(2001.4.17)
【出願人】(597041747)アグリテクノ矢崎株式会社 (56)
【Fターム(参考)】