説明

ホログラム作成装置および方法

【課題】 目標再生像に対する忠実度が高い再生像を再生することができるホログラムを容易に作成することができる装置および方法を提供する。
【解決手段】 感光材料34の局所領域25に要素ホログラムが一旦記録された後に、一定期間に亘り物体光および参照光のうち参照光のみが局所領域25に入射して、このときに局所領域25から発生する再生光による再生像がカメラ37により撮像される。この撮像された再生像と目標再生像とが比較されて、この比較の結果に応じた修正画像が空間光変調素子17に呈示され、この修正画像が呈示された空間光変調素子17から出力された光が物体光として局所領域25に入射するとともに、参照光も局所領域25に入射して、これら物体光と参照光とが干渉して局所領域25に要素ホログラムが追加記録される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の要素ホログラムを感光材料上に記録してホログラムを作成する装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数の要素ホログラムを感光材料上に記録して作成されるホログラム(ホログラフィックステレオグラム)は、様々な方向から撮像した被写体の画像を呈示した普通写真または空間光変調素子によりレーザ光を空間的に変調し、この変調されたレーザ光を物体光として1枚のホログラム用の感光材料の局所領域に要素ホログラムを記録し、このような要素ホログラムを局所領域毎に記録して作成される。このようなホログラムには、1次元のものと2次元のものとがある。また、物体光と参照光とが互いに異なる側から感光材料に入射して要素ホログラムが記録されて作成されるリップマン型のホログラフィックステレオグラムは、再生時には、照明光が感光材料に入射する側と同一の側で再生像を観察することができるので、例えば壁掛け用として用いられる。
【0003】
このようなホログラムの作成技術は、例えば特許文献1に開示されている。図5は、特許文献1に開示された従来のホログラム作成技術の説明図である。この図に示す装置では、レーザ光源111から出力されたレーザ光は、ハーフミラー112により2分岐される。その2分岐されたレーザ光の一方は、ミラー113およびレンズ系114を順次に経て空間光変調素子115に入射し、空間光変調素子115により空間的な変調を受けて、物体光としてレンズ116を経て感光材料117に入射する。また、ハーフミラー112により2分岐されたレーザ光の他方は、参照光としてミラー118を経て感光材料117に背後から入射する。
【0004】
感光材料117に入射した物体光および参照光は互いに干渉して、感光材料117上の局所領域に要素ホログラムが記録される。そして、空間光変調素子115に提示される画像が変更されるとともに感光材料117が移動されて、感光材料117上の複数の局所領域それぞれに要素ホログラムが順次記録され、これにより、感光材料117上にリップマン型ホログラムが作成される。このようにして、0.3mm〜0.5mm間隔で要素ホログラムが感光材料117上にアレイ状に記録され、リップマン型ホログラフィックステレオグラムが作成される。また、再生時には、上記参照光の入射方向と同じ方向に照明光が入射することにより、感光材料117上の各要素ホログラムから再生光が発生し、照明光入射側で再生像を観察することができる。
【0005】
このリップマン型ホログラムは、意図した目標再生像の諧調を忠実に再生できることが望ましい。しかし、物体光および参照光それぞれの光学系の特性や感光材料の非線形性により、実際に得られる再生像の諧調の忠実度は低いものとなる場合がある。
【0006】
空間光変調素子を通過した物体光は、レンズにより集光されて感光材料へ入射する際に、空間光変調素子の画素の位置に対応した角度を持つ光線群となる。空間光変調素子の各画素に同じ透過率を与えたとき、各画素から感光材料へ入射する光線が等間隔の角度を持ち且つ一定の強度であることが望ましいが、実際にはレンズの特性により発散角度が大きいほど光線の強度が低くなることが普通である。また、空間光変調素子に入射するレーザ光が空間的に一様であることも保証されておらず、多くの場合、レーザビームがガウシアン強度分布を持つこと、すなわち、空間光変調素子の中心で光強度が強く周辺ほど光強度が弱くなることから、この点でも発散角度が大きいほど光線の強度が低くなることが普通である。
【0007】
また、感光材料の非線形性により、多くの場合、物体光量と再生光量とが比例せず、物体光量が多い領域では、再生光量はそれにも増して多くなる傾向がある。逆に、物体光量が少ない領域では、再生光量はそれにも増して少なくなり、はなはだしい場合には再生光量が0となる傾向を示す場合がある。
【0008】
このように、実際に得られる再生像において、目標再生像の諧調が忠実に再生されない場合には、ホログラム全体の再生像のコントラストが強調されたり、あるいは、濃淡が少なくコントラストが低い再生像となったりして、意図する再生像が得られない。特に、要素ホログラムを波長のレーザ光で追記して得られるフルカラーホログラムを目的とする場合には、意図するカラーバランスを得ることが困難であるという問題点があった。
【0009】
非特許文献1および特許文献2には、このような問題点を解決することを意図した技術が提案されている。非特許文献1において提案されている技術(以下「従来技術1」という。)では、各画素の諧調が一様である画像が空間光変調素子に提示されて要素ホログラムが作成される。また、このような要素ホログラムが各諧調について作成される。そして、各諧調について作成された要素ホログラムの回折効率(再生光量)が測定され、これら諧調と再生光量との関係から、意図する再生像を得るのに必要な物体光の諧調が求められることで、望ましい再生像が得られるとする。一方、特許文献2において提案されている技術(以下「従来技術2」という。)では、干渉露光処理中、現像処理中またはこれらの処理の間で、記録された干渉縞に単色光でない光が照射され、その透過光あるいは回折光が検出、分光されて、ホログラムが評価される。
【特許文献1】特開平3−249686号公報
【特許文献2】特開平5−100611号公報
【非特許文献1】重田博昭、他、「フルパララックス・ホログラフィック・ステレオグラムによるカラーコントロールの基礎検討」、3次元画像コンファレンス2003、pp.61−64、2003年7月1,2日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の従来技術1,2は以下のような問題点を有している。
【0011】
先ず、従来技術1の第1の問題点は、感光材料の非線形性に対する補正として不充分であることである。その理由として、空間光変調素子に入射する光が一様であるという前提のもとでは、要素ホログラムが記録されるべき感光材料の局所領域に入射する光量は、空間光変調素子に表示される画像の輝度に比例するだけでなく、面積に比例するためである。従来技術1においては、色パッチの再生位置を感光材料の表面としているために、空間光変調素子に表示される画像輝度を一様としている。しかし、図1に示されるように例では、空間光変調素子に表示される画像輝度は一様ではない。
【0012】
図1は、感光材料および再生像の説明図である。ここでは、四角柱の物体の再生像40を再生すべく感光材料34に記録された複数の要素ホログラムのうちの2つの要素ホログラム25,41について説明する。なお、この図1および後述する図2,図3において、同一の要素には同一の符号を付している。
【0013】
要素ホログラム41が記録されるべき感光材料34上の局所領域を原点として物体を透視変換した画像を空間光変調素子に表示し、その画像における各画素の輝度値および座標位置に関係した入射角をもつ光線を該局所領域に記録したものが要素ホログラム41である。要素ホログラム41が再生すべき再生像40の表面は要素ホログラム41の位置に略一致し、要素ホログラム41から発生する光線群の全ては再生像40の表面の一部を構成する。したがって、再生像40の面の輝度値が一様であるならば、これらの光線群の強度も一様である。そこで、これらの光線群を発生させる空間光変調素子に表示すべき画像42も一様となる。画像42において、その一様な範囲を図1ではハッチングで示す。
【0014】
一方、要素ホログラム25が再生すべき再生像40の表面は、要素ホログラム25の位置から離れている。要素ホログラム25が発生する光線群は、再生像40の表面のうち範囲43のみを表示する。これらの光線群を発生させる空間光変調素子に表示すべき画像44は、一部のみが輝度値を有するものとなる。
【0015】
画像44と画像42を比較すると、両者は空間光変調素子に表示されている画像の面積が異なり、これは要素ホログラムに入射する光量が異なることを意味する。したがって、再生すべき3次元物体の位置によっては、従来技術1のように提示する画像の諧調情報から新たな諧調情報への補正のみでは、入射する光量の制御を正確に行い得ないことを意味する。特に物体表面の輝度値が一様ではなく、模様がある場合には、補正できなくなってしまう。
【0016】
すなわち、要素ホログラムから発生する光線群の一部のみに物体が存在する場合や、物体に模様が存在する場合、空間光変調素子に表示すべき画像が空間光変調素子全面に亘って一様であることはありえず、要素ホログラムの位置および物体の位置に関係して、面積および位置を持った局在された画像となる。したがって、要素ホログラムに入射する物体光の光量は、要素ホログラムの位置に対応した面積および位置を持った局在された画像の諧調のみならず、その面積にも比例することになる。
【0017】
次に、従来技術1の第2の問題点は、光学系の特性による不均一性まで補正するものではないことである。つまり、レンズ等の光学系の特性により、また、レーザビームがガウシアン強度分布を持つこと(すなわち、空間光変調素子の中心で光強度が強く周辺にいくほど光強度が弱くなること)により、発散角度が大きいほど光線の強度が低くなるが、このような不均一性まで補正するものではない。特に、複数波長のレーザ光を同一の光学系で光軸上に重ねて使用する場合に、各波長のレーザ光のビーム径が異なるだけでなく、ガウシアン強度分布も異なり、したがって、発散角度によって、各波長の物体光の光強度の比が異なり、カラーバランスが角度によって変化することになる。このような光学系の特性による不均一性まで補正可能ではない。
【0018】
更に、従来技術1の第3の問題点は、複数波長間の補正に関して全ての場合についての補正データを用意しなくてはならないことである。未だメカニズムについては明確な説明がなされていないものの、よく知られている事象として、銀塩フィルムなどでは予め一様な光で露光しておくことで感度が増加することが知られている。このことは、単純に回折効率が露光量に比例するわけではないことを示している。
【0019】
また、非特許文献1中の図7によると、特定の波長に対する補正が他の波長に対する補正に対して独立ではないことが示されている。すなわち、波長特定の波長に関してのみの補正データだけでは全波長について補正することができないことを示している。図7によれば、青の成分を減少させてその物体光強度を弱めた場合、緑と青の回折効率すなわち再生光量が増加している。
【0020】
したがって、完全な補正を行うには、各波長および各諧調の全ての組み合わせについて計測し、この計測の結果から得られた必要な波長のデータを用いる必要がある。例えば、赤(r)、緑(g)および青(b)それぞれの諧調数を256とした場合、表示すべき組み合わせの数は16,777,216(=256)となる。(r,g,b)の組み合わせのときに計測して、この計測の結果から得られた各色の諧調を(r',g',b')と表す。
r',g'およびb'それぞれは、(r,g,b)の関数として表される。ホログラムが再生すべき再生像における(r',g',b')が与えられた場合、r'(r,g,b),g'(r,g,b)およびb'(r,g,b)から、(r,g,b)の組み合わせを検索し、また、存在しない場合には近似により得られた(r,g,b)を求め、そして、この(r,g,b)を空間光変調素子に表示することで補正されることになる。以上示したように、必ずしも一意的に補正データが求められる保証はなく、また、複雑な検索および変換を行わなければならない欠点がある。
【0021】
従来技術2の第1の問題点としては、ホログラム中に形成される回折格子の測定原理から、ビーム光で照射されるような狭い範囲の回折格子が評価され得るものの、広い面積におけるホログラムの評価は不可能である。広い面積におけるホログラムの評価は、狭い測定範囲の評価結果から推測することができるが、このような推測では不正確となる。すなわち、ホログラムを作成する範囲と測定する範囲とが一致しないため、光学系の特性による不均一性まで補正できないと言う欠点がある。
【0022】
また、従来技術2の第2の問題点としては、単純な単色用の回折格子状のホログラムを対象とし、単色光でない光を照射し分光測定を行うため、複数波長の回折格子が記録されたホログラムに適用する場合、複数波長の成分が同一の分光測定位置に再生されることもあり得るために、記録すべき忠実な画像パターンが再生されたかどうかの検証には不適当である。
【0023】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、目標再生像に対する忠実度が高い再生像を再生することができるホログラムを容易に作成することができる装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明に係るホログラム作成装置は、感光材料上の複数の局所領域それぞれにおいて物体光と参照光とを干渉させて要素ホログラムを記録して感光材料にホログラムを作成する装置であって、(1) 再生すべき目標再生像に応じた画像を空間光変調素子に呈示させ、この画像が呈示された空間光変調素子から出力された光を物体光として局所領域に入射させるとともに、参照光をも局所領域に入射させ、これら物体光と参照光とを干渉させて局所領域に要素ホログラムを記録する記録手段と、(2) 一定期間に亘り物体光および参照光のうち参照光のみを局所領域に入射させて、このときに局所領域から発生する再生光による再生像を撮像する撮像手段と、(3) 撮像手段により撮像された再生像と目標再生像とを比較する比較手段と、(4) 比較手段による比較の結果に応じた修正画像を空間光変調素子に呈示させ、この修正画像が呈示された空間光変調素子から出力された光を物体光として局所領域に入射させるとともに、参照光をも局所領域に入射させ、これら物体光と参照光とを干渉させて局所領域に要素ホログラムを追加記録する追加記録手段と、を備えることを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係るホログラム作成方法は、感光材料上の複数の局所領域それぞれにおいて物体光と参照光とを干渉させて要素ホログラムを記録して感光材料にホログラムを作成する方法であって、(1) 再生すべき目標再生像に応じた画像を空間光変調素子に呈示させ、この画像が呈示された空間光変調素子から出力された光を物体光として局所領域に入射させるとともに、参照光をも局所領域に入射させ、これら物体光と参照光とを干渉させて局所領域に要素ホログラムを記録する記録ステップと、(2) 記録ステップの後に一定期間に亘り物体光および参照光のうち参照光のみを局所領域に入射させ、このときに局所領域から発生する再生光による再生像を撮像する撮像ステップと、(3) 撮像ステップにおいて撮像された再生像と目標再生像とを比較する比較ステップと、(4) 比較ステップにおける比較の結果に応じた修正画像を空間光変調素子に呈示させ、この修正画像が呈示された空間光変調素子から出力された光を物体光として局所領域に入射させるとともに、参照光をも局所領域に入射させ、これら物体光と参照光とを干渉させて局所領域に要素ホログラムを追加記録する追加記録ステップと、を備えることを特徴とする。
【0026】
本発明に係るホログラム作成装置およびホログラム作成方法は、感光材料上の複数の局所領域それぞれにおいて物体光と参照光とを干渉させて要素ホログラムを記録して感光材料にホログラムを作成するものであって、同一の技術的思想に基づくものである。本発明に係るホログラム作成装置(方法)では、記録手段により(記録ステップにおいて)、再生すべき目標再生像に応じた画像が空間光変調素子に呈示され、この画像が呈示された空間光変調素子から出力された光が物体光として局所領域に入射するとともに、参照光も局所領域に入射して、これら物体光と参照光とが干渉して局所領域に要素ホログラムが記録される。その後、撮像手段により(撮像ステップにおいて)、一定期間に亘り物体光および参照光のうち参照光のみが局所領域に入射して、このときに局所領域から発生する再生光による再生像が撮像される。比較手段により(比較ステップにおいて)、撮像手段により(撮像ステップにおいて)撮像された再生像と目標再生像とが比較される。そして、追加記録手段により(追加記録ステップにおいて)、比較手段による(比較ステップにおける)比較の結果に応じた修正画像が空間光変調素子に呈示され、この修正画像が呈示された空間光変調素子から出力された光が物体光として局所領域に入射するとともに、参照光も局所領域に入射して、これら物体光と参照光とが干渉して局所領域に要素ホログラムが追加記録される。
【0027】
本発明に係るホログラム作成装置(方法)は、目標再生像が複数波長の光によるものであって、複数波長それぞれについて、記録手段が(記録ステップにおいて)局所領域に要素ホログラムを記録し、撮像手段(撮像ステップにおいて)が再生像を撮像し、比較手段(比較ステップにおいて)が再生像と目標再生像とを比較して、追加記録手段(追加記録ステップにおいて)が局所領域に要素ホログラムを追加記録するのが好適である。
【0028】
本発明に係るホログラム作成装置は、撮像手段による再生像の撮像、比較手段による再生像と目標再生像との比較、および、追加記録手段による要素ホログラムの追加記録を、複数波長それぞれについて順次に繰り返し行うのが好適である。また、本発明に係るホログラム作成方法は、撮像ステップ、比較ステップおよび追加記録ステップを、複数波長それぞれについて順次に繰り返し行うのが好適である。
【0029】
本発明に係るホログラム作成装置(方法)では、感光材料は、物体光および参照光の入射に因り干渉縞が形成されることにより該干渉縞に応じた空間的な位相変調を生じる体積位相型ホログラム記録材料であるのが好ましい。また、この体積位相型ホログラム記録材料は、有機溶媒に可溶な熱可塑性樹脂(A)と、9,9'-ジアリールフルオレン骨格を有し且つラジカル重合可能な不飽和結合を少なくとも1つ含有する常温常圧で固体であるラジカル重合性化合物(B)と、可塑剤(C)と、光重合開始剤(D)とを含み、熱可塑性樹脂(A),ラジカル重合性化合物(B)および可塑剤(C)それぞれの重量百分率が「(A):(B):(C)=10〜80:10〜80:10〜80」(ただし、これら各々の重量百分率の合計は100未満)であるのが好ましい。さらに、ラジカル重合性化合物(B)の屈折率は、熱可塑性樹脂(A)の屈折率と可塑剤(C)の屈折率との加重平均より大きいのが好ましい。
【0030】
また、本発明に係るホログラムは、上記の本発明に係るホログラム作成方法により作成されたものである。このホログラムは、上記の装置または方法により容易に作成することができて、目標再生像に対する忠実度が高い再生像を再生することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、目標再生像に対する忠実度が高い再生像を再生することができるホログラムを容易に作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0033】
図2は、本実施形態に係るホログラム作成装置の全体の斜視図である。図3は、本実施形態に係るホログラム作成装置における光学系の説明図である。なお、図2では感光材料34の下にあって隠れている構成要素は図示されていない。本実施形態に係るホログラム作成装置は、感光材料34上の複数の局所領域それぞれにおいて物体光と参照光とを干渉させて要素ホログラムを記録して感光材料34にホログラムを作成する装置である。
【0034】
本実施形態に係るホログラム作成装置は、可干渉光を出力する光源部として、3つのレーザ光源1〜3が設けられている。レーザ光源1は、赤色の波長λのレーザ光を出力するものであって、例えば、波長633nmのレーザ光を出力するHe-Neレーザ光源である。レーザ光源2は、緑色の波長λのレーザ光を出力するものであって、例えば、波長532nmのレーザ光を出力するNd:YAGレーザ光源である。また、レーザ光源3は、青色の波長λのレーザ光を出力するものであって、例えば、波長443nmのレーザ光を出力するHe-Cdレーザ光源である。
【0035】
光路遮断機4は、レーザ光源1のレーザ光出射端の直後の光路上に設けられており、レーザ光の通過および遮断の制御を行う。光路遮断機5は、レーザ光源2のレーザ光出射端の直後の光路上に設けられており、レーザ光の通過および遮断の制御を行う。また、光路遮断機6は、レーザ光源3のレーザ光出射端の直後の光路上に設けられており、レーザ光の通過および遮断の制御を行う。これら光路遮断機4〜6それぞれにおけるレーザ光の通過および遮断は、コンピュータ39から送られてくる制御信号に基づいて為される。光路遮断機4〜6それぞれは、例えば電磁シャッタや超音波偏向器などである。
【0036】
ミラー7およびダイクロイックミラー8,9は、レーザ光源1〜3それぞれから出力されて到達したレーザ光を入力して、これらを同一光路上に出力する。すなわち、ダイクロイックミラー8は、レーザ光源3から出力され光路遮断機6を通過してミラー7により反射された波長λのレーザ光を透過させるとともに、レーザ光源2から出力されて光路遮断機5を通過した波長λのレーザ光を反射させて、これら波長λのレーザ光および波長λのレーザ光をダイクロイックミラー9へ出力する。ダイクロイックミラー9は、ダイクロイックミラー8から到達した波長λのレーザ光および波長λのレーザ光を透過させるとともに、レーザ光源1から出力されて光路遮断機4を通過した波長λのレーザ光を反射させて、これら波長λ,λおよびλの各レーザ光をハーフミラー10へ出力する。ハーフミラー10は、ダイクロイックミラー9から到達したレーザ光を2分岐して、その2分岐した一方のレーザ光をミラー26へ出力し、他方のレーザ光を光路遮断機11へ出力する。
【0037】
ミラー26以降の感光材料34へ到る光学系は、参照光の光学系である。レンズ27およびレンズ28は、アフォーカル光学系を構成しており、ハーフミラー10からミラー26を経て到達したレーザ光を入力し、ビーム径を拡大して該レーザ光をマスク板29へ出力する。マスク板29は、要素ホログラムが記録される局所領域の形状に応じて矩形の開口30を有しており、レンズ27,28によりビーム径が拡大されたレーザ光を入力して、その入力したレーザ光のうち開口30に入射した横断面部分を出力する。レンズ31およびレンズ32は、アフォーカル光学系を構成しており、両者の間にミラー33が設けられている。レンズ31,32は、マスク板29の開口30を通過したレーザ光を入力し、そのレーザ光を参照光として感光材料34上の局所領域25へ入射させる。すなわち、レンズ31,32は、マスク板29の開口30を感光材料34上の局所領域25に結像する。ミラー33は、局所領域25への参照光の入射角を与える。
【0038】
光路遮断機11以降の感光材料34へ到る光学系は、物体光の光学系である。光路遮断機11は、ハーフミラー10から出力されるレーザ光の光路上に設けられており、該レーザ光の通過および遮断の制御を行う。この光路遮断機11におけるレーザ光の通過および遮断は、コンピュータ39から送られてくる制御信号に基づいて為される。光路遮断機11は、例えば電磁シャッタや超音波偏向器などである。レンズ12およびレンズ13は、アフォーカル光学系を構成しており、光路遮断機11から到達したレーザ光を入力し、ビーム径を拡大して該レーザ光を拡散板14へ出力する。
【0039】
拡散板14は、レンズ12,13によりビーム径が拡大されたレーザ光を入力して、2次光源面15を形成する。レンズ16は、その前焦点面に拡散板14が位置するように配置され、この拡散板14上の2次光源面15から発した光を空間光変調素子17へ入射させる。空間光変調素子17は、コンピュータ39から送られてくる画像データに基づいて画像を呈示し、レンズ16から入力した光に対して該画像に応じた空間的な強度変調を与えて、その光を物体光として出力する。
【0040】
拡散板14上に形成された2次光源面15は、レンズ16の作用により空間光変調素子17より遠方で且つ拡大された面光源となる。この面光源15から空間光変調素子17上に発生するスペックルの平均径が空間光変調素子17の画素ピッチ以下となるように、レンズ12,13によるビーム径の拡大率が設定され、2次光源面15の直径が決定される。これは、スペックルの斑点模様の暗部が画素ピッチより大きい場合、その画素の情報が要素ホログラムに記録されなくなることを防ぐためである。望ましくは、画素ピッチよりスペックルの平均径が充分小さくなるように、2次光源面15の直径を大きくすることが好ましい。
【0041】
レンズ18は、空間光変調素子17から出力された物体光を集光してマスク板19へ出力する。マスク板19は、要素ホログラムが記録される局所領域の形状に応じて矩形の開口20を有しており、レンズ16により集光された物体光を入力して、その入力した物体光のうち開口20に入射した横断面部分を出力する。レンズ21およびレンズ24は、アフォーカル光学系を構成しており、両者の間の光路上にミラー22が設けられている。レンズ21,24は、マスク板19の開口20を通過した物体光を入力し、その物体光を感光材料34上の局所領域25へ入射させる。すなわち、レンズ21,24は、マスク板19の開口20を感光材料34上の局所領域25に結像する。
【0042】
マスク板19はレンズ21の前焦点面より光源側に位置する。これにより、感光材料34上の局所領域25は、レンズ24の後焦点面より光源側に位置することとなる。これは、ホログラム再生時における視域拡大に関係する。すなわち、局所領域25への物体光の最大入射角は、局所領域25へ入射する物体光が平行光である場合には、レンズ24の焦点距離および口径(すなわち開口数NA)のみで視域が決定されるが、局所領域25がレンズ24の後焦点面より光源側に位置することにより、大きい入射角度で物体光が局所領域25に入射して、視域が拡大することになる。
【0043】
これに際しては、空間光変調素子17が面光源15で照射されていることが重要となる。
空間光変調素子17はレンズ18の前焦点面よりレンズ18に近い位置に配置され、レンズ18,21による空間光変調素子17の像23は、レンズ24の前焦点面よりレンズ24に近い位置に結像される。図1をも用いて説明すると、要素ホログラム25の位置を視点として空間光変調素子17の像23を観察すると、この像23は、レンズ24の前焦点面よりレンズ24に近い位置に在るため、レンズ24の虫眼鏡の作用により遠方に拡大虚像38として観察される。そして、要素ホログラム25の位置がレンズ24の後焦点面よりレンズ24に近いため、レンズ24の開口数NAで決定される最大入射角より大きな入射角が得られる。この状況を成立させるには、空間光変調素子17の各画素からの透過光が或る程度の出射角を持つこと、すなわち、空間光変調素子17への入射光が或る程度の入射角を持つこと、が必要である。この目的も含めて光源として大きさのある2次光源面15が形成されている。
【0044】
要素ホログラムに照明光を照射して再生光を発生させる場合に、参照光の入射方向と同じ方向に照明光を入射させて照射したときには、空間光変調素子17の像38は、感光材料34への照明光入射側と反対の側(すなわち、観察者にとって感光材料34の裏側)に再生される。したがって、再生される光線の太さについて考察すると、空間光変調素子17の画素の大きさと要素ホログラム25の大きさと比較すると通常は要素ホログラム25の方が大きいために、空間光変調素子17の画素から要素ホログラム25に拡がりながら再生され、さらに要素ホログラム25から観察者まで拡がりが拡大することになる。再生される3次元像の分解能はこの光線の太さによって決定されるために、光線の太さが拡大する状況は好ましくない。
【0045】
そこで、照明光を参照光の共役光とする。この照明光の元では、要素ホログラム25からの再生光は、空間光変調素子17の実像を形成する。観察者は、照明光の側に位置し、空間光変調素子17の画素の大きさと要素ホログラム25の大きさとを比較すると通常は要素ホログラム25の方が大きいために、要素ホログラム25から実像の空間光変調素子17の画素に狭くなりながら再生される。さらに観察者の瞳がこの空間光変調素子17の実像に位置する条件が追加され、観察者の瞳上に複数の画素が再生される場合には、観察者の目の焦点調節機能が有効に働くことも期待され、より自然な3次元再生像を観察することができることになる。
【0046】
以上説明したように、マスク板19をレンズ21の前焦点面より光源側に配置すること、空間光変調素子17をレンズ18の前焦点面よりレンズ18側に配置すること、参照光の共役光を照明光として要素ホログラム25を再生することによりレンズ24の開口数NAで制限される視野角以上の視野角を得ること、および、観察者の瞳が空間光変調素子17の実像の位置となるように空間光変調素子17の位置をレンズ18の前焦点面よりレンズ18側に配置することで、より自然な三次元再生像を観察することが可能となる。
【0047】
感光材料34は、物体光および参照光の入射に因り干渉縞が形成されることにより該干渉縞に応じた空間的な位相変調を生じる体積位相型ホログラム記録材料である。より具体的には、屈折率変調型フォトポリマであって、可干渉光の干渉によって生じる干渉縞を照射する記録工程のみにより、露光された部位の屈折率と未露光部位の屈折率との差(好ましくは0.001以上の差)が生じるものをいい、記録工程以外に屈折率の差を増幅させるための湿式現像処理または光や熱等による乾式現像処理が不要であるものをいう。このような感光材料34として用いられる屈折率変調型フォトポリマの典型的な例は、光で重合を開始するラジカル重合性化合物とその光開始剤系およびバインダーポリマを含む組成物である。
【0048】
より好適なフォトポリマの具体的な例は、干渉縞の明暗の強度分布を屈折率の変化として記録するのに使用される体積位相型ホログラム記録材料用組成物であって、有機溶媒に可溶な熱可塑性樹脂(A)と、9,9'-ジアリールフルオレン骨格を有し且つラジカル重合可能な不飽和結合を少なくとも1つ含有する常温常圧で固体であるラジカル重合性化合物(B)と、可塑剤(C)と、光重合開始剤(D)とを含む。熱可塑性樹脂(A),ラジカル重合性化合物(B)および可塑剤(C)の重量百分率は、「(A):(B):(C)=10〜80:10〜80:10〜80」であるのが好ましく(ただし、これら各々の重量百分率の合計は100未満)、また、ラジカル重合性化合物(B)の屈折率は、熱可塑性樹脂(A)の屈折率と可塑剤(C)の屈折率との加重平均より大きいのが好ましい。
【0049】
用いられる熱可塑性樹脂(A)の具体例としては、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラート、ポリビニルホルマール、ポリビニルカルバゾール、ポリアクリル酸、ポリメタクリロニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリ-1,2-ジクロロエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、シンジオタクチック型ポリメチルメタクリレート、ポリ-α-ビニルナフタレート、ポリカーボネート、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチラート、ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン、ポリ-O-メチルスチレン、ポリ-p-メチルスチレン、ポリ-p-フェニルスチレン、ポリ-p-クロロスチレン、ポリ-2,5-ジクロロスチレン、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホンが挙げられ、これらの例から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが好適である。また、これらの樹脂の好適な分子量は10,000〜1,000,000である。
【0050】
9,9'-ジアリールフルオレン骨格を有し且つラジカル重合可能な不飽和結合を少なくとも1つ含有する常温常圧で固体であるラジカル重合性化合物(B)として好適な化合物の具体例としては、9,9-ビス[4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシ)プロポキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス(4-メタクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス[4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス{4-[2-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシ-プロポキシ)-エトキシ]フェニル}フルオレン、9,9-ビス[4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシ)プロポキシ-3-メチルフェニル]フルオレンなどが挙げられる。
【0051】
可塑剤(C)としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジオクチルフタレートに代表されるフタル酸エステル類; ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジメチルセバケート、ジエチルセバケート、ジブチルセバケート、ジエチルサクシネートに代表される脂肪族二塩基酸エステル類; トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートに代表される正リン酸エステル類; グリセリルトリアセテート、2-エチルヘキシルアセテートに代表される酢酸エステル類; トリフェニルホスファイト、ジブチルハイドロジエンホスファイトに代表される亜リン酸エステル類などの不活性化合物が例示される。
【0052】
光重合開始剤(D)としては、He-Ne(波長633nm)、Nd:YAG(波長532nm)、Ar(波長515nm,488nm)、He-Cd(波長442nm)等のレーザ光を吸収してラジカルを発生するものが好適に用いられる。このような光重合開始剤としては、例えば、カルボニル化合物、アミン化合物、アリールアミノ酢酸化合物、有機錫化合物、アルキルアリールホウ素塩、オニウム塩類、鉄アレーン錯体、トリハロゲノメチル置換トリアジン化合物、有機過酸化物、ビスイミダゾール誘導体、チタノセン化合物、および、これらの開始剤と光増感色素の組み合わせ等が好ましく使用される。上記カルボニル化合物としては、例えば、ベンジル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン等が例示できる。
【0053】
光増感色素としては、ミヒラケトン、アクリジンイエロー、メロシアニン、メチレンブルー、カンファーキノン、エオシン、脱カルボキシル化ローズベンガル等が好適に使用される。光増感色素は、可視領域の光に吸収を示すものであればよく、上記以外に、例えば、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、フタロシアニン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、アクリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、クマリン誘導体、ベーススチリル誘導体、ケトクマリン誘導体、キノロン誘導体、スチルベン誘導体、オキサジン誘導体、チアジン系色素等も使用可能であり、更には「色素ハンドブック」(大河原信他編、講談社、 1986 年)、「機能性色素の化学」(大河原信他編、シーエムシー、1983年)、「特殊機能材料」(池森忠三郎他編、シーエムシー、1986年)に記載される光増感色素も用いることができる。これらは単独で用いても2以上の組み合わせで用いてもよい。
【0054】
感光材料34としての屈折率変調型フォトポリマはフィルム状であることが好ましく、その厚みは5μm〜500μmである。フォトポリマは、比較的薄くて傷つきやすいので、ガラスや石英あるいは樹脂からなる基材上にコーティングされているのが好ましい。基材上にコーティングされたフォトポリマに、さらにガラスや石英あるいは樹脂からなるカバー層を設けてあるのが好ましい。基材やカバー層は、透明であるか光を反射しないように着色を施したものが用いられる。透明な素材としては、ガラス、石英、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリオレフィン、脂環式ポリポレフィンなどの透明樹脂を用いることができる。
【0055】
感光材料34の具体的な一例は以下のとおりである。熱可塑性樹脂(A)として、酢酸ビニル(和光純薬社製、「酢酸ビニルポリマーメタノール溶液」、重合度1400〜1600、ポリマの屈折率:1.46)を加熱してメタノールを除去して残ったポリマ成分4.2gを用いる。9,9-ジアリールフルオレン骨格を有し且つ常温常圧で固体であるラジカル重合性化合物(B)として、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンのグリシジルエーテルのアクリル酸付加物(新日鐵化学社製、「ASF400」、単体の屈折率:1.63)1.6gを用いる。可塑剤(C)として、ジエチルセバケート(和光純薬社製、「SDE」、屈折率:1.43)4.2gを用いる。開始剤(D)として、3,3',4,4'-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(日本油脂社製、「BTTB-25」)1.5gを用いる。増感色素として、シアニン系色素(日本感光色素社製、NK1538)0.01gを用いる。また、溶媒としてアセトン11gを用いる。そして、これらを常温で混合し、記録材料用組成物を調整する。この組成物を厚み50μmのPET基板の片面に塗布して乾燥させ、乾燥後の組成物の厚みを30μmとする。加熱処理を施すことにより組成物から溶媒を除去して記録層となし、PET基板および記録層からなる2層構造の記録媒体を作成する。この記録媒体の記録層に厚み50μmのPETフィルムを被せて3層構造のホログラム記録用感光フィルムを作成する。
【0056】
このような感光材料34が用いられることにより、現像処理が行われなくても、物体光および参照光が入射して干渉縞が形成されるだけで要素ホログラムが局所領域25に記録される。したがって、波長λ,λおよびλそれぞれについて要素ホログラムを局所領域25に記録した後に、局所領域25への物体光の入射を光路遮断機11により遮断するとともに、光路遮断機4〜6により波長λ,λおよびλのうちの何れかの波長の光を局所領域25に入射させることで、この入射した光の波長についての再生像38を得ることができる。カメラ37は、この再生像38を撮像する。コンピュータ39は、このカメラ37により撮像された再生像を入力して、この再生像と目標再生像とを比較して、この比較の結果に応じた修正画像を空間光変調素子17に呈示させる。そして、この修正画像が呈示された空間光変調素子17から出力された光を新たに物体光として局所領域25に入射させるとともに、参照光をも局所領域25に入射させて、これら物体光と参照光とを干渉させて局所領域25に要素ホログラムを追加記録することができる。
【0057】
すなわち、本実施形態に係るホログラム作成装置は、再生すべき目標再生像に応じた画像を空間光変調素子17に呈示させ、この画像が呈示された空間光変調素子17から出力された光を物体光として局所領域25に入射させるとともに、参照光をも局所領域25に入射させ、これら物体光と参照光とを干渉させて局所領域25に要素ホログラムを記録するものであって、この為の記録手段として光源1〜3から感光材料34へ到るまでの物体光および参照光の光路上にある構成要素等を備える。
【0058】
加えて、本実施形態に係るホログラム作成装置は、一定期間に亘り物体光および参照光のうち参照光のみを局所領域25に入射させて、このときに局所領域25から発生する再生光による再生像を撮像するものであって、この為の撮像手段として、光路遮断機4〜6,11、カメラ37およびコンピュータ39等を備える。また、このホログラム作成装置は、この撮像された再生像と目標再生像とを比較するものであって、その為の比較手段としてコンピュータ39を備える。さらに、このホログラム作成装置は、この比較結果に応じた修正画像を空間光変調素子17に呈示させ、この修正画像が呈示された空間光変調素子17から出力された光を物体光として局所領域25に入射させるとともに、参照光をも局所領域25に入射させ、これら物体光と参照光とを干渉させて局所領域25に要素ホログラムを追加記録するものであって、追加記録手段として光源1〜3から感光材料34へ到るまでの物体光および参照光の光路上にある構成要素等を備える。
【0059】
また、本実施形態に係るホログラム作成装置は、感光材料34上の複数の局所領域それぞれに要素ホログラムを記録するために、感光材料34の面に平行な第1方向に感光材料34を移動させるための第1移動機構としてローラ35,36を備えるとともに、感光材料34の面に平行であって上記第1方向に垂直な第2方向に感光材料34とともに第1移動機構を移動させるための第2移動機構(不図示)として例えばリニアステージを備えている。これら第1移動機構および第2移動機構は、コンピュータ39から送られてくる制御信号に基づいて、局所領域25の大きさに応じた距離だけ移動する。
【0060】
コンピュータ39は、感光材料34が再生すべき3次元の目標再生像と、要素ホログラムを記録しようとしている局所領域25との間の相対位置関係を計算し、この計算結果に基づいて、空間光変調素子17に呈示させるべき画像を以下のようにして求める。すなわち、再生すべき目標再生像が感光材料34の参照光入射側に存在する場合には、レンズ24による空間光変調素子17の拡大虚像38に対して要素ホログラム25の中心位置を中心点として対称な新たな投影スクリーンを仮定し、この投影スクリーンに対する3次元再生物体透視変換画像を、観察者を原点の位置に置いた隠面消去を実行しつつ計算する。また、再生すべき目標再生像が感光材料34の参照光入射側と反対側にも存在する場合には、空間光変調素子17のレンズ24による拡大虚像38を投影スクリーンとしかつ要素ホログラム25の位置を原点とする3次元再生物体透視変換画像を、観察者を拡大虚像38の位置に置いた隠面消去を実行しつつ計算する。
【0061】
そして、コンピュータ39は、この3次元再生物体透視変換画像を赤(λ)、緑(λ)および青(λ)に3色に色分解し、最初に、赤の成分の画像を空間光変調素子17に提示し、予め設定された露光時間だけ光路遮断機4および光路遮断機11を開放して局所領域25上に要素ホログラムを記録する。次に、緑の成分の画像を空間光変調素子17に提示し、予め設定された露光時間だけ光路遮断機5および光路遮断機11を開放して局所領域25上に要素ホログラムを追加記録する。さらに、青の成分の画像を空間光変調素子17に提示し、予め設定された露光時間だけ光路遮断機6および光路遮断機11を開放して局所領域25上に要素ホログラムを追加記録する。
【0062】
そして、第1移動機構(ローラ35,36)または第2移動機構を局所領域25の大きさだけ移動させ、以上の露光動作を繰り返す。予め設定されている範囲に要素ホログラムを記録し終えると、感光材料34へのホログラムの記録が終了する。なお、以上に説明した動作は、単に3波長それぞれについての要素ホログラムを記録する記録手段の動作であるが、本実施形態に係るホログラム作成装置では、この記録手段に加えて撮像手段,比較手段および追加記録手段が以下のように動作する。
【0063】
次に、本実施形態に係るホログラム作成装置の動作について説明するとともに、本実施形態に係るホログラム作成方法について説明する。図4は、本実施形態に係るホログラム作成装置の動作の説明図である。この図には、上から順に、赤,緑および青それぞれについての目標再生像、赤,緑および青それぞれについてカメラ37により撮像された再生像、赤,緑および青それぞれについて空間光変調素子17に呈示される画像、光路遮断機4の開閉状態、光路遮断機5の開閉状態、光路遮断機6の開閉状態、光路遮断機11の開閉状態、それぞれが示されている。
【0064】
(ステップS1) コンピュータ39は、現在の位置にある局所領域25に記録すべき各波長についての透視変換画像RR,RG,RBを作成する。
【0065】
(ステップS2) コンピュータ39は、透視変換画像RRを空間光変調素子17に表示させ、光路遮断機4および光路遮断機11をTWR0時間だけ開放させて、この開放期間に赤成分の要素ホログラムを局所領域25に記録させる。
【0066】
(ステップS3) コンピュータ39は、透視変換画像RGを空間光変調素子17に表示させ、光路遮断機5および光路遮断機11をTWG0時間だけ開放させて、この開放期間に緑成分の要素ホログラムを局所領域25に記録させる。
【0067】
(ステップS4) コンピュータ39は、透視変換画像RBを空間光変調素子17に表示させ、光路遮断機6および光路遮断機11をTWB0時間だけ開放させて、この開放期間に青成分の要素ホログラムを局所領域25に記録させる。
【0068】
(ステップS5) コンピュータ39は、光路遮断機4をTR時間だけ開放させて、この開放期間にカメラ37により撮像された赤成分の再生像CR1を取得する。再生像CR1が予め決められた値以下の場合には、以下の手順はスキップされる。
【0069】
(ステップS6) コンピュータ39は、光路遮断機5をTR時間だけ開放させて、この開放期間にカメラ37により撮像された緑成分の再生像CG1を取得する。再生像CG1が予め決められた値以下の場合には、以下の手順はスキップされる。
【0070】
(ステップS7) コンピュータ39は、光路遮断機6をTR時間だけ開放させて、この開放期間にカメラ37により撮像された青成分の再生像CB1を取得する。再生像CB1が予め決められた値以下の場合には、以下の手順はスキップされる。
【0071】
(ステップS8) コンピュータ39は、記録すべき透視変換画像RRから、予め実験にて決定された定数αrを赤成分の透視変換画像の再生像CR1に乗じた画像を差分し、これにより得られた修正画像(RR−αCR1)を空間光変調素子17に表示させ、光路遮断機4および光路遮断機11をTWR1時間だけ開放して、この開放期間に赤成分の要素ホログラムを局所領域25に追加記録させる。
【0072】
(ステップS9) コンピュータ39は、記録すべき透視変換画像RGから、予め実験にて決定された定数αgを緑成分の透視変換画像の再生像CG1に乗じた画像を差分し、これにより得られた修正画像(RG−αCG1)を空間光変調素子17に表示させ、光路遮断機5および光路遮断機11をTWG1時間だけ開放して、この開放期間に緑成分の要素ホログラムを局所領域25に追加記録させる。
【0073】
(ステップS10) コンピュータ39は、記録すべき透視変換画像RBから、予め実験にて決定された定数αbを青成分の透視変換画像の再生像CB1に乗じた画像を差分し、これにより得られた修正画像(RB−αCB1)を空間光変調素子17に表示させ、光路遮断機6および光路遮断機11をTWB1時間だけ開放して、この開放期間に青成分の要素ホログラムを局所領域25に追加記録させる。
【0074】
以下、撮像された再生像と目標再生像との差が所定の閾値以下となるまで、ステップS5〜S10が繰り返される。なお、上記ステップS2〜S4は、本実施形態に係るホログラム作成方法における記録ステップに相当する。上記ステップS5〜S7は、本実施形態に係るホログラム作成方法における撮像ステップに相当する。また、上記ステップS8〜S10は、本実施形態に係るホログラム作成方法における比較ステップおよび追加記録ステップに相当する。
【0075】
また、上記の動作に際して以下の手法を併用することが好適である。すなわち、カメラ37により撮像される再生像CR1、CG1,CB1にはレーザ光再生時に特有のスペックルノイズが存在するため、適度な低域通過フィルタを併用することが好適である。追加記録により効果的に回折効率を向上させるため、および、不要な露光による散乱成分の発生防止のため、参照光と物体光との強度比が等しいことが望ましい。そこで、カメラ37により撮像された再生像CR1,CG1,CB1を空間光変調素子17上で飽和しない程度にα,α,α倍し、露光時間TWR,TWG,TWBをそれぞれ1/α,1/α,1/α倍することが好適である。また、追加記録を波長毎に行わず、各波長成分を順次に繰り返して行うことが必要である。これは、他の波長成分の追加記録によって現在の追加記録の状況に発生する変化を最小とするためである。
【0076】
以上のように、本実施形態に係るホログラム作成装置および方法では、局所領域25に要素ホログラムが一旦記録された後に、一定期間に亘り物体光および参照光のうち参照光のみが局所領域25に入射して、このときに局所領域25から発生する再生光による再生像が撮像される。そして、この撮像された再生像と目標再生像とが比較されて、この比較の結果に応じた修正画像が空間光変調素子17に呈示され、この修正画像が呈示された空間光変調素子17から出力された光が物体光として局所領域25に入射するとともに、参照光も局所領域25に入射して、これら物体光と参照光とが干渉して局所領域25に要素ホログラムが追加記録される。したがって、本実施形態に係るホログラム作成装置および方法では、目標再生像に対する忠実度が高い再生像を再生することができるホログラムを容易に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】感光材料および再生像の説明図である。
【図2】本実施形態に係るホログラム作成装置の全体の斜視図である。
【図3】本実施形態に係るホログラム作成装置における光学系の説明図である。
【図4】本実施形態に係るホログラム作成装置の動作の説明図である。
【図5】従来のホログラム作成技術の説明図である。
【符号の説明】
【0078】
1〜3…レーザ光源、4〜6…光路遮断機、7…ミラー、8,9…ダイクロイックミラー、10…ハーフミラー、11…光路遮断機、12,13…レンズ、14…拡散板、16…レンズ、17…空間光変調素子、18…レンズ、19…マスク板、20…開口、21…レンズ、22…ミラー、23…空間光変調素子の像、24…レンズ、25…局所領域、26…ミラー、27,28…レンズ、29…マスク板、30…開口、31,32…レンズ、33…ミラー、34…感光材料、35,36…ローラ、37…カメラ、38…拡大虚像、39…コンピュータ、40…再生像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光材料上の複数の局所領域それぞれにおいて物体光と参照光とを干渉させて要素ホログラムを記録して前記感光材料にホログラムを作成する装置であって、
再生すべき目標再生像に応じた画像を空間光変調素子に呈示させ、この画像が呈示された前記空間光変調素子から出力された光を物体光として前記局所領域に入射させるとともに、参照光をも前記局所領域に入射させ、これら物体光と参照光とを干渉させて前記局所領域に要素ホログラムを記録する記録手段と、
一定期間に亘り物体光および参照光のうち参照光のみを前記局所領域に入射させて、このときに前記局所領域から発生する再生光による再生像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された前記再生像と前記目標再生像とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較の結果に応じた修正画像を前記空間光変調素子に呈示させ、この修正画像が呈示された前記空間光変調素子から出力された光を物体光として前記局所領域に入射させるとともに、参照光をも前記局所領域に入射させ、これら物体光と参照光とを干渉させて前記局所領域に要素ホログラムを追加記録する追加記録手段と、
を備えることを特徴とするホログラム作成装置。
【請求項2】
前記目標再生像が複数波長の光によるものであって、
前記複数波長それぞれについて、前記記録手段が前記局所領域に要素ホログラムを記録し、前記撮像手段が前記再生像を撮像し、前記比較手段が前記再生像と前記目標再生像とを比較して、前記追加記録手段が前記局所領域に要素ホログラムを追加記録する、
ことを特徴とする請求項1記載のホログラム作成装置。
【請求項3】
前記撮像手段による前記再生像の撮像、前記比較手段による前記再生像と前記目標再生像との比較、および、前記追加記録手段による要素ホログラムの追加記録を、前記複数波長それぞれについて順次に繰り返し行う、ことを特徴とする請求項2記載のホログラム作成装置。
【請求項4】
前記感光材料は、前記物体光および前記参照光の入射に因り干渉縞が形成されることにより該干渉縞に応じた空間的な位相変調を生じる体積位相型ホログラム記録材料である、
ことを特徴とする請求項1記載のホログラム作成装置。
【請求項5】
感光材料上の複数の局所領域それぞれにおいて物体光と参照光とを干渉させて要素ホログラムを記録して前記感光材料にホログラムを作成する方法であって、
再生すべき目標再生像に応じた画像を空間光変調素子に呈示させ、この画像が呈示された前記空間光変調素子から出力された光を物体光として前記局所領域に入射させるとともに、参照光をも前記局所領域に入射させ、これら物体光と参照光とを干渉させて前記局所領域に要素ホログラムを記録する記録ステップと、
前記記録ステップの後に一定期間に亘り物体光および参照光のうち参照光のみを前記局所領域に入射させ、このときに前記局所領域から発生する再生光による再生像を撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップにおいて撮像された前記再生像と前記目標再生像とを比較する比較ステップと、
前記比較ステップにおける比較の結果に応じた修正画像を前記空間光変調素子に呈示させ、この修正画像が呈示された前記空間光変調素子から出力された光を物体光として前記局所領域に入射させるとともに、参照光をも前記局所領域に入射させ、これら物体光と参照光とを干渉させて前記局所領域に要素ホログラムを追加記録する追加記録ステップと、
を備えることを特徴とするホログラム作成方法。
【請求項6】
前記目標再生像が複数波長の光によるものであって、
前記複数波長それぞれについて、前記記録ステップにおいて前記局所領域に要素ホログラムを記録し、前記撮像ステップにおいて前記再生像を撮像し、前記比較ステップにおいて前記再生像と前記目標再生像とを比較して、前記追加記録ステップにおいて前記局所領域に要素ホログラムを追加記録する、
ことを特徴とする請求項5記載のホログラム作成方法。
【請求項7】
前記撮像ステップ、前記比較ステップおよび前記追加記録ステップを、前記複数波長それぞれについて順次に繰り返し行う、ことを特徴とする請求項6記載のホログラム作成方法。
【請求項8】
前記感光材料は、前記物体光および前記参照光の入射に因り干渉縞が形成されることにより該干渉縞に応じた空間的な位相変調を生じる体積位相型ホログラム記録材料である、
ことを特徴とする請求項5記載のホログラム作成方法。
【請求項9】
前記体積位相型ホログラム記録材料は、
有機溶媒に可溶な熱可塑性樹脂(A)と、9,9'-ジアリールフルオレン骨格を有し且つラジカル重合可能な不飽和結合を少なくとも1つ含有する常温常圧で固体であるラジカル重合性化合物(B)と、可塑剤(C)と、光重合開始剤(D)とを含み、
熱可塑性樹脂(A),ラジカル重合性化合物(B)および可塑剤(C)それぞれの重量百分率が、「(A):(B):(C)=10〜80:10〜80:10〜80」(ただし、これら各々の重量百分率の合計は100未満)である、
ことを特徴とする請求項8記載のホログラム作成方法。
【請求項10】
ラジカル重合性化合物(B)の屈折率は、熱可塑性樹脂(A)の屈折率と可塑剤(C)の屈折率との加重平均より大きい、ことを特徴とする請求項9記載のホログラム作成方法。
【請求項11】
請求項5〜10の何れか1項に記載のホログラム作成方法により作成されたホログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−39415(P2006−39415A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222261(P2004−222261)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】