ホログラム光学素子およびその製造方法と、映像表示装置
【課題】方向によって異なる観察特性を同時に実現し、映像表示装置の使い勝手を向上させる。
【解決手段】可干渉性を有する2光束でホログラム感光材料を露光することにより、体積位相型の反射型のホログラム光学素子23を作製する際に、一方の露光光束を軸非対称な波面を持つ光束とし、他方の露光光束を、該光束に垂直な断面内で互いに直交する2方向(X方向、Y方向)のうちの一方向を含む面内(ZX平面内)における集光点が他方向を含む面内(YZ平面内)における集光点とは光軸方向(Z方向)に異なる光束とする。これにより、再生時に、ホログラム光学素子23にて回折反射された所定波長の映像光の集光位置(P’、Q’)は、ZX平面内とYZ平面内とで光軸方向に異なり、X方向とY方向とで映像観察の際の特性が異なる映像表示装置を実現することができる。
【解決手段】可干渉性を有する2光束でホログラム感光材料を露光することにより、体積位相型の反射型のホログラム光学素子23を作製する際に、一方の露光光束を軸非対称な波面を持つ光束とし、他方の露光光束を、該光束に垂直な断面内で互いに直交する2方向(X方向、Y方向)のうちの一方向を含む面内(ZX平面内)における集光点が他方向を含む面内(YZ平面内)における集光点とは光軸方向(Z方向)に異なる光束とする。これにより、再生時に、ホログラム光学素子23にて回折反射された所定波長の映像光の集光位置(P’、Q’)は、ZX平面内とYZ平面内とで光軸方向に異なり、X方向とY方向とで映像観察の際の特性が異なる映像表示装置を実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可干渉性を有する2光束でホログラム感光材料を露光することにより作製されるホログラム光学素子と、そのホログラム光学素子の製造方法と、そのホログラム光学素子を用いた映像表示装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ホログラム光学素子(以下、HOEとも称する)を用いた映像表示装置が種々提案されている。図14は、上記映像表示装置における光路を展開して示す説明図である。この映像表示装置では、光源101からの光は照明レンズ102で平行光に変換された後、拡散板103にて拡散され、液晶表示素子(以下、LCDとも称する)104に入射してそこから映像光として出射される。この映像光は、HOE105にて回折されて光学瞳Eに導かれる。したがって、光学瞳Eの位置では、観察者はLCD104に表示された映像を観察することが可能となる。
【0003】
このような映像表示装置に用いられるHOEは、一般的に、可干渉性を有する2光束でホログラム感光材料を露光することにより作製される。つまり、ホログラム感光材料に対して互いに反対側に位置する2つの点光源からの2光束をホログラム感光材料に照射して干渉させることにより、干渉縞を有するHOEが作製される。
【0004】
このとき、例えば特許文献1では、一方の点光源を再生時の光学瞳の位置と略一致するように配置してホログラム感光材料を露光することにより、HOEを作製するようにしている。この手法でHOEを作製した場合、再生時に観察者が光学瞳の面内で瞳位置をずらすことなく映像を観察したときには、露光時のホログラム感光材料への露光光線の入射方向と再生時の映像の観察方向とが一致するので、観察者は観察画角内で色ムラの無い良好な映像を観察することができる。しかし、その反面、再生時に観察者の瞳位置が光学瞳面内ですれると、上記露光光線の入射方向と上記観察方向とがずれるため、観察画角内で色ムラが発生し、映像品位が低下する。
【0005】
一方、例えば特許文献2では、一方の点光源を再生時の光学瞳の位置よりもHOEとは反対側に配置してホログラム感光材料を露光することにより、HOEを作製するようにしている。この手法でHOEを作製した場合、再生時に観察者の瞳が光学瞳面内でずれたとしても、観察方向によっては、露光時のホログラム感光材料への露光光線の入射方向に近づくもの、または上記入射方向と同一方向のものも存在するため、瞳位置のずれによる色ムラを低減することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2001−264682号公報
【特許文献2】特開2004−61731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年では、デジタル放送のハイビジョン映像を表示する表示素子が急速に普及し始めている。このような表示素子では、表示画面のアスペクト比が16(横):9(縦)となっている。このように表示画面が横長の表示素子を映像表示装置に適用した場合には、光学瞳位置での観察者の観察画角も横方向に広がることになり、結果的に観察画角内での色ムラが発生しやすくなる。したがって、上記映像表示装置では、横方向において、観察画角内での色ムラを低減できる画角重視の特性とすることが望ましい。
【0008】
また、例えばヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDとも称する)のように、眼鏡のフレームに相当する支持手段で映像表示装置を観察者の眼前で支持する構成では、映像表示装置は横方向(水平方向)にはずれにくく、縦方向(垂直方向)にはずれやすい。したがって、HMDを上記のように構成する場合には、縦方向において、観察者の瞳位置のずれによる色ムラを低減できる瞳重視の特性とすることが望ましい。
【0009】
さらに、映像表示装置を眼幅(左右の眼の幅)が異なる複数人で使用することを想定した場合、観察者ごとに瞳位置は横方向(水平方向)に異なることから、瞳位置のずれによって色ムラが発生するのと同様の原理により、複数人の間で色の認識が相違する事態が発生する。したがって、複数人での使用を想定した場合には、眼幅方向である横方向において、そのような複数人の間での色の認識の相違を低減できる眼幅重視の特性とすることが望ましい。
【0010】
以上、横方向および縦方向のそれぞれについて重視することが望まれる特性の一例を示したが、映像表示装置の構成や使用状態によっては、横方向および縦方向で重視したい特性が異なることは多くあり得ることである。しかし、上記した特許文献1および2では、横方向および縦方向で特性を異ならせることなく、どちらの方向についても画角重視の特性としたり、瞳重視の特性としているため、使い勝手のよい映像表示装置を実現できているとは必ずしも言えない。
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、方向によって異なる観察特性を同時に実現することができ、これによって使い勝手を向上させることができる映像表示装置と、その映像表示装置に用いられるホログラム光学素子と、そのホログラム光学素子の製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のホログラム光学素子の製造方法は、映像を表示する表示素子と、表示素子の表示映像の拡大虚像を観察者に提供する拡大光学系とを備え、この拡大光学系が、表示素子からの映像光を回折反射させて観察者の瞳に導く体積位相型の反射型ホログラム光学素子を有する映像表示装置であって、表示素子の表示領域の中心と拡大光学系によって形成される光学瞳の中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とし、光軸に垂直でかつ互いに直交する2方向をそれぞれ第1の方向および第2の方向とし、光軸に平行でかつ第1の方向を含む面を第1の面とし、光軸に平行でかつ第2の方向を含む面を第2の面とすると、ホログラム光学素子にて回折反射された所定波長の映像光の集光位置が、第1の面内と第2の面内とで光軸方向に異なることを特徴としている。
【0013】
なお、ホログラム光学素子にて回折された所定波長の映像光の集光には、ホログラム光学素子から有限の位置で集光する場合も含まれるし、ホログラム光学素子から無限遠の位置で集光する場合も含まれるものとする。
【0014】
上記の構成によれば、表示素子からの映像光は、拡大光学系のホログラム光学素子にて回折反射され、観察者の瞳に導かれる。これにより、観察者は、光学瞳の位置にて、表示素子の表示映像の拡大虚像を観察することができる。このとき、ホログラム光学素子にて回折された所定波長の映像光(例えばRGBの少なくともいずれかの光)の集光位置が第1の面内と第2の面内とで光軸方向に異なるので、第1の方向(例えば水平方向または垂直方向)と第2の方向(例えば垂直方向または水平方向)とで映像観察の際の特性が異なる映像表示装置を実現することができる。
【0015】
つまり、映像光の集光位置が例えば再生時の光学瞳と略同一位置であれば、観察者が光学瞳の面内で瞳位置をずらすことなく映像(虚像)を観察したときに、ホログラム光学素子を作製する元となるホログラム感光材料への露光光線の入射方向と映像の観察方向とが一致するので(露光時と観察時とで画角が一致するので)、観察画角内での色ムラの無い良好な映像を観察することができる。
【0016】
一方、映像光の集光位置が例えば光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の位置であれば、映像観察の際に観察者の瞳が光学瞳面内でずれたとしても、観察方向によっては、露光時のホログラム感光材料への露光光線の入射方向に近づくもの、または上記入射方向と同一方向のものも存在するため、瞳位置のずれによる色ムラを低減することができる。また、眼幅の異なる複数人に映像表示装置を使用させる場合でも、上記と同様の原理により、複数人の間で色の認識が異なる事態を低減することができる。
【0017】
したがって、映像光の集光位置が第1の面内と第2の面内とで光軸方向に異なることにより、例えば、第1の方向と第2の方向とのうちで画角を広げたい方向(例えば水平方向)には画角重視の特性(観察画角内での色ムラを低減した特性)とする一方、観察者の瞳がずれやすい方向(例えば垂直方向)には瞳重視の特性(瞳位置のずれによる色ムラを低減した特性)とすることができる。また、複数人の使用を想定する場合には、眼幅方向(水平方向)には眼幅重視の特性(複数人の間での色の認識の相違を低減した特性)とする一方、他の方向(垂直方向)には他の特性(画角重視や瞳重視の特性)とすることも可能となる。このように、方向によって異なる観察特性を同時に実現することができるので、使い勝手を向上させた映像表示装置を実現することができる。
【0018】
本発明の映像表示装置において、ホログラム光学素子にて回折反射された所定波長の映像光の集光位置は、第1の面および第2の面のうちの一方の面内では光学瞳と略同一位置であり、他方の面内では光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の位置であってもよい。
【0019】
この場合、第1の方向および第2の方向のうちの一方の方向(例えば水平方向)については画角重視の特性とし、他方の方向(例えば垂直方向)については瞳重視の特性とすることができる。また、複数人の使用を想定する場合には、一方の方向(例えば垂直方向)については画角重視の特性とし、他方の方向(例えば水平方向)については眼幅重視の特性とすることもできる。
【0020】
本発明の映像表示装置において、第1の面および第2の面のうちで観察画角が広い面内における所定波長の映像光の集光位置が、光学瞳と略同一位置であってもよい。この場合、第1の方向および第2の方向のうちで画角が広い方向について画角重視の特性とすることができ、画角が広くても色ムラを低減した良好な映像を観察者に観察させることができる。
【0021】
本発明の映像表示装置において、観察者の側頭部に当接する支持手段で該映像表示装置が(観察者の眼前に位置するように)支持される場合に、第1の方向および第2の方向のうち、第1の面および第2の面のうちで所定波長の映像光の集光位置が光学瞳と略同一位置にある面に含まれる方向は、水平方向であってもよい。
【0022】
映像表示装置を支持する支持手段が観察者の側頭部に当接する場合、水平方向における観察者の瞳位置のずれは少ない。したがって、上記構成によれば、水平方向に画角重視の特性を優先して持たせて、良好な映像を観察者に観察させることができる。
【0023】
本発明の映像表示装置は、上記表示素子と上記拡大光学系とを含む表示ユニットを観察者の両眼に対応して2つ有しており、2つの表示ユニットの眼幅方向の間隔を調整する調整手段をさらに有していてもよい。
【0024】
この場合、観察者は、自分の眼幅に合うように調整手段によって2組の表示ユニットの眼幅方向の間隔を調整した後、映像表示装置を使用することが可能となる。これにより、両眼観察用の映像表示装置においても、眼幅の異なる観察者ごとに、水平方向における観察画角内での色ムラを低減した良好な映像を観察させることができる。
【0025】
本発明の映像表示装置において、上記調整手段は、互いに当接しながら眼幅方向に相対的にスライドする2つのスライド部材と、2つのスライド部材を固定する固定手段とを有しており、一方のスライド部材の一端は、一方の表示ユニットに固定されており、他方のスライド部材の一端は、他方の表示ユニットに固定されており、2つのスライド部材は、観察者の眼幅に対応した量だけ相対的にスライドして固定手段によって固定される構成であってもよい。
【0026】
この構成では、2つのスライド部材が別々の表示ユニットに固定されているので、2つのスライド部材を観察者の眼幅に対応した量だけ相対的にスライドさせ、固定手段によって固定すれば、2つの表示ユニットは眼幅の異なる観察者ごとに両眼の前に位置するようになる。したがって、このような2つのスライド部材と固定手段とで調整手段を構成することにより、2つの表示ユニットの眼幅方向の間隔を確実に調整することができる。
【0027】
本発明の映像表示装置において、上記調整手段は、2つの表示ユニットを所定の間隔で支持する互いに交換可能な複数の支持部材の中から選択される、観察者の眼幅に対応した長さの支持部材で構成されていてもよい。
【0028】
この構成では、互いに交換可能な複数の支持部材の中から、観察者の眼幅に対応した長さの支持部材が選択されて調整手段として用いられる。これにより、2つの表示ユニットの眼幅方向の間隔を、眼幅の異なる観察者ごとに確実に調整することができる。
【0029】
本発明の映像表示装置において、第1の方向および第2の方向のうち、第1の面および第2の面のうちで所定波長の映像光の集光位置が光学瞳と略同一位置にある面に含まれる方向は、ホログラム光学素子への光軸入射面に平行な方向であってもよい。
【0030】
ホログラム光学素子への光軸入射面とは、ホログラム光学素子における入射光の光軸と反射光の光軸とを含む平面を指す。一般的に、ホログラム光学素子を有する拡大光学系によって形成される光学瞳は、光軸入射面に垂直な方向よりも光軸入射面に平行な方向のほうが小さいので、光軸入射面に平行な方向に瞳位置がずれたときに生ずる色ムラはある程度許容される。したがって、第1の方向および第2の方向のうちで光軸入射面に平行な方向に画角重視の特性を持たせて、良好な映像を観察者に観察させることができる。
【0031】
本発明の映像表示装置において、第1の方向および第2の方向のうち、第1の面および第2の面のうちで所定波長の映像光の集光位置が光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の位置にある面に含まれる方向は、観察者の眼幅方向であってもよい。
【0032】
上記の構成によれば、眼幅方向に瞳位置がずれたときの色ムラを低減することができるので、例えば観察者の両眼に対応して映像表示装置を複数設け、眼幅の異なる複数人に映像表示装置を使用させる場合でも、観察者ごとに眼幅方向に両眼の瞳位置が異なることによって観察者ごとに所定の観察方向における色の認識が異なる事態を低減することができる。
【0033】
本発明の映像表示装置において、光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側にある所定波長の映像光の集光位置は、ホログラム光学素子から無限遠の位置であってもよい。
【0034】
第1の面および第2の面のうち、所定波長の映像光の集光位置が光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の無限遠の位置にある面内では、露光時にホログラム感光材料に入射する露光光線が略平行となる。したがって、観察者の瞳位置が上記面内の方向(第1の方向または第2の方向)にずれても、露光光線の方向と同一の観察方向については、瞳位置の違いによって色ムラが発生するのを回避することができる。
【0035】
本発明の映像表示装置において、ホログラム光学素子にて回折反射された所定波長の映像光の集光位置は、第1の面および第2の面のうちの一方の面内では光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の第1の位置であり、他方の面内では第1の位置に対してホログラム光学素子とは反対側の第2の位置であってもよい。
【0036】
この場合、第1の方向および第2の方向のうちの一方の方向(例えば垂直方向)では、映像観察の際に観察者の瞳が光学瞳面内でずれたとしても、瞳位置のずれによる色ムラを低減することができ、瞳重視の特性とすることができる。また、他方の方向(例えば水平方向)では、眼幅の異なる複数人に映像表示装置を使用させる場合でも、複数人の間で色の認識が異なる事態を低減することができ、眼幅重視の特性とすることができる。
【0037】
本発明の映像表示装置において、第2の位置は、ホログラム光学素子から無限遠の位置であってもよい。第1の面および第2の面のうち、所定波長の映像光の集光位置が第1の位置に対してホログラム光学素子とは反対側の第2の位置(無限遠)となる面内では、露光時にホログラム感光材料に入射する露光光線が略平行となる。したがって、観察者の瞳位置が上記面内の方向(第1の方向または第2の方向)にずれても、あるいは複数人の観察者の眼幅が上記方向に異なる場合でも、露光光線の方向と同一の観察方向については、瞳位置の違いによって色ムラが発生する、あるいは複数人の間で色の認識が異なるのを回避することができる。
【0038】
本発明の映像表示装置において、ホログラム光学素子は、表示素子からの映像光と外光とを同時に観察者の瞳に導くコンバイナであってもよい。この場合、観察者は、表示素子の表示映像(虚像)と外界像とを同時に観察することができ、シースルータイプの映像表示装置を実現することができる。
【0039】
本発明のホログラム光学素子の製造方法は、可干渉性を有する2光束でホログラム感光材料を露光することにより、体積位相型の反射型ホログラム光学素子を形成するホログラム光学素子の製造方法であって、一方の露光光束は、軸非対称な波面を持つ光束であり、他方の露光光束は、該光束に垂直な断面内で互いに直交する2方向のうちの一方向を含む面内における集光点が他方向を含む面内における集光点とは光軸方向に異なる位置となる光束であることを特徴としている。
【0040】
ホログラム感光材料を露光する2光束のうち、一方の露光光束は軸非対称な波面を持つ光束であるが、他方の露光光束は、該光束に垂直な断面内で互いに直交する2方向のうちの一方向(例えば水平方向)を含む面内と他方向(例えば垂直方向)を含む面内とで集光点が光軸方向に異なる光束である。なお、このような他方の露光光束は、例えば、光路中に2枚のシリンドリカルレンズを集光方向が直交するように、かつ、光束の進行方向にずらして配置することで得ることができる。これにより、2方向で特性の異なるホログラム光学素子を得ることができる。
【0041】
ここで、例えば、作製されたホログラム光学素子を映像表示装置に適用し、表示素子からの映像光をホログラム光学素子にて回折反射させて観察者の瞳に導く構成とした場合、集光点が再生時の光学瞳と略同一位置であれば、観察者が光学瞳の面内で瞳位置をずらすことなく映像を観察したときに、ホログラム感光材料への露光光線の入射方向と映像の観察方向とが一致するので、観察画角内での色ムラの無い良好な映像を観察することができる。
【0042】
一方、集光点が再生時の光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の位置であれば、映像観察の際に観察者の瞳が光学瞳面内でずれたとしても、観察方向によっては、露光時のホログラム感光材料への露光光線の入射方向に近づくもの、または上記入射方向と同一方向のものも存在するため、瞳位置のずれによる色ムラを低減することができる。また、眼幅の異なる複数人に映像表示装置を使用させる場合でも、上記と同様の原理により、複数人の間で色の認識が異なる事態を低減することもできる。
【0043】
したがって、2方向で特性の異なるホログラム光学素子を作製することで、これを映像表示装置に適用したときに、画角を広げたい方向(例えば水平方向)には画角重視の特性とし、観察者の瞳がずれやすい方向(例えば垂直方向)には瞳重視の特性とすることができる。また、複数人の使用を想定する場合には、眼幅方向(水平方向)には眼幅重視の特性とし、他の方向(垂直方向)には他の特性(画角重視や瞳重視の特性)とすることも可能となる。このように、水平方向および垂直方向の2方向で異なる観察特性を同時に実現することができるので、使い勝手のよい映像表示装置を実現することができる。
【0044】
本発明のホログラム光学素子は、上述した本発明のホログラム光学素子の製造方法によって製造されることを特徴としている。これにより、本発明のホログラム光学素子を映像表示装置に適用したときに、水平方向および垂直方向の2方向で異なる観察特性を実現することができ、使い勝手のよい映像表示装置を実現することができる。
【0045】
なお、本発明の映像表示装置は以下のように表現することもでき、これによって上記と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、本発明の映像表示装置は、映像を表示する表示素子と、表示素子の表示映像の拡大虚像を観察者に提供する拡大光学系とを備え、この拡大光学系が、表示素子からの映像光を回折反射させて観察者の瞳に導く体積位相型の反射型ホログラム光学素子を有する映像表示装置であって、上記ホログラム光学素子は、上述した本発明の製造方法によって製造されたホログラム光学素子である。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、方向によって異なる観察特性を同時に実現することができるので、使い勝手を向上させた映像表示装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0048】
(1.HMDの構成)
図2は、本実施形態に係るHMDの概略の構成を示す斜視図である。HMDは、映像表示装置1と、支持手段2とで構成されている。
【0049】
映像表示装置1は、少なくとも光源11および表示素子14(ともに図3参照)を内包する筐体3を有している。この筐体3は、接眼光学系4の一部を保持している。接眼光学系4は、後述する接眼プリズム21および偏向プリズム22の貼り合わせによって構成されており、全体として眼鏡の一方のレンズ(図2では右眼用レンズ)のような形状をしている。また、映像表示装置1は、筐体3を貫通して設けられるケーブル(図示せず)を介して、光源11および表示素子14に少なくとも駆動電力および映像信号を供給するための回路基板(図示せず)を有している。
【0050】
支持手段2は、眼鏡のフレームに相当するものであり、観察者の側頭部に当接した状態で映像表示装置1を観察者の眼前で支持する。より詳しくは、支持手段2は、映像表示装置1の接眼光学系4を観察者の一方の眼(例えば右眼)の前で支持するとともに、ダミーレンズ5を観察者の他方の眼(例えば左眼)の前で支持する。また、支持手段2は、左右の鼻当て6も含んでいる。
【0051】
観察者がHMDを頭部に装着し(支持手段2を観察者の側頭部に当接させて、映像表示装置1を観察者の眼前に位置させ)、表示素子14に映像を表示すると、その映像光が接眼光学系4を介して観察者の瞳に導かれる。これにより、観察者は、映像表示装置1の映像を虚像として観察することができる。また、これと同時に、観察者は、接眼光学系4を介して、外界像をシースルーで観察することができる。なお、映像表示装置1を2つ用いて両眼で映像を観察できるようにしてもよい(図7(a)参照)。
【0052】
また、映像表示装置1が支持手段2によって観察者の眼前で支持されるので、観察者はハンズフリーとなり、映像や外界像を観察しながら空いた手で所望の作業を行うことができる。以下、映像表示装置1の詳細について説明する。
【0053】
(2.映像表示装置の構成)
図3は、映像表示装置1の概略の構成を示す断面図である。映像表示装置1は、光源11と、一方向拡散板12と、集光レンズ13と、表示素子14と、上述した接眼光学系4とを有している。光源11、一方向拡散板12、集光レンズ13および表示素子14は、図2に示した筐体3内に収容されており、後述する接眼プリズム21の一部も筐体3内に位置している。また、光源11、一方向拡散板12および集光レンズ13で照明光学系が構成されるが、この照明光学系の中に、必要に応じてDOE(回折光学素子)を配置してもよい。
【0054】
なお、以下での説明の便宜上、方向を以下のように定義しておく。まず、表示素子14の表示領域の中心と、接眼光学系4によって形成される光学瞳Eの中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とする。そして、光源11から光学瞳Eまでの光路を展開したときの光軸方向をZ方向とする。また、接眼光学系4の後述するホログラム光学素子23への光軸の入射面に垂直な方向をX方向とし、ZX平面に垂直な方向をY方向とする。なお、ホログラム光学素子23への光軸の入射面とは、ホログラム光学素子23における入射光の光軸と反射光の光軸とを含む平面、すなわち、YZ平面を指す。以下、上記入射面を単に入射面または光軸入射面と称する。なお、本実施形態では、XYZの各方向において正負は問わないものとする。
【0055】
また、光軸に垂直でかつ互いに直交する2方向をそれぞれ第1の方向および第2の方向とすると、本実施形態では、第1の方向は例えばX方向であり、第2の方向は例えばY方向である。そして、光軸に平行でかつ第1の方向を含む面を第1の面とし、光軸に平行でかつ第2の方向を含む面を第2の面とすると、本実施形態では、第1の面は例えばZX平面であり、第2の面は例えばYZ平面である。また、光学瞳Eの位置では、X方向は水平方向にも対応し、Y方向は垂直方向にも対応している。
【0056】
光源11は、表示素子14を照明するものであり、例えば、光強度のピーク波長および光強度半値の波長幅で462±12nm(B光)、525±17nm(G光)、635±11nm(R光)となる3つの波長帯域の光を発するRGB一体型のLEDで構成されている。このように、光源11が所定の波長幅の光を出射することにより、表示素子14を照明して得られる映像光に所定の波長幅を持たせることができ、後述するホログラム光学素子23にて映像光を回折させたときに、光学瞳Eの位置にて観察画角全域にわたって観察者に映像を観察させることができる。また、光源11の各色についてのピーク波長は、ホログラム光学素子23の後述する回折効率のピーク波長の近傍に設定されており、光利用効率の向上が図られている。
【0057】
また、光源11は、RGBの光を出射するLEDで構成されているので、光源11を安価に実現することができるとともに、表示素子14を照明したときに、表示素子14にてカラー映像を表示することが可能となり、そのカラー映像を観察者に提供することが可能となる。また、各LEDは、発光波長幅が狭いので、そのようなLEDを複数用いることにより、色再現性が高く、明るい映像表示が可能となる。
【0058】
一方向拡散板12は、光源11からの出射光を拡散させるものであるが、その拡散度は方向によって異なっている。より詳細には、一方向拡散板12は、X方向には入射光を約40゜拡散させ、Y方向には入射光を約0.5゜拡散させる。
【0059】
集光レンズ13は、一方向拡散板12にて拡散された光をY方向に集光するシリンダレンズで構成されており、その拡散光が効率よく光学瞳Eを形成するように配置されている。
【0060】
表示素子14は、光源11からの出射光を画像データに応じて変調して映像を表示するものであり、光が透過する領域となる各画素をマトリクス状に有する透過型の液晶表示素子で構成されている。表示素子14は、矩形の表示領域の長辺方向がX方向となり、短辺方向がY方向となるように配置されている。なお、表示素子14は、反射型であってもよい。反射型の表示素子14としては、例えば反射型の液晶表示素子や、DMD(Digital Micromirror Device;米国テキサスインスツルメント社製)を用いることができる。
【0061】
接眼光学系4は、表示素子14の表示映像の拡大虚像を観察者に提供する拡大光学系であり、接眼プリズム21(第1の透明基板)と、偏向プリズム22(第2の透明基板)と、ホログラム光学素子23とを有して構成されている。
【0062】
接眼プリズム21は、面21aを介して入射する表示素子14からの映像光を、対向する2つの面21b・21cで全反射させ、ホログラム光学素子23を介して観察者の瞳に導く一方、外光を透過させて観察者の瞳に導くものであり、偏向プリズム22とともに、例えばアクリル系樹脂で構成されている。この接眼プリズム21は、平行平板の下端部を下端に近くなるほど薄くして楔状にし、その上端部を上端に近くなるほど厚くした形状で構成されている。また、接眼プリズム21は、その下端部に配置されるホログラム光学素子23を挟むように、偏向プリズム22と接着剤で接合されている。
【0063】
偏向プリズム22は、平面視で略U字型の平行平板で構成されており(図2参照)、接眼プリズム21の下端部および両側面部(左右の各端面)と貼り合わされたときに、接眼プリズム21と一体となって略平行平板となるものである。この偏向プリズム22を接眼プリズム21に接合することにより、観察者が接眼光学系4を介して観察する外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
【0064】
つまり、例えば、接眼プリズム21に偏向プリズム22を接合させない場合、外光は接眼プリズム21の楔状の下端部を透過するときに屈折するので、接眼プリズム21を介して観察される外界像に歪みが生じる。しかし、接眼プリズム21に偏向プリズム22を接合させて一体的な略平行平板を形成することで、外光が接眼プリズム21の楔状の下端部を透過するときの屈折を偏向プリズム22でキャンセルすることができる。その結果、シースルーで観察される外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
【0065】
なお、接眼プリズム21および偏向プリズム22の各面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。接眼プリズム21および偏向プリズム22の各面を曲面とすれば、接眼光学系4に矯正眼鏡レンズとしての機能を持たせることもできる。
【0066】
ホログラム光学素子23は、表示素子14から出射される映像光(3原色に対応した波長の光)を回折反射し、表示素子14にて表示される映像を拡大して観察者の瞳に虚像として導く体積位相型の反射型ホログラムである。このホログラム光学素子23は、例えば、回折効率のピーク波長および回折効率半値の波長幅で465±5nm(B光)、521±5nm(G光)、634±5nm(R光)の3つの波長域の光を回折(反射)させるように作製されている。ここで、回折効率のピーク波長とは、回折効率がピークとなるときの波長のことであり、回折効率半値の波長幅とは、回折効率が回折効率ピークの半値となるときの波長幅のことである。
【0067】
反射型のホログラム光学素子23は、高い波長選択性を有しており、上記波長域(露光波長近辺)の波長の光しか回折反射しないので、回折反射される波長以外の波長を含む外光はホログラム光学素子23を透過することになり、高い外光透過率を実現することができる。
【0068】
また、ホログラム光学素子23は、軸非対称な正の光学パワーを有している。つまり、ホログラム光学素子23は、正のパワーを持つ非球面凹面ミラーと同様の機能を持っている。これにより、装置を構成する各光学部材の配置の自由度を高めて装置を容易に小型化することができるとともに、良好に収差補正された映像を観察者に提供することができる。
【0069】
(3.映像表示装置の動作)
次に、上記構成の映像表示装置1の動作について説明する。光源11から出射された光は、一方向拡散板12にて拡散され、集光レンズ13にて集光されて表示素子14に入射する。表示素子14に入射した光は、画像データに基づいて各画素ごとに変調され、映像光として出射される。つまり、表示素子14には、カラー映像が表示される。
【0070】
表示素子14からの映像光は、接眼光学系4の接眼プリズム21の内部にその上端面(面21a)から入射し、対向する2つの面21b・21cで複数回全反射されて、ホログラム光学素子23に入射する。ホログラム光学素子23に入射した光は、そこで反射され、面21cを透過して光学瞳Eに達する。光学瞳Eの位置では、観察者は、表示素子14に表示された映像の拡大虚像を観察することができる。
【0071】
一方、接眼プリズム21、偏向プリズム22およびホログラム光学素子23は、外光をほとんど全て透過させるので、観察者はこれらを介して外界像を観察することができる。したがって、表示素子14に表示された映像の虚像は、外界像の一部に重なって観察されることになる。
【0072】
このように、映像表示装置1では、表示素子14から出射される映像光を接眼プリズム21内での全反射によって導光し、ホログラム光学素子23を介して観察者の瞳に導くので、通常の眼鏡レンズと同様に、接眼プリズム21および偏向プリズム22の厚さを3mm程度にすることができ、映像表示装置1を小型化、軽量化することができる。また、表示素子14からの映像光を内部で全反射させる接眼プリズム21を用いることにより、高い外光の透過率を確保して、明るい外界像を観察者に提供することができる。
【0073】
また、体積位相型の反射型のホログラム光学素子23は、回折効率半値の波長幅が狭く、回折効率が高いので、このようなホログラム光学素子23を用いることにより、色純度が高く、明るい映像を提供することができるとともに、外光の透過率が高くなるので、観察者は明るい外界像を観察することができる。また、光源11と光学瞳Eとの共役関係が変更されないので、映像光の波長が変化せず、色再現性の高い映像を提供することができる。
【0074】
また、上記の説明からもわかるように、ホログラム光学素子23は、表示素子14からの映像光と外光とを同時に観察者の瞳に導くコンバイナとして機能している。これにより、観察者は、ホログラム光学素子23を介して、表示素子14から提供される映像と外界像とを同時に観察することができる。
【0075】
(4.ホログラム光学素子の製造方法について)
次に、上記したホログラム光学素子23の製造方法について説明する。図4は、ホログラム光学素子23を製造する際の露光光学系全体の概略の構成を示す説明図である。この製造光学系は、光源31と、ビームステアラー32と、シャッター33と、ビームエキスパンダー34と、ミラー35と、ダイクロイックミラー36・37と、ミラー38と、ビームスプリッタ39と、ミラー40・41・42・43と、製造光学系50とを備えている。
【0076】
なお、光源31、ビームステアラー32、シャッター33およびビームエキスパンダー34は、R(赤)、G(緑)、B(青)に対応してそれぞれ設けられている。これらについて特にRGBで区別したい場合には、部材番号の後にRGBの文字を併記するものとする。
【0077】
上記の構成において、光源31Bから出射されるBのレーザー光は、ビームステアラー32Bを構成する2枚のミラーで反射され、露光量を調整するためのシャッター33Bを透過した後、ビームエキスパンダー34Bにて光束径が拡大され、その後、ミラー35にて反射偏向されてダイクロイックミラー36に入射する。
【0078】
また、光源31Gから出射されるGのレーザー光は、ビームステアラー32Gを構成する2枚のミラーで反射され、露光量を調整するためのシャッター33Gを透過した後、ビームエキスパンダー34Gにて光束径が拡大され、その後、ダイクロイックミラー36にてBのレーザー光と色合成され、ダイクロイックミラー37に入射する。
【0079】
また、光源31Rから出射されるRのレーザー光は、ビームステアラー32Rを構成する2枚のミラーで反射され、露光量を調整するためのシャッター33Rを透過した後、ビームエキスパンダー34Rにて光束径が拡大され、その後、ダイクロイックミラー37にてBおよびGのレーザー光と色合成され、ミラー38に入射する。
【0080】
ミラー38に入射したRGBのレーザー光は、そこで反射されてビームスプリッタ39に入射し、2つの光路に分離される。第1の露光光束である物体光側の光路では、ビームスプリッタ39から出射されるRGBのレーザー光は、ミラー40・41にて順に反射された後、製造光学系50に入射する。一方、第2の露光光束である参照光側の光路では、ビームスプリッタ39から出射されるRGBのレーザー光は、ミラー42・43にて順に反射された後、製造光学系50に入射する。製造光学系50では、RGBについての2つ光路で所望の露光光束を作製し、これらの露光光束をホログラム感光材料23a(図5参照)に照射することにより、ホログラム光学素子23が作製される。
【0081】
なお、ホログラム感光材料23aとしては、銀塩材料、重クロム酸ゼラチン、フォトポリマーなどを用いることができるが、特に、ホログラム光学素子23をドライプロセスで容易に製造可能なフォトポリマーを用いることが望ましい。
【0082】
次に、製造光学系50の内部における露光の詳細について説明する。図5は、製造光学系50の詳細な構成を示す説明図であり、特に、YZ平面での光路およびZX平面での光路が明確になるように図示したものである。
【0083】
物体光側では、ミラー41(図4参照)を介して入射する光が、図示しない集光光学系により集光される。その集光位置にはピンホールが配置されており、ピンホールを通過した光が理想的な点光源からの発散光となる。点光源からの発散光は、軸非対称な形状の反射面61・62で順に反射され、軸非対称な配置の非球面レンズ63・64を順に透過した後、プリズム65を透過して接眼プリズム21上のホログラム感光材料23aに接眼プリズム21とは反対側から照射される。一方、参照光側では、ミラー43(図4参照)を介して入射する光が、光軸方向(Z方向)に並ぶ2つのシリンドリカルレンズ71・72を順に透過して、接眼プリズム21上のホログラム感光材料23aに接眼プリズム21側から照射される。
【0084】
なお、ホログラム光学素子23は、複雑な接眼光学系4の主要なパワーを持つため、作製時には軸非対称な光学系を用いてホログラム感光材料23aを露光し、作製されるホログラム光学素子23に軸非対称な波面再生機能を持たせる必要がある。このため、物体光側の光学系を上記のように構成し、物体光を軸非対称な波面を持つ光束としている。なお、軸非対称な光学系は、一般に、軸非対称な配置のレンズ、プリズム、DOE、反射面などで構成することが可能であり、これらの光学部材を適宜選択して構成されればよい。また、必要に応じて、参照光側の光学系にも、軸非対称な配置や構成のレンズ系を適用しても構わない。
【0085】
ここで、参照光側の光学系で光軸方向に並ぶ2つのシリンドリカルレンズ71・72は、光の集光方向が互いに異なっている。より詳細には、シリンドリカルレンズ71は、入射光(ここではミラー43を介して入射する光)をYZ平面でのみ集光し、シリンドリカルレンズ72は、入射光(ここではシリンドリカルレンズ71を介して入射する光)をZX平面でのみ集光する。このような2枚のシリンドリカルレンズ71・72を光束の進行方向にずらして配置することにより、YZ平面内とZX平面内とで露光時の集光点(点光源の位置)を光軸方向に異ならせることができる。本実施形態では、ZX平面内での露光時の集光点Qは、再生時の光学瞳と略同一位置であり、YZ平面内での露光時の集光点Pは、再生時の光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置となっている。したがって、シリンドリカルレンズ71・72を用いることにより、露光時において、YZ平面内では集光点Pからの発散光が得られ、ZX平面内では集光点Qからの発散光が得られる。
【0086】
このように、製造光学系50の内部では、ホログラム感光材料23aを露光する2光束のうち、一方の露光光束(物体光)は軸非対称な波面を持つ光束であるが、他方の露光光束(参照光)は、YZ平面内とZX平面内とで露光時の集光点P・Qが光軸方向に異なる光束となっている。これにより、2光束干渉によりホログラム光学素子23を作製し、映像表示装置1に適用したときには、再生時にホログラム光学素子23にて回折された所定波長の映像光(例えばRGBの少なくともいずれかの光)の集光位置がYZ平面内とZX平面内とで光軸方向に異なるので、Y方向およびX方向の2方向で観察特性を異ならせることができる。この点についてさらに説明すると、以下の通りである。
【0087】
図1は、再生時にホログラム光学素子23にて回折反射される映像光(例えばB光)の集光位置をYZ平面とZX平面との両方で示した説明図であり、図6は、YZ平面とZX平面とのそれぞれにおいて、再生時に光学瞳に入射する映像光(例えばB光)の光線(実線)と露光時の参照光(例えばB光)の光線(破線)とを併せて示す説明図である。図5の製造光学系50によってホログラム光学素子23を作製した場合、再生時は、ホログラム光学素子23にて回折反射された映像光は、YZ平面内では集光点P’に集光し、ZX平面内では集光点Q’に集光する。なお、集光点P’・Q’は、それぞれ図5の集光点P・Qと同じ位置である。
【0088】
これにより、再生時に光学瞳Eを含む面内に観察者の瞳を位置させて映像を観察する場合に、YZ平面内では、観察者の瞳が光学瞳Eを含む面内でずれたとしても、観察方向によっては、露光時のホログラム感光材料23aへの露光光線の入射方向に近づくもの(図6の実線の光線の傾きが破線の光線の傾きに近づくもの)、または上記入射方向と同一方向のものも存在するため、瞳位置のずれによる色ムラを低減することができる。一方、ZX平面内では、観察者が光学瞳Eの面内で瞳位置をずらすことなく映像を観察したときに、ホログラム感光材料23aへの露光光線の入射方向と映像の観察方向とが一致するので(実線の光線と破線の光線とが一致するので)、観察画角内での色ムラの無い良好な映像を観察することができる。
【0089】
以上のように、本実施形態のホログラム光学素子23の製造方法によれば、その製造方法によって作製されたホログラム光学素子23を映像表示装置1に適用することで、例えば垂直方向であるY方向には瞳重視の特性(瞳位置のずれによる色ムラを低減した特性)とし、水平方向であるX方向には画角重視の特性(観察画角内での色ムラを低減した特性)とした映像表示装置1を実現することができる。このように、光学瞳Eを含む面内の異なる2方向で異なる観察特性を同時に実現することができるので、使い勝手のよい映像表示装置1を実現することができる。
【0090】
特に、再生時の映像光の集光位置が、一方の面内(ZX平面内)では光学瞳Eと略同一位置(集光点Q’)であり、他方の面内(YZ平面内)では光学瞳Eに対してホログラム光学素子23とは反対側の位置(集光点P’)であるので、一方の方向(X方向)については画角重視の特性とし、他方の方向(Y方向)については瞳重視の特性とすることが確実にできる。
【0091】
また、露光時の参照光の集光位置(集光点P・Q)を光軸方向にそれぞれ調整すれば、再生時の映像光の集光位置(集光点P’・Q’)を光軸方向に個別に調整することが可能となる。これにより、X方向およびY方向において再生時の観察特性を個々に調整することも可能となり、装置の使い勝手が益々よくなる。
【0092】
また、本実施形態では、表示領域がY方向よりもX方向に長い表示素子14を用いているので、光学瞳Eの位置で映像を観察する際の観察画角は、Y方向の画角(YZ平面内での画角)よりもX方向の画角(ZX平面内での画角)のほうが広い。特に、表示素子14として、アスペクト比が16(横):9(縦)の表示領域を持つものを採用した場合は、観察画角は垂直方向よりも水平方向で顕著に広くなる。このため、X方向における映像の色ムラは極力低減されることが望ましい。
【0093】
そこで、本実施形態では、画角の広い方向(X方向)に画角重視の特性を持たせるべく、ZX平面とYZ平面とのうちで観察画角が広い面(ZX平面)内における所定波長の映像光の集光位置(集光点Q’)を光学瞳Eと略同一位置としている。つまり、再生時の映像光の集光位置が光学瞳Eと略同一位置にあるZX平面内での画角が、他方のYZ平面内での画角よりも広い。これにより、画角が広くても色ムラを低減した良好な映像を観察者に観察させることができ、特にデジタル放送のハイビジョン映像を表示可能な表示素子14を用いた場合でも、水平方向に色ムラを低減した良好な映像を観察者に観察させることができる。
【0094】
また、本実施形態のように映像表示装置1を観察者の眼前で支持するための支持手段2(図2参照)が観察者の側頭部に当接する場合、水平方向における観察者の瞳位置のずれは少ない。したがって、本実施形態のように、X方向およびY方向のうちで、再生時の映像光の集光位置が光学瞳Eと略同一位置にある平面(ZX平面)に含まれる方向(X方向)を水平方向とすることにより、水平方向に画角重視の特性を優先して持たせて、水平方向に色ムラの無い良好な映像を観察者に観察させることができる。
【0095】
ところで、上述した映像表示装置1を観察者の両眼に対応して2つ設けて全体として1つの映像表示装置とすることも可能である。なお、ここでは、説明の便宜上、観察者の右眼に対応する映像表示装置1を表示ユニット1Rと称し、観察者の左眼に対応する映像表示装置1を表示ユニット1Lと称し、これら2つの表示ユニット1R・1Lを合わせて1つの映像表示装置1と称することとする。図7(a)は、2つの表示ユニット1R・1Lを観察者の両眼に対応して設けた映像表示装置1およびそれを備えたHMDの概略の構成を模式的に示す正面図である。
【0096】
このような映像表示装置1では、観察者は表示ユニット1R・1Lの各表示素子に表示された映像を両眼でそれぞれ観察することが可能となるが、眼幅の異なる観察者の各々に対して水平方向に色ムラの無い良好な映像を観察させるために、調整機構81を設けることが望ましい。図7(b)は、調整機構81の概略の構成を示す分解斜視図である。
【0097】
この調整機構81は、2つの表示ユニット1R・1Lの眼幅方向の間隔を調整する調整手段であり、2つのスライド部材82・83と、スライド部材82・83を固定する固定手段としての2組のボルト84およびナット85とを有して構成されている。
【0098】
2つのスライド部材82・83は、互いに当接しながら眼幅方向に相対的にスライドする板状の部材である。一方のスライド部材82の一端は、表示ユニット1Rの接眼光学系4(例えば偏向プリズム22)にビスや接着剤等で固定されており、他端は自由端となっている。また、他方のスライド部材83の一端は、表示ユニット1Lの接眼光学系4(例えば偏向プリズム22)にビスや接着剤等で固定されており、他端は自由端となっている。
【0099】
また、スライド部材82には、上面および下面を貫通する円形の孔82aが眼幅方向に2つ並んで設けられている。一方。スライド部材83にも、上面および下面を貫通する孔83aが1つ設けられているが、この孔83aは、孔82a・82a間の距離よりも眼幅方向に長い矩形状の長孔となっている。なお、孔83aの形状は特に限定されるわけではない。
【0100】
このような調整機構81の構成では、観察者の眼幅に対応した量だけ2つのスライド部材82・83を眼幅方向である水平方向に相対的にスライドさせた後、スライド部材の孔82a・82a、スライド部材83の孔83aを貫通するボルト84・84の先端にナット85・85を螺合させてスライド部材82・83を固定することで、表示ユニット1R・1Lの間隔が調整される。したがって、眼幅の異なる観察者ごとに、表示ユニット1R・1Lを観察者の両眼の前に位置させることができる。
【0101】
このように、両眼観察用の映像表示装置1に調整機構81を設けることにより、観察者が自分の眼幅に合うように表示ユニット1R・1Lの間隔を調整した後、映像表示装置1を使用することが可能となる。この結果、両眼観察用の映像表示装置1においても、眼幅の異なる観察者ごとに、水平方向における観察画角内での色ムラを低減した良好な映像を観察させることができる。
【0102】
特に、調整機構81が、2つのスライド部材82・83と固定手段(ボルト84・84、ナット85・85)とで構成されているので、2つの表示ユニット1R・1Lの眼幅方向の間隔を確実に調整することができる。
【0103】
また、図8(a)(b)(c)は、調整機構81の他の構成例を示す正面図と平面図とを合わせて示したものである。これらの図に示すように、調整機構81は、互いに交換可能な複数の支持部材86の中から選択される1つの支持部材86で構成されてもよい。ここで、複数の支持部材86は、2つの表示ユニット1R・1Lを所定の間隔で(互いに異なる間隔で)支持するものであり、例えば3つの支持部材86a・86b・86cで構成されている。支持部材86a・86b・86cは、眼幅方向の長さがこの順で次第に長くなるように形成されている。
【0104】
また、各支持部材86における眼幅方向の両端部は、表示ユニット1R・1Lの接眼光学系4の偏向プリズム22をそれぞれ挟持することが可能な形状となっている。なお、各支持部材86の両端部は、各偏向プリズム22とビス等で固定されてもよい。
【0105】
このように、互いに交換可能な複数の支持部材86の中から、観察者の眼幅に対応した長さの支持部材86を選択して使用することによっても、2つの表示ユニット1R・1Lの眼幅方向の間隔を、眼幅の異なる観察者ごとに確実に調整することができる。したがって、支持部材86を調整機構81として用いる場合であっても、眼幅の異なる観察者ごとに、水平方向における観察画角内での色ムラを低減した良好な映像を観察させることができる。
【0106】
なお、本実施形態のように、カラー対応のホログラム光学素子23、すなわち、RGBの映像光を回折させるホログラム光学素子23を作製する場合には、露光時に用いたシリンドリカルレンズ71・72をさらに複数枚のレンズで構成するなどして色収差補正(色消し)を行うことにより、さらに良好な映像を観察者に観察させることができる。
【0107】
なお、本実施形態では、露光時に用いる円形の光ビーム(物体光、参照光)の外縁部を遮光板などで規制し、ホログラム感光材料23aの形状(例えば図5に示したような四角形状)にほぼ沿うような外形の光ビームを得て、これをホログラム感光材料23aに照射するようにしてもよい。この場合、ホログラム感光材料23aに干渉縞を形成するのに不要な光が入射しないので(干渉縞の形成に必要な光のみをホログラム感光材料23aに入射させることができるので)、ノイズとなる干渉縞がホログラム感光材料23aに形成されるのを極力低減することができる。
【0108】
なお、図6において、再生時に表示素子14(図3参照)からホログラム光学素子23を介して光学瞳Eの中心に入射する光線を主光線とすると、再生時に、所定の波長でホログラム光学素子23の1点から射出される光(例えば一方の破線の光)について、YZ平面内では、その光のホログラム光学素子23からの射出方向(破線の方向)は、ホログラム光学素子23の同位置を通る主光線の方向とは異なる方向であり、その光は第1の点(集光点P’)近傍に集光されるが、ZX平面内では、その光のホログラム光学素子23からの射出方向は、ホログラム光学素子23の同位置を通る主光線の方向とは略同じ方向であり、その光は第2の点(集光点Q’)近傍に集光される。このとき、第1の点は、第2の点に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にあり、第2の点は光学瞳Eを含む面内に位置している。
【0109】
以上のことから、本実施形態の映像表示装置1は、以下のように表現することもできる。すなわち、本実施形態の映像表示装置1は、表示素子14と、表示素子14に生成された映像を拡大して観察瞳(光学瞳E)に導く拡大光学系(接眼光学系4)とを備え、拡大光学系は表示素子14からの映像光を観察瞳に向けて回折反射する体積位相型の反射型のホログラム光学素子23を備え、ホログラム光学素子23は、映像光の所定の波長に関して、光軸に垂直でかつ互いに直交する2つの方向のうちの一方の方向(Y方向)を含む面内(YZ平面内)での回折光の射出方向は観察光路の主光線と異なった方向であり、その回折光は第1の点(集光点P’)近傍に集光され、他方の方向(X方向)を含む面内(ZX平面内)での回折光の射出方向は観察光路の主光線と略同じ方向であり、その回折光は第2の点(集光点Q’)近傍に集光され、第1の点は第2の点に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にあり、第2の点は光学瞳Eを含む面内に位置している構成である。なお、第1の点をホログラム光学素子23から無限遠に位置する点と考えれば、上記映像表示装置1は、後述する実施の形態2の映像表示装置1も概念的に含むものとなる。
【0110】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0111】
図9は、本実施形態における製造光学系50の詳細な構成を示す説明図であり、特に、YZ平面での光路およびZX平面での光路が明確になるように図示したものである。本実施形態では、製造光学系50の参照光側の光学系において、シリンドリカルレンズ71を削除する一方、シリンドリカルレンズ72を残してホログラム感光材料23aを露光し、ホログラム光学素子23を作製した以外は、実施の形態1と同様である。
【0112】
シリンドリカルレンズ72は、入射光(ここではミラー43を介して入射する光)をZX平面内でのみ集光する。したがって、ミラー43を介してシリンドリカルレンズ72に入射する光が略平行光であれば、YZ平面内ではシリンドリカルレンズ72から略平行光が出射され、ホログラム感光材料23aに照射される。一方、ZX平面内では、入射光がシリンドリカルレンズ72によって集光点Qに一旦集光された後、集光点Qから発散光となってホログラム感光材料23aに照射される。
【0113】
このとき、ZX平面内での露光時の集光点Qは、再生時の光学瞳と略同一位置であるが、YZ平面内での露光時の集光点は、再生時の光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置であって、ホログラム光学素子23から無限遠の位置と考えることができる。このように、一方の平面内(ZX平面内)でのみ参照光を集光する本実施形態においても、YZ平面内とZX平面内とで露光時の集光点(点光源の位置)が光軸方向に異なることになる。本実施形態では、再生時には、ホログラム光学素子23にて回折反射された所定波長の映像光は、YZ平面内では無限遠の位置に集光し、ZX平面内では集光点Qと同じ点に集光することになる。
【0114】
ZX平面とYZ平面とのうちで、所定波長の映像光の集光位置が光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の無限遠の位置にある面(YZ平面)内では、露光時にホログラム感光材料23aに入射する露光光線が略平行となる。したがって、本実施形態では、再生時に観察者の瞳位置が上記面内の一方向(ここではY方向)にずれても、露光光線の方向と同一の観察方向については、瞳位置の違いによって色ムラが発生するのを回避することができる。
【0115】
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1または2と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0116】
図10は、本実施形態における製造光学系50の詳細な構成を示す説明図であり、特に、YZ平面での光路およびZX平面での光路が明確になるように図示したものである。本実施形態では、製造光学系50の参照光側の光学系において、シリンドリカルレンズ71・72の配置を逆にし、露光時のYZ平面内での集光位置(集光点P)を再生時の光学瞳と略同一位置とし、ZX平面内での集光位置(集光点Q)を再生時の光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にしてホログラム感光材料23aを露光し、ホログラム光学素子23を作製した以外は、実施の形態1と同様である。
【0117】
このような製造光学系50では、ミラー43からの光(例えば平行光とする)は、YZ平面内では、シリンドリカルレンズ71のみによって集光点Pに集光され、そこからの発散光となってホログラム感光材料23aに照射される一方、ZX平面内では、シリンドリカルレンズ72のみによって集光点Qに集光され、そこからの発散光となってホログラム感光材料23aに照射される。
【0118】
ここで、ホログラム光学素子23を有する接眼光学系4によって形成される光学瞳は、光軸入射面に垂直な方向(X方向)よりも光軸入射面に平行な方向(Y方向)のほうが小さいので、Y方向に瞳位置がずれたときに生ずる色ムラはある程度許容される部分もある。したがって、このことを考えれば、Y方向には瞳重視の特性以外の他の特性を持たせることも可能である。
【0119】
そこで、本実施形態のように、X方向およびY方向のうちで、再生時における所定波長の映像光の集光位置が光学瞳と略同一位置にある面(YZ平面)に含まれる方向(Y方向)と、ホログラム光学素子23への光軸入射面に平行な方向とを一致させることにより、画角重視の特性を光軸入射面に平行な方向(Y方向)に持たせて、良好な映像を観察者に観察させることが可能となる。
【0120】
また、HMDにおいて、映像表示装置1を観察者の片眼または両眼に対応させて設ける場合、観察者ごとに瞳位置は水平方向に異なることから(眼幅が異なることから)、瞳位置のずれによって色ムラが発生するのと同様の原理により、観察者ごとに所定の観察方向における色の認識が相違する事態が発生する。しかし、本実施形態では、X方向およびY方向のうちで、再生時における所定波長の映像光の集光位置が光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にある面(ZX平面)に含まれる方向(X方向)と、観察者の眼幅方向とが一致しているので、観察者ごとに色の認識が異なる事態を低減することができ、同じ映像については誰が観察しても同じような色を認識させることができる。また、観察者は、映像表示装置1を両眼に対応して設けたときの映像観察時に、少ない眼幅調整量(光軸調整量)で良好な映像を観察できるという利点もある。したがって、本実施形態の構成は、特に、映像表示装置1を観察者の両眼に対応させて設ける場合に非常に有効となる。
【0121】
また、本実施形態の映像表示装置1を例えば横置きにした場合、つまり、X方向が垂直方向でY方向が水平方向となるように映像表示装置1を配置した場合は、実施の形態1と同様の観察特性を実現することができる。すなわち、本実施形態の構成では、露光時の参照光のYZ平面内での集光位置が再生時の光学瞳と略同一位置であるので、Y方向すなわち水平方向に画角重視の特性を持たせることができるとともに、X方向すなわち垂直方向に瞳重視の特性を持たせることができる。したがって、映像表示装置1を縦置きにするか、横置きにするかでも各方向の観察特性を異ならせることができる。
【0122】
なお、本実施形態の映像表示装置1においては、再生時に、所定の波長でホログラム光学素子23の1点から射出される光について、ZX平面内では、その光のホログラム光学素子23からの射出方向は、ホログラム光学素子23の同位置を通る主光線の方向とは異なる方向であり、その光は第1の点(集光点Qと同じ位置)近傍に集光されるが、YZ平面内では、その光のホログラム光学素子23からの射出方向は、ホログラム光学素子23の同位置を通る主光線の方向と略同じ方向であり、その光は第2の点(集光点Pと同じ位置)近傍に集光される。このとき、第1の点は、第2の点に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にあり、第2の点は光学瞳Eを含む面内に位置している。
【0123】
以上のことから、本実施形態の映像表示装置1は、以下のように表現することもできる。すなわち、本実施形態の映像表示装置1は、表示素子14と、表示素子14に生成された映像を拡大して観察瞳(光学瞳E)に導く拡大光学系(接眼光学系4)とを備え、拡大光学系は表示素子14からの映像光を観察瞳に向けて回折反射する体積位相型の反射型のホログラム光学素子23を備え、ホログラム光学素子23は、映像光の所定の波長に関して、光軸に垂直でかつ互いに直交する2つの方向のうちの一方の方向(X方向)を含む面内(ZX平面内)での回折光の射出方向は観察光路の主光線と異なった方向であり、その回折光は第1の点近傍に集光され、他方の方向(Y方向)を含む面内(YZ平面内)での回折光の射出方向は観察光路の主光線と略同じ方向であり、その回折光は第2の点近傍に集光され、第1の点は第2の点に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にあり、第2の点は光学瞳Eを含む面内に位置している構成である。なお、第1の点をホログラム光学素子23から無限遠に位置する点と考えれば、上記映像表示装置1は、後述する実施の形態4の映像表示装置1も概念的に含むものとなる。
【0124】
〔実施の形態4〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1〜3と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0125】
図11は、本実施形態における製造光学系50の詳細な構成を示す説明図であり、特に、YZ平面での光路およびZX平面での光路が明確になるように図示したものである。本実施形態では、製造光学系50の参照光側の光学系において、シリンドリカルレンズ72を削除する一方、シリンドリカルレンズ71を残してホログラム感光材料23aを露光し、ホログラム光学素子23を作製した以外は、実施の形態3と同様である。
【0126】
シリンドリカルレンズ71は、入射光(ここではミラー43を介して入射する光)をYZ平面内でのみ集光する。したがって、ミラー43を介してシリンドリカルレンズ71に入射する光が略平行光であれば、ZX平面内ではシリンドリカルレンズ71から略平行光が出射され、ホログラム感光材料23aに照射される。一方、YZ平面内では、入射光がシリンドリカルレンズ71によって集光点Pに一旦集光された後、集光点Pから発散光となってホログラム感光材料23aに照射される。
【0127】
このとき、YZ平面内での露光時の集光点Pは、再生時の光学瞳と略同一位置であるが、ZX平面内での露光時の集光点は、再生時の光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置であって、ホログラム光学素子23から無限遠の位置と考えることができる。このように、一方の平面内(YZ平面内)でのみ参照光を集光する本実施形態においても、YZ平面内とZX平面内とで露光時の集光点(点光源の位置)が光軸方向に異なることになる。本実施形態では、再生時には、ホログラム光学素子23にて回折反射された所定波長の映像光は、ZX平面内では無限遠の位置に集光し、YZ平面内では集光点Pと同じ点に集光することになる。
【0128】
ZX平面とYZ平面とのうちで、所定波長の映像光の集光位置が光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の無限遠の位置にある面(ZX平面)内では、露光時にホログラム感光材料23aに入射する露光光線が略平行となる。したがって、本実施形態では、再生時に観察者ごとに瞳位置が上記面内の一方向(ここではX方向)に異なる場合でも、露光光線の方向と同一の観察方向については、観察者ごとに色の認識が異なる事態を低減することができ、眼幅の異なる複数人の使用にも容易に対応することができる。
【0129】
〔実施の形態5〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1〜4と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0130】
図12は、本実施形態における製造光学系50の詳細な構成を示す説明図であり、特に、YZ平面での光路およびZX平面での光路が明確になるように図示したものである。本実施形態では、露光時のYZ平面内での集光位置(集光点P)を再生時の光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置とし、ZX平面内での集光位置(集光点Q)を集光点Pに対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にしてホログラム感光材料23aを露光し、ホログラム光学素子23を作製した以外は、実施の形態3と同様である。なお、上記のような集光位置は、例えばシリンドリカルレンズ71・72を光軸方向にずらす(ホログラム光学素子23とは反対側にずらす)、あるいはシリンドリカルレンズ71・72の光学的なパワーを適切に設定することにより実現することが可能である。
【0131】
このような製造光学系50では、ミラー43からの光(例えば平行光とする)は、YZ平面内では、シリンドリカルレンズ71のみによって集光点Pに集光され、そこからの発散光となってホログラム感光材料23aに照射される一方、ZX平面内では、シリンドリカルレンズ72のみによって集光点Qに集光され、そこからの発散光となってホログラム感光材料23aに照射される。したがって、再生時には、ホログラム光学素子23からの所定波長の映像光は、YZ平面内では集光点Pと同一位置に集光され、ZX平面内では集光点Qと同一位置に集光される。
【0132】
なお、再生時の映像光の集光位置のうちで、ホログラム光学素子23により近いほうの集光位置を第1の位置とし、ホログラム光学素子23からより遠いほうの集光位置を第2の位置とすると、本実施形態では、YZ平面内での集光位置が第1の位置となり、ZX平面内での集光位置が第2の位置となる。
【0133】
このように、再生時の所定波長の映像光の集光位置は、ZX平面およびYZ平面のうちの一方の面内(例えばYZ平面内)では光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の第1の位置であり、他方の面内(例えばZX平面内)では第1の位置に対してホログラム光学素子23とは反対側の第2の位置である。つまり、ZX平面およびYZ平面の両方の面内で映像光の集光位置が光学瞳とは異なった位置となっている。これにより、X方向およびY方向の一方の方向(例えば垂直方向となるY方向)では、映像観察の際に観察者の瞳が光学瞳面内でずれたとしても、瞳位置のずれによる色ムラを低減することができ、瞳重視の特性とすることができる。また、他方の方向(例えば水平方向となるX方向)では、眼幅の異なる複数人に映像表示装置1を使用させる場合でも、複数人の間で色の認識が異なる事態を低減することができ、眼幅重視の特性とすることができる。
【0134】
なお、本実施形態の映像表示装置1では、YZ平面およびZX平面の両方において、ホログラム光学素子23からの所定波長の映像光の集光位置(第1の位置、第2の位置)が光学瞳に対して光軸方向にずれている。したがって、再生時に、所定の波長でホログラム光学素子23の1点から射出される光について、YZ平面内では、その光のホログラム光学素子23からの射出方向は、ホログラム光学素子23の同位置を通る主光線の方向とは異なる方向であり、その光は第1の点近傍(第1の位置に対応する)に集光され、ZX平面内では、その光のホログラム光学素子23からの射出方向は、ホログラム光学素子23の同位置を通る主光線の方向とは異なる方向であり、その光は第2の点近傍(第2の位置に対応する)に集光される。このとき、第1の点および第2の点は、光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にそれぞれあり、第2の点は、さらに第1の点に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にある。
【0135】
以上のことから、本実施形態の映像表示装置1は、以下のように表現することもできる。すなわち、本実施形態の映像表示装置1は、表示素子14と、表示素子14に生成された映像を拡大して観察瞳(光学瞳E)に導く拡大光学系(接眼光学系4)とを備え、拡大光学系は表示素子14からの映像光を観察瞳に向けて回折反射する体積位相型の反射型のホログラム光学素子23を備え、ホログラム光学素子23は、映像光の所定の波長に関して、光軸に垂直でかつ互いに直交する2つの方向のうちの一方の方向(Y方向)を含む面内(YZ平面内)での回折光の射出方向は観察光路の主光線と異なった方向であり、その回折光は第1の点近傍に集光され、他方の方向(X方向)を含む面内(ZX平面内)での回折光の射出方向は観察光路の主光線と異なった方向であり、その回折光は第2の点近傍に集光され、第1の点および第2の点は光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にそれぞれあり、第2の点は、さらに第1の点に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にある構成である。なお、第2の点をホログラム光学素子23から無限遠に位置する点と考えれば、上記映像表示装置1は、後述する実施の形態6の映像表示装置1も概念的に含むものとなる。
【0136】
なお、本実施形態では、YZ平面内での映像光の集光位置をZX平面内での映像光の集光位置よりも光学瞳に近い位置としているが、例えば露光時のシリンドリカルレンズ71・72の配置や光学的パワーの設定によって、これらの位置関係を逆にしてもよい。つまり、ZX平面内での映像光の集光位置をYZ平面内での映像光の集光位置よりも光学瞳に近い位置としてもよい。なお、この場合は、ZX平面内での映像光の集光位置は、光学瞳により近くなるため、第1の位置となり、YZ平面内での映像光の集光位置が第2の位置となる。この場合であっても、第1の位置および第2の位置が両方とも光学瞳から光軸方向にずれていることに変わりはないので、X方向およびY方向の一方の方向で瞳重視の特性とし、他方の方向で眼幅重視の特性とすることができる。
【0137】
〔実施の形態6〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1〜5と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0138】
図13は、本実施形態における製造光学系50の詳細な構成を示す説明図であり、特に、YZ平面での光路およびZX平面での光路が明確になるように図示したものである。本実施形態では、製造光学系50の参照光側の光学系において、シリンドリカルレンズ72を削除する一方、シリンドリカルレンズ71を残してホログラム感光材料23aを露光し、ホログラム光学素子23を作製した以外は、実施の形態5と同様である。
【0139】
シリンドリカルレンズ71は、入射光(ここではミラー43を介して入射する光)をYZ平面内でのみ集光する。したがって、ミラー43を介してシリンドリカルレンズ71に入射する光が略平行光であれば、ZX平面内ではシリンドリカルレンズ71から略平行光が出射され、ホログラム感光材料23aに照射される。一方、YZ平面内では、入射光がシリンドリカルレンズ71によって集光点Pに一旦集光された後、集光点Pから発散光となってホログラム感光材料23aに照射される。
【0140】
このとき、YZ平面内での露光時の集光点Pは、再生時の光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置であり、ZX平面内での露光時の集光点は、集光点Pよりもホログラム光学素子23とは反対側の位置であって、ホログラム光学素子23から無限遠の位置と考えることができる。したがって、再生時には、ホログラム光学素子23にて回折反射された所定波長の映像光は、YZ平面内では集光点Pと同じ点に集光し、ZX平面内ではホログラム光学素子23から無限遠の位置に集光することになる。
【0141】
なお、本実施形態では、YZ平面内での映像光の集光位置のほうが、ZX平面内での映像光の集光位置(無限遠)よりも光学瞳に近いので、前者の集光位置が第1の位置となり、後者の集光位置が第2の位置となる。
【0142】
以上のように、本実施形態では、第2の位置、つまり、ZX平面内での映像光の集光位置が、ホログラム光学素子23から無限遠の位置であるので、ZX平面内では、露光時にホログラム感光材料23aに入射する露光光線が略平行となる。したがって、複数人の観察者の眼幅がZX平面内に含まれる方向(X方向)に異なる場合でも、露光光線の方向と同一の観察方向については、複数人の間で色の認識が異なるのを確実に回避することができる。
【0143】
なお、先述の実施の形態5では、ZX平面内での映像光の集光位置をYZ平面内での映像光の集光位置よりも光学瞳に近い位置としてもよい旨を述べたが、この構成においても、本実施形態と同様の発想により、YZ平面内での映像光の集光位置をホログラム光学素子23から無限遠の位置とすることも可能である。つまり、露光時に一方のシリンドリカルレンズ71を削除し(シリンドリカルレンズ72のみによってZX平面内でのみ入射光を集光し)、YZ平面内で略平行光をホログラム感光材料23aに照射するようにしてもよい。なお、この場合、ZX平面内での映像光の集光位置は、光学瞳により近いため、第1の位置となり、YZ平面内での映像光の集光位置(無限遠)が第2の位置となる。この構成では、YZ平面内では、露光時にホログラム感光材料23aに入射する露光光線が略平行となるので、映像観察時に観察者の瞳位置がYZ平面内の方向(Y方向)にずれても、露光光線の方向と同一の観察方向については、瞳位置の違いによって色ムラが発生するのを確実に回避することができる。
【0144】
なお、上述した各実施の形態の構成や手法を適宜組み合わせて製造光学系50を設計し、ホログラム光学素子23を製造したり、そのホログラム光学素子23を用いて映像表示装置1やHMDを構成することも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、またはヘッドアップディスプレイ(HUD)のコンバイナとして用いられるカラーホログラム光学素子の製造、および映像表示装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の実施の一形態に係る映像表示装置において、再生時にホログラム光学素子にて回折反射される映像光の集光位置を示す説明図である。
【図2】上記映像表示装置が適用されるHMDの概略の構成を示す斜視図である。
【図3】上記映像表示装置の概略の構成を示す断面図である。
【図4】上記ホログラム光学素子を製造する際の露光光学系全体の概略の構成を示す説明図である。
【図5】上記露光光学系内の製造光学系の詳細な構成を示す説明図である。
【図6】再生時に光学瞳に入射する映像光の光線と露光時の参照光の光線とを併せて示す説明図である。
【図7】(a)は、2つの表示ユニットを観察者の両眼に対応して設けた映像表示装置およびそれを備えたHMDの概略の構成を模式的に示す正面図であり、(b)は、上記映像表示装置が備える調整機構の概略の構成を示す分解斜視図である。
【図8】(a)(b)(c)は、上記調整機構の他の構成例を示す各々の支持部材の正面図および平面図である。
【図9】本発明の他の実施の形態に係る映像表示装置のホログラム光学素子の製造に適用される製造光学系の詳細な構成を示す説明図である。
【図10】本発明のさらに他の実施の形態に係る映像表示装置のホログラム光学素子の製造に適用される製造光学系の詳細な構成を示す説明図である。
【図11】本発明のさらに他の実施の形態に係る映像表示装置のホログラム光学素子の製造に適用される製造光学系の詳細な構成を示す説明図である。
【図12】本発明のさらに他の実施の形態に係る映像表示装置のホログラム光学素子の製造に適用される製造光学系の詳細な構成を示す説明図である。
【図13】本発明のさらに他の実施の形態に係る映像表示装置のホログラム光学素子の製造に適用される製造光学系の詳細な構成を示す説明図である。
【図14】従来の映像表示装置における光路を展開して示す説明図である。
【符号の説明】
【0147】
1 映像表示装置
1R 表示ユニット
1L 表示ユニット
2 支持手段
4 接眼光学系(拡大光学系)
14 表示素子
23 ホログラム光学素子
23a ホログラム感光材料
81 調整機構(調整手段)
82 スライド部材
83 スライド部材
84 ボルト(固定手段)
85 ナット(固定手段)
86 支持部材(調整手段)
P 集光点
P’ 集光位置
Q 集光点
Q’ 集光位置
E 光学瞳
【技術分野】
【0001】
本発明は、可干渉性を有する2光束でホログラム感光材料を露光することにより作製されるホログラム光学素子と、そのホログラム光学素子の製造方法と、そのホログラム光学素子を用いた映像表示装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ホログラム光学素子(以下、HOEとも称する)を用いた映像表示装置が種々提案されている。図14は、上記映像表示装置における光路を展開して示す説明図である。この映像表示装置では、光源101からの光は照明レンズ102で平行光に変換された後、拡散板103にて拡散され、液晶表示素子(以下、LCDとも称する)104に入射してそこから映像光として出射される。この映像光は、HOE105にて回折されて光学瞳Eに導かれる。したがって、光学瞳Eの位置では、観察者はLCD104に表示された映像を観察することが可能となる。
【0003】
このような映像表示装置に用いられるHOEは、一般的に、可干渉性を有する2光束でホログラム感光材料を露光することにより作製される。つまり、ホログラム感光材料に対して互いに反対側に位置する2つの点光源からの2光束をホログラム感光材料に照射して干渉させることにより、干渉縞を有するHOEが作製される。
【0004】
このとき、例えば特許文献1では、一方の点光源を再生時の光学瞳の位置と略一致するように配置してホログラム感光材料を露光することにより、HOEを作製するようにしている。この手法でHOEを作製した場合、再生時に観察者が光学瞳の面内で瞳位置をずらすことなく映像を観察したときには、露光時のホログラム感光材料への露光光線の入射方向と再生時の映像の観察方向とが一致するので、観察者は観察画角内で色ムラの無い良好な映像を観察することができる。しかし、その反面、再生時に観察者の瞳位置が光学瞳面内ですれると、上記露光光線の入射方向と上記観察方向とがずれるため、観察画角内で色ムラが発生し、映像品位が低下する。
【0005】
一方、例えば特許文献2では、一方の点光源を再生時の光学瞳の位置よりもHOEとは反対側に配置してホログラム感光材料を露光することにより、HOEを作製するようにしている。この手法でHOEを作製した場合、再生時に観察者の瞳が光学瞳面内でずれたとしても、観察方向によっては、露光時のホログラム感光材料への露光光線の入射方向に近づくもの、または上記入射方向と同一方向のものも存在するため、瞳位置のずれによる色ムラを低減することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2001−264682号公報
【特許文献2】特開2004−61731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年では、デジタル放送のハイビジョン映像を表示する表示素子が急速に普及し始めている。このような表示素子では、表示画面のアスペクト比が16(横):9(縦)となっている。このように表示画面が横長の表示素子を映像表示装置に適用した場合には、光学瞳位置での観察者の観察画角も横方向に広がることになり、結果的に観察画角内での色ムラが発生しやすくなる。したがって、上記映像表示装置では、横方向において、観察画角内での色ムラを低減できる画角重視の特性とすることが望ましい。
【0008】
また、例えばヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDとも称する)のように、眼鏡のフレームに相当する支持手段で映像表示装置を観察者の眼前で支持する構成では、映像表示装置は横方向(水平方向)にはずれにくく、縦方向(垂直方向)にはずれやすい。したがって、HMDを上記のように構成する場合には、縦方向において、観察者の瞳位置のずれによる色ムラを低減できる瞳重視の特性とすることが望ましい。
【0009】
さらに、映像表示装置を眼幅(左右の眼の幅)が異なる複数人で使用することを想定した場合、観察者ごとに瞳位置は横方向(水平方向)に異なることから、瞳位置のずれによって色ムラが発生するのと同様の原理により、複数人の間で色の認識が相違する事態が発生する。したがって、複数人での使用を想定した場合には、眼幅方向である横方向において、そのような複数人の間での色の認識の相違を低減できる眼幅重視の特性とすることが望ましい。
【0010】
以上、横方向および縦方向のそれぞれについて重視することが望まれる特性の一例を示したが、映像表示装置の構成や使用状態によっては、横方向および縦方向で重視したい特性が異なることは多くあり得ることである。しかし、上記した特許文献1および2では、横方向および縦方向で特性を異ならせることなく、どちらの方向についても画角重視の特性としたり、瞳重視の特性としているため、使い勝手のよい映像表示装置を実現できているとは必ずしも言えない。
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、方向によって異なる観察特性を同時に実現することができ、これによって使い勝手を向上させることができる映像表示装置と、その映像表示装置に用いられるホログラム光学素子と、そのホログラム光学素子の製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のホログラム光学素子の製造方法は、映像を表示する表示素子と、表示素子の表示映像の拡大虚像を観察者に提供する拡大光学系とを備え、この拡大光学系が、表示素子からの映像光を回折反射させて観察者の瞳に導く体積位相型の反射型ホログラム光学素子を有する映像表示装置であって、表示素子の表示領域の中心と拡大光学系によって形成される光学瞳の中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とし、光軸に垂直でかつ互いに直交する2方向をそれぞれ第1の方向および第2の方向とし、光軸に平行でかつ第1の方向を含む面を第1の面とし、光軸に平行でかつ第2の方向を含む面を第2の面とすると、ホログラム光学素子にて回折反射された所定波長の映像光の集光位置が、第1の面内と第2の面内とで光軸方向に異なることを特徴としている。
【0013】
なお、ホログラム光学素子にて回折された所定波長の映像光の集光には、ホログラム光学素子から有限の位置で集光する場合も含まれるし、ホログラム光学素子から無限遠の位置で集光する場合も含まれるものとする。
【0014】
上記の構成によれば、表示素子からの映像光は、拡大光学系のホログラム光学素子にて回折反射され、観察者の瞳に導かれる。これにより、観察者は、光学瞳の位置にて、表示素子の表示映像の拡大虚像を観察することができる。このとき、ホログラム光学素子にて回折された所定波長の映像光(例えばRGBの少なくともいずれかの光)の集光位置が第1の面内と第2の面内とで光軸方向に異なるので、第1の方向(例えば水平方向または垂直方向)と第2の方向(例えば垂直方向または水平方向)とで映像観察の際の特性が異なる映像表示装置を実現することができる。
【0015】
つまり、映像光の集光位置が例えば再生時の光学瞳と略同一位置であれば、観察者が光学瞳の面内で瞳位置をずらすことなく映像(虚像)を観察したときに、ホログラム光学素子を作製する元となるホログラム感光材料への露光光線の入射方向と映像の観察方向とが一致するので(露光時と観察時とで画角が一致するので)、観察画角内での色ムラの無い良好な映像を観察することができる。
【0016】
一方、映像光の集光位置が例えば光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の位置であれば、映像観察の際に観察者の瞳が光学瞳面内でずれたとしても、観察方向によっては、露光時のホログラム感光材料への露光光線の入射方向に近づくもの、または上記入射方向と同一方向のものも存在するため、瞳位置のずれによる色ムラを低減することができる。また、眼幅の異なる複数人に映像表示装置を使用させる場合でも、上記と同様の原理により、複数人の間で色の認識が異なる事態を低減することができる。
【0017】
したがって、映像光の集光位置が第1の面内と第2の面内とで光軸方向に異なることにより、例えば、第1の方向と第2の方向とのうちで画角を広げたい方向(例えば水平方向)には画角重視の特性(観察画角内での色ムラを低減した特性)とする一方、観察者の瞳がずれやすい方向(例えば垂直方向)には瞳重視の特性(瞳位置のずれによる色ムラを低減した特性)とすることができる。また、複数人の使用を想定する場合には、眼幅方向(水平方向)には眼幅重視の特性(複数人の間での色の認識の相違を低減した特性)とする一方、他の方向(垂直方向)には他の特性(画角重視や瞳重視の特性)とすることも可能となる。このように、方向によって異なる観察特性を同時に実現することができるので、使い勝手を向上させた映像表示装置を実現することができる。
【0018】
本発明の映像表示装置において、ホログラム光学素子にて回折反射された所定波長の映像光の集光位置は、第1の面および第2の面のうちの一方の面内では光学瞳と略同一位置であり、他方の面内では光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の位置であってもよい。
【0019】
この場合、第1の方向および第2の方向のうちの一方の方向(例えば水平方向)については画角重視の特性とし、他方の方向(例えば垂直方向)については瞳重視の特性とすることができる。また、複数人の使用を想定する場合には、一方の方向(例えば垂直方向)については画角重視の特性とし、他方の方向(例えば水平方向)については眼幅重視の特性とすることもできる。
【0020】
本発明の映像表示装置において、第1の面および第2の面のうちで観察画角が広い面内における所定波長の映像光の集光位置が、光学瞳と略同一位置であってもよい。この場合、第1の方向および第2の方向のうちで画角が広い方向について画角重視の特性とすることができ、画角が広くても色ムラを低減した良好な映像を観察者に観察させることができる。
【0021】
本発明の映像表示装置において、観察者の側頭部に当接する支持手段で該映像表示装置が(観察者の眼前に位置するように)支持される場合に、第1の方向および第2の方向のうち、第1の面および第2の面のうちで所定波長の映像光の集光位置が光学瞳と略同一位置にある面に含まれる方向は、水平方向であってもよい。
【0022】
映像表示装置を支持する支持手段が観察者の側頭部に当接する場合、水平方向における観察者の瞳位置のずれは少ない。したがって、上記構成によれば、水平方向に画角重視の特性を優先して持たせて、良好な映像を観察者に観察させることができる。
【0023】
本発明の映像表示装置は、上記表示素子と上記拡大光学系とを含む表示ユニットを観察者の両眼に対応して2つ有しており、2つの表示ユニットの眼幅方向の間隔を調整する調整手段をさらに有していてもよい。
【0024】
この場合、観察者は、自分の眼幅に合うように調整手段によって2組の表示ユニットの眼幅方向の間隔を調整した後、映像表示装置を使用することが可能となる。これにより、両眼観察用の映像表示装置においても、眼幅の異なる観察者ごとに、水平方向における観察画角内での色ムラを低減した良好な映像を観察させることができる。
【0025】
本発明の映像表示装置において、上記調整手段は、互いに当接しながら眼幅方向に相対的にスライドする2つのスライド部材と、2つのスライド部材を固定する固定手段とを有しており、一方のスライド部材の一端は、一方の表示ユニットに固定されており、他方のスライド部材の一端は、他方の表示ユニットに固定されており、2つのスライド部材は、観察者の眼幅に対応した量だけ相対的にスライドして固定手段によって固定される構成であってもよい。
【0026】
この構成では、2つのスライド部材が別々の表示ユニットに固定されているので、2つのスライド部材を観察者の眼幅に対応した量だけ相対的にスライドさせ、固定手段によって固定すれば、2つの表示ユニットは眼幅の異なる観察者ごとに両眼の前に位置するようになる。したがって、このような2つのスライド部材と固定手段とで調整手段を構成することにより、2つの表示ユニットの眼幅方向の間隔を確実に調整することができる。
【0027】
本発明の映像表示装置において、上記調整手段は、2つの表示ユニットを所定の間隔で支持する互いに交換可能な複数の支持部材の中から選択される、観察者の眼幅に対応した長さの支持部材で構成されていてもよい。
【0028】
この構成では、互いに交換可能な複数の支持部材の中から、観察者の眼幅に対応した長さの支持部材が選択されて調整手段として用いられる。これにより、2つの表示ユニットの眼幅方向の間隔を、眼幅の異なる観察者ごとに確実に調整することができる。
【0029】
本発明の映像表示装置において、第1の方向および第2の方向のうち、第1の面および第2の面のうちで所定波長の映像光の集光位置が光学瞳と略同一位置にある面に含まれる方向は、ホログラム光学素子への光軸入射面に平行な方向であってもよい。
【0030】
ホログラム光学素子への光軸入射面とは、ホログラム光学素子における入射光の光軸と反射光の光軸とを含む平面を指す。一般的に、ホログラム光学素子を有する拡大光学系によって形成される光学瞳は、光軸入射面に垂直な方向よりも光軸入射面に平行な方向のほうが小さいので、光軸入射面に平行な方向に瞳位置がずれたときに生ずる色ムラはある程度許容される。したがって、第1の方向および第2の方向のうちで光軸入射面に平行な方向に画角重視の特性を持たせて、良好な映像を観察者に観察させることができる。
【0031】
本発明の映像表示装置において、第1の方向および第2の方向のうち、第1の面および第2の面のうちで所定波長の映像光の集光位置が光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の位置にある面に含まれる方向は、観察者の眼幅方向であってもよい。
【0032】
上記の構成によれば、眼幅方向に瞳位置がずれたときの色ムラを低減することができるので、例えば観察者の両眼に対応して映像表示装置を複数設け、眼幅の異なる複数人に映像表示装置を使用させる場合でも、観察者ごとに眼幅方向に両眼の瞳位置が異なることによって観察者ごとに所定の観察方向における色の認識が異なる事態を低減することができる。
【0033】
本発明の映像表示装置において、光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側にある所定波長の映像光の集光位置は、ホログラム光学素子から無限遠の位置であってもよい。
【0034】
第1の面および第2の面のうち、所定波長の映像光の集光位置が光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の無限遠の位置にある面内では、露光時にホログラム感光材料に入射する露光光線が略平行となる。したがって、観察者の瞳位置が上記面内の方向(第1の方向または第2の方向)にずれても、露光光線の方向と同一の観察方向については、瞳位置の違いによって色ムラが発生するのを回避することができる。
【0035】
本発明の映像表示装置において、ホログラム光学素子にて回折反射された所定波長の映像光の集光位置は、第1の面および第2の面のうちの一方の面内では光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の第1の位置であり、他方の面内では第1の位置に対してホログラム光学素子とは反対側の第2の位置であってもよい。
【0036】
この場合、第1の方向および第2の方向のうちの一方の方向(例えば垂直方向)では、映像観察の際に観察者の瞳が光学瞳面内でずれたとしても、瞳位置のずれによる色ムラを低減することができ、瞳重視の特性とすることができる。また、他方の方向(例えば水平方向)では、眼幅の異なる複数人に映像表示装置を使用させる場合でも、複数人の間で色の認識が異なる事態を低減することができ、眼幅重視の特性とすることができる。
【0037】
本発明の映像表示装置において、第2の位置は、ホログラム光学素子から無限遠の位置であってもよい。第1の面および第2の面のうち、所定波長の映像光の集光位置が第1の位置に対してホログラム光学素子とは反対側の第2の位置(無限遠)となる面内では、露光時にホログラム感光材料に入射する露光光線が略平行となる。したがって、観察者の瞳位置が上記面内の方向(第1の方向または第2の方向)にずれても、あるいは複数人の観察者の眼幅が上記方向に異なる場合でも、露光光線の方向と同一の観察方向については、瞳位置の違いによって色ムラが発生する、あるいは複数人の間で色の認識が異なるのを回避することができる。
【0038】
本発明の映像表示装置において、ホログラム光学素子は、表示素子からの映像光と外光とを同時に観察者の瞳に導くコンバイナであってもよい。この場合、観察者は、表示素子の表示映像(虚像)と外界像とを同時に観察することができ、シースルータイプの映像表示装置を実現することができる。
【0039】
本発明のホログラム光学素子の製造方法は、可干渉性を有する2光束でホログラム感光材料を露光することにより、体積位相型の反射型ホログラム光学素子を形成するホログラム光学素子の製造方法であって、一方の露光光束は、軸非対称な波面を持つ光束であり、他方の露光光束は、該光束に垂直な断面内で互いに直交する2方向のうちの一方向を含む面内における集光点が他方向を含む面内における集光点とは光軸方向に異なる位置となる光束であることを特徴としている。
【0040】
ホログラム感光材料を露光する2光束のうち、一方の露光光束は軸非対称な波面を持つ光束であるが、他方の露光光束は、該光束に垂直な断面内で互いに直交する2方向のうちの一方向(例えば水平方向)を含む面内と他方向(例えば垂直方向)を含む面内とで集光点が光軸方向に異なる光束である。なお、このような他方の露光光束は、例えば、光路中に2枚のシリンドリカルレンズを集光方向が直交するように、かつ、光束の進行方向にずらして配置することで得ることができる。これにより、2方向で特性の異なるホログラム光学素子を得ることができる。
【0041】
ここで、例えば、作製されたホログラム光学素子を映像表示装置に適用し、表示素子からの映像光をホログラム光学素子にて回折反射させて観察者の瞳に導く構成とした場合、集光点が再生時の光学瞳と略同一位置であれば、観察者が光学瞳の面内で瞳位置をずらすことなく映像を観察したときに、ホログラム感光材料への露光光線の入射方向と映像の観察方向とが一致するので、観察画角内での色ムラの無い良好な映像を観察することができる。
【0042】
一方、集光点が再生時の光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の位置であれば、映像観察の際に観察者の瞳が光学瞳面内でずれたとしても、観察方向によっては、露光時のホログラム感光材料への露光光線の入射方向に近づくもの、または上記入射方向と同一方向のものも存在するため、瞳位置のずれによる色ムラを低減することができる。また、眼幅の異なる複数人に映像表示装置を使用させる場合でも、上記と同様の原理により、複数人の間で色の認識が異なる事態を低減することもできる。
【0043】
したがって、2方向で特性の異なるホログラム光学素子を作製することで、これを映像表示装置に適用したときに、画角を広げたい方向(例えば水平方向)には画角重視の特性とし、観察者の瞳がずれやすい方向(例えば垂直方向)には瞳重視の特性とすることができる。また、複数人の使用を想定する場合には、眼幅方向(水平方向)には眼幅重視の特性とし、他の方向(垂直方向)には他の特性(画角重視や瞳重視の特性)とすることも可能となる。このように、水平方向および垂直方向の2方向で異なる観察特性を同時に実現することができるので、使い勝手のよい映像表示装置を実現することができる。
【0044】
本発明のホログラム光学素子は、上述した本発明のホログラム光学素子の製造方法によって製造されることを特徴としている。これにより、本発明のホログラム光学素子を映像表示装置に適用したときに、水平方向および垂直方向の2方向で異なる観察特性を実現することができ、使い勝手のよい映像表示装置を実現することができる。
【0045】
なお、本発明の映像表示装置は以下のように表現することもでき、これによって上記と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、本発明の映像表示装置は、映像を表示する表示素子と、表示素子の表示映像の拡大虚像を観察者に提供する拡大光学系とを備え、この拡大光学系が、表示素子からの映像光を回折反射させて観察者の瞳に導く体積位相型の反射型ホログラム光学素子を有する映像表示装置であって、上記ホログラム光学素子は、上述した本発明の製造方法によって製造されたホログラム光学素子である。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、方向によって異なる観察特性を同時に実現することができるので、使い勝手を向上させた映像表示装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0048】
(1.HMDの構成)
図2は、本実施形態に係るHMDの概略の構成を示す斜視図である。HMDは、映像表示装置1と、支持手段2とで構成されている。
【0049】
映像表示装置1は、少なくとも光源11および表示素子14(ともに図3参照)を内包する筐体3を有している。この筐体3は、接眼光学系4の一部を保持している。接眼光学系4は、後述する接眼プリズム21および偏向プリズム22の貼り合わせによって構成されており、全体として眼鏡の一方のレンズ(図2では右眼用レンズ)のような形状をしている。また、映像表示装置1は、筐体3を貫通して設けられるケーブル(図示せず)を介して、光源11および表示素子14に少なくとも駆動電力および映像信号を供給するための回路基板(図示せず)を有している。
【0050】
支持手段2は、眼鏡のフレームに相当するものであり、観察者の側頭部に当接した状態で映像表示装置1を観察者の眼前で支持する。より詳しくは、支持手段2は、映像表示装置1の接眼光学系4を観察者の一方の眼(例えば右眼)の前で支持するとともに、ダミーレンズ5を観察者の他方の眼(例えば左眼)の前で支持する。また、支持手段2は、左右の鼻当て6も含んでいる。
【0051】
観察者がHMDを頭部に装着し(支持手段2を観察者の側頭部に当接させて、映像表示装置1を観察者の眼前に位置させ)、表示素子14に映像を表示すると、その映像光が接眼光学系4を介して観察者の瞳に導かれる。これにより、観察者は、映像表示装置1の映像を虚像として観察することができる。また、これと同時に、観察者は、接眼光学系4を介して、外界像をシースルーで観察することができる。なお、映像表示装置1を2つ用いて両眼で映像を観察できるようにしてもよい(図7(a)参照)。
【0052】
また、映像表示装置1が支持手段2によって観察者の眼前で支持されるので、観察者はハンズフリーとなり、映像や外界像を観察しながら空いた手で所望の作業を行うことができる。以下、映像表示装置1の詳細について説明する。
【0053】
(2.映像表示装置の構成)
図3は、映像表示装置1の概略の構成を示す断面図である。映像表示装置1は、光源11と、一方向拡散板12と、集光レンズ13と、表示素子14と、上述した接眼光学系4とを有している。光源11、一方向拡散板12、集光レンズ13および表示素子14は、図2に示した筐体3内に収容されており、後述する接眼プリズム21の一部も筐体3内に位置している。また、光源11、一方向拡散板12および集光レンズ13で照明光学系が構成されるが、この照明光学系の中に、必要に応じてDOE(回折光学素子)を配置してもよい。
【0054】
なお、以下での説明の便宜上、方向を以下のように定義しておく。まず、表示素子14の表示領域の中心と、接眼光学系4によって形成される光学瞳Eの中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とする。そして、光源11から光学瞳Eまでの光路を展開したときの光軸方向をZ方向とする。また、接眼光学系4の後述するホログラム光学素子23への光軸の入射面に垂直な方向をX方向とし、ZX平面に垂直な方向をY方向とする。なお、ホログラム光学素子23への光軸の入射面とは、ホログラム光学素子23における入射光の光軸と反射光の光軸とを含む平面、すなわち、YZ平面を指す。以下、上記入射面を単に入射面または光軸入射面と称する。なお、本実施形態では、XYZの各方向において正負は問わないものとする。
【0055】
また、光軸に垂直でかつ互いに直交する2方向をそれぞれ第1の方向および第2の方向とすると、本実施形態では、第1の方向は例えばX方向であり、第2の方向は例えばY方向である。そして、光軸に平行でかつ第1の方向を含む面を第1の面とし、光軸に平行でかつ第2の方向を含む面を第2の面とすると、本実施形態では、第1の面は例えばZX平面であり、第2の面は例えばYZ平面である。また、光学瞳Eの位置では、X方向は水平方向にも対応し、Y方向は垂直方向にも対応している。
【0056】
光源11は、表示素子14を照明するものであり、例えば、光強度のピーク波長および光強度半値の波長幅で462±12nm(B光)、525±17nm(G光)、635±11nm(R光)となる3つの波長帯域の光を発するRGB一体型のLEDで構成されている。このように、光源11が所定の波長幅の光を出射することにより、表示素子14を照明して得られる映像光に所定の波長幅を持たせることができ、後述するホログラム光学素子23にて映像光を回折させたときに、光学瞳Eの位置にて観察画角全域にわたって観察者に映像を観察させることができる。また、光源11の各色についてのピーク波長は、ホログラム光学素子23の後述する回折効率のピーク波長の近傍に設定されており、光利用効率の向上が図られている。
【0057】
また、光源11は、RGBの光を出射するLEDで構成されているので、光源11を安価に実現することができるとともに、表示素子14を照明したときに、表示素子14にてカラー映像を表示することが可能となり、そのカラー映像を観察者に提供することが可能となる。また、各LEDは、発光波長幅が狭いので、そのようなLEDを複数用いることにより、色再現性が高く、明るい映像表示が可能となる。
【0058】
一方向拡散板12は、光源11からの出射光を拡散させるものであるが、その拡散度は方向によって異なっている。より詳細には、一方向拡散板12は、X方向には入射光を約40゜拡散させ、Y方向には入射光を約0.5゜拡散させる。
【0059】
集光レンズ13は、一方向拡散板12にて拡散された光をY方向に集光するシリンダレンズで構成されており、その拡散光が効率よく光学瞳Eを形成するように配置されている。
【0060】
表示素子14は、光源11からの出射光を画像データに応じて変調して映像を表示するものであり、光が透過する領域となる各画素をマトリクス状に有する透過型の液晶表示素子で構成されている。表示素子14は、矩形の表示領域の長辺方向がX方向となり、短辺方向がY方向となるように配置されている。なお、表示素子14は、反射型であってもよい。反射型の表示素子14としては、例えば反射型の液晶表示素子や、DMD(Digital Micromirror Device;米国テキサスインスツルメント社製)を用いることができる。
【0061】
接眼光学系4は、表示素子14の表示映像の拡大虚像を観察者に提供する拡大光学系であり、接眼プリズム21(第1の透明基板)と、偏向プリズム22(第2の透明基板)と、ホログラム光学素子23とを有して構成されている。
【0062】
接眼プリズム21は、面21aを介して入射する表示素子14からの映像光を、対向する2つの面21b・21cで全反射させ、ホログラム光学素子23を介して観察者の瞳に導く一方、外光を透過させて観察者の瞳に導くものであり、偏向プリズム22とともに、例えばアクリル系樹脂で構成されている。この接眼プリズム21は、平行平板の下端部を下端に近くなるほど薄くして楔状にし、その上端部を上端に近くなるほど厚くした形状で構成されている。また、接眼プリズム21は、その下端部に配置されるホログラム光学素子23を挟むように、偏向プリズム22と接着剤で接合されている。
【0063】
偏向プリズム22は、平面視で略U字型の平行平板で構成されており(図2参照)、接眼プリズム21の下端部および両側面部(左右の各端面)と貼り合わされたときに、接眼プリズム21と一体となって略平行平板となるものである。この偏向プリズム22を接眼プリズム21に接合することにより、観察者が接眼光学系4を介して観察する外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
【0064】
つまり、例えば、接眼プリズム21に偏向プリズム22を接合させない場合、外光は接眼プリズム21の楔状の下端部を透過するときに屈折するので、接眼プリズム21を介して観察される外界像に歪みが生じる。しかし、接眼プリズム21に偏向プリズム22を接合させて一体的な略平行平板を形成することで、外光が接眼プリズム21の楔状の下端部を透過するときの屈折を偏向プリズム22でキャンセルすることができる。その結果、シースルーで観察される外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
【0065】
なお、接眼プリズム21および偏向プリズム22の各面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。接眼プリズム21および偏向プリズム22の各面を曲面とすれば、接眼光学系4に矯正眼鏡レンズとしての機能を持たせることもできる。
【0066】
ホログラム光学素子23は、表示素子14から出射される映像光(3原色に対応した波長の光)を回折反射し、表示素子14にて表示される映像を拡大して観察者の瞳に虚像として導く体積位相型の反射型ホログラムである。このホログラム光学素子23は、例えば、回折効率のピーク波長および回折効率半値の波長幅で465±5nm(B光)、521±5nm(G光)、634±5nm(R光)の3つの波長域の光を回折(反射)させるように作製されている。ここで、回折効率のピーク波長とは、回折効率がピークとなるときの波長のことであり、回折効率半値の波長幅とは、回折効率が回折効率ピークの半値となるときの波長幅のことである。
【0067】
反射型のホログラム光学素子23は、高い波長選択性を有しており、上記波長域(露光波長近辺)の波長の光しか回折反射しないので、回折反射される波長以外の波長を含む外光はホログラム光学素子23を透過することになり、高い外光透過率を実現することができる。
【0068】
また、ホログラム光学素子23は、軸非対称な正の光学パワーを有している。つまり、ホログラム光学素子23は、正のパワーを持つ非球面凹面ミラーと同様の機能を持っている。これにより、装置を構成する各光学部材の配置の自由度を高めて装置を容易に小型化することができるとともに、良好に収差補正された映像を観察者に提供することができる。
【0069】
(3.映像表示装置の動作)
次に、上記構成の映像表示装置1の動作について説明する。光源11から出射された光は、一方向拡散板12にて拡散され、集光レンズ13にて集光されて表示素子14に入射する。表示素子14に入射した光は、画像データに基づいて各画素ごとに変調され、映像光として出射される。つまり、表示素子14には、カラー映像が表示される。
【0070】
表示素子14からの映像光は、接眼光学系4の接眼プリズム21の内部にその上端面(面21a)から入射し、対向する2つの面21b・21cで複数回全反射されて、ホログラム光学素子23に入射する。ホログラム光学素子23に入射した光は、そこで反射され、面21cを透過して光学瞳Eに達する。光学瞳Eの位置では、観察者は、表示素子14に表示された映像の拡大虚像を観察することができる。
【0071】
一方、接眼プリズム21、偏向プリズム22およびホログラム光学素子23は、外光をほとんど全て透過させるので、観察者はこれらを介して外界像を観察することができる。したがって、表示素子14に表示された映像の虚像は、外界像の一部に重なって観察されることになる。
【0072】
このように、映像表示装置1では、表示素子14から出射される映像光を接眼プリズム21内での全反射によって導光し、ホログラム光学素子23を介して観察者の瞳に導くので、通常の眼鏡レンズと同様に、接眼プリズム21および偏向プリズム22の厚さを3mm程度にすることができ、映像表示装置1を小型化、軽量化することができる。また、表示素子14からの映像光を内部で全反射させる接眼プリズム21を用いることにより、高い外光の透過率を確保して、明るい外界像を観察者に提供することができる。
【0073】
また、体積位相型の反射型のホログラム光学素子23は、回折効率半値の波長幅が狭く、回折効率が高いので、このようなホログラム光学素子23を用いることにより、色純度が高く、明るい映像を提供することができるとともに、外光の透過率が高くなるので、観察者は明るい外界像を観察することができる。また、光源11と光学瞳Eとの共役関係が変更されないので、映像光の波長が変化せず、色再現性の高い映像を提供することができる。
【0074】
また、上記の説明からもわかるように、ホログラム光学素子23は、表示素子14からの映像光と外光とを同時に観察者の瞳に導くコンバイナとして機能している。これにより、観察者は、ホログラム光学素子23を介して、表示素子14から提供される映像と外界像とを同時に観察することができる。
【0075】
(4.ホログラム光学素子の製造方法について)
次に、上記したホログラム光学素子23の製造方法について説明する。図4は、ホログラム光学素子23を製造する際の露光光学系全体の概略の構成を示す説明図である。この製造光学系は、光源31と、ビームステアラー32と、シャッター33と、ビームエキスパンダー34と、ミラー35と、ダイクロイックミラー36・37と、ミラー38と、ビームスプリッタ39と、ミラー40・41・42・43と、製造光学系50とを備えている。
【0076】
なお、光源31、ビームステアラー32、シャッター33およびビームエキスパンダー34は、R(赤)、G(緑)、B(青)に対応してそれぞれ設けられている。これらについて特にRGBで区別したい場合には、部材番号の後にRGBの文字を併記するものとする。
【0077】
上記の構成において、光源31Bから出射されるBのレーザー光は、ビームステアラー32Bを構成する2枚のミラーで反射され、露光量を調整するためのシャッター33Bを透過した後、ビームエキスパンダー34Bにて光束径が拡大され、その後、ミラー35にて反射偏向されてダイクロイックミラー36に入射する。
【0078】
また、光源31Gから出射されるGのレーザー光は、ビームステアラー32Gを構成する2枚のミラーで反射され、露光量を調整するためのシャッター33Gを透過した後、ビームエキスパンダー34Gにて光束径が拡大され、その後、ダイクロイックミラー36にてBのレーザー光と色合成され、ダイクロイックミラー37に入射する。
【0079】
また、光源31Rから出射されるRのレーザー光は、ビームステアラー32Rを構成する2枚のミラーで反射され、露光量を調整するためのシャッター33Rを透過した後、ビームエキスパンダー34Rにて光束径が拡大され、その後、ダイクロイックミラー37にてBおよびGのレーザー光と色合成され、ミラー38に入射する。
【0080】
ミラー38に入射したRGBのレーザー光は、そこで反射されてビームスプリッタ39に入射し、2つの光路に分離される。第1の露光光束である物体光側の光路では、ビームスプリッタ39から出射されるRGBのレーザー光は、ミラー40・41にて順に反射された後、製造光学系50に入射する。一方、第2の露光光束である参照光側の光路では、ビームスプリッタ39から出射されるRGBのレーザー光は、ミラー42・43にて順に反射された後、製造光学系50に入射する。製造光学系50では、RGBについての2つ光路で所望の露光光束を作製し、これらの露光光束をホログラム感光材料23a(図5参照)に照射することにより、ホログラム光学素子23が作製される。
【0081】
なお、ホログラム感光材料23aとしては、銀塩材料、重クロム酸ゼラチン、フォトポリマーなどを用いることができるが、特に、ホログラム光学素子23をドライプロセスで容易に製造可能なフォトポリマーを用いることが望ましい。
【0082】
次に、製造光学系50の内部における露光の詳細について説明する。図5は、製造光学系50の詳細な構成を示す説明図であり、特に、YZ平面での光路およびZX平面での光路が明確になるように図示したものである。
【0083】
物体光側では、ミラー41(図4参照)を介して入射する光が、図示しない集光光学系により集光される。その集光位置にはピンホールが配置されており、ピンホールを通過した光が理想的な点光源からの発散光となる。点光源からの発散光は、軸非対称な形状の反射面61・62で順に反射され、軸非対称な配置の非球面レンズ63・64を順に透過した後、プリズム65を透過して接眼プリズム21上のホログラム感光材料23aに接眼プリズム21とは反対側から照射される。一方、参照光側では、ミラー43(図4参照)を介して入射する光が、光軸方向(Z方向)に並ぶ2つのシリンドリカルレンズ71・72を順に透過して、接眼プリズム21上のホログラム感光材料23aに接眼プリズム21側から照射される。
【0084】
なお、ホログラム光学素子23は、複雑な接眼光学系4の主要なパワーを持つため、作製時には軸非対称な光学系を用いてホログラム感光材料23aを露光し、作製されるホログラム光学素子23に軸非対称な波面再生機能を持たせる必要がある。このため、物体光側の光学系を上記のように構成し、物体光を軸非対称な波面を持つ光束としている。なお、軸非対称な光学系は、一般に、軸非対称な配置のレンズ、プリズム、DOE、反射面などで構成することが可能であり、これらの光学部材を適宜選択して構成されればよい。また、必要に応じて、参照光側の光学系にも、軸非対称な配置や構成のレンズ系を適用しても構わない。
【0085】
ここで、参照光側の光学系で光軸方向に並ぶ2つのシリンドリカルレンズ71・72は、光の集光方向が互いに異なっている。より詳細には、シリンドリカルレンズ71は、入射光(ここではミラー43を介して入射する光)をYZ平面でのみ集光し、シリンドリカルレンズ72は、入射光(ここではシリンドリカルレンズ71を介して入射する光)をZX平面でのみ集光する。このような2枚のシリンドリカルレンズ71・72を光束の進行方向にずらして配置することにより、YZ平面内とZX平面内とで露光時の集光点(点光源の位置)を光軸方向に異ならせることができる。本実施形態では、ZX平面内での露光時の集光点Qは、再生時の光学瞳と略同一位置であり、YZ平面内での露光時の集光点Pは、再生時の光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置となっている。したがって、シリンドリカルレンズ71・72を用いることにより、露光時において、YZ平面内では集光点Pからの発散光が得られ、ZX平面内では集光点Qからの発散光が得られる。
【0086】
このように、製造光学系50の内部では、ホログラム感光材料23aを露光する2光束のうち、一方の露光光束(物体光)は軸非対称な波面を持つ光束であるが、他方の露光光束(参照光)は、YZ平面内とZX平面内とで露光時の集光点P・Qが光軸方向に異なる光束となっている。これにより、2光束干渉によりホログラム光学素子23を作製し、映像表示装置1に適用したときには、再生時にホログラム光学素子23にて回折された所定波長の映像光(例えばRGBの少なくともいずれかの光)の集光位置がYZ平面内とZX平面内とで光軸方向に異なるので、Y方向およびX方向の2方向で観察特性を異ならせることができる。この点についてさらに説明すると、以下の通りである。
【0087】
図1は、再生時にホログラム光学素子23にて回折反射される映像光(例えばB光)の集光位置をYZ平面とZX平面との両方で示した説明図であり、図6は、YZ平面とZX平面とのそれぞれにおいて、再生時に光学瞳に入射する映像光(例えばB光)の光線(実線)と露光時の参照光(例えばB光)の光線(破線)とを併せて示す説明図である。図5の製造光学系50によってホログラム光学素子23を作製した場合、再生時は、ホログラム光学素子23にて回折反射された映像光は、YZ平面内では集光点P’に集光し、ZX平面内では集光点Q’に集光する。なお、集光点P’・Q’は、それぞれ図5の集光点P・Qと同じ位置である。
【0088】
これにより、再生時に光学瞳Eを含む面内に観察者の瞳を位置させて映像を観察する場合に、YZ平面内では、観察者の瞳が光学瞳Eを含む面内でずれたとしても、観察方向によっては、露光時のホログラム感光材料23aへの露光光線の入射方向に近づくもの(図6の実線の光線の傾きが破線の光線の傾きに近づくもの)、または上記入射方向と同一方向のものも存在するため、瞳位置のずれによる色ムラを低減することができる。一方、ZX平面内では、観察者が光学瞳Eの面内で瞳位置をずらすことなく映像を観察したときに、ホログラム感光材料23aへの露光光線の入射方向と映像の観察方向とが一致するので(実線の光線と破線の光線とが一致するので)、観察画角内での色ムラの無い良好な映像を観察することができる。
【0089】
以上のように、本実施形態のホログラム光学素子23の製造方法によれば、その製造方法によって作製されたホログラム光学素子23を映像表示装置1に適用することで、例えば垂直方向であるY方向には瞳重視の特性(瞳位置のずれによる色ムラを低減した特性)とし、水平方向であるX方向には画角重視の特性(観察画角内での色ムラを低減した特性)とした映像表示装置1を実現することができる。このように、光学瞳Eを含む面内の異なる2方向で異なる観察特性を同時に実現することができるので、使い勝手のよい映像表示装置1を実現することができる。
【0090】
特に、再生時の映像光の集光位置が、一方の面内(ZX平面内)では光学瞳Eと略同一位置(集光点Q’)であり、他方の面内(YZ平面内)では光学瞳Eに対してホログラム光学素子23とは反対側の位置(集光点P’)であるので、一方の方向(X方向)については画角重視の特性とし、他方の方向(Y方向)については瞳重視の特性とすることが確実にできる。
【0091】
また、露光時の参照光の集光位置(集光点P・Q)を光軸方向にそれぞれ調整すれば、再生時の映像光の集光位置(集光点P’・Q’)を光軸方向に個別に調整することが可能となる。これにより、X方向およびY方向において再生時の観察特性を個々に調整することも可能となり、装置の使い勝手が益々よくなる。
【0092】
また、本実施形態では、表示領域がY方向よりもX方向に長い表示素子14を用いているので、光学瞳Eの位置で映像を観察する際の観察画角は、Y方向の画角(YZ平面内での画角)よりもX方向の画角(ZX平面内での画角)のほうが広い。特に、表示素子14として、アスペクト比が16(横):9(縦)の表示領域を持つものを採用した場合は、観察画角は垂直方向よりも水平方向で顕著に広くなる。このため、X方向における映像の色ムラは極力低減されることが望ましい。
【0093】
そこで、本実施形態では、画角の広い方向(X方向)に画角重視の特性を持たせるべく、ZX平面とYZ平面とのうちで観察画角が広い面(ZX平面)内における所定波長の映像光の集光位置(集光点Q’)を光学瞳Eと略同一位置としている。つまり、再生時の映像光の集光位置が光学瞳Eと略同一位置にあるZX平面内での画角が、他方のYZ平面内での画角よりも広い。これにより、画角が広くても色ムラを低減した良好な映像を観察者に観察させることができ、特にデジタル放送のハイビジョン映像を表示可能な表示素子14を用いた場合でも、水平方向に色ムラを低減した良好な映像を観察者に観察させることができる。
【0094】
また、本実施形態のように映像表示装置1を観察者の眼前で支持するための支持手段2(図2参照)が観察者の側頭部に当接する場合、水平方向における観察者の瞳位置のずれは少ない。したがって、本実施形態のように、X方向およびY方向のうちで、再生時の映像光の集光位置が光学瞳Eと略同一位置にある平面(ZX平面)に含まれる方向(X方向)を水平方向とすることにより、水平方向に画角重視の特性を優先して持たせて、水平方向に色ムラの無い良好な映像を観察者に観察させることができる。
【0095】
ところで、上述した映像表示装置1を観察者の両眼に対応して2つ設けて全体として1つの映像表示装置とすることも可能である。なお、ここでは、説明の便宜上、観察者の右眼に対応する映像表示装置1を表示ユニット1Rと称し、観察者の左眼に対応する映像表示装置1を表示ユニット1Lと称し、これら2つの表示ユニット1R・1Lを合わせて1つの映像表示装置1と称することとする。図7(a)は、2つの表示ユニット1R・1Lを観察者の両眼に対応して設けた映像表示装置1およびそれを備えたHMDの概略の構成を模式的に示す正面図である。
【0096】
このような映像表示装置1では、観察者は表示ユニット1R・1Lの各表示素子に表示された映像を両眼でそれぞれ観察することが可能となるが、眼幅の異なる観察者の各々に対して水平方向に色ムラの無い良好な映像を観察させるために、調整機構81を設けることが望ましい。図7(b)は、調整機構81の概略の構成を示す分解斜視図である。
【0097】
この調整機構81は、2つの表示ユニット1R・1Lの眼幅方向の間隔を調整する調整手段であり、2つのスライド部材82・83と、スライド部材82・83を固定する固定手段としての2組のボルト84およびナット85とを有して構成されている。
【0098】
2つのスライド部材82・83は、互いに当接しながら眼幅方向に相対的にスライドする板状の部材である。一方のスライド部材82の一端は、表示ユニット1Rの接眼光学系4(例えば偏向プリズム22)にビスや接着剤等で固定されており、他端は自由端となっている。また、他方のスライド部材83の一端は、表示ユニット1Lの接眼光学系4(例えば偏向プリズム22)にビスや接着剤等で固定されており、他端は自由端となっている。
【0099】
また、スライド部材82には、上面および下面を貫通する円形の孔82aが眼幅方向に2つ並んで設けられている。一方。スライド部材83にも、上面および下面を貫通する孔83aが1つ設けられているが、この孔83aは、孔82a・82a間の距離よりも眼幅方向に長い矩形状の長孔となっている。なお、孔83aの形状は特に限定されるわけではない。
【0100】
このような調整機構81の構成では、観察者の眼幅に対応した量だけ2つのスライド部材82・83を眼幅方向である水平方向に相対的にスライドさせた後、スライド部材の孔82a・82a、スライド部材83の孔83aを貫通するボルト84・84の先端にナット85・85を螺合させてスライド部材82・83を固定することで、表示ユニット1R・1Lの間隔が調整される。したがって、眼幅の異なる観察者ごとに、表示ユニット1R・1Lを観察者の両眼の前に位置させることができる。
【0101】
このように、両眼観察用の映像表示装置1に調整機構81を設けることにより、観察者が自分の眼幅に合うように表示ユニット1R・1Lの間隔を調整した後、映像表示装置1を使用することが可能となる。この結果、両眼観察用の映像表示装置1においても、眼幅の異なる観察者ごとに、水平方向における観察画角内での色ムラを低減した良好な映像を観察させることができる。
【0102】
特に、調整機構81が、2つのスライド部材82・83と固定手段(ボルト84・84、ナット85・85)とで構成されているので、2つの表示ユニット1R・1Lの眼幅方向の間隔を確実に調整することができる。
【0103】
また、図8(a)(b)(c)は、調整機構81の他の構成例を示す正面図と平面図とを合わせて示したものである。これらの図に示すように、調整機構81は、互いに交換可能な複数の支持部材86の中から選択される1つの支持部材86で構成されてもよい。ここで、複数の支持部材86は、2つの表示ユニット1R・1Lを所定の間隔で(互いに異なる間隔で)支持するものであり、例えば3つの支持部材86a・86b・86cで構成されている。支持部材86a・86b・86cは、眼幅方向の長さがこの順で次第に長くなるように形成されている。
【0104】
また、各支持部材86における眼幅方向の両端部は、表示ユニット1R・1Lの接眼光学系4の偏向プリズム22をそれぞれ挟持することが可能な形状となっている。なお、各支持部材86の両端部は、各偏向プリズム22とビス等で固定されてもよい。
【0105】
このように、互いに交換可能な複数の支持部材86の中から、観察者の眼幅に対応した長さの支持部材86を選択して使用することによっても、2つの表示ユニット1R・1Lの眼幅方向の間隔を、眼幅の異なる観察者ごとに確実に調整することができる。したがって、支持部材86を調整機構81として用いる場合であっても、眼幅の異なる観察者ごとに、水平方向における観察画角内での色ムラを低減した良好な映像を観察させることができる。
【0106】
なお、本実施形態のように、カラー対応のホログラム光学素子23、すなわち、RGBの映像光を回折させるホログラム光学素子23を作製する場合には、露光時に用いたシリンドリカルレンズ71・72をさらに複数枚のレンズで構成するなどして色収差補正(色消し)を行うことにより、さらに良好な映像を観察者に観察させることができる。
【0107】
なお、本実施形態では、露光時に用いる円形の光ビーム(物体光、参照光)の外縁部を遮光板などで規制し、ホログラム感光材料23aの形状(例えば図5に示したような四角形状)にほぼ沿うような外形の光ビームを得て、これをホログラム感光材料23aに照射するようにしてもよい。この場合、ホログラム感光材料23aに干渉縞を形成するのに不要な光が入射しないので(干渉縞の形成に必要な光のみをホログラム感光材料23aに入射させることができるので)、ノイズとなる干渉縞がホログラム感光材料23aに形成されるのを極力低減することができる。
【0108】
なお、図6において、再生時に表示素子14(図3参照)からホログラム光学素子23を介して光学瞳Eの中心に入射する光線を主光線とすると、再生時に、所定の波長でホログラム光学素子23の1点から射出される光(例えば一方の破線の光)について、YZ平面内では、その光のホログラム光学素子23からの射出方向(破線の方向)は、ホログラム光学素子23の同位置を通る主光線の方向とは異なる方向であり、その光は第1の点(集光点P’)近傍に集光されるが、ZX平面内では、その光のホログラム光学素子23からの射出方向は、ホログラム光学素子23の同位置を通る主光線の方向とは略同じ方向であり、その光は第2の点(集光点Q’)近傍に集光される。このとき、第1の点は、第2の点に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にあり、第2の点は光学瞳Eを含む面内に位置している。
【0109】
以上のことから、本実施形態の映像表示装置1は、以下のように表現することもできる。すなわち、本実施形態の映像表示装置1は、表示素子14と、表示素子14に生成された映像を拡大して観察瞳(光学瞳E)に導く拡大光学系(接眼光学系4)とを備え、拡大光学系は表示素子14からの映像光を観察瞳に向けて回折反射する体積位相型の反射型のホログラム光学素子23を備え、ホログラム光学素子23は、映像光の所定の波長に関して、光軸に垂直でかつ互いに直交する2つの方向のうちの一方の方向(Y方向)を含む面内(YZ平面内)での回折光の射出方向は観察光路の主光線と異なった方向であり、その回折光は第1の点(集光点P’)近傍に集光され、他方の方向(X方向)を含む面内(ZX平面内)での回折光の射出方向は観察光路の主光線と略同じ方向であり、その回折光は第2の点(集光点Q’)近傍に集光され、第1の点は第2の点に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にあり、第2の点は光学瞳Eを含む面内に位置している構成である。なお、第1の点をホログラム光学素子23から無限遠に位置する点と考えれば、上記映像表示装置1は、後述する実施の形態2の映像表示装置1も概念的に含むものとなる。
【0110】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0111】
図9は、本実施形態における製造光学系50の詳細な構成を示す説明図であり、特に、YZ平面での光路およびZX平面での光路が明確になるように図示したものである。本実施形態では、製造光学系50の参照光側の光学系において、シリンドリカルレンズ71を削除する一方、シリンドリカルレンズ72を残してホログラム感光材料23aを露光し、ホログラム光学素子23を作製した以外は、実施の形態1と同様である。
【0112】
シリンドリカルレンズ72は、入射光(ここではミラー43を介して入射する光)をZX平面内でのみ集光する。したがって、ミラー43を介してシリンドリカルレンズ72に入射する光が略平行光であれば、YZ平面内ではシリンドリカルレンズ72から略平行光が出射され、ホログラム感光材料23aに照射される。一方、ZX平面内では、入射光がシリンドリカルレンズ72によって集光点Qに一旦集光された後、集光点Qから発散光となってホログラム感光材料23aに照射される。
【0113】
このとき、ZX平面内での露光時の集光点Qは、再生時の光学瞳と略同一位置であるが、YZ平面内での露光時の集光点は、再生時の光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置であって、ホログラム光学素子23から無限遠の位置と考えることができる。このように、一方の平面内(ZX平面内)でのみ参照光を集光する本実施形態においても、YZ平面内とZX平面内とで露光時の集光点(点光源の位置)が光軸方向に異なることになる。本実施形態では、再生時には、ホログラム光学素子23にて回折反射された所定波長の映像光は、YZ平面内では無限遠の位置に集光し、ZX平面内では集光点Qと同じ点に集光することになる。
【0114】
ZX平面とYZ平面とのうちで、所定波長の映像光の集光位置が光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の無限遠の位置にある面(YZ平面)内では、露光時にホログラム感光材料23aに入射する露光光線が略平行となる。したがって、本実施形態では、再生時に観察者の瞳位置が上記面内の一方向(ここではY方向)にずれても、露光光線の方向と同一の観察方向については、瞳位置の違いによって色ムラが発生するのを回避することができる。
【0115】
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1または2と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0116】
図10は、本実施形態における製造光学系50の詳細な構成を示す説明図であり、特に、YZ平面での光路およびZX平面での光路が明確になるように図示したものである。本実施形態では、製造光学系50の参照光側の光学系において、シリンドリカルレンズ71・72の配置を逆にし、露光時のYZ平面内での集光位置(集光点P)を再生時の光学瞳と略同一位置とし、ZX平面内での集光位置(集光点Q)を再生時の光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にしてホログラム感光材料23aを露光し、ホログラム光学素子23を作製した以外は、実施の形態1と同様である。
【0117】
このような製造光学系50では、ミラー43からの光(例えば平行光とする)は、YZ平面内では、シリンドリカルレンズ71のみによって集光点Pに集光され、そこからの発散光となってホログラム感光材料23aに照射される一方、ZX平面内では、シリンドリカルレンズ72のみによって集光点Qに集光され、そこからの発散光となってホログラム感光材料23aに照射される。
【0118】
ここで、ホログラム光学素子23を有する接眼光学系4によって形成される光学瞳は、光軸入射面に垂直な方向(X方向)よりも光軸入射面に平行な方向(Y方向)のほうが小さいので、Y方向に瞳位置がずれたときに生ずる色ムラはある程度許容される部分もある。したがって、このことを考えれば、Y方向には瞳重視の特性以外の他の特性を持たせることも可能である。
【0119】
そこで、本実施形態のように、X方向およびY方向のうちで、再生時における所定波長の映像光の集光位置が光学瞳と略同一位置にある面(YZ平面)に含まれる方向(Y方向)と、ホログラム光学素子23への光軸入射面に平行な方向とを一致させることにより、画角重視の特性を光軸入射面に平行な方向(Y方向)に持たせて、良好な映像を観察者に観察させることが可能となる。
【0120】
また、HMDにおいて、映像表示装置1を観察者の片眼または両眼に対応させて設ける場合、観察者ごとに瞳位置は水平方向に異なることから(眼幅が異なることから)、瞳位置のずれによって色ムラが発生するのと同様の原理により、観察者ごとに所定の観察方向における色の認識が相違する事態が発生する。しかし、本実施形態では、X方向およびY方向のうちで、再生時における所定波長の映像光の集光位置が光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にある面(ZX平面)に含まれる方向(X方向)と、観察者の眼幅方向とが一致しているので、観察者ごとに色の認識が異なる事態を低減することができ、同じ映像については誰が観察しても同じような色を認識させることができる。また、観察者は、映像表示装置1を両眼に対応して設けたときの映像観察時に、少ない眼幅調整量(光軸調整量)で良好な映像を観察できるという利点もある。したがって、本実施形態の構成は、特に、映像表示装置1を観察者の両眼に対応させて設ける場合に非常に有効となる。
【0121】
また、本実施形態の映像表示装置1を例えば横置きにした場合、つまり、X方向が垂直方向でY方向が水平方向となるように映像表示装置1を配置した場合は、実施の形態1と同様の観察特性を実現することができる。すなわち、本実施形態の構成では、露光時の参照光のYZ平面内での集光位置が再生時の光学瞳と略同一位置であるので、Y方向すなわち水平方向に画角重視の特性を持たせることができるとともに、X方向すなわち垂直方向に瞳重視の特性を持たせることができる。したがって、映像表示装置1を縦置きにするか、横置きにするかでも各方向の観察特性を異ならせることができる。
【0122】
なお、本実施形態の映像表示装置1においては、再生時に、所定の波長でホログラム光学素子23の1点から射出される光について、ZX平面内では、その光のホログラム光学素子23からの射出方向は、ホログラム光学素子23の同位置を通る主光線の方向とは異なる方向であり、その光は第1の点(集光点Qと同じ位置)近傍に集光されるが、YZ平面内では、その光のホログラム光学素子23からの射出方向は、ホログラム光学素子23の同位置を通る主光線の方向と略同じ方向であり、その光は第2の点(集光点Pと同じ位置)近傍に集光される。このとき、第1の点は、第2の点に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にあり、第2の点は光学瞳Eを含む面内に位置している。
【0123】
以上のことから、本実施形態の映像表示装置1は、以下のように表現することもできる。すなわち、本実施形態の映像表示装置1は、表示素子14と、表示素子14に生成された映像を拡大して観察瞳(光学瞳E)に導く拡大光学系(接眼光学系4)とを備え、拡大光学系は表示素子14からの映像光を観察瞳に向けて回折反射する体積位相型の反射型のホログラム光学素子23を備え、ホログラム光学素子23は、映像光の所定の波長に関して、光軸に垂直でかつ互いに直交する2つの方向のうちの一方の方向(X方向)を含む面内(ZX平面内)での回折光の射出方向は観察光路の主光線と異なった方向であり、その回折光は第1の点近傍に集光され、他方の方向(Y方向)を含む面内(YZ平面内)での回折光の射出方向は観察光路の主光線と略同じ方向であり、その回折光は第2の点近傍に集光され、第1の点は第2の点に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にあり、第2の点は光学瞳Eを含む面内に位置している構成である。なお、第1の点をホログラム光学素子23から無限遠に位置する点と考えれば、上記映像表示装置1は、後述する実施の形態4の映像表示装置1も概念的に含むものとなる。
【0124】
〔実施の形態4〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1〜3と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0125】
図11は、本実施形態における製造光学系50の詳細な構成を示す説明図であり、特に、YZ平面での光路およびZX平面での光路が明確になるように図示したものである。本実施形態では、製造光学系50の参照光側の光学系において、シリンドリカルレンズ72を削除する一方、シリンドリカルレンズ71を残してホログラム感光材料23aを露光し、ホログラム光学素子23を作製した以外は、実施の形態3と同様である。
【0126】
シリンドリカルレンズ71は、入射光(ここではミラー43を介して入射する光)をYZ平面内でのみ集光する。したがって、ミラー43を介してシリンドリカルレンズ71に入射する光が略平行光であれば、ZX平面内ではシリンドリカルレンズ71から略平行光が出射され、ホログラム感光材料23aに照射される。一方、YZ平面内では、入射光がシリンドリカルレンズ71によって集光点Pに一旦集光された後、集光点Pから発散光となってホログラム感光材料23aに照射される。
【0127】
このとき、YZ平面内での露光時の集光点Pは、再生時の光学瞳と略同一位置であるが、ZX平面内での露光時の集光点は、再生時の光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置であって、ホログラム光学素子23から無限遠の位置と考えることができる。このように、一方の平面内(YZ平面内)でのみ参照光を集光する本実施形態においても、YZ平面内とZX平面内とで露光時の集光点(点光源の位置)が光軸方向に異なることになる。本実施形態では、再生時には、ホログラム光学素子23にて回折反射された所定波長の映像光は、ZX平面内では無限遠の位置に集光し、YZ平面内では集光点Pと同じ点に集光することになる。
【0128】
ZX平面とYZ平面とのうちで、所定波長の映像光の集光位置が光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の無限遠の位置にある面(ZX平面)内では、露光時にホログラム感光材料23aに入射する露光光線が略平行となる。したがって、本実施形態では、再生時に観察者ごとに瞳位置が上記面内の一方向(ここではX方向)に異なる場合でも、露光光線の方向と同一の観察方向については、観察者ごとに色の認識が異なる事態を低減することができ、眼幅の異なる複数人の使用にも容易に対応することができる。
【0129】
〔実施の形態5〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1〜4と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0130】
図12は、本実施形態における製造光学系50の詳細な構成を示す説明図であり、特に、YZ平面での光路およびZX平面での光路が明確になるように図示したものである。本実施形態では、露光時のYZ平面内での集光位置(集光点P)を再生時の光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置とし、ZX平面内での集光位置(集光点Q)を集光点Pに対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にしてホログラム感光材料23aを露光し、ホログラム光学素子23を作製した以外は、実施の形態3と同様である。なお、上記のような集光位置は、例えばシリンドリカルレンズ71・72を光軸方向にずらす(ホログラム光学素子23とは反対側にずらす)、あるいはシリンドリカルレンズ71・72の光学的なパワーを適切に設定することにより実現することが可能である。
【0131】
このような製造光学系50では、ミラー43からの光(例えば平行光とする)は、YZ平面内では、シリンドリカルレンズ71のみによって集光点Pに集光され、そこからの発散光となってホログラム感光材料23aに照射される一方、ZX平面内では、シリンドリカルレンズ72のみによって集光点Qに集光され、そこからの発散光となってホログラム感光材料23aに照射される。したがって、再生時には、ホログラム光学素子23からの所定波長の映像光は、YZ平面内では集光点Pと同一位置に集光され、ZX平面内では集光点Qと同一位置に集光される。
【0132】
なお、再生時の映像光の集光位置のうちで、ホログラム光学素子23により近いほうの集光位置を第1の位置とし、ホログラム光学素子23からより遠いほうの集光位置を第2の位置とすると、本実施形態では、YZ平面内での集光位置が第1の位置となり、ZX平面内での集光位置が第2の位置となる。
【0133】
このように、再生時の所定波長の映像光の集光位置は、ZX平面およびYZ平面のうちの一方の面内(例えばYZ平面内)では光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の第1の位置であり、他方の面内(例えばZX平面内)では第1の位置に対してホログラム光学素子23とは反対側の第2の位置である。つまり、ZX平面およびYZ平面の両方の面内で映像光の集光位置が光学瞳とは異なった位置となっている。これにより、X方向およびY方向の一方の方向(例えば垂直方向となるY方向)では、映像観察の際に観察者の瞳が光学瞳面内でずれたとしても、瞳位置のずれによる色ムラを低減することができ、瞳重視の特性とすることができる。また、他方の方向(例えば水平方向となるX方向)では、眼幅の異なる複数人に映像表示装置1を使用させる場合でも、複数人の間で色の認識が異なる事態を低減することができ、眼幅重視の特性とすることができる。
【0134】
なお、本実施形態の映像表示装置1では、YZ平面およびZX平面の両方において、ホログラム光学素子23からの所定波長の映像光の集光位置(第1の位置、第2の位置)が光学瞳に対して光軸方向にずれている。したがって、再生時に、所定の波長でホログラム光学素子23の1点から射出される光について、YZ平面内では、その光のホログラム光学素子23からの射出方向は、ホログラム光学素子23の同位置を通る主光線の方向とは異なる方向であり、その光は第1の点近傍(第1の位置に対応する)に集光され、ZX平面内では、その光のホログラム光学素子23からの射出方向は、ホログラム光学素子23の同位置を通る主光線の方向とは異なる方向であり、その光は第2の点近傍(第2の位置に対応する)に集光される。このとき、第1の点および第2の点は、光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にそれぞれあり、第2の点は、さらに第1の点に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にある。
【0135】
以上のことから、本実施形態の映像表示装置1は、以下のように表現することもできる。すなわち、本実施形態の映像表示装置1は、表示素子14と、表示素子14に生成された映像を拡大して観察瞳(光学瞳E)に導く拡大光学系(接眼光学系4)とを備え、拡大光学系は表示素子14からの映像光を観察瞳に向けて回折反射する体積位相型の反射型のホログラム光学素子23を備え、ホログラム光学素子23は、映像光の所定の波長に関して、光軸に垂直でかつ互いに直交する2つの方向のうちの一方の方向(Y方向)を含む面内(YZ平面内)での回折光の射出方向は観察光路の主光線と異なった方向であり、その回折光は第1の点近傍に集光され、他方の方向(X方向)を含む面内(ZX平面内)での回折光の射出方向は観察光路の主光線と異なった方向であり、その回折光は第2の点近傍に集光され、第1の点および第2の点は光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にそれぞれあり、第2の点は、さらに第1の点に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置にある構成である。なお、第2の点をホログラム光学素子23から無限遠に位置する点と考えれば、上記映像表示装置1は、後述する実施の形態6の映像表示装置1も概念的に含むものとなる。
【0136】
なお、本実施形態では、YZ平面内での映像光の集光位置をZX平面内での映像光の集光位置よりも光学瞳に近い位置としているが、例えば露光時のシリンドリカルレンズ71・72の配置や光学的パワーの設定によって、これらの位置関係を逆にしてもよい。つまり、ZX平面内での映像光の集光位置をYZ平面内での映像光の集光位置よりも光学瞳に近い位置としてもよい。なお、この場合は、ZX平面内での映像光の集光位置は、光学瞳により近くなるため、第1の位置となり、YZ平面内での映像光の集光位置が第2の位置となる。この場合であっても、第1の位置および第2の位置が両方とも光学瞳から光軸方向にずれていることに変わりはないので、X方向およびY方向の一方の方向で瞳重視の特性とし、他方の方向で眼幅重視の特性とすることができる。
【0137】
〔実施の形態6〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1〜5と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0138】
図13は、本実施形態における製造光学系50の詳細な構成を示す説明図であり、特に、YZ平面での光路およびZX平面での光路が明確になるように図示したものである。本実施形態では、製造光学系50の参照光側の光学系において、シリンドリカルレンズ72を削除する一方、シリンドリカルレンズ71を残してホログラム感光材料23aを露光し、ホログラム光学素子23を作製した以外は、実施の形態5と同様である。
【0139】
シリンドリカルレンズ71は、入射光(ここではミラー43を介して入射する光)をYZ平面内でのみ集光する。したがって、ミラー43を介してシリンドリカルレンズ71に入射する光が略平行光であれば、ZX平面内ではシリンドリカルレンズ71から略平行光が出射され、ホログラム感光材料23aに照射される。一方、YZ平面内では、入射光がシリンドリカルレンズ71によって集光点Pに一旦集光された後、集光点Pから発散光となってホログラム感光材料23aに照射される。
【0140】
このとき、YZ平面内での露光時の集光点Pは、再生時の光学瞳に対してホログラム光学素子23とは反対側の位置であり、ZX平面内での露光時の集光点は、集光点Pよりもホログラム光学素子23とは反対側の位置であって、ホログラム光学素子23から無限遠の位置と考えることができる。したがって、再生時には、ホログラム光学素子23にて回折反射された所定波長の映像光は、YZ平面内では集光点Pと同じ点に集光し、ZX平面内ではホログラム光学素子23から無限遠の位置に集光することになる。
【0141】
なお、本実施形態では、YZ平面内での映像光の集光位置のほうが、ZX平面内での映像光の集光位置(無限遠)よりも光学瞳に近いので、前者の集光位置が第1の位置となり、後者の集光位置が第2の位置となる。
【0142】
以上のように、本実施形態では、第2の位置、つまり、ZX平面内での映像光の集光位置が、ホログラム光学素子23から無限遠の位置であるので、ZX平面内では、露光時にホログラム感光材料23aに入射する露光光線が略平行となる。したがって、複数人の観察者の眼幅がZX平面内に含まれる方向(X方向)に異なる場合でも、露光光線の方向と同一の観察方向については、複数人の間で色の認識が異なるのを確実に回避することができる。
【0143】
なお、先述の実施の形態5では、ZX平面内での映像光の集光位置をYZ平面内での映像光の集光位置よりも光学瞳に近い位置としてもよい旨を述べたが、この構成においても、本実施形態と同様の発想により、YZ平面内での映像光の集光位置をホログラム光学素子23から無限遠の位置とすることも可能である。つまり、露光時に一方のシリンドリカルレンズ71を削除し(シリンドリカルレンズ72のみによってZX平面内でのみ入射光を集光し)、YZ平面内で略平行光をホログラム感光材料23aに照射するようにしてもよい。なお、この場合、ZX平面内での映像光の集光位置は、光学瞳により近いため、第1の位置となり、YZ平面内での映像光の集光位置(無限遠)が第2の位置となる。この構成では、YZ平面内では、露光時にホログラム感光材料23aに入射する露光光線が略平行となるので、映像観察時に観察者の瞳位置がYZ平面内の方向(Y方向)にずれても、露光光線の方向と同一の観察方向については、瞳位置の違いによって色ムラが発生するのを確実に回避することができる。
【0144】
なお、上述した各実施の形態の構成や手法を適宜組み合わせて製造光学系50を設計し、ホログラム光学素子23を製造したり、そのホログラム光学素子23を用いて映像表示装置1やHMDを構成することも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、またはヘッドアップディスプレイ(HUD)のコンバイナとして用いられるカラーホログラム光学素子の製造、および映像表示装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の実施の一形態に係る映像表示装置において、再生時にホログラム光学素子にて回折反射される映像光の集光位置を示す説明図である。
【図2】上記映像表示装置が適用されるHMDの概略の構成を示す斜視図である。
【図3】上記映像表示装置の概略の構成を示す断面図である。
【図4】上記ホログラム光学素子を製造する際の露光光学系全体の概略の構成を示す説明図である。
【図5】上記露光光学系内の製造光学系の詳細な構成を示す説明図である。
【図6】再生時に光学瞳に入射する映像光の光線と露光時の参照光の光線とを併せて示す説明図である。
【図7】(a)は、2つの表示ユニットを観察者の両眼に対応して設けた映像表示装置およびそれを備えたHMDの概略の構成を模式的に示す正面図であり、(b)は、上記映像表示装置が備える調整機構の概略の構成を示す分解斜視図である。
【図8】(a)(b)(c)は、上記調整機構の他の構成例を示す各々の支持部材の正面図および平面図である。
【図9】本発明の他の実施の形態に係る映像表示装置のホログラム光学素子の製造に適用される製造光学系の詳細な構成を示す説明図である。
【図10】本発明のさらに他の実施の形態に係る映像表示装置のホログラム光学素子の製造に適用される製造光学系の詳細な構成を示す説明図である。
【図11】本発明のさらに他の実施の形態に係る映像表示装置のホログラム光学素子の製造に適用される製造光学系の詳細な構成を示す説明図である。
【図12】本発明のさらに他の実施の形態に係る映像表示装置のホログラム光学素子の製造に適用される製造光学系の詳細な構成を示す説明図である。
【図13】本発明のさらに他の実施の形態に係る映像表示装置のホログラム光学素子の製造に適用される製造光学系の詳細な構成を示す説明図である。
【図14】従来の映像表示装置における光路を展開して示す説明図である。
【符号の説明】
【0147】
1 映像表示装置
1R 表示ユニット
1L 表示ユニット
2 支持手段
4 接眼光学系(拡大光学系)
14 表示素子
23 ホログラム光学素子
23a ホログラム感光材料
81 調整機構(調整手段)
82 スライド部材
83 スライド部材
84 ボルト(固定手段)
85 ナット(固定手段)
86 支持部材(調整手段)
P 集光点
P’ 集光位置
Q 集光点
Q’ 集光位置
E 光学瞳
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示する表示素子と、
表示素子の表示映像の拡大虚像を観察者に提供する拡大光学系とを備え、この拡大光学系が、表示素子からの映像光を回折反射させて観察者の瞳に導く体積位相型の反射型ホログラム光学素子を有する映像表示装置であって、
表示素子の表示領域の中心と拡大光学系によって形成される光学瞳の中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とし、光軸に垂直でかつ互いに直交する2方向をそれぞれ第1の方向および第2の方向とし、光軸に平行でかつ第1の方向を含む面を第1の面とし、光軸に平行でかつ第2の方向を含む面を第2の面とすると、
ホログラム光学素子にて回折反射された所定波長の映像光の集光位置が、第1の面内と第2の面内とで光軸方向に異なることを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
ホログラム光学素子にて回折反射された所定波長の映像光の集光位置は、第1の面および第2の面のうちの一方の面内では光学瞳と略同一位置であり、他方の面内では光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の位置であることを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
第1の面および第2の面のうちで観察画角が広い面内における所定波長の映像光の集光位置が、光学瞳と略同一位置であることを特徴とする請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
観察者の側頭部に当接する支持手段で該映像表示装置が支持される場合に、第1の方向および第2の方向のうち、第1の面および第2の面のうちで所定波長の映像光の集光位置が光学瞳と略同一位置にある面に含まれる方向は、水平方向であることを特徴とする請求項2または3に記載の映像表示装置。
【請求項5】
上記表示素子と上記拡大光学系とを含む表示ユニットを観察者の両眼に対応して2つ有しており、
2つの表示ユニットの眼幅方向の間隔を調整する調整手段をさらに有していることを特徴とする請求項4に記載の映像表示装置。
【請求項6】
上記調整手段は、
互いに当接しながら眼幅方向に相対的にスライドする2つのスライド部材と、
2つのスライド部材を固定する固定手段とを有しており、
一方のスライド部材の一端は、一方の表示ユニットに固定されており、
他方のスライド部材の一端は、他方の表示ユニットに固定されており、
2つのスライド部材は、観察者の眼幅に対応した量だけ相対的にスライドして固定手段によって固定されることを特徴とする請求項5に記載の映像表示装置。
【請求項7】
上記調整手段は、2つの表示ユニットを所定の間隔で支持する互いに交換可能な複数の支持部材の中から選択される、観察者の眼幅に対応した長さの支持部材で構成されていることを特徴とする請求項5に記載の映像表示装置。
【請求項8】
第1の方向および第2の方向のうち、第1の面および第2の面のうちで所定波長の映像光の集光位置が光学瞳と略同一位置にある面に含まれる方向は、ホログラム光学素子への光軸入射面に平行な方向であることを特徴とする請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項9】
第1の方向および第2の方向のうち、第1の面および第2の面のうちで所定波長の映像光の集光位置が光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の位置にある面に含まれる方向は、観察者の眼幅方向であることを特徴とする請求項2または8に記載の映像表示装置。
【請求項10】
光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側にある所定波長の映像光の集光位置は、ホログラム光学素子から無限遠の位置であることを特徴とする請求項2から9のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項11】
ホログラム光学素子にて回折反射された所定波長の映像光の集光位置は、第1の面および第2の面のうちの一方の面内では光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の第1の位置であり、他方の面内では第1の位置に対してホログラム光学素子とは反対側の第2の位置であることを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項12】
第2の位置は、ホログラム光学素子から無限遠の位置であることを特徴とする請求項11に記載の映像表示装置。
【請求項13】
ホログラム光学素子は、表示素子からの映像光と外光とを同時に観察者の瞳に導くコンバイナであることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項14】
可干渉性を有する2光束でホログラム感光材料を露光することにより、体積位相型の反射型ホログラム光学素子を形成するホログラム光学素子の製造方法であって、
一方の露光光束は、軸非対称な波面を持つ光束であり、
他方の露光光束は、該光束に垂直な断面内で互いに直交する2方向のうちの一方向を含む面内における集光点が他方向を含む面内における集光点とは光軸方向に異なる位置となる光束であることを特徴とするホログラム光学素子の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の製造方法によって製造されることを特徴とするホログラム光学素子。
【請求項16】
映像を表示する表示素子と、
表示素子の表示映像の拡大虚像を観察者に提供する拡大光学系とを備え、この拡大光学系が、表示素子からの映像光を回折反射させて観察者の瞳に導く体積位相型の反射型ホログラム光学素子を有する映像表示装置であって、
上記ホログラム光学素子は、請求項15に記載のホログラム光学素子であることを特徴とする映像表示装置。
【請求項1】
映像を表示する表示素子と、
表示素子の表示映像の拡大虚像を観察者に提供する拡大光学系とを備え、この拡大光学系が、表示素子からの映像光を回折反射させて観察者の瞳に導く体積位相型の反射型ホログラム光学素子を有する映像表示装置であって、
表示素子の表示領域の中心と拡大光学系によって形成される光学瞳の中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とし、光軸に垂直でかつ互いに直交する2方向をそれぞれ第1の方向および第2の方向とし、光軸に平行でかつ第1の方向を含む面を第1の面とし、光軸に平行でかつ第2の方向を含む面を第2の面とすると、
ホログラム光学素子にて回折反射された所定波長の映像光の集光位置が、第1の面内と第2の面内とで光軸方向に異なることを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
ホログラム光学素子にて回折反射された所定波長の映像光の集光位置は、第1の面および第2の面のうちの一方の面内では光学瞳と略同一位置であり、他方の面内では光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の位置であることを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
第1の面および第2の面のうちで観察画角が広い面内における所定波長の映像光の集光位置が、光学瞳と略同一位置であることを特徴とする請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
観察者の側頭部に当接する支持手段で該映像表示装置が支持される場合に、第1の方向および第2の方向のうち、第1の面および第2の面のうちで所定波長の映像光の集光位置が光学瞳と略同一位置にある面に含まれる方向は、水平方向であることを特徴とする請求項2または3に記載の映像表示装置。
【請求項5】
上記表示素子と上記拡大光学系とを含む表示ユニットを観察者の両眼に対応して2つ有しており、
2つの表示ユニットの眼幅方向の間隔を調整する調整手段をさらに有していることを特徴とする請求項4に記載の映像表示装置。
【請求項6】
上記調整手段は、
互いに当接しながら眼幅方向に相対的にスライドする2つのスライド部材と、
2つのスライド部材を固定する固定手段とを有しており、
一方のスライド部材の一端は、一方の表示ユニットに固定されており、
他方のスライド部材の一端は、他方の表示ユニットに固定されており、
2つのスライド部材は、観察者の眼幅に対応した量だけ相対的にスライドして固定手段によって固定されることを特徴とする請求項5に記載の映像表示装置。
【請求項7】
上記調整手段は、2つの表示ユニットを所定の間隔で支持する互いに交換可能な複数の支持部材の中から選択される、観察者の眼幅に対応した長さの支持部材で構成されていることを特徴とする請求項5に記載の映像表示装置。
【請求項8】
第1の方向および第2の方向のうち、第1の面および第2の面のうちで所定波長の映像光の集光位置が光学瞳と略同一位置にある面に含まれる方向は、ホログラム光学素子への光軸入射面に平行な方向であることを特徴とする請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項9】
第1の方向および第2の方向のうち、第1の面および第2の面のうちで所定波長の映像光の集光位置が光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の位置にある面に含まれる方向は、観察者の眼幅方向であることを特徴とする請求項2または8に記載の映像表示装置。
【請求項10】
光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側にある所定波長の映像光の集光位置は、ホログラム光学素子から無限遠の位置であることを特徴とする請求項2から9のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項11】
ホログラム光学素子にて回折反射された所定波長の映像光の集光位置は、第1の面および第2の面のうちの一方の面内では光学瞳に対してホログラム光学素子とは反対側の第1の位置であり、他方の面内では第1の位置に対してホログラム光学素子とは反対側の第2の位置であることを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項12】
第2の位置は、ホログラム光学素子から無限遠の位置であることを特徴とする請求項11に記載の映像表示装置。
【請求項13】
ホログラム光学素子は、表示素子からの映像光と外光とを同時に観察者の瞳に導くコンバイナであることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項14】
可干渉性を有する2光束でホログラム感光材料を露光することにより、体積位相型の反射型ホログラム光学素子を形成するホログラム光学素子の製造方法であって、
一方の露光光束は、軸非対称な波面を持つ光束であり、
他方の露光光束は、該光束に垂直な断面内で互いに直交する2方向のうちの一方向を含む面内における集光点が他方向を含む面内における集光点とは光軸方向に異なる位置となる光束であることを特徴とするホログラム光学素子の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の製造方法によって製造されることを特徴とするホログラム光学素子。
【請求項16】
映像を表示する表示素子と、
表示素子の表示映像の拡大虚像を観察者に提供する拡大光学系とを備え、この拡大光学系が、表示素子からの映像光を回折反射させて観察者の瞳に導く体積位相型の反射型ホログラム光学素子を有する映像表示装置であって、
上記ホログラム光学素子は、請求項15に記載のホログラム光学素子であることを特徴とする映像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−299043(P2008−299043A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144643(P2007−144643)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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