説明

ホログラム記録装置及びホログラム記録方法並びに光ディスク記録装置及び光ディスク記録方法

【課題】光ビームの出射強度を変化させることなくホログラムの形成の可否を制御し得るようにする。
【解決手段】ホログラム記録再生装置20は、可干渉性制御部22によって光ビームL1の可干渉性を制御することにより、記録媒体28内に照射する光ビームL1A及びL1Bを干渉させるか否かを切り換えることができるので、光源21による光ビームL1の照射状態を変化させることなく、当該記録媒体28内にホログラムを記録させるか否かを切り換えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホログラム記録装置及びホログラム記録方法並びに光ディスク記録装置及び光ディスク記録方法に関し、例えば光ディスクにホログラムを記録する光ディスク装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスク装置においては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)及びBlu−ray Disc(登録商標、以下BDと呼ぶ)等、光ディスクに対して光ビームを照射し、その反射光を読み取ることにより情報を再生するようになされたものが広く普及している。
【0003】
またかかる従来の光ディスク装置では、当該光ディスクに対して光ビームを照射することにより、当該光ディスクの局所的な反射率等を変化させることにより、情報の記録を行うようになされている。
【0004】
この光ディスクに関しては、当該光ディスク上に形成される光スポットの大きさは、およそλ/NA(λ:光ビームの波長、NA:開口数)で与えられ、解像度もこの値に比例することが知られている。例えば、直径120[mm]の光ディスクにおよそ26[GB]のデータを記録し得るBDの詳細については、非特許文献1に示されている。
【0005】
ところで光ディスクには、音楽コンテンツや映像コンテンツ等の各種コンテンツ、或いはコンピュータ用の各種データ等のような種々の情報が記録されるようになされている。特に近年では、映像の高精細化や音楽の高音質化等により情報量が増大し、また1枚の光ディスクに記録するコンテンツ数の増加が要求されているため、当該光ディスクのさらなる大容量化が要求されている。
【0006】
そこで、1枚の光ディスク内で記録層を重ねることにより、1枚の光ディスクにおける記録容量を増加させる手法も提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0007】
一方、光ディスクに対する情報の記録手法として、ホログラムを用いた光ディスク装置も提案されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0008】
例えば図1に示すように、光ディスク装置1は、照射された光強度によって屈折率が変化するフォトポリマ等でなる光ディスク8中に、光学ヘッド7から一旦光ビームを集光し、その後光ディスク8の裏面側(図1では下側)に設けられた反射装置9を用いて、もう一度逆方向から光ビームを同一焦点位置に集光するようになされている。
【0009】
光ディスク装置1は、レーザ2からレーザ光でなる光ビームを出射させ、音響光学変調器3によりその光波を変調し、コリメータレンズ4により平行光に変換する。続いて光ビームは、偏光ビームスプリッタ5を透過し、1/4波長板6により直線偏光から円偏光に変換されてから、光学ヘッド7へ入射される。
【0010】
光学ヘッド7は、情報の記録及び再生を行い得るようになされており、光ビームをミラー7Aにより反射し、対物レンズ7Bにより集光して、スピンドルモータ(図示せず)により回転されている光ディスク8に照射する。
【0011】
このとき光ビームは、光ディスク8の内部で一旦合焦されてから、当該光ディスク8の裏面側に配置された反射装置9によって反射され、当該光ディスク8の裏面側から光ディスク8の内部における同一焦点に集光される。因みに反射装置9は、集光レンズ9A、シャッタ9B、集光レンズ9C及び反射ミラー9Dにより構成されている。
【0012】
この結果、図2(A)に示すように、光ビームの焦点位置に定在波が生じ、全体的に2つの円錐体を互いの底面同士で貼り合わせたような形状でなる、光スポットサイズの小さなホログラムでなる記録マークRMを形成する。かくしてこの記録マークRMが情報として記録される。
【0013】
光ディスク装置1は、光ディスク8の内部にこの記録マークRMを複数記録する際、当該光ディスク8を回転させ各記録マークRMを同心円状又は螺旋状のトラックに沿って配置することにより一つのマーク記録層を形成し、さらに光ビームの焦点位置を調整することにより、マーク記録層を複数層重ねるように各記録マークRMを記録することができる。
【0014】
これにより光ディスク8は、内部に複数のマーク記録層を有する多層構造となる。例えば光ディスク8は、図2(B)に示すように、記録マークRM間の距離(マークピッチ)p1が1.5[μm]、トラック間の距離(トラックピッチ)p2が2[μm]、層間の距離p3が22.5[μm]となっている。
【0015】
また光ディスク装置1は、記録マークRMが記録されたディスク8から情報を再生する場合、反射装置9のシャッタ9Bを閉じ、光ディスク8の裏面側から光ビームを照射しないようにする。
【0016】
このとき光ディスク装置1は、光学ヘッド7によって光ディスク8中の記録マークRMへ光ビームを照射し、当該記録マークRMから発生する再生光ビームを当該光学ヘッド7へ入射させる。この再生光ビームは、1/4波長板6により円偏光から直線偏光に変換され、偏光ビームスプリッタ5により反射される。さらに再生光ビームは、集光レンズ10により集光され、ピンホール11を介してフォトディテクタ12へ照射される。
【0017】
光ディスク装置1は、このときフォトディテクタ12により再生光ビームの光量を検出し、その検出結果を基に情報を再生する。
【0018】
また図1と対応する部分に同一符号を附した図3に示す光ディスク装置13のように、記録処理の際、単一の光源から出射された1本の光ビームを2本の記録用の光ビームに分離し、その反射光を基に従来の光ディスク装置と同様の位置制御を行いながらホログラムを形成するようになされたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0019】
この光ディスク装置13では、レーザダイオード14から出射した光ビームをコリメータレンズ4によって平行光に変換し、ビームスプリッタ5Aによって2つの光ビーム(第1光ビーム及び第2光ビーム)に分離する。
【0020】
光ディスク装置13は、ビームスプリッタ5Aを透過した第1光ビームをビームスプリッタ5B及び5Cを介して対物レンズ7Bに入射する。対物レンズ7Bは、第1光ビームを集光し光ディスク8の第1面8A側へ照射する。
【0021】
このとき光ディスク装置13は、第1光ビームが光ディスク8における基板8C及び誘電体層8Dとの界面によって反射されてなる第1反射光ビームの一部を対物レンズ7B、ビームスプリッタ5C及び5B、シリンドリカルレンズ18を介してフォトディテクタ12Bによって受光し、受光量に応じた検出信号をマトリックスアンプ19によって増幅すると共に、増幅した検出信号に基づいてサーボ制御信号を生成する。
【0022】
そして光ディスク装置13は、サーボ制御信号に基づいてアクチュエータ7Baを駆動することにより、対物レンズ7Bを変位させるようになされている。
【0023】
一方、光ディスク装置13は、ビームスプリッタ5Aによって反射された第2光ビームをミラー15A、15B、15C及び15Dを介して凸レンズ7Cに入射する。凸レンズ7Cは、第2光ビームを集光して光ディスク8の第2面8B側から光ディスク8に入射する。
【0024】
このとき光ディスク装置13では、第1光ビーム及び第2光ビームが重なる部分(斜線で示す)が干渉してホログラムでなる記録マークRMを形成する。かくしてこの記録マークRMが記録層8Eに情報として記録される。
【0025】
また光ディスク装置13は、再生処理の際、第2光ビームの光路上に設置されたシャッタ16によって当該第2光ビームを遮断すると共に、第1光ビームが光ディスク8に記録された記録マークRMによって反射されることにより生成される再生光ビームを対物レンズ7B、ビームスプリッタ5C、凹レンズ17、集光レンズ10及びピンホール板11を介してフォトディテクタ12Aによって受光する。
【0026】
光ディスク装置1は、このときフォトディテクタ12により再生光ビームの光量を検出し、その検出結果を基に情報を再生するようになされている。
【0027】
例えば光ディスク装置13は、情報を2進数で表したときの符号「1」に対応してレーザダイオード14を発光させ記録マークRMを記録し、符号「0」に対応してレーザダイオード14を消灯させ記録マークRMを記録しないようになされている。これにより光ディスク装置13は、再生時に、記録マークRMの有無を基に符号「0」又は「1」を認識し、元の情報を再生し得るようになされている。
【非特許文献1】Y.Kasami,Y.Kuroda, K.Seo, O.Kawakubo, S.Takagawa, M.Ono, and M.Yamada, Jpn. J. Appl.Phys., 39, 756(2000)
【非特許文献2】I.Ichimura etal, Technical Digest of ISOM’04, pp52,Oct.11-15, 2005, Jeju Korea
【非特許文献3】R. R. McLeod etal.,“Microholographicmultilayer optical disk data storage,” Appl. Opt., Vol. 44, 2005, pp3197
【特許文献1】特許第3452106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
ところで光ディスク装置13では、第1反射光ビームの一部を基に位置制御を行うため、記録すべき符号が「1」のときには適切に位置制御を行い得るものの、記録すべき符号が「0」のときには第1光ビームが光ディスク8に照射されないため位置制御を行うことができなくなる。
【0029】
特に光ディスク装置13は、記録すべき符号として「0」が連続した場合、その間位置制御を全く行うことができなくなるため、次に符号が「1」となったときに記録マークRMを不適切な位置に記録してしまう危険性があるという問題があった。
【0030】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、光ビームの出射強度を変化させることなくホログラムの形成の可否を制御し得るホログラム記録装置及びホログラム記録方法、並びに同一光源から出射される光ビームを用いて情報記録及び位置制御を行う際に安定して位置制御を行い得る光ディスク記録装置及び光ディスク記録方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
かかる課題を解決するため本発明のホログラム記録装置及びホログラム記録方法においては、照射される光の強度に応じて屈折率が変化する記録媒体内の所望記録位置に対し、所定の光源から出射される光ビームを分離し互いに異なる方向からそれぞれ集光し、光源から出射され分離される前の光ビームの可干渉性を制御することにより、所望記録位置にホログラムを形成するか否かを切り換えるようにした。
【0032】
これにより、光源から所定強度の光ビームを出射させたまま、所望記録位置にホログラムを形成するか否かを制御することができる。
【0033】
また本発明の光ディスク記録装置及び光ディスク記録方法においては、所定の光源から出射された光ビームを位置制御用の位置制御光ビーム並びに情報記録用の第1記録光ビーム及び第2記録光ビームを分離し、略円盤状に形成されると共に、照射される光の強度に応じて屈折率が変化する記録層と記録媒層における位置を識別するため当該記録部内に設けられた位置識別層とを有する光ディスクの一面側から、第1対物レンズにより位置制御光ビームを集光し、当該位置制御光ビームが位置識別層により反射されてなる反射光ビームの受光結果を基に当該位置制御光ビームの焦点を位置識別層における所望識別位置に合わせるよう当該第1対物レンズを位置制御すると共に、第2対物レンズにより第2光ビームの焦点を集光したときに、当該第1対物レンズにより第1光ビームが合焦される所望記録位置に第2光ビームの焦点を合わせるよう当該第2対物レンズの位置を制御し、光源から出射された光ビームの可干渉性を制御することにより、所望記録位置にホログラムを形成するか否かを切り換えるようにした。
【0034】
これにより、ホログラムを形成するか否かに拘わらず、光ディスクの位置識別層に対して一定の光量でなる位置制御光ビームを常時照射することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、光源から所定強度の光ビームを出射させたまま、所望記録位置にホログラムを形成するか否かを制御することができ、かくして光ビームの出射強度を変化させることなくホログラムの形成の可否を制御し得るホログラム記録装置及びホログラム記録方法を実現できる。
【0036】
また本発明によれば、ホログラムを形成するか否かに拘わらず、光ディスクの位置識別層に対して一定の光量でなる位置制御光ビームを常時照射することができ、かくして同一光源から出射される光ビームを用いて情報記録及び位置制御を行う際に安定して位置制御を行い得る光ディスク記録装置及び光ディスク記録方法を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0038】
(1)第1の実施の形態
(1−1)ホログラム記録再生装置の構成
図4において、第1の実施の形態におけるホログラム記録再生装置20は、記録媒体28内で2本の光ビームを干渉させることにより、ホログラムを記録し得るようになされている。
【0039】
ホログラム記録再生装置20は、図示しない外部機器から情報の記録指示を受けると、光源21からレーザ光でなる光ビームL1を出射させ、可干渉性制御部22へ入射させる。可干渉性制御部22は、当該光ビームL1の可干渉性(詳しくは後述する)を制御して光ビーム照射部23のビームスプリッタ24へ入射させる。
【0040】
ビームスプリッタ24は、光ビームL1を所定の光量比(例えば約50%)で透過させて光ビームL1Aとし、これをビームスプリッタ25Aへ入射させる。ビームスプリッタ25は、光ビームL1Aを所定の割合で透過させ記録媒体28へ入射させる。
【0041】
またビームスプリッタ24は、光ビームL1のうち残り部分(例えば約50%)を反射して光ビームL1Bとし、これをミラー26及び27により順次反射させることにより、光ビームL1Aと異なる方向から記録媒体28へ入射させる。
【0042】
記録媒体28は、例えば光重合型フォトポリマでなり、その内部にモノマが均一に分散している。この記録媒体28は、光が照射されると、照射箇所においてモノマが重合する(すなわち光重合する)ことによりポリマ化し、これに伴い屈折率が変化するといった性質を有している。また記録媒体28は、光の照射によりポリマ同士の間に「橋架け」を行い分子量を増加させる、いわゆる光架橋が生じることにより、さらに屈折率が変化する場合もある。
【0043】
因みにホログラム記録再生装置20は、図中に示したビームスプリッタ24等に加えて、実際にはコリメータレンズや対物レンズ、或いは波長板等の各種光学素子も設けられているが、説明の都合上省略している。
【0044】
ところで可干渉性制御部22は、図2に示すように、回折素子22A、圧電素子22B及び圧電制御回路22Cを有している。
【0045】
回折素子22Aは、光源21内に設けられたレーザダイオード21Aから出射される光ビームL0を回折し当該レーザダイオード21A内へ戻し得るようになされている。また回折素子22Aは、レーザダイオード21Aとの間の距離d1が、光ビームL1の波長をλとしたときの半波長(λ/2)の整数倍となるように配置されている。
【0046】
このとき可干渉性制御部22は、光ビームL1をレーザダイオード21A内へ戻すことにより、レーザ光でなる光ビームL1の波長を、図6(A)に示すように広がった分布状態から、図6(B)に示すように範囲を狭めた分布状態にすることになる。
【0047】
すなわち可干渉性制御部22は、光源21と共にいわゆる外部共振器型の半導体レーザを構成することになり、これにより光ビームL1の波長の精度、すなわちその逆数である周波数の精度を高め、当該光ビームL1における可干渉性を向上させることができる(以下、このときの回折素子22Aの状態を可干渉状態と呼ぶ)。
【0048】
この結果、ホログラム記録再生装置20は、記録媒体28内で光ビームL1A及びL1Bを干渉させることができる。
【0049】
ここで図7(A)に模式的に示すように、記録媒体28内では、光ビームL1A及びL1Bによる干渉縞における、光の強度が強い部分のみにおいてモノマの重合等が生じ、当該干渉縞が記録されることになる。この干渉縞は、図7(A)と対応する図7(B)に示すように、位置に応じて光の屈折率が急峻に変化するため、ホログラムとして作用することになる。これは、一般に、屈折率が大きく異なる境界面では光の反射率が高くなるためである。
【0050】
ところで回折素子22Aは、圧電素子22Bを介して所定のシャーシに取り付けられている。この圧電素子22Bは、電圧制御回路22Cにより所定電圧が印加されると、その厚さを僅かに変化させる性質を有しており、当該厚さを変化させることにより、回折素子22Aの角度を僅かに変化させる。
【0051】
この場合、図6(A)に示したように、光ビームL1の可干渉性が低下する。この結果、ホログラム記録再生装置20は、記録媒体28内において光ビームL1A及びL1Bを干渉させないことになる(以下、このときの回折素子22Aの状態を非干渉状態と呼ぶ)。
【0052】
この場合、図7(A)と対応する図8(A)に示すように、記録媒体28内では、光ビームL1A及びL1Bによる光の強度に応じてモノマの重合等が部分的に生じる。しかしながらこの場合、図8(A)と対応する図8(B)に示すように、屈折率が緩やかに変化するため、光の反射率を高めることはなく、ホログラムとして作用しない。
【0053】
すなわち可干渉性制御部22は、圧電素子22Bに所定電圧を印加しない場合、回折素子22Aを可干渉状態として光ビームL1の可干渉性を高めることにより、記録媒体28内に干渉縞(すなわちホログラム)を記録させることができる。
【0054】
一方、可干渉性制御部22は、圧電素子22Bに所定電圧を印加した場合、回折素子22Aを非干渉状態として光ビームL1の可干渉性を低減させることにより、記録媒体28内への干渉縞の記録を抑止する。
【0055】
このようにホログラム記録再生装置20は、可干渉性制御部22の回折素子22Aを干渉状態又は非干渉状態に制御することにより、記録媒体28に対して光ビームL1A及びL2Aを照射したまま、ホログラムを形成するか否かを切り換え得るようになされている。
【0056】
例えばホログラム記録再生装置20は、記録媒体28の所望箇所に対し、記録すべき情報を2進数に符号化したときの符号「1」に応じてホログラムを形成すると共に符号「0」に応じて当該ホログラムを形成しないことにより、当該記録すべき情報を記録することができる。
【0057】
またホログラム記録再生装置20は、情報を再生する際、図示しない光路遮断機により光ビームL1Bを遮断し、光ビームL1Aのみを所望箇所に照射する。因みにホログラム記録再生装置20は、情報の再生時には、光源21から出射する光ビームL1の強度を記録時よりも弱めることにより、光ビームL1Aによって既存のホログラムを破壊しないようになされている。
【0058】
このときホログラム記録再生装置20は、記録媒体28のホログラムが形成されている箇所のみから発生する再生光ビームL2Aを、ビームスプリッタ25により反射させ受光素子29により受光する。この結果、ホログラム記録再生装置20は、記録媒体28に記録された情報を再生することができる。
【0059】
(1−2)動作及び効果
以上の構成においてホログラム記録再生装置20は、可干渉性制御部22の圧電素子22Bに所定電圧を印加せず回折素子22Aを可干渉状態とする場合、光源21及び当該可干渉性制御部22により外部共振器型の半導体レーザを構成し光ビームL1の可干渉性を高めることにより、記録媒体28内で光ビームL1A及びL1Bを干渉させて干渉縞(すなわちホログラム)を記録させる。
【0060】
一方、ホログラム記録再生装置20は、可干渉性制御部22の圧電素子22Bに所定電圧を印加して回折素子22Aを非干渉状態とした場合、光ビームL1の可干渉性を低減させることにより、記録媒体28に光ビームL1A及びL1Bを照射したまま干渉縞の記録を抑止する。
【0061】
従ってホログラム記録再生装置20は、可干渉性制御部22の圧電素子22Bに対し所定電圧を印加するか否かを制御することにより、光源21から出射する光ビームL1を変化させず記録媒体28に光ビームL1A及びL1Bを照射したまま、ホログラムを記録するか否かを切り換えることができる。
【0062】
ところで、一般的なホログラム記録装置においては、光源21から光ビームL1を出射させるか否かを切り換え、或いは光ビームL1を遮断する光路遮断機(図示せず)により光路を遮断するか否かを切り換えることによりホログラムを記録するか否かを切り換えるものがある。
【0063】
かかるホログラム記録装置では、連続する情報に基づき複数のホログラムを連続的に形成するような場合に、光源21における変調周波数により記録の速さ(すなわちいわゆる転送レート)が定まることになり、当該転送レートを高めるには光源21又は光路遮断機等の変調周波数を高める必要がある。
【0064】
これに対し本願発明によるホログラム記録再生装置20は、光源21の変調周波数を高める必要は無く、可干渉性制御部22の応答速度、すなわち圧電素子22Bの動作速度を高めることにより、転送レートを上げることができる。
【0065】
このためホログラム記録再生装置20は、光源21の選定条件から変調周波数の高さを除外することができるので、例えば光量が多く、又は発光効率が高く、或いは可干渉性が良好であるものの、変調周波数が低いために従来のホログラム記録装置では採用し得なかったような光源についても、光源21として利用することが可能となる。
【0066】
以上の構成によれば、ホログラム記録再生装置20は、可干渉性制御部22によって光ビームL1の可干渉性を制御することにより、記録媒体28内に照射する光ビームL1A及びL1Bを干渉させるか否かを切り換えることができるので、光源21による光ビームL1の照射状態を変化させることなく、当該記録媒体28内にホログラムを記録させるか否かを切り換えることができる。
【0067】
(2)第2の実施の形態
(2−1)光ディスクの構成
【0068】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態における記録媒体28に代えて、図9(A)及び(B)に示す光ディスク100に対して情報が記録され、また当該光ディスク100から情報が再生されるようになされている。
【0069】
光ディスク100は、図9(A)に外観図を示すように、全体として略円盤状に形成されており、その中央に孔部100Hが設けられている。この孔部100Hは、光ディスク100が回転駆動される際、回転軸に対する位置決め等に用いられるようになされている。
【0070】
また光ディスク100は、図9(B)に断面図を示すように、情報を記録するための記録層101を中心に有しており、基板102及び103により当該記録層101を両面から挟むように構成されている。
【0071】
基板102及び103は、例えばポリカーボネイトやガラス等の材料により構成されており、いずれも一面から入射される光をその反対面へ高い透過率で透過させるようになされている。また基板102及び103は、ある程度の強度を有しており、記録層101を保護する役割も担うようになされている。
【0072】
因みに光ディスク100は、厚さ方向に関して記録層101を中心としたほぼ対称な構造となっており、全体として経年変化等による反りや歪み等の発生を極力抑えるようにも配慮されている。なお基板102及び103の表面については、無反射コーティングにより不要な反射が防止されるようになされていても良い。
【0073】
記録層101は、記録媒体28(図4)と同様、照射された光強度によって屈折率が変化するフォトポリマ等でなり、波長405[nm]でなる青色光ビームに反応するようになされている。
【0074】
実際上、光ディスク100は、情報の記録時及び再生時に、対物レンズ38により光ビームL1A及びL1Bが集光され照射されるようになされている(詳しくは後述する)。
【0075】
また光ディスク100は、記録層101と基板102との境界面に反射透過層としての反射透過膜104を有している。反射透過膜104は、誘電体多層膜等でなり、光ビームL1Bのうち所定の割合(例えば約10%)を反射すると共に残り(例えば約90%)を透過するように構成されている。
【0076】
反射透過膜104は、トラッキングサーボ用の案内溝を形成しており、具体的には、一般的なBD−R(Recordable)ディスク等と同様のランド及びグルーブにより螺旋状のトラックを形成している。このトラックには、所定の記録単位ごとに一連の番号でなるアドレスが付されており、情報を記録又は再生するトラックを当該アドレスにより特定し得るようになされている。
【0077】
なお反射透過膜104(すなわち記録層101と基板102との境界面)には、案内溝に代えてピット等が形成され、或いは案内溝とピット等とが組み合わされていても良く、要は光ビームを用いてアドレスを認識し得れば良い。
【0078】
反射透過膜104は、基板102側から所定の位置制御光ビームL1Cが照射された場合、これを所定の割合で当該基板102側へ反射する。以下、このとき反射された光ビームを位置制御反射光ビームL2Cと呼ぶ。
【0079】
位置制御反射光ビームL2Cは、例えば光ディスク装置において、目標とするトラック(以下、これを目標トラックと呼ぶ)に対して、対物レンズ38により集光された位置制御反射光ビームL2Cの焦点FCを合わせるための、当該対物レンズ38の位置制御(すなわちフォーカス制御及びトラッキング制御)に用いられることが想定されている。
【0080】
実際上、光ディスク100は、情報が記録される際、図5に示したように、位置制御された対物レンズ38により位置制御光ビームL1Cが集光され、反射透過膜104の目標トラックに合焦される。
【0081】
また、位置制御光ビームL1Cと光軸Lxを共有し当該対物レンズ38により集光された光ビームL1Bが、基板102及び反射透過膜104を透過し、記録層101内における当該目標トラックの裏側(すなわち基板103側)に相当する位置に合焦される。このとき光ビームL1Bの焦点FBは、対物レンズ38を基準として、共通の光軸Lx上における焦点FCよりも遠方に位置することになる。
【0082】
さらに光ディスク100は、基板103側から、光ビームL1Aが対物レンズ47により集光され、光ビームL1Bと同一の焦点FBに集光されるようになされている。
【0083】
このとき光ディスク100は、第1の実施の形態と同様、光ビームL1A及びL1Bの可干渉性が高められていれば、焦点FBの位置にホログラムを形成し(以下、このホログラムを記録マークRMとも呼ぶ)、また当該光ビームL1A及びL1Bの可干渉性が低減されていれば、焦点FBの位置にホログラムを形成しない。
【0084】
因みに記録マークRMは、直径RMrが約1.0[μm]、高さRMhが約9.7[μm]となっている。
【0085】
さらに光ディスク100は、記録層101の厚さが記録マークRMの高さRMhよりも充分に大きくなるよう設計されている。このため光ディスク100は、記録層101内における記録反射膜104からの距離(以下、これを深さdと呼ぶ)が切り換えられながら記録マークRMが記録されることにより、複数のマーク記録層を当該光ディスク100の厚さ方向に重ねた多層記録を行い得るようになされている。
【0086】
この場合、光ディスク100の記録層101内において、青色光ビームLb1の焦点Fb1の深さdが調整されることにより、記録マークRMの深さdが変更されることになる。例えば光ディスク100は、記録層101の厚さが0.3[mm]であった場合、記録マークRM同士の相互干渉等を考慮してマーク記録層同士の距離p3が約15[μm]に設定されれば、記録層101内に約20層のマーク記録層を形成することができる。なお距離p3については、約15[μm]とする以外にも、記録マークRM同士の相互干渉等を考慮した上で他の種々の値としても良い。
【0087】
また光ディスク100は、情報が再生される場合、当該情報を記録したときと同様、対物レンズ38により位置制御光ビームL1Cが反射透過膜104の目標トラックに合焦するよう、当該対物レンズ38が位置制御されるようになされている。
【0088】
この場合、光ディスク100は、対物レンズ38と連動する対物レンズ47を介し基板103を透過した光ビームL1Aの焦点FAが記録層101内における目標マーク位置PSに合焦されるようになされている。
【0089】
ここで目標マーク位置PSに記録マークRMが記録されている場合、当該記録マークRMはホログラムとしての性質を呈する。このため記録層101の当該目標マーク位置PSからは、再生光ビームL2Aが発生する。
【0090】
この再生光ビームL2Aは、記録時に照射された光ビームL1Bと同等の光学特性を有しており、当該光ビームL1Bと同じ方向へ、すなわち記録層101内から基板103側へ発散しながら進むことになる。
【0091】
一方、目標マーク位置PSに記録マークRMが記録されていない場合、記録層101の目標マーク位置PSは、ホログラムとしての性質を呈さない。このため当該目標マーク位置PSからは、再生光ビームL2Aが発生しない。
【0092】
このように光ディスク100は、記録済みの情報が再生される場合、記録層101内において光ビームL1Aの焦点FAが目標マーク位置PSに合焦されることにより、当該目標マーク位置PSにおける記録マークRMの有無に応じて、再生光ビームL2Aを発生するか否かが変化するようになされている。
【0093】
(2−2)光ディスク装置の構成
図4との対応部分に同一符号を付した図10に示すように、第2の実施の形態における光ディスク装置30は、ホログラム記録再生装置20と一部類似した構成を有しており、全体として光ディスク100にホログラムを用いて情報を記録し、また当該光ディスク100から情報を再生するようになされている。
【0094】
光源21は、第1の実施の形態と同様、内部のレーザダイオード21A(図5)から発散光でなる光ビームL1を出射し、コリメータレンズ31に入射させる。コリメータレンズ31は、光ビームL1を発散光から平行光に変換し、これを可干渉性制御部22へ入射させる。
【0095】
可干渉性制御部22は、第1の実施の形態と同様、光源21のレーザダイオード51との間で外部共振器型の半導体レーザを構成し、圧電素子22B(図5)に印加する電圧を電圧制御回路22Cによって制御することにより光ビームL1の可干渉性を制御した上で、1/2波長板32により当該光ビームL1の偏光方向を調整し、偏光ビームスプリッタ33へ入射させる。
【0096】
偏光ビームスプリッタ33は、光ビームL1の偏光方向に応じてその一部を反射して位置制御光ビームL1Cとし、これをミラー34及び偏光ビームスプリッタ35により順次反射させ、さらにビームスプリッタ36によりその一部を反射させて1/4波長板37へ入射させる。
【0097】
1/4波長板37は、位置制御光ビームL1Cを直線偏光から円偏光に変換し、対物レンズ38へ入射させる。対物レンズ38は、位置制御光ビームL1Cを光ディスク100の反射透過膜104へ照射する。
【0098】
このとき位置制御光ビームL1Cは、反射透過膜104によりその一部が反射されて位置制御反射光ビームL2Cとなり、対物レンズ38へ再度入射する。このとき位置制御反射光ビームL2Cは、反射透過膜104での反射によって円偏光の旋回方向が反転される。
【0099】
その後位置制御反射光ビームL2Cは、1/4波長板37により直線偏光に変換され、ビームスプリッタ36へ入射される。このとき位置制御反射光ビームL2Cは、円偏光の旋回方向が元の位置制御光ビームL1Cの反対方向であるため、当該位置制御光ビームL1Cと直交するような直線偏光に変換される。
【0100】
位置制御反射光ビームL2Cは、ビームスプリッタ36においてその一部が反射されて偏光ビームスプリッタ35へ入射し、その偏光方向により当該偏光ビームスプリッタ35を透過し、集光レンズ39により集光されてサーボ信号検出部40へ照射される。
【0101】
サーボ信号検出部40は、フォトディテクタ(図示せず)等により位置制御反射光ビームL2Cを受光し、その受光結果を基に、位置制御光ビームL1Cの焦点FCと目標トラックとの間におけるフォーカス方向のずれ量を表すフォーカスエラー信号、及びトラッキング方向のずれ量を表すトラッキングエラー信号を生成する。
【0102】
光ディスク装置30は、このフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を基に、対物レンズ36をフォーカス方向(すなわち光ディスク100に近接させ又は離隔させる方向)及びトラッキング方向(すなわち光ディスクの内周側又は外周側へ向かう方向)へ駆動制御する(以下、これをサーボ制御と呼ぶ)。
【0103】
この結果、光ディスク装置30は、位置制御光ビームL1Cの焦点FCを光ディスク100の所望トラックに追従させることができる。
【0104】
ところで偏光ビームスプリッタ33を透過した光ビームL1Tは、1/2波長板41により再度偏光方向が調整偏光ビームスプリッタ42へ入射される。偏光ビームスプリッタ42は、光ビームL1Tの偏光方向に応じて、当該光ビームL1Tを所定の光量比(例えば約50%)で透過させて光ビームL1Aとし、これを偏光ビームスプリッタ43へ入射させる。
【0105】
偏光ビームスプリッタ43は、光ビームL1Aをその偏光方向に応じて透過させ、リレーレンズ44へ入射させる。リレーレンズ44は、光ビームL1Aの光軸に沿って移動可能な可動レンズ44A及び固定された固定レンズ44Bが組み合わされており、可動レンズ44Aにより光ビームL1Aを一度収束させた後再び発散させ、固定レンズ44Bにより発散角を変更した上で、1/4波長板45へ入射させる。
【0106】
1/4波長板45は、光ビームL1Aを直線偏光から円偏光へ変換し、対物レンズ46へ入射させる。対物レンズ46は、光ビームL1Aを集光し、その焦点FAを光ディスク100の記録層101内に位置させる。
【0107】
一方、偏光ビームスプリッタ42は、光ビームL1Tの偏光方向に応じて当該光ビームL1Tを所定の光量比(例えば約50%)で反射させ光ビームL1Bとし、これをミラー51へ入射させる。光ビームL1Bは、ミラー51により反射され、シャッタ52を介してミラー53及び54により順次反射され、リレーレンズ55へ入射される。
【0108】
リレーレンズ55は、リレーレンズ44と同様に構成されており、光ビームL1Bの光軸に沿って移動可能な可動レンズ55A及び固定された固定レンズ55Bが組み合わされている。このためリレーレンズ55は、可動レンズ55Aにより光ビームL1Bを一度収束させた後再び発散させ、固定レンズ55Bにより発散角を変更した上で、ビームスプリッタ36へ入射させる。
【0109】
ビームスプリッタ36は、光ビームL1Bを所定の割合で透過させ、1/4波長板により直線偏光から円偏光に変換した上で、対物レンズ38により集光する。このとき光ビームL1Bは、発散光として対物レンズ38へ入射されるため、位置制御光ビームL1Cと異なり、反射透過膜104ではなく記録層101内に集光される。
【0110】
ここで対物レンズ46は、対物レンズ38と連動して制御されることにより、光ビームL1Aの焦点FAを光ビームL1Bの焦点FBと一致させ得るようになされている。
【0111】
このとき可干渉性制御部22は、圧電素子22Bに対する印加電圧を制御して回折素子22Aを可干渉性状態又は非干渉状態に切り換えることにより、光ディスク100の記録層101内において、図7に示したようにホログラムを形成させ、又は図8に示したようにホログラムを形成させないようになされている。
【0112】
すなわち光ディスク装置30は、可干渉性制御部22によって光ビームL1の可干渉性を制御することにより、光源21から出射する光ビームL1の光量を変化させることなく、目標マーク位置PSに対してホログラムでなる記録マークRMを形成するか否かを切り換え得ることができる。
【0113】
これに伴い光ディスク装置30は、目標マーク位置PSに対してホログラムでなる記録マークRMを形成するか否かに関わらず、位置制御光ビームL1Cの光量を一定に保つことができるので、当該一定の位置制御光ビームL1Cに基づいた位置制御反射光ビームL2Cをサーボ信号検出部40により受光することができる。
【0114】
この結果、光ディスク装置30は、情報の記録中において常に安定したサーボ制御を行うことができる。
【0115】
また光ディスク装置30は、光ディスク100から情報を再生する際、光ディスク100に対して位置制御光ビームL1Cを照射し対物レンズ38及び46の位置制御を行うと共に、シャッタ52により光ビームL1Bを遮断し、光ビームL1Aを記録層101内の目標マーク位置PSに照射する。
【0116】
ここで目標マーク位置PSに記録マークRMが記録されていた場合、当該記録マークRMのホログラムとしての作用により光ビームL1Aの一部が反射されて再生光ビームL2Aとなり、当該光ビームL1Aの光路を反対方向へ辿り、対物レンズ46、1/4波長板45及びリレーレンズ44を介して偏光ビームスプリッタ43へ入射される。
【0117】
このとき再生光ビームL2Aは、その偏光方向が光ビームL1Aと異なるため、偏光ビームスプリッタ43により反射され、集光レンズ48により集光されて再生信号検出部49へ照射される。
【0118】
再生信号検出部49は、図示しないフォトディテクタにより再生光ビームL2Aを検出し、当該再生光ビームL2Aを検出したことにより光ディスク100の記録層101内における目標マーク位置PSに記録マークRMとしてホログラムが形成されていること、すなわち情報として符号「1」が記録されていることを認識し、これに応じた再生信号を所定の信号処理部(図示せず)へ供給する。
【0119】
一方、目標マーク位置PSに記録マークRMが記録されていなかった場合、再生光ビームL2Aは生成されず、再生信号検出部49により当該再生光ビームL2Aが検出されることもない。このとき再生信号検出部49は、光ディスク100の記録層101内における目標マーク位置PSに記録マークRMとしてのホログラムが記録されていないこと、すなわち情報として符号「0」が記録されていることを認識し、これに応じた再生信号を所定の信号処理部(図示せず)へ供給する。
【0120】
かくして光ディスク装置30は、光ディスク100にホログラムとして記録された情報を再生することができる。
【0121】
ところでリレーレンズ44は、図示しないアクチュエータによって可動レンズ44Aを移動させることにより、固定レンズ44Bから出射される青色光ビームLb1の発散角を変化させ得るようになされている。
【0122】
これに応じて光ビームL1Aは、対物レンズ46へ入射される際の発散角が変化することになるため、当該対物レンズ46から焦点FAまでの距離が変化する。実際上、光ディスク装置30は、所定の基準位置からの可動レンズ44Aの距離と、反射透過膜104からの焦点FAの距離(すなわち深さd)とが比例関係となるように設計されている。
【0123】
このため光ディスク装置30は、可動レンズ44Aの位置を制御することにより、光ビームL1Aにおける焦点FAの深さdを調整し得るようになされている。
【0124】
また光ディスク装置30は、リレーレンズ55をリレーレンズ44と同様に構成しているため、可動レンズ55Aの位置を制御することにより、光ビームL1Bにおける焦点FBの深さdを調整し得るようになされている。
【0125】
実際上、光ディスク装置30は、可動レンズ44A及び55Aを連動させることにより、光ビームL1Aの焦点FA及び光ビームL1Bの焦点FBを一致させつつ、その深さdを任意に変更し得るようになされている。これにより光ディスク装置30は、光ディスク100の記録層101内に、ホログラムでなる記録マークRMを異なる深さdに形成し、また再生する多層記録再生を実現し得るようになされている。
【0126】
(2−3)動作及び効果
以上の構成において、第2の実施の形態による光ディスク装置30は、第1の実施の形態によるホログラム記録再生装置20と同様、可干渉性制御部22の圧電素子22Bに所定電圧を印加せず回折素子22Aを可干渉状態とする場合、当該可干渉性制御部22により光ビームL1の可干渉性を高めることにより、光ディスク100の記録層101内で光ビームL1A及びL1Bを干渉させて記録マークRM(すなわちホログラム)を記録させる。
【0127】
一方、光ディスク装置30は、可干渉性制御部22の圧電素子22Bに所定電圧を印加して回折素子22Aを非干渉状態とした場合、光ビームL1の可干渉性を低減させることにより、記録層101に光ビームL1A及びL1Bを照射したまま干渉縞の記録を抑止する。
【0128】
従って光ディスク装置30は、第1の実施の形態と同様、可干渉性制御部22の圧電素子22Bに対し所定電圧を印加するか否かを制御することにより、光源21から出射する光ビームL1を変化させず光ディスク100の記録層101に光ビームL1A及びL1Bを照射したまま、ホログラムを記録するか否かを切り換えることができる。
【0129】
このとき光ディスク装置30は、目標マーク位置PSに対してホログラムでなる記録マークRMを形成するか否かに関わらず、位置制御光ビームL1Cの光量を一定に保つことができるので、高精度なフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を定常的に得ることができ、情報の記録中において常に安定したサーボ制御を行うことができる。
【0130】
すなわち光ディスク装置30は、例えば記録すべき情報に応じて光源から出射する光ビームを変調させるような従来の光ディスク装置において生じ得る、位置制御を行うための光ビームまで変調してしまうことによるサーボ制御の不安定化を、原理的に排除することができる。
【0131】
また上述した従来の光ディスク装置では、符号「0」が所定数以上続く場合に光ビームが出射されずサーボ制御が不安定になることを防止するべく、符号「0」の上限連続数(いわゆるランレングス)を定めた符号体系に変調することが考えられるが、この場合、結果的に符号数が増加し転送レートが低下することになる。
【0132】
これに対し本発明の光ディスク装置30では、少なくともサーボ制御の観点から符号の変調処理を行う必要はなく、また光ディスク100において反射透過膜104にトラックが独立して形成されているため当該トラックを見失う可能性が極めて低いことから、無変調の符号をそのまま記録することも可能となる。
【0133】
このように無変調記録を行う場合、本発明の光ディスク装置30では、例えばDVDの8/16変調により8ビットのデータを16ビットに変調し、或いはBDの1−7PPにより2ビットのデータを3ビットに変調する場合と比較して、転送レートを格段に向上させることができる。
【0134】
また光ディスク装置30は、第1の実施の形態におけるホログラム記録再生装置20の場合と同様、光源21の選定条件から変調周波数の高さを除外することができ、ホログラムの形成に一段と適した光源を選択することができる。
【0135】
以上の構成によれば、光ディスク装置30は、可干渉性制御部22によって光ビームL1の可干渉性を制御することにより、光源21から出射する光ビームL1及び光ディスク100の記録層101に照射する光ビームL1A及びL1Bの光量を変化させることなく、ホログラムを記録するか否かを切り換えることができるので、光量が安定した位置制御光ビームL1Cを用いて安定的なサーボ制御を行うことができる。
【0136】
(3)他の実施の形態
なお上述した実施の形態においては、回折素子22A、圧電素子22B及び圧電制御回路22Cにより可干渉性制御部22を構成し、光源21との組み合わせにより光ビームL1の可干渉性を制御するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば回折素子22Aに代えて所定のプリズムを用い、また圧電素子22Bに代えてソレノイド等の電気信号を駆動力に変換する手段を用いる等、他の種々の手段により可干渉性制御部22を構成するようにしても良く、要は光源21のレーザダイオード21A(図5)に光ビームL1を戻すか否かを制御することにより当該光ビームL1の可干渉性を高めるか低減するかを制御し得るようになされていれば良い。
【0137】
また上述した実施の形態においては、光源21及び可干渉性制御部22により外部共振器型の半導体レーザを構成し、圧電素子22Bに印加する電圧に応じて光ビームL1の可干渉性を制御するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、他の種々の手段により光ビームL1の可干渉性を制御するようにしても良い。
【0138】
例えば図11に示すように、レーザダイオード61及び可干渉性制御部62による注入同期型の半導体レーザを構成しても良い。このレーザダイオード61は、例えば出射強度が比較的強いものの、図6(A)に示したように可干渉性が低く、単体では良好なホログラムを形成することができない。一方、レーザダイオード62Aは、図6(B)に示したように、良好な可干渉性を有するものの、出射強度が小さく、やはり単体では良好なホログラムを形成することができない。
【0139】
しかしながら可干渉性制御部62は、レーザダイオード62Aから出射される可干渉性の高い光ビームをレーザダイオード61へ入射することにより、可干渉性が高く、且つ強度が大きい光ビームを出射することができる。
【0140】
この場合、回折素子22A(図5)と同様、ミラー62Bを圧電素子(図示せず)等により位置を変化させ可干渉性を制御することにより、第1及び第2の実施の形態と同様、可干渉性を制御することができる。
【0141】
さらに上述した第1の実施の形態においては、記録媒体28に対してホログラムの記録及び再生を行うホログラム記録再生装置20に本発明を適用し、また第2の実施の形態においては、光ディスク100に対してホログラムの記録及び再生を行う光ディスク装置30に本発明を適用するようにした場合について述べたが、これに限らず、例えばホログラムの記録のみを行うホログラム記録装置や、光ディスク100に対してホログラムの記録のみを行う光ディスク記録装置に本発明を適用するようにしても良い。
【0142】
さらに上述した第2の実施の形態においては、リレーレンズ44及び55により、目標マーク位置PSの深さdを変化させて多層記録を行うようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば当該リレーレンズ44及び55に代えて、固定的なレンズ等を設けることにより、目標マーク位置PSの深さdを固定して単層記録を行うようにしても良い。
【0143】
さらに上述した第2の実施の形態においては、図9(A)及び(B)に示したように、記録層101を両面から基板102及び103により挟み、当該記録層101と基板102との境界面に反射透過膜104を有する光ディスク100にホログラムを記録するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば基板103が省略され、又は記録層101内に反射透過膜104が設けられる等、他の種々の構成でなる光ディスクにホログラムを記録するようにしても良い。
【0144】
本発明に好適な光ディスクとしては、目標マーク位置PSを特定するためのトラック等が形成された反射透過膜104と、実際に記録マークRMとしてのホログラムを形成する記録層101とが分離されていれば良い。
【0145】
さらに上述した実施の形態においては、光源としての光源21と、照射手段としての光ビーム照射部23と、可干渉性制御手段としての可干渉性制御部22とによってホログラム記録装置としてのホログラム記録再生装置20を構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の回路構成でなる光源と、照射手段と、可干渉性制御手段とによってホログラム記録装置を構成するようにしても良い。
【0146】
さらに上述した実施の形態においては、光源としての光源21と、分離部としての偏光ビームスプリッタ33及び42と、第1対物レンズとしての対物レンズ36と、第2対物レンズとしての対物レンズ46と、受光部及びレンズ位置制御部としてのサーボ信号検出部40と、可干渉性制御部としての可干渉性制御部22とによって光ディスク記録装置としての光ディスク装置30を構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる光源と、分離部と、第1対物レンズと、第2対物レンズと、受光部と、レンズ位置制御部と、可干渉性制御部とによって光ディスク記録装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、映像や音楽、或いは各種データをホログラムにより光ディスクに記録する場合でも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】従来の定在波記録型光ディスク装置の構成を示す略線図(1)である。
【図2】ホログラムの形成の説明に供する略線図である。
【図3】従来の定在波記録型光ディスク装置の構成を示す略線図(2)である。
【図4】第1の実施の形態によるホログラム記録再生装置の構成を示す略線図である。
【図5】可干渉性制御部の構成を示す略線図である。
【図6】レーザ光の周波数制御を示す略線図である。
【図7】ホログラムの形成の様子を示す略線図である。
【図8】ホログラムの非形成の様子を示す略線図である。
【図9】光ディスクの構成を示す略線図である。
【図10】第2の実施の形態による光ディスク装置の構成を示す略線図である。
【図11】他の実施の形態による可干渉性制御部の構成を示す略線図である。
【符号の説明】
【0149】
20……ホログラム記録再生装置、21……光源、21A、61……レーザダイオード、22、62……可干渉性制御部、22A……回折素子、22B……圧電素子、22C……電圧制御回路、23……光ビーム照射部、24、25……ビームスプリッタ、26、27……ミラー、28……記録媒体、29……受光素子、30……光ディスク装置、33、35、42、43……偏光ビームスプリッタ、36……ビームスプリッタ、38、46……対物レンズ、40……サーボ信号検出部、44、55……リレーレンズ、49……再生信号検出部、100……光ディスク、101……記録層、104……反射透過膜、L1……光ビーム、L1C……位置制御光ビーム、FA、FB、FC……焦点、PS……目標マーク位置、RM……記録マーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを出射する光源と、
照射される光の強度に応じて屈折率が変化する記録媒体内の所望記録位置に対し、上記光ビームを分離し互いに異なる方向からそれぞれ集光する照射手段と、
上記光源から出射された上記光ビームの可干渉性を制御して上記照射手段に供給することにより、上記所望記録位置にホログラムを形成するか否かを切り換える可干渉性制御手段と
を具えることを特徴とするホログラム記録装置。
【請求項2】
上記可干渉性制御手段は、
上記光源から出射される上記光ビームを所定範囲の周波数成分のみに制限することにより上記可干渉性を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のホログラム記録装置。
【請求項3】
上記光源は、レーザ光源でなり、
上記可干渉性制御手段は、
上記光源から出射された上記光ビームを当該光源へ戻すよう回折させ又は当該光源以外の方向へ反射する反射回折素子と、
上記光源と上記反射回折素子との間における上記光ビームの光路を変化させる光路変化手段と、
上記光路を変化させることにより、上記光源と反射回折素子とで構成された共振器の共振器長を制御する共振器長制御手段と
を具えることを特徴とする請求項2に記載のホログラム記録装置
【請求項4】
上記光路変化手段は、圧電素子でなり、
上記光路制御手段は、上記圧電素子に対する印加電圧を制御することにより上記共振器長を制御する
ことを特徴とする請求項3に記載のホログラム記録装置。
【請求項5】
上記光源は、レーザ光源でなり、
上記可干渉性制御手段は、
上記光源から出射された上記光ビームを回折させ又は当該光源以外の方向へ反射する反射回折素子と、
上記反射回折素子により回折した光を当該反射回折素子に戻すミラーと、
上記光源と上記ミラーとの間における上記光ビームの光路を変化させる光路変化手段と、
上記光路を変化させることにより、上記光源と上記ミラーとで構成された共振器の共振器長を制御する共振器長制御手段と
を具えることを特徴とする請求項2に記載のホログラム記録装置
【請求項6】
上記光源は、出力レベルが大きく可干渉性が低い第1光ビームを出力する高出力レーザ光源でなり、
上記可干渉性制御手段は、
上記第1光ビームと比較して可干渉性が高く出力レベルが小さい第2光ビームを所定の高可干渉性レーザ光源から出射し上記高出力レーザ光源へ入射させることにより、上記高出力レーザ光源から出力レベルが大きく可干渉性が高い上記光ビームを出射させる注入同期を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のホログラム記録装置。
【請求項7】
上記記録媒体内における位置を識別するため上記記録媒体内に設けられた位置識別部に対して上記光ビームの一部を照射し、その反射光を検出する検出手段と、
上記検出した結果に基づき、上記記録媒体に対する上記光ビームの一部の集光位置を上記所望箇所とするよう制御する集光位置制御手段と
を具えることを特徴とする請求項1に記載のホログラム記録装置。
【請求項8】
照射される光の強度に応じて屈折率が変化する記録媒体内の所望記録位置に対し、所定の光源から出射される光ビームを分離し互いに異なる方向からそれぞれ集光する照射ステップと、
上記光源から出射され上記分離される前の上記光ビームの可干渉性を制御することにより、上記所望記録位置にホログラムを形成するか否かを切り換える可干渉性制御ステップと
を具えることを特徴とするホログラム記録方法。
【請求項9】
光ビームを出射する光源と、
上記光ビームを位置制御用の位置制御光ビーム並びに情報記録用の第1記録光ビーム及び第2記録光ビームを分離する分離部と、
略円盤状に形成されると共に、照射される光の強度に応じて屈折率が変化する記録層と、上記記録層における位置を識別するため当該記録層と対応付けて設けられた位置識別層とを有する光ディスクの一面側から、上記位置制御光ビーム及び上記第1記録光ビームを互いに異なる箇所に集光する第1対物レンズと、
上記光ディスクの他面側から上記第2記録光ビームを上記第1光ビームの焦点位置に集光する第2対物レンズと、
上記位置制御光ビームが上記位置識別層により反射されてなる反射光ビームを受光する受光部と、
上記反射光ビームの受光結果を基に、上記位置制御光ビームの焦点を上記位置識別層における所望箇所に合わせるよう上記第1対物レンズ及び上記第2対物レンズの位置を制御し上記第1記録光ビーム及び上記第2記録光ビームを所望記録位置に合焦させるレンズ位置制御部と、
上記光源から出射された上記光ビームの可干渉性を制御することにより、上記所望記録位置にホログラムを形成するか否かを切り換える可干渉性制御部と
を具えることを特徴とする光ディスク記録装置。
【請求項10】
所定の光源から出射された光ビームを位置制御用の位置制御光ビーム並びに情報記録用の第1記録光ビーム及び第2記録光ビームを分離する分離ステップと、
略円盤状に形成されると共に、照射される光の強度に応じて屈折率が変化する記録層と上記記録媒層における位置を識別するため当該記録部内に設けられた位置識別層とを有する光ディスクの一面側から、第1対物レンズにより上記位置制御光ビームを集光し、当該位置制御光ビームが上記位置識別層により反射されてなる反射光ビームの受光結果を基に当該位置制御光ビームの焦点を上記位置識別層における所望識別位置に合わせるよう当該第1対物レンズを位置制御すると共に、第2対物レンズにより上記第2光ビームの焦点を集光したときに、当該第1対物レンズにより上記第1光ビームが合焦される所望記録位置に上記第2光ビームの焦点を合わせるよう当該第2対物レンズの位置を制御するレンズ位置制御ステップと、
上記光源から出射された上記光ビームの可干渉性を制御することにより、上記所望記録位置にホログラムを形成するか否かを切り換える可干渉性制御ステップと
を具えることを特徴とする光ディスク記録方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−15881(P2009−15881A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172905(P2007−172905)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】