説明

ホワイトバランス調整装置

【課題】ホワイトバランス調整用の特定の設置物がない環境においてホワイトバランス調整を行うことができ、また、ホワイトバランス調整用部材をカメラに着脱する手間をなくすことができる上に、消費電力を少なくして小型カメラに好適に適用可能にする。
【解決手段】カメラにおけるレンズ22よりも被写体寄りの位置に、電圧無印加状態で光透過状態になり所定の電圧を印加すると光透過状態と光散乱状態との中間的な状態をとる液晶素子21を固定的に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラのホワイトバランスを容易に調整することができるホワイトバランス調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光源の色温度の違いにもとづく撮像の色再現性を補正するために、カメラにはホワイトバランス調整機能が備えられる。
【0003】
ホワイトバランス調整を実現するために、カメラのレンズにホワイトバランス調整用フィルタを装着して入射光を用いて調整のためのパラメータを決定したり、ホワイトバランス調整用の特定の設置物を撮影するような、反射光を用いて調整のためのパラメータを決定する方法が知られている。
【0004】
カメラのレンズにホワイトバランス調整用フィルタを装着する方法を用いる場合には、調整用のパラメータ決定時にはホワイトバランス調整用フィルタを装着し、実撮影時にはホワイトバランス調整用フィルタを取り外す必要があるので、撮影者にとって面倒である。また、ホワイトバランス調整用の設置物を撮影する方法を用いる場合には、特定の設置物が存在しない環境では、ホワイトバランス調整を行うことができない。
【0005】
ホワイトバランス調整用フィルタのカメラへの着脱作業をなくすために、ホワイトバランス調整用フィルタをカメラに設置するが、調整用のパラメータ決定時にはホワイトバランス調整用フィルタがレンズの前面に位置し、実撮影時にはホワイトバランス調整用フィルタがレンズの前面から退避するように構成されたホワイトバランス調整装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、レンズの前面に液晶シートを固定し、調整用のパラメータ決定時には液晶に電圧を印加しないことによって光散乱状態にし、実撮影時には液晶に所定電圧を印加することによって光透過状態にするホワイトバランス調整装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載されたホワイトバランス調整装置を用いた場合にも、ホワイトバランス調整用部材を着脱する手間をなくすことができる。
【0007】
なお、ホワイトバランス調整のためのパラメータ(補正係数)の算出方法は、特許文献3に記載された方法を始めとして種々の方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−261813号公報
【特許文献2】特開平5−34767号公報
【特許文献3】特開昭61−184079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されたホワイトバランス調整装置を用いる場合には、ホワイトバランス調整用フィルタを移動させるための機構を設ける必要があるので、ホワイトバランス調整装置は、カメラの小型化を阻害する要因になる。従って、小型のカメラに適用することは困難である。
【0010】
また、特許文献2に記載されたホワイトバランス調整装置を用いる場合には、実撮影時には常に液晶に所定電圧を印加する必要があり、カメラに内蔵された電池の消耗を早めてしまう。従って、小容量の電池しか内蔵できないような小型カメラに適用することは困難である。また、液晶シートに一般的な液晶を使用すると、光透過状態に設定されても透過率は低いので実用に欠けるという課題もある。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するための発明であって、ホワイトバランス調整用の特定の設置物がない環境においてホワイトバランス調整を行うことができ、また、ホワイトバランス調整用部材をカメラに着脱する手間をなくすことができる上に、消費電力を少なくして小型カメラに好適に適用することができるホワイトバランス調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるホワイトバランス調整装置は、撮像装置におけるレンズよりも被写体寄りの位置に、印加される電圧に応じて、光透過状態と、光散乱状態と、光透過状態と光散乱状態との中間的な状態をとることができる液晶素子が固定的に設置されていることを特徴とする。
【0013】
液晶素子に電圧を印加する電圧調整回路を備え、電圧調整回路は、ホワイトバランス調整用のパラメータを決定するときに液晶素子を光透過状態と光散乱状態との中間的な状態にする電圧を印加し、撮影時に液晶素子を光透過状態とする電圧を印加する(例えば、0Vを印加する:すなわち電圧無印加であってもよい)ことが好ましい。
【0014】
液晶素子は、例えば、レンズを内蔵するレンズ鏡筒の前部または内部に固定されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ホワイトバランス調整用の特定の設置物がない環境においてホワイトバランス調整を行うことができ、また、ホワイトバランス調整用部材をカメラに着脱する手間をなくすことができる上に、消費電力を少なくして小型カメラに好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ホワイトバランス調整装置が搭載されたカメラを模式的に示す模式図。
【図2】液晶素子の一構成例を示す模式的断面図。
【図3】硬化性化合物の例を示す説明図。
【図4】液晶素子の印加電圧(実効値)に対する透過率を示す説明図。
【図5】液晶素子の視野角特性を示す説明図。
【図6】液晶素子の設置位置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明によるホワイトバランス調整装置が搭載されたカメラを模式的に示す模式図である。なお、以下の説明では、撮像装置として、撮像素子を用いるディジタルカメラを想定するが、フィルムカメラにも本発明を適用することができる。また、静止画を撮像するスチルカメラだけでなく、動画を撮像するビデオカメラにも本発明を適用することができる。
【0018】
図1に示すカメラは、カメラ本体10とレンズ鏡筒20とで構成されている。カメラ本体10にはCCD(Charge Coupled Device )イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor )センサによる撮像素子が設けられている。また、ホワイトバランス調整用フィルタとして機能する液晶素子21に所定の電圧を印加する電圧調整回路12と、ホワイトバランス調整の制御を行う制御回路13とが設けられている。
【0019】
なお、制御回路13は、カメラ本体10に内蔵されているマイクロコンピュータで実現される。
【0020】
レンズ鏡筒20には、レンズ22が内蔵されているが、図1に示す例では、レンズ鏡筒20の前面において液晶素子21が設置されている。また、図1における破線の矢印は、電圧調整回路12から液晶素子21への配線を表しているが、その配線は、実際には、例えば、レンズ鏡筒20の内部を通過する。
【0021】
液晶素子1は、光透過状態と光散乱状態をとることができる素子であるが、以下に説明するように、電圧無印加状態で光透過状態を呈し、所定の電圧が印加されると、光散乱状態を呈する。
【0022】
図2は、液晶素子21の一構成例を示す模式的断面図である。図2において、一対の基板201,208の相対する面には、透明電極202,207が設けられる。さらに内側には配向膜203,206が設けられる。そして、配向膜203,206の間に、液晶を含み、スペーサ(図示せず)によって厚みが制御された液晶層204が挟持される。そして、シール層205によって液晶層204が封止される。
【0023】
基板201,208の材質は、透明性が確保できれば特に限定されない。基板201,208として、ガラス基板やプラスチック基板を使用することができる。
【0024】
また、基板201,208上に設けられる透明電極202,207として、ITO(酸化インジウム−酸化錫)のような金属酸化物などの透明な電極材料を使用することができる。以下、透明電極202,207が設けられた基板201,208を電極付き基板という。
【0025】
光透過状態と光散乱状態をとることができる液晶層204は、透明な一対の電極付き基板間に、液晶とその液晶に溶解可能な硬化性化合物とを含有する組成物(以下、未硬化組成物ともいう)を挟持させ、熱や紫外線、電子線などの手段を用いて硬化性化合物を硬化させて液晶/高分子複合体として形成される液晶層が好ましい。このような液晶と高分子の複合体からなる液晶を、以下、液晶/高分子複合体ともいう。
【0026】
液晶/高分子複合体に用いる液晶としては、誘電異方性が正でも負でもよいが、光透過状態と光散乱状態の切り替えに要する応答時間を短くするためには、液晶の粘度が低く、さらに誘電異方性が負の液晶を用いることが好ましい。なお、液晶としては硬化性ではない化合物が使用される。また、硬化性化合物は液晶性を有していてもよい。
【0027】
誘電率異方性が負の液晶を使用する場合には、電極付き基板において、液晶層204と接触する側に液晶分子のプレチルト角が基板表面に対して60度以上であるようにする処理が施されていると、配向欠陥を少なくすることができ、透明性が向上するため好ましい。この場合、ラビング処理を施さなくてもよい。プレチルト角は70度以上であることがより好ましい。なお、プレチルト角を、基板表面に垂直の方向を90度として規定する。
【0028】
液晶層204を形成する液晶/高分子複合体を構成する液晶として、公知の液晶から適宜選択できる。配向膜203,206により未硬化組成物のプレチルト角を制御することができる電極付き基板を用いることによって、誘電率異方性が正の液晶も誘電率異方性が負の液晶も使用可能であるが、より高い透明性や応答速度の面では誘電率異方性が負の液晶が好ましい。配向膜にラビング処理を施すこともできる。また、駆動電圧を低下させるためには誘電率異方性の絶対値が大きい方が好ましい。
【0029】
また、液晶/高分子複合体を構成する硬化性化合物も透明性を有することが好ましい。さらに、硬化後に、電圧を印加したときに液晶のみが応答するように液晶と硬化性化合物とが分離していると、駆動電圧を下げることができるので好ましい。
【0030】
本発明では、液晶に溶解可能な硬化性化合物のうち、未硬化時の液晶と硬化性化合物との混合物の配向状態を制御可能であって、硬化する際に高い透明性を保持することができる硬化性化合物が使用される。
【0031】
硬化性化合物として、式(1)の化合物や式(2)の化合物を例示できる。
−O−(R―O―Z―O―(RO―A ・・・式(1)
−(OR―O―Z’―O―(RO)―A ・・・式(2)
【0032】
ここで、A,A,A,Aのそれぞれは、独立的に、硬化部位となるアクリロイル基、メタクリロイル基、グリシジル基またはアリル基であり、R,R,R,Rのそれぞれは、独立的に、炭素数2〜6のアルキレン基であり、Z,Z’のそれぞれは、独立的に、2価のメソゲン構造部であり、m,n,o,pのそれぞれは、独立的に、1〜10の整数である。ここで、「独立的に」とは、組み合わせが任意であって、どのような組み合わせも可能であることを意味する。
【0033】
式(1)および式(2)におけるメソゲン構造Z,Z’と硬化部位A,A,A,Aとの間に、R,R,R,Rを含む分子運動性の高いオキシアルキレン構造を導入することによって、硬化時に、硬化過程において硬化部位の分子運動性を向上でき、短時間で十分に硬化させることが可能になる。
【0034】
式(1)および式(2)における硬化部位A,A,A,Aは、光硬化や熱硬化が可能な上記の官能基であればいずれでもよいが、なかでも、硬化時の温度を制御できることから光硬化に適するアクリロイル基、メタクリロイル基であることが好ましい。
【0035】
式(1)および式(2)におけるR,R,RおよびRの炭素数については、その分子運動性の観点から1〜6が好ましく、炭素数2のエチレン基および炭素数3のプロピレン基がさらに好ましい。
【0036】
式(1)および式(2)におけるメソゲン構造部Z,Z’として、1,4−フェニレン基の連結したポリフェニレン基を例示できる。1,4−フェニレン基の一部または全部を1,4−シクロへキシレン基で置換したものであってもよい。また、1,4−フェニレン基や置換した1,4−シクロへキシレン基の水素原子の一部または全部が、炭素数1〜2のアルキル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基などの置換基で置換されていてもよい。
【0037】
好ましいメソゲン構造部Z,Z’として、1,4−フェニレン基が2個連結したビフェニレン基(以下、1,4−フェニレン基が2個連結したビフェニレン基を4,4−ビフェニレン基ともいう。)、3個連結したターフェニレン基、およびこれらの水素原子の1〜4個が、炭素数1〜2のアルキル基、フッ素原子、塩素原子またはカルボキシル基に置換されたものを挙げることができる。最も好ましいものは、置換基を有しない4,4−ビフェニレン基である。メソゲン構造部を構成する1,4−フェニレン基または1,4−シクロへキシレン基同士の結合は全て単結合でもよいし、以下に示すいずれかの結合でもよい。
【0038】
【化1】

【0039】
式(1)および式(2)におけるm,n,o,pは、それぞれ独立的に、1〜10であることが好ましく、1〜4がさらに好ましい。あまり大きいと液晶との相溶性が低下し、硬化後の電気光学素子の透明性を低下させるからである。
【0040】
図3に、本発明において使用できる硬化性化合物の例を示す。液晶と硬化性化合物とを含有する組成物は、式(1),(2)で表される硬化性化合物を含め、複数の硬化性化合物を含有していてもよい。例えば、組成物に、式(1)および式(2)においてm,n,o,pの異なる複数の硬化性化合物を含有させると、液晶との相溶性を向上させることができる場合がある。
【0041】
液晶と硬化性化合物とを含有する組成物は硬化触媒を含有していてもよい。光硬化の場合、ベンゾインエーテル系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系などの一般に光硬化性樹脂に用いられる光重合開始剤を使用できる。熱硬化の場合は、硬化部位の種類に応じて、パーオキサイド系、チオール系、アミン系、酸無水物系などの硬化触媒を使用でき、また、必要に応じてアミン類などの硬化助剤を使用することもできる。
【0042】
硬化触媒の含有量は、含有する硬化性化合物の20質量%以下が好ましく、硬化後に硬化樹脂の高い分子量や高い比抵抗が要求される場合は0.1〜5質量%とすることがさらに好ましい。
【0043】
未硬化組成物において、硬化性化合物の総量は、液晶組成物に対して0.1〜20質量%であることが好ましい。0.1質量%未満では、液晶相を硬化物により効果的な形状のドメイン構造に分割することができず、所望の透過−散乱特性を得ることができない。一方、20質量%を越えると、従来の液晶/硬化物複合体素子と同様に透過状態でのヘイズ値が増大しやすくなる。また、さらに好ましくは、液晶組成物中の硬化物の含有率が0.5〜15質量%であり、光散乱状態での散乱強度を高く、透過−散乱が切り替わる電圧値を低くすることができる。
【0044】
液晶分子を、基板表面に対してプレチルト角が60度以上になるように配向させる処理方法として、垂直配向剤を使用する方法がある。垂直配向剤を使用する方法として、例えば、界面活性剤を用いる方法や、アルキル基やフルオロアルキル基を含むシランカップリング剤などで基板界面を処理する方法、または日産化学工業社製のSE1211やJSR社製のJALS−682−R3等の市販の垂直配向剤を用いる方法がある。垂直配向状態から任意の方向に液晶分子が倒れた状態を作るためには、公知のどのような方法を採用してもよい。垂直配向剤をラビングしてもよい。また、電圧が基板201,208に対して斜めに印加されるように、透明電極201,207にスリットを設けたり、電極201,207上に三角柱を配置する方法を採用してもよい。また、特定方向に液晶分子を倒すような手段を用いなくてもよい。
【0045】
二つの基板201,208間にある液晶層204の厚さを、スペーサ等で規定することができる。その厚さは1〜50μmが好ましく、3〜30μmがさらに好ましい。液晶層204の厚さが薄すぎるとコントラストが低下し、厚すぎると駆動電圧が上昇する傾向が増大するため好ましくない場合が多い。
【0046】
シール層205として、透明性の高い樹脂であれば公知のどのようなものを使用することも可能である。
【0047】
以上のように作製された液晶素子21は、少なくとも常温付近において光透過状態と光散乱状態との間の応答時間が5msよりも短く非常に速い応答速度を実現することができる。また、従来の分散型液晶素子による散乱透過モードと比べると視野角依存性が良好であり、斜めから見たときにも非常に良好な透過状態を得ることができるようにすることができる。例えば、上記の組成の硬化性化合物と液晶とを含有する液晶/高分子複合体を使用した場合、垂直から40度傾けて見た場合もほとんどヘイズがないようにすることができる。
【0048】
液晶素子21を複数枚用いてもよい。また、液晶素子21に対する耐衝撃性を増すために、上下の基板201,208を固定させてもよい。
【0049】
液晶素子21の表裏の表面には、反射防止膜または紫外線遮断膜を設けることが好ましい。例えば、液晶素子21の表裏に、SiOやTiOなどの誘電体多層膜よりなるARコート(低反射コート)処理を施すことにより、基板表面での外光の反射を減らすことができる。
【0050】
図4は、上記のように作製された液晶素子21の印加電圧(実効値)に対する透過率を示す説明図である。なお、液晶素子21の表面には、反射防止膜や紫外線遮断膜は設けられていない。図4に示すように、液晶素子21は、光透過状態と光散乱状態をとることができる液晶層としての液晶層204に所定の電圧(例えば60V)が印加されているときに光散乱状態となり、液晶層204に対して電圧無印加(すなわち、電圧0Vを印加)のときに光透過状態となる。また、印加電圧(実効値)が0Vと60Vとの中間的な値(例えば、18〜35V程度)であるときに、液晶素子21は、光透過状態と光散乱状態との中間的な状態(中間状態)をとる。
【0051】
なお、本発明において、光透過率が80%以上である状態を「透明」とする。また、上記のように、液晶素子21の表面に反射防止膜または紫外線遮断膜を設けた場合には、さらに高い透過率を実現できる。また、光散乱状態(例えば、光透過率が2%以下の状態)を遮光状態ともいう。
【0052】
図5は、液晶素子21の視野角特性を示す説明図である。図5において、曲線Aは液晶素子21の視野角特性を示し、曲線Bはガラスの視野角特性を示し、曲線Cは一般的な分散液晶の視野角特性を示す。図5に示すように、液晶素子21は、一般的な分散型液晶に比べて視野角特性が優れている。よって、レンズ鏡筒20に設置された場合に、広範囲の光を透過させることができる。
【0053】
制御回路13は、カメラの操作者によってホワイトバランス調整の指示がなされると、電圧調整回路12に対して調整指示を出力する。なお、操作者によるホワイトバランス調整の指示は、カメラ本体10に設けられている操作部(図示せず)を介して行われる。
【0054】
電圧調整回路12は、制御回路13からの調整指示に応じて、液晶素子21に形成されている透明電極に、ホワイトバランス調整時の電圧を印加する。
【0055】
図4に例示された透過率特性を参照すると、電圧調整回路12は、例えば、液晶素子21に形成されている透明電極に23Vを印加して、光透過率を18%にする。
【0056】
撮像素子11は、その状態において、液晶素子21およびレンズ22を通過した光にもとづいて撮像を行う。制御回路13は、撮像素子11から撮像に応じた画像データ(例えば、Rデータ、GデータおよびBデータ)を入力する。
【0057】
そして、制御回路13は、ホワイトバランス調整のための補正係数を算出する。一例として、特許文献3に記載された方法を使用する場合には、画像データから所定範囲の濃淡レベルの画素を無彩色に近い画素として抽出し、抽出された画素群の画素値をチャネル毎(例えば、Rチャネル、Gチャネル、Bチャネル)に積算し、積算した各チャネルの画素値が同レベルになるように各チャネルの補正係数を設定する。そして、補正係数をメモリ(図示せず)に格納する。
【0058】
制御回路13は、実撮影時に、撮像素子11から出力された画像データに対して補正係数を用いてホワイトバランスの調整を行い、調整後の画像データによる画像を、撮像された画像として、カメラの表示部(図示せず)に表示したり、メモリに格納する。
【0059】
なお、上記の実施の形態では、図6(A)に示すように、カメラ鏡筒20の前部に液晶素子21が装着されたが、図6(B)に示すように、カメラ鏡筒20の内部における最前部に液晶素子21を設置してもよい。図6(A)に示すように構成されている場合には、広い範囲の環境光を取り込むことができ、図6(B)に示すように構成されている場合には、被写体を中心とした所定範囲の環境光を取り込むことができる。
【0060】
また、上記の説明では、カメラの操作者の操作に応じて、あらかじめホワイトバランス調整のための補正係数を算出し、その後の実撮影時に補正係数を用いた補正を行う場合を想定したが、実撮影時におけるシャッタボタンの半押し時に補正係数の算出を行い、シャッタボタンが完全に押下されたときに撮像素子11によって撮像された画像に対して補正係数を用いたホワイトバランスの調整を行うようにしてもよい。
【0061】
いずれにせよ、本実施の形態では、ホワイトバランス調整のための補正係数を得るときにも実撮影時にも、液晶素子21は、カメラ鏡筒20に装着されたままである。よって、ホワイトバランス調整用部材(この例では、液晶素子21)をカメラに着脱する手間をなくすことができる。液晶素子21をカメラに着脱する必要はないので(液晶素子21は常にカメラに装着されているので)、光源の色温度が急変したような場合でも、直ちに変化後の光源に応じたホワイトバランス調整を行うことができる。
【0062】
また、ホワイトバランス調整用の特定の設置物がない環境においてホワイトバランス調整を行うことができる。
【0063】
液晶素子21をカメラ鏡筒20の前部または筒内に固着可能であるから、水中でカメラを使用する場合にカメラ鏡筒20に浸水が生ずる可能性をなくすことができ、水中撮影において、ホワイトバランス調整機能を発揮させることができる。
【0064】
さらに、実撮影時には、液晶素子21に電圧は印加されないので、カメラの消費電力をさほど増大させない。よって、上記の実施の形態のホワイトバランス調整装置を、小容量の電池しか内蔵できないような小型カメラにも好適に組み込むことができる。
【0065】
また、図4に示されたように、液晶素子21の電圧無印加時の光透過率は80%以上である。よって、実撮影時に、レンズ22に多くの光量の光を通過させることができる。
【0066】
なお、液晶素子21に代えて、以下のような素子を使用してもよい。
【0067】
すなわち、ネマティック液晶と旋光性の方向が互いに異なる少なくとも2種の光学活性物質を含有し、旋光性の方向に関して一方の光学活性物質が非硬化性化合物であり、他方の光学活性物質が硬化性化合物であり、液晶組成物が全体としてネマティック相を示す液晶組成物において、硬化性化合物の硬化を行うことで得られる液晶光学素子である。なお、硬化性化合物である前記光学活性物質が存在しない場合はカイラルネマティック相を示し、硬化性化合物である前記光学活性物質を含むことにより全体としてネマティック相を示すようにすることができる。また、光学活性物質ではない硬化性化合物を含有してもよく、硬化性化合物の総量は液晶組成物全体に対して0.1〜20質量%であることが好ましい。
【0068】
そのような液晶光学素子を用いた場合には、電圧無印加時に光散乱状態になるが、上記の液晶素子21と同様に、光透過状態である場合に高い透過率を示す。
【符号の説明】
【0069】
10 カメラ本体
11 撮像素子
12 電圧調整回路
13 制御回路
20 レンズ鏡筒
21 液晶素子
22 レンズ
201,208 ガラス基板
202,207 透明電極
203,206 配向膜
204 液晶層
205 シール層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置のホワイトバランスを調整するホワイトバランス調整装置であって、
前記撮像装置におけるレンズよりも被写体寄りの位置に、印加される電圧に応じて、光透過状態と、光散乱状態と、光透過状態と光散乱状態との中間的な状態をとることができる液晶素子が固定的に設置されている
ことを特徴とするホワイトバランス調整装置。
【請求項2】
前記液晶素子に電圧を印加する電圧調整回路を備え、
前記電圧調整回路は、ホワイトバランス調整用のパラメータを決定するときに前記液晶素子を光透過状態と光散乱状態との中間的な状態にする電圧を印加し、撮影時に前記液晶素子を光透過状態とする電圧を印加する
請求項1記載のホワイトバランス調整装置。
【請求項3】
前記液晶素子は、レンズを内蔵するレンズ鏡筒の前部または内部に固定されている
請求項1または請求項2記載のホワイトバランス調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−23439(P2012−23439A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157796(P2010−157796)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】