説明

ボイドの検出方法および装置

【課題】貼り合わせウェーハを製造する際に、該貼り合わせウェーハに存在するボイドを検出する方法および装置を提供する。
【解決手段】2枚のウェーハを貼り合わせ、接合して貼り合わせウェーハを製造するに当たり、貼り合わせ過程における接合部と非接合部との境界が描く伝播形状に基づいて、当該貼り合わせ後のウェーハにおけるボイドを検出し、貼り合わせ後のウェーハにおけるボイドの有無は、実際にボイドの発生のないウェーハにおける前記伝播形状と当該貼り合わせ後のウェーハにおける伝播形状との対比にて判定し、該貼り合わせ境界の形状を二次曲線で近似して該二次曲線の頂点での曲率を求め、得られた曲率と貼り合わせ境界の位置毎に予め求められたボイドが発生しない場合の曲率とを比較して誤差を求め、得られた誤差が所定の値を超える場合には、貼り合わせウェーハにボイドが存在すると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボイドの検出方法および装置に関し、特に、貼り合わせウェーハを製造する際に、該貼り合わせウェーハ中に存在するボイドを検出する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デバイス性能の更なる向上に向けて、SOI(Silicon on Insulator)構造を有するウェーハ(以下、「SOIウェーハ」と称する)が注目されている。SOIウェーハは、シリコン単結晶層(SOI層)が埋め込み酸化膜(Buried OXide,BOX層)上に形成された構造を有しており、バルク基板上に作製されるデバイスに比べて寄生容量が極めて小さく、また簡単な製造工程とデバイス微細化の容易さから、デバイスの高速動作、低消費電力、高絶縁耐圧特性、耐放射線性などに優れた次世代高性能VLSI用ウェーハとして期待されている。
【0003】
SOIウェーハを製造する方法の1つに、貼り合わせ法がある。この貼り合わせ法は、シリコン支持基板および/またはデバイスを作製する活性基板の表面を酸化し、次いで貼り合わせて1200℃程度の高温にて熱処理を施し、酸化膜同士または酸化膜とシリコンを結合させることによりSOIウェーハを製造する方法である。
【0004】
貼り合わせ法は、シリコン基板内部に酸素イオンを注入して熱処理を施すことによりSOIウェーハを製造するSIMOX法に対して、SOI層の結晶品質やBOX層の耐圧特性が高いという利点を有する一方、膜厚の均一性に劣り、2枚のウェーハ間の非結合領域である空隙(ボイド)が発生する場合がある。このようなボイドにより、デバイス工程で貼り合わせウェーハが剥離してウェーハ不良が発生するため、これまでボイドの発生を防止する様々な技術が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1は、2枚の半導体基板の接合速度を半導体基板の主面の状態に対応して設定することにより、貼り合わせウェーハの良品率を向上させる、貼り合わせウェーハの製造方法を提案している。
【0006】
また、特許文献2は、貼り合わせの進行速度を規定の範囲に制御することにより、貼り合わせ基板の周辺部におけるボイドの発生を防止する、貼り合わせ装置を提案している。
【0007】
一方、特許文献3は、2枚のウェーハを貼り合わせる際に、貼り合わせを行うチャンバ内を減圧して、重ねたウェーハの自重のみの作用力によって貼り合わせることにより、貼り合わせ界面におけるボイドの発生を有効かつ容易に抑制し、ムラ無く貼り合わせることが可能な、貼り合わせウェーハの製造装置および製造方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−245250号公報
【特許文献2】特開2007−194347号公報
【特許文献3】特開2009−64827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法では、貼り合わせウェーハ中のボイドの発生を完全に防止することは依然として困難である。そのため、貼り合わせウェーハの製造後にボイドの有無を判定し、ボイドが存在する不良ウェーハを除去するための検査工程が必要となる。従来、こうしたボイドの有無の判定は、赤外光を用いたボイド検査装置を使用して作業者の目視により行われることが一般的であるため、例えばボイドのサイズが小さい場合には判定を誤る虞がある。
【0010】
そこで本発明の目的は、貼り合わせウェーハを製造する際に、該貼り合わせウェーハ中に存在するボイドを高精度に検出する方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、貼り合わせウェーハを製造する際にボイドが発生するメカニズムについて究明したところ、貼り合わせ過程における接合部と非接合部との境界(以下、「貼り合わせ境界」と称する)が描く伝播形状とボイドの発生とが密接に関連しており、ボイドが発生しない場合には、伝播形状を二次関数で近似した際の該二次関数の頂点での曲率が、貼り合わせ境界の位置毎にほぼ所定の範囲内に存在することが判明した。そこで、貼り合わせウェーハを製造する際にボイドの有無を判定する方途について鋭意検討した結果、ボイドが発生しない場合について、貼り合わせ境界の伝播形状を二次曲線で近似し、該二次曲線の頂点での曲率を曲率条件値として貼り合わせ境界の位置毎に予め求めておき、2枚のウェーハを貼り合わせた際の貼り合わせ境界の伝播形状の実際の曲率と、曲率条件値とを比較し、該曲率条件値に対する実際の曲率の誤差が所定の値を超える場合には、貼り合わせウェーハ内にボイドが存在すると判定することが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明のボイドの検出方法は、2枚のウェーハを貼り合わせ、接合して貼り合わせウェーハを製造するに当たり、前記貼り合わせ過程における接合部と非接合部との境界が描く伝播形状に基づいて、当該貼り合わせ後のウェーハにおけるボイドの有無を判定することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のボイドの検出方法において、前記貼り合わせ後のウェーハにおけるボイドの有無は、実際にボイドの発生のないウェーハにおける前記伝播形状と当該貼り合わせ後のウェーハにおける伝播形状との対比にて判定することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のボイドの検出方法において、前記伝播形状の対比は、前記境界の位置毎に撮影手段により撮影された前記貼り合わせウェーハの画像から前記境界を検出し、次いで該境界の伝播形状を二次曲線で近似して求められた該二次曲線の頂点での実際の曲率を以て行い、前記実際にボイドの発生のないウェーハについて、前記境界の位置毎に前記伝播形状を二次曲線で近似し、該二次曲線の頂点での曲率を曲率条件値として予め求めておき、前記曲率条件値に対する前記実際の曲率の誤差が所定値を超える場合には、前記貼り合わせウェーハにボイドが存在すると判定することを特徴とするものである。
【0015】
更に、本発明のボイドの検出方法において、前記ボイドの有無の判定の際に、前記境界の伝播速度を加味することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明のボイドの検出方法において、前記ボイドの発生のないウェーハについて、前記境界の位置毎に、前記伝播速度を伝播速度条件値として予め求めておき、前記境界の位置毎に、前記境界の実際の伝播速度を求めた後、前記伝播速度条件値に対する前記実際の伝播速度の誤差が所定値を超える場合には、前記貼り合わせウェーハにボイドが存在すると判定することを特徴とするものである。
【0017】
本発明のボイドの検出装置は、2枚のウェーハを貼り合わせ、接合して貼り合わせウェーハを製造する際に、該貼り合わせウェーハ中のボイドを検出する装置において、前記貼り合わせ過程における接合部と非接合部との境界が描く伝播形状に基づいて、当該貼り合わせ後のウェーハにおけるボイドを検出する解析装置を備えることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のボイドの検出装置において、前記解析装置は、前記境界の位置毎に予め求められた、ボイドが発生しない場合の前記境界の伝播形状についての曲率を曲率条件値として格納するとともに、撮影装置により撮影された前記貼り合わせウェーハの画像を格納する記憶部と、前記境界を二次曲線で近似して該二次曲線の頂点での実際の曲率を求める曲率算定部と、前記曲率条件値に対する該実際の曲率の誤差が所定値を超える場合には、前記2枚のウェーハの界面にボイドが存在すると判定する判定部とを備えることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明のボイドの検出装置において、前記解析装置は、前記境界の実際の伝播速度を求める伝播速度算定部を更に備え、前記記憶部は、前記境界の位置毎に予め求められた、ボイドが発生しない場合の前記境界の伝播速度を伝播速度条件値として更に格納しており、前記判定部は、前記伝播速度条件値に対する前記実際の伝播速度の誤差が所定値を超える場合には、前記貼り合わせウェーハにボイドが存在すると判定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、貼り合わせウェーハを製造中に、貼り合わせウェーハ中のボイドの有無を高精度に検出することができる。また、貼り合わせウェーハの製造後にボイドの有無の検査を行う必要がないため、貼り合わせウェーハの生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の検査装置が組み込まれた貼り合わせウェーハ製造装置の(a)上面図、(b)側面図、および(c)解析装置の構成を示す図である。
【図2】(a)貼り合わせウェーハ、および(b)検出された貼り合わせ境界の模式図である。
【図3】(a)ボイドが発生する場合の貼り合わせ境界、および(b)貼り合わせ境界が伝播してボイドが発生した様子を示す模式図である。
【図4】(a)〜(c)は、貼り合わせ過程において貼り合わせ境界が伝播する様子を示す模式図である。
【図5】ボイドの有無の判定の際に、貼り合わせ境界の伝播速度を加味する場合の解析装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のボイドの検出方法および装置について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明のボイド検出装置が組み込まれた、貼り合わせウェーハ製造装置を示している。この製造装置1は、活性側ウェーハカセット11aおよび支持側ウェーハカセット11bと、ウェーハ搬送手段12と、ウェーハアライナ13と、赤外光源14と、貼り合わせチャンバ15と、減圧手段16と、撮影手段17と、解析装置18と、表示装置19と、制御装置20と、良品ウェーハカセット21aおよび不良品ウェーハカセット21bとを備える。ボイド検出装置2は、撮影手段17と、解析装置18とを備え、また、解析装置18は、記憶部18aと、貼り合わせ境界検出部18bと、曲率算出部18cと、判定部18dとを有する。以下、各構成要素について説明する。
【0023】
活性側ウェーハカセット11aおよび支持側ウェーハカセット11bは、貼り合わせウェーハの製造に使用する活性側ウェーハAおよび支持側ウェーハBをそれぞれ格納する。
【0024】
ウェーハ搬送手段12は、活性側ウェーハカセット11aおよび支持側ウェーハカセット11bに格納されている支持側ウェーハAおよび活性側ウェーハBを取り出し、ウェーハアライナ13へ搬送し、また、位置決めされた活性側ウェーハAおよび支持側ウェーハBを、ウェーハアライナ13から貼り合わせチャンバ15内のステージ15bまで搬送する。更に、貼り合わせチャンバ15内で製造された貼り合わせウェーハを、ウェーハ内のボイドの検出結果に基づいて、良品ウェーハカセット21aまたは不良品ウェーハカセット21bに搬送する。ウェーハ搬送手段12としては、一般的な裏面吸着型のロボット搬送装置を使用することができる。
【0025】
ウェーハアライナ13は、活性側ウェーハAおよび支持側ウェーハBを回転させて、予め定められた基準角度に位置決めする。
【0026】
赤外光源14は、活性側ウェーハAと支持側ウェーハBとを貼り合わせる際に、貼り合わせ境界の伝播の様子を観察するための赤外光を放射する。赤外光源14としては、例えば半導体レーザを使用することができる。
【0027】
貼り合わせチャンバ15は、その内部で活性側ウェーハAと支持側ウェーハBとを貼り合わせて貼り合わせウェーハCを製造するためのチャンバであり、例えば円筒形状又は多角形状等を有するステンレス製容器を使用することができる。貼り合わせチャンバ15は、その側面からウェーハを出し入れできるように構成されており、内部に支持側ウェーハBを載置するステージ15bが設けられている。上蓋15aは、2枚のウェーハの貼り合わせの進行状況を確認できるように、例えば石英の透明な材料により構成されることが好ましい。
また、ステージ15bの材質は特に限定されない。更に、ステージ15bの形状も特に限定されないが、ボイド低減の効果の点から、凸形状または、平坦に近い凸形状であることが好ましい。
【0028】
減圧手段16は、貼り合わせチャンバ15内を所定の圧力まで減圧する。貼り合わせチャンバ15内を減圧することにより、ウェーハの直径が300mmを超える場合にも、貼り合わせ界面に残存する空気を速やかに除去させてボイドの発生を抑制することができる。減圧手段16は、例えば減圧ポンプとすることができる。
【0029】
ここで、貼り合わせチャンバ15内の圧力は、0.01kPa〜常圧とする。圧力の下限を0.01kPaとする理由は、スループットが長くなるため生産性が低下し、また、チャンバ15内の構成部品からの発塵により、貼り合わせウェーハが汚染される虞があるためである。
【0030】
撮影手段17は、赤外光源14により貼り合わせウェーハCに照射された赤外光の反射光を検出して貼り合わせウェーハCにおける貼り合わせ境界Dを撮影する。撮影手段17は、例えば赤外線カメラとすることができる。
【0031】
解析装置18は、以下に詳述するように、撮影手段17により撮影された貼り合わせウェーハCの画像から貼り合わせ境界Dの伝播形状を解析し、該伝播形状に基づいて貼り合わせ後のウェーハにおけるボイドを検出する。
【0032】
記憶部18aは、撮影手段17により貼り合わせの開始から終了までに所定の時間間隔で撮影された画像を格納するとともに、活性側ウェーハAと支持側ウェーハBとの界面における貼り合わせ境界Dの位置毎に予め求められた、ボイドが発生しない場合に対する貼り合わせ境界Dについての曲率を曲率条件値として格納する。
【0033】
貼り合わせ境界検出部18bは、記憶部18aに格納された時間的に連続する2枚の画像から、貼り合わせウェーハC中に存在する貼り合わせ境界Dを検出する。
【0034】
曲率算出部18cは、貼り合わせ境界検出部18bにより検出された貼り合わせ境界Dを二次曲線で近似し、該二次曲線の頂点での曲率を求める。
【0035】
判定部18dは、曲率算定部18cにより求められた曲率と、記憶部18aに格納された曲率条件値とを比較して誤差を求め、後に詳述するように、得られた誤差が10%を超える場合には、貼り合わせウェーハC中にボイドが存在すると判定する。
【0036】
表示装置19は、撮影手段17により撮影された貼り合わせウェーハCの画像を表示し、作業者がウェーハの貼り合わせの進行状況を目視できるように構成されている。
【0037】
制御装置20は、活性側ウェーハAおよび支持側ウェーハBを貼り合わせて貼り合わせウェーハCを製造するように、貼り合わせチャンバ15内に設けられたステージ15bを制御する。
【0038】
良品ウェーハカセット21aおよび不良品ウェーハカセット21bは、貼り合わせチャンバ15内にて製造された貼り合わせウェーハCのうち、良品および不良品と判定されたウェーハをそれぞれ格納する。
【0039】
このようなボイド検出装置2により、貼り合わせウェーハ中のボイドの存在を検出することが可能になる。また、ボイド検出装置2が組み込まれた貼り合わせウェーハ製造装置1を使用することにより、ボイドが存在しない貼り合わせウェーハを製造することができる。
【0040】
次に、本発明のボイドの検出方法について説明する。
本発明の検出方法は、2枚のウェーハを貼り合わせ、接合して貼り合わせウェーハを製造するに当たり、貼り合わせ過程における接合部と非接合部との境界が描く伝播形状に基づいて、当該貼り合わせ後のウェーハにおけるボイドを検出することに特徴を有している。この貼り合わせ後のウェーハにおけるボイドの有無は、実際にボイドの発生のないウェーハにおける伝播形状と当該貼り合わせ後のウェーハにおける伝播形状との対比にて判定し、該貼り合わせ境界の形状を二次曲線で近似して該二次曲線の頂点での曲率を求め、得られた曲率と貼り合わせ境界の位置毎に予め求められたボイドが発生しない場合の曲率とを比較して誤差を求め、得られた誤差が所定の値を超える場合には、貼り合わせウェーハにボイドが存在すると判定する。
【0041】
本発明においては、図1に示す貼り合わせウェーハ製造装置1において、貼り合わせチャンバ15内のステージ15bに載置された支持側ウェーハB(活性側ウェーハA)の主面上の端部の一点にて活性側ウェーハA(支持側ウェーハB)の端部の一点を重ねて貼り合わせ、接合することにより貼り合わせウェーハCを製造する。
【0042】
その際、貼り合わせの開始から終了まで、貼り合わせ境界Dの伝播状況を常時観察するようにする。具体的には、所定の時間間隔毎(即ち、貼り合わせ境界の位置毎)に、撮影手段17により貼り合わせチャンバ15の外蓋15aを介して貼り合わせウェーハCの主面を撮影する。すると、図2(a)に模式的に示すような画像が得られ、貼り合わせウェーハC中に存在する貼り合わせ境界Dが撮影される。撮影された画像を表示装置19に表示するとともに記憶部18aに格納する。
【0043】
記憶部18aに格納された時間的に連続する2枚の画像の差分、即ち画像の各画素の輝度値の差を求め、適切な画像処理を施すことにより、図2(b)に示すように、撮影する時間間隔の間に貼り合わせ境界Dが伝播した領域を抽出することができる。撮影する時間間隔が十分に小さい場合、例えば0.05秒の場合には、貼り合わせ境界Dの伝播形状は曲線とみなすことができる。
【0044】
上述のように、発明者らは、ボイドが発生しない場合には、貼り合わせ境界Dの伝播形状を二次関数で近似した際の該二次関数の頂点での曲率が、貼り合わせ境界Dの位置毎にほぼ所定の範囲内に存在し、貼り合わせ境界Dの位置毎に、平均値に対する誤差はほぼ10%以下であることが判明した。一方、ボイドが発生する場合には、図3(a)に示すように、貼り合わせ境界Dの形状が大きく歪み、貼り合わせ境界Dの伝播が進行すると、図3(b)に示すようにボイドEが発生する。そこで、貼り合わせ境界Dの位置毎に、ボイドEが発生しなかった場合の曲率の平均値を曲率条件値として予め求めておき、記憶部18aに格納しておく。
【0045】
このようにボイドEが発生しなかった場合の曲率条件値を予め用意した状態で、実際に活性側ウェーハAと支持側ウェーハBとを貼り合わせて貼り合わせウェーハCを製造する際に、以下の判定処理を行って貼り合わせウェーハCにおけるボイドEの有無を判定する。即ち、まず、所定の時間間隔にて撮影手段17により貼り合わせウェーハCの主面を撮影し、撮影された画像を記憶部18aに格納する。
【0046】
次いで、貼り合わせ境界検出部18bにより、記憶部18aに格納された時間的に連続する2枚の画像を読み出し、該2枚の画像の差分を求めて貼り合わせ境界Dを抽出する。続いて、曲率算出部18cにより、貼り合わせ境界Dを二次曲線で近似して該二次曲線の頂点での曲率を算出する。最後に、判定部18dにより、実際の曲率と、記憶部18aに格納された曲率条件値とを比較し、該曲率条件値に対する実際の曲率の誤差が10%を超える場合には、ボイドEが存在すると判定する。
【0047】
こうして、貼り合わせウェーハを製造する際に、該貼り合わせウェーハに存在するボイドを高精度に検出することができる。
【0048】
尚、上述の貼り合わせ境界Dに対する曲率は、ウェーハのサイズや表面状態、減圧レベル、貼り合わせ開始位置等の貼り合わせ条件により変化するため、各貼り合わせ条件に対して曲率条件値を予め用意し、記憶部18aに格納しておき、ボイドEの検出の際には、実際の貼り合わせ条件に対する曲率条件値を使用するようにする。
【0049】
上述のような、貼り合わせ境界Dを二次曲線で近似し、該二次曲線の頂点での曲率を貼り合わせウェーハ内でのボイドの存在の判定条件とすることでボイドEの有無を精度よく判定できるが、貼り合わせウェーハの最外周部付近においてはボイドEを伝播形状の変化として検出できない虞もあるため、貼り合わせ境界Dの伝播形状の変化の検出に加えて、貼り合わせ境界Dの伝播速度を加味することにより、ボイドEの有無の判定精度を更に向上させることができる。即ち、図4(a)〜(c)に示すように貼り合わせ境界Dが伝播する際に、ボイドEが発生しない場合の貼り合わせ境界Dの伝播速度について検討したところ、曲率の場合と同様に、貼り合わせ境界Dの位置毎に、平均値に対する誤差はほぼ10%以下であることが判明した。
【0050】
そこで、図5に示すように、解析装置18が貼り合わせ境界Dの伝播速度を算出する伝播速度算出部18eを更に備えるように構成し、また、曲率の場合と同様に、貼り合わせウェーハCにボイドEが発生しない場合の伝播速度の平均値を伝播速度条件値として貼り合わせ境界Dの位置毎に予め求めておき、記憶部18aに格納しておく。そして、2枚のウェーハを貼り合わせ、接合して貼り合わせウェーハCを製造する際に、貼り合わせ境界Dの各位置において、貼り合わせ境界Dの実際の伝播速度を求め、該実際の伝播速度と記憶部18aから読み出した予め求めた伝播速度条件値と比較し、該伝播速度条件値に対する実際の伝播速度の誤差が10%を超える場合には、貼り合わせウェーハC内にボイドEが存在すると判定するようにする。
【0051】
こうして、判定部18dにより貼り合わせウェーハ中にボイドが存在するか否かを判定する際に、貼り合わせ境界の伝播形状を二次曲線で近似して該二次曲線の頂点での曲率に加えて、貼り合わせ境界の伝播速度を加味することにより、貼り合わせウェーハ中に存在するボイドを確実に検出することができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例について説明する。
(発明例1)
図1に示した本発明のボイド検出装置2が組み込まれた貼り合わせウェーハ製造装置1を用いて300枚の貼り合わせウェーハCを製造し、該貼り合わせウェーハC中のボイドEの有無を判定した。その際、貼り合わせ境界Dの伝播形状を二次曲線で近似した際の頂点での曲率のみを考慮した。具体的な手順は以下の通りである。
活性側ウェーハAおよび支持側ウェーハBとして、直径200mmの単結晶シリコンウェーハを用意し、この内、活性側ウェーハAの表面のみに酸化膜が形成されている。まず、活性側ウェーハAを活性側ウェーハカセット11aから取り出し、ウェーハアライナ13を経由して位置合わせをした後、減圧可能な貼り合わせチャンバ15内のステージ15b上に載置した。次いで、支持側ウェーハBを、ウェーハアライナ13を経由して位置合わせをした後、貼り合わせチャンバ15内のステージ15b上に載置された活性側ウェーハA上に載せた。この時点では、まだ貼り合わせの伝播は開始されていない。
続いて、貼り合わせチャンバ15内を0.1kPaへ減圧し、ウェーハの終端領域から加重を加えて貼り合わせ境界Dの伝播の開始とともに貼り合わせ境界Dの伝播形状の画像の取得を開始し、0.05秒毎に画像を保存した。
その後、貼り合わせ処理が完了した後、保存された貼り合わせ境界Dの伝播形状の画像の解析を行い、貼り合わせウェーハC中のボイドEの有無を判定した。その際、貼り合わせ境界Dを二次曲線で近似した際の頂点での曲率のみに基づいて判定した。
最後に、貼り合わせチャンバ15内を常圧に戻した後、貼り合わせ処理が完了した貼り合わせウェーハCを上記判定結果に基づいて良品および不良品の判定を行い、良品と判定された貼り合わせウェーハCは良品ウェーハカセット21aに、不良品と判定された貼り合わせウェーハCは不良品ウェーハカセット21bに収納した。この処理を連続300枚繰り返し、ボイドEの有無を判定した。
上記判定の結果、2枚についてはボイドが存在する不良品と判定され、残りの298枚についてはボイドが存在しない良品と判定された。次に、不良品と判定されたウェーハ2枚を、従来のボイド検査装置を使用して、作業者が1枚毎に、赤外光を用いて目視検査を行ったところ、2枚ともボイドEが存在することを確認した。同様に、上記の良品と判定された298枚のウェーハに対して目視検査を行ったところ、全て良品であることが確認された。また、ボイドEが観察された2枚のウェーハの内、1枚のウェーハには0.5mm程度の非常に小さなサイズのボイドEが観察された。これは、本発明のボイド検出装置2は、微小なボイドであっても伝播形状の変化として確実に検出できることを示している。
【0053】
(発明例2)
発明例1の場合と同様に、図1に示した本発明のボイド検出装置2が組み込まれた貼り合わせウェーハ製造装置1を用いて300枚の貼り合わせウェーハCを製造し、該貼り合わせウェーハC中のボイドEの有無を判定した。その際、貼り合わせ境界Dの伝播形状を二次曲線で近似した際の頂点での曲率に加えて、貼り合わせ境界Dの伝播速度も加味して判定した。
その結果、1枚についてはボイドEが存在する不良品と判定され、残りの299枚についてはボイドEが存在しない良品と判定された。次に、不良品と判定されたウェーハ1枚を、従来のボイド検査装置、即ち、作業者が1枚毎に、赤外光を用いて目視検査を行ったところ、ウェーハ最外周部(最外周から5mm以内の領域)でボイドEが存在することを確認した。同様に、上記の良品と判定され299枚のウェーハに対して目視検査を行ったところ、全て良品であることが確認された。これは、本発明の伝播速度を加味したボイド検出装置2は、ウェーハ最外周部で発生した微小なボイドであっても確実に検出できることを示している。
【0054】
(比較例)
発明例1と同様に、図1に示した本発明のボイド検出装置2が組み込まれた貼り合わせウェーハ製造装置1を用いて300枚の貼り合わせウェーハCを製造し、該貼り合わせウェーハC中のボイドEの有無を判定し、製造した貼り合わせウェーハCを回収した。その際、貼り合わせウェーハCの製造およびボイドEの有無の判定を発明例1と同様に行った。その結果、3枚が不良品、297枚が良品と判定された。
次に、不良品と判定された3枚のウェーハの裏面に付与されている識別番号を確認した後、良品と判定された297枚の中にランダムに装入し、300枚の貼り合わせウェーハCとした。
続いて、この300枚の貼り合わせウェーハCを、従来の作業者の目視によるボイド検査を行った。その際、装置にて判定された結果は、目視検査を行う作業者には通知しなかった。その結果、2枚は不良品、298枚は良品と判定された。
この目視検査により不良品と判定された2枚のウェーハの識別番号と、本発明のボイド検査装置2により不良品と判定されたウェーハの識別番号とを照合した結果、一致していることが確認された。但し、ボイド検査装置2で判定された不良品ウェーハ3枚のうち、1枚は目視検査では良品と判定されていた。そこで、この目視検査により良品と判定され、かつボイド検査装置2により不良品と判定されたウェーハに対して再度目視検査を実施したところ、0.5mmサイズの微小なボイドEが存在することが分かった。このように、目視検査では、ボイドの存在を見逃す場合があることが分かる。
【符号の説明】
【0055】
1 貼り合わせウェーハ製造装置
2 ボイド検出装置
11a 活性側ウェーハカセット
11b 支持側ウェーハカセット
12 ウェーハ搬送手段
13 ウェーハアライナ
14 赤外光源
15 貼り合わせチャンバ
15a 外蓋
15b ステージ
16 減圧手段
17 撮影手段
18 解析装置
18a 記憶部
18b 貼り合わせ境界検出部
18c 曲率算出部
18d 判定部
18e 伝播速度算出部
19 表示装置
20 制御装置
21a 良品ウェーハカセット
21b 不良品ウェーハカセット
A 活性側ウェーハ
B 支持側ウェーハ
C 貼り合わせウェーハ
D 貼り合わせ境界
E ボイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚のウェーハを貼り合わせ、接合して貼り合わせウェーハを製造するに当たり、
前記貼り合わせ過程における接合部と非接合部との境界が描く伝播形状に基づいて、当該貼り合わせ後のウェーハにおけるボイドの有無を判定することを特徴とするボイドの検出方法。
【請求項2】
前記貼り合わせ後のウェーハにおけるボイドの有無は、実際にボイドの発生のないウェーハにおける前記伝播形状と当該貼り合わせ後のウェーハにおける伝播形状との対比にて判定することを特徴とする、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
前記伝播形状の対比は、前記境界の位置毎に撮影手段により撮影された前記貼り合わせウェーハの画像から前記境界を検出し、次いで該境界の伝播形状を二次曲線で近似して求められた該二次曲線の頂点での実際の曲率を以て行い、
前記実際にボイドの発生のないウェーハについて、前記境界の位置毎に前記伝播形状を二次曲線で近似し、該二次曲線の頂点での曲率を曲率条件値として予め求めておき、
前記曲率条件値に対する前記実際の曲率の誤差が所定値を超える場合には、前記貼り合わせウェーハにボイドが存在すると判定することを特徴とする、請求項2に記載の検出方法。
【請求項4】
前記ボイドの有無の判定の際に、前記境界の伝播速度を加味することを特徴とする、請求項1〜3に記載の検出方法。
【請求項5】
前記ボイドの発生のないウェーハについて、前記境界の位置毎に、前記伝播速度を伝播速度条件値として予め求めておき、
前記境界の位置毎に、前記境界の実際の伝播速度を求めた後、前記伝播速度条件値に対する前記実際の伝播速度の誤差が所定値を超える場合には、前記貼り合わせウェーハにボイドが存在すると判定することを特徴とする、請求項4に記載の検出方法。
【請求項6】
2枚のウェーハを貼り合わせ、接合して貼り合わせウェーハを製造する際に、該貼り合わせウェーハ中のボイドを検出する装置において、
前記貼り合わせ過程における接合部と非接合部との境界が描く伝播形状に基づいて、当該貼り合わせ後のウェーハにおけるボイドを検出する解析装置を備えることを特徴とするボイドの検出装置。
【請求項7】
前記解析装置は、
前記境界の位置毎に予め求められた、ボイドが発生しない場合の前記境界の伝播形状についての曲率を曲率条件値として格納するとともに、撮影装置により撮影された前記貼り合わせウェーハの画像を格納する記憶部と、
前記境界を二次曲線で近似して該二次曲線の頂点での実際の曲率を求める曲率算定部と、
前記曲率条件値に対する前記実際の曲率の誤差が所定値を超える場合には、前記2枚のウェーハの界面にボイドが存在すると判定する判定部と、
を備えることを特徴とする、請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記解析装置は、前記境界の実際の伝播速度を求める伝播速度算定部を更に備え、
前記記憶部は、前記境界の位置毎に予め求められた、ボイドが発生しない場合の前記境界の伝播速度を伝播速度条件値として更に格納しており、
前記判定部は、前記伝播速度条件値に対する前記実際の伝播速度の誤差が所定値を超える場合には、前記貼り合わせウェーハにボイドが存在すると判定することを特徴とする、請求項7に記載の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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