説明

ボイラ再熱蒸気温度制御装置及び方法

【課題】タービン効率を低下させることなく良好な制御性を有するボイラ再熱蒸気温度制御装置を提供することにある。
【解決手段】ボイラの過熱器の出口温度と再熱器の出口温度設定値との偏差に基づいて、再熱器出口ダンパ15と減温器スプレー水流量調節弁17とを用いてボイラの再熱器14の温度制御を行うボイラ再熱蒸気温度制御装置において、減温器スプレー水流量調節弁17により減温器スプレー水流量を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に制御する減温器スプレー水流量制御部20と、減温器スプレー水流量調節弁17の開度指令をゼロにするように再熱器出口ダンパの開度を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に制御する再熱器出口ダンパ制御部19とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電プラントのボイラの過熱器の出口温度と再熱器の出口温度設定値との偏差に基づいて、再熱器出口ダンパと減温器スプレー水流量調節弁とを用いてボイラの再熱器の温度制御を行うボイラ再熱蒸気温度制御装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラントには事業用あるいはIPP(Independent Power Producer)用などの火力発電プラントがある。通常、これらの火力発電プラントではボイラを有している。また、ボイラで発生した蒸気を高圧タービンに導き、高圧タービンで仕事を終えた蒸気を再び再熱器で過熱して低圧タービンに導くようにした再熱蒸気系を有した火力発電プラントがある。このような火力発電プラントでは、再熱蒸気温度は、再熱器出口ダンパ制御と減温器スプレー水流量制御とで行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は、従来の火力発電プラントにおけるボイラ再熱蒸気温度制御装置のブロック構成図である。ボイラで発生した蒸気は過熱器11及び減温器12にて温度制御され、高圧タービン13に供給される。そして、高圧タービン13で仕事を終えた蒸気は、一旦、ボイラの再熱器14により加熱され、再熱器出口ダンパ15で温度が調整されて低圧タービン16に導かれる。減温器12はスプレー水流量調整弁17からのスプレー水量により温度調整が行われる。
【0004】
低圧タービン16に供給される再熱蒸気の温度制御は、ボイラ再熱蒸気温度制御装置18により行われる。ボイラ再熱蒸気温度制御装置18は、再熱器出口ダンパ15の開度を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に制御する再熱器出口ダンパ制御部19と、減温器スプレー水流量調節弁17により減温器スプレー水流量を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に制御する減温器スプレー水流量制御部20とから構成される。
【0005】
再熱器出口ダンパ制御部19は、減算器21で再熱器出口温度設定値Tr1と過熱器出口温度T1との偏差ΔT1をとり、PID制御器22にて制御演算して再熱器出口ダンパ15を制御する。減温器スプレー水流量制御部20は、再熱器出口温度設定値Tr1とバイアス値Tbとを加算器23で加算し、その加算した信号と過熱器出口温度T1との偏差を減算器24により演算する。そして、その結果得られる偏差ΔT2をPID制御器25にて制御演算し、開度制限器26により制限を掛けて減温器スプレー水流量調節弁17の開度を調節する。つまり、減温器スプレー水流量制御部20は、温度偏差ΔT1が大きくなった場合のバックアップとして動作するように構成されている。
【0006】
減温器スプレー水流量制御部20による制御は制御性は良いが、スプレー水を吹きかけることによる効率の低下があり、再熱器出口ダンパ制御部19による制御は時定数が大きく制御性が悪いが効率の低下は小さい。そこで、効率面を重視して再熱器出口ダンパ制御を優先し、減温器スプレー水流量制御をバックアップとしている。
【特許文献1】特開平8−135405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来のボイラ再熱蒸気温度制御装置においては、時定数が大きい再熱器出口ダンパ制御を優先としているため制御性が悪い。また、再熱器出口ダンパ制御の制御性が悪いので、減温器スプレー水流量制御が動作すると、減温器スプレー水流量制御ではスプレー水を吹きかけることにより温度制御するので、タービン効率が低下することになる。
【0008】
本発明の目的は、タービン効率を低下させることなく良好な制御性を有するボイラ再熱蒸気温度制御装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のボイラ再熱蒸気温度制御装置は、ボイラの過熱器の出口温度と再熱器の出口温度設定値との偏差に基づいて、再熱器出口ダンパと減温器スプレー水流量調節弁とを用いてボイラの再熱器の温度制御を行うボイラ再熱蒸気温度制御装置において、前記減温器スプレー水流量調節弁により減温器スプレー水流量を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に制御する減温器スプレー水流量制御部と、前記減温器スプレー水流量調節弁の開度指令をゼロにするように前記再熱器出口ダンパの開度を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に制御する再熱器出口ダンパ制御部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明のボイラ再熱蒸気温度制御方法は、ボイラの過熱器の出口温度と再熱器の出口温度設定値との偏差に基づいて、再熱器出口ダンパと減温器スプレー水流量調節弁とを用いてボイラの再熱器の温度制御を行うボイラ再熱蒸気温度制御方法において、前記減温器スプレー水流量調節弁により減温器スプレー水流量を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に減温器スプレー水流量制御するとともに、前記減温器スプレー水流量調節弁の開度指令をゼロにするように前記再熱器出口ダンパの開度を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に再熱器出口ダンパ制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、再熱器出口蒸気温度をその設定値に制御するために減温器スプレー水流量を調節する減温器スプレー水流量制御と、減温器スプレー水流量調節弁の開度指令をゼロにするように再熱器出口ダンパ開度を調節する再熱器出口ダンパ制御とを協調して動作させるので、タービン効率を低下させることなく良好な制御性を維持して再熱器出口蒸気温度を制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係わるボイラ再熱蒸気温度制御装置の構成図である。ボイラ再熱蒸気温度制御装置18は、再熱器出口ダンパ15の開度を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に制御する再熱器出口ダンパ制御部19と、減温器スプレー水流量調節弁17により減温器スプレー水流量を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に制御する減温器スプレー水流量制御部20とから構成される。
【0013】
減温器スプレー水流量制御部20は、再熱器出口温度設定値Tr1と過熱器出口温度T1とを減算器24により減算し、その結果得られる偏差ΔT3をPID制御器25にて制御演算し、開度制限器26を通して減温器スプレー水流量調節弁17の開度を調節する。
【0014】
一方、再熱器出口ダンパ制御部19は、減温器スプレー水流量調節弁17のゼロ開度指令値H0を設定値とし、PID制御器25からの減温器スプレー水流量調節弁17の開度要求値Hとの偏差ΔHを減算器27により演算し、PID制御器28により、減温器スプレー水流量調節弁17の開度指令がゼロになるように再熱器出口ダンパ15の開度を調節する。すなわち、再熱器出口ダンパ制御部19は、減温器スプレー水流量調節弁17の開度指令をゼロにするように、再熱器出口ダンパ15の開度を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に制御する。
【0015】
この場合、減温器スプレー水流量制御と再熱器出口ダンパ制御とは、従来のボイラ再熱蒸気温度制御装置での制御方法とは異なり、別々の設定値とプロセス値とを使用した制御となっているため、両制御系が干渉することはない。
【0016】
第1の実施の形態によれば、減温器スプレー水流量制御と再熱器出口ダンパ制御とを協調させて動作させるので、早い温度変化に対しては、制御性の良い減温器スプレー水流量制御で対応し、一方、再熱器出口ダンパ制御によりスプレー水がゼロになる運転点でゆっくりとバランスすることができる。このため、減温器スプレー水流量調節弁17の開度を抑え、スプレー水の流量を少なくすることになり効率の低下を防ぐことができる。
【0017】
(第2の実施の形態)
図2は本発明の第2の実施の形態に係わるボイラ再熱蒸気温度制御装置の構成図である。図2に示すように、ボイラ再熱蒸気温度制御装置18は、再熱器出口ダンパ15の開度を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に制御する再熱器出口ダンパ制御部19と、減温器スプレー水流量調節弁17により減温器スプレー水流量を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に制御する減温器スプレー水流量制御部20とから構成される。
【0018】
再熱器出口ダンパ制御部19は、過熱器出口温度が再熱器出口温度設定値になるように再熱器出口ダンパの開度を調節する第1制御系29と、減温器スプレー水流量調節弁17の開度指令をゼロにするように再熱器出口ダンパの開度を調節する第2制御系30とを有し、さらに、過熱器出口温度T1が再熱器出口温度設定値Tr1にバイアス値Tbを加えた値以下か否かを判定する比較器31と、比較器31の比較結果が「以下」の場合には第1制御系29の出力を選択し「以下」でないときは第2制御系30の出力を選択する切換器32とを備えている。
【0019】
一方、減温器スプレー水流量制御部20は、再熱器出口温度設定値Tr1とバイアス値Tbとを加算器23で加算し、その加算した信号と過熱器出口温度T1との偏差を減算器24により演算する。そして、その結果得られる偏差ΔT2をPID制御器25にて制御演算し、開度制限器26により制限を掛けて減温器スプレー水流量調節弁17の開度を調節する。
【0020】
すなわち、再熱器出口ダンパ制御部19は、再熱器出口温度設定値Tr1と過熱器出口温度T1との偏差ΔT1をPID制御器22にて制御演算し、再熱器出口ダンパ15を制御する第1制御系29による制御系と、減温器スプレー水流量調節弁17のゼロ開度指令値H0を設定値とし、PID制御器28により、減温器スプレー水流量調節弁17の開度指令がゼロになるように再熱器出口ダンパ15の開度を調節する第2制御系による制御系との両方を持つ。
【0021】
そして、再熱器出口温度設定値Tr1とバイアス値Tbとを加算器23で加算した加算値(Tr1+Tb)と過熱器出口温度T1との偏差(Tr1+Tb−T1)を減算器24により演算し、その結果得られる偏差ΔT2を比較器31で比較する。比較の結果、過熱器出口温度T1の方が加算値(Tr1+Tb)より大きい場合には、切換器32は第2制御系30の出力を選択する。つまり、再熱器出口ダンパ制御部19は、減温器スプレー水流量調節弁17の開度指令をゼロにするように再熱器出口ダンパ15の開度を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に制御する。
【0022】
過熱器出口温度T1の方が加算値(Tr1+Tb)より大きい場合には、減温器スプレー水流量制御が動作する状態であるため、減温器スプレー水流量制御部20による減温器スプレー水流量制御も行われている。これにより、減温器スプレー水流量制御と再熱器出口ダンパ制御との協調制御が行われる。従って、減温器スプレー水流量調節弁17の開度を抑え、スプレー水の流量を少なくすることになり効率の低下を防ぐことができる。
【0023】
また、比較器31での比較の結果、過熱器出口温度T1の方が加算値(Tr1+Tb)より小さい場合には、切換器32により第1制御系29が選択される。すなわち、過熱器出口温度T1の方が加算値(Tr1+Tb)より小さい場合には、減温器スプレー水流量制御部20よる減温器スプレー水流量制御が動作しないため、第1制御系29により、再熱器出口温度設定値Tr1と過熱器出口温度T1との偏差ΔT1がなくなるように制御される。
【0024】
第2の実施の形態によれば、第1制御系29による再熱器出口ダンパ制御と、第2制御系による減温器スプレー水流量制御と再熱器出口ダンパ制御との協調制御とを切り換える機能を持つので、スプレー水流量が最小となるように制御でき、効率の低下を防ぐことができる。
【0025】
(第3の実施の形態)
図3は本発明の第3の実施の形態に係わるボイラ再熱蒸気温度制御装置の構成図である。この第3の実施の形態は、図2に示した第2の実施の形態に対し、ゲート回路33を追加して設け、運転員による切換指令信号Sによりゲート回路33を開くようにしたものである。その他の構成は、図2に示した第2の実施の形態と同一であるので、同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0026】
図3に示すように、運転員による切換指令信号Sはゲート回路33に入力される。ゲート回路33には比較器31の出力も入力されており、比較器31は過熱器出口温度T1の方が加算値(Tr1+Tb)より大きい場合に論理値「1」を出力する。従って、ゲート回路33は、過熱器出口温度T1の方が加算値(Tr1+Tb)より大きい場合に、その比較器31の出力信号を切換器32に出力することを許可するものである。
【0027】
これにより、通常状態では第1制御系29の出力信号で再熱器出口ダンパ15を制御し、比較器31により過熱器出口温度T1の方が加算値(Tr1+Tb)より大きいと判断された状態で、かつ、運転員からの切換指令信号Sがあったときに、第1制御系29の出力信号から第2制御系30の出力信号に切り換えが行われ、第2制御系30の出力信号で再熱器出口ダンパ15が制御される。
【0028】
第3の実施の形態によれば、切換器32の切換条件として、比較器31の条件成立と運転員の切換指令信号Sとのアンド条件としたので、運転員の判断で第1制御系29による再熱器出口ダンパ制御と第2制御系による再熱器出口ダンパ制御を切り換えることができる。つまり、第2制御系による減温器スプレー水流量制御と再熱器出口ダンパ制御との協調制御を運転員の判断で選択できる。
【0029】
(第4の実施の形態)
図4は本発明の第4の実施の形態に係わるボイラ再熱蒸気温度制御装置の構成図である。この第4の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、関数発生器34を設け、この関数発生器34により、再熱器出口温度設定値Tr1と過熱器出口温度T1との偏差ΔT3に基づいて、再熱器出口ダンパ制御部19のPID制御器28のゲインを可変とするようにしたものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明を省略する。
【0030】
図4において、減温器スプレー水流量制御部29による減温器スプレー水流量制御と、再熱器出口ダンパ制御部19による再熱器出口ダンパ制御との協調制御において、減算器24により得られる再熱器出口温度設定値Tr1と過熱器出口温度T1との偏差ΔT3を関数発生器34に入力し、関数発生器34は偏差ΔT3に基づいてPID制御器28のゲインを算出する。
【0031】
関数発生器34で算出するゲインは、偏差ΔT3がマイナスのときは、その絶対値が大きくなるほど大きくなるように算出される。これにより、再熱器出口ダンパ15の減温動作を大きくし、減温器スプレー水流量調節弁17の開動作によるスプレー水流量を小さくする。
【0032】
第4の実施の形態によれば、再熱器出口温度設定値Tr1と過熱器出口温度T1との偏差ΔT3に基づいて再熱器出口ダンパ制御部19のPID制御器28のゲインを可変とし、偏差ΔT3がマイナスになるほどゲインを大きくするので、再熱器出口ダンパ15の減温動作を大きくし、減温器スプレー水流量調節弁17の開動作によるスプレー水流量を最小となるような制御となり、ボイラの効率の低下を防ぐことができる。
【0033】
(第5の実施の形態)
図5は本発明の第5の実施の形態に係わるボイラ再熱蒸気温度制御装置の構成図である。この第5の実施の形態は、図2に示した第2の実施の形態に対し、再熱器出口ダンパ制御部19の第2制御系30に関数発生器34を設け、この関数発生器34により、再熱器出口温度設定値Tr1にバイアス値Tbを加算した加算値(Tr1+Tb)と過熱器出口温度T1との偏差ΔT2に基づいて、再熱器出口ダンパ制御部19のPID制御器28のゲインを可変とするようにしたものである。図2と同一要素には同一符号を付し重複する説明を省略する。
【0034】
図5に示すボイラ再熱蒸気温度制御装置18は、再熱器出口ダンパ制御部19の第1制御系29による再熱器出口ダンパ制御と、再熱器出口ダンパ制御部19の第2制御系30の再熱器出口ダンパ制御と減温器スプレー水流量制御との協調制御とを切り換える機能を持つ。
【0035】
このボイラ再熱蒸気温度制御装置18において、減温器スプレー水流量制御と再熱器出口ダンパ制御との協調制御を行う第2制御系のPID制御器28のゲインを関数発生器34により可変とする。関数発生器34は、減算器24により得られる再熱器出口温度設定値Tr1にバイアス値Tbを加算した加算値(Tr1+Tb)と過熱器出口温度T1との偏差ΔT2に基づいてゲインを算出する。関数発生器34にて算出する可変ゲインは、偏差ΔT2がマイナスになるほど大きくなるようにする。
【0036】
第5の実施の形態によれば、再熱器出口温度設定値Tr1にバイアス値Tbを加算した加算値(Tr1+Tb)と過熱器出口温度T1との偏差ΔT2に基づいて再熱器出口ダンパ制御部19のPID制御器28のゲインを可変とし、偏差ΔT3がマイナスになるほどゲインを大きくするので、再熱器出口ダンパ15の減温動作を大きくし、減温器スプレー水流量調節弁17の開動作によるスプレー水流量を最小となるような制御となり、ボイラの効率の低下を防ぐことができる。
【0037】
(第6の実施の形態)
図6は本発明の第6の実施の形態に係わるボイラ再熱蒸気温度制御装置の構成図である。この第6の実施の形態は、図2に示した第2の実施の形態に対し、比較器31及び切換器32に代えて比較選択器35を設け、比較選択器35により、第1制御系29の出力と第2制御系30の出力とのうち大きい方を選択して再熱器出口ダンパに出力するようにしたものである。図2と同一要素には同一符号を付し重複する説明を省略する。
【0038】
再熱器出口ダンパ制御部19の第1制御系29は、再熱器出口温度設定値Tr1と過熱器出口温度T1との偏差ΔT1を減算器21で求め、PID制御器22にて制御演算して再熱器出口ダンパ15を制御する。また、再熱器出口ダンパ制御部19の第2制御系30は、PID制御器25からの減温器スプレー水流量調節弁17の開度要求値Hとの偏差ΔHを減算器27により演算し、PID制御器28により、減温器スプレー水流量調節弁17の開度指令がゼロになるように再熱器出口ダンパ15の開度を調節する。
【0039】
比較選択器35は、第1制御系29の出力信号と第2の制御系30の出力信号とを入力し、第1制御系29の出力信号と第2制御系30の出力信号とを比較する。そして、比較選択器35は、第1制御系29の出力と第2制御系30の出力とのうち大きい方を選択して再熱器出口ダンパ15に出力する。
【0040】
第6の実施の形態によれば、第2制御系30の出力信号が大きい場合には、減温器スプレー水流量制御が動作し、再熱器出口ダンパ制御と再熱器出口ダンパ制御との協調制御が比較選択器35により選択されるので、再熱器出口ダンパ15による減温効果をより早く動作させることができる。これにより、減温器スプレー水流量調節弁17の開度を抑え、スプレー水の流量を少なくすることになり、ボイラの効率の低下を防ぐことができる。
【0041】
(第7の実施の形態)
図7は本発明の第7の実施の形態に係わるボイラ再熱蒸気温度制御装置の構成図である。この第7の実施の形態は、図2に示した第2の実施の形態に対し、第1制御系29の出力と第2制御系30の出力とのうち大きい方を選択して再熱器出口ダンパに出力する比較選択器35を設け、切換器32は、比較器31の比較結果に基づき、過熱器出口温度T1が再熱器出口温度設定値Tr1にバイアス値Tbを加えた値以下のときは第1制御系29の出力を選択し、過熱器出口温度T1が再熱器出口温度設定値Tr1にバイアス値Tbを加えた値以下でないときは比較選択器35の出力を選択して再熱器出口ダンパ35に出力するようにしたものである。図2と同一要素には同一符号を付し重複する説明を省略する。
【0042】
図7において、再熱器出口ダンパ制御部19の第1制御系29は、再熱器出口温度設定値Tr1と過熱器出口温度T1との偏差ΔT1を減算器21で求め、PID制御器22にて制御演算して再熱器出口ダンパ15を制御する。また、再熱器出口ダンパ制御部19の第2制御系30は、PID制御器25からの減温器スプレー水流量調節弁17の開度要求値Hとの偏差ΔHを減算器27により演算し、PID制御器28により、減温器スプレー水流量調節弁17の開度指令がゼロになるように再熱器出口ダンパ15の開度を調節する。
【0043】
再熱器出口温度設定値Tr1とバイアス値Tbとを加算器23で加算した値(Tr1+Tb)と過熱器出口温度T1との偏差(Tr1+Tb−T1)を減算器24により演算し、その偏差ΔT2を比較器31で比較する。そして、過熱器出口温度T1の方が加算値(Tr1+Tb)より大きい場合には、比較選択器35の出力信号が選択される。
【0044】
過熱器出口温度T1が加算値(Tr1+Tb)より大きい場合には、減温器スプレー水流量制御が動作する。このため、再熱器出口ダンパ制御と減温器スプレー水流量制御との協調制御となり、その場合の再熱器出口ダンパ制御の要求値は、第1制御系29の出力と第2制御系30の出力とのうち大きい方である。一方、過熱器出口温度T1が加算値(Tr1+Tb)より小さい場合には、減温器スプレー水流量制御が動作しない。このため、切換器32により第1制御系29による再熱器出口ダンパ制御が選択される。
【0045】
第7の実施の形態によれば、過熱器出口温度T1が加算値(Tr1+Tb)より小さい場合は第1制御系29による再熱器出口ダンパ制御を行い、過熱器出口温度T1が加算値(Tr1+Tb)より大きい場合は、第2制御系30による再熱器出口ダンパ制御の出力信号または第1制御系29の再熱器出口ダンパ制御の出力信号のいずれか大きい方を比較選択器35で選択して、減温器スプレー水流量制御との協調制御となるので、スプレー水流量が最小となるように制御でき、ボイラの効率の低下を防ぐことができる。
【0046】
(第8の実施の形態)
図8は本発明の第8の実施の形態に係わるボイラ再熱蒸気温度制御装置の構成図である。この第8の実施の形態は、図2に示した第2の実施の形態に対し、比較器31に代えて切換判定部36を設け、切換器32は切換判定器36の出力に基づいて第1制御系29の出力または第2制御系30の出力を切り換えるようにしたものである。切換判定部36は、過熱器出口温度T1が再熱器出口温度設定値Tr1にバイアス値Tbを加えた値より低い温度から蒸気温度の上昇変化を計算し、その蒸気温度上昇変化に基づいて第1制御系29から第2制御系30への切り換えの判定を行う。図2と同一要素には同一符号を付し重複する説明を省略する。
【0047】
図8において、再熱器出口ダンパ制御部19の第1制御系29は、再熱器出口温度設定値Tr1と過熱器出口温度T1との偏差ΔT1を減算器21で求め、PID制御器22にて制御演算して再熱器出口ダンパ15を制御する。また、再熱器出口ダンパ制御部19の第2制御系30は、PID制御器25からの減温器スプレー水流量調節弁17の開度要求値Hとの偏差ΔHを減算器27により演算し、PID制御器28により、減温器スプレー水流量調節弁17の開度指令がゼロになるように再熱器出口ダンパ15の開度を調節する。
【0048】
切換判定部36は第1制御系29から第2制御系30への切り換えの判定を行うものであり、再熱器出口温度設定値Tr1とバイアス値Tbとを加算器23で加算した値(Tr1+Tb)と過熱器出口温度T1との偏差(Tr1+Tb−T1)を減算器24により演算し、その結果得られる偏差ΔT2を微分器37、38で微分する。また、比較器39は過熱器出口温度T1と予め定めた設定温度とを比較し、過熱器出口温度T1が予め定めた設定温度になったとき論理値「1」を出力する。範囲付き比較器40、41は過熱器出口温度T1が予め定めた温度範囲であるときに積分器42、43の動作を許可するものである。
【0049】
いま、過熱器出口温度T1が比較器39で設定した温度より低い温度であるとする。この状態では比較器39の出力は論理値「0」である。この状態で、過熱器出口温度T1が急激に上昇し、その上昇した過熱器出口温度T1が範囲付き比較器40で設定した温度範囲であれば、微分器37の出力値が積分器42で積分され比較器44に入力される。比較器44では、その積分値と予め定めた設定値とを比較し、予め定めた設定値を超えたときは論理値「1」を出力する。
【0050】
一方、過熱器出口温度T1が比較器39で設定した温度より低い温度で、その低い温度から比較器39で設定した温度まで急上昇が継続した場合には、範囲付き比較器41で設定した温度範囲であれば、微分器38の出力値が積分器43で積分され、比較器45は、その積分値と予め定めた設定値とを比較し、予め定めた設定値を超えたときは論理値「1」を出力する。
【0051】
選択器46は、過熱器出口温度T1が急激に上昇した場合には比較器44を選択し、比較器39で設定した温度まで急上昇が継続した場合には比較器45を選択し、比較器39で設定した温度まで急激な温度上昇がない場合には比較器39を選択する。
【0052】
過熱器出口温度T1が上昇すると減温器スプレー水流量制御が動作するため、選択器46により、第2制御系30が選択され、減温器スプレー水流量制御部20による減温器スプレー水流量制御と再熱器出口ダンパ制御との協調制御が行われる。これにより、減温器スプレー水流量調節弁17の開度を抑え、スプレー水の流量を少なくすることになり、ボイラ効率の低下を防ぐことができる。
【0053】
また、過熱器出口温度T1が比較器39で設定した温度より低く、また設定温度まで急激な温度上昇がない場合には、減温器スプレー水流量制御が動作しないため、選択器46により第1制御系29による再熱器出口ダンパ制御が選択されボイラ効率の低下を防ぐことができる。
【0054】
第8の実施の形態によれば、第1制御系29による再熱器出口ダンパ制御と、第2制御系による再熱器出口ダンパ制御と減温器スプレー水流量制御との協調制御を切り換える機能を持つので、スプレー水流量が最小となるように制御でき、ボイラ効率の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わるボイラ再熱蒸気温度制御装置の構成図。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係わるボイラ再熱蒸気温度制御装置の構成図。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係わるボイラ再熱蒸気温度制御装置の構成図。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係わるボイラ再熱蒸気温度制御装置の構成図。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係わるボイラ再熱蒸気温度制御装置の構成図。
【図6】本発明の第6の実施の形態に係わるボイラ再熱蒸気温度制御装置の構成図。
【図7】本発明の第7の実施の形態に係わるボイラ再熱蒸気温度制御装置の構成図。
【図8】本発明の第8の実施の形態に係わるボイラ再熱蒸気温度制御装置の構成図。
【図9】従来例による再熱蒸気温度制御装置の構成図。
【符号の説明】
【0056】
11…過熱器、12…減温器、13…高圧タービン、14…再熱器、15…再熱器出口ダンパ、16…低圧タービン、17…スプレー水流量調整弁、18…ボイラ再熱蒸気温度制御装置、19…再熱器出口ダンパ制御部、20…減温器スプレー水流量制御部、21…減算器、22…PID制御器、23…加算器、24…減算器、25…PID制御器、26…開度制限器、27…減算器、28…PID制御器、29…第1制御系、30…第2制御系、31…比較器、32…切換器、33…ゲート回路、34…関数発生器、35…比較選択器、36…切換判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの過熱器の出口温度と再熱器の出口温度設定値との偏差に基づいて、再熱器出口ダンパと減温器スプレー水流量調節弁とを用いてボイラの再熱器の温度制御を行うボイラ再熱蒸気温度制御装置において、前記減温器スプレー水流量調節弁により減温器スプレー水流量を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に制御する減温器スプレー水流量制御部と、前記減温器スプレー水流量調節弁の開度指令をゼロにするように前記再熱器出口ダンパの開度を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に制御する再熱器出口ダンパ制御部とを備えたことを特徴とするボイラ再熱蒸気温度制御装置。
【請求項2】
ボイラの過熱器の出口温度と再熱器の出口温度設定値との偏差に基づいて、再熱器出口ダンパと減温器スプレー水流量調節弁とを用いてボイラの再熱器の温度制御を行うボイラ再熱蒸気温度制御装置において、前記減温器スプレー水流量調節弁により減温器スプレー水流量を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に制御する減温器スプレー水流量制御部と、前記再熱器出口ダンパの開度を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に制御する再熱器出口ダンパ制御部とを備え、前記再熱器出口ダンパ制御部は、過熱器出口温度が再熱器出口温度設定値になるように再熱器出口ダンパの開度を調節する第1制御系と、前記減温器スプレー水流量調節弁の開度指令をゼロにするように前記再熱器出口ダンパの開度を調節する第2制御系と、過熱器出口温度が再熱器出口温度設定値にバイアス値を加えた値以下か否かを判定する比較器と、前記比較器の比較結果が以下の場合には第1制御系の出力を選択し以下でないときは第2制御系の出力を選択する切換器とを備えたことを特徴とするボイラ再熱蒸気温度制御装置。
【請求項3】
前記第1制御系と前記第2制御系との切換を手動で選択できるようにしたことを特徴とする請求項2記載のボイラ再熱蒸気温度制御装置。
【請求項4】
前記再熱器出口ダンパ制御部のゲインを再熱器出口温度設定値と過熱器出口温度との偏差によって可変としたことを特徴とする請求項1記載のボイラ再熱蒸気温度制御装置。
【請求項5】
前記再熱器出口ダンパ制御部の第2制御系のゲインを再熱器出口温度設定値にバイアス値を加算した加算値と過熱器出口温度との偏差によって可変とすることを特徴とする請求項2記載のボイラ再熱蒸気温度制御装置。
【請求項6】
前記比較器及び前記切換器に代えて、前記第1制御系の出力と前記第2制御系の出力とのうち大きい方を選択して再熱器出口ダンパに出力する比較選択器を設けたことを特徴とする請求項2記載のボイラ再熱蒸気温度制御装置。
【請求項7】
前記第1制御系の出力と前記第2制御系の出力とのうち大きい方を選択して再熱器出口ダンパに出力する比較選択器を設け、前記切換器は、前記比較器の比較結果に基づき、過熱器出口温度が再熱器出口温度設定値にバイアス値を加えた値以下のときは第1制御系の出力を選択し、過熱器出口温度が再熱器出口温度設定値にバイアス値を加えた値以下でないときは前記比較選択器の出力を選択して前記再熱器出口ダンパに出力することを特徴とする請求項2記載のボイラ再熱蒸気温度制御装置。
【請求項8】
前記再熱器出口ダンパ制御部は、前記比較器に代えて、過熱器出口温度が再熱器出口温度設定値にバイアス値を加えた値より低い温度から蒸気温度の上昇変化を計算し、その蒸気温度上昇変化に基づいて前記第1制御系から前記第2制御系への切り換え判定する切換判定部を備え、前記切換器は前記切換判定器の出力に基づいて第1制御系の出力または第2制御系の出力を切り換えることを特徴とする請求項2記載のボイラ再熱蒸気温度制御装置。
【請求項9】
ボイラの過熱器の出口温度と再熱器の出口温度設定値との偏差に基づいて、再熱器出口ダンパと減温器スプレー水流量調節弁とを用いてボイラの再熱器の温度制御を行うボイラ再熱蒸気温度制御方法において、前記減温器スプレー水流量調節弁により減温器スプレー水流量を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に減温器スプレー水流量制御するとともに、前記減温器スプレー水流量調節弁の開度指令をゼロにするように前記再熱器出口ダンパの開度を調節して再熱器出口蒸気温度を設定値に再熱器出口ダンパ制御することを特徴とするボイラ再熱蒸気温度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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