説明

ボイラ復水系腐食監視装置

【課題】ボイラ復水系の腐食傾向を迅速かつ定量的に監視することができるボイラ復水系腐食監視装置を提供する。
【解決手段】ボイラからの蒸気が空冷式の金属細管コイル8内で冷却されて凝縮水となり、この凝縮水が試験カラム15内の極細金属ワイヤ16と接触し、極細金属ワイヤ16に腐食が進行する。この極細金属ワイヤ16の両端間の電気抵抗がテスター17によって検出されている。極細金属ワイヤ16の腐食が進行するほど、テスター17の検出電気抵抗が増加するので、この電気抵抗から極細金属ワイヤ16の腐食を定量的に精度よく検出することができる。また、テスター17の電気抵抗データは送信したり、A/D変換してコンピュータなどに記憶させることが容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラの復水系の腐食傾向の変化を監視するための装置に係り、詳しくは、ボイラからの蒸気を凝縮させ、この凝縮水を腐食試験材と接触させて腐食試験材の腐食状況を検知し、これによって復水系が水質変動等により腐食傾向に変化したかどうかを判定するようにしたボイラ復水系腐食監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラからの蒸気を冷却器に導入して凝縮させ、この凝縮水をテストピースと接触させてテストピースを腐食させ、この腐食状況に基づいてボイラの復水系の腐食傾向を判定する装置として、特開平8−28803号に記載のものがある。
【0003】
同号では、冷却器として水冷式冷却器を用い、またテストピースとして板状片を用いている。この板状のテストピースは、透明なカラム内に配置され、その腐食状況をカラム外から肉眼で観察する。
【0004】
また腐食による重量の減量度を測定することによっても腐食状況を監視することができる。
【0005】
なお、ボイラ蒸気を冷却して凝縮水をサンプリングするサンプリング装置として、実開平7−2958号に、空冷式冷却器を用いることが記載されている。
【特許文献1】特開平8−28803号
【特許文献2】実開平7−2958号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
i)上記特開平8−28803号のように水冷式冷却器を採用する場合、事業場の操業の都合で他のプロセス工程に大量の水が供給されていると、冷却器に供給される冷却水量が安定しないため凝縮水の温度がバラついて腐食傾向を正確に判定できない。また、冷却水量が十分に確保されないと、蒸気が凝縮しきらず噴出するおそれもある。
【0007】
ii)テストピースとして板状片を用い、その腐食状況を肉眼観察する場合、肉眼で観察し得る程の腐食が生じるまで日数がかかり、迅速な腐食状況監視を行うことができない。また、観察者の個人差もあり、精度のよい定量的な腐食データを取得しにくい。
【0008】
また、テストピース重量の減量分から腐食速度を算出しようとする場合にも、テストピースそのものの重量に対してテストピース重量減量分が腐食速度を正確に算出するに足る量の腐食が生じるまで1週間程度を要する。特に試験水が小流量高純度である場合にこの傾向が大きい。
【0009】
iii)なお、上記実開平7−2958号には、サンプリング水を分析することが記載されているが、腐食状況の監視に用いることは開示されていない。
【0010】
本発明は、上記従来技術に鑑み、ボイラ復水系の腐食傾向を迅速かつ定量的に判定することができるボイラ復水系腐食監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(請求項1)のボイラ復水系腐食監視装置は、ボイラから排出された蒸気を冷却して凝縮水を生成する空冷式蒸気冷却器と、内部に腐食試験材が設置され、該凝縮水が通水される試験カラムと、該腐食試験材の電気抵抗を測定する手段とを有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項2のボイラ復水系腐食監視装置は、請求項1において、前記腐食試験材が極細金属ワイヤであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、蒸気冷却器として空冷式冷却器を用いており、冷却水源及び通水設備が不要である。このため、安定した冷却能力を連続的に供給できるので冷却水不足による蒸気噴出が生じず、また凝縮水を、その後の腐食試験に適した温度範囲に安定的に調整することができる。
【0014】
本発明では、凝縮水を極細金属ワイヤと接触させ、極細金属ワイヤの電気抵抗を測定し、電気抵抗の変化から極細金属ワイヤの腐食状況を検知する。そのため、定量的なデータを個人差なく高精度にて得ることができる。また、極細金属ワイヤは板状片に比べて微小な重量変化量を捉えることができるので、腐食状況を迅速に検知することができる。これによりボイラの復水系の腐食傾向の変化を迅速に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は本発明のボイラ復水系腐食監視装置の系統図である。
【0016】
ボイラから配管1を介して取り出された蒸気は、蒸気用減圧弁2、蒸気用電磁弁3及び配管4を介して空冷カラム7内の金属細管コイル8内に導入される。
【0017】
なお、配管4からは枝状に配管5が分岐され、この分岐配管5に蒸気リークバルブ6が設けられている。この蒸気リークバルブ6は試験開始時の蒸気のフラッシングと終了時の残圧除去に用いられる。
【0018】
空冷カラム7内の金属細管コイル8の周囲には、送風機9によって空気が送風され、金属細管コイル8が空冷され、蒸気が凝縮する。凝縮水は、金属細管コイル8から配管11、バイメタル式サーモスタット12、温度センサ13及び配管14を介して試験カラム15内に導入される。試験カラム15内には極細金属ワイヤ16が張り渡されており、この極細金属ワイヤ16の両端間の電気抵抗を測定するようにテスター17が接続されている。試験カラム15を通った凝縮水は、配管18から排出される。極細金属ワイヤ16の材質は、ボイラの復水系の配管や熱交換器など腐食状況の監視対象である部材と同種の素材である。
【0019】
なお、前記バイメタル式サーモスタット12と蒸気用電磁弁3とは連動しており、該サーモスタット12に接触する配管11内の凝縮水温度が所定温度以上になったときには蒸気用電磁弁3が閉弁し、所定温度以下にまで低下したならば開弁するよう構成されている。たとえ空冷冷却器の故障等による蒸気の凝縮不良が発生しても蒸気の噴出事故を防ぐことができる。なお、この電磁弁3は空冷カラム7よりも後段側に設けられてもよい。
【0020】
このように構成されたボイラ復水系腐食監視装置においては、ボイラからの蒸気が金属細管コイル8内で冷却されて凝縮水となり、この凝縮水が試験カラム15内の極細金属ワイヤ16と接触し、極細金属ワイヤ16に腐食が進行する。この極細金属ワイヤ16の両端間の電気抵抗がテスター17によって検出されている。極細金属ワイヤ16の腐食が進行するほど、テスター17の検出電気抵抗が増加するので、この電気抵抗から極細金属ワイヤ16の腐食速度を定量的かつ迅速に算出することができる。また、テスター17の電気抵抗データは送信したり、A/D変換してコンピュータ等に記憶させることが容易である。
【0021】
この極細金属ワイヤ16は、断面積が小さいので腐食による断面積の減少による電気抵抗の変化が大きい。また、腐食による重量変化が微小であっても、変化量の全重量に対する割合が大きい。従って復水系の腐食傾向を迅速に判定することができる。
【0022】
この極細金属ワイヤ16の電気抵抗から検出される腐食速度は、通常は略一定値を示すが、復水の水質が変動して腐食傾向になると、腐食速度がそれまでの値から逸脱して高くなる。このとき復水系の腐食傾向が高くなったものと判定し、ボイラ復水系に何らかの防食手段を施す。例えば、復水系への防食剤添加量を増加させる。なお、腐食速度は温度、pH、DO等の影響を受け若干変動するので、1日程度連続試験した結果から腐食速度を求めるのが、より正確な腐食速度が求められるため好ましい。
【0023】
上記の金属細管コイル8としては、内径が0.1〜2.0mm、特に0.5〜1.0mmのものが好ましい。内径が0.1mmより小さいと蒸気に含まれるサビの粒子が管内に詰まる恐れがある。一方、内径が2.0mmを超えると、流量に対する送風の接触面積が小さくなるため、管の長さを長くする必要がある。金属細管コイル8の長さは5〜20mが好ましい。5m未満であると蒸気を十分に減圧できず、また20mを超えると蒸気凝縮装置の製造に手間がかかり、また空冷カラム7を長くする必要があるため現実的ではない。
【0024】
送風機9の送風量は、好ましくは0.3m/min以上、より好ましくは0.4m/min以上である。送風する空気は常温でよい。
【0025】
具体的な条件については現場ごとに適宜設定される。凝縮水の温度が高い方が腐食速度が速くなるので、温度が変動すると腐食速度も変動し正確な腐食傾向の監視ができない。従って、正確な腐食傾向を観測するために凝縮水を一定の温度範囲に調整しておくのが好ましい。本発明では水冷でなく空冷としているため、目的の温度範囲に維持しやすい。
【0026】
具体的には、凝縮水の温度を30〜80℃とりわけ40〜60℃に調整するのが好ましい。凝縮水の温度が30℃以上であれば腐食速度が十分に速く、迅速に極細金属ワイヤ16の腐食状況を検知することができるので好ましい。同様の理由で40℃以上であればさらに好ましい。また80℃を超えると試験カラム15の材質が限られてくる(耐熱性である必要がある)ので好ましくない。また60℃を超える温度では試験カラム15等が高温になるため作業員の作業における安全性確保の観点から好ましくない。
【0027】
金属細管コイル8の前段の配管1,4の素材としては、耐圧かつ不活性の材質が好ましく、例えばSUSが挙げられる。一方、金属細管コイル8の後段の配管11,14の素材としては、溶出が少なく、酸素を透過せず、不活性の材質が好ましく、例えばフッ素樹脂が挙げられる。これは腐食試験カラム15に流入する試験水中の溶存酸素量が変化しないようにすることでボイラの復水と同等の水質を維持することができ、正確かつ高精度の腐食監視が可能となるためである。
【0028】
前記の通り、極細金属ワイヤ16は復水系の腐食監視対象の部材と同種の素材のものを用いる。例えば、鉄製(炭素鋼など)の配管を腐食監視対象とする場合には鉄ワイヤを用いる。同様に、銅製の熱交換チューブ管を腐食監視対象とする場合には銅ワイヤを用いる。
【0029】
鉄ワイヤとしては、直径が0.02〜1.0mm特に0.1〜0.5mmであり、長さが1〜100cmのものが好ましい。
【0030】
銅ワイヤとしては、直径が0.01〜1.0mm特に0.01〜0.2mmであり、長さが1〜100cmのものが好ましい。
【0031】
ワイヤの直径が大きいと電気抵抗が著しく低くなり、計測感度が非常に下がるので、直径が小さいほうが好ましい。1cm未満では所望の計測感度が発現せず、また100cmを超えると計測器への固定の作業が困難となる。
【0032】
一般に、0.1Ω以下の電気抵抗を精度良く測定することは難しいので、極細金属ワイヤは電気抵抗が0.1Ωより大きくなるようにワイヤ径とワイヤ長さを調整するのが好ましい。さらに電気抵抗の経時変化をより正確に捉えるために電気抵抗値が1Ωより大きくなるようにワイヤ径とワイヤ長さを調整することで、電気抵抗の経時変化をより正確に測定することができる。
【0033】
電気抵抗から極細金属ワイヤの腐食速度は以下のように求めることができる。まず、測定する期間の開始時と終了時の電気抵抗に相当するワイヤ重量を次の(1)〜(3)式からそれぞれ算出し、算出したワイヤ重量の差(腐食量に相当)を経過時間で除することで腐食速度に換算できる。
【0034】
R=ρ・L/S ・・・(1)
M=S・L・m ・・・(2)
(1)、(2)式より、
M=ρ・L・m/R ・・・(3)
なお、R:電気抵抗(Ω)、ρ:比抵抗(Ω・m)、L:ワイヤ長さ(m)、S:ワイヤ断面積(m)、m:ワイヤ素材の密度(kg/m)、M:ワイヤ重量(kg)である。たとえば、外径0.1mm、長さ25cmの純鉄製ワイヤの場合、比抵抗10×10-8 Ω・m(20℃)、密度7850kg/mとすると、電気抵抗Rは3.2Ω、ワイヤ重量は15.4mgである。
【0035】
第2図は本発明の試験カラム1の断面図、第3図は第2図の一部の拡大図である。
【0036】
細長い円筒形のカラム21の両端にエンド部材22がユニオンナット23によって固定されている。カラム21内に金属よりなる極細金属ワイヤ24が挿通され、この極細金属ワイヤ24の両端がそれぞれエンド部材22によって保持されている。なお、カラム21の両端外周部は鍔状に拡径しており、環状の係止用パッキン25が該鍔状拡径部とユニオンナット23との間に介在されている。
【0037】
エンド部材22は、略円柱形であり、先端側の外周に設けられた雄ネジ22a(第3図)に対し前記ユニオンナット23が締め込まれている。エンド部材22の先端面とカラム21の端面との間にはOリング26が介在されている。
【0038】
エンド部材22の軸心位置には、カラム21の内孔21aと同軸に貫通孔27が設けられている。
【0039】
エンド部材22の後端側には、該貫通孔27と同軸の雄ネジ穴27aが設けられ、オシネと通称されるロックボルト28が螺着されている。このロックボルト28の軸心を貫通する細孔28aに極細金属ワイヤ24が挿通され、該極細金属ワイヤ24の端部が外部に引き出されている。
【0040】
第2図に明瞭に示される通り、極細金属ワイヤ24のうちエンド部材22の貫通孔27及びロックボトル28の細孔28aに挿通される部分とその直近部分にあっては、極細金属ワイヤ24の外周面に被覆材29による被覆が施されている。被覆材としては試験水が極細金属ワイヤに直接接触するのを防止できるものであれば特に限定されず、合成樹脂、例えば、フッ素樹脂などを用いることができる。
【0041】
なお、エンド部材が導電体の場合は、被覆材は絶縁体である必要がある。この場合にはフッ素樹脂等の絶縁性合成樹脂を用いることが好ましい。
【0042】
貫通孔27の内径は、この被覆材29の被覆厚を含めた極細金属ワイヤ24の全体の直径よりも大であり、極細金属ワイヤ24の外周面と貫通孔27の内周面との間に試験流体が流通可能となっている。
【0043】
エンド部材22には、貫通孔27と直角に交わるように径方向貫通孔30が設けられている。エンド部材22の外周面には、径方向貫通孔30との同軸に雌ネジ穴30aが設けられ、管継手31が螺着されている。
【0044】
このカラム21は、カラム21内に気泡が溜まらないようにするために、好ましくはカラム軸心方向を上下方向として設置され、下側のエンド部材22の管継手31から試験流体が導入される。この試験流体は、径方向貫通孔30、貫通孔27を介してカラム21内に流入し、極細金属ワイヤ24と接触した後、上側のエンド部材の貫通孔27、径方向貫通孔30及び管継手31を介してカラム21外に排出する。
【0045】
この実施の形態では、径方向貫通孔30から貫通孔27に水が導入されるが、極細金属ワイヤ24のうち貫通孔27内及び下側エンド部材22の直近部位に位置する部分には、被覆材29による被覆が施されており、試験水が極細金属ワイヤ24に直接には接触しない。そのため、極細金属ワイヤ24のうちこの貫通孔27及びその直近の部位に局部的なエロージョンを生じることはない。試験水は、極細金属ワイヤ24のうちカラム21の両端部を除いた部分においてのみ該極細金属ワイヤ24と接触する。このカラム21の両端部から離れた部位では、試験水は一様な上昇流を形成しており、試験水が極細金属ワイヤ24に均等に接触するので、腐食は極細金属ワイヤ24の全体で一様に進行する。このため、この実施の形態によると精度の高い腐食試験データを得ることが可能である。
【0046】
上記実施の形態では、径方向貫通孔31を貫通孔27と交わらせているが、第6図の実施の形態のように、貫通孔27と別個の通水孔33を設け、管継手32からの試験水を該通水孔33のみを介してカラム21内に導入するようにしてもよい。第6図のその他の構成は第3図と同一であり、同一記号は同一部分を示している。
【0047】
なお、この通水孔33は、エンド部材22の側周面から求心方向に延在し、そこから直角に曲がり、エンド部材22の軸心方向と平行方向に延在してエンド部材22の先端面に達するようにL字形に設けられている。
【0048】
ただし、通水孔33はこれに限定されるものではなく、直線状に延在するものや、く字形に延在するものであってもよい。
【0049】
上記の腐食監視装置の好適な条件等について次に説明する。
【0050】
カラム21は、内部に通す極細金属ワイヤ24が目視観察できるよう、透明素材であることが好ましい。
【0051】
カラム21の材質としては、ガラスが好ましい。カラムの内径は好ましくは0.5〜50mm、より好ましくは1〜5mmである。
【0052】
カラム内の流速は、20〜100mL/cm・min、とりわけ40〜80mL/cm・minが好ましい。
【実施例】
【0053】
[凝縮試験1]
図1に示すボイラ復水系腐食監視装置において、金属細管コイル8として、外径1.6mm(1/16インチ)、内径0.8mm、長さ5mのSUS316製のものを用いて凝縮試験を行った。空冷カラム7は内径4cm、長さ20cmであり、送風機の風量は0.4m/minである。試験時の大気温度は27℃であった。
【0054】
ボイラからの蒸気圧を5〜14kg/cmの範囲で種々変えて金属細管コイル8に通し、凝縮水温度を計測した。その結果を第4図に示す。
【0055】
第4図の通り、この条件では蒸気圧力が13kg/cm以上になると蒸気が噴出した。蒸気圧力を11kg/cm以下とすれば、80℃以下の凝縮水を安定して得ることができることが認められた。
【0056】
[凝縮試験2〜4]
同様の凝縮試験を内径1.0mm、外径1.8mmの金属細管コイル、内径1.2mm、外径2.0mmの金属細管コイル及び内径1.4mm、外径2.2mmの金属細管コイル(いずれも長さ5m)を備えた空冷カラムについてそれぞれ行ったところ、内径1.0mmのものでは蒸気圧力10kg/cmで蒸気が噴出した。これらの結果より、金属細管コイルの内径は0.8mm以下が好ましいことが認められた。
【0057】
[腐食監視試験]
第1図に示すボイラ復水系腐食監視装置において、上記凝縮試験1の金属細管コイルを用い、蒸気圧力を7kg/cmとして、腐食監視試験を行った。極細金属ワイヤ16としては直径0.1mm、長さ25cmの純度99.5重量%の鉄ワイヤ(比抵抗10×10−8Ωm)を用いた。空冷条件としては、ボイラからの蒸気圧7kg/cmとして金属細管コイル8に通した。このとき凝縮水温度は50℃程度であった。
【0058】
復水の水質は、溶存酸素6mg/L、pH4.8(変動なし)であり、このときの一般的なテストピースの試験結果から求めた腐食速度は約100mdd(mg・dm・day)であった。
【0059】
この復水をカラム1に5日間通水した。この条件で第1日目の途中から第4日目の途中まで、1分毎に電気抵抗を測定した。このときの極細金属ワイヤ16の電気抵抗の測定結果を第5図に示す。第5図において、電気抵抗の経時変化を一次関数で近似し、その近似関数上の2点を任意に選んで腐食速度を求める。本試験では第2日目開始時点と第2日目終了時点の2点を選んだ。第2日目の開始時から終了時までの24時間の腐食速度は、6.66Ωから6.94Ωに増加しており、これに相当するワイヤ重量は18.84mgから18.00mgに減少したと計算されることから、腐食速度は67mddと算出できた。この結果は復水の水質からみて一般的なテストピースの試験結果(約100mdd)と比較して同じオーダーであったので、妥当な結果が得られたと認められた。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施の形態に係るボイラ復水系腐食監視装置の系統図である。
【図2】実施の形態に係る試験カラムの拡大図である。
【図3】図2の試験カラムの拡大図である。
【図4】凝縮試験結果を示すグラフである。
【図5】極細金属ワイヤの電気抵抗測定結果を示すグラフである。
【図6】別の実施の形態に係る試験カラムの拡大図である。
【符号の説明】
【0061】
7 空冷カラム
8 金属細管コイル
9 送風機
15 試験カラム
16 極細金属ワイヤ
17 テスター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラから排出された蒸気を冷却して凝縮水を生成する空冷式蒸気冷却器と、
内部に腐食試験材が設置され、該凝縮水が通水される試験カラムと、
該腐食試験材の電気抵抗を測定する手段とを有するボイラ復水系腐食監視装置。
【請求項2】
請求項1において、前記腐食試験材が極細金属ワイヤであることを特徴とするボイラ復水系腐食監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−128783(P2008−128783A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313113(P2006−313113)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】