説明

ボイラ

【課題】 特別な脱硝剤を必要とすることなく、かつ比較的低い空気比にて、5ppmを下回る低NOx化が可能なボイラを提供することにある。
【解決手段】 燃料を燃焼させるバーナ2と、このバーナ2により生成されたガスが流通するガス流路3に水管9を配設した熱交換器4と、燃料と水蒸気とから水素を生成する改質器5と、前記熱交換器4を通過したガス中の窒素酸化物を水素の存在下において還元する還元触媒6とを備え、前記改質器5にて生成された水素を前記還元触媒6の上流側へ供給することを特徴とする。また、前記改質器5が前記熱交換器4内のガス流路3に組み込まれることを特徴とする。さらに、前記水管9が水蒸気生成用のものとされ、前記改質器5にて使用される水蒸気が前記水管9にて生成の水蒸気であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気ボイラなどのボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラと燃料電池が併設された施設に、ガスと蒸気から水素を生成する改質器を配置し、この改質器で得られる水素を燃料電池に供給して発電に供するようにした施設が知られている。前記改質器には、ボイラからの蒸気の一部が供給されて水素生成に使用される(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1のボイラにおいては、改質器において生成される水素は、燃料電池にのみ使用され、ボイラの低NOx化のために使用されていない。
【0004】
一方、ボイラ等の比較的容量の小さいNOx発生源に対しても、環境への関心が高まり、一層の低NOx化が求められている。この低NOx化における課題は、つぎの通りである。
【0005】
(1)5ppmを下回る低NOx化
(2)低空気比燃焼による省エネルギ化
【0006】
前記(1)の5ppmを下回る低NOx化を実現するには、尿素などの脱硝剤による脱硝装置を採用することにより可能であるが、身近に存在しない脱硝剤を用意し、管理する必要がある。また、尿素などの脱硝剤を用いた場合は、脱硝剤を噴霧するノズルに結晶が析出し、詰まるなどの問題がある。
【0007】
また、前記(2)の低空気比燃焼を行う場合、例えば、限りなく零に近い低O2の燃焼を行うと、一酸化炭素の発生量が多量となったり、安定した燃焼制御が困難である。
【0008】
【特許文献1】特開平6−13093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、特別な脱硝剤を必要とすることなく、かつ比較的低い空気比にて、5ppmを下回る低NOx化が可能なボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、前記課題を解決するためになされたものであって、請求項1に記載の発明のボイラは、燃料を燃焼させるバーナと、このバーナにより生成されたガスが流通するガス流路に水管を配設した熱交換器と、前記燃料と水蒸気とから水素を生成する改質器と、前記熱交換器を通過したガス中の窒素酸化物を水素の存在下において還元する触還元媒とを備え、前記改質器にて生成された水素を前記還元触媒の上流側へ供給することを特徴としている。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、燃料と水蒸気(以下、単に蒸気と称する。)とを用いて生成される水素を利用してNOxを還元するので、特別な脱硝剤を必要とすることなく、5ppm以下の低NOx化を実現できる。また、空気比を限りなく零に近い値にすることなく、空気比1.05〜1.10(酸素濃度1〜2%相当)程度の燃焼で前記低NOx化を実現できるので、比較的低い空気比により省エネルギーを実現でき、かつ燃焼制御を容易
に行うことができる。
【0012】
請求項2記載の発明のボイラは、請求項1において、前記改質器が前記熱交換器内のガス流路に組み込まれることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、改質器が前記熱交換器のガス流路内に組み込まれて、水素を生成するための熱源として利用されるので、設備全体の小型化が可能となる。また、前記熱交換器のガス流路は高温から低温までの広い温度領域を有しており、一方、前記改質器は、使用する触媒の種類などによって水素を効率的に生成する上での最適な温度があるので、この改質器を水素改質に最適温度となる熱交換器の温度領域に配置することが可能となる。このため、改質器による効率的な水素の生成が行える。
【0014】
請求項3に記載の発明のボイラは、請求項1または請求項2において、前記水管が水蒸気生成用のものとされ、前記改質器にて使用される水蒸気が前記水管にて生成の水蒸気であることを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明による効果に加えて、水蒸気を生成するための蒸気発生器を前記熱交換器と別個に設ける必要が無いので、ボイラの構成を簡素化できるという効果を奏する。
【0016】
請求項4に記載の発明のボイラは、請求項1〜請求項3において、前記改質器が水素および一酸化炭素を生成する改質触媒を有していることを特徴としている。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜請求項3に記載の発明による効果に加えて、前記改質器にて還元剤を自ら供給できるという効果を奏する。
【0018】
請求項5に記載の発明のボイラは、請求項4において、前記改質器が、水素および一酸化炭素を生成する改質触媒と、生成された水素を分離する水素分離膜とを有していることを特徴としている。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明による効果に加えて、前記改質器において高濃度の水素が得られるという効果を奏する。
【0020】
請求項6に記載の発明のボイラは、請求項5において、前記改質器が、前記改質触媒とチューブ状の水素分離膜とを容器内に収容したものであることを特徴としている。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明による効果に加えて、前記改質器の構造をコンパクト化することができるという効果を奏する。
【0022】
請求項7に記載の発明のボイラは、請求項5において、前記改質器が、前記改質触媒を収容し壁が水素分離膜から構成される改質部と、前記水素分離膜を介して前記改質部に隣接される分離部とを含むことを特徴としている。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明による効果に加えて、前記改質器の構造をコンパクト化することができるという効果を奏する。
【0024】
請求項8に記載の発明のボイラは、請求項5において、前記改質器が、前記改質触媒を収容した改質部と、この改質部の下流側に接続され前記水素分離膜を有する分離部とを含むことを特徴としている。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明による効果に加えて、改質に適した温度帯と水素分離に適している温度帯が異なるため、それぞれを最も機能しやすい温度帯に設置することで、効率、耐久性での向上を図ることができるという効果を奏する。
【0026】
請求項9に記載の発明のボイラは、燃料を燃焼させるバーナと、このバーナにより生成されたガスが流通するガス流路に水管を配設した熱交換器と、前記燃料と水蒸気とから水素を生成する改質器と、この改質器で生成される一酸化炭素と水蒸気とから水素を生成する変成器と、前記熱交換器を通過したガス中の窒素酸化物を水素の存在下において還元する還元触媒とを備え、前記改質器および前記変成器にて生成された水素を前記還元触媒の上流側へ供給することを特徴としている。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、燃料と水蒸気とを用いて生成される水素を利用してNOxを還元するので、特別な脱硝剤を必要とすることなく、5ppm以下の低NOx化を実現できる。また、空気比を限りなく零に近い値にすることなく、空気比1.05〜1.10(酸素濃度1〜2%)程度の燃焼で前記低NOx化を実現できるので、比較的低い空気比により省エネルギを実現でき、かつ燃焼制御を容易に行うことができる。さらに、高い純度の水素を得ることができ、一酸化炭素がほとんどないため、効率、安全性の面で有利である。
【0028】
請求項10記載の発明のボイラは、請求項9において、前記改質器が前記熱交換器内のガス流路に組み込まれることを特徴としている。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、請求項9に記載の発明による効果に加えて、改質器が前記熱交換器のガス流路内に組み込まれて、水素を生成のための熱源として利用されるので、改質用バーナを設置する必要がなく、設備全体の小型化が可能となる。また、前記熱交換器のガス流路は高温から低温までの広い温度領域を有しており、一方、前記改質器は、使用する触媒の種類などによって水素を効率的に生成する上での最適な温度があるので、この改質器を水素改質に最適温度となる熱交換器の温度領域に配置することが可能となる。このため、改質器による効率的な水素の生成が行える。
【0030】
請求項11に記載の発明のボイラは、請求項9または請求項10において、前記水管が水蒸気生成用のものとされ、前記改質器にて使用される蒸気が前記水管にて生成の水蒸気であることを特徴としている。
【0031】
請求項11に記載の発明によれば、請求項9または請求項10に記載の発明による効果に加えて、水蒸気を生成するための水蒸気発生器を前記熱交換器と別個に設ける必要が無いので、ボイラの構成を簡素化できるという効果を奏する。
【0032】
請求項12に記載の発明のボイラは、請求項1〜請求項11において、前記バーナの空気比を1.05〜1.10とすることを特徴としている。
【0033】
請求項12に記載の発明によれば、請求項1〜請求項11に記載の発明による効果に加えて、低空気比による省エネルギーを実現できるという効果を奏する。
【0034】
請求項13に記載の発明のボイラは、請求項1〜請求項12において、前記還元触媒の一次側または二次側の窒素酸化物濃度に基づき前記改質器へ供給する燃料および水蒸気の量を設定することを特徴としている。
【0035】
請求項13に記載の発明によれば、請求項1〜請求項12に記載の発明による効果に加
えて、目標とする排出NOx濃度の達成を容易に行えるととともに、NOx低減に要する燃料および水蒸気の量を必要最小限とすることができ、一層の省エネルギーを実現できるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0036】
この発明によれば、特別な脱硝剤を必要とすることなく、かつ比較的低い空気比にて、5ppmを下回る低NOx化が可能なボイラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
つぎに、この発明の実施の形態1,2について説明する。
(実施の形態1)
この発明の実施の形態1のボイラは、燃料を燃焼させるバーナと、このバーナにより生成されたガスが流通するガス流路に水管を配設した熱交換器と、前記燃料と水蒸気とから水素を生成する改質器と、水素の存在下において前記熱交換器を通過したガス中の窒素酸化物を還元する触媒とを備え、前記改質器にて生成された水素を前記触媒の上流側において供給することを特徴としている。
【0038】
この実施の形態1においては、前記バーナにより燃料と燃焼空気とが混合されて燃焼する。このバーナの燃焼により生成されたガス(以下、燃焼ガスと称する。この燃焼ガスは、燃焼反応中のガスと燃焼反応が完了したガスとを含む概念である。)は、前記水管にて吸熱され、その温度は下流へゆくに従い低下する。供給された燃料と水蒸気(以下、単に蒸気と称する。)とから前記改質器にて水素を生成する。生成された水素は、前記還元触媒の上流側に供給される。そして、この還元触媒において、水素の存在下で、燃焼ガス中に含まれるNOxを還元し、排出NOx量を低減する。この低減量は、燃焼ガス中に含まれるNOx量に対する水素供給量により制御することができる。前記改質器にて生成のガス(以下、改質ガスと称する。)中に水素とともに一酸化炭素が含まれる場合は、一酸化炭素をNOx還元に用いることができる。
【0039】
ここで、前記実施の形態1の各構成要素について説明する。前記バーナは、好ましくは、予混合バーナとするが、先混合バーナとすることができる。このバーナには、13A,LPG等のガス燃料と燃焼空気とが供給され、好ましくは、前記バーナが安定燃焼可能という条件で、空気比を小さくする。前記バーナを特許第3221582号公報に記載のような全一次空気式の予混合バーナとする場合、空気比を安定燃焼が可能で、制御が容易な1.05〜1.10とする。
【0040】
前記熱交換器は、缶体と称することができ、好ましくは、上,下ヘッダ間に多数の水管群を配した構成とするが、これに限定されるものではない。この熱交換器は、好ましくは、前記水管群により燃焼反応中の燃焼ガス(火炎と称することができる。)を冷却することにより燃焼温度を抑制して生成NOxを低減するものとする。こうすることで、前記改質器で生成する水素の量を低減することができる。
【0041】
前記熱交換器は、一対の水管壁間に多数の水管群を配設した所謂角型の缶体,または丸型の缶体とすることができる。角型のものは、矩形缶体内のガス流路に多数本の水管を縦方向(燃焼ガス流れ方向)に配列したものであり、例えば特許第3221582号公報に示される。丸型のものは丸型缶体内に円周方向に沿って形成されたガス流路に沿って多数本の水管を縦方向に配列したもので、例えば、特開2006−183927号公報,特開2004−197970号公報に示される。
【0042】
前記熱交換器は、ボイラを蒸気ボイラとする場合は、前記水管により蒸気を生成するように構成され、温水ボイラとする場合は、前記水管により温水を生成するように構成され
る。
【0043】
前記改質器は、少なくとも改質触媒を有していて、加熱源により適度に加熱することにより、燃料と蒸気とから水素と一酸化炭素を生成する機能を有するものである。燃料と蒸気とから水素と一酸化炭素を生成する反応は、前記燃料をメタンとする場合、つぎの反応式で表現される。燃料は、メタンに限定されず、13A(都市ガス)、LPG(液化石油ガス)とすることができる。前記燃料は、好ましくは、前記バーナへ供給する燃料とし、前記蒸気は、好ましくは、前記ボイラにて生成の蒸気とする。
(1) CH4+H2O→3H2+CO
【0044】
前記加熱源は、好ましくは、前記バーナの燃焼ガスとし、さらに好ましくは、前記改質器を前記熱交換器内に配置するように構成する。この構成によれば、前記熱交換器のもつ温度勾配を利用するため、複雑な温度制御を必要とせず、制御が容易であるとともに省スペース化を行える)。しかしながら、前記改質器を前記熱交換器外に配置し、前記バーナの燃焼ガスをこの改質器へ導き、加熱するように構成することができる。この構成によれば、燃焼ガスのもつ温度勾配を利用できるので、複雑な温度制御を必要としない。また、前記改質器を加熱する加熱源として電気ヒータなどを用いることできる。この構成によれば、燃焼ガスの状態によらず、燃焼に影響を受けず、一定の組成の改質ガスを得ることができる。
【0045】
前記改質器へ供給される燃料と蒸気の量は、直接的には、前記還元触媒に流入する燃焼ガス中の(前記還元触媒の一次側の)窒素酸化物濃度と、窒素酸化物低減目標値とに基づき調整される。この調整とは自動的な制御を含む概念である。前記窒素酸化物濃度は、好ましくは、NOxセンサにより検出して行うが、前記バーナの燃焼特性から濃度値を求めることができるので、この濃度値を用いて前記燃料と蒸気の量を制御することができる。また、前記還元触媒の後流(二次側)の窒素酸化物濃度を検出するセンサにより、前記燃料と蒸気の量を制御するように構成することができる。
【0046】
前記燃料と蒸気の量の調整は、前記改質器への燃料供給ラインおよび蒸気供給ラインに設けた燃料弁および蒸気弁の開閉度を制御することにより行うことができる。この場合、好ましくは、前記燃料供給ラインと前記蒸気供給ラインとの交叉部にエゼクタを設ける。このエゼクタは、駆動流体を蒸気として、燃料を吸引することにより、蒸気と燃料とを混合して、前記改質器へ供給することができる。このエゼクタを用いることで、燃料と蒸気との混合が促進され、前記改質器の改質性能を向上させることができる。前記エゼクタの代わりに別の混合器を用いることができる。前記燃料弁および蒸気弁の開閉度の制御は、NOxセンサを用いて制御手段によりリアルタイムに行うように構成することができる。
【0047】
前記改質器は、構造的につぎの二つの形態を含む。第一の形態は、改質触媒を備え、水素分離膜を備えないものである。
【0048】
この第一の形態の改質器は、容器に前記改質触媒を備えるが、水素分離膜を備えないタイプのものである。前記容器は、管状(チューブ状)のもの、円筒状のもの,直方体状のものなど種々の形状とすることができる。この容器の材質は、好ましくは、ステンレス(SUS)とする。
【0049】
前記改質触媒としては、例えばNiO(Al23)が好適である。NiO(Al23)が好適に機能する温度は600〜800℃である。一方、前記熱交換器を角型のものとした場合、前記熱交換器の燃焼ガス温度は、1500〜300℃程度の温度域で変化し、前記熱交換器を丸型とした場合、前記熱交換器の燃焼ガス温度は、1200〜300℃程度の温度領域で変化する。そこで、NiO(Al2O3)を触媒として用いる改質器は、好ましくは
、前記熱交換器におけるガス流路の上流側で600〜800℃の温度領域を有する部分に設置する。
【0050】
前記改質器の第二の形態は、前記容器に前記改質触媒と水素分離膜とを備えるものである。この第二の形態においては、前記改質器が、前記改質触媒とチューブ状の水素分離膜とを容器内に収容する第一の構成とすることができる。
【0051】
この第一の構成は、メンブレンリアクタ式と称され、たとえば、多孔質金属管の表面にパラジウムメッキなどが施すことでチューブ状の水素分離膜を構成することができる。この水素分離膜は、改質触媒を収容した前記容器の内部に挿入される。前記容器の形状は、特定のものに限定されない。
【0052】
この第一の構成によれば、前記改質触媒と前記水素分離膜とが隣接しているため、効率よく生成した水素を分離することが可能であるとともに、省スペース効果が大きい。
【0053】
また、前記第二の形態において、前記改質器が、前記改質触媒を収容し構成壁が水素分離膜から構成される改質部と、前記水素分離膜を介して前記改質部に隣接される分離部とを含む第二の構成とすることができる。
【0054】
この第二の構成においては、前記改質部を直方体状に形成して、前記改質部の対向する一方の壁をパラジウムメッキなどが施されたシート状の水素分離膜とし、前記一方の面と間隔を存して配置される他の壁面を金属板とする。そして、前記改質部の他方の壁面の外側を前記熱交換器の燃焼ガスを流通させ、前記水素分離膜から水素を分離して取り出す。こうして、前記改質部の水素分離膜の外側に分離部が構成される。複数の前記改質部を各水素分離膜が間隔を存して対向するように配置することができ、この場合、前記改質部間が前記分離部として機能することになる。
【0055】
この第二の構成によれば、シート状の水素分離膜を用い、改質器を直方体状に形成できるので、構成が単純であり加工を容易とすることができる。
【0056】
さらに、前記第二の形態においては、前記改質器が、前記改質触媒を容器内に収容した改質部と、この改質部の下流側に接続され前記水素分離膜を容器内に収容した分離部とを含む第三の構成とする。この第三の構成では、前記改質部の容器と前記分離部の容器とは、別個に構成される。
【0057】
この第三の構成によれば、改質に適した温度帯と水素分離に適している温度帯が200℃程度異なるため、それぞれを最も機能しやすい温度帯に設置することで、効率および耐久性を向上することができる。
【0058】
前記改質器にて生成の水素および一酸化炭素は、注入器(供給器と称することができる。)により前記還元触媒の上流側へ供給される。この注入器は、特定の構成のものに限定されない。
【0059】
前記還元触媒は、水素の存在下、または水素と一酸化炭素の存在下において前記燃焼ガス中の窒素酸化物を還元する機能を有する触媒であり、好ましくは、貴金属を用いたCO酸化触媒とする。
【0060】
前記還元触媒による窒素酸化物の還元反応は、つぎの反応式の一部または全部を含む。
(2) 2NO+2H2→2H2O+N2
(3) 2NO+H2→H2O+N2
(4) CO+2NO→CO2+1/2N2
(5) CO+2NO→CO2+N2
【0061】
前記CO酸化触媒は、通気性を有する基材に触媒活性物質を担持した構成とすることができる。前記基材としては、ステンレスなどの金属,セラミックが用いられ、燃焼ガスとの接触面積を広くするような表面処理が施される。触媒活性物質としては、一般的に白金が用いられるが、実施に応じて、白金に代表される貴金属(Ag,Au,Rh,Ru,Pt,Pd)または金属酸化物を用いることができる。
【0062】
(実施の形態2)
この発明の実施の形態2のボイラは、燃料を燃焼させるバーナと、このバーナにより生成されたガスが流通するガス流路に水管を配設した熱交換器と、燃料と蒸気とから水素を生成する改質器と、この改質器で生成される一酸化炭素と蒸気とから水素を生成する変成器と、水素の存在下において前記熱交換器を通過した燃焼ガス中の窒素酸化物を還元する還元触媒とを備え、前記改質器および前記変成器にて生成された水素を前記還元触媒の上流側において供給することを特徴としている。
【0063】
この実施の形態2においては、前記バーナにより燃料と燃焼空気とが混合されて燃焼する。このバーナにより生成された燃焼ガスは、前記水管にて吸熱され、その温度は下流へゆくに従い低下する。供給された燃料と蒸気とから前記改質器にて水素と一酸化炭素とが生成され、前記変成器へと導かれる。前記変成器において、水蒸気と一酸化炭素とにより、水素が生成され、前記改質器にて生成された水素と前記変成器にて生成された水素とは、前記還元触媒の上流側に供給される。前記還元触媒において、水素の存在下で燃焼ガス中に含まれるNOxを還元し、排出NOx量を低減する。この低減量は、燃焼ガス中に含まれるNOx量に対する水素供給量を調整することにより調整することができる。前記変成器からのガス(以下、変成ガスと称する。)中に水素とともに一酸化炭素が含まれる場合は、一酸化炭素をNOx還元に用いることができる。
【0064】
ここで、前記実施の形態2の各構成要素について説明する。この実施の形態2において、前記実施の形態1と異なるのは、前記改質器の後流に前記変成器を設けた点であり、その他は同様であるので、その説明を省略する。
【0065】
前記変成器は、前記改質器にて生成された水素と一酸化炭素のうち、一酸化炭素と水蒸気とから変成触媒を用いて水素を生成する機能を有する。一酸化炭素と水蒸気とから水素を生成する反応は、つぎの反応式で表現される。
(6) CO+H2O→H2+CO2
【0066】
前記変成器は、容器内に前記変成触媒を収容した構成とすることができる。前記容器は、好ましくは、ステンレス(SUS)にて構成され、前記改質器と同様に加熱源により加熱される。この加熱源の態様は、前記改質器と同様であり、重複説明をしないが、省スペースおよび前記熱交換器内の温度場を有効利用する観点から、好ましくは、前記熱交換器内に組込み、燃焼ガスにより加熱するように構成する。
【0067】
前記変成触媒としては、例えばFe23,Cr23の混合物を用いることができる。この場合において、前記変成器を前記熱交換器のガス流路の中に組み込む場合は、前記ガス流路の320〜400℃の温度領域を有する部分に設置する。また、前記変成触媒としてCuO,ZnO,Al23の混合物を用いることができる。この場合において、前記変成器を前記熱交換器のガス流路の中に組み込む場合は、前記ガス流路の180〜250℃の温度領域を有する部分に設置する。
【0068】
この発明は、前記実施の形態1,2に限定されるものではなく、例えば、前記ボイラに燃料電池を付設し、前記改質器または前記変成器にて生成の水素を前記燃料電池に供給するように構成することができる。そして、前記燃料電池により前記ボイラを構成する電気機器の一部を駆動するように構成することができる。
【実施例1】
【0069】
以下、この発明の実施例1のボイラ1を図面に基づいて説明する。図1は、同実施例1の概略構成図であり、図2は、同実施例1の要部拡大の説明図である。前記ボイラ1は、蒸気ボイラであって、バーナ2と、このバーナ2による燃焼により生成される燃焼ガスが流通する燃焼ガス流路3を形成した角型(直方体形状)の熱交換器としての缶体4と、前記燃焼ガス流路3の上流域に設けた改質器5と、この改質器5にて生成の水素と一酸化炭素との存在下で窒素酸化物を還元する還元触媒6と、前記燃焼ガス流路3の還元触媒6の上流側に前記改質器5にて生成の水素と一酸化炭素とを注入して供給する注入器7とを主要部として備える。
【0070】
前記バーナ2は、メタンからなる燃料と燃焼空気とを上流側でほぼ完全に予混合する特許第3221582号公報に記載のバーナと同様の予混合バーナとし、前記燃焼ガス流路3の上流側端部に設けている。このバーナ2の空気比は、省エネルギー,安定燃焼および燃焼制御の容易化の為、1.05(酸素濃度で、1%)としている。
【0071】
前記缶体4は、上部ヘッダ,下部ヘッダ(図示省略)と水管壁(略して図示)8,8との間に前記燃焼ガス流路3を形成し、前記両ヘッダ間に多数の水管9群を設けている。前記水管9群の上流側水管群は、燃焼反応中の燃焼ガスを冷却することにより燃焼温度を抑制して生成NOxを低減する位置に配設されている。この水管群の配置と前記バーナ2の空気比1.05燃焼により、前記燃焼ガス流路の燃焼ガス中に含まれる窒素酸化物濃度は、約40ppm程度となっている。
【0072】
前記改質器5は、前記バーナ2へ供給する燃料と、前記水管9にて生成の蒸気とから適度の温度に加熱することにより水素と一酸化炭素を生成する機能を有するものである。図2に示すように、この改質器5は、ステンレス製の管状の第一容器11内に改質触媒12を充填し、前記第一容器11を蛇行状に形成している。そして、この第一容器11の外側を前記バーナ2からの燃焼ガスが流通するように構成されている。前記改質触媒12は、NiO(Al23)が用いられ、最も有効に機能する温度は600〜800℃であるので、前記改質器5は、前記燃焼ガス流路3の上流側の600〜800℃の温度領域に配置している。
【0073】
前記改質器5は、燃料および蒸気(以下、被改質ガスと称する。)の被改質ガス供給手段13を備えている。この被改質ガス供給手段13は、前記バーナ2へ燃料を供給する第一燃料供給ライン14から分岐した第二燃料供給ライン15と、この第二燃料供給ライン15に設けられ燃料中に含まれる腐食成分である硫黄分を除去する脱硫器16と、前記缶体4にて生成の蒸気を使用機器へ供給する蒸気供給ライン(図示省略)から分岐した蒸気供給ライン17と、前記第二燃料供給ライン15と前記蒸気供給ライン17との交叉部に設けられ、被改質ガスの量を制御するとともに被改質ガスを混合する機能を有するエゼクタ18とを含んで構成されている。
【0074】
前記エゼクタ18と前記改質器5とは、被改質ガス供給ライン19で接続されている。前記第二燃料供給ライン15と、前記蒸気供給ライン17には、それぞれ全開,全閉と開閉度の調整とが可能な燃料制御弁21,蒸気制御弁22を設けている。前記エゼクタ18は、前記脱硫器16の上流側に配置することができる。
【0075】
前記エゼクタ18は、前記蒸気供給ライン17からの蒸気を駆動流体とて、前記第二燃料供給ライン15からの燃料を吸引することにより、蒸気と燃料とを混合して、前記改質器5へ供給する機能を有する。前記改質器5へ供給する蒸気と燃料との量は、前記バーナ2の燃焼特性から求めた窒素酸化物濃度(前記40ppm)により、前記燃料制御弁21,前記蒸気制御弁22の開度を設定開度に調整することにより行われる。前記設定開度は、予め実験により求めておく。すなわち、この実施例1では前記NOxセンサを用いることなく蒸気と燃料との量を調整している。
【0076】
前記還元触媒6は、前記缶体4の排ガス出口(前記燃焼ガス流路3の終端)23に接続の排ガス通路24に設けている。この還元触媒6は、水素と一酸化炭素の存在下において燃焼ガス中の窒素酸化物を還元するCO酸化触媒である。
【0077】
前記CO酸化触媒は、通気性を有する基材(図示省略)に触媒活性物質(図示省略)を担持した構成としている。前記基材としては、ステンレスを用い、燃焼ガスとの接触面積を広くするような表面処理を施している。触媒活性物質としては、白金を用いている。
【0078】
前記注入器7は、前記改質器5にて生成の改質ガス(水素と一酸化炭素とを含む)を前記還元触媒6の上流側に注入する機能を有する。前記注入器7は、図3に示すように、多数の注入口25,25,…を形成した複数の注入管26,26を含んで構成される。前記各注入管26は、改質ガス供給ライン27にて前記改質器5と接続されている。
【0079】
前記各注入管7は、この実施例1では、前記水管9,9の間に燃焼ガスと交叉するように縦(垂直)方向に設けているが、燃焼ガスと交叉するように水平方向に設けることもできる。前記注入器7の設置位置は、前記改質器5と前記還元触媒6との間において、水素の注入量と、前記還元触媒6にて必要とする水素量と、燃焼による水素減少量とから、実験的に定めている。
【0080】
つぎに、前記実施例1の動作を説明する。図1において、燃料と燃焼空気とが混合された状態で、押し込み型送風機(図示省略)により前記バーナ2へ供給される。前記バーナ2において、燃焼が行われ、生成された燃焼ガスは、前記各水管9を加熱しながら、前記燃焼ガス流路3を前記排ガス出口23へ向けて流れる。燃焼ガスは、前記各水管9を加熱して蒸気を生成するとともに、吸熱により燃焼温度が抑制され、所定量、例えば約40ppmのNOxを含むガスとなる。燃焼ガスは、前記各水管9による吸熱により、その温度が下流へゆくに従い低下する。
【0081】
前記バーナ2の燃焼開始後、前記各水管9から蒸気が供給されるようになると、それまで閉じていた前記燃料制御弁21,前記蒸気制御弁22を前記設定開度まで開く。すると、前記蒸気供給ライン17から前記エゼクタ18へ蒸気が供給され、前記第二燃料供給ライン15から前記脱硫器16にて脱硫された燃料が前記エゼクタ18へ吸引される。前記エゼクタ18により蒸気と燃料とが混合されて、改質ガスとして、前記改質器5へ供給される。前記所定量のNOxを還元するに必要な水素量とこの水素量生成に必要な燃料と蒸気量とは、実験などにより求める。
【0082】
前記改質器5においては、燃焼ガスにて加熱され、約600〜800℃に保持される結果、つぎの反応式により改質ガスから水素を生成する。
(1) CH4+H2O→3H2+CO
【0083】
前記改質器5にて生成の水素と一酸化炭素は、前記注入器7により前記還元触媒6の上流側に注入される。この還元触媒6において、燃焼ガス中に含まれる窒素酸化物をつぎの反応式の全てまたは一部により還元し、排出NOx量を低減する。
(2) 2NO+2H2→2H2O+N2
(3) 2NO+H2→H2O+N2
(4) CO+2NO→CO2+1/2N2
(5) CO+2NO→CO2+N2
【0084】
前記NOx低減量は、燃焼ガス中に含まれるNOx量に対する水素および一酸化炭素の注入量により決まるので、この実施例1では、前記注入量は、排出NOx値が0ppmとなるように設定されている。
【0085】
この実施例1によれば、前記ボイラ1に用いる燃料と、前記ボイラ1で生成された蒸気とを用いて生成される水素を利用してNOxを還元するので、特別な脱硝剤を必要とすることなく、簡易に5ppm以下の超NOxを実現できる。また、前記バーナ2の空気比を1.05(酸素濃度1%)程度の低空気比としているので、省エネルギ-を実現できるとともに、前記バーナ2を安定的に燃焼させることができ、前記バーナ2の燃焼制御を容易に行うことができる。
【0086】
また、この実施例1によれば、前記改質器5が前記缶体4の燃焼ガス流路3内に組み込まれて、水素を生成するための熱源として利用されているので、設備全体の小型化が可能となり、しかも、前記改質器5の加熱源として電気ヒータを用いるものと比較して、熱的なロスが少ないので、ランニングコストを低減できる。さらに、前記改質器5を水素改質に最適温度となる前記缶体4の燃焼ガス流路3の温度領域に配置しているので、前記改質器5による効率的な水素の生成が行える。その結果、少ない燃料と蒸気で低NOx化を実現でき、一層省エネルギー化を実現することができる。
【実施例2】
【0087】
つぎに、この発明の実施例2のボイラ1を図面に基づいて説明する。図4は、同実施例2の概略構成図であり、図5は、同実施例2の要部拡大の説明図である。
【0088】
同実施例2において、前記実施例1と異なるのは、前記実施例1の改質器5が前記第一容器11内に水素分離膜を備えていないのに対して、この実施例2は、第二容器28内に、前記改質触媒12と、チューブ状の第一水素分離膜29とを備えた点である。その他の構成は、前記実施例1と同様であるので、同じ構成要素には、同じ符号を付して説明を省略する。
【0089】
前記第二容器28は、前記改質触媒12を収容する容器であって、ステンレス製で円筒状に形成され、その外側を燃焼ガスが流通するように前記燃焼ガス流路3の600〜800℃の温度領域に配置している。この第二容器28は、複数に分割して前記燃焼ガス流路3に交叉する方向に燃焼ガスが流れる間隔を存して配置することができる。
【0090】
前記第一水素分離膜29は、多孔質金属管の表面にパラジウムメッキなどを施すことでチューブ状に形成し、前記第二容器28の内部に挿入される。
【0091】
前記第二容器28には、前記被改質ガス供給ライン19と接続される入口管31と、前記改質触媒12により改質処理され、かつ前記第一水素分離膜29により水素が除かれたガス(オフガスと称する。)を排出する排出管32とを備えている。排出されたオフガスは、前記バーナ2の上流側に導入して、燃料ガスとして燃焼させる。前記第一水素分離膜29は、水素を導出する出口管を兼用している。
【0092】
この実施例2の動作を説明する。この実施例2の動作において、前記実施例1と異なるのは、前記改質器5により、分離された水素が改質ガス供給ライン27を介して前記注入
器7へ供給され、ここから燃焼ガス中に分散、噴出される点である。なお、実施例3においては、注入ガス中にほとんど一酸化炭素を含まないので、前記式(4)(5)の還元反応は、生じない。
【0093】
この実施例2によれば、燃焼ガスへ注入されるガスに一酸化炭素がほとんど含まれないので、安全である。
【実施例3】
【0094】
つぎに、この発明の実施例3のボイラ1を図面に基づいて説明する。図6は、同実施例3の概略構成図である。
【0095】
同実施例3において、前記実施例2と異なるのは、前記実施例2が改質器5の第二容器28を円筒状としているのに対して、この実施例3では、改質器5を、単一の容器でなく一対の直方体形状で、ステンレス製の第二容器28A,28Aと、複数のチューブ状で、ステンレス製の第二容器12B,28B,…とから構成した点である。前記各第二容器28A,28Bは、容器形状が異なるだけで、前記実施例2の改質器5と同様に前記改質触媒12およびチューブ状の前記第一水素分離膜29とを備え、同様の機能を成すように構成されている。
【0096】
前記各第二容器28A,28Bの第一水素分離膜29は互いに並列に接続され、共通の被改質ガス供給ライン19から被改質ガスが並列的に供給され、改質、分離した水素を共通の改質ガス供給ライン27にて集合して、前記注入器7へと流すように構成されている。前記バーナ2の燃焼ガスは、図5の実線矢視の如く、前記各第二容器28A,28Bの外側を流れて各容器を加熱するように構成されている。
【0097】
この実施例3の動作は、前記実施例2の動作と同様であるので、その説明を省略する。この実施例3によれば、前記実施例2による効果に加えて、前記改質器5の容器が分割されているので、前記各第二容器28A,28Bを効率良く加熱することができるという効果を奏する。
【実施例4】
【0098】
つぎに、この発明の実施例4のボイラ1を図面に基づいて説明する。図7は、同実施例4の概略構成図である。
【0099】
同実施例4において、前記実施例3と異なるのは、前記実施例3の改質器5が前記第二容器28Aと前記第二容器28Bとから構成しているのに対して、この実施例4では、前記改質器5を複数の直方体状の前記第二容器28A,28A,…のみにて構成している点である。この実施例4の動作は、前記実施例2,3と同様であるので、その説明を省略する。この実施例4によれば、前記第二容器28A,28A,…を直方体状としているので、加工が容易である。
【実施例5】
【0100】
つぎに、この発明の実施例5のボイラ1を図面に基づいて説明する。図8は、同実施例5の要部の概略構成図である。
【0101】
同実施例5において、前記実施例4と異なるのは、改質器5を改質触媒と水素分離膜を用いたものとしている点で、前記実施例4の改質器5と同じであるが、その構造を異ならせた点である。すなわち、この実施例5においては、図8に示すように、前記改質器5の各第二容器28Aは、被改質ガスが導入され、前記改質触媒12を収容し一方の壁が第二水素分離膜33から構成される改質部34と、前記水素分離膜33を介して前記改質部3
4に隣接して形成される分離部35とを含んで構成されている。
【0102】
より具体的に説明すると、図8を参照して、前記改質部34を直方体状に形成して、前記改質部34の対向する一方の壁をパラジウムメッキなどが施されたシート状の第二水素分離膜33とし、前記一方の壁と間隔を存して配置される他方の壁36を金属板とする。そして、一対の改質部34を前記各第二水素分離膜33が間隔を存して対向するように配置している。前記各改質部34の他方の壁36の外側を燃焼ガス流路とし、前記各第二水素分離膜33の間を水素を分離して取り出す分離部35として構成している。要するに、この実施例5は、前記実施例4の前各記第二容器28Aを一対の前記改質部34,34を間隔を存して配置した構成とすることにより、図5に示すチューブ状の第一水素分離膜29を板状の一対の第二分離膜33,33に置き換えたものということができる。この実施例5の動作は、前記実施例2〜4と同様であるので、その説明を省略する。
【実施例6】
【0103】
つぎに、この発明の実施例6のボイラ1を図面に基づいて説明する。図9は、同実施例6の概略構成図であり、図10は、同実施例6の要部拡大の説明図である。
【0104】
同実施例6において、前記実施例2〜5と異なるのはつぎの点である。すなわち、前記実施例2〜5の改質器5が改質触媒と水素分離膜とを一つの前記第一容器11または前記第二容器28に備えているのに対して、この実施例6では、図10に示すように、前記改質器5は、前記改質触媒12を直方体状の第三容器37内に収容した改質部34と、この改質部34の下流側に改質ガス供給ライン27にて接続され、チューブ状の前記第一水素分離膜29をチューブ状の第四容器38内に挿入した分離部35とを含んで構成されている。図10では、前記第三容器37および前記第四容器38をそれぞれ1個ずつしか図示していないが、図9に示すようにそれぞれ複数設けられ、前記第三容器37および前記第四容器38毎に互いに並列に接続される。その他の構成は、前記実施例2〜5と同様であるので、同じ構成要素には、同じ符号を付して説明を省略する。
【0105】
この実施例6の動作を説明する。この実施例6の動作において、前記実施例2〜5と異なるのは、被改質ガスの改質が前記各第三容器37において行われ、その後水素の分離が前記各第四容器38にて行われる点である。この実施例6によれば、前記各第三容器37の改質触媒12と、前記各第四容器38の水素分離膜とをそれぞれがもっとも効率的に動作する温度帯に設置することで、効率と耐久性の向上が図られる。
【実施例7】
【0106】
つぎに、この発明の実施例7のボイラ1を図面に基づいて説明する。図11は、同実施例7の概略構成図である。
【0107】
同実施例7において、前記実施例6と異なるのは、前記実施例6の改質部34の容器形状をチューブ状とした点のみである。その他の構成は、前記実施例6と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。また、この実施例7の動作は、前記実施例6と同様であるので、その説明を省略する。
【実施例8】
【0108】
つぎに、この発明の実施例8のボイラ1を図面に基づいて説明する。図12は、同実施例8の概略構成図である。
【0109】
同実施例8は、燃料を燃焼させるバーナ2と、このバーナ2により生成されたガスが流通する燃焼ガス流路3に水管9を配設した缶体4と、前記燃料と前記水管9にて生成の蒸気とから水素を生成する改質器5と、この改質器5で生成される一酸化炭素と蒸気から水
素を生成する変成器39と、水素の存在下において前記缶体4を通過した燃焼ガス中の窒素酸化物を還元する還元触媒6とを備え、前記改質器5および前記変成器39にて生成された水素を前記還元触媒6の上流側において供給するものである。
【0110】
要するに、この実施例8において、前記実施例1と異なるのは、前記改質器5の後流に前記変成器39を設けた点であり、その他は同様であるので、その説明を省略する。
【0111】
前記変成器39は、前記改質器5にて生成された水素と一酸化炭素のうち、一酸化炭素と水蒸気とから変成触媒を用いて水素を生成する機能を有する。前記変成器39は、第五容器40内に前記変成触媒(図示省略)を収容した構成としている。前記第五容器40は、ステンレスにて構成され、種々の前記改質器5と同様に種々の形状とすることができる。そして、この変成器39は、前記改質器5と同様に前記燃焼ガス流路3の燃焼ガスにより加熱される。
【0112】
前記変成触媒としては、Fe23およびCr23の混合物を用いている。そして、前記変成触媒の機能を効果的に発揮させるために、前記変成器39を前記燃焼ガス流路3の中の320〜400℃の温度領域を有する部分に配設している。
【0113】
この実施例8の動作を前記実施例と異なる点のみ説明する。前記改質器5にて水素と一酸化炭素を含む改質ガスが形成されるところまでは、前記実施例1と同様である。前記改質器5にて生成の水素と一酸化炭素を含む改質ガスは、前記被改質ガス供給ライン27を介して前記変成器39へと導かれる。
【0114】
この変成器39において、水蒸気と一酸化炭素の存在下で、前記変成触媒に機能により水素が生成される。この反応は、つぎの式で表現される。
(6) CO+H2O→H2+CO2
【0115】
前記改質器5にて生成された水素と前記変成器39にて生成された水素とは、前記還元触媒6の上流側に前記注入器7により注入される。そして、前記還元触媒6において、水素の存在下で燃焼ガス中に含まれるNOxを還元し、排出NOx量を所定の目標値に低減する。なお、この実施例8の変成器39から流出するガス中には、未反応の一酸化炭素を含む。
【0116】
この実施例8によれば、前記注入器7からの注入ガス中に含まれる一酸化炭素が少ないため、比較的安全に低NOx化が行える。
【0117】
この発明は、前記実施例1〜8に限定されるものではなく、種々変更可能である。たとえば、丸型の蒸気ボイラや角型,丸型の温水ボイラにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】この発明の実施例1のボイラの概略構成図である。
【図2】同実施例1の要部拡大の説明図である。
【図3】同実施例1の他の要部拡大の説明図である。
【図4】この発明の実施例2のボイラの概略構成図である。
【図5】同実施例1の要部拡大の説明図である。
【図6】この発明の実施例3のボイラの概略構成図である。
【図7】この発明の実施例4のボイラの概略構成図である。
【図8】この発明の実施例5の要部拡大の説明図である。
【図9】この発明の実施例6のボイラの概略構成図である。
【図10】同実施例6の要部拡大の説明図である。
【図11】この発明の実施例7のボイラの概略構成図である。
【図12】この発明の実施例8のボイラの概略構成図である。
【符号の説明】
【0119】
1 ボイラ
2 バーナ
3 燃焼ガス流路(ガス流路)
4 缶体(熱交換器)
5 改質器
6 還元触媒
7 注入器
11 第一容器
28 第二容器
29 第一水素分離膜
33 第二水素分離膜
34 改質部
35 分離部
36 壁
37 第三容器
38 第四容器
39 変成器
40 第五容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させるバーナと、このバーナにより生成されたガスが流通するガス流路に水管を配設した熱交換器と、燃料と水蒸気とから水素を生成する改質器と、前記熱交換器を通過したガス中の窒素酸化物を水素の存在下において還元する還元触媒とを備え、前記改質器にて生成された水素を前記還元触媒の上流側へ供給することを特徴とするボイラ。
【請求項2】
前記改質器が前記熱交換器内のガス流路に組み込まれることを特徴とする請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
前記水管が水蒸気生成用のものとされ、前記改質器にて使用される水蒸気が前記水管にて生成の水蒸気であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボイラ。
【請求項4】
前記改質器が水素および一酸化炭素を生成する改質触媒を有していることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のボイラ。
【請求項5】
前記改質器が、水素および一酸化炭素を生成する改質触媒と、生成された水素を分離する水素分離膜とを有していることを特徴とする請求項4に記載のボイラ。
【請求項6】
前記改質器が、前記改質触媒とチューブ状の水素分離膜とを容器内に収容したものであることを特徴とする請求項5に記載のボイラ。
【請求項7】
前記改質器が、前記改質触媒を収容し壁が水素分離膜から構成される改質部と、前記水素分離膜を介して前記改質部に隣接される分離部とを含むことを特徴とする請求項5に記載のボイラ。
【請求項8】
前記改質器が、前記改質触媒を収容した改質部と、この改質部の下流側に接続され前記水素分離膜を有する分離部とを含むことを特徴とする請求項5に記載のボイラ。
【請求項9】
燃料を燃焼させるバーナと、このバーナにより生成されたガスが流通するガス流路に水管を配設した熱交換器と、燃料と水蒸気とから水素を生成する改質器と、この改質器で生成される一酸化炭素と水蒸気とから水素を生成する変成器と、前記熱交換器を通過したガス中の窒素酸化物を水素の存在下において還元する還元触媒とを備え、前記改質器および前記変成器にて生成された水素を前記還元触媒の上流側へ供給することを特徴とするボイラ。
【請求項10】
前記改質器が前記熱交換器内のガス流路に組み込まれることを特徴とする請求項9に記載のボイラ。
【請求項11】
前記水管が水蒸気生成用のものとされ、前記改質器にて使用される水蒸気が前記水管にて生成の水蒸気であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載のボイラ。
【請求項12】
前記バーナの空気比を1.05〜1.10とすることを特徴とする請求項1〜請求項11に記載のボイラ。
【請求項13】
前記還元触媒の一次側または二次側の窒素酸化物濃度に基づき前記改質器へ供給する燃料および水蒸気の量を設定することを特徴とする請求項1〜請求項12に記載のボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−75960(P2008−75960A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255550(P2006−255550)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】