説明

ボツリヌス毒素と筋肉刺激の併用による運動障害の治療

本発明は、患者の運動障害を治療するための方法であって、該方法は、有効量の化学的除神経薬を含む医薬品を前記患者に投与するステップを含み、前記患者は、筋肉刺激治療、例えば、運動療法または筋肉活性化治療が施され、前記医薬品は、前記運動療法の前および/または最中および/または後に投与される方法、ならびに運動障害に罹患している患者を治療するためのキットであって、化学的除神経薬の有効量を含む医薬品と、自動運動療法を実施するためのデバイスとを含むキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的除神経薬と自動筋肉刺激治療の併用によって運動障害を治療するための方法、ならびに前記医薬品、および場合により自動化された筋肉刺激、例えば運動療法を実施するためのデバイスを含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
A.化学的除神経薬
化学的除神経は、神経がその目標組織、例えば、筋肉、腺または別の神経を刺激することを防止するための薬剤の使用を指す。化学的除神経は、例えば、フェノール、エチルアルコールまたはボツリヌス毒素を用いて実施される。化学的除神経は、例えば、1つまたは2つの大きい筋肉あるいはいくつかの小さい筋肉に局在的痙縮を有する患者に適する。それを使用して、筋痙攣、筋肉痛および反射亢進などの症状を緩和することができる。筋肉イノヴェーションに干渉することが可能な化学的除神経薬を「筋肉弛緩薬」と呼ぶこともできる。
【0003】
「筋肉弛緩薬」という用語は、本明細書において、少なくとも2つの主要治療薬群、すなわち神経筋遮断薬および鎮痙薬を指すのに使用される。神経筋遮断薬は、神経筋端板における伝達に干渉することによって作用し、CNS活性を有さない。それらは、それぞれ部分的または完全な完全麻痺または投与量依存性不全麻痺をもたらすために集中治療および緊急診療における外科手術中にしばしば使用される(すなわち筋緊張のモジュレータとして使用される)。「中枢作用」筋弛緩薬としても知られる鎮痙薬は、筋骨格痛および痙縮を緩和するとともに、様々な神経学的状態における痙縮を低減するのに使用される。
【0004】
神経筋遮断薬および鎮痙薬は、筋弛緩薬としてしばしばひとまとまりにされる。両用語は、異なる薬剤群を指す。
【0005】
神経筋遮断薬は、神経筋接合部における神経筋伝達を遮断して、影響を受けた骨格筋の完全麻痺または不全麻痺をもたらす。これは、アセチルコリン(ACh)合成または放出の阻害を介してシナプス前作用することによって、またはアセチルコリン受容体においてシナプス後作用することによって達成される。シナプス前作用する薬物の例は、ボツリヌス毒素、テトロドトキシンおよび破傷風毒素である。
【0006】
「化学的除神経」という用語は、化学的除神経薬によって直接的または間接的に誘発されるすべての効果をも包含するため、前記化学的除神経薬の上流、下流または長期的効果をも含む。したがって、前シナプス効果、ならびに後シナプス効果、組織効果、および/または脊髄もしくは影響を受けたニューロンを介する間接的効果も包含される。
【0007】
1つの化学的除神経薬であるボツリヌス毒素は、今日まで知られている最も有毒な化合物の1つであるが、過去において多くの状態および障害の治療に使用され、それらのいくつかが例えばPCT/欧州特許第2007/005754号に記載されている。また、ボツリヌス毒素Aタンパク質複合体に基づくボツリヌス毒素A型の市販品が、それぞれ商品名Botox(登録商標)(Allergan Inc.)および商品名Dysport(Ipsen(登録商標)Ltd.)から入手可能である。より高度に精製されたトキシン調製物に基づき、複合化タンパク質のないボツリヌス毒素A型の神経毒成分を単離された形で含む医薬組成物が、ドイツにおいて、商品名Xeomin(登録商標)でMerz Pharmaceuticals GmbH社から入手可能である。
【0008】
筋肉刺激治療
様々な筋肉刺激治療が当該技術分野で知られている。この点に関しては、本明細書の「発明を実施するための形態」の章のサブセクションBを参照されたい。
【0009】
1つの特定の実施形態は、歩行療法である。
【0010】
課題に特有のトレーニングによる神経可塑性の向上の原理を利用して歩行能力を回復するための歩行療法が、中枢歩行障害の患者のリハビリテーション過程において十分に確立された(例えば、Hesse S. (2001)、Locomotor therapy in neurorehabilitation, NeuroRehabilitation 16:133〜139頁; Borgraefeら、(2007) Movement Disorders、23、280〜282頁; Meyer-Heimら、(2007)Developmental Medicine & Child Neurology 2007、49、900、906頁参照)。
【0011】
成人における従来の地面歩行トレーニング(COGT)が、体重支持トレッドミルトレーニング(BWSTT)法によって支持されることによって、対称性および歩行速度の向上などの機能的利点が得られた(Barbeau H、Visintin M. (2003)、「Optimal outcomes obtained with body-weight support combined with treadmill training in stroke subjects」、Arch Phys Med Rehabil 84:1458〜1465頁; McNevin NH、Coraci L、Schafer J. (2000)、「Gait in adolescent cerebral palsy: the effect of partial unweighting」、Arch Phys Med Rehabil 81:525〜528頁)。しかし、これらの方法における手動的支援のための人的資源の割当は甚大である。外傷性脳傷害(TBI)または不完全脊髄傷害(SCI)の成人患者の調節試験が、BWSTTおよびCOGTを用いることによって実施された(Dobkin B、Apple D、Barbeau H、Basso M、Behrman A、Deforge Dら、(2006)「Weight-supported treadmill vs over-ground training for walking after acute incomplete SCI」、Neurology 66:484〜493頁; Wilson DJ、Powell M、Gorham JL、Childers MK (2006)、「Ambulation training with and without partial weightbearing after traumatic brain injury: results of a randomized, controlled trial」、Am J Phys Med Rehabil 85:68〜74頁)。
【0012】
脳性麻痺(CP)の子供において、全般的な機能力トレーニングが、機能的動作の向上に有効であることが判明した。集中的BWSTTは、これらの子供の歩行能力を向上させることができる有望な証拠が存在する(Song WH Sl、Kim YJ、Yoo JY、(2003)、「Treadmill training with partial body weight support in children with cerebral palsy」、Arch Phys Med Rehabil 84 (E2))。
【0013】
歩行能力を回復または発達させるために、トレーニングの反復および集中は、運動(再)学習にとって重要な鍵であると思われる。したがって、歩行トレーニングをさらに改善するために、過去10年の間に自動歩行トレーニングデバイスが開発された(Colombo G、Joerg M、Schreier R、Dietz V(2000)、「Treadmill training of paraplegic patients using a robotic orthosis」、J Rehabil Res Dev 37:693〜700頁; Hesse S、Schmidt H、Werner C、Bardeleben A(2003)、「Upper and lower extremity robotic devices for rehabilitation and for studying motor control」、Curr Opin Neurol 16:705〜710頁)。
【0014】
当該デバイスは、米国特許第6,821,233号に詳述されている。この特許は、不全対麻痺および不全片麻痺患者のトレッドミル療法に使用され、トレッドミル上の脚を自動的に誘導する自動装置に関する。主張される装置は、生理的パターンの運動において脚を誘導する駆動および制御矯正デバイス、トレッドミルおよびリリーフ機構からなる。体重の少なくとも一部をアンロードすることによって患者を支持する役割を果たす改良型リリーフ機構が、欧州特許第1586291号の主題である。歩行療法のためのさらなるデバイスが、それぞれ米国特許第6,059,506号および米国特許第6,685,658号の主題である。
【0015】
自動歩行療法のためのデバイスは、例えば、商品名Lokomat(登録商標)でHocoma AGから商業的に入手可能である。約4歳以上の年齢から開始する子供のトレーニングを可能にするDGO Lokomat(登録商標)の小児用モジュールがごく最近開発された。
【0016】
本発明により治療される運動障害の1つの具体的な側面は、子供の脳性麻痺(CP)に関連づけられる。CPは、子供における最も高頻度な運動障害である。それは、子供1000人当たり1.5から2.5人以内で起こる。CPは、運動および外観の発達の障害であり、まだ発達すべき若い脳内の損傷(早期脳病変)によって引き起こされる。そのように、CPは、例えば、出産前、出産時、もしくは出産時付近、または生後1年以内に引き起こされる早期脳病変によって引き起こされる一連の状態に対して与えられた総称である。本明細書に使用されているように、CPは、活動過多筋肉をもたらす疾患または障害の任意の他の原因をも含む。脳傷害は、様々な状態、例えば、早熟によって引き起こされ得る。脳性麻痺を引き起こす脳傷害は、非進行性傷害であるが、患者の年齢とともにその効果が変化し得る。これは、経時的に固定痙縮に変化する傾向があり、影響された筋肉を使用する患者の能力を完全に阻害または抑制する筋肉の動的痙縮をもたらし得る。
【0017】
上記歩行療法に加えて、CPを治療するための選り抜きの方法は、多くの場合、伝統的に外科手術であった。近年、細菌毒素としてのボツリヌス毒素が脳性麻痺の治療に使用されてきた。ボツリヌス毒素によるCPの治療の概要を欧州特許EP0605501号ならびに「European Consensus Table 2006 on botulinum toxin for children with cerebral palsy」、European Journal of Pediatric Neurology 10 (2006)、215〜225頁およびそこに引用されている参考文献に見いだすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】PCT/欧州特許第2007/005754号
【特許文献2】米国特許第6,821,233号
【特許文献3】欧州特許第1586291号
【特許文献4】米国特許第6,059,506号
【特許文献5】米国特許第6,685,658号
【特許文献6】欧州特許EP0605501号
【特許文献7】国際公開第2006/027207号A1
【特許文献8】国際公開第2006/114308号A1
【特許文献9】欧州特許第07014785.5号
【特許文献10】国際公開第00/74703号
【特許文献11】国際公開第2006/133818号
【特許文献12】米国特許第60/817756号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Hesse S. (2001)、Locomotor therapy in neurorehabilitation, NeuroRehabilitation 16:133〜139頁
【非特許文献2】Borgraefeら、(2007) Movement Disorders、23、280〜282頁
【非特許文献3】Meyer-Heimら、(2007)Developmental Medicine & Child Neurology 2007、49、900、906頁
【非特許文献4】Barbeau H、Visintin M. (2003)、「Optimal outcomes obtained with body-weight support combined with treadmill training in stroke subjects」、Arch Phys Med Rehabil 84:1458〜1465頁
【非特許文献5】McNevin NH、Coraci L、Schafer J. (2000)、「Gait in adolescent cerebral palsy: the effect of partial unweighting」、Arch Phys Med Rehabil 81:525〜528頁
【非特許文献6】Dobkin B、Apple D、Barbeau H、Basso M、Behrman A、Deforge Dら、(2006)「Weight-supported treadmill vs over-ground training for walking after acute incomplete SCI」、Neurology 66:484〜493頁
【非特許文献7】Wilson DJ、Powell M、Gorham JL、Childers MK (2006)、「Ambulation training with and without partial weightbearing after traumatic brain injury: results of a randomized, controlled trial」、Am J Phys Med Rehabil 85:68〜74頁
【非特許文献8】Song WH Sl、Kim YJ、Yoo JY、(2003)、「Treadmill training with partial body weight support in children with cerebral palsy」、Arch Phys Med Rehabil 84 (E2)
【非特許文献9】Colombo G、Joerg M、Schreier R、Dietz V(2000)、「Treadmill training of paraplegic patients using a robotic orthosis」、J Rehabil Res Dev 37:693〜700頁
【非特許文献10】Hesse S、Schmidt H、Werner C、Bardeleben A(2003)、「Upper and lower extremity robotic devices for rehabilitation and for studying motor control」、Curr Opin Neurol 16:705〜710頁
【非特許文献11】「European Consensus Table 2006 on botulinum toxin for children with cerebral palsy」、European Journal of Pediatric Neurology 10 (2006)、215〜225頁
【非特許文献12】Watkins CL、Leathley MJ、Gregson JM、Moore AP、Smith TL、Sharma AK、「Prevalence of spasticity post stroke」、Clin Rehabil 2002;16(5):515〜522頁(ID 1915001)
【非特許文献13】Koman LA、Mooney JF、Smith BP、Goodman A、Mulvaney T.、「Management of spasticity in cerebral palsy with botulinum-A toxin:report of a preliminary, randomized, double-blind trial」、J Pediatr Orthop 1994;14(3): 299〜303頁(ID 1767458)
【非特許文献14】Pidcock FS、「The emerging role of therapeutic botulinum toxin in the treatment of cerebral palsy」、J Pediatry 2004;145(2 Suppl): S33〜S35. (ID 2994781)
【非特許文献15】Swallowら、J. Appl. Physiol.2007;103:739〜746頁
【非特許文献16】C. N. Uchendua and B. F. Leekb Fitoterapia 第70巻、第1号、1999年2月1日、50〜53頁
【非特許文献17】W.R. Pearson & D.J. Lipman PNAS(1988) 85:2444〜2448頁
【非特許文献18】Montecucco C.、Shiavo G.、Rosetto O:「The mechanism of action of tetanus and botulinum neurotoxins」、Arch Toxicol. 1996;18 (Suppl.): 342〜354頁
【非特許文献19】Katsekas S.、Gremminloh G.、Pich E. M.:「Nerve terminal proteins; to fuse to learn」、Transneuro Science 1994; 17: 368〜379頁
【非特許文献20】Simpson LL、Ann Rev Pharmacol Toxicol. 2004; 44:167〜93頁
【非特許文献21】Berweck、「Sonography-guided injection of botulinum toxin A in children with cerebral palsy」、Neuropediatric 2002(33)、221〜223頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
以上に引用されている従来技術に鑑み、本発明の目的は、例えば、子供におけるCPと併発する運動障害を治療するための運動障害の代替的な治療を提供することである。本発明のさらなる目的は、一実施形態において、個人の運動発達に関連するこれらの障害の改良型治療を提供することである。
【0021】
さらに別の目的は、ここで治療すべき種類の運動障害に罹患している患者に合わせて特異的に設計されたキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
一実施形態において、上記の目的および他の目的は、患者の運動障害を治療するために前記患者に投与される化学的除神経薬の有効量を含む医薬品であって、前記患者は、筋肉刺激治療を受ける、受けた、かつ/または受けることになる患者であり、前記医薬品は、前記筋肉刺激治療の前および/または最中および/または後に投与される医薬品によって解決される。
【0023】
別の実施形態において、上記の目的および他の目的は、患者の運動障害を治療するために前記患者に投与される医薬品の製造のための化学的除神経薬の有効量の使用であって、前記患者は、自動筋肉刺激治療を受ける、受けた、かつ/または受けることになる患者であり、前記医薬品は、前記筋肉刺激治療の前および/または最中および/または後に投与される使用によって解決される。
【0024】
前記筋肉刺激治療は、自動筋肉刺激治療である。前記自動筋肉刺激治療は、筋肉活性化治療であり、筋肉活性化は、前記筋肉の静止状態を超えた筋肉代謝の増強を指す。さらに別の実施形態において、前記自動筋肉刺激治療は、筋肉運動療法である。
【0025】
一実施形態において、前記筋肉刺激治療は、自動運動療法である。
【0026】
さらなる実施形態において、前記筋肉活性化温度刺激、電気刺激、振動、音波による活性化、静水手段による活性化、電磁波もしくは磁場による活性化、医薬活性化またはそれらの任意の組合せ。一実施形態において、前記温度刺激は、40℃超、または45℃超、または50℃超、55℃まで、60℃まで、70℃までまたは80℃までの目標筋肉の加熱である。
【0027】
別の実施形態において、温度刺激による前記自動筋肉活性化は、35℃未満、または30℃未満、または25℃未満、または20℃未満、または10℃未満、0℃まで、-5℃まで、-10℃まで、または-20℃までの目標筋肉の冷却である。別の実施形態において、前記電気刺激は、目標筋肉を神経支配する神経に向けられる。
【0028】
別の実施形態において、前記電気刺激は、目標筋肉そのものに向けられる。
【0029】
別の実施形態において、前記振動は、全身に向けられる。別の実施形態において、前記振動は、単一の筋肉、筋肉群または肢に向けられる。別の実施形態において、前記音波は、超音波または音響波である。別の実施形態において、前記超音波または音響波は、単一の筋肉、筋肉群または肢に向けられる。
【0030】
別の実施形態において、静水手段は、噴射水を含む。別の実施形態において、前記噴射水は、単一の筋肉、筋肉群または肢に向けられる。
【0031】
別の実施形態において、前記電磁波は、マイクロ波を含む。別の実施形態において、前記電磁波は、単一の筋肉、筋肉群または肢に向けられる。
【0032】
別の実施形態において、磁場は、磁気刺激を含む。
【0033】
さらなる実施形態において、前記医薬活性化は、刺激薬、筋収縮薬、筋肉内の血流を増加させる物質、筋肉温度を上昇させる物質、表面タンパク質の数を上方制御することによって、化学的除神経薬が細胞に結合および進入することを可能にする物質、またはそれらの任意の組合せの投与を含む。
【0034】
一実施形態において、前記刺激薬は、β3アゴニスト、カフェイン、エフェドリン、アンフェタミン、メタアンフェタミン、メチルフェニデート、コカイン誘導体およびそれらの任意の組合せの群から選択される。
【0035】
別の実施形態において、前記筋肉収縮薬は、交感効果を有する物質、β2-アドレナリン受容体に対するアゴニスト効果を有する物質、カフェイン、アセチルコリン、ニコチン、エピバチジン誘導体、ABT-594、ジメチルフェニルピペラジニウム、スクシニルコリン、ダルベルギア・サクサティリス(dalbergia saxatilis)から単離された筋肉刺激サポニン誘導体、カルシウム、カリウム、ノルエピネフリン、アドレナリン(エピネフリン)、ロイコトリエン、アレン含有アラキドン酸誘導体、およびそれらの任意の組合せの群から選択される。
【0036】
別の実施形態において、筋肉内の血流を増加させる前記物質は、EDHF、間質性K+、酸化窒素、β2アドレナリンアゴニスト、ヒスタミン、プロスタサイクリン、プロスタグランジン、VIP、細胞外アデノシン、細胞外ATP、細胞外ADP、L-アルギニン、ブラジキニン、物質P、ナイアシン(ニコチン酸)、血小板活性化因子(PAF)、CO2、間質性乳酸、Adenocard(登録商標)、アルファ遮断薬、亜硝酸アミル、心房性ナトリウム利尿ペプチド、エタノール、ヒスタミン誘発剤、補体タンパク質C3a、C4a、C5a、酸化窒素誘発剤、三硝酸グリセリル(ニトログリセリン)、一硝酸イソソルビド、二硝酸イソソルビド、四硝酸ペンタエリスリトール(PETN)、ニトロプルシドナトリウム、PDE5阻害薬、酸化窒素の効果を間接的に高める薬剤、シルデナフィル、タダラフィル、タルデナフィル、テトラヒドロカンナビノール、テオブロミン、パパベリンおよびそれらの任意の組合せの群から選択される。別の実施形態において、筋肉温度を上昇させる前記物質は、エフェドラ、苦橙(シネフリン)、トウガラシ、ショウガ、シブトラミンおよびその代謝物質、カフェインならびにそれらの任意の組合せの群から選択される。
【0037】
別の実施形態において、前記表面タンパク質は、SV2を上方制御する物質、GT1b、GD1b、GQ1b、シナプトタグミンポリペプチド、Syt1およびSyt2を含む群から選択される。
【0038】
別の実施形態において、表面タンパク質の数を上方制御する前記物質は、ホルモン、成長因子、ニューロトロフィン、受容体内在化の遮断物質、受容体表面発現を増強させる因子、アレスチン阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、受容体分解の遮断物質、阻害G-タンパク質の阻害薬、競合受容体アンタゴニストおよび神経伝達物質分解剤の群から選択される。
【0039】
さらに別の実施形態において、前記自動運動療法は、自動歩行装具またはアームムーバーによって支持される。
【0040】
一実施形態において、前記自動歩行装具は、トレッドミルと併用される。
【0041】
別の実施形態において、前記自動運動療法は、一実施形態において、トレッドミル、および前記患者の体重に作用するリリーフ機構を使用して、生理的パターンの運動で前記患者の脚を誘導する駆動および制御矯正デバイスを含むデバイスを使用することによって実施される。
【0042】
別の実施形態において、リリーフ機構は、患者の重量の高さ、および該重量に作用するリリーフ力を調節する手段を含み、前記重量は、ケーブルの長さを調節して前記懸垂重量の高さを規定する第1のケーブル長調節手段と、ケーブルの長さを調節して、懸垂重量に作用するリリーフ力を規定する第2のケーブル長調節手段とを備えたケーブルによって支持される。
【0043】
別の実施形態において、自動運動療法は、トレッドミルと、患者に対するリリーフ機構と、駆動矯正デバイスとを含むトレッドミルトレーニングのための装置であって、トレッドミル上に高さ調節可能に固定されたパラレログラムが、矯正デバイスを安定させ、患者が前方、後方および側方に傾くのを防止するために設けられ、パラレログラムは、矯正デバイスに装着され、矯正デバイスは、臀部矯正デバイスおよび2つの脚部品を含むことにより、2つの臀部ドライブが臀部矯正デバイスを移動させるために設けられ、2つの膝ドライブが脚部品を移動させるために設けられ、臀部矯正デバイスおよび脚部品は調節可能であり、脚部品は、サイズおよび位置が調節可能であるカフを備え、制御ユニットが、矯正デバイスの運動を制御し、トレッドミルの速度を制御するために設けられた装置を使用することによって実施される。
【0044】
別の実施形態において、自動運動療法は、レーリングを含むトレッドミルと、患者に対するリリーフ機構と、駆動矯正デバイスとを含むトレッドミルトレーニングのための装置であって、矯正デバイスを安定させる手段が、患者が前方、後方および側方に傾くのを防止するために設けられ、矯正デバイスは、臀部矯正デバイスおよび2つの脚部品を含み、2つの臀部ドライブが臀部矯正デバイスを移動させるために設けられ、2つの膝ドライブが脚部品を移動させるために設けられ、ボールねじ紡錘ドライブが各膝ドライブおよび臀部ドライブに対して設けられ、矯正デバイスおよび脚部品は調節可能であり、脚部品は、サイズおよび位置が調節可能であるカフを備え、制御ユニットが、矯正デバイスの運動を制御し、トレッドミルの速度を制御するために設けられた装置を使用することによって実施される。
【0045】
別の実施形態において、自動運動療法は、高さおよび傾きが調節可能な固定テーブルと、患者のための固定テーブルに対する保持デバイスを備えた締結ベルトと、膝機構および足機構からなる、患者の脚の運動のためのドライブ機構とを含む、不全対麻痺および不全片麻痺患者における両側または片側痙縮状態のリハビリテーションまたはハビリテーションのための歩行療法用装置であって、固定テーブルは、軸関節の回りを脚部に対して変位可能なヘッド部を有することにより、軸関節は、調節機構が設けられる調節可能臀部拡張角度を与え、膝部および足部は、脚機構上のレール上に変位可能に配置され、足機構は、膝拡張時に足裏に対する力を確定する役割を果たし、制御ユニットが装置の運動を制御するために設けられた装置を使用することによって実施される。
【0046】
別の実施形態において、自動運動療法は、生命体の第1の部分と第2の部分との間に力を加えるためのデバイスであって、前記デバイスは、それぞれ前記第1および第2の部分と連動する第1および第2の連結体組立品を含み、各前記第1および第2の連結体組立品は、
a.部分上の所定位置に固定され、それぞれが支持連結体である支持部と、
b.関節を介して前記支持連結体の各々に装着された関節式連結体とを含み、前記第1および第2の連結体組立品の前記関節式連結体は、軸関節を介して互いに装着され、前記第2の組立品の前記関節式連結体は、前記軸関節の上方に伸び、第1および第2のケースが前記第1の連結体組立品における連結体に装着され、第1および第2の腱がそれぞれ前記第1および第2のケースを貫通し、前記第2の連結体組立品における連結体に装着され、前記腱の一方は、前記軸関節の片側で前記第2の連結体組立品における前記関節式連結体に装着され、他方の腱は、前記軸関節の反対側で前記第2の連結体組立品における前記関節式連結体に装着されたデバイスを使用することによって実施される。
【0047】
別の実施形態において、自動運動療法は、手の第1の部分と第2の部分との間に力を加えるためのデバイスであって、前記部分の一方は指骨であり、前記デバイスは、それぞれ前記第1および第2の部分と連動する第1および第2の連結体組立品を含み、各連結体組立品は、
a.部分上の所定位置に固定され、それぞれが支持連結体である支持部と、
b.関節を介して前記支持連結体の各々に装着された関節式連結体とを含み、前記第1および第2の連結体組立品の前記関節式連結体は、軸関節を介して互いに装着され、前記第2の組立品の前記関節式連結体は、前記軸関節の上方に伸び、第1および第2のケースが前記第1の連結体組立品における連結体に装着され、第1および第2の腱がそれぞれ前記第1および第2のケースを貫通し、前記第2の連結体組立品における連結体に装着され、前記腱の一方は、前記軸関節の片側で前記第2の連結体組立品における前記関節式連結体に装着され、他方の腱は、前記軸関節の反対側で前記第2の連結体組立品における前記関節式連結体に装着されたデバイスを使用することによって実施される。
【0048】
別の実施形態において、運動障害は、アゴニストとアンタゴニストの不均衡が機能を妨げる運動過剰性および/または運動低下性運動障害である。別の実施形態において、運動障害は、脳性麻痺、パーキンソン病、中枢歩行障害、脊髄傷害、ジストニア、外傷性脳傷害、遺伝子障害、代謝障害、動的筋痙縮および/または卒中に対応づけられる。別の実施形態において、運動障害は、尖足、内反足、下肢痙縮、上肢痙縮、内転痙縮、腕ジストニア、手ジストニア、臀部屈曲痙縮、臀部内転、膝屈曲痙縮(屈み歩行)、足首の足底屈曲、距骨下関節の回外および回内、書痙、音楽家痙攣、ゴルファー痙攣、脚ジストニア、大腿内転、大腿外転、膝屈曲、膝伸展、内転尖足変形、足ジストニア、長母趾伸筋、趾屈曲、趾伸展から選択される少なくとも1つに対応づけられる。
【0049】
一実施形態において、前記患者はヒトである。別の実施形態において、患者は、運動発達を完了しておらず、固定筋拘縮が生じていない。別の実施形態において、患者は、6歳までの子供である。
【0050】
別の実施形態において、化学的除神経薬、例えばボツリヌス毒素は、注射によって投与される。
【0051】
別の実施形態において、前記薬剤は、治療時に数回投与される。
【0052】
別の実施形態において、前記薬剤は、運動療法の開始前に初めて投与される。
【0053】
別の実施形態において、前記薬剤は、3から6カ月の間隔で再投与される。
【0054】
別の実施形態において、前記薬剤は、2週間から3カ月未満の間隔で再投与される。
【0055】
別の実施形態において、前記薬剤は、筋肉活性が自動筋肉活性化治療に干渉した時点で再投与される。
【0056】
一実施形態において、化学的除神経薬は、ボツリヌス毒素である。
【0057】
一実施形態において、投与されるボツリヌス毒素の有効量は、成人では神経毒性成分の500Uを超え、または子供では体重1kg当たり15Uを超える。
【0058】
別の実施形態において、ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素複合体A型である。
【0059】
別の実施形態において、ボツリヌス毒素は、クロストリジウムボツリヌス毒素複合体の神経毒性成分である。
【0060】
別の実施形態において、ボツリヌス毒素は、血清型A、B、C、D、E、F、Gおよびそれらの混合物からなる群から選択される。別の実施形態において、神経毒性成分は、A型である。
【0061】
また、本発明は、運動障害に罹患している患者を治療するためのキットであって、化学的除神経薬の有効量を含む医薬品と、自動運動療法を実施するためのデバイスなどの、筋肉刺激治療を実施する手段とを含むキットに関する。
【0062】
一実施形態において、筋肉刺激治療を実施する前記手段は、温度刺激手段、電気刺激手段、振動手段、音波による活性化手段、静水手段、電磁波手段および磁場手段、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0063】
別の実施形態において、筋肉刺激治療を実施する前記手段は、前記患者の肢を生理的パターンの運動で誘導する駆動および制御歩行装具および/またはアームムーバーを含む自動運動療法手段である。
【0064】
別の実施形態において、化学的除神経薬は、ボツリヌス毒素である。
【0065】
別の実施形態において、ボツリヌス毒素は、クロストリジウムボツリヌス毒素複合体の神経毒性成分である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明は、患者の運動障害を治療するために前記患者に投与される医薬品の製造のための化学的除神経薬の有効量の使用であって、前記患者は、場合により自動化された筋肉刺激治療を受け、前記医薬品は、前記筋肉刺激治療の前および/または最中および/または後に投与される使用に関する。
【0067】
「(自動)筋肉刺激治療」という用語は、本明細書において、自動筋肉運動によって、または他の自動筋肉活性化手段によって筋肉を刺激することが可能な任意の(自動的)方法と定義される。
【0068】
A.患者グループ
この方法およびキットによって治療される患者は、動物またはヒトである。一実施形態において、患者はヒトである。別の実施形態において、記載および主張されている治療は、特に、脳性麻痺に伴う運動障害に関して若い患者である。この点に関して、「若い」という用語は、その運動発達を完了しておらず、固定筋拘縮が生じていない患者を指す。別の実施形態において、患者は、運動発達および運動成熟が未完成の6〜8歳までの年齢の子供であり得る。さらに別の実施形態において、治療される子供は、6歳までである。
【0069】
別の実施形態において、運動障害の治療は、基本的状態、例えばCPの症状、特に、細かい動作業(筆記またはハサミの使用)が困難であること、均衡を保つのが困難であること、または不本意な動作を含む症状を含む。それらの症状は、人によって異なり、時間とともに変化し得る。
【0070】
さらに別の実施形態において、運動障害は、アゴニストとアンタゴニストの不均衡が運動機能を妨げる運動過剰性および/または運動低下性運動障害である。
【0071】
本発明の一実施形態において、運動障害は、筋肉の痙縮を含む。本発明の別の実施形態において、痙縮は、卒中後痙縮、または脳性麻痺によって引き起こされた痙縮であるか、あるいはそれらに対応づけられる痙縮である。
【0072】
「痙縮」は、上位運動ニューロン症候群の1つの要素として、伸展反射の過剰興奮に起因する過大腱反射を伴う緊張性伸展反射(筋緊張)の速度依存的増大によって特徴づけられる。患者によっては、痙縮は、影響された肢が添え木のように作用することにより、重みを支えることを可能にする臀部および膝伸展痙縮の場合は有益であり得る。しかし、患者の大多数においては、痙縮は、着衣および握った手の掌の洗浄などの日常の活動を困難にする。本発明により治療される運動障害を含み得る痙縮状態のいくつかを例示的に以下の表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
「卒中後痙縮」という用語は、卒中発作後に生じる痙縮に関する。卒中は、長期障害の主たる原因であり、患者の19%から38%に痙縮が生じている(Watkins CL、Leathley MJ、Gregson JM、Moore AP、Smith TL、Sharma AK、「Prevalence of spasticity post stroke」、Clin Rehabil 2002;16(5):515〜522頁(ID 1915001)).
【0075】
脳性麻痺は、生涯の最初の数年間に現れ、一般には時間とともに悪化しない、運動の制御を損なう一群の慢性障害を示すのに使用される傘のような用語である。それらの障害は、運動および姿勢を制御する脳の能力を阻害する、発達不良または脳の運動領域の損傷によって引き起こされる。
【0076】
脳性麻痺を治療できない、すなわち脳の障害を元に戻すことができないことが理解されている。その代わり、脳性麻痺のいくつかの症状、特に運動障害に関連する症状を治療することが意図される。これらの症状は、影響された筋肉が弛緩するのを防止する異常または乱れた筋肉活性によって引き起こされる。「脳性麻痺」は、不全麻痺を引き起こす広範な錐体路機能不全、ジストニアを引き起こす錐体外路機能不全、硬直、痙縮および痙攣、失行症要素および調和機能不全を示す。脳性麻痺(Koman LA、Mooney JF、Smith BP、Goodman A、Mulvaney T.、「Management of spasticity in cerebral palsy with botulinum-A toxin:report of a preliminary, randomized, double-blind trial」、J Pediatr Orthop 1994;14(3): 299〜303頁(ID 1767458); Pidcock FS、「The emerging role of therapeutic botulinum toxin in the treatment of cerebral palsy」、J Pediatry 2004;145(2 Suppl): S33〜S35. (ID 2994781))は、脳出血、仮死、早産または他の出生時合併症の後に生じ得る。それは、不調和運動、不全麻痺および様々な形の筋亢進を引き起こす一生涯の状態である。脳性麻痺に罹患している患者は、本明細書に開示されている方法に従って治療されると、亢進筋の機能改善がもたらされる。しかし、痙縮に影響されていない筋肉の筋活性を向上させることも十分に本発明の範囲内にある。これは、異なる筋肉群の間の調和をも含む。「筋肉群」という用語は、隣接する筋肉のみならず、異なる体領域における筋肉をも含む。
【0077】
本発明の教示によれば、対応する筋肉群における痙縮に対応づけられる運動障害、または脳性麻痺に対応づけられる運動障害の一般的な臨床パターンは、本発明による方法、すなわち歩行/運動療法とボツリヌス毒素の投与との組合せによって治療される。
【0078】
特に、運動障害は、脳性麻痺、パーキンソン病、中枢歩行障害、脊髄傷害、ジストニア、外傷性脳傷害、遺伝子障害、代謝障害、動的筋痙縮および/または卒中に対応づけられ、例えば、尖足、内反足、下肢痙縮、上肢痙縮、内転痙縮、臀部屈曲痙縮、臀部内転、膝屈曲痙縮(屈み歩行)、足首の足底屈曲、距骨下関節の回外および回内、書痙、音楽家痙攣、ゴルファー痙攣、脚ジストニア、大腿内転、大腿外転、膝屈曲、膝伸展、内転尖足変形、足ジストニア、長母趾伸筋、趾屈曲、趾伸展から選択される少なくとも1つに対応づけられる運動障害が治療される。
【0079】
B.筋肉活性化治療
前記実施形態において、目標筋肉を刺激、例えば活性化することが可能な前記任意の手段を使用することができる。
【0080】
それにより、「筋肉活性化」という用語は、筋肉または筋肉群の代謝を同じ筋肉が静止している場合のその平均代謝レベルを超えるレベルまで高めるこの筋肉または筋肉群の任意の治療に関する。筋肉の代謝を評価するために、当業者は、例えば、筋肉におけるATP生成量、クレアチンキナーゼの活性、グルコース変換率および/または脂肪変換率を測定することができる。間接的方法、例えば、筋肉温度の上昇、血流の増加、または筋肉容量の測定を適用することもできる。しかし、それは、筋肉活性化の形態、筋肉の接触性、および治療される状態に左右され、その活性試験は、当業者によって適用される。「筋肉活性化」という用語は、運動ニューロンの活性化、すなわち化学的除神経薬を取り込む前シナプスの能力の向上をも包含する。この活性化は、例えば、表面タンパク質、例えば、化学的除神経薬が結合することが可能である受容体の数の増加によって検知可能であり得る。当該表面タンパク質の例は、例えば、(A、BまたはCなどのすべてのイソ型における)SV2タンパク質、ポリシアロガングリオシド(例えば、GT1b、GD1b、GQ1b)またはシナプトタグミンポリペプチド(例えばSyt1またはSyt2)である。それぞれの化学的除神経薬がそれぞれの表面タンパク質に結合することは、当業者にとって明らかである。例えば、ボツリヌス毒素Aは、すべてのSV2-イソ型に結合すると考えられるのに対して、ボツリヌス毒素BおよびGは、syt1およびsyt2に結合すると考えられる。表面タンパク質の発現の増加は、例えば、生検、および続く前記タンパク質に対する抗体染色によって、または前記タンパク質に対するmRNAコード化のレベルの上昇によって測定され得る。
【0081】
「自動筋肉活性化」という用語は、技術的デバイスによる筋肉の活性化のプロセスに関する。概して、この筋肉活性化は、患者の活性筋肉運動を必要としないが、より低活性の筋肉が前記技術的デバイスによって活性化される。
【0082】
「筋肉活性化手段」という用語は、本明細書に開示されているように、筋肉を活性化するのに好適な任意の手段に関する。したがって、「手段」は、技術的デバイス、薬剤、またはマッサージ、温度、電気刺激、電磁波、音波、振動等を介する筋肉の物理的刺激を含む。
【0083】
以下の方法のいずれにも制限されることなく、筋肉を刺激するためのいくつかの方法が本明細書に要約されている。
【0084】
B.1 温度刺激による活性化
温度条件の変化を用いて、筋肉を所望の様式で活性化することができる。低温は、体温を一定の範囲に維持するために筋肉の微収縮をもたらす。一方、高温は、血管を拡張させ、筋肉に酸素および栄養分をより十分に供給させるため、より活性な筋肉をもたらす。一般には、筋肉を加熱および/または冷却することが可能な任意の手段によって筋肉温度を調節することができる。
【0085】
一実施形態において、熱は、赤外光を介して筋肉に加えられる。通常は、IR-A-光(波長700nm〜1400nm)を発する電球を使用して、局所的組織を加温し、血流および弛緩を向上させることで、筋肉を刺激および活性化させる。
【0086】
別の実施形態において、筋肉の冷却または加熱は、水浴の使用によって促進される。別の実施形態において、目標筋肉を加熱または冷却するために空気-水蒸気が使用される。
【0087】
別の実施形態において、化学物質を皮膚表面に投与することによって加熱および冷却を増強させることにより、目標筋肉のより高速かつより集中的な冷却または加熱を可能にすることができる。冷却のための使用可能な化学物質は、例えば、皮膚上の蒸発を促すもの(例えば、クロロエチルスプレー、アルコール系アイススプレーまたは冷却ゲル)である。加熱のための使用可能な化学物質は、例えば、血流および/または皮膚上の感熱性を向上させるもの(例えば、カプシカイン、ノニバミド等)である。
【0088】
別の実施形態において、筋肉の加熱および/または冷却は、圧縮または「加熱パック」もしくは「冷却パック」、すなわち外部から加熱または冷却し、安定な温度を一定時間維持することが可能な物質(例えば、ファンゴパック、温度)によって促進され、あるいは化学または物理的反応(吸熱または発熱反応)によって熱または冷気が生成される。
【0089】
別の実施形態において、温度レベルは、低温と高温の間で定期的にシフトされる。概して、「加熱」は、本明細書において、筋肉温度を、40℃超、45℃超、50℃超、55℃超、60℃まで、70℃までまたは80℃まで上昇させることであると定義される。一方、筋肉の「冷却」は、本明細書において、温度を35℃未満、30℃未満、25℃未満、20℃未満、10℃未満、0℃まで、-10℃までまたは-20℃未満まで下げることであると定義される。どの熱および冷気が適用可能であるかの判断は、患者の個々の感受性、筋肉のサイズおよび適用時間に左右される。
【0090】
B.2 電気刺激による活性化
本発明の範囲内で、筋肉を電気的に刺激することが可能な方法/手段を使用することができる。いくつかの例が本明細書により詳細に記載されている。
【0091】
一実施形態において、筋肉活性化は、機能的電気刺激(一般にはFESと略記される)。これは、脊髄傷害(SCI)、頭傷害、卒中または他の神経障害に起因する完全麻痺に影響された肢を除神経する神経を活性化させて、障害を有する人の機能を回復させるために電流を使用する技術である。
【0092】
通常、2つの様式の機能的電気刺激を適用することができる。
・一実施形態において、神経を刺激する。この場合、目標運動神経内で活動電位を誘発するのに十分に強い勾配で電場強度を引加しなければならない。
・別の実施形態において、筋肉を直接刺激する。この場合、筋肉の活性化を誘発するために、神経の刺激と比較してより強く、より長い刺激衝撃が必要とされる。
【0093】
いずれの場合も、表面電極または移植電極(例えば、慢性痙縮の場合)を介して刺激を加えることができる。電極から皮膚への導電性を高めるために好適なクリームを使用すべきである。皮膚上の電極の位置は、どの神経、それぞれ筋肉を刺激するかを決定づける。
【0094】
別の実施形態において、電気刺激は、より一般的にはTENSと称する経皮的電気神経刺激装置によって促進される。これは、未破壊の皮膚を介して神経を刺激するために使用される電気信号を生成する電子デバイスである。2つ以上の電極を使用して該ユニットを皮膚に接続することができる。典型的な電池動作TENSユニットは、パルス生成器、小型変換器、周波数および強度制御装置ならびにいくつかの電極からなる。電極は、皮膚の表面に着用されたアンテナからその出力を受け取る移植受信機に装着される。この移植デバイスの適用は、慢性痙縮の患者の治療に有用であり得る。
【0095】
別の実施形態において、電気刺激は、高周波筋肉刺激によって促進される。4から約30kHz(キロHz)の高周波数の交流電場を使用することができる。また、電流の強度ならびに周波数の両方を変調することができる。これは、神経および隣接筋肉に対する効果を活性化させる。
【0096】
別の実施形態において、電気刺激は、干渉治療(NEMEC治療とも呼ばれる)によって促進される。この場合、目標組織内で干渉し、筋肉および神経の内的刺激を誘発すると考えられる中間周波数の電流が使用される。
【0097】
B.3 振動による活性化
本発明によれば、全身または局所刺激、すなわち個々の筋肉または筋肉群の刺激によって筋肉を刺激することができる。
【0098】
一実施形態において、筋肉活性化は、振動を体内に導入する技術的デバイスによって促進される。
【0099】
一実施形態において、全身振動(WBV)が使用される。WBVは、足、尻および/または背中を介してヒトを振動に曝す。WBVでは、隔離された筋肉または筋肉群が振動デバイスの使用によって刺激される局所振動(生体力学的刺激、BMS)と異なり、全身が振動に曝される。エンジンが生成する振動が、機械の上に立つ、座る、または横たわる人に伝達される。これらの振動の強度および方向は、それらの効果に不可欠である。振動強度および方向を、治療される筋肉に応じて順応させなければならないことを当業者なら理解するであろう。
【0100】
筋肉において伸展反射を誘発するために、上下運動が最も重要である。人体は、重力効果により、垂直方向の振動をより吸収するようになっている。しかし、多くの機械は、横方向(x)、前後方向(y)および上下方向(z)の3つの異なる方向に振動して、長期間の使用後に有意な副作用をもたらし得る。Z軸は、最大の振幅を有し、筋肉収縮を生成および誘発する上で最も確定的な要素になる。z運動に関して、2つの基本的な種類のシステム、すなわちシーソーのように動作するため、常に片足が上方に動き、他方の足が下方に動くヒトの歩行を模倣する側方交互システムと、全プラットホームがそれぞれ主に同一の動きを行い、両足が同時に上方および下方に動くシステムとを区別することができる。側方交互システムは、より大きな振幅、および約5Hzから35Hzの周波数範囲を与え、他方のシステムは、振幅はより小さいが、20Hzから50Hzの範囲のより高い周波数を与える。側方交互システムの振幅の方が大きいにもかかわらず、頭に伝達される振動(加速度)は、非側方交互システムより有意に小さい。
【0101】
機械的刺激は、身体に作用する加速力を生成する。これらの力は、筋肉を伸長させ、この信号は、筋肉内の小さな器官である筋紡錘によって受け取られると考えられる。この紡錘は、中枢神経系を介して関与する筋肉に信号を伝達する。この潜在意識的な筋肉の収縮により、意識的な自発的運動より多くの筋肉繊維が使用される。
【0102】
1つの別の実施形態において、振動デバイスは、例えば、振動が肢、すなわち手および腕または足および脚を介して伝達されるハンド-アーム振動(HAV)である。別の実施形態において、例えば顔の非常に小さな筋肉が、直径数センチメートルの小さな部分の筋肉を刺激する局所振動デバイスを介して活性化される。
【0103】
典型的には、筋肉刺激は、8から45Hzで生じる。
【0104】
3つのグループの振動を例示することができる。
・10〜12Hz未満:姿勢安定性制御系が活性化されるため、姿勢系の筋肉が活性化される。
・12Hzから約20Hz:反射ベースの系(筋肉紡錘および脊髄を介するフィードバック)が活性化される。これは、筋肉の収縮と弛緩のサイクルに対応する。
・20Hzを超える:筋肉の弛緩が短すぎるため、治療中に筋肉収縮が大きくなる。40Hzを超える周波数の増加はほとんどの場合に適切でなく、通常の範囲は、20から30Hz、20から35Hz未満である。
【0105】
B.4 音波による活性化
一実施形態において、筋肉活性化は、音波によって促進される。
【0106】
一実施形態において、前記音波は、治療超音波(20kHzから10GHz)である。
【0107】
一実施形態において、使用する治療超音波の周波数は、1から3MHzである。この周波数において、音波は、高含水量または低タンパク質含有量の組織を介して移動する傾向があり、それらは、軟骨および骨によって反射される。それらは、主として、結合組織、靱帯、腱および筋膜に(また瘢痕組織に)吸収される。本実施形態において、治療超音波は、2つのタイプの有益性を有すると思われる。
・熱効果は、目標筋肉を加熱してその活性化をもたらす、音波から吸収されたエネルギーを含む。
・空洞効果は、筋肉の細胞膜を直接刺激するように振動を伝達する微視的な気泡を形成させて、やはり筋肉の活性化をもたらす組織の振動に起因する。
【0108】
別の実施形態において、HIFU(高強度集中超音波)(ときにはFUSまたはHIFUS)が使用される。HIFUでは、組織を迅速に加熱するために高強度集中超音波が使用される。それは、通常、病原組織を破壊するために使用されるが、それをより低強度で使用して(破壊せずに)筋肉を迅速に加熱することによって、前記筋肉を活性化させることもできる。必要であれば、この活性化をコンピュータ化されたMRIによって誘導することができる。これらの場合、それは、しばしばMRgFUSと略記される磁気共鳴誘導集中超音波と称する。
【0109】
別の実施形態において、加えられる音波は、音響音波であり、例えば、20Hzから20000Hzの周波数を有する。この周波数において、音波の振動効果を利用して、筋肉運動を誘発する。
【0110】
一実施形態において、定常波としても知られる定在波を使用して、例えば、筋肉繊維の細胞運動を誘発する。この現象は、媒体(筋肉、組織-液等)が波と反対方向に移動するために生じると思われる。活性化は、反対方向に移動する2つの波の間の干渉の結果でもある。音波の強度および周波数を目標筋肉の長さおよびサイズに応じて調節しなければならない。
【0111】
別の実施形態において、超音波デバイスを使用して、筋肉を活性化させるだけでなく、化学的除神経薬を含む注射針を投与部位に誘導することを支援する。本実施形態において、化学的除神経薬の投与を3つのステップに分けることができる。
-通常の超音波撮像技術を介して筋肉痙縮を特定する。
-筋肉を活性化させるための集中超音波を痙縮の部位に投与する。
-通常の超音波撮像技術を介して、例えば、痙縮または線維症を有する、または有さない筋肉である特定部位に、注射のための化学的除神経薬を含む針を誘導する。
【0112】
B.5 静水手段による活性化
一実施形態において、筋肉活性化は、静水手段によって促進される。一実施形態において、前記静水手段は、筋肉活性化に使用される噴射水である。別の実施形態において、前記機械的手段は、水中-圧力-水流-マッサージ(Unterwasserdruckstrahlmassage、UWM)である。本実施形態において、水ホースを介してバスタブの水を循環させるポンプに接続された特殊なバスタブが使用される。したがって、噴射水温度は、バスタブの水温と同じである。しかし、ポンプユニットを介して、さらなる水を水流に加えて、マッサージ噴射水の温度を変化させることができる。ポンプは通常、使用される水ホースの直径およびノズルのタイプに応じて、様々なマッサージ技術に対応する0.5から3バールの圧力を加える。噴射水の強度および/またはホースおよびノズルの直径を調節することで、目標筋肉への適合を可能にする。
【0113】
B.6 電磁波または磁場による活性化
一実施形態において、筋肉活性化は、電磁波によって促進される。
【0114】
一実施形態において、低強度のマイクロ波を使用して、筋肉に熱を誘発することで、筋肉を活性化させる。マイクロ波は、1メートルより短く、1ミリメートルより長い波長、または300メガヘルツから3ギガヘルツの周波数を有する電磁波である。
【0115】
別の実施形態において、筋肉活性化は、反復的な磁気筋肉刺激により促進される(例えば、Swallowら、J. Appl. Physiol.2007;103:739〜746頁参照)。本実施形態において、腿の前部にしっかりと巻きつけることが可能な大形の軟質の卵形コイルが使用される。コイルは、過熱を防止するために冷却された流体である。磁気刺激では、迅速に変化する磁場が、ワイヤのコイルを流れる電流のパルスによって生成される。次に、磁場は、体内に電流を生成し、これが、電気的刺激物と同様にして軸索を消極する。利点は、磁気刺激により、電流が皮膚の比較的高い抵抗を流れなくてよいため、皮膚の侵害受容体が活性化されないことである。四頭筋を刺激するために、例えば、最大攣縮力の30%を生成するのに十分な強度を伴う30Hz、および2秒間の収縮と3秒間の休止のパターンが適用された。
【0116】
別の実施形態において、経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いて、目標筋肉を活性化させる。TMSは、脳におけるニューロンを励起するための非侵襲的方法である。磁場を迅速に変化させることによって組織に弱電流を誘導する(電磁誘導)。このように、例えば、脳の運動中枢において、不快感を最小限にしながら脳活性を誘発することができ、関連する筋肉を活性化させることになる。別の実施形態において、rTMSとして知られる反復的経頭蓋磁気刺激は、より長く持続する筋肉の活性化をもたらすことができるため、特定の患者の状態に対してより実用的であると思われる。
【0117】
B.7 医薬筋肉活性化治療
別の実施形態において、筋肉に薬を投与することによって、上記筋肉活性化を達成することもできる。前記「筋肉活性化薬」は、筋肉を上記Cに定義されている「筋肉活動」の状態にすることが可能な物質である。本明細書における「薬」という用語は、前記筋肉の状態を活性化状態に変化させることが可能な任意の物質と定義される。
【0118】
一実施形態において、前記筋肉活性化薬は、刺激薬である。「刺激薬」という用語は、生理的活動または器官活動を一次的に喚起または加速させる任意の物質、特に化学剤、例えば、β3アゴニスト、カフェイン、エフェドリン(例えばMa Huang)、アンフェタミン、メタンフェタミン、メチルフェニデートおよび/またはコカイン誘導体と定義される。
【0119】
別の実施形態において、前記筋肉活性化薬は、筋肉収縮剤である。「筋肉収縮剤」という用語は、本明細書において、筋肉の収縮を誘発することが可能な任意の物質、例えば、交感効果を有する物質、β2-アドレナリン受容体に対するアゴニスト効果を有する任意の物質、カフェイン、アセチルコリン、ニコチン、エピバチジン誘導体(例えばABT-594)、ジメチルフェニルピペラジニウム、スクシニルコリン、(例えばダルベルギア・サクサティリス(dalbergia saxatilis)から単離された)筋肉刺激サポニン誘導体(C. N. Uchendua and B. F. Leekb Fitoterapia 第70巻、第1号、1999年2月1日、50〜53頁参照)、カルシウム、カリウム、ノルエピネフリン、アドレナリン(エピネフリン)、ロイコトリエン、アレン含有アラキドン酸と定義される。
【0120】
さらなる実施形態において、前記筋肉活性化薬は、筋肉内の血流を増加させる物質、例えば、EDHF、間質性K+、酸化窒素、β2アドレナリンアゴニスト、ヒスタミン、プロスタサイクリン、プロスタグランジン、VIP、(細胞外)アデノシン、(細胞外)ATP、(細胞外)ADP、L-アルギニン、ブラジキニン、物質P、ナイアシン(ニコチン酸)、血小板活性化因子(PAF)、CO2、間質性乳酸、Adenocard(登録商標)、アルファ遮断薬、亜硝酸アミル、心房性ナトリウム利尿ペプチド、エタノール、ヒスタミン誘発剤(例えば、補体タンパク質C3a、C4a、C5a)、酸化窒素誘発剤(例えば、三硝酸グリセリル(一般にはニトログリセリンとして知られる)、一硝酸イソソルビド、二硝酸イソソルビド、四硝酸ペンタエリスリトール(PETN)、ニトロプルシドナトリウム、PDE5阻害薬、酸化窒素の効果を間接的に高める薬剤(例えば、シルデナフィル(Viagra(登録商標))、タダラフィル、タルデナフィル)、テトラヒドロカンナビノール、テオブロミンおよび/またはパパベリンである。
【0121】
別の実施形態において、前記筋肉活性化薬は、筋肉温度を直接的または間接的に(すなわち深部体温を上昇させることにより)上昇させる物質、すなわち患者において発熱作用する物質である。当該物質の例は、エフェドラ、苦橙(シネフリン)、トウガラシ、ショウガ、シブトラミンおよびその代謝物質および/またはカフェインである。
【0122】
別の実施形態において、前記筋肉活性化薬は、表面タンパク質(例えば受容体)の数を上方制御することによって、化学的除神経薬が細胞、典型的にはシナプス前細胞に結合および進入することを可能にする物質である。一実施形態において、前記物質は、前シナプスにおける筋肉神経衰弱ニューロンのSV2を上方制御する。別の実施形態において、ポリシアロガングリオシド(例えば、GT1b、GD1b、GQ1b)またはシナプトタグミンポリペプチド(例えば、Syt1またはSyt2)が上方制御される。当該物質の例は、ホルモン、成長因子、ニューロトロフィン、受容体内在化の遮断物質、受容体表面発現を増強する因子、アレスチン阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、受容体分解の遮断物質、阻害G-タンパク質の阻害薬、競合受容体アンタゴニストおよび/または神経伝達物質分解剤である。
【0123】
B.8 自動運動療法
一実施形態において、主張される治療の一部分は、いわゆる自動運動療法である。「運動療法」という用語は、患者の肢を「正常」に、すなわち生理的運動、または一連の運動で動かすように患者をトレーニングする任意の種類の治療に関する。上肢および下肢の治療が、「運動療法」という用語に含められるものとする。「自動運動療法」という用語は、自動(駆動)矯正デバイスによって、患者の筋肉を「正常」に、すなわち生理的(一連の)運動で動かすように患者をトレーニングする任意の種類の運動療法に関する。本発明の一部である運動療法は、独立または運動連鎖内の複数の様式での上肢および下肢および/または腕および脚ならびに肩、肘、手首、手、指、親指、膝、足および足指などのそれらの一部の選択的運動を包含するが、それらに限定されない。
【0124】
概して、該方法内で使用されるデバイス、および本発明のキットは、患者の肢、例えば脚または腕を生理的パターンの運動で誘導する駆動および制御矯正デバイスを含む。好ましくは、該デバイスは、自動歩行装具またはアームムーバーに支持される。
【0125】
脚の運動に問題のある患者については、該デバイスは、好ましくは、自動歩行装具を、より好ましくはトレッドミルと組み合わせて含む。一方、自動運動(歩行)治療のためのそれぞれのデバイスは、例えば商品名Lokomat(登録商標)でHocoma AG社から商業的に入手可能である。トレッドミル療法に基づく当該デバイスは、参照により本明細書に全面的に組み込まれている米国特許第6,821,233号およびそこに記載されている従来技術に詳述されている。
【0126】
したがって、前記患者の脚を生理的パターンの運動で誘導する駆動および制御矯正デバイスと、トレッドミルと、好ましくは、前記患者の体重に作用するリリーフ機構とを含むデバイスを使用することによって、前記自動運動療法を実施することができる。好ましくは、当該デバイスは、歩行運動障害を治療するのに使用される。
【0127】
特に、本発明の方法の範囲内で、米国特許第6,821,233号に主張されているデバイスが使用される。1つのデバイスは、トレッドミルと、患者に対するリリーフ機構と、駆動矯正デバイスとを含むトレッドミルトレーニングのための装置であって、トレッドミル上に高さ調節可能に固定されたパラレログラムが、矯正デバイスを安定させ、患者が前方、後方および側方に傾くのを防止するために設けられた装置である。矯正デバイスは、好ましくは、臀部矯正デバイスおよび2つの脚部品を含むことにより、2つの臀部ドライブが臀部矯正デバイスを動かすために設けられ、2つの膝ドライブが脚部品を動かすために設けられ、臀部矯正デバイスおよび脚部品は調節可能であり、脚部品は、サイズおよび位置が調節可能であるカフを備え、制御ユニットが、矯正デバイスの運動を制御し、トレッドミルの速度を制御するために設けられている。
【0128】
あるいは、別のデバイスは、レーリングを含むトレッドミルと、患者に対するリリーフ機構と、駆動矯正デバイスとを含むトレッドミルトレーニングのための装置であって、患者が前方、後方および側方に傾くのを防止する、矯正デバイスを安定させる手段が設けられた装置である。矯正デバイスは、好ましくは、臀部矯正デバイスおよび2つの脚部品を含み、2つの臀部ドライブが臀部矯正デバイスを動かすために設けられ、2つの膝ドライブが脚部品を動かすために設けられ、ボールねじ紡錘ドライブが各膝ドライブおよび臀部ドライブに対して設けられ、矯正デバイスおよび脚部品は調節可能であり、脚部品は、サイズおよび位置が調節可能であるカフを備え、制御ユニットが、矯正デバイスの運動を制御し、トレッドミルの速度を制御するために設けられている。両デバイスは、米国特許6,821,233号に詳述されている。
【0129】
これらのデバイスにおいて、リリーフ力は、ローラをベースフレーム上方に装着し、そのローラの上に、ベアリング付近に装着されたワイヤケーブルを通し、釣合錘を備えたパラレログラムの他方の側にロードすることによって提供される(米国特許第6,821,233号の図1参照)。患者の重量の高さ、および該重量に作用するリリーフ力を調節するための改良型デバイスは、やはり参照により本明細書に組み込まれている欧州特許第1586291号A1の主題である。患者の重量の高さ、および該重量に作用するリリーフ力を調節するためのデバイスは、前記重量が、ケーブルの長さを調節して前記懸垂重量の高さを規定する第1のケーブル長調節手段と、ケーブルの長さを調節して、懸垂重量に作用するリリーフ力を規定する第2のケーブル長調節手段とを備えたケーブルによって支持されることを特徴とする。
【0130】
本発明のさらなる実施形態において、運動療法は、好ましくは高さおよび傾きが調節可能である固定テーブルと、患者のための固定テーブルに対する保持デバイスを備えた締結ベルトと、膝機構および足機構からなる、患者の脚の運動のためのドライブ機構とを含む、不全対麻痺および不全片麻痺患者のリハビリテーションのための歩行療法用装置であって、固定テーブルは、軸関節の回りを脚部に対して変位可能なヘッド部を有することにより、軸関節は、調節機構が設けられる調節可能臀部拡張角度を与える装置を使用することによって実施される。好ましくは、膝部および足部は、脚機構上のレール上に変位可能に配置される。好ましくは、足機構は、膝拡張時に足裏に対する力を確定する役割を果たす。好ましくは、装置の運動を制御するために制御ユニットが設けられる。前記装置およびその動作方法に関するさらなる詳細を、やはり参照により全面的に本明細書に組み込まれている米国特許第6,685,658号から導くことができる。
【0131】
本発明の別の実施形態において、運動療法に関して、生命体の第1の部分と第2の部分との間に力を加えるためのデバイスであって、前記デバイスは、それぞれ前記第1および第2の部分と連動する第1および第2の連結体組立品を含み、各前記第1および第2の連結体組立品は、好ましくは、(a)部分上の所定位置に固定され、それぞれが支持連結体である支持部と、(b)関節を介して前記支持連結体の各々に装着された関節式連結体とを含み、前記第1および第2の連結体組立品の前記関節式連結体は、軸関節を介して互いに装着され、前記第2の組立品の前記関節式連結体は、前記軸関節の上方に伸び、第1および第2のケースが前記第1の連結体組立品における連結体に装着され、第1および第2の腱がそれぞれ前記第1および第2のケースを貫通し、前記第2の連結体組立品における連結体に装着され、前記腱の一方は、前記軸関節の片側で前記第2の連結体組立品における前記関節式連結体に装着され、他方の腱は、前記軸関節の反対側で前記第2の連結体組立品における前記関節式連結体に装着されたデバイスが使用される。
【0132】
あるいは、手の第1の部分と第2の部分との間に力を加えるためのデバイスであって、前記部分の一方は指骨であり、前記デバイスは、それぞれ前記第1および第2の部分と連動する第1および第2の連結体組立品を含み、各連結体組立品は、(a)部分上の所定位置に固定され、それぞれが支持連結体である支持部と、(b)関節を介して前記支持連結体の各々に装着された関節式連結体とを含み、前記第1および第2の連結体組立品の前記関節式連結体は、軸関節を介して互いに装着され、前記第2の組立品の前記関節式連結体は、前記軸関節の上方に伸び、第1および第2のケースが前記第1の連結体組立品における連結体に装着され、第1および第2の腱がそれぞれ前記第1および第2のケースを貫通し、前記第2の連結体組立品における連結体に装着され、前記腱の一方は、前記軸関節の片側で前記第2の連結体組立品における前記関節式連結体に装着され、他方の腱は、前記軸関節の反対側で前記第2の連結体組立品における前記関節式連結体に装着されたデバイスが使用される。そのようなデバイスおよびその使用方法に関するさらなる詳細を、やはり参照により全面的に本明細書に組み込まれている米国特許第6,059,506号から導くことができる。
【0133】
本発明の範囲内で、商業的に入手可能な任意の他のデバイス、または学究的施設で開発され、自動歩行療法に適した任意のデバイスを使用することができる。この点において、「MIT-マヌス(MIT-Manus)」デバイス、「ミラーイメージ・モーション・イネーブラー(Mirror-image Motion Enabler)」(MIME)ロボット、「ARMガイド」、「ビマヌ-トラック(Bi-Manu-Track)」アームトレーナー、GTI、電気機械的歩行トレーナーおよびNeRobotおよびREHAROBデバイスが挙げられる。これらのデバイスに関するさらに詳細をHesse S、Schmidt H、Werner C、Bardeleben A. (2003)、Upper and lower extremity robotic devices for rehabilitation and for studying motor control、Curr Opin Neurol 16:705〜710頁)およびそこに引用されている文献から把握することができる。
【0134】
より好ましくは、Hocoma AG社から商業的に入手可能なデバイス、特に、本出願の出願日に商品名Lokomat(登録商標)およびArmeo(登録商標)で商品化されたものが使用される。
【0135】
上記筋肉活性化手段を患者の特殊なニーズに応じて組み合わせることができることは、当業者に明らかである。例えば、静水活性化を筋肉の温度活性化と組み合わせ、電気活性化を医薬活性化と組み合わせることができ、磁気活性化を筋肉運動活性化と組み合わせること等ができる。
【0136】
また、筋肉活性化手段を様々な時間間隔、例えば、1から100ミリ秒、100ミリ秒から1秒、1秒から5秒、5秒から30秒、30秒から1分、1分から10分、10分から30分、30分から1時間、1時間12時間、12時間から1日まで、10日まで、1カ月まで、1年までの時間間隔で適用することができる。これらの時間間隔は、単に例示を目的としているため、その間の任意の時間間隔も包含される。
【0137】
C.化学的除神経薬の投与
上述のように、本発明によれば、筋肉刺激、例えば、自動運動療法または自動筋肉活性化治療は、例えば、医薬組成物/医薬品の形の化学的除神経薬、一実施形態においてはボツリヌス毒素の有効量の前記患者への投与と併用され、該投与は、筋肉刺激、例えば運動または活性化治療の前および/または最中および/または後に実施される。
【0138】
D.1 化学的除神経薬
一実施形態において、前記化学的除神経薬は、クロストリジウムニューロトキシンである。さらなる実施形態において、このクロストリジウムニューロトキシンは、ボツリヌス毒素である。さらなる実施形態において、ボツリヌス毒素は、抗原的に異なる血清型A、B、C、D、E、FまたはGのボツリヌス毒素である。ボツリヌス毒素血清型A、B、C、D、E、FまたはGが言及されるときは、血清型A1、A2、A3、B1、B2、B3、C1、C2、C3、D1、D2、D3、E1、E2、E3、F1、F2、F3またはG1、G2、G3のような血清型の既知の変異体も常に包含される。一実施形態において、ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素Aである。
【0139】
別の実施形態において、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または100%までの配列同一性を示すボツリヌス毒素のイソ型、相同体、オルソログおよびパラログも包含される。確実な結果をもたらすのに好適な任意のアルゴリズム、例えば、FASTAアルゴリズム(W.R. Pearson & D.J. Lipman PNAS(1988) 85:2444〜2448頁)を使用することによって配列同一性を計算することができる。
【0140】
ボツリヌス毒素は、溶解クロスチジウム培養物から放出される場合は、一般には、一緒になって毒素複合体を形成する他の細菌タンパク質に対応づけられる。さらなる実施形態において、前記ボツリヌス毒素は、錯化タンパク質がなく、例えば、純粋のニューロトキシン血清型Aである。それに加えて、それぞれの突然変異、欠失等を含むボツリヌス毒素の変性ならびに組換え生成神経毒性成分も本発明の範囲内である。好適な突然変異型に関しては、参照により全面的に本明細書に組み込まれている国際公開第2006/027207号A1、国際公開第2006/114308号A1および欧州特許第07014785.5号(2007年7月27日に出願されたMerzによる特許出願)に記載されている。また、本発明の範囲内において、様々な血清型の混合物(神経毒性成分または組換え型またはそれらの両型、例えば、ボツリヌスニューロトキシンA型とB型の混合物の形)を使用することができる。しかし、本発明は、特に、1つまたは複数の表面または溶媒露出アミノ酸のペグ化、グリコシル化、硫酸化、リン酸化または任意の他の変性によって化学的に変性されたニューロトキシンにも関する。
【0141】
「ボツリヌス毒素」または「複数のボツリヌス毒素」という用語は、本出願全体を通じて、他のクロストリジウムタンパク質が存在しない神経毒性成分だけでなく、「ボツリヌス毒素複合体」を指す。「ボツリヌス毒素」という用語は、本明細書において、複合体または神経毒性成分の識別が必要でないか、または所望されない場合に使用される。「BoNT」または「NT」は、広く使用されている略語である。複合体は、通常、「錯化タンパク質」または「細菌タンパク質」と呼ぶことになる追加的ないわゆる「非毒性」タンパク質を含む。
【0142】
神経毒性成分および細菌タンパク質の複合体は、「クロストリジウムボツリヌス毒素複合体」または「ボツリヌス毒素複合体」と称する。この複合体の分子量は、約300000から約900000Daの範囲であってよい。錯化タンパク質は、例えば、様々な血球凝集素である。この毒素複合体のタンパク質は、それら自体は毒性がないが、胃腸管を通過している間に神経毒性成分に安定性を提供する。A、BおよびC型のボツリヌス毒素複合体に基づく医薬品、Ipsen社の(商品名Dysport(登録商標))およびAllergan Inc.の商品名Botox(登録商標)のA型ボツリヌス毒素が商業的に入手可能である。
【0143】
この複合体の神経毒性サブユニットには、本明細書において、ボツリヌス毒素複合体の「神経毒性成分」と称する。ボツリヌス毒素複合体の神経毒性成分は、血清型Aの場合に、約150kDaの分子量を有する単一ポリペプチド鎖として最初に形成される。他の血清型において、神経毒性成分は、細菌源に応じて、約145から約170kDaの範囲で変化することが確認された。
【0144】
血清型Aの場合は、例えば、ポリペプチドのタンパク質分解処理は、ジスルフィド結合によって結合された重鎖および軽鎖からなる二鎖ポリペプチドの形の活性化ポリペプチドをもたらす。ヒトにおいて、重鎖は、シナプス前コリン作動性神経末端に対する結合および毒素の細胞への内在化を媒介する。軽鎖は、毒性効果に関与し、亜鉛エンドペプチダーゼとして作用し、膜融合に関与する特定のタンパク質(SNARE複合体)を開裂すると考えられる(例えば、Montecucco C.、Shiavo G.、Rosetto O:「The mechanism of action of tetanus and botulinum neurotoxins」、Arch Toxicol. 1996;18 (Suppl.): 342〜354頁参照)。
【0145】
細胞内の膜融合の過程を妨害することによって、ボツリヌス毒素は、アセチルコリンのシナプス間隙への放出を防止する。神経-筋肉接合部におけるボツリヌス毒素の全体的な効果は、神経-筋肉伝達を妨害し、実質的に、筋肉を除神経する。ボツリヌス毒素は、他の末梢コリン作動性シナプスにおいても活性を有し、唾液分泌または発汗を低下させる。
【0146】
ボツリヌス毒素の各血清型は、シナプス前神経末端上の血清型特異的受容体部位に結合する。コリン作動性ニューロンに対するボツリヌス毒素の特異性は、これらの神経末端上の受容体部位に対する重鎖の高度な親和性に基づく(Katsekas S.、Gremminloh G.、Pich E. M.:「Nerve terminal proteins; to fuse to learn」、Transneuro Science 1994; 17: 368〜379頁参照)。
【0147】
「神経毒性成分」という用語は、他の血清型のクロストリジウムボツリヌスに見いだされる機能的相同体をも含む。本発明の一実施形態において、神経毒性成分は、他のC.ボツリヌスタンパク質がなく、一実施形態において、潜在的に神経毒性成分に関連し得るRNAもない。神経毒性成分は、約150kDaの一鎖前駆体タンパク質、あるいは1つまたは複数のジスルフィド結合によって結合され得る約50kDaの軽鎖(Lc)および約100kDaの重鎖(Hc)を含むタンパク質分解処理神経毒性成分であってよい(概要については、例えば、Simpson LL、Ann Rev Pharmacol Toxicol. 2004; 44:167〜93頁参照)。
【0148】
本発明の範囲内において、すべての形のボツリヌス毒素、特に、様々な血清型、ボツリヌス毒素およびその錯化随伴タンパク質の神経毒性成分の様々な複合体、ならびにこれらのボツリヌス毒素の神経毒性成分が使用される。それらに加えて、変性および/または組換え生成ボツリヌス毒素、あるいはそれぞれの突然変異、欠失等を含むボツリヌス毒素の神経毒性成分も本発明の範囲内である。好適な変異型については、参照により全面的に本明細書に組み込まれている国際公開第2006/027207号A1に記載されている。また、本発明の範囲内において、(複合体、神経毒性成分および/または組換え型の形の)様々な血清型の混合物、例えば、A型とB型のボツリヌス毒素の混合物、またはA型とB型のボツリヌスニューロトキシンの混合物も使用される。
【0149】
本発明の教示によれば、医薬品は、神経毒性成分以外のボツリヌス毒素複合体に見いだされるタンパク質を含まないことが可能である。神経毒性成分の前駆体は、開裂されていても無開裂であってもよいが、一実施形態において、前駆体は、重鎖および軽鎖に開裂されている。本明細書の他の箇所に指摘されているように、ポリペプチドは、野生型配列であってよく、または1つまたは複数の残基が変性されていてよい。変性は、例えば、ポリペプチドの取込みまたは安定性にとって有利であり得るグリコシル化、アセチル化またはアシル化等による化学的変性を含む。しかし、神経毒性成分のポリペプチド鎖を、1つまたは複数のアミノ酸残基の添加、置換または欠失によって代替的または追加的に変性することができる。
【0150】
D.2 医薬組成物
D.2.1 神経毒性成分
以上に言及されている神経毒性成分は、組成物または医薬組成物の一部であってよい。本明細書において使用される医薬組成物は、例えば、唯一の活性成分として神経毒性成分の形のボツリヌス毒素を含むことができ、あるいはさらなる医薬活性成分、例えば、ヒアルロン酸またはポリビニルピロリドンまたはポリエチレングリコールを含むことができ、当該組成物は、好適なpH緩衝剤、特に、酢酸ナトリウム緩衝剤および/または凍結保護多価アルコールによって場合によりpH安定化される。
【0151】
一実施形態において、神経毒性成分は、マウスLD50アッセイで測定された場合に神経毒性成分1ng当たり50から250LD50単位の生体活性を有する。別の実施形態において、神経毒性成分は、1ナノグラム当たり約150LD50単位の生体活性を有する。一般には、本発明の医薬組成物は、約6pgから約30ngの量の神経毒性成分を含む。
【0152】
「医薬組成物」は、医薬品または診断薬として使用される活性成分が含有されている、または含まれている製剤である。当該医薬組成物は、ヒト患者に対する診断または治療投与(すなわち筋肉内または皮下注射)に好適であり得る。
【0153】
ボツリヌス毒素A型の神経毒性成分を隔離した形で含む医薬組成物は、ドイツにおいてMerz Pharmaceuticals GmbHから商品名Xeomin(登録商標)で商業的に入手可能である。ボツリヌス毒素AおよびB型の神経毒性成分の製造は、例えば、国際特許出願の国際公開第00/74703号および2006/133818号に記載されている。
【0154】
一実施形態において、前記組成物は、ボツリヌス毒素A型の神経毒性成分を含む。前記組成物は、ボツリヌス毒素の神経毒性成分の再構成溶液である。別の実施形態において、該組成物は、スクロースまたはヒト血清アルブミンまたはその両方をさらに含み、さらに別の実施形態において、ヒト血清アルブミンとスクロースの比は、約1:5である。一実施形態において、該組成物は、Xeomin(登録商標)である。別の実施形態において、前記ヒト血清アルブミンは、組換えヒト血清アルブミンである。あるいは、前記組成物は、ヒト血清アルブミンなどの哺乳動物由来タンパク質がない。任意の当該溶液は、血清アルブミンを他の非タンパク質安定剤(後掲)と取り換えることによって十分なニューロトキシン安定性を提供することができる。
【0155】
本特許出願の範囲内において、ボツリヌス毒素A型の神経毒性成分に基づく医薬品を使用することができ、別の実施形態において、Merz Pharmaceuticalsから商品名Xeomin(登録商標)で販売されている製品を使用することができる。これは、Xeomin(登録商標)などのボツリヌス毒素の神経毒性成分に基づく医薬組成物を投与した場合に、患者内で抗体を生成する傾向が、ボツリヌス毒素A型複合体に基づく医薬品を投与した場合と比較して小さいことが判明したためである。理論に縛られることなく、ボツリヌス毒素複合体内の血球凝集素は、免疫系における活性化能力を有すると考えられる。
【0156】
ボツリヌス毒素に基づく医薬品の組成および投与に関して、かつボツリヌス毒素の神経毒性成分に基づく医薬品の組成、投与および投与頻度に関しては、PCT/欧州特許第2007/005754号に記載されている。
【0157】
医薬組成物を凍結乾燥または真空乾燥し、再構成し、あるいは溶液にとどめることができる。再構成される場合は、一実施形態において、再構成溶液は、無菌生理食塩水(0.9%NaCl)を添加することによって調製される。
【0158】
D.2.2 さらなる成分(「賦形剤」)
当該組成物は、さらなる賦形剤を含むことができる。「賦形剤」という用語は、医薬組成物に存在する活性医薬成分の他に医薬組成物に存在する物質を指す。賦形剤は、緩衝剤、担体、粘着防止剤、鎮痛剤、バインダ、崩壊剤、充填剤、希釈剤、防腐剤、媒体、シクロデキストリンおよび/またはアルブミンなどの増量剤、ゼラチン、コラーゲン、塩化ナトリウム、防腐剤、凍結保護剤および/または安定剤であり得る。
【0159】
D.2.3 pH緩衝剤
「pH緩衝剤」は、組成物または溶液等のpH値を特定の値または特定のpH範囲に調節することが可能な化学物質を指す。一実施形態において、このpH範囲は、pH5からpH8、別の実施形態においてpH7からpH8、さらに別の実施形態において7.2から7.6、さらなる実施形態においてpH7.4であり得る。別の実施形態において、医薬組成物は、再構成または注射されるときに約4から7.5のpHを有し、さらに別の実施形態において約pH6.8からpH7.6、さらなる実施形態においてpH7.4からpH7.6のpHを有する。
【0160】
一実施形態において、該組成物は、1〜100mM、別の実施形態において10mMの酢酸ナトリウム緩衝剤をも含む。
【0161】
以上に示されているpH範囲は、典型的な例にすぎず、実際のpHは、以上に示されている数値の任意の間隔を含むことができる。本発明の教示による好適な緩衝剤は、例えば、リン酸ナトリウム緩衝剤、酢酸ナトリウム緩衝剤、TRIS緩衝剤、または上記pH範囲内での緩衝に好適である任意の緩衝剤である。
【0162】
D.2.4 安定剤
「安定化させる」「安定剤」または「安定化」とは、再構成または水溶液医薬組成物における活性成分、すなわち神経毒性成分が、医薬組成物に組み込まれる前に生体活性神経毒性成分が有していた毒性の約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%を超える、または約100%までの毒性を有することを意味する。
【0163】
当該安定剤の例は、一実施形態においてヒト由来の、または組換え源から得られたゼラチンまたはアルブミンである。ヒト以外または動物以外の源からのタンパク質も含まれる。安定剤を化学的手段または組換え遺伝子によって変性することができる。本発明の一実施形態において、アルコール、例えば、イノシトール、マンニトールを凍結保護賦形剤として使用して、凍結乾燥時にタンパク質を安定させることが考えられる。
【0164】
本発明の別の実施形態において、安定剤は、ヒアルロン酸またはポリビニルピロリドン(Kollidon(登録商標))、ヒドロキシエチルデンプン、アルギネートまたはポリエチレングリコール、あるいはそれらの任意の組合せであってよく、当該組成物は、好適なpH緩衝剤、特に、酢酸ナトリウム緩衝剤または凍結保護剤またはその両方によって場合によりpH安定化される。前記組成物は、記載の安定剤に加えて、水およびマンニトールまたはソルビトールまたはそれらの混合物などの少なくとも1つの多価アルコールを含むことができる。それは、グルコース、スクロースまたはフラクトースなどの単糖類、二糖類またはより高度な多糖類を含むこともできる。当該組成物は、より安全な組成物処理顕著な安定性であると考えられる。
【0165】
この医薬粗製物におけるヒアルロン酸は、一実施形態において、200U/mlのボツリヌス毒素溶液中1ml当たりヒアルロン酸0.1から10mg、特に1mgの量でこの神経毒性成分と混合される。
【0166】
ポリビニルピロリドン(Kollidon(登録商標))は、この組成物に存在する場合は、200U/mlのボツリヌス毒素溶液の神経毒性成分中1ml当たり10から500mg、特に100mgのポリビニルピロリドンを含む再構成溶液を与える量でこの神経毒性成分と混合される。別の実施形態において、再構成は、8mlまでの溶液中で実施される。これは、25U/mlの神経毒性成分溶液中1ml当たりポリビニルピロリドン12.5mgまでの濃度をもたらす。
【0167】
この医薬組成物におけるポリエチレングリコールは、一実施形態において、200U/mlのボツリヌス毒素溶液中1ml当たりポリエチレングリコール10から500mg、特に100mgの量でこの神経毒性成分と混合される。別の実施形態において、主題の溶液は、1〜100mMの酢酸ナトリウム緩衝剤を含み、さらに別の実施形態において10mMの酢酸ナトリウム緩衝剤をも含む。
【0168】
本発明による医薬組成物は、一実施形態において、約+8℃から約-20℃の温度で保管された場合に、6カ月、1年、2年、3年および/または4年間にわたってその電位を実質的に変化させない。また、示される医薬組成物は、再構成されると、約20%から約100%の力価または回復率を有することができる。
【0169】
D.2.5 凍結保護剤
「凍結保護剤」は、医薬組成物に凍結乾燥される前に生体活性神経毒性成分が有していた毒性の約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%を超える、または約100%までの毒性を有する再構成または水溶液医薬組成物中活性成分、すなわち神経毒性成分をもたらす。
【0170】
別の実施形態において、該組成物は、凍結保護剤としてポリヒドロキシ化合物、例えば多価アルコールを含むことができる。使用できる多価アルコールの例としては、例えば、イノシトール、マンニトールおよび他の非還元性アルコールが挙げられる。該組成物のいくつかの実施形態は、タンパク質安定剤を含まず、またはトレハロースまたはマルトトリオースまたはラクトースまたはスクロースまたは関連糖、あるいはときには凍結保護剤として使用される炭水化物化合物を含まない。
【0171】
D.2.6 防腐剤
「防腐剤」および「複数の防腐剤」という用語は、前記組成物内での微生物、昆虫、細菌または他の汚染性生物の成長または生存を防止する物質または物質群をそれぞれ指す。防腐剤は、また、前記組成物の望ましくない化学変化を防止する。本特許の範囲で使用できる防腐剤は、当業者に知られている技術のすべての防腐剤である。使用できる防腐剤の例としては、なかでも、例えばベンジルアルコール、安息香酸、塩化ベンズアルコニウム、プロピオン酸カルシウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸塩(二酸化硫黄、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等)、二ナトリウムEDTA、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、珪藻土、エタノール、メチルクロロイソチアゾリノン、ブチル化ヒドロキシアニソールおよび/またはブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられる。
【0172】
D.2.7 鎮痛剤
「鎮痛剤」という用語は、抹消および中枢神経系に様々な形で作用する鎮痛薬であり、なかでもParacetamol(登録商標)(アセタミノフェン)、サリチル酸塩などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、モルフィンなどの麻酔薬、およびTramadol(登録商標)などの麻酔特性を有する合成薬等である。例えば、リドカイン、ベンジルアルコールおよび安息香酸などの局所的鎮痛効果を有する任意の化合物も含まれる。
【0173】
一実施形態において、鎮痛剤は、該組成物の一部であり、別の実施形態において、鎮痛剤は、化学的除神経薬を用いた治療の前、最中または後に投与される。
【0174】
D.3 投与
以上に示されているように、ボツリヌス毒素を含む医薬組成物は、一実施形態において、前記歩行療法の前および/または最中および/または後に、患者の状態を改善するための有効量で数回投与される。一実施形態において、有効量のボツリヌス毒素は、運動療法の最中に数回投与され、該組成物は、任意の運動/歩行療法の開始前に初めて投与される。
【0175】
典型的には、患者に投与される投与量は、約1000単位までであるが、概して患者1人当たり400単位を超えるべきでない。一実施形態において、その範囲は、約80から約400単位である。これらの値は、一実施形態において、成人の患者に有効である。子供については、それぞれの投与量は、25から800単位であり、他の実施形態において50から400単位である。
【0176】
上記範囲は、最大全投与量に関するが、筋肉当たりの投与量は、一実施形態において、体重(b.w.)1kg当たり3から6単位であり、小さい筋肉では0.5〜2U/kg b.w.であり、別の実施形態において0.1〜1U/kg b.w.である。一般には、投与量は、注射部位当たり50Uおよび筋肉当たり100Uを超えるべきでない。
【0177】
本発明の一実施形態において、投与されるボツリヌス毒素の有効量は、成人では神経毒性成分500Uを超え、または子供では体重1kg当たり15Uを超える。
【0178】
投与頻度に関しては、再注射間隔は、一実施形態において3カ月を超える。これは、特に、ボツリヌス毒素複合体に基づく医薬品を投与し、抗体の発生の確率が高くなる場合に当てはまる。
【0179】
Xeomin(登録商標)などのボツリヌス毒素の神経毒性成分に基づく医薬品を投与する場合は、より高頻度の投与も可能である。したがって、本発明によれば、投与される医薬品は、別の実施形態において特にボツリヌス毒素の神経毒性成分、さらに別の実施形態においてXeomin(登録商標)を使用する場合は3から6カ月の間隔で再投与され、医薬品は、2週間から3カ月未満の間隔で再投与される。さらに別の実施形態において、医薬品は、筋肉活性が自動運動療法に緩衝した時点で投与される。
【0180】
ボツリヌス毒素に基づく医薬品の組成および投与に関して、かつボツリヌス毒素の神経毒性成分に基づく医薬品の組成、投与および投与頻度に関しては、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第60/817756号に記載されている。
【0181】
一実施形態において、前記組成物は、活性成分としてボツリヌス毒素のみを含み、別の実施形態において、さらなる活性成分、例えば、鎮痛剤、前記筋肉活性化薬等が該組成物の一部である。
【0182】
上記値は、本発明の範囲内で使用される医薬品を投与するための包括的ガイドラインとして理解されるが、究極的には、毒素投与量およびその投与頻度に両方について判断するのは治療担当医師である。この方法において、ボツリヌス毒素に基づく医薬品は、一実施形態において、患者の運動能力が、ボツリヌス毒素の最大治療効果の時点における運動能力と比較して(再び)低下している時点で再投与される。
【0183】
ボツリヌス毒素に基づく医薬品を、影響された筋肉に直接注射することができる。適切な注射部位を見いだすために、それを見いだすために医師を支援するいくつかの手段が存在する。本発明の範囲内において、筋電計測(EMG)によって誘導される注射、触診によって誘導される注射、CT/MRIによって誘導される注射、ならびに断層撮影によって誘導される注射などの、最良の注射部位を見いだすためのすべての方法が適用可能である。それらの方法のなかでも、後者は、一実施形態において、子供を治療するときの選り抜きの方法である。断層撮影によって誘導される注射に関するさらなる詳細に関しては、Berweck、「Sonography-guided injection of botulinum toxin A in children with cerebral palsy」、Neuropediatric 2002(33)、221〜223頁が参照される。
【0184】
D.4 キット
また、本発明は、運動障害に罹患している患者を治療するためのキットであって、化学的除神経薬の有効量を含む医薬品と、筋肉活性化治療を実施する手段とを含むキットに関する。
【0185】
一実施形態において、筋肉活性化治療を実施する前記手段は、以上のセクションBに開示されている1つまたはいくつかの手段である。一実施形態において、前記化学的除神経薬は、ボツリヌス毒素Aである。筋肉活性化治療の手段を化学的除神経薬と一緒に、または指示リーフレットの形で提供することができる。
【0186】
一実施形態において、筋肉活性化治療を実施する前記手段は、自動運動療法を実施するためのデバイスである。前記キットは、前記患者の肢を生理的パターンの運動で誘導する駆動および制御歩行装具および/またはアームムーバーを含む。別の実施形態において、それは、以上に詳述されているデバイスの1つである。キット内において、一実施形態における医薬品は、化学的除神経薬としてボツリヌス毒素を含み、別の実施形態において、デバイスは、ボツリヌス毒素Aの神経毒性成分に基づく医薬品である。
【0187】
前記キット内において、医薬品は、歩行療法と併用され、一実施形態において、前記治療に使用されるそれぞれのデバイスと併用されるように具体的に構成される。本発明によるキットに関してのみならず、そのまま商業化された医薬品内で具体的に実施され得る当該具体的な構成を、具体的に構成されたパッケージングおよび/またはパッケージングリーフレット、および/または本発明の範囲内で使用される医薬品の使用説明書によって達成することができる。
【0188】
D.5 さらなる定義
「凍結乾燥」という用語は、本文献において、化学的除神経薬、例えばボツリヌス毒素の神経毒性成分を含む溶液の処理に対して使用されるが、この溶液は、組成物の固体成分のみが残るまで凍結および乾燥される。したがって、この治療薬の凍結乾燥品は、本文献において、「凍結乾燥品」と定義される。
【0189】
「再構成」という用語は、化学的除神経薬、例えば神経毒性成分の前記凍結乾燥組成物の溶解のプロセスと定義される。これは、例えば、すべての必要な成分が凍結乾燥品に既に含まれている場合は、適切な量の無菌水を添加することによって実施され得る。あるいは、そうでない場合は、例えば、無菌食塩水溶液単独で、または適用可能であれば、例えば、pH緩衝剤、賦形剤、凍結保護剤、防腐剤、鎮痛安定剤またはそれらの任意の組合せを含む成分を加えて添加することによって実施することができる。先に記載した「食塩水溶液」の食塩水は、塩溶液であり、別の実施形態において塩化ナトリウム(NaCl)溶液であり、さらに別の実施形態において等張性塩化ナトリウム溶液(すなわち0.9%の塩化ナトリウム濃度)である。溶解は、最終「再構成物」が直接または間接的に、例えば希釈後に、患者に投与可能であるように実施される。ニューロトキシンを等張性媒体、例えば等張性食塩水または無菌食塩水で再構成することができる。
【0190】
「不全麻痺」という用語は、本明細書において、典型的には運動の部分的低下、または運動障害として定義される。
【0191】
E 注釈
上記に関して、以上に記載されているすべての従来技術(公開および未公開)が、参照により全面的に本明細書に組み込まれていることが理解される。
【0192】
本明細書に使用されている用語は、特定の実施形態を説明することを目的としているにすぎず、限定することを意図するものではないことが理解される。明細書および添付の請求項に使用されているように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示している場合を除いて、複数形を含む。
【0193】
以降、非限定的な例によって本発明を説明する。
【0194】
(実施例)
(実施例1)
Dr. von Haunersches Children's Hospital Munich(ドイツ)の小児神経発育診療部(department of Pediatric Neurology and Developmental Medicine)にて9人の患者を用いて試験を実施した。地域論理委員会からそれらの試験の承認を得た。
【0195】
患者は、先天性または後天性脳または脊髄病変による中枢歩行障害を有していれば、我々の試験に参加する資格があった。大腿骨長さは、ほぼ4歳の子供に該当する少なくとも21cmでなければならなかった。歩行能力を達成することが、リハビリテーションプログラムの現実的な目標でなければならなかった。患者は、痛み、恐怖または不快感を確実に伝えることができなければならなかった。両親の同意書が前もって必要であった。
【0196】
除外基準は、重度下肢拘縮、骨折、骨不安定、骨粗鬆症、処理による全身負荷の禁忌、重度不均衡骨成長、下肢における不治の皮膚病変、血栓塞栓症、心臓血管不安定、急性または進行性神経障害および進行性または自己傷害挙動であった。
【0197】
8人の子供および1人の青年を、2006年1月から8月の間に、駆動歩行矯正(DGO)トレーニングプログラムへの参加について我々の外来クリニックに照会した。トレーニングの開始時における平均年齢は、8年2カ月であった(標準偏差2年10カ月、範囲5年2カ月〜14年4カ月)。1人を除く全員が、DGO(表2)の小児モジュールでトレーニングを受けた。
【0198】
自動歩行トレーニングを商業的に入手可能なDGO Lokomat(登録商標)(Hocoma AG、Volketswill、スイス)によって実施した。DGOの成人ならびに新たな小児バージョンを使用した、DGOは、異なる患者の解剖学的構造に合わせて調節可能な2つの脚装具からなる。それは、いくつかの締め金によって脚に締結されている。臀部装具の幅、上脚および下脚の長さ、ならびに脚締め金のサイズおよび位置を変えることができる。成人(大腿骨長さ>350mm)と小児モジュール(210mmから350mm)の主たる相違点は、腿の長さである。DGOは、4つの連結棒によって体重支持システムのフレームに接続される。これは、装具の垂直方向の運動を可能にし、さらなる垂直方向安定性を提供する。各脚の上で、2つの線形ドライブが、装具の臀部および膝関節を動かす。これらのドライブは、正常な歩行を模倣する動力学的パターンを実施する位置コントローラ(PC上に実装されたリアルタイムシステム)によって制御される。DGOの運動をトレッドミルと同期させる。歩行速度を1から3.2km/hに設定することができる。安全なトレーニングを確保するために、いくつかの安全機能をシステムに統合する。これらは、治療者および患者のための停止ボタン、ならびにドライブにおける過度の力および接合角度における所望の位置からのずれを制限するコントローラを含む。足継ぎ手の背屈が、ゴム状の足ストラップによって提供される。最も生理的な歩行パターンを確保し、皮膚の擦り傷を防止するために、患者をDGOに適正に固定することが極めて重要である。体重の支持のために、対重システムを使用する。これは、5から80kgの範囲内で5kg毎の体重支持を可能にする。
【0199】
荷重除去量を最初に体重の50パーセントに設定して、筋肉強度の増加に応じて連続的に減少させた(立脚中に過度の膝屈曲を生じさせない)。トレーニングの初期歩行速度を子供の能力に応じて選択した。
【0200】
DGOによるトレーニングは、1週間当たり25から45分の3または4つのセッションを含んでいた。10から13のセッションを実施した。ほぼすべての患者が、時間的制約により、彼らの通常の毎週の物理療法セッションを停止した。10人の患者のうちの8人を下肢の筋肉のBotox(登録商標)治療に向けた(表2)。
【0201】
DGOトレーニングの実用性を評価するために、各セッションの歩行時間、歩行距離および歩行速度を記録した、運動機能試験をトレーニングプログラムの前および終了時に評価した。歩行速度を10メートル歩行試験(10MWT)で評価した。子供に、快適な速度で歩行するよう指示した。
【0202】
運動機能の変化を評価するために、GMFM-66の立脚部(寸法D)および歩行部(寸法E)が、GMFM(総合運動機能測定)認定治療者によって管理された。また、歩行耐久を評価するために、入院患者グループの子供が6分間歩行試験(6MWT)を実施した。子供が歩行時に必要とする補助の量を測定するために、機能的歩行運動カテゴリー(FAC)を使用した。介入の前および後に同じ補助デバイスを使用してすべての試験を遂行した。
【0203】
パラメータをそれぞれの正常な分布に関してチェックした。これは、歩行速度および6MWTの結果に適用された。したがって、繰返しt試験を用いてトレーニング前とトレーニング後の差を分析した。すべての他のパラメータを、ノンパラメトリックウィルコクソン符号ランク試験を用いて分析した。
【0204】
9人の患者のうちの8人が、DGOによるトレーニングを完了した。1人の患者は、コンプライアンスの低下により第3の試験後に脱落した。DGOにおけるトレーニングセッションの総数は12であった(SD 1.0、範囲10〜13)。参加者は、セッション毎に平均で1158m歩行した(SD 371m、範囲410〜1675m)。平均トレーニング時間は、28:42分であった(SD 3:30分、範囲23〜32分)。平均歩行速度は、1.7km/h(SD 0.17km/h、範囲1.5〜2.1km/h)であり、アンローディングは14.4%(SD 体重の12.6%、範囲0〜30%)であった(図2c、d)。
【0205】
地上歩行パラメータを7人の患者で評価し、そのすべてが向上していた。平均歩行速度は、0.87m/s(SD 0.32m/s)から1.09m/s(SD 0.31m/s、T=3.11、p=0.01)まで有意に向上した(図3e)。8人の患者のうちの7人が、寸法DおよびEの増加を示した。寸法Dの平均スコアは、46.7(SD 34.1)から52.0(SD 28.8)に顕著に変化したが、統計的解析は、有意性を示さなかった(z=-1.820、p=0.69)。寸法Eにおいて、平均スコアは、トレーニング後に39.5(SD 32.6)から42.2(SD 34.6)にわずかであるが有意に向上した(Z=-2.366、p<0.05)(図3f+g)。FACを用いて評価した歩行能力は、変化を示さなかった。
【0206】
歩行速度およびGMFMスコアは、有意に向上した。GMFMにおける歩行部の結果は、立脚部におけるより不明瞭な結果と対照的に有意な向上を示した。試験の概要を以下の表2に示す。
【0207】
【表2】

【0208】
(実施例2)
未熟関連脳損傷による両側痙縮脳性麻痺の8歳の男性患者に、小児用Lokomat(登録商標)を使用した12セッションのロボット支援トレッドミルトレーニングを施した。筋緊張の増加に関連した抵抗の増加によりロボットデバイスの内部制御装置がトレーニングを停止したため、患者は、第2トレーニングセッションまでしか実施できなかった。ボツリヌス毒素治療(全投与量15U/kg KG Botox(登録商標))を、臀部屈筋、膝屈筋、内転筋および腓腹筋を含む下肢の多層アプローチで実施した。この介入後、ロボット支援トレッドミルトレーニングは、容易に継続され、患者は、示唆された12のすべてのセッションを実施することが可能であった。これらの介入後、耐久性(6分間の連続試験において344〜751m)および運動機能(総運動機能測定の歩行寸法において2.5%から10%)が有意に向上した。
【0209】
本実施例は、筋肉痙縮を少なくとも一時的に緩和させるボツリヌス毒素などの除神経薬の投与と、単に少なくとも部分的に弛緩された筋肉に効果的に作用できる運動療法とを組み合わせることの相乗作用を示している。次いで運動療法によって強化または調整された筋肉を潜在的により高投与量の除神経薬に暴露することで、さらなる相乗効果を導くことができる。
【0210】
(実施例3)
痙性斜頸(頸部ジストニア)に罹患している25歳の患者に、体重1kg当たり0.1〜1000単位のボツリヌス毒素Aの神経毒性成分を、首の胸鎖乳突筋の交互周期の加熱および冷却を含む筋肉活性化治療の前、最中および後に注射する。この介入後、トロントウェスタン痙性斜頸レーティングスケール(Toronto Western Spasmodic Torticollis Rating Scale) (TWSTRS)によれば有意な向上が認められる。
【0211】
(実施例4)
痙性斜頸(頸部ジストニア)に罹患している44歳の患者に、体重1kg当たり0.1〜1000単位のボツリヌス毒素Aの神経毒性成分を、首の胸鎖乳突筋の反復電気刺激を含む筋肉活性化治療の前、最中および後に注射する。この介入後、トロントウェスタン痙性斜頸レーティングスケール(Toronto Western Spasmodic Torticollis Rating Scale) (TWSTRS)によれば有意な向上が認められる。
【0212】
(実施例5)
痙性斜頸(頸部ジストニア)に罹患している24歳の患者に、体重1kg当たり0.1〜1000単位のボツリヌス毒素Aの神経毒性成分を、12Hzから20Hzで振動するプラットホーム上に前記患者を配置することを含む筋肉活性化治療の前、最中および後に注射する。この介入後、トロントウェスタン痙性斜頸レーティングスケール(Toronto Western Spasmodic Torticollis Rating Scale) (TWSTRS)によれば有意な向上が認められる。
【0213】
(実施例6)
痙性斜頸(頸部ジストニア)に罹患している37歳の患者に、体重1kg当たり0.1〜1000単位のボツリヌス毒素Aの神経毒性成分を、首の胸鎖乳突筋に対して40kHzの超音波を加えることを含む筋肉活性化治療の前、最中および後に注射する。この介入後、トロントウェスタン痙性斜頸レーティングスケール(Toronto Western Spasmodic Torticollis Rating Scale) (TWSTRS)によれば有意な向上が認められる。
【0214】
(実施例7)
痙性斜頸(頸部ジストニア)に罹患している34歳の患者に、体重1kg当たり0.1〜1000単位のボツリヌス毒素Aの神経毒性成分を、首の胸鎖乳突筋の静水マッサージを含む筋肉活性化治療の前、最中および後に注射する。この介入後、トロントウェスタン痙性斜頸レーティングスケール(Toronto Western Spasmodic Torticollis Rating Scale) (TWSTRS)によれば有意な向上が認められる。
【0215】
(実施例8)
痙性斜頸(頸部ジストニア)に罹患している43歳の患者に、体重1kg当たり0.1〜1000単位のボツリヌス毒素Aの神経毒性成分を、首の胸鎖乳突筋に対して低強度の治療マイクロ波を加えることを含む筋肉活性化治療の前、最中および後に注射する。この介入後、トロントウェスタン痙性斜頸レーティングスケール(Toronto Western Spasmodic Torticollis Rating Scale) (TWSTRS)によれば有意な向上が認められる。
【0216】
(実施例9)
痙性斜頸(頸部ジストニア)に罹患している49歳の患者に、体重1kg当たり0.1〜1000単位のボツリヌス毒素Aの神経毒性成分を、首の胸鎖乳突筋に対してダルベルギアサクサティリスの根から単離したサポニン(DSS)を加えることを含む筋肉活性化治療の前、最中および後に注射する。この介入後、トロントウェスタン痙性斜頸レーティングスケール(Toronto Western Spasmodic Torticollis Rating Scale) (TWSTRS)によれば有意な向上が認められる。
【0217】
(実施例10)
痙性斜頸(頸部ジストニア)に罹患している33歳の患者に、体重1kg当たり0.1〜1000単位のボツリヌス毒素Aの神経毒性成分を、首の胸鎖乳突筋に対してカゼインキナーゼを加えることを含む筋肉活性化治療の前、最中および後に注射する。この介入後、トロントウェスタン痙性斜頸レーティングスケール(Toronto Western Spasmodic Torticollis Rating Scale) (TWSTRS)によれば有意な向上が認められる。
【0218】
(実施例11)
痙性斜頸(頸部ジストニア)に罹患している56歳の患者に、体重1kg当たり0.1〜1000単位のボツリヌス毒素Aの神経毒性成分を、首の胸鎖乳突筋に対してカリウム(K+)を加えることを含む筋肉活性化治療の前、最中および後に注射する。この介入後、トロントウェスタン痙性斜頸レーティングスケール(Toronto Western Spasmodic Torticollis Rating Scale) (TWSTRS)によれば有意な向上が認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の運動障害を治療するために前記患者に投与される化学的除神経薬であって、前記患者は、筋肉刺激治療を受ける、受けた、かつ/または受けることになる患者であり、前記医薬品は、前記筋肉刺激治療の前および/または最中および/または後に投与される化学的除神経薬。
【請求項2】
患者の運動障害を治療するために前記患者に投与される医薬品の製造のための化学的除神経薬の治療有効量の使用であって、前記患者は、筋肉刺激治療を受ける、受けた、かつ/または受けることになる患者であり、前記医薬品は、前記筋肉刺激治療の前および/または最中および/または後に投与される使用。
【請求項3】
前記筋肉刺激治療が自動筋肉刺激治療である、請求項1または2に記載の薬剤または使用。
【請求項4】
前記筋肉刺激治療が、筋肉活性化治療であり、筋肉活性化は、前記筋肉の静止状態を超えた筋肉代謝の増強を指す、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項5】
前記筋肉刺激治療が自動運動療法である、請求項3に記載の薬剤または使用。
【請求項6】
前記筋肉活性化温度刺激、電気刺激、振動、音波による活性化、静水手段による活性化、電磁波もしくは磁場による活性化、医薬活性化またはそれらの任意の組合せの、請求項4に記載の薬剤または使用。
【請求項7】
前記温度刺激が、40℃超、または45℃超、または50℃超、55℃まで、60℃まで、70℃までまたは80℃までの目標筋肉の加熱である、請求項6に記載の薬剤または使用。
【請求項8】
温度刺激による前記自動筋肉活性化が、35℃未満、または30℃未満、または25℃未満、または20℃未満、または10℃未満、0℃まで、-5℃まで、-10℃まで、または-20℃までの目標筋肉の冷却である、請求項6から7のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項9】
前記電気刺激が、目標筋肉を神経支配する神経に向けられる、請求項6から8のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項10】
前記電気刺激が、目標筋肉そのものに向けられる、請求項6から9のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項11】
前記振動が全身に向けられる、請求項6から10のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項12】
前記振動が、単一の筋肉、筋肉群または肢に向けられる、請求項6から11のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項13】
前記音波が超音波または音響波である、請求項6から12のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項14】
前記静水手段が噴射水を含む、請求項6から13のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項15】
前記電磁波がマイクロ波を含む、請求項6から14のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項16】
前記磁場が磁気刺激を含む、請求項6から15のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項17】
前記医薬活性化が、刺激薬、筋収縮薬、筋肉内の血流を増加させる物質、筋肉温度を上昇させる物質、表面タンパク質の数を上方制御することによって、化学的除神経薬が細胞に結合および進入することを可能にする物質、またはそれらの任意の組合せの投与を含む、請求項6に記載の薬剤または使用。
【請求項18】
前記刺激薬が、β3アゴニスト、カフェイン、エフェドリン、アンフェタミン、メタアンフェタミン、メチルフェニデート、コカイン誘導体およびそれらの任意の組合せの群から選択される、請求項17に記載の薬剤または使用。
【請求項19】
前記筋肉収縮薬が、交感効果を有する物質、β2-アドレナリン受容体に対するアゴニスト効果を有する物質、カフェイン、アセチルコリン、ニコチン、エピバチジン誘導体、ABT-594、ジメチルフェニルピペラジニウム、スクシニルコリン、ダルベルギア・サクサティリス(dalbergia saxatilis)から単離された筋肉刺激サポニン誘導体、カルシウム、カリウム、ノルエピネフリン、アドレナリン(エピネフリン)、ロイコトリエン、アレン含有アラキドン酸誘導体、およびそれらの任意の組合せの群から選択される、請求項17または18に記載の薬剤または使用。
【請求項20】
筋肉内の血流を増加させる前記物質が、EDHF、間質性K+、酸化窒素、β2アドレナリンアゴニスト、ヒスタミン、プロスタサイクリン、プロスタグランジン、VIP、細胞外アデノシン、細胞外ATP、細胞外ADP、L-アルギニン、ブラジキニン、物質P、ナイアシン(ニコチン酸)、血小板活性化因子(PAF)、CO2、間質性乳酸、Adenocard(登録商標)、アルファ遮断薬、亜硝酸アミル、心房性ナトリウム利尿ペプチド、エタノール、ヒスタミン誘発剤、補体タンパク質C3a、C4a、C5a、酸化窒素誘発剤、三硝酸グリセリル(ニトログリセリン)、一硝酸イソソルビド、二硝酸イソソルビド、四硝酸ペンタエリスリトール(PETN)、ニトロプルシドナトリウム、PDE5阻害薬、酸化窒素の効果を間接的に高める薬剤、シルデナフィル、タダラフィル、タルデナフィル、テトラヒドロカンナビノール、テオブロミン、パパベリンおよびそれらの任意の組合せの群から選択される、請求項17から19のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項21】
筋肉温度を上昇させる前記物質が、エフェドラ、苦橙(シネフリン)、トウガラシ、ショウガ、シブトラミンおよびその代謝物質、カフェインならびにそれらの任意の組合せの群から選択される、請求項17から20のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項22】
前記表面タンパク質が、SV2を上方制御する物質、GT1b、GD1b、GQ1b、シナプトタグミンポリペプチド、Syt1およびSyt2を含む群から選択される、請求項17から21のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項23】
表面タンパク質の数を上方制御する前記物質が、ホルモン、成長因子、ニューロトロフィン、受容体内在化の遮断物質、受容体表面発現を増強させる因子、アレスチン阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、受容体分解の遮断物質、阻害G-タンパク質の阻害薬、競合受容体アンタゴニストおよび神経伝達物質分解剤を含む群から選択される、請求項17から22のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項24】
前記自動運動療法が、自動歩行装具またはアームムーバーによって支持される、請求項5または6に記載の薬剤または使用。
【請求項25】
前記自動歩行装具がトレッドミルと併用される、請求項24に記載の薬剤または使用。
【請求項26】
前記自動運動療法が、一実施形態において、トレッドミル、および前記患者の体重に作用するリリーフ機構を使用して、運動の生理的パターンで前記患者の脚を誘導する駆動および制御矯正デバイスを含むデバイスを使用することによって実施される、請求項5から25のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項27】
リリーフ機構が、患者の重量の高さ、および該重量に作用するリリーフ力を調節する手段を含み、前記重量は、ケーブルの長さを調節して前記懸垂重量の高さを規定する第1のケーブル長調節手段と、ケーブルの長さを調節して、懸垂重量に作用するリリーフ力を規定する第2のケーブル長調節手段とを備えたケーブルによって支持される、請求項26に記載の薬剤または使用。
【請求項28】
自動運動療法が、トレッドミルと、患者に対するリリーフ機構と、駆動矯正デバイスとを含むトレッドミルトレーニングのための装置であって、トレッドミル上に高さ調節可能に固定されたパラレログラムが、矯正デバイスを安定させ、患者が前方、後方および側方に傾くのを防止するために設けられ、パラレログラムは、矯正デバイスに装着され、矯正デバイスは、臀部矯正デバイスおよび2つの脚部品を含むことにより、2つの臀部ドライブが臀部矯正デバイスを移動させるために設けられ、2つの膝ドライブが脚部品を移動させるために設けられ、臀部矯正デバイスおよび脚部品は調節可能であり、脚部品は、サイズおよび位置が調節可能であるカフを備え、制御ユニットが、矯正デバイスの運動を制御し、トレッドミルの速度を制御するために設けられた装置を使用することによって実施される、請求項26または27に記載の薬剤または使用。
【請求項29】
自動運動療法が、レーリングを含むトレッドミルと、患者に対するリリーフ機構と、駆動矯正デバイスとを含むトレッドミルトレーニングのための装置であって、矯正デバイスを安定させる手段が、患者が前方、後方および側方に傾くのを防止するために設けられ、矯正デバイスは、臀部矯正デバイスおよび2つの脚部品を含み、2つの臀部ドライブが臀部矯正デバイスを移動させるために設けられ、2つの膝ドライブが脚部品を移動させるために設けられ、ボールねじ紡錘ドライブが各膝ドライブおよび臀部ドライブに対して設けられ、矯正デバイスおよび脚部品は調節可能であり、脚部品は、サイズおよび位置が調節可能であるカフを備え、制御ユニットが、矯正デバイスの運動を制御し、トレッドミルの速度を制御するために設けられた装置を使用することによって実施される、請求項26または27に記載の薬剤または使用。
【請求項30】
自動運動療法が、高さおよび傾きが調節可能な固定テーブルと、患者のための固定テーブルに対する保持デバイスを備えた締結ベルトと、膝機構および足機構からなる、患者の脚の運動のためのドライブ機構とを含む、不全対麻痺および不全片麻痺患者における両側または片側痙縮状態のリハビリテーションまたはハビリテーションのための歩行療法用装置であって、固定テーブルが、軸関節の回りを脚部に対して変位可能なヘッド部を有することにより、軸関節は、調節機構が設けられる調節可能臀部拡張角度を与え、膝部および足部は、脚機構上のレール上に変位可能に配置され、足機構は、膝拡張時に足裏に対する力を確定する役割を果たし、制御ユニットが装置の運動を制御するために設けられた装置を使用することによって実施される、請求項5から29のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項31】
自動運動療法が、生命体の第1の部分と第2の部分との間に力を加えるためのデバイスであって、前記デバイスは、それぞれ前記第1および第2の部分と連動する第1および第2の連結体組立品を含み、各前記第1および第2の連結体組立品は、
a.部分上の所定位置に固定され、それぞれが支持連結体である支持部と、
b.関節を介して前記支持連結体の各々に装着された関節式連結体とを含み、前記第1および第2の連結体組立品の前記関節式連結体は、軸関節を介して互いに装着され、前記第2の組立品の前記関節式連結体は、前記軸関節の上方に伸び、第1および第2のケースが前記第1の連結体組立品における連結体に装着され、第1および第2の腱がそれぞれ前記第1および第2のケースを貫通し、前記第2の連結体組立品における連結体に装着され、前記腱の一方は、前記軸関節の片側で前記第2の連結体組立品における前記関節式連結体に装着され、他方の腱は、前記軸関節の反対側で前記第2の連結体組立品における前記関節式連結体に装着されたデバイスを使用することによって実施される、請求項5から30のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項32】
自動運動療法が、手の第1の部分と第2の部分との間に力を加えるためのデバイスであって、前記部分の一方は指骨であり、前記デバイスは、それぞれ前記第1および第2の部分と連動する第1および第2の連結体組立品を含み、各連結体組立品は、
a.部分上の所定位置に固定され、それぞれが支持連結体である支持部と、
b.関節を介して前記支持連結体の各々に装着された関節式連結体とを含み、前記第1および第2の連結体組立品の前記関節式連結体は、軸関節を介して互いに装着され、前記第2の組立品の前記関節式連結体は、前記軸関節の上方に伸び、第1および第2のケースが前記第1の連結体組立品における連結体に装着され、第1および第2の腱がそれぞれ前記第1および第2のケースを貫通し、前記第2の連結体組立品における連結体に装着され、前記腱の一方は、前記軸関節の片側で前記第2の連結体組立品における前記関節式連結体に装着され、他方の腱は、前記軸関節の反対側で前記第2の組立品における前記関節式連結体に装着されたデバイスを使用することによって実施される、請求項5から30のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項33】
運動障害が、アゴニストとアンタゴニストの不均衡が機能を妨げる運動過剰性および/または運動低下性運動障害である、請求項1から32のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項34】
運動障害が、脳性麻痺、パーキンソン病、中枢歩行障害、脊髄傷害、ジストニア、外傷性脳傷害、遺伝子障害、代謝障害、動的筋痙縮および/または卒中に対応づけられる、請求項33に記載の薬剤または使用。
【請求項35】
運動障害が、尖足、内反足、下肢痙縮、上肢痙縮、内転痙縮、臀部屈曲痙縮、臀部内転、膝屈曲痙縮(屈み歩行)、足首の足底屈曲、距骨下関節の回外および回内、書痙、音楽家痙攣、ゴルファー痙攣、脚ジストニア、大腿内転、大腿外転、膝屈曲、膝伸展、内転尖足変形、足ジストニア、長母趾伸筋、趾屈曲、趾伸展から選択される少なくとも1つに対応づけられる、請求項34に記載の薬剤または使用。
【請求項36】
患者がヒトである、請求項1から35のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項37】
患者が、運動発達を完了しておらず、固定筋拘縮が生じていない、請求項36に記載の薬剤または使用。
【請求項38】
患者が、6歳までの子供である、請求項37に記載の薬剤または使用。
【請求項39】
化学的除神経薬がボツリヌス毒素である、請求項1から38のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項40】
前記薬剤が、注射によって投与される、請求項1から39のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項41】
前記薬剤が、治療中に数回投与される、請求項1から40のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項42】
前記薬剤が、運動療法の開始前に初めて投与される、請求項1から41のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項43】
前記薬剤が、3から6カ月の間隔で再投与される、請求項1から42のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項44】
前記薬剤が、2週間から3カ月未満の間隔で再投与される、請求項1から43のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項45】
前記薬剤が、筋肉活性が自動筋肉活性化治療に干渉した時点で再投与される、請求項1から44のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項46】
投与されるボツリヌス毒素の有効量が、成人では神経毒性成分の500Uを超え、または子供では体重1kg当たり15Uを超える、請求項39から45のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項47】
ボツリヌス毒素が、ボツリヌス毒素複合体A型である、請求項39から46のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項48】
ボツリヌス毒素が、クロストリジウムボツリヌス毒素複合体の神経毒性成分である、請求項39から47のいずれか一項に記載の薬剤または使用。
【請求項49】
ボツリヌス毒素が、血清型A、B、C、D、E、F、Gおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項48に記載の薬剤または使用。
【請求項50】
神経毒性成分がA型である、請求項49に記載の薬剤または使用。
【請求項51】
運動障害に罹患している患者を治療するためのキットであって、
a.化学的除神経薬の有効量を含む医薬品と、
b.筋肉刺激治療を実施する手段と
を含むキット。
【請求項52】
筋肉刺激治療を実施する手段が、温度刺激手段、電気刺激手段、振動手段、音波による活性化手段、静水手段、電磁波手段および磁場手段、またはそれらの任意の組合せの群から選択される、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
筋肉刺激治療を実施する手段が、前記患者の肢を生理的パターンの運動で誘導する駆動および制御歩行装具および/またはアームムーバーを含む自動運動療法である、請求項51に記載のキット。
【請求項54】
化学的除神経薬がボツリヌス毒素である、請求項52または請求項53に記載のキット。
【請求項55】
ボツリヌス毒素が、クロストリジウムボツリヌス毒素複合体の神経毒性成分である、請求項54に記載のキット。

【公表番号】特表2010−540409(P2010−540409A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504564(P2010−504564)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003391
【国際公開番号】WO2008/131941
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(509295413)メルツ・ファルマ・ゲーエムベーハー・ウント・コ・カーゲーアーアー (14)
【Fターム(参考)】