説明

ボビン搬送システム

【課題】搬送路にトレイが滞留することを防ぐことができ、且つ、コストの上昇を抑えたボビン搬送システムを提供する。
【解決手段】ボビンBが装着されたトレイTを連続して自動ワインダ3から精紡機1へ搬送する第一主搬送路21と、第一主搬送路21に配置されてボビンBに糸Yが巻装されているか否かを検知する残糸検知装置211と、第一主搬送路21における残糸検知装置211よりも下流側から分岐して残糸検知装置211よりも上流側にボビンBが装着されたトレイTを搬送するバイパス搬送路20と、を備えたボビン搬送システム2であって、バイパス搬送路20には、ボビンBに巻装された糸Yの巻装量を検知する第一糸量検知装置231と、ボビンBに巻装された糸Yを廃棄処分とする残糸処理装置233と、を配置するとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精紡機と自動ワインダとを直結するボビン搬送システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、糸を精紡する精紡機が自動ワインダに隣接され、該精紡機と自動ワインダとを搬送路で直結するボビン搬送システム(リンクコーナー式搬送システム)が公知となっている。
【0003】
ボビン搬送システムには、ボビンに巻装された状態で残った糸(残糸)を廃棄処分とする残糸処理装置が配置されている。従来のボビン搬送システムにおいては、この残糸処理装置がボビンに残った糸を廃棄処分にすることで空ボビンとした後に、該空ボビンが装着されたトレイを精紡機へ搬送するものとされてきた。
【0004】
しかし、このようなボビン搬送システムにおいては、搬送される全てのボビンに対して糸が残っているか否かを判断し、糸が残っているボビンに対して残糸処理装置を用いて該糸を廃棄する必要があるため、糸が残っているか否かの判断と糸の廃棄処分を待つボビンのトレイが搬送路に滞留することによって搬送処理能力の低下を招く場合があった。
【0005】
そこで、残糸処理装置が配置された搬送路と残糸処理装置が配置されていない搬送路とを設け、ボビンに巻装された状態で残っている糸の巻装量に基づいて、該ボビンのトレイをいずれかの搬送路に送り出すとしたボビン搬送システムが提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0006】
しかし、このようなボビン搬送システムにおいては、残糸処理装置が配置された搬送路に送り出したトレイと残糸処理装置が配置されていない搬送路に送り出したトレイとを再び合流させる必要があるため、ボビン搬送システムの構造が複雑になって該ボビン搬送システムのコストの上昇を招くという問題点を有していた。
【0007】
また、残糸処理装置が配置された搬送路と残糸処理装置が配置されていない搬送路とを設けるとともにボビンが装着されるトレイに情報記憶媒体を備え、該情報記憶媒体からの信号に基づいて、該ボビンのトレイをいずれかの搬送路に送り出すとしたボビン搬送システムが提案されている(例えば特許文献2参照。)。
【0008】
しかし、このようなボビン搬送システムにおいては、各ボビンの情報を記憶する情報記憶媒体のみならず、この情報記憶媒体との信号を処理する制御システム等が必要となるため、ボビン搬送システムの構造が複雑となって該ボビン搬送システムのコストの上昇を招くという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−8944号公報
【特許文献2】特許第3679562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる問題を解決すべくなされたものであり、簡素な構造でありながら精紡機と自動ワインダとを直結する搬送路にトレイが滞留することを防ぐことができ、且つ、コストの上昇を抑えたボビン搬送システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
次に、この課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、第1の発明は、ボビンが装着されたトレイを連続して自動ワインダから精紡機へ搬送する第一主搬送路と、
前記第一主搬送路に配置されてボビンに糸が巻装されているか否かを検知する残糸検知装置と、
前記第一主搬送路における前記残糸検知装置よりも下流側から分岐して該残糸検知装置よりも上流側にボビンが装着されたトレイを搬送するバイパス搬送路と、を備えたボビン搬送システムであって、
前記バイパス搬送路には、
ボビンに巻装された糸の巻装量を検知する第一糸量検知部と、ボビンに巻装された糸を廃棄処分とする残糸処理装置と、が配置される、としたものである。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、ボビンが装着されたトレイを連続して精紡機から自動ワインダへ搬送する第二主搬送路をさらに備え、
前記バイパス搬送路は、
前記第二主搬送路の一部と、
前記第一主搬送路における前記残糸検知装置よりも下流側から分岐して前記第二主搬送路へボビンが装着されたトレイを搬送する第一副搬送路と、
前記第二主搬送路における前記第一副搬送路との合流点よりも下流側から分岐して前記第一主搬送路における前記残糸検知装置よりも上流側へ搬送する第二副搬送路と、で構成され、
前記第一糸量検知部と前記残糸処理装置は前記第一副搬送路に設けられる、としたものである。
【0014】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記残糸処理装置は、前記第一糸量検知部がボビンに巻装された糸の巻装量について所定量以下であると判断した場合に、該ボビンに巻装された糸を廃棄処分とする、としたものである。
【0015】
第4の発明は、第1から第3のいずれかに記載の発明において、前記第一主搬送路は、前記第一副搬送路にトレイを送り出すか否かを切り換える第一切換装置を有し、
前記第一切換装置は、前記残糸検知装置がボビンに糸が巻装されていると判断した場合に、該ボビンが装着されたトレイを前記第一副搬送路へ送り出す、としたものである。
【0016】
第5の発明は、第1から第4のいずれかに記載の発明において、前記第二主搬送路は、ボビンに巻装された糸の巻装量を検知する第二糸量検知部と、
ボビンに巻装された糸の糸端部を引き出し処理するボビン準備装置と、
前記ボビン準備装置による糸端部の引き出し処理が成功したか否かを検知する成否検知装置と、
前記第二副搬送路にトレイを送り出すか否かを切り換える第二切換装置と、を有し、
前記第二切換装置は、前記第二糸量検知部がボビンに巻装された糸の巻装量について所定量以下であると判断した場合ならびに前記成否検知装置が糸端部の引き出し処理が成功しなかったと判断した場合に、該ボビンが装着されたトレイを前記第二副搬送路へ送り出す、としたものである。
【0017】
第6の発明は、第1から第5のいずれかに記載の発明において、前記第一主搬送路は、トレイにボビンが装着されているか否かを判断するボビン検知装置を具備し、
前記第一切換装置は、前記ボビン検知装置がトレイにボビンが装着されていないと判断した場合に、該トレイを前記第一副搬送路へ送り出す、としたものである。
【0018】
第7の発明は、第1から第6のいずれかに記載の発明において、前記残糸検知装置は、複数の検知部を有することによって複数のボビンに対して同時に糸が巻装されているか否かを検知する、としたものである。
【0019】
第8の発明は、第7に記載の発明において、前記検知部は残糸ブラシである、としたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0021】
第1の発明によれば、糸が巻装されているボビンが装着されたトレイを第一副搬送路へ送り出すため、簡素な構造でありながら精紡機と自動ワインダとを直結する第一主搬送路にトレイが滞留することを防止できる。これにより、ボビン搬送システムにおけるトレイの搬送処理能力を向上させることが可能となる。
【0022】
第2の発明によれば、精紡機と自動ワインダとを直結してボビンが装着されたトレイを搬送する第一主搬送路及び第二主搬送路とは別の第一副搬送路に第一糸量検知部及び残糸処理装置を設けているので、残糸処理待ちのボビンが第一主搬送路や第二主搬送路に滞留することを防ぐことが可能となる。
【0023】
第3の発明によれば、糸の巻装量が所定量よりも多い場合には、該糸を廃棄処分とせずに、このボビンを精紡機と自動ワインダとを直結する第二主搬送路に戻すことができる。また、糸の巻装量が所定量以下である場合には、該糸を廃棄処分として、このボビンを精紡機と自動ワインダとを直結する第二主搬送路へ戻すことができる。これにより、比較的に多くの糸が巻装されているボビンを自動ワインダへ搬送することができ、廃棄処分とされる糸を減らすことが可能となる。
【0024】
第4の発明によれば、満巻ボビンや半玉ボビン、極少残糸ボビンを特定し、該ボビンが装着されたトレイを第一副搬送路へ送り出すことができる。これにより、糸が巻装された状態で残っているボビンが精紡機へ搬送されることを防止できる。
【0025】
第5の発明によれば、極少残糸ボビンや空ボビン、引き出し処理に失敗したボビンを特定し、該ボビンが装着されたトレイを第二副搬送路へ送り出すことができる。これにより、極少残糸ボビンや空ボビン、そして、引き出し処理に失敗したボビンが自動ワインダへ搬送されることを防止できる。
【0026】
第6の発明によれば、ボビンが装着されていないトレイを特定し、該トレイを第一副搬送路へ送り出すことができる。これにより、ボビンが装着されていないトレイが精紡機へ搬送されることを防止できる。
【0027】
第7ならびに第8の発明によれば、ボビンに糸が巻装されているか否かを検知する処理速度が向上し、精紡機と自動ワインダとを直結する第一主搬送路にトレイが滞留することを防止できる。これにより、ボビン搬送システムにおけるトレイの搬送処理能力を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、自動ワインディング設備100の全体構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の第一実施形態に係るボビン搬送システム2の構成を示す図である。
【図3】図3Aは、ボビンBに糸Yが巻装されていない場合の第二糸量検知装置221の動作態様を示す図である。図3Bは、ボビンBに糸Yが巻装されている場合の第二糸量検知装置221の動作態様を示す図である。
【図4】図4Aは、ボビン準備装置222の動作態様を示す一の図である。図4Bは、ボビン準備装置222の動作態様を示す他の図である。
【図5】図5Aは、ボビンBに糸Yが巻装されていない場合の残糸検知装置211の動作態様を示す図である。図5Bは、ボビンBに糸Yが巻装されている場合の残糸検知装置211の動作態様を示す図である。
【図6】図6は、残糸ブラシ211aを複数備えた残糸検知装置211の構成を示す図である。
【図7】図7Aは、残糸処理装置233の動作態様を示す一の図である。図7Bは、残糸処理装置233の動作動作を示す他の図である。
【図8】図8Aは、第二主搬送路22の第二切換装置223によってトレイTの搬送経路が変更される図である。図8Bは、第一主搬送路21の第一切換装置212によってトレイTの搬送経路が変更される図である。
【図9】図9Aは、本発明の別実施形態に係るボビン搬送システム2の構成を示す図である。図9Bは、バイパス搬送路20の第三切換装置234によってトレイTの搬送経路が変更される図である。
【図10】図10は、本発明の第二実施形態に係るボビン搬送システム4の構成を示す図である。
【図11】図11は、第二主搬送路22から第四副搬送路26へトレイTを送り出す状態を示す図である。
【図12】図12Aは、第二主搬送路22におけるトレイTの滞留の有無によって後続のトレイTの搬送経路が変更される図である。図12Bは、第二主搬送路22の第二切換装置223によってトレイTの搬送経路が変更される図である。
【図13】図13Aは、第二副搬送路24の第四切換装置243によってトレイTの搬送経路が変更される図である。図13Bは、第一主搬送路21の第一切換装置212によってトレイTの搬送経路が変更される図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
まず、自動ワインディング設備100について簡単に説明する。
【0030】
図1は、自動ワインディング設備100の全体構成を示したものである。自動ワインディング設備100は、主に精紡機1と、ボビン搬送システム2と、自動ワインダ3と、で構成される。
【0031】
精紡機1は、粗糸を牽伸して撚りをかけることで所望の糸特性とした糸YをボビンBに巻き取るリング精紡機である。また、精紡機1は、糸Yが巻装されたボビンBをトレイTに装着し、該トレイTを連続してボビン搬送システム2へ供給する。
【0032】
ボビン搬送システム2は、糸Yが巻装されているボビンBが装着されたトレイTを自動ワインダ3へ搬送するとともに、糸Yが巻装されていないボビンBが装着されたトレイTを精紡機1へ搬送するものである。詳細には、ボビン搬送システム2は、糸Yが巻装されているボビンBが装着されたトレイTをコンベアから成る搬送路を用いて精紡機1から自動ワインダ3へ搬送する。また、ボビン搬送システム2は、糸Yが巻装されていないボビンBが装着されたトレイTをコンベアから成る搬送路を用いて自動ワインダ3から精紡機1へ搬送する。
【0033】
自動ワインダ3は、複数のワインダユニット31から構成される。ワインダユニット31は、ボビンBに巻装された糸Yを解舒し、該糸Yに欠点が発見された場合に当該欠点部を切断、除去して他のボビンに巻き返すものである。また、ワインダユニット31は、糸Yが解舒されて該糸Yが巻装されていないボビンBをトレイTに装着した状態で排出し、ボビン搬送システム2へ供給する。
【0034】
つまり、自動ワインディング設備100は、糸Yが巻装されたボビンBをボビン搬送システム2を用いて自動ワインダ3へ供給し、糸Yが解舒されて該糸Yが巻装されていないボビンBをボビン搬送システム2を用いて精紡機1へ返却するのである。
【0035】
こうして、自動ワインディング設備100は、精紡機1による精紡と複数のワインダユニット31による欠点部の除去ならびに巻き返しを連続して行なうことを可能としている。
【0036】
なお、精紡機1から供給されたボビンBは、糸Yが満巻になっており、これを満巻ボビンBfという。また、ワインダユニット31から排出されたボビンBは、糸Yが巻装されておらず、これを空ボビンBeという。但し、ワインダユニット31から排出されたボビンBには、満巻ではないが、再度、ワインダユニット31によって巻き返し可能な量の糸Yが巻装されている半玉ボビンBhや、巻き返すことができない少量の糸Yが巻装されている極少残糸ボビンBlが含まれる(図1参照。)。つまり、満巻ボビンBfは未だ糸Yが解舒されていないボビンBをいい、半玉ボビンBhは満巻ではないが糸Yがほとんど解舒されずに多く残っているボビンBをいう。そして、極少残糸ボビンBlは糸Yがほとんど解舒されて僅かに残っているボビンBをいい、空ボビンBeは糸Yが全て解舒されたボビンBをいう。
【0037】
次に、図2を用いて本発明の第一実施形態に係るボビン搬送システム2について詳細に説明する。なお、図中の矢印は、トレイTの搬送方向を示したものである。
【0038】
ボビン搬送システム2には、ボビンBが装着されたトレイTを精紡機1から自動ワインダ3へ搬送する第二主搬送路22が設けられている。そして、第二主搬送路22にはトレイTの搬送方向に沿って、第二糸量検知部である第二糸量検知装置221と、ボビン準備装置222と、第二切換装置223と、が配置される。
【0039】
第二糸量検知装置221は、ボビンBに巻装された糸Yの巻装量を検知するものである。
【0040】
図3Aに示すように、第二糸量検知装置221は、第二主搬送路22によって搬送されるボビンBに対して回動可能に配置されたアーム221aが当接しなかった場合、該ボビンBには十分な糸Yが巻装されていない極少残糸ボビンBl又は空ボビンBeであると判断する。
【0041】
一方、図3Bに示すように、第二糸量検知装置221は、第二主搬送路22によって搬送されるボビンBに対して回動可能に配置されたアーム221aが当接した場合、該アーム221aの回動位置に基づいてボビンBに巻装されている糸Yの巻装量を検知する。つまり、第二糸量検知装置221は、アーム221aの回動位置に基づいて満巻ボビンBfであるか半玉ボビンBhであるかの判断を行なう。
【0042】
ボビン準備装置222は、ボビンBに巻装された糸Yの糸端部YEを所定の位置に配置(引き出し処理)するものである。
【0043】
図4A、図4Bに示すように、ボビン準備装置222は、主に空気を吸入するサクション管222aと、トレイTならびにボビンBの内部通路を介して空気を吸入する吸入管222bと、で構成される。また、サクション管222aの屈折部分の内隅には成否検知装置222cである糸検知センサが配置されている。
【0044】
更に、サクション管222aの下方には糸Yを切断できるカッター222dが設けられるとともに、その下方には伸縮可能な蛇腹管222eが取り付けられている。蛇腹管222eは、図示しないモータによって伸縮自在に可動し、伸張時にはボビンBを覆うように形成される。
【0045】
ボビン準備装置222の動作態様を説明すると、図4Aに示すように、ボビン準備装置222は、まず、第二主搬送路22によって搬送されてきたトレイTを図示しないストッパによって停止させる。そして、ボビン準備装置222は、蛇腹管222eを伸張させてボビンBを覆うとともに、サクション管222aが空気を吸入することで糸端部YEを捕捉する。
【0046】
その後、図4Bに示すように、ボビン準備装置222は、成否検知装置222cである糸検知センサが糸端部YEの捕捉に成功したことを検知すると蛇腹管222eを収縮させてカッター222dで糸Yを切断する。そして、吸入管222bがトレイTならびにボビンBの内部通路を介して空気を吸入することによって糸端部YE(カッター222dによって切断されて得られた糸端部YE)を捕捉する。
【0047】
こうすることで、ボビンBに巻装された糸Yの糸端部YEを該ボビンBの所定の位置、即ち、ボビンBの内側に配置することができるのである(図4B二点鎖線参照。)。なお、本実施形態においては、成否検知装置222cである糸検知センサが糸端部YEの捕捉を検知した場合、糸端部YEをボビンBの内側に配置することに成功した、即ち、引き出し処理に成功したと擬制する。
【0048】
第二切換装置223は、トレイTを引き続き第二主搬送路22へ送り出すか又は後述する第二副搬送路24へ送り出すかの切り換えを行なうものである。
【0049】
また、図2に示すように、ボビン搬送システム2には、ボビンBが装着されたトレイTを自動ワインダ3から精紡機1へ搬送する第一主搬送路21が設けられている。そして、第一主搬送路21にはトレイTの搬送方向に沿って、残糸検知装置211と、第一切換装置212と、が配置される。
【0050】
残糸検知装置211は、ボビンBの外周面に沿うように回動される残糸ブラシ211aの回動位置を検出し、検出された回動位置から糸Yが巻装されているか否かの判断をするものである。
【0051】
図5Aに示すように、残糸検知装置211は、ボビンBの外周面に沿うように残糸ブラシ211aを回動させて該残糸ブラシ211aが糸Yに引っ掛からなかった場合、該ボビンBには糸Yが巻装されていない、即ち、空ボビンBeであると判断する。
【0052】
一方、図5Bに示すように、残糸検知装置211は、ボビンBの外周面に沿うように残糸ブラシ211aを回動させて該残糸ブラシ211aが糸Yに引っ掛かった場合、該ボビンBには糸Yが巻装された状態で残っていると判断する。つまり、残糸検知装置211は、ボビンBには糸Yが巻装されており、少なくとも空ボビンBeでないと判断する。
【0053】
また、残糸検知装置211には、トレイTにボビンBが装着されているか否かを判断する図示しないボビン検知装置211cが配置されている。ボビン検知装置211cは、搬送されてくるトレイTに対して、常にボビンBが装着されているか否かを判断している。
【0054】
更に、図6に示すように、残糸検知装置211は、複数の残糸ブラシ211aを備えることで複数のボビンBに対して同時に糸Yが巻装されているか否かの検知を行なうとしても良い。これにより、ボビンBに糸Yが巻装されているか否か、即ち、空ボビンBeであるか否かを検知する処理速度が向上し、第一主搬送路21にトレイTが滞留することを防止できる。そして、ボビン搬送システム2におけるトレイTの搬送処理能力を向上させることが可能となる。
【0055】
第一切換装置212は、トレイTを引き続き第一主搬送路21へ送り出すか又は後述する第一副搬送路23へ送り出すかの切り換えを行なうものである。なお、第一切換装置212は、上述した第二切換装置223と同一の構成である。
【0056】
更に、図2に示すように、ボビン搬送システム2には、ボビンBが装着されたトレイTを第一主搬送路21における残糸検知装置211の下流側から分岐して第二主搬送路22へ搬送する第一副搬送路23が設けられている。詳細には、第一主搬送路21に配置された第一切換装置212の近傍から第二主搬送路22における第二糸量検知装置221の上流側へと連絡する第一副搬送路23が設けられている。そして、第一副搬送路23にはトレイTの搬送方向に沿って、第一糸量検知部と、残糸処理装置233と、が配置される。
【0057】
第一糸量検知部は、第一糸量検知装置231と、残糸検知装置232とから構成され、第一糸量検知装置231は、搬送されるボビンBに当接することによって回動されるアーム231aの回動位置を検出し、検出された回動位置からボビンBに所定量以上の糸Yが巻装されているか否かを検知するものである。なお、第一糸量検知装置231は、上述した第二糸量検知装置221と同一の構成である。
【0058】
残糸検知装置232は、ボビンBの外周面に沿うように回動される残糸ブラシ232aの回動位置を検出し、検出された回動位置から糸Yが巻装されているか否かの判断をするものである。なお、残糸検知装置232は、上述した残糸検知装置211と同一の構成である。
【0059】
本実施形態において、残糸検知装置232は、第一糸量検知装置231が空ボビンBe若しくは極少残糸ボビンBlであると判断した場合にのみ該ボビンBに糸Yが巻装されているか否かの判断を行なう。第一糸量検知装置231は、ボビンBを搬送させながら糸Yの巻装量を判断することができるのに対し、残糸検知装置232は、ボビンBを一時停止させないと糸Yが巻装されているか否かの判断をすることができない。よって、第一糸量検知装置231の判断結果を基に必要あるもののみを残糸検知装置232で判断する。これにより、残糸検知装置232においてトレイTが滞留することを防ぐことが可能となる。なお、本実施形態においては、第一副搬送路23に第一糸量検知装置231と残糸検知装置232が隣接して配置されているが、これらを一体とした構成であっても良い。
【0060】
残糸処理装置233は、ボビンBに巻装されている糸Yをクランパー233cによって把持して抜き取り、該糸Yを廃棄処分にするものである。残糸処理装置233は、上述した第一糸量検知装置231によって糸Yの巻装量が所定量以下である、即ち、糸Yが僅かに残っている極少残糸ボビンBlであると判断された場合にのみ該糸Yを廃棄処分とする。
【0061】
図7A、図7Bに示すように、残糸処理装置233は、主にボビンBを保持して吊り上げるボビンピッカー233aと、吊り上げられたボビンBを押動するプッシャー233bと、ボビンBに巻装されている糸Yを把持するクランパー233cと、で構成される。
【0062】
残糸処理装置233の動作態様を説明すると、図7Aに示すように、残糸処理装置233は、まず、略円筒形状のボビンピッカー233aをボビンBの内部通路に挿入して該ボビンBを保持する。そして、残糸処理装置233は、ボビンBを吊り上げるとともに、クランパー233cを駆動してボビンBに巻装されている糸Yを把持する。
【0063】
その後、図7Bに示すように、残糸処理装置233は、吊り上げられたボビンBをプッシャー233bによって下方へ押動し、ボビンBに巻装されている糸YをボビンBの上端部から抜き取る。そして、残糸処理装置233は、図示しない吸入装置によって抜き取った糸Yを吸入し、廃棄処分とする。
【0064】
更に、図2に示すように、ボビン搬送システム2には、ボビンBが装着されたトレイTを第二主搬送路22から分岐して第一主搬送路21における残糸検知装置211の上流側へ搬送する第二副搬送路24が設けられている。詳細には、第二主搬送路22に配置された第二切換装置223の近傍から第一主搬送路21における残糸検知装置211の上流側へと連絡する第二副搬送路24が設けられている。こうして、本実施形態においては、第一副搬送路23、第二主搬送路22及び第二副搬送路24によって、バイパス搬送路20が構成されている。
【0065】
以上のようなボビン搬送システム2において、トレイTの搬送経路について具体的に説明する。なお、図8A、図8Bに記載した実線ならびに破線の矢印は、トレイTの搬送方向を示したものである。
【0066】
図8Aは、第二主搬送路22の第二切換装置223によってトレイTの搬送経路が変更される図である。
【0067】
図8Aに示すように、第二主搬送路22に設けられた第二切換装置223は、第二糸量検知装置221が糸Yの巻装量について所定量よりも多いと判断し、且つ、成否検知装置222cが糸端部YEの捕捉に成功したことを検知した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを引き続き第二主搬送路22へ送り出す(図中実線矢印参照。)。
【0068】
具体的には、第二切換装置223は、第二糸量検知装置221が満巻ボビンBf又は半玉ボビンBhであると判断し、且つ、成否検知装置222cが引き出し処理に成功したと判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを引き続き第二主搬送路22へ送り出す(図中実線矢印参照。)。
【0069】
一方、第二主搬送路22に設けられた第二切換装置223は、第二糸量検知装置221が糸Yの巻装量について所定量以下であると判断した場合ならびに成否検知装置222cが糸端部YEの捕捉に成功したことを検知できなかった場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを第二副搬送路24へ送り出す(図中破線矢印参照。)。
【0070】
具体的には、第二切換装置223は、第二糸量検知装置221が極少残糸ボビンBl又は空ボビンBeであると判断した場合ならびに成否検知装置222cが引き出し処理に成功しなかったと判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを第二副搬送路24へ送り出す(図中破線矢印参照。)。
【0071】
このような構成により、本発明に係るボビン搬送システム2は、極少残糸ボビンBlや空ボビンBe、そして、引き出し処理に失敗したボビンBが自動ワインダ3へ搬送されることを防止できる。更に、第一主搬送路21には、空ボビンBeを判別するための残糸検知装置211が配置され、他の動作部材が配置されないようにした。これにより、第一主搬送路21の滞留を防止することができる。
【0072】
図8Bは、第一主搬送路21の第一切換装置212によってトレイTの搬送経路が変更される図である。
【0073】
図8Bに示すように、第一主搬送路21に設けられた第一切換装置212は、ボビン検知装置211cがトレイTにボビンBが装着されていると判断し、且つ、残糸検知装置211がボビンBに糸Yが巻装されていないと判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを引き続き第一主搬送路21へ送り出す(図中実線矢印参照。)。
【0074】
具体的には、第一切換装置212は、トレイTにボビンBが装着されており、該ボビンBが空ボビンBeであると判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを引き続き第一主搬送路21へ送り出す(図中実線矢印参照。)。
【0075】
一方、第一主搬送路21に設けられた第一切換装置212は、ボビン検知装置211cがトレイTにボビンBが装着されていないと判断した場合に、該トレイTを第一副搬送路23へ送り出す(図中破線矢印参照。)。これにより、ボビンBが装着されていないトレイTが精紡機1へ搬送されることを防止できる。
【0076】
また、第一切換装置212は、ボビン検知装置211cがトレイTにボビンBが装着されていると判断し、且つ、残糸検知装置211がボビンBに糸Yが巻装されていると判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを第一副搬送路23へ送り出す(図中破線矢印参照。)。
【0077】
具体的には、第一切換装置212は、トレイTにボビンBが装着されており、該ボビンBが少なくとも空ボビンBeでないと判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを第一副搬送路23へ送り出す(図中破線矢印参照。)。
【0078】
このような構成により、本発明に係るボビン搬送システム2は、糸Yが巻装されているボビンBが装着されたトレイTを第一副搬送路23へ送り出すため、簡素な構造でありながら第一主搬送路21にトレイTが滞留することを防止できる。これにより、ボビン搬送システム2におけるトレイTの搬送処理能力を向上させることが可能となる。また、糸Yが巻装された状態で残っているボビンBが精紡機1へ搬送されることを防止している。
【0079】
以降に第一副搬送路23へ搬送されたトレイTについて説明する。
【0080】
第一副搬送路23に配置された第一糸量検知装置231は、ボビンBに巻装されている糸Yの巻装量を検知する。つまり、第一糸量検知装置231は、ボビンBが満巻ボビンBf、半玉ボビンBh及び極少残糸ボビンBlのうちのいずれであるかを判断する。
【0081】
次に、第一副搬送路23に配置された残糸検知装置232は、第一糸量検知装置231がボビンBに所定量の糸Yが巻装されていない極少残糸ボビンBl若しくは空ボビンBeであると判断した場合にのみ該ボビンBに糸Yが巻装されているか否かの判断を行なう。つまり、糸Yが巻装されているボビンBを搬送する第一副搬送路23において、第一糸量検知装置231が極少残糸ボビンBl若しくは空ボビンBeであると判断した場合に、その巻量の確認を行なうのである。
【0082】
そして、第一副搬送路23に配置された残糸処理装置233は、第一糸量検知装置231が糸Yの巻装量が所定量以下である、即ち、極少残糸ボビンBlであると判断した場合にのみ該糸Yを廃棄処分とするために稼動される。
【0083】
このような構成により、本発明に係るボビン搬送システム2は、糸Yの巻装量が所定量よりも多い、即ち、満巻ボビンBf又は半玉ボビンBhである場合には、該糸Yを廃棄処分とせずに、このボビンBを第二主搬送路22に戻すことができる。また、糸Yの巻装量が所定量以下である、即ち、極少残糸ボビンBlである場合には、該糸Yを廃棄処分とすることで空ボビンBeとした後に、この空ボビンBeを第二主搬送路22に戻すことができる。これにより、満巻ボビンBf又は半玉ボビンBhを自動ワインダ3へ搬送することができ、廃棄処分とされる糸Yを減らすことが可能となる。
【0084】
このようにして、第二主搬送路22に戻された満巻ボビンBf又は半玉ボビンBhは、再びボビン準備装置222によって引き出し処理が行なわれ、引き出し処理が成功した場合には自動ワインダ3へ搬送される(図8A中実線矢印参照。)。なお、第二主搬送路22に戻された満巻ボビンBf又は半玉ボビンBhは、ボビン準備装置222による引き出し処理が失敗した場合には第二副搬送路24や第一主搬送路21、第一副搬送路23を経て、再び第二主搬送路22へ戻される。
【0085】
また、残糸処理装置233によって糸Yが除去されて空ボビンBeとなったボビンBは、第二主搬送路22から第二副搬送路24、第一主搬送路21等を経て、残糸検知装置211によって再度、糸Yが巻装されているか否かが判断され、糸Yが巻装されていないことを確認した後に精紡機1へ搬送される。なお、ボビンBが装着されていないトレイTは、第二副搬送路24や第一主搬送路21、第一副搬送路23、そして、再び第二主搬送路22へと搬送されて周回することとなる。これにより、糸Yが巻装されているボビンBが装着されたトレイTならびにボビンBが装着されていないトレイTが精紡機1へ搬送されることを防止している。
【0086】
また、本実施形態においては、第一副搬送路23、第二主搬送路22及び第二副搬送路24によってバイパス搬送路20を構成しているが、図9Aに示すように、バイパス搬送路20を別途に設けても良い。このような実施形態では、バイパス搬送路20にトレイTの搬送方向に沿って、第一糸量検知装置231と、残糸検知装置232とから構成される第一糸量検知部と、第三切換装置234と、残糸処理装置233と、が配置される
【0087】
第三切換装置234は、トレイTを引き続きバイパス搬送路20へ送り出すか又は第二主搬送路22へ送り出すかの切り換えを行なうものである。なお、第三切換装置234は、上述した第一切換装置212や第二切換装置223と同一の構成である。
【0088】
以上のようなボビン搬送システム2において、トレイTの搬送経路について具体的に説明する。なお、図9Bに記載した実線ならびに破線の矢印は、トレイTの搬送方向を示したものである。
【0089】
図9Bは、バイパス搬送路20の第三切換装置234によってトレイTの搬送経路が変更される図である。
【0090】
図9Bに示すように、バイパス搬送路20に設けられた第三切換装置234は、第一糸量検知装置231が糸Yの巻装量について所定量よりも多いと判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを第二主搬送路22へ送り出す(図中実線矢印参照。)。
【0091】
具体的には、第三切換装置234は、第一糸量検知装置231が満巻ボビンBf又は半玉ボビンBhであると判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを第二主搬送路22へ送り出す(図中実線矢印参照。)。
【0092】
一方、バイパス搬送路20に設けられた第三切換装置234は、第一糸量検知装置231が糸Yの巻装量について所定量以下であると判断し、且つ、残糸検知装置232が極少残糸ボビンBlであると判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを引き続き残糸処理装置233の配置されたバイパス搬送路20へ送り出す(図中破線矢印参照。)。
【0093】
具体的には、第三切換装置234は、第一糸量検知装置231ならびに残糸検知装置232が極少残糸ボビンBl又は空ボビンBeであると判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを引き続きバイパス搬送路20へ送り出す(図中破線矢印参照。)。
【0094】
このような構成により、本発明に係るボビン搬送システム2は、糸Yが巻装されているボビンBが装着されたトレイTをバイパス搬送路20へ送り出すため、簡素な構造でありながら第一主搬送路21にトレイTが滞留することを防止できる。そして、極少の糸Yが巻装されている極少残糸ボビンBlが装着されたトレイTを第二主搬送路22へ送り出さずに、バイパス搬送路20へ送り出して該バイパス搬送路20に設けられた残糸処理装置233によって極少残糸ボビンBlに巻装されている糸Yを廃棄処分とするので、該第二主搬送路22にトレイTが滞留することも防止できる。これにより、ボビン搬送システム2におけるトレイTの搬送処理能力を向上させることが可能となる。
【0095】
次に、図10を用いて本発明の第二実施形態に係るボビン搬送システム4について詳細に説明する。但し、上述したボビン搬送システム2と同様の構成については同じ符号を付し、異なる部分を中心に説明する。なお、図中の矢印は、トレイTの搬送方向を示したものである。
【0096】
ボビン搬送システム4には、ボビンBが装着されたトレイTを精紡機1から自動ワインダ3へ搬送する第二主搬送路22が設けられている。そして、第二主搬送路22にはトレイTの搬送方向に沿って、第二糸量検知装置221と、ボビン準備装置222と、第二切換装置223と、が配置される。
【0097】
また、ボビン搬送システム4には、ボビンBが装着されたトレイTを自動ワインダ3から精紡機1へ搬送する第一主搬送路21が設けられている。そして、第一主搬送路21にはトレイTの搬送方向に沿って、残糸検知装置211と、第一切換装置212と、が配置される。
【0098】
更に、ボビン搬送システム4には、ボビンBが装着されたトレイTを第一主搬送路21における残糸検知装置211の下流側から分岐して第二主搬送路22へ搬送する第一副搬送路23が設けられている。詳細には、第一主搬送路21に配置された第一切換装置212の近傍から第二主搬送路22における第二糸量検知装置221の上流側へと連絡する第一副搬送路23が設けられている。そして、第一副搬送路23にはトレイTの搬送方向に沿って、第一糸量検知装置231と、残糸検知装置232と、残糸処理装置233と、が配置される。
【0099】
また、ボビン搬送システム4には、ボビンBが装着されたトレイTを第二主搬送路22から分岐して第一主搬送路21における残糸検知装置211の上流側へ搬送する第二副搬送路24が設けられている。詳細には、第二主搬送路22に配置された第二切換装置223の近傍から第一主搬送路21における残糸検知装置211の上流側へと連絡する第二副搬送路24が設けられている。こうして、本実施形態においては、第一副搬送路23、第二主搬送路22及び第二副搬送路24によって、バイパス搬送路20が構成されている。
【0100】
なお、本実施形態においては、第二副搬送路24にトレイTの搬送方向に沿って、第三糸量検知装置241と、ボビン準備装置242と、第四切換装置243と、が配置されており、該第四切換装置243の近傍から自動ワインダ3へと連絡する第三副搬送路25が設けられている。
【0101】
第三糸量検知装置241は、搬送されるボビンBに当接することによって回動されるアーム241aの回動位置を検出し、検出された回動位置からボビンBに所定量以上の糸Yが巻装されているか否かを検知するものである。なお、第三糸量検知装置241は、上述した各糸量検知装置221・231と同一の構成である。
【0102】
ボビン準備装置242は、ボビンBに巻装された糸Yの糸端部YEを所定の位置に配置(引き出し処理)するものである。なお、ボビン準備装置242は、上述したボビン準備装置222と同一の構成である。
【0103】
第四切換装置243は、トレイTを引き続き第二副搬送路24へ送り出すか又は第三副搬送路25へ送り出すかの切り換えを行なうものである。なお、第四切換装置243は、上述した各切換装置212・223と同一の構成である。
【0104】
更に、本実施形態においては、ボビンBが装着されたトレイTを第二主搬送路22における第一副搬送路23の合流点と第二糸量検知装置221の間から分岐して第二副搬送路24における第三糸量検知装置241の上流側へ搬送する第四副搬送路26が設けられている。
【0105】
そして、第二主搬送路22には、第四副搬送路26との分岐点の下流側にトレイTの搬送位置をずらすオフセット区間22Aが設けられている。オフセット区間22Aは、第二主搬送路22にトレイTが滞留した際に、一部のトレイTが停止する箇所に設けられた第二主搬送路22の屈曲部分である。なお、本ボビン搬送システム2において第二主搬送路22は、精紡機1から自動ワインダ3へ略直線状に構成されており、オフセット区間22Aが第二主搬送路22の中途部に略矩形状に設けられている。
【0106】
ここで、第二主搬送路22に所定量のトレイTが滞留したときについて説明する。図11に示すように、滞留しているトレイTのうち一部のトレイTは、オフセット区間22Aによって搬送位置がずらされた状態で停止する。そして、オフセット区間22Aで停止している後端のトレイT(図中トレイTx参照。)に新たに搬送されてきた後続のトレイT(図中トレイTy参照。)が接触すると、この後続のトレイT(トレイTy)は、オフセット区間22Aが設けられた方向と反対方向への力を受ける。
【0107】
つまり、オフセット区間22Aで停止しているトレイT(トレイTx)に接触した後続のトレイT(トレイTy)は、オフセット区間22Aで停止しているトレイT(トレイTx)に対して軌道が逸れた状態で接触するため、オフセット区間22Aが設けられた方向と反対側に設けられた第四副搬送路26の方向へ力を受けるのである。こうして、この後続のトレイT(トレイTy)ならびに該トレイT(トレイTy)よりも後に搬送されてくるトレイTは、第二主搬送路22から第四副搬送路26へ送り出されることとなるのである。
【0108】
以上のようなボビン搬送システム4において、トレイTの搬送経路について具体的に説明する。なお、図12A、図12B、図13A、図13Bに記載された実線ならびに破線の矢印は、トレイTの搬送方向を示したものである。
【0109】
図12Aは、第二主搬送路22におけるトレイTの滞留の有無によって後続のトレイTの搬送経路が変更される図である。
【0110】
図12Aに示すように、第二主搬送路22に設けられたオフセット区間22Aは、第二主搬送路22にトレイTが滞留していないときには、後続のトレイTを引き続き第二主搬送路22へ送り出す(図中実線矢印参照。)。
【0111】
具体的には、オフセット区間22Aは、第二主搬送路22における該オフセット区間22Aの下流側にトレイTが滞留していないときには、後続のトレイTを引き続き第二主搬送路22へ送り出す(図中実線矢印参照。)。
【0112】
一方、第二主搬送路22に設けられたオフセット区間22Aは、第二主搬送路22にトレイTが滞留しているときには、後続のトレイTを第四副搬送路26へ送り出す(図中破線矢印参照。)。
【0113】
具体的には、オフセット区間22Aは、第二主搬送路22における該オフセット区間22Aの下流側にトレイTが滞留しているときには、上述したように後続のトレイTを第四副搬送路26へ送り出す(図中破線矢印参照。)。
【0114】
このような構成により、本発明に係るボビン搬送システム2は、第二主搬送路22に所定量のトレイTが滞留したときに簡素な構成でありながら確実に後続のトレイTを第二副搬送路24へ搬送することができる。これにより、第二主搬送路22におけるトレイTの滞留を避けて後続のトレイTを搬送できるため、搬送処理能力を向上させることが可能となる。
【0115】
図12Bは、第二主搬送路22の第二切換装置223によってトレイTの搬送経路が変更される図である。
【0116】
図12Bに示すように、第二主搬送路22に設けられた第二切換装置223は、第二糸量検知装置221が糸Yの巻装量について所定量よりも多いと判断し、且つ、成否検知装置222cが糸端部YEの捕捉に成功したことを検知した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを引き続き第二主搬送路22へ送り出す(図中実線矢印参照。)。
【0117】
具体的には、第二切換装置223は、第二糸量検知装置221が満巻ボビンBf又は半玉ボビンBhであると判断し、且つ、成否検知装置222cが引き出し処理に成功したと判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを引き続き第二主搬送路22へ送り出す(図中実線矢印参照。)。
【0118】
一方、第二主搬送路22に設けられた第二切換装置223は、第二糸量検知装置221が糸Yの巻装量について所定量以下であると判断した場合ならびに成否検知装置222cが糸端部YEの捕捉に成功したことを検知できなかった場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを第二副搬送路24へ送り出す(図中破線矢印参照。)。
【0119】
具体的には、第二切換装置223は、第二糸量検知装置221が極少残糸ボビンBl又は空ボビンBeであると判断した場合ならびに成否検知装置222cが引き出し処理に成功しなかったと判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを第二副搬送路24へ送り出す(図中破線矢印参照。)。
【0120】
このような構成により、本実施形態に係るボビン搬送システム4は、第二主搬送路22のボビン準備装置222が引き出し処理に失敗した場合であっても、第二副搬送路24のボビン準備装置242によって引き出し処理を行なうことができ、糸Yの糸端部YEを所定の位置(ボビンBの内側)に配置できる可能性、即ち、引き出し処理が成功する可能性を高めることが可能となる。
【0121】
これにより、引き出し処理に失敗したボビンBが繰り返し第二主搬送路22のボビン準備装置222へ搬送されることを低減できる。また、極少残糸ボビンBlや空ボビンBe、そして、引き出し処理に失敗したボビンBが自動ワインダ3へ搬送されることを防止できる。
【0122】
図13Aは、第二副搬送路24の第四切換装置243によってトレイTの搬送経路が変更される図である。
【0123】
図13Aに示すように、第二副搬送路24に設けられた第四切換装置243は、第三糸量検知装置241が糸Yの巻装量について所定量よりも多いと判断し、且つ、成否検知装置242cが糸端部YEの捕捉に成功したことを検知した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを第三副搬送路25へ送り出す(図中実線矢印参照。)。
【0124】
具体的には、第四切換装置243は、第三糸量検知装置241が満巻ボビンBf又は半玉ボビンBhであると判断し、且つ、成否検知装置242cが引き出し処理に成功したと判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを第三副搬送路25へ送り出す(図中実線矢印参照。)。
【0125】
一方、第二副搬送路24に設けられた第四切換装置243は、第三糸量検知装置241が糸Yの巻装量について所定量以下であると判断した場合ならびに成否検知装置242cが糸端部YEの捕捉に成功したことを検知できなかった場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを引き続き第二副搬送路24へ送り出す(図中破線矢印参照。)。
【0126】
具体的には、第四切換装置243は、第三糸量検知装置241が極少残糸ボビンBl又は空ボビンBeであると判断した場合ならびに成否検知装置242cが引き出し処理に成功しなかったと判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを引き続き第二副搬送路24へ送り出す(図中破線矢印参照。)。
【0127】
このような構成により、本発明に係るボビン搬送システム4は、極少残糸ボビンBlや空ボビンBe、そして、引き出し処理に失敗したボビンBが自動ワインダ3へ搬送されることを防止できる。
【0128】
図13Bは、第一主搬送路21の第一切換装置212によってトレイTの搬送経路が変更される図である。
【0129】
図13Bに示すように、第一主搬送路21に設けられた第一切換装置212は、ボビン検知装置211cがトレイTにボビンBが装着されていると判断し、且つ、残糸検知装置211がボビンBに糸Yが巻装されていないと判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを引き続き第一主搬送路21へ送り出す(図中実線矢印参照。)。
【0130】
具体的には、第一切換装置212は、トレイTにボビンBが装着されており、該ボビンBが空ボビンBeであると判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを引き続き第一主搬送路21へ送り出す(図中実線矢印参照。)。
【0131】
一方、第一主搬送路21に設けられた第一切換装置212は、ボビン検知装置211cがトレイTにボビンBが装着されていないと判断した場合に、該トレイTを第一副搬送路23へ送り出す(図中破線矢印参照。)。これにより、ボビンBが装着されていないトレイTが精紡機1へ搬送されることを防止できる。
【0132】
また、第一切換装置212は、ボビン検知装置211cがトレイTにボビンBが装着されていると判断し、且つ、残糸検知装置211がボビンBに糸Yが巻装されていると判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを第一副搬送路23へ送り出す(図中破線矢印参照。)。
【0133】
具体的には、第一切換装置212は、トレイTにボビンBが装着されており、該ボビンBが少なくとも空ボビンBeでないと判断した場合に、該ボビンBが装着されたトレイTを第一副搬送路23へ送り出す(図中破線矢印参照。)。
【0134】
このような構成により、本発明に係るボビン搬送システム4は、糸Yが巻装されているボビンBが装着されたトレイTを第一副搬送路23へ送り出すため、簡素な構造でありながら第一主搬送路21にトレイTが滞留することを防止できる。これにより、ボビン搬送システム2におけるトレイTの搬送処理能力を向上させることが可能となる。また、糸Yが巻装された状態で残っているボビンBが精紡機1へ搬送されることを防止できる。
【0135】
以降に第一副搬送路23へ搬送されたトレイTについて説明する。
【0136】
第一副搬送路23に配置された第一糸量検知装置231は、ボビンBに巻装されている糸Yの巻装量を検知する。つまり、第一糸量検知装置231は、ボビンBが満巻ボビンBf、半玉ボビンBh及び極少残糸ボビンBlのうちのいずれであるかを判断する。
【0137】
次に、第一副搬送路23に配置された残糸検知装置232は、第一糸量検知装置231がボビンBに所定量の糸Yが巻装されていない極少残糸ボビンBl若しくは空ボビンBeであると判断した場合にのみ該ボビンBに糸Yが巻装されているか否かの判断を行なう。つまり、糸Yが巻装されているボビンBを搬送する第一副搬送路23において、第一糸量検知装置231が極少残糸ボビンBl若しくは空ボビンBeであると判断した場合に、その確認を行なうのである。
【0138】
そして、第一副搬送路23に配置された残糸処理装置233は、第一糸量検知装置231が糸Yの巻装量が所定量以下である、即ち、極少残糸ボビンBlであると判断した場合にのみ該糸Yを廃棄処分とするために稼動される。
【0139】
このような構成により、本発明に係るボビン搬送システム4は、糸Yの巻装量が所定量よりも多い、即ち、満巻ボビンBf又は半玉ボビンBhである場合には、該糸Yを廃棄処分とせずに、このボビンBを第二主搬送路22に戻すことができる。また、糸Yの巻装量が所定量以下である、即ち、極少残糸ボビンBlである場合には、該糸Yを廃棄処分とすることで空ボビンBeとした後に、この空ボビンBeを第二主搬送路22に戻すことができる。これにより、満巻ボビンBf又は半玉ボビンBhを自動ワインダ3へ搬送することができ、廃棄処分とされる糸Yを減らすことが可能となる。
【0140】
このようにして、第二主搬送路22に戻された満巻ボビンBf又は半玉ボビンBhは、再びボビン準備装置222によって引き出し処理が行なわれ、引き出し処理が成功した場合には自動ワインダ3へ搬送される(図12B中実線矢印参照。)。なお、第二主搬送路22に戻された満巻ボビンBf又は半玉ボビンBhは、ボビン準備装置222による引き出し処理が失敗した場合には第二副搬送路24へ送り出される。
【0141】
そして、第二副搬送路24へ送り出された満巻ボビンBf又は半玉ボビンBhは、再びボビン準備装置242によって引き出し処理が行なわれ、引き出し処理が成功した場合には自動ワインダ3へ搬送される(図13A中実線矢印参照。)。なお、第二副搬送路24に送り出された満巻ボビンBf又は半玉ボビンBhは、ボビン準備装置242による引き出し処理が失敗した場合には第二副搬送路24や第一主搬送路21、第一副搬送路23を経て、再び第二主搬送路22へ戻される。
【0142】
また、残糸処理装置233によって糸Yが除去されて空ボビンBeとなったボビンBは、第二主搬送路22から第二副搬送路24、第一主搬送路21等を経て、残糸検知装置211によって再度、糸Yが巻装されているか否かが判断され、糸Yが巻装されていないことを確認した後に精紡機1へ搬送される。なお、ボビンBが装着されていないトレイTは、第二副搬送路24や第一主搬送路21、第一副搬送路23、そして、再び第二主搬送路22へと搬送されて周回することとなる。これにより、糸Yが巻装されているボビンBが装着されたトレイTならびにボビンBが装着されていないトレイTが精紡機1へ搬送されることを防止している。
【符号の説明】
【0143】
1 精紡機
2 ボビン搬送システム
3 自動ワインダ
20 バイパス搬送路
21 第一主搬送路
22 第二主搬送路
23 第一副搬送路
24 第二副搬送路
100 自動ワインディング設備
211 残糸検知装置
211c ボビン検知装置
212 第一切換装置
221 第二糸量検知装置
222 ボビン準備装置
222c 成否検知装置
223 第二切換装置
231 第一糸量検知装置
232 残糸検知装置
233 残糸処理装置
B ボビン
Bf 満巻ボビン
Bh 半玉ボビン
Bl 極少残糸ボビン
Be 空ボビン
T トレイ
Y 糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンが装着されたトレイを連続して自動ワインダから精紡機へ搬送する第一主搬送路と、
前記第一主搬送路に配置されてボビンに糸が巻装されているか否かを検知する残糸検知装置と、
前記第一主搬送路における前記残糸検知装置よりも下流側から分岐して該残糸検知装置よりも上流側にボビンが装着されたトレイを搬送するバイパス搬送路と、を備えたボビン搬送システムであって、
前記バイパス搬送路には、
ボビンに巻装された糸の巻装量を検知する第一糸量検知部と、ボビンに巻装された糸を廃棄処分とする残糸処理装置と、が配置される、ことを特徴とするボビン搬送システム。
【請求項2】
ボビンが装着されたトレイを連続して精紡機から自動ワインダへ搬送する第二主搬送路をさらに備え、
前記バイパス搬送路は、
前記第二主搬送路の一部と、
前記第一主搬送路における前記残糸検知装置よりも下流側から分岐して前記第二主搬送路へボビンが装着されたトレイを搬送する第一副搬送路と、
前記第二主搬送路における前記第一副搬送路との合流点よりも下流側から分岐して前記第一主搬送路における前記残糸検知装置よりも上流側へ搬送する第二副搬送路と、で構成され、
前記第一糸量検知部と前記残糸処理装置は前記第一副搬送路に設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のボビン搬送システム。
【請求項3】
前記残糸処理装置は、前記第一糸量検知部がボビンに巻装された糸の巻装量について所定量以下であると判断した場合に、該ボビンに巻装された糸を廃棄処分とする、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のボビン搬送システム。
【請求項4】
前記第一主搬送路は、前記第一副搬送路にトレイを送り出すか否かを切り換える第一切換装置を有し、
前記第一切換装置は、前記残糸検知装置がボビンに糸が巻装されていると判断した場合に、該ボビンが装着されたトレイを前記第一副搬送路へ送り出す、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のボビン搬送システム。
【請求項5】
前記第二主搬送路は、ボビンに巻装された糸の巻装量を検知する第二糸量検知部と、
ボビンに巻装された糸の糸端部を引き出し処理するボビン準備装置と、
前記ボビン準備装置による糸端部の引き出し処理が成功したか否かを検知する成否検知装置と、
前記第二副搬送路にトレイを送り出すか否かを切り換える第二切換装置と、を有し、
前記第二切換装置は、前記第二糸量検知部がボビンに巻装された糸の巻装量について所定量以下であると判断した場合ならびに前記成否検知装置が糸端部の引き出し処理が成功しなかったと判断した場合に、該ボビンが装着されたトレイを前記第二副搬送路へ送り出す、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のボビン搬送システム。
【請求項6】
前記第一主搬送路は、トレイにボビンが装着されているか否かを判断するボビン検知装置を具備し、
前記第一切換装置は、前記ボビン検知装置がトレイにボビンが装着されていないと判断した場合に、該トレイを前記第一副搬送路へ送り出す、ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のボビン搬送システム。
【請求項7】
前記残糸検知装置は、複数の検知部を有することによって複数のボビンに対して同時に糸が巻装されているか否かを検知する、ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のボビン搬送システム。
【請求項8】
前記検知部は残糸ブラシである、ことを特徴とする請求項7に記載のボビン搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−251815(P2011−251815A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127170(P2010−127170)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】