説明

ボランとテトラヒドロピランからなる組成物を用いる還元反応

【課題】ボランの還元反応においてボランを簡便に使用できるテトラヒドロピランを選択し、ボランの安定性の確保、悪臭の防止、反応性低下などの課題を解決する。
【解決手段】ボランとテトラヒドロピランからなる組成物を用いる有機化合物の還元反応方法、及び前記有機化合物の還元反応の後、水を加え、反応により生成した化合物をテトラヒドロピラン層へ抽出する還元反応生成物の製造方法。本発明による還元反応方法はカルボニル化合物、エステル化合物、カルボン酸化合物、アミド化合物、ニトリル化合物などの各種有機化合物に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は還元反応において、テトラヒドロピランとボランからなる組成物またはボランテトラヒドロピラン錯体(以下、両者を一括して、単に「テトラヒドロピランとボランからなる組成物」と言う。)を用いて反応を行う方法に関する。さらに詳しく言えば、テトラヒドロピランとボランからなる組成物を用いる、カルボニル化合物、エステル化合物、カルボン酸化合物、アミド化合物、ニトリル化合物などの各種有機化合物の還元反応方法、及びその還元反応方法による還元反応生成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボランによる還元反応は簡便な還元方法として重要な有機合成の手法となっている(Borane Reagent, Academic Press 1988 p165;非特許文献1)。還元反応を起こすのはボランであるが、ボランは二量体のジボランとして常温でガス状化合物なので、取り扱いが煩雑で、量を正確に計りにくい。そのため液体または固体で使用し易いボランテトラヒドロフラン錯体(Journal of the American Chemical Society, vol.97, p1637 (1970);非特許文献2)、ボランジメチルスルフィド錯体(Jouranl of Organic Chemistry, vol.39, p3052 (1974);非特許文献3)などがボランの試薬として通常用いられている。ボランテトラヒドロフランはボランに直接還元されてしまいホウ酸エステルになり、還元反応に有効なヒドリドが損失してしまう問題がある。ボランジメチル錯体は反応後遊離するジメチルスルフィドの悪臭の問題と還元反応後の酸化処理によりスルホキシドやスルホンが生成し、反応生成物と分離しにくい問題がある。一方、ボランとテトラヒドロピランの組成物は知られており(Journal of the American Chemical Society, vol81, p3534 (1959) ;非特許文献4)、11B−NMRの測定によりその存在が確認されているが(Inorganic Chemistry, vol.3, p1475 (1964);非特許文献5)、安定性や反応に関する知見はない。
【0003】
【非特許文献1】Borane Reagent, Academic Press 1988 p165
【非特許文献2】Journal of the American Chemical Society, vol.97, p1637 (1970)
【非特許文献3】Jouranl of Organic Chemistry, vol.39, p3052 (1974)
【非特許文献4】Journal of the American Chemical Society, vol.81, p3534 (1959)
【非特許文献5】Inorganic Chemistry, vol.3, p1475 (1964)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ボランの還元反応においてボランを簡便に使用できる化合物としてテトラヒドロピランを選択することにより、ボランの安定性の確保、悪臭の防止、反応性低下などの課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、還元反応にテトラヒドロピランとボランからなる組成物を用いることにより前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は下記の有機化合物の還元反応方法及び還元反応生成物の製造方法を提供する。
1.ボランとテトラヒドロピランからなる組成物を用いることを特徴とする有機化合物の還元反応方法。
2.テトラヒドロピランにジボランを溶解させて調製したボランとテトラヒドロピランからなる組成物を用いる前記1に記載の還元反応方法。
3.有機化合物が、カルボニル化合物、エステル化合物、カルボン酸化合物、アミド化合物、またはニトリル化合物である前記1または2に記載の還元反応方法。
4.ボランとテトラヒドロピランからなる組成物を用い、有機化合物を還元反応に付し、次いで水を加え、反応により生成した化合物をテトラヒドロピラン層へ抽出する還元反応生成物の製造方法。
5.有機化合物が、カルボニル化合物、エステル化合物、カルボン酸化合物、アミド化合物、またはニトリル化合物である前記4に記載の還元反応生成物の製造方法。
方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるカルボニル化合物、カルボン酸誘導体化合物等の有機化合物の還元方法において、テトラヒドロピラン−ボランの組成物を用いることにより、反応の当量性が保証され、かつ試薬の反応溶媒と抽出溶媒を同一とすることができるため、反応工程の簡素化、エネルギーコストの低減などが実現できる。また、溶媒として毒性の低いテトラヒドロピランを用いるので、生体への安全性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の具体的内容について詳細に説明する。
本反応方法の還元反応について説明する。
本発明に用いるボランについて説明する。ボランとしてはジボランガスを用いても良いし、化学的に発生させて使用しても良い。化学的に発生させる場合は、水素化ホウ素ナトリウムのような水素化ホウ素化合物とジメチル硫酸や三フッ化ホウ素テトラヒドロピラン錯体のような酸性化合物を反応させることにより行う。
【0009】
本還元反応方法に用いるテトラヒドロピランとボランからなる組成物について説明する。テトラヒドロピランとボランからなる組成物は通常ボランをテトラヒドロピランに溶解させて調製する。テトラヒドロピランとボランからなる組成物の簡便な調製方法として水素化ホウ素化合物と酸性化合物をテトラヒドロピラン中に溶解あるいは分散させる方法がある。例えば、水素化ホウ素ナトリウム1molとジメチル硫酸1molをテトラヒドロピラン中で混合するか、または水素化ホウ素ナトリウム3molと三フッ化ホウ素テトラヒドロピラン錯体1molをテトラヒドロピラン中で混合してテトラヒドロピランとボランからなる組成物を調製する。
【0010】
テトラヒドロピランとボランがテトラヒドロピラン中でどのような組成物を形成しているのかは明らかになってはいないが、ボランがテトラヒドロピラン中に溶解している以外にテトラヒドロピランとボランは錯体を形成しているものと推定される(下記反応式1)。
【化1】

【0011】
本還元反応法に用いる溶媒について説明する。溶媒としては、還元反応が進行する溶媒であれば特に制限はないが、1,2−ジメトキシメタン、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン、テトラヒロドピラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒が好適に用いられる。混合溶媒も使用することができるが、回収、再利用をする観点から、ボランとの組成物にも使用するテトラヒドロピラン単独で用いることが望ましい。テトラヒドロピランは通常特別の前処理をすることなく使用される。反応基質に対して2〜50倍質量、好適には5〜30倍質量用いられる。また、テトラヒドロピランは蒸留回収後、適宜脱水処理をして再使用することができ、これにより溶媒の使用量を低減することができる。
【0012】
本還元反応は、通常窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気下で行われる。
ボランの使用量について説明する。ボランは1分子内に3mol当量のヒドリドをもつので、還元される化合物により用いられるボランの当量数が変わる。アルデヒド、ケトン化合物などのカルボニル化合物を還元する場合では少なくとも1/3mol量必要である。エステル化合物を還元する場合では2/3mol当量、カルボン酸化合物を還元する場合では1mol当量、1級アミド化合物を還元する場合では4/3mol当量、2級アミド化合物を還元する場合では1mol当量、ニトリル化合物を還元する場合では2/3mol当量のボランが用いられる。
【0013】
反応温度はテトラヒドロピランの融点(−45℃)〜還流温度の間で行うことができる。0〜88℃の間が好適である。
【0014】
本発明は種々の有機化合物の還元反応に用いることができる。一般的に、ボランによる還元が可能であれば、いずれの有機化合物にも本発明が適用可能であるが、特に以下に挙げる有機化合物の還元反応に好適に用いることができる。
【0015】
[カルボニル化合物]
本発明で使用されるカルボニル化合物については特に制限はなく、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、3−フェニルプロピオンアルデヒド、プロピオンアルデヒド、バレロアルデヒド、シクロヘキサンサンカルボアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド化合物、ベンズアルデヒド、アニスアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、バニリン、2−ナフタレンアルデヒド、テレフタルアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、1,2−ナフタレンジカルボアルデヒドなどの芳香族アルデヒド化合物、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、イソホロン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキシルアセトン、アセチルアセトン、アセト酢酸メチルなどの脂肪族ケトン化合物、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノンデオキシベンゾイン、アセトナフトフェノン、ブチロナフトフェノン、インデン−1−オン、フルオレン−9−オンなどの芳香族ケトン化合物などを用いることができる。
【0016】
[エステル化合物]
本発明で使用されるエステル化合物については特に制限はなく、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクチル酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸メチル、フェニル酢酸、アセト酢酸エチル、シュウ酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸メジチル、マレイン酸ジメチル、グルタル酸ジエチルなどの脂肪族エステル化合物、安息香酸エチル、アニス酸メチル、2−ナフタレンカルボン酸メチル、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、トリメリット酸トリメチル、ピロメリット酸テトラメチルなどの芳香族エステル化合物などを用いることができる。
【0017】
[カルボン酸化合物]
本発明で使用されるカルボン酸化合物については特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン、ブタン酸、酪酸、ヘキサン酸、オクチル酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、アセト酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸などの脂肪族カルボン酸化合物、安息香酸、アニス酸、2−ナフタレンカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族カルボン酸化合物などを用いることができる。
【0018】
[アミド化合物]
本発明で使用されるアミド化合物については特に制限はなく、ギ酸アミド、酢酸アミド、N−メチル酢酸アミド、N,N’−ジメチル酢酸アミド、酪酸アミド、N−ブチル酪酸アミド、N,N’−ジエチル酪酸アミド、アセト酢酸アミド、オキザミドのどの脂肪族第1、2級アミド化合物、ベンズアミド、N−エチルベンズアミド、N,N’−ジエチルベンズアミド、テレフタラミドなどの芳香族アミド化合物などを用いることができる。
【0019】
[ニトリル化合物]
本発明で使用されるニトリル化合物については特に制限はなく、アセトニトリル、アクリロニトリル、プロピオニトリル、クロトノニトリル、バレロニトリル、マロノジニトリルなど脂肪族ニトリル化合物、ベンゾニトリル、トルニトリル、フタロニトリル、テレフタロニトリル、イソフタロニトリルなどの芳香族ニトリル化合物を用いることができる。
【0020】
本発明では、還元反応に使用した溶媒がテトラヒドロピランの場合、還元反応後に水を加えることにより、無機物を水層に、生成したアルコール化合物等の生成物をテトラヒドロピラン層に抽出分離することができる。すなわち、テトラヒドロピランが反応溶媒と抽出溶媒を兼ねるので、反応生成物は反応溶媒を濃縮したり、別途抽出溶媒を加えたりすることなしに直接抽出分離することができ、反応工程の簡素化及びエネルギーコストの低減が可能となる。
【0021】
上述の本発明の還元反応方法が適用できる反応例を以下に示す。
【化2】

(式中、R、R’及びR''は、それぞれ独立してアルキル基、アルケニル基、アリール基または水素原子を表す。)
【実施例】
【0022】
以下に本発明について代表的な例を示し具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
なお、実施例における各成分の分析はガスクロマトグラフ装置(GC)(アジレント製,6890N)を用い、分析カラムとしてJ&W製DB−1カラム(長さ30m、直径0.32mm、膜厚1μm)を用いた。また、難揮発物質の分析には高速液体クロマトブラフ装置(SHIMADZU製,LC−2010HT)を用い、分析カラムとして関東化学製RP−18(ODS)フェルドキャップ処理を用いた。
【0023】
実施例1:ボラン−テトラヒドロピラン組成物の調製
[ボランガスの発生]
容量500mlのナスフラスコに室温下、撹拌子、水素化ホウ素ナトリウム7.46g(200mmol)、ジグライム200mlを加え、ジメチル硫酸25.2g(200mmol)を内温が60℃以下になるように滴下する。水素化ホウ素ナトリウムとジメチル硫酸が反応し、ジボランガスが発生する。
【0024】
[ボラン−テトラヒドロピラン組成物の調製]
容量200mlのナスフラスコにガス導入管を付け、テトラヒドロピラン(以下、「THP」と記載する場合もある。)100mlを加え、塩氷バスで冷却した。この中にジボランガスを導入し、ボラン−テトラヒドロピラン組成物を調製した。ガスビュレットで活性水素を定量すると0.73mol/Lであった。この溶液を以下、BH3−THPのTHP溶液と略す。
【0025】
比較例1:ボラン−テトラヒドロフラン組成物の調製
実施例1と同様の方法でボラン−テトラヒドロフラン溶液を調製した。活性水素は0.95mol/Lであった。この溶液を以下、BH3−THFのTHF溶液と略す。
【0026】
実施例2、比較例2および比較例3:安定性試験
実施例1で調製したBH3−THPのTHP溶液(SDK BH3−THP)、比較例1で調製したBH3−THFのTHF溶液(SDK BH3−THF)、アルドリッチ製試薬のBH3−THFのTHF溶液(reagent BH3−THF)を30℃で保存した。経日後、各溶液を水で分解しGCで分析した(図1)。ボランとTHFが反応して生成するブタノールと残存するTHFとの面積百分率比、ボランとTHPが反応して生成するペンタノールと残存するTHPとの面積百分率比で安定性を評価した(下記反応式2)。
なお、実施例1で調製したBH3−THPのTHP溶液(SDK BH3−THP)の場合を実施例2、比較例1で調製したBH3−THFのTHF溶液(SDK BH3−THF)の場合を比較例2、アルドリッチ製試薬のBH3−THFのTHF溶液(reagent BH3−THF)の場合を比較例3とする。
【化3】

BH3−THFのTHF溶液からはTHFの分解物であるブタノールが検出され、BH3−THPのTHP溶液からはTHPの分解物であるペンタノールは検出されなかった。
【0027】
実施例3:カルボン酸化合物の還元
実施例1で調製したBH3−THPのTHP溶液30mlに表1に示すカルボン酸化合物(酢酸、3−フェニルプロピオン酸、安息香酸)(5mmol)を氷冷下加え、1時間後に室温に昇温し、さらに1時間反応させた。反応後、水10mlを加えて反応を停止させ、テトラヒドロピラン層と水層との分液操作を行い、前者に抽出された各アルコールの生成をGCで確認した。各アルコールの収率について、結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
比較例4:BH3−THFのTHF溶液によるカルボン酸の還元
比較例1で調製したBH3−THFのTHF溶液24mlに安息香酸0.61g(5mmol)を氷冷下加え、1時間後に室温に昇温し、さらに1時間反応させた。反応後、水10mlを加えて反応を停止させ、テトラヒドロフランを濃縮した。残渣に酢酸エチルと水を加えた後、分液操作を行い、酢酸エチルに抽出されたベンジルアルコールの生成をGCで確認した。アルコールの収率について、結果を表2に示す。
【0030】
実施例4:in-situによるBH3−THP組成物によるカルボン酸の還元
塩氷冷却下、THP10mlに水素化ホウ素ナトリウム0.34g(9mmol)を加え、三フッ化ホウ素テトラヒドロピラン錯体1.85g(12mmol)を内温が0℃以下になるように滴下した。滴下終了後安息香酸0.61g(5mmol)を氷冷下加え、1時間後に室温に昇温し、さらに1時間反応させた。反応後、水10mlを加えて反応を停止させ、テトラヒドロピラン層と水層との分液操作を行い、前者に抽出されたアルコールの生成をGCで確認した。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
実施例5:アルデヒドの還元
実施例1で調製したBH3−THPのTHP溶液10mlに3−フェニルプロピオンアルデヒド0.67g(5mmol)を氷冷下加え、1時間後に室温に昇温し、さらに1時間反応させた。反応後、水10mlを加えて反応を停止させ、テトラヒドロピラン層と水層との分液操作を行い、前者に抽出された3−フェニルプロパノールの生成をGCで確認した。収率96%であった。
【0033】
実施例6:ケトンの還元
実施例1で調製したBH3−THPのTHP溶液に10mlにアセトフェノン0.6g(5mmol)を氷冷下加え、1時間後に室温に昇温し、さらに3時間反応させた。反応後、水10mlを加えて反応を停止させ、テトラヒドロピラン層と水層との分液操作を行い、前者に抽出された1−フェニルエタノールの生成をGCで確認した。収率86%であった。
【0034】
実施例7:エステルの還元
実施例1で調製したBH3−THPのTHP溶液に20mlに安息香酸メチル0.68g(5mmol)を氷冷下加え、1時間後に室温に昇温し、さらに8時間反応させた。反応後、水10mlを加えて反応を停止させ、テトラヒドロピラン層と水層との分液操作を行い、前者に抽出されたベンジルアルコールの生成をGCで確認した。収率81%であった。
【0035】
実施例8:アミドの還元
実施例1で調製したBH3−THPのTHP溶液50mlにアミド(N,N’−ジエチルアセトアミド、N,N’−ジエチルベンズアミド)(5mmol)を氷冷下加え、1時間後に室温に昇温し、還流下10時間反応させた。反応後、水10mlを加えて反応を停止させ、テトラヒドロピラン層と水層との分液操作を行い、前者に抽出されたアミンの生成をGCで確認した。結果を表3に示す。
【0036】
【表3】

【0037】
実施例9:ニトリルの還元
実施例1で調製したBH3−THPのTHP溶液に20mlにベンゾニトリル0.51g(5mmol)を氷冷下加え、1時間後に室温に昇温し、さらに8時間反応させた。反応後、水10mlを加えて反応を停止させ、テトラヒドロピラン層と水層との分液操作を行い、前者に抽出されたベンジルアミンの生成をGCで確認した。

【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1で調製したボラン−テトラヒドロピラン組成物(SDK BH3−THP)、比較例1で調製したボラン−テトラヒドロフラン組成物(SDK BH3−THF)及び市販のBH3−THFのTHF溶液試薬(reagent BH3−THF)の安定性(経日による分解で生成するアルコール量)を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボランとテトラヒドロピランからなる組成物を用いることを特徴とする有機化合物の還元反応方法。
【請求項2】
テトラヒドロピランにジボランを溶解させて調製したボランとテトラヒドロピランからなる組成物を用いる請求項1に記載の還元反応方法。
【請求項3】
有機化合物が、カルボニル化合物、エステル化合物、カルボン酸化合物、アミド化合物、またはニトリル化合物である請求項1または2に記載の還元反応方法。
【請求項4】
ボランとテトラヒドロピランからなる組成物を用い、有機化合物を還元反応に付し、次いで水を加え、反応により生成した化合物をテトラヒドロピラン層へ抽出する還元反応生成物の製造方法。
【請求項5】
有機化合物が、カルボニル化合物、エステル化合物、カルボン酸化合物、アミド化合物、またはニトリル化合物である請求項4に記載の還元反応生成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−30913(P2010−30913A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192186(P2008−192186)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】