説明

ボリュームデータ中のオブジェクトオブインタレストをシグナルする3次元画像化装置および方法

本発明は医療用画像化システムに関し、該システムは、少なくとも1つのボリューム3次元データ(3DV)を取得するための手段(2)と、前記ボリュームデータ中の少なくとも1つのオブジェクトオブインタレストを検知する手段(3)と、前記ボリュームデータの2次元表示(2DR)を提供することができる表示手段(4)と、前記2次元表示にスーパーインポーズされた信号により、前記オブジェクトオブインタレストの場所をシグナルするためのシグナル手段(5)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボリューム3次元データを取得して、オブジェクトオブインタレストの2次元表示を形成するための医療用画像システムに関する。また、このようなシステムで実施される方法にも関する。さらに、このような方法を実施するコンピュータプログラムにも関する。
【0002】
本発明は特に医療分野に適用でき、特に超音波画像化および磁気共鳴画像化に適用できる。
【背景技術】
【0003】
過去数年間、3次元画像化は大きな進歩を遂げており、医療分野も例外ではない。その結果、医師は、ボリューム3次元データの2次元表示をスクリーン上で見て、例えばオブジェクトオブインタレスト(object of interest)を探して診断するようになってきた。このような3次元データは単純な2次元画像より多くの情報を有し、2次元画像ではほとんど識別できないオブジェクトオブインタレストを検知可能とする。一方、3次元データの操作は2次元データの操作より困難である。その理由は、画像とは異なり、すべてのデータが同時に2次元表示に利用可能ではないからである。医師は3次元データ中をナビゲートし、複数の異なる2次元表示を表示する。それ故、3次元データを徹底的にスキャンして診断するために必要な時間は長くなる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、特に医療分野において、ボリューム3次元データ内のオブジェクトオブインタレストを信頼性高く素早く視覚的に検知するソリューションを提案することである。
【0005】
この目的は医療用画像化システムであって、
−少なくとも1つのボリューム3次元データを取得するための取得手段と、
−前記ボリュームデータ中の少なくとも1つのオブジェクトオブインタレストを検知し、前記オブジェクトの特徴を提供するための手段と、
−前記ボリュームの2次元表示を提供するため、前記ボリュームデータを表示する手段と、
−前記2次元表示にスーパーインポーズされた信号を用いて、前記特徴から前記オブジェクトオブインタレストの場所をシグナルするシグナル手段と、を有することを特徴とするシステムにより達成される。
【0006】
本発明によるシステムは、オブジェクトオブインタレストの場所を有する2次元表示を表示していることを、ユーザに音または色によりシグナルを送る。このようなシグナルはユーザの注意をオブジェクトオブインタレストの場所に引きつける。ユーザはそのオブジェクトオブインタレストを別の角度で表示するために、ボリューム3次元データ中をしかるべく操作することができる。このシグナルは、医療分野において、オブジェクトオブインタレストが裸眼では検知困難であることが多く、医師によって検知されない可能性がある場合に特に有利である。医師は、1以上のオブジェクトオブインタレストがあるすべての場所に注意喚起され、3次元ボリュームをナビゲートするよりも2次元表示を観察することにエネルギーを集中することができる。本発明によるシステムは、それゆえ、医師がボリューム3次元データ中をナビゲートしている時に、ユーザをガイドする利点を有する。このようなシステムにより、ボリューム全体をくまなくナビゲートしなくてもよいという利点もある。
【0007】
本発明によるシステムの他の利点は、2次元表示だけでは取得することができずボリューム3次元データ全体からでなければ取得できないオブジェクトオブインタレストに関する特徴を、ボリューム3次元データの2次元表示に入れることができることである。これは、例えば、リージョンオブインタレスト(region of interest)が、形状が球形および管状のオブジェクトを有するような場合である。3次元ボリュームの2次元表示では、この場合、オブジェクトの断面は多かれ少なかれ円形になり、球形のオブジェクトと管状のオブジェクトを識別することが困難である。本発明による探知手段はオブジェクトオブインタレストの特徴、例えばその方向を提供することができる。このような特徴により、特定の方向を有する管状オブジェクトから特定の方向を有さない球形オブジェクトを識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面に示した実施形態を参照して本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0009】
図1は、医療分野における本発明による3次元画像化システムを示す機能図である。第1の実施形態において、胸部の微少石灰化を検知する超音波画像化システムを考える。このようなシステムは、人体の例えば胸部のリージョンオブインタレスト1のボリューム超音波データ3DVを取得する手段2と、その3次元データ3DV中のオブジェクトオブインタレストである例えば微少石灰化MCを検知する手段3と、3次元データ3DVの2次元表示2DRをするための表示手段4と、その2次元表示2DR中の微少石灰化MCをシグナルする手段5とを有する。
【0010】
取得手段2はプローブ7によりリージョンオブインタレスト1の方向に超音波信号8を放射し、遅延超音波信号9を受信する。この遅延信号はリージョンオブインタレスト1により反射されたものである。プローブ7は電気パルスを音波に変換し、リージョンオブインタレストにより反射された応答を受信することができるエレメントを有する。前記エレメントは2次元のプローブを形成するためにマトリックス状に配置してもよいし、1次元のプローブを形成するためにアレイ状に配列してもよい。プローブがエレメントのマトリックスの場合、3次元ボリューム超音波データは直接取得できる。1次元プローブ、すなわちエレメントのアレイの場合、本技術分野の当業者に知られた方法により、従来の超音波検査画像化によりプローブの所定位置について、プローブの平面内の環境の2次元断面を表す画像を取得できる。プローブを動かすことにより、同じ環境の複数の断面を取得することができる。これらの断面をすべて集めたものが3次元ボリュームデータとなる。
【0011】
取得したボリューム3DVによりリージョンオブインタレストにより形成された環境により反射された超音波エネルギーの地図を作成できる。リージョンオブインタレストにはエネルギーをより多く反射するところと、より少なく反射するところとがある。これらのゾーンはより多くまたは少なく音波を発生する。一部のオブジェクトオブインタレストは、例えば微少石灰化MCのように点音波源オブジェクトであり、非常に音波を反射しやすい。ボリューム3DV中でこれらの微少石灰化を発見しにくいのは、一般に「スペックル」と呼ばれる雑音によりマスクされてしまうからである。スペックルは微少石灰化をマスクして裸眼で発見しづらくしてしまう。
【0012】
本発明によるシステムはボリューム3DVの超音波データ中のオブジェクトオブインタレストを検知するための検知手段3を有する。本発明の一実施形態において、前記検知手段3はメジアンフィルター副手段を有する。このメジアンフィルター副手段は、微少石灰化等大きさが小さいオブジェクトオブインタレストを強調するためにボリュームデータ3DVに減算メジアンフィルターを適用する。図3は1次元の場合の減算メジアンフィルターの適用を示す図である。微少石灰化MCのプロファイルy(x)が示されている。微少石灰化MCにより狭いピークが形成され、その周りに雑音による弱いピークが形成されている。
【0013】
幅IのフィルターウィンドウFFにプロファイルの点y(x0)でメジアンフィルターを適用すると、
−プロファイル(y(x0-1/2),…,y(x0),…,y(x0+1/2-1))のI値をソーティングする。
−メジアン値ymを抽出する。
−フィルター値y’(x0)のメジアン値ymを取る。
−プロファイルの各点で演算を更新する。
【0014】
フィルターをかけるとフィルターウィンドウFFがピークの幅と比較して十分に広いことを条件に、微少石灰化MCによるピークを消すことである。第2のステップにおいて、メジアンプロファイルy’がオリジナルのプロファイルyから差し引かれる。差し引くことにより、プロファイルの低周波数変化を無くす効果があり、微少石灰化のコントラストは保たれる。プロファイルy-y’は強調された微少石灰化MCRを表している。
【0015】
ボリューム3DV等のボリュームデータの場合、メジアンフィルター3Dを使用する。この場合、フィルターウィンドウFFは直方体であり、例えば立方体である。その大きさは探しているオブジェクトオブインタレストのテンプレートにより選択する。画像化システムの応答は理想的なものではないので、点音波源であるオブジェクトは必ずしも等方的でないスポットで表される。すなわち一部の方向における変形は他の方向における変形より大きい。フォーカスにおいてこの欠点を考慮に入れるため、立方体ではない直方体のフィルターウィンドウを考える必要がある。
【0016】
フィルターされたデータのボリュームが取得されるが、そのデータのテンプレートに対応する構造は強調されている。本発明による検知手段は強調された構造からコントラストが最も高い構造を抽出するための閾値副手段を有する。その閾値は超音波データに載っている雑音のパワーにより特に選択される。閾値と比較した後、保持した構造の場所を導き出すことは容易である。検知したオブジェクトオブインタレストの特徴CARとして、本発明による検知手段は、ボリューム3DRの基準フレーム(O,x,y,z)中のオブジェクトオブインタレストの位置(xoi,yoi,zoi)を提供する。
【0017】
本発明の第2の実施形態において、細長い形状、例えば管状のオブジェクトオブインタレストを探すとする。医療用画像化の分野においては、血管、乳管、靱帯などの場合である。胸の超音波計測の場合、細長い形状のオブジェクトオブインタレストを潜在的な微少石灰化と区別し、その方向を知るために、そのオブジェクトの位置を特定することができることは有利である。そのような非等方的構造を検知するために、本発明による検知手段3はボリュームデータ3DVを導き出す副手段を有する。前記導出副手段により使用される原理を、雑音が無い場合を図3に、プロファイルPrに雑音が有る場合を図4に示した。最初にガウシアン畳み込みカーネルg0をプロファイルPrに適用し、雑音をフィルターする。当業者には知られている方法によると、前記導出手段はプロファイルPrにコントラストのピークを有するオブジェクトオブインタレストを明らかにするため、2階微分の計算を含む。その理由は、1階微分は探している頂点の場所でキャンセルされてしまうので、前記頂点の場所での絶対値が最大となる2階微分が好ましい。この2階微分は平方され、ガウシアンカーネルg1によりポストフィルターされる。ピークPと方形波CRの例が図3と4に示されている。2階微分はピークPを強調し、それほどではないにしても方形波Crのエッジを検知し、一方雑音のパワーを大幅に低減する。
【0018】
3次元では、検知手段3は基準フレーム(O,x,y,z)の3軸x,y,zに沿った2階微分をすべて計算する必要がある。すべての2階微分をすべて計算することにより、ボリューム3DVのすべての点に関連したHessian行列を導出することが可能となる。
【0019】
【数1】

構造テンソル
【0020】
【数2】

を次に計算する。テンソルTのトレースを閾値化することにより、探している管状構造に対応するコントラストが最も高い構造を保持することができる。閾値はテンソルのトレースと干渉する雑音の統計に従って選択する。
【0021】
テンソルTは正定値行列であり、3つの正の実数の固有値λ1、λ2、λ3を有し、λ123である。この固有値は3つの固有ベクトル
【0022】
【数3】

に対応しており、オブジェクトオブインタレストと位置合わせされた固有基底を形成する。管状構造の例を図5aに示した。最小の固有値λ1の固有ベクトル
【0023】
【数4】

は、オブジェクトオブインタレストが管状オブジェクトである場合のその方向を示す。前記微分副手段により、固有値間の比率からオブジェクトオブインタレストが等方的か非等方的かどうかを評価することができる。
−λ1≒λ2≒λ3かつλ1が大きいとき、オブジェクトオブインタレストは対称的であり、特別な方向はない。これはブロブとして知られている。
−λ31が大きいとき、オブジェクトオブインタレストには特別な方向がある。
−λ1≒λ2かつλ3が大きいとき、オブジェクトオブインタレストは平面である。
【0024】
オブジェクトオブインタレストはその位置(xoi,yoi,zoi)だけではなく、その方向によっても特徴づけられる。この方向は例えば固有ベクトル
【0025】
【数5】

により与えられる。固有ベクトル
【0026】
【数6】

とボリューム3DVの断面に垂直なベクトルがなす角αの大きさを計算することも可能である。
【0027】
本発明による画像化システムの表示手段4は、ボリューム3次元データの2次元表示2DRを形成する。本発明の好ましい実施形態において、2次元表示2DRは3つの直交する断面すなわちビューVW1、VW2、VW3を有する。これらの3つのビューは表示軸z’に沿って次のように定義される。
−ビューVW1は軸z’に直交し、z0’でボリュームを切る、
−ビューVW2とVW3は互いに直交し、ビューVW1にも直交し、軸z’を横切る。
【0028】
図5bは表示軸z’と3つの直交するビューVW1、VW2、およびVW3を表している。2次元表示2DRの例が図6に示してある。留意すべきことは、表示軸z’は基準フレーム(O,x,y,z)の軸zに必ずしも平行ではないということである。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明による画像化システムは前記ボリューム3DV中の前記表示軸の位置および前記軸z’に沿った前記第1のビューVW1の位置をチェックするチェック手段6を有している。他の2つのビューVW2とVW3の位置は必要に応じて修正される。ユーザは表示軸z’の位置とその軸上のビューVW1の位置を選択することによりボリューム中をナビゲーションすることができる。ビューVW1の座標z’を変更すると、「シネループ」と呼ばれるシーケンスとなる。
【0030】
本発明による画像化システムのシグナル手段5は、表示2DRにスーパーインポーズした信号SIGにより、前記オブジェクトオブインタレストの場所を前記2次元表示中にシグナリングする。これはボリューム3DV中にオブジェクトオブインタレストがあることをユーザに注意喚起する場合であり、より詳細には、オブジェクトオブインタレストが表示プロセス中の表示2DR上に見えることをユーザに示している。このため、シグナル手段は検知手段3により供給された特徴CARを用いる。
【0031】
等方的オブジェクトオブインタレストの場合、例えば微少石灰化の場合、前記検知手段により提供された特徴CARは基準フレーム(O,x,y,z)中の座標により示された場所であってもよい。シグナル手段5は、前記場所が表示2DRに含まれた3つのビューVW1、VW2、またはVW3の1つを含まれるとき、表示2DR上に信号SIGをスーパーインポーズする。この信号SIGは、図7に示したように、例えば微少石灰化MCの場所を中心とした円などの色のついた図形として問題となるビュー上に示されている。同様に音を鳴らすこともできる。すなわち、チェック手段を用いて表示2DRを設定した時、ビューの1つがオブジェクトオブインタレストを横切るとき、ピッという電子音が発せられる。
【0032】
留意すべき点は、フラッシュ等、他のどんな信号SIGを用いてユーザに注意喚起してもよいということである。
【0033】
方向を有する非等方的オブジェクトの場合、例えば血管などの場合、ボリューム3DRの断面2DR上にスーパーインポーズされるシグナルSIGは、管状構造STの場合に図8に示したように、そのベクトルの方向を表す矢印や、角度αの大きさを示す色であってもよい。
【0034】
本発明の第3の実施形態において、図9に示した磁気共鳴画像化システムを考える。磁気共鳴画像化は様々な磁場を用いる。当業者に知られた原理により、この励起に対する周囲の応答はシステムにより記録され、リージョンオブインタレストの断面のシーケンスが取得され、ボリューム3次元データを形成する。
【0035】
このようなシステムにより柔らかい組織を表示することができる。胸部の画像化および乳腺病変の検知に特に使用されている。この目的のため、取得手段12はn個のボリュームデータ3DV’(t)の動的取得に影響を与えることができる。ここでt=t0,t1,…,tn-1であり、nは離散時間である。
【0036】
動的取得はリージョンオブインタレスト内における造影剤(一般的にはガドリニウム)の拡散を追跡するためである。この造影剤は時間t0で注射され、例えば乳腺病変等のリージョンオブインタレストの血流ゾーンにおいてコントラストフラッシュを生成する特性を有する。病変が「コントラストを受け入れる(adopts the contrast)」という。しかし、良性の病変と悪性のもので病変が受け入れるコントラストは異なる。言い換えると、造影剤が病変に侵入してから出るまでの速度は見ている病変のタイプによって同じではない。それゆえ、連続した時刻t0,t1,t2,…,tn-1で造影剤の伝播を見て、その時間の経過による動きを評価することが有利である。時刻t0とt1の間にコントラストの受け入れを見る。造影剤は徐々にリージョンオブインタレストに侵入し、すべての病変を強調する。図10はリージョンオブインタレスト中のコントラストCtの変化の曲線の例を示す図である。時刻t1とt2の間に、3つの主要なシナリオの可能性がある。
− 曲線20で示したように、病変の位置にある造影剤の量が増加し続ける。これはウォシュイン(wash-in、Win)という現象で、この場合良性の病変であることが多い。
− 曲線21で示したように、造影剤の量が停滞する。
− 曲線22で示したように、造影剤の量が減少する。ウォッシュアウト(wash-out、Wout)という現象であり、この場合、病変は悪性である。
【0037】
本発明によるシステムの表示手段13により、このボリュームを通した断面の形式で異なる時刻tにおいて取得された1以上のボリュームデータ3DV(t)を表示することができる。チェック手段14により、オブジェクトオブインタレストを特定した断面VW1’(t)を選択し、この断面上にコントラストの変化を表示することができる。
【0038】
検知手段15の目的は、ウォシュイン(wash-in)とウォッシュアウト(wash-out)の現象を明らかにすることである。前記手段は局所平均計算手段を有する。前記断面のすべての点において選択した2次元断面VW1’(t)の空間平均をとるか、前記ボリュームのすべての点においてボリューム3DV(t)の空間平均を取るかいずれかである。前記手段は前記断面または前記ボリューム上のすべての点において、連続する2つの時刻tiとti+1の間のコントラストの傾きを計算する副手段を有する。
【0039】
平均を計算する副手段は局所平均を評価する。ボリューム3DV’(t)上の点を考えて、この点における局所平均は、処理される点の値に十分近い、その点を中心とした近傍Vに入るボリュームの点の値すべてを、近傍Vにわたって合計することによりえられる。このためには、値が均質性基準を満たす関係副近傍SVを近傍V中で抽出して、その副近傍SVに含まれる値を平均する必要がある。近傍中に均質なゾーンを抽出するためのアプローチには多くの種類がある。これらのアプローチは本技術分野の当業者に知られてセグメンテーション方法を用いる。傾きを計算する副手段は、上記の局所平均の値の2つの連続した時刻間の減算をし、コントラスト傾斜の大きさ、すなわち、時刻t1とt2の間のエリアオブインタレスト(area of interest)中の造影剤の伝播速度の評価を提供する。時刻t1とt2の間の傾斜が正の場合はウォッシュイン現象を示し、傾斜が負の場合はウォッシュアウト現象を示している。
【0040】
医師は一般にシーケンスVW1’(t)またはそのシーケンスの特定のビューと、コントラスト傾斜を表す曲線とを並行して表示する。本発明によるシステムのシグナル手段16により、観察している断面のどの点においてもコントラストの受け入れまたは喪失を直接表示することができる。その表示は、2つの連続した時刻間の伝播速度に対応したコードの色をスーパーインポーズするか、別々に表示することによりなされる。これにより、ウォッシュインおよびウォッシュアウトのインデックスを観測されたボリューム3DVの断面にスーパーインポーズされたシグナルに変換することが可能となる。例えば、ウォッシュインの場合には赤色、ウォッシュアウトの場合には青色を付けることが可能である。本発明によるシグナル手段16の利点の1つは、ボリュームデータ3DV’(t0)の解剖学的取得の2次元表示に時間情報を加えることができることである。利用可能な情報はすべて、ボリューム中のすべての点で計算され、診断を容易にするため、ボリューム3DVの所定断面のページにグループ分けすることができる。
【0041】
第4の実施形態において、本発明によるシステムは、ボリューム3次元データを格納する手段を有し、その手段は表示2DRの集まりの形式で前記ボリュームを格納することができる。
【0042】
第1と第2の実施形態として説明した超音波画像化システムの場合に、本発明によるシステムにより、オブジェクトオブインタレストを明らかにする1以上の表示2DRを実際に定義することができる。これらの表示2DRはチェック手段6とシグナル手段5を用いて医師により定義される。これらの表示は医師が診断を下すために真に有用なボリューム3DVのデータをグループ分けし、前記表示はボリューム3DVの代わりにまたはそれに加えて有利に格納することができると考えることができる。
【0043】
本発明の第3の実施形態で説明した磁気共鳴画像化システムの場合、シーケンスVW1’(t)またはこのシーケンス中の特定の画像が、ウォッシュインとウォッシュアウトのインデックスと結びついて、医師が診断を下すために有用なすべてのデータをグループ分けし、n個のボリュームデータ3DV’(t)を有利に補足し、または代替すらできると考えられる。
【0044】
本発明によるシステムの利点の1つは、取得したボリュームデータ3DVまたは3DV’(t)の保存を記憶装置中に確保することである。
【0045】
前記記憶手段の主な利点は、データに対する新規のアクセスが容易になることである。その理由は、医師が3次元画像化システムにより取得したデータを有する医療ファイルを見たいとき、ボリューム3DVをナビゲートして時間を無駄にする必要はないからである。格納された表示2DRにすべての有用なデータが集まっている。
【0046】
本発明は以上、例として説明した実施形態に限定されない。これらの実施形態に修正や改良を施すこともできるが、その修正や改良も本発明の範囲内にある。特に、他の画像化モード、例えばX線画像化を使用することができる。
【0047】
請求項において、動詞「有する」を使用したのは、他のエレメント、手段、ステップが排除されていないことを示すためである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による超音波画像化システムを示す機能図である。
【図2】1次元プロファイルの場合に、本発明によるシステムの検知手段により使用される減算メジアンフィルターの効果を示すグラフである。
【図3】雑音のない1次元プロファイルの場合に、本発明による微分副手段に用いる原理を示すグラフである。
【図4】雑音のある場合に、本発明による微分副手段に用いる原理を示すグラフである。
【図5a】管状のオブジェクトオブインタレストと、そのオブジェクトの主軸を与える構造テンソルのベクトルの方向とを示す図である。
【図5b】本発明による表示軸と、ボリューム3次元データの2次元表示を構成する3つの直交ビューを示す図である。
【図6】本発明によるボリューム3次元データの2次元表示を示す図である。
【図7】本発明によるボリューム3次元データの2次元表示に示された微少石灰化を表す図である。
【図8】本発明によるボリューム3次元データの2次元表示中に示された管状構造を示す図である。
【図9】本発明による磁気共鳴画像化システムを示す機能図である。
【図10】時間によるリージョンオブインタレストの区切られたゾーン中の3つの対称的な変化を示す曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用画像化システムであって、
少なくとも1つのボリューム3次元データを取得するための取得手段と、
前記ボリュームデータ中の少なくとも1つのオブジェクトオブインタレストを検知し、前記オブジェクトの特徴を提供するための手段と、
前記ボリュームの2次元表示を提供するため、前記ボリュームデータを表示する手段と、
前記2次元表示にスーパーインポーズされた信号を用いて、前記特徴から前記オブジェクトオブインタレストの場所をシグナルするシグナル手段と、を有することを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記2次元表示は、表示軸に直交する前記ボリュームデータにわたる第2の断面と、前記軸を有し前記第1の断面に直交する第2の断面と、前記軸を有し前記第1と第2の断面に直交する第3の断面を有し、
前記オブジェクトオブインタレストの場所は前記オブジェクトオブインタレストの前記第1、第2、および第3の断面の交点のゾーンであることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、前記ボリューム中の前記表示軸の位置と、前記軸に沿った前記第1の断面の位置とをチェックするチェック手段を有することを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項2に記載のシステムであって、前記シグナル手段は前記2次元表示に前記オブジェクトオブインタレストがあることを知らせるために音を発することを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項2に記載のシステムであって、前記シグナル手段は色によって前記交点ゾーンをマーク可能であることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、前記システムは超音波画像化システムであることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、前記オブジェクトオブインタレストは方向を有する管状オブジェクトであり、前記検知手段は前記方向を測定可能であり、前記シグナル手段は前記2次元表示上で前記オブジェクトオブインタレストの場所およびその方向をシグナルすることができることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記システムは前記リージョンにおいて造影剤(contrast product)の伝播を追跡するための磁気共鳴画像化システムであり、前記検知手段は前記オブジェクトオブインタレストを通過する前記造影剤の伝播速度を計算可能であり、前記シグナル手段は前記伝播速度を含む信号を前記2次元表示にスーパーインポーズすることにより、前記2次元表示上に前記オブジェクトの場所をシグナルすることができることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、前記システムは2次元表示の集まりの形式で前記ボリュームを格納することができる、前記ボリューム3次元データを格納する手段も有し、前記2次元表示は前記信号を有することを特徴とするシステム。
【請求項10】
少なくとも1つのオブジェクトオブインタレストを表示する方法であって、
少なくとも1つのボリューム3次元データを取得するステップと、
前記オブジェクトの特徴を与えるため、前記ボリュームデータ中の前記オブジェクトオブインタレストを検知するステップと、
前記ボリュームの2次元表示をするため前記ボリュームデータを表示するステップと、
前記特徴を用いて前記2次元表示中に前記オブジェクトオブインタレストの場所をシグナルするステップと、を有することを特徴とする方法。
【請求項11】
コンピュータで実行されたとき、前記コンピュータに請求項10に記載の方法を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2006−520233(P2006−520233A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506301(P2006−506301)
【出願日】平成16年3月1日(2004.3.1)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000634
【国際公開番号】WO2004/081864
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】