説明

ボールジョイント、そのベアリングシート、及び、ボールジョイントの製造方法

【課題】溝部への異物の混入を防止したボールシートを提供する。
【解決手段】ボールシート本体41の両端部に、ボール部を回動可能に保持する保持面44と連通する第1開口45と第2開口46とを設ける。グリースを保持可能な溝部42を、ボールシート本体41の両端部の各開口45,46に連通させないように、ボールシート本体41の保持面44に軸方向に沿って形成する。ボールシート14をソケットに取り付けた後に各開口45,46を介して溝部42に異物が混入することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールスタッドのボール部を回動可能に保持するベアリングシート、これを備えたボールジョイント、及び、ボールジョイントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両用の懸架装置などに用いられるボールジョイントは、金属製などの略円筒状のハウジングであるソケットと、このソケットに挿通された鋼鉄製などのボールスタッドと、このボールスタッドのボール部を回動可能に保持してソケット内に取り付けられる合成樹脂製などの可撓性を有するベアリングシートであるボールシートとを備えている。
【0003】
ソケットは、開口部が両端部に設けられ、ボールスタッドの軸部であるスタッド部が挿通されている。また、ソケットの開口部には、これら開口部を覆ってダストカバーが取り付けられている。
【0004】
また、ボールシートは、ソケットの開口部のそれぞれに連通する開口が両端部に形成された略円筒状のベアリングシート本体であるボールシート本体を有し、このボールシート本体内に設けられたボール部の保持面に、このボール部との間で潤滑剤すなわちグリースを保持するための複数の溝部が設けられている。
【0005】
これら溝部は、開口のいずれか一方に連通するとともに、他方に向けてボールシート本体の軸方向に沿って形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−326739号公報(第3−4頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のようなボールジョイントでは、ソケットにボールシートとボールスタッドとを組み付けた状態で、ソケットやボールスタッドのスタッド部などを、切削加工したり、ショットクリーニングしたり、洗浄したりすることがある。
【0007】
しかしながら、上述のベアリングシートでは、ボールシートの溝部が、ボールシート本体の開口を介してソケットの開口部に連通していることにより、上述のような切削加工などの際に発生した異物が、これら開口部及び開口を介してボールシートの溝部に混入するおそれがあるという問題点を有している。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、溝部への異物の混入を防止したベアリングシート、これを備えたボールジョイント、及び、ボールジョイントの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のベアリングシートは、筒状に形成され、両端部に形成された開口と、これら開口に連通しボールスタッドのボール部を回動可能に保持する保持面とを備えたベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の前記保持面に前記ベアリングシート本体の軸方向に沿って形成され、潤滑剤を保持可能であるとともに、前記開口に連通しない溝部とを具備したものである。
【0010】
請求項2記載のボールジョイントは、内室及びこの内室に連通する開口部を有するハウジングと、このハウジングの前記内室に、開口が前記開口部に連通するようにベアリングシート本体が取り付けられた請求項1記載のベアリングシートと、このベアリングシートの保持面に回動可能に保持されたボール部を備えたボールスタッドとを具備したものである。
【0011】
請求項3記載のボールジョイントの製造方法は、内室及びこの内室に連通する開口部を有するハウジングと、このハウジングの内室に取り付けられたベアリングシートと、このベアリングシートに回動可能に保持されたボール部を備えたボールスタッドとを具備し、前記ベアリングシートが、筒状に形成され、両端部に形成され前記開口部に連通する開口と、これら開口に連通し前記ボール部を回動可能に保持する保持面とを備えたベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の前記保持面に前記ベアリングシート本体の軸方向に沿って形成された溝部とを備えているボールジョイントの製造方法であって、前記開口に連通しない溝部を前記ベアリングシート本体の保持面に形成し、このベアリングシート本体を有するベアリングシートを前記ボール部に取り付けてこのボール部を前記保持面に保持するものである。
【0012】
請求項4記載のボールジョイントの製造方法は、内室及びこの内室に連通する開口部を有するハウジングと、このハウジングの内室に取り付けられたベアリングシートと、このベアリングシートに回動可能に保持されたボール部を備えたボールスタッドとを具備し、前記ベアリングシートが、筒状に形成され、両端部に形成され前記開口部に連通する開口と、これら開口に連通し前記ボール部を回動可能に保持する保持面とを備えたベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の前記保持面に前記ベアリングシート本体の軸方向に沿って形成された溝部とを備えているボールジョイントの製造方法であって、前記開口に連通する溝部を前記ベアリングシート本体の保持面に形成し、このベアリングシート本体を有するベアリングシートを前記ボール部に取り付けてこのボール部を前記保持面に保持し、この保持以降に前記溝部の両端部を前記開口に対して閉塞するものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のベアリングシートによれば、潤滑剤を保持可能な溝部を、ベアリングシート本体の両端部の開口に連通させないように、ベアリングシート本体の保持面に軸方向に沿って形成することにより、開口を介して溝部に異物が混入することを防止できる。
【0014】
請求項2記載のボールジョイントによれば、請求項1記載のベアリングシートを備えることで、このベアリングシートをハウジングの内室に取り付けた後に、潤滑剤を保持可能な溝部を、ベアリングシート本体の両端部の開口に連通させないように、ベアリングシート本体の保持面に軸方向に沿って形成することにより、ベアリングシートの取り付け後に開口及びハウジングの開口部を介して溝部に異物が混入することを防止できる。
【0015】
請求項3記載のボールジョイントの製造方法によれば、開口に連通しない溝部を保持面に形成したベアリングシート本体を有するベアリングシートをボール部に取り付けてこのボール部を保持面に保持することにより、ベアリングシートの取り付け後に開口を介して溝部に異物が混入することを防止できる。
【0016】
請求項4記載のボールジョイントの製造方法によれば、開口に連通する溝部を保持面に形成したベアリングシート本体を有するベアリングシートをボール部に取り付けてこのボール部を保持面に保持し、この保持以降に溝部の両端部を開口に対して閉塞することにより、ベアリングシートの取り付け後に開口を介して溝部に異物が混入することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施の形態のベアリングシートの構成を図1及び図2を参照して説明する。
【0018】
図2において、11はボールジョイントを示し、このボールジョイント11は、例えば、自動車の懸架装置、あるいは操舵装置などに用いられるものである。そして、このボールジョイント11は、ハウジングである略円筒状のソケット12を備え、このソケット12には、ボールスタッド13を回動可能に保持した略円筒状のベアリングシートとしてのボールシート14が取り付けられている。
【0019】
なお、以下、便宜的に図1及び図2に示す上下方向を上下方向として説明する。
【0020】
ソケット12は、例えばアルミニウムなどの部材を鋳造、あるいは鍛造して成形後、切削成形されて、ボールシート14が嵌着される内室であるシート嵌着部21と、このシート嵌着部21の上下両端部に連通する開口部22,23とを備え、下側に位置する開口部23に、この開口部23を閉塞してボールスタッド13及びボールシート14を抜け止めする抜止部材であるプラグ24が圧入されている。さらに、ソケット12の外周部には、開口部22を閉塞するダストカバー25を取り付ける取付段部26が段差状に形成されている。
【0021】
開口部22は、上方向に向けて、すなわちシート嵌着部21側からソケット12の外方に向けて、拡径状に形成されている。同様に、開口部23は、下方向に向けて、すなわちシート嵌着部21側からソケット12の外方に向けて、拡径状に形成されている。
【0022】
プラグ24は、キャップとも呼ばれ、例えば金属により円板状に形成され、外周縁部が、開口部23の内周縁部に形成された段部27に保持されている。また、このプラグ24の中央部には、下側に突出する球面状の突出部28が形成されている。
【0023】
ダストカバー25は、ブーツとも呼ばれ、ソケット12のシート嵌着部21内への塵埃などの侵入を防止するものである。そして、このダストカバー25は、弾性変形可能な、たとえばゴム、あるいは、軟質の合成樹脂などにて略円筒状に形成され、上端側がボールスタッド13側に取り付けられ、下端側が取付段部26に取り付けられている。
【0024】
ボールスタッド13は、例えば鋼鉄製であり、ボールシート14に摺動可能に保持される球状のボール部31と、このボール部31の軸方向に直線状に突設された略円柱軸状のスタッド部32とを一体的に有している。
【0025】
ボール部31は、下端側がボールシート14から突出し、ソケット12のシート嵌着部21及びプラグ24の突出部28に隙間34を介して対向している。そして、この隙間34が、ボール部31とソケット21との間に潤滑剤である図示しないグリースを保持可能な潤滑剤保持部(グリース溜まり部)としての機能を有している。
【0026】
スタッド部32は、開口部22に挿通されてソケット12から上方に突出している。また、スタッド部32には、径方向に突出した鍔部36が形成されている。この鍔部36の下側には、ダストカバー25の上端側が固定されている。
【0027】
ボールシート14は、剛性及び弾性を有する例えばポリアセタール、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、あるいはポリエーテルイミドなどの合成樹脂にて形成されており、略円筒状のベアリングシート本体としてのボールシート本体41と、このボールシート本体41に形成されグリースを保持可能な複数の溝部42とを有している。
【0028】
ボールシート本体41には、ボール部31を回動可能に保持する球面状の保持面44を内部に有するとともに、この保持面44に連続して、開口部22に連通する開口である第1開口45が上端に形成され、かつ、開口部23に連通する開口である第2開口46が下端に形成されている。そして、第1開口45からは、ボールスタッド13のボール部31の上端側がソケット12の開口部22内に突出している。また、第2開口46からは、ボールスタッド13のボール部31の下端側がソケット12の開口部22内に突出している。
【0029】
溝部42は、ボールシート本体41の周方向に互いに略等間隔に離間されて設けられ、軸方向に沿って直線状、かつ、長手状に形成されている。また、これら溝部42は、長手方向の両端部が予め閉じた状態で形成され、各開口45,46に連通していない。換言すれば、溝部42は、各開口45,46よりもボールシート本体41の軸方向の中心側に位置し、各溝部42の両端部と各開口45,46との間の保持面44に、各溝部42と各開口45,46とを離間する非連通部48,49がそれぞれ形成されている。したがって、これら溝部42は、保持面44でボールスタッド13のボール部31を保持してソケット12のシート嵌着部21に取り付けられた状態で隙間34と連通していない。さらに、これら溝部42は、ボールスタッド13のボール部31の中心位置Oに対して、上下方向に略対称な長さに形成されている。なお、各溝部42は、本実施の形態において、例えばボールシート14を成形する際に、その金型によって形成したり、ボールシート14の成形後に削り加工により形成したりするものとする。
【0030】
次に、上記第1の実施の形態の作用を説明する。
【0031】
ボールジョイント11を製造する際には、予め開口45,46に連通しない溝部46を形成したボールシート本体41の保持面44にボール部31を回動可能に保持するようにボールシート14を取り付け、このボール部31を保持したボールシート14を中子として、ソケット12を例えばダイキャスト成形する。
【0032】
次いで、ソケット12などに、切削加工や、バリ取りのためのショットクリーニングあるいは洗浄などを適宜施した後、ボールシート本体内41の第1開口45から開口部22に露出しているボール部31の上部にスタッド部32を溶接などにより一体的に接続してボールスタッド13を形成する。
【0033】
さらに、隙間34にグリースを塗布した状態からボールスタッド13を摺動させ、第2開口46とボール部31との隙間から溝部42へとグリースを封入し、プラグ24を開口部23にかしめてこの開口部23を閉塞する。
【0034】
そして、ソケット12とボールスタッド32との間にダストカバー25を嵌着してボールジョイント11を完成する。
【0035】
上述したように、上記第1の実施の形態によれば、グリースを保持可能な溝部42を、ボールシート本体41の両端部の各開口45,46に連通させないように、ボールシート本体41の保持面44に軸方向に沿って形成することにより、ボールシート14をソケット12のシート嵌着部21に取り付けた後に各開口45,46、特に開口部22に連通する第1開口45を介して溝部42に異物が混入することを防止できる。
【0036】
すなわち、上記のボールジョイント11の製造の際には、ボール部31を保持したボールシート14を中子としてソケット12を成形するので、このボールシート14及びボール部31(ボールスタッド13)を組み付けたソケット12に対して切削加工、バリ取り及び洗浄などを施す必要がある。このため、この加工などにより生じた微細な塵埃などがソケット12の開口部22及びボールシート本体41の第1開口45からボールシート14の内部に侵入するおそれがあり、この塵埃が潤滑性を向上するためのグリースに混入すると、グリースによる潤滑性の向上の機能が低下するおそれがある。したがって、上述のように、溝部42を各開口45,46に連通させないことで、溝部42に異物が混入することを確実に防止でき、グリースによる潤滑性を確保できる。
【0037】
また、このようなボールシート14を備えることにより、安定したトルクのボールジョイント11を提供することができるとともに、ボールジョイント11の信頼性を向上できる。
【0038】
しかも、溝部42は、ボールシート14を形成した際に予め各開口45,46と連通しないように形成されているので、ボールシート14を組み付ける工程などで溝部42を各開口45,46に対して閉塞するための工程が必要なく、組み付けの作業性が向上する。
【0039】
さらに、溝部42をボールシート本体41の周方向に略等間隔に離間して複数設けるとともに、溝部42をボール部31の中心位置Oに対して上下方向に略対称となるように形成することにより、ボール部31の外周面に対して略均等にグリースを行き渡らせることができ、ボール部31の回動方向に拘らず潤滑性をより向上できる。
【0040】
次に、第2の実施の形態を図3を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0041】
この第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態の溝部42に対して交差、例えば直交する方向に、連通溝部51が形成されているものである。
【0042】
この連通溝部51は、ボールシート本体41の保持面44に、周方向に沿って全周に亘って連続して形成されており、例えばボール部31の赤道位置に対応する位置である上下方向の中心線CLよりも下側の位置に設けられ、全ての溝部42と交差して、これら溝部42間を接続している。
【0043】
なお、ボール部31の赤道位置とは、ボールスタッド13の中心軸に直交する平面上でのボール部31の半径が最大となる位置をいう。
【0044】
そして、両端部が各開口45,46に連通しない溝部42を備えることで、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、これら溝部42を接続する連通溝部51を保持面44に設けることで、溝部42間の保持面44にグリースが行き渡りやすくなり、かつ、溝部42間でもグリースが行き来できるので、ボール部31の潤滑性をより向上できる。
【0045】
しかも、連通溝部51は、各開口45,46と連通していないため、この連通溝部51を介して溝部42に異物が混入することもない。
【0046】
次に、第3の実施の形態を図4を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0047】
この第3の実施の形態は、上記第2の実施の形態において、溝部42が、第1溝としての溝部42aと第2溝としての溝部42bとを備えているものである。
【0048】
溝部42aは、軸方向に沿って複数形成され、連通溝部51を含む保持面44の上側に位置し、上端部が第1開口45に連通しないように形成されている。すなわち、この溝部42aの下端部は、連通溝部51に連通し、第2開口46に連通していない。
【0049】
溝部42bは、軸方向に沿って複数形成され、連通溝部51を含む保持面44の下側に位置し、下端部が第2開口46に連通しないように形成されている。すなわち、この溝部42bの上端部は、連通溝部51に連通し、第1開口45に連通していない。
【0050】
さらに、溝部42a,42bは、ボールシート本体41の周方向に互い違いとなるように配置されている。したがって、ボールシート本体41の周方向について、溝部42a,42a間の略中間位置に溝部42bが位置し、溝部42b,42b間の略中間位置に溝部42aが位置している。
【0051】
そして、両端部が各開口45,46に連通しない溝部42a,42bを備えることで、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができ、連通溝部51を備えることで、上記第2の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。また、溝部42a,42bを周方向に互い違いとなるように形成することで、ボール部31の外周面の広い領域に亘ってグリースを容易に行き渡らせることができ、ボール部31の潤滑性をより向上できる。
【0052】
次に、第4の実施の形態を図5を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0053】
この第4の実施の形態は、上記第2の実施の形態において、溝部42が中心線CLよりも下側のみに形成されているものである。この溝部42は、軸方向に沿って複数形成され、連通溝部51を含む保持面44の下側に位置し、下端部が第2開口46に連通しないように形成され、上端部が、連通溝部51に連通し、第1開口45に連通していない。
【0054】
このように、両端部が各開口45,46に連通しない溝部42を備えることで、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができ、連通溝部51を備えることで、上記第2の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0055】
なお、上記第4の実施の形態において、溝部42を中心線CLよりも上側のみに形成するようにしてもよい。
【0056】
また、上記第2の実施の形態ないし第4の実施の形態において、連通溝部51は、保持面44にて溝部42に交差するように形成すれば、その位置及び形状などは任意に設定できる。
【0057】
次に、第5の実施の形態を図6を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0058】
この第5の実施の形態は、上記第4の実施の形態において、連通溝部51に代えて、溝部としてのディンプル(窪み)状の凹部55が複数設けられているものである。
【0059】
凹部55は、略円形状に形成され、ボールシート本体41の中心線CLよりも上側の保持面44に、互いに周方向に略等間隔に離間されて配置されている。したがって、これら凹部55は、各開口45,46に連通していない。また、これら凹部55は、溝部42に対して上方に離間されており、これら溝部42に連通していない。さらに、これら凹部55は、ボールシート本体41の周方向について、溝部42,42の間隔よりも狭い間隔、例えば半分の間隔で配置されている。したがって、凹部55は、溝部42よりも多く、本実施の形態では2倍の個数設けられている。
【0060】
このように、両端部が各開口45,46に連通しない溝部42a,42bを備えることで、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、ディンプル状の凹部55を設けることで、グリースを保持する部分を保持面44に密に配置することが可能となり、グリースが全体に行き渡りやすくなって、ボール部31の摺動性をより向上できる。
【0061】
なお、上記第5の実施の形態において、溝部42と凹部55との位置を上下方向に反転させてもよい。すなわち、溝部42を保持面44の上側の位置に配置し、各凹部55を保持面44の下側の位置に配置してもよい。
【0062】
また、上記各実施の形態において、溝部42は、少なくともボールジョイント11を完成した状態で各開口45,46に両端部が連通しないように形成されていればよい。すなわち、上記一実施の形態では、溝部42を予め各開口45,46に連通させないように形成しているが、例えば、各開口45,46に連通する溝部を予め保持面44に形成したボールシート本体41を有するボールシート14を、ボール部31に取り付けて保持面44でボール部31を保持する際、あるいはボール部31を保持したボールシート14を中子としてソケット12を成形するなど、ボール部31を保持したボールシート14をソケット12に組み付ける際などの熱を利用して、ボール部31の保持以降の工程において各開口45,46近傍を溶かして非連通部48,49を形成して、溝部42の両端部を各開口45,46に対して連通しないように閉じるようにしても、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、ボールシート14は、溝部42を予め各45,46に連通させた状態で成形できるから、ボールシート14の溝部42を予め各45,46に連通させない状態で成形する場合と比較して、ボールシート14の製造が容易になる。
【0063】
さらに、溝部42は、少なくとも1つ設ければ、その設ける個数は限定されないが、ボール部31の潤滑性を考慮すると、ボールシート本体41の周方向に略均等となるように設けることが好ましい。
【0064】
そして、ボールスタッド13は、スタッド部32を備えない構成、あるいは、ボール部31の両端にスタッド部32をそれぞれ備える構成などでもよい。このように、ボール部31の両端にスタッド部32をそれぞれ備える場合には、プラグ24をソケット12の開口部23に取り付けずに、この開口部23からも一方のスタッド部32を突出させるようにすることで、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
また、ボールシート14の保持面44には、各開口45,46に連通しない少なくとも1つの溝部42を設ければ、各開口45,46に連通しない他の任意の形状、配置及び個数の溝部や凹部を形成してもよい。
【0066】
さらに、ソケット12の形状、あるいはボールシート14の細部の形状などは、上記構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態のベアリングシートを示す縦断面図である。
【図2】同上ベアリングシートを備えたボールジョイントを示す縦断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態のベアリングシートを示す縦断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態のベアリングシートを示す縦断面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態のベアリングシートを示す縦断面図である。
【図6】本発明の第5の実施の形態のベアリングシートを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0068】
11 ボールジョイント
12 ハウジングであるソケット
13 ボールスタッド
14 ベアリングシートとしてのボールシート
21 内室としてのシート嵌着部
22 開口部
31 ボール部
41 ベアリングシート本体としてのボールシート本体
42 溝部
44 保持面
45 開口である第1開口
46 開口である第2開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成され、両端部に形成された開口と、これら開口に連通しボールスタッドのボール部を回動可能に保持する保持面とを備えたベアリングシート本体と、
このベアリングシート本体の前記保持面に前記ベアリングシート本体の軸方向に沿って形成され、潤滑剤を保持可能であるとともに、前記開口に連通しない溝部と
を具備したことを特徴とするベアリングシート。
【請求項2】
内室及びこの内室に連通する開口部を有するハウジングと、
このハウジングの前記内室に、開口が前記開口部に連通するようにベアリングシート本体が取り付けられた請求項1記載のベアリングシートと、
このベアリングシートの保持面に回動可能に保持されたボール部を備えたボールスタッドと
を具備したことを特徴とするボールジョイント。
【請求項3】
内室及びこの内室に連通する開口部を有するハウジングと、このハウジングの内室に取り付けられたベアリングシートと、このベアリングシートに回動可能に保持されたボール部を備えたボールスタッドとを具備し、前記ベアリングシートが、筒状に形成され、両端部に形成され前記開口部に連通する開口と、これら開口に連通し前記ボール部を回動可能に保持する保持面とを備えたベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の前記保持面に前記ベアリングシート本体の軸方向に沿って形成された溝部とを備えているボールジョイントの製造方法であって、
前記開口に連通しない溝部を前記ベアリングシート本体の保持面に形成し、
このベアリングシート本体を有するベアリングシートを前記ボール部に取り付けてこのボール部を前記保持面に保持する
ことを特徴とするボールジョイントの製造方法。
【請求項4】
内室及びこの内室に連通する開口部を有するハウジングと、このハウジングの内室に取り付けられたベアリングシートと、このベアリングシートに回動可能に保持されたボール部を備えたボールスタッドとを具備し、前記ベアリングシートが、筒状に形成され、両端部に形成され前記開口部に連通する開口と、これら開口に連通し前記ボール部を回動可能に保持する保持面とを備えたベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の前記保持面に前記ベアリングシート本体の軸方向に沿って形成された溝部とを備えているボールジョイントの製造方法であって、
前記開口に連通する溝部を前記ベアリングシート本体の保持面に形成し、
このベアリングシート本体を有するベアリングシートを前記ボール部に取り付けてこのボール部を前記保持面に保持し、
この保持以降に前記溝部の両端部を前記開口に対して閉塞する
ことを特徴とするボールジョイントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−85409(P2009−85409A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259338(P2007−259338)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000198271)株式会社ソミック石川 (91)
【Fターム(参考)】