ボール計測装置およびボール計測方法
【課題】ゴルフボール等のボールの速度、スピン量を容易に計測することができるボール計測装置およびボール計測方法を提供する。
【解決手段】電波反射性を有する第1領域と電波反射率が第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、指向性アンテナで構成されるアンテナにより供給される送信信号に基づいて送信波を送信するとともにボールで反射された反射波をアンテナで受信し、このアンテナで生成された受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を作成する工程と、ドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを作成する工程と、信号強度分布データに基づいてボールの移動速度を算出するとともに前記ボールのスピン量を算出する工程とを有する。ドップラー信号を周波数解析する際に全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータにドップラー信号を用い残りのデータを0とする。
【解決手段】電波反射性を有する第1領域と電波反射率が第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、指向性アンテナで構成されるアンテナにより供給される送信信号に基づいて送信波を送信するとともにボールで反射された反射波をアンテナで受信し、このアンテナで生成された受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を作成する工程と、ドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを作成する工程と、信号強度分布データに基づいてボールの移動速度を算出するとともに前記ボールのスピン量を算出する工程とを有する。ドップラー信号を周波数解析する際に全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータにドップラー信号を用い残りのデータを0とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドップラー法を用いたボール計測装置およびボール計測方法に関し、特に、ゴルフボールの速度、スピン量を計測するボール計測装置およびボール計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、移動体の速度を計測する方法として、電波、または超音波を送信波として発信し、移動体からの反射波との周波数変化から速度を算出するドップラー法が広く知られている。このドップラー法は、ゴルフボール、野球用ボール等の球技用ボールの移動速度を計測する速度計測装置等に用いられている。
速度計測装置としては、例えば、ドップラーセンサから出力されるドップラー信号を、例えば、FFT(高速フーリエ変換)を用いて解析することにより、一定期間における移動体の平均速度を求めるものが提案されている。これ以外にも、ドップラー法を用いたゴルフに関する計測装置が種々提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1には、レーダー信号を送信するように、及び動くクラブヘッドから反射されたレーダー信号を受信するように動作する送受信器と、送受信器に接続され、送受信されたレーダー信号から速度信号を検出するように動作する検出器と、検出器に接続され、速度信号を処理するように、及び動くクラブヘッド速度を示すスイング速度出力信号とクラブヘッドスイング時間を示すスイングテンポ出力信号とを抽出するようにプログラムされたプロセッサとを具備するゴルフクラブのスイングの動きを測定する装置が記載されている。
送受信器は、連続波信号を送受信するものであり、クラブヘッドの速度は、連続波信号からドップラー信号を返送することによって捕捉することができる。連続波信号は、超音波信号、電磁波信号、又は各種連続波信号とすることができる。
特許文献1においては、最大スイング速度に対する値を記憶して、最長期待スイング時間より長い所定の時間で任意に検出された動きの速度を測定し続ける。この時間において、最大速度の記憶値は、先に記憶された速度よりも速い任意の測定速度によって置換えられる。
【0004】
特許文献2には、ドップラー信号を出力するドップラーセンサと、ドップラーセンサによって出力されたドップラー信号に基づく当該ドップラー信号の周期に関するデータを複数個蓄積可能な蓄積手段と、ドップラーセンサによって出力されたドップラー信号に基づき当該ドップラー信号の周期に関するデータを得て蓄積手段への蓄積を行い、蓄積手段に蓄積されたデータ群に基づきスイング速度を算出する速度算出手段とを備えるスイング速度測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−326318号公報
【特許文献2】特開2008−246139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1、2では、スイングの最高速等を計測することに留まっており、ゴルフボール等のボールの挙動を表わす様々な物理量を計測する上では十分なものとはいえない。
そこで、現在、ドップラーセンサから出力されるドップラー信号を解析することにより、打撃されたゴルフボールの移動速度に加えてスピン量をも計測する計測装置が提供されている(例えば、TrackMan(TrackMan A/S社の登録商標))。
【0007】
しかしながら、この計測装置では、スピン量を算出するに必要なドップラー信号のデータを得るために、打撃されたゴルフボールが100m単位で空中を飛んでいる期間にわたって長時間計測する必要がある。このため、ゴルフボールからの反射波を確実に受信する必要上、装置からの送信波の出力を高くする必要があり、速度計測装置が大掛かりになり、高価になるという問題がある。
また、上述の計測装置を用いて、ゴルフシミュレータ等のように室内で打撃したゴルフボールの挙動を計測するような場合、ゴルフボールの飛距離は、数m程度の短距離である。このため、上述の計測装置では、スピン量を計測するに必用なデータを得ることができず、正確なスピン量を求めることができないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、ゴルフボール等のボールの速度、スピン量を容易に計測することができるボール計測装置およびボール計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、電波反射性を有する第1領域と電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、供給される送信信号に基づいて送信波を送信するとともに、前記ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成するアンテナと、前記アンテナに前記送信信号を供給するとともに、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいて、ドップラー周波数を有するドップラー信号を作成するドップラーセンサと、前記ドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを作成する解析部と、前記信号強度分布データに基づいて、前記ボールの移動速度を算出する移動速度算出部と、前記信号強度分布データに基づいて前記ボールのスピン量を算出するスピン量算出部とを有し、前記アンテナは、指向性アンテナで構成されるものであり、前記解析部は、前記ドップラー信号を周波数解析する際に、全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータに前記ドップラー信号を用い、残りのデータを0とすることを特徴とするボール計測装置を提供するものである。
【0010】
前記解析部は、更に前記信号強度分布データに移動平均処理をして、移動平均の波形データを作成するものであり、前記移動速度算出部は、前記移動平均の波形データに基づいて前記ボールの移動速度を算出し、前記スピン量算出部は、前記移動平均の波形データに基づいて前記ボールのスピン量を算出することが好ましい。
この場合、前記移動速度算出部は、前記移動平均の波形データのうち、前記ボールの移動に由来する周波数領域での信号強度の最大値を算出し、前記最大値に基づいて前記ボールの移動速度を算出することが好ましい。
【0011】
また、前記スピン量算出部は、前記移動平均の波形データのうち、前記ボールの移動に由来する周波数領域において信号強度の最大値を含み山状に変化する部分を算出し、前記山状に変化する部分の周波数の差を算出し、前記周波数の差に基づいて前記ボールのスピン量を算出することが好ましい。
さらに、前記周波数の差は、前記信号強度の最大値をDmaxとし、閾値DtをDmax・n(ただし0<n<1)とした場合、前記信号強度が前記閾値Dtとなる部分における周波数の差であることが好ましい。
【0012】
本発明の第2の態様は、電波反射性を有する第1領域と電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、供給される送信信号に基づいて送信波を送信するとともに、前記ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成する第1のアンテナ〜第4のアンテナと、前記第1のアンテナ〜前記第4のアンテナのそれぞれに前記送信信号を供給するとともに、前記第1のアンテナ〜前記第4のアンテナから供給される前記各受信信号に基づいて、ドップラー周波数を有するドップラー信号を作成する第1のドップラーセンサ〜第4のドップラーセンサと、前記第1のドップラーセンサ〜前記第4のドップラーセンサで作成された第1のドップラー信号〜第4のドップラー信号を、それぞれ周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す第1の信号強度分布データ〜第4の信号強度分布データを作成する解析部と、前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに基づいて前記ボールの移動速度および移動方向を算出する移動速度算出部と、前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに基づいて前記ボールのスピン量を算出するスピン量算出部とを有し、前記解析部は、前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を周波数解析する際に、前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号のそれぞれについて、全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータに前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を用い、残りのデータを0とするものであり、前記第1のアンテナ〜第4のアンテナは、指向性アンテナで構成されるものであり、前記ボールの移動方向とは反対側に設けられており、前記第1のアンテナ〜前記第3のアンテナが水平方向に所定の間隔をあけて第2のアンテナを中心にして並べられ、第4のアンテナが前記第2のアンテナの上方に垂直方向に所定の間隔をあけて配置されていることを特徴とするボール計測装置を提供するものである。
【0013】
前記解析部は、更に前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに移動平均処理をして、第1の移動平均の波形データ〜第4の移動平均の波形データを作成するものであり、前記移動速度算出部は、前記第1の移動平均の波形データ〜前記第4の移動平均の波形データについて、それぞれ、前記ボールの移動に由来する周波数領域での信号強度の最大値を算出し、前記第1の移動平均の波形データ〜前記第4の移動平均の波形データの各前記最大値に基づいて前記ボールの移動速度および移動方向を算出することが好ましい。
【0014】
また、前記第2のアンテナは指向方向を示す第1の仮想軸が水平方向に延在し、前記第4のアンテナは指向性を示す第2の仮想軸が前記第1の仮想軸と交差するように配置されており、前記解析部は、更に前記第2の信号強度分布データおよび前記第4の信号強度分布データに移動平均処理をして、第2の移動平均の波形データおよび第4の移動平均の波形データを作成するものであり、前記スピン量算出部は、前記第2の移動平均の波形データおよび前記第4の移動平均の波形データについて、それぞれ前記ボールの移動に由来する周波数領域において信号強度の最大値を含み山状に変化する部分を算出し、前記山状に変化する部分の周波数の差を算出して、前記第4の移動平均の波形データの前記周波数の差に基づいて前記ボールのスピン量を算出するとともに、前記第2の移動平均の波形データの前記周波数の差と前記第4の移動平均の波形データの前記周波数の差との差分に基づいて、前記ボールの回転軸の向きを算出することが好ましい。
【0015】
本発明の第3の態様は、電波反射性を有する第1領域と電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、指向性アンテナで構成されるアンテナにより、供給される送信信号に基づいて送信波を送信し、前記ボールで反射された反射波を前記アンテナで受信して受信信号を生成し、前記受信信号に基づいて、ドップラー周波数を有するドップラー信号を作成する工程と、前記ドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを作成する工程と、前記信号強度分布データに基づいて、前記ボールの移動速度を算出するとともに、前記ボールのスピン量を算出する工程とを有し、前記ドップラー信号を周波数解析する際に、全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータに前記ドップラー信号を用い、残りのデータを0とすることを特徴とするボール計測方法を提供するものである。
【0016】
前記ボールの移動速度を算出する工程は、更に前記信号強度分布データに移動平均処理をして移動平均の波形データを作成し、前記移動平均の波形データに基づいて前記ボールの移動速度を算出するものであり、前記ボールのスピン量を算出する工程は、前記移動平均の波形データに基づいて前記ボールのスピン量を算出するものであることが好ましい。
さらに、前記ボールの移動速度を算出する工程は、前記移動平均の波形データのうち、前記ボールの移動に由来する周波数領域での信号強度の最大値を算出し、前記最大値に基づいて前記ボールの移動速度を算出することが好ましい。
さらにまた、前記ボールの移動速度を算出する工程は、前記移動平均の波形データのうち、前記ボールの移動に由来する周波数領域において信号強度の最大値を含み山状に変化する部分を算出し、前記山状に変化する部分の周波数の差を算出し、前記周波数の差に基づいて前記ボールのスピン量を算出することが好ましい。
さらに、前記周波数の差は、前記信号強度の最大値をDmaxとし、閾値DtをDmax・n(ただし0<n<1)とした場合、前記信号強度が前記閾値Dtとなる部分における周波数の差であることが好ましい。
【0017】
本発明の第4の態様は、電波反射性を有する第1領域と電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、指向性アンテナで構成される第1のアンテナ〜第4のアンテナにより送信波を送信し、前記ボールで反射された反射波を各前記第1のアンテナ〜前記第4のアンテナで受信して受信信号を生成し、前記各受信信号に基づいて、ドップラー周波数を有する第1のドップラー信号〜第4のドップラー信号を作成する工程と、前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を、それぞれ周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す第1の信号強度分布データ〜第4の信号強度分布データを作成する工程と、前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに基づいて前記ボールの移動速度および移動方向を算出するとともに、前記ボールのスピン量を算出する工程とを有し、前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を周波数解析する際に、前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号のそれぞれについて、全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータに前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を用い、残りのデータを0とするものであり、前記第1のアンテナ〜第4のアンテナは、前記ボールの移動方向とは反対側に設けられており、前記第1のアンテナ〜前記第3のアンテナが水平方向に所定の間隔をあけて第2のアンテナを中心にして並べられ、第4のアンテナが前記第2のアンテナの上方に垂直方向に所定の間隔をあけて配置されていることを特徴とするボール計測方法を提供するものである。
【0018】
前記ボールの移動速度および移動方向を算出する工程は、更に前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに移動平均処理をして、第1の移動平均の波形データ〜第4の移動平均の波形データを作成し、前記第1の移動平均の波形データ〜前記第4の移動平均の波形データについて、それぞれ、前記ボールの移動に由来する周波数領域での信号強度の最大値を算出し、前記第1の移動平均の波形データ〜前記第4の移動平均の波形データの各前記最大値に基づいて前記ボールの移動速度および移動方向を算出することが好ましい。
【0019】
さらに、前記第2のアンテナは指向方向を示す第1の仮想軸が水平方向に延在し、前記第4のアンテナは指向性を示す第2の仮想軸が前記第1の仮想軸と交差するように配置されており、前記ボールのスピン量を算出する工程は、更に前記第2の信号強度分布データおよび前記第4の信号強度分布データに移動平均処理をして、第2の移動平均の波形データおよび第4の移動平均の波形データを作成し、前記第2の移動平均の波形データおよび前記第4の移動平均の波形データについて、それぞれ前記ボールの移動に由来する周波数領域において信号強度の最大値を含み山状に変化する部分を算出し、前記山状に変化する部分の周波数の差を算出して、前記第4の移動平均の波形データの前記周波数の差に基づいて前記ボールのスピン量を算出するとともに、さらに、前記第2の移動平均の波形データの前記周波数の差と前記第4の移動平均の波形データの前記周波数の差との差分に基づいて、前記ボールの回転軸の向きを算出することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ゴルフボール等のボールの速度、スピン量を容易に計測することができる。しかも、ボールの速度、スピン量の算出に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るボール計測装置を示す模式図である。
【図2】図1に示す実施形態のボール計測装置のアンテナの配置を示す模式的平面図である。
【図3】(a)は、図1に示す実施形態のボール計測装置のアンテナの配置を示す側面図であり、(b)は、図1に示す実施形態のボール計測装置のアンテナの配置を示す上面図である。
【図4】ゴルフボールのスピン量の測定の原理を示す模式図である。
【図5】(a)は第4のアンテナの仮想軸に沿ってゴルフボールを見た状態を示す模式図であり、(b)は第2のアンテナの仮想軸に沿ってゴルフボールを見た状態を示す模式図であり、(c)は第4のアンテナの仮想軸に沿ってゴルフボールを見た状態を示す模式図、(d)は第2のアンテナの仮想軸に沿ってゴルフボールを見た状態を示す模式図であり、(e)は第4のアンテナの仮想軸に沿ってゴルフボールを見た状態を示す模式図であり、(f)は第2のアンテナの仮想軸に沿ってゴルフボールを見た状態を示す模式図である。
【図6】ドップラー信号の時間波形の一例を示すグラフである。
【図7】図6に示すドップラー信号の時間波形を周波数解析することによって得られた周波数ごとの信号強度の分布を示すグラフである。
【図8】図7に示すグラフの要部拡大図である。
【図9】(a)は、ドップラー信号の時間波形を示すグラフであり、(b)は、図9(a)に示すドップラー信号の時間波形について、条件を変えてフーリエ変換した結果を示すグラフである。
【図10】(a)は、ドップラー信号の時間波形を示すグラフであり、(b)は、図10(a)に示すドップラー信号の時間波形について、条件を変えてフーリエ変換した結果を示すグラフである。
【図11】バックスピンしているゴルフボールのスピン量SPと差分ΔSPの実測結果を示すグラフである。
【図12】サイドスピンしているゴルフボールのスピン量SPと差分ΔSPの実測結果を示すグラフである。
【図13】(a)は、本発明の実施形態のボール計測装置に用いられるゴルフボールの一例を示す模式図であり、(b)は、本発明の実施形態のボール計測装置に用いられるゴルフボールの他の例を示す模式図である。
【図14】本発明の実施形態のボール計測装置による計測方法を工程順に示すフローチャートである。
【図15】本発明の実施形態のボール計測装置における周波数解析方法を示す模式図である。
【図16】(a)〜(d)は、図15に示す周波数解析方法により得られた結果を示すグラフである。
【図17】(a)〜(e)は、図15に示す周波数解析方法により得られた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のボール計測装置およびボール計測方法を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るボール計測装置を示す模式図である。
【0023】
図1に示すボール計測装置10は、例えば、ゴルフクラブをスイングしてゴルフクラブヘッドにより打撃されたゴルフボールの挙動を計測するものである。このボール計測装置10は、例えば、4つの第1のアンテナ14a〜第4のアンテナ14d、4つの第1のドップラーセンサ16a〜第4のドップラーセンサ16d、4つの第1の信号処理部18a〜第4の信号処理部18d、演算処理ユニット20、表示部24、操作部26を有する。演算処理ユニット20は、CPU22、検出部28と、蓄積部30と、挙動算出部32とを有する。
第1のアンテナ14a〜第4のアンテナ14dは、それぞれ第1のドップラーセンサ16a〜第4のドップラーセンサ16dに接続されている。
なお、以降、第1のアンテナ14a〜第4のアンテナ14dをアンテナ14a〜14dという。また、第1のドップラーセンサ16a〜第4のドップラーセンサ16dをドップラーセンサ16a〜16dという。
各ドップラーセンサ16a〜16dは、第1の信号処理部18a〜第4の信号処理部18dの各信号処理部に接続されている。
【0024】
ボール計測装置10において、CPU22と、検出部28と、蓄積部30と、挙動算出部32は、回路等のハードウェアで構成されたものであっても、CPU22が制御プログラムを実行することで実現されるものであってもよい。
CPU22により、表示部24、検出部28、蓄積部30および挙動算出部32が制御されるとともに、表示部24の表示、各検出部28、蓄積部30および挙動算出部32の間のデータの移動も制御される。また、CPU22は、操作部26による指示入力に基づく表示部24の表示も制御される。
【0025】
アンテナ14a〜14dは、それぞれドップラーセンサ16a〜16dから供給される送信信号に基づいて送信波W1としてのマイクロ波を移動体に向けて送信すると共に、ゴルフボールbで反射された反射波W2を受信して受信信号を生成し、さらに各受信信号を各ドップラーセンサ16a〜16dに供給するものである。
アンテナ14a〜14dは、指向性アンテナにより構成されるものであり、例えば、パラボラアンテナが用いられる。アンテナ14a〜14dは、指向性アンテナであれば、パラボラアンテナに限定されるものではなく、パラボラアンテナ以外の従来公知の様々な指向性アンテナを使用することができる。
【0026】
本実施形態においては、図2および図3(a)に示すように、ゴルフボールbの移動方向(飛翔方向)の反対側に、4つのアンテナ14a〜14dが配置されている。4つのアンテナ14a〜14dは、例えば、同一フレーム(図示せず)に設けてもよい。
4つのアンテナ14a〜14dは、例えば、ゴルフボールbから1m〜1.5m程度後方の位置に設置される。なお、ゴルフボールbは、例えば、ティー104に載置される。
【0027】
図2に示すように、第2のアンテナ14bの上方に第4のアンテナ14dが第2のアンテナ14bと水平方向における中心位置を一致させてΔy間隔をあけて配置されている。
図3(a)に示すように、第4のアンテナ14dは、指向方向を示す仮想軸LDが水平方向に延在するとともに、第2のアンテナ14bは、指向方向を示す仮想軸LBが仮想軸LDとの交点がティー104に載置されたゴルフボールbの中心Oを通る鉛直線Lと交差するように配置されている。このようにすることで、第2のアンテナ14b、第4のアンテナ14dからゴルフボールbに到達する送信波W1の電界強度の確保が図られている。
【0028】
図2に示すように、第1のアンテナ14a〜第3のアンテナ14cが水平方向に所定の間隔をあけて第2のアンテナ14bを中心にして並べられており、第2のアンテナ14bを挟んで第1のアンテナ14aと第3のアンテナ14cとが垂直方向における中心位置を一致させて、Δx/2間隔をあけて配置されている。
また、図3(b)に示すように、平面視の状態で仮想軸LA、LCは、ゴルフボールbを打撃する際の目標線L0、すなわち、ティー104からゴルフボールbを打撃する目標地点までを結ぶ仮想線と一致している。
平面視の状態で第1のアンテナ14a、第3のアンテナ14cの仮想軸LA、LCが、ティー104に載置されたゴルフボールbの中心Oを通る鉛直線と交差するように配置されている。
なお、仮想軸LA、LCの交差点と第1のアンテナ14aの距離と、交差点と第3のアンテナ14cの距離とは同一である。このようにすることで、第1のアンテナ14a、第3のアンテナ14cからゴルフボールbに到達する送信波W1の電界強度の確保が図られている。
【0029】
各ドップラーセンサ16a〜16dは、ゴルフボールbに向けて送信波W1を送信する各アンテナ14a〜14dに送信信号を供給すると共に、ゴルフボールbで反射された反射波W2を受信して受信信号を生成する各アンテナ14a〜14dから、それぞれ受信信号が供給される。ドップラーセンサ16a〜16dは、それぞれ、この受信信号に基づいてドップラー周波数を有する第1のドップラー信号Sd1〜第4のドップラー信号Sd4をそれぞれ作成するものである。ドップラー周波数を有するドップラー信号Sd2としては、例えば、後述するように波形αのものが得られる(図6参照)。
なお、以降、第1のドップラー信号Sd1〜第4のドップラー信号Sd4をドップラー信号Sd1〜Sd4という。
【0030】
ドップラー信号Sd1〜Sd4とは、前述の送信信号の周波数F1と前述の受信信号の周波数F2との差分の周波数F1−F2で定義される第1のドップラー周波数Fd1〜第4のドップラー周波数Fd4を有する信号である。
なお、以降、第1のドップラー周波数Fd1〜第4のドップラー周波数Fd4をドップラー周波数Fd1〜Fd4という。
ドップラーセンサ16a〜16dとしては、例えば、市販されている種々のものが使用可能である。
なお、前述の送信信号としては、例えば、搬送波周波数が24GHzのマイクロ波が使用可能であり、ドップラー信号Sd1〜Sd4が得られるものであれば送信信号の周波数は、特に限定されない。
【0031】
4つの第1の信号処理部18a〜第4の信号処理部18dは、各ドップラーセンサ16a〜16dから供給される各ドップラー信号Sd1〜Sd4を増幅し、予め定められた閾値を基準としてローレベルとハイレベルとの2値をとる2値化信号に変換するものである。すなわち、第1の信号処理部18a〜第4の信号処理部18dにより、各ドップラー信号Sd1〜Sd4は、それぞれ、所定のサンプリング周波数でサンプリングされてデジタルデータに変換される。
したがって、各ドップラー信号Sd1〜Sd4の周期は2値化信号の周期に対応することになり、言い換えると、各ドップラー信号Sd1〜Sd4の周波数は2値化信号の周波数に対応することになる。
なお、以降、第1の信号処理部18a〜第4の信号処理部18dを信号処理部18a〜18dという。
【0032】
演算処理ユニット20は、各信号処理部18a〜18dから供給される増幅された2値化データを入力して種々の処理を行うことにより、ゴルフボールbの移動方向、移動速度、スピン量を算出するものである。
【0033】
検出部28は、各信号処理部18a〜18dから供給される2値化信号(ドップラー信号Sd1〜Sd4)をドップラー周波数Fd1〜Fd4に対応付けられた第1の中間データ〜第4の中間データに変換すると共に、第1の中間データ〜第4の中間データを予め定められたサンプリング周期でサンプリングするものである。なお、以降、第1の中間データ〜第4の中間データを各中間データという。
本実施形態では、検出部28は、2値化信号の周期をカウンタを用いて計数することにより2値化信号の周期を各中間データとして作成する。
言い換えると、検出部28は、ドップラー信号Sdの周期をカウントすることにより時系列データとしての周期データを得ることにより、この周期データをドップラー周波数Fdに対応付けられた各中間データとして作成する。したがって、各中間データの値とドップラー周波数Fd1〜Fd4は反比例することになる。
なお、本実施形態では、ドップラー周波数Fd1〜Fd4に対応付けられた各中間データが周期のデータである場合について説明するが、各中間データはドップラー周波数Fd1〜Fd4を表す周波数のデータであってもよい。
【0034】
蓄積部30は、検出部28でサンプリングされた各中間データを時間経過に従って順番に蓄積するものである。この蓄積部30は、演算処理ユニット20において、メモリとしても機能するものである。
【0035】
挙動算出部32は、蓄積部30に蓄積された各中間データに基づいてゴルフボールbの移動方向、移動速度、スピン量を算出するものである。挙動算出部32は、解析部34と、移動速度算出部36と、スピン量算出部38とを備えている。
【0036】
ここで、ゴルフボールbの移動速度およびスピン量の測定原理について説明する。
従来から知られているように、ドップラー周波数Fdは式(1)で表される。
Fd=F1−F2=V・F1/c (1)
ただし、V:ゴルフボールbの移動速度(m/s)、c:光速(3×108m/s)
したがって、(1)式をVについて解くと、(2)式となる。
V=c・Fd/F1 (2)
すなわち、ゴルフボールbの移動速度Vは、ドップラー周波数Fdに比例することになる。このため、ドップラー信号Sdからドップラー周波数Fdを検出し、このドップラー周波数Fdからゴルフボールbの移動速度Vを求めることができる。
【0037】
図4はゴルフボールのスピン量の測定の原理を示す模式図である。
ゴルフボールbの表面のうち、送信波W1の送信方向となす角度が90度に近い表面の部分である第1部分Aでは送信波W1が効率よく反射され、したがって、第1部分Aでは反射波W2の強度が高い。
一方、ゴルフボールの表面のうち、送信波W1の送信方向となす角度が0度に近い表面の部分である第2部分B、第3部分Cでは送信波W1が効率よく反射されず、したがって、第2部分B、第3部分Cでは反射波W2の強度が低い。
第2部分Bは、ゴルフボールbのスピンによって移動する方向rsとゴルフボールの移動方向とが反対向きとなる部分である。
第3部分Cは、ゴルフボールbのスピンによって移動する方向rsとゴルフボールの移動方向とが同じ向きとなる部分である。
【0038】
第1部分Aで反射される反射波W2に基づいて検出される速度を第1速度VA、第2部分Bで反射される反射波W2に基づいて検出される速度を第2速度VB、第3部分Cで反射される反射波W2に基づいて検出される速度を第3速度VCとする。
すると、以下の式が成立する。
VA=V (3)
VB=VA−ωr (4)
VC=VA+ωr (5)
(ただし、Vはゴルフボールbの移動速度、ωは角速度(rad/s)、rはゴルフボールbの半径)
【0039】
したがって、原理的には、式(3)に基づいて第1速度VAからゴルフボールbの移動速度Vを算出でき、(4)式または(5)式に基づいて、第2、第3速度VB、VCから角速度ωが求められるので、角速度ωからスピン量を算出できることになる。
しかしながら、本実施形態では、上記の式に基づいて移動速度V、スピン量を算出するのではなく、以下に説明するように、ドップラー信号Sdを周波数解析することによって周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを作成し、この信号強度分布データから移動速度V、スピン量を求めるようにした。
【0040】
次に、各アンテナ14a〜14dの位置と、ゴルフボールbのスピン量と、ゴルフボールbの回転軸との関係について説明する。
図5(a)、図5(c)、図5(e)は第4のアンテナ14dの仮想軸LD(図3(a))に沿ってゴルフボールbを見た状態を示す模式図であり、図5(b)、図5(d)、図5(f)は第2のアンテナ14bの仮想軸LB(図3(a))に沿ってゴルフボールbを見た状態を示す模式図である。
【0041】
図5(a)、(b)は、ゴルフボールbの回転軸Mが基準線L01と直交する鉛直面上で水平面と平行した状態を示している。この場合、ゴルフボールbにはバックスピンがかかっている。
図5(c)、(d)は、ゴルフボールbの回転軸Mが基準線L01と直交する鉛直面上で水平面に対して45°傾斜した状態を示している。この場合、ゴルフボールbにはバックスピンとサイドスピンとの中間のスピンがかかっている。
図5(e)、(f)は、ゴルフボールbの回転軸Mが基準線L01と直交する鉛直面上で水平面に対して直交した状態を示している。この場合、ゴルフボールにはサイドスピンがかかっている。
なお、基準線L01はゴルフボールbの中心Oを通り、目標線L0と平行する基準線を示すものである。
【0042】
図3(a)に示すように、第4のアンテナ14dの仮想軸LDに沿ってゴルフボールbを見ると、ゴルフボールbを正面から見ることになり、第2のアンテナ14bの仮想軸LBに沿ってゴルフボールbを見ると、ゴルフボールbを斜め下方から見ることになる。
【0043】
したがって、図5(a)、図5(c)、図5(e)に示すように、第4のアンテナ14dの仮想軸LDに沿ってゴルフボールbを見た状態では、ゴルフボールbの回転軸Mが何れの方向に向いていても、ゴルフボールbのスピン量は同一に見える。言い換えると、第4のアンテナ14dを用いて計測した第1のスピン量SPAはゴルフボールbの回転軸Mの方向に拘わらず同一となる。
【0044】
一方、図5(b)、図5(d)、図5(f)に示すように、第2のアンテナ14bの仮想軸LBに沿ってゴルフボールbを見た状態では、ゴルフボールbの回転軸Mの向きが変化すると、ゴルフボールbのスピン量も変化する。
具体的には、図5(b)に示すバックスピンの状態では、図5(a)のスピン量と同様のスピン量であるが、図5(d)に示す中間のスピンの状態では、図5(c)のスピン量に比べて見かけ上のスピン量が少なくなる。
さらに、図5(f)に示すサイドスピンの状態では、図5(e)に比べて見かけ上のスピン量がより少なく見える。
言い換えると、第2のアンテナ14bを用いて計測した第2のスピン量SPBはゴルフボールbの回転軸Mの方向が水平方向から鉛直方向に近づくほど減少する。
【0045】
したがって、第1のスピン量SPAと第2のスピン量SPBの差分ΔSPと、回転軸Mが水平面となす角度とは相関関係があり、差分ΔSPから回転軸Mの向き(水平面に対する角度)を算出することができる。
本実施形態では、スピン量算出部38によって第1のスピン量SPAと第2のスピン量SPBが算出され、スピン量算出部38によって第1のスピン量SPAと第2のスピン量SPBの差分ΔSPに基づいて回転軸Mの向きが求められる。
また、図5(a)〜(d)に示すように、第4のアンテナ14dを用いて計測した第1のスピン量SPAはゴルフボールbの実際のスピン量を示すことになるため、この第1のスピン量SPAがゴルフボールbのスピン量の実測値として求められる。
【0046】
解析部34は、蓄積部30に蓄積された各中間データを、それぞれ、FFTを用いて周波数解析することにより、周波数ごとの信号強度の分布を示す第1の信号強度分布データ〜第4の信号強度分布データを作成するものである。
例えば、図7に示す第2の信号強度分布データの一例のように、図6に示す第2の中間データに対応する第2のドップラー信号Sd2の時間波形αをFFTにより周波数解析することによって、周波数ごとの信号強度の分布を示す第2の信号強度分布データβを得る。図7において、横軸は周波数(Hz)であり、縦軸は信号強度(任意単位)である。信号強度分布データβにおいて、周波数の領域β1はゴルフクラブヘッドの移動に由来するものであり、周波数の領域β2はゴルフボールの移動に由来するものである。
【0047】
上述の周波数の領域β1、β2は、fd=2fc・V0/cによる求めることができる。ここで、fdは、ドップラー周波数(Hz)であり、fcは、搬送波周波数(Hz)である。V0は、ゴルフボールまたはゴルフクラブヘッドの速度(m/s)である。cは、光速(3×108m/s)である。
ゴルフボールの初速を50m/sとした場合、fdは、約8000Hzとなる。このため、ゴルフボールの移動に由来する周波数の領域β2は約8000Hz付近となる。ここで、本実施形態において、他に移動するものはゴルフクラブヘッドであるため、約4000Hz付近の周波数の領域β1は、ゴルフクラブヘッドの移動に由来するものである。
なお、解析部34に用いられるFFTには、公知の種々のFFTの方法を用いることができる。
なお、以降、第1の信号強度分布データ〜第4の信号強度分布データを各信号強度分布データという。
【0048】
また、解析部34は、各信号強度分布データについて、更に移動平均処理を施し、移動平均の波形データを作成するものでもある。例えば、図7に示す信号強度分布データβについて、移動平均処理を施すことにより、図7に示す移動平均の波形データγが得られる。
信号強度分布データβは、実測値であるため、測定時に含まれるノイズの影響を受けて大きく変動している。このため、移動平均処理をすることによって、ノイズの影響を抑制した信号強度分布データ、すなわち、移動平均の波形データγが得られる。
【0049】
移動速度算出部36は、各信号強度分布データに基づいて、ゴルフボールbの移動方向および移動速度を算出するものである。
以下、移動速度算出部36によるゴルフボールbの移動速度の算出方法について、図7に示す移動平均の波形データγを例にして説明する。なお、信号強度分布データにおいて、ゴルフボールbに由来する周波数の領域β2が分かっているため、ゴルフボールbに由来する周波数の領域β2について解析を行う。
【0050】
図8は、信号強度分布データを、ゴルフボールbに由来する周波数の領域β2を拡大して示すものである。図8に示す移動平均の波形データγでは、周波数の領域β2において、信号強度が最大となる1つの最大値を有し、最大値から離れるほど信号強度が次第に低下し、やがてゼロとなる単一の山形の信号強度分布を呈している。すなわち、周波数の領域β2での信号強度の最大値Dmaxを含み山状に信号強度が変化する部分がある。
ここで、信号強度分布データの山の高さ、すなわち、信号強度の最大値Dmaxは、上述の第1速度VA(図4参照)に対応している。したがって、周波数の領域β2において、信号強度の最大値Dmaxが高いほど、第1速度VA、すなわち、ゴルフボールbの移動速度が速いことになる。
【0051】
また、信号強度分布データの山の幅、すなわち、周波数の領域β2において、山状に信号強度が変化する部分での周波数の差は、上述の第2速度VBと上述の第3速度VCの差分ΔV(速度幅)に比例する。このため、第2速度VBと第3速度VCの差分ΔVが小さいほどスピン量が小さくなり、この差分ΔVがゼロならばスピン量もゼロとなる。また、第2速度VBと第3速度VCの差分ΔVが大きいほど、すなわち、周波数差が大きいほど、スピン量が多いことになる。
【0052】
ここで、第2速度VBと第3速度VCの差分ΔVは、式(4)、式(5)からわかるように以下の式(6)で示され、すなわち、角速度ωに比例した値となる。
ΔV=VC−VB=(VA+ωr)−(VA−ωr)=2ωr (6)
したがって、(6)式から明らかなように、信号強度分布データの山の幅に基づいてスピン量を算出することができる。
【0053】
本実施形態において、上述のスピン量が大きい山の幅、すなわち、周波数の領域β2において山状に信号強度が変化する部分での周波数の差は、以下のように定義することができる。
信号強度分布データの山の幅は、信号強度の閾値DtをDmax・n(ただし0<n<1)とした場合、周波数の領域β2において、信号強度が閾値Dtとなる部分の幅とする。すなわち、周波数の領域β2において信号強度が閾値Dtでの周波数の差である。
【0054】
図8では、Dt2=Dmax・10%と、Dt1=Dmax・50%とを例示している。この場合、閾値Dt1では周波数の差がΔV1であり、閾値Dt2では周波数の差がΔV2である。
なお、閾値Dtは山の幅(周波数の差)、すなわち、第2速度VBと第3速度VCの差分ΔVを安定して計測できる値に設定すればよい。このように、図7、図8に示す信号強度分布データβについて解析することにより、移動速度V、スピン量を容易に求めることが可能となる。
【0055】
本実施形態において、解析部34では、蓄積部30に蓄積された各中間データを、それぞれFFTを用いて周波数解析している。
ドップラー信号の時間波形において、インパクト前は、ゴルフヘッドの反射波が主であり、インパクト後はゴルフボールの反射が主である。また、ゴルフボールのスピン量は、ゴルフボールの移動に由来する領域β2における周波数の差(山の幅)に基づいて算出する。このため、解析部34では、インパクト前後で周波数分解を保持したまま、ゴルフボールの移動に由来する領域β2における時間変化を高い精度かつ短時間で行う必要がある。
【0056】
本発明において、解析データ数のうち、測定データの割合を少なくとも20%とすれば、FFT解析による周波数解析に悪影響を与えないことを見出した。
このように、本発明の解析方法によれば、インパクト前後で、周波数分解能を保持したまま解析可能となるため、ゴルフヘッドとゴルフボールの反射波を容易に区別することができる。更には、FFT解析の際に、測定データの割合を小さくすることができるため、周波数分解能を保持したまま、短時間で信号強度分布データβを得ることができる。これにより、移動速度V、スピン量を短時間で算出することができる。
【0057】
サンプリング周波数と周波数分解能の関係は、サンプリング周波数をfs(Hz)、周波数分解能をΔf(Hz)、サンプリングデータ数をN(個)とするとき、下記式(7)になる。この式(7)からサンプリングデータ数のNを大きくしなければ周波数分解能Δfは小さくならないことがわかる。
【0058】
【数1】
【0059】
また、サンプリングに必要な時間T(秒)は、下記式(8)で表される。この式(8)から、所定の周波数分解能Δfを確保するためには、一定の時間T(秒)が必要である。
【0060】
【数2】
【0061】
しかしながら、ゴルフボールのスピン量の計測のように、短い時間間隔におけるスピン量の変化を計測する場合には、周波数分解能Δfを確保したまま、Tを短くする必要がある。この場合、T=T1+T2として、短い時間データでも周波数分解能Δfを確保して解析する。なお、T1は、実際の測定データであり、T2は、0(ゼロ)のデータである。具体的には、FFT解析データ数(サンプリングデータ数)Nのうち、少なくとも20%について、実測データを用い、それ以外のデータは0とする。
【0062】
サンプリング周波数fsが一定の場合、FFTによる周波数解析の手順としては、まず、必要な周波数分解能Δfを決定する。次に、Nf=fs/Δfで表されるFFT解析データ数Nfを決定する。次に、T=Nf/fsで表されるFFT解析のために必要な時間間隔Tを決定する。
次に、FFT解析データ数Nfのうち、少なくとも20%について、実測データを用い、残りのデータを0として、FFT解析を行う。
【0063】
本実施形態において、下記に示す条件に基づく時間波形について、周波数分解と実測データの割合について調べた。なお、下記に示すEaは、図9(a)に示す時間波形40により表されるものである。
【0064】
Ea=E1+E2
E1=0.5・cos(2πf1・t)、f1=5,000Hz
E2=0.3・cos(2πf2・t)、f2=5,015Hz
【0065】
また、FFTは、以下に示す解析条件で行った。fs=48,000Hz、N=16,384(214)とすると、Δf≒2.93Hz、T≒342(msec)となる。
FFT解析では、T1=TからT1=T/100まで順次、実データT1の時間を短くしてゆき、すなわち、FFT解析データ数Nfのうち、実測データの割合を小さくしていき、E1とE2の分解が可能かどうか検証する。すなわち、f1とf2の分離が可能かどうかを検証する。その結果を図9(b)に示す。なお、f1とf2はΔfで約5ライン離れている。
図9(b)に示すように、FFT解析データ数Nfに対して実測データが20%以上であれば、f1とf2の分離が可能であった。
【0066】
また、上記条件に対して周波数だけを変えた時間波形について、周波数分解と測定データの割合について調べた。なお、下記に示すEbは、図10(a)に示す時間波形50により表されるものである。
【0067】
Eb=E3+E4
E3=0.5・cos(2πf3・t)、f3=5,000Hz
E4=0.3・cos(2πf4・t)、f4=5,115Hz
【0068】
この場合、f3とf4はΔfで39ライン離れている。図10(b)に示すように、FFT解析データ数Nfに対して実測データが20%以上であれば、f3とf4の分離が可能であった。
以上のように、FFT解析を行う場合、FFT解析データ数Nfに対して20%のデータのみ実測データを用いて、残り80%は0をあてはめてもFFT解析結果に大きな差を生じないことが判った(ただし、FFT解析の元の時間データに対して1/mのデータのみを用いた場合、FFT解析結果の振幅スペクトルはm倍する必要がある)。
【0069】
なお、FFT解析の際に、時間軸データを切り取る場合、傾斜をつけたフィルターを用いることにより、サイドローブを小さくすることができる。この場合、全体の20%のデータを切り取る際に、20%のデータに加えて、両側に2.5%でゼロになる特性を備えるフィルターを用いることが好ましい。このフィルターは、図示すれば略台形である。
【0070】
移動速度算出部36は、各信号強度分布データのそれぞれにおける最大値Dmaxに基づいて、アンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度を算出するものである。さらに、移動速度算出部36は、各アンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度に基づいてゴルフボールbの移動方向Dbを算出するものである。
【0071】
ゴルフボールbの移動方向Dbの算出方法について、図3(a)、図3(b)を参照して説明する。図3(a)、図3(b)において、符号Dbはゴルフボールbの移動方向を示し、基準線L01はゴルフボールbの中心Oを通り、目標線L0と平行する基準線を示し、符号Gは水平面と平行な地面を示す。符号θxは平面視の状態で、ゴルフボールbの移動軌跡と基準線L01とを水平面に投影した場合にゴルフボールbの移動軌跡と基準線L01とがなす角度である。以下、角度θxを左右角度という。
また、符号θyは側面視の状態でゴルフボールbの移動軌跡と基準線L01とを基準線L01を含む鉛直面に投影した場合にゴルフボールbの移動軌跡と基準線L01とがなす角度である。以下、角度θyを上下角度という。
【0072】
まず、専用のゴルフボール打ち出し装置(ランチャー)によって原点に位置するゴルフボールbを、左右角度θxおよび上下角度θyを異ならせて打撃する。
そして、高速度カメラで撮影したゴルフボールbの画像データに基づいてゴルフボールbの左右角度θxおよび上下角度θyを計測し、左右角度θxおよび上下角度θyの実測データを取得する。このような高速度カメラによるゴルフボールbの挙動の計測は従来公知である。
【0073】
また、左右角度θxおよび上下角度θyの計測と同時に、本実施形態の計測装置10を用いて移動速度算出部36によって、アンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度を取得する。すなわち、左右角度θxおよび上下角度θyの実測データに対応するゴルフボールの速度を取得する。
そして、左右角度θxおよび上下角度θyの実測データと、ゴルフボールの速度とを関連付けた角度算出用マップ(角度算出用データテーブル)を作成する。この角度算出用マップ(角度算出用データテーブル)は、例えば、蓄積部30に記憶される。
角度算出用マップ(角度算出用データテーブル)を用いることにより、アンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度から左右角度θxおよび上下角度θyを求めることが可能となる。
【0074】
本実施形態では、移動速度算出部36は上記角度算出用マップを蓄積部30から呼び出し、移動速度算出部36において、この角度算出用マップを用いることによりアンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度から左右角度θxおよび上下角度θyをゴルフボールbの移動方向Dbとして算出することができる。
なお、角度算出用マップ(角度算出用データテーブル)は、蓄積部30に記憶させることに限定されるものではない。
【0075】
また、移動速度算出部36によるゴルフボールbの移動方向Dbを算出する方法としては、角度算出用マップを用いる以外に、以下のように行ってもよい。
例えば、左右角度θxおよび上下角度θyの実測データと、アンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度とに基づいて、例えば、最小二乗法などの従来公知の手法を用いて回帰式を導出しておき、例えば、この回帰式を蓄積部30に記憶させる。移動速度算出部36においては、この回帰式を蓄積部30から呼び出し、回帰式に基づいてアンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度から左右角度θxおよび上下角度θyを算出するようにしてもよい。
【0076】
また、移動速度算出部36は、アンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度のいずれか1つの速度と、ゴルフボールbの移動方向Dbとに基づいてゴルフボールbの移動方向における移動速度V(図3(a)、図3(b))を算出するものである。
具体的には、左右角度θxおよび上下角度θyによって特定されるゴルフボールbの3次元空間における軌道軌跡と基準線L01とがなす角度φを求めることにより、以下の式(9)によって移動速度Vが算出される。
【0077】
V=VA・cosφ (9)
【0078】
スピン量算出部38は、ゴルフボールのスピン量およびスピンの向き(方向)を算出するものである。このスピン量算出部38は、上述のように、周波数の領域β2において山状に信号強度が変化する部分での周波数の差に基づいてスピン量を算出するものである。
具体的には、スピン量算出部38は、第4の信号強度分布データにおける周波数の領域β2での周波数の差に基づいてゴルフボールbの第1のスピン量SPAを算出し、第2の信号強度分布データにおける周波数の領域β2での周波数の差に基づいてゴルフボールbの第2のスピン量SPBを算出するものである。なお、上述のように、第1のスピン量SPAがゴルフボールbのスピン量の実測値である。
スピン量算出部38は、更には、ゴルフボールbの回転軸の向きを、第1のスピン量SPA、第2のスピン量SPBの差分ΔSPに基づいて算出するものである。
【0079】
表示部24は、演算処理ユニット20によって算出されたゴルフボールbの移動速度およびスピン量の数値、移動方向、ならびにスピンの向き(方向)等を表示する表示画面を有するものである。
なお、表示部24にかえて、または表示部24に加えて、移動速度およびスピン量の数値、移動方向、ならびにスピンの向き(方向)等を印字出力するプリンタを出力部として設けてもよい。さらには、表示部24にかえて、または表示部24に加えて、移動速度およびスピン量の数値、移動方向、ならびにスピンの向き(方向)等をパーソナルコンピュータなどの外部装置に供給する通信回路を設けてもよい。
【0080】
操作部26は、例えば、表示部24に表示されるゴルフボールbの移動速度およびスピン量の数値、移動方向、ならびにスピンの向き(方向)等の表示形態などを切り替えるために、種々の指示入力を行うものである。この操作部26による指示入力はCPU22に供給されて、CPU22から指示入力に応じた動作を行うように、各要素を制御するものである。
【0081】
本実施形態において、バックスピンの場合のスピン量SPは、例えば、逆回転方向のスピン量は正の値、順回転方向のスピン量は負の値で示す。
また、本実施形態において、サイドスピンの場合のスピン量SPは、例えば、平面視時計回り方向のスピン量は正の値で、反時計回り方向のスピン量は負の値で示す。
【0082】
ここで、図11は、バックスピンしているゴルフボールのスピン量SPと差分ΔSPの実測結果を示すグラフであり、図12は、サイドスピンしているゴルフボールのスピン量SPと差分ΔSPの実測結果を示すグラフである。なお、差分ΔSPの単位は任意単位である。また、図11、図12においてプロットした点が実測値を示し、図11に示す直線H1、および図12に示す直線H2は、それぞれ実測値から求めた回帰式に基づくものである。図11、図12に示すように、差分ΔSPとスピン量SPとは相関関係がある。
【0083】
次に、本実施形態のボール計測装置10に用いるゴルフボールbについて説明する。
図13(a)は、本発明の実施形態のボール計測装置に用いられるゴルフボールの一例を示す模式図であり、(b)は、本発明の実施形態のボール計測装置に用いられるゴルフボールの他の例を示す模式図である。
図13(a)に示すように、ゴルフボールbは、球体202と、第1領域204と、第2領域206とを備えている。
球体202は、中実で球状のコア層と、このコア層を覆う合成樹脂からなるカバー層とで形成され、カバー層の表面に多数のディンプル(図示せず)が形成されている。
【0084】
第1領域204は、球体202の中心を中心とした球面上に形成された電波反射率が高い領域である。このように、第1領域204は高い電波反射特性を有しており、電波(マイクロ波)を効率よく反射する。
本実施形態では、第1領域204は球体202の表面に(前記カバー層の表面に)複数形成され導電性を有している。
また、各第1領域204は、同一の直径を有する正円状を呈しているが、各第1領域204の形状は三角形、四角形、あるいは正多角形などであってもよい。
【0085】
各第1領域204が正円である場合、反射波の強度を確保する上でまた計測装置10における計測精度を確保する上でその正円の直径は2mm以上15mm以下であることが好ましい。
また、各第1領域204が正多角形である場合、反射波の強度を確保する上でまた計測装置10における計測精度を確保する上でその内接円の直径が2mm以上15mm以下であることが好ましい。
【0086】
なお、正円または内接円の直径が2mm以上15mm以下であると、計測精度を確保する上で有利となることは、送信波として24GHzまたは10GHzのマイクロ波を使用した場合の発明者らの実験結果によって確認されたものである。この原因としては、例えば、第1領域204の表面で反射される反射波と第1領域204のエッジ部分で反射される反射波との干渉が計測精度に与える影響が小さくなるからであると考えられる。
また、図13(a)に示すように、前記の球面上において(本実施形態では球体202の表面上において)第1領域204の互いに対向する2箇所と、球体202の中心とを通る2つの直線がなす角度θは、十分な強度の反射波を得る上でまた反射波を精度よく受信する上で5度以上45度以下であることが好ましい。
【0087】
複数の第1領域204は、頂点が球体202の表面(球体202の中心を中心とした球面)に位置するように仮想された正多面体または準正多面体の各頂点に位置している。
例えば、図13(a)に示すものでは、第1領域204は頂点が球体202の表面に位置するように仮想された正六面体の6つの頂点に位置している。したがって、第1領域は6個形成されている。
【0088】
また、図13(b)に示す他の例では、例えば、第1領域204は頂点が球体202の表面に位置するように仮想された正四面体の4つの頂点に位置しており、第1領域は4個形成されている。第1領域204は球体202の表面に複数形成されていればよく、その数は、4個に限定されるものではなく任意である。
【0089】
ただし、第1領域204は、球体202の回転軸がどのような方向に位置しても、なるべく多くの第1領域204が移動しながら(回転しながら)送信波W1を反射することが、安定した反射波W2を得る上で好ましい。
【0090】
また、複数の第1領域204はそれぞれ球体202の表面上で互いに直交する直線状に延在して格子状を呈していてもよい。
この場合、第2領域206は直線状に延在する第1領域204によって矩形状に区画されることになる。
【0091】
第1領域204は、反射波W2の強度を十分に確保することができればよく、例えば、次に示す従来公知の関係式を用いることによって、第1領域204の表面抵抗として必要な範囲を求めることができる。
すなわち、電波反射率:Γ、表面抵抗:Rとしたとき、式(10)、式(11)が成立する。
【0092】
Γ=(377−R)/(377+R) (10)
R=(377(1−Γ))/(1+Γ) (11)
【0093】
なお、Γ=1は全反射、Γ=0は無反射を示し、377は空気の特性インピーダンスを示す。式(11)より、Γ=1のときR=0であり、Γ=0のときR=377である。
【0094】
ここで、Γ=0.5とすると、R=(377×0.5)/1.5≒130となる。
したがって、電波反射率Γとして十分な値をΓ=0.5(50%)以上とすると、表面抵抗Rは130Ω/sq.以下とすることが必要となる。
また、電波反射率Γが0.9(90%)以上であり、したがって、表面抵抗Rが20Ω/sq.以下であることが、反射波W2の強度を確保する上でより好ましい。
なお、電波反射率Γは、導波管法や自由空間法など従来公知方法によって測定することができるものである。
【0095】
第1領域204を構成する材料として、導電性を有する材料を使用することができる。
導電性を有する材料は、例えば、金属粉末を含む塗料である。このような塗料を球体202の表面に塗布または印刷することで、第1領域204が形成される。
このような塗料として、例えば、亜鉛を含むさび止め用の塗料を使用するなど、従来公知のさまざまな塗料が使用可能である。
【0096】
また、導電性を有する材料は、金属箔であってもよい。このような金属箔を球体202の表面に接着剤で貼り付けることで第1領域204が形成される。
このような金属箔としてアルミニウム箔など従来公知のさまざまな金属箔が使用可能である。
また、導電性を有する材料を蒸着することで形成された蒸着膜または不連続蒸着膜で第1領域204を形成してもよい。
【0097】
なお、不連続蒸着膜は、真空中で行う不連続蒸着によって形成されている。不連続蒸着膜とは、ターゲットから蒸発した原子が被蒸着体としての球体202の表面に付着して複数の成長核が成長する過程において、各成長核どうしが接触しない段階、言い換えると各成長核どうしが連続していない段階で蒸着を止めて、成長核間が電気的に導通していない状態の蒸着膜のことである。したがって、不連続蒸着膜では、成長核どうしが電気的に導通せず非導電体となっているが、電波反射性を有する。
【0098】
また、上述した金属粉末あるいは金属箔あるいは蒸着膜を形成する金属としては、例えば、銀、銅、金、ニッケル、アルミ、鉄、チタン、タングステンなどの従来公知のさまざまな金属が使用可能である。
なお、導電性を有する材料として、金属以外の導電物質、例えば、カーボンを含む材料など従来公知のさまざまな材料が使用可能である。
【0099】
第2領域206は、前記の球面上で第1領域204を除く残りの部分に形成され電波反射率が第1領域204よりも低い領域である。
言い換えると、第2領域206は、第1領域204よりも低い電波反射特性を有するものである。
本実施形態では、第2領域206は、第1領域204を除く残りの表面の部分に(第1領域204を除く残りの前記カバー層の表面の部分に)形成され導電性を有さない。
【0100】
本実施形態では、第2領域206は、ゴルフボールbの表面を形成する合成樹脂で形成されている。
なお、第1領域204の電波反射率と第2領域206の電波反射率との比(差)を大きく確保する上で第2領域206の電波反射率は1%以下、表面抵抗は400Ω/sq.以上であることが好ましい。
【0101】
なお、第1領域204の総面積は、球体202の表面積の50%以下であることが好ましく、2%〜30%がより好ましい。
第1領域204の総面積が球体202の表面積の50%以下であると、第1領域204で反射される電波の反射強度と、第2領域206で反射される電波の反射強度との比(差)を大きく確保する上で有利となり、2%〜30%であると、上記の反射強度の比(差)を大きく確保する上でより有利となる。
このように第1領域204と第2領域206とで反射強度との比(差)を大きく確保すると、スピン量の計測を安定して行う上で有利となる。
【0102】
なお、本実施形態では、第1、第2領域204、206が球体202の中心を中心とした球面上に形成されている場合について説明した。
しかしながら、第1、第2領域204、206が形成される面は、外表面に限定されるものではなく、球体202の内部であってもよく、この場合には、球面、正多面体をなす面、準正多面体をなす面であってもよく、要するに、球体202が回転することで第1、第2領域204、206が回転し、アンテナ14a〜14dに対して第1、第2領域204、206が交互に向けばよい。
このように、ゴルフボールbは、電波反射性を有する第1領域204と、電波反射率が第1領域204よりも低い第2領域206とを有するものであればよい。
【0103】
次に、ボール計測装置10によるゴルフボールbの挙動測定方法について説明する。
まず、ゴルファがゴルフクラブ100を把持してスウィングし、ゴルフクラブヘッド102でゴルフボールbを打ち出すと、ボール計測装置10によるゴルフボールの挙動が測定される。
具体的には、各アンテナ14a〜14dから、それぞれ送信波W1がゴルフボールbに向けて送信され、ゴルフボールbからの反射波W2が各アンテナ14a〜14dで受信される。各アンテナ14a〜14dで反射波W2が受信されると、それぞれ受信信号が生成される。そして、各受信信号がドップラーセンサ16a〜16dに供給され、各ドップラーセンサ16a〜16dで、それぞれドップラー周波数Fd1〜Fd4が作成されて、ドップラー周波数Fd1〜Fd4が得られる(ステップS10)。
【0104】
各ドップラー信号Sd1〜Sd4は、各信号処理部18a〜18dによって、デジタルデータ(2値化信号)に変換された後、検出部28によって各ドップラー周波数Fd1〜Fd4に対応付けられた各中間データに変換され、これら各中間データは、サンプリングされた後、時系列データとして蓄積部30に蓄積される。
【0105】
次に、解析部34は、蓄積部30に蓄積された各中間データを周波数解析する(ステップS12)。これにより、周波数ごとの信号強度の分布を示す各信号強度分布データが作成される。
以下、第1の信号強度分布データの作成方法について、残りの第2の信号強度分布データ〜第4の信号強度分布データについては説明を省略するが、残りの第2の信号強度分布データ〜第4の信号強度分布データについても第1の信号強度分布データと同様にして作成することができる。
【0106】
この場合、図15に示すドップラー信号Sd1の時間波形αは、第1の中間データに対応するものである。図15に示すドップラー信号Sd1の時間波形αは、例えば、全測定時間が200(msec)であり、FFT解析データ数(サンプリングデータ数)が8129である。
この時間波形αにおいて、40(msec)、データ数2000を1つの区画単位として、20(msec)間隔で(i)〜(ix)の9区画に分けてFFT解析を行う。すなわち、FFT解析データ数8129のうち、2000データに実測データを用い、残りのデータには0を当てはめて、実測データを割合が約25%の条件で、実測データの領域をずらしてFFT解析を行う。この結果、図16(a)〜(d)、図17(a)〜(e)に示す各信号強度分布データが得られる。
なお、図16(a)〜(d)、図17(a)〜(e)に示す各信号強度分布データは、図15に示す(i)〜(ix)の9区画に対応している。
【0107】
図16(a)に示すように、まず、ゴルフクラブヘッドが由来の領域β1の信号強度が高くなり、その後、図16(b)に示すように、ゴルフボールの移動に由来する領域β2の信号強度が高くなる。そして、図16(c)、(d)に示すように、ゴルフクラブヘッドが由来の領域β1の信号強度が小さくなるとともに、ゴルフボールの移動に由来する領域β2の信号強度が高くなる。その後、図17(a)に示すように、ゴルフクラブヘッドが由来の領域β1の信号強度が極端に小さくなり、ゴルフボールの移動に由来する領域β2の信号強度も小さくなる。そして、図17(b)に示すように、ゴルフボールの移動に由来する領域β2の信号強度が極端に小さくなり、更には、図17(c)〜(e)に示すように、ゴルフクラブヘッドが由来の領域β1、およびゴルフボールの移動に由来する領域β2のいずれも、信号強度が殆ど検出されなくなる。このように、ゴルフボールの打撃の際のゴルフボールの移動に由来する領域β2の信号を、ゴルフクラブヘッドとは分離して検出することができる。
【0108】
次に、移動速度算出部36により、各信号強度分布データについて、移動平均処理をし、最大値Dmaxを算出し、この最大値Dmaxに基づいてアンテナ14a〜14dでのゴルフボールの速度をそれぞれ算出する(ステップS14)。
【0109】
次に、移動速度算出部36において、アンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度に基づいてゴルフボールbの移動方向Dbを算出する(ステップS16)。
次に、移動速度算出部36において、アンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度のいずれか1つの速度と、ゴルフボールbの移動方向Dbとに基づいてゴルフボールbの移動方向Dbにおける移動速度Vを算出する(ステップS18)。
【0110】
次に、スピン量算出部38において、第4の信号強度分布データにおける周波数の領域β2での周波数の差に基づいてゴルフボールbの第1のスピン量SPAを算出し、第2の信号強度分布データにおける周波数の領域β2での周波数の差に基づいてゴルフボールbの第2のスピン量SPBを算出する(ステップS20)。さらに、スピン量算出部38において、ゴルフボールbの回転軸Mの向きを、第1のスピン量SPA、第2のスピン量SPBの差分ΔSPに基づいて算出する(ステップS22)。なお、上述のように、第1のスピン量SPAがゴルフボールbのスピン量の実測値である。
【0111】
最後に、算出された移動速度V、移動方向Db、スピン量SP、回転軸Mの向きが表示部24の表示画面に表示させる(ステップS24)。
表示部24の表示画面に表示する場合、例えば、ゴルフボールbの移動方向Dbは、左右角度θx、上下角度θyの単位は(度)、移動速度Vの単位は(m/s)、スピン量SPの単位は(rpm)として表示する。なお、移動方向Dbの表示方法は、特に限定されるものではない。
【0112】
表示部24の表示画面に表示する場合、例えば、左右角度θxについては、基準線L01を中心(0度)とし、左方向の角度を正の値、右方向の角度を負の値として示し、上下角度θyについては、基準線L01を中心(0度)とし、上方向の角度を正の値、下方向の角度を負の値として示すことができる。なお、正と負の符号は上述のものと逆でも良い。また、バックスピンの場合のスピン量SPは、例えば、逆回転方向のスピン量は正の値、順回転方向のスピン量は負の値で示すことができる。
また、サイドスピンの場合のスピン量SPは、例えば、平面視時計回り方向のスピン量は正の値で、反時計回り方向のスピン量は負の値で示すことができる。なお、上述のように、図11、図12に示すように差分ΔSPとスピン量SPとは相関関係にある。
【0113】
本実施形態のボール計測装置10および計測方法においては、FFT解析データ数のうち、実測データの割合を、少なくとも20%として、残りのデータには0を当てはめてFFT解析を行うことにより、ゴルフクラブヘッドとゴルフボールの挙動を表す周波数を分離することができ、更には、移動速度、スピン量を算出するためのゴルフボールの移動に由来する領域についても、十分な分解能を得ることができる。このため、移動速度、スピン量を算出することができる。しかも、解析に要する実質的なデータ数が少ないため、FFT解析の処理速度を速くすることができる。これにより、移動速度、スピン量の算出に要する時間を短縮することができる。よって、ゴルフボールbの移動速度V、移動方向Db、スピン量SP、回転軸Mの向きの算出に要する時間を短縮することができる。
【0114】
また、本実施形態においては、アンテナを4つ設ける構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、アンテナを1つ設ける構成でもよい。この場合においても、ゴルフボールの移動速度、スピン量を算出することができるとともに、ゴルフボールの移動速度、スピン量の算出に要する時間を短縮することもできる。
さらには、本実施形態においては、ゴルフボールを例にして説明したが、ゴルフボールに限定されるものではなく、野球のボール、サッカーボール、バレーボール等の球技用のボールについても、移動速度、移動方向、スピン量、回転軸の向き等について測定することができる。
【0115】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明のボール計測装置およびボール計測方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0116】
10 ボール計測装置
14a〜14d 第1のアンテナ〜第4のアンテナ
16a〜16d 第1のドップラーセンサ〜第4のドップラーセンサ
18a〜18d 第1の信号処理部〜第4の信号処理部
20 演算処理ユニット
22 CPU
24 表示部
26 操作部
28 検出部
30 蓄積部
32 挙動算出部
34 解析部
36 移動速度算出部
38 スピン量算出部
b ゴルフボール
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドップラー法を用いたボール計測装置およびボール計測方法に関し、特に、ゴルフボールの速度、スピン量を計測するボール計測装置およびボール計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、移動体の速度を計測する方法として、電波、または超音波を送信波として発信し、移動体からの反射波との周波数変化から速度を算出するドップラー法が広く知られている。このドップラー法は、ゴルフボール、野球用ボール等の球技用ボールの移動速度を計測する速度計測装置等に用いられている。
速度計測装置としては、例えば、ドップラーセンサから出力されるドップラー信号を、例えば、FFT(高速フーリエ変換)を用いて解析することにより、一定期間における移動体の平均速度を求めるものが提案されている。これ以外にも、ドップラー法を用いたゴルフに関する計測装置が種々提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1には、レーダー信号を送信するように、及び動くクラブヘッドから反射されたレーダー信号を受信するように動作する送受信器と、送受信器に接続され、送受信されたレーダー信号から速度信号を検出するように動作する検出器と、検出器に接続され、速度信号を処理するように、及び動くクラブヘッド速度を示すスイング速度出力信号とクラブヘッドスイング時間を示すスイングテンポ出力信号とを抽出するようにプログラムされたプロセッサとを具備するゴルフクラブのスイングの動きを測定する装置が記載されている。
送受信器は、連続波信号を送受信するものであり、クラブヘッドの速度は、連続波信号からドップラー信号を返送することによって捕捉することができる。連続波信号は、超音波信号、電磁波信号、又は各種連続波信号とすることができる。
特許文献1においては、最大スイング速度に対する値を記憶して、最長期待スイング時間より長い所定の時間で任意に検出された動きの速度を測定し続ける。この時間において、最大速度の記憶値は、先に記憶された速度よりも速い任意の測定速度によって置換えられる。
【0004】
特許文献2には、ドップラー信号を出力するドップラーセンサと、ドップラーセンサによって出力されたドップラー信号に基づく当該ドップラー信号の周期に関するデータを複数個蓄積可能な蓄積手段と、ドップラーセンサによって出力されたドップラー信号に基づき当該ドップラー信号の周期に関するデータを得て蓄積手段への蓄積を行い、蓄積手段に蓄積されたデータ群に基づきスイング速度を算出する速度算出手段とを備えるスイング速度測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−326318号公報
【特許文献2】特開2008−246139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1、2では、スイングの最高速等を計測することに留まっており、ゴルフボール等のボールの挙動を表わす様々な物理量を計測する上では十分なものとはいえない。
そこで、現在、ドップラーセンサから出力されるドップラー信号を解析することにより、打撃されたゴルフボールの移動速度に加えてスピン量をも計測する計測装置が提供されている(例えば、TrackMan(TrackMan A/S社の登録商標))。
【0007】
しかしながら、この計測装置では、スピン量を算出するに必要なドップラー信号のデータを得るために、打撃されたゴルフボールが100m単位で空中を飛んでいる期間にわたって長時間計測する必要がある。このため、ゴルフボールからの反射波を確実に受信する必要上、装置からの送信波の出力を高くする必要があり、速度計測装置が大掛かりになり、高価になるという問題がある。
また、上述の計測装置を用いて、ゴルフシミュレータ等のように室内で打撃したゴルフボールの挙動を計測するような場合、ゴルフボールの飛距離は、数m程度の短距離である。このため、上述の計測装置では、スピン量を計測するに必用なデータを得ることができず、正確なスピン量を求めることができないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、ゴルフボール等のボールの速度、スピン量を容易に計測することができるボール計測装置およびボール計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、電波反射性を有する第1領域と電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、供給される送信信号に基づいて送信波を送信するとともに、前記ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成するアンテナと、前記アンテナに前記送信信号を供給するとともに、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいて、ドップラー周波数を有するドップラー信号を作成するドップラーセンサと、前記ドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを作成する解析部と、前記信号強度分布データに基づいて、前記ボールの移動速度を算出する移動速度算出部と、前記信号強度分布データに基づいて前記ボールのスピン量を算出するスピン量算出部とを有し、前記アンテナは、指向性アンテナで構成されるものであり、前記解析部は、前記ドップラー信号を周波数解析する際に、全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータに前記ドップラー信号を用い、残りのデータを0とすることを特徴とするボール計測装置を提供するものである。
【0010】
前記解析部は、更に前記信号強度分布データに移動平均処理をして、移動平均の波形データを作成するものであり、前記移動速度算出部は、前記移動平均の波形データに基づいて前記ボールの移動速度を算出し、前記スピン量算出部は、前記移動平均の波形データに基づいて前記ボールのスピン量を算出することが好ましい。
この場合、前記移動速度算出部は、前記移動平均の波形データのうち、前記ボールの移動に由来する周波数領域での信号強度の最大値を算出し、前記最大値に基づいて前記ボールの移動速度を算出することが好ましい。
【0011】
また、前記スピン量算出部は、前記移動平均の波形データのうち、前記ボールの移動に由来する周波数領域において信号強度の最大値を含み山状に変化する部分を算出し、前記山状に変化する部分の周波数の差を算出し、前記周波数の差に基づいて前記ボールのスピン量を算出することが好ましい。
さらに、前記周波数の差は、前記信号強度の最大値をDmaxとし、閾値DtをDmax・n(ただし0<n<1)とした場合、前記信号強度が前記閾値Dtとなる部分における周波数の差であることが好ましい。
【0012】
本発明の第2の態様は、電波反射性を有する第1領域と電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、供給される送信信号に基づいて送信波を送信するとともに、前記ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成する第1のアンテナ〜第4のアンテナと、前記第1のアンテナ〜前記第4のアンテナのそれぞれに前記送信信号を供給するとともに、前記第1のアンテナ〜前記第4のアンテナから供給される前記各受信信号に基づいて、ドップラー周波数を有するドップラー信号を作成する第1のドップラーセンサ〜第4のドップラーセンサと、前記第1のドップラーセンサ〜前記第4のドップラーセンサで作成された第1のドップラー信号〜第4のドップラー信号を、それぞれ周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す第1の信号強度分布データ〜第4の信号強度分布データを作成する解析部と、前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに基づいて前記ボールの移動速度および移動方向を算出する移動速度算出部と、前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに基づいて前記ボールのスピン量を算出するスピン量算出部とを有し、前記解析部は、前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を周波数解析する際に、前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号のそれぞれについて、全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータに前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を用い、残りのデータを0とするものであり、前記第1のアンテナ〜第4のアンテナは、指向性アンテナで構成されるものであり、前記ボールの移動方向とは反対側に設けられており、前記第1のアンテナ〜前記第3のアンテナが水平方向に所定の間隔をあけて第2のアンテナを中心にして並べられ、第4のアンテナが前記第2のアンテナの上方に垂直方向に所定の間隔をあけて配置されていることを特徴とするボール計測装置を提供するものである。
【0013】
前記解析部は、更に前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに移動平均処理をして、第1の移動平均の波形データ〜第4の移動平均の波形データを作成するものであり、前記移動速度算出部は、前記第1の移動平均の波形データ〜前記第4の移動平均の波形データについて、それぞれ、前記ボールの移動に由来する周波数領域での信号強度の最大値を算出し、前記第1の移動平均の波形データ〜前記第4の移動平均の波形データの各前記最大値に基づいて前記ボールの移動速度および移動方向を算出することが好ましい。
【0014】
また、前記第2のアンテナは指向方向を示す第1の仮想軸が水平方向に延在し、前記第4のアンテナは指向性を示す第2の仮想軸が前記第1の仮想軸と交差するように配置されており、前記解析部は、更に前記第2の信号強度分布データおよび前記第4の信号強度分布データに移動平均処理をして、第2の移動平均の波形データおよび第4の移動平均の波形データを作成するものであり、前記スピン量算出部は、前記第2の移動平均の波形データおよび前記第4の移動平均の波形データについて、それぞれ前記ボールの移動に由来する周波数領域において信号強度の最大値を含み山状に変化する部分を算出し、前記山状に変化する部分の周波数の差を算出して、前記第4の移動平均の波形データの前記周波数の差に基づいて前記ボールのスピン量を算出するとともに、前記第2の移動平均の波形データの前記周波数の差と前記第4の移動平均の波形データの前記周波数の差との差分に基づいて、前記ボールの回転軸の向きを算出することが好ましい。
【0015】
本発明の第3の態様は、電波反射性を有する第1領域と電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、指向性アンテナで構成されるアンテナにより、供給される送信信号に基づいて送信波を送信し、前記ボールで反射された反射波を前記アンテナで受信して受信信号を生成し、前記受信信号に基づいて、ドップラー周波数を有するドップラー信号を作成する工程と、前記ドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを作成する工程と、前記信号強度分布データに基づいて、前記ボールの移動速度を算出するとともに、前記ボールのスピン量を算出する工程とを有し、前記ドップラー信号を周波数解析する際に、全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータに前記ドップラー信号を用い、残りのデータを0とすることを特徴とするボール計測方法を提供するものである。
【0016】
前記ボールの移動速度を算出する工程は、更に前記信号強度分布データに移動平均処理をして移動平均の波形データを作成し、前記移動平均の波形データに基づいて前記ボールの移動速度を算出するものであり、前記ボールのスピン量を算出する工程は、前記移動平均の波形データに基づいて前記ボールのスピン量を算出するものであることが好ましい。
さらに、前記ボールの移動速度を算出する工程は、前記移動平均の波形データのうち、前記ボールの移動に由来する周波数領域での信号強度の最大値を算出し、前記最大値に基づいて前記ボールの移動速度を算出することが好ましい。
さらにまた、前記ボールの移動速度を算出する工程は、前記移動平均の波形データのうち、前記ボールの移動に由来する周波数領域において信号強度の最大値を含み山状に変化する部分を算出し、前記山状に変化する部分の周波数の差を算出し、前記周波数の差に基づいて前記ボールのスピン量を算出することが好ましい。
さらに、前記周波数の差は、前記信号強度の最大値をDmaxとし、閾値DtをDmax・n(ただし0<n<1)とした場合、前記信号強度が前記閾値Dtとなる部分における周波数の差であることが好ましい。
【0017】
本発明の第4の態様は、電波反射性を有する第1領域と電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、指向性アンテナで構成される第1のアンテナ〜第4のアンテナにより送信波を送信し、前記ボールで反射された反射波を各前記第1のアンテナ〜前記第4のアンテナで受信して受信信号を生成し、前記各受信信号に基づいて、ドップラー周波数を有する第1のドップラー信号〜第4のドップラー信号を作成する工程と、前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を、それぞれ周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す第1の信号強度分布データ〜第4の信号強度分布データを作成する工程と、前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに基づいて前記ボールの移動速度および移動方向を算出するとともに、前記ボールのスピン量を算出する工程とを有し、前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を周波数解析する際に、前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号のそれぞれについて、全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータに前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を用い、残りのデータを0とするものであり、前記第1のアンテナ〜第4のアンテナは、前記ボールの移動方向とは反対側に設けられており、前記第1のアンテナ〜前記第3のアンテナが水平方向に所定の間隔をあけて第2のアンテナを中心にして並べられ、第4のアンテナが前記第2のアンテナの上方に垂直方向に所定の間隔をあけて配置されていることを特徴とするボール計測方法を提供するものである。
【0018】
前記ボールの移動速度および移動方向を算出する工程は、更に前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに移動平均処理をして、第1の移動平均の波形データ〜第4の移動平均の波形データを作成し、前記第1の移動平均の波形データ〜前記第4の移動平均の波形データについて、それぞれ、前記ボールの移動に由来する周波数領域での信号強度の最大値を算出し、前記第1の移動平均の波形データ〜前記第4の移動平均の波形データの各前記最大値に基づいて前記ボールの移動速度および移動方向を算出することが好ましい。
【0019】
さらに、前記第2のアンテナは指向方向を示す第1の仮想軸が水平方向に延在し、前記第4のアンテナは指向性を示す第2の仮想軸が前記第1の仮想軸と交差するように配置されており、前記ボールのスピン量を算出する工程は、更に前記第2の信号強度分布データおよび前記第4の信号強度分布データに移動平均処理をして、第2の移動平均の波形データおよび第4の移動平均の波形データを作成し、前記第2の移動平均の波形データおよび前記第4の移動平均の波形データについて、それぞれ前記ボールの移動に由来する周波数領域において信号強度の最大値を含み山状に変化する部分を算出し、前記山状に変化する部分の周波数の差を算出して、前記第4の移動平均の波形データの前記周波数の差に基づいて前記ボールのスピン量を算出するとともに、さらに、前記第2の移動平均の波形データの前記周波数の差と前記第4の移動平均の波形データの前記周波数の差との差分に基づいて、前記ボールの回転軸の向きを算出することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ゴルフボール等のボールの速度、スピン量を容易に計測することができる。しかも、ボールの速度、スピン量の算出に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るボール計測装置を示す模式図である。
【図2】図1に示す実施形態のボール計測装置のアンテナの配置を示す模式的平面図である。
【図3】(a)は、図1に示す実施形態のボール計測装置のアンテナの配置を示す側面図であり、(b)は、図1に示す実施形態のボール計測装置のアンテナの配置を示す上面図である。
【図4】ゴルフボールのスピン量の測定の原理を示す模式図である。
【図5】(a)は第4のアンテナの仮想軸に沿ってゴルフボールを見た状態を示す模式図であり、(b)は第2のアンテナの仮想軸に沿ってゴルフボールを見た状態を示す模式図であり、(c)は第4のアンテナの仮想軸に沿ってゴルフボールを見た状態を示す模式図、(d)は第2のアンテナの仮想軸に沿ってゴルフボールを見た状態を示す模式図であり、(e)は第4のアンテナの仮想軸に沿ってゴルフボールを見た状態を示す模式図であり、(f)は第2のアンテナの仮想軸に沿ってゴルフボールを見た状態を示す模式図である。
【図6】ドップラー信号の時間波形の一例を示すグラフである。
【図7】図6に示すドップラー信号の時間波形を周波数解析することによって得られた周波数ごとの信号強度の分布を示すグラフである。
【図8】図7に示すグラフの要部拡大図である。
【図9】(a)は、ドップラー信号の時間波形を示すグラフであり、(b)は、図9(a)に示すドップラー信号の時間波形について、条件を変えてフーリエ変換した結果を示すグラフである。
【図10】(a)は、ドップラー信号の時間波形を示すグラフであり、(b)は、図10(a)に示すドップラー信号の時間波形について、条件を変えてフーリエ変換した結果を示すグラフである。
【図11】バックスピンしているゴルフボールのスピン量SPと差分ΔSPの実測結果を示すグラフである。
【図12】サイドスピンしているゴルフボールのスピン量SPと差分ΔSPの実測結果を示すグラフである。
【図13】(a)は、本発明の実施形態のボール計測装置に用いられるゴルフボールの一例を示す模式図であり、(b)は、本発明の実施形態のボール計測装置に用いられるゴルフボールの他の例を示す模式図である。
【図14】本発明の実施形態のボール計測装置による計測方法を工程順に示すフローチャートである。
【図15】本発明の実施形態のボール計測装置における周波数解析方法を示す模式図である。
【図16】(a)〜(d)は、図15に示す周波数解析方法により得られた結果を示すグラフである。
【図17】(a)〜(e)は、図15に示す周波数解析方法により得られた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のボール計測装置およびボール計測方法を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るボール計測装置を示す模式図である。
【0023】
図1に示すボール計測装置10は、例えば、ゴルフクラブをスイングしてゴルフクラブヘッドにより打撃されたゴルフボールの挙動を計測するものである。このボール計測装置10は、例えば、4つの第1のアンテナ14a〜第4のアンテナ14d、4つの第1のドップラーセンサ16a〜第4のドップラーセンサ16d、4つの第1の信号処理部18a〜第4の信号処理部18d、演算処理ユニット20、表示部24、操作部26を有する。演算処理ユニット20は、CPU22、検出部28と、蓄積部30と、挙動算出部32とを有する。
第1のアンテナ14a〜第4のアンテナ14dは、それぞれ第1のドップラーセンサ16a〜第4のドップラーセンサ16dに接続されている。
なお、以降、第1のアンテナ14a〜第4のアンテナ14dをアンテナ14a〜14dという。また、第1のドップラーセンサ16a〜第4のドップラーセンサ16dをドップラーセンサ16a〜16dという。
各ドップラーセンサ16a〜16dは、第1の信号処理部18a〜第4の信号処理部18dの各信号処理部に接続されている。
【0024】
ボール計測装置10において、CPU22と、検出部28と、蓄積部30と、挙動算出部32は、回路等のハードウェアで構成されたものであっても、CPU22が制御プログラムを実行することで実現されるものであってもよい。
CPU22により、表示部24、検出部28、蓄積部30および挙動算出部32が制御されるとともに、表示部24の表示、各検出部28、蓄積部30および挙動算出部32の間のデータの移動も制御される。また、CPU22は、操作部26による指示入力に基づく表示部24の表示も制御される。
【0025】
アンテナ14a〜14dは、それぞれドップラーセンサ16a〜16dから供給される送信信号に基づいて送信波W1としてのマイクロ波を移動体に向けて送信すると共に、ゴルフボールbで反射された反射波W2を受信して受信信号を生成し、さらに各受信信号を各ドップラーセンサ16a〜16dに供給するものである。
アンテナ14a〜14dは、指向性アンテナにより構成されるものであり、例えば、パラボラアンテナが用いられる。アンテナ14a〜14dは、指向性アンテナであれば、パラボラアンテナに限定されるものではなく、パラボラアンテナ以外の従来公知の様々な指向性アンテナを使用することができる。
【0026】
本実施形態においては、図2および図3(a)に示すように、ゴルフボールbの移動方向(飛翔方向)の反対側に、4つのアンテナ14a〜14dが配置されている。4つのアンテナ14a〜14dは、例えば、同一フレーム(図示せず)に設けてもよい。
4つのアンテナ14a〜14dは、例えば、ゴルフボールbから1m〜1.5m程度後方の位置に設置される。なお、ゴルフボールbは、例えば、ティー104に載置される。
【0027】
図2に示すように、第2のアンテナ14bの上方に第4のアンテナ14dが第2のアンテナ14bと水平方向における中心位置を一致させてΔy間隔をあけて配置されている。
図3(a)に示すように、第4のアンテナ14dは、指向方向を示す仮想軸LDが水平方向に延在するとともに、第2のアンテナ14bは、指向方向を示す仮想軸LBが仮想軸LDとの交点がティー104に載置されたゴルフボールbの中心Oを通る鉛直線Lと交差するように配置されている。このようにすることで、第2のアンテナ14b、第4のアンテナ14dからゴルフボールbに到達する送信波W1の電界強度の確保が図られている。
【0028】
図2に示すように、第1のアンテナ14a〜第3のアンテナ14cが水平方向に所定の間隔をあけて第2のアンテナ14bを中心にして並べられており、第2のアンテナ14bを挟んで第1のアンテナ14aと第3のアンテナ14cとが垂直方向における中心位置を一致させて、Δx/2間隔をあけて配置されている。
また、図3(b)に示すように、平面視の状態で仮想軸LA、LCは、ゴルフボールbを打撃する際の目標線L0、すなわち、ティー104からゴルフボールbを打撃する目標地点までを結ぶ仮想線と一致している。
平面視の状態で第1のアンテナ14a、第3のアンテナ14cの仮想軸LA、LCが、ティー104に載置されたゴルフボールbの中心Oを通る鉛直線と交差するように配置されている。
なお、仮想軸LA、LCの交差点と第1のアンテナ14aの距離と、交差点と第3のアンテナ14cの距離とは同一である。このようにすることで、第1のアンテナ14a、第3のアンテナ14cからゴルフボールbに到達する送信波W1の電界強度の確保が図られている。
【0029】
各ドップラーセンサ16a〜16dは、ゴルフボールbに向けて送信波W1を送信する各アンテナ14a〜14dに送信信号を供給すると共に、ゴルフボールbで反射された反射波W2を受信して受信信号を生成する各アンテナ14a〜14dから、それぞれ受信信号が供給される。ドップラーセンサ16a〜16dは、それぞれ、この受信信号に基づいてドップラー周波数を有する第1のドップラー信号Sd1〜第4のドップラー信号Sd4をそれぞれ作成するものである。ドップラー周波数を有するドップラー信号Sd2としては、例えば、後述するように波形αのものが得られる(図6参照)。
なお、以降、第1のドップラー信号Sd1〜第4のドップラー信号Sd4をドップラー信号Sd1〜Sd4という。
【0030】
ドップラー信号Sd1〜Sd4とは、前述の送信信号の周波数F1と前述の受信信号の周波数F2との差分の周波数F1−F2で定義される第1のドップラー周波数Fd1〜第4のドップラー周波数Fd4を有する信号である。
なお、以降、第1のドップラー周波数Fd1〜第4のドップラー周波数Fd4をドップラー周波数Fd1〜Fd4という。
ドップラーセンサ16a〜16dとしては、例えば、市販されている種々のものが使用可能である。
なお、前述の送信信号としては、例えば、搬送波周波数が24GHzのマイクロ波が使用可能であり、ドップラー信号Sd1〜Sd4が得られるものであれば送信信号の周波数は、特に限定されない。
【0031】
4つの第1の信号処理部18a〜第4の信号処理部18dは、各ドップラーセンサ16a〜16dから供給される各ドップラー信号Sd1〜Sd4を増幅し、予め定められた閾値を基準としてローレベルとハイレベルとの2値をとる2値化信号に変換するものである。すなわち、第1の信号処理部18a〜第4の信号処理部18dにより、各ドップラー信号Sd1〜Sd4は、それぞれ、所定のサンプリング周波数でサンプリングされてデジタルデータに変換される。
したがって、各ドップラー信号Sd1〜Sd4の周期は2値化信号の周期に対応することになり、言い換えると、各ドップラー信号Sd1〜Sd4の周波数は2値化信号の周波数に対応することになる。
なお、以降、第1の信号処理部18a〜第4の信号処理部18dを信号処理部18a〜18dという。
【0032】
演算処理ユニット20は、各信号処理部18a〜18dから供給される増幅された2値化データを入力して種々の処理を行うことにより、ゴルフボールbの移動方向、移動速度、スピン量を算出するものである。
【0033】
検出部28は、各信号処理部18a〜18dから供給される2値化信号(ドップラー信号Sd1〜Sd4)をドップラー周波数Fd1〜Fd4に対応付けられた第1の中間データ〜第4の中間データに変換すると共に、第1の中間データ〜第4の中間データを予め定められたサンプリング周期でサンプリングするものである。なお、以降、第1の中間データ〜第4の中間データを各中間データという。
本実施形態では、検出部28は、2値化信号の周期をカウンタを用いて計数することにより2値化信号の周期を各中間データとして作成する。
言い換えると、検出部28は、ドップラー信号Sdの周期をカウントすることにより時系列データとしての周期データを得ることにより、この周期データをドップラー周波数Fdに対応付けられた各中間データとして作成する。したがって、各中間データの値とドップラー周波数Fd1〜Fd4は反比例することになる。
なお、本実施形態では、ドップラー周波数Fd1〜Fd4に対応付けられた各中間データが周期のデータである場合について説明するが、各中間データはドップラー周波数Fd1〜Fd4を表す周波数のデータであってもよい。
【0034】
蓄積部30は、検出部28でサンプリングされた各中間データを時間経過に従って順番に蓄積するものである。この蓄積部30は、演算処理ユニット20において、メモリとしても機能するものである。
【0035】
挙動算出部32は、蓄積部30に蓄積された各中間データに基づいてゴルフボールbの移動方向、移動速度、スピン量を算出するものである。挙動算出部32は、解析部34と、移動速度算出部36と、スピン量算出部38とを備えている。
【0036】
ここで、ゴルフボールbの移動速度およびスピン量の測定原理について説明する。
従来から知られているように、ドップラー周波数Fdは式(1)で表される。
Fd=F1−F2=V・F1/c (1)
ただし、V:ゴルフボールbの移動速度(m/s)、c:光速(3×108m/s)
したがって、(1)式をVについて解くと、(2)式となる。
V=c・Fd/F1 (2)
すなわち、ゴルフボールbの移動速度Vは、ドップラー周波数Fdに比例することになる。このため、ドップラー信号Sdからドップラー周波数Fdを検出し、このドップラー周波数Fdからゴルフボールbの移動速度Vを求めることができる。
【0037】
図4はゴルフボールのスピン量の測定の原理を示す模式図である。
ゴルフボールbの表面のうち、送信波W1の送信方向となす角度が90度に近い表面の部分である第1部分Aでは送信波W1が効率よく反射され、したがって、第1部分Aでは反射波W2の強度が高い。
一方、ゴルフボールの表面のうち、送信波W1の送信方向となす角度が0度に近い表面の部分である第2部分B、第3部分Cでは送信波W1が効率よく反射されず、したがって、第2部分B、第3部分Cでは反射波W2の強度が低い。
第2部分Bは、ゴルフボールbのスピンによって移動する方向rsとゴルフボールの移動方向とが反対向きとなる部分である。
第3部分Cは、ゴルフボールbのスピンによって移動する方向rsとゴルフボールの移動方向とが同じ向きとなる部分である。
【0038】
第1部分Aで反射される反射波W2に基づいて検出される速度を第1速度VA、第2部分Bで反射される反射波W2に基づいて検出される速度を第2速度VB、第3部分Cで反射される反射波W2に基づいて検出される速度を第3速度VCとする。
すると、以下の式が成立する。
VA=V (3)
VB=VA−ωr (4)
VC=VA+ωr (5)
(ただし、Vはゴルフボールbの移動速度、ωは角速度(rad/s)、rはゴルフボールbの半径)
【0039】
したがって、原理的には、式(3)に基づいて第1速度VAからゴルフボールbの移動速度Vを算出でき、(4)式または(5)式に基づいて、第2、第3速度VB、VCから角速度ωが求められるので、角速度ωからスピン量を算出できることになる。
しかしながら、本実施形態では、上記の式に基づいて移動速度V、スピン量を算出するのではなく、以下に説明するように、ドップラー信号Sdを周波数解析することによって周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを作成し、この信号強度分布データから移動速度V、スピン量を求めるようにした。
【0040】
次に、各アンテナ14a〜14dの位置と、ゴルフボールbのスピン量と、ゴルフボールbの回転軸との関係について説明する。
図5(a)、図5(c)、図5(e)は第4のアンテナ14dの仮想軸LD(図3(a))に沿ってゴルフボールbを見た状態を示す模式図であり、図5(b)、図5(d)、図5(f)は第2のアンテナ14bの仮想軸LB(図3(a))に沿ってゴルフボールbを見た状態を示す模式図である。
【0041】
図5(a)、(b)は、ゴルフボールbの回転軸Mが基準線L01と直交する鉛直面上で水平面と平行した状態を示している。この場合、ゴルフボールbにはバックスピンがかかっている。
図5(c)、(d)は、ゴルフボールbの回転軸Mが基準線L01と直交する鉛直面上で水平面に対して45°傾斜した状態を示している。この場合、ゴルフボールbにはバックスピンとサイドスピンとの中間のスピンがかかっている。
図5(e)、(f)は、ゴルフボールbの回転軸Mが基準線L01と直交する鉛直面上で水平面に対して直交した状態を示している。この場合、ゴルフボールにはサイドスピンがかかっている。
なお、基準線L01はゴルフボールbの中心Oを通り、目標線L0と平行する基準線を示すものである。
【0042】
図3(a)に示すように、第4のアンテナ14dの仮想軸LDに沿ってゴルフボールbを見ると、ゴルフボールbを正面から見ることになり、第2のアンテナ14bの仮想軸LBに沿ってゴルフボールbを見ると、ゴルフボールbを斜め下方から見ることになる。
【0043】
したがって、図5(a)、図5(c)、図5(e)に示すように、第4のアンテナ14dの仮想軸LDに沿ってゴルフボールbを見た状態では、ゴルフボールbの回転軸Mが何れの方向に向いていても、ゴルフボールbのスピン量は同一に見える。言い換えると、第4のアンテナ14dを用いて計測した第1のスピン量SPAはゴルフボールbの回転軸Mの方向に拘わらず同一となる。
【0044】
一方、図5(b)、図5(d)、図5(f)に示すように、第2のアンテナ14bの仮想軸LBに沿ってゴルフボールbを見た状態では、ゴルフボールbの回転軸Mの向きが変化すると、ゴルフボールbのスピン量も変化する。
具体的には、図5(b)に示すバックスピンの状態では、図5(a)のスピン量と同様のスピン量であるが、図5(d)に示す中間のスピンの状態では、図5(c)のスピン量に比べて見かけ上のスピン量が少なくなる。
さらに、図5(f)に示すサイドスピンの状態では、図5(e)に比べて見かけ上のスピン量がより少なく見える。
言い換えると、第2のアンテナ14bを用いて計測した第2のスピン量SPBはゴルフボールbの回転軸Mの方向が水平方向から鉛直方向に近づくほど減少する。
【0045】
したがって、第1のスピン量SPAと第2のスピン量SPBの差分ΔSPと、回転軸Mが水平面となす角度とは相関関係があり、差分ΔSPから回転軸Mの向き(水平面に対する角度)を算出することができる。
本実施形態では、スピン量算出部38によって第1のスピン量SPAと第2のスピン量SPBが算出され、スピン量算出部38によって第1のスピン量SPAと第2のスピン量SPBの差分ΔSPに基づいて回転軸Mの向きが求められる。
また、図5(a)〜(d)に示すように、第4のアンテナ14dを用いて計測した第1のスピン量SPAはゴルフボールbの実際のスピン量を示すことになるため、この第1のスピン量SPAがゴルフボールbのスピン量の実測値として求められる。
【0046】
解析部34は、蓄積部30に蓄積された各中間データを、それぞれ、FFTを用いて周波数解析することにより、周波数ごとの信号強度の分布を示す第1の信号強度分布データ〜第4の信号強度分布データを作成するものである。
例えば、図7に示す第2の信号強度分布データの一例のように、図6に示す第2の中間データに対応する第2のドップラー信号Sd2の時間波形αをFFTにより周波数解析することによって、周波数ごとの信号強度の分布を示す第2の信号強度分布データβを得る。図7において、横軸は周波数(Hz)であり、縦軸は信号強度(任意単位)である。信号強度分布データβにおいて、周波数の領域β1はゴルフクラブヘッドの移動に由来するものであり、周波数の領域β2はゴルフボールの移動に由来するものである。
【0047】
上述の周波数の領域β1、β2は、fd=2fc・V0/cによる求めることができる。ここで、fdは、ドップラー周波数(Hz)であり、fcは、搬送波周波数(Hz)である。V0は、ゴルフボールまたはゴルフクラブヘッドの速度(m/s)である。cは、光速(3×108m/s)である。
ゴルフボールの初速を50m/sとした場合、fdは、約8000Hzとなる。このため、ゴルフボールの移動に由来する周波数の領域β2は約8000Hz付近となる。ここで、本実施形態において、他に移動するものはゴルフクラブヘッドであるため、約4000Hz付近の周波数の領域β1は、ゴルフクラブヘッドの移動に由来するものである。
なお、解析部34に用いられるFFTには、公知の種々のFFTの方法を用いることができる。
なお、以降、第1の信号強度分布データ〜第4の信号強度分布データを各信号強度分布データという。
【0048】
また、解析部34は、各信号強度分布データについて、更に移動平均処理を施し、移動平均の波形データを作成するものでもある。例えば、図7に示す信号強度分布データβについて、移動平均処理を施すことにより、図7に示す移動平均の波形データγが得られる。
信号強度分布データβは、実測値であるため、測定時に含まれるノイズの影響を受けて大きく変動している。このため、移動平均処理をすることによって、ノイズの影響を抑制した信号強度分布データ、すなわち、移動平均の波形データγが得られる。
【0049】
移動速度算出部36は、各信号強度分布データに基づいて、ゴルフボールbの移動方向および移動速度を算出するものである。
以下、移動速度算出部36によるゴルフボールbの移動速度の算出方法について、図7に示す移動平均の波形データγを例にして説明する。なお、信号強度分布データにおいて、ゴルフボールbに由来する周波数の領域β2が分かっているため、ゴルフボールbに由来する周波数の領域β2について解析を行う。
【0050】
図8は、信号強度分布データを、ゴルフボールbに由来する周波数の領域β2を拡大して示すものである。図8に示す移動平均の波形データγでは、周波数の領域β2において、信号強度が最大となる1つの最大値を有し、最大値から離れるほど信号強度が次第に低下し、やがてゼロとなる単一の山形の信号強度分布を呈している。すなわち、周波数の領域β2での信号強度の最大値Dmaxを含み山状に信号強度が変化する部分がある。
ここで、信号強度分布データの山の高さ、すなわち、信号強度の最大値Dmaxは、上述の第1速度VA(図4参照)に対応している。したがって、周波数の領域β2において、信号強度の最大値Dmaxが高いほど、第1速度VA、すなわち、ゴルフボールbの移動速度が速いことになる。
【0051】
また、信号強度分布データの山の幅、すなわち、周波数の領域β2において、山状に信号強度が変化する部分での周波数の差は、上述の第2速度VBと上述の第3速度VCの差分ΔV(速度幅)に比例する。このため、第2速度VBと第3速度VCの差分ΔVが小さいほどスピン量が小さくなり、この差分ΔVがゼロならばスピン量もゼロとなる。また、第2速度VBと第3速度VCの差分ΔVが大きいほど、すなわち、周波数差が大きいほど、スピン量が多いことになる。
【0052】
ここで、第2速度VBと第3速度VCの差分ΔVは、式(4)、式(5)からわかるように以下の式(6)で示され、すなわち、角速度ωに比例した値となる。
ΔV=VC−VB=(VA+ωr)−(VA−ωr)=2ωr (6)
したがって、(6)式から明らかなように、信号強度分布データの山の幅に基づいてスピン量を算出することができる。
【0053】
本実施形態において、上述のスピン量が大きい山の幅、すなわち、周波数の領域β2において山状に信号強度が変化する部分での周波数の差は、以下のように定義することができる。
信号強度分布データの山の幅は、信号強度の閾値DtをDmax・n(ただし0<n<1)とした場合、周波数の領域β2において、信号強度が閾値Dtとなる部分の幅とする。すなわち、周波数の領域β2において信号強度が閾値Dtでの周波数の差である。
【0054】
図8では、Dt2=Dmax・10%と、Dt1=Dmax・50%とを例示している。この場合、閾値Dt1では周波数の差がΔV1であり、閾値Dt2では周波数の差がΔV2である。
なお、閾値Dtは山の幅(周波数の差)、すなわち、第2速度VBと第3速度VCの差分ΔVを安定して計測できる値に設定すればよい。このように、図7、図8に示す信号強度分布データβについて解析することにより、移動速度V、スピン量を容易に求めることが可能となる。
【0055】
本実施形態において、解析部34では、蓄積部30に蓄積された各中間データを、それぞれFFTを用いて周波数解析している。
ドップラー信号の時間波形において、インパクト前は、ゴルフヘッドの反射波が主であり、インパクト後はゴルフボールの反射が主である。また、ゴルフボールのスピン量は、ゴルフボールの移動に由来する領域β2における周波数の差(山の幅)に基づいて算出する。このため、解析部34では、インパクト前後で周波数分解を保持したまま、ゴルフボールの移動に由来する領域β2における時間変化を高い精度かつ短時間で行う必要がある。
【0056】
本発明において、解析データ数のうち、測定データの割合を少なくとも20%とすれば、FFT解析による周波数解析に悪影響を与えないことを見出した。
このように、本発明の解析方法によれば、インパクト前後で、周波数分解能を保持したまま解析可能となるため、ゴルフヘッドとゴルフボールの反射波を容易に区別することができる。更には、FFT解析の際に、測定データの割合を小さくすることができるため、周波数分解能を保持したまま、短時間で信号強度分布データβを得ることができる。これにより、移動速度V、スピン量を短時間で算出することができる。
【0057】
サンプリング周波数と周波数分解能の関係は、サンプリング周波数をfs(Hz)、周波数分解能をΔf(Hz)、サンプリングデータ数をN(個)とするとき、下記式(7)になる。この式(7)からサンプリングデータ数のNを大きくしなければ周波数分解能Δfは小さくならないことがわかる。
【0058】
【数1】
【0059】
また、サンプリングに必要な時間T(秒)は、下記式(8)で表される。この式(8)から、所定の周波数分解能Δfを確保するためには、一定の時間T(秒)が必要である。
【0060】
【数2】
【0061】
しかしながら、ゴルフボールのスピン量の計測のように、短い時間間隔におけるスピン量の変化を計測する場合には、周波数分解能Δfを確保したまま、Tを短くする必要がある。この場合、T=T1+T2として、短い時間データでも周波数分解能Δfを確保して解析する。なお、T1は、実際の測定データであり、T2は、0(ゼロ)のデータである。具体的には、FFT解析データ数(サンプリングデータ数)Nのうち、少なくとも20%について、実測データを用い、それ以外のデータは0とする。
【0062】
サンプリング周波数fsが一定の場合、FFTによる周波数解析の手順としては、まず、必要な周波数分解能Δfを決定する。次に、Nf=fs/Δfで表されるFFT解析データ数Nfを決定する。次に、T=Nf/fsで表されるFFT解析のために必要な時間間隔Tを決定する。
次に、FFT解析データ数Nfのうち、少なくとも20%について、実測データを用い、残りのデータを0として、FFT解析を行う。
【0063】
本実施形態において、下記に示す条件に基づく時間波形について、周波数分解と実測データの割合について調べた。なお、下記に示すEaは、図9(a)に示す時間波形40により表されるものである。
【0064】
Ea=E1+E2
E1=0.5・cos(2πf1・t)、f1=5,000Hz
E2=0.3・cos(2πf2・t)、f2=5,015Hz
【0065】
また、FFTは、以下に示す解析条件で行った。fs=48,000Hz、N=16,384(214)とすると、Δf≒2.93Hz、T≒342(msec)となる。
FFT解析では、T1=TからT1=T/100まで順次、実データT1の時間を短くしてゆき、すなわち、FFT解析データ数Nfのうち、実測データの割合を小さくしていき、E1とE2の分解が可能かどうか検証する。すなわち、f1とf2の分離が可能かどうかを検証する。その結果を図9(b)に示す。なお、f1とf2はΔfで約5ライン離れている。
図9(b)に示すように、FFT解析データ数Nfに対して実測データが20%以上であれば、f1とf2の分離が可能であった。
【0066】
また、上記条件に対して周波数だけを変えた時間波形について、周波数分解と測定データの割合について調べた。なお、下記に示すEbは、図10(a)に示す時間波形50により表されるものである。
【0067】
Eb=E3+E4
E3=0.5・cos(2πf3・t)、f3=5,000Hz
E4=0.3・cos(2πf4・t)、f4=5,115Hz
【0068】
この場合、f3とf4はΔfで39ライン離れている。図10(b)に示すように、FFT解析データ数Nfに対して実測データが20%以上であれば、f3とf4の分離が可能であった。
以上のように、FFT解析を行う場合、FFT解析データ数Nfに対して20%のデータのみ実測データを用いて、残り80%は0をあてはめてもFFT解析結果に大きな差を生じないことが判った(ただし、FFT解析の元の時間データに対して1/mのデータのみを用いた場合、FFT解析結果の振幅スペクトルはm倍する必要がある)。
【0069】
なお、FFT解析の際に、時間軸データを切り取る場合、傾斜をつけたフィルターを用いることにより、サイドローブを小さくすることができる。この場合、全体の20%のデータを切り取る際に、20%のデータに加えて、両側に2.5%でゼロになる特性を備えるフィルターを用いることが好ましい。このフィルターは、図示すれば略台形である。
【0070】
移動速度算出部36は、各信号強度分布データのそれぞれにおける最大値Dmaxに基づいて、アンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度を算出するものである。さらに、移動速度算出部36は、各アンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度に基づいてゴルフボールbの移動方向Dbを算出するものである。
【0071】
ゴルフボールbの移動方向Dbの算出方法について、図3(a)、図3(b)を参照して説明する。図3(a)、図3(b)において、符号Dbはゴルフボールbの移動方向を示し、基準線L01はゴルフボールbの中心Oを通り、目標線L0と平行する基準線を示し、符号Gは水平面と平行な地面を示す。符号θxは平面視の状態で、ゴルフボールbの移動軌跡と基準線L01とを水平面に投影した場合にゴルフボールbの移動軌跡と基準線L01とがなす角度である。以下、角度θxを左右角度という。
また、符号θyは側面視の状態でゴルフボールbの移動軌跡と基準線L01とを基準線L01を含む鉛直面に投影した場合にゴルフボールbの移動軌跡と基準線L01とがなす角度である。以下、角度θyを上下角度という。
【0072】
まず、専用のゴルフボール打ち出し装置(ランチャー)によって原点に位置するゴルフボールbを、左右角度θxおよび上下角度θyを異ならせて打撃する。
そして、高速度カメラで撮影したゴルフボールbの画像データに基づいてゴルフボールbの左右角度θxおよび上下角度θyを計測し、左右角度θxおよび上下角度θyの実測データを取得する。このような高速度カメラによるゴルフボールbの挙動の計測は従来公知である。
【0073】
また、左右角度θxおよび上下角度θyの計測と同時に、本実施形態の計測装置10を用いて移動速度算出部36によって、アンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度を取得する。すなわち、左右角度θxおよび上下角度θyの実測データに対応するゴルフボールの速度を取得する。
そして、左右角度θxおよび上下角度θyの実測データと、ゴルフボールの速度とを関連付けた角度算出用マップ(角度算出用データテーブル)を作成する。この角度算出用マップ(角度算出用データテーブル)は、例えば、蓄積部30に記憶される。
角度算出用マップ(角度算出用データテーブル)を用いることにより、アンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度から左右角度θxおよび上下角度θyを求めることが可能となる。
【0074】
本実施形態では、移動速度算出部36は上記角度算出用マップを蓄積部30から呼び出し、移動速度算出部36において、この角度算出用マップを用いることによりアンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度から左右角度θxおよび上下角度θyをゴルフボールbの移動方向Dbとして算出することができる。
なお、角度算出用マップ(角度算出用データテーブル)は、蓄積部30に記憶させることに限定されるものではない。
【0075】
また、移動速度算出部36によるゴルフボールbの移動方向Dbを算出する方法としては、角度算出用マップを用いる以外に、以下のように行ってもよい。
例えば、左右角度θxおよび上下角度θyの実測データと、アンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度とに基づいて、例えば、最小二乗法などの従来公知の手法を用いて回帰式を導出しておき、例えば、この回帰式を蓄積部30に記憶させる。移動速度算出部36においては、この回帰式を蓄積部30から呼び出し、回帰式に基づいてアンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度から左右角度θxおよび上下角度θyを算出するようにしてもよい。
【0076】
また、移動速度算出部36は、アンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度のいずれか1つの速度と、ゴルフボールbの移動方向Dbとに基づいてゴルフボールbの移動方向における移動速度V(図3(a)、図3(b))を算出するものである。
具体的には、左右角度θxおよび上下角度θyによって特定されるゴルフボールbの3次元空間における軌道軌跡と基準線L01とがなす角度φを求めることにより、以下の式(9)によって移動速度Vが算出される。
【0077】
V=VA・cosφ (9)
【0078】
スピン量算出部38は、ゴルフボールのスピン量およびスピンの向き(方向)を算出するものである。このスピン量算出部38は、上述のように、周波数の領域β2において山状に信号強度が変化する部分での周波数の差に基づいてスピン量を算出するものである。
具体的には、スピン量算出部38は、第4の信号強度分布データにおける周波数の領域β2での周波数の差に基づいてゴルフボールbの第1のスピン量SPAを算出し、第2の信号強度分布データにおける周波数の領域β2での周波数の差に基づいてゴルフボールbの第2のスピン量SPBを算出するものである。なお、上述のように、第1のスピン量SPAがゴルフボールbのスピン量の実測値である。
スピン量算出部38は、更には、ゴルフボールbの回転軸の向きを、第1のスピン量SPA、第2のスピン量SPBの差分ΔSPに基づいて算出するものである。
【0079】
表示部24は、演算処理ユニット20によって算出されたゴルフボールbの移動速度およびスピン量の数値、移動方向、ならびにスピンの向き(方向)等を表示する表示画面を有するものである。
なお、表示部24にかえて、または表示部24に加えて、移動速度およびスピン量の数値、移動方向、ならびにスピンの向き(方向)等を印字出力するプリンタを出力部として設けてもよい。さらには、表示部24にかえて、または表示部24に加えて、移動速度およびスピン量の数値、移動方向、ならびにスピンの向き(方向)等をパーソナルコンピュータなどの外部装置に供給する通信回路を設けてもよい。
【0080】
操作部26は、例えば、表示部24に表示されるゴルフボールbの移動速度およびスピン量の数値、移動方向、ならびにスピンの向き(方向)等の表示形態などを切り替えるために、種々の指示入力を行うものである。この操作部26による指示入力はCPU22に供給されて、CPU22から指示入力に応じた動作を行うように、各要素を制御するものである。
【0081】
本実施形態において、バックスピンの場合のスピン量SPは、例えば、逆回転方向のスピン量は正の値、順回転方向のスピン量は負の値で示す。
また、本実施形態において、サイドスピンの場合のスピン量SPは、例えば、平面視時計回り方向のスピン量は正の値で、反時計回り方向のスピン量は負の値で示す。
【0082】
ここで、図11は、バックスピンしているゴルフボールのスピン量SPと差分ΔSPの実測結果を示すグラフであり、図12は、サイドスピンしているゴルフボールのスピン量SPと差分ΔSPの実測結果を示すグラフである。なお、差分ΔSPの単位は任意単位である。また、図11、図12においてプロットした点が実測値を示し、図11に示す直線H1、および図12に示す直線H2は、それぞれ実測値から求めた回帰式に基づくものである。図11、図12に示すように、差分ΔSPとスピン量SPとは相関関係がある。
【0083】
次に、本実施形態のボール計測装置10に用いるゴルフボールbについて説明する。
図13(a)は、本発明の実施形態のボール計測装置に用いられるゴルフボールの一例を示す模式図であり、(b)は、本発明の実施形態のボール計測装置に用いられるゴルフボールの他の例を示す模式図である。
図13(a)に示すように、ゴルフボールbは、球体202と、第1領域204と、第2領域206とを備えている。
球体202は、中実で球状のコア層と、このコア層を覆う合成樹脂からなるカバー層とで形成され、カバー層の表面に多数のディンプル(図示せず)が形成されている。
【0084】
第1領域204は、球体202の中心を中心とした球面上に形成された電波反射率が高い領域である。このように、第1領域204は高い電波反射特性を有しており、電波(マイクロ波)を効率よく反射する。
本実施形態では、第1領域204は球体202の表面に(前記カバー層の表面に)複数形成され導電性を有している。
また、各第1領域204は、同一の直径を有する正円状を呈しているが、各第1領域204の形状は三角形、四角形、あるいは正多角形などであってもよい。
【0085】
各第1領域204が正円である場合、反射波の強度を確保する上でまた計測装置10における計測精度を確保する上でその正円の直径は2mm以上15mm以下であることが好ましい。
また、各第1領域204が正多角形である場合、反射波の強度を確保する上でまた計測装置10における計測精度を確保する上でその内接円の直径が2mm以上15mm以下であることが好ましい。
【0086】
なお、正円または内接円の直径が2mm以上15mm以下であると、計測精度を確保する上で有利となることは、送信波として24GHzまたは10GHzのマイクロ波を使用した場合の発明者らの実験結果によって確認されたものである。この原因としては、例えば、第1領域204の表面で反射される反射波と第1領域204のエッジ部分で反射される反射波との干渉が計測精度に与える影響が小さくなるからであると考えられる。
また、図13(a)に示すように、前記の球面上において(本実施形態では球体202の表面上において)第1領域204の互いに対向する2箇所と、球体202の中心とを通る2つの直線がなす角度θは、十分な強度の反射波を得る上でまた反射波を精度よく受信する上で5度以上45度以下であることが好ましい。
【0087】
複数の第1領域204は、頂点が球体202の表面(球体202の中心を中心とした球面)に位置するように仮想された正多面体または準正多面体の各頂点に位置している。
例えば、図13(a)に示すものでは、第1領域204は頂点が球体202の表面に位置するように仮想された正六面体の6つの頂点に位置している。したがって、第1領域は6個形成されている。
【0088】
また、図13(b)に示す他の例では、例えば、第1領域204は頂点が球体202の表面に位置するように仮想された正四面体の4つの頂点に位置しており、第1領域は4個形成されている。第1領域204は球体202の表面に複数形成されていればよく、その数は、4個に限定されるものではなく任意である。
【0089】
ただし、第1領域204は、球体202の回転軸がどのような方向に位置しても、なるべく多くの第1領域204が移動しながら(回転しながら)送信波W1を反射することが、安定した反射波W2を得る上で好ましい。
【0090】
また、複数の第1領域204はそれぞれ球体202の表面上で互いに直交する直線状に延在して格子状を呈していてもよい。
この場合、第2領域206は直線状に延在する第1領域204によって矩形状に区画されることになる。
【0091】
第1領域204は、反射波W2の強度を十分に確保することができればよく、例えば、次に示す従来公知の関係式を用いることによって、第1領域204の表面抵抗として必要な範囲を求めることができる。
すなわち、電波反射率:Γ、表面抵抗:Rとしたとき、式(10)、式(11)が成立する。
【0092】
Γ=(377−R)/(377+R) (10)
R=(377(1−Γ))/(1+Γ) (11)
【0093】
なお、Γ=1は全反射、Γ=0は無反射を示し、377は空気の特性インピーダンスを示す。式(11)より、Γ=1のときR=0であり、Γ=0のときR=377である。
【0094】
ここで、Γ=0.5とすると、R=(377×0.5)/1.5≒130となる。
したがって、電波反射率Γとして十分な値をΓ=0.5(50%)以上とすると、表面抵抗Rは130Ω/sq.以下とすることが必要となる。
また、電波反射率Γが0.9(90%)以上であり、したがって、表面抵抗Rが20Ω/sq.以下であることが、反射波W2の強度を確保する上でより好ましい。
なお、電波反射率Γは、導波管法や自由空間法など従来公知方法によって測定することができるものである。
【0095】
第1領域204を構成する材料として、導電性を有する材料を使用することができる。
導電性を有する材料は、例えば、金属粉末を含む塗料である。このような塗料を球体202の表面に塗布または印刷することで、第1領域204が形成される。
このような塗料として、例えば、亜鉛を含むさび止め用の塗料を使用するなど、従来公知のさまざまな塗料が使用可能である。
【0096】
また、導電性を有する材料は、金属箔であってもよい。このような金属箔を球体202の表面に接着剤で貼り付けることで第1領域204が形成される。
このような金属箔としてアルミニウム箔など従来公知のさまざまな金属箔が使用可能である。
また、導電性を有する材料を蒸着することで形成された蒸着膜または不連続蒸着膜で第1領域204を形成してもよい。
【0097】
なお、不連続蒸着膜は、真空中で行う不連続蒸着によって形成されている。不連続蒸着膜とは、ターゲットから蒸発した原子が被蒸着体としての球体202の表面に付着して複数の成長核が成長する過程において、各成長核どうしが接触しない段階、言い換えると各成長核どうしが連続していない段階で蒸着を止めて、成長核間が電気的に導通していない状態の蒸着膜のことである。したがって、不連続蒸着膜では、成長核どうしが電気的に導通せず非導電体となっているが、電波反射性を有する。
【0098】
また、上述した金属粉末あるいは金属箔あるいは蒸着膜を形成する金属としては、例えば、銀、銅、金、ニッケル、アルミ、鉄、チタン、タングステンなどの従来公知のさまざまな金属が使用可能である。
なお、導電性を有する材料として、金属以外の導電物質、例えば、カーボンを含む材料など従来公知のさまざまな材料が使用可能である。
【0099】
第2領域206は、前記の球面上で第1領域204を除く残りの部分に形成され電波反射率が第1領域204よりも低い領域である。
言い換えると、第2領域206は、第1領域204よりも低い電波反射特性を有するものである。
本実施形態では、第2領域206は、第1領域204を除く残りの表面の部分に(第1領域204を除く残りの前記カバー層の表面の部分に)形成され導電性を有さない。
【0100】
本実施形態では、第2領域206は、ゴルフボールbの表面を形成する合成樹脂で形成されている。
なお、第1領域204の電波反射率と第2領域206の電波反射率との比(差)を大きく確保する上で第2領域206の電波反射率は1%以下、表面抵抗は400Ω/sq.以上であることが好ましい。
【0101】
なお、第1領域204の総面積は、球体202の表面積の50%以下であることが好ましく、2%〜30%がより好ましい。
第1領域204の総面積が球体202の表面積の50%以下であると、第1領域204で反射される電波の反射強度と、第2領域206で反射される電波の反射強度との比(差)を大きく確保する上で有利となり、2%〜30%であると、上記の反射強度の比(差)を大きく確保する上でより有利となる。
このように第1領域204と第2領域206とで反射強度との比(差)を大きく確保すると、スピン量の計測を安定して行う上で有利となる。
【0102】
なお、本実施形態では、第1、第2領域204、206が球体202の中心を中心とした球面上に形成されている場合について説明した。
しかしながら、第1、第2領域204、206が形成される面は、外表面に限定されるものではなく、球体202の内部であってもよく、この場合には、球面、正多面体をなす面、準正多面体をなす面であってもよく、要するに、球体202が回転することで第1、第2領域204、206が回転し、アンテナ14a〜14dに対して第1、第2領域204、206が交互に向けばよい。
このように、ゴルフボールbは、電波反射性を有する第1領域204と、電波反射率が第1領域204よりも低い第2領域206とを有するものであればよい。
【0103】
次に、ボール計測装置10によるゴルフボールbの挙動測定方法について説明する。
まず、ゴルファがゴルフクラブ100を把持してスウィングし、ゴルフクラブヘッド102でゴルフボールbを打ち出すと、ボール計測装置10によるゴルフボールの挙動が測定される。
具体的には、各アンテナ14a〜14dから、それぞれ送信波W1がゴルフボールbに向けて送信され、ゴルフボールbからの反射波W2が各アンテナ14a〜14dで受信される。各アンテナ14a〜14dで反射波W2が受信されると、それぞれ受信信号が生成される。そして、各受信信号がドップラーセンサ16a〜16dに供給され、各ドップラーセンサ16a〜16dで、それぞれドップラー周波数Fd1〜Fd4が作成されて、ドップラー周波数Fd1〜Fd4が得られる(ステップS10)。
【0104】
各ドップラー信号Sd1〜Sd4は、各信号処理部18a〜18dによって、デジタルデータ(2値化信号)に変換された後、検出部28によって各ドップラー周波数Fd1〜Fd4に対応付けられた各中間データに変換され、これら各中間データは、サンプリングされた後、時系列データとして蓄積部30に蓄積される。
【0105】
次に、解析部34は、蓄積部30に蓄積された各中間データを周波数解析する(ステップS12)。これにより、周波数ごとの信号強度の分布を示す各信号強度分布データが作成される。
以下、第1の信号強度分布データの作成方法について、残りの第2の信号強度分布データ〜第4の信号強度分布データについては説明を省略するが、残りの第2の信号強度分布データ〜第4の信号強度分布データについても第1の信号強度分布データと同様にして作成することができる。
【0106】
この場合、図15に示すドップラー信号Sd1の時間波形αは、第1の中間データに対応するものである。図15に示すドップラー信号Sd1の時間波形αは、例えば、全測定時間が200(msec)であり、FFT解析データ数(サンプリングデータ数)が8129である。
この時間波形αにおいて、40(msec)、データ数2000を1つの区画単位として、20(msec)間隔で(i)〜(ix)の9区画に分けてFFT解析を行う。すなわち、FFT解析データ数8129のうち、2000データに実測データを用い、残りのデータには0を当てはめて、実測データを割合が約25%の条件で、実測データの領域をずらしてFFT解析を行う。この結果、図16(a)〜(d)、図17(a)〜(e)に示す各信号強度分布データが得られる。
なお、図16(a)〜(d)、図17(a)〜(e)に示す各信号強度分布データは、図15に示す(i)〜(ix)の9区画に対応している。
【0107】
図16(a)に示すように、まず、ゴルフクラブヘッドが由来の領域β1の信号強度が高くなり、その後、図16(b)に示すように、ゴルフボールの移動に由来する領域β2の信号強度が高くなる。そして、図16(c)、(d)に示すように、ゴルフクラブヘッドが由来の領域β1の信号強度が小さくなるとともに、ゴルフボールの移動に由来する領域β2の信号強度が高くなる。その後、図17(a)に示すように、ゴルフクラブヘッドが由来の領域β1の信号強度が極端に小さくなり、ゴルフボールの移動に由来する領域β2の信号強度も小さくなる。そして、図17(b)に示すように、ゴルフボールの移動に由来する領域β2の信号強度が極端に小さくなり、更には、図17(c)〜(e)に示すように、ゴルフクラブヘッドが由来の領域β1、およびゴルフボールの移動に由来する領域β2のいずれも、信号強度が殆ど検出されなくなる。このように、ゴルフボールの打撃の際のゴルフボールの移動に由来する領域β2の信号を、ゴルフクラブヘッドとは分離して検出することができる。
【0108】
次に、移動速度算出部36により、各信号強度分布データについて、移動平均処理をし、最大値Dmaxを算出し、この最大値Dmaxに基づいてアンテナ14a〜14dでのゴルフボールの速度をそれぞれ算出する(ステップS14)。
【0109】
次に、移動速度算出部36において、アンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度に基づいてゴルフボールbの移動方向Dbを算出する(ステップS16)。
次に、移動速度算出部36において、アンテナ14a〜14dにおけるゴルフボールの速度のいずれか1つの速度と、ゴルフボールbの移動方向Dbとに基づいてゴルフボールbの移動方向Dbにおける移動速度Vを算出する(ステップS18)。
【0110】
次に、スピン量算出部38において、第4の信号強度分布データにおける周波数の領域β2での周波数の差に基づいてゴルフボールbの第1のスピン量SPAを算出し、第2の信号強度分布データにおける周波数の領域β2での周波数の差に基づいてゴルフボールbの第2のスピン量SPBを算出する(ステップS20)。さらに、スピン量算出部38において、ゴルフボールbの回転軸Mの向きを、第1のスピン量SPA、第2のスピン量SPBの差分ΔSPに基づいて算出する(ステップS22)。なお、上述のように、第1のスピン量SPAがゴルフボールbのスピン量の実測値である。
【0111】
最後に、算出された移動速度V、移動方向Db、スピン量SP、回転軸Mの向きが表示部24の表示画面に表示させる(ステップS24)。
表示部24の表示画面に表示する場合、例えば、ゴルフボールbの移動方向Dbは、左右角度θx、上下角度θyの単位は(度)、移動速度Vの単位は(m/s)、スピン量SPの単位は(rpm)として表示する。なお、移動方向Dbの表示方法は、特に限定されるものではない。
【0112】
表示部24の表示画面に表示する場合、例えば、左右角度θxについては、基準線L01を中心(0度)とし、左方向の角度を正の値、右方向の角度を負の値として示し、上下角度θyについては、基準線L01を中心(0度)とし、上方向の角度を正の値、下方向の角度を負の値として示すことができる。なお、正と負の符号は上述のものと逆でも良い。また、バックスピンの場合のスピン量SPは、例えば、逆回転方向のスピン量は正の値、順回転方向のスピン量は負の値で示すことができる。
また、サイドスピンの場合のスピン量SPは、例えば、平面視時計回り方向のスピン量は正の値で、反時計回り方向のスピン量は負の値で示すことができる。なお、上述のように、図11、図12に示すように差分ΔSPとスピン量SPとは相関関係にある。
【0113】
本実施形態のボール計測装置10および計測方法においては、FFT解析データ数のうち、実測データの割合を、少なくとも20%として、残りのデータには0を当てはめてFFT解析を行うことにより、ゴルフクラブヘッドとゴルフボールの挙動を表す周波数を分離することができ、更には、移動速度、スピン量を算出するためのゴルフボールの移動に由来する領域についても、十分な分解能を得ることができる。このため、移動速度、スピン量を算出することができる。しかも、解析に要する実質的なデータ数が少ないため、FFT解析の処理速度を速くすることができる。これにより、移動速度、スピン量の算出に要する時間を短縮することができる。よって、ゴルフボールbの移動速度V、移動方向Db、スピン量SP、回転軸Mの向きの算出に要する時間を短縮することができる。
【0114】
また、本実施形態においては、アンテナを4つ設ける構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、アンテナを1つ設ける構成でもよい。この場合においても、ゴルフボールの移動速度、スピン量を算出することができるとともに、ゴルフボールの移動速度、スピン量の算出に要する時間を短縮することもできる。
さらには、本実施形態においては、ゴルフボールを例にして説明したが、ゴルフボールに限定されるものではなく、野球のボール、サッカーボール、バレーボール等の球技用のボールについても、移動速度、移動方向、スピン量、回転軸の向き等について測定することができる。
【0115】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明のボール計測装置およびボール計測方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0116】
10 ボール計測装置
14a〜14d 第1のアンテナ〜第4のアンテナ
16a〜16d 第1のドップラーセンサ〜第4のドップラーセンサ
18a〜18d 第1の信号処理部〜第4の信号処理部
20 演算処理ユニット
22 CPU
24 表示部
26 操作部
28 検出部
30 蓄積部
32 挙動算出部
34 解析部
36 移動速度算出部
38 スピン量算出部
b ゴルフボール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波反射性を有する第1領域と電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、供給される送信信号に基づいて送信波を送信するとともに、前記ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成するアンテナと、
前記アンテナに前記送信信号を供給するとともに、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいて、ドップラー周波数を有するドップラー信号を作成するドップラーセンサと、
前記ドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを作成する解析部と、
前記信号強度分布データに基づいて、前記ボールの移動速度を算出する移動速度算出部と、
前記信号強度分布データに基づいて前記ボールのスピン量を算出するスピン量算出部とを有し、
前記アンテナは、指向性アンテナで構成されるものであり、
前記解析部は、前記ドップラー信号を周波数解析する際に、全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータに前記ドップラー信号を用い、残りのデータを0とすることを特徴とするボール計測装置。
【請求項2】
前記解析部は、更に前記信号強度分布データに移動平均処理をして、移動平均の波形データを作成するものであり、
前記移動速度算出部は、前記移動平均の波形データに基づいて前記ボールの移動速度を算出し、
前記スピン量算出部は、前記移動平均の波形データに基づいて前記ボールのスピン量を算出する請求項1に記載のボール計測装置。
【請求項3】
前記移動速度算出部は、前記移動平均の波形データのうち、前記ボールの移動に由来する周波数領域での信号強度の最大値を算出し、前記最大値に基づいて前記ボールの移動速度を算出する請求項2に記載のボール計測装置。
【請求項4】
前記スピン量算出部は、前記移動平均の波形データのうち、前記ボールの移動に由来する周波数領域において信号強度の最大値を含み山状に変化する部分を算出し、前記山状に変化する部分の周波数の差を算出し、前記周波数の差に基づいて前記ボールのスピン量を算出する請求項2または3に記載のボール計測装置。
【請求項5】
前記周波数の差は、前記信号強度の最大値をDmaxとし、閾値DtをDmax・n(ただし0<n<1)とした場合、前記信号強度が前記閾値Dtとなる部分における周波数の差である請求項4に記載のボール計測装置。
【請求項6】
電波反射性を有する第1領域と電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、供給される送信信号に基づいて送信波を送信するとともに、前記ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成する第1のアンテナ〜第4のアンテナと、
前記第1のアンテナ〜前記第4のアンテナのそれぞれに前記送信信号を供給するとともに、前記第1のアンテナ〜前記第4のアンテナから供給される前記各受信信号に基づいて、ドップラー周波数を有するドップラー信号を作成する第1のドップラーセンサ〜第4のドップラーセンサと、
前記第1のドップラーセンサ〜前記第4のドップラーセンサで作成された第1のドップラー信号〜第4のドップラー信号を、それぞれ周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す第1の信号強度分布データ〜第4の信号強度分布データを作成する解析部と、
前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに基づいて前記ボールの移動速度および移動方向を算出する移動速度算出部と、
前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに基づいて前記ボールのスピン量を算出するスピン量算出部とを有し、
前記解析部は、前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を周波数解析する際に、前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号のそれぞれについて、全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータに前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を用い、残りのデータを0とするものであり、
前記第1のアンテナ〜第4のアンテナは、指向性アンテナで構成されるものであり、前記ボールの移動方向とは反対側に設けられており、前記第1のアンテナ〜前記第3のアンテナが水平方向に所定の間隔をあけて第2のアンテナを中心にして並べられ、第4のアンテナが前記第2のアンテナの上方に垂直方向に所定の間隔をあけて配置されていることを特徴とするボール計測装置。
【請求項7】
前記解析部は、更に前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに移動平均処理をして、第1の移動平均の波形データ〜第4の移動平均の波形データを作成するものであり、
前記移動速度算出部は、前記第1の移動平均の波形データ〜前記第4の移動平均の波形データについて、それぞれ、前記ボールの移動に由来する周波数領域での信号強度の最大値を算出し、前記第1の移動平均の波形データ〜前記第4の移動平均の波形データの各前記最大値に基づいて前記ボールの移動速度および移動方向を算出する請求項6に記載のボール計測装置。
【請求項8】
前記第2のアンテナは指向方向を示す第1の仮想軸が水平方向に延在し、前記第4のアンテナは指向性を示す第2の仮想軸が前記第1の仮想軸と交差するように配置されており、
前記解析部は、更に前記第2の信号強度分布データおよび前記第4の信号強度分布データに移動平均処理をして、第2の移動平均の波形データおよび第4の移動平均の波形データを作成するものであり、
前記スピン量算出部は、前記第2の移動平均の波形データおよび前記第4の移動平均の波形データについて、それぞれ前記ボールの移動に由来する周波数領域において信号強度の最大値を含み山状に変化する部分を算出し、前記山状に変化する部分の周波数の差を算出して、前記第4の移動平均の波形データの前記周波数の差に基づいて前記ボールのスピン量を算出するとともに、前記第2の移動平均の波形データの前記周波数の差と前記第4の移動平均の波形データの前記周波数の差との差分に基づいて、前記ボールの回転軸の向きを算出する請求項6に記載のボール計測装置。
【請求項9】
前記周波数の差は、前記信号強度の最大値をDmaxとし、閾値DtをDmax・n(ただし0<n<1)とした場合、前記信号強度が前記閾値Dtとなる部分における周波数の差である請求項8に記載のボール計測装置。
【請求項10】
電波反射性を有する第1領域と電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、指向性アンテナで構成されるアンテナにより、供給される送信信号に基づいて送信波を送信し、前記ボールで反射された反射波を前記アンテナで受信して受信信号を生成し、前記受信信号に基づいて、ドップラー周波数を有するドップラー信号を作成する工程と、
前記ドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを作成する工程と、
前記信号強度分布データに基づいて、前記ボールの移動速度を算出するとともに、前記ボールのスピン量を算出する工程とを有し、
前記ドップラー信号を周波数解析する際に、全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータに前記ドップラー信号を用い、残りのデータを0とすることを特徴とするボール計測方法。
【請求項11】
前記ボールの移動速度を算出する工程は、更に前記信号強度分布データに移動平均処理をして移動平均の波形データを作成し、前記移動平均の波形データに基づいて前記ボールの移動速度を算出するものであり、
前記ボールのスピン量を算出する工程は、前記移動平均の波形データに基づいて前記ボールのスピン量を算出するものである請求項10に記載のボール計測方法。
【請求項12】
前記ボールの移動速度を算出する工程は、前記移動平均の波形データのうち、前記ボールの移動に由来する周波数領域での信号強度の最大値を算出し、前記最大値に基づいて前記ボールの移動速度を算出する請求項11に記載のボール計測方法。
【請求項13】
前記ボールの移動速度を算出する工程は、前記移動平均の波形データのうち、前記ボールの移動に由来する周波数領域において信号強度の最大値を含み山状に変化する部分を算出し、前記山状に変化する部分の周波数の差を算出し、前記周波数の差に基づいて前記ボールのスピン量を算出する請求項11または12に記載のボール計測方法。
【請求項14】
前記周波数の差は、前記信号強度の最大値をDmaxとし、閾値DtをDmax・n(ただし0<n<1)とした場合、前記信号強度が前記閾値Dtとなる部分における周波数の差である請求項13に記載のボール計測方法。
【請求項15】
電波反射性を有する第1領域と電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、指向性アンテナで構成される第1のアンテナ〜第4のアンテナにより送信波を送信し、前記ボールで反射された反射波を各前記第1のアンテナ〜前記第4のアンテナで受信して受信信号を生成し、前記各受信信号に基づいて、ドップラー周波数を有する第1のドップラー信号〜第4のドップラー信号を作成する工程と、
前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を、それぞれ周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す第1の信号強度分布データ〜第4の信号強度分布データを作成する工程と、
前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに基づいて前記ボールの移動速度および移動方向を算出するとともに、前記ボールのスピン量を算出する工程とを有し、
前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を周波数解析する際に、前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号のそれぞれについて、全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータに前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を用い、残りのデータを0とするものであり、
前記第1のアンテナ〜第4のアンテナは、前記ボールの移動方向とは反対側に設けられており、前記第1のアンテナ〜前記第3のアンテナが水平方向に所定の間隔をあけて第2のアンテナを中心にして並べられ、第4のアンテナが前記第2のアンテナの上方に垂直方向に所定の間隔をあけて配置されていることを特徴とするボール計測方法。
【請求項16】
前記ボールの移動速度および移動方向を算出する工程は、更に前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに移動平均処理をして、第1の移動平均の波形データ〜第4の移動平均の波形データを作成し、
前記第1の移動平均の波形データ〜前記第4の移動平均の波形データについて、それぞれ、前記ボールの移動に由来する周波数領域での信号強度の最大値を算出し、前記第1の移動平均の波形データ〜前記第4の移動平均の波形データの各前記最大値に基づいて前記ボールの移動速度および移動方向を算出する請求項15に記載のボール計測方法。
【請求項17】
前記第2のアンテナは指向方向を示す第1の仮想軸が水平方向に延在し、前記第4のアンテナは指向性を示す第2の仮想軸が前記第1の仮想軸と交差するように配置されており、
前記ボールのスピン量を算出する工程は、更に前記第2の信号強度分布データおよび前記第4の信号強度分布データに移動平均処理をして、第2の移動平均の波形データおよび第4の移動平均の波形データを作成し、
前記第2の移動平均の波形データおよび前記第4の移動平均の波形データについて、それぞれ前記ボールの移動に由来する周波数領域において信号強度の最大値を含み山状に変化する部分を算出し、前記山状に変化する部分の周波数の差を算出して、前記第4の移動平均の波形データの前記周波数の差に基づいて前記ボールのスピン量を算出するとともに、
さらに、前記第2の移動平均の波形データの前記周波数の差と前記第4の移動平均の波形データの前記周波数の差との差分に基づいて、前記ボールの回転軸の向きを算出する請求項15に記載のボール計測方法。
【請求項18】
前記周波数の差は、前記信号強度の最大値をDmaxとし、閾値DtをDmax・n(ただし0<n<1)とした場合、前記信号強度が前記閾値Dtとなる部分における周波数の差である請求項17に記載のボール計測方法。
【請求項1】
電波反射性を有する第1領域と電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、供給される送信信号に基づいて送信波を送信するとともに、前記ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成するアンテナと、
前記アンテナに前記送信信号を供給するとともに、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいて、ドップラー周波数を有するドップラー信号を作成するドップラーセンサと、
前記ドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを作成する解析部と、
前記信号強度分布データに基づいて、前記ボールの移動速度を算出する移動速度算出部と、
前記信号強度分布データに基づいて前記ボールのスピン量を算出するスピン量算出部とを有し、
前記アンテナは、指向性アンテナで構成されるものであり、
前記解析部は、前記ドップラー信号を周波数解析する際に、全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータに前記ドップラー信号を用い、残りのデータを0とすることを特徴とするボール計測装置。
【請求項2】
前記解析部は、更に前記信号強度分布データに移動平均処理をして、移動平均の波形データを作成するものであり、
前記移動速度算出部は、前記移動平均の波形データに基づいて前記ボールの移動速度を算出し、
前記スピン量算出部は、前記移動平均の波形データに基づいて前記ボールのスピン量を算出する請求項1に記載のボール計測装置。
【請求項3】
前記移動速度算出部は、前記移動平均の波形データのうち、前記ボールの移動に由来する周波数領域での信号強度の最大値を算出し、前記最大値に基づいて前記ボールの移動速度を算出する請求項2に記載のボール計測装置。
【請求項4】
前記スピン量算出部は、前記移動平均の波形データのうち、前記ボールの移動に由来する周波数領域において信号強度の最大値を含み山状に変化する部分を算出し、前記山状に変化する部分の周波数の差を算出し、前記周波数の差に基づいて前記ボールのスピン量を算出する請求項2または3に記載のボール計測装置。
【請求項5】
前記周波数の差は、前記信号強度の最大値をDmaxとし、閾値DtをDmax・n(ただし0<n<1)とした場合、前記信号強度が前記閾値Dtとなる部分における周波数の差である請求項4に記載のボール計測装置。
【請求項6】
電波反射性を有する第1領域と電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、供給される送信信号に基づいて送信波を送信するとともに、前記ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成する第1のアンテナ〜第4のアンテナと、
前記第1のアンテナ〜前記第4のアンテナのそれぞれに前記送信信号を供給するとともに、前記第1のアンテナ〜前記第4のアンテナから供給される前記各受信信号に基づいて、ドップラー周波数を有するドップラー信号を作成する第1のドップラーセンサ〜第4のドップラーセンサと、
前記第1のドップラーセンサ〜前記第4のドップラーセンサで作成された第1のドップラー信号〜第4のドップラー信号を、それぞれ周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す第1の信号強度分布データ〜第4の信号強度分布データを作成する解析部と、
前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに基づいて前記ボールの移動速度および移動方向を算出する移動速度算出部と、
前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに基づいて前記ボールのスピン量を算出するスピン量算出部とを有し、
前記解析部は、前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を周波数解析する際に、前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号のそれぞれについて、全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータに前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を用い、残りのデータを0とするものであり、
前記第1のアンテナ〜第4のアンテナは、指向性アンテナで構成されるものであり、前記ボールの移動方向とは反対側に設けられており、前記第1のアンテナ〜前記第3のアンテナが水平方向に所定の間隔をあけて第2のアンテナを中心にして並べられ、第4のアンテナが前記第2のアンテナの上方に垂直方向に所定の間隔をあけて配置されていることを特徴とするボール計測装置。
【請求項7】
前記解析部は、更に前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに移動平均処理をして、第1の移動平均の波形データ〜第4の移動平均の波形データを作成するものであり、
前記移動速度算出部は、前記第1の移動平均の波形データ〜前記第4の移動平均の波形データについて、それぞれ、前記ボールの移動に由来する周波数領域での信号強度の最大値を算出し、前記第1の移動平均の波形データ〜前記第4の移動平均の波形データの各前記最大値に基づいて前記ボールの移動速度および移動方向を算出する請求項6に記載のボール計測装置。
【請求項8】
前記第2のアンテナは指向方向を示す第1の仮想軸が水平方向に延在し、前記第4のアンテナは指向性を示す第2の仮想軸が前記第1の仮想軸と交差するように配置されており、
前記解析部は、更に前記第2の信号強度分布データおよび前記第4の信号強度分布データに移動平均処理をして、第2の移動平均の波形データおよび第4の移動平均の波形データを作成するものであり、
前記スピン量算出部は、前記第2の移動平均の波形データおよび前記第4の移動平均の波形データについて、それぞれ前記ボールの移動に由来する周波数領域において信号強度の最大値を含み山状に変化する部分を算出し、前記山状に変化する部分の周波数の差を算出して、前記第4の移動平均の波形データの前記周波数の差に基づいて前記ボールのスピン量を算出するとともに、前記第2の移動平均の波形データの前記周波数の差と前記第4の移動平均の波形データの前記周波数の差との差分に基づいて、前記ボールの回転軸の向きを算出する請求項6に記載のボール計測装置。
【請求項9】
前記周波数の差は、前記信号強度の最大値をDmaxとし、閾値DtをDmax・n(ただし0<n<1)とした場合、前記信号強度が前記閾値Dtとなる部分における周波数の差である請求項8に記載のボール計測装置。
【請求項10】
電波反射性を有する第1領域と電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、指向性アンテナで構成されるアンテナにより、供給される送信信号に基づいて送信波を送信し、前記ボールで反射された反射波を前記アンテナで受信して受信信号を生成し、前記受信信号に基づいて、ドップラー周波数を有するドップラー信号を作成する工程と、
前記ドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを作成する工程と、
前記信号強度分布データに基づいて、前記ボールの移動速度を算出するとともに、前記ボールのスピン量を算出する工程とを有し、
前記ドップラー信号を周波数解析する際に、全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータに前記ドップラー信号を用い、残りのデータを0とすることを特徴とするボール計測方法。
【請求項11】
前記ボールの移動速度を算出する工程は、更に前記信号強度分布データに移動平均処理をして移動平均の波形データを作成し、前記移動平均の波形データに基づいて前記ボールの移動速度を算出するものであり、
前記ボールのスピン量を算出する工程は、前記移動平均の波形データに基づいて前記ボールのスピン量を算出するものである請求項10に記載のボール計測方法。
【請求項12】
前記ボールの移動速度を算出する工程は、前記移動平均の波形データのうち、前記ボールの移動に由来する周波数領域での信号強度の最大値を算出し、前記最大値に基づいて前記ボールの移動速度を算出する請求項11に記載のボール計測方法。
【請求項13】
前記ボールの移動速度を算出する工程は、前記移動平均の波形データのうち、前記ボールの移動に由来する周波数領域において信号強度の最大値を含み山状に変化する部分を算出し、前記山状に変化する部分の周波数の差を算出し、前記周波数の差に基づいて前記ボールのスピン量を算出する請求項11または12に記載のボール計測方法。
【請求項14】
前記周波数の差は、前記信号強度の最大値をDmaxとし、閾値DtをDmax・n(ただし0<n<1)とした場合、前記信号強度が前記閾値Dtとなる部分における周波数の差である請求項13に記載のボール計測方法。
【請求項15】
電波反射性を有する第1領域と電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有するボールに向けて、指向性アンテナで構成される第1のアンテナ〜第4のアンテナにより送信波を送信し、前記ボールで反射された反射波を各前記第1のアンテナ〜前記第4のアンテナで受信して受信信号を生成し、前記各受信信号に基づいて、ドップラー周波数を有する第1のドップラー信号〜第4のドップラー信号を作成する工程と、
前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を、それぞれ周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す第1の信号強度分布データ〜第4の信号強度分布データを作成する工程と、
前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに基づいて前記ボールの移動速度および移動方向を算出するとともに、前記ボールのスピン量を算出する工程とを有し、
前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を周波数解析する際に、前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号のそれぞれについて、全解析データ数のうち、少なくとも20%のデータに前記第1のドップラー信号〜前記第4のドップラー信号を用い、残りのデータを0とするものであり、
前記第1のアンテナ〜第4のアンテナは、前記ボールの移動方向とは反対側に設けられており、前記第1のアンテナ〜前記第3のアンテナが水平方向に所定の間隔をあけて第2のアンテナを中心にして並べられ、第4のアンテナが前記第2のアンテナの上方に垂直方向に所定の間隔をあけて配置されていることを特徴とするボール計測方法。
【請求項16】
前記ボールの移動速度および移動方向を算出する工程は、更に前記第1の信号強度分布データ〜前記第4の信号強度分布データに移動平均処理をして、第1の移動平均の波形データ〜第4の移動平均の波形データを作成し、
前記第1の移動平均の波形データ〜前記第4の移動平均の波形データについて、それぞれ、前記ボールの移動に由来する周波数領域での信号強度の最大値を算出し、前記第1の移動平均の波形データ〜前記第4の移動平均の波形データの各前記最大値に基づいて前記ボールの移動速度および移動方向を算出する請求項15に記載のボール計測方法。
【請求項17】
前記第2のアンテナは指向方向を示す第1の仮想軸が水平方向に延在し、前記第4のアンテナは指向性を示す第2の仮想軸が前記第1の仮想軸と交差するように配置されており、
前記ボールのスピン量を算出する工程は、更に前記第2の信号強度分布データおよび前記第4の信号強度分布データに移動平均処理をして、第2の移動平均の波形データおよび第4の移動平均の波形データを作成し、
前記第2の移動平均の波形データおよび前記第4の移動平均の波形データについて、それぞれ前記ボールの移動に由来する周波数領域において信号強度の最大値を含み山状に変化する部分を算出し、前記山状に変化する部分の周波数の差を算出して、前記第4の移動平均の波形データの前記周波数の差に基づいて前記ボールのスピン量を算出するとともに、
さらに、前記第2の移動平均の波形データの前記周波数の差と前記第4の移動平均の波形データの前記周波数の差との差分に基づいて、前記ボールの回転軸の向きを算出する請求項15に記載のボール計測方法。
【請求項18】
前記周波数の差は、前記信号強度の最大値をDmaxとし、閾値DtをDmax・n(ただし0<n<1)とした場合、前記信号強度が前記閾値Dtとなる部分における周波数の差である請求項17に記載のボール計測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−68139(P2012−68139A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213710(P2010−213710)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
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