説明

ポサコナゾール−ポリマー複合体、並びに、ポサコナゾールおよびそのポリマー複合体を使用した治療方法

改善されたポサコナゾール系組成物、および真菌感染症、癌または転移性疾患の治療および予防方法について開示する。好ましい態様では、複合体は、PEG−ポサコナゾール複合体であり、PEGは約20,000の分子量を有する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本願は、参照することによりその内容が本明細書に援用される、2007年1月16日出願の米国仮特許出願第60/885,089号の優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、改善された抗真菌活性を有するポサコナゾール−ポリマー複合体に関する。本発明は、さらに、癌および転移性疾患の治療における、ポサコナゾール、およびそれを含むポリマー複合体の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、広範囲の活性を有する抗真菌剤としてのポサコナゾールおよびその使用方法が開示されている。インビトロおよびインビボの研究では、ポサコナゾールが、カンジダ種(アルビカンス、グラブラタ、およびトロピカリスを含む)、並びに、限定はしないが、アスペルギルス属、フザリウム属、担子菌類(Basidiomycetes)、ブラストミセス属、コクシジオイデス属、ヒストプラズマ属、接合菌類(Zygomycetes)、およびスケドスポリウム属を含む他の日和見菌、並びに、日和見性の明色(moniliaceous)および黒色のカビ、および皮膚糸状菌に対する良好な活性を有していることが実証された。しかしながら、ポサコナゾールは非常に不溶性である(水への溶解度<0.002mg/mL)。したがって、所望の薬理学的特性を有する静注用または非経口の製剤の提供は非常に困難である。
【0004】
本願の譲受人に譲受された特許文献2は、エステル系の結合を用いた、さまざまな抗癌剤に関する放出可能なPEG複合体について開示している。プロドラッグ複合体は、PEGと放出されるべき親化合物との間に挿入されるさまざまな二官能性のスペーサを考慮に入れて設計される。これらの二官能性スペーサは、インビボにおいて親化合物を遊離する加水分解反応を調節する役割を担うと考えられている。特定の実施例では、オキシニ酢酸系のスペーサが用いられる。詳細は文献中の図2に記載されている。特許文献2の内容は、参照することにより本明細書に援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,661,151号明細書
【特許文献2】米国特許第5,965,566号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この件に関する先行研究にもかかわらず、ポサコナゾール組成物およびそれを使用した治療方法の改善が依然として必要とされている。本発明は、これらの要求に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様では、改善されたポサコナゾール含有ポリマー複合体、および実質的に非抗原性のポリマーが提供される。実質的に非抗原性のポリマーは、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレン・オキサイドであることが好ましい。
【0008】
本発明の1つの好ましい態様では、本発明のポリマー複合体は、式(I):
【化1】

【0009】
を有し、ここで、
Aはキャップ基であるか、または
【化2】

【0010】
であり、
Xは、
【化3】

【0011】
であり、
1、Z1’、Z2およびZ2’は、O、S、およびNR1の中から独立して選択され、
Rはポリアルキレン・オキサイドであり、
1およびY1’ は、独立して、O、S、SO、SO2、CR23またはNR4であり、
1、R2、R3およびR4は、水素、C1-6アルキル、C3-19 分岐鎖アルキル、C3-8 シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6へテロアルキル、置換C1-6へテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシ、およびC1-6へテロアルコキシの中から独立して選択される。
【0012】
1つの好ましい実施の形態では、本発明のポリマー複合体は、式(II):
【化4】

【0013】
を有する。
【0014】
本発明の別の態様では、哺乳動物における真菌感染症の治療および/または予防方法が提供される。本方法は、本明細書に記載されるポリマー複合体を抗真菌剤として有効な量で哺乳動物に投与することを含む。
【0015】
本発明のさらなる態様は、哺乳動物における癌または転移性疾患の治療および/または予防方法が提供する。これらの方法は、ポサコナゾール、または、必要に応じて、本明細書に記載されるもの、または前述のポサコナゾール含有ポリマー複合体を含めた非常に多くの適切なポリマー複合体のうちのいずれか1つを、有効量で、哺乳動物、好ましくはヒトに投与することを含む。
【0016】
ポサコナゾールまたはそれを含むポリマー複合体は、非経口的に、すなわち、静脈内、筋肉内、または皮下に投与されることが好ましい。
【0017】
本明細書に記載される一部の好ましいポリマー複合体についての利点のいくつかには、非改質の形態と比較して水に対する溶解度が顕著に増大するという事実が含まれる。よって、静脈内投与することができる。さらには、一部の好ましいポリマー複合体の有効性は、特定の菌株に対して、予想以上に高い。これにより、その薬剤を、低用量で、および/または、それ以外ではポサコナゾールを用いた治療の被験者にはならなかったかもしれない、真菌感染症の治療において、使用できるようになる。転移性疾患、腫瘍、癌などを治療する、または低減する方法におけるポサコナゾールの使用に関するものを含めた、他の利点、およびさらなる利点は、本願が提供する明細書を読む際に、当業者に明らかになるであろう。
【0018】
本発明の目的では、「残基」という用語は、別の化合物との置換反応に供された後に残る、すなわちPEGなどの、化合物の部分を意味するものと解されるものとする。
【0019】
本発明の目的では、「ポリマー残基」または「PEG残基」という用語は、 それぞれ、別の化合物、部分などとの反応に供された後に残る、ポリマーまたはPEGの部分を意味するものと解されるものとする。
本発明の目的では、本明細書で用いられる「アルキル」という用語は、直鎖、分岐鎖、および環状アルキル基を含む、飽和脂肪族炭化水素のことをいう。「アルキル」という用語はまた、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキルアルキル、へテロシクロアルキル、C1-6ヒドロカルボニル基も含む。アルキル基は1〜12の炭素を有することが好ましい。約1〜7炭素の低級アルキルであることがさらに好ましく、約1〜4炭素であることがさらになお好ましい。アルキル基は、置換または非置換でありうる。置換される場合は、置換基には、好ましくは、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル−チオ、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、へテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が含まれる。
【0020】
本発明の目的では、本明細書で用いられる「置換(された)」という用語は、官能基または化合物に含まれる1つ以上の原子に、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル−チオ、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、へテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基の群に由来する部分のうちの1つが付加されるか、または置換されることをいう。
【0021】
本明細書で用いられる「アルケニル」という用語は、直鎖、分岐鎖、および環式基を含む、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む基のことをいう。「アルキル」という用語はまた、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキルアルキル、へテロシクロアルキル、C1-6ヒドロカルボニル基も含む。アルケニル基は約2〜12の炭素を有することが好ましい。約2〜7炭素の低級アルケニルであることがさらに好ましく、約2〜4炭素であることがさらになお好ましい。アルケニル基は、置換または非置換でありうる。置換される場合は、置換基には、好ましくは、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル−チオ、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、へテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が含まれる。
【0022】
本明細書で用いられる「アルキニル」という用語は、直鎖、分岐鎖、および環式基を含む、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む基のことをいう。アルキニル基は約2〜12の炭素を有することが好ましい。約2〜7炭素の低級アルキニルであることがさらに好ましく、約2〜4炭素であることがさらになお好ましい。アルキニル基は、置換または非置換でありうる。置換される場合は、置換基には、好ましくは、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル−チオ、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、へテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が含まれる。「アルキニル」の例としては、プロパギル、プロピン、および3−ヘキシンが挙げられる。
【0023】
本明細書で用いられる「アリール」という用語は、少なくとも1つの芳香族環を含む芳香族炭化水素環系のことをいう。芳香族環は、随意的に、他の芳香族炭化水素環または非芳香族炭化水素環と縮合するか、他の方法で結合していてもよい。アリール基の例として、例えば、フェニル、ナフチル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、およびビフェニルが挙げられる。アリール基の好ましい例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0024】
本明細書で用いられる「シクロアルキル」という用語は、C3-8環状炭化水素のことをいう。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。
【0025】
本明細書で用いられる「シクロアルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、C3-8環状炭化水素のことをいう。シクロアルケニルの例としては、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、1,3−シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタトリエニル、およびシクロオクテニルが挙げられる。
本明細書で用いられる「シクロアルキルアルキル」という用語は、C3-8シクロアルキル基で置換されたアルキル基のことをいう。シクロアルキルアルキルの例としては、シクロプロピルメチルおよびシクロペンチルエチルが挙げられる。
本明細書で用いられる「アルコキシ」という用語は、酸素橋を通じて親化合物部分に結合している、所望の炭素原子数のアルキル基のことをいう。アルコキシ基の例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、およびイソプロポキシが挙げられる。
【0026】
本明細書で用いられる「アルキルアリール」という用語は、アルキル基で置換されたアリール基のことをいう。
【0027】
本明細書で用いられる「アラルキル」という用語は、アリール基で置換されたアルキル基のことをいう。
【0028】
本明細書で用いられる「アルコキシアルキル」という用語は、アルコキシ基で置換されたアルキル基のことをいう。
【0029】
本明細書で用いられる「アルキル−チオ−アルキル」という用語は、例えばメチルチオメチルまたはメチルチオエチルなど、アルキル−S−アルキルチオエーテルのことをいう。
【0030】
本明細書で用いられる「アミノ」という用語は、有機ラジカルによって1つ以上の水素が置換されることによる、アンモニアから誘導された当技術分野で既知の窒素含有基のことをいう。例えば、「アシルアミノ」および「アルキルアミノ」という用語は、それぞれ、アシルおよびアルキル置換基を有する、特定のN−置換有機ラジカルのことをいう。
【0031】
本明細書で用いられる「アルキルカルボニル」という用語は、アルキル基で置換されたカルボニル基のことをいう。
【0032】
本明細書で用いられる「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素のことをいう。
【0033】
本明細書で用いられる「ヘテロシクロアルキル」という用語は、窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1つのへテロ原子を含む、非芳香族環系のことをいう。ヘテロシクロアルキル環は、随意的に、他のヘテロシクロアルキル環および/または非芳香族炭化水素環と縮合するか、他の方法で結合していてもよい。ヘテロシクロアルキル基は、3〜7員環であることが好ましい。ヘテロシクロアルキル基の例として、例えば、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、ピロリジン、およびピラゾールが挙げられる。好ましいヘテロシクロアルキル基として、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、およびピロリジニルが挙げられる。
【0034】
本明細書で用いられる「ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1つのへテロ原子を含む、芳香族環系のことをいう。ヘテロアリール環は、1つ以上のヘテロアリール環、芳香族または非芳香族炭化水素環、またはヘテロシクロアルキル環と縮合するか、他の方法で結合していてもよい。ヘテロアリール基の例として、例えば、ピリジン、フラン、チオフェン、5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン、およびピリミジンが挙げられる。ヘテロアリール基の好ましい例として、チエニル、ベンゾチエニル、ピリジル、キノリル、ピラジニル、ピリミジル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピロリル、インドリル、ピラゾリル、およびベンゾピラゾリルが挙げられる。
【0035】
本明細書では、「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素、および硫黄のことをいう。
【0036】
一部の実施の形態では、置換アルキルは、カルボキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキル、およびメルカプトアルキルを含み、置換アルケニルは、カルボキシアルケニル、アミノアルケニル、ジアルケニルアミノ、ヒドロキシアルケニル、およびメルカプトアルケニルを含み、置換アルキニルは、カルボキシアルキニル、アミノアルキニル、ジアルキニルアミノ、ヒドロキシアルキニル、およびメルカプトアルキニルを含み、置換シクロアルキルは、4−クロロシクロヘキシルなどの部分を含み、アリールは、ナフチルなどの部分を含み、置換アリールは、3−ブロモフェニルなどの部分を含み、アラルキルは、トリルなどの部分を含み、へテロアルキルはエチルチオフェンなどの部分を含み、置換へテロアルキルは、3−メトキシ−チオフェンなどの部分を含み、アルコキシは、メトキシなどの部分を含み、フェノキシは、3−ニトロフェノキシなどの部分を含む。ハロゲン基は、フルオロ、クロロ、ヨード、およびブロモを含むものと解されるべきである。
【0037】
本発明の目的では、「正の整数」は、一以上の整数を含み、当然のことながら当業者には、当業者の合理性の範囲内であるとものと解されるものとする。
【0038】
本発明の目的では「結合した(linked)」という用語は、1つの基の別の基に対する、すなわち、化学反応の結果としての共有的(好ましい)または非共有的な結合を含むと解されるものとする。
【0039】
「有効量」および「十分量」という用語は、本発明の目的では、当業者に理解されるような効果として、所望の効果または治療効果を達成する量を意味するものとする。
【発明の効果】
【0040】
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1〜2に対応する反応スキーム。
【発明を実施するための形態】
【0042】
1.ポサコナゾール
本発明の好ましい態様は、ポサコナゾールまたはそれらの薬学的に許容される塩を含む。参照することによりその内容が本明細書に援用される、米国特許第5,661,151号明細書には、ポサコナゾール、すなわち、
【化5】

【0043】
および関連化合物について記載されている。本発明の目的では、「ポサコナゾール」が用いられる場合、本発明の好ましい実施の形態を示しているものと理解されたい。本発明の別の実施の形態は、主としているが排他的ではない、抗真菌活性を有する関連するトリアゾールを含む。
【0044】
本発明の目的では、「抗真菌活性」とは、本発明の化合物または組成物が、限定はしないが、カンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコッカス症、およびフザリウム症(funsariosis)、並びに、担子菌類(Basidiomycetes)、ブラストミセス属、コクシジオイデス属、ヒストプラズマ属、接合菌類(Zygomycetes)、小胞子菌属、白癬菌属、および、スケドスポリウム属などに起因する真菌感染症を含む、真菌感染症を治療し、低減し、または他の方法で消散させる能力があると解されるものとする。
【0045】
本発明の目的では、「癌」、「転移性疾患」、「腫瘍」などの治療とは、固体または造血性であるか否かに関わらず、癌を治療する方法を含むものと解されるものとする。癌の例として、ほんの数例を挙げれば、頭部癌、頚部癌、乳癌、非小細胞肺癌などの肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、直腸癌、子宮頚癌、急性白血病、および胃癌、リンパ腫などがある。
【0046】
2.実質的に非抗原性のポリマー
本発明のさまざまな態様に使用されうる実質的に非抗原性のポリマーとしては、そのポリマーがプロドラッグ系の一部として含まれている場合に、該ポリマーに結合している間、または放出される際に生物活性が保持されるように、ポサコナゾールまたは関連するトリアゾールに共有結合する能力のある、当業者に既知の任意のものが挙げられる。適切なポリマーには、Enzon Pharmaceuticals社、Nektar社、または他の既知の活性化PEGの供給元から市販されるものが含まれる。
【0047】
ここで挙げられるポリマー物質は、室温で水溶性であることが好ましい。これらのポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコールなどのポリアルキレン・オキサイド(PAO)ホモポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらの共重合体、およびブロック共重合体であって、その水溶性が維持されるものが挙げられる。
【0048】
ポリアルキレン・オキサイドは、約1,000〜約100,000の平均分子量を有し、約5,000〜約60,000が好ましい。ポリアルキレン・オキサイドは、約12,000〜約24,000であることがさらに好ましい。1つの特定の実施の形態では、ポリマー部分は、約20,000の分子量を有する。本明細書に記載のポリマーは、線状、分岐、またはマルチアームのポリアルキレン・オキサイドを含む。
【0049】
ポリアルキレン・オキサイドは、ポリエチレングリコール(PEG)を含むことが好ましい。PEGは、一般的に、構造式:
−O−(CH2CH2O)n
で表され、
ここで(n)はポリマーの重合度を表し、ポリマーの分子量によって決まる。本発明のポリエチレングリコール(PEG)残基部分は、構造式:
−Y11−(CH2CH2O)n−CH2CH211
によっても表すことができ、
ここで、
11およびY11’ は、独立して、O、S、またはNR11であり、
11は、水素、C1-6アルキル、C3-19 分岐鎖アルキル、C3-8 シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6へテロアルキル、置換 C1-6へテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシ、およびC1-6へテロアルコキシの中から選択され、
(n)は約10〜約2300の整数である。
【0050】
直接、または二官能性スペーサと組み合わせてポサコナゾールに結合するのに有用な一部の直鎖PEGは:
CH3−O−(CH2CH2O)n−CH2CH2O−、
CH3−O−(CH2CH2O)n−CH2CH2NH−、
CH3−O−(CH2CH2O)n−CH2CH2S−、
−O−(CH2CH2O)n−CH2CH2O−、
−NH−(CH2CH2O)n−CH2CH2NH−、および
−S−(CH2CH2O)n−CH2CH2S−
を含み、
ここで (n)は正の整数であり、平均分子量が、約1,000〜約100,000、好ましくは約5,000〜約60,000、さらに好ましくは約12,000〜約24,000になるように選択されることが好ましい。当技術分野で既知の業者の必要性に対応するため、他の分子量も意図されている。ポリマーの重合度は、ポリマー鎖における繰り返し単位の数を表し、ポリマーの分子量に応じて決まる。ビス−ポリマー、ビス−PEGが所望される、本発明の好ましい態様では、末端メチル基は、反対端にある同一の末端基で置換される。
【0051】
別の態様では、ポサコナゾール・ポリマー複合体は、参照することによりそれぞれの開示が本明細書に援用される、本願の譲受人に譲受された米国特許第5,643,575号、同第5,919,455号、同第6,113,906号、および同第6,566,506号の各明細書に記載されるものなど、分岐鎖ポリマー残基(すなわち、U−PEG)を用いて調製される。これらのポリマーの非限定的なリストは、下記構造式を有するポリマー系(i)〜(iv):
【化6】

【0052】
に相当し、ここで、
61は、O、S、またはNR61であり、
(w62)および(w63)は、独立して正の整数であり、約1〜約10であることが好ましく、約1〜約4であることがさらに好ましく、
mPEGは、メトキシPEGであり、ここで、PEGは先に定義されており、ポリマー部分の総分子量が約1,000〜約100,000であり、
61は、水素、C1-6アルキル、C3-19 分岐鎖アルキル、C3-8 シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6へテロアルキル、置換 C1-6へテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシ、およびC1-6へテロアルコキシの中から選択される。
Shearwater社(現Nektar社)の2001年のカタログ“Polyethylene Glycol and Derivatives for Biomedical Application”に記載されるような、「スター型PEG」およびマルチアームPEGなどのポリエチレングリコールもまた有用である。日油株式会社の薬物送達システムカタログ第8版2006年4月に記載される「スター型PEG」およびマルチアームPEGも参照されたい。前述のそれぞれの開示は、参照することにより本明細書に援用される。具体的には、PEGは、式:
【化7】

【0053】
であって差し支えなく、
ここで、
(u’)は約4〜約455の整数であって、約5,000〜約60,000の総分子量を有するポリマーを提供することが好ましく、残基のうち最大3つの末端部分がメチルまたは他の低級アルキルでキャッピングされる。残る末端は、二官能性リンカーまたはポサコナゾールに結合するために官能化される。水溶性のポリマーは、必要以上の実験をすることなく、二官能性の連結基に結合するために官能化されうる。
【0054】
一部の好ましい実施の形態では、PEGの4つのアームのすべてが、二官能性リンカーまたはポサコナゾールへの結合を促進するため、適切な活性化基に転換されうる。このような転換前の化合物としては:
【化8−1】

【化8−2】

【0055】
が挙げられる。
【0056】
さらなる実施の形態では、およびPAO系ポリマーの代替として、実質的に非抗原性のポリマーは、デキストラン、ポリビニールアルコール、炭化水素系ポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、ポリアルキレン・オキサイド、および/またはそれらの共重合体など、1種類以上の事実上非抗原性の材料の中から、随意的に選択される。参照することによりその内容が本明細書に援用される、本願の譲受人に譲受された米国特許第6,153,655号明細書も参照のこと。同一タイプの活性は、PEGなどのPAOに関しても、本明細書に記載されるように用いられることは当業者に理解されよう。当業者はさらに、前記リストが単に説明に役立てるものであって、本明細書に記載される性質を有するすべてのポリマー材料が意図されることも理解するであろう。
【0057】
本発明の目的では、「実質的に、または事実上非抗原性の」とは、哺乳動物において、非毒性であり、相当の免疫反応を誘起させないものとして当技術分野で理解される、すべての材料を意味する。
【0058】
一部の好ましい活性化PEGには、オキシニ酢酸または関連するスペーサなど、ポサコナゾールにポリマーを結合するための二官能性スペーサを組み合わせて使用した、PEG−アミンを含む。線状の非分岐ポリマーが用いられる態様では、好ましい実施の形態は、ポサコナゾールがポリマーの両(末)端に結合しているものを含む。
【0059】
さらなる態様では、末端アミン基を有するポリマーは、本明細書に記載される化合物を調製するのに用いることができる。末端アミンを高純度で含有するポリマーの調製方法は、参照することによりそれらの各内容が本明細書に援用される、米国特許出願第11/508,507号、および同第11/537,172号の各明細書に記載されている。例えば、アジドを有するポリマーは、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン系還元剤またはNaBH4などのアルカリ金属ホウ化水素の還元剤と反応する。あるいは、離脱基を含むポリマーは、イミノジカルボン酸tert-ブチルメチル(KNMeBoc)のカリウム塩またはイミノジカルボン酸ジtert-ブチル(KNBoc2)のカリウム塩などの保護化されたアミン塩と反応し、その後に、保護化されたアミンを脱保護する。これらの方法によって形成された末端アミンを含むポリマーの純度は約95%を超え、好ましくは99%を超える。
【0060】
3.好ましいPEG−ポサコナゾール複合体
ポサコナゾールの特定の放出可能なポリマー複合体は、驚くべきことに、それらの改質されていないタイプと比較して、有効性が増大することが見出された。本発明の抗真菌プロドラッグは、式(I):
【化9】

【0061】
のものを含み、
ここで、
Aはキャップ基または
【化10】

【0062】
であり、
Xは、
【化11】

【0063】
であり、
1、Z1’、Z2およびZ2’は、O、S、およびNR1の中から独立して選択され、
Rはポリアルキレン・オキサイドであり、
1およびY1’ は、独立して、O、S、SO、SO2、CR23またはNR4であり、
1、R2、R3およびR4は、水素、C1-6アルキル、C3-19 分岐鎖アルキル、C3-8 シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6へテロアルキル、置換C1-6へテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシ、およびC1-6へテロアルコキシの中から独立して選択される。
【0064】
1つの態様では、Aは、H、NH2、OH、CO2H、C1-6アルコキシ、およびC1-6アルキルの中から選択されうる。一部の特定の実施の形態では、Aは、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、HおよびOHでありうる。Aは、メチルまたはメトキシであることが好ましい。
【0065】
1つの好ましい態様では、本発明のポリマー複合体は式(II):
【化12】

【0066】
を有する。
【0067】
本明細書に記載されるポリマー複合体は、式(III):
【化13】

【0068】
を有することがさらに好ましく、
ここで、(n)は約20〜約2300の整数であり、平均分子量は約1,000〜約100,000、好ましくは約5,000〜約60,000、さらに好ましくは約12,000〜約24,000である。
【0069】
本発明の特に好ましい態様では、Y1、Y1’、Z1、Z1’、Z2、およびZ2’は、それぞれO(酸素)である。よって、一部の特に好ましい実施の形態は、下記構造式を有しうる:
【化14】

【0070】
ここで、Xは、
【化15】

【0071】
である。
【0072】
意図される一部の実施の形態では、上記ビス−PEGの代わりにmPEGを含む。そのポリマー複合体は、下記構造式を有しうる:
【化16】

【0073】
4.合成方法
本発明の別の態様では、本明細書に記載されるポリマー・プロドラッグの調製方法が提案される。好ましくは、本方法は、
a)下記構造式の化合物:
【化17】

【0074】
を、塩基の存在下で
【化18】

【0075】
などの二官能性スペーサと反応させ、
ここで、
21、およびZ22は、O、S、およびNR21の中から独立して選択され、
21は、O、S、SO、SO2、CR2223またはNR24であり、
21、R22、R23およびR24は、水素、C1-6アルキル、C3-19 分岐鎖アルキル、C3-8 シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6へテロアルキル、置換C1-6へテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシ、およびC1-6へテロアルコキシの中から独立して選択される(R22およびR23は、共にH(水素)であることが好ましい);
b)工程a)で得られた生成物を、式(I)の複合体を形成するのに十分な条件下で、塩基およびカップリング剤の存在下で、下記式:
2N−PAO−NH2(またはPAO−NH2
のアミン末端修飾ポリアルキレン・オキサイドと反応させる、
各工程を有してなる。
【0076】
ほとんどの実施の形態では、アミン末端修飾PAOは、PEG−NH2と称されることもある、αおよびω−末端アミンを含有するPEGである。PEG−NH2は、例えばNektar社から市販されており、あるいは、標準的技法を使用してPEGジオールから合成することもできる。ポリマーが線状で、両末端にアミンを含む場合、線状ポリマーが一方の末端にのみアミンを含む場合(mPEG−NH2)と比較して、2倍のポサコナゾールを負荷することができる。マルチアームポリマーもまた、複数のポサコナゾールの負荷に使用することができる。例えば、日油株式会社の4アームPEGはポサコナゾールを最大4つまで負荷することができる。
【0077】
一般に、本発明のポリマー複合体は、アミン末端修飾PAOの1当量以上を、例えば、活性部位当たり1当量以上のポサコナゾール二官能性スペーサ中間体と、該中間体のカルボン酸との反応に供されて、結合を形成するアミノ基を事実上生じさせるのに十分な条件下で、反応させることによって調製される。
【0078】
あるいは、本明細書に記載されるポリマー複合体は、アミン末端修飾PAOを、ジグリコール酸無水物などの二官能性スペーサと反応させた後、ポサコナゾールと複合化させることによって調製されうる。これらの態様では、ジグリコール酸無水物は、十分な割合でPEG化することができるように、高純度であることが好ましい。
【0079】
上記のように、ポリマー複合体を形成するのに必要とされる反応は、塩基の存在下で行なわれる。適切な塩基としては、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(好ましい)、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン、KOH、カリウムt-ブトキシド、およびNaOHなどが挙げられる。
【0080】
複合体形成における第2の工程は、追加量の塩基に加えて、カップリング剤の使用も必要とする。適切なカップリング剤の非限定的なリストとして、例えばシグマ−アルドリッチケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical)などの商業的供給源から市販されるか、あるいは既知の技法を用いて合成される、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、任意の適切なジアルキルカルボジイミド、2−ハロ−1−アルキル−ピリジニウムハライド(向山試薬)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC−好ましい)、プロパン、プロピルホスホン酸無水物(PPACA)およびジクロロリン酸フェニルなどが挙げられる。
【0081】
置換基は、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(CH3CN)、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム(CHCl3)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはそれらの混合液などの不活性溶媒中で反応することが好ましい。反応は、通常、約0℃〜約22℃の温度(室温)で行われる。
【0082】
活性化ポリマーおよびポサコナゾールを含む他の複合体形成反応が、必要以上の実験をすることなく行ないうることは、上記の内容から明らかであろう。
【0083】
5.医薬組成物
本発明のさらなる態様は、有効量の、本明細書に記載される化合物またはそれらの薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含めた、医薬組成物を含む。本明細書に記載されるポサコナゾールは、中性または塩の形態で、組成物へと製剤されて差し支えない。薬学的に許容される塩は、酸付加塩を含む(タンパク質の遊離アミノ基を用いて形成される)。一部の適切な酸として、塩酸またはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸などの有機酸が挙げられる。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第2鉄などの無機塩基、および医薬組成物プロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機酸から誘導することもできる。
【0084】
本発明の医薬組成物は、有効量のポサコナゾールまたはそれらの薬学的に許容される塩に加えて、不活性な医薬的に許容される担体、および、好ましい静注用または非経口組成物に含まれうる、必要な、または所望される医薬的に許容されるすべての賦形剤も含みうる。静脈、筋肉、または皮下注射用の非経口の形態は、通常、滅菌溶液の形態であり、その溶液を等張にするための塩またはグルコースを含めてもよい。
【0085】
6.治療方法
本発明の広範な態様では、ポサコナゾールが有効な病状の哺乳動物を治療するための少なくとも3つの方法が提供される。第1の実施の形態は、ヒトなどの哺乳動物における真菌感染症の治療および/または予防方法を含む。本方法は、本明細書に記載されるポリマー複合体を、治療的に、すなわち、抗真菌剤として有効な量で、哺乳動物に投与することを含む。本発明の第2の実施の形態は、哺乳動物における癌または転移性疾患の治療、低減、および/または予防方法を含む。これらの方法は、製法または本明細書に記載されているか否かに関わらず、ポサコナゾールのポリマー複合体を、有効量で、哺乳動物に投与することを含む。これらの実施の形態のそれぞれにおいて、本発明は、ポサコナゾール含有複合体を非経口的に投与することを含む。さらなる実施の形態では、下記式:
【化19】

【0086】
の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩を有効量で投与することによって、哺乳動物における癌または転移性疾患の治療、低減、および/または予防する方法を提供する。したがって本発明のこの態様は、必ずしもポリマー複合体の一部でなくてもよく、非経口以外、すなわち経口経路を通じた投薬形態で投与することが可能な組成物でのポサコナゾールの使用を採用している。
【0087】
本発明の目的では、「癌および/または転移性疾患の治療または予防」とは、本明細書に記載される治療の不存在下で観察されるものと比較した場合、疾患の症状または病状が、治療の間および/または治療後に抑制されるか、あるいは弱力化されることを意味するものと解されるものとする。病状の予防は、当業者によって予定されている生物学的マーカーまたは臨床マーカーによって確認することができる。
【0088】
用いられる治療方法に関わらず、それらを必要とする患者に投与されるポサコナゾールの量は、1日あたり約10〜約2,000mgであり、1日あたり約50〜約800mgが好ましい。別の態様では、投与される量は、約5〜約50mg/kg/日である。投与は、1日1回の投与または複数回用量の連日投与の一環として行なわれうる。ポリマー複合体が投与される本発明のすべての態様では、上記用量は、投与されるポリマー複合体の量ではなく、ポサコナゾールの量に基づいている。治療は、所望の臨床結果がもたらされるまで1日以上行なわれることが意図されている。例えば、ポリマー複合体が真菌症の治療目的で投与される本発明の態様では、それらを必要とする患者に投与されるポサコナゾールの量は、臨床的に意義のある病原性真菌の50%、好ましくは80%、さらに好ましくは90%を死滅させるのに必要とされる最小発育阻止濃度(「MIC90」)のほとんどを上回る、ポサコナゾールの相加平均定常状態の平均最大血漿濃度を生じさせるのに有効な量である。
【0089】
本明細書で意図される方法は、本明細書に記載されるポサコナゾールまたはポリマー複合体を、癌または転移性疾患の病状が減少する時期まで、1週間またはそれ以上の間、週に1回以上(例えば2回)、投与することを含む。組成物は、1日1回、あるいは、複数週の治療計画の一環として与えられうる複数回用量に分けて、投与されて差し支えない。
【0090】
本発明の化合物の投与についての正確な量、頻度、および期間は、当然ながら、患者の性別、年齢および病状、並びに、主治医によって決定される真菌感染症、癌または転移性疾患の重症度に応じて変化するであろう。
【0091】
さらなる態様には、相乗的な、または付加的利益のため、本明細書に記載されるポサコナゾール組成物を他の抗真菌治療または抗癌治療と併用することを含む。例えば、本明細書に記載される方法に従ったポサコナゾールおよびポリマー複合体は、化学療法剤による治療と併用して、同時に、または連続的に使用することができる。
【実施例】
【0092】
次の実施例は、本発明のさらなる認識を提供する役割をするものであり、多少なりとも本発明の効力範囲を制限することは意味しない。
【0093】
実施例1
化合物1(5.0g、7.135mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(3.49g、28.5mmol)、ジグリコール酸無水物(1.66g、14.3mmol)を、200mLの無水ジクロロメタンに溶かし、2時間攪拌した。次に、その溶液を4×100mLの0.1NのHClで洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。その溶液をろ過し、蒸発させて、一晩、真空下、P25上で乾燥させて化合物2(5.61g、6.87mmol、96%)を得た。 13C NMR (67.8 MHz, CDCl3) δ 10.23, 17.11, 22.07, 37.33, 38.65, 48.73, 50.69, 53.34, 55.88, 60.18, 68.03, 68.18, 68.75, 70.53, 71.96, 83.76 (JCF = 4 Hz), 104.46 (JCF = 26 Hz), 111.18 (JCF = 20 Hz), 115.03, 116.51, 118.66, 123.53, 125.11 (JCF = 12 Hz), 125.39, 128.44 (JCF = 7 Hz), 134.64, 144.32, 144.81, 150.21, 150.32, 153.03, 153.32, 158.78 (JCF = 244 Hz, JCF = 12 Hz), 162.59 (JCF = 248 Hz, JCF = 12 Hz), 169.07, 171.42。
【0094】
実施例2
ΔPEG 20k Da アミン(ビス−PEG−アミン)3(40g,2.0mmol) を300mLのトルエンと共沸させることにより乾燥し、溶媒を蒸発させて固形物を得た。それを次に、2(5.88g,7.19mmol)およびDMAP(3.91g,32.0mmol)と共に400mLの無水ジクロロメタンに溶解させた。その溶液を氷浴で20分間、0℃まで冷却し、次に、 1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(3.07g,16.0mmol)を加えた。反応混合物を室温に戻し、一晩攪拌した。次いで、それを固形物になるまで蒸発させて、900mLのIPAから最初の結晶化を行ない、次に450mLのTHFから再結晶化し、純粋な化合物4(40.1g、1.86mmol、93%)を得た。 13C NMR (67.8 MHz, CDCl3) δ 9.47, 16.31, 21.13, 36.36, 37.56, 37.87, 48.03, 49.48, 54.73, 59.16, 82.95 (JCF = 4 Hz), 103.60 (JCF = 26 Hz), 110.27 (JCF = 21 Hz, JCF = 2 Hz), 114.09, 115.36, 117.27, 122.38, 124.70, 124.82 (JCF = 2 Hz), 127.57 (JCF = 9 Hz), 134.10, 143.78, 144.73, 149.44, 149.90, 151.89, 152.02, 158.06 (JCF = 247 Hz, JCF = 12 Hz), 161.62 (JCF = 253 Hz, JCF = 11 Hz), 167.72, 167.79。
【0095】
実施例3
この実施例では、さまざまなインビボおよびインビトロ試験を行った。結果を下に示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポサコナゾールおよび実質的に非抗原性のポリマーを含む、ポリマー複合体。
【請求項2】
前記実質的に非抗原性のポリマーが、ポリアルキレン・オキサイドであることを特徴とする請求項1記載のポリマー複合体。
【請求項3】
前記ポリアルキレン・オキサイドが、ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項2記載のポリマー複合体。
【請求項4】
前記ポリアルキレン・オキサイドが、約1,000〜約100,000の重量平均分子量を有することを特徴とする請求項2記載のポリマー複合体。
【請求項5】
前記ポリアルキレン・オキサイドが、約5,000〜約60,000の重量平均分子量を有することを特徴とする請求項2記載のポリマー複合体。
【請求項6】
前記ポリアルキレン・オキサイドが、約12,000〜約24,000の重量平均分子量を有することを特徴とする請求項2記載のポリマー複合体。
【請求項7】
式(I):
【化1】

を有する、請求項1記載のポリマー複合体であって、
ここで、
Aはキャップ基、または
【化2】

であり、
Xは、
【化3】

であり、
1、Z1’、Z2およびZ2’は、O、S、およびNR1からなる群より独立して選択され、
Rはポリアルキレン・オキサイドであり、
1およびY1’ は、独立して、O、S、SO、SO2、CR23またはNR4であり、
1、R2、R3およびR4は、水素、C1-6アルキル、C3-19 分岐鎖アルキル、C3-8 シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6へテロアルキル、置換C1-6へテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシ、およびC1-6へテロアルコキシからなる群より独立して選択される、
ポリマー複合体。
【請求項8】
式(II):
【化4】

を有することを特徴とする請求項7記載のポリマー複合体。
【請求項9】
前記キャップ基が、H、NH2、OH、CO2H、C1-6アルコキシおよびC1-6アルキルからなる群より選択されることを特徴とする請求項7記載のポリマー複合体。
【請求項10】
Rが、線状、分岐、またはマルチアーム型のポリアルキレン・オキサイドを含むことを特徴とする請求項7記載のポリマー複合体。
【請求項11】
Rが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびそれらの共重合体からなる群より選択されることを特徴とする請求項7記載のポリマー複合体。
【請求項12】
Rが
−Y11−(CH2CH2O)n−CH2CH211
であることを特徴とする請求項7記載のポリマー複合体であって、
ここで、
11およびY11’ は、独立して、O、S、またはNR11であり、
11は、水素、C1-6アルキル、C3-19分岐鎖アルキル、C3-8 シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6へテロアルキル、置換 C1-6へテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシ、およびC1-6へテロアルコキシからなる群より選択され、
(n)は、約20〜約2300の整数である、
ポリマー複合体。
【請求項13】
式(III):
【化5】

を有することを特徴とする請求項7記載のポリマー複合体であって、
(n)は、約20〜約2300の整数である、
ポリマー複合体。
【請求項14】
1、Y1’、Z1、Z1’、Z2およびZ2’が、それぞれOであることを特徴とする請求項13記載のポリマー複合体。
【請求項15】
ポリマー複合体を調製する方法であって、
a)構造式:
【化6】

の化合物を、塩基の存在下で、
【化7】

と反応させる工程であって、
ここで、
21、およびZ22は、O、S、およびNR21からなる群より独立して選択され、
21は、O、S、SO、SO2、CR2223またはNR24であり、
21、R22、R23およびR24は、水素、C1-6アルキル、C3-19分岐鎖アルキル、C3-8 シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6へテロアルキル、置換C1-6へテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシ、およびC1-6へテロアルコキシからなる群より独立して選択される、
工程と、
b)工程a)から得られた生成物を、ポリマー複合体を形成するのに十分な条件下で塩基およびカップリング剤の存在下において、アミン末端修飾ポリアルキレン・オキサイドと反応させる工程と、
を有してなる方法。
【請求項16】
前記塩基が、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)であり、前記カップリング剤が、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)であることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
有効量の、請求項1のポリマー複合体またはそれらの薬学的に許容される塩と、
薬学的に許容される担体と、
を含んでなる医薬組成物。
【請求項18】
哺乳動物における真菌感染症を治療および/または予防する方法であって、
請求項1記載のポリマー複合体を、抗菌に有効な量で、それらを必要とする哺乳動物に投与する工程を有してなる、方法。
【請求項19】
前記ポリマー複合体が非経口投与されることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記哺乳動物に投与されるポサコナゾールの量が、1日当たり約10〜約2,000mgであることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記哺乳動物に投与されるポサコナゾールの量が、1日当たり約50〜約800mgであることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記哺乳動物に投与されるポサコナゾールの量が、1日あたり約5〜約50mg/kgであることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項23】
前記投与されるポサコナゾールの量が、臨床的に意義のある病原性真菌の90%を死滅させるのに必要とされる最小発育阻止濃度(「MIC90」)のほとんどを上回る、ポサコナゾールの相加平均定常状態での平均最大血漿濃度を生じさせるのに有効な量であることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項24】
哺乳動物における癌または転移性疾患の治療および/または予防方法であって、
請求項1記載のポリマー複合体を、有効量でそれらを必要とする哺乳動物に投与することを含む、方法。
【請求項25】
前記ポリマー複合体が非経口投与されることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳動物に投与されるポサコナゾールの量が、1日当たり約10〜約2,000mgであることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記哺乳動物に投与されるポサコナゾールの量が、1日当たり約50〜約800mgであることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項28】
前記哺乳動物に投与されるポサコナゾールの量が、1日当たり約5〜約50mg/kgであることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項29】
哺乳動物における癌または転移性疾患の治療および/または予防方法であって、
構造式:
【化8】

の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩を、有効量で投与することを含む、方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−515762(P2010−515762A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545729(P2009−545729)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/051075
【国際公開番号】WO2008/089185
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(505354899)エンゾン ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】ENZON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】