説明

ポジションセンサの位置決め装置

【目的】ポジションセンサを締結後、導通確認及び角度保証を行っていたが、この段階で角度保証できないと、再び位置決め・締結作業が必要になるので、このような取付角度の不良を回避する。
【構成】位置決め治具10に駆動部11と位置決め部12を設け、ポジションセンサ1の上に置き、位置決め部12の位置決め突部22〜24をニュートラル位置溝へ係合し、この状態で駆動部11により位置決め部12を回動させてポジションセンサ1をR接点ONまで一体に回動させ、ニュートラル位置からリバース接点ONまでのN→R角度を測定し、その後位置決め部12を逆転させてリバース接点OFFからドライブ接点ONになるまでのN→D角度を測定し、この測定結果により、再び駆動部11により位置決め部12を回動させて、ポジションセンサ1を正確なニュートラル位置へ移動し、この状態でポジションセンサ1を締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の自動変速機用ポジションセンサを取付ける際に、正確な位置決めを行うための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動変速機用ポジションセンサは、シフトレバーと連動するチェンジシャフトを回動させることにより、ポジションセンサ内のロータを回動させ、予めシフトポジションに対応する数だけ配置されている複数の固定接点とロータの可動接点との接続を機械的に接点を切り換えるようになっており、ロータがニュートラル位置から回動する回動角度に応じてシフトポジションを検出するようになっている(この形式をスイッチ式センサということにする)。
したがって、ポジションセンサのニュートラル位置を正確に位置決めして取付ける必要があり、例えば位置決め治具を用いて取付けるようになっている。
また、ポテンショメータを利用することにより、接点数を削減したものもある(例えば、特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開平7−310823号公報
【特許文献2】特開2002−120587号公報
【0003】
図11は従来の位置決め治具を用いた位置決めを示す図である。ポジションセンサ100は、略扇形をなし、そのケース101の要の部分にボス102を設け、ここに中空のロータシャフト103を回動自在に通し、さらにこのロータシャフト103の内側へ通したチェンジシャフト104をロータシャフト103と一体回転するように嵌合し、チェンジシャフト104を回動させると、一体にロータシャフト103が回動し、さらにロータシャフト103と一体のロータ105がポジションセンサ100の内部で回動し、ロータ105に設けられた可動接点が、予め各ポジションに対応して同一弧状上に配列されている複数の固定接点と順次切り替わるようになっている。
【0004】
各固定接点はロータシャフト103の中立位置を基準とする回動角度で配置され、この中立位置はポジションセンサ100を自動変速機(図示省略)へ取付ける際に、位置決め治具110によって正確に位置決めされる。
この位置決め治具110は、ロータシャフト103の回動中心と可動接点を結びかつニュートラル位置における直線である位置決め基準線Lに沿って直線状をなす位置決め部111を備え、この位置決め部111を、ケース101の表面に形成された位置決め凹部106a,106bへ嵌合することにより、ポジションセンサ100が位置決めされる。そこで、ケース101の外周部2ケ所に設けられている取付ボス107a,107bをボルト108a,108bにより自動変速機へ取付けると、ニュートラル位置が位置決めされた状態でポジションセンサ100が自動変速機へ取付けられることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ポテンメータを利用したものは、センサ構造が特殊になって複雑・高価になるから、コスト等の観点より上記スイッチ式センサの使用を求められる場合がある。しかし、スイッチ式センサの場合は、取付時において、ニュートラル位置の高精度な位置決めが要求され、そのうえ取付後に導通確認及び角度保証を行う必要があり、多くの手間を要した。これにつき以下説明する。
図8に示すように、各シフトポジションが、パーキングP,後進RニュートラルN,ドライブD,3速固定D3,セカンド2,ロー1の順に配列され、それぞれに対応する固定接点がロータシャフト103及びチェンジシャフト102の共通の中心Oを中心とする同心円弧状上へ配置され、各固定接点の中央をシフトポジション位置とする。以下の説明では、シフトポジション位置(固定接点の中央位置)、及び各固定接点について、シフトポジションの記号を用いて表現するものとする。
【0006】
各固定接点は、N接点の中央(N位置)を基準(0°)とする所定の角度で配置されている。このN位置から各ポジション位置までの角度を接点角度ということにする。またロータシャフト103及びチェンジシャフト102は一体回動するため、ロータ105の回動はロータシャフト103及びチェンジシャフト102を同時に回動することになるから、以下の説明ではこのような一体回動を単にチェンジシャフト102の回動ということにする。
【0007】
ポジションセンサ100の取付時には導通確認及び角度保証は行われていないため、取付後に導通確認及び角度保証の作業が必要になる。導通確認は各ポジションにて導通があるか否かを確認して固定接点の異常有無を検出するものであり、角度保証はR又はDへシフトするとき、N接点からR接点又はD接点がONになるまでの角度が所定の範囲内にあることを保証するものである。
そこでまず、N→Pへチェンジシャフト102を回動させて、P,Rの各ポジションで導通があるかを確認し、同時にN接点のOFFからR接点のONとなる角度α1を検出する。
次に、P→1までチェンジシャフト102を逆方向へ回動させて各ポジションにて導通を確認し、同時にN接点のOFFからD接点のONになるまでの角度β1を検出する。
ポジションセンサ100の位置決めは、N位置を正確に設定する必要があり、例えば、α1、β1はそれぞれ高い精度を求められ、1/10°オーダーの所定の許容範囲で保証しなければならない。
【0008】
しかし、このような高精度の角度保証を要求される場合には、上記の位置決め治具100による位置決め方法では多くの手間がかかることになる。
すなわち、位置決め治具110で位置決めしながら取付けるとき、位置決め治具110のセットが、作業者の熟練度や勘に左右されるため若干のバラツキがあり、角度保証の許容範囲外になるものがある程度の割合で不可避的に発生すること、ポジションセンサ100の取付後に導通確認及び角度保証の作業が別に必要になること、上記角度保証外のものが生じた場合には、再度ボルト108a、108bを緩めて位置決め治具100により再度位置決めをしながら締結し直すことになり、場合によってはこれを何回も反復しなければならない等の事情による。
そこで本願は、取付ける前に上記角度保証した状態でニュートラル位置を決定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためポジションセンサの位置決め装置に係る請求項1の発明は、ロータの回動角度に応じて、ロータの可動接点が複数の各シフトポジションに対応する固定接点と切り換わる自動変速機用のポジションセンサを自動変速機へ取付けるに際し、ニュートラル位置へ位置決めする装置において、
前記ポジションセンサの位置決めを行う位置決め部と、この位置決め部を介して前記ポジションセンサを回動させる駆動部と、前記ポジションセンサの回動角度を検出する回動角度検出部と、前記駆動部を駆動制御する制御部とを備え、
前記ロータの回動を止めた状態で、前記駆動部により前記位置決め部へ位置決めされた前記ポジションセンサを回動させ、
前記回動角度検出部により、ニュートラル位置から隣接するシフトポジションの所定位置までの回動角度を検出し、
この検出値に基づいて前記制御部が適正なニュートラル位置の角度を算出し、前記駆動部を再び駆動して前記ポジションセンサを前記適正なニュートラル位置へ修正回動させることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は上記請求項1において、前記駆動部は、サーボモータと、その回転出力を減速する減速部と、この減速部から駆動力を伝達される駆動シャフトと、この駆動シャフトの回転を制動するブレーキ部と、前記回動角度検出部とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は上記請求項1において、前記減速部はハーモニックドライブであることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は上記請求項1において、前記位置決め部は、前記ポジションセンサと嵌合する位置決め突部又は凹部を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は上記請求項1において、前記ポジションセンサを、ニュートラル位置からその左右に隣接するリバース位置又はドライブ位置のいずれか側へ回動させて接点ONまでの回動角度を測定し、その後反対側へ回動させて他側の接点ONまでの回動角度を測定することにより、適正なニュートラル位置の算出並びに、ニュートラル位置とリバース位置及びドライブ位置との間の角度保証とを同時に行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、取付前に位置決め装置により、接点間の回動角度を実測して適正なニュートラル位置を決定し、ポジションセンサを修正回動させて正確に位置決めしてから取付けるので、取付時には既にニュートラル位置の正確な位置決めがされ、同時に角度保証されているので、取付後の角度保証作業が不要になり、取付直しがなくなり、作業効率が向上する。
【0015】
請求項2の発明によれば、駆動部をサーボモータと、減速部と、駆動シャフトと、ブレーキ部と、回動角度検出部で構成したので、駆動シャフトを除く構成各部を駆動シャフトの軸方向へ並べて配置でき、コンパクト化できる。しかもブレーキ付きサーボモータを用いることにより、回動角度を高精度に調整できる。
【0016】
請求項3の発明によれば、減速部をハーモニックドライブとしたの、回動角度をさらに高精度に調整でき、そのうえ、より小型・軽量化が可能になる。
【0017】
請求項4の発明によれば、位置決め部に位置決め突部又は凹部を設けたので、位置決め凹部又は突部へ嵌合することにより、ポジションセンサをほぼ中立位置へ位置決めでき、さらにポジションセンサを回動させて正確に位置決めすることが可能になる。
【0018】
請求項5の発明によれば、ニュートラル位置からリバース位置又はドライブ位置のいずれか側へ回動させて接点ONまでの回動角度を測定し、その後反対側へ回動させて他側の接点ONまでの回動角度を測定することにより、実測による適正なニュートラル位置を算出でき、かつ、ニュートラル位置とリバース位置及びドライブ位置との間の角度保証とを同時に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて一実施例を説明する。図1は位置決め装置全体を概略的示す図であり、位置決め治具10は上下方向へ長い略筒状をなし、駆動部11及びその下端に位置決め部12を備え、この位置決め部12でポジションセンサ1をニュートラル位置へ位置決めしている。ポジションセンサ1は自動変速機8の所定位置上へ置かれ、予め自動変速機8のチェンジシャフト4がポジションセンサ1内へ嵌合されている(図7参照)。位置決め治具10は制御部9と接続され、その制御信号で駆動制御される。また、ポジションセンサ10のカプラー7も制御部9へ接続され、ポジション信号をポジションセンサ10から制御部9へ送るようになっている。
【0020】
図2は位置決め治具10の断面図であり、駆動部11は上から順に、ブレーキ部13,エンコーダ部14,サーボモータ15,減速部16を備え、さらに駆動部11の軸心部を上下方向に駆動シャフト18が通っている。駆動部11の下部は位置決め部12へ連結する。符号17はロータ固定部である。
ブレーキ部13は、駆動シャフト18の上端に設けられたブレーキディスク20と、これを挟持して制動する制動プレート21が設けられ、アクチュエータ22により制動プレート21を作動させるようになっている。駆動シャフト18に沿ってブレーキ部13,エンコーダ部14,サーボモータ15及び減速部16を並べて配置できるので、全体をコンパクト・軽量化できる。
【0021】
エンコーダ部14は本願発明における回動角度検出部に相当し、駆動シャフト18と一体に設けられたセンサーディスク23の回転を回転センサ24が検出して回転角度を検出する。この検出は、例えばセンサーディスク23の周方向へ等間隔で設けられたスリットにより磁力変化等を検出することによる等、公知の種々構造を採用できる。
【0022】
サーボモータ15は正逆転自在に回転するための回転駆動力を出力する公知のものであり、その回転出力は減速部16へ伝達される。特に、ブレーキ付きサーボモータ15とすることにより高精度な回転角度を得ることができ、さらに後述するハーモニックドライブの減速部16を併用することにより、分解能を0.01°オーダーとして高精度の角度調整と位置決めを可能にすることができる。そのうえ、駆動部11全体のコンパクト化・軽量化に貢献している。
【0023】
減速部16はハーモニックドライブで構成され、サーボモータ15の回転出力を減速して駆動シャフト18を減速回転する。ハーモニックドライブは、高減速比かつ高精度で、ノンバックラッシであり、しかも構造が簡単で軽量、コンパクト化できるという特徴がある。但し、公知の他の減速機構を適宜設けることもできる。
【0024】
ロータ固定部17は駆動部11のケースと一体化して位置決め部12における他の部分のように回動しない部分であり、駆動部11のケース下端外周寄りから下方へ延出するが、途中で屈曲して駆動シャフト18の軸心延長上を下方へ延びて、駆動シャフト18と同軸上に位置するチェンジシャフト4の上端と嵌合し、チェンジシャフト4の回転を止めるよう固定する。
【0025】
駆動シャフト18の下端は減速部16の下端にて位置決め部12へ連結する。位置決め部12は駆動シャフト18からクランク状に屈曲する軸部12aとこの軸部12aの下端が接続するプレート部20を備え、駆動シャフト18の中心軸線を中心にして駆動シャフト18と一体に回動する。軸部12aはロータ固定部17がやはりクランク状に屈曲してその下端部25側が駆動シャフト18と同軸配置されるため、このロータ固定部17との干渉を避けて屈曲している。軸部12aとプレート部20との接続部は駆動シャフト18の軸線から外れた位置にあり、この軸線上にロータ固定部17の下端部25が位置する。
【0026】
プレート部20は略水平方向へ広がっている板状部材であり、その一端側には直線状に突出する指針部20aが設けられ、下面には下方へ突出するリブ20bが一体に形成され、他端部にはボス2の上端へ重なる円形部21をなす。円形部21の下面の一部には下方へ突出する位置決め突部22、23が一体に突出形成されている。ボス2の外側となる位置にも位置決め突部24が形成され、この位置決め突部24は位置決め突部23と共にリブ20bの長さ方向両端部分に離れて形成されている。
【0027】
円形部21の中心にはロータ固定部17の下端部25が貫通して下方へ突出しており、この下端部25にさらに下方へ突出形成された嵌合突部25aをチェンジシャフト4の上端へ嵌合させることにより、チェンジシャフト4は位置決め冶具10と連結固定されて回転不能になる。この状態ではポジションセンサを1側が位置決め部12を介して駆動シャフト18により下端部25を中心にして回動自在になる。
【0028】
図3はポジションセンサ上へ取付けた状態における位置決め部12の上面視図、図4位置決め部12の下面視図である。
まず、図3においてポジションセンサ1の概要を説明する。ポジションセンサ1は、図11に示した従来例とほぼ同じ構造であり、扇状をなすケース30とこれを覆う蓋31とを備え、ケース30の外周部には外方へ突出する2カ所の取付突部6が一体に形成されている。各取付突部6には長穴6aが設けられ、取付位置を調整しながらボルト6bにより変速機8(図1)へ取付けられる。7はカプラーであり、チェンジシャフト4の回動によるポジションセンサ1内における接点切り換えによって発生するポジション信号を制御部9へ出力する。
【0029】
次に、図3及び図4により位置決め部12を説明する。円形部21はボス2を覆うように形成され、その中央部に貫通穴21aが設けられ、ここにロータ固定部17の下端部25が貫通している。したがって位置決め部12は下端部25を中心にその回りへ回動可能になる。
プレート部20の中間部は円形部21よりも若干小さな幅でポジションセンサ1の上を外周部側まで延び、さらにその先端部は指針部20aをなし、狭い幅で突出している。
【0030】
図4に明らかなように、プレート部20の下面には、円形部21の直径のうちその延長が指針部20aを通る直線に相当する位置決め基準線Lに沿って位置決め突部22〜24が形成されている。位置決め突部23、24はプレート部20の下面に突出形成されたリブ部20bの一部として設けられる。リブ20bは指針部20aと連続して指針部20aと同様の狭い幅で位置決め基準線Lに沿って円形部21側へ延び一端部が円形部21の座部21bに達している。
【0031】
座部21bは貫通穴21aを囲むリング状部分で、ボス2の上端面へ当接する部分である。この座部21bの位置決め基準線L上に、位置決め突部22及び23が貫通穴21aの中心を挟む対向位置に形成されている。
位置決め基準線Lは、ポジションセンサ1を取付けるとき、ニュートラル位置に取付けるためのものであり、この線上にある位置決め突部22〜24をポジションセンサ1の位置決め溝26〜28(図5、6)へ嵌合すれば、ポジションセンサ1をニュートラル位置に配置できる。
【0032】
図5は位置決め溝26〜28の配置を示す概略図、図6はボス2及びその周辺部を模式的に示す図である。これらの図に示すように、位置決め溝26〜28は位置決め基準線Lに沿って一直線上に形成される。このうち位置決め溝26及び27はそれぞれ位置決め突部22及び23に対応してボス2の上端面へ切り込み溝状に形成され(図6)、位置決め溝26に位置決め突部22が、位置決め溝27に位置決め突部23が嵌合するようになっている。
位置決め溝28は蓋31の外周部へ一体に突出形成された一対の対向する突部28a、28aの間に形成され、ここに位置決め突部24が嵌合する。
【0033】
このように、各位置決め溝26〜28へそれぞれ対応する位置決め突部22〜24を嵌合することにより、ポジションセンサ1は位置決め部12によりほぼニュートラル位置に調整され、この状態で自動変速機8上に置かれ、各取付突部6の長穴6aは自動変速機8の取付座に形成されたナット部(図示省略)の上に位置することになる(図3)。
【0034】
次に、ポジションセンサ1の詳細構造を説明する。まず図6において、ボス2には中空のロータシャフト3を回動自在に通し、さらにこのロータシャフト3の内側へ図の下方からチェンジシャフト4を通す。ロータシャフト3は樹脂製であり、その軸穴35を囲む内面には係合溝36が軸方向と平行に設けられ、この係合溝36にチェンジシャフト4の外周部に軸方向と平行に形成された係合突起37が係合して、ロータシャフト3とチェンジシャフト4が一体回動自在になる。
【0035】
チェンジシャフト4の上部には角穴38が形成され、この角穴38へ、ロータシャフト3の上方から挿入されたロータ固定部17の下端部25先端に軸方向へ突出形成されている角断面をなす嵌合突部25が嵌合される。ロータ固定部17は位置決め治具10のケースへ取付けられているため、位置決め調整時に不動であり、チェンジシャフト4を回動不能に固定する。このため、位置決め調整時には、駆動シャフト18により位置決め部12を介してポジションセンサ1がチェンジシャフト4の回りを回動することになる。
【0036】
図7は図3の7−7線に沿うポジションセンサの模式的断面図である。ポジションセンサ1は、扇状をなして上方に開放されたケース30と、この開放部を覆う蓋31とを備え、扇状をなす蓋31の要の位置にボス2が設けられる。
ロータシャフト3はボス2及びケース30を貫通している。ロータシャフト3はロータ5と一体であり、ロータシャフト3が回動すると、ロータ5も一体に回動し、ロータ5に設けられている可動接点32がケース30内の基板33上に設けられている各固定接点34と切り換わるようになっている。
【0037】
ボス2に中空のロータシャフト3を回動自在に通し、さらにこのロータシャフト3の内側へ通したチェンジシャフト4をロータシャフト3と一体回動するように嵌合し、チェンジシャフト4を回動させると、ロータシャフト3が一体に回動し、さらにロータシャフト3と一体のロータ5がポジションセンサ1の内部で回動することにより、ロータ5に設けられている可動接点32がケース30内の基板33上に設けられている固定接点34と切り換わるようになっている。
【0038】
固定接点34は図8に示すように、各ポジションに対応して同一円弧上に配置されている。この実施例では前進側が、N(ニュートラル)位置から順に、D、D3、2(セカンド)、1(ロー)の4ポジションであり、これに対応する固定接点34は所定の長さで設けられ、隣り合う固定接点34間には間隙がある。また、各ポジション位置は対応する各固定接点の中央をである。
ロータ5はチェンジシャフト4の軸心Oを中心に回動し、可動接点32は各固定接点の上を選択的に移動し、ある固定接点の上に摺動するときだけその固定接点に対応するポジションがONとなり、固定接点から外れるとOFFとなる。このON、OFF信号はカプラー7から信号線を経由して車両のCPUへ送られる。但し、本実施例ではカプラー7が制御部9へ接続され、ON、OFFはポジション信号として制御部9へ送られる。
【0039】
各ポジションのONとなる範囲は、ロータ5の回動角度によって決まり、N位置の中間を0°としたとき、左へα1回動するとR接点がONになり、α2まで持続し、α2を越えるとOFFとなり、その後α3からα4の間でP接点がONとなる。
また、右へβ1回動するとD接点がONになり、β2まで持続する。β3〜β4の範囲でD3接点がONとなり、β5〜β6の範囲で2(セカンド)接点がONとなり、β7〜β8の範囲で1(ロー)接点がONとなる。
【0040】
次に、角度保証取付の原理について説明する。図9は図8の一部を拡大した模式的な説明図であり、適正なニュートラル位置がN0であるとき、実際に位置決めしてポジションセンサを自動変速機上にセットしたときの仮のニュートラル位置がN1であり、N1がN0からΔだけ右側へずれているとする。なお、N1は位置決め部12で位置決めした状態(以下、初期状態という)であり、このようなΔ程度のずれは、加工精度や組み付け精度等の種々な要因によって生じ得る。
【0041】
この初期状態にて、制御部9はサーボモータ15によりセンサ回動軸18を図の時計回り方向へ回動させてポジションセンサ1を同方向へ回転させ、N接点がOFFしてからR接点がONになったときの回動角度を検出する。この回動角度はα1+Δであり、ポジションセンサ1はR接点がOFFになるまで(すなわちα2まで)回動を続行され、OFFになったとき停止される。
【0042】
続いて、ポジションセンサ1を逆回転させてD接点がONになるまで回動させ、R接点がONになってその後OFFになった時点(α1)からD接点がONになるまでの角度を測定する。この角度はα1+β1となる。
この測定結果から、補正すべきN0位置を制御部9にて演算する。α1及びβ1は既定値として予め制御部9内のメモリーに格納されているので、当初の測定値α1+Δより補正値Δを算出できる。しかし現在の停止位置はβ1であるから、この位置から角度β1だけ戻った位置がN0位置となり、Δ分のずれも補正される。そこで制御部9は現在位置からβ1だけ戻るようにサーボモータを駆動し、ポジションセンサをN0位置へ修正回動させれば、当初のN1位置から適正なN0へ補正される。そこでこの補正状態でボルト6bを締結するとポジションセンサの取付けが完了する。
【0043】
このとき、ポジションセンサ1を適正なN0位置へ合わせたことにより、α1及びβ1を角度保証できており、しかもN・R及びDの各接点に関する導通確認も完了していることになる。但し、本実施例の長穴6aの幅によりポジションセンサ1を回動できる範囲が制約されるので、他の接点に関する導通確認は別途行うことになる。しかし、ボルト6bによる仮止めをしなければ、全接点の同時導通確認も可能になる。
【0044】
次に、ポジションセンサ取付工程を、図10に示す制御部9における制御フロー図を中心に説明する。なお、図10のフロー図におけるステップS・2〜S・5は制御部9における制御フローである。
まず、図1及び図3に示すように、ポジションセンサ1のロータシャフト3に自動変速機8のチェンジシャフト4を通して所定位置にセットし、取付突部6の長穴6aにボルト6bを通して自動変速機8へ仮止めする。この仮止めは、ポジションセンサ1の脱落を防ぎ、かつ位置決め治具10によりポジションセンサ1を自在に回動できる程度に緩くボルト6bを止めた状態である。
【0045】
この状態でポジションセンサ1の上に位置決め治具10を乗せ、図2及び7に示すように、ロータ固定部17の嵌合突部25aをチェンジシャフト4の角穴38へ嵌合し、位置決め突部22〜24をポジションセンサ1の位置決め溝26〜28に嵌合すると、ポジションセンサ1はほぼニュートラル位置へ位置決めされる(S・1)。
【0046】
次に、駆動部11により位置決め部12を回動させてポジションセンサ1をR接点がONになるまで回動する。このとき、ポジションセンサ1はチェンジシャフト4及び連結突部25aの嵌合により固定されているので、ロータシャフト3は不動であり、固定接点34(ポジションセンサ1)側がロータシャフト3の周りに回動する。
【0047】
R接点がONになると、このN接点上の仮止め当初位置からR接点ONまでの回動角α1をエンコーダ部14で検出し、N→R角度α1を得、同時にサーボモータ15を逆転させる(S・2)。
【0048】
D接点がONになると、サーボモータ15の回転を止め、かつブレーキ部13により駆動シャフト18の回転を停止させる。エンコーダ部14はR接点OFFからD接点ONまでの角度(α1+β1に相当する)を測定する(S・3)。
【0049】
これにより、現在のニュートラル位置が測定され、かつ設定値との差も演算される(S・4)。
【0050】
そこで、この誤差分だけサーボモータ15を駆動し、設定値のニュートラル位置まで現在位置からポジションセンサ1を回動すれば、正確なニュートラル位置が位置決めされる(S・5)。
このとき、サーボモータ15及びブレーキ部13により、ポジションセンサ1の回動は高精度で正確に行われる。
【0051】
その後、2カ所の取付突部6においてボルト6bでそれぞれ締結すれば、ポジションセンサ1は正確にニュートラル位置を位置決めされて取付けられる(S・6)。しかも、この状態で既に角度保証並びに一部接点についての導通確認(N・R及びD接点のみ)が完了しているから、その後の角度保証作業さらには、再位置決め・再締結等が不要になるので、作業効率が高くなる。
【0052】
なお、本願発明は上記の各実施例に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。
例えば、上記実施例では、N→Rの回動角度を測定し、その後R→Dまでの回動角度を測定している。しかし、α1及びβ1は規定値であるから、最初のN→Rを測定してα1+Δを検出した時点で補正値Δを決定できる。したがって、この時点でα1だけポジションセンサ1を逆方向へ回動させれば、適正なN位置に正確に位置決めすることができ、この段階でα1及びβ1の角度保証も完了することになり、この場合には片側(R側)へのみの回動で足りるから、位置決め作業が最も短縮される。なお、R側とは逆にD側へ最初に回動させてβ1を測定しても同様である。
また、角度保証は、上記実施例ではN位置から隣接するR及びD接点のON位置までの回動角度としてあるが、各接点の中央又はOFF位置まで等、適宜設定できる。
位置決め突部22〜24と位置決め溝26〜28の位置関係は反対にして、位置決め突部22〜24をポジションセンサ1側に設け、位置決め溝26〜28を位置決め部12側に設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】位置決め治具の斜視図
【図2】位置決め治具の断面図
【図3】ポジションセンサ上へ取付けた状態における連結部の上面視図
【図4】連結部の下面視図
【図5】位置決め溝を示す概略図
【図6】ボス周辺部の構造に関する説明図
【図7】ポジションセンサの模式的断面図
【図8】固定接点の配置を示す図
【図9】位置補正の原理説明図
【図10】位置決め取付作業のフロー図
【図11】従来の位置決め方法を示す図
【符号の説明】
【0054】
1:ポジションセンサ、2:ボス、3:ロータシャフト、4:チェンジシャフト、5:ロータ、10:位置決め治具、11:駆動部、12:位置決め部、15:サーボモータ、16:減速部、17:ロータ固定部、18:センサ回動軸、22〜24:位置決め突部、26〜28:位置決め溝、30:ケース、31:蓋、32:可動接点、34:固定接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの回動角度に応じて、ロータの可動接点が複数の各シフトポジションに対応する固定接点と切り換わる自動変速機用のポジションセンサを自動変速機へ取付けるに際し、ニュートラル位置へ位置決めする装置において、
前記ポジションセンサの位置決めを行う位置決め部と、この位置決め部を介して前記ポジションセンサを回動させる駆動部と、前記ポジションセンサの回動角度を検出する回動角度検出部と、前記駆動部を駆動制御する制御部とを備え、
前記ロータの回動を止めた状態で、前記駆動部により、前記位置決め部へ位置決めされた前記ポジションセンサを回動させ、
前記回動角度検出部により、ニュートラル位置から隣接するシフトポジションの所定位置までの回動角度を検出し、
この検出値に基づいて前記制御部が適正なニュートラル位置の角度を算出し、前記駆動部を再び駆動して前記ポジションセンサを前記適正なニュートラル位置へ修正回動させることを特徴とするポジションセンサの位置決め装置。
【請求項2】
前記駆動部は、サーボモータと、その回転出力を減速する減速部と、この減速部から駆動力を伝達される駆動シャフトと、この駆動シャフトの回転を制動するブレーキ部と、前記回動角度検出部とを備えることを特徴とする請求項1に記載したポジションセンサの位置決め装置。
【請求項3】
前記減速部はハーモニックドライブであることを特徴とする請求項2のポジションセンサの位置決め装置。
【請求項4】
前記位置決め部は、前記ポジションセンサと嵌合する位置決め突部又は凹部を備えることを特徴とする請求項1に記載したポジションセンサの位置決め装置。
【請求項5】
前記ポジションセンサを、ニュートラル位置からその左右に隣接するリバース位置又はドライブ位置のいずれか側へ回動させて接点ONまでの回動角度を測定し、その後反対側へ回動させて他側の接点ONまでの回動角度を測定することにより、適正なニュートラル位置の算出と、ニュートラル位置とリバース位置及びドライブ位置との間の角度保証とを同時に行うことを特徴とする請求項1に記載したポジションセンサの位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−162287(P2009−162287A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341579(P2007−341579)
【出願日】平成19年12月30日(2007.12.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ハーモニックドライブ
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】