説明

ポリアセタール樹脂の超音波接合方法

【課題】ポリアセタール樹脂と他樹脂との超音波接合方法であり、他樹脂からなる部品や部材とポリアセタール樹脂の接合面の間にバインダーを使用して両樹脂を接合する超音波による接着方法を提供する。
【解決手段】ポリアセタール樹脂とポリアセタール以外の材料を接合するにあたり、ポリアセタール樹脂を含む繊維、ウェブ又は不織布をバインダーとして使用して、超音波接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタール樹脂と他樹脂との超音波接合方法に関し、より詳しくはポリアセタール樹脂と他の樹脂の接合面の間にバインダーを使用して、両樹脂を接合する超音波接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、成形性等において優れた特性を有し、構造材料や機構部品等として電気機器、自動車部品、精密機械部品等に広く使用されている。近年、益々その利用範囲も広がり、当該樹脂に対するより高度な性能要求と共に、新たな物性を付与する要求も高い。その中で、ポリアセタール樹脂製の部品や部材を複合化する方法は、一般的な方法を用いることができ、その中でも熱板溶着や超音波接合のように、一度溶融させることで強固な結合をもたらすことができる(非特許文献1参照)。
一方、他樹脂からなる部品や部材とポリアセタール樹脂を複合化することにより、お互いの利点を持ち合わせた製品を開発するにあたり、ポリアセタール樹脂は結晶性の高い樹脂であると共に、官能基が実質末端にのみ存在するため、他樹脂との接着性は極めて弱いものであった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「ポリアセタール樹脂ハンドブック」、日刊工業、高野菊雄編、1992年、473〜477p
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来方法では、他樹脂からなる部品や部材とポリアセタール樹脂を複合化する際には、ポリアセタール樹脂は結晶性の高い樹脂であると共に、官能基が実質末端にのみ存在するため、他樹脂との接着性は極めて弱いという問題点が有った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この改善策として、ポリアセタール樹脂とポリアセタール以外の材料を超音波接合するにあたり、ポリアセタール樹脂を含む繊維、ウェブ又は不織布をバインダーとして使用することにより、良好な接合強度が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ポリアセタール樹脂とポリアセタール樹脂以外の材料を、良好に接着させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明におけるポリアセタール樹脂とは、市販されているホモポリマーやコポリマーが挙げられ、何れも使用可能である。例えば、コポリマーとして、ホルムアルデヒド、その三量体(トリオキサン)又は四量体(テトラオキサン)と、エチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキセパン、グリコールのホルマール等の炭素数2〜8の環状エーテルとを反応させて得られたものが挙げられる。更に、本発明におけるコポリマーとは、二元共重合体のみならず、多元共重合体も含む。例えば、
上記コポリマーに、更にオキシメチレン単位、オキシアルキレン単位以外のブロック構造を有するオキシメチレンブロックコポリマー、または、オキシメチレングラフトポリマー等を広く用いることができる。
【0008】
更に、本発明の目的を損なわない範囲内で、公知の添加剤や充填剤を配合することも可能である。添加剤としては、結晶核剤、酸化防止剤、可塑剤、艶消し剤、発泡剤、潤滑剤、離型剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消臭剤、難燃剤、摺動剤、香料、抗菌剤等が挙げられる。また、充填剤としては、ガラス繊維、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカー等が挙げられる。
さらに、顔料、染料を加えて所望の色目に仕上げることも可能である。また、エステル交換触媒、各種モノマー、カップリング剤、末端処理剤、その他の樹脂、木粉、でんぷん等を加えて変性することも可能である。
【0009】
ポリアセタール樹脂以外の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属、セラミック等特に限定はなく、幅広く使用可能である。熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の場合、各種フィラーを含有しても良い。
【0010】
本発明においてバインダーとして使用するポリアセタール樹脂は、下記(1)式で表される構造を有する、トリオキサンと環状ホルマール及び/又は環状エーテルをコモノマーとして共重合したものである。
【0011】
【化1】

(式中、R、Rは、同一又は異なっても良く、水素原子、アルキル基又はフェニル基
を示す。mは2〜6の整数を示す。)
【0012】
コモノマーに由来する一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位としては、このましくは、オキシエチレン、オキシプロピレン単位である。オキシアルキレン単位の挿入量は、トリオキサン100重量部に対するコモノマー重量として、0.5〜50.0重量部であり、好ましくは1.0〜20重量部であり、より好ましくは1.0〜15重量部である。この範囲内であれば、ポリアセタール樹脂の耐熱性や生産性を落とすことなく用いることが可能である。
【0013】
バインダーの形状は、繊維及びこれを加工したウェブ、不織布が好適に使用される。バインダーに用いられる繊維の形状は、特に制限が無いが、均一な接合面を実現するためには、0.1mm以下のできるだけ細いマルチフィラメントを使用するのが好ましい。
【0014】
超音波接合は、超音波振動のエネルギーを利用して、接合面に発生した熱によって樹脂を溶融させて接合する方法である。ここで、接合する対象同士の接着性が極めて小さい場合、又は融解熱が大きく異なる場合、片方の著しい溶融や熱による変形が発生し、接着後の外観を著しく損ねる。一方、繊維状のバインダーを用いた場合には、超音波による振動エネルギーがバインダーに集中して、効率的にバインダーを介して、対象同士を溶着することが出来ると考えられる。
【0015】
バインダーは、ポリアセタール樹脂単独でも良いが、ポリアセタール樹脂以外の材料と接着性の良好な熱可塑性樹脂からなる繊維を混合したものが更に好ましい。混合の方法は、特に制限が無いが、例えば繊維に捲縮をかけて、数10mmの長さにカットし、カード機器を用いてウェブを形成すれば、混合が極めて良好である。作業性を良くする為には、ニードルパンチによる処理をかければ良い。
【実施例】
【0016】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に示す具体例に制限されるものでは無い。
【0017】
〈ポリアセタール(POM)〉
三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製F20−03を、東芝機械成形機株式会社製IS90Bを使用し、シリンダー設定温度200℃で、直径100mm、厚み1mmの円盤を射出成形したものを用いた。
【0018】
〈ポリプロピレン(PP−GF)〉
株式会社プライムポリマー社製L−4040P(ガラス繊維を40重量%含有)を、住友ネスタール社製射出成形機で、シリンダー設定温度220℃として、幅20mm、長さ175mm、厚み3mmの短冊片を成形して用いた。
【0019】
〈バインダー(1)〉
三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製V20−HEからなる太さ6デシテックス、64mm長のステープルをカード機にかけ、得られたウェブをニードルパンチ処理することで、目付け200g/mの不織布を製造した。
【0020】
〈バインダー(2)〉
三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製V20−HEからなる太さ6デシテックス、64mm長のステープルと、同仕様のポリプロピレン製ステープルを、1:1の重量比で同様に処理し、目付け200g/mの不織布として使用した。
【0021】
〈実施例1〜3、比較例1〜4〉
ブランソンモデル8700を使用して、出力1200W、ホーン先端形状φ20mmで
表1に記載の条件で、超音波接合を行った。接着状態は、3:接着良好、2:接着弱い、1:接着せず・形状不良(一方が溶融、もしくは変形)として評価した。
【0022】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂とポリアセタール以外の材料を超音波接合するにあたり、ポリアセタール樹脂を含む繊維、ウェブ又は不織布をバインダーとして使用することを特徴とする超音波接合方法。
【請求項2】
バインダーが、ポリアセタール樹脂を主成分とするマルチフィラメントである請求項1記載の超音波接合方法。
【請求項3】
バインダーを構成するポリアセタール樹脂が、トリオキサン100重量部に対して、0.5〜50重量部のコモノマーとの共重合物であり下記一般式(1)で表される共重合単位を有する請求項1又は2記載の超音波接合方法。
【化1】

(式中、R、Rは、同一又は異なっても良く、水素原子、アルキル基又はフェニル基
を示す。mは2〜6の整数を示す。)

【公開番号】特開2011−52182(P2011−52182A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204873(P2009−204873)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】