説明

ポリアセタール樹脂組成物

【課題】本発明は、ポリアセタール樹脂が持つ機械物性バランスを損なうことなく、摺動特性に優れ、更には繰返し衝撃特性、寸法安定性、クリープ特性にも優れたポリアセタール樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、ヒドラジド化合物(B)0.01〜0.5質量部、シリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂(C1)0.1〜5質量部、及びシリコーン化合物(C2)を含有し、且つ(C1)/(C2)の質量比が99/1〜70/30の範囲にあることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタール樹脂が持つ機械物性バランスを損なうことなく、摺動特性に優れ、更には繰返し衝撃特性、寸法安定性、クリープ特性にも優れたポリアセタール樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は機械的強度、耐薬品性及び摺動性のバランスに優れ、且つその加工性が容易であることから、代表的エンジニアリングプラスチックスとして、電気機器や電気機器の機構部品、OA機器の機構部品、自動車部品、及びその他の機構部品を中心に広範囲に亘って用いられている。
しかしながら、ポリアセタール樹脂の利用分野の拡大によって、益々要求性能が高くなっているのが現状である。このような要求特性としては、ポリアセタール樹脂が本来有する高性能の部分、例えば、優れた機械特性バランスを有しながら摺動性、寸法安定性、及び耐久性が要求される場合がある。摺動性を改良する際、ポリアセタール樹脂が本来有する耐摩耗性だけでは摺動材料としては十分でなく、公知の潤滑剤を添加した組成物を用いるのが一般的である。しかしながらこれらの潤滑剤を添加した場合、寸法安定性、及び耐久性が低下する問題があり、改良が要求されている。
【0003】
これらの要求に対し、ポリアセタール樹脂にシリコーン化合物を添加する方法が幾つか提案されている。例えば、ポリエチレンワックス及びシリコーンオイルを添加する方法(例えば特許文献1)、特定構造のポリアセタールブロックポリマーにシリコーン化合物を添加する方法(例えば特許文献2)、特定構造のポリアセタールブロックポリマーに特定分子量のポリオルガノシロキサンを添加する方法(例えば特許文献3)が挙げられる。しかしながらこれらの方法では、摺動性改良には効果があるが、ポリアセタール樹脂とシリコーン化合物の相溶性が低いという点から、寸法安定性、及び耐久性を改良するには至っていない。
【0004】
かかる課題に対し、ポリアセタール樹脂とシリコーン化合物からなる組成物との相溶性を向上させる技術として、シリコーンガムを添加する方法(例えば特許文献4)、変性ポリオレフィン系共重合体とシリコーンを添加する方法(例えば特許文献5)、オルガノポリシロキサン変性エチレン―エチルアクリレートコポリマーを添加する方法(例えば特許文献6)、シリコーン化合物によってグラフト化されたポリオレフィン系樹脂組成物を添加する方法(例えば特許文献7)が挙げられるが、これらの方法においても摺動性改良には効果があるが、寸法安定性、及び耐久性を改良するには至っていない。
又、シリコーン化合物以外を用いる方法として、オレフィン系重合体とビニル系重合体とのグラフト共重合体を添加する方法(例えば特許文献8)が挙げられるが、シリコーン化合物を添加する方法と比較した場合、摺動性改良が不十分である。
【0005】
以上のように従来技術では、ポリアセタール樹脂の特徴である機械的強度、摺動性のバランスを保持しつつ、寸法安定性、繰返し衝撃特性、及びクリープ特性等の耐久性をバランスよく有することが困難であり、このようなポリアセタール樹脂が要望されている。
【特許文献1】特開平4−224856号公報
【特許文献2】特開平5−9362号公報
【特許文献3】特開平6−49322号公報
【特許文献4】特開平11−279421号公報
【特許文献5】特開平9−286899号公報
【特許文献6】特開平4−146949号公報
【特許文献7】国際公開01/32775号パンフレット
【特許文献8】特開2006−265282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリアセタール樹脂が持つ機械物性バランスを損なうことなく、摺動特性に優れ、更には繰返し衝撃特性、寸法安定性、クリープ特性にも優れたポリアセタール樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、ヒドラジド化合物(B)0.01〜0.5質量部、シリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂(C1)0.1〜5質量部、及びシリコーン化合物(C2)を含有し、且つ(C1)/(C2)の質量比が99/1〜70/30の範囲にあることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は下記の通りである。
【0008】
〈1〉ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、ヒドラジド化合物(B)0.01〜0.5質量部、シリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂(C1)0.1〜5質量部、及びシリコーン化合物(C2)を含有し、且つ(C1)/(C2)の質量比が99/1〜70/30の範囲にあることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物。
〈2〉ポリアセタール樹脂(A)が、融点が167℃以上、173℃以下のポリアセタールコポリマーであることを特徴とする前記〈1〉に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【0009】
〈3〉ヒドラジド化合物(B)が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする前記〈1〉又は〈2〉に記載のポリアセタール樹脂組成物。
2NHNOC−R5−CONHNH2 式(1)
(式中R5は炭素数2〜20の炭化水素2価基)
〈4〉ヒドラジド化合物(B)が、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジドから選ばれる1種以上であることを特徴とする前記〈1〉〜〈3〉の何れかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【0010】
〈5〉シリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂(C1)及びシリコーン化合物(C2)が、該ポリオレフィン系樹脂へのシリコーン化合物のグラフト率が95〜30質量%の範囲にある、シリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂(C1)とシリコーン化合物(C2)とを含有するポリオレフィン系樹脂組成物(C)として配合されることを特徴とする前記〈1〉〜〈4〉の何れかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
〈6〉ポリオレフィン系樹脂にシリコーン化合物をグラフト重合させる際のポリオレフィン系樹脂とシリコーン化合物との質量比が80/20〜20/80の範囲にあることを特徴とする前記〈1〉〜〈5〉の何れかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
〈7〉ポリオレフィン系樹脂が低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体及び、エチレン−エチルアクリレート共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする前記〈1〉〜〈6〉の何れかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【0011】
〈8〉前記〈1〉〜〈7〉の何れかに記載のポリアセタール樹脂組成物100質量部に対し、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤、離型剤、潤滑剤の少なくとも1種を0.01〜10質量部含有してなることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物。
〈9〉前記〈1〉〜〈8〉の何れか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物からなる成形体。
〈10〉前記〈1〉〜〈8〉の何れか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物からなる摺動部品。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ポリアセタール樹脂が持つ機械物性バランスを損なうことなく、摺動特性に優れ、更には繰返し衝撃特性、寸法安定性、クリープ特性にも優れた効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いるポリアセタール樹脂(A)としては、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる実質上オキシメチレン単位のみから成るポリアセタールホモポリマーや、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソランや1,4−ブタンジオールホルマールなどのグリコールやジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル、環状ホルマールとを共重合させて得られたポリアセタールコポリマーを代表例としてあげることができる。また、単官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマーや、多官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーも用いることができる。さらに、両末端または片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えばポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマーや、同じく両末端または片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと環状エーテルや環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するポリアセタールコポリマーも用いることができる。以上のように、本発明においては、ポリアセタールホモポリマー、コポリマーいずれも用いることが可能である。好ましいのはポリアセタールコポリマーである。
【0014】
トリオキサン等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと1、3−ジオキソラン等を共重合させて得られるポリアセタールコポリマーにおいて、1,3−ジオキソラン等のコモノマーは、一般的にはトリオキサン1molに対して0.1〜60mol%、好ましくは0.1〜20mol%、更に好ましくは0.13〜10mol%用いられる。本発明においてポリアセタール樹脂(A)の特に好適な融点は162℃〜173℃であり、好ましくは167℃〜173℃、より好ましくは167℃〜171℃である。融点が167℃〜171℃のポリアセタールコポリマーは、トリオキサン1molに対して1.3〜3.5mol%程度のコモノマーを用いることにより得ることができる。
【0015】
ポリアセタールコポリマーの重合における重合触媒としては、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。ルイス酸としては、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、具体的には三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。また、プロトン酸、そのエステルまたは無水物の具体例としては、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルを好適例として挙げることができる。
【0016】
ポリアセタールコポリマーの重合方法としては、一般には塊状重合で行われ、バッチ式、連続式いずれも可能である。用いられる重合装置としては、コニーダー、2軸スクリュー式連続押出混錬機、2軸パドル型連続混合機等のセルフクリーニング型押出混錬機が使用され、溶融状態のモノマーが重合機に供給され、重合の進行とともに固体塊状のポリアセタールコポリマーが得られる。
【0017】
以上の重合で得られたポリアセタールコポリマーには、熱的に不安定な末端部〔−(OCH2−OH基〕が存在するため、そのままでは実用に供することはできない。そこで、不安定な末端部の分解除去処理を実施することが必要であり、次に示す特定の不安定末端部の分解除去処理を行なうことが好適である。特定の不安定末端部の分解除去処理とは、下記一般式(2)で表わされる少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下に、ポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタールコポリマーを溶融させた状態で熱処理するものである。
[R1234-n 式(2)
(式中、R1、R2、R3、R4は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表わし、非置換アルキル基または置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。nは1〜3の整数を表わす。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸もしくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を表わす。)
【0018】
本発明に用いる第4級アンモニウム化合物は、上記一般式(2)で表わされるものであれば特に制限はないが、一般式(2)におけるR1、R2、R3、及びR4が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、この内更に、R1、R2、R3、及びR4の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものが特に好ましい。具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸などの水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸などのカルボン酸塩等が挙げられる。中でも、水酸化物(OH-)、硫酸(HSO-、SO2-)、炭酸(HCO-、CO2-)、ホウ酸(B(OH)-)、カルボン酸の塩が好ましい。カルボン酸の内、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。これら第4級アンモニウム化合物は、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類等を併用しても何ら差し支えない。
【0019】
用いる第4級アンモニウム化合物の量は、ポリアセタールコポリマーと第4級アンモニウム化合物の合計質量に対する下記式で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して0.05〜50質量ppm、好ましくは1〜30質量ppmである。
P×14/Q
(式中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタールコポリマーに対する濃度(質量ppm)を表わし、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表わす。)
第4級アンモニウム化合物の添加量が0.05質量ppm未満であると不安定末端部の分解除去速度が低下し、50質量ppmを超えると不安定末端部分解除去後のポリアセタールコポリマーの色調が悪化する。
【0020】
本発明に用いるポリアセタール樹脂の不安定末端部の分解除去処理は、融点以上260℃以下の温度でポリアセタールコポリマーを溶融させた状態で熱処理することにより達成される。用いる装置には特に制限はないが、押出機、ニーダー等を用いて熱処理することが好適である。また、分解で発生したホルムアルデヒドは減圧下で除去される。第4級アンモニウム化合物の添加方法には特に制約はなく、重合触媒を失活する工程にて水溶液として加える方法、重合で生成したポリアセタールコポリマーパウダーに吹きかける方法などがある。いずれの添加方法を用いても、ポリアセタールコポリマーを熱処理する工程で添加されて居れば良く、押出機の中に注入したり、押出機等を用いてフィラーやピグメントの配合を行なう品種であれば,樹脂ペレットに該化合物を添着し、その後の配合工程で不安定末端除去操作を実施してもよい。
【0021】
不安定末端除去操作は、重合で得られたポリアセタールコポリマー中の重合触媒を失活させた後に行なうことも可能であるし、また重合触媒を失活させずに行なうことも可能である。重合触媒の失活操作としては、アミン類等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法を代表例として挙げることができる。また、重合触媒の失活を行なわずに、融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下にて加熱し、重合触媒を揮発低減した後、本不安定末端除去操作を行なうことも有効な方法である。
以上の特定の不安定末端部分解除去処理により、不安定末端部が殆ど存在しない非常に熱安定性に優れたポリアセタールコポリマーを得ることができる。
【0022】
次に本発明で用いるヒドラジド化合物(B)について説明する。
本発明で用いられるヒドラジド化合物は前記一般式(1)で表されるジカルボン酸ジヒドラジドが好ましく、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スペリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド等が挙げられる。これらのジカルボン酸ジヒドラジドのなかで好ましいのはセバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジドであり、更に好ましいのはアジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジドである。
【0023】
本発明のポリアセタール樹脂組成物へのヒドラジド化合物(B)の添加量はポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して0.01〜0.5質量部であり、好ましくは0.05〜0.5質量部、より好ましくは0.05〜0.4質量部である。
これらのヒドラジド化合物は1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。またヒドラジド化合物の融点は160℃以上が好ましく、より好ましいのは170℃以上である。
【0024】
次に本発明で用いられるシリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂(C1)、及びシリコーン化合物(C2)について説明する。
本発明に用いられるシリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂(C1)とは、好ましくは、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン及び、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂(これらは必要により、酢酸ビニルなどの少量のビニル系単量体を含有していても良い。)に下記式(3)で表されるポリジメチルシロキサン等のシリコーン化合物がグラフト化したものである。
【0025】
【化1】

【0026】
上記式(3)中のメチル基(−CH)は、水素、アルキル基、フェニル基、エーテル基、エステル基や反応性置換基であるヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基、ビニル基、アリル基、ポリエーテル基、フッ素含有アルキル基等を有する置換基で置換されていても良く、グラフト化の為にはビニル基又は、アリル基を有する置換基、好ましくはビニル基を有することがより好ましい。又、シリコーン化合物の平均重合度nは、摺動性能改良の点から、1000〜10000の範囲であることが好ましい。
尚、式(3)で表されるシリコーン化合物は、耐電気接点汚染性観点より、環状低分子モノマー及びオリゴマーの含有量を極力少なくしたものがより好ましい。
また、前記ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体及び、エチレン−エチルアクリレート共重合体がより好ましい。
【0027】
又、ポリアセタール樹脂組成物に含有されるシリコーン化合物(C2)とは、前記したポリオレフィン系樹脂へのグラフト化に用いられるシリコーン化合物と同一のものであっても、異なるものでも良いが、式(3)で表されるように架橋構造を有していないシリコーン化合物(シリコーンガム)であることが好ましい。又、本発明においては、1種類で用いても良いし、2種類以上のシリコーン化合物を組み合わせて用いても良い。
【0028】
ここで、本発明のシリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂(C1)においては、各ポリマー鎖同士が互いに架橋しておらず、独立のポリマー鎖として存在していることが必要である。従って、シリコーン化合物によってグラフト化されたポリオレフィン系樹脂(C1)の主鎖同士が、グラフトしているシリコーン化合物を介して互いに架橋し、ゴム弾性を有する架橋構造型(3次元構造型)の樹脂は、本発明のシリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂(C1)には含まれない。
【0029】
本発明のポリアセタール樹脂組成物へのシリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂(C1)の添加量はポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して0.1〜5質量部であり、摺動性能改良の点から0.1質量部以上、耐衝撃性及び、耐クリープ特性改良の点から5質量部以下であることが必要である。好ましくは0.5〜5質量部、より好ましくは0.5〜4質量部である。又、シリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂(C1)/シリコーン化合物(C2)の質量比が99/1〜70/30とすることが必要である。
これらのシリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂(C1)は1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0030】
又、シリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂(C1)、及びシリコーン化合物(C2)は、それぞれ単独でポリアセタール樹脂組成物に配合されていてもよいが、シリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂(C1)とシリコーン化合物(C2)とを含むポリオレフィン系樹脂組成物(C)としてポリアセタール樹脂組成物に配合することも可能である。すなわち本発明のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂(A)にヒドラジド化合物(B)、ポリオレフィン系樹脂組成物(C)を配合することにより得ることもできる。
【0031】
ポリオレフィン系樹脂にシリコーン化合物をグラフと反応させる際に、反応条件を調整することにより、シリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂とグラフトしなかったシリコーン化合物とを含むポリオレフィン系樹脂組成物が得られ、これをポリオレフィン系樹脂組成物(C)として配合することができる。
尚、ポリアセタール樹脂(A)にポリオレフィン系樹脂組成物(C)を配合することにより、ポリアセタール樹脂組成物を得た場合におけるシリコーン化合物(C2)の量とは、ポリオレフィン系樹脂組成物(C)中に含まれるポリオレフィン系樹脂とグラフトしなかったシリコーン化合物の量となる。
更に、ポリアセタール樹脂(A)に、ポリオレフィン系樹脂組成物(C)を配合する場合においては、ポリオレフィン系樹脂へのシリコーン化合物のグラフト率を95〜30質量%とする必要があり、ポリオレフィン系樹組成物(C)中には、ポリオレフィン系樹脂とグラフト反応しなかった未反応のシリコーン化合物が一定量残っていなければならない。
これは、この「グラフト率」が、ポリオキシメチレン樹脂組成物から得られる成形体の摺動特性に影響を与えるためであり、言い換えるならば、ポリオレフィン系樹脂へのシリコーン化合物のグラフト反応は、成形体の摺動性能改良効果を損なわない程度で行う必要がある。
【0032】
本発明においてポリオレフィン系樹脂へのシリコーン化合物のグラフト率の範囲は95〜30質量%であり、摺動性能改良の点から95質量%以下、耐久性改良の点から30質量%以上であることが必要である。好ましくは90〜40質量%、より好ましくは90〜50質量%である。
グラフト率は、例えば、溶剤(トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素やハロゲン化炭化水素)を用いたソックスレー抽出器による溶出試験方法により測定することができる。具体的には、ポリオレフィン系樹脂に添加したシリコーン化合物量から、ポリオレフィン系樹脂とは反応せず抽出によって溶出されたシリコーン化合物量を差し引き、その差し引いた値を添加シリコーン化合物量で割った値(質量%)が「グラフト率」となる。
【0033】
具体的に、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物(C)は、前記した、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、ポリメチルペンテン、ポリプロピレンおよびテトラフルオロエチレン−エチレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂(これらは必要により酢酸ビニルなどの少量のビニル系単量体を含有していても良い。)に、上記式(3)で示されるポリジメチルシロキサン等のシリコーン化合物を、所定のグラフト率となるようグラフト重合することによって得ることができる。
【0034】
例えば、ポリオレフィン系樹脂組成物(C)は、ポリオレフィン系樹脂とシリコーン化合物とを特定の温度および剪断条件下で溶融混練することによって製造することが出来る。
なお、本発明においては、シリコーングラフト化ポリオレフィン樹脂の架橋を防ぐという点から、ポリオレフィン系樹脂とシリコーン化合物との溶融混練時に有機過酸化物を使用することは好ましくないが、上記したグラフト率の範囲になり、架橋構造を有さないのであれば、極めて微量の有機過酸化物を用いてもよい。
これらポリオレフィン系樹脂組成物(C)としては、例えば、ダウコーニング株式会社から樹脂改質用シリコーンとして市販されている。具体的には、BY−27−219、BY−27−202Hなどの製品を挙げることができる。
【0035】
又、ポリオレフィン系樹脂組成物(C)製造の際における、ポリオレフィン系樹脂とシリコーン化合物との比率は、ポリオレフィン系樹脂/シリコーン化合物=80/20〜20/80(質量比)の範囲であり、摺動性改良の点からポリオレフィン系樹脂の比率が80質量比以下、グラフト率制御性の点からシリコーン化合物の比率80質量比以下であることが必要である。
【0036】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、用途に応じて適当な添加剤を配合することにより、熱安定性に優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。好適な具体的としては、ポリアセタール樹脂100質量部に対し、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤、離型(潤滑)剤の少なくとも1種を0.01〜10質量部含有してなるポリアセタール樹脂組成物を挙げることができる。
【0037】
酸化防止剤としてはヒンダートフェノール系酸化防止剤が好ましい。具体的には、例えばn−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]及びペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。これらの酸化防止剤は1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0038】
ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物の例としては、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、及びこれらの重合体、例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等を挙げることができる。また他に、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられ、例えばアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体を挙げることができる。その他にアミド化合物、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの縮合物、尿素、尿素誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物を挙げることができる。
【0039】
アミド化合物の具体例としては、イソフタル酸ジアミドなどの多価カルボン酸アミド、アントラニルアミドが挙げられる。アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、2,4−ジアミノ−sym−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン等である。アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミンを挙げることができる。アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物を挙げることができる。尿素誘導体の例としては、N−置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物を挙げることができる。N−置換尿素の具体例としては、アルキル基等の置換基が置換したメチル尿素、アルキレンビス尿素、アリール置換尿素を挙げることができる。尿素縮合体の具体例としては、尿素とホルムアルデヒドの縮合体等が挙げられる。ヒダントイン化合物の具体例としては、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン等が挙げられる。ウレイド化合物の具体例としては、アラントイン等が挙げられる。イミド化合物の具体例としてはスクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドを挙げることができる。
これらのホルムアルデヒド反応性窒素原子を含む重合体又化合物は、1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0040】
ギ酸捕捉剤としては、上記のアミノ置換トリアジン化合物やアミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、例えばメラミン・ホルムアルデヒド縮合物等を挙げることができる。他のギ酸捕捉剤としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩又はアルコキシドが挙げられる。例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムもしくはバリウムなどの水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩、さらには層状複水酸化物を挙げることができる。
【0041】
上記カルボン酸塩のカルボン酸としては、10〜36個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、これらのカルボン酸は水酸基で置換されていてもよい。飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸塩の具体的な例としては、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸−パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸−ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸−ステアリン酸)カルシウムが挙げられ、中でも好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウムである。
【0042】
層状複水酸化物としては例えば下記一般式で表されるハイドロタルサイト類をあげることができる。
〔(M2+1-X(M3+X(OH)2X+〔(An-x/n・mH2O〕X-
〔式中、M2+は2価金属、M3+は3価金属、An-はn価(nは1以上の整数)のアニオン表わし、Xは、0<X≦0.33の範囲にあり、mは正の数である。〕
【0043】
上記一般式において、M2+の例としてはMg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等、M3+の例としては、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、In3+等、An-の例としては、OH-、F-、Cl-、Br-、NO3-、CO32-、SO42-、Fe(CN)63-、CH3COO-、シュウ酸イオン、サリチル酸イオン等をあげることができる。特に好ましい例としてはCO32-、OH-をあげることができる。具体例としては、Mg0.75Al0.25(OH)2(CO30.125・0.5H2Oで示される天然ハイドロタルサイト、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O、Mg4.3Al2(OH)12.6CO3等で示される合成ハイドロタルサイトを挙げることができる。
これらのギ酸捕捉剤は、1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0044】
本発明で言う耐候(光)安定剤は、ベンゾトリアゾール系及び蓚酸アニリド系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤の中から選ばれる1種若しくは2種以上が好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’、5’−ビス−(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。蓚酸アリニド系紫外線吸収剤の例としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。好ましくは2−[2’−ヒドロキシ−3’、5’−ビス−(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾールである。これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0045】
ヒンダードアミン系光安定剤の例としては、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3―テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6,テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの縮合物、デカン2酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物などが挙げられる。好ましくはビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。これらヒンダードアミン系光安定剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0046】
離型剤、潤滑剤としては、アルコール、脂肪酸、アルコールと脂肪酸とのエステル、アルコールとジカルボン酸とのエステル、ポリオキシアルキレングリコール及び平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物の中から選ばれる1種若しくは2種以上が好ましい。
アルコールとしては1価アルコール、多価アルコールのいずれでもよく、例えば1価アルコールの例としてはオクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ベヘニルアルコール、メリシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、デシルミリスチルアルコール、デシルステアリルアルコール、ユニリンアルコールなどの飽和または不飽和アルコールが挙げられる。
【0047】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルバイト、ソルビタン、ソルビトール、マンニトールが挙げられる。
脂肪酸としては、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ナノデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸が挙げられる。また、かかる成分を含有してなる天然に存在する脂肪酸またはこれらの混合物等でもよい。
これらの脂肪酸は、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。また、合成脂肪族アルコールであるユニリンアルコールの末端をカルボキシル変性した合成脂肪酸でもよい。
【0048】
アルコールと脂肪酸のエステルとしては、下記に例示されるアルコールと脂肪酸とのエステルである。アルコールとしては1価アルコール、多価アルコールのいずれでもよく、例えば1価アルコールの例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ベヘニルアルコール、メリシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、デシルミリスチルアルコール、デシルステアリルアルコール、ユニリンアルコール等の飽和・不飽和アルコールが挙げられる。
【0049】
また、多価アルコールとしては、2〜6個の炭素原子を含有する多価アルコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルバイト、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
【0050】
これら、アルコール、脂肪酸、アルコールと脂肪酸のエステルの中では、炭素数12以上の脂肪酸とアルコールとのエステルが好ましく、炭素数12以上の脂肪酸と炭素数10以上のアルコールとのエステルがより好ましく、炭素数12〜30の脂肪酸と炭素数10〜30のアルコールとのエステルがさらに好ましい。
【0051】
アルコールとジカルボン酸のエステルとしては、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ベヘニルアルコール、メリシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、デシルミリスチルアルコール、デシルステアリルアルコール、ユニリンアルコール等の飽和・不飽和の一級アルコールと、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカニン酸、ブラシリン酸、マレイン酸、フマール酸、グルタコン酸等のジカルボン酸とのモノエステル、ジエステルおよびこれらの混合物が挙げられる。これらのアルコールとジカルボン酸のエステルの中では、炭素数10以上のアルコールとジカルボン酸とのエステルが好ましい。
【0052】
ポリオキシアルキレングリコール化合物としては、3種類の化合物群が挙げられる。
第1のグループは、アルキレングリコールをモノマーとする重縮合物である。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのブロックポリマー等が挙げられる。これらの重合モル数の好ましい範囲は5〜1000、より好ましい範囲は10〜500である。
【0053】
第2のグループは、第1のグループと脂肪族アルコールとのエーテル化合物である。例えば、ポリエチレングリコールオレイルエーテル(エチレンオキサイド重合モル数5〜50)、ポリエチレングリコールセチルエーテル(エチレンオキサイド重合モル数5〜50)、ポリエチレングリコールステアリルエーテル(エチレンオキサイド重合モル数5〜30)、ポリエチレングリコールラウリルエーテル(エチレンオキサイド重合モル数5〜30)、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル(エチレンオキサイド重合モル数5〜30)、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル(エチレンオキサイド重合モル数2〜100)、ポリエチレングリコールオキチルフェニルエーテル(エチレンオキサイド重合モル数4〜50)等が挙げられる。
【0054】
第3のグループは、第1のグループと高級脂肪酸とのエステル化合物である。例えば、ポリエチレングリコールモノラウレート(エチレンオキサイド重合モル数2〜30)、ポリエチレングリコールモノステアレート(エチレンオキサイド重合モル数2〜50)、ポリエチレングリコールモノオレート(エチレンオキサイド重合モル数2〜50)等が挙げられる。
【0055】
平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物とは、下記モノマーで構成される物が挙げられる。具体的にオレフィン化合物を構成するモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、4−メチル−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等で表されるオレフィン系モノマー、またはアレン、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、シクロペンタジエン等で表されるジオレフィン系モノマーがある。これらオレフィン系モノマー、ジオレフィン系モノマーの2種以上を共重合して得られる化合物であってもかまわない。オレフィン化合物がジオレフィン系モノマーを重合して得られる化合物である場合は、熱安定性向上の観点から、慣用の水素添加法を用いて炭素−炭素不飽和結合を極力少なくしたオレフィン化合物を用いることが好ましい。
【0056】
オレフィン化合物を構成するオレフィン単位の平均重合度mは10〜500の範囲にあることが好ましく、より好ましくは15〜300の範囲であり、さらに好ましくは15〜100の範囲である。
【0057】
本発明において、本発明の目的を損なわない範囲で、更に適当な公知の添加剤を必要に応じて配合することができる。具体的には、無機充填材、結晶核剤、導電材、熱可塑性樹脂、および熱可塑性エラストマー、顔料などをあげることができる。
前記無機充填剤は繊維状、粉粒子状、板状及び中空状の充填剤が用いられる。繊維状充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維等の無機質繊維があげられる。また、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー類も含まれる。なお、芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機繊維状物質も使用する事ができる。
【0058】
粉粒子状充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如き珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナの如き金属酸化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属硫酸塩、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、その他炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素、タルク、各種金属粉末等があげられる。
【0059】
板状充填剤としてはマイカ、ガラスフレーク、各種金属箔があげられる。中空状充填剤としては、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーン等があげられる。これらの充填剤は1種又は2種以上を併用して使用することが可能である。これらの充填剤は表面処理されたもの、未表面処理のもの、何れも使用可能であるが、成形表面の平滑性、機械的特性の面から表面処理の施されたものの使用のほうが好ましい場合がある。表面処理剤としては従来公知のものが使用可能である。例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤が使用できる。具体的にはN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n−ブチルジルコネート等が挙げられる。
【0060】
導電剤としては、導電性カーボンブラック、金属粉末又は繊維が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーネート樹脂、未硬化のエポキシ樹脂が挙げられる。また、これらの変性物も含まれる。熱可塑性エラストマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが挙げられる。顔料としては、無機系顔料及び有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料等が挙げられる。無機系顔料とは樹脂の着色用として一般的に使用されているものを言い、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、りん酸塩、酢酸塩やカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等を言う。有機系顔料とは縮合ウゾ系、イノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系等の顔料である等の顔料である。顔料の添加割合は色調により大幅に変わるため明確にする事は難しいが一般的には、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲で用いられる。
【0061】
本発明のポリアセタール樹脂組成物を製造する方法は特に制限するものではない。一般的には押出機を用い、ポリアセタール樹脂(A)とヒドラジド化合物(B)、及びポリオレフィン系樹脂組成物(C)成分とをヘンシェルミキサー、タンブラー、V字型ブレンダーなどで混合した後、1軸又は多軸混錬押出機等を用いて溶融混錬することにより、本発明のポリアセタール樹脂組成物を製造することができる。中でも、減圧装置を備えた2軸押出機が好ましい。また、予め混合することなく、定量フィーダーなどで各成分を単独あるいは数種類づつまとめて押出機に連続フィードすることにより本発明のポリアセタール樹脂組成物を製造することも可能である。また、予め(A)、(B)、(C)成分からなる高濃度マスターバッチを作成しておき、押出溶融混練時または射出成形時にポリアセタール樹脂で希釈することにより本発明のポリアセタール樹脂組成物を得ることもできる。
【0062】
本発明のポリアセタール樹脂組成物を成形する方法については特に制限するものではなく、公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法の何れかによって成形することができる。
【0063】
本発明のポリアセタール樹脂組成物の成形品は、機械物性バランスと摺動性に優れると共に、更には耐久性にも優れるため、様々な用途の成形品に使用することが可能である。例えば、ギア、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け及び、ガイド等に代表される機構部品、アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品、VTR(Video Tape Recorder)、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ、及びデジタルカメラに代表されるカメラ、またはビデオ機器用部品、カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD(Compact Disk)〔CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む〕、DVD(Digital Video Disk)〔DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−R DL、DVD+R DL、DVD−RAM(Random Access Memory)、DVD−Audioを含む〕、Blu−ray Disc、HD−DVD、その他光デイスクドライブ、MFD、MO、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像または情報機器、携帯電話およびファクシミリに代表される通信機器用部品、電気機器用部品、電子機器用部品、自動車用の部品として、ガソリンタンク、フェールポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品、ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品、シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品、コンビスイッチ部品、スイッチ類及び、クリップ類の部品、さらにシャープペンシルのペン先及び、シャープペンシルの芯を出し入れする機構部品、洗面台及び、排水口及び、排水栓開閉機構部品、自動販売機の開閉部ロック機構及び、商品排出機構部品、衣料用のコードストッパー、アジャスター、及びボタン、散水用のノズル、及び散水ホース接続ジョイント、階段手すり部及び、床材の支持具である建築用品、使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器及び、住宅設備機器に代表される工業部品として好適に使用できる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例よって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。尚、実施例及び比較例中の用語及び測定方法は以下のとおりである。
【0065】
〈融点の測定方法〉
示差熱量計(パーキンエルマー社製、DSC−2C)を用い、一旦200℃まで昇温させ融解させた試料を100℃まで冷却し、再度2.5℃/分の速度にて昇温する過程で発生する発熱スペクトルのピークの温度を融点とした。
【0066】
〈曲げ特性の測定方法〉
住友重機工業(株)製SH−75射出成形機を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度を90℃に設定し、射出圧力70MPa、射出時間60秒、冷却15秒の射出条件で評価用ISOダンベルを得て、ISO 178に準じて曲げ特性の評価を行った。
【0067】
〈摺動特性の測定方法〉
住友重機工業(株)製SH−75射出成形機を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度を90℃に設定し、射出圧力70MPa、射出時間60秒、冷却15秒の射出条件で評価用ISOダンベルを試験片とした。この試験片を東洋精密(株)製往復動摩擦摩耗試験機(AFT−15MS型)を用いて荷重1kg、線速度30mm/sec、往復距離20mmおよび環境温度23℃の条件で10000回往復し、摩耗深さを測定した。
摩耗深さは、10000回摺動評価後の試験片を、(株)東京精密製表面粗さ測定機(サーフコム)を用いて測定し、3箇所測定の平均値を摩耗深さとした。
この試験片の摺動性評価に用いる相手材料としては、旭化成ケミカルズ(株)ポリアセタール樹脂(コポリマー)テナック4520を用いて成形した成形片(直径5mmの円筒状で先端R=2.5mm)を用いた。
【0068】
〈繰り返し衝撃特性の測定方法〉
住友重機工業(株)製SH−75射出成形機を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度を90℃に設定し、射出圧力70MPa、射出時間60秒、冷却15秒の射出条件で評価用ISOダンベルを成形し、ダンベルを80mmに切削、中心部にノッチ(先端R=0.25mm、ノッチ幅=8mm)をいれ、図1に示すようにセットし、160gの重りを20mmの高さから落下させることにより繰り返し衝撃を与え、破壊されるまでの衝撃回数を測定した。破壊までの衝撃回数が多いほど繰り返し衝撃性に優れる。
【0069】
〈2次収縮率の測定方法〉
曲げ特性測定用試験片作成と全く同じ射出成形機、射出条件で試験片を作成した。成形完了後、23℃、湿度50%の環境下に48時間放置した後の流動方向の寸法をD1(mm)とし、成形完了後、23℃、湿度50%の環境下に72時間放置した後、120℃で24時間加熱し、その後23℃で湿度50%の環境下に48時間放置した後の流動方向の寸法をD2(mm)として、次式に従い2次収縮率を求めた。
2次収縮率(%)=(D1−D2)/金型寸法×100
【0070】
〈クリープ特性の測定方法〉
住友重機工業(株)製SH−75射出成形機を用いて、シリンダー温度200℃、射出圧力60MPa、射出時間25秒、冷却時間15秒、金型温度70℃にて、寸法110mm×6.5mm×3mmの短冊状の試験片を作製した。この試験片に東洋精密製作所(株)製クリープ試験機100−6を用いて、荷重応力6MPaの引張応力で、130℃の空気中で試験片が破壊されるまでの時間を測定した。破壊されるまでの時間が長いほど、耐クリープ性に優れる。
【0071】
〈ポリオレフィン系樹脂へのシリコーン化合物グラフト率(%)の測定方法〉
1.ポリオレフィン系樹脂にシリコーン化合物をグラフト反応させることにより得られるポリオレフィン系樹脂組成物を圧縮成形によりフィルム状にする(フィルムの厚み:0.2〜0.3mm)。
2.ソックスレー抽出器を用いて抽出する(溶媒:キシレン、温度:140℃、時間:8時間)
3.下記の式によりグラフト率(%)を得る。
【0072】
【数1】

【0073】
実施例、比較例には下記成分を用いた。
〈ポリアセタール樹脂a−1〉
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8)を80℃に調整し、トリオキサンを4kg/hr、コモノマーとして1,3−ジオキソランを42.8g/h(トリオキサン1molに対して、1.3mol%)、連鎖移動剤としてメチラールをトリオキサン1molに対して0.1×10-3molを連続的に添加した。さらに重合触媒として三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルをトリオキサン1molに対して1.5×10-5molで連続的に添加し重合を行なった。重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行なった。失活されたポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行い、窒素量に換算して20質量ppmとした。乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で不安定末端部分の分解除去を行なった。不安定末端部分の分解されたポリアセタールコポリマーは、ベント真空度20Torrの条件下に脱揮され、押出機ダイス部よりストランドとして押出され、ペレタイズされた。このようにして得られたポリアセタール樹脂(a−1)の融点は169.5℃であった。
【0074】
〈ポリアセタール樹脂a−2〉
ポリアセタール樹脂を重合する際、1,3ジオキソランの連続添加量を128.3g/h(トリオキサン1molに対して、3.9mol%)とした以外はポリアセタール樹脂(a−1)の製造と同様の操作を行いポリアセタール樹脂(a−2)を得た。このようにして得られたポリアセタール樹脂(a−2)の融点は164.5℃であった。
【0075】
〈ヒドラジド化合物(B)〉
b−1:アジピン酸ジヒドラジド(株式会社日本ファインケム製)
b−2:セバチン酸ジヒドラジド(株式会社日本ファインケム製)
【0076】
〈ポリオレフィン系樹脂にシリコーン化合物をグラフト反応させることにより得られるポリオレフィン系樹脂組成物等(C)〉
c−1:ラボ・プラストミル(東洋精機(株)製)を用いて、5質量%の酢酸ビニルを含有するメルトインデックスMI(ASTM−D1238−57T)5g/10minの低密度ポリエチレン36gと、以下の式(4)で示されるシリコーン化合物24gとを、温度180℃、回転数60rpmで15分間溶融混練することによって得られた、ポリエチレンにシリコーン化合物がグラフトした樹脂とシリコーン化合物とを含有するポリエチレン樹脂組成物。前述した方法により測定したシリコーン化合物のグラフト率は72質量%であった。また、ポリエチレンにシリコーン化合物がグラフトした樹脂とシリコーン化合物との比率は、86.0/14.0(質量比)であった。
【0077】
【化2】

ここで、式(4)のシリコーン化合物とは、ケイ素原子100モル当たり、4モルのメチル基がジメチルビニル基で置換された、キシレンに可溶なポリオルガノシロキサンである。
【0078】
c−2:ラボ・プラストミルを用いて、c−1と同様の低密度ポリエチレン36g、および前記式(4)で示されるシリコーン化合物24gを、温度160℃、回転数60rpmで10分間溶融混練することによって得られた、ポリエチレンにシリコーン化合物がグラフトした樹脂とシリコーン化合物とを含有する樹脂組成物。前述した方法により測定したシリコーン化合物のグラフト率は20質量%であった。また、ポリエチレンにシリコーン化合物がグラフトした樹脂とシリコーン化合物との比率は、65.0/35.0(質量比)であった。
【0079】
c−3:ラボ・プラストミルを用いて、5質量%のメタクリル酸メチルを含有するメルトインデックスMI=5g/10minのエチレン−メチルメタクリレート共重合体30g、および以下の式(5)で表されるシリコーン化合物30gを、温度180℃、回転数60rpmで20分間溶融混練することによって得られた、エチレン−メチルメタクリレート共重合体にシリコーン化合物がグラフトした樹脂とシリコーン化合物とを含有する樹脂組成物。前述した方法により測定したシリコーン化合物のグラフト率は75質量%であった。また、エチレン−メチルメタクリレート共重合体にシリコーン化合物がグラフトした樹脂とシリコーン化合物との比率は、89.0/11.0(質量比)であった。
【0080】
【化3】

ここで、ここで、式(5)のシリコーン化合物とは、ケイ素原子100モル当たり、3モルのメチル基がジメチルビニル基で置換された、キシレンに可溶なポリオルガノシロキサンである。
【0081】
c−4:重量平均分子量が100000、メルトインデックスMI=10g/10minの低密度ポリエチレン50質量%と、c−3と同様のシリコーン化合物50質量%とを二軸押出機を用いて溶融混練して得られたポリエチレンとシリコーン化合物からなる樹脂組成物。前述した方法により測定したポリエチレンへのシリコーン化合物のグラフト率は0.5質量%以下であった。
【0082】
[実施例1〜15]
ポリアセタール樹脂(a−1)100質量部に、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部及び、ギ酸捕捉剤としてジステアリン酸カルシウム0.15質量部、表1に示した割合で各種ヒドラジド化合物、ポリオレフィン系樹脂組成物等を混合し、ベント付2軸押出機で溶融混錬することによりポリアセタール樹脂ペレットを製造した。得られたポリアセタール樹脂ペレットを前述の測定方法により、曲げ特性、摺動特性、繰返し衝撃特性、2次収縮率、クリープ特性の評価を行った。
【0083】
[実施例16〜21]
ポリアセタール樹脂(a−2)を使用した以外は実施例1と同様に操作してポリアセタール樹脂ペレットを製造した。得られたポリアセタール樹脂ペレットを前述の測定方法により、曲げ特性、摺動特性、繰返し衝撃特性、2次収縮率、クリープ特性の評価を行った。
【0084】
[比較例1〜4]
ポリアセタール樹脂(a−1)100質量部に、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部及び、ギ酸捕捉剤としてジステアリン酸カルシウム0.15質量部、表1に示した割合で各種ポリオレフィン系樹脂組成物等を混合し、ベント付2軸押出機で溶融混錬することによりポリアセタール樹脂ペレットを製造した。得られたポリアセタール樹脂ペレットを前述の測定方法により、曲げ特性、摺動特性、繰返し衝撃特性、2次収縮率、クリープ特性の評価を行った。
【0085】
[比較例5〜11]
ポリアセタール樹脂(a−1)100質量部に、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部及び、ギ酸捕捉剤としてジステアリン酸カルシウム0.15質量部、表1に示した割合で各種ヒドラジド化合物、ポリオレフィン系樹脂組成物等を混合し、ベント付2軸押出機で溶融混錬することによりポリアセタール樹脂ペレットを製造した。得られたポリアセタール樹脂ペレットを前述の測定方法により、曲げ特性、摺動特性、繰返し衝撃特性、2次収縮率、クリープ特性の評価を行った。
【0086】
[比較例12]
ポリアセタール樹脂(a−2)を使用した以外は比較例3と同様に操作してポリアセタール樹脂ペレットを製造した。得られたポリアセタール樹脂ペレットを前述の測定方法により、曲げ特性、摺動特性、繰返し衝撃特性、2次収縮率、クリープ特性の評価を行った。
【0087】
[比較例13、14]
ポリアセタール樹脂(a−2)を使用した以外は比較例5と同様に操作してポリアセタール樹脂ペレットを製造した。得られたポリアセタール樹脂ペレットを前述の測定方法により、曲げ特性、摺動特性、繰返し衝撃特性、2次収縮率、クリープ特性の評価を行った。
【0088】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は上述のとおり、本発明は、ポリアセタール樹脂が持つ機械物性バランスを損なうことなく、摺動特性に優れ、更には繰返し衝撃特性、寸法安定性、クリープ特性にも優れるために、自動車、電機電子、OA機器、その他工業などの分野で好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】繰返し衝撃特性の測定方法を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、ヒドラジド化合物(B)0.01〜0.5質量部、シリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂(C1)0.1〜5質量部、及びシリコーン化合物(C2)を含有し、且つ(C1)/(C2)の質量比が99/1〜70/30の範囲にあることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
ポリアセタール樹脂(A)が、融点が167℃以上、173℃以下のポリアセタールコポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
ヒドラジド化合物(B)が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
2NHNOC−R5−CONHNH2 式(1)
(式中R5は炭素数2〜20の炭化水素2価基)
【請求項4】
ヒドラジド化合物(B)が、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジドから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
シリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂(C1)及びシリコーン化合物(C2)が、該ポリオレフィン系樹脂へのシリコーン化合物のグラフト率が95〜30質量%の範囲にある、シリコーン化合物によってグラフトされたポリオレフィン系樹脂(C1)とシリコーン化合物(C2)とを含有するポリオレフィン系樹脂組成物(C)として配合されることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
ポリオレフィン系樹脂にシリコーン化合物をグラフト重合させる際のポリオレフィン系樹脂とシリコーン化合物との質量比が80/20〜20/80の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項7】
ポリオレフィン系樹脂が低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体及び、エチレン−エチルアクリレート共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載のポリアセタール樹脂組成物100質量部に対し、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤、離型剤、潤滑剤の少なくとも1種を0.01〜10質量部含有してなることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物からなる成形体。
【請求項10】
請求項1〜8の何れか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物からなる摺動部品。

【図1】
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【公開番号】特開2008−260874(P2008−260874A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105647(P2007−105647)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】