説明

ポリアミド樹脂組成物およびその製造方法

【課題】吸水による引張強度低下を改善したポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂(A)100質量部と、表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)0.5〜20質量部とを含有してなるポリアミド樹脂組成物であって、表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)が、膨潤性層状珪酸塩(C)100質量部を、次式(i)で表されるシランカップリング剤(D)0.1〜5質量部と、次式(ii)で表されるチタネートカップリング剤(E)0.1〜5質量部とで表面処理してなるものであることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
Si(OR (i)
(RO)Ti(OR)(OR)(OR) (ii)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理された膨潤性層状珪酸塩を含有するポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリアミド樹脂の強度を向上させることを目的に、ポリアミド樹脂に各種の無機フィラーが配合されている。特許文献1には、無機フィラーの一種である膨潤性層状珪酸塩をポリアミド樹脂に配合するとポリアミド樹脂組成物の強化効率が大幅に向上することが開示されている。
また、特許文献2には、膨潤性層状珪酸塩の表面を予めシランカップリング剤で処理し、次いで、その存在下にモノマーを重合して得られるポリアミド樹脂組成物は、衝撃強度および剛性が向上することが開示されている。
さらに、特許文献3には、ポリアミド樹脂に、膨潤性層状珪酸塩、ヒンダードフェノール化合物、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤を配合したポリアミド樹脂組成物から、透明性と剛性を伴った延伸フィルムが得られることが開示されている。
しかしながら、これらの方法によって強化されたポリアミド樹脂組成物であっても、ポリアミドが吸水するという性質があるため、吸水後に引張強度が低下することがあり、実使用時の機械特性が大きく低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−248176号公報
【特許文献2】特開2008−280376号公報
【特許文献3】特許第2884766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、吸水による引張強度低下を改善したポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、無機フィラーとして、シランカップリング剤とチタネートカップリング剤とを併用して表面処理を施した膨潤性層状珪酸塩を使用することにより、得られるポリアミド樹脂組成物は、吸水しても引張強度の低下が抑制されることを見出し、本発明に達した。
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
【0006】
(1)ポリアミド樹脂(A)100質量部と、表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)0.5〜20質量部とを含有してなるポリアミド樹脂組成物であって、表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)が、膨潤性層状珪酸塩(C)100質量部を、次式(i)で表されるシランカップリング剤(D)0.1〜5質量部と、次式(ii)で表されるチタネートカップリング剤(E)0.1〜5質量部とで表面処理してなるものであることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
Si(OR (i)
(式中、Rは、アミノ基、グリシドキシ基、塩素原子、ビニル基、メタクリロイル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、メルカプト基、N−アミノエチルアミノ基及びウレイド基から選ばれる基、またはこれを末端に有する炭素原子数2〜10のアルキル基であり、Rはメチル基またはエチル基である。)
(RO)Ti(OR)(OR)(OR) (ii)
(式中、Rはアルキル基であり、R〜Rは、それぞれ置換もしくは非置換のアルキル基、アルカノイル基、(メタ)アクリロイル基、ジアルキルパイロホスフェート基、N−アミノエチルアミノエチル基、アルキルベンゼンスルホニル基、ジアルキルホスフェート基、ジアルキルホスファイト基およびクミルフェニル基から選ばれる基であり、RとRが一緒になって、エチレン基、オキサリル基または、式−CO−CH−基でもよい。)
(2)膨潤性層状珪酸塩(B)が、ヘクトライト、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母系粘土鉱物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(3)さらにガラス繊維(F)5〜200質量部を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(4)上記(1)または(2)に記載のポリアミド樹脂組成物を製造するための方法であって、ポリアミドモノマー100質量部と、表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)0.5〜20質量部と、純水0〜20質量部とを共存させた状態で、加圧加温し、重合することを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
(5)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シランカップリング剤およびチタネートカップリング剤で表面処理した膨潤性層状珪酸塩をポリアミド樹脂に配合することによって、吸水による引張強度低下を改善したポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリアミド樹脂組成物で用いるポリアミド樹脂(A)とは、アミノカルボン酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸(それらの一対の塩も含まれる)を主たるモノマーとするアミド結合を主鎖内に有する重合体である。このポリアミドモノマーの具体例としては、アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。またラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ω−ウンデカノラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられる。ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等が挙げられる。またジカルボン酸としては、アジピン酸、スべリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。またこれらジアミンとジカルボン酸は一対の塩として用いることもできる。
【0009】
ポリアミド樹脂(A)の好ましい例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリカプロアミド/ポリウンデカミドコポリマー(ナイロン6/11)、ポリドデカミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリドデカミドコポリマー(ナイロン6/12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)およびこれらの混合物ないし共重合体等が挙げられる。中でもナイロン6、ナイロン66が特に好ましい。
【0010】
本発明で用いる表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)は、膨潤性層状珪酸塩(C)をシランカップリング剤(D)とチタネートカップリング剤(E)とを併用して表面処理したものである。
膨潤性層状珪酸塩は、珪酸塩を主成分とする負に帯電した珪酸塩層とその層間に介在するイオン交換能を有するカチオンとからなる構造を有するものである。陽イオン交換容量が50ミリ当量/100g以上であることが望ましい。この陽イオン交換容量が50ミリ当量/100g未満のものでは、膨潤能が低いためにポリアミド複合材料の製造時に実質的に未劈開状態のままとなり、性能の発現が認められない。本発明においては陽イオン交換容量の値の上限に特に制限はなく、現実に調製可能な膨潤性層状珪酸塩の中から適当なものを選べばよい。
【0011】
膨潤性層状珪酸塩(C)としては、天然に産出するものでも人工的に合成あるいは変成されたものでもよく、例えばスメクタイト族(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、ソーコナイト等)、バーミキュライト族(バーミキュライト等)、雲母族(フッ素雲母、白雲母、パラゴナイト、金雲母、レピドライト等)、脆雲母族(マーガライト、クリントナイト、アナンダイト等)、緑泥石族(ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモナイト、ニマイト等)が挙げられるが、本発明においてはNa型あるいはLi型膨潤性フッ素雲母やモンモリロナイト、ヘクトライトが特に好適に用いられる。
【0012】
本発明においては膨潤性層状珪酸塩(C)の初期粒子径について特に制限はない。初期粒子径とは本発明において用いるポリアミド樹脂組成物を製造するに当たって用いる原料としての膨潤性層状珪酸塩の粒子径であり、組成物中の珪酸塩層の大きさとは異なるものである。必要に応じてジェットミル等で粉砕して粒子径をコントロールしてもよい。
【0013】
本発明において、膨潤性層状珪酸塩(C)100質量部に対して、シランカップリング剤(D)0.1〜5質量部と、チタネートカップリング剤(E)0.1〜5質量部とを使用して表面処理することが必要である。各カップリング剤の使用量が0.1質量部未満である場合、得られる樹脂組成物において、吸水による引張強度低下を抑制する効果が不十分となる。一方、使用量が5質量部を超えた場合、得られた膨潤性層状珪酸塩(B)を共存させてポリアミドモノマーを重合すると、ゲル化を起こすなど、増粘して生産性が落ちることがある。
【0014】
本発明において用いるシランカップリング剤(D)は、次式(i)で示されるものである。
Si(OR (i)
(式中、Rは、アミノ基、グリシドキシ基、塩素原子、ビニル基、メタクリロイル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、メルカプト基、N−アミノエチルアミノ基及びウレイド基から選ばれる基、またはこれを末端に有する炭素原子数2〜10のアルキル基であり、Rはメチル基またはエチル基である。)
【0015】
シランカップリング剤(D)の具体的な例としては、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、チタネートカップリング剤との併用により、得られる成形品の吸水後の引張強度保持率を向上させる効果が高い点で、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランが好ましく、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが最も好ましい。
【0016】
本発明において用いるチタネートカップリング剤(E)は、次式(ii)で示されるものである。
(RO)Ti(OR)(OR)(OR) (ii)
(式中、Rはアルキル基であり、R〜Rは、それぞれ置換もしくは非置換のアルキル基、アルカノイル基、(メタ)アクリロイル基、ジアルキルパイロホスフェート基、N−アミノエチルアミノエチル基、アルキルベンゼンスルホニル基、ジアルキルホスフェート基、ジアルキルホスファイト基およびクミルフェニル基から選ばれる基であり、RとRが一緒になって、エチレン基、オキサリル基または、式−CO−CH−基でもよい。)
【0017】
チタネートカップリング剤(E)の具体的な例としては、味の素ファインテクノ社製の製品名プレンアクトKR−TTS[イソプロピルトリイソステアロイルチタネート]、KR−46B[テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート]、KR−55[テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート]、KR−41B[テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート]、KR−38S[イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート]、KR−138S[ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート]、KR−238S[トリス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート]、338X[イソプロピルジオクチルパイロホスフェートチタネート]、KR−44[イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート]、KR−9SA[イソプロピルトリス(ドデシルベンゼンスルフォニル)チタネート]等が挙げられ、シランカップリング剤との併用により、得られる成形品の吸水後の引張強度保持率を向上させる効果が高い点で、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネートが好ましく、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネートが最も好ましい。
【0018】
膨潤性層状珪酸塩(C)と、シランカップリング剤(D)と、チタネートカップリング剤(E)とを用いて、表面処理された膨潤性層状珪酸塩を調製する方法としては、これらを粉砕機等を用いて混合し、熱処理する方法が挙げられる。熱処理温度は、50〜200℃が好ましく、60〜190℃がより好ましく、70〜180℃が最も好ましい。熱処理時間は、0.5〜20時間が好ましく、1〜16時間がより好ましく、2〜12時間が最も好ましい。
【0019】
本発明のポリアミド樹脂組成物において、表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、0.5〜20質量部含有することが必要である。表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)の含有量が、0.5質量部未満であると、得られる成形品の吸水後の引張強度保持率が劣り、含有量が20質量部を超えると、重合時の溶融粘度が高くなりすぎて樹脂を重合釜から払い出すことが困難になるという問題がある。
【0020】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、無機フィラーとして表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)を使用するが、さらに無機フィラーとしてガラス繊維(F)を併用してもよい。ガラス繊維(F)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、5〜200質量部であることが好ましく、10〜180質量部であることがより好ましく、30〜150質量部であることが最も好ましい。ガラス繊維(F)としては、通常のポリアミド樹脂に用いられるガラス繊維であればよい。ガラス繊維(F)の断面は、一般的な丸形状や、長方形や、それ以外の異形断面であってもよい。
【0021】
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、ポリアミドモノマー100質量部と、表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)0.5〜20質量部と、純水0〜20質量部とを共存させた状態で、加圧加温し、重合する方法が挙げられる。重合条件は通常のポリアミドの重合条件を適用することができる。
また、ガラス繊維(F)を含有するポリアミド樹脂組成物を製造する方法としては、前述の方法で得られた樹脂組成物と、ガラス繊維と、シランカップリング剤とを溶融混錬する方法が挙げられるが、この方法に限ったものではない。
【0022】
本発明のポリアミド樹脂組成物を製造するに当たっては、その特性を大きく損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、着色防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、結晶核剤、離型剤等を添加してもよい。
熱安定剤や酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、耐熱性、機械特性に優れるため、それを成形して得られる樹脂成形品は、自動車用部品、電気部品、家庭用品等に好適に用いることができる。さらには、吸水による引張強度低下を改善しているため、特に吸湿による物性低下により障害の発生しやすい自動車部品として好適も用いることができる。具体的には、自動車のトランスミッション周り、エンジン周りで使用される部品に用いる部品として使用できる。具体的には、自動車のトランスミッション周りとしては、シフトレバー、ギアボックス等の台座に用いるベースプレート、エンジン周りとしては、シリンダーヘッドカバー、エンジンマウント、エアインテークマニホールド、スロットルボディ、エアインテークパイプ、ラジエータタンク、ラジエータサポート、ウォーターポンプレンレット、ウォーターポンプアウトレット、サーモスタットハウジング、クーリングファン、ファンシュラウド、オイルパン、オイルフィルターハウジング、オイルフィルターキャップ、オイルレベルゲージ、タイミングベルトカバー、エンジンカバー等が挙げられる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制限されるものではない。なお、実施例および比較例に用いた原料および物性測定方法は次の通りである。
【0025】
1.原料
(1)ポリアミドモノマー
・ε−カプロラクタム(宇部興産社製)
(2)膨潤性層状珪酸塩(C)
・C1:モンモリロナイト(クニピア社製クニピアF)
・C2:膨潤性フッ素雲母(コープケミカル社製ME−100)
(3)シランカップリング剤(D)
・D1:エポキシ系シランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM−403)
・D2:ウレイド系シランカップリング剤:3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製KBE−585)
・D3:アミノ系シランカップリング剤:3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM−903)
(4)チタネートカップリング剤(E)
・E1:アミノ系チタネートカップリング剤:イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート(味の素ファインテクノ社製KR−44)
・E2:フォスフェート系チタネートカップリング剤:イソプロピルトリ(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネート(味の素ファインテクノ社製KR−38S)
・E3:アルカノイル系チタネートカップリング剤:イソプロピルトリイソステアロイルチタネート(味の素ファインテクノ社製KR−TTS)
(5)ガラス繊維(F)
・ガラス繊維:径10μm、長さ3mmの円形断面を有するガラス繊維(PPG社製HP3540)
【0026】
2.測定方法
(1)引張強度
ISO527に準拠して測定した。
(2)平衡吸水率
引張試験に使用する試験片を用い、温度23℃、相対湿度50%の条件下で放置し、試験片の質量変化がなくなるまで時間をかけて吸水させ、平衡吸水に達したときの試験片の平衡質量から次式にしたがって平衡吸水率を算出した。
平衡吸水率=(試験片の平衡質量−試験片の初期質量)/(試験片の初期質量)×100
(3)平衡吸水時の引張強度
引張試験に使用する試験片を用い、60℃の温水に浸漬し、平衡吸水に達した重量分の水分を吸水させて、上記(1)の引張強度を測定した。吸水後の強度保持率が70%以上のものを合格とした。
【0027】
実施例1
表1に記載されたように、膨潤性層状珪酸塩(C)としてモンモリロナイト(C1)100質量部と、シランカップリング剤(D)としてエポキシ系シランカップリング剤(D1)1質量部と、またチタネートカップリング剤(E)としてアミノ系チタネートカップリング剤(E1)1質量部とを用い、これらを粉砕機(東京硝子器械社製ワンダークラッシュミル型番D3V−10)で混合し、次いで、真空乾燥機にて75℃で12時間熱処理することで、表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)を調製した。
次いで、ε−カプロラクタム100質量部と、上記方法で調製した表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)5質量部と、純水5質量部とを重合装置に仕込み、260℃、0.7MPa下で1時間、常圧で1時間重合してポリアミド樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の引張試験を行い、結果を表1に示した。
【0028】
実施例2〜16、比較例1〜14
表1〜4に示す配合量で、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の引張試験を行い、結果を表1〜4に示した。
【0029】
実施例17
実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物を得て、これとガラス繊維とを、東芝機械社製TEM37BSを使用して、混練温度260℃にて溶融混練した。得られた樹脂組成物の引張試験を行い、結果を表2に示した。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】
実施例1〜17では吸水後の引張強度保持率に優れる樹脂組成物が得られた。
これに対し、比較例1では、表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)の含有量が少ないため、得られた樹脂組成物は、吸水後の引張強度保持率が十分でなく、比較例2では、表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)の含有量が多いため、樹脂組成物を得ることができなかった。また比較例3、5、7、10、11では、シランカップリング剤(D1)および/またはチタネートカップリング剤(E1)の配合量が少なかったため、いずれも得られた樹脂組成物は、吸水後の引張強度保持率が十分でなかった。一方、比較例4、6、8では、シランカップリング剤(D1)および/またはチタネートカップリング剤(E1)の配合量が多かったため、ゲル化して重合時の操業性が低下した。また、得られた樹脂組成物は、吸水後の引張強度保持率が十分でなかった。さらに、比較例9では、表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)の配合を行わなかったため、吸水前の引張強度が低く、吸水後の引張強度保持率が十分でなかった。比較例12、13では、シランカップリング剤(D)、チタネートカップリング剤(E)のいずれかを使用しなかったため、吸水後の引張強度保持率が十分でなかった。比較例14では、シランカップリング剤(D)、チタネートカップリング剤(E)のいずれも使用しなかったため、吸水後の引張強度保持率が十分でなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(A)100質量部と、表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)0.5〜20質量部とを含有してなるポリアミド樹脂組成物であって、表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)が、膨潤性層状珪酸塩(C)100質量部を、次式(i)で表されるシランカップリング剤(D)0.1〜5質量部と、次式(ii)で表されるチタネートカップリング剤(E)0.1〜5質量部とで表面処理してなるものであることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
Si(OR (i)
(式中、Rは、アミノ基、グリシドキシ基、塩素原子、ビニル基、メタクリロイル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、メルカプト基、N−アミノエチルアミノ基及びウレイド基から選ばれる基、またはこれを末端に有する炭素原子数2〜10のアルキル基であり、Rはメチル基またはエチル基である。)
(RO)Ti(OR)(OR)(OR) (ii)
(式中、Rはアルキル基であり、R〜Rは、それぞれ置換もしくは非置換のアルキル基、アルカノイル基、(メタ)アクリロイル基、ジアルキルパイロホスフェート基、N−アミノエチルアミノエチル基、アルキルベンゼンスルホニル基、ジアルキルホスフェート基、ジアルキルホスファイト基およびクミルフェニル基から選ばれる基であり、RとRが一緒になって、エチレン基、オキサリル基または、式−CO−CH−基でもよい。)
【請求項2】
膨潤性層状珪酸塩(B)が、ヘクトライト、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母系粘土鉱物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
さらにガラス繊維(F)5〜200質量部を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物を製造するための方法であって、ポリアミドモノマー100質量部と、表面処理された膨潤性層状珪酸塩(B)0.5〜20質量部と、純水0〜20質量部とを共存させた状態で、加圧加温し、重合することを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形品。

【公開番号】特開2012−1646(P2012−1646A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138820(P2010−138820)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】