説明

ポリアミド樹脂組成物およびそれからなる車両内外装部品

【課題】
本発明は、表面平滑性を有しつつ、且つヒケ特性も改良して、良好な外観を示し、且つ高い機械物性を兼ね備えたポリアミド樹脂組成物およびそれからなる車両内装部品を提供しようとするものである。
【解決手段】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)100重量部と、無機充填材(B)65〜235重量部からなる樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド三元共重合体(A1)とナイロン66樹脂(A2)とが、重量部比(A1)/(A2)が1.0以上の範囲で共重合された樹脂であり、前記無機充填材(B)が、ガラス繊維(B1)とガラスビーズ(B2)とで構成されているものであることを特徴とするものである。
また、本発明の車両内外装部品は、上記ポリアミド樹脂組成物を用いて構成されていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面外観に優れ、且つ高い機械物性を有するポリアミド樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂の中で共重合ポリアミド樹脂は、表面平滑性及び流動性に優れており、中でもナイロン66とナイロン6、イソフタル酸共重合物からなる3元共重合ポリアミド樹脂は、特に表面平滑性及び流動性に優れている。
【0003】
また、特許文献1及び特許文献2に記載のとおり、共重合ポリアミド樹脂は、ガラス繊維等の無機充填材を高充填化することによって、強度及び剛性が増し、かつ、ナイロン6樹脂、ナイロン66樹脂に比べて、表面平滑性及び流動性に優れているため、強度・剛性と表面平滑性・流動性の相反する特性の両立を可能とし、その用途を広げている。
【0004】
しかし、このような3元共重合ポリアミド樹脂は、他の共重合ポリアミド樹脂、ナイロン6樹脂、ナイロン66樹脂に比べて、冷却時の固化が遅くなるために、ヒケが著しく大きくなり、製品形状(特に製品厚み)によっては外観を損なってしまう可能性がある。そのため、高い機械物性を有しつつ、良好な外観が求められる車両内外装部品には適していないとされていたものである。
【特許文献1】特開平9−291374号公報
【特許文献2】特開平7−97514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決し、表面平滑性を有しつつ、且つヒケ特性も改良して、良好な外観を示し、且つ高い機械物性を兼ね備えたポリアミド樹脂組成物およびそれからなる車両内装部品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)100重量部と、無機充填材(B)65〜235重量部からなる樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド三元共重合体(A1)とナイロン66樹脂(A2)とが、重量部比(A1)/(A2)が1.0以上の範囲で共重合された樹脂であり、前記無機充填材(B)が、ガラス繊維(B1)とガラスビーズ(B2)とで構成されているものであることを特徴とするものである。
【0007】
このような本発明のポリアミド樹脂組成物の好ましい態様は、
(1)前記ポリアミド三元共重合体(A1)が、ヘキサメチレンアジパミド単位(a1)70〜85重量%、ヘキサメチレンイソフタルアミド単位(a2)5〜20重量%、カプロアミド単位(a3)1〜14重量%とからなるポリアミド三元共重合体であり、かつ、ヘキサメチレンイソフタルアミド単位(a2)とカプロアミド単位(a3)とが、重量比(a2)/(a3)が1.0以上の割合で含有されているものであること、
(2)前記ガラス繊維(B1)とガラスビーズ(B2)との重量部比(B1)/(B2)が1.0以上であること、
である。
【0008】
また、本発明の車両内外装部品は、上記ポリアミド樹脂組成物を用いて構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非常に良好な外観を示し、かつ、高い機械物性を兼ね備えたポリアミド樹脂組成物を提供することができ、さらに、この樹脂組成物は、強度・剛性と表面平滑性・流動性にすぐれているので、車両内外装部品に好適に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、前記課題、つまり、表面平滑性を有しつつ、且つヒケ特性も改良して、良好な外観を示し、且つ高い機械物性を兼ね備えたポリアミド樹脂組成物について、鋭意検討し、三元共重合ポリアミド樹脂を用いてなる高充填材料において、従来不十分であったヒケ特性を改良するために、三元共重合ポリアミド樹脂、ナイロン66樹脂、無機充填材を特定の割合で配してみたところ、この課題を一挙に解決されることを究明し本発明に到達した。
【0011】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
本発明のポリアミド樹脂組成物を構成するポリアミド樹脂(A)における三元共重合ポリアミド樹脂(A1)は、各繰返し構造単位の共重合割合が、ヘキサメチレンアジパミド単位(a1)70〜85重量%、ヘキサメチレンイソフタルアミド単位(a2)5〜20重量%、カプロアミド単位(a3)1〜14重量%であり、特にカプロアミド単位(a3)は2〜12重量%であるのが好ましく、また、このヘキサメチレンイソフタルアミド単位(a2)とカプロアミド単位(a3)の重量比(a2)/(a3)は、1.0以上であることが好ましい。これらの重量割合や重量比率は、共重合体を製造する際の原料の割合を調整することにより容易に達成される。
【0013】
このヘキサメチレンアジパミド単位(a1)の重量比が70重量%未満では、機械特性が損なわれ、85重量%を超えると、成形品の外観に優れたものが得られにくくなる。
【0014】
また、ヘキサメチレンイソフタルアミド単位(a2)が5重量%未満では、成形品の外観が優れず、20重量%を超えると、機械特性が損なわれる。
また、カプロアミド単位(a3)が、1重量%未満では、固化速度が早すぎるためガラス繊維浮きが発生し、成形品の外観の改善が見られず、10重量%を超える場合は、到達結晶化度が低くすぎるため靭性に劣る傾向がある。
【0015】
また、ヘキサメチレンイソフタルアミド単位(a2)とカプロアミド単位(a3)の重量比(a2)/(a3)が、1.0未満の場合は、到達結晶化度が低くすぎて、機械特性が損なわれる傾向がでてくる。一方、この重量比(a2)/(a3)の上限については、特に制限はないが、本発明においては靭性の観点から、該重量比は4以下であるのが好ましい。
【0016】
また、ポリアミド樹脂(A1)が、前記カプロアミド単位(a3)を持たず、ヘキサメチレンアジパミド単位(a1)とヘキサメチレンイソフタルアミド単位(a2)からなる2元共重合ポリアミド樹脂の場合では、固化速度が早すぎ、成形品表面のガラス繊維浮きを十分抑制することができないので好ましくない。
【0017】
(A1)三元共重合ポリアミド樹脂は、(A)ポリアミド樹脂が(A1)三元共重合ポリアミド樹脂と(A2)ポリアミド66樹脂の組み合わせで、(A)ポリアミド樹脂を100重量部として20〜80重量部である。更に好ましくは50〜80重量部である。(A1)三元共重合ポリアミド樹脂が、20重量部未満では表面平滑性が損なわれ外観性が必要な用途に用いる事ができない。一方、50重量部を超えると結晶化速度が遅くなり成形時に長時間冷却する工程が必要となり成形性が悪くなる。加えて結晶化度も低くなる為、機械物性が損なわれる。
【0018】
本発明における前記ポリアミド樹脂(A)を構成するナイロン66樹脂(A2)は、ヒケ特性を改良する為に用いる。このナイロン66樹脂(A2)は、ポリアミド樹脂(A)100重量部の内、好ましくは20〜45重量部、より好ましくは25〜40重量部であるのがよい。このナイロン66樹脂(A2)が、20重量部未満では、ヒケ特性の改良が認められないばかりか、機械物性も損なわれ、45重量部を超えると表面平滑性が損なわれる傾向がある。
【0019】
また、このようなナイロン66樹脂(A2)には、長期耐熱性を向上させるために銅化合物が添加剤として好ましく用いられる。銅化合物の具体的な例としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、リン酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、サリチル酸第二銅、ステアリン酸第二銅、安息香酸第二銅および前記無機ハロゲン化銅とキシリレンジアミン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールなどの銅化合物などが挙げられる。なかでも1価のハロゲン化銅化合物がより好ましく、具体的には、酢酸第一銅、ヨウ化第一銅などを特に好適な銅化合物として例示することができる。
【0020】
このような銅化合物の添加量は、通常、ナイロン66樹脂(A2)100重量部に対して、0.01〜2重量部の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは0.015〜1重量部の範囲とするのがよい。すなわち、添加量が2重量部よりも多いと、溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色されてしまい、そのために製品の価値を減ずることになり、逆に、添加量が0.01重量部より少ないと、長期耐熱性の向上が十分でなくなる傾向がある。
【0021】
本発明では、このような銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリ化合物を添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化リチウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウムおよびヨウ化ナトリウム等を挙げることができ、その中でもヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムが特に好ましく使用される。
【0022】
本発明のポリアミド樹脂組成物を構成する無機充填材(B)としては、ガラス繊維(B1)とガラスビーズ(B2)の組み合わせを用いることが必須である。このガラス繊維(B1)の種類は、一般に樹脂の強化用に用いられるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、このガラス繊維(B1)は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂と併用されて、これら樹脂の被膜あるいはこれら樹脂で集束されていてもよい。また、ガラスビーズ(B2)の種類は、一般に樹脂の強化用に用いられるものなら特に限定はなく使用することができる。
【0023】
なお、本発明に使用する上記の無機充填材(B)は、その表面をシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤などのカップリング剤を含む、いわゆる表面処理剤で予備処理することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。これらの表面処理剤の中でも、膨潤性の層状珪酸塩などの有機化オニウムイオンを形成するものが特に好ましく使用される。
【0024】
上記ガラス繊維(B1)、ガラスビーズ(B2)以外の無機充填材(B)として、板状、棒状、球状などの形状を持った長径と短径の比率であるアスペクト比が5以下の無機充填材を使用することができる。このような無機充填材(B)としては、例えば、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、アスベスト、アルミノシリケート、珪酸カルシウムなどの非膨潤性珪酸塩、アルミナ、シリカ、珪藻土、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドロマイト、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウムなどの水酸化物、ガラスフレーク、セラミックビーズ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化珪素などを使用することができる。
【0025】
本発明では、無機充填材(B)として、ガラス繊維(B1)とガラスビーズ(B2)の組み合わせを用いることが必須である。かかるガラス繊維(B1)およびガラスビーズ(B2)以外の組み合わせでは、十分な機械物性を得る事ができず、高い機械物性を要求される用途への展開が困難である。
【0026】
このような無機充填材(B)は、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、65〜235重量部の範囲で配合されるのが重要である。
【0027】
このような無機充填材(B)の内、ガラス繊維(B1)は40〜105重量部が好ましく、更に好ましくは55〜75重量部の範囲で配合するのがよい。40重量部未満では高い機械物性を得る事ができず、105重量部を超えるとガラス繊維浮きが発生し表面平滑性を損なってしまう。これに対してガラスビーズ(B2)は、20〜80重量部が好ましく、更に好ましくは40〜65重量部の範囲で配合するのがよい。20重量部未満ではヒケ特性において十分な改良効果を得る事ができず、80重量部を超えると高い機械物性を得ることができない。
【0028】
本発明におけるポリアミド樹脂組成物中には本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体を添加することができる。
【0029】
本発明のポリアミド樹脂組成物を得る方法としては、特に制限はないが、溶融混練において、たとえば、2軸押出機で溶融混練する場合に、三元共重合ポリアミド樹脂(A1)とナイロン66樹脂(A2)とガラス繊維(B1)とガラスビーズ(B2)を、あらかじめブレンダーを用いてブレンドし、メインフィーダーから供給する方法や、また、三元共重合ポリアミド樹脂(A1)とナイロン66樹脂(A2)を、あらかじめブレンダーを用いてブレンドし、メインフィーダーから供給し、それからガラス繊維(B1)とガラスビーズ(B2)を押出機の先端部分のサイドフィーダーから供給する方法を採用することができる。この時、サイドフィールする際のサイドフィード位置としては、元込め位置から吐出口までの長さを1として、元込め位置から1/5〜4/5の位置で行うことが好ましい。また事前に三元共重合ポリアミド樹脂(A1)とナイロン66樹脂(A2)を溶融混練した後、ガラス繊維(B1)とガラスビーズ(B2)を溶融混練する方法なども採用することができる。
【0030】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、表面平滑性およびヒケ特性も改良された優れた外観特性を示す特徴を発揮する上に、高い機械物性を兼ね備えているので、車両内外装部品として有用な成形品を提供することができる。
【0031】
特にその表面平滑性に優れた、非常に良好な外観性を示し且つ高い機械物性を有していることから、ドアミラーステイやドアミラーを構成する部品、ルームミラー、バックミラー等を車体に保持する車両用鏡体保持部品、シフトレバーベースやその他シフトレバーを構成する部品、ウィンドレギュレータードアノブスイッチ類、レバーコントローラー、ドアーハンドル、サンバイザーアーム、アシストグリップ、レバースイッチ類、シフトノブ、シリンダーヘッドカバー、エンジン遮音カバー、タイミングベルトカバーなどのカバー類、各種スイッチやセンサーのケース類、ホイールキャップ、フューエルフィラーキャップ、チャイルドシート部品などの自動車関連部品や、自転車部品、車椅子およびベビーカー部品、椅子脚、肘掛け、手摺り、窓枠、ドアノブ、床材およびその支柱、ボルトやねじ等の生活関連部品や家具建材関連部品、パソコンの筐体など電気・電子機器関連における用途などに好適に用いることができる。特に自動車に用いられるドアミラーステイやドアミラーを構成している部品に用いることが好ましい。
【0032】
このような本発明の車両内外装部品、特に車両用鏡体保持部品は公知の方法で成形することができ、その成形方法に関しても、制限はなく、たとえば射出成形、押出成形、吹込成形、プレス成形等各種の手段を採用することができる。中でも射出成形、射出圧縮成形および圧縮成形から選ばれる少なくとも一手段を採用することが、生産性に優れており、工業的に本発明を実施する上で好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて、さらに本発明を詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。実施例および比較例に用いた測定方法を以下に示す。
【0034】
(1)材料強度
以下の標準方法に従って測定した。
引張強度(23℃、絶乾):ISO 527−1、ISO 527−2
曲げ強度、曲げ弾性率(23℃、絶乾):ISO 178
【0035】
(2)成形品の表面平滑性及びヒケ特性
80×80×3(mm)の角板(フィルムゲート)を射出成形し、得られた角板表面の流動末端部位の平均粗さ、10点平均粗さ、最大粗さを表面粗さ計で測定し、表面平滑性並びにヒケ特性の指標とした。
【0036】
参考例1
(A1)三元共重合ポリアミド樹脂の製造
実施例および比較例で用いた三元共重合ポリアミド樹脂は以下の方法で重合した。
【0037】
ヘキサメチレンアジパミド単位(a1)81重量%、ヘキサメチレンイソフタラミド単位(a2)15重量%およびε−カプロアミド単位(a3)4重量%と、6.1×10−5mol/gの安息香酸((株)伏見製作所製)を投入し、投入した全量と同量の純水を加え、重合缶内を窒素置換した後、攪拌しながら加熱を開始し、缶内圧力を最大20kg/cmに調整しながら最終到達温度を270℃とし反応させた。次ぎに、前記重合缶内のポリマを、水浴中に吐出し、このポリマーをストランドカッターでペレット化した。
【0038】
こうして得られたペレットを、95℃熱水中で20時間処理し、未反応モノマーや低重合物を抽出除去した。この抽出後のペレットを80℃で50時間以上乾燥した。得られたペレットの硫酸相対粘度を測定した結果、その値は2.3であった。
【0039】
参考例2
ナイロン66樹脂(A2)の製造
実施例および比較例で用いたナイロン66樹脂は以下の方法で重合した。
【0040】
ヘキサメチレンジアミン750g、アジピン酸750g、イオン交換水375gを秤量し、重合缶に仕込み、常圧、窒素フロー下で攪拌しながら最終到達温度260℃に昇温して反応させた。次ぎに、前記重合缶内のポリマーを、水浴中に吐出し、このポリマーをストランドカッターでペレット化した。
【0041】
こうして得られたペレットを、95℃熱水中で20時間処理し、未反応モノマーや低重合物を抽出除去した。この抽出後のペレットを80℃で50時間以上乾燥した。得られたペレットの硫酸相対粘度を測定した結果、その値は2.7であった。
【0042】
参考例3
成形品の作成
実施例および比較例で使用した引張強さ、曲げ弾性率の試験用成形品は、次の方法で作成した。
【0043】
すなわち、ISO1874−2に従い、日精樹脂工業(株)製の射出成形機、NEX1000により、シリンダ温度290℃、金型表面温度80℃、スクリュー回転数100rpm、平行部流速200mm/秒、射出/冷却=20/20秒の条件で、ISO Type−A規格の試験片を成形した。
【0044】
また、成形品の表面粗さ測定用の試験片は、日精樹脂工業(株)製の射出成形機、NEX1000により、シリンダ温度290℃、金型表面温度80℃、スクリュー回転数100rpm、平行部流速50mm/秒、射出/冷却=12/12秒の条件で、80mm×80mm×3(mm)の角板(フィルムゲート)及び80×80×3(mm)の角板を射出成形した。
【0045】
〔実施例1〕
参考例1に示した重合法で得られた三元共重合ポリアミド樹脂(A1)を75重量部、参考例2に示した重合法で得られたナイロン66樹脂(A2)を25重量部、ならびに、ガラス繊維(B1)〔日本板硝子(株)製:商品名T−289〕100重量部、ガラスビーズ(B2)〔ポッターズバロティーニ(株)製:商品名EGB731AQ〕23重量部を、それぞれ秤量して、2軸押出し機(Coperion Werner & Pfleiderer社製:ZSK57)に投入した。その場合の前記2軸押出し機の条件は、シリンダ設定温度290℃、スクリュー回転数200rpmの条件下で溶融混練を行った。
【0046】
なお、その際、三元共重合ポリアミド樹脂(A1)とナイロン66樹脂(A2)は元込めで、ガラス繊維(B1)とガラスビーズ(B2)はサイドフィードした。サイドフィード位置としては、元込め位置から吐出口までの長さを1としたとき、元込め位置から3/5の位置から行った。この溶融混錬した後、ストランド状のガットを冷却バスで冷却し、カッターを用いてペレット化した。得られたペレットを参考例3に示した方法により成形し、前記の測定方法によって諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0047】
〔実施例2〜8〕
実施例1に示したガラス繊維(B1)とガラスビーズ(B2)が表1に示す配合量であること以外は、実施例1と同様にしてペレットおよび、成形品を得て諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0048】
〔比較例1〕
参考例1に示した重合方法で製造された(A1)三元共重合ポリアミド樹脂を100重量部、(B1)ガラス繊維[日本板硝子(株)製:商品名T−289]を113重量部とし、(A2)ポリアミド66樹脂を除いたこと以外は実施例1と同様にしてペレット、成形品を得て諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0049】
〔比較例2〕
参考例1に示した重合方法で製造された(A1)三元共重合ポリアミド樹脂を25重量部、(A2)ポリアミド66樹脂を75重量部、(B1)ガラス繊維[日本板硝子(株)製:商品名T−289]を113重量部とし、(B2)ガラスビーズを除いた事以外は実施例1と同様にしてペレット、成形品を得て諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0050】
〔比較例3〕
参考例1に示した重合方法で製造された(A1)三元共重合ポリアミド樹脂を25重量部、(A2)ポリアミド66樹脂を75重量部、(B1)ガラス繊維[日本板硝子(株)製:商品名T−289]を81重量部、ガラスビーズ(B2)〔ポッターズバロティーニ(株)製:商品名EGB731AQ〕23重量部からなる事以外は実施例1と同様にしてペレット、成形品を得て諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0051】
〔比較例4〕
参考例1に示した重合方法で製造された(A1)三元共重合ポリアミド樹脂を75重量部、(A2)ポリアミド66樹脂を25重量部、(B1)ガラス繊維[日本板硝子(株)製:商品名T−289]を113重量部とし、(B2)ガラスビーズを除いた事以外は実施例1と同様にしてペレット、成形品を得て諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0052】
〔比較例5〕
比較例1に示した(B2)がワラステナイト〔キンセイマテック(株)製:商品名FPW−400S〕を用いたこと以外は比較例1と同様にしてペレット、成形品を得て諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0053】
〔比較例6〕
比較例1に示した(B2)がタルク〔林化成(株)製:商品名PKC−タルク〕を用いたこと以外は比較例1と同様にしてペレット、成形品を得て諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0054】
〔比較例7〕
比較例2に示した(B2)が炭酸カルシウム〔丸尾カルシウム(株)製:商品名スーパーS〕を用いたこと以外は比較例1と同様にしてペレット、成形品を得て諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1から明らかなように、実施例1〜8は、比較例1〜7に比較して、特定共重合比率の三元共重合ポリアミド樹脂(A1)、ナイロン66樹脂(A2)、ガラス繊維(B1)、ガラスビーズ(B2)を配合して得られたポリアミド樹脂組成物は、成形品において非常に優れた外観性を示し、同時に高い機械物性を有する材料を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(A)100重量部と、無機充填材(B)65〜235重量部からなる樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド三元共重合体(A1)とナイロン66樹脂(A2)とが、重量部比(A1)/(A2)が1.0以上の範囲で共重合された樹脂であり、前記無機充填材(B)が、ガラス繊維(B1)とガラスビーズ(B2)とで構成されているものであることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリアミド三元共重合体(A1)が、ヘキサメチレンアジパミド単位(a1)70〜85重量%、ヘキサメチレンイソフタルアミド単位(a2)5〜20重量%、カプロアミド単位(a3)1〜14重量%とからなるポリアミド三元共重合体であり、かつ、ヘキサメチレンイソフタルアミド単位(a2)とカプロアミド単位(a3)とが、重量比(a2)/(a3)が1.0以上の割合で含有されているものである請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記ガラス繊維(B1)とガラスビーズ(B2)との重量部比(B1)/(B2)が1.0以上である請求項1及び/又は請求項2記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を用いて構成されていることを特徴とする車両内外装部品。

【公開番号】特開2009−7482(P2009−7482A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170529(P2007−170529)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】