説明

ポリアミド樹脂組成物及びフィルム

【課題】他の材料との積層やラミネートする際に、他の材料との接着性や濡れ性を悪化させる事無く、高湿度下における滑り性を向上させたポリアミドフィルム及びその原料であるポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂(A)と、無機フィラー(B)と、ビスアミド化合物(C)とを含み、(A)は、成分a60〜98質量部と成分b40〜2質量部からなり、成分aが23℃水中飽和吸水率が8.0質量%以上のポリアミド樹脂であり、成分bが23℃、相対湿度(RH)50%において、ASTM D−790に準拠して測定した曲げ弾性率が3,000MPa以上のポリアミド樹脂であり、(B)は無機フィラー粒子がオルガノシロキサンにより表面処理されてなり、(C)は炭素原子数14以上の脂肪酸とジアミンとが反応してなり、その含有量が(A)100質量部に対して、(B)0.01〜0.4質量部、(C)0.02〜25質量部であるポリアミド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドフィルム及びその原料ポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドフィルムは、ガスバリア性、強靭性、機械的特性、熱的特性に優れていることから、包装用フィルム、特に食品包装分野を中心に、単層フィルムあるいはラミネートフィルムの基材、さらに他樹脂との共押出による積層フィルムの構成素材として、様々な分野で使用されている。こうしたポリアミドフィルムにおいて滑り性は、フィルムの生産性や品質・商品価値の点から、重要な要求特性の一つとなっている。
滑り性が悪いと、ラミネート工程や印刷工程等の後加工工程の際にトラブルを招くだけでなく、最終の包装工程においてもフィルムの供給が円滑に進まず、包装不良が発生する。
特に水分を多く含む食品の包装においては、高湿度環境下で使用されることから、高湿度下における滑り性が重要視されている。
【0003】
しかし、ポリアミドフィルムは、高い湿度の環境では、滑り性が悪化する傾向があり、ポリアミドフィルムの高湿度下における滑り性を改善する手段として、数々の方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、ポリアミド樹脂に特定の細孔容積を有するシリカを使用する方法、
特許文献2には、シリカとタルクの併用等の無機粒子を添加する方法、
特許文献3には、架橋有機ポリマー微粒子を添加する方法、
特許文献4には、層状珪酸塩と無機粒子の併用方法、
特許文献5には、特定サイズのシリカと特定の脂肪酸系ビスアミドの併用方法、
特許文献6には、フィルム表面の突起数を特定の範囲にし、かつ、有機滑剤添加で表面を疎水化する方法、
特許文献7には、フィルム表面の突起数を特定の範囲にし、かつ、その表層に含まれるミクロボイドの面積率を特定値以下にする方法、
特許文献8には、ポリグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル及び無機粒子の併用方法、
特許文献9、10には、特定の脂肪酸系ビスアミドとポリグリセリン脂肪酸エステルの併用方法、
特許文献11には、溶融押出したポリアミド樹脂を特定の温度範囲で直接水冷固化させる方法、
特許文献12、13には、ポリアミドフィルムに易滑性層を積層する方法等がポリアミドフィルムの高湿度下における滑り性を改善する方法(手段)として提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−143283号公報
【特許文献2】特開平7−138471号公報
【特許文献3】特開平9−241504号公報
【特許文献4】特開2004−149555号公報
【特許文献5】特開2002−348465号公報
【特許文献6】特開平10−168310号公報
【特許文献7】特開平9−272748号公報
【特許文献8】特開2000−63578号公報
【特許文献9】特開2003−155359号公報
【特許文献10】特開2004−137394号公報
【特許文献11】特開2001−64415号公報
【特許文献12】特許第3624492号公報
【特許文献13】特開平9−156046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリアミドフィルムの高湿度下における滑り性を改善する方法が多数提案されているが、十分な滑り性を得るために高級脂肪酸ビスアミド化合物等の有機滑剤の添加量を増やすと、フィルム表面上への有機滑剤のブリードアウトが顕著となり、このフィルムと他の材料との積層やラミネートする際に、他の材料との接着性や濡れ性が悪化し、印刷、蒸着、ラミネーション等の加工に悪影響を与える。
また、ポリアミドフィルムに易滑性層を積層することにより、滑り性を向上させる方法では、表面処理工程や易滑性層の塗着工程を要し、これに付随する設備投資が必要となり、製造コストの増大を招く。
【0006】
本発明の課題は、
他の材料との積層やラミネートする際に、他の材料との接着性や濡れ性を悪化させる事無く、高湿度下における滑り性を向上させた(以下、この特性を濡れ性と滑り性を両立させたともいう。)ポリアミドフィルム及びその原料であるポリアミド樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下を内容とする。
(1)ポリアミド樹脂(成分A)と、無機フィラー(成分B)と、ビスアミド化合物(成分C)とを含むポリアミド樹脂組成物であって、
前記成分Aは、成分a60〜98質量部と成分b40〜2質量部からなり、
前記成分aが、23℃水中飽和吸水率が8.0質量%以上のポリアミド樹脂であり、
前記成分bが、23℃、相対湿度(RH)50%において、ASTM D−790に準拠して測定した曲げ弾性率が3,000MPa以上のポリアミド樹脂であり、
前記成分Bは、無機フィラー粒子がオルガノシロキサンにより表面処理されてなり、
前記成分Cは、炭素原子数14以上の脂肪酸とジアミンとが反応してなり、
前記成分A、B及びCの含有量が、
前記成分A100質量部に対して、
前記成分Bが0.01〜0.4質量部であり、
前記成分Cが0.02〜25質量部であるポリアミド樹脂組成物。
(2)前記(1)記載のポリアミド樹脂組成物よりなるポリアミドフィルム。
(3)少なくとも、
前記(2)記載のポリアミドフィルムからなる層(x)と、
前記成分aからなる層(y)とを含み、
前記層(x)と前記層(y)は接触しており、
前記層(x)が最外層に配置されているポリアミド積層フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、
他の材料との積層やラミネートする際に、他の材料との接着性や濡れ性を悪化させる事無く、高湿度下における滑り性を向上させたポリアミドフィルム及びその原料であるポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、
23℃水中飽和吸水率が8.0質量%以上であるポリアミド樹脂(a)60〜98質量部と23℃、相対湿度(RH)50%において、ASTM D−790に準拠して測定した曲げ弾性率が3,000MPa以上のポリアミド樹脂(b)40〜2質量部からなるポリアミド樹脂(A)100質量部と、これに対して0.01〜0.4質量部のオルガノポリシロキサンにより表面処理された無機フィラー(B)、及び0.02〜0.25質量部の炭素数が14以上の脂肪酸からなるビスアミド化合物(C)を配合してなるポリアミド樹脂組成物であり、前記ポリアミド樹脂組成物は、
ポリアミド樹脂(成分A)と、無機フィラー(成分B)と、ビスアミド化合物(成分C)とを含むポリアミド樹脂組成物であって、
前記成分Aは、成分a60〜98質量部と成分b40〜2質量部からなり、
前記成分aが、23℃水中飽和吸水率が8.0質量%以上のポリアミド樹脂であり、
前記成分bが、23℃、相対湿度(RH)50%において、ASTM D−790に準拠して測定した曲げ弾性率が3,000MPa以上のポリアミド樹脂であり、
前記成分Bは、無機フィラー粒子がオルガノシロキサンにより表面処理されてなり、
前記成分Cは、炭素原子数14以上の脂肪酸とジアミンとが反応してなり、
前記成分A、B及びCの含有量が、
前記成分A100質量部に対して、
前記成分Bが0.01〜0.4質量部であり、
前記成分Cが0.02〜25質量部である。
【0010】
本発明のポリアミド樹脂組成物を使用したポリアミドフィルムは、軟包材に適し、透明性、印刷性に優れ、特に高湿度下における滑り性が優れる上に、連続生産性にも優れる。
【0011】
[成分a]
成分aは、主鎖中にアミド結合(−CONH−)を有する重合体であり、
23℃水中飽和吸水率が8.0質量%以上である。
成分aの飽和吸水率は、以下の方法によって測定される。
長さ80mm、幅80mm、厚み1mmの試験片(樹脂片)を成形し、成形直後の試験片の水分率の状態(dry as molded)で、試験前質量(吸水前質量)を測定する。その後、23℃、水中に1,000時間浸漬する。
その後水中から取り出し、表面の付着水分をふき取り、恒温恒湿(23℃、相対湿度(RH)50%)雰囲気下に30分放置後、試験後質量(吸水後質量)を測定する。
吸水前質量に対しての吸水後質量の増分を吸水量とし、吸水前質量に対する吸水量の割合を、飽和吸水率(質量%)として測定した。
【0012】
得られるポリアミドフィルムの熱的・機械的特性の観点から、成分aにおいて、カプロラクタムから誘導される単位の含有量が、成分aの全重合単位に対して、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることがさらに好ましい。
成分aは、得られるポリアミドフィルムの熱的・機械的特性の観点から、具体的には、ポリカプロアミド(ポリアミド6)や、カプロラクタムから誘導される単位を50モル%以上含有する共重合体であり、カプロラクタムから誘導される単位を除く他の重合単位を共重合することも可能である。
【0013】
他の重合単位としては、カプロラクタムを除くラクタム、アミノカルボン酸、又はジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩から誘導される単位が挙げられる。
【0014】
カプロラクタムを除くラクタムとしては、炭素原子数4〜12のラクタムが好ましく、例えば、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等が挙げられる。
アミノカルボン酸としては、炭素原子数6〜12のアミノカルボン酸が好ましく、例えば、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0015】
ジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩において、そのジアミンとしては、炭素原子数2〜20の脂肪族ジアミン、炭素原子数6〜20の脂環式ジアミン、炭素原子数6〜12の芳香族ジアミンが挙げられる。
炭素原子数2〜20の脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、2−/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等が挙げられる。
炭素原子数6〜20の脂環式ジアミンとしては、例えば、1,3−/1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等が挙げられる。
炭素原子数6〜12の芳香族ジアミンとしては、例えば、m−/p−キシリレンジアミン等が挙げられる。
これらのジアミンは1種又は2種以上を用いることができる。
【0016】
ジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩において、そのジカルボン酸としては、炭素原子数2〜24の脂肪族ジカルボン酸、炭素原子数8〜24の脂環式ジカルボン酸、炭素原子数8〜20の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
炭素原子数2〜24の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸等が挙げられる。
炭素原子数8〜24の脂環式ジカルボン酸としては、例えば、1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、2、5−/2,6−ノルボルナンジカルボン酸等が挙げられる。
炭素原子数8〜20の芳香族ジカルボンとしては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−/2,6−/2,7−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
これらのジカルボン酸は1種又は2種以上を用いることができる。
【0017】
成分aの具体例としては、ポリアミド6、ポリアミド6/66、ポリアミド6/69、ポリアミド6/610、ポリアミド6/612、ポリアミド6/12、ポリアミド6/66/12、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド6/IPD6、ポリアミド6/IPDT、ポリアミド6/MXD6、ポリアミド6/MXDTが挙げられる。これらの中でも、得られるポリアミドフィルムの耐熱性、機械的強度、透明性、経済性、入手の容易さの観点から、ポリアミド6、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、ポリアミド6/IPD6、ポリアミド6/IPDT、ポリアミド6/66/12が好ましく、ポリアミド6、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、ポリアミド6/66/12がより好ましい。
尚、成分aの具体例の上記名称は、JIS K6920−1:2000「プラスチック−ポリアミド(PA)成形用及び押出用材料−第1部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎」に基づく。
【0018】
成分aの末端基の種類及びその濃度や分子量分布に特別の制約は無く、分子量調節や成形加工時の溶融安定化のため、分子量調節剤として、酢酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸、メタキリレンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン、モノアミン、ジカルボン酸のうちの1種あるいは2種以上を適宜組合せて添加することができる。
例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン、
シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン、
アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン、
1,6−ヘキサンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等の脂肪族ジアミン、
1,3−/1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン、
m−/p−フェニレンジアミン、m−/p−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンや
酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸、
シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸、
安息香酸、トルイル酸、α−/β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸、
アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、
1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、
テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−/2,6−/2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これら分子量調節剤の使用量は分子量調節剤の反応性や重合条件により異なるが、最終的に得ようとするポリアミド樹脂の相対粘度が後記の範囲になるように適宜決められる。
【0019】
成分aの製造は、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等のポリアミド製造装置で製造することができる。
また、その重合方法としては、例えば、溶融重合、溶液重合や固相重合等がある。
これらの重合方法は、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができ、単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0020】
96質量%の硫酸中、ポリマー濃度1質量%、温度25℃の条件下にて、JIS K−6920に準じて測定した成分aの相対粘度は、得られるポリアミドフィルムの機械的性質を確保することと、溶融時の粘度を適正な範囲にして成形性を確保する観点から、2.0〜5.0であることが好ましく、2.5〜4.5であることがより好ましい。
【0021】
[成分b]
成分bは、主鎖中にアミド結合(−CONH−)を有する重合体であり、
23℃、相対湿度(RH)50%において、
ASTM D−790に準拠して測定した曲げ弾性率が3,000MPa以上であり、さらには、曲げ弾性率が3,100MPa以上であることが好ましく、3,200MPa以上であることがより好ましく、8,000MPa以下であることが好ましく、7,000MPa以下であることがより好ましく、6,000MPa以下であることがさらに好ましく、3,000〜8,000MPaであることがさらに好ましく、3,100〜7,000MPaであることがさらに好ましく、3,200〜6,000MPaであることがさらに好ましい。
【0022】
成分bとしては、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンから誘導される単位と、炭素原子数6〜12の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位からなる重合体(成分b−1)、及び/又は、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸から誘導される単位と、炭素原子数6〜12の脂肪族ジアミンから誘導される単位からなる重合体(成分b−2)が挙げられる。
【0023】
成分b−1において、炭素原子数6〜12の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、2−メチルアジピン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,2,4/2,4,4−トリメチルアジピン酸、2−ブチルスベリン酸が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、得られるポリアミドフィルムの機械的強度や入手の容易さの観点から、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸が好ましく、アジピン酸がより好ましい。
【0024】
成分b−1には、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンから誘導される単位、及び炭素原子数6〜12の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を除く他の単位を共重合することも可能である。
【0025】
m−キシリレンジアミン及びp−キシリレンジアミンから選ばれるキシリレンジアミンから誘導される単位以外の他のジアミン単位としては、
1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、2−/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン、
1,3−/1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン、
m−/p−フェニレンジアミン、1,4−/1,5−/2,6−/2,7−ナフタレンジメチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジアミン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンから誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
炭素原子数6〜12の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位以外の他のジカルボン酸単位としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、トリデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、
1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、
テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−/2,6−/2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0027】
その他の単位としては、カプロラクタム、ドデカンラクタム等のラクタムから誘導される単位、
11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸、p−アミノメチル安息香酸等の芳香族アミノカルボン酸等のアミノカルボン酸から誘導される単位が挙げられる。
これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
成分b−1の具体例としては、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンピメラミド(ポリアミドMXD7)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリパラキシリレンアジパミド(ポリアミドPXD6)、ポリパラキシリレンアゼラミド(ポリアミドPXD9)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)、ポリパラキシリレンドデカミド(ポリアミドPXD12)等の単独重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体(ポリアミドMXD6/PXD6)、メタキシリレン/パラキシリレンピメラミド共重合体(ポリアミドMXD7/PXD7)、メタキシリレン/パラキシリレンスベラミド共重合体(ポリアミドMXD8/PXD8)、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体(ポリアミドMXD9/PXD9)、メタキシリレン/パラキシリレンセバカミド共重合体(ポリアミドMXD10/PXD10)、メタキシリレン/パラキシリレンドデカンジアミド共重合体(ポリアミドMXD12/PXD12)等の共重合体が挙げられ、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)が好ましい。
尚、上記b−1の具体例の括弧内の名称は、JIS K6920−1:2000「プラスチック−ポリアミド(PA)成形用及び押出用材料−第1部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎」に基づく。
【0029】
成分b−2において、炭素原子数6〜12の脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−/2,3−/2,4−/2,5−ジメチル−ヘプタンジアミン、2−/3−/4−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,3−/1,4−/2,2−/2,4−/3,3−/3,4−/4,4−/4,5−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン、2−/3−ブチル−1,8−オクタンジアミン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、得られるポリアミドフィルムの機械的強度や入手の容易さの観点から、1,6−ヘキサンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンが好ましく、1,6−ヘキサンジアミンがより好ましい。
【0030】
成分b−2には、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸から誘導される単位、及び炭素原子数6〜12の脂肪族ジアミンから誘導される単位を除く他の単位を共重合することも可能である。
【0031】
テレフタル酸及び/又はイソフタル酸から誘導される単位以外の他のジカルボン酸単位としては、
マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,2,4−/2,4,4−トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、
1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、
1,4−/2,6−/2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,3−/1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルプロパン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−トリフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が挙げられる。
これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
炭素原子数6〜12の脂肪族ジアミンから誘導される単位以外の他のジアミン単位としては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン等の脂肪族ジアミン、
1,3−/1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン、
m−/p−フェニレンジアミン、m−/p−キシリレンジアミン、1,4−/1,5−/2,6−/2,7−ナフタレンジメチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンから誘導される単位が挙げられる。
これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0033】
その他の単位としては、カプロラクタム、ドデカンラクタム等のラクタムから誘導される単位、
11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸、p−アミノメチル安息香酸等の芳香族アミノカルボン酸等のアミノカルボン酸から誘導される単位が挙げられる。
これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
成分b−2の具体例としては、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/6I/66、ポリアミド6T/6I/6、ポリアミド6T/6、ポリアミド6I/6、ポリアミド6T/66、ポリアミド6I/66、ポリアミド6T/12、ポリアミド6I/12、ポリアミド6T/6I/12等が挙げられ、ポリアミド6T/6Iが好ましい。
尚、成分b−2の具体例の上記名称は、JIS K6920−1:2000「プラスチック−ポリアミド(PA)成形用及び押出用材料−第1部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎」に基づく。
【0035】
成分bは、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等のポリアミド製造装置で製造することができる。
また、その重合方法としては、溶融重合、溶液重合や固相重合等がある。
これらの重合方法は、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができ、単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0036】
96質量%の硫酸中、ポリマー濃度1質量%、温度25℃の条件下にて、JIS K−6920に準じて測定した成分bの相対粘度は、得られるポリアミドフィルムの機械的性質を確保することと、溶融時の粘度を適正な範囲にして成形性を確保する観点から、1.8〜3.5であることが好ましく、1.9〜3.0であることがより好ましい。
【0037】
[成分A]
成分Aは、ポリアミド樹脂組成物の濡れ性と滑り性を両立させる観点と、さらに高湿度下における滑り性の改良効果や、得られるポリアミドフィルムの弾性率を適性な範囲にして軟包装に適し、耐屈曲疲労性が良好なポリアミドフィルムを得る観点から、
成分aと成分bからなり、両者の混合割合は、成分A100質量部に対して、
成分aの配合量は60〜98質量部であり、65〜96質量部が好ましく、75〜95質量部がより好ましく、79〜94質量部がさらに好ましく、
成分bの配合量は40〜2質量部であり、35〜4質量部が好ましく、25〜5質量部がより好ましく、21〜6質量部がさらに好ましい。
即ち、成分Aは、ポリアミド樹脂組成物の濡れ性と滑り性を両立させる観点と、さらに高湿度下における滑り性の改良効果や、得られるポリアミドフィルムの弾性率を適性な範囲にして軟包装に適し、耐屈曲疲労性が良好なポリアミドフィルムを得る観点から、
成分aと成分bからなり、両者の混合割合は、成分A100質量部に対して、成分aの含有量は60〜98質量部であり、65〜96質量部が好ましく、75〜95質量部がより好ましく、79〜94質量部がさらに好ましく、成分bの含有量は40〜2質量部であり、35〜4質量部が好ましく、25〜5質量部がより好ましく、21〜6質量部がさらに好ましい。
【0038】
[成分B]
本発明における成分Bは、無機フィラー粒子がオルガノシロキサンにより表面処理された無機フィラーであり、成分Bを構成する無機フィラー粒子は、その形状は特に制限されず、球状、楕円体状、フレーク状、板状、繊維状、針状、クロス状、マット状、繭形状、その他如何なる形状のものであってもよいが、球状、楕円体状、板状のものが好ましく、ポリアミドフィルムに適度な滑り性を付与する観点から突起が表面に形成されていることが好ましい。
【0039】
無機フィラー粒子の平均粒径は、特に限定されるものではないが、得られるポリアミドフィルムの滑り性改良効果を確保しつつ、ポリアミドフィルムの透明性を確保してポリアミドフィルム外観を損なわないために、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがより好ましく、1〜10μmであることがさらに好ましく、2〜5μmであることがさらに好ましい。
無機フィラー粒子の平均粒径は、コールターカウンター法により測定された体積平均粒子径を指し、平均粒径が前記の範囲に適合しない場合、予め粉砕処理や分級を行うことが望ましい。また、平均粒径が前記の値を満たす限り、粒径が異なる無機フィラー粒子を併用することも可能である。
【0040】
無機フィラー粒子の比表面積は、オルガノポリシロキサン(表面処理剤)による表面処理の発現効果を確保する観点から、5〜1,000m/gであることが好ましく、10〜800m/gであることがより好ましく、15〜500m/gであることがさらに好ましく、18〜400m/gであることがさらに好ましい。尚、ここで比表面積とは、BET法により測定された値を意味する。
【0041】
無機フィラー粒子としては、シリカ、タルク、カオリン、モンモリロナイト、ゼオライト、マイカ、ガラスフレーク、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノライト、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、タルク、カオリン、ゼオライト、シリカが易分散性の点から好ましい。
【0042】
無機フィラー粒子は、得られるポリアミドフィルムの透明性、滑り性の観点から、シリカがより好ましい。
シリカは、SiOで表される二酸化ケイ素を主成分とするものであり、その製造方法により大別して、湿式法シリカと乾式法シリカの2つに分けられるがいずれも用いることができる。
乾式法シリカは一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化珪素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化珪素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独又は四塩化硅素と混合した状態で使用することができる。
一方、湿式法シリカは、さらに製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。この方法で製造されたシリカの二次粒子は緩やかな凝集粒子となり、比較的粉砕し易い粒子が得られる。
ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件化で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子同士を結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。
ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、珪酸ソーダの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られる。
【0043】
無機フィラー粒子の表面処理剤として使用されるオルガノポリシロキサンは、下記式(1)
【0044】
【化1】

【0045】
式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は有機基を表し、m、nは1以上の自然数であり、mとnの合計数(m+n)は5〜500であることが好ましく、10〜300であることがより好ましく、20〜200であることがさらに好ましい。mとnの比率(n/m)は、使用するポリアミド樹脂と無機フィラー粒子の親和性を考慮し、導入される有機基の種類、含有量により決定され、1/100〜10であることが好ましく、1/50〜5であることがより好ましい。
【0046】
前記有機基としては特に限定されるものではないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルブチル基、オクチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ジフェニル基のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、これらの基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子により置換された炭化水素基、置換あるいは非置換の水酸基、シロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、メルカプト基、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、アミノ基、−O−、−(CHO)−、−(OCH−、−(CHO)CH−等のエーテル結合部位を含む構造単位、−CO−、−COCO−、−CO(CHCO−、−CO(C)CO−等のカルボニル基を含む構造単位、アミド結合部位を含む構造単位、エステル結合部位を含む構造単位、ケトン結合部位を含む構造単位を含有する置換基等が挙げられる。pは1〜30の整数を表す。
これらの中でも、製造時あるいは使用時の安定性、安全衛生の点から、R〜Rは水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、アリール基又はアラルキル基が好ましく、炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基又はアラルキル基がより好ましく、炭素原子数1から6のアルキル基又はアリール基がさらに好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0047】
オルガノポリシロキサンとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、各種変性ポリシロキサン等が挙げられる。
各種変性ポリシロキサンとしては、ポリシロキサン骨格の両末端にシラノール基が導入されたシラノール変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の側鎖にフロロアルキル基が導入されたフッ素変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の側鎖に長鎖アルキル基が導入されたアルキル変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の側鎖にアラルキル基が導入されたアラルキル変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の側鎖に高級脂肪酸エステル基が導入された脂肪酸エステル変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の側鎖に高級脂肪酸アミド基が導入された脂肪酸アミド変性ポリシロキサン、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル基がポリシロキサン骨格の両末端あるいは側鎖に導入されたポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端あるいは側鎖にアミノ基が導入されたアミノ変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端あるいは側鎖にエポキシ基が導入されたエポキシ変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端あるいは側鎖にエポキシ基とポリエーテル基が導入されたエポキシ−ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端にフェノール性水酸基が導入されたフェノール変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端あるいは側鎖にカルボキシル基が導入されたカルボキシル変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端に(メタ)アクリル基が導入された(メタ)アクリレート変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端にアルコキシ基が導入されたアルコキシ変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端あるいは側鎖にカルビノール基が導入されたカルビノール変性ポリシロキサン、ポリシロキサン骨格の両末端あるいは側鎖にメルカプト基が導入されたメルカプト変性ポリシロキサン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、入手の容易さ、安全衛生の観点から、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが好ましく、ジメチルポリシロキサンがより好ましい。
【0048】
さらに、オルガノポリシロキサンの25℃における動粘度は、加工性の容易さや無機フィラー粒子表面を均一に処理し、粗大凝集粒子の発生を防止する観点から、5〜1,000cStであることが好ましく、8〜600cStであることがより好ましい。
【0049】
オルガノポリシロキサンの処理量は、高湿度下での滑り性改良効果を確保し、ポリアミド樹脂との良好な親和力、分散性や、該オルガノポリシロキサンのポリアミドフィルムへのブリードアウトを防止する観点から、無機フィラー粒子(乾燥物基準)100質量部に対して、0.5〜15質量部であることが好ましく、1〜12質量部であることがより好ましく、2〜11質量部であることがさらに好ましい。
【0050】
オルガノポリシロキサンで無機フィラー粒子を処理する方法は特に限定されないが、水やアルコール等の溶媒中に無機フィラー粒子とオルガノポリシロキサンを加え、スーパーミキサー等の高剪断力混合機を用いて均一に混合した後、溶媒を除去することによって表面処理を行う湿式処理法、あるいは、無機フィラー粒子をマイクロナイザー、ジェットミル等の流体エネルギー粉砕機で粉砕する際にオルガノポリシロキサンを添加し、均一となるように攪拌した後、所定の温度で乾燥を行う乾式処理法等が挙げることができ、流体としては、通常は圧縮空気、加熱圧縮空気、スチーム等が用いられる。
【0051】
[成分C]
成分Cは、下記の一般式(2)
【0052】
【化2】

【0053】
(式中、Rは炭化水素基、R及びRは炭素原子数が14以上の炭化水素基、R及びRは水素原子又は炭化水素基を示す。)で表されるビスアミド化合物であり、ジアミンと炭素原子数が14以上の脂肪族モノカルボン酸(脂肪酸)との反応によって得られ、代表的には、アルキレンビス脂肪酸アミド、アリーレンビス脂肪酸アミド等が挙げられる。原料のジアミンとしては、アルキレンジアミン、アリーレンジアミン、アリーレンアルキルジアミン等が挙げられる。
【0054】
アルキレンジアミンとしては、例えば、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等が挙げられる。
アリーレンジアミンとしては、例えば、m−/p−フェニレンジアミン、1,4−/1,5−/2,6−/2,7−ナフタレンジアミン等が挙げられる。
アリーレンアルキルジアミンとしては、例えば、m−/p−キシリレンジアミン等が挙げられる。
尚、これらのジアミンは1種又は2種以上を用いることができる。
【0055】
原料の炭素原子数が14以上の脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、エルカ酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0056】
成分Cとしては、得られるポリアミドフィルムの滑り性及び透明性の観点からアルキレンビス脂肪酸アミドが好ましく、これらの中でも、N,N’−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスベヘン酸アミドが好ましい。
【0057】
ポリアミド樹脂組成物によって得られるポリアミドフィルムの濡れ性と滑り性を両立させる観点から、本発明のポリアミド樹脂組成物は、成分A、B及びCを配合してなり、
成分A100質量部に対して、
前記成分Bの配合量が、ポリアミド樹脂組成物によって得られるポリアミドフィルムの滑り性改良の効果を十分に確保し、フィルム製膜中に目脂の発生を防止する観点から、0.01〜0.4質量部であり、0.04〜0.35質量部であることが好ましく、0.06〜0.28質量部であることがより好ましく、0.09〜0.25質量部であることがさらに好ましく、
前記成分Cの配合量が、ポリアミド樹脂組成物によって得られるポリアミドフィルムの滑り性改良効果を確保し、得られるポリアミドフィルムの印刷性や接着性を損なわない観点から、0.02〜25質量部であり、0.05〜0.20質量部であることが好ましく、0.07〜0.18質量部であることがより好ましく、0.08〜0.16質量部であることがさらに好ましい。
また、ポリアミド樹脂組成物によって得られるポリアミドフィルムの濡れ性と滑り性を両立させる観点から、ポリアミド樹脂組成物に配合される熱可塑性樹脂中、成分A、B及びCの合計配合量は、80〜100質量%であることが好ましく、85〜99.8質量%であることがより好ましく、90〜99.5質量%であることがさらに好ましい。
即ち、ポリアミド樹脂組成物によって得られるポリアミドフィルムの濡れ性と滑り性を両立させる観点から、ポリアミド樹脂組成物は、成分A、B及びCを含み、
成分A100質量部に対して、
前記成分Bの含有量が、ポリアミド樹脂組成物によって得られるポリアミドフィルムの滑り性改良の効果を十分に確保し、フィルム製膜中に目脂の発生を防止する観点から、0.01〜0.4質量部であり、0.04〜0.35質量部であることが好ましく、0.06〜0.28質量部であることがより好ましく、0.09〜0.25質量部であることがさらに好ましく、
前記成分Cの含有量が、ポリアミド樹脂組成物によって得られるポリアミドフィルムの滑り性改良効果を確保し、得られるポリアミドフィルムの印刷性や接着性を損なわない観点から、0.02〜25質量部であり、0.05〜0.20質量部であることが好ましく、0.07〜0.18質量部であることがより好ましく、0.08〜0.16質量部であることがさらに好ましい。
また、ポリアミド樹脂組成物によって得られるポリアミドフィルムの濡れ性と滑り性を両立させる観点から、ポリアミド樹脂組成物における熱可塑性樹脂中、成分A、B及びCの合計含有量は、80〜100質量%であることが好ましく、85〜99.8質量%であることがより好ましく、90〜99.5質量%であることがさらに好ましい。
【0058】
[ポリアミド樹脂組成物の製造]
以下、ポリアミド樹脂組成物の好適な製造条件について説明する。
成分Aの製造において、成分aと成分bを配合、混合する方法には特に制限がなく、従来から知られている各種の方法を採用することができる。
例えば、両者をドライブレンドする方法、両者を必要に応じて配合される他の成分と共に、溶融混練する方法等により製造することができる。
溶融混練は、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を使用して行うことができる。
【0059】
成分Bや成分Cを成分a又は成分bに添加する方法としては、特に制限がなく、従来から知られている各種の方法を採用することができる。例えば、成分a又は成分bの重合工程の任意の段階で添加する重合内添法や、予め高濃度の成分B、成分Cを成分a又は成分bに一軸又は二軸の押出機を使用して練り込み、これを成形時に希釈して使用するいわゆるマスターバッチ法、
成形時の添加剤濃度で成分B、成分Cを成分Aに練り込む練り込み法や、
成形時に、成分a又は成分bに対して、所定量の成分B、成分Cを添加するドライブレンド法等が挙げられる。
また、成分Bと成分Cの成分a又は成分bへの配合は、同時に行なっても、別々に異なる方法で行なってもよい。
【0060】
上記の方法によって得られる本発明のポリアミド樹脂組成物には、得られるポリアミドフィルムの特性を損なわない範囲内で、通常配合される各種の添加剤及び改質剤、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、フィラー、粘着性付与剤、シール性改良剤、防曇剤、結晶核剤、離型剤、可塑剤、架橋剤、発泡剤、着色剤(顔料、染料等)等を添加することができ、耐屈曲疲労性を改良する目的で、オレフィン系共重合体、及びその変性物やエラストマー等も添加することができる。
【0061】
ポリアミド樹脂組成物には、目脂発生防止のため、ヒドロキシ脂肪酸マグネシウム塩を添加することが好ましい。ヒドロキシ脂肪酸マグネシウム塩は、ヒドロキシ飽和又は不飽和脂肪酸カルボン酸とマグネシウムの塩であり、具体的には、ヒドロキシラウリン酸マグネシウム塩、ヒドロキシミリスチン酸マグネシウム塩、ヒドロキシパルミチン酸マグネシウム塩、ヒドロキシステアリン酸マグネシウム塩、ヒドロキシベヘン酸マグネシウム塩等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0062】
ヒドロキシ脂肪酸マグネシウム塩の配合量は、ポリアミドフィルムの透明性や印刷性等が損なわず、目脂防止効果を確保する観点から、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.003〜0.3質量部であることが好ましく、0.004〜0.2質量部であることがより好ましく、0.005〜0.1質量部であることがさらに好ましい。
【0063】
さらに、ポリアミド樹脂組成物には、ポリアミドフィルムの透明性を損なわない範囲内で、耐屈曲疲労性を改良する目的で、オレフィン系共重合体、及びその変性物やエラストマー等の耐屈曲疲労性改良材を含有することができる。オレフィン系共重合体としては、エチレン/炭素原子数3〜10のα−オレフィン共重合体、エチレン/α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物、エチレン/α,β−不飽和カルボン酸共重合体、アイオノマー重合体等が挙げられる。オレフィン系共重合体の変性物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等のカルボキシル基及びその金属塩(Na、Zn、K、Ca、Mg)、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等の酸無水物基、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等のエポキシ基等の官能基が含有された上記ポリオレフィン系共重合体が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0064】
エラストマーとしては、ポリエステルエラストマー、ポリエーテルエステルアミドエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー等のポリアミド系エラストマー、両末端にポリスチレン相、ゴム中間相として水素添加型ポリオレフィンをもちポリスチレン相が架橋点を担っているブロック共重合体であるスチレン系エラストマー等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0065】
オレフィン系共重合体、及びその変性物やエラストマーの配合量は、耐屈曲疲労性改良の効果を確保し、得られるポリアミドフィルムの透明性を損なわないために、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.5〜10質量部であることが好ましく、1〜8質量部であることがより好ましく、2〜7質量部であることがさらに好ましい。
【0066】
[ポリアミドフィルム]
上記の本発明のポリアミド樹脂組成物(以後、原料ポリアミド樹脂組成物と記載する場合がある。)を使用して、ポリアミドフィルムを製造する方法としては、特に制限はなく、公知のフィルム製造方法を適用することができる。
例えば、原料ポリアミド樹脂組成物を押出機で溶融混練し、T−ダイあるいはコートハンガーダイによりフラットフィルム状に押出し、キャスティングロール面上にキャスティング、冷却してフィルムを製造するキャスティング法、リング状ダイにより筒状に溶融押出したチューブ状物を空冷あるいは水冷してフィルムを製造するチューブラー法等で製造する方法が挙げられる。
得られたポリアミドフィルムは未延伸フィルムとして使用する事ができるが、フィルムの強度及びガスバリア性の観点から二軸延伸フィルムにすることが好ましい。
【0067】
上記方法で得られたポリアミドフィルム(未延伸)を延伸する方法も、特に制限がなく、従来から知られている工業的方法により行うことができる。
例えば、未延伸フィルムをテンター式同時二軸延伸機で縦横同時に延伸する同時二軸延伸法、
Tダイより溶融押出しした未延伸フィルムをロール式延伸機で縦方向に延伸した後、テンター式延伸機で横方向に延伸する逐次二軸延伸法、
環状ダイより成形したチューブ状フィルムを気体の圧力でインフレーション式に縦横同時に延伸するチューブラー延伸法が挙げられる。
延伸工程はポリアミドフィルムの製造に引続き、連続して実施しても良いし、ポリアミドフィルムを一旦巻き取り、別工程として延伸を実施しても良い。
【0068】
延伸フィルムの延伸倍率は使用用途によって異なるが、テンター式二軸延伸法、チューブラー延伸法において、通常、縦方向、横方向ともに1.5〜4.5倍であることが好ましく、2.5〜4.0倍であることがより好ましい。
延伸温度は、30〜220℃であることが好ましく、50〜210℃であることがより好ましい。
【0069】
上記方法により得られた二軸延伸フィルムは、引続き熱処理をすることが望ましい。
熱処理することにより常温における寸法安定性を付与することができる。
この場合の熱処理温度は、110℃を下限として該原料ポリアミド樹脂組成物の融点より5℃低い温度を上限とする範囲を選択するのがよく、150℃以上であることが好ましく、180〜220℃であることがより好ましい。
緩和率は、幅方向に20%以内であることが好ましく、3〜10%であることがより好ましい。
これにより常温寸法安定性のよい、任意の熱収縮率をもった二軸延伸フィルムを得ることができる。
熱処理操作により、充分に熱固定された延伸フィルムは、常法に従い、冷却して巻き取ることができる。
【0070】
さらに、ポリアミドフィルムは、印刷性、ラミネート、粘着剤付与性をさらに高めるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理等の表面処理を行ってもよい。
得られた二軸延伸フィルムは、さらに、その目的とする用途に応じて、印刷、ラミネート、粘着剤塗布、ヒートシール等の二次加工を行い、それぞれの目的とする用途において使用することができる。
【0071】
[ポリアミド積層フィルム]
本発明のポリアミドフィルムは、滑り性や印刷性に優れ、単独での利用価値が高いが、積層フィルムの濡れ性と滑り性を両立する観点から、少なくとも、
本発明のポリアミドフィルムよりなる層(x)と、
前記成分aよりなる層(y)とを含み、
前記層(x)と前記層(y)は接触しており、
前記層(x)が最外層に配置されているポリアミド積層フィルムであることが好ましい。
【0072】
本発明のポリアミドフィルムは、他の熱可塑性樹脂を積層することにより、さらに多くの特性を付加させることが可能である。
具体的には本発明のポリアミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を積層して、積層フィルムとして使用することもできる。
【0073】
積層される熱可塑性樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂及び、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等のカルボキシル基及びその金属塩(Na、Zn、K、Ca、Mg)、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等の酸無水物基、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等のエポキシ基等の官能基が含有された化合物により変性された、上記ポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル(LCP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等のポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルスルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリ酢酸ビニル(PVAc)等のポリビニルエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等のポリビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(TFE/HFP,FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(TFE/HFP/VDF,THV)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等のフッ素系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等が挙げられる。
【0074】
また、成分aや成分bを積層することも可能であり、経済性の観点から成分aを積層することが好ましく、ポリアミドフィルム強度のバランス、ガスバリア性の観点から前記ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)やエチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)を積層することが好ましい。
【0075】
該積層フィルムは、該原料ポリアミド樹脂組成物よりなる層が少なくとも一方の最外層に配置されていることが好ましく、その積層方法としては、特に制限はなく、例えば、共押出法、押出ラミネート法、ドライラミネート法等が挙げられる。
共押出法は、該原料ポリアミド樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂を共押出する方法であり、共押出シート成形、共押出キャスティングフィルム成形、共押出インフレーションフィルム成形等が挙げられる。
押出ラミネート法は、本発明のポリアミドフィルムと熱可塑性樹脂等の基材に、それぞれアンカーコート剤を塗布し、乾燥後、その間に熱可塑性樹脂等を溶融押出しながらロール間で冷却し圧力をかけて圧着することによりラミネートフィルムを得る方法である。
ドライラミネート法は、有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を本発明のポリアミドフィルムに塗布し、乾燥後、熱可塑性樹脂等の基材と張り合わせることによりラミネートフィルムを得る方法である。
ラミネート後のフィルムは、エージングすることで、接着強度を上げることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物と接着性樹脂とともに共押出法により積層する方法は、アンカーコート剤や公知の接着剤等の表面処理工程が不要なため、環境に優しく、低コストであるため好ましい。
【0076】
本発明のポリアミドフィルムの厚みは用途により適宜決定すればよく、特に制限されないが、得られるポリアミドフィルムの強度や透明性や耐屈曲疲労性を勘案して、ポリアミド単層フィルムの場合、その厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜80μmであることがより好ましく、10〜60μmであることがさらに好ましい。
本発明のポリアミド積層フィルムの場合、その厚みは、得られるフィルムの強度、ガスバリア性、耐屈曲疲労性、透明性等のバランスから、5〜200μmであることが好ましく、10〜150μmであることがより好ましく、12〜100μmであることがさらに好ましい。
【0077】
また、原料ポリアミド樹脂組成物よりなる層(x)、成分aよりなる層(y)を含む、少なくとも2層以上から構成されるポリアミド積層フィルムの場合、全体厚みに対する、層(x)の厚み比率は5〜40%であることが好ましく、10〜35%であることがより好ましい。層(y)の厚み比率は60〜95%であることが好ましく、65〜90%であることがより好ましい。
【0078】
また、得られたポリアミドフィルム又はポリアミド積層フィルムには、ヒートシール性を付与する観点から、シーラント層を設けることが望ましい。シーラント層として使用される材料は、熱融着できる樹脂であればよく、一般にポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられ、ポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。具体的には、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)、アイオノマー樹脂、アモルファスポリエステル(A−PET)等が挙げられる。
【0079】
本発明において『高湿度下』とは、相対湿度(RH)50%の雰囲気を常態とし、それより高い相対湿度(RH)の雰囲気状態にあることを意味し、具体的には、相対湿度(RH)が65%を超える雰囲気状態下にあることをいう。
【0080】
本発明に関わるポリアミドフィルムは、ASTM D−1894に準拠して、23℃、相対湿度(RH)90%の雰囲気下で測定した静摩擦係数が1.0以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0081】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を説明するが、以下の例に限定されるものではない。各種評価方法と使用した原材料を次に示す。
【0082】
[滑り性]
23℃、相対湿度(RH)50%、及び23℃、相対湿度(RH)90%において、フィルム表面同士の静摩擦係数をASTM D−1894に準じ、それぞれ5回測定し、その平均値を求めた。23℃、相対湿度(RH)90%における静摩擦係数が1.0以下の場合、高湿度下における滑り性に優れていると判断した。
[引張弾性率]
フィルムの引張弾性率を、ASTM D−882に準じ、万能材料試験機(オリエンテック社製テンシロンUTM III−200)にて測定した。
[印刷性]
濡れ指数をJIS K−6768に準拠して測定した。
[透明性]
ASTM D−1003に準じ、直読ヘイズコンピューター(スガ試験機(株)製、HGM−2DP)を使用して、ヘイズ値を測定した。
[連続生産性]
該原料樹脂組成物を使用して、円形ダイを備えた40mmφの押出機にて、押出温度280℃にて溶融させ、20℃の水により冷却しながら、引き取りを行い、未延伸フィルムを連続して製造した。円形ダイリップ口にポリマー劣化物、添加剤の凝集体が蓄積した目脂の発生が認められるまで運転を行った。
【0083】
[使用した原材料]
成分a
(a−1)ポリアミド6(カプロラクタムから誘導される単位からなる重合体):宇部興産(株)製、UBE NYLON 1022B(23℃水中飽和吸水率:10.8質量%、相対粘度:3.35)
【0084】
成分b
(b−1)ポリアミドMXD6(m−キシリレンジアミンから誘導される単位とアジピン酸から誘導される単位からなる重合体):三菱ガス化学(株)製、MX−ナイロン6011(曲げ弾性率:4,400MPa、相対粘度:2.65)
(b−2)ポリアミド6T/6I(1,6−ヘキサンジアミンから誘導される単位とテレフタル酸及びイソフタル酸から誘導される単位からなる共重合体):三井・デュポンポリケミカル(株)製、シーラPA3426(曲げ弾性率:3,300MPa、相対粘度:1.95)
(b−3)ポリアミド610(1,6−ヘキサンジアミンから誘導される単位とセバシン酸から誘導される単位からなる重合体):東レ(株)製、アミランCM2001(曲げ弾性率:2,000MPa、相対粘度:2.5)
【0085】
成分B
(B−1)オルガノポリシロキサンにより表面処理されたシリカ:
水澤化学工業(株)製、ミズカシルPM−363DS、比表面積300m/g、平均粒径4.0μm、
ジメチルポリシロキサン(信越化学(株)製、信越シリコーンKF−96 100CS、分子量6,000g/モル、動粘度:100cSt)
処理量:シリカ100質量部に対して10質量部。
(B−2)オルガノポリシロキサンにより表面処理されたシリカ:
水澤化学工業(株)製、ミズカシルC−102DS、比表面積20m/g、平均粒径3.0μm、
ジメチルポリシロキサン(信越化学(株)製、信越シリコーンKF−96 100CS、分子量6,000g/モル、動粘度:100cSt)
処理量:シリカ100質量部に対して5質量部。
尚、シリカにおける前記比表面積、及び平均粒子径は、それぞれ以下の方法によって測定した。
[比表面積]
JIS K−1150に準拠し、窒素の吸着量からBET法で測定した。
[平均粒子径]
コールターカウンター法にて、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、Multisizer4)により体積平均粒子径を測定した。
【0086】
成分C
(C−1)N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド:
日本化成(株)製、スリパックスE、脂肪酸の炭素原子数18
(C−2)N,N’−エチレンビスベヘン酸アミド:
日本化成(株)製、スリパックスB、脂肪酸の炭素原子数20
(C−3)N,N’−エチレンビスラウリン酸アミド:
日本化成(株)製、スリパックスL、脂肪酸の炭素原子数12
【0087】
成分D(その他の無機フィラー)
(D−1)シリカ:
水澤化学工業(株)製、ミズカシルP−707、平均粒径:3.5μm、比表面積260m/g
(D−2)γ−アミノプロピルトリエトキシシランにより表面処理されたシリカ:
水澤化学工業(株)製、ミズカシルC−402、平均粒径:3.5μm、比表面積260m/g
【0088】
実施例1
(a−1)90質量部と(b−1)10質量部の合計量に対して、
(B−1)を0.15質量部、(C−1)を0.12質量部配合し、
原料ポリアミド樹脂組成物を得た。
同原料ポリアミド樹脂組成物を円形ダイを備えた40mmφ一軸フルフライトスクリューの押出機に導入して、押出温度270℃にて溶融させ、20℃の水により冷却しながら、引き取りを行い、チューブラー状のポリアミドフィルムを得た。
引き続き、気体の圧力でインフレーション式に縦横同時に延伸するチューブラー延伸法にて、延伸温度180℃、延伸倍率(縦、横ともに)3.0倍にて延伸を行った。
その後、チューブ状フィルムの端を切り開き、フラット状のフィルムをテンター内に導入し、幅方向に緩和処理を行ないつつ、210℃にて熱固定処理を行なった。
フィルム両端をクリップから解放し、耳部をトリミングして巻き取り、厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0089】
実施例2〜3
実施例1において、(B−1)の配合量を表1に示す量になるように変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0090】
実施例4
実施例1において、(B−1)を(B−2)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0091】
実施例5〜6
実施例1において、(a−1)と(b−1)の配合量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0092】
実施例7
実施例1において、(b−1)を(b−2)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0093】
実施例8〜9
実施例1において(C−1)の配合量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0094】
実施例10
実施例1において、(C−1)を(C−2)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0095】
比較例1
実施例1において、(B−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0096】
比較例2〜3
実施例1において、(B−1)の配合量を表1に示す量になるように変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0097】
比較例4
実施例1において、(B−1)を(D−1)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0098】
比較例5
実施例1において、(B−1)を(D−2)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0099】
比較例6
実施例1において、(b−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0100】
比較例7〜8
実施例1において、(a−1)と(b−1)の配合量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0101】
比較例9
実施例1において、(b−1)を(b−3)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0102】
比較例10
実施例1において、(C−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0103】
比較例11〜12
実施例1において、(C−1)の配合量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0104】
比較例13
実施例1において、(C−1)を(C−3)に変えた以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0105】
実施例1〜10及び比較例1〜13において得られた二軸延伸ポリアミドフィルムの物性測定結果と連続生産性について調査した結果を表1に示す。
【0106】
実施例11
円形3層ダイを備えた40mmφの押出機において、実施例1で使用した原料ポリアミド樹脂組成物(層(x)の樹脂成分)と、(a−1)(層(y)の樹脂成分)を押出温度270℃にてそれぞれ別々に溶融させ、20℃の水により冷却しながら、引き取りを行い、層構成が(x)/(y)/(x)である3層を直接積層したポリアミド積層フィルムを得た。
【0107】
引き続き、気体の圧力でインフレーション式に縦横同時に延伸するチューブラー延伸法にて、延伸温度180℃、延伸倍率(縦、横ともに)3.0倍にて延伸を行った。
その後、チューブ状フィルムの端を切り開き、フラット状のフィルムをテンター内に導入し、幅方向に弛緩処理を行ないつつ、210℃にて熱固定処理を行なった。
フィルム両端をクリップから解放し、耳部をトリミングして巻き取り、
(x)/(y)/(x)=2μm/11μm/2μmのポリアミド積層二軸延伸フィルムを得た。該ポリアミド積層二軸延伸フィルムの物性測定結果を表2に示す。
【0108】
比較例14
実施例11において、実施例1で使用した原料ポリアミド樹脂組成物を比較例6で使用した原料ポリアミド樹脂組成物(層(x)の樹脂成分)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて
(x)/(y)/(x)=2μm/11μm/2μmのポリアミド積層二軸延伸フィルムを得た。該ポリアミド積層二軸延伸フィルムの物性測定結果を表2に示す。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

【0111】
表1、2の結果から、引張弾性率3,000MPa以下が、軟包装に適し、濡れ指数36mN/m以上が印刷性に優れていると判断し、6時間以上、円形ダイリップ口にポリマー劣化物、添加剤の凝集体が蓄積した目脂の発生が認められない場合、連続生産性に優れていると判断した。
【0112】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成分a(23℃水中飽和吸水率が8.0質量%以上であるポリアミド樹脂)と成分b(23℃、相対湿度(RH)50%において、ASTM D−790に準拠して測定した曲げ弾性率が3,000MPa以上のポリアミド樹脂)とからなるポリアミド樹脂(成分A)に対し、無機フィラー粒子がオルガノポリシロキサンにより表面処理されてなる無機フィラー(成分B)、及び炭素数が14以上の脂肪酸とジアミンからなるビスアミド化合物(成分C)を特定量含有することから、
本発明のポリアミド樹脂組成物よりなるポリアミドフィルムは、連続生産可能であり、軟包装に適し、滑り性や印刷性に優れ、
特に、今まで実現できなかったような、23℃、相対湿度(RH)90%の雰囲気下で測整定した静摩擦係数が1.0以下という、高湿度下において、卓越した滑り性を付与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(成分A)と、無機フィラー(成分B)と、ビスアミド化合物(成分C)とを含むポリアミド樹脂組成物であって、
前記成分Aは、成分a60〜98質量部と成分b40〜2質量部からなり、
前記成分aが、23℃水中飽和吸水率が8.0質量%以上のポリアミド樹脂であり、
前記成分bが、23℃、相対湿度(RH)50%において、ASTM D−790に準拠して測定した曲げ弾性率が3,000MPa以上のポリアミド樹脂であり、
前記成分Bは、無機フィラー粒子がオルガノシロキサンにより表面処理されてなり、
前記成分Cは、炭素原子数14以上の脂肪酸とジアミンとが反応してなり、
前記成分A、B及びCの含有量が、
前記成分A100質量部に対して、
前記成分Bが0.01〜0.4質量部であり、
前記成分Cが0.02〜25質量部であるポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機フィラー粒子がシリカであり、
前記無機フィラー粒子100質量部が前記オルガノシロキサン0.5〜15質量部により表面処理されている請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記成分aにおいて、カプロラクタムから誘導される単位の含有量が、前記成分aの全重合単位100モル%に対して、50モル%以上である請求項1又は2記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記成分aが、ポリアミド6、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、ポリアミド6/IPDT、ポリアミド6/66/12からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記成分bが、
m−キシリレンジアミンから誘導される単位及び/若しくはp−キシレンジアミンから誘導される単位と、
炭素原子数6〜12の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位からなる重合体(成分b−1)、
並びに/又は、
テレフタル酸から誘導される単位及び/若しくはイソフタル酸から誘導される単位と、
炭素原子数6〜12の脂肪族ジアミンから誘導される単位からなる重合体(成分b−2)
である請求項1〜4のいずれか1項記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のポリアミド樹脂組成物よりなるポリアミドフィルム。
【請求項7】
二軸延伸ポリアミドフィルムである請求項6記載のポリアミドフィルム。
【請求項8】
少なくとも、
請求項6又は7記載のポリアミドフィルムよりなる層(x)と、
前記成分aよりなる層(y)とを含み、
前記層(x)と前記層(y)は接触しており、
前記層(x)が最外層に配置されているポリアミド積層フィルム。

【公開番号】特開2012−41527(P2012−41527A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158862(P2011−158862)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】