説明

ポリアミド繊維の製造方法

【課題】カットしてショートカット繊維として用いると、水中での分散性に優れ、風合いが良好な湿式不織布や抄紙を得ることができるポリアミド繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリアミドを溶融紡糸し、紡出された糸条Yにオイリングローラ1で一次油剤を付与した後、糸条を複数本集束し、延伸することなく未延伸糸束として収納容器に収納し、その後、未延伸糸束を収納容器から取り出して延伸を施した後に二次油剤を付与する製造方法であって、一次油剤としてアルキルホスフェート金属塩を含有しない油剤5を用い、オイリングローラとして、ローラの一部が油剤浴4中に浸漬しながら回転し、かつローラの上方から油剤を滴下しながら回転するオイリングローラを使用し、滴下する一次油剤の温度を15℃以下とし、一次油剤の付着量を0.05〜0.10質量%、一次油剤と二次油剤の合計付着量を0.2〜0.5質量%となるように油剤を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式法によって不織布を製造したり、他の繊維との混抄紙を製造するのに好適なポリアミドショートカット繊維を得ることができるポリアミド繊維の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、天然パルプ、合成パルプ、合成繊維ショートカット繊維、又はこれらの混合物を水溶液中に分散し、抄紙して湿式不織布を得る方法や、さらにこの不織布に高圧液流処理等を施すことにより、機械的特性に優れた柔軟な湿式不織布を得る方法は一般的に知られている。
【0003】
しかし、湿式不織布を製造するために、天然パルプ、合成パルプ、合成繊維ショートカット繊維、又はこれらの混合物を水溶液中に分散し、抄紙する工程において、ショートカットされた短繊維が互いに疑似接着したり絡み合って凝集し、水中に均一に分散し難いという問題がある。
【0004】
ポリエステル、ポリアミドをはじめとする合成繊維のショートカット繊維を製造する際には、紡出した糸条に、後の延伸工程での集束性、制電性を向上させるために油剤を付与している。そこで、上記の問題を解決するために、付与する油剤成分を特定のものとし、ショートカット繊維の分散性を向上させようとする方法がある(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0005】
しかしながら、これらの方法は繊維を延伸した後にのみ油剤を付与しているため、油剤が繊維表面に均一に付着し難く、依然として水中分散性が劣るものであった。
【0006】
通常、繊維に油剤を付与する際には、オイリングローラによる方法が行われている。オイリングローラは、油剤浴にオイリングローラの一部を浸積させて回転させながらローラ表面に油膜を形成し、ローラ表面に接触しながら走行する糸条に油剤を付与するものである。しかしながら、このような油剤の付与方法では、特にガラス転移点が低い共重合ポリアミドを用いた繊維の場合、次のような問題が生じることがある。
【0007】
つまり、糸条収納容器内に糸条束を収納する際、共重合ポリアミドのガラス転移点が低いために完全に冷却されていないことがあり、また、一旦ガラス転移点以下に冷却して油剤付与した後に収納容器に収納しても、ポリマーの持つ潜熱のために収納後、ガラス転移点付近まで糸条温度が上がることがあり、これらにより、繊維同士が融着(密着)しやすくなり、糸条収納容器から引き出す際に乱れやもつれが多発する。このような乱れやもつれが生じると、延伸工程でローラ捲き付きが生じたり、得られた繊維にも融着が生じ、品質も劣るものとなる。
【0008】
これらの問題を解決するために、油剤浴中の油剤の温度を低くし、繊維に温度が20℃以下の油剤を付与し、収納後の糸条束の潜熱の発生を防いだり、また、収納容器室自体を冷却する方法があった。しかしながらオイリングローラで糸条に付着させることができる油剤量は限られており、繊維内部まで十分に冷却することはできなかった。また収納容器自体を冷却する方法では、収納容器の底付近の糸条束まで冷却することは困難であった。
【特許文献1】特開昭58−208499号公報
【特許文献2】特開昭58−208500号公報
【特許文献3】特公平3−33837号公報
【特許文献4】特開平9−95891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決し、カットしてショートカット繊維として用いると、水中での分散性に優れ、風合いが良好な湿式不織布や抄紙を得ることができるポリアミド繊維の製造方法を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、ポリアミドを溶融紡糸し、紡出された糸条にオイリングローラで一次油剤を付与した後、糸条を複数本集束し、延伸することなく未延伸糸束として収納容器に収納し、その後、未延伸糸束を収納容器から取り出して延伸を施した後に二次油剤を付与する製造方法であって、一次油剤としてアルキルホスフェート金属塩を含有しない油剤を用い、オイリングローラとして、ローラの一部が油剤浴中に浸漬しながら回転し、かつローラの上方から油剤を滴下しながら回転するオイリングローラを使用し、滴下する一次油剤の温度を15℃以下とし、一次油剤の付着量を0.05〜0.10質量%、一次油剤と二次油剤の合計付着量を0.2〜0.5質量%となるように油剤を付与することを特徴とするポリアミド繊維の製造方法を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリアミド繊維の製造方法によれば、油剤とその付着量、油剤温度、油剤の付着方法を適切に選択することにより、溶融紡糸後の繊維を十分に冷却することができ、繊維間の融着が生じることがない。これにより、溶融紡糸、延伸工程を糸切れなく操業性よく行うことができる。そして、本発明により得られるポリアミド繊維をショートカット繊維とすると、水中での分散性に優れており、この繊維を使用すれば、地合斑のない品位の高い湿式不織布や抄紙を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明のポリアミド繊維としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン610等を用いることが好ましい。中でもナイロン6は汎用性が高く、比較的安価であるため好ましい。
【0015】
そして、これらの成分を単独(ホモポリマー)で用いても併用してもよい。併用する場合は、これらの成分の2つ以上を混合したり、共重合することが挙げられるが、本発明の製造方法は、中でも少なくとも2成分を共重合し、ガラス転移点が低い共重合体に好ましく用いられる。
【0016】
また、本発明のポリアミド繊維は、2種類以上のポリアミドを用いた芯鞘型や海島型の複合繊維であってもよく、また繊維(単糸)の断面形状は特に限定されるものではないが、丸断面、扁平断面、三角断面、六葉断面等のものが挙げられる。
【0017】
本発明の製造方法においては、ポリアミドを溶融紡糸し、紡出された糸条にオイリングローラで一次油剤を付与した後、糸条を複数本集束し、延伸することなく未延伸糸束として収納容器に収納し、その後、未延伸糸束を収納容器から取り出して延伸を施した後に二次油剤を付与する。
【0018】
まず、一次油剤中にはアルキルホスフェート金属塩を含有していないことが必要である。 アルキルホスフェート金属塩としては、ラウリルホスフェートカリウム塩、セチルホスフェートカリウム塩、ステアリルホスフェートカリウム塩等が挙げられる。
【0019】
一次油剤中にアルキルホスフェート金属塩が若干でも含有されていると、延伸工程での熱処理時に、アルキルホスフェート金属塩が隣り合う繊維間で固着するため、油剤の繊維間への進入が阻害され、未離解部分が残ることとなる。
【0020】
そこで、本発明において、一次油剤は、延伸工程での熱処理時に繊維間が固着しないようにするため、アリキルホスフェート金属塩を含有しない油剤とし、具体的にはポリエーテル系やポリエステル系のエマルジョン油剤を用いることが好ましい。
【0021】
二次油剤についても一次油剤と同様のアリキルホスフェート金属塩を含有しない油剤であって、一次油剤と同種のものを用いることが好ましい。
【0022】
本発明においては、溶融紡糸された糸条を冷却した後、オイリングローラにて糸条に一次油剤を付与するが、未延伸糸条に付与することができる油剤の量はオイリングローラの回転数、糸条のオイリングローラ上での幅、吐出量、紡速等によって変わるが、図2に示すような従来のオイリングローラを使用した場合は、おおむね30質量%(エマルジョン油剤の質量)程度である。
【0023】
そこで、本発明においては、オイリングローラとして、図1に示すようにローラ1の一部が油剤浴4中に浸漬しながら回転し、かつローラ1の上方から油剤3を滴下しながら回転するオイリングローラを使用し、ローラ1の表面に接触しながら走行する糸条Yに油剤を付与する。そして、ローラ1上に滴下する油剤3の温度を15℃以下とすることにより、糸条の冷却効果が向上する。さらに、油剤浴4中の油剤5に加えて滴下する油剤3がオイリングローラ1の表面に油膜を形成するので、糸条Yへの油剤付着量もアップする。
【0024】
すなわち、ローラで油剤浴4中の油剤5を持ち上げ、ローラ表面に形成させる油膜の量には限度がある。そこで、ローラ上に油剤を滴下することで、この限度を超えた通常よりも厚い被膜を形成することができ、油剤付着量のアップと冷却効率の向上を図ることが可能となる。
【0025】
このような方法により、エマルジョン油剤を繊維質量の60質量%程度まで付着させることができる。本発明においては、糸条へのエマルジョン油剤の付着量は繊維質量の30〜40質量%とすることが好ましい。
【0026】
そして、一次油剤の付着量(油剤成分の付着量)は0.05〜0.10質量%とすることが必要であり、好ましくは0.06〜0.09質量%である。一次油剤の付着量が0.05質量%未満になると、糸条の集束性が悪化し、延伸工程で糸条収納容器からの立ち上がりが悪くなるため好ましくない。また、0.10質量%を超えると繊維の金属摩擦が高くなり、延伸操業性が悪化するため好ましくない。
【0027】
さらに、一次油剤と二次油剤の合計付着量(油剤成分の付着量)は、0.2〜0.5質量%とすることが必要である。合計付着量が0.2質量%未満になると、ショートカット繊維とした後の繊維の水中での分散性が悪化するため好ましくない。また、0.5質量%を超えると、繊維の水中での分散性は良好となるが効果は飽和するため、コスト高となり好ましくない。
【0028】
そして、オイリングローラから滴下する一次油剤の温度を15℃以下とすることが必要である。なお、油剤浴4中の一次油剤の温度も15℃以下とすることが好ましい。
【0029】
溶融紡糸後の糸条に温度15℃以下の一次油剤を上記のようなオイリングローラを用いて付与することにより、通常のオイリングローラで付与するよりも多量の油剤を付与することができ、糸条を十分に冷却することが可能となる。これにより、未延伸糸条束の繊維間の融着を防ぎ、絡み等も発生することなく糸条収納容器内に収納できるようになる。
【0030】
一次油剤の温度が15℃を超えると冷却が不十分となり、糸条収納容器に収納された糸条束の繊維同士に融着が生じる。温度の下限は特に限定されるものではないが、作業性等を考慮し、3℃とすることが好ましい。
【0031】
ローラ1上に油剤を滴下する方法は特に限定するものではないが、オイリングローラの上方に油剤供給装置2を設け、供給口より少量ずつ滴下させることが好ましい。このとき、ローラの頂点よりもローラの回転方向に沿って糸条Yに近い方向から滴下させることが好ましい。滴下量は付着させようとする油剤量によって適宜調整する。
【0032】
また、二次油剤を付与する方法は特に限定するものではないが、図2に示すような従来のオイリング装置を用いる方法や、走行する糸条束の上面や下面からシャワー状に油剤を吹き付けて付与する方法を採用することができる。なお、油剤の温度は20〜35℃程度の室温とすればよい。
【0033】
本発明の方法で油剤を付与した糸条は、集束されて糸条束となり、収納容器内に収納されるが、収納される糸条束は、繊度が3万〜50万デシテックスのものとすることが好ましく、さらに、これらを複数本引き揃えて延伸した後の繊度が10万〜300万デシテックス(単糸繊度が2〜50デシテックス)程度となるものとすることが好ましい。
【0034】
なお、本発明における油剤の付着量は、エタノールで油剤を繊維から抽出し、エタノールを蒸発乾固させた後、抽出した油剤の質量を測定して算出した。
油剤付着量(質量%)=(抽出油剤質量/抽出前繊維質量)×100
【0035】
一次油剤の付着量は、収納容器内に収納された未延伸糸束を取り出し、測定するものである。一次油剤と二次油剤の合計付着量は、二次油剤を付与した後、糸条束をショートカット繊維に切断する前に測定してもよいし、ショートカット繊維とした後に測定してもよい。
【0036】
本発明のポリアミド繊維をショートカット繊維にする場合は、機械捲縮等を付与することなく、実質的に捲縮を有していないノークリンプショートカット繊維とすることが好ましい。
【0037】
そして、ショートカット繊維の繊維長は3〜15mmが好ましい。繊維長が3mm未満であると、カットするときの摩擦熱で繊維同士の接着が発生し、未離解部分が残り、水中での分散性が損なわれやすい。一方、15mmを超えると、水中でショートカット繊維が再凝集を起こしやすくなる。そして、このような水中での分散性が悪い場合や再凝集が起きた場合は、得られる不織布や抄紙の地合いが悪くなると共に風合いが損なわれる。
【実施例】
【0038】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、実施例における各特性値の測定及び評価方法は次の通りである。
(1)繊度
JIS L−1015の繊度の正量繊度 A法により測定した。
(2)繊維長
JIS L−1015の繊維長の平均繊維長 直接法(C法)により測定した。
(3)油剤の付着量
前記の方法で測定した。
(4)操業性
紡糸、延伸時の状況により、次の2段階で評価した。
○:紡糸時の切れ糸回数が3回/日・錘以下であり、なおかつ延伸時にローラ巻き付きの発生がない。
×:紡糸時の切れ糸回数が3回/日・錘を超えるか、または延伸時にローラ巻き付きの発生がある。
(5)分散性
1000cmのビーカーに30℃の水を1kg秤取し、そこへ得られたショートカット繊維1gを投入し、DCスターラー(撹拌ペラは3枚スクリュー型で直径は約50mm)で回転数3000rpm、撹拌時間1分間の条件で撹拌し、撹拌後の分散状態を下記の評価基準で、目視にて判断した。
○:分散せずに結束している繊維の数:0〜5個
×:分散せずに結束している繊維の数:6個以上
(6)湿式不織布の風合い
得られた湿式不織布を15×15cmの正方形に切断し、パネラー5人による手触りにより、風合いのソフト性を下記の基準で官能評価した。
○:良好
×:不良
【0039】
実施例1
ポリアミド成分として、相対粘度が2.50、融点が215℃、ガラス転移点40℃のナイロン6を使用し、紡糸温度245℃、吐出量230g/分、紡糸速度1000m/分の条件で、孔径0.22mm、ホール数1040の丸型断面のノズルを用いて溶融紡糸した。次いで、一次油剤(紡糸油剤)としてポリエーテルエステルアミドのエマルジョン油剤(アルキルホスフェート金属塩を含有しない)を用い、図1に示すオイリングローラで滴下する油剤の温度を5℃として糸条に油剤を滴下しながら付与した。このとき、糸条(未延伸糸)の一次油剤の付着量は繊維質量の0.07質量%であった。
得られた未延伸糸を集束して50万dtexの糸条束とした後、延伸倍率3.5倍で延伸し、さらに180℃で熱処理を行い、次いで、二次油剤(仕上げ油剤)として一次油剤と同じポリエーテルエステルアミドのエマルジョン油剤(アルキルホスフェート金属塩を含有しない)を用い、走行する糸条束の上面と下面より油剤をシャワー方式で付与した。続いて、捲縮を付与することなく糸条束を繊維長5mmに切断して単糸繊度0.82dtexのノークリンプショートカット繊維を得た。このとき、二次油剤の付着量は0.3質量%(一次油剤と二次油剤の合計付着量が0.37質量%)であった。
得られたノークリンプシヨートカット繊維2.0gと、単糸繊度1.76dtexのポリアミドバインダー繊維(ユニチカ社製ユニメルト)0.5gとを混合し、パルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し、3000rpmで1分間撹拌した。その後、得られた試料を抄紙機(熊谷理機工業製角型シ−トマシン)に移し、増粘剤(ポリアクリルアマイド)を5ppm滴下した後に付帯の撹拌羽根で撹拌を行い、湿式不織布ウエブとした。
25×25cmに抄紙した湿式不織布ウエブを、プレス機(熊谷理機工業製)で余分な水分を脱水した後、表面温度140℃、熱処理時間100秒、プレス線圧0.1MPaの条件で回転乾燥機(熊谷理機工業製;卓上型ヤンキードライヤー)にて熱処理し、目付40g/mの湿式不織布を得た。
【0040】
実施例2、比較例2
一次油剤の温度(滴下する油剤の温度)を表1に記載した値に変更した以外は、実施例1と同様の方法でノークリンプショートカット繊維と湿式不織布を得た。
【0041】
実施例3、比較例3〜5
一次油剤と二次油剤の付与量を変更し、表1に示すような付着量とした以外は、実施例1と同様の方法でノークリンプショートカット繊維と湿式不織布を得た。
【0042】
比較例1
一次油剤にステアリルホスフェートカリウム塩を主体成分とするエマルジョン油剤(ステアリルホスフェートカリウム塩を80質量%含有)を使用した以外は、実施例1と同様の方法でノークリンプショートカット繊維と湿式不織布を得た。
【0043】
比較例6
一次油剤を付与するオイリングローラを図2に示すもの(油剤の滴下がなく、油剤浴の油剤の温度は室温のもの)に変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0044】
実施例1〜3と比較例1〜6で得られたノークリンプショートカット繊維と湿式不織布の測定値、評価結果を併せて表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1から明らかなように、実施例1〜3の方法では、油剤温度、油剤付着量が本発明の範囲内であり、十分に冷却と油剤の付与がされたので操業性に優れており、得られたノークリンプショートカット繊維は分散性に優れており、さらに得られた湿式不織布の風合いも良好であった。
【0047】
一方、比較例1では、一次油剤にアルキルホスフェート金属塩を含有する油剤を使用したので、得られたノークリンプショートカット繊維の分散性が悪く、さらには得られた不織布の風合いにも劣るものであった。比較例2では、一次油剤の温度が高かったために、単糸間での密着が発生し、得られたノークリンプショートカット繊維の分散性が悪かった。比較例3は、一次油剤の付着量が多すぎたため、延伸時の操業性が悪かった。比較例4は、一次油剤の付着量が少なすぎたため、未延伸糸の集束性が悪く、延伸時の操業性が悪かった。比較例5は、一次油剤と二次油剤の合計付着量が少なかったため、得られたノークリンプショートカット繊維の水中分散性が悪く、得られた不織布の風合いも悪かった。比較例6では、一次油剤を従来のオイリング装置を用いて付与したため、十分な油剤の付与と冷却効果が得られず、繊維間の融着や絡みが生じ、紡糸、延伸時の操業性が悪かった。さらには得られたノークリンプショートカット繊維の水中分散性が悪く、得られた不織布の風合いも悪かった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明で使用するオイリングローラの一実施態様を示す概略説明図である。
【図2】従来のオイリングローラの一実施態様を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0049】
Y 糸条
1 オイリングローラ
2 油剤付与装置
3 滴下油剤
4 油剤浴
5 油剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドを溶融紡糸し、紡出された糸条にオイリングローラで一次油剤を付与した後、糸条を複数本集束し、延伸することなく未延伸糸束として収納容器に収納し、その後、未延伸糸束を収納容器から取り出して延伸を施した後に二次油剤を付与する製造方法であって、一次油剤としてアルキルホスフェート金属塩を含有しない油剤を用い、オイリングローラとして、ローラの一部が油剤浴中に浸漬しながら回転し、かつローラの上方から油剤を滴下しながら回転するオイリングローラを使用し、滴下する一次油剤の温度を15℃以下とし、一次油剤の付着量を0.05〜0.10質量%、一次油剤と二次油剤の合計付着量を0.2〜0.5質量%となるように油剤を付与することを特徴とするポリアミド繊維の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−223198(P2008−223198A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66744(P2007−66744)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000228073)日本エステル株式会社 (273)
【Fターム(参考)】