説明

ポリアリーレン系ブロック共重合体及びその用途

【課題】高いプロトン伝導性を有し、高温高湿条件下での優れた形体安定性を有する膜を得ることができる、ポリアリーレン系共重合体を提供すること。
【解決手段】ポリスチレン換算の重量平均分子量が50000〜1000000であり、イオン交換基を有するブロックと、ポリスチレン換算の重量平均分子量が8000〜50000であり、イオン交換基を実質的に有しないブロックとを含むブロック共重合体であって、
前記イオン交換基を有するブロックが、下記式(1)で表される構造単位を含み、前記イオン交換基を実質的に有しないブロックが、下記式(2)で表される構造単位を含み、且つ、イオン交換容量が3.0meq/g以上であることを特徴とするポリアリーレン系ブロック共重合体。


(式中、Ar1はアリーレン基、Ar2は芳香族基を表す。Arは、少なくとも一つのイオン交換基を有する。X1は−O−基または−S−基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリーレン系ブロック共重合体及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一次電池、二次電池、あるいは燃料電池等の電気化学デバイスの隔膜として、プロトン伝導性を有する高分子すなわち高分子電解質膜が用いられている。例えば、ナフィオン(デュポン社の登録商標)をはじめとするフッ素系高分子電解質膜が、燃料電池用の隔膜として用いた場合に、発電特性が優れることから従来、主に使用されている。しかしながら、フッ素系高分子電解質膜については、高価であること、耐熱性が低いこと、廃棄コストが高いこと、膜強度が低く何らかの補強をしないと実用的でないこと等の問題が指摘されている。
【0003】
こうした状況において、前記フッ素系高分子電解質膜に替わり得る安価で特性の優れた炭化水素系高分子電解質膜の開発が近年活発化し、検討がなされている。
炭化水素系高分子電解質膜としては、例えば、ポリアリーレン構造からなるイオン交換基を有するブロックと、イオン交換基を有さないブロックとを含むイオン交換容量2.3meq/gのポリアリーレン系共重合体を用いてなる高分子電解質膜が知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、フェノキシベンゾイル基のような可とう性のある基を側鎖として有するポリアリーレン系高分子をスルホン化することで、側鎖フェノキシベンゾイル基の芳香族環をスルホン化せしめたポリアリーレン系高分子電解質が提案され、かかるポリアリーレン系高分子電解質が100℃以上の高温領域でも高いプロトン伝導性を有することが知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−247857号公報
【特許文献2】米国特許5403675号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている高分子電解質膜は、実用的なプロトン伝導性と耐水性とを有するものの、高性能な燃料電池開発のため、さらに高いプロトン伝導性と高温高湿条件下での優れた形体安定性とを有する高分子電解質膜の開発が求められていた。
【0007】
また、上記特許文献2に記載されているポリアリーレン系高分子電解質は、プロトン伝導性の向上を求めてイオン交換容量を増加しようとすると、耐水性および、高温高湿条件下での形体安定性の著しい低下をもたらす傾向があり、燃料電池用プロトン伝導膜として実用的に乏しいものであった。また、具体的に特許文献2に記載されている製造手段では、プロトン伝導性を担うイオン交換容量を一定以上に増加させること自体困難なものであった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、高分子電解質膜として用いたとき、高いプロトン伝導性を有し、且つ、高温高湿条件下での優れた形体安定性を発揮する膜を得ることができる、ポリアリーレン系ブロック共重合体を提供することにある。さらには、該ポリアリーレン系ブロック共重合体を含む高分子電解質、該高分子電解質を含む燃料電池用部材(特に、高分子電解質膜)、該部材を含む高分子電解質形燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記事情に鑑み、ポリアリーレン系ブロック共重合体について鋭意検討を重ねた結果、イオン交換基を有するブロックと、イオン交換基を実質的に有さないブロックとを含むブロック共重合体であり、該イオン交換基を有するブロックのイオン交換基の結合形態と、そのシーケンスと、重量平均分子量とを特定し、該イオン交換基を有さないブロックのシーケンスと、重量平均分子量とを特定し、且つ、該ポリアリーレン系ブロック共重合体のイオン交換容量を特定することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は[1]を提供するものである。
【0010】
[1]ポリスチレン換算の重量平均分子量が50000〜1000000であり、イオン交換基を有するブロックと、ポリスチレン換算の重量平均分子量が8000〜50000であり、イオン交換基を実質的に有しないポリマーから得られ、イオン交換基を実質的に有しないブロックとを含むブロック共重合体であって、
前記イオン交換基を有するブロックが、下記式(1)で表される構造単位を含み、
前記イオン交換基を実質的に有しないブロックが、下記式(2)で表される構造単位を含み、
且つ、ブロック共重合体のイオン交換容量が3.0meq/g以上であること、
を特徴とするポリアリーレン系ブロック共重合体。


(式(1)において、Ar1はアリーレン基を表し、Arは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基から選ばれる基を置換基として有していてもよい。Arは、少なくとも一つのイオン交換基を有する。複数あるAr1は、互いに同一でも異なってもよい。式(2)において、Ar2は芳香族基を表し、該芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基から選ばれる基を置換基として有していてもよい。複数あるArは、互いに同一でも異なってもよい。X1は−O−で示される基又は−S−で示される基を表す。複数あるX1は、互いに同一でも異なってもよい。)
【0011】
さらに本発明は、上記ポリアリーレン系ブロック共重合体に係る好適な実施形態として、以下の[2]〜[10]を提供する。
[2]前記イオン交換基を実質的に有しないブロックの主鎖に含まれる、エーテル結合及びチオエーテル結合を分解した後に測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が50000〜1000000であることを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
[3][1]または[2]に記載のポリアリーレン系ブロック共重合体であって、該ポリアリーレン系ブロック共重合体を用いて下記測定方法で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が50000〜1000000であることを特徴とするポリアリーレン系ブロック共重合体。
測定方法:2200重量部のジメチルスルホキシドと、2〜13重量部の、25重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを含むメタノール溶液と、1重量部の、前記ポリアリーレン系ブロック共重合体とを混合して、混合したポリアリーレン系共重合体の全てまたは実質的に全てが溶解した溶液を得る溶液調製工程、前記溶液調製工程により得られた溶液を100℃にて2時間加熱する加熱工程、および加熱工程により得られた溶液に含まれる高分子のポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する工程を含む方法。
[4]ブロック共重合体のイオン交換容量が、3.5〜6.5meq/gであることを特徴とする[1]〜[3]いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
[5]ブロック共重合体のイオン交換容量が、4.0〜6.0meq/gであることを特徴とする[1]〜[3]いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
[6]ブロック共重合体のイオン交換容量が、4.7〜5.3meq/gであることを特徴とする[1]〜[3]いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
[7]少なくとも一つのイオン交換基が、前記Arで表されるアリーレン基の主鎖を構成する芳香族環に直接結合していることを特徴とする[1]〜[6]いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
[8]前記イオン交換基を有するブロックが有するイオン交換基がスルホ基、ホスホン基、カルボキシル基及びスルホンイミド基からなる群から選ばれる1種以上の酸基であることを特徴とする[1]〜[7]いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
[9]上記式(1)で表される構造単位が、下記式(3)で表される構造単位であることを特徴とする[1]〜[8]いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。

(式中、Rは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基又はシアノ基を表す。kは0〜3の整数を表し、pは1又は2の整数を表し、k+pは4以下の整数である。Rが複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なってもよい。)
[10]上記イオン交換基を実質的に有しないポリマーが、下記式(4)で表されることを特徴とする[1]〜[9]いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。

(式中、Ar21は、芳香族基を表す。複数あるAr21は、互いに同一でも異なってもよい。該芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基から選ばれる基を置換基として有していてもよい。X11は−O−で示される基又は−S−で示される基を表す。複数あるX11は、互いに同一でも異なってもよい。Yは脱離基を表す。2つのYは同一でも異なっていてもよい。qは4以上の整数を表す。)
【0012】
上記[1]〜[10]いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体はいずれも、特に燃料電池用部材に使用される高分子電解質として極めて優れている。したがって、本発明は以下の[11]〜[16]を提供する。
[11] [1]〜[10]いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体を含むことを特徴とする高分子電解質。
[12] [11]に記載の高分子電解質を含有することを特徴とする高分子電解質膜。
[13] [11]記載の高分子電解質と、多孔質基材とを有することを特徴とする高分子電解質複合膜。
[14] [11]記載の高分子電解質と、触媒成分とを含むことを特徴とする触媒組成物。
[15] [12]記載の高分子電解質膜、[13]記載の高分子電解質複合膜及び[12]記載の触媒組成物から選ばれる少なくとも1種を有することを特徴とする膜電極接合体。
[16] [14]記載の膜電極接合体を有することを特徴とする高分子電解質形燃料電池。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体は、高分子電解質形燃料電池用部材、中でも高分子電解質膜として用いると、高いプロトン伝導性及び、高温高湿条件下での優れた形体安定性を発現する。本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体は、高分子電解質形燃料電池の触媒層として用いても好適である。特に、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体を上記高分子電解質膜として燃料電池に用いた場合、高い発電特性を示すものが得られる。このように、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体は、特に燃料電池の用途において、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が50000〜1000000であり、イオン交換基を有するブロックと、ポリスチレン換算の重量平均分子量が8000〜50000であり、イオン交換基を実質的に有しないポリマーから得られ、イオン交換基を実質的に有しないブロックとを含むブロック共重合体であって、
前記イオン交換基を有するブロックが、下記式(1)で表される構造単位を含み、
前記イオン交換基を実質的に有しないブロックが、下記式(2)で表される構造単位を含み、
且つ、ブロック共重合体のイオン交換容量が3.0meq/g以上であることを特徴とする。


(式(1)において、Ar1はアリーレン基を表し、Arは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基から選ばれる基を置換基として有していてもよい。Arは、少なくとも一つのイオン交換基を有する。複数あるAr1は、互いに同一でも異なってもよい。式(2)において、Ar2は芳香族基を表し、該芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基から選ばれる基を置換基として有していてもよい。複数あるArは、互いに同一でも異なってもよい。X1は−O−で示される基又は−S−で示される基を表す。複数あるX1は、互いに同一でも異なってもよい。)
【0015】
少なくとも一つのイオン交換基が、前記Arで表されるアリーレン基の主鎖を構成する芳香族環に直接結合していることが好ましい。ここで、「主鎖」とは、ポリマーを形成する最も長い鎖のことをいう。この鎖は共有結合により相互に結合した炭素原子から構成されていて、その際、この鎖は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等により中断されていてもよい。
【0016】
まず、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体におけるイオン交換基を有するブロックについて説明する。
イオン交換基を有するブロックは、上記式(1)で表される繰り返し単位のみからなることが好ましく、その繰返し単位当たりで計算してイオン交換基が平均0.5個以上であるものであり、繰返し単位当たりのイオン交換基が平均1.0個以上であるとより好ましい。
【0017】
前記「イオン交換基」とは、イオン伝導、特にここではプロトン伝導に係る基を表す。イオン交換基としては通常酸基が使用される。該酸基としては、弱酸、強酸、超強酸等の酸基が挙げられるが、強酸、超強酸の酸基が好ましい。酸基の例としては、例えば、ホスホン基、カルボキシル基等の弱酸の酸基;スルホ基、スルホンイミド基(−SO2−NH−SO2−R。ここでRはアルキル基、アリール基等の一価の置換基を表す。)等の強酸の酸基が挙げられ、中でも、強酸の酸基であるスルホ基、スルホンイミド基が好ましく使用される。また、電子吸引性基で該芳香族環及び/又はスルホンイミド基の置換基(−R)上の水素原子を置換することにより、電子吸引性基の効果で前記の強酸の酸基を超強酸の酸基として機能させることも好ましい。共重合体中に存在するイオン交換基は、部分的にあるいは全てが、金属イオンや4級アンモニウムイオンなどで交換されて塩を形成していてもよいが、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体を燃料電池用高分子電解質膜などとして使用する際には、実質的に全てのイオン交換基が遊離酸の状態であることが好ましい。
【0018】
上記式(1)におけるArは、アリーレン基を表す。該アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニリレン基等の単環性芳香族基、ナフタレンジイル基等の縮環系芳香族基、ピリジンジイル基、キノキサリンジイル基、チオフェンジイル基等の芳香族複素環基等が挙げられる。好ましい例としては、下記式(ca)〜(cl)で表されるアリーレン基が挙げられ、中でも、(cb)、(ci)が特に好ましい。

【0019】
また、Arは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基から選ばれる基を置換基として有していてもよい。好ましい置換基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、及びシアノ基が挙げられる。このような置換基を有するポリアリーレン系ブロック共重合体は、高い耐加水分解性を有するため好ましい。特に好ましい置換基としては、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基が挙げられる。このような置換基を有するポリアリーレン系ブロック共重合体は、耐水性に優れるため好ましい。
【0020】
ここで、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の炭素数1〜20のアルキル基、及びこれらのアルキル基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等を置換基として有する、その総炭素数が20以下であるアルキル基等が挙げられる。
【0021】
また、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、イコシルオキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基、及びこれらのアルコキシ基が以下の置換基群から選ばれる1種以上の置換基を有するその総炭素数が20以下であるアルコキシ基等が挙げられる。
[置換基群]メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基等の炭素数1〜19のアルキル基、これらのアルキル基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等を置換基として有するその総炭素数が19以下であるアルキル基、及びヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等
【0022】
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、アントラセニル基等のアリール基、及びこれらのアリール基が以下の置換基群から選ばれる1種以上の置換基を有するその総炭素数が20以下であるアリール基等が挙げられる。
[置換基群]メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基等の炭素数1〜14のアルキル基、これらのアルキル基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等を置換基として有するその総炭素数が14以下であるアルキル基、及びヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等
【0023】
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、ナフチルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、アントラセニルオキシ基等のアリールオキシ基、及びこれらのアリールオキシ基が以下の置換基群から選ばれる1種以上の置換基を有する、その総炭素数が20以下であるアリールオキシ基が挙げられる。
[置換基群]メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基等の炭素数1〜14のアルキル基、これらのアルキル基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等を置換基として有するその総炭素数が14以下であるアルキル基、及びヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等
【0024】
置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基等の炭素数2〜20のアシル基、及びこれらのアシル基が以下の置換基群から選ばれる1種以上の置換基を有する、その総炭素数が20以下であるアシル基が挙げられる。
[置換基群]メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基等の炭素数1〜18のアルキル基、これらのアルキル基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等を置換基として有するその総炭素数が18以下であるアルキル基、及びヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等
【0025】
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基としては、ベンゼンスルホニル基、1−ナフタレンスルホニル基、2−ナフタレンスルホニル基等の炭素数6〜20のアリールスルホニル基、及びこれらのアリールスルホニル基が以下の置換基群から選ばれる1種以上の置換基を有する、その総炭素数が20以下であるアリールスルホニル基が挙げられる。
[置換基群]メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基等の炭素数1〜14のアルキル基、これらのアルキル基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等を置換基として有するその総炭素数が14以下であるアルキル基、及びヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等
【0026】
置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、2,2−ジメチルプロピルスルホニル基、シクロペンチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−メチルペンチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ノニルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等の炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びこれらのアルキルスルホニル基が以下の置換基群から選ばれる1種以上の置換基を有する、その総炭素数が20以下であるアルキルスルホニル基が挙げられる。
[置換基群]ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等
【0027】
イオン交換基を有するブロックは、上記式(1)で表される構造単位を含み、好ましくは、上記式(1)で表される構造単位として、下記式(1−a)で表される構造を含む。式(1−a)中、Arは上記と同じ意味を表す。mは2以上の整数を表す。

【0028】
Arは、主鎖を構成する芳香族環に少なくとも一つのイオン交換基を有することが好ましい。
【0029】
また、上記式(1)で示される構造単位の好ましい例としては、下記式(3)で表される構造単位が挙げられる。このような構造単位を有するブロックは、後述する本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体の製造において、工業的に容易に入手できる原料を用いることができる、又は、製造が容易である原料を用いることができるため好ましく、また、このような構造単位を有するブロックを含むポリアリーレン系ブロック共重合体は、高分子電解質膜として用いたとき、高温高湿条件下での優れた形体安定性を有するため好ましい。

【0030】
式(3)中、Rは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基又はシアノ基を表す。kは0〜3の整数を表し、pは1又は2の整数を表し、k+pは4以下の整数である。Rが複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なってもよい。
ここで、Rは上記Arの置換基として例示した、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基又はシアノ基から選ばれ、後述の重合反応において、その反応を阻害しない基である。その置換基の数kは、0又は1であると好ましく、特に好ましくはkが0、すなわち置換基を有しない繰返し単位である。
【0031】
また、式(1−a)で表される構造は、下記式(3−a)で表される構造であることが好ましい。式中、m、R、p及びkは上記と同じ意味を表す。
【0032】
【化1】

【0033】
本発明における、イオン交換基を有するブロックのポリスチレン換算の重量平均分子量としては、50000〜1000000であり、100000〜800000が好ましく、220000〜650000がより好ましく、260000〜500000がさらに好ましい。ポリスチレン換算の重量平均分子量が50000以上であると、燃料電池用の高分子電解質として、プロトン伝導度が十分であるので好ましい。また、1000000以下であれば、ポリアリーレン系ブロック共重合体として、製造がより容易であるので好ましく、また、高温高湿条件下での優れた形体安定性を有する高分子電解質膜を得ることができるため好ましい。
【0034】
イオン交換基を有するブロックの重量平均分子量は、後述する好適な製造方法である、イオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体と、イオン交換基を実質的に有しないブロックを誘導するイオン交換基を実質的に有しないポリマーとを共重合する方法において、共重合前に測定してもよいし、共重合後に測定してもよい。
前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
イオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体が単量体型である場合、前記重量平均分子量は、共重合の後に測定される。イオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体が重合体型である場合、前記重量平均分子量の測定は、共重合の前であっても後であってもよい。該前駆体のポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000未満の場合、該前駆体同士のカップリングを生じ易く、共重合後にイオン交換基を有するブロックの重量平均分子量が変化する可能性があるため、前記重量平均分子量は共重合後に測定されることが好ましい。
共重合前のイオン交換基を有するブロックの重量平均分子量の測定は、イオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体を、イオン交換基を有するブロックの構造へ変換した後に行われる。すなわち、イオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体がイオン交換基を有していない場合には、イオン交換基を導入した後の測定値が、イオン交換基を有するブロックの重量平均分子量であり、また、イオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体のイオン交換基がイオン交換前駆基である場合には、該イオン交換前駆基をイオン交換基へ誘導した後の測定値が、イオン交換基を有するブロックの重量平均分子量である。
共重合後のイオン交換基を有するブロックの重量平均分子量の測定は、ポリアリーレン系ブロック共重合体が含むイオン交換基を実質的に有しないブロックを分解した後に行われる。
前記分解の方法としては、酸、塩基、ラジカル、酸化剤、還元剤、熱、光等を用いる方法が挙げられる。イオン交換基を有するブロックと、イオン交換基を実質的に有しないブロックの構造の違いから、イオン交換基を実質的に有しないブロックを選択的に分解する分解方法が選択される。例えば、ポリアリーレン構造から成るイオン交換基を有するブロックと、主鎖にエーテル結合を有するイオン交換基を実質的に有しないブロックとから成る、芳香族ブロック共重合体の、イオン交換基を実質的に有しないブロックの分解には塩基が好適に用いられる。具体的には、特開2008−031452号公報、又は特開2009−173902号公報に記載の公知の方法を用いる事ができる。具体的には、2200重量部のジメチルスルホキシドと、2〜13重量部の、25重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを含むメタノール溶液と、1重量部の基質ポリマーとを混合して、混合した基質ポリマーの全てまたは実質的に全てが溶解した溶液を得、その溶液を100℃にて2時間加熱する方法を用いることができる。例えば、基質ポリマーのイオン交換容量が3.5meq/g未満の場合には、2200重量部のジメチルスルホキシドと、2重量部の、25重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを含むメタノール溶液と、1重量部の基質ポリマーとを混合して、混合した基質ポリマーの全てまたは実質的に全てが溶解した溶液を得、その溶液を100℃にて2時間加熱する方法が、エーテル結合の好適な分解方法として用いることができ、また、基質ポリマーのイオン交換容量が3.5meq/g以上の場合には、2200重量部のジメチルスルホキシドと、13重量部の、25重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを含むメタノール溶液と、1重量部の基質ポリマーとを混合して、混合した基質ポリマーの全てまたは実質的に全てが溶解した溶液を得、その溶液を100℃にて2時間加熱する方法が、エーテル結合の好適な分解方法として用いることができる。ここで、「混合した基質ポリマーの実質的に全てが溶解した」とは、混合した基質ポリマーの95重量%以上が溶解したことを意味する。
【0035】
前記イオン交換前駆基とは、ポリアリーレン系ブロック共重合体前駆体のイオン交換前駆基以外の構造の変化を伴うことなくイオン交換基となる基のことである。イオン交換前駆基は、好ましくは3段階以内、より好ましくは2段階以内、さらに好ましくは1段階の反応を経てイオン交換基となる。
【0036】
次に、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体におけるイオン交換基を実質的に有しないブロックについて説明する。
【0037】
該イオン交換基を実質的に有しないブロックは、上記式(2)で表される構造単位(但し、ブロックの末端においては、Xが欠損していてもよい)のみからなることが好ましく、その繰返し単位当たりで計算してイオン交換基が0.1個以下であるものであり、繰返し単位当たりのイオン交換基が0、すなわちイオン交換基が皆無であると特に好ましい。
【0038】
式(2)におけるArは主鎖に−O−で示される基及び/又は−S−で示される基を有しない芳香族基を表す。すなわち、芳香族基1つと主鎖に存在する−O−で示される基又は−S−で示される基1つとの組合せで、1つの構造単位とみる。該主鎖に−O−で示される基及び/又は−S−で示される基を有しない芳香族基としては、炭素数が4〜40であることが好ましく、6〜25であることがより好ましく、12であることがさらに好ましい。このような構造単位は、当該ブロックの製造に工業的に容易に入手できる原料を用いることができる、又は、製造が容易である原料を用いることができるため好ましい。
また、該主鎖に−O−で示される基及び/又は−S−で示される基を有しない芳香族基としては例えば下記式(aa)〜(aA)のような芳香族基が挙げられる。
【0039】

【0040】
また、Arは、Arが置換基として有し得る基で置換されていてもよく、中でも、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基から選ばれる基を置換基として有することが好ましい。Arとしては置換基を有してもよい上記(ac)、(ag)、(al)、(ap)、(as)、(av)、(aw)、(ax)、(aA)で表される基が好ましく、置換基を有してもよい上記(ag)、(al)、(ap)、(av)、(ax)、(aA)で表される基がより好ましく、置換基を有してもよい上記(al)、(ap)、(ax)、(aA)で表される基が特に好ましい。このような、構造単位を有するブロックは、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体を含む高分子電解質膜の高温高湿条件下での形体安定性を高め、また、化学的な安定性に優れるため好ましい。
【0041】
式(2)で示される構造単位の好ましい例としては、下記式で表される構造単位が挙げられる。中でも、(bf)、(bk)、(bn)、(bp)、(bs)、(bu)、(bw)が好ましく、(bk)、(bn)、(bp)、(bu)、(bw)が特に好ましく、(bk)、(bp)、(bw)がさらに好ましい。このような、構造単位を有するブロックは製造が容易であり、また、工業的に容易に入手できる原料を用いて製造できるため好ましい。下記式においてaはモル組成比を表し、aは0.51以上が好ましく、0.52以上がより好ましい。また、aは0.90以下が好ましく、0.60以下がより好ましく、0.55以下が特に好ましい。
【0042】

【0043】
次に、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体の好適な製造方法について説明する。
本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体の好適な製造方法としては、例えば、イオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体とイオン交換基を実質的に有しないブロックを誘導するポリマーとを共重合させる方法が挙げられる。
イオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体、及びイオン交換基を実質的に有しないブロックを誘導する前駆体は、単量体型であっても、重合体型であっても良い。
すなわち、前記製造方法としては、
イオン交換基を有するブロックを誘導する単量体型の前駆体と、イオン交換基を実質的に有しないブロックを誘導するポリマーとを共重合させる方法、
イオン交換基を有するブロックを誘導する重合体型の前駆体と、イオン交換基を実質的に有しないブロックを誘導するポリマーとを共重合させる方法、
が挙げられる。
イオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体が、単量体型、又はポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000未満の重合体型である場合、イオン交換基を有するブロックの重量平均分子量は、前記共重合に供するイオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体と、イオン交換基を実質的に有しないブロックを誘導するポリマーとの組成比、及び、イオン交換基を実質的に有しないブロックを誘導するポリマーの分子量によって制御される。前記共重合に供するイオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体の組成比が高いと、イオン交換基を有するブロックの重量平均分子量は高くなる傾向がある。また、イオン交換基を実質的に有しないブロックを誘導するポリマーの分子量が高いほど、イオン交換基を有するブロックの重量平均分子量は高くなる傾向がある。
つまり、共重合に供するイオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体と、イオン交換基を実質的に有しないブロックを誘導するポリマーとの組成比と、イオン交換基を実質的に有しないブロックを誘導するポリマーの分子量と、を適当に調整することにより、イオン交換基を有するブロックのポリスチレン換算の重量平均分子量が前記範囲内にあるポリアリーレン系ブロック共重合体を得ることができる。
イオン交換基を有するブロックのポリスチレン換算の重量平均分子量が前記範囲よりも高い場合には、イオン交換基を実質的に有しないブロックを誘導するポリマーの分子量を低くすることで、前記範囲へ抑えることができる。また、イオン交換基を有するブロックのポリスチレン換算の重量平均分子量が前記範囲をよりも低い場合には、イオン交換基を実質的に有しないブロックを誘導する前駆体の分子量を高くすることで、前記範囲へ高めることができる。
イオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体が重合体型である場合、イオン交換基を有するブロックの重量平均分子量は、イオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体の分子量によって制御される。
つまり、イオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体の重量平均分子量を、前記イオン交換基を有するブロックのポリスチレン換算の重量平均分子量の範囲とすることで、イオン交換基を有するブロックのポリスチレン換算の重量平均分子量が前記範囲内にあるポリアリーレン系ブロック共重合体が得られる。
ただし、前記共重合の後にイオン交換基を導入する場合、又は、前記共重合の後にイオン交換前駆基をイオン交換基へ誘導する場合はこの限りではない。この場合には、共重合前の、イオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体へ、イオン交換基を導入した後、又は、共重合前の、イオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体のイオン交換前駆基を、イオン交換基へ誘導した後、のポリスチレン換算の重量平均分子量を前記範囲内とすることで、イオン交換基を有するブロックの重量平均分子量が前記範囲内にあるポリアリーレン系ブロック共重合体が得られる。
イオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体は、共重合に先立ってイオン交換基を有していても、有していなくてもよい。イオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体が、イオン交換基を有していない場合は、イオン交換基を有するブロックを誘導する前駆体とイオン交換基を実質的に有しないブロックを誘導するポリマーとを共重合した後にイオン交換基を導入すればよい。
【0044】
例えば、イオン交換基を有するブロックに、前記式(1−a)で表される構造を含める場合、Arにおける主鎖を構成する芳香族環に結合するイオン交換基の導入方法は、予めイオン交換基を有するモノマーを用いて重合する方法であっても、予めイオン交換基を有しないモノマーからポリアリーレン系ブロック共重合体前駆体を製造した後に、イオン交換基を導入する方法であってもよい。中でも、前者の方法であると、イオン交換基の導入量や、置換位置を的確に制御することができるので、より好ましい。
【0045】
イオン交換基を有するモノマーを用いて、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体の製造を行う方法としては、例えば、遷移金属錯体の共存下、下記式(1−h)で示されるモノマーと、後述する式(4)で示されるイオン交換基を実質的に有しないポリマーとを縮合反応により重合することにより製造し得る。
Q−Ar10−Q (1−h)
【0046】
ここでAr10は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有していてもよいアリーレン基であり、主鎖を構成している芳香族環にイオン交換基及び/又はイオン交換前駆基が結合している。2つのQはそれぞれ、脱離基を表し、2つのQは同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
式(1−h)におけるAr10の例としては、Arの具体例と同一の基を挙げることができる。また、Ar10はArの置換基の具体例と同一の基で置換されていてもよい。上記脱離基は、縮合反応時に脱離する基を意味するが、その具体例としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基が挙げられる。
【0048】
上記式(1−h)で示されるモノマーとしては、イオン交換基が好ましいイオン交換基であるスルホ基の場合で例示すると、2,4−ジクロロベンゼンスルホン酸、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、2,4−ジブロモベンゼンスルホン酸、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸、3,5−ジブロモベンゼンスルホン酸、2,4−ジヨードベンゼンスルホン酸、2,5−ジヨードベンゼンスルホン酸、3,5−ジヨードベンゼンスルホン酸、2,4−ジクロロ−5−メチルベンゼンスルホン酸、2,5−ジクロロ−4−メチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジブロモ−5−メチルベンゼンスルホン酸、2,5−ジブロモ−4−メチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジヨード−5−メチルベンゼンスルホン酸、2,5−ジヨード−4−メチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジクロロ−5−メトキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジクロロ−4−メトキシベンゼンスルホン酸、2,4−ジブロモ−5−メトキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジブロモ−4−メトキシベンゼンスルホン酸、2,4−ジヨード−5−メトキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジヨード−4−メトキシベンゼンスルホン酸、3,3’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、3,3’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、3,3’−ジヨードビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、4,4’−ジヨードビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、4,4’−ジクロロビフェニル−3,3’−ジスルホン酸、4,4’−ジブロモビフェニル−3,3’−ジスルホン酸、4,4’−ジヨードビフェニル−3,3’−ジスルホン酸、5,5’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、5,5’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、5,5’−ジヨードビフェニル−2,2’−ジスルホン酸等が挙げられる。
【0049】
また、他のイオン交換基の場合は、上記に例示したモノマーのスルホ基を、ホスホン基、カルボキシル基等のイオン交換基に置き換えて、選択することができる。これら他のイオン交換基を有するモノマーも工業的に容易に入手できるか、公知の製造方法を用いて、製造することが可能である。
【0050】
さらに上記に例示するモノマーのイオン交換基は塩の形でもよく、特に、イオン交換基が塩の形であるモノマーを用いることが、重合反応性の観点から好ましい。塩の形としては、アルカリ金属塩が好ましく、特に、Li塩、Na塩、K塩の形が好ましい。
【0051】
イオン交換前駆基としては、エステル又はアミドを形成してイオン交換基が保護されているような形態のものが好ましい。好ましいイオン交換前駆基である、スルホン酸前駆基で例示すると、スルホン酸エステル基(−SO;ここでRは炭素数1〜20のアルキル基を表す。)又はスルホンアミド基(−SON(R)(R);ここでR及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数3〜20の芳香族基を表す。)等が挙げられる。中でも、より好ましいスルホン酸前駆基としては、スルホン酸エステル基が挙げられる。
【0052】
スルホン酸エステル基としては、例えばスルホン酸メチルエステル基、スルホン酸エチルエステル基、スルホン酸n−プロピルルエステル基、スルホン酸イソプロピルエステル基、スルホン酸n−ブチルエステル基、スルホン酸sec−ブチルエステル基、スルホン酸tert−ブチルエステル基、スルホン酸n−ペンチルエステル基、スルホン酸ネオペンチルエステル基、スルホン酸n−ヘキシルエステル基、スルホン酸シクロヘキシルエステル基、スルホン酸n−ヘプチルエステル基、スルホン酸n−オクチルエステル基、スルホン酸n−ノニルエステル基、スルホン酸n−デシルエステル基、スルホン酸n−ドデシルエステル基、スルホン酸n−ウンデシルエステル基、スルホン酸n−トリデシルエステル基、スルホン酸n−テトラデシルエステル基、スルホン酸n−ペンタデシルエステル基、スルホン酸n−ヘキサデシルエステル基、スルホン酸n−ヘプタデシルエステル基、スルホン酸n−オクタデシルエステル基、スルホン酸n−ノナデシルエステル基、スルホン酸n−エイコシルエステル基などのスルホン酸エステル基が例示され、好ましくはスルホン酸sec−ブチルエステル基、スルホン酸ネオペンチルエステル基又はスルホン酸シクロヘキシルエステル基である。これらのスルホン酸エステル基は、重合反応に関与しない基を置換基として有していてもよい。
【0053】
また、スルホンアミド基としては、例えばスルホンアミド基、N−メチルスルホンアミド基、N,N−ジメチルスルホンアミド基、N−エチルスルホンアミド基、N,N−ジエチルスルホンアミド基、N−n−プロピルスルホンアミド基、ジ−n−プロピルスルホンアミド基、N−イソプロピルスルホンアミド基、N,N−ジイソプロピルスルホンアミド基、N−n−ブチルスルホンアミド基、N,N−ジ−n−ブチルスルホンアミド基、N−sec−ブチルスルホンアミド基、N,N−ジ−sec−ブチルスルホンアミド基、N−tert−ブチルスルホンアミド基、N,N−ジ−tert−ブチルスルホンアミド基、N−n−ペンチルスルホンアミド基、N−ネオペンチルスルホンアミド基、N−n−ヘキシルスルホンアミド基、N−シクロヘキシルスルホンアミド基、N−n−ヘプチルスルホンアミド基、N−n−オクチルスルホンアミド基、N−n−ノニルスルホンアミド基、N−n−デシルスルホンアミド基、N−n−ドデシルスルホンアミド基、N−n−ウンデシルスルホンアミド基、N−n−トリデシルスルホンアミド基、N−n−テトラデシルスルホンアミド基、N−n−ペンタデシルスルホンアミド基、N−n−ヘキサデシルスルホンアミド基、N−n−ヘプタデシルスルホンアミド基、N−n−オクタデシルスルホンアミド基、N−n−ノナデシルスルホンアミド基、N−n−エイコシルスルホンアミド基、N,N−ジフェニルスルホンアミド基、N,N−ビストリメチルシリルスルホンアミド基、N,N−ビス−tert−ブチルジメチルシリルスルホンアミド基、ピロリルスルホンアミド基、ピロリジニルスルホンアミド基、ピペリジニルスルホンアミド基、カルバゾリルスルホンアミド基、ジヒドロインドリルスルホンアミド基、ジヒドロイソインドリルスルホンアミド基などが例示され、好ましくはN,N−ジエチルスルホンアミド基、N−n−ドデシルスルホンアミド基、ピロリジニルスルホンアミド基、ピペリジニルスルホンアミド基が例示される。これらのスルホンアミド基は、いずれも重合反応に関与しない基を置換基として有していてもよい。
【0054】
また、スルホン酸前駆基としてはメルカプト基も使用可能である。メルカプト基は適当な酸化剤を使用して、酸化させることによりスルホ基に転換可能である。
【0055】
次に、予めイオン交換基を有しないモノマーからポリアリーレン系ブロック共重合体前駆体を製造した後に、イオン交換基を導入する方法に関し説明する。この場合、例えば、遷移金属錯体の共存下、下記一般式(1−i)で示されるモノマーと、後述する一般式(4)で示されるイオン交換基を実質的に有しないポリマーとを縮合反応により重合することにより製造し得る。
Q−Ar11−Q (1−i)
式(1−i)中、Ar11は、イオン交換基を導入することにより、上記式(1−h)のAr10となり得るアリーレン基を表し、それぞれのQは上記と同義であり、2つのQは同一でも異なっていてもよい。
【0056】
式(1−i)で表されるモノマーと、例えば、イオン交換基を実質的に有しないブロックとして好ましい、式(4)で示されるイオン交換基を実質的に有しないポリマーとを縮合反応によりを共重合せしめ、下記式(1−j)で表される構造単位と、上記式(2)で表される構造単位とをともに有するポリアリーレン系ブロック共重合体前駆体を得、当該ポリアリーレン系ブロック共重合体前駆体の式(1−j)で表される構造単位における主鎖を構成する芳香族環にイオン交換基を導入するといった一連の操作によって、本発明のポリマーを製造することができる。


式(1−j)中、Ar12はイオン交換基を導入することで、上記式(1)のArとなり得るアリーレン基を表す。
【0057】
Ar11及びAr12はそれぞれ少なくとも一つのイオン交換基を導入可能な構造を有する。Ar11及びAr12それぞれにおけるイオン交換基を導入可能な構造としては、芳香族環に直接結合している水素原子等、イオン交換基を導入可能な官能基を有していることを示す。求電子置換反応によってスルホ基を芳香族環に導入する場合は、芳香族環に結合している水素原子はスルホ基を導入可能な官能基と見なすことができる。なお、式(1−i)で表されるモノマーの具体例としては、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロ−4−メトキシベンゼン、1,4−ジクロロ−3−メトキシベンゼン、4,4’−ジクロロビフェニル、4,4’−ジクロロ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジクロロ−3,3’−ジメトキシビフェニル、1,4−ジクロロナフタレン、1,5−ジクロロナフタレン、2,6−ジクロロナフタレン、2,7−ジクロロナフタレンが挙げられる。また、これらのモノマー中の塩素原子の代わりに臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基が置換されたモノマーも使用することができる。
【0058】
式(1−j)で表される構造単位に好ましいイオン交換基であるスルホ基を導入する方法としては、得られたポリアリーレン系ブロック共重合体前駆体を濃硫酸に溶解あるいは分散することにより、あるいは有機溶媒に少なくとも部分的に溶解させた後、濃硫酸、クロロ硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄などを作用させることにより、水素原子をスルホ基に変換する方法を挙げることができる。
【0059】
上記イオン交換基を実質的に有しないポリマーとしては、下記式(4)で表されるポリマーであることが好ましく用いられる。

【0060】
式(4)中、Ar21は、主鎖に−O−で示される基及び/又は−S−で示される基を有しない芳香族基を表す。すなわち、芳香族基1つと主鎖に存在する−O−で示される基又は−S−で示される基1つとの組合せで、1つの構造単位とみる。なお、複数あるAr21は、互いに同一でも異なってもよい。該芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を置換基として有していてもよい。X11は−O−で示される基又は−S−で示される基を表す。複数あるX11は、互いに同一でも異なってもよい。Yは脱離基を表す。但し、2つのYは同一でも異なってもよい。qは4以上の整数を表す。ここで、Ar21で表される芳香族基の好ましい例としては、上記Arと同等の基を挙げることができる。また、Ar21は、Arと同等の基で置換されていてもよい。
【0061】
式(4)におけるqとしては、4以上の整数である。qは、高分子電解質膜とした際の高温高湿条件下での形体安定性を向上させるために、好ましくは、7以上であり、より好ましくは10以上である。また、同様の理由から、70以下が好ましく、50以下がより好ましく、30以下がさらに好ましく、25以下が特に好ましい。
【0062】
式(4)におけるYは脱離基、すなわち縮合反応時に脱離する基を表すが、その具体例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基が挙げられる。
【0063】
式(4)で表されるポリマーの好ましい例としては、下記式で表されるポリマーが挙げられる。中でも、(df)、(dk)、(dn)、(dp)、(dr)、(dt)、(du)が好ましく、(dk)、(dn)、(dp)、(dt)、(du)が特に好ましく、(dk)、(dp)、(du)がさらに好ましい。このようなポリマーは製造が容易であり、また、工業的に容易に入手できる原料を用いて製造できるため好ましい。下記式においてbはモル組成比を表し、bは0.50以上が好ましい。また、bは0.90以下が好ましく、0.70以下がより好ましく、0.60以下がさらに好ましい。特に好ましくは、bは0.50である。bは、上記イオン交換基を実質的に有しないポリマーを製造する際の、モノマー比によって制御される。また、qは上記と同義である。
【0064】

【0065】
本発明における、イオン交換基を実質的に有しないポリマーのポリスチレン換算の重量平均分子量としては、8000〜50000であり、9000〜30000が好ましく、10000〜20000がより好ましい。ポリスチレン換算の重量平均分子量が8000より低い、又は、50000より高いと、高分子電解質膜として用いた際の高温高湿条件下での形体安定性が低下する傾向がある。該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0066】
次に、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体を製造するための重合反応(縮合反応)について説明する。なお、以下の製造方法の説明において、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体及び本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体を製造可能なポリアリーレン系ブロック共重合体前駆体をあわせて「ポリマー等」ということがある。
【0067】
縮合反応による重合は、ゼロ価遷移金属錯体の共存下に実施される。上記ゼロ価遷移金属錯体は遷移金属にハロゲンや後述の配位子が配位したものであり、後述の配位子を少なくとも一種類有するものが好ましい。ゼロ価遷移金属錯体は市販品でも別途合成したものでもいずれも使用できる。
【0068】
ゼロ価遷移金属錯体の合成方法は、例えば遷移金属塩や遷移金属酸化物と配位子とを反応させる方法や、遷移金属化合物を亜鉛やマグネシウムなどの還元剤でゼロ価とする方法等の公知の方法が挙げられる。合成したゼロ価遷移金属錯体は、合成系から取り出して使用してもよいし、合成系から取り出すことなく、in situで使用してもよい。
【0069】
配位子としては、例えば、アセテート、アセチルアセトナート、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、メチレンビスオキサゾリン、N,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェノキシホスフィン、1,2−ビスジフェニルホスフィノエタン、1,3−ビスジフェニルホスフィノプロパンが挙げられる。
【0070】
ゼロ価遷移金属錯体としては、例えば、ゼロ価ニッケル錯体、ゼロ価パラジウム錯体、ゼロ価白金錯体、ゼロ価銅錯体が挙げられる。これら遷移金属錯体の中でもゼロ価ニッケル錯体、ゼロ価パラジウム錯体が好ましく用いられ、ゼロ価ニッケル錯体がより好ましく用いられる。
【0071】
ゼロ価ニッケル錯体としては、例えば、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルが挙げられる。中でも、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)が、反応性、得られるポリマー等の収率、得られるポリマー等の高分子量化という観点から好ましく使用される。ゼロ価パラジウム錯体としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。
【0072】
これらゼロ価遷移金属錯体としては、上記のように合成したものを用いてもよいし、入手した市販品を用いてもよい。
【0073】
還元剤により、遷移金属化合物からゼロ価遷移金属錯体を発生させる場合、使用される遷移金属化合物としては、ゼロ価の遷移金属化合物を用いることもできるが、通常2価のものを用いることが好ましい。中でも2価ニッケル化合物及び、2価パラジウム化合物が好ましい。2価ニッケル化合物としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセテート、ニッケルアセチルアセトナート、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)が挙げられる。2価パラジウム化合物としては、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、パラジウムアセテートが挙げられる。
【0074】
還元剤としては、例えば、亜鉛、マグネシウム、水素化ナトリウム、ヒドラジン及びその誘導体、リチウムアルミニウムヒドリドが挙げられる。必要に応じて、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化トリメチルアンモニウム、ヨウ化トリエチルアンモニウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどのヨウ素化合物を併用することもできる。
【0075】

ゼロ価遷移金属の錯体を用いる縮合反応の際、得られるポリマー等の収率向上の観点から、配位子として該ゼロ価遷移金属と共に錯体を形成し得る化合物を反応系に添加することが好ましい。添加する化合物は、使用するゼロ価遷移金属錯体の配位子と同じであっても異なっていてもよい。
該配位子となりうる化合物の例としては、前述の配位子の例として先に示した化合物が挙げられ、汎用性、経済性、反応性、得られるポリマー等の収率、得られるポリマー等の高分子量化の点でトリフェニルホスフィン及び2,2’−ビピリジルが好ましい。特に、2,2’−ビピリジルを用いると、ポリマー等の収率向上や高分子量化の点で特に有利である。
配位子の添加量は、ゼロ価遷移金属錯体にある遷移金属原子基準で、通常0.2〜10モル倍程度、好ましくは1〜5モル倍程度である。
【0076】
ゼロ価遷移金属錯体の使用量は、ポリマー等の製造に使用する、式(1−h)で示されるモノマー、式(1−i)で示されるモノマー及び式(4)で示されるポリマーの総モル量(以下、「全モノマーの総モル量」という。)に対して、0.1モル倍以上である。使用量が過少であると、生成するポリマー等の分子量が小さくなる傾向があるので、ゼロ価金属錯体は、好ましくは1.5モル倍以上、より好ましくは1.8モル倍以上、より一層好ましくは2.1モル倍以上用いる。一方、使用量の上限は特に制限はないが、使用量が多すぎると後処理が煩雑になることがあるので、5.0モル倍以下であることが好ましい。
【0077】
なお、還元剤を用いて遷移金属化合物からゼロ価遷移金属錯体を合成する場合、生成するゼロ価遷移金属錯体の物質量が上記範囲となるように、遷移金属化合物及び還元剤の使用量等を設定すればよく、例えば、遷移金属化合物の量を、縮合反応に関わるモノマー及び前駆体の総モル量に対して、0.01モル倍以上、好ましくは0.03モル倍以上とすればよい。ゼロ価遷移金属錯体の使用量の上限は限定的ではないが、使用量が多すぎると後処理が煩雑になる傾向があるために、5.0モル倍以下であることが好ましい。また、還元剤の使用量は、縮合反応に関わるモノマー及び前駆体の総モル量に対して、例えば、0.5モル倍以上、好ましくは1.0モル倍以上とすればよい。還元剤の使用量の上限は限定されないが、使用量が多すぎると後処理が煩雑になる傾向があるために、10モル倍以下であることが好ましい。
【0078】
また、縮合反応の反応温度は、通常0℃〜200℃程度であり、好ましくは10℃〜100℃程度である。反応時間は、通常0.5〜48時間程度である。
【0079】
ゼロ価遷移金属錯体と、ポリマー等の製造に使用する、式(1−h)で示されるモノマー及び/又は式(1−i)で示されるモノマーと、式(4)で表されるポリマーとを混合する方法は、ゼロ価遷移金属錯体を基質に加える方法であっても、ゼロ価遷移金属錯体と基質とを反応容器に同時に加える方法であってもよい。加えるに当っては、一挙に加えてもよいが、発熱を考慮して少量ずつ加えることが好ましいし、溶媒の共存下に加えることも好ましく、この場合の好適な溶媒は後述する。
【0080】
縮合反応は、通常、溶媒存在下に実施される。かかる溶媒としては、例えばN、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼン、n−ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル系溶媒;クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒が例示される。なお、括弧内の表記は溶媒の略号を示すものであり、以下の説明において、この略号を用いることもある。
【0081】
生成するポリマー等の分子量をより高くするためには、ポリマー等が十分に溶解する溶媒を用いることが望ましいので、生成するポリマー等に対する良溶媒であるテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、DMF、DMAc、NMP、DMSO、トルエンの使用が好ましい。これらは2種以上を混合して用いることもできる。中でも、DMF、DMAc、NMP及びDMSOからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒、又はこれらから選ばれる2種以上の溶媒の混合物が好ましく用いられる。
【0082】
溶媒量は、特に限定されないが、反応系があまりにも低濃度では、生成したポリマー等を回収しにくくなることもあり、また、反応系があまりにも高濃度では、攪拌が困難になることがあることから、溶媒と、ポリマー等の製造に使用するモノマー類(式(1−h)で示されるモノマー、式(1−i)で示されるモノマー及び式(4)で示されるポリマーから選ばれるモノマー類)に対して1重量倍〜999重量倍、より好ましくは、3重量倍〜199重量倍となるようにして、溶媒の使用量を決定する。
【0083】
かくしてポリマー等が得られるが、生成したポリマー等は、常法により反応混合物から取り出すことができる。例えば、貧溶媒を加えることでポリマー等を析出させ、濾過などにより目的物を取り出すことができる。また、必要に応じて、更に水洗や、良溶媒と貧溶媒を用いての再沈殿など、通常の精製方法により精製することもできる。
【0084】
また、イオン交換前駆基を有するプレポリマーを得た場合も、燃料電池に係る部材として使用するために、イオン交換前駆基を、遊離酸の形態のイオン交換基にすることが必要である。エステル、又はアミドを形成してイオン交換基が保護されているような形態の、イオン交換前駆基の、遊離酸の形態のイオン交換基への変換は、酸又は塩基による加水分解や、ハロゲン化物による脱保護反応により可能である。なお、塩基を使用した場合は、上述したような酸性溶液の洗浄を行えば、遊離酸の形態のイオン交換基にすることが可能である。使用される酸又は塩基としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。使用されるハロゲン化物としては、例えば、臭化リチウム、ヨウ化ナトリウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウムが挙げられ、好ましくは臭化リチウムと臭化テトラブチルアンモニウムである。イオン交換基への変換率は、例えば、スルホ基の場合、赤外線吸収スペクトルや核磁気共鳴スペクトルによって求められる、スルホン酸エステル又はスルホンアミドに特徴的なピークから定量することができる。
【0085】
ポリアリーレン系ブロック共重合体全体のイオン交換基の導入量は、イオン交換容量で表して、3.0meq/g以上であり、好ましくは3.5meq/g以上、より好ましく、4.0meq/g以上、さらに好ましくは4.4meq/g以上、特に好ましくは4.7meq/g以上である。また、6.5meq/g以下が好ましく、6.0meq/g以下がより好ましく、5.5meq/g以下がさらに好ましく、5.3meq/g以下が特に好ましい。該イオン交換基導入量を示すイオン交換容量が3.0meq/g以上であると、プロトン伝導性がより高くなり、燃料電池用の高分子電解質としての機能がより優れるので好ましい。一方、イオン交換基導入量を示すイオン交換容量が6.5meq/g以下であると、耐水性がより良好となるので好ましい。該イオン交換容量は、酸塩基滴定により測定される。
【0086】
また、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体は、分子量が、ポリスチレン換算の重量平均分子量で表して、100000〜2000000であることが好ましく、中でも150000〜1500000であることがより好ましく、200000〜1000000であることが特に好ましい。該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0087】
本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体は、いずれも燃料電池用の部材として好適に用いることができる。本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体は、燃料電池等の電気化学デバイスの高分子電解質として好ましく使用され、高分子電解質膜として、特に好ましく使用される。なお、以下の説明においては、上記高分子電解質膜の場合を主として説明する。
【0088】
この場合は、本発明の高分子電解質を膜の形態へ転化する。この方法(製膜法)には特に制限はないが、溶液状態より製膜する方法(溶液キャスト法)を用いて製膜することが好ましい。溶液キャスト法は、高分子電解質膜製造として当業分野で、これまで広範に使用されている方法であり、工業的に特に有用である。
【0089】
具体的には、本発明の高分子電解質を適当な溶媒に溶かして高分子電解質溶液を調製し、該高分子電解質溶液を支持基材上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜される。かかる支持基材としては、例えば、ガラス板や、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)等のプラスチックフィルムが挙げられる。
【0090】
溶液キャスト法に使用する溶媒(キャスト溶媒)は、本発明の高分子電解質を十分溶解可能であり、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、NMP、DMAc、DMF、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、DMSO等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好適に用いられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。中でも、NMP、DMAc、DMF、DMIは、本発明の高分子電解質の溶解性が高く、また、耐水性の高い高分子電解質膜が得られるため好ましい。
【0091】
このようにして得られる高分子電解質膜の厚みは、特に制限はないが、燃料電池用高分子電解質膜(隔膜)としての実用的な範囲である5〜300μmが好ましい。膜厚が5μm以上の膜では実用的な強度が優れるため好ましく、300μm以下の膜では膜抵抗自体が小さくなる傾向があるので好ましい。膜厚は、上記溶液の重量濃度及び支持基材上の塗膜の塗布厚により制御できる。
【0092】
また、膜の各種物性改良を目的として、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤等の添加剤を本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体に添加して、高分子電解質を調製してもよい。また、同一溶剤に混合共キャストする等の方法により、他のポリマーを本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体とアロイ化して高分子電解質を調製することも可能である。このように、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体と、添加剤及び/又は他のポリマーとを組み合わせて高分子電解質を調製する場合には、該高分子電解質を燃料電池用部材に適用したときに、所望の特性が得られるようにして、添加剤及び/又は他のポリマーの種類や使用量を決定する。
【0093】
さらに燃料電池用途においては水管理を容易にするために、無機又は有機の微粒子を保水剤として添加することも知られている。これらの公知の方法はいずれも本発明の目的に反しない限り使用できる。また、このようにして得られた高分子電解質膜に関し、その機械的強度向上等を目的として、電子線・放射線等を照射するといった処理を施してもよい。
【0094】
また、本発明の高分子電解質を含有する高分子電解質膜の強度や柔軟性、耐久性のさらなる向上のために、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体を含む高分子電解質を多孔質基材に含浸させ複合化することにより、高分子電解質複合膜(以下、「複合膜」という。)とすることも可能である。複合化方法は公知の方法を使用し得る。
【0095】
多孔質基材としては、上述の使用目的を満たすものであれば特に制限は無く、例えば多孔質膜、織布、不織布等が挙げられ、上述の使用目的にかなうものであれば、その形状や材質によらず用いることができる。多孔質基材の材質としては、耐熱性の観点や、物理的強度の補強効果を考慮すると、脂肪族系高分子、芳香族系高分子が好ましい。
【0096】
本発明の高分子電解質と多孔質基材とからなる複合膜を、高分子電解質膜として使用する場合、多孔質基材の膜厚は、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは3〜30μm、特に好ましくは5〜20μmである。多孔質基材の細孔の孔径は、好ましくは0.01〜100μm、さらに好ましくは0.02〜10μmである。多孔質基材の空隙率は、好ましくは20〜98%、さらに好ましくは40〜95%である。
【0097】
多孔質基材の膜厚が1μm以上であると、複合化後の強度補強の効果あるいは、柔軟性や耐久性を付与するといった補強効果がより優れ、ガス漏れ(クロスリーク)が発生しにくくなる。また、該膜厚が100μm以下であると、電気抵抗がより低くなり、得られた複合膜が燃料電池用高分子電解質膜として、より優れたものとなる。該孔径が0.01μm以上であると、本発明のポリマーの充填がより容易となり、100μm以下であると、補強効果がより大きくなる。空隙率が20%以上であると、高分子電解質膜としての抵抗がより小さくなり、98%以下であると、多孔質基材自体の強度がより大きくなり補強効果がより向上するので好ましい。
【0098】
また、本発明の高分子電解質多孔質基材とからなる複合膜と、本発明の高分子電解質を含有する高分子電解質膜とを積層した積層膜をプロトン伝導膜として用いることもできる。
【0099】
次に本発明の燃料電池について説明する。
燃料電池の基本的な単位となる、本発明の膜電極接合体(以下、「MEA」ということがある。)は、本発明の高分子電解質膜、本発明の高分子電解質複合膜、及び、本発明の高分子電解質と、触媒成分とを含む触媒組成物から選ばれる少なくとも1種を用いて製造することができる。
ここで触媒成分としては、水素又は酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、白金又は白金系合金の微粒子を触媒成分として用いることが好ましい。白金又は白金系合金の微粒子はしばしば活性炭や黒鉛などの粒子状又は繊維状のカーボンに担持されて用いられることもある。
カーボンに担持された白金又は白金系合金(カーボン担持触媒)を、本発明の高分子電解質の溶液及び/又は高分子電解質としてのパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂のアルコール溶液と共に混合してペースト化した触媒組成物を、ガス拡散層及び/又は高分子電解質膜及び/又は高分子電解質複合膜に塗布・乾燥することにより触媒層が得られる。具体的な方法としては例えば、J. Electrochem. Soc.: Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209 に記載されている方法等の公知の方法を用いることができる。このようにして、高分子電解質膜の両面に触媒層を形成することで、MEAが得られる。なお、該MEAの製造において、ガス拡散層となる基材上に触媒層を形成した場合は、得られるMEAは高分子電解質膜の両面にガス拡散層と触媒層とをともに備えた膜−電極−ガス拡散層接合体の形態で得られる。また、ペースト化した触媒組成物を高分子電解質膜に塗布して高分子電解質膜上に触媒層を形成させた場合は、得られた触媒層上にさらにガス拡散層を形成させることで、膜−電極−ガス拡散層接合体が得られる。
ガス拡散層には公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン織布、カーボン不織布又はカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
このようにして製造されたMEAを備えた燃料電池は、燃料として水素ガス又は改質水素ガスを使用する形式はもとより、メタノールを用いる各種の形式で使用可能である。
【実施例】
【0100】
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。
【0101】
分子量の測定:
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記条件でポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を測定した。なお、GPCの分析条件としては、下記の条件を用いた。
GPC測定装置 島津製作所社製 Prominence GPCシステム
カラム 東ソー社製 TSKgel GMHHR−M
カラム温度 40℃
移動相溶媒 DMF(LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
溶媒流量 0.5mL/min
検出 示差屈折率
【0102】
イオン交換基を有するブロックのポリスチレン換算の重量平均分子量の測定:
イオン交換基を有するブロックのポリスチレン換算の重量平均分子量(イオン交換基を有するブロックMw)は、高分子電解質膜を4mgに対して、DMSOを8mL、25重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含むメタノール溶液10μLを混合し、生じた混合物を100℃にて2時間加熱し、得られた高分子電解質溶液をGPCで測定して求めた。なお、GPCの分析条件は上記分子量の測定と同一である。
【0103】
イオン交換容量(IEC)の測定:
測定に供するポリマーを溶液キャスト法により製膜してポリマー膜を得、得られたポリマー膜を適当な重量になるように裁断した。裁断したポリマー膜の乾燥重量を加熱温度110℃に設定されたハロゲン水分率計を用いて測定した。次いで、このようにして乾燥させたポリマー膜を0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液5mLに浸漬した後、更に50mLのイオン交換水を加え、2時間放置した。その後、ポリマー膜が浸漬された溶液に、0.1mol/Lの塩酸を徐々に加えることで滴定を行い、中和点を求めた。そして、裁断したポリマー膜の乾燥重量と中和に要した塩酸の量から、ポリマーのイオン交換容量(単位:meq/g)を算出した。
【0104】
プロトン伝導度の測定:
プロトン伝導度は交流法で測定した。1cm2の開口部を有するシリコンゴム(厚さ200μm)の片面にカーボン電極を貼った測定用セルを2つ準備し、これらをカーボン電極同士が対向するように配置し、前記2つのセルに直接インピーダンス測定装置の端子を接続した。
次いで、この2つの測定用セルの間に、上記方法で得られたイオン交換基をプロトン型に変換した高分子電解質膜をセットして、測定温度23℃で、2つの測定用セル間の抵抗値を測定した。
その後、高分子電解質膜を除いて再度抵抗値を測定した。そして、高分子電解質膜を有する状態と有しない状態とで得られた2つの抵抗値の差に基づいて、高分子電解質膜の膜厚方向の膜抵抗を算出した。得られた膜抵抗の値と膜厚から、高分子電解質膜の膜厚方向のプロトン伝導度を算出した。なお、高分子電解質膜の両側に接触させる溶液としては、1mol/Lの希硫酸を用いた。
【0105】
熱水耐性試験:
(条件1)
縦5cm×横5cmに裁断した高分子電解質膜の乾燥重量を加熱温度110℃に設定されたハロゲン水分率計を用いて測定した。次いで、このようにして乾燥させた膜をイオン交換水に浸漬し、168時間、100℃で保温した。浸漬後の高分子電解質膜の乾燥重量を加熱温度110℃に設定されたハロゲン水分率計を用いて測定し、熱水耐性試験重量維持率を求めた。
熱水耐性試験重量維持率は下式より求められる。
熱水耐性試験重量維持率(%)=(浸漬後の高分子電解質膜の乾燥重量/浸漬前の高分子電解質膜の乾燥重量)×100
(条件2)
縦5cm×横5cmに裁断した高分子電解質膜の乾燥重量を加熱温度110℃に設定されたハロゲン水分率計を用いて測定した。次いで、このようにして乾燥させた膜をイオン交換水に浸漬し、20時間、100℃で保温した。浸漬後の高分子電解質膜の乾燥重量を加熱温度110℃に設定されたハロゲン水分率計を用いて測定し、熱水耐性試験重量維持率を求めた。
熱水耐性試験重量維持率は下式より求められる。
熱水耐性試験重量維持率(%)=(浸漬後の高分子電解質膜の乾燥重量/浸漬前の高分子電解質膜の乾燥重量)×100
【0106】
<合成例1>
下記構造式(A)で示される、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)を、特開2007−270118実施例1記載の方法により合成した。

【0107】
<実施例1>
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、アルゴン雰囲気下、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン15.5g(44.1mmol)、炭酸カリウム9.15g(66.2mmol)、N−メチルピロリドン69g、トルエン34gを加えた。バス温160℃で3時間トルエンを加熱還流することで系内の水分を共沸脱水した。生成した水とトルエンを留去した後、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン14.0g(48.8mmol)を加えて混合物を得た。バス温を180℃に上げ、15時間保温下に前期混合物を攪拌した。放冷後、反応液を、メタノール481gと35重量%塩酸481gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥した。得られた粗生成物をテトラヒドロフラン69gに溶解し、生じた混合物をメタノール962gに加え、析出した沈殿を濾過により捕集し、乾燥し下記式(B)で表されるポリマー24.0gを得た。
GPC分子量: Mn=7500、Mw=13800

(nは繰り返し単位数を表す。)
【0108】
次に、アルゴン雰囲気下、フラスコに無水臭化ニッケル1.68g(7.70mmol)、N−メチルピロリドン121gを加え、生じた混合物をバス温70℃で攪拌した。無水臭化ニッケルが溶解したのを確認した後、バス温を50℃に下げ、2,2’−ビピリジル1.44g(9.24mmol)を加え、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに上記式(B)で表されるポリマー1.48g、N−メチルピロリドン264gを加え50℃に調整した。得られた溶液に、亜鉛粉末3.03g(46.3mmol)、メタンスルホン酸1重量部とN−メチルピロリドン9重量部との混合溶液0.84g、及び、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)20.0g(38.2mmol)を加え、生じた混合物を50℃で30分間攪拌した。これに、前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、50℃で6時間重合反応を行い、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、6mol/L塩酸2000gに投入し、室温で30分間攪拌した。生じた沈殿を濾過により捕集した後、これを6mol/L塩酸1000gに加え、室温で30分間攪拌し、その後、濾過した。捕集された固体を、イオン交換水で濾液のpHが4を越えるまで洗浄した。得られた粗ポリマーに、イオン交換水450gと、メタノール500gを加え、バス温90℃で1時間加熱攪拌した。粗ポリマーをろ過し、乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマー(C)18.3gを得た。
【0109】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー(C)18.3g、イオン交換水37.5g、無水臭化リチウム13.3g(153mmol)及びN−メチルピロリドン378gをフラスコに入れ、生じた混合物をバス温126℃で12時間加熱攪拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を6mol/L塩酸2627gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過により捕集し、メタノール10重量部と6mol/L塩酸10重量部との混合溶液1876gで洗浄する操作を3回繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまで粗ポリマーをイオン交換水で洗浄した。続いて、得られたポリマーに大量のイオン交換水を加え、90℃以上に昇温し、約10分間加熱保温し、濾過する洗浄操作を、2回繰り返した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式


で示される繰り返し単位と、下記式

(nは繰り返し単位数を表す。)

で示されるブロックとを含むブロック共重合体(D)8.97gを得た。
得られたブロック共重合体(D)1.0gをN―メチルピロリドン32gに溶解し、ポリマー溶液を調製した。その後、得られたポリマー溶液をPETフィルム上に流延塗布し、常圧下、80℃で10時間乾燥させる事により溶媒を除去した後、6重量%塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約13μmの高分子電解質膜を作製した。

イオン交換基を有するブロックMw: 440000
イオン交換基を実質的に有しないポリマー(B)Mw:13800
ブロック共重合体(D)Mw: 1076000
ブロック共重合体(D)IEC(meq/g): 5.2
プロトン伝導度(S/cm): 0.16
熱水耐性試験重量維持率(条件1): 98%
【0110】
<実施例2>
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、アルゴン雰囲気下、4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル8.21g(44.1mmol)、炭酸カリウム9.15g(66.2mmol)、N−メチルピロリドン52g、トルエン26gを加えた。バス温160℃で3時間トルエンを加熱還流することで系内の水分を共沸脱水した。生成した水とトルエンを留去した後、得られた混合物を室温まで放冷し、これに4,4’−ジクロロジフェニルスルホン14.0g(48.8mmol)を加えて混合物を得た。バス温を180℃に上げ、15時間保温下に前記混合物を攪拌した。放冷後、反応液を、メタノール363gと35重量%塩酸363gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥した。得られた粗生成物をテトラヒドロフラン52gに溶解し、不溶物を濾過により除去した後、濾液をメタノール726gに加え、析出した沈殿を濾過により捕集し、イオン交換水で洗浄し、乾燥し、下記式(E)で表されるポリマー18.3gを得た。
GPC分子量: Mn=8500、Mw=15600

(nは繰り返し単位数を表す。)
【0111】
次に、アルゴン雰囲気下、フラスコに無水臭化ニッケル3.35g(15.3mmol)、N−メチルピロリドン200gを加え、生じた混合物をバス温70℃で攪拌した。無水臭化ニッケルが溶解したのを確認した後、バス温を50℃に下げ、2,2’−ビピリジル2.87g(18.4mmol)を加え、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに上記式(E)で表されるポリマー1.96g、N−メチルピロリドン240gを加え50℃に調整した。得られた溶液に、亜鉛粉末3.01g(46.0mmol)、メタンスルホン酸1重量とN−メチルピロリドン9重量部との混合溶液0.85g、及び、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)20.0g(38.2mmol)を加え、生じた混合物を50℃で30分間攪拌した。これに、前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、50℃で5時間重合反応を行い、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、6mol/L塩酸2800gに投入し、室温で30分間攪拌した。生じた沈殿を濾過により捕集した後、これを6mol/L塩酸2800gに加え、室温で30分間攪拌し、その後、濾過した。捕集された固体をイオン交換水で濾液のpHが4を越えるまで洗浄した。得られた粗ポリマーに、イオン交換水600gと、メタノール700gを加え、バス温90℃で1時間加熱攪拌した。粗ポリマーをろ過し、乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマー(F)18.6gを得た。
【0112】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー(F)18.6g、イオン交換水69.8g、無水臭化リチウム13.0g(150mmol)及びN−メチルピロリドン774gをフラスコに入れ、生じた混合物をバス温126℃で12時間加熱攪拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を6mol/L塩酸2751gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過により捕集し、メタノール10重量部と6mol/L塩酸10重量部との混合溶液983gで洗浄する操作を3回繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまで粗ポリマーをイオン交換水で洗浄した。続いて、得られたポリマーに大量のイオン交換水を加え、90℃以上に昇温し、約10分間加熱保温し、濾過する洗浄操作を、4回繰り返した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式


で示される繰り返し単位と、下記式

(nは繰り返し単位数を表す。)

で示されるブロックとを含むブロック共重合体(G)12.3gを得た。
得られたブロック共重合体(G)1.0gをジメチルスルホキシドに溶解し、ポリマー溶液を調製した。その後、得られたポリマー溶液をPETフィルム上に流延塗布し、常圧下、80℃で10時間乾燥させる事により溶媒を除去した後、6重量%塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約16μmの高分子電解質膜を作製した。

イオン交換基を有するブロックMw: 388000
イオン交換基を実質的に有しないポリマー(E)Mw:15600
ブロック共重合体(G)Mw: 1178000
ブロック共重合体(G)IEC(meq/g): 4.9
プロトン伝導度(S/cm): 0.19
熱水耐性試験重量維持率(条件1): 100%
【0113】
<実施例3>
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、アルゴン雰囲気下、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル17.1g(50.4mmol)、炭酸カリウム7.66g(55.5mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド99g、トルエン50gを加えた。バス温155℃で3時間トルエンを加熱還流することで系内の水分を共沸脱水した。生成した水とトルエンを留去した後、得られた混合物を室温まで放冷し、これに4,4’−ジクロロジフェニルスルホン16.0g(55.7mmol)を加えて混合物を得た。バス温を165℃に上げ、14時間保温下に前記混合物を攪拌した。放冷後、反応液を、メタノール920gと35重量%塩酸90gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥した。得られた粗生成物をN,N−ジメチルホルムアミド112gに溶解し、メタノール920gと35重量%塩酸90gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集し、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥し下記式(H)で表されるポリマー28.4gを得た。
GPC分子量: Mn=8200、Mw=15500

(nは繰り返し単位数を表す。)
【0114】
次に、アルゴン雰囲気下、フラスコに無水臭化ニッケル1.52g(6.97mmol)、N−メチルピロリドン90gを加え、生じた混合物をバス温70℃で攪拌した。無水臭化ニッケルが溶解したのを確認した後、バス温を50℃に下げ、2,2’−ビピリジル1.31g(8.36mmol)を加え、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに上記式(H)で表されるポリマー1.76g、N−メチルピロリドン252gを加え50℃に調整した。得られた溶液に、亜鉛粉末2.73g(41.8mmol)、メタンスルホン酸1重量とN−メチルピロリドン9重量部との混合溶液0.76g、及び、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)18.0g(34.4mmol)を加え、生じた混合物を50℃で30分間攪拌した。これに、前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、50℃で6時間重合反応を行い、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、6mol/L塩酸2520gに投入し、室温で30分間攪拌した。生じた沈殿を濾過により捕集した後、これを6mol/L塩酸2520gを加え、室温で30分間攪拌し、その後、濾過した。捕集された固体をイオン交換水で濾液のpHが4を越えるまで洗浄した。得られた粗ポリマーに、イオン交換水630gと、メタノール594gを加え、バス温90℃で1時間加熱攪拌した。粗ポリマーをろ過し、乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマー(I)17.2gを得た。
【0115】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー(I)17.2g、イオン交換水34.4g、無水臭化リチウム11.9g(138mmol)及びN−メチルピロリドン344gをフラスコに入れ、生じた混合物をバス温126℃で17時間加熱攪拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を6mol/L塩酸2408gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過により捕集し、メタノール10重量部と35重量%塩酸10重量部との混合溶液1720gで洗浄する操作を3回繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまで粗ポリマーをイオン交換水で洗浄した。続いて、得られたポリマーに大量のイオン交換水を加え、90℃以上に昇温し、約10分間加熱保温し濾過する洗浄操作を、5回繰り返した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式


で示される繰り返し単位と、下記式

(nは繰り返し単位数を表す。)

で示されるブロックとを含むブロック共重合体(J)9.13gを得た。
得られたブロック共重合体(J)1.0gをN−メチルピロリドンに溶解し、ポリマー溶液を調製した。その後、得られたポリマー溶液をPETフィルム上に流延塗布し、常圧下、80℃で10時間乾燥させる事により溶媒を除去した後、6重量%塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約15μmの高分子電解質膜を作製した。

イオン交換基を有するブロックMw: 466000
イオン交換基を実質的に有しないポリマー(H)Mw:15500
ブロック共重合体(J)Mw: 835000
ブロック共重合体(J)IEC(meq/g): 5.0
プロトン伝導度(S/cm): 0.16
熱水耐性試験重量維持率(条件1): 100%
【0116】
<比較例1>
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、アルゴン雰囲気下、4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル8.11g(43.5mmol)、炭酸カリウム6.62g(47.9mmol)、N−メチルピロリドン99g、トルエン50gを加えた。バス温160℃で3時間トルエンを加熱還流することで系内の水分を共沸脱水した。生成した水とトルエンを留去した後、得られた混合物を室温まで放冷し、これに4,4’−ジクロロジフェニルスルホン25.0g(87.1mmol)を加えて混合物を得た。バス温を180℃に上げ、8時間保温下に前記混合物を攪拌した。放冷後、反応液を、メタノール920gと35重量%塩酸90gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥した。得られた粗生成物をN−メチルピロリドン64gに溶解し、不溶物を濾過により除去した後、濾液をメタノール920gと35重量%塩酸90gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集し、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥し下記式(K)で表されるポリマー25.3gを得た。
GPC分子量: Mn=860、Mw=1200

(nは繰り返し単位数を表す。)
【0117】
次に、アルゴン雰囲気下、フラスコに無水臭化ニッケル1.41g(6.45mmol)、N−メチルピロリドン60gを加え、生じた混合物をバス温70℃で攪拌した。無水臭化ニッケルが溶解したのを確認した後、バス温を50℃に下げ、2,2’−ビピリジル1.21g(7.74mmol)を加え、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに上記式(K)で表されるポリマー2.51g、N−メチルピロリドン240gを加え50℃に調整した。得られた溶液に、亜鉛粉末2.53g(38.7mmol)、メタンスルホン酸1重量とN−メチルピロリドン9重量部との混合溶液0.46g、及び、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)15.0g(38.2mmol)を加え、生じた混合物を50℃で30分間攪拌した。これに、前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、50℃で6時間重合反応を行い、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、6mol/L塩酸2100gに投入し、室温で30分間攪拌した。生じた沈殿を濾過により捕集した後、これを6mol/L塩酸2100gを加え、室温で30分間攪拌し、その後、濾過した。捕集された固体をイオン交換水で濾液のpHが4を越えるまで洗浄した。得られた粗ポリマーに、イオン交換水525gと、メタノール495gを加え、バス温90℃で1時間加熱攪拌した。粗ポリマーをろ過し、乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマー(L)14.8gを得た。
【0118】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー(L)14.8g、イオン交換水22.1g、無水臭化リチウム9.95g(115mmol)及びN−メチルピロリドン221gをフラスコに入れ、生じた混合物をバス温126℃で13時間加熱攪拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を6mol/L塩酸2066gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過により捕集し、メタノール10重量部と35重量%塩酸10重量部との混合溶液1476gで洗浄する操作を3回繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまで粗ポリマーをイオン交換水で洗浄した。続いて、得られたポリマーに大量のイオン交換水を加え、90℃以上に昇温し、約10分間加熱保温し濾過する洗浄操作を行った。得られたポリマーを乾燥することにより下記式


で示される繰り返し単位と、下記式

(nは繰り返し単位数を表す。)

で示されるブロックとを含むブロック共重合体(M)10.8gを得た。
得られたブロック共重合体(M)1.0gをN−メチルピロリドンに溶解し、ポリマー溶液を調製した。その後、得られたポリマー溶液をPETフィルム上に流延塗布し、常圧下、80℃で10時間乾燥させる事により溶媒を除去した後、6重量%塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約26μmの高分子電解質膜を作製した。

イオン交換基を有するブロックMw: 46000
イオン交換基を実質的に有しないポリマー(K)Mw: 1200
ブロック共重合体(M)Mw: 608000
ブロック共重合体(M)IEC(meq/g): 4.7
プロトン伝導度(S/cm): 0.15
熱水耐性試験重量維持率(条件1): 0%
【0119】
<比較例2>
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、アルゴン雰囲気下、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン67.3g(200mmol)、4,4’−ジクロロベンゾフェノン60.3g(240mmol)、炭酸カリウム71.9g(520mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド300mL、トルエン150mLを加え、生じた混合物を140℃で8時間、生成した水とトルエンを留去しながら攪拌した。バス温を158℃に上げ、10時間保温下に混合物を攪拌した。放冷後、4,4’−ジクロロベンゾフェノン10.0g(40mmol)を加え、生じた混合物をバス温158℃でさらに10時間保温攪拌した。放冷後、N,N−ジメチルホルムアミド300mLを加え、濾過により不溶物を濾別した後、濾液をメタノール4000mLに加え、析出した沈殿を濾過により捕集した。得られた沈殿物にテトラヒドロフラン300mLを加え、溶解させた後、生じた混合物をメタノール4000mLに加え、析出した沈殿を濾過により捕集し、イオン交換水で洗浄し、乾燥し、下記式(N)で表されるポリマー109gを得た。
GPC分子量: Mn=3900、Mw=6600

(nは繰り返し単位数を表す。)
【0120】
次に、アルゴン雰囲気下、フラスコに無水臭化ニッケル1.70g(7.80mmol)、N−メチルピロリドン140gを加え、生じた混合物をバス温70℃で攪拌した。無水臭化ニッケルが溶解したのを確認した後、バス温を50℃に下げ、2,2’−ビピリジル1.46g(9.36mmol)を加え、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに上記式(N)で表されるポリマー1.96g、N−メチルピロリドン260gを加え50℃に調整した。得られた溶液に、亜鉛粉末3.06g(46.8mmol)、メタンスルホン酸1重量とN−メチルピロリドン9重量部との混合溶液0.45g、及び、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)20.0g(38.2mmol)を加え、50℃で30分間攪拌した。これに、前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、生じた混合物を50℃で6時間重合反応を行い、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、6mol/L塩酸2800gに投入し、室温で30分間攪拌した。生じた沈殿を濾過により捕集した後、これを6mol/L塩酸2800gを加え、室温で30分間攪拌し、その後、濾過した。捕集された固体を、イオン交換水で濾液のpHが4を越えるまで洗浄した。得られた粗ポリマーに、イオン交換水700gと、メタノール660gを加え、バス温90℃で1時間加熱攪拌した。粗ポリマーをろ過し、乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマー(O)18.7gを得た。
【0121】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー(O)18.7g、イオン交換水46.7g、無水臭化リチウム13.3g(153mmol)及びN−メチルピロリドン467gをフラスコに入れ、生じた混合物をバス温126℃で12時間加熱攪拌し、ポリマー溶液を得た。 得られたポリマー溶液を6mol/L塩酸2614gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過により捕集し、メタノール10重量部と35%塩酸10重量部との混合溶液1867gで洗浄する操作を3回繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまで粗ポリマーをイオン交換水で洗浄した。続いて、得られたポリマーに大量のイオン交換水を加え、90℃以上に昇温し、約10分間加熱保温し濾過する洗浄操作を、3回繰り返した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式


で示される繰り返し単位と、下記式

(nは繰り返し単位数を表す。)

で示されるブロックとを含むブロック共重合体(P)12.4gを得た。
得られたブロック共重合体(P)1.0gをジメチルスルホキシドに溶解し、ポリマー溶液を調製した。その後、得られたポリマー溶液をPETフィルム上に流延塗布し、常圧下、80℃で乾燥させる事により溶媒を除去した後、6重量%塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約21μmの高分子電解質膜を作製した。

イオン交換基を有するブロックMw: 344000
イオン交換基を実質的に有しないポリマー(N)Mw: 6600
ブロック共重合体(P)Mw: 983000
ブロック共重合体(P)IEC(meq/g): 5.1
プロトン伝導度(S/cm): 0.19
熱水耐性試験重量維持率(条件2): 0%
【0122】
<比較例3>
アルゴン雰囲気下、フラスコに無水臭化ニッケル1.91g(8.72mmol)、N−メチルピロリドン150gを加え、生じた混合物をバス温70℃で攪拌した。無水臭化ニッケルが溶解したのを確認した後、バス温を50℃に下げ、2,2’−ビピリジル1.43g(9.16mmol)を加え、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに比較例2に記載の上記式(N)で表されるポリマー6.77g、N−メチルピロリドン150gを加え50℃に調整した。得られた溶液に、亜鉛粉末2.14g(32.7mmol)、メタンスルホン酸1重量とN−メチルピロリドン9重量部との混合溶液0.25g、及び、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)10.0g(19.1mmol)を加え、生じた混合物を50℃で30分間攪拌した。これに、前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、50℃で5時間重合反応を行い、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、6mol/L塩酸1400gに投入し、室温で30分間攪拌した。生じた沈殿を濾過により捕集した後、これを6mol/L塩酸1400gに加え、室温で30分間攪拌し、その後、濾過した。捕集された固体を、イオン交換水で濾液のpHが4を越えるまで洗浄した。得られた粗ポリマーに、イオン交換水350gと、メタノール330gを加え、バス温90℃で1時間加熱攪拌した。粗ポリマーをろ過し、乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマー(Q)15.0gを得た。
【0123】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー(Q)15.0g、イオン交換水16.9g、無水臭化リチウム6.64g(76.4mmol)及びN−メチルピロリドン376gをフラスコに入れ、生じた混合物をバス温126℃で12時間加熱攪拌し、ポリマー溶液を得た。 得られたポリマー溶液を6mol/L塩酸2103gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過により捕集し、メタノール10重量部と35%塩酸10重量部との混合溶液1502gで洗浄する操作を3回繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまで粗ポリマーをイオン交換水で洗浄した。続いて、得られたポリマーに大量のイオン交換水を加え、90℃以上に昇温し、約10分間加熱保温し濾過する洗浄操作を、4回繰り返した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式


で示される繰り返し単位と、下記式

(nは繰り返し単位数を表す。)

で示されるブロックとを含むブロック共重合体(R)12.7gを得た。
得られたブロック共重合体(R)1.0gをジメチルスルホキシドに溶解し、ポリマー溶液を調製した。その後、得られたポリマー溶液をPETフィルム上に流延塗布し、常圧下、80℃で2時間乾燥させる事により溶媒を除去した後、6重量%塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約17μmの高分子電解質膜を作製した。

イオン交換基を有するブロックMw: 48000
イオン交換基を実質的に有しないポリマー(N)Mw: 6600
ブロック共重合体(R)Mw: 662000
ブロック共重合体(R)IEC(meq/g): 2.9
プロトン伝導度(S/cm): 0.12
【0124】
【表1】

【0125】
ポリスチレン換算の重量平均分子量が50000〜1000000であり、イオン交換基を有するブロックと、ポリスチレン換算の重量平均分子量が8000〜50000であり、イオン交換基を実質的に有しないポリマーから得られるイオン交換基を実質的に有しないブロックとを含むブロック共重合体であって、前記イオン交換基を有するブロックが、上記式(1)で表される構造単位を含み、前記イオン交換基を実質的に有しないブロックが、上記式(2)で表される構造単位を含み、且つ、ブロック共重合体のイオン交換容量が3.0meq/g以上であることを特徴とするポリアリーレン系ブロック共重合体は、高いプロトン伝導性を有しつつ、高温高湿条件下での優れた形体安定性を有する膜を提供できることが明らかとなった。本発明の高分子電解質は、発電特性に優れた燃料電池を提供できるため、工業的に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン換算の重量平均分子量が50000〜1000000であり、イオン交換基を有するブロックと、ポリスチレン換算の重量平均分子量が8000〜50000であり、イオン交換基を実質的に有しないポリマーから得られ、イオン交換基を実質的に有しないブロックとを含むブロック共重合体であって、
前記イオン交換基を有するブロックが、下記式(1)で表される構造単位を含み、
前記イオン交換基を実質的に有しないブロックが、下記式(2)で表される構造単位を含み、
且つ、ブロック共重合体のイオン交換容量が3.0meq/g以上であること、
を特徴とするポリアリーレン系ブロック共重合体。


(式(1)において、Ar1はアリーレン基を表し、Arは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基から選ばれる基を置換基として有していてもよい。Arは、少なくとも一つのイオン交換基を有する。複数あるAr1は、互いに同一でも異なってもよい。式(2)において、Ar2は芳香族基を表し、該芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基から選ばれる基を置換基として有していてもよい。複数あるArは、互いに同一でも異なってもよい。X1は−O−で示される基又は−S−で示される基を表す。複数あるX1は、互いに同一でも異なってもよい。)
【請求項2】
前記イオン交換基を実質的に有しないブロックの主鎖に含まれる、エーテル結合及びチオエーテル結合を分解した後に測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が50000〜1000000であることを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリアリーレン系ブロック共重合体であって、該ポリアリーレン系ブロック共重合体を用いて下記測定方法で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が50000〜1000000であることを特徴とするポリアリーレン系ブロック共重合体。
測定方法:2200重量部のジメチルスルホキシドと、2〜13重量部の、25重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを含むメタノール溶液と、1重量部の、前記ポリアリーレン系ブロック共重合体とを混合して、混合したポリアリーレン系共重合体の全てまたは実質的に全てが溶解した溶液を得る溶液調製工程、前記溶液調製工程により得られた溶液を100℃にて2時間加熱する加熱工程、および加熱工程により得られた溶液に含まれる高分子のポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する工程を含む方法。
【請求項4】
ブロック共重合体のイオン交換容量が、3.5〜6.5meq/gであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
【請求項5】
ブロック共重合体のイオン交換容量が、4.0〜6.0meq/gであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
【請求項6】
ブロック共重合体のイオン交換容量が、4.7〜5.3meq/gであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
【請求項7】
少なくとも一つのイオン交換基が、前記Arで表されるアリーレン基の主鎖を構成する芳香族環に直接結合していることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
【請求項8】
前記イオン交換基を有するブロックが有するイオン交換基がスルホ基、ホスホン基、カルボキシル基及びスルホンイミド基からなる群から選ばれる1種以上の酸基であることを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
【請求項9】
上記式(1)で表される構造単位が、下記式(3)で表される構造単位であることを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。

(式中、Rは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基又はシアノ基を表す。kは0〜3の整数を表し、pは1又は2の整数を表し、k+pは4以下の整数である。Rが複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なってもよい。)
【請求項10】
上記イオン交換基を実質的に有しないポリマーが、下記式(4)で表されることを特徴とする請求項1〜9いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。

(式中、Ar21は、芳香族基を表す。複数あるAr21は、互いに同一でも異なってもよい。該芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基から選ばれる基を置換基として有していてもよい。X11は−O−で示される基又は−S−で示される基を表す。複数あるX11は、互いに同一でも異なってもよい。Yは脱離基を表す。2つのYは同一でも異なっていてもよい。qは4以上の整数を表す。)
【請求項11】
請求項1〜10いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体を含むことを特徴とする高分子電解質。
【請求項12】
請求項11に記載の高分子電解質を含有することを特徴とする高分子電解質膜。
【請求項13】
請求項11に記載の高分子電解質と、多孔質基材とを有することを特徴とする高分子電解質複合膜。
【請求項14】
請求項11記載の高分子電解質と、触媒成分とを含むことを特徴とする触媒組成物。
【請求項15】
請求項12記載の高分子電解質膜、請求項13記載の高分子電解質複合膜及び請求項14記載の触媒組成物から選ばれる少なくとも1種を有することを特徴とする膜電極接合体。
【請求項16】
請求項15記載の膜電極接合体を有することを特徴とする高分子電解質形燃料電池。

【公開番号】特開2011−127109(P2011−127109A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258578(P2010−258578)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】