説明

ポリウレタンフォーム積層体およびその製造方法

【課題】フレームラミネート法によっても表面材などに凹凸やしわなどが発生せず積層することができるポリウレタンフォーム積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】表面材11と裏面材18との間に介在するポリウレタンフォーム14の投入厚みを1.5〜3.0mmとし、表面材11側または裏面材18側で、後に接着する側のポリウレタンフォーム14の溶融厚さ14bを、先に接着する側のポリウレタンフォーム14の溶融厚さ14aより多くし、また溶融接着後の溶融接着層14a,14bを含むポリウレタンフォーム14の全厚さを0.8mm以下とする。これにより、先の溶融厚さ14aをこれまでと同様に確保しても後の溶融厚さ14bをそれ以上として、均一な溶融層を形成して接着できるようにし、しかもそのまま残るポリウレタンフォームの全厚さを小さくして復元力の影響を抑えることで、表面材に凹凸やしわなどが発生しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はポリウレタンフォーム積層体およびその製造方法に関し、フレームラミネート法で表面材と裏面材とをポリウレタンフォームを介在させて溶融接着する場合に表面材などに凹凸やしわが発生しないようにするもので、特に薄い表面材を使用した場合に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
車両用シート、ソファ、マットレス、車両用内装材などに使用されるシート状材料のひとつとして表面材と裏面材との間に軟質ポリウレタンフォームを介在させて貼り合せたポリウレタンフォーム積層体がある。
【0003】
このポリウレタンフォーム積層体の製造方法としては、接着剤を使用する方法、ホットメルトフィルムを使用する方法、高周波ウェルダや火炎によって軟質ポリウレタンフォームを加熱溶融させる方法などがあり、表裏面材とポリウレタンフォームとを貼り合わせるようにしており、特に火炎によって軟質ポリウレタンフォームを溶融接着する、いわゆるフレームラミネート法は、乾燥工程が不要であり、接着速度も速いため広く採用されている。
【0004】
しかし、このフレームラミネート法では、加熱溶融が不均一になり易く、軟質ポリウレタンフォームを加熱溶融した後、表面材を圧着する場合に、例えば表面材としての生地に、5mm厚さのポリウレタンフォームを加熱溶融し、ロール隙間を3.5mm程度としたロール間を通過させると、僅かにつぶされることで表面材とポリウレタンフォームが接着されるが、ポリウレタンフォームの厚み方向の復元が不均一になり易いことから、接着後の表面材に凹凸やしわが生じてしまい、特に薄い表面材を使用すると顕著である。
【0005】
そこで、このような表面材に発生する凹凸やしわなどを抑える方法として、例えば、特許文献1に開示された方法では、ポリウレタンフォーム面に遮熱材料を所望形状に塗布し、塗布されていない部分を加熱溶融することで、部分的な接着として表面材のしわを防止するようにしている。
【0006】
また、表面材の凹凸やしわの発生を抑えるための技術ではないが、フレームラミネート法を安価にできる方法として、特許文献2には、フレームラミネート用スラブポリウレタンフォームを1mm程度の厚さと薄くすることで、高価な難燃スラブポリウレタンフォームの使用量を減らすことが提案されている。
【特許文献1】特開昭58−92558号公報
【特許文献2】実開昭60−166532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載のフレームラミネートシートの製造方法では、遮熱材料を所望形状に塗布する必要があり、工程が増大するという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載の内装用表装材では、高価なフレームラミネート用スラブポリウレタンフォームの使用量を減らすため薄くしてあるが、長尺の薄いポリウレタンフォームは厚みにバラツキが生じやすく、両面をほぼ均一に溶融しても厚みのバラツキを吸収できなくなり、特に薄い表面材を使用した場合、凹凸やしわが顕著に現れる。
【0009】
また、長尺の積層材を製造しようとすると、送り出し時に伸びが生じたり、フレームラミネートする場合の工程管理が難しく、先の溶融厚さが多くなると、後の溶融厚さが殆どなくなり、後の面材の接着不良が生じ易いという問題がある。
【0010】
この発明は、かかる従来技術の課題に鑑みてなされたもので、フレームラミネート法によっても表面材などに凹凸やしわなどが発生せず積層することができるポリウレタンフォーム積層体およびその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来技術の課題を解決するため、表面材と裏面材との間に介在させるポリウレタンフォームを加熱溶融して表面材と裏面材を接着させるフレームラミネート法を用いるポリウレタンフォーム積層体の製造方法について鋭意検討を重ねた結果、通常のフレームラミネート法では、ポリウレタンフォームの表裏を加熱溶融し中間部にポリウレタンフォームをそのまま残すことで、クッション性や吸音性を確保するとともに、積層体としての伸縮性や立体感などを確保するものであり、介在させるポリウレタンフォームを厚くしておき、溶融接着後もそのまま残る部分を必要としていたが、表面材などに発生する凹凸やしわの防止には、加熱溶融するポリウレタンフォームの厚さの影響およびそのまま残すポリウレタンフォームの厚さの影響があり、特に片方を加熱溶融した後のもう片方を加熱溶融する場合のポリウレタンフォームの厚さが薄いと先に接着した表面材に凹凸やしわの発生が顕著になることおよびそのまま残すポリウレタンフォームの厚さを厚くすると凹凸やしわが発生しやすいことを見出し、この発明を完成したものである。その具体的な構成は、以下の通りである。
【0012】
すなわち、この発明の請求項1記載のポリウレタンフォーム積層体は、表面材と裏面材とが表裏の厚さが異なる溶融接着層を有するポリウレタンフォームを介して接着されかつこれら溶融接着層を含むポリウレタンフォームの全厚さを0.8mm以下としてなることを特徴とするものである。
【0013】
このポリウレタンフォーム積層体によれば、表面材と裏面材とが表裏の厚さが異なる溶融接着層を有するポリウレタンフォームを介して接着されかつこれら溶融接着層を含むポリウレタンフォームの全厚さを0.8mm以下としており、先の溶融厚さを確保しても後の溶融厚さをそれ以上確保して均一な溶融接着層を形成して接着でき、しかも溶融接着層を含むポリウレタンフォームの全厚さを小さくしてポリウレタンフォームの復元の影響を抑え、表面材に凹凸やしわなどが発生しないようにしている。
【0014】
さらに、この発明の請求項2記載のポリウレタンフォーム積層体の製造方法は、表面材と裏面材との間に介在させるポリウレタンフォームを加熱溶融して表面材と裏面材を接着させるポリウレタンフォーム積層体を製造するに際し、前記介在させるポリウレタンフォームの投入厚みを1.5〜3.0mmとし、前記表面材または前記裏面材とのいずれか後に接着する当該ポリウレタンフォームの溶融厚さを、いずれか先に接着する当該ポリウレタンフォームの溶融厚さより多くするとともに、溶融接着後の溶融接着層を含むポリウレタンフォームの全厚さを0.8mm以下とするようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
このポリウレタンフォーム積層体の製造方法によれば、表面材と裏面材との間に介在させるポリウレタンフォームの投入厚みを1.5〜3.0mmとし、前記表面材または前記裏面材とのいずれか後に接着する当該ポリウレタンフォームの溶融厚さを、いずれか先に接着する当該ポリウレタンフォームの溶融厚さより多くするとともに、溶融接着後の溶融接着層を含むポリウレタンフォームの全厚さを0.8mm以下とするようにしており、先の溶融厚さを確保しても後の溶融厚さをそれ以上確保し、これにより均一な溶融層を形成して接着できるようにし、しかも溶融接着層を含むポリウレタンフォームの全厚さを小さくしてポリウレタンの復元の影響を抑えるようにしている。
【0016】
これら均一な溶融層と溶融接着後のポリウレタンフォームの不均一な復元を抑えることで、表面材に凹凸やしわなどが発生しないようにしている。
【0017】
また、この発明の請求項3記載のポリウレタンフォーム積層体の製造方法は、請求項2記載の構成に加え、前記ポリウレタンフォームを、フレームラミネート用フォームとするとともに、片面を先に溶融接着した後、巻き取らずにもう片面の溶融接着を行うようにしたことを特徴とするものである。
【0018】
このポリウレタンフォーム積層体の製造方法によれば、前記ポリウレタンフォームを、フレームラミネート用フォームとするとともに、片面を先に溶融接着した後、巻き取らずにもう片面の溶融接着を行うようにしており、表裏面材の溶融接着を1パスで行うことで、中間の巻取りによる影響をなくし、一層表面材に凹凸やしわなどが発生しないようにしている。
【発明の効果】
【0019】
この発明の請求項1記載のポリウレタンフォーム積層体によれば、表面材と裏面材とが表裏の厚さが異なる溶融接着層を有するポリウレタンフォームを介して接着されかつこれら溶融接着層を含むポリウレタンフォームの全厚さを0.8mm以下としたので、先の溶融厚さを確保しても後の溶融厚さをそれ以上確保して均一な溶融接着層を形成して接着することができ、しかも溶融接着層を含むポリウレタンフォームの全厚さを小さくしてポリウレタンフォームの復元の影響を抑え、表面材に凹凸やしわなどが発生しないようにすることができる。
【0020】
さらに、この発明の請求項2記載のポリウレタンフォーム積層体の製造方法によれば、表面材と裏面材との間に介在させるポリウレタンフォームの投入厚みを1.5〜3.0mmとし、前記表面材または前記裏面材とのいずれか後に接着する当該ポリウレタンフォームの溶融厚さを、いずれか先に接着する当該ポリウレタンフォームの溶融厚さより多くするとともに、溶融接着後の溶融接着層を含むポリウレタンフォームの全厚さを0.8mm以下とするようにしたので、先の溶融厚さを確保しても後の溶融厚さをそれ以上確保することができ、これにより均一な溶融層を形成して接着することができ、しかも溶融接着層を含むポリウレタンフォームの全厚さを小さくしてポリウレタンフォームの復元の影響を抑えることができる。
【0021】
これにより、均一な溶融層と溶融接着後のポリウレタンフォームの不均一な復元を抑えることで、表面材に凹凸やしわなどが発生しないようにすることができ、特にこの効果は薄い表面材を使用したときに顕著に現れる。また、ポリウレタンフォームの投入厚みもあり、溶融厚さもあるので、フレームラミネートの際の工程管理も容易にできる。
【0022】
また、この発明の請求項3記載のポリウレタンフォーム積層体の製造方法によれば、前記ポリウレタンフォームを、フレームラミネート用フォームとするとともに、片面を先に溶融接着した後、巻き取らずにもう片面の溶融接着を行うようにしたので、表裏面材の溶融接着を1パスで行うことで、中間の巻取りによる影響をなくすことができ、一層表面材に凹凸やしわなどが発生しないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明のポリウレタンフォーム積層体の製造方法の一実施の形態について、詳細に説明する。
図1および図2は、この発明のポリウレタンフォーム積層体の製造方法の一実施の形態にかかり、図1は製造工程の概略構成図、図2は各工程でのポリウレタンフォーム積層体の断面図である。
【0024】
この発明のポリウレタンフォーム積層体10は、表面材11と裏面材18とが表裏の厚さが異なる溶融接着層14a,14bを有するポリウレタンフォーム14を介して接着されかつこれら溶融接着層14a,14bを含むポリウレタンフォーム14の全厚さを0.8mm以下としたものである。
【0025】
そして、この発明のポリウレタンフォーム積層体の製造方法では、表面材11と裏面材18との間に介在させるポリウレタンフォーム14を加熱溶融して表面材11と裏面材18を接着させることで、ポリウレタンフォーム積層体10を製造するものであり、ポリウレタンフォーム14を加熱溶融し、表面材11や裏面材18との接着には、いわゆるフレームラミネート法が用いられる。
【0026】
このフレームラミネート法によるポリウレタンフォーム積層体の製造は、例えば図1に示すように、長尺の表面材11が送り出しドラム12から送り出されて第1押圧ロール13、13間に送られる一方、この第1押圧ロール13、13間に長尺のポリウレタンフォーム14が送り出しドラム15から送り出され、上側の第1押圧ロール13で反転される際にポリウレタンフォーム14の表面材11との接着面となる内側面が第1バーナー16で加熱溶融されて溶融接着層14aが形成され、第1押圧ロール13、13間で表面材11と重ねられて押圧され、表面材11とポリウレタンフォーム14とが接着されて2枚が積層される。
【0027】
このポリウレタンフォーム積層体の製造方法では、送り出しドラム15から送り出されるポリウレタンフォーム14は、その投入厚みが1.5〜3.0mmのものが使用され、先に接着される表面材11との溶融接着のため、ポリウレタンフォーム14を通常のフレームラミネート法と同様にして、例えば溶融厚さを0.5〜0.9mm程度、好ましくは0.6〜0.8mm程度として加熱溶融して溶融接着層14aを形成し、介在させるポリウレタンフォーム14の片面の溶融接着層14aに表面材11が先に接着される。
【0028】
このポリウレタンフォーム14の投入厚みが1.5mmより薄くなると、長尺なシート状のポリウレタンフォームを製造すること自体が難しく、また、フレームラミネート工程においてシート状のポリウレタンフォーム14に伸びが生じるなど工程管理が難しくなり、均一な溶融厚さで加熱溶融して溶融接着層14aを形成することができなくなる。
【0029】
一方、ポリウレタンフォーム14の投入厚みが3.0mmを超えて厚くなると、ポリウレタンフォーム14の両面を加熱溶融して接着する場合の加熱溶融する溶融接着層14a,14bの厚さが多くなり、無駄な溶融接着層14a,14bが形成されてしまう。また、加熱溶融させずにそのままポリウレタンフォーム14を残すと、第1押圧ロール13,13間を通ったポリウレタンフォームの復元力の影響が大きくなって表面材11などの凹凸やしわの発生原因となる。
【0030】
したがって、ポリウレタンフォーム14の投入厚みは、1.5〜3.0mmであれば良く、好ましくは1.8〜2.7mmである。
【0031】
また、このようなポリウレタンフォーム14の、先に加熱溶融する溶融厚さが0.5mmより少ないと、溶融接着層14aが薄くなって接着強度が不足する場合が見られ、特に耐熱性に劣る場合がある。
【0032】
一方、ポリウレタンフォーム14の先に加熱溶融する溶融厚さが0.9mmより多くなっても、溶融接着層14aによる接着強度の向上や耐熱性の向上は期待できなくなる。また、もう片面を貼り合わせる工程に送るときに、残りのポリウレタンフォームの厚みが薄くなるので、ポリウレタンフォームに伸びが生じやすくなる等の不具合がある。
【0033】
したがって、ポリウレタンフォーム14の先に加熱溶融する溶融厚さは、0.5〜0.9mmであれば良く、好ましくは0.6〜0.8mmである。
【0034】
こうして表面材11がポリウレタンフォーム14の片面に溶融接着された後、図1に示すように、第2押圧ロール17,17間に送られる一方、この第2押圧ロール17、17間に長尺の裏面材18が送り出しドラム19から送り出され、上側の第2押圧ロール17で反転される際にポリウレタンフォーム14の裏面材18との接着面となる外側面が第2バーナー20で加熱溶融されて溶融接着層14bが形成されて、第2押圧ロール17、17間で裏面材18と重ねられて押圧され、裏面材18とポリウレタンフォーム14とが接着されて表面材11、ポリウレタンフォーム14および裏面材18の3枚が積層され、巻取りドラム21に巻き取られる。
【0035】
このポリウレタンフォーム積層体の製造方法では、上側の第2押圧ロール17で反転される際にポリウレタンフォーム14は、後に接着する裏面材18との溶融接着のため、ポリウレタンフォーム14を通常のフレームラミネート法と同様にして、例えば溶融厚さを先の溶融厚さより多くするとともに、溶融接着後の両側の溶融接着層14a,14bを含むポリウレタンフォーム14の全厚さが0.8mm以下となるように加熱溶融し、ポリウレタンフォーム14のもう片面の溶融接着層14bに裏面材18が接着され、3層の積層状態とされる。
【0036】
ポリウレタンフォーム14の後の溶融厚さは、先のポリウレタンフォーム14の溶融厚さの0.5〜0.9mmより厚く加熱溶融し、好ましくは0.8〜1.4mm程度加熱溶融し、しかも溶融接着後の両側の溶融接着層14a,14bを含むポリウレタンフォーム14の全厚さが0.8mm以下、好ましくは0.2〜0.6mm程度、すなわちポリウレタンフォーム14が溶融しないそのままの部分がない溶融接着層14a,14bだけの状態から、わずかにそのままのポリウレタンフォーム14が残る状態にする。
【0037】
この後のポリウレタンフォーム14の後の溶融厚さを、先の溶融厚さより多くすることで、溶融接着層14bを均一に溶融することができるとともに、接着に必要な十分な溶融量を得ることができ、裏面材18と溶融接着層14bとの接着強度を確保することができる。
【0038】
すなわち、先に溶融するポリウレタンフォーム14を過大にすると、溶融時にポリウレタンフォーム14に熱膨張が発生してしわになりやすいが、後に溶融するポリウレタンフォーム14を厚く溶融させても、先に接着された表面材11の影響で、熱膨張が生じてもしわが発生しにくい。特に、薄い表面材11を使用した場合には、しわの発生を有効に抑えることができる。
【0039】
さらに、溶融接着後の両側の溶融接着層14a,14bを含むポリウレタンフォーム14の全厚さを0.8mm以下とすることで、ポリウレタンフォーム14のまま残る部分を全くなくしたり、少なくしてこの部分のポリウレタンフォーム14による復元力の影響をなくしたり、わずかとして表面材11や裏面材18に凹凸やしわなどの発生原因とならないようすることができる。
【0040】
また、ポリウレタンフォーム14の後の溶融接着層14bの溶融厚さを先の溶融接着層14aの溶融厚さより大きくするとともに、溶融接着後の両側の溶融接着層14a,14bを含むポリウレタンフォーム14の全厚さを0.8mm以下とすることで、後の加熱溶融の際の条件設定が容易となり、例えば先の溶融接着後に残っているポリウレタンフォーム14のほとんどを加熱溶融するように第2バーナー20を調整すれば良いことになる。
【0041】
このようなポリウレタンフォーム積層体の製造方法によれば、表面材11と裏面材18との間に介在させるポリウレタンフォーム14の投入厚みを1.5〜3.0mmとし、後で裏面材18と接着するポリウレタンフォーム14の溶融接着層14bの溶融厚さを、先に表面材11と接着するポリウレタンフォーム14の溶融接着層14aの溶融厚さより多くするとともに、溶融接着後の溶融接着層14a,14bを含むポリウレタンフォーム14の全厚さを0.8mm以下とするようにしたので、先の溶融接着層14aの溶融厚さを確保しても後の溶融接着層14bの溶融厚さをそれ以上確保することができ、これにより均一な溶融接着層14a,14bを形成して接着することができ、しかも溶融接着層14a,14bを含むポリウレタンフォーム14の全厚さを小さくしてポリウレタンフォームの復元の影響を抑えることができる。
【0042】
これにより、均一な溶融接着層14a,14bと溶融接着後のポリウレタンフォーム14の不均一な復元を抑えることで、表面材11に凹凸やしわなどが発生しないようにすることができ、ポリウレタンフォーム14の投入厚みもあり、溶融厚さもあるので、フレームラミネート法で加熱溶融する際の工程管理も容易にできる。
【0043】
また、このポリウレタンフォーム積層体の製造方法によれば、ポリウレタンフォーム14を、フレームラミネート用フォームとするとともに、片面に表面材11を先に溶融接着した後、巻き取らずにもう片面に裏面材18を溶融接着するようにしたので、表裏面材11,18の溶融接着を1パスで行うことで、中間の巻取りによる影響をなくすことができ、一層表面材11に凹凸やしわなどが発生しないようにすることができる。
【0044】
なお、このポリウレタンフォーム積層体に使用するポリウレタンフォームとしては、従来からフレームラミネート用として使用されているポリウレタンフォームを使用することができる。
【0045】
また、表面材としては織布、ニット、ダブルラッセル、モケット、編物、コウイニットPVCレザー、本皮革などが用いられ、裏面材としては編物類、金巾、不織布、メリヤス、平織物などが用いられる。
【0046】
なお、上記実施の形態では、製品の表面となる表面材を先に溶融接着するようにしたが、製品の裏面となる裏面材を先に溶融接着するようにしても良い。
【実施例】
【0047】
次ぎにこの発明の実施例について、比較例とともに説明するが、この発明は、これら実施例に限定されるものでない。
【0048】
各実施例および各比較例では、表面材として目付200g/m2の織布を、実施例8のみ目付100g/m2の無起毛編物を用い、ポリウレタンフォームとしてフレームラミネート用のものを使用し、裏面材として不織布を使用した。
【0049】
製造方法として、図1に示したように、フレームラミネート法により表面材を先に溶融接着した後、反転して裏面材を連続して溶融接着した(比較例6、7は除く)。
【0050】
そして、接着後のポリウレタンフォーム積層体について、次ぎの各項目についてそれぞれ評価した。接着性を○、△、×の3段階で、表面外観を〇、×の2段階で、風合いを〇、×の2段階で、成形性を〇、×の2段階で評価した。評価結果を、実施例は表1に、比較例は表2にそれぞれ示すとおりであり、各評価項目の評価段階の内容は表1および表2中に記載のとおりである。
【0051】
(実施例1)
表面材として目付200g/m2の織布を用い、ポリウレタンフォームの投入厚を2.5mmとし、表面材との溶融厚さを0.8mm、裏面材との溶融厚さを1.4mm、ポリウレタンフォームの溶融接着層を含む残厚を0.3mmとしてポリウレタンフォーム積層体を製造した。
得られたポリウレタンフォーム積層体は、表面材に凹凸やしわの発生はなく、接着性、表面外観、風合い、成形性のいずれも〇であった。
【0052】
(実施例2)
表面材として目付200g/m2の織布を用い、ポリウレタンフォームの投入厚を2.5mmとし、表面材との溶融厚さを0.7mm、裏面材との溶融厚さを1.3mm、ポリウレタンフォームの溶融接着層を含む残厚を0.5mmとしてポリウレタンフォーム積層体を製造した。
得られたポリウレタンフォーム積層体は、表面材に凹凸やしわの発生はなく、接着性、表面外観、風合い、成形性のいずれも〇であった。
【0053】
(実施例3)
表面材として目付200g/m2の織布を用い、ポリウレタンフォームの投入厚を2.2mmとし、表面材との溶融厚さを0.7mm、裏面材との溶融厚さを1.3mm、ポリウレタンフォームの溶融接着層を含む残厚を0.2mmとしてポリウレタンフォーム積層体を製造した。
得られたポリウレタンフォーム積層体は、表面材に凹凸やしわの発生はなく、接着性、表面外観、風合い、成形性のいずれも〇であった。
【0054】
(実施例4)
表面材として目付200g/m2の織布を用い、ポリウレタンフォームの投入厚を2.7mmとし、表面材との溶融厚さを0.8mm、裏面材との溶融厚さを1.4mm、ポリウレタンフォームの溶融接着層を含む残厚を0.5mmとしてポリウレタンフォーム積層体を製造した。
得られたポリウレタンフォーム積層体は、表面材に凹凸やしわの発生はなく、接着性、表面外観、風合い、成形性のいずれも○であった。
【0055】
(実施例5)
表面材として目付200g/m2の織布を用い、ポリウレタンフォームの投入厚を2.5mmとし、表面材との溶融厚さを0.5mm、裏面材との溶融厚さを1.4mm、ポリウレタンフォームの溶融接着層を含む残厚を0.6mmとしてポリウレタンフォーム積層体を製造した。
得られたポリウレタンフォーム積層体は、表面材に凹凸やしわの発生はなく、接着性において表面材の接着強度がわずかに不足し△であったが、他の表面外観、風合い、成形性のいずれも○であった。
【0056】
(実施例6)
表面材として目付200g/m2の織布を用い、ポリウレタンフォームの投入厚を1.5mmとし、表面材との溶融厚さを0.5mm、裏面材との溶融厚さを0.8mm、ポリウレタンフォームの溶融接着層を含む残厚を0.2mmとしてポリウレタンフォーム積層体を製造した。
得られたポリウレタンフォーム積層体は、表面材に凹凸やしわの発生はなく、接着性において表面材の接着強度がわずかに不足し△であったが、他の表面外観、風合い、成形性のいずれも○であった。
【0057】
(実施例7)
表面材として目付200g/m2の織布を用い、ポリウレタンフォームの投入厚を1.8mmとし、表面材との溶融厚さを0.6mm、裏面材との溶融厚さを1.0mm、ポリウレタンフォームの溶融接着層を含む残厚を0.2mmとしてポリウレタンフォーム積層体を製造した。
得られたポリウレタンフォーム積層体は、表面材に凹凸やしわの発生はなく、接着性、表面外観、風合い、成形性のいずれも○であった。
【0058】
(実施例8)
実施例1〜7での表面材の目付200g/m2の織布を用いたのに対して、表面材として目付100g/m2の無起毛編物を用い、ポリウレタンフォームの投入厚を2.5mmとし、表面材との溶融厚さを0.8mm、裏面材との溶融厚さを1.4mm、ポリウレタンフォームの溶融接着層を含む残厚を0.3mmとしてポリウレタンフォーム積層体を製造した。
得られたポリウレタンフォーム積層体は、表面材の目付けが小さいにもかかわらず表面材に凹凸やしわの発生はなく、接着性、表面外観、風合い、成形性のいずれも○であった。
【0059】
(比較例1)
表面材として目付200g/m2の織布を用い、ポリウレタンフォームの投入厚を2.5mmとし、表面材との溶融厚さを1.4mmと厚くし、裏面材との溶融厚さを0.8mm、ポリウレタンフォームの溶融接着層を含む残厚を0.3mmとしてポリウレタンフォーム積層体を製造した。
得られたポリウレタンフォーム積層体は、表面外観において凹凸が生じ×であった。
【0060】
(比較例2)
表面材として目付200g/m2の織布を用い、ポリウレタンフォームの投入厚を2.5mmとし、表面材との溶融厚さを0.3mmと少なくし、裏面材との溶融厚さを1.2mm、ポリウレタンフォームの溶融接着層を含む残厚を1.0mmとしてポリウレタンフォーム積層体を製造した。
得られたポリウレタンフォーム積層体は、接着性において表面材の剥離が生じ×であり、表面外観において凹凸が生じ、風合いにおいて表面材の風合いよりもポリウレタンフォームの風合いが強く残り、これらの評価がいずれも×であった。
【0061】
(比較例3)
表面材として目付200g/m2の織布を用い、ポリウレタンフォームの投入厚を2.7mmとし、表面材との溶融厚さを0.7mmとし、裏面材との溶融厚さを1.0mm、ポリウレタンフォームの溶融接着層を含む残厚を1.0mmとしてポリウレタンフォーム積層体を製造した。
得られたポリウレタンフォーム積層体は、接着性においては問題がなく〇であったが、表面外観、風合い、成形性のいずれも×であった。
【0062】
(比較例4)
表面材として目付200g/m2の織布を用い、ポリウレタンフォームの投入厚を3.2mmと厚くし、表面材との溶融厚さを0.8mmとし、裏面材との溶融厚さを1.7mmと多くし、ポリウレタンフォームの溶融接着層を含む残厚を0.7mmとしてポリウレタンフォーム積層体を製造した。
得られたポリウレタンフォーム積層体は、接着性および風合いは問題がなく〇であったが、表面外観において凹凸が生じ、成形性において溶融量が多く、加熱エネルギが多く必要でこれらの評価がいずれも×であった。
【0063】
(比較例5)
表面材として目付200g/m2の織布を用い、ポリウレタンフォームの投入厚を2.5mmとし、表面材との溶融厚さを0.8mmとして溶融接着後一旦巻取り、裏面材との溶融厚さを1.4mmとし、ポリウレタンフォームの溶融接着層を含む残厚を0.3mmとしてポリウレタンフォーム積層体を製造した。
得られたポリウレタンフォーム積層体は、接着性および風合いは問題がなく〇であったが、表面外観において凹凸が生じ、成形性において巻取り工程が必要で設備が複雑となるなどこれらの評価がいずれも×であった。
【0064】
(比較例6)
表面材として目付200g/m2の織布を用い、フレームラミネート法に替え、接着剤を用いて表面材とポリウレタンフォームと裏面材とをそれぞれ接着してポリウレタンフォーム積層体を製造した。
得られたポリウレタンフォーム積層体は、接着性および風合いは問題がなく〇であったが、表面外観において凹凸が生じ、成形性において接着材の塗布が煩雑であり、乾燥工程も必要でこれらの評価がいずれも×であった。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明のポリウレタンフォーム積層体の製造方法の一実施の形態にかかる製造工程の概略構成図である。
【図2】この発明のポリウレタンフォーム積層体の製造方法の一実施の形態にかかる各工程でのポリウレタンフォーム積層体の断面図である。
【符号の説明】
【0068】
10 ポリウレタンフォーム積層体
11 表面材
12 送り出しドラム
13 第1押圧ロール
14 ポリウレタンフォーム
14a 溶融接着層
14b 溶融接着層
15 送り出しドラム
16 第1バーナー
17 第2押圧ロール
18 裏面材
19 送り出しドラム
20 第2バーナー
21 巻取りドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面材と裏面材とが表裏の厚さが異なる溶融接着層を有するポリウレタンフォームを介して接着されかつこれら溶融接着層を含むポリウレタンフォームの全厚さを0.8mm以下としてなることを特徴とするポリウレタンフォーム積層体。
【請求項2】
表面材と裏面材との間に介在させるポリウレタンフォームを加熱溶融して表面材と裏面材を接着させるポリウレタンフォーム積層体を製造するに際し、
前記介在させるポリウレタンフォームの投入厚みを1.5〜3.0mmとし、前記表面材または前記裏面材とのいずれか後に接着する当該ポリウレタンフォームの溶融厚さを、いずれか先に接着する当該ポリウレタンフォームの溶融厚さより多くするとともに、溶融接着後の溶融接着層を含むポリウレタンフォームの全厚さを0.8mm以下とするようにしたことを特徴とするポリウレタンフォーム積層体の製造方法。
【請求項3】
前記ポリウレタンフォームを、フレームラミネート用フォームとするとともに、片面を先に溶融接着した後、巻き取らずにもう片面の溶融接着を行うようにしたことを特徴とする請求項2記載のポリウレタンフォーム積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−221465(P2008−221465A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58342(P2007−58342)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】