説明

ポリウレタン発泡体及び止水性ガスケット

【課題】止水性と抗菌性の両方の性質を有するとともに、止水性と抗菌性を安定して発現できるポリウレタン発泡体及び止水性ガスケットを提供する。
【解決手段】
ポリエステルポリオールとポリエーテルポリエステルポリオールを含むポリオール類と、イソシアネート、撥水剤、1〜20質量部の粒状抗菌防カビ剤(ポリオール類100質量部に対して)等を混合した発泡組成物を発泡、硬化させて、ポリウレタン発泡体を得る。このポリウレタン発泡体は、撥水剤により、止水性が得られ、粒状抗菌防カビ剤により、好適に発泡して、抗菌防カビ性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン発泡体及び止水性ガスケットに関し、特に、抗菌性及び止水性を有するポリウレタン発泡体及び止水性ガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水回りの製品(たとえば、ガスケット)をポリウレタン樹脂にて形成する場合、抗菌防カビ性が要求されている。抗菌防カビ性を、ポリウレタン発泡体に備えさせるためには、液状の抗菌防カビ剤が、製造法の作業性の観点からは好ましい。なお、液状の抗菌防カビ剤は、多くは、ハロゲン系物質や、リン系物質からなる。しかし、これらの、液状の抗菌防カビ剤を使用すると、イソシアネートと発泡剤との発泡性が阻害されたり、或いは、液状の抗菌防カビ剤と原料であるポリオールとの相溶性が悪く、良好な発泡体が得られない。このため、特許文献1では、粒状の抗菌防カビ剤を使用することが提案されている。
【特許文献1】特開平6−122746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1のポリウレタン発泡体では、止水性と抗菌防カビ性の両方の機能を有するものについては提案されておらず、止水性及び抗菌防カビ性の両方を備えたポリウレタン発泡体及びガスケットの出現が望まれている。
【0004】
そこで本発明の目的とするところは、止水性と抗菌防カビ性の両方の性質を有するとともに、止水性と抗菌防カビ性を安定して発現できるポリウレタン発泡体及び止水性ガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、粒状抗菌防カビ剤と撥水剤を含んでなるポリウレタン発泡体を要旨とするものである。
請求項2のポリウレタン発泡体は、請求項1において、前記ポリウレタン発泡体は、ポリオール類とポリイソシアネートを含む発泡組成物を発泡、硬化させたものであり、100質量部の前記ポリオール類に対して、前記粒状抗菌防カビ剤は1〜20質量部混合されていることを特徴とする。
【0006】
請求項3のポリウレタン発泡体は、請求項1又は請求項2において、前記粒状抗菌防カビ剤の粒径が0.1〜5mmであることを特徴とする。
請求項4のポリウレタン発泡体は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載において、前記撥水剤は、ダイマー酸ジステアリルを含んでなることを特徴とする。
【0007】
請求項5のポリウレタン発泡体は、請求項2乃至請求項4のうちいずれか1項において、前記ポリオール類には、ポリエーテルポリエステルポリオールを含むことを特徴とする。
【0008】
請求項6は、止水性ガスケットが請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載のポリウレタン発泡体から形成されたこことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、止水性と、抗菌防カビ性の両性質を備えたポリウレタン発泡体を提供できる。
請求項2の発明によれば、100質量部の前記ポリオール類に対して、粒状抗菌防カビ剤は1〜20質量部混合されていることにより、ポリウレタン発泡体に抗菌防カビ性がなくなることがなく、物理的強度の低下が生ずることがない。
【0010】
請求項3の発明によれば、粒状抗菌防カビ剤の粒径を0.1〜5mmとすることにより、ガラスの微粒子の付着量が少なくなることがなく、粒状抗菌防カビ剤単位重量当たりの表面積が小さくなることがないため、抗菌防カビ効果が低下することがない。
【0011】
請求項4の発明によれば、炭素数18のステアリルアルコールと、脂環族ジカルボン酸であるダイマー酸とから得られる疎水性のダイマー酸ジステアリルにより、優れた止水性を有するポリウレタン発泡体にすることができる。
【0012】
請求項5の発明によれば、ポリオール類には、ポリエーテルポリエステルポリオールを含むことにより、原料粘度が適度に高く、発泡した後の気泡構造が細かくなるため、水周りの製品とした場合、たとえばガスケットとしたとき、被シール部材との界面での密着性を高めることができる。
【0013】
請求項6の発明によれば、止水性ガスケットにおいて、請求項1乃至請求項5のいずれかの効果を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態におけるポリウレタン発泡体(以下、単に発泡体ともいう)は以下のようにして製造される。すなわち、ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤、触媒、金属触媒、整泡剤等を含有するポリウレタン発泡体原料に対し、撥水剤及び粒状抗菌防カビ剤を配合し、前記ポリウレタン発泡体原料を反応させ発泡及び硬化させることにより製造される。
【0015】
ここで、本実施形態のポリウレタン発泡体は、連続気泡構造を有し、復元性を有しない発泡体を意味する。
まず、前記ポリウレタン発泡体原料について説明する。
【0016】
(ポリオール類)
ポリオール類としては、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリエステルポリオールが用いられる。ポリエステルポリオールが使用されるのは、原料粘度が適度に高く、発泡した後の気泡構造が細かくなるため、水周りの製品とした場合、たとえば、ガスケットとしたとき、被シール部材との界面での密着性を高めることができる。
【0017】
又、ポリエーテルポリエステルポリオールを用いる場合は、ポリエーテルポリエステルポリオール は、粘度が極めて高く、ポリウレタンフォームの発泡に際し、単品で用いると他の原料との混合が容易ではない。従って、好ましくは全ポリオールに対し85質量部以下で使用し、残りの15質量部以上は他の低粘度のポリオールを混合することが好ましい。
【0018】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、ショ糖等の低分子ポリオールと、ダイマー酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等のジカルボン酸とを縮合させて得られるものなどが挙げられる。
【0019】
ポリエーテルポリエステルポリオールとしては、たとえば、ポリエーテルポリオール化合物に、ポリカルボン酸無水物とアルキレンオキシド化合物を反応させることにより得られる。
【0020】
ポリオール類は、その官能基数が2〜4の範囲であることが好ましく、水酸基価が20〜500(mgKOH/g)の範囲であることが好ましい。但し、官能基数又は水酸基価の異なる複数のポリオールを用いる場合には、平均官能基数又は平均水酸基価が上記の範囲にあることが好ましい。平均官能基数又は平均水酸基価は、各ポリオールの官能基数又は水酸基価を配合率に応じて平均した値である。このような官能基数と水酸基価を有するポリオール類を用いることにより、ポリオール類とポリイソシアネート類との反応性に優れ、発泡と架橋とがバランス良く進行し、目的とするポリウレタン発泡体を得ることができる。
【0021】
ポリオール類の官能基数が2未満の場合には、架橋反応が十分に行われず、ポリウレタン発泡体の強度が低下する傾向を示す。一方、官能基数が4を越える場合には、発泡が円滑に行われず、セルの連通性が悪く、連続気泡構造のポリウレタン発泡体を得ることが難しくなる。さらに、ポリオール類の水酸基価が20(mgKOH/g)未満の場合には、水酸基価が小さくなり過ぎ、ポリウレタン発泡体の架橋密度が低くなって発泡体の強度が低下しやすくなる傾向を示す。一方、水酸基価が500(mgKOH/g)を越える場合には、架橋密度が高くなり過ぎて発泡体が硬くなり、セルの連通性も低下する。
【0022】
(ポリイソシアネート類)
前記ポリオール類と反応させるポリイソシアネート類はイソシアネート基を複数個有する化合物であって、具体的にはトリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、変性MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、これらの変性物等が用いられる。
【0023】
ポリイソシアネートのイソシアネートインデックスは100〜125の範囲が好ましい。ここで、イソシアネートインデックスは、ポリオールの水酸基及び発泡剤としての水に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比を百分率で表したものである。また、ポリイソシアネート類としては、ポリウレタン発泡体の強度等の物性を向上させるために、芳香族ポリイソシアネートであることが好ましい。
【0024】
(発泡剤)
上記発泡剤はポリウレタン樹脂を発泡させてポリウレタン発泡体とするためのもので、例えば水のほかペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、炭酸ガス等が用いられる。これらの発泡剤うち、ポリイソシアネート類と速やかに反応して十分な炭酸ガスを発生でき、取扱いが良好である点から水が好ましい。発泡剤が水の場合には、ポリウレタン発泡体の密度を40〜50kg/m3にするため、その配合量をポリオール類100質量部に対して1.5〜4質量部とすることが好ましい。水の配合量が1.5質量部未満では発泡量が少なく、ポリウレタン発泡体の密度が50kg/m3を越える高密度になるとともに、セルの連通性も悪くなる傾向を示す。一方、4質量部を越えると発泡及び硬化時に温度が上昇しやすくなり、その温度を低下させることが難しくなるとともに、ポリウレタン発泡体の密度が40kg/m3未満の低密度となって強度が低下する傾向を示す。
【0025】
(触媒)
触媒はポリオール類とポリイソシアネート類とのウレタン化反応を促進するためのものである。触媒として具体的には、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、N,N´,N´−トリメチルアミノエチルピペラジン等の3級アミン、オクチル酸スズ(スズオクトエート)等の有機金属化合物、酢酸塩、アルカリ金属アルコラート等が単独、或いは混合して用いられる。触媒の合計量は0.3〜1.5質量部の範囲とすることが好ましい。
【0026】
(整泡剤)
整泡剤としては、ポリウレタンフォームの生成に一般に使用されるものを用いることができる。たとえば、整泡剤として、シリコーン化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等が用いられる。なかでも、線状、或いは分枝ポリエーテル−シロキサン共重合体が好ましく、特に、連通性を高めるためには整泡力の低い線状ポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体がより好ましい。整泡剤は0.5〜2.5質量部を用いることが好ましい。
【0027】
(撥水剤)
撥水剤としては、疎水性のエステルを挙げることができる。このエステルは、炭素数10以上のモノ高級アルコールと、炭素数9以上のモノカルボン酸とのエステル、又は上記高級アルコールと、炭素数8以上の脂肪族、或いは脂環族ジカルボン酸とのエステルから選ばれる少なくとも1種を使用できる。これらエステルは、発泡体製造時に、通常、ポリオール類、発泡剤などからなる成分に配合し、その後、ポリイソシアネートを加えて、混合、攪拌して発泡性組成物を調製し、発泡、硬化させて発泡体とすることができる。
【0028】
上記「炭素数10以上のモノアルコール」としては、デシルアルコール、イソデシルアルコール、4−tert−ブチルシクロヘキサノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セシルアルコール、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、イソラウリルアルコール及びイソステアリルアルコール等の飽和モノアルコール、オレイルアルコール等の不飽和モノアルコールなどが挙げられる。
【0029】
又、上記「炭素数9以上のモノカルボン酸」としては、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸及びリグノセリン酸等の飽和モノカルボン酸、オレイン酸等の不飽和モノカルボン酸などが挙げられる。上記「炭素数8以上の脂肪族或いは脂環族ジカルボン酸」としては、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシリン酸、タブシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、及びダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸等を使用できる。
【0030】
エステルの配合比率は、ポリオール類100質量部に対して、7〜100質量部が好ましい。この配合量は10〜70質量部、特に20〜70質量部であることが好ましく、配合量がこの範囲であれば、発泡体が本来有する圧縮残留歪等の良好な物性を何ら損なうことなく、優れた止水性等を有する発泡体を得ることができる。エステルの配合量が7質量部未満では、その添加効果が十分に発現せず、100質量部を超える場合は上記の発泡体本来の特性が損なわれることがある。
【0031】
発泡体中に疎水性のエステルが配合されていると、この発泡体に接する被着体等との界面に該エステルが適度に浸出し、両者の密着性が高められるため、優れた止水性をもつことができる。
【0032】
疎水性のエステルとして、たとえば、ダイマー酸ジステアリルを挙げることができる。ダイマー酸ジステアリルの合成手順を例示する。ダイマー酸とステアリルアルコールとをモル比1:2で混合し、反応容器中に窒素ガスを導入しながら攪拌し、150〜180℃の範囲にまで昇温し、その状態で放置する。同時に副生する水を除去するため、圧力を20mmHg(≒2.67kPa)の減圧とする。放置して約1時間半経過後、p−トルエンスルホン酸、酢酸カルシウム、オクチル酸カルシウム、ジブチル錫ジラウレート及びオクチル酸第1錫から選ばれるいずれかの触媒をダイマー酸1モル当たり0.2〜0.8g添加する。放置して約2時間後には、反応生成物の酸価が5.0以下となり、この時点を反応終了期とする。その後、反応生成物を常温にまで徐々に降温し、ダイマー酸ジステアリルを得る。
【0033】
なお、撥水剤としては、ダイマー酸ジステアリルに限定されず、他の撥水剤であってもよい。たとえば、他の撥水剤としては、タービン油等の潤滑剤を挙げることができる。
(粒状抗菌防カビ剤)
粒状抗菌防カビ剤は、たとえば、抗菌防カビ性ガラスの微粒子を、粒状セラミック表面に担持させたものである。これらのものは、ZnOを50〜80モル%、B25および/またはP25を20〜50モル%含有し、アルカリ金属酸化物の含有割合が0〜1モル%であるガラスの微粒子を粒状のセラミック表面に担持させたものである。又、好ましいZnOの含有割合は、55〜75モル%であり、より好ましくは60〜70モル%である。ZnOはガラスに抗菌防カビ性能を付与するために必要な成分である。しかし、ZnOは80モル%より多く配合すると安定してガラス化させにくく、50モル%未満ではガラスの抗菌防カビ性が不十分となる。
【0034】
25および/またはP25の好ましい含有割合は、25〜45モル%であり、より好ましくは30〜40モル%である。B25および/またはP25を50モル%より多く配合すると、ガラス微粒子の水溶解性が過大となるため、抗菌防カビ性、耐変色性及び耐水性が損なわれ、20モル%未満では安定したガラスが得られにくい。
【0035】
前記アルカリ金属酸化物は、アルカリ金属Na、KおよびLiの酸化物であり、これらの金属酸化物の内の2ないし3種を併用してもよい。ガラス微粒子中のアルカリ金属酸化物の含有割合は1モル%以下が好ましい。アルカリ金属酸化物の含有割合が1モル%より大きいと、ガラスの水溶解性は極めて大きくなり、抗菌性、耐変色性及び耐水性が損なわれる。
【0036】
抗菌防カビ性ガラス中のガラス形成成分は、B25またはP25である。しかし、所望によりその他のガラス形成成分を追加してもよい。その他のガラス形成成分の好ましい例として、SiO2、Al23、TiO2、およびZrO2等がある。
【0037】
ガラスの微粒子の粒径は、粒状セラミックの表面に付着しやすい大きさであることが必須であるため、0.1〜100μmが好ましく、0.1〜50μmがさらに好ましい。なお、ガラスの微粒子を製造する方法には制限はなく、既知の製造技術の範囲内で製造できる。
【0038】
粒状セラミックは、天然あるいは人工的に作製された無機質固体材料、およびソーダ系ガラス、石英系ガラス、ホウケイ酸系ガラス、アルミノケイ酸塩系ガラスなど各種ガラスが使用できる。すなわち、粒状セラミックスは、セラミックス、窯業製品、ガラスなどから選ばれ、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、ムライト、ガラス等のビーズあるいはボールなどが使用でき、さらに天然の石、砂、鉱物あるいはこれらを加工したものなども使用できる。
【0039】
又、粒状セラミックは、ガラス微粒子の軟化温度(即ち550〜750℃)以下では、軟化、溶融、分解などの物理的、化学的変化を起こさず安定であるセラミックが好ましい。形状は球状、円柱状、円盤状、立方体状、直方体状、さらには、不定形状のものなど特に限定されるものではないが、割れなどが起きにくく耐久性の高い球状が好ましい。
【0040】
粒状抗菌防カビ剤の粒径は、0.1〜5mmが好ましい。0.1mm未満では、ガラスの微粒子の付着量が少なくなる。又、粒状抗菌防カビ剤の粒径が5mmを超えると、粒状抗菌防カビ剤単位重量当たりの表面積が小さくなり抗菌効果が低下する。なお、最終的に得られる粒状抗菌防カビ剤の粒径はその原料である粒状セラミックの粒径に近似したものとなる。
【0041】
なお、ガラスの微粒子と粒状セラミックとの配合割合は、粒状セラミックの全表面積を覆う以上のガラスの微粒子を使う必要はない。又、ガラスの微粒子は粒状セラミックに混合し、その混合物をガラスの軟化温度以上に加熱し、その後冷却固化することにより粒状セラミック表面に付着担持されるため、粒状セラミック表面にガラス微粒子を担持するための結合剤は特に必要ない。
【0042】
粒状抗菌防カビ剤の、ポリオール類に対する割合は、100質量部のポリオール類に対して、前記粒状抗菌防カビ剤は1〜20質量部で混合することが好ましい。
前記粒状抗菌防カビ剤が、1質量部未満では、粒状抗菌防カビ剤が少なくて防カビ性の欠如がみられる。又、粒状抗菌防カビ剤が、20質量部を超えると、発泡が阻害され、硬さ(N)が下がり、物理的強度の低下が生ずるため好ましくない。
【0043】
(発泡体の密度)
発泡体の密度は、25〜55kg/mが望ましい、25kg/m未満の低密度であると、撥水性が保持されないため、この結果、止水性が好適に得られず、55kg/mを超えると、高コストになるとともに、ガスケット装着性に問題がある。密度の好ましい範囲は、35〜45kg/mである。
【0044】
(ポリウレタン発泡体の製造)
ポリウレタン発泡体の製造は、下記のように行う。
ポリウレタン発泡体を製造する場合には、ポリオール類とポリイソシアネート類とを直接反応させるワンショット法、或いはポリオール類とポリイソシアネート類とを事前に反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得、それにポリオール類を反応させるプレポリマー法のいずれも採用される。
【0045】
いずれの場合も、粒状抗菌防カビ剤及び撥水剤をポリオール類に配合して十分に攪拌した混合液にするものとする。そして、前記ポリオールを含む混合液とポリイソシアネート類の混合液、或いはプレポリマーと、前記ポリオールを含む混合液に、発泡剤を混和し、整泡剤、触媒、金属触媒を添加することにより、発泡させる。
【0046】
ポリウレタン発泡体としては、スラブポリウレタン発泡体が好ましい。ポリウレタン発泡体は混合攪拌された反応原料(反応混合液)をベルトコンベア上に吐出し、該ベルトコンベアが移動する間に反応原料が常温、大気圧下で自然発泡し、硬化することで得られる。その後、乾燥炉内で硬化(キュア)し、所定形状に裁断される。スラブポリウレタン発泡体として得られたものを、適宜の形状に裁断して、たとえば、止水性ガスケットとする。なお、該止水性ガスケットは、使用する目的に応じて形状を設定する。
【0047】
その他、モールド成形法、現場施工スプレー成形法等によってポリウレタン発泡体を得ることができる。
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。 ・ 実施形態において、撥水剤により、止水性好適に得ることができる。特に、撥水剤として疎水性のエステルを使用すると、発泡体に接する被着体等との界面に該エステルが適度に浸出し、両者の密着性が高められるため、優れた止水性をもつことができる。
【0048】
・ 実施形態において、粒状抗菌防カビ剤は、発泡を阻害しないため、好適に抗菌防カビ性を得ることができる。特に、抗カビ性を持たせるためには、カビ以外の一般的な菌に対して抗菌性を持たせる場合よりも通常10〜1000倍の量が必要となるが、抗カビ性を得るために、多量の液状の抗菌剤を使用した場合には、ウレタンフォームを形成するために配合したとしても配合バランスが著しく崩してしまい、発泡することが困難である。
【0049】
それに対して、本実施形態では、粒状抗菌防カビ剤を多く使用しても、発泡のための配合バランスが崩れることがないため、好適に発泡でき、かつ抗カビ性を得ることができる。
【0050】
・ 実施形態によれば、発泡体の密度を、25〜55kg/mとすることにより、撥水性が保持でき、この結果、止水性が好適に得ることができ、密度がこの範囲にあると低コストにすることができるとともに、ガスケット装着性に問題を生じることがない。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜6並びに比較例1〜8)
まず、各実施例及び比較例で用いたポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤、整泡剤、触媒、金属触媒よりなるポリウレタン発泡体原料を以下に示す。又、撥水剤をA,Bとし、ポリオール類については、2つを使用しているため、ポリオールA,Bとする。
【0052】
ポリオールA:ポリエステルポリオール:商品名;NH−405、官能基数3、水産基価56.1(mgKOH/g)、分子量3000、三洋化成(株)製。
ポリオールB:ポリエーテルポリエステルポリオール:商品名;L−50、官能基数3、水産基価56.1(mgKOH/g)、分子量3000、三井武田ケミカル(株)製。
【0053】
撥水剤A:ダイマー酸ジステアリル。
撥水剤B:タービン油(新日本石油(株)製)。
発泡剤(水):水道水。
【0054】
触媒:アミン系 N,N−ジメチルアミノエタノール。
金属触媒:有機酸金属錫塩: N,N−ジメチルアミノエタノール(DMAE):商品名;スタナスオクトエート,日本乳化剤株式会社製。
【0055】
整泡剤:水酸基含有ポリアルキルシロキサン共重合体:商品名;SH−193,東レダウコーニング(株)製。
ポリイソシアネート:商品名;T−80、[2,4−TDI/2,6−TDIの80/20(質量比混合物)]、イソシアネートインデックス117、日本ポリウレタン(株)製。
【0056】
抗菌剤A:2-(4-thiazolyl)-benzimidazole(TBZ)
抗菌剤B:含窒素硫黄系化合物と有機ヨウ素系化合物;ホクホードA、北興化学工業(株)製
抗菌剤C:銀含有有機無機化合物;ノバロンAG1100、東亜合成(株)製
抗菌剤D(粒状抗菌防カビ剤):有機無機化合物 カビノン800;東亜合成(株)製
なお、各実施例及び比較例の製造は、前記実施形態で説明した方法で行った。
【0057】
【表1】

【0058】
(実施例及び比較例の評価方法)
密度(kg/m3): JIS K6400に準じて測定した。
硬さ(N): JIS K6400に準じて測定した(すなわち、ポリウレタンの試験片の厚さの40%まで圧縮したときの、力を求めた。)
止水試験: U字型にポリウレタンフォームを打ち抜き加工し、所定量の水を入れ、24時間後の水漏れがないかを目視確認した。
【0059】
防カビ抵抗性試験(ハロー試験): ポテトデキストロース寒天培地上にAspergillus niger(黒麹カビ)を懸濁させた液を200mlまきかけ、引き伸ばした上で、所定寸法のポリウレタンフォームを該培地へ載せ、7日後のカビの発育状況を目視で確認した。
【0060】
【表2】

【0061】
表2に示すように、比較例2,4では、抗菌剤A,Bは、液状であり、添加量が多いと、反応阻害が著しく生じたため、発泡せずポリウレタンフォーム製品は全く得られない。
又、比較例1,3では、抗菌剤A,Bの添加量は、少ないため、反応阻害が生ぜず、発泡してポリウレタンフォーム製品が得られたが、防カビ性の保持が難しく、カビの発育を止めることができなかった。又、比較例1,3は、発泡が可能ではあったが、配合バランスが崩れてしまい、止水性が損なわれている。
【0062】
有機無機系の抗菌剤Cが混合された比較例5,6は、止水性は、損なわれていないが、防カビ性の保持ができなかった。
抗菌剤Dが0.5部が混合された比較例7は、防カビ性の保持ができなかった。一方、抗菌剤Dが21部が混合された比較例8は、発泡状態が不良となるとともに、硬さにおいて、物理的強度の低下が認められた。
【0063】
それに対して、抗菌剤Dが1部が混合された実施例1、及び抗菌剤Dが20部が混合されたでは、いずれも発泡状態は、良好であり、止水性、及び防カビ性が損なわれることがなく、さらに、硬さにおいても、物理的強度の低下がみられることはなかった。
【0064】
又、防カビ性Dは、撥水剤A,Bのいずれを併用しても、止水性の効果がある。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ ポリエステルポリオールとして、ラクトン系ポリエステルポリオール又はポリカーボネート系ポリエステルポリオールを用いることもできる。
【0065】
・ 整泡剤として、ノニオン系界面活性剤、フッ素系整泡剤等を併用することもできる。
・ ポリウレタン発泡体原料にはその他必要に応じて、架橋剤、充填剤、安定剤、着色剤、難燃剤、可塑剤等を配合することもできる。
【0066】
・ ポリウレタン発泡体は、ガスケット以外の水周りの部品等に使用してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状抗菌防カビ剤と撥水剤を含んでなるポリウレタン発泡体。
【請求項2】
前記ポリウレタン発泡体は、ポリオール類とポリイソシアネートを含む発泡組成物を発泡、硬化させたものであり、
100質量部の前記ポリオール類に対して、前記粒状抗菌防カビ剤は1〜20質量部混合されていることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項3】
前記粒状抗菌防カビ剤の粒径が0.1〜5mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項4】
前記撥水剤は、ダイマー酸ジステリアルを含んでなる請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項5】
前記ポリオール類には、ポリエーテルポリエステルポリオールを含むことを特徴とする請求項2乃至請求項4のうちいずれか1項に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載のポリウレタン発泡体から形成された止水性ガスケット。

【公開番号】特開2007−16070(P2007−16070A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196470(P2005−196470)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】