説明

ポリウレタン系樹脂組成物

【課題】手袋等の成形品としたときに、柔軟性、密着性に加え、快適さ、触知性を有し、かつ、十分な引き裂き抵抗や破壊抵抗等を与えることができるポリウレタン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】下記(A)成分及び(B)成分とを反応させて得られるカルボニル基含有ポリウレタンと、多価ヒドラジド化合物とを含有するポリウレタン系樹脂組成物を用いる。
(A)多価ヒドロキシ化合物と多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有プレポリマー。
(B)カルボニル基含有不飽和単量体と多価アミン化合物とのミカエル付加生成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポリウレタン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
IT製品等の組み立て工程等の細かく、かつ、防塵等が必要な作業において使用される手袋としては、密着性、柔軟性、快適さ、触知性(手袋を通しての物体の感じやすさ)、十分な引き裂き抵抗や破壊抵抗等が求められる。このような手袋としては、ウレタン製の手袋が知られている(特許文献1等参照)。
【0003】
しかし、上記のウレタン製手袋に使用されるウレタンは、有機溶剤を用いた溶液重合反応で製造されたものであり、環境負荷の観点から問題がある。また、手袋は、直接、人体に接触することから、より高度の衛生性が求められている。
【0004】
これらの問題点を解決するため、近年、水系システムが検討されている。この水系システムで得られる樹脂の一例としては、アクリルエマルジョンがあげられる。このアクリルエマルジョンは、手袋等に成形した場合、耐候性や光沢には優れるものの、密着性や柔軟性に欠けるという問題点を有する。
【0005】
これに対し、水性ポリウレタンとアクリルエマルジョンを混合した混合樹脂を用いることにより、密着性や柔軟性を付与することが、特許文献2等に開示されている。
【0006】
しかし、上記の混合樹脂を構成する水性ポリウレタンとアクリルエマルジョンとは、相溶性がよくないため、必ずしも柔軟性を付与することができない。これに対し、水性ポリウレタンプレポリマーとアクリルエマルジョンとを、多官能ヒドラジド化合物等を介して反応させることにより、水性ポリウレタンとアクリルエマルジョンとの結合体を得たり、水性ポリウレタンプレポリマーに(メタ)アクリルアミドスルホン酸塩とジアミンとの付加反応生成物を反応させることにより、水性ポリウレタンを得る方法が、特許文献3や4に開示されている。これらの結合体や水性ポリウレタンは、十分に密着性や柔軟性を付与することができる。
【0007】
【特許文献1】特許第3221995号公報
【特許文献2】特開平4−81447号公報
【特許文献3】特開平10−265735号公報
【特許文献4】特開平7−228660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の結合体や水性ポリウレタンは、強度や弾性が十分とはいえず、十分な引き裂き抵抗や破壊抵抗が得られなかったり、触知性が劣っていたりする場合がある。
【0009】
そこで、この発明は、手袋等の成形品としたときに、柔軟性、密着性に加え、快適さ、触知性を有し、かつ、十分な引き裂き抵抗や破壊抵抗等を与えることができるポリウレタン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、下記(A)成分及び(B)成分とを反応させて得られるカルボニル基含有ポリウレタンと、多価ヒドラジド化合物とを含有するポリウレタン系樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決したのである。
(A)多価ヒドロキシ化合物と多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有プレポリマー。
(B)カルボニル基含有不飽和単量体と多価アミン化合物とのミカエル付加生成物。
【発明の効果】
【0011】
この発明にかかるウレタン樹脂組成物は、所定のカルボニル基含有ポリウレタンと多価ヒドラジド化合物からなるので、弾力性や強度が向上し、手袋等の成形品としたときに、柔軟性、密着性に加え、快適さ、触知性を有し、かつ、十分な引き裂き抵抗や破壊抵抗等を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明にかかるポリウレタン系樹脂組成物は、下記(A)成分及び(B)成分とを反応させて得られるカルボニル基含有ポリウレタンと、多価ヒドラジド化合物とを含有する組成物である。
【0013】
(A)成分:多価ヒドロキシ化合物と多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有プレポリマー。
(B)成分:カルボニル基含有不飽和単量体と多価アミン化合物とのミカエル付加生成物。
【0014】
上記(A)成分を構成する末端イソシアネート基含有プレポリマーの原料成分の1つである多価ヒドロキシ化合物とは、ヒドロキシル基を複数有する化合物をいい、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、メチルペンタンジオールアジペート等の比較的低分子量のジオールの他、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルエーテルジオール、ポリカーボネートジオールのポリマータイプのジオール等があげられ、これらの1種又は複数種を用いることができる。
【0015】
上記ジオールとしては、得られる成形品の柔軟性と強度のバランスの点から、ポリマータイプのジオールが好ましく、中でも、ポリエステルエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールの少なくとも1種が好ましい。
【0016】
ところで、上記多価ヒドロキシ化合物としては、カルボキシル基を含有するものを併用することが好ましい。このカルボキシル基含有多価ヒドロキシ化合物としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のジメチロールアルカン酸があげられる。
【0017】
上記(A)成分を構成する末端イソシアネート基含有プレポリマーの原料成分の1つである多価イソシアネート化合物とは、イソシアネート基を複数有する化合物をいい、各種の脂肪族、脂環式、芳香族等の有機系の多価イソシアネート化合物を用いることができる。この多価イソシアネート化合物の具体例としては、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート等があげられ、これらの1種又は複数種を用いることができる。
【0018】
上記末端イソシアネート基含有プレポリマーは、上記の多価ヒドロキシ化合物と多価イソシアネート化合物とを反応させることにより得られる。この反応方法としては、通常のウレタン重合反応を用いればよい。
【0019】
この反応は、無溶媒でも行うことができるが、反応を均一に進めるため、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等のイソシアネート基と反応性がなく、かつ、水との親和性の大きい有機溶媒を用いてもよい。反応は、通常30〜120℃程度で、0.1〜20時間程度、好ましくは、50〜100℃程度で0.5〜10時間程度行えばよい。
【0020】
上記多価ヒドロキシ化合物と多価イソシアネート化合物との混合比は、得られるプレポリマーの末端がイソシアネート基となるように、多価イソシアネート化合物がより多い方が好ましく、具体的には、両官能基の当量比で、ヒドロキシル基/イソシアネート基=1/1.1〜1/2.5が好ましく、1/1.2〜1/2がより好ましい。1/2.5より小さいと、未反応のイソシアネートが多く残存して、水分散時に凝集したり、粒子径が粗大化することがある。一方、1/1.1より大きいと、反応時の粘度が高くなって、水分散の状態が悪化したり、ウレタン中へのカルボニル基の導入量が少なくなったりすることがある。
【0021】
得られる末端イソシアネート基含有プレポリマーの数平均分子量は、100〜100,000がよく、500〜50,000が好ましい。100より小さいと、得られる皮膜の強度が低下する傾向がある。一方、100,000より大きいと、凝集物が発生しやすくなり、分散液の安定性が低下する傾向がある。
【0022】
上記(B)成分を構成するミカエル付加生成物の原料成分の1つであるカルボニル基含有不飽和単量体とは、不飽和結合のα位にカルボニル基を有する化合物をいい、例としては、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、パラホルミルスチレン、ビニルメチルケトン、ビニルブチルケトン、ビニルアセトフェノン、ビニルベンゾフェノン、ジアセトンメタクリレート、ジアセトンアクリレート、アセトニトリルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート等があげられ、これらの1種又は複数種を用いることができる。
【0023】
上記(B)成分を構成するミカエル付加生成物の原料成分の1つである多価アミン化合物とは、上記カルボニル基含有不飽和単量体とミカエル付加物を生成できる1級アミノ基を複数有する化合物をいう。このような化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルジメタンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、水素添加トリレンジアミン、水素添加キシレンジアミン、水素添加ジフェニルメタンジアミン、水素添加テトラメチルキシレンジアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン等のポリアミンやカルボヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド、イソフタル酸ヒドラジド等のジカルボン酸ヒドラジド等があげられる。これらの中でも、エチレンジアミン等の二価アミン化合物がより好ましい。
【0024】
上記(B)成分を構成するミカエル付加生成物は、上記のカルボニル基含有不飽和単量体と多価アミン化合物を、有機溶媒又は水溶液中で10〜100℃程度の温度で0.1〜5時間程度、混合、攪拌することにより、製造することができる。なお、この反応の完了は、生成する水溶液の赤外吸光分析により、1409cm-1の不飽和基の吸収が消失していることにより確認できる。
【0025】
上記カルボニル基含有不飽和単量体の不飽和基と、上記多価アミン化合物のアミノ基との当量比は、不飽和基/アミノ基=0.1〜5がよく、0.5〜1が好ましい。0.1より小さいと、ウレタン骨格中のカルボニル基の量が少ないため、架橋密度が低くなって、生成する皮膜の強度が不十分となることがある。一方、5より大きいと、未反応のカルボニル基含有不飽和単量体が残留して、耐水性が悪化したり、環境に悪影響を及ぼすおそれがあり、また、生成する皮膜の強度や伸びを低下させることがある。
【0026】
上記(A)成分と(B)成分を反応させることにより、カルボニル基含有ポリウレタンが製造される。条件としては、上記(A)成分に(B)成分を添加し、30〜80℃程度で1〜120分間程度、混合、攪拌することにより、製造することができる。
【0027】
このときの(A)成分と(B)成分の混合比は、(A)成分中のイソシアネート基と(B)成分中の1級若しくは2級アミノ基の当量比が、0.5〜10になるようにするのがよく、好ましくは、1〜5になるようにするのがよい。この当量比が0.5未満だと、未反応の(B)成分が残って、環境上、好ましくなく、また、ウレタンの分子量も低くなる傾向がある。一方、10より大きいと、ウレタン骨格に導入されるカルボニル基が少なくなって、架橋密度が低下し、皮膜の強度が不十分となることがある。
【0028】
上記(B)成分として、ミカエル付加物を用いて、(A)成分と反応させるが、ミカエル付加物を用いることにより、得られるカルボニル基含有ポリウレタンの分子量を高くすることができ、かつ、安定してウレタン骨格中にカルボニル基を導入することが可能となる。これに対し、上記ミカエル付加物の代わりにカルボニル基含有不飽和単量体を用いようとしても、このカルボニル基含有不飽和単量体とウレタンプレポリマー末端のイソシアネート基との反応は生じがたい。また、上記ミカエル付加物の代わりに、まず、多価アミン化合物を用いて、ウレタンプレポリマー末端のイソシアネート基を反応させ、ウレタンプレポリマーの末端をアミノ基にした後、カルボニル基含有不飽和単量体を反応させることが考えられるが、この場合は、得られるカルボニル基含有ポリウレタンの分子量が十分高くならず、性能が不十分となる傾向がある。
【0029】
上記の反応で得られるカルボニル基含有ポリウレタンは、そのまま使用してもよいが、使用時の環境上の問題から、水性分散液として用いることが好ましい。この水性分散液を得る方法としては、任意の方法があげられ、例えば、上記の反応で得られるカルボニル基含有ポリウレタンに水を加えて分散液とし、加熱して上記ポリウレタン系樹脂組成物に含まれる有機溶媒を除去する方法があげられる。
【0030】
このカルボニル基含有ポリウレタンの数平均分子量は、通常、5,000〜300,000であり、10,000〜100,000が好ましい。5,000より小さいと、生成する皮膜の強度が不足することがある。一方、300,000を超えると、凝集物が発生して、良好な分散液が得られにくくなる。
【0031】
上記カルボニル基含有ポリウレタン又はその水性分散液に、多価ヒドラジド化合物を加えることにより、この発明にかかるポリウレタン系樹脂組成物又はこれを含有する水性分散液を製造することができる。
【0032】
上記多価ヒドラジド化合物とは、ヒドラジノ基を複数有する化合物をいい、しゅう酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、デカンジカルボン酸ジヒドラジド、ヘキサデカンジカルボン酸ジヒドラジド等の飽和脂肪族ジカルボン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等の不飽和カルボン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、ナフトエ酸ジヒドラジド等の芳香族ジカルボン酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド等の水酸基含有ジヒドラジド、ニトリロトリ酢酸ジヒドラジド、トリメリット酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド等のトリカルボン酸トリヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等のテトラカルボン酸テトラヒドラジド、炭酸ジヒドラジド等の炭酸ポリヒドラジド、N,N’−ヘキサメチレンビスセミカルバジド等のビスセミカルバジド類、ポリアクリル酸ヒドラジド等の酸ヒドラジド系ポリマー等、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等があげられ、これらの1種又は複数種を用いることができる。
【0033】
上記のカルボニル基含有ポリウレタンのカルボニル基に対する、多価ヒドラジド化合物のヒドラジノ基の当量比は、カルボニル基/ヒドラジノ基=0.1〜2がよく、0.5〜1.5が好ましい。0.1より少ないと、架橋が過度に進行して、伸びが不十分となりやすい。一方、2より多いと、架橋密度が低くなって、得られる皮膜の強度が不十分となることがある。
【0034】
この発明にかかるポリウレタン系樹脂組成物又はこれを含む水性分散液には、必要に応じて、顔料、ブロッキング防止剤、分散安定剤、粘度調節剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機及び有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、触媒等の添加剤や、この水性分散液以外のポリエステルエマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン、ラテックス等のエマルジョンをブレンドしてもよい。
【0035】
この発明にかかるポリウレタン系樹脂組成物は、基材に塗布したり、それ自体をシート等にすることにより、弾性皮膜を形成することができる。
【0036】
この発明にかかるポリウレタン系樹脂組成物を100μmの厚さの膜としたときの破壊強度は、120kgf/cm2以上がよく、300kgf/cm2以上が好ましい。120kgf/cm2より低いと、用途によっては、引き裂き時の抵抗が不足することがある。一方、破壊強度の上限は、500kgf/cm2がよく、450kgf/cm2が好ましい。500kgf/cm2より高いと、膜自体の強度は高くなるが、逆に、その柔軟性が低下して、密着性や感触が悪化することがある。
【0037】
また、この発明にかかるポリウレタン系樹脂組成物を100μmの厚さの膜としたときの100%モジュラスは、20kgf/cm2以上がよく、25kgf/cm2以上が好ましい。20kgf/cm2より低いと、手袋とした際に、僅かな力で伸びるため、脱着しづらくなる傾向がある。一方、100%モジュラスの上限は、50kgf/cm2がよく、45kgf/cm2が好ましい。50kgf/cm2より高いと、手袋とした際に、通常の力では伸び難くなるため、装着がしにくくなる傾向がある。
【0038】
この発明にかかるポリウレタン系樹脂組成物は、弾性及び強度を十分に有するので、触知性を重要視されるIT製造工程用の手袋や手術用手袋等の材料として好適である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。まず、評価方法及び使用した原材料について説明する。
【0040】
(評価方法)
[エマルジョン安定性]
水性分散液を製造後、室温下で1ヶ月間放置した後、外観(透明性及び粘度)を目視で観察した。当初と変化の見られない場合を「○」、透明性の低下又は粘度上昇が見られる場合を「×」とした。
【0041】
[強伸度の測定]
得られた水性分散液を、フッ素樹脂製シート(淀川ヒューテック(株)製:ヨドフロンシート(商品名(商標)))上に皮膜厚が100μmとなるように塗布し、室温で一夜乾燥した。次いで、室温、減圧(30mmHg・abs)の条件下で5時間乾燥して、皮膜を作成した。
得られた皮膜を0.5mm幅となるように切り出し、試験片とした。そして、ダンベルSDK300(ダンベル社製)を用いて、23℃、50%Rhの測定雰囲気下、クロスヘッドスピード200mm/min、チャック間20mmの条件で、引張試験を行い、所定の伸度となるときの負荷量(強度:kgf/cm2)を測定した。
【0042】
(原材料)
[多価ヒドロキシ化合物]
・ブタンジオールアジペート…日立化成ポリマー(株)製:テスラック2468、OHV:56mgKOH/g、以下、「TL2468」と称する。(なお、「OHV」は、水酸基価(単位:mgKOH/g)を意味する。)
・ジメチロールプロピオン酸…マリンクロット ケミカル(Mallinckrodt Chemical Inc)社製、以下、「DMPA」と称する。
【0043】
[多価イソシアネート化合物]
・イソホロンジイソシアネート…デグサ−ヒュルス(Degussa−Huls)社製:ベスタナートIPDI、以下、「IPDI」と称する。
【0044】
[カルボキシル基含有不飽和単量体]
・ジアセトンアクリルアミド…協和発酵工業(株)製、以下、「DAAm」と称する。
【0045】
[多価アミン化合物]
・エチレンジアミン…和光純薬工業(株)製:試薬、以下、「EDA」と称する。
【0046】
[溶剤]
・アセトン…三菱化学(株)製
・メチルエチルケトン…和光純薬工業(株)製:試薬、以下、「MEK」と称する。
【0047】
[多価ヒドラジド化合物]
・アジピン酸ジヒドラジド…大塚化学(株)製:以下、「ADH」と称する。
・1,3−ビス−(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン…味の素(株)製:アミキュアVDH、以下、「VDH」と称する。
【0048】
[合成例1](ミカエル付加生成物の製造)
温度計、撹拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、DAAm101.5重量部、水160重量部を加えてよく攪拌し、DAAmを溶解させた。次いで、EDA36.1重量部を水160重量部に溶解させたものを滴下した後、温度を80℃に加温し、この温度で3時間反応して、黄色の透明な液体であるミカエル付加生成物1を得た。
【0049】
[合成例2](カルボニル基含有ポリウレタンを含有する水性分散液の製造)
温度計、撹拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、TL2468を119.1重量部、DMPAを5.4重量部、MEKを39.3重量部加え、内温を50℃とした。次いで、IPDIを33.3重量部加え、80℃に加温した後、この温度で5時間反応させて、ウレタンプレポリマーを製造した。
得られたウレタンプレポリマー溶液に、50℃にてアセトンを325.3重量部、トリエチルアミン4.1重量部を加えて、この反応生成物中のカルボキシル基を中和した。
次いで、この溶液に、上記ミカエル付加生成物1の19.1重量部を、2分間程度で滴下し、その後、蒸留水342.6重量部を50℃で15分間かけて滴下し、乳白色で透明性のある分散液を得た。
そして、この分散液を98℃まで徐々に昇温し、アセトンとMEKを除去して、カルボニル基含有ポリウレタン(数平均分子量:15,000)を含有する水性分散液を製造した。
【0050】
(実施例1〜2、比較例1)
上記の水性分散液、及び多価ヒドラジド化合物を表1に記載の割合で混合した。この混合した水性分散液を用いて、上記の評価を行った。その結果を表1に示す。
なお、多価ヒドラジド化合物は、20%水溶液として使用した。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分及び(B)成分とを反応させて得られるカルボニル基含有ポリウレタンと、多価ヒドラジド化合物とを含有するポリウレタン系樹脂組成物。
(A)多価ヒドロキシ化合物と多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有プレポリマー。
(B)カルボニル基含有不飽和単量体と多価アミン化合物とのミカエル付加生成物。
【請求項2】
上記多価ヒドロキシ化合物は、カルボキシル基含有多価ヒドロキシ化合物を含むものである請求項1に記載のポリウレタン系樹脂組成物。
【請求項3】
上記カルボニル基含有不飽和単量体の不飽和基と、上記多価アミン化合物のアミノ基との当量比が、不飽和基/アミノ基=0.1〜5である請求項1又は2に記載のポリウレタン系樹脂組成物。
【請求項4】
上記多価アミン化合物が二価アミン化合物である請求項1乃至3のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂組成物。
【請求項5】
上記カルボニル基含有不飽和単量体が、ジアセトンアクリルアミドである請求項1乃至4のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂組成物。
【請求項6】
上記多価ヒドラジド化合物が、アジピン酸ジヒドラジド、又は1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインである請求項1乃至5のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂組成物を含有する水性分散液。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂組成物から形成される弾性皮膜。
【請求項9】
100μmの厚さの膜としたときの破壊強度が120〜500kgf/cm2、100%モジュラスが20〜50kgf/cm2、破壊伸度が300〜800%であるポリウレタン系樹脂。

【公開番号】特開2006−28343(P2006−28343A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209637(P2004−209637)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000211020)中央理化工業株式会社 (65)
【Fターム(参考)】