説明

ポリエステル樹脂組成物、それよりなる延伸フィルム・シート及びそれを用いた包装材料

【課題】 耐衝撃性、耐熱性、透明性に優れる新規なポリエステル樹脂組成物、延伸フィルム・シート及びそれを用いた包装材料を提供する。
【解決手段】(a)ポリエステル樹脂100重量部に対し、(b)(b−1)下記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、(b−2)脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネートまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位と、(b−3)芳香族ポリエステル単位からなる熱可塑性樹脂0.1〜100重量部からなることを特徴とするポリエステル樹脂組成物、それよりなる延伸フィルム・シート及びそれを用いた包装材料。
【化1】


(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の二価のオキシアルキレン基、アルキレンカルバモイル基、またはアリーレンカルバモイル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐衝撃性、耐熱性、透明性に優れるポリエステル樹脂組成物、それよりなる延伸フィルム・シート及びそれを用いた包装材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル延伸フィルム・シートは機械強度、耐熱性に優れ、工業材料、磁気記憶材料、光学材料、情報材料、包装材料等の広い分野で使用されている。
【0003】
しかし、ポリエステル延伸フィルム・シートは急激に強い力が加わって破損することがあり、耐衝撃性の改良が望まれている。
【0004】
そこで、ポリエステル樹脂にエラストマー等をブレンドして耐衝撃性を改良する試みがなされており、例えばポリエステル樹脂にポリエステルエラストマーを配合し破断伸度や耐衝撃性を改良した組成物が提案されている(例えば、特許文献1〜2参照。)。またポリエステル樹脂に、ダイマー酸等の長鎖脂肪族成分を共重合したポリエステルを配合し、成形性、耐衝撃性、開口性に優れた延伸フィルムが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。さらにポリエステル樹脂にエポキシ鎖含有エラストマーを配合し保味保香性、耐衝撃性、耐バリアー性に優れた延伸フィルムが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−269311号公報
【特許文献2】特開2004−18742号公報
【特許文献3】特開2001−335650号公報
【特許文献4】特開2003−55483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜2に提案の組成物は、ポリエステル樹脂との相溶性が劣り耐衝撃性の改良効果が不充分である。また特許文献3に記載の方法も耐熱性には優れるものの、耐衝撃性の改良効果が不充分である等の課題を有している。また、特許文献4に記載の方法はポリエステル樹脂が有する耐熱性を損なうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、ポリエステル樹脂、ハードセグメントに特定の芳香族アミド単位を用いた新規な熱可塑性樹脂からなるポリエステル樹脂組成物、それよりなる延伸フィルム・シートが耐衝撃性、耐熱性、透明性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(a)ポリエステル樹脂、及び(b)(b−1)下記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、(b−2)脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネートまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位と、(b−3)芳香族ポリエステル単位からなる熱可塑性樹脂からなるポリエステル樹脂組成物、それよりなる延伸フィルム・シート及びそれを用いた包装材料に関するものである。
【0009】
【化1】

(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の二価のオキシアルキレン基、アルキレンカルバモイル基、またはアリーレンカルバモイル基を示す。)
以下に本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、(a)ポリエステル樹脂、及び(b)(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、(b−2)脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネートまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位と、(b−3)芳香族ポリエステル単位からなる熱可塑性樹脂からなるポリエステル樹脂組成物である。
【0011】
本発明のポリエステル樹脂組成物に用いる(a)ポリエステル樹脂は、特に制限は無く公知のものが使用できる。ポリエステル樹脂とは、主鎖中の主要な結合をエステル結合とする高分子の総称であって、通常ジカルボン酸成分とグリコール成分を重縮合反応させることによって得ることができる。ここでジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸等を挙げることができる。また、グリコール成分としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール;ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコールなどが挙げられる。これらの中でもジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸が好ましく、特にテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコールなどが好ましい。
【0012】
本発明でポリエステル樹脂組成物に用いる(a)ポリエステル樹脂は、前記ジカルボン酸成分と前記グリコール成分を重縮合反応させることにより得られるものであり、その中でも特にポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートよりなる群から選ばれる1種以上の樹脂であることが好ましい。
【0013】
本発明に用いる(a)ポリエステル樹脂は、機械特性、寸法安定性、耐熱性の観点から、融点は200〜300℃であることが好ましく、特に金属化合物や金属酸化物を蒸着する際の耐熱性の観点から、220〜270℃であるとことがさらに好ましい。
【0014】
本発明のポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂は、(b)(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、(b−2)脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネートまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位と、(b−3)芳香族ポリエステル単位からなる熱可塑性樹脂である。
【0015】
ここで熱可塑性樹脂を構成する(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位中のRおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の二価のオキシアルキレン基、アルキレンカルバモイル基、またはアリーレンカルバモイル基であり、R、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また直鎖状又は分岐状であってもよい。
【0016】
該オキシアルキレン基としては、例えばオキシエチレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基、オキシペンタメチレン基、オキシヘキサメチレン基等の無置換オキシアルキレン基またはこれらにメチル基、エチル基等のアルキル置換基もしくはフェニル基等のアリール置換基が1個以上結合したものが挙げられる。さらには、上記の無置換オキシアルキレン基単位やアルキルまたはアリール置換オキシアルキレン基単位が任意に2個以上結合したものであっても良く、これらの1種または2種以上が使用される。中でも、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましい。なお、これらオキシアルキレン基中の酸素は、一般式(1)において直接ベンゼン環に結合することが好ましい。
【0017】
該アルキレンカルバモイル基としては、例えばメチレンカルバモイル基、エチレンカルバモイル基、トリメチレンカルバモイル基、テトラメチレンカルバモイル基、ペンタメチレンカルバモイル基、2,2−ジメチルトリメチレンカルバモイル基、ネオペンチルカルバモイル基、ヘキサメチレンカルバモイル基、3−メチルペンタメチレンカルバモイル基、2−メチルヘプタメチレンカルバモイル基、ヘプタメチレンカルバモイル基、オクタメチレンカルバモイル基、ノナメチレンカルバモイル基、デカメチレンカルバモイル基、1,4−シクロヘキシレンカルバモイル基等を挙げることができ、これらの1種または2種以上が使用される。中でもエチレンカルバモイル基が好ましい。
【0018】
該アリーレンカルバモイル基としては、例えば2−ベンジルカルバモイル基、3−ベンジルカルバモイル基、4−ベンジルカルバモイル基、1,2−フェニレンカルバモイル基、1,3−フェニレンカルバモイル基、1,4−フェニレンカルバモイル基等を挙げることができ、これらの1種または2種以上が使用される。
【0019】
本発明のポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂を構成する(b−2)脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネートまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位とは、公知のものであれば特に制限はない。
【0020】
該脂肪族ポリエステルは、例えば脂肪族ジカルボン酸あるいは脂肪族ジカルボン酸無水物と短鎖ポリオールを縮合重合することによって得ることができる。該脂肪族ジカルボン酸あるいは脂肪族ジカルボン酸無水物としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用される。一方、該短鎖ポリオールとしては、例えば脂肪族、脂環式、芳香族、置換脂肪族または複素環式のジヒドロキシ化合物;トリヒドロキシ化合物;テトラヒドロキシ化合物等を挙げることでき、具体的な短鎖ポリオールとしては、例えば1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ブテンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカメチレンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、2−メチルプロパン−1,2,3−トリオール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用される。
【0021】
該脂肪族ポリエステルを得る別の方法として、例えばβ−プロピオラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、メチル−ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、トリメチル−ε−カプロラクトン等のラクトン化合物の1種または2種以上をヒドロキシ化合物と共に反応せしめる方法によることも可能である。
【0022】
該脂肪族ポリカーボネートとしては、例えばヒドロキシ化合物の1種または2種以上と、ジアリルカーボネート、ジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート等のカーボネート化合物とのエステル交換法によって得られたものが挙げられ、具体的な脂肪族ポリカーボネートとしては、例えばポリ(1,6−ヘキサメチレンカーボネート)、ポリ(2,2’−ビス(4−ヒドロキシヘキシル)プロピレンカーボネート)等が挙げられる。また、脂肪族ポリカーボネートを得る他の方法としては、いわゆるホスゲン法によっても得ることもできる。
【0023】
本発明のポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂を構成する(b−3)芳香族ポリエステル単位とは、公知のものであれば特に制限はない。
【0024】
該芳香族ポリエステル単位は、例えば芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分を重縮合反応させることによって得ることができる。ここで芳香族ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸、フタル酸などを挙げることができる。また、グリコール成分としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール;ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコールなどが挙げられる。これらの中でもジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸が好ましく、特にテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコールなどが好ましい。
【0025】
そして、具体的な(c)芳香族ポリエステル単位としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートよりなる群から選ばれる1種以上の単位が挙げられる。
【0026】
本発明のポリエステル樹脂組成物に用いるこれらの熱可塑性樹脂の中でも、耐熱性に優れたポリエステル樹脂組成物が得られることから、熱可塑性樹脂が、(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位と(b−2)脂肪族ポリエステル単位と、(b−3)芳香族ポリエステル単位からなることが好ましく、特に(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位と(b−2)ポリ(ε−カプロラクトン)単位と、(b−3)ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートよりなる群から選ばれる1種以上の単位からなることが好ましい。
【0027】
本発明のポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂は、(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、(b−2)脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネートまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位と、(b−3)芳香族ポリエステル単位が直接結合していても、他の化合物残基を含有していても良い。他の化合物残基としては、例えば二官能性ハライド化合物、二官能性イソシアネート化合物、二官能性カーボネート化合物、二官能性エステル化合物、二官能性アシルラクタム化合物、二官能性エポキシ化合物、二官能性テトラカルボン酸無水物等から誘導される化合物残基が挙げられ、これらの1種または2種以上を含有していても良い。
【0028】
二官能性ハライド化合物から誘導される化合物残基としては、例えばシュウ酸ジクロライド、マロン酸ジクロライド、コハク酸ジクロライド、グルタル酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、ピメリン酸ジクロライド、スベリン酸ジクロライド、アゼライン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライド、ドデカン酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、フタル酸ジクロライド等の二官能性酸クロライドから誘導される化合物残基;シュウ酸ジブロマイド、マロン酸ジブロマイド、コハク酸ジブロマイド、グルタル酸ジブロマイド、アジピン酸ジブロマイド、ピメリン酸ジブロマイド、スベリン酸ジブロマイド、アゼライン酸ジブロマイド、セバシン酸ジブロマイド、ドデカン酸ジブロマイド、テレフタル酸ジブロマイド、イソフタル酸ジブロマイド、フタル酸ジブロマイド等の二官能性酸ブロマイドから誘導される化合物残基等が挙げられ、その中でも反応性に優れ、効率よくポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂が得られることから、アジピン酸ジクロライドから誘導される化合物残基が好ましい。
【0029】
二官能性イソシアネート化合物から誘導される化合物残基としては、例えばジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等から誘導される化合物残基が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。その中でも反応性に優れ、効率よくポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂が得られることから、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等から誘導される化合物残基が好ましく、特にヘキサメチレンジイソシアネートから誘導される化合物残基が好ましく用いられる。
【0030】
二官能性カーボネート化合物から誘導される化合物残基としては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等から誘導される化合物残基が挙げられ、その中でも反応性に優れ、効率よくポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂が得られることから、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等から誘導される化合物残基が好ましい。
【0031】
二官能性エステル化合物から誘導される化合物残基としては、例えばテレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル、フタル酸ジフェニル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジフェニル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジフェニル、4,4−ビフェニルジカルボン酸ジフェニル、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、フタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、4,4−ビフェニルジカルボン酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジエチル、フタル酸ジエチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジエチル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジエチル、4,4−ビフェニルジカルボン酸ジエチル等から誘導される化合物残基が挙げられ、その中でも反応性に優れ、効率よくポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂が得られることから、テレフタル酸ジフェニル、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジメチル等から誘導される化合物残基が好ましい。
【0032】
二官能性アシルラクタム化合物から誘導される化合物残基としては、例えばテレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)、イソフタロイルビス(ε−カプロラクタム)、アジポイルビス(ε−カプロラクタム)、スクシニルビス(ε−カプロラクタム)等から誘導される化合物残基が挙げられ、その中でも反応性に優れ、効率よくポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂が得られることから、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)から誘導される化合物残基が好ましい。
【0033】
二官能性エポキシ化合物から誘導される化合物残基としては、例えばテレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル等の芳香族ジカルボン酸ジグリシジルエステルから誘導される化合物残基;p−フェニレンジグリシジルエーテル等の芳香族ジグリシジルエーテルから誘導される化合物残基;ジエチレングリコールジグリシジルエステル等の脂肪族ジカルボン酸ジグリシジルエステルから誘導される化合物残基;ジエチレングリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族ジカルボン酸ジグリシジルエーテルから誘導される化合物残基等が挙げられる。
【0034】
二官能性テトラカルボン酸無水物から誘導される化合物残基としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等から誘導される化合物残基が挙げられる。
【0035】
本発明のポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂が柔軟で伸縮性に優れることから、(b−2)脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネートまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる単位と、(b−3)芳香族ポリエステル単位の数平均分子量は200〜10000の範囲であることが好ましく、特に300〜5000の範囲であることが好ましい。
【0036】
本発明のポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂における(b−1)芳香族アミド単位の含有量は特に制限はなく、耐衝撃性、環境温度安定性、耐熱性に優れたポリエステル樹脂組成物が得られることから、芳香族アミド単位の含有量は2〜95重量%の範囲であることが好ましく、特に2〜50重量%の範囲であることが好ましく、さらに5〜40重量%の範囲であることが好ましい。
【0037】
本発明のポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂における(b−2)脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネートまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる単位の含有量は特に制限はなく、柔軟性、耐熱性に優れたポリエステル樹脂組成物が得られることから、(b−2)脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネートまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる単位の含有量は10〜90重量%の範囲であることが好ましく、特に20〜80重量%の範囲であることが好ましく、さらに25〜80重量%の範囲であることが好ましい。
【0038】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂における(b−3)芳香族ポリエステル単位の含有量は特に制限はなく、耐衝撃性、環境温度安定性、耐熱性に優れたポリエステル樹脂組成物が得られることから、(b−3)芳香族ポリエステル単位の含有量は0.1〜70重量%の範囲であることが好ましく、特に0.5〜60重量%の範囲であることが好ましく、さらに5〜60重量%の範囲であることが好ましい。
【0039】
本発明のポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCと記す。)で測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の数平均分子量は5000〜1000000であることが好ましく、特に10000〜500000であることが好ましく、さらに10000〜100000であることが好ましい。また、該熱可塑性樹脂は、硬さがタイプAデュロメータ硬さ(JIS K6253:1997年)が50〜99であることが好ましく、特に65〜99であることが好ましく、さらに70〜99であることが好ましい。
【0040】
本発明のポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂の配合量は、特に制限はなく、その中でも耐衝撃性に優れるポリエステル樹脂組成物が得られることから、ポリエステル樹脂100重量部に対し、0.1〜100重量部が好ましく、特に0.5〜80重量部が好ましく、さらに10〜80重量部が好ましい。
【0041】
本発明のポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂の製造方法としては、(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、(b−2)脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネートまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位と、(b−3)芳香族ポリエステル単位からなる熱可塑性樹脂を製造することが可能な限りにおいていかなる方法を用いてもよく、例えば(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位を含み両末端にカルボン酸基あるいは水酸基を有するモノマーと、(b−2)両末端に水酸基あるいはカルボン酸基を含有する脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネートまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位を含有する化合物と(b−3)芳香族ポリエステル単位を含有する化合物を直接反応させる方法;(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位を含み両末端に水酸基を有するモノマーと、(b−2)両末端に水酸基を含有する脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネートまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位と(b−3)芳香族ポリエステル単位を含有する化合物を反応させる際に、二官能性ハライド化合物、二官能性イソシアネート化合物、二官能性カーボネート化合物、二官能性エステル化合物、二官能性アシルラクタム化合物、二官能性エポキシ化合物、二官能性テトラカルボン酸無水物等よりなる群から選ばれる1種以上の鎖延長剤単位の存在下に反応させる方法;(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位を含み両末端に水酸基を有するモノマーと、(b−2)ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を反応しプレポリマーを得た後、(b−3)芳香族ポリエステル単位を含有する化合物を添加、エステル交換反応させた後、上述した鎖延長剤を1種以上添加し反応させる方法;(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位を含み両末端に水酸基を有するモノマーと、(b−2)ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を反応しプレポリマーを得た後、上述した鎖延長剤を1種以上添加し反応させた後、(b−3)芳香族ポリエステル単位を含有する化合物を添加し、エステル交換反応させる方法等が挙げられる。その中でも容易に分子量を増大させた熱可塑性樹脂が得られることから、(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位を含み両末端に水酸基を有するモノマーと、(b−2)ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を反応しプレポリマーを得た後、(b−3)芳香族ポリエステル単位を含有する化合物を添加、エステル交換反応させた後、上述した鎖延長剤を1種以上添加し反応させる方法;(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位を含み両末端に水酸基を有するモノマーと、(b−2)ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を反応しプレポリマーを得た後、上述した鎖延長剤を1種以上添加し反応させた後、(b−3)芳香族ポリエステル単位を含有する化合物を添加し、エステル交換反応させる方法が好ましく、特に、透明性に優れるポリエステル樹脂組成物が得られることから、(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位を含み両末端に水酸基を有するモノマーと、(b−2)ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を反応しプレポリマーを得た後、(b−3)芳香族ポリエステル単位を含有する化合物を添加、エステル交換反応させた後、上述した鎖延長剤を1種以上添加し反応させる方法が好ましい。前記方法における重合方法としては、例えば溶液重合法、溶融重合法、界面重合法、固相重合法等が挙げられ、これらを組み合わせて製造してもよい。その中でも容易に分子量を増大させた熱可塑性樹脂が得られることから、溶液重合法を行った後に溶融縮合を行うことが好ましい。
【0042】
本発明のポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂の製造の際、より反応効率を促進するために触媒を用いることが好ましく、該触媒としては、一般にラクトン化合物の開環重合反応で用いるものまたは一般にポリエステルを製造する際にエステル交換反応で用いるものを使用でき、例えば無機塩基、無機酸、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド等の化合物が挙げられ、詳細には、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、コバルト、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、砒素、セリウム、硼素、カドミウム、マンガン、タングステン、モリブデン等の金属酸化物;これらの金属を含む有機金属化合物;これらの金属のハロゲン化物;これらの金属のアルコキシド等が挙げられ、特に低毒性であり、反応性、無着色性、耐安定性のバランスに優れる触媒であることから、有機スズ化合物、有機チタン化合物等が好ましい。
【0043】
該有機スズ化合物の具体例としては、例えばスズテトラアセテート、モノブチルスズヒドロキサイドオキサイド、モノブチルスズトリ−2−エチルヘキサノエート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジラウレート、スズジオクタノエート等が挙げられる。また、該有機チタン化合物の具体例としては、例えばテトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラエチルチタネート等が挙げられる。熱可塑性樹脂を製造する際には、上記触媒を単独でも使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0044】
触媒の使用量としては、熱可塑性樹脂が得られる限りにおいて特に制限はなく、その中でも特に反応効率に優れ、得られる熱可塑性樹脂が色相、熱安定性に優れることから(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、(b−2)脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネートまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位の合計量に対して、0.0001〜0.2重量%であることが好ましく、特に0.0005〜0.05重量%であることが好ましい。
【0045】
本発明のポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂には、加工時の熱安定性、耐熱性等を向上するために、5価のリン化合物を添加してもよく、5価のリン化合物としては、5価のリン化合物であれば如何なるものでもよく、その中でも特に耐熱性に優れる熱可塑性樹脂が得られることから、一般式(2)〜(4)で示される5価のリン化合物が好ましい。
【0046】
【化2】

(ここで、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11は、それぞれ独立して水素原子もしくは炭素数1〜30の有機基を示す。)。
【0047】
ここで、一般式(2)〜(4)で示される5価のリン化合物中のR、R、R、R、R、R、R、R10およびR11は、それぞれ独立して水素原子もしくは炭素数1〜30の有機基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、また直鎖状又は分岐状であってもよい。炭素数1〜30の有機基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ベンジル基、ナフチル基等のアリール基等;またはこれらにアルキル置換基、アリール置換基もしくはハロゲン置換基等が1個以上結合したもの等が挙げられる。
【0048】
そして、具体的な5価のリン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等の無機酸;ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジイソブチルホスフィン酸、ジベンジルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ジシクロヘキシルホスフィン酸、ジ(4−メチルフェニル)ホスフィン酸等のホスフィン酸;メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、イソブチルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、フェニルホスホン酸、シクロヘキシルホスホン酸、4−メチルフェニルホスホン酸等のホスホン酸;リン酸ドデシル、リン酸オクタデシル、リン酸ジドデシル、リン酸ジオクタデシル等の酸のエステルまたは部分エステル化合物等が挙げられ、その中でも、耐熱性に優れる熱可塑性樹脂が得られることから、下記一般式(5)で示される5価のリン化合物、
【0049】
【化3】

(ここで、R12は、水素原子もしくは炭素数1〜30の有機基、R13は、炭素数1〜30の有機基を示す。)
ジフェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、リン酸等が好ましく、特に一般式(5)で示される5価のリン化合物が好ましい。これらの5価のリン化合物は1種または2種以上が使用される。
【0050】
ここで、一般式(5)で示される5価のリン化合物中のR12は、水素原子もしくは炭素数1〜30の有機基であり、また、R13は、炭素数1〜30の有機基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、また直鎖状又は分岐状であってもよい。R12及びR13における炭素数1〜30の有機基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ベンジル基、ナフチル基等のアリール基等;またはこれらにアルキル置換基、アリール置換基もしくはハロゲン置換基等が1個以上結合したもの等が挙げられる。これら一般式(5)で示されるリン化合物の中でも、特にオクタデシル基を有するリン化合物が特に好ましく用いられる。
【0051】
本発明のポリエステル樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂に用いる5価のリン化合物の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.001〜2.0重量部であり、好ましくは0.001〜1.0重量部、特に好ましくは0.05〜0.2重量部である。
【0052】
本発明のポリエステル樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂に用いる5価のリン化合物は、任意の段階で添加することができ、その中でも熱可塑性樹脂を製造する際に、開環重合反応またはエステル交換反応が実質的に完結した段階かそれより以降の段階で添加することが好ましく、特に5価のリン化合物の分散性がよく、耐熱性の優れる熱可塑性樹脂が得られることから、溶液重合時に開環重合反応またはエステル交換反応が実質的に完結した段階で添加することがより好ましい。
【0053】
本発明のポリエステル樹脂組成物には、長期耐熱性等を向上するために、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物およびエポキシ化合物からなる群から選ばれる一種以上の反応性化合物を添加してもよく、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物およびエポキシ化合物からなる群から選ばれる一種以上の反応性化合物としては、特に制限は無く公知のものを使用できる。
【0054】
該カルボジイミド化合物としては、分子内に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物であれば如何なるものでもよく、例えばN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−ジ(o−トルイル)カルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド等の一官能性カルボジイミド化合物;p−フェニレン−ビス(2,6−キシリルカルボジイミド)、p−フェニレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、p−フェニレン−ビス(メシチルカルボジイミド)、テトラメチレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチレン−t−ブチルカルボジイミド)等の二官能性カルボジイミド化合物;多官能性カルボジイミド化合物等が挙げられ、その中でも多官能性カルボジイミド化合物が好ましい。該多官能性カルボジイミド化合物としては、例えばカルボジライトLA−1(日清紡社製)、カルボジライトHMV−8CA(日清紡社製)、エラストスタブH01(日清紡社製)等の商品名で一般的に知られている多官能性カルボジイミド化合物が挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は1種又は2種以上が使用できる。
【0055】
該オキサゾリン化合物としては、分子内に1個以上のオキサゾリン環を有する化合物であれば如何なるものでもよく、例えば2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2,5−ジメチル−2−オキサゾリン、2,4−ジフェニル−2−オキサゾリン等の一官能性オキサゾリン化合物;2,2’−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,2−エチレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,4−ブチレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,4−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)等の二官能性オキサゾリン化合物等が挙げられ、その中でも一官能性オキサゾリン化合物が好ましく、特に2−フェニル−2−オキサゾリンが好ましい。これらは1種又は2種以上が使用できる。
【0056】
オキサゾリン化合物を用いる場合には、ポリエステル樹脂及び/又は熱可塑性樹脂に含まれるカルボキシル基との反応を促進する目的で、触媒を用いることが好ましい。触媒としては、例えばトリフェニルフォスファイト等の有機フォスファイト、p−トルエンスルフォン酸、ジメチル硫酸、三フッ化ほう素エーテレート、無水塩化アルミニウム、三塩化バナジウム、塩化バナジル、有機ハロゲン化物等が挙げられる。これらの触媒は、1種又は2種以上用いることができる。また、上記触媒は一括して添加しても分割して添加してもよく、触媒の添加量は、ポリエステル樹脂組成物100重量部に対し、3.0重量部以下が好ましく、特に好ましくは0.0001〜2.0重量部である。
【0057】
該エポキシ化合物としては、分子内に1個以上のエポキシ基を有する化合物であれば如何なるものでもよく、例えばフェニルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエーテル等の一官能性エポキシ化合物;テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、p−フェニレンジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエステル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の二官能性エポキシ化合物等が挙げられ、その中でも二官能性エポキシ化合物が好ましく、特に2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパンが好ましい。これらは1種又は2種以上が使用できる。
【0058】
エポキシ化合物を用いる場合には、ポリエステル樹脂及び/又は熱可塑性樹脂に含まれるカルボキシル基との反応を促進する目的で、触媒を用いることが好ましい。触媒としては、例えばアミン類、リン化合物、炭素原子数が10以上であるモノカルボン酸および/またはジカルボン酸類の元素周期律表より選ばれる1族または2族の金属塩類等が挙げられ、その中でもトリブチルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン等の3価のリン化合物;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム等のステアリン酸の金属塩類が好ましい。これらの触媒は、1種又は2種以上で用いることができる。また、上記触媒は一括して添加しても分割して添加してもよく、触媒の添加量は、ポリエステル樹脂組成物100重量部に対し、3.0重量部以下が好ましく、特に好ましくは0.0001〜2.0重量部である。
【0059】
これらのカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物およびエポキシ化合物からなる群から選ばれる一種以上の反応性化合物のなかでも、耐衝撃性、長期耐熱性に優れるポリエステル樹脂組成物が得られることから、多官能性カルボジイミド化合物、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、2−フェニル−2−オキサゾリンからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物であることが好ましい。
【0060】
また、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物の官能基当量は、耐衝撃性、長期耐熱性に優れるポリエステル樹脂組成物が得られることから、50〜1000g/eqが好ましく、特に好ましくは100〜500g/eqである。
【0061】
本発明のポリエステル樹脂組成物に用いるカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物およびエポキシ化合物からなる群から選ばれる一種以上の反応性化合物の配合量は、特に制限はなく、その中でも耐衝撃性、長期耐熱性に優れるポリエステル樹脂組成物が得られることから、ポリエステル樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましく、特に0.05〜3重量部が好ましい。
【0062】
また本発明のポリエステル樹脂組成物には、耐熱性、特に耐熱変色性を向上させるため安定剤を添加してもよく、該安定剤としては、例えばリン酸、亜リン酸、次亜リン酸誘導体、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物;ヒンダードフェノール系化合物;ヒドロキシジオキサホスフェピン系化合物;ヒドロキシアクリレート系化合物;チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオン酸エステル等の硫黄含有化合物;スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物;ラクトン系化合物;ヒドロキシルアミン系化合物;ビタミンE系化合物;アリルアミン系化合物;アミン−ケトン系化合物;芳香族第二級アミン系化合物;モノフェノール系化合物;ビスフェノール系化合物;ポリフェノール系化合物;ベンツイミダゾール系化合物;ジチオカルバミン酸系化合物;チオウレア系化合物;有機チオ酸系化合物等が挙げられ、該安定剤の添加量は特に制限なくポリエステル樹脂組成物100重量部に対し、0.0001〜10重量部が好ましく用いられる。
【0063】
さらに本発明のポリエステル樹脂組成物には、成形加工性を向上させる目的で、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛等の金属石鹸類;ステアリン酸エステル;シリコンオイル;ワックス類;エチレンビスステアリルアミド等の滑剤を添加することもできる。これらの添加量は特に制限はなく、ポリエステル樹脂組成物100重量部に対し、0.05〜5重量部が好ましく用いられる。
【0064】
また本発明のポリエステル樹脂組成物には、例えば染料;有機顔料あるいは無機顔料;無機補強剤;可塑剤;ヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物等の光安定剤;ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、フェニルサィシレート系化合物、フェニルアクリレート系化合物等の紫外線吸収剤;発泡剤;結晶核剤;可塑剤;離型剤;加水分解防止剤;等の公知の添加剤を加えることができる。
【0065】
さらに本発明のポリエステル樹脂組成物には、難燃性を付与するために難燃剤を添加してもよい。難燃剤は難燃効果を発揮するものであれば特に制限は無く公知のものを使用でき、例えば塩素系難燃剤、リン系難燃剤、臭素系難燃剤、窒素系難燃剤、無機系難燃剤、シリコーン系難燃剤、フッ素系難燃剤よりなる群から選ばれる1種以上の難燃剤を使用することができる。難燃剤の配合量は、ポリエステル樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜500重量部が好ましく、特に3〜350重量部が好ましく、さらに5〜250重量部が好ましい。
【0066】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物には、無機粒子及び/又は有機粒子を添加してもよい。無機粒子としては、例えば湿式または乾式シリカ、アルミナ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、マイカ、カオリン、クレーなどが挙げられ、有機粒子としては、例えばスチレン、シリコーン、アクリル酸等のアクリル酸類、メタクリル酸等のメタクリル酸類、ポリエステル等のポリエステル類、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物等の有機粒子が挙げられる。これらの中でも、湿式または乾式シリカ、アルミナなどの無機粒子;スチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼンなどを構成成分とする有機粒子;が好ましく、特に乾式または湿式シリカが好ましい。また、無機粒子及び/又は有機粒子の添加量はポリエステル樹脂組成物中の0.01〜0.08重量%であるが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.05重量%である。
【0067】
本発明のポリエステル樹脂組成物は熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂を混合することにより得られ、混合方法としては、例えば溶液混合、溶融混合等の方法が挙げられ、その中でも効率よく混合できることから溶融混合が好ましく用いられる。
【0068】
溶融混合には、例えばバンバリーミキサー(ファレル社製)、加圧ニーダー((株)森山製作所製)、インターナルミキサー(栗本鉄工所製)、インテンシブミキサー(日本ロール製造(株)製)等の機械加圧式混練機;ロール成形機、単軸押出し機、二軸押出し機等の押出し成形機;等のプラスチックまたはゴムの加工に使用される混練成形機が使用できる。溶融混合する際の温度は120〜380℃が好ましく、特に好ましくは200〜320℃である。
【0069】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、各種成形品とすることができ、その中でも延伸フィルム・シートとすることが好ましい。
【0070】
フィルム・シートは長さ、幅、厚さに特に制限はなく、平面状成形物であり、テープ類、リボン類も含む。また、シート・フィルムは高分子学会編集の高分子辞典(朝倉書店、1971年)によると200μm未満をフィルム、200μm以上をシートとしてシートとフィルムに区別されるが、本発明では特に区別はせず、フィルム・シートの厚みは0.5μm〜10mmが好ましく、5μm〜5mmが更に好ましい。
【0071】
延伸フィルム・シートの製造方法は特に制限はなく、公知の方法により製造することができ、例えば溶融成形法を用いることができる。
【0072】
溶融成形法としては、例えばTダイを用いた溶融押出し方法、インフレーション法等の溶融押出し法;カレンダー法;熱プレス法;射出成形法等が挙げられ、その中でも得られる延伸シート・フィルムの厚さムラが小さくできることからTダイを用いた溶融押出し法が好ましい。
【0073】
Tダイを用いた溶融押出し法では、例えば単軸押出機、二軸押出機等の公知の押出機に樹脂組成物を供給し、溶融押出し、冷却し未延伸フィルム・シートを得た後、延伸し延伸フィルム・シートを得る方法を用いることができる。未延伸フィルム・シートを得る際の溶融押出しは200〜350℃の温度範囲で行うことが好ましい。
【0074】
また、Tダイを用いた溶融押出し法における冷却法は特に限定はなく、例えばワイヤー状電極もしくはテープ状電極を使用して静電印加する方法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けたキャスト法、キャスティングドラム温度を(a)ポリエステル樹脂のガラス転移点〜((a)ポリエステル樹脂のガラス転移点−20℃)にして押出してポリマーを粘着させる方法、もしくはこれらの方法を複数組み合わせた方法によりフィルム・シート状の樹脂をキャスティングドラムに密着させ冷却固化し未延伸フィルムを得る方法が挙げられる。これらの冷却法の中でも、生産性を損なわず平面性を維持する観点から、ワイヤー状電極もしくはテープ状電極を使用して静電印加する方法が好ましく使用され、特にテープ状電極を使用して静電印加する方法が好ましく用いられる。また、冷却温度は−20〜60℃であることが好ましい。
【0075】
未延伸フィルム・シートを延伸することにより本発明の延伸フィルム・シートとなる。その際の延伸方法としては、特に制限はなく、その中でも1軸延伸方法または2軸延伸方法が好ましく、1軸延伸方法または2軸延伸方法としては、例えば長手方向に延伸した後幅方向に延伸する、あるいは幅方向に延伸した後長手方向に延伸する逐次2軸延伸方法;フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時2軸延伸方法;長手方向または幅方向にのみ延伸する1軸延伸方法等が好ましく用いられる。
【0076】
かかる延伸方法において採用される延伸倍率は、それぞれの方向に1.5〜6.0倍が好ましく、特に好ましくは3.0〜5.0倍である。また、延伸速度は200〜500000%/分であることが好ましい。延伸温度は(a)ポリエステル樹脂のガラス転移点〜((a)ポリエステル樹脂のガラス転移点+100℃)の温度範囲であれば任意の温度とすることができ、その中でも好ましくは70〜180℃、特に好ましくは長手方向の延伸温度を80〜150℃、幅方向の延伸温度を80〜160℃である。また、延伸は各方向に対して複数回行ってもよく、複数の温度で行っても良い。
【0077】
また延伸フィルム・シートは寸法安定性を向上させるために延伸後、熱処理を行うことが好ましく、特に延伸温度+10℃〜(a)ポリエステル樹脂の融点−10℃の温度範囲において熱処理することが好ましい。例えば(a)ポリエステル樹脂としてポリエチレンテレフタレート単独重合体を用いた場合には、熱処理温度は160〜230℃の範囲が好ましく、その中でも耐屈曲ピンホール性に優れた延伸フィルム・シートとなることから180〜210℃が特に好ましく、さらに好ましくは180〜200℃である。また、耐屈曲ピンホール性に加え、寸法安定性にも優れた延伸フィルム・シートとなることから、170〜220℃の熱処理温度であることが特に好ましい。この熱処理はオーブン中、加熱されたロール上など従来公知の任意の方法により行うことができる。また、熱処理時間は他の特性を悪化させない範囲において任意とすることができ、通常1〜30秒間行うのが好ましい。さらに、熱処理はフィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させて行ってもよい。
【0078】
延伸フィルム・シートの表面にはコロナ放電処理などの表面処理を施すことにより,接着性をさらに向上させることは特性を向上させる上で好ましい。特に、金属や金属酸化物を蒸着する際は、蒸着するフィルム表面に予めコロナ放電処理を行うことが、フィルムと蒸着層の密着性を高めることから好ましい。さらに、フィルムの表面に易接着性コーティング剤や樹脂などの各種コーティングを施してもよく,その塗布化合物,方法,厚みは本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。
【0079】
本発明のポリエステル樹脂組成物を各種成形品とする際に好ましい成形品である延伸フィルム・シートは、単独またはいくつかの他の重合体からなるシート・フィルム、面上の支持体、多孔質のフィルムや不織布、紙状物、織編物等を積層しても良く、積層方法としては特に制限は無く、例えば押出しラミネート法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、無溶剤ラミネート法、ドライラミネート法、共押出しラミネート法等が挙げられる。
【0080】
延伸フィルム・シートは、そのままのフィルム・シートで用いたり、さらに成形し成形品として用いることができる。成形する際の成形方法としては、例えばフリードローイング法、リッジフォーミング法、プラグアンドリング成形法、スリップ成形法、真空成形法、圧空成形法、マッチドモールド成形法等の成形法が挙げられる。中でも真空成形法が好ましく、真空成形法としては、例えば直接法、ドレイプ成形法、エア・スリップ法、スナップバック法、プラグ・アシスト法、エア・クッション法等が挙げられる。
【0081】
延伸フィルム・シートまたは延伸フィルム・シートを用いて成形した成形品としては、特に制限はなく、その中でも食品、飲料、工業製品や半製品、玩具、雑貨等の包装材料に好ましく用いることができる。
【0082】
延伸フィルム・シートまたは延伸フィルム・シートを用いて成形した成形品の具体例としては、例えば電子機器、自動車、機器、船、車両、航空機、原子力発電所等の絶縁材料;磁気テープ、強磁性薄膜テープ等のテープ;写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電機絶縁フィルム、金属板ラミネート用フィルム、ガラスディスプレイ用フィルム等のフィルム;液晶表示装置用部材のプリズムレンズシート、タッチパネル、バックライト等のベースフィルム;偏光板、光学レンズ、各種計器のカバー、自動車、電車等の窓ガラスに用いられる反射防止用フィルム;ディスプレイ防爆用フィルムのベースフィルム;液晶表示用基板、有機EL表示素子基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、太陽電池用基板等の光学シート;光学レンズ、スクリーン等に用いるレンズシート;救急絆創こう、サージカルテープ、リハビリテープ等の医療補助用テープの基材;消炎、鎮痛、血行促進等の疾患治療用テープの基材;手術用手袋;紙おむつ、ナプキン等の衛生用品固定用テープの基材;静電防止シート、ルーフィング用シート等のシート;半導電フィルム、帯電防止フィルム、医薬フィルム等のフィルム等にも使用することができる。
【発明の効果】
【0083】
本発明は、耐衝撃性、耐熱性、透明性に優れる新規なポリエステル樹脂組成物、それよりなる延伸フィルム・シート及びそれを用いた包装材料を提供することができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、用いた試薬等は断りのない限り市販品を用いた。
【0085】
評価・分析に用いた機器及び方法を以下に示す。
【0086】
〜ポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂の数平均分子量の測定〜
カラム(東ソー(株)製、商品名TSK−GEL super AWM−H、2本)を装着したGPC装置(東ソー(株)製、商品名HLC−8120GPC)により、カラム温度40℃、流量0.6ml/分の条件下で、溶離液に10mmol/Lのトリフルオロ酢酸ナトリウム/2,2,2−トリフルオロエタノール溶液を用いて測定し、標準ポリメチルメタクリレート換算で算出した。
【0087】
〜ポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂中の芳香族アミド単位、脂肪族ポリエステル単位、芳香族ポリエステル単位含量の測定〜
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM−GSX270型)を用い、重水素化トリフルオロ酢酸中、室温の条件で13C−NMRを測定し、各単位のピーク強度比より算出した。
【0088】
〜ポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂の融点測定〜
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、商品名DSC200)を用い、昇温速度10℃/分、−100〜300℃の範囲で測定した。
【0089】
〜ポリエステル樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂のタイプAデュロメータ硬さ〜
熱可塑性樹脂を圧縮成形した厚さ2mmのシートを用いて、タイプAデュロメータ硬さ(JIS K6253:1997年)を測定した。
〜耐衝撃性〜
フィルム・シートの耐衝撃性は、ASTM D3420−95(2002年)に準拠し測定した。
【0090】
射出成形品のノッチ付アイゾット衝撃強度は、ASTM D256(1995年)に準拠し測定した。
【0091】
〜ヘーズ〜
延伸後に熱処理し、得られたフィルム・シートを用いて、ヘーズ(JIS K7136:2000年)を測定した。
【0092】
〜耐熱性〜
熱成形体を、150℃に設定したギアオーブン中に1時間放置し外観を目視観察した。
【0093】
合成例1(ジヒドロキシ芳香族アミド化合物((b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位を含み両末端に水酸基を有するモノマー)の合成)
窒素導入管、温度計および攪拌翼を備えた10Lの4つ口フラスコに、窒素雰囲気下でp−アミノフェノール763g(7.0モル)及びN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと記す。)2.1L、トルエン1.4Lを加え50℃に昇温し均一溶液を得た。別途、窒素導入管を備えた3L滴下ロートに、テレフタル酸ジクロライド710g(3.5モル)、NMP0.3L、トルエン1.4Lを加えて均一溶液とした。この溶液を先の溶液中に80℃を保ちながら30分かけて滴下し、さらに80℃で2時間反応させた。
【0094】
室温まで冷却後、固形分を吸引濾過により回収し、メタノール7Lで2回攪拌洗浄し、N,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ベンゼンジカルボキサミドを得た。
【0095】
続いて、窒素導入管、温度計および攪拌翼を備えた10Lの4つ口フラスコに、窒素雰囲気下でN,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ベンゼンジカルボキサミド1045g(3.0モル)、炭酸エチレン555g(6.3モル)、触媒として炭酸ナトリウム0.95g(9.0ミリモル)、NMP6.0Lを加え、180℃で3時間反応させた。室温まで冷却後、固形分を吸引ろ過により回収し、NMP5L、次いでメタノール7.5Lで2回攪拌洗浄し、N,N’−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−1,4−ベンゼンジカルボキサミド1110g(収率85%)を得た。その構造式を下記に示す。この化合物を(A)と記す。
【0096】
【化4】

合成例2(熱可塑性樹脂の合成)
窒素導入管を備えた15Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(A)1024g(2.3モル)、ε−カプロラクトン2141g(18.8モル)、ヒンダードフェノール系化合物として1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名イルガノックス1330]3.47g、NMP3165gを仕込み、200℃に昇温した後、テトラブチルチタネート0.32g(0.94ミリモル)を加え、200℃で1時間開環重合を行い、(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、(b−2)脂肪族ポリエステル単位との化合物を得た。
【0097】
引き続いて、芳香族ポリエステル単位を含有する化合物として、ポリエチレンテレフタレート[帝人化成(株)製、商品名PET樹脂TR8550T]415gを添加し、200℃で2時間反応させた。その後、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)836g(2.3モル)を添加し、200℃で2時間反応させた。その後、内温を240℃まで昇温しながら、NMP及び副生成物のε−カプロラクタムを減圧下で2時間かけて留去し、更に240℃で1時間反応させた。続いて、系内を窒素で加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして熱可塑性樹脂のペレット3500gを得た。
【0098】
得られた熱可塑性樹脂は、数平均分子量18000、融点188℃、タイプAデュロメータ硬さ97、芳香族アミド単位30重量%、脂肪族ポリエステル単位57重量%、芳香族ポリエステル単位13重量%であった。
【0099】
合成例3(熱可塑性樹脂の合成)
窒素導入管を備えた15Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(A)875g(2.0モル)、ε−カプロラクトン1831g(16.0モル)、ヒンダードフェノール系化合物として1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名イルガノックス1330]2.97g、NMP2706gを仕込み、200℃に昇温した後、テトラブチルチタネート0.27g(0.80ミリモル)を加え、200℃で1時間開環重合を行い、(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、(b−2)脂肪族ポリエステル単位とのプレポリマーを得た。
【0100】
引き続いて、芳香族ポリエステル単位を含有する化合物として、ポリエチレンテレフタレート[帝人化成(株)製、商品名PET樹脂TR8550T]1370gを添加し、200℃で2時間反応させた。その後、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)715g(2.0モル)を添加し、200℃で2時間反応させた。その後、内温を250℃まで昇温しながら、NMP及び副生成物のε−カプロラクタムを減圧下で2時間かけて留去し、更に250℃で1時間反応させた。続いて、系内を窒素で加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして熱可塑性樹脂のペレット4000gを得た。
【0101】
得られた熱可塑性樹脂は、数平均分子量17000、融点176℃、タイプAデュロメータ硬さ94、芳香族アミド単位24重量%、脂肪族ポリエステル単位35重量%、芳香族ポリエステル単位41重量%であった。
【0102】
合成例4(熱可塑性樹脂の合成)
窒素導入管を備えた15Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(A)704g(1.6モル)、ε−カプロラクトン1472g(12.9モル)、ヒンダードフェノール系化合物として1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名イルガノックス1330]2.39g、NMP2176gを仕込み、200℃に昇温した後、テトラブチルチタネート0.22g(0.65ミリモル)を加え、200℃で1時間開環重合を行い、(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、(b−2)脂肪族ポリエステル単位とのプレポリマーを得た。
【0103】
引き続いて、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)575g(1.6モル)を添加し、200℃で2時間反応させた。その後、芳香族ポリエステル単位を含有する化合物として、ポリエチレンテレフタレート[帝人化成(株)製、商品名PET樹脂TR8550T]2570gを添加し、200℃で1時間反応させた。その後、内温を260℃まで昇温しながら、NMP及び副生成物のε−カプロラクタムを減圧下で2時間かけて留去し、更に260℃で1時間反応させた。続いて、系内を窒素で加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして熱可塑性樹脂のペレット4600gを得た。
【0104】
得られた熱可塑性樹脂は、数平均分子量13000、融点246℃、タイプAデュロメータ硬さ99、芳香族アミド単位17重量%、脂肪族ポリエステル単位29重量%、芳香族ポリエステル単位54重量%であった。
【0105】
合成例5(熱可塑性樹脂の合成)
窒素導入管を備えた15Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(A)607g(1.4モル)、ε−カプロラクトン2380g(20.8モル)、ヒンダードフェノール系化合物として1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名イルガノックス1330]3.17g、NMP3644gを仕込み、180℃に昇温した後、テトラブチルチタネート1.42g(4.2ミリモル)を加え、180℃で1時間開環重合を行い、(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、(b−2)脂肪族ポリエステル単位とのプレポリマーを得た。
【0106】
引き続いて、芳香族ポリエステル単位を含有する化合物として、ポリエチレン−2,6−ナフタレート[帝人化成(株)製、商品名ネオテックスTN8756]370gを添加し、180℃で2時間反応させた。その後、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)495g(1.4モル)を添加し、180℃で2時間反応させた。その後、内温を250℃まで昇温しながら、NMP及び副生成物のε−カプロラクタムを減圧下で2時間かけて留去し、更に250℃で1時間反応させた。続いて、系内を窒素で加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして熱可塑性樹脂のペレット3100gを得た。
【0107】
得られた熱可塑性樹脂は、数平均分子量17000、融点151℃、タイプAデュロメータ硬さ88、芳香族アミド単位18重量%、脂肪族ポリエステル単位62重量%、芳香族ポリエステル単位20重量%であった。
【0108】
合成例6(熱可塑性樹脂の合成)
窒素導入管を備えた15Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(A)470g(1.1モル)、ε−カプロラクトン2456g(21.5モル)、ヒンダードフェノール系化合物として1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名イルガノックス1330]3.07g、NMP2821gを仕込み、180℃に昇温した後、テトラブチルチタネート1.46g(4.3ミリモル)を加え、180℃で1時間開環重合を行い、(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、(b−2)脂肪族ポリエステル単位とのプレポリマーを得た。
【0109】
引き続いて、芳香族ポリエステル単位を含有する化合物として、ポリエチレンテレフタレート[帝人化成(株)製、商品名PET樹脂TR8550T]1367gを添加し、180℃で1時間反応させた。その後、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)383g(1.1モル)を添加し、180℃で2時間反応させた。その後、内温を250℃まで昇温しながら、NMP及び副生成物のε−カプロラクタムを減圧下で2時間かけて留去し、更に250℃で1時間反応させた。続いて、系内を窒素で加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして熱可塑性樹脂のペレット3800gを得た。
【0110】
得られた熱可塑性樹脂は、数平均分子量15000、融点136℃、タイプAデュロメータ硬さ78、芳香族アミド単位12重量%、脂肪族ポリエステル単位48重量%、芳香族ポリエステル単位40重量%であった。
【0111】
合成例7(熱可塑性樹脂の合成)
窒素導入管を備えた15Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(A)875g(2.0モル)、ε−カプロラクトン1831g(16.0モル)、ヒンダードフェノール系化合物として1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名イルガノックス1330]2.97g、NMP2706gを仕込み、200℃に昇温した後、テトラブチルチタネート0.27g(0.80ミリモル)を加え、200℃で1時間開環重合を行い、(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、(b−2)脂肪族ポリエステル単位とのプレポリマーを得た。
【0112】
引き続いて、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)715g(2.0モル)を添加し、200℃で2時間反応させた。その後、芳香族ポリエステル単位を含有する化合物として、ポリエチレンテレフタレート[帝人化成(株)製、商品名PET樹脂TR8550T]1370gを添加し、200℃で1時間反応させた。その後、内温を250℃まで昇温しながら、NMP及び副生成物のε−カプロラクタムを減圧下で2時間かけて留去し、更に250℃で1時間反応させた。続いて、系内を窒素で加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして熱可塑性樹脂のペレット3900gを得た。
【0113】
得られた熱可塑性樹脂は、数平均分子量17000、融点235℃、タイプAデュロメータ硬さ94、芳香族アミド単位24重量%、脂肪族ポリエステル単位39重量%、芳香族ポリエステル単位37重量%であった。
【0114】
合成例8(熱可塑性樹脂の合成)
窒素導入管を備えた15Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(A)1024g(2.3モル)、ε−カプロラクトン2141g(18.8モル)、ヒンダードフェノール系化合物として1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名イルガノックス1330]3.47g、NMP3165gを仕込み、200℃に昇温した後、テトラブチルチタネート0.32g(0.94ミリモル)を加え、200℃で1時間開環重合を行い、(b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、(b−2)脂肪族ポリエステル単位とのプレポリマーを得た。
【0115】
引き続いて、芳香族ポリエステル単位を含有する化合物として、ポリブチレンテレフタレート[ポリプラスチックス(株)製、商品名PBT樹脂ジュラコン2002]415gを添加し、200℃で2時間反応させた。その後、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)836g(2.3モル)を添加し、200℃で2時間反応させた。その後、内温を240℃まで昇温しながら、NMP及び副生成物のε−カプロラクタムを減圧下で2時間かけて留去し、更に240℃で1時間反応させた。続いて、系内を窒素で加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして熱可塑性樹脂のペレット3500gを得た。
【0116】
得られた熱可塑性樹脂は、数平均分子量16000、融点186℃、タイプAデュロメータ硬さ97、芳香族アミド単位29重量%、脂肪族ポリエステル単位56重量%、芳香族ポリエステル単位15重量%であった。
【0117】
合成例9((b−1)一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、(b−2)脂肪族ポリエステル単位との化合物(以下、芳香族アミドブロック共重合体と称す)の合成)
窒素導入管を備えた15Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(A)759g(1.7モル)、ε−カプロラクトン1588g(13.9モル)、ヒンダードフェノール系化合物として1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(チバガイギ製、商品名イルガノックス1330)2.57g、NMP4560gを仕込み、180℃に昇温した後、テトラブチルチタネート0.95g(2.8ミリモル)を加え、180℃で1時間開環重合を行った。
【0118】
引き続いて、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)620g(1.7モル)を添加し、180℃で2時間反応させた。その後、内温を240℃まで昇温しながら、NMP及び副生成物のε−カプロラクタムを減圧下で2時間かけて留去し、更に240℃で1時間反応させた。続いて、系内を窒素で加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして芳香族アミドブロック共重合体のペレット2100gを得た。
【0119】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量12000、融点195℃、タイプAデュロメータ硬さ98、芳香族アミド単位34重量%であった。
【0120】
実施例1
(a)ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート[帝人化成(株)製、商品名PET樹脂TR8550T]100重量部に対し、合成例2で得られた熱可塑性樹脂11重量部を270℃に設定した二軸押出し機を用いて溶融混合し、ポリエステル樹脂組成物を得た。その後、270℃に設定した圧縮成形機を用いて厚さ150μmの未延伸フィルム・シートに圧縮成形した。得られた未延伸フィルムを二軸延伸機((株)井元製作所製)を用いて、温度90℃、延伸倍率3.0倍に2軸逐次延伸した。得られた延伸フィルム・シートをギアオーブン(東洋精機(株)製、形式STD 60−P)中で、200℃で5分熱処理した。得られたフィルム・シートの耐衝撃性、ヘーズを測定した。測定結果を表1に示す。
【0121】
実施例2
(a)ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート[帝人化成(株)製、商品名PET樹脂TR8550T]100重量部に対し、合成例2で得られた熱可塑性樹脂11重量部、多官能性カルボジイミド化合物[日清紡(株)製、カルボジライトLA−1]0.34重量部を270℃に設定した二軸押出し機を用いて溶融混合し、ポリエステル樹脂組成物を得た。その後、270℃に設定した圧縮成形機を用いて厚さ150μmの未延伸フィルム・シートに圧縮成形した。得られた未延伸フィルムを二軸延伸機((株)井元製作所製)を用いて、温度90℃、延伸倍率3.0倍に2軸逐次延伸した。得られた延伸フィルム・シートをギアオーブン(東洋精機(株)製、形式STD 60−P)中で、200℃で5分熱処理した。得られたフィルム・シートの耐衝撃性、ヘーズを測定した。測定結果を表1に示す。
【0122】
実施例3
合成例3で得られた熱可塑性樹脂11重量部、多官能性カルボジイミド化合物[日清紡(株)製、カルボジライトLA−1]0.07重量部を240℃に設定した二軸押出し機を用いて溶融混合した。その後、得られたペレット11.07重量部と、(a)ポリエステル樹脂としてポリエチレンテレフタレート[帝人化成(株)製、商品名PET樹脂TR8550T]100重量部を270℃に設定した二軸押出し機を用いて溶融混合し、ポリエステル樹脂組成物を得た。その後、270℃に設定した圧縮成形機を用いて厚さ150μmの未延伸フィルム・シートに圧縮成形した。得られた未延伸フィルムを二軸延伸機((株)井元製作所製)を用いて、温度90℃、延伸倍率3.0倍に2軸逐次延伸した。得られた延伸フィルム・シートをギアオーブン(東洋精機(株)製、形式STD 60−P)中で、200℃で5分熱処理した。得られたフィルム・シートの耐衝撃性、ヘーズを測定した。測定結果を表1に示す。
【0123】
実施例4〜6
表1に示す組成に変更した以外は実施例3と同様にフィルム・シートの成形及び評価を行った。測定結果を表1に示す。
【0124】
実施例7
(a)ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレートの代わりにポリエチレン−2,6−ナフタレート[帝人化成(株)製、商品名テオネックスTN9065S]を用い、表1に示す組成に変更した以外は実施例3と同様にフィルム・シートの成形及び評価を行った。測定結果を表1に示す。
【0125】
実施例8
多官能性カルボジイミド化合物の代わりにエポキシ化合物[ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート828、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン]を用い、表1に示す組成に変更した以外は実施例3と同様にフィルム・シートの成形及び評価を行った。測定結果を表1に示す。
【0126】
実施例9
多官能性カルボジイミド化合物の代わりにオキサゾリン化合物[Aldrich製、2−フェニル−2−オキサゾリン]を用い、表1に示す組成に変更した以外は実施例3と同様にフィルム・シートの成形及び評価を行った。測定結果を表1に示す。
【0127】
実施例10
(a)ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレートの代わりにポリブチレンテレフタレート[ポリプラスチックス(株)製、商品名PBT樹脂ジュラコン2002]を用い、表1に示す組成に変更した以外は実施例3と同様にポリエステル樹脂組成物を得た。続いて、アイゾット衝撃強度を評価するために射出成形機によって試験片を作成し、測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0128】
比較例1
表1に示す組成に変更した以外は実施例1と同様にフィルム・シートの成形及び評価を行った。測定結果を表1に示す。得られたフィルム・シートのヘーズ値は高く、透明性に劣るものであった。
【0129】
比較例2
合成例6で得られた芳香族アミドブロック共重合体100重量部に対し、多官能性カルボジイミド化合物[日清紡(株)製、カルボジライトLA−1]0.07重量部を270℃に設定した二軸押出し機を用いて溶融混合し、樹脂組成物を得た。その後、270℃に設定した圧縮成形機を用いて厚さ150μmの未延伸フィルム・シートに圧縮成形した。得られた未延伸フィルムを二軸延伸機((株)井元製作所製)を用いて、温度90℃、延伸倍率2.0倍に2軸逐次延伸した。得られた延伸フィルム・シートをギアオーブン(東洋精機(株)製、形式STD 60−P)中で、200℃で5分熱処理したところ、得られたフィルム・シートは耐熱性が不十分なため流動変形してしまった。
【0130】
比較例3
ポリエチレンテレフタレート[帝人化成(株)製、商品名PET樹脂TR8550T]を270℃に設定した圧縮成形機を用いて厚さ150μmの未延伸フィルム・シートに圧縮成形した。得られた未延伸フィルムを二軸延伸機((株)井元製作所製)を用いて、温度90℃、延伸倍率3.0倍に2軸逐次延伸した。得られた延伸フィルム・シートをギアオーブン(東洋精機(株)製、形式STD 60−P)中で、200℃で5分熱処理した。得られたフィルム・シートの耐衝撃性、ヘーズを測定した。測定結果を表1に示すが、耐衝撃性に劣るものであった。
【0131】
【表1】

実施例11
実施例2で得られた熱処理した延伸フィルム・シートを圧空真空成形機(浅野研究所製)を用いて、ヒーター温度300℃、加熱時間30秒で真空成形を行った。金型は間口85mm×155mm、絞り深さ10mmの直方体状容器であり、包装容器に好適なものであった。
【0132】
得られた包装容器の耐熱性を評価したところ、変形が見られず耐熱性に優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリエステル樹脂、及び(b)(b−1)下記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、(b−2)脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネートまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位と、(b−3)芳香族ポリエステル単位からなる熱可塑性樹脂からなるポリエステル樹脂組成物。
【化1】

(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の二価のオキシアルキレン基、アルキレンカルバモイル基、またはアリーレンカルバモイル基を示す。)
【請求項2】
(a)ポリエステル樹脂が、テレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸と、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコールよりなる群から選ばれる1種以上からなることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
(a)ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートよりなる群から選ばれる1種以上の樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
(b)熱可塑性樹脂が、(b−1)上記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、(b−2)脂肪族ポリエステル単位と、(b−3)芳香族ポリエステル単位からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
(b−2)脂肪族ポリエステル単位が、ポリ(ε−カプロラクトン)からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
(b−3)芳香族ポリエステル単位が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートよりなる群から選ばれる1種以上の単位からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
(a)ポリエステル樹脂100重量部に対し、(b)熱可塑性樹脂0.1〜100重量部からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
(a)ポリエステル樹脂100重量部に対し、さらにカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物およびエポキシ化合物からなる群から選ばれる一種以上の反応性化合物0.01〜5重量部からなることを特徴とする請求項7に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8に記載のポリエステル樹脂組成物よりなることを特徴とする延伸フィルム・シート。
【請求項10】
1軸延伸または2軸延伸されることを特徴とする請求項9に記載の延伸フィルム・シート。
【請求項11】
請求項9に記載の延伸フィルム・シートを、延伸温度+10℃〜(a)ポリエステル樹脂の融点−10℃の温度範囲において熱処理することを特徴とする延伸フィルム・シート。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれかに記載の延伸フィルム・シートを用いて作製した成形品。
【請求項13】
請求項12に記載の成形品からなる包装材料。
【請求項14】
請求項9〜11のいずれかに記載の延伸フィルム・シートからなる包装材料。

【公開番号】特開2007−217537(P2007−217537A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38887(P2006−38887)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】