説明

ポリエチレン系樹脂発泡シート

【課題】ロール状に形成されるなどした場合における厚みの変動を抑制しつつ熱融着される用途に適したポリエチレン系樹脂発泡シートの提供を課題としている。
【解決手段】0.925g/cm3以上0.935g/cm3以下の密度を有するポリエチレン系樹脂と発泡剤とを含んだポリエチレン系樹脂組成物を見掛密度が0.06g/cm3以下となるようにシート状に押出し発泡させてなり、表面どうしを熱融着させて用いられるポリエチレン系樹脂発泡シートであって、前記ポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレートが、0.2g/10分以上2.0g/10分未満であることを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡シートなどを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂発泡シートに関し、より詳しくは、ポリエチレン系樹脂組成物を押出し発泡させてなるポリエチレン系樹脂発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチエン系樹脂発泡シートは、比較的低コストで生産され、しかも、クッション性にも優れていることから、電子部品や家電製品の梱包材(包装袋)などに広く用いられている。
【0003】
このポリエチレン系樹脂発泡シートは、通常、ポリエチレン系樹脂組成物の連続的な押出し加工によって作製されており、一次製品として、一旦、長尺帯状のものがロール状に巻き取られた状態となるように形成され、その後、所定の形状に加工されて最終製品として用いられている。
より具体的には、ポリエチレン系樹脂組成物に押出し機内で発泡剤を含有させ、この発泡剤とともに前記押出し機で溶融混練した後に、該押出し機から前記ポリエチレン系樹脂組成物を連続的に押出し発泡させて長尺帯状のポリエチレン系樹脂発泡シートを形成させ、該ポリエチレン系樹脂発泡シートをロール状に巻き取って一次製品(原反)を作製させることが行われている。
【0004】
このとき発泡剤にはポリエチレン系樹脂に対して分散性の良好なブタンなどの炭化水素が広く用いられている。
しかし、このような発泡剤は、ポリエチレン系樹脂によって形成された気泡膜を比較的透過しやすく、押出し直後においてポリエチレン系樹脂発泡シートから散逸し、シート厚みを減少させてしまう傾向にある。
そして、そのままの状態でロール状に巻き取られると、内部は巻き締まりによって厚みの薄い状態が維持される一方で外周部は気泡部分に空気が入り込んで厚みが回復するため同じロールであっても、内部と外部とで厚みを異ならせるという問題を発生させることとなる。
このことに対し下記特許文献1には、比較的の高い密度を有するポリエチレン系樹脂を利用することで発泡剤ガスの散逸を抑制し上記のような問題の解決を図ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−238779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献1記載の発明は、0.925g/cm3から0.935g/cm3の範囲の内の何れかの密度を有する比較的密度の高いポリエチレン系樹脂を使用することで押出し直後などにおける発泡剤の散逸を抑制するものである。
一般にポリエチレン系樹脂は、密度が高くなるにつれて融点を上昇させる傾向にあり、低い温度で押出しがし難い状況となる。
そのため特許文献1記載の発明では、用いるポリエチレン系樹脂にメルトマスフローレートの高い樹脂を選択することが、例えば、段落〔0024〕などにおいて推奨されている。
【0007】
ところが、このようなポリエチレン系樹脂発泡シートにおいては、例えば、包装用の袋などを形成させるに際してヒートシールの作業性に問題が生じる場合があることが本発明者によって見出された。
より具体的には、包装袋の作製においては、例えば、矩形状に切り出された2枚のポリエチレン系樹脂発泡シートを重ね合わせて、その3辺を熱融着させる3方シールなどと呼ばれるヒートシールが従来実施されているが、上記のように比較的密度の高いポリエチレン系樹脂が使用されたポリエチレン系樹脂発泡シートにおいては、熱融着に要する時間を長期化させたり、あるいは、通常の時間内では熱融着ができなかったりするといった問題が見出された。
【0008】
このような問題は、従来知られておらず、したがって、その解決策についても確立されていない。
そのため、従来のポリエチレン系樹脂発泡シートにおいては、ロール状に形成されるなどした際の厚みの変動が抑制されつつも包装袋など熱融着される用途に適したものを得ることが困難であるという問題を有している。
本発明は、このような問題の解決を図ることを課題としており、ロール状に形成されるなどした場合における厚みの変動を抑制しつつ熱融着される用途に適したポリエチレン系樹脂発泡シートの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するためのポリエチレン系樹脂発泡シートに係る本発明は、0.925g/cm3以上0.935g/cm3以下の密度を有するポリエチレン系樹脂と発泡剤とを含んだポリエチレン系樹脂組成物を見掛密度が0.06g/cm3以下となるようにシート状に押出し発泡させてなり、表面どうしを熱融着させて用いられるポリエチレン系樹脂発泡シートであって、前記ポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレートが、0.2g/10分以上2.0g/10分未満であることを特徴としている。
【0010】
なお、本明細書中におけるメルトマスフローレートとは、特段のことわりが無い限りにおいて、JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)」及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法記載の方法により、D条件(温度190℃、公称荷重2.16kg)で測定される値を意味している。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリエチレン系樹脂発泡シートにおいては、0.925g/cm3以上0.935g/cm3以下の密度を有するポリエチレン系樹脂が用いられる。
したがって、押出し直後の発泡剤の散逸を抑制することができ、ロール状に作製する場合において厚みの変動が発生することを抑制させることができる。
また、本発明のポリエチレン系樹脂発泡シートにおいては、0.2g/10分以上2.0g/10分未満の範囲の内のいずれかのメルトマスフローレートを有するポリエチレン系樹脂が使用されることから、熱融着性に優れたものとなる。
すなわち、本発明によれば、ロール状に形成されるなどした場合における厚みの変動を抑制しつつ熱融着される用途に適したポリエチレン系樹脂発泡シートが提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
まず、本実施形態に係るポリエチレン系樹脂発泡シートに用いられる材料について説明する。
【0013】
本実施形態のポリエチレン系樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ともいう)は、ポリエチレン系樹脂と発泡剤とを含んだポリエチレン系樹脂組成物がシート状に押出し発泡されたものであり、0.06g/cm3以下の見掛密度となるように押出し発泡されたものである。
このポリエチレン系樹脂は、0.925g/cm3以上0.935g/cm3以下の密度を有するとともに0.2g/10分以上2.0g/10分未満のメルトマスフローレート(以下「MFR」ともいう)を有することが重要である。
【0014】
なお、ポリエチレン系樹脂としては、エチレンモノマーの単独重合品や、エチレンモノマーとエチレンよりも炭素数の多いα―オレフィン(プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、4−メチルペンテンなど)とを共重合させたポリマーを用いることができ、このポリエチレン系樹脂は、密度とメルトマスフローレートとが上記範囲内となるポリマーを単独又は複数混合して用いてもよく、要すれば、密度とメルトマスフローレートの内の一方あるいは両方が上記範囲外となるポリマーが複数混合された結果、密度とメルトマスフローレートとが上記範囲内となるように調整されたものであってもよい。
その中でも、より低密度の発泡シートを得る上で、高圧法により製造されるポリエチレン樹脂を採用することが好ましい。
【0015】
前記ポリエチレン系樹脂の密度が0.925g/cm3以上、0.935g/cm3以下であるのが重要であるのは、密度が0.925g/cm3未満では、押出後のポリエチレン系樹脂発泡シートの発泡剤の散逸が速く、しかも、樹脂自体の剛性が小さいことから収縮を抑制できなくなり、シート厚みを減少させてしまうおそれを有するためである。
このシート厚みの減少は、発泡剤の散逸によって気泡内が減圧状態となることに起因しており、通常、そのままの状態で放置すれば、やがて気泡内部に空気が進入して厚みが復元される。
そのため、押出し直後にロール状に巻取りを行うと、内部のポリエチレン系樹脂発泡シートは、巻締め力によって拘束を受けるために保管中も厚みの薄い状態が維持される一方で、外周付近は保管中に気泡内への空気の進入が生じて厚みの復元が生じる。
したがって、同じロールにおいて厚みの変動が生じてしまうこととなる。
このような現象の抑制のために用いるポリエチレン系樹脂の密度が0.925g/cm3以上であることが重要である。
【0016】
一方、ポリエチレン系樹脂の密度が0.935g/cm3以下であるのが重要であるのは、ポリエチレン系樹脂の密度が0.935g/cm3を超えると樹脂自体の剛性が大きくなりすぎて、ポリエチレン系樹脂発泡シートとしてのクッション性を損なうおそれがあり、包装袋などに求められるクッション性をポリエチレン系樹脂発泡シートに発揮させることが困難になるおそれがあるためである。
【0017】
前記ポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレート(MFR)の値が2.0g/10分未満であることが重要であるのは、このMFRが2.0g/10分以上になると、熱融着性が極端に悪くなって、ヒートシールに要する時間を長期化させるおそれを有するためである。
また、MFRが0.2g/10分以上であることが重要であるのは、MFRが0.2g/10分を下回るポリエチレン系樹脂を使用すると、ポリエチレン系樹脂組成物の溶融粘度が高くなりすぎて押出し発泡における作業性を低下させたり、場合によっては、押出し発泡自体ができなくなったりするおそれを有するためである。
このような点において、MFRは0.3g/10分以上1.7g/10分以下であることが好ましく、0.4g/10分以上1.5g/10分以下であることがさらに好ましい。
【0018】
なお、本実施形態のポリエチレン系樹脂発泡シートを構成するポリエチレン系樹脂脂組成物には、上記ポリエチレン系樹脂以外の樹脂成分を、本発明の効果が著しく損なわれない範囲において含有させることも可能である。
例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂などのポリオレフィン系樹脂を、ポリエチレン系樹脂組成物の物性に大きく影響を与えない程度に含有させることができる。
【0019】
また、樹脂成分としては、高分子型帯電防止剤などをポリエチレン系樹脂組成物に含有させることができる。
この高分子型帯電防止剤としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミドなどのアイオノマーやその第四級アンモニウム塩、特開2001−278985号公報等に記載のオレフィン系ブロックと親水性ブロックとの共重合体等が挙げられる。
中でも、高分子型帯電防止剤を用いるのであれば、オレフィン系ブロックと親水性ブロックとの共重合体が好ましく、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体(ポリエーテル系ブロックとポリオレフィン系ブロックのブロック共重合体)を主成分とする高分子型帯電防止剤が好適に使用されうる。
前記ポリエチレン系樹脂に加えてこれらの樹脂成分を使用する場合には、この樹脂成分を前記ポリエチレン系樹脂に加えた後においても、密度とMFRにかかる上記範囲内となるようにすることが好ましい。
【0020】
一方で、前記発泡剤としては、イソブタンを60モル%以上、好ましくは65モル%以上、特に好ましくは70モル%以上含有する発泡剤を用いることが好ましい。
イソブタンが発泡剤にこのような割合で含有されていることが好ましいのは、イソブタン以外に一般的に発泡剤として用いられている物質は、密度が0.925〜0.935g/cm3のポリエチレン系樹脂に対する透過性が高いためであり、発泡剤におけるイソブタンの含有量を60モル%未満とすると、ポリエチレン系樹脂発泡シートの収縮が大きくなりすぎるおそれを有するためである。
【0021】
このイソブタン以外の発泡剤成分としては、ハロゲン成分を含有していない発泡剤成分が好ましい。
具体的な化合物としては、ノルマルブタン、プロパン、ペンタン、ヘキサン、シクロブタン、シクロペンタンなどの炭化水素、二酸化炭素、窒素などの無機ガスを挙げることができる。
【0022】
ただし、上記のようにイソブタン以外の成分にブタン以外の化合物を使用する場合、その比率を高くすると、ポリエチレン系樹脂発泡シートにおける連続気泡率が大きくなるおそれがあるので、イソブタン以外の発泡剤成分を含有させる場合は、ノルマルブタンのような、イソブタンよりもポリエチレン系樹脂との相溶性に優れる発泡剤成分を使用することが好ましく、押出加工性を向上させる意味で2モル%以上含有させることが好ましい。
すなわち、発泡剤のなかでも、イソブタン含有量60%以上、ノルマルブタン含有量2モル%以上含有する混合ブタン系の発泡剤が好ましい。
【0023】
このような混合ブタン系の発泡剤としては、イソブタン60〜98モル%とノルマルブタン2〜40モル%の混合ブタンが好ましく、イソブタン65〜97モル%とノルマルブタン3〜35モル%の混合ブタンがより好ましく、イソブタン70〜96モル%とノルマルブタン4〜30モル%の混合ブタンが特に好ましい。
イソブタンの使用によって、押出発泡工程において、発泡剤の急激な散逸が抑制される一方、ポリエチレン系樹脂との相溶性優れるノルマルブタンが、樹脂粘度を下げ、発泡に適した温度に調整しやすくするため、収縮が少なく、かつ連続気泡率の少ない好ましい性質のポリエチレン系樹脂発泡シートを得ることができる。
【0024】
ポリエチレン系樹脂組成物における前記ポリエチレン系樹脂と前記発泡剤との含有量は、前記ポリエチレン系樹脂100重量部に対し、前記発泡剤が5重量部以上、25重量部以下となる割合とされることが好ましい。
このような範囲内であることが好ましいのは、発泡剤の割合が5重量部未満であると十分な発泡を得にくい一方で25重量部を超えると気泡膜が破泡して良好な発泡体が得られないおそれを有するためである。
【0025】
また、ポリエチレン系樹脂発泡シートの密度(見掛密度)は、通常、0.06g/cm3未満とされ、0.01g/cm3以上、0.05g/cm3以下の範囲の内の何れかとされることが好ましい。
このような密度であることが求められるのは、0.06g/cm3以上の密度では、発泡度が不足して柔軟性及び緩衝性の低いポリエチレン系樹脂発泡シートとなるおそれを有するためである。
一方、密度が小さすぎると強度が低下することによって緩衝性を低下させるおそれを有する。さらに、密度が小さすぎると、気泡膜の厚みが薄くなりすぎて、収縮が大きくなるおそれをも有する。
したがって、緩衝性に優れ、収縮の抑制されたポリエチレン系樹脂発泡シートをより確実に作製させるために、作製するポリエチレン系樹脂発泡シートの見掛密度を0.01g/cm3以上とすることが好ましく、0.015g/cm3以上とすることがより好ましい。
なお、この見掛密度については、実施例記載の方法によって測定することができる。
【0026】
このような発泡状態をポリエチレン系樹脂発泡シートに形成させるためには、製造条件のみならず使用材料による調整も可能であり、例えば、前記ポリエチレン系樹脂組成物に必要に応じて気泡調整剤を添加する方法が挙げられる。
前記気泡調整剤としては、タルク、シリカなどの無機物粒子や分解型発泡剤としても用いられる多価カルボン酸と炭酸ナトリウムあるいは重曹(重炭酸ナトリウム)との混合物、アゾジカルボン酸アミドなどが挙げられる。
これらは単独で用いても、併用してもよい。
添加量は、前記ポリエチレン系樹脂100重量部に対して0.5重量部以下とされることが好ましい。
【0027】
なお、ここでは詳述しないが、前記ポリエチレン系樹脂組成物には、さらに、必要に応じて、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤等の添加剤を、本発明の効果が著しく損なわれない範囲において添加することもできる。
【0028】
本実施形態のポリエチレン系樹脂発泡シートを作製するには、このようなポリエチレン系樹脂組成物を用いる点を除いては、一般的な発泡シートの作製方法と同様の工程により作製が可能である。
例えば、ポリエチレン系樹脂組成物を押出し機から連続的に押出して、長尺状のポリエチレン系樹脂発泡シートを作製する押出発泡工程、押し出された長尺状のポリエチレン系樹脂発泡シートを巻取り機により巻き取る巻き取り工程、巻き取ったシートを放置する熟成工程、巻き直し機などでシートを商品用に巻きなおす化粧巻き工程などが一連の工程として挙げられる。
【0029】
具体的には、例えば、密度が0.925g/cm3以上0.935g/cm3以下であり、しかも、MFRが0.2g/10分以上2.0g/10分未満のポリエチレン系樹脂に、イソブタンを60モル%以上含有する発泡剤を加えて押出し発泡して長尺状の発泡シートを得た後、この長尺状の発泡シートを巻取り機にてロール状に巻き取り、これを放置して熟成し、その後巻き直し機にて巻き直して、密度が0.06g/cm3未満のロール状のポリエチレン系樹脂発泡シートを得る製造方法を採用することができる。
なお、前記巻き直し工程は、前記熟成工程中に行ってもよい。
すなわち、巻き直し工程後、更にシートを熟成させることもできる。
これらの個々の工程の大枠は公知の工程であるが本実施形態のポリエチレン系樹脂発泡シートを製造するに当たっての条件や留意点について以下に詳細に説明する。
【0030】
(巻き取り工程)
前記巻取り機による巻き取り工程では、巻き取り時にできるだけ小さい張力で緩く巻き取ることが好ましい。
小さい張力で緩く巻き取ることにより、収縮した厚みが回復するスペースをシートどうしの間に確保することができ、一旦収縮した発泡シートが回復する時に、元の厚みに近くなりやすい。
またロール内の厚みバラツキをより少なくできる。
すなわち、張力が強いと、柔らかい高発泡のポリエチレン系樹脂発泡シートは、引っ張られて伸びたり、巻き縮まって厚みが実際よりも薄くなった状態で巻かれたりすることになるだけではなく、厚み方向に圧力が加わって製品厚みが薄くなってしまうおそれがある。
反対に、張力が小さすぎるとロール状に巻くことが困難になる。具体的にはシート幅1mあたり4.9〜29.4Nの平均張力とすることが好ましい。
【0031】
また、巻取り機による巻き取りは、できるだけ短時間に行うことが好ましい。
巻きあがり時間を短くすることにより、巻き取られる発泡シートからの発泡剤の逸散量を少なくし、巻き取り段階における発泡シートの厚み減少を抑えることができる。
これにより、ロールの巻き芯部と外周部のシート厚み差を小さくすることができる。具体的には巻き上がりまでの時間が15分以内であることが好ましい。
巻き上がりまでの時間が15分以内とすることにより、より収縮の少ない状態で巻き取ることができる。
なお、巻き上がりまでの時間は、押出量や巻き長さによって適宜調整する事ができる。
【0032】
また、巻取り機の巻き芯の直径は、大きい方が好ましい。
具体的には直径180mm以上とすることが好ましい。直径が大きいと、周速が遅くなるため張力コントロールが行いやすく、全体をほぼ同じ張力で巻けるため、厚み差が発生しにくい。一方、巻き芯の直径が180mm未満であると、巻き始めの張力を大きくしないと巻きにくく、巻き芯部付近の厚みが薄くなってしまいやすくなる。反対に、巻き芯直径が大きくなりすぎると、大掛かりな巻き取り設備が必要になるため、巻き芯の最大直径は適宜制約される。
【0033】
(熟成工程)
本実施形態におけるポリエチレン系樹脂発泡シートを作製するにあたっては、押出発泡が終了した発泡シートに対して、寸法回復及び余分な発泡剤の発散・除去のために一定期間放置して熟成させる工程を設けることが好ましい。
一般的に、ポリエチレン系樹脂発泡シートの収縮防止には、発泡シートからのガスの散逸を抑制するために多価アルコールの高級脂肪酸エステルを収縮防止剤として添加する手法が採用されたりしているが、このような収縮防止剤を用いると通常10日間ほど熟成させる必要がある。
しかし、本実施形態におけるポリエチレン系樹脂発泡シートは、収縮防止剤を用いない場合、熟成工程における発泡剤の逸散及び空気の侵入が早く、熟成期間を短縮することができ、およそ3〜4日で熟成工程を終了させることができる。
熟成工程においては、巻き取った発泡シート内で均一に厚みを回復しやすくするために、巻き芯が水平になるようにし、かつ、空中に浮かした吊り状態でロール状の発泡シートを放置して行うことが好ましい。
また、熟成温度は、低いと寸法回復や発泡剤の空気との置換などに長時間要し、高いと発泡シートが熱収縮する恐れがあるので、15〜55℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
【0034】
本実施形態に係るポリエチレン系樹脂発泡シートは、密度が0.925g/cm3以上0.935g/cm3以下のポリエチレン系樹脂がその形成材料として用いられていることで、上記のような巻き取り工程における収縮の発生防止や、熟成工程に要する期間の短期化を図りうる。
【0035】
なお、本実施形態に係るポリエチレン系樹脂発泡シートは、上記のような工程に、さらに、所定形状に打ち抜きを行う打ち抜き工程と、該打ち抜き工程において所定形状に切り出されたシート片どうしを重ね合わせた状態でその周縁部において外側から熱を加えて、前記シート片の表面どうしを熱融着させるヒートシール工程とが実施されて包装袋などの製品に加工されうる。
このとき、MFRが0.2g/10分以上2.0g/10分未満のポリエチレン系樹脂がその形成材料として用いられていることで、ヒートシールに要する時間の短期化や、加熱温度の低温化を図ることができ、作業性の向上を期待することができる。
したがって、本実施形態に係るポリエチレン系樹脂発泡シートは、先述のように収縮の発生を抑制しつつ熱融着用途に適したものであるといえる。
【0036】
なお、本実施形態に係るポリエチレン系樹脂発泡シートは、その用途を、包装袋に限定するものではなく、表面どうしが熱融着によって接着される用途などに広く使用されうるものである。
また、意匠性や補強の点から各種フィルム、パルプ紙をポリエチレン系樹脂発泡シートの片面に積層したり、共押出しなどの手法によってポリエチレン系樹脂発泡シートの片面にポリエチレン樹脂層を積層したりしている場合も本発明の意図する範囲である。
このような意匠性の付与や補強を行うための具体的な方法としては、例えば、各種印刷や、アルミニウムなどの金属蒸着を行ったり、これら印刷や金属蒸着がされたフィルムをラミネートしたりする方法が挙げられる。また、積層シートを得る方法としては、押出ラミネート法がこのましい。
また、ここでは詳述しないが、本発明の効果が著しく損なわれない範囲においては、ポリエチレン系樹脂発泡シート及びポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法に関して従来公知の事柄を本発明においても採用が可能である。
【実施例】
【0037】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
各特性値の測定は、以下のように実施した。
(メルトマスフローレート(MFR)の測定方法)
JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)」及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法記載の方法に基づいて測定を実施した。
より、具体的には、測定装置(株式会社東洋精機製作所製の「セミオートメルトインデクサー」)のシリンダーに、測定試料3〜8g程度充填し、充填棒を用いて試料を圧縮した後に、試験温度190℃、公称荷重21.18Nでの測定を実施した。
なお、予熱時間は約4分、試験数は3以上とした。
【0039】
(シート厚み、密度の測定)
ポリエチレン系樹脂発泡シートの厚みは、定圧厚み測定機(Teclock社製、型式「SCM−627」)を用いて測定した。
また、ポリエチレン系樹脂発泡シートの密度(見掛け密度)は、JIS K 7222:2005「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の求め方」に基づいて実施した。
【0040】
(実施例1)
密度=0.928g/cm3、MFR=1.0g/10minのポリエチレン樹脂(PE1)に対して気泡調整剤を添加してφ90mm−φ150mmのタンデム押出し機に供給し、上流側の押出し機(φ90mm)内で発泡剤(イソブタン/ノルマルブタン=95/5(モル比))を圧入して溶融混練した後に下流側の押出し機(φ150mm)において、押出しに適した112℃の温度まで冷却し、該押出し機に装着した環状ダイ(口径125mm、ダイリップクリアランス(スリット間隙)0.25mm)から大気中に押出し発泡を行った。
続けて、押出された筒状の発泡体を、直径400mmのマンドレル上を薄い空気層を介して浮上させた状態で通過させてこのマンドレルによる冷却を実施した後に、押出し方向に連続的な切込みを入れて切り開き、平坦なシート状となるように広げて巻取り機でロール状に巻き取り実施例1のポリエチレン系樹脂発泡シートを作製した。
なお、巻取り機での巻き量は640mであった。
【0041】
なお、得られたロールから、長さ方向中央部分(300m付近)において、全幅切片を切り出し、直後の厚み(t0)と見掛密度とを測定した後に、23℃の室温下で2日間放置した後に、同じく厚み(t1)を測定した。
そして、上記測定結果から厚み変化率( (t1−t0)/t1×100(%) )を求めた。
結果を、下記表1に示す。
【0042】
なお、作製された実施例1のポリエチレン系樹脂発泡シートを3方シール製袋装置にセットして、製造袋速度3.2秒/枚の条件設定でヒートシールを実施しシール性(熱融着性)の判定を行った。
結果を、下記表1に示す。
【0043】
(実施例2)
密度=0.928g/cm3、MFR=0.4g/10minのポリエチレン樹脂(PE2)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂発泡シートを作製し、実施例1と同様に評価を行った。
結果を表1に示す。
【0044】
(実施例3)
実施例1で使用したポリエチレン樹脂(PE1)92重量%と高分子型帯電防止剤(三洋化成株式会社製、ポリエーテル−ポリプロピレンブロック共重合体「ペレスタット300」)8重量%との混合樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂発泡シートを作製し、実施例1と同様に評価を行った。
結果を表1に示す。
なお、この実施例3のポリエチレン系樹脂発泡シートに対してJIS K 6911:1995「熱硬化性プラスチックー般試験方法」記載の方法、具体的には、下記に示す方法で表面固有抵抗率を測定したところ、5.4×1011Ω/□となる帯電防止に優れた発泡シートとなっていることが確認された。
【0045】
(表面抵抗率の測定方法)
一辺が10cmの平面正方形状の試験片を温度22℃、湿度60%の雰囲気下に24時間放置した後、温度22℃、湿度60%の環境下、試験装置(アドバンテスト社製、デジタル超高抵抗/微少電流計R8340及びレジスティビティ・チェンバR12702A)を使用し、試験片に、約30Nの荷重にて電極を圧着させ500Vの電圧を印加して1分経過後の抵抗値を測定し、次式により算出した。
ρs=π(D+d)/(D−d)×Rs
ただし、
ρs:表面固有抵抗率(Ω/□)
D:表面の環状電極の内径(cm)(レジスティビティ・チェンバR12702Aでは、7cm)
d:表面電極の内円の外径(cm)(レジスティビティ・チェンバR12702Aでは、5cm)
Rs:表面抵抗(Ω)
【0046】
(比較例1)
密度=0.928g/cm3、MFR=4.0g/10minのポリエチレン樹脂(PE3)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂発泡シートを作製し、実施例1と同様に評価を行った。
結果を表1に示す。
【0047】
(比較例2)
密度=0.923g/cm3、MFR=0.3g/10minのポリエチレン樹脂(PE4)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂発泡シートを作製し、実施例1と同様に評価を行った。
結果を表1に示す。
なお、この比較例2のポリエチレン系樹脂発泡シートは、収縮が大きく、ロール巻き取り時において蛇行を生じたために300mまでの巻取りしか行うことができなかった。
そのため、「厚み」、「密度」、「変化率」の測定は、長さ方向中央部となる150m付近で実施した。
【0048】
(比較例3)
密度=0.932g/cm3、MFR=2.3g/10minのポリエチレン樹脂(PE5)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂発泡シートを作製し、実施例1と同様に評価を行った。
結果を表1に示す。
【0049】
(比較例4)
密度=0.929g/cm3、MFR=3.5g/10minのポリエチレン樹脂(PE6)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂発泡シートを作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0050】
【表1】

【0051】
この表にも示すように、比較例1、3では、製袋速度を5秒に延長しても(加熱時間を長くしても)十分なヒートシールが実施できなかった。
また、比較例2では、実施例のポリエチレン系樹脂発泡シートと同様のシール性が認められたが、厚み変化が大きいことが確認された。
このことからも、本発明によれば、ロール状に形成されるなどした場合における厚みの変動を抑制しつつ熱融着される用途に適したポリエチレン系樹脂発泡シートの提供が図られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.925g/cm3以上0.935g/cm3以下の密度を有するポリエチレン系樹脂と発泡剤とを含んだポリエチレン系樹脂組成物を見掛密度が0.06g/cm3以下となるようにシート状に押出し発泡させてなり、表面どうしを熱融着させて用いられるポリエチレン系樹脂発泡シートであって、
前記ポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレートが、0.2g/10分以上2.0g/10分未満であることを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡シート。
【請求項2】
前記ポリエチレン系樹脂組成物には、高分子型帯電防止剤がさらに含有されている請求項1記載のポリエチレン系樹脂発泡シート。

【公開番号】特開2011−26529(P2011−26529A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176578(P2009−176578)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】