説明

ポリエーテルポリオール組成物、及びそれを用いた硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】 スプレー法で硬質ポリウレタンフォームを施工する際に、高い反応性が得られるポリオール組成物、及びそれを用いることにより、揮発性の第三級アミン触媒の使用量が低減できる硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することである。
【解決手段】 硬質ポリウレタンフォーム製造の際に、フェノール化合物1モルに対し、N−アルキルアルカノールアミン類、及びホルムアルデヒドをそれぞれ1.5〜3モルの割合で反応させたホルムアルデヒド縮合物のアルキレンオキシド付加重合物を用いて、ポリイソシアネート化合物と発泡剤の存在下で反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子内に1.5〜3個のN−アルキルアルカノールアミノ基を有するホルムアルデヒド縮合物のアルキレンオキサイド付加重合物、及びそれを用いた硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオールとポリイソシアネートとを、発泡剤、触媒、整泡剤、及び必要に応じて、難燃剤、架橋剤等の他の助剤の存在下に反応、発泡させて、硬質ポリウレタンフォームを製造することは広く行われている。この硬質ポリウレタンフォームは成形の自由度が高く、また、プラスチックフォームの中で最も優れた断熱性能を有することから、各種の装置又は建築物の断熱材として広く使用されている。その中で、特に大型で、且つ高い断熱性能が要求される建築物の断熱材等として硬質ポリウレタンフォームを製造する際には、スプレー法が多く採用されている。
【0003】
ここで、スプレー法とは、吹き付けに用いるスプレーガンに、ポリオールシステム液と、ポリイソシアネート化合物とからなる原料液をそれぞれ高圧で送り込み、当該スプレーガン内部でこれらの原料液を混合して、施工対象物に直接吹き付け、その施工対象物に到着すると瞬時に発泡、硬化させて断熱材等とする方法である。このスプレー法では、ミスト状態でスプレーされるため、小さな隙間にも充填されて継ぎ目のない断熱層が形成されるという特長を有し、また、断熱層を形成すると同時に施工対象物に接着するため、施工対象物の下地処理を必要とせず、作業の省力化、工期の短縮等によるコストの低減が可能であるという利点を有する。さらに、複雑な形状の施工対象物の拭き付け容易であり、連続発泡が可能なことから、重ねてスプレーすることで自在に断熱層の厚みを調整することが可能である。このため、スプレー法の中でも多層吹き付け法は、硬質フォームを多層に積層し、高い断熱性能を有する厚い断熱層を形成するのに広く利用されている。
【0004】
このスプレー法により硬質ポリウレタンフォームを施工する際には、スプレーガンで吹き付けた原料液が施工対象物に到着すると迅速に発泡、硬化する必要がある。このため、その原料液には高い反応性が要求され、これまでに種々の検討がなされている。
【0005】
通常、原料液の反応性を調整するには、触媒活性に優れる第三級アミン触媒を単独で用いるか、また必要に応じて有機金属触媒を併用して用いるのが有用な手段とされている。
【0006】
ところで、スプレー法により硬質ポリウレタンフォームを施工するのに好適な反応性を得るためには、これらの触媒を多量に用いる必要がある。しかしながら、これらの第三級アミン触媒は、一般に揮発性が高く、また臭気も強いため、多量に使用すると、作業環境が著しく悪化するばかりでなく、得られた製品でも悪臭等の問題を生じる可能性がある。
【0007】
そこで、これら揮発性の高い第三級アミン触媒の使用量を低減するため、フェノール類と、第一級又は第二級モノアミン類、及びアルデヒド類によるマンニッヒ反応を利用して製造されるマンニッヒ系ポリエーテルポリオールが分子内の第三級窒素原子に基づく自己触媒活性を示すことから、当該技術分野では好適に用いられている。
【0008】
例えば、特許文献1(特表2002−524630公報)には、フェノール、N,N−ジエタノールアミン及びホルムアルデヒドの縮合物に、アルキレンオキサイドを付加させたマンニッヒ系ポリエーテルポリオールが開示されている。また、特許文献2(特開平8−301963号公報)には、ノニルフェノール、N,N−ジエタノールアミン及びホルムアルデヒドとの縮合物に、アルキレンオキサイドを付加させたマンニッヒ系ポリエーテルポリオールが開示されている。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に開示されているマンニッヒ系ポリエーテルポリオールを用いた原料液は、スプレー法により硬質ポリウレタンフォームを施工するのに十分に満足すべき反応性を得るには至っていない。
【0010】
また、特許文献3(特開2003−335832公報)には、フェノール、N,N−ジエタノールアミン、アルキルアミン及びホルムアルデヒドの縮合物が開示されている。また、特許文献4(特開2007−326953公報)には、フェノール類、N,N−ジエタノールアミン、アルキルアミン及びホルムアルデヒドとの縮合物に、アルキレンオキサイドを付加させたマンニッヒ系ポリエーテルポリオールが開示されている。
【0011】
しかしながら、上記特許文献3及び特許文献4に開示された化合物は、それ自体が強い臭気を帯びており、また、比較的低温でアミン化合物が発生するため、悪臭による作業環境が悪化するという問題を有する。
【0012】
【特許文献1】特表2002−524630公報
【特許文献2】特開平8−301963号公報
【特許文献3】特開2003−335832公報
【特許文献4】特開2007−326953公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、スプレー法で硬質ポリウレタンフォームを施工する際に、高い反応性が得られるポリオール組成物、及びそれを用いることにより、揮発性の第三級アミン触媒の使用量が低減できる硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリオールとして、分子内にN−アルキルアルカノールアミノ基を有する縮合物のアルキレンオキサイド付加重合物を用いると、揮発性の第三級アミン触媒の使用量を低減でき、しかも得られる硬質ポリウレタンフォームの機械的強度を損なうことなく、速い成形速度で硬質ポリウレタンフォームが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりの、高度の自己触媒活性を示すポリエーテルポリオール組成物、その製造方法、及びそれを用いた硬質ポリウレタンフォームの製造方法である。
【0016】
[1]フェノール化合物、N−アルキルアルカノールアミン類、及びホルムアルデヒドを、フェノール化合物:N−アルキルアルカノールアミン類:ホルムアルデヒド=1:1.5〜3:1.5〜3(モル比)で反応させて得られるホルムアルデヒド縮合物に、上記フェノール化合物1モルに対し、1〜20モルのアルキレンオキサイドを付加反応させたポリエーテルポリオール組成物であって、その水酸基価が100〜600mgKOH/gであり、かつその25℃における粘度が100Pa・s以下であるポリエーテルポリオール組成物。
【0017】
[2]上記フェノール化合物が、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、キシレノール、p−tert−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、p−フェニルフェノール、m−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、フロログルシノール、α−ナフトール、β−ナフトール、及びβ−ヒドロキシアントラセンからなる群より選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする上記[1]に記載のポリエーテルポリオール組成物。
【0018】
[3]上記N−アルキルアルカノールアミン類が、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン、N−エチルイソプロパノールアミン、N−メチル−2−ヒドロキシブチルアミン、及びN−メチルヘキサノールアミンからなる群より選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のポリエーテルポリオール組成物。
【0019】
[4]上記アルキレンオキサイドが、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドからなる群より選ばれる1種又は2種以上のアルキレンオキサイドであることを特徴とする上記[1]及至[3]のいずれかに記載のポリエーテルポリオール組成物。
【0020】
[5]以下の工程を含む上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のポリエーテルポリオール組成物の製造方法。
(1)フェノール化合物、N−アルキルアルカノールアミン類、及びホルムアルデヒドを、フェノール化合物:N−アルキルアルカノールアミン類:ホルムアルデヒド=1:1.5〜3:1.5〜3(モル比)で反応させる第一工程、
(2)第一工程で得られたホルムアルデヒド縮合物に、第一工程で用いたフェノール化合物1モルに対し、1〜20モルのアルキレンオキサイドを付加反応させる第二工程。
【0021】
[6]上記第一工程において、フェノール化合物が、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、キシレノール、p−tert−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、p−フェニルフェノール、m−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、フロログルシノール、α−ナフトール、β−ナフトール、及びβ−ヒドロキシアントラセンからなる群より選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする上記[5]に記載のポリエーテルポリオール組成物。
【0022】
[7]上記第一工程において、N−アルキルアルカノールアミン類が、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン、N−エチルイソプロパノールアミン、N−メチル−2−ヒドロキシブチルアミン、及びN−メチルヘキサノールアミンからなる群より選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする上記[5]又は[6]に記載のポリエーテルポリオール組成物。
【0023】
[8]上記第二工程において、上記第一工程で得られたホルムアルデヒド縮合物に付加反応させるアルキレンオキサイドが、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドからなる群より選ばれる1種又は2種以上のアルキレンオキサイドであることを特徴とする上記[5]及至[7]のいずれかに記載のポリエーテルポリオール組成物。
【0024】
[9]ポリオール類とポリイソシアネート化合物とを発泡剤の存在下で反応させてポリウレタンフォームを製造する方法であって、上記ポリオール類が、上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のポリエーテルポリオール組成物を含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【0025】
[10]使用するポリオール類全量に対する、上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のポリエーテルポリオール組成物の割合が、5〜100重量%の範囲であることを特徴とする上記[9]に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【0026】
なお、本発明において、硬質ポリウレタンフォームとは、高度に架橋されたクローズドセル構造を有し、可逆変形不可能なフォームをいう。硬質ポリウレタンフォームの物性は、特に限定するものではないが、一般的には、密度が10〜100kg/m、圧縮強度が50〜1000kPaの範囲である。
【発明の効果】
【0027】
本発明のポリエーテルポリオール組成物は、ウレタン形成において高度の自己触媒活性を有するため、硬質ポリウレタンフォーム製造用のポリオールとして有用である。
【0028】
また、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法によれば、揮発性の第三級アミン触媒の使用量を大幅に低減しても、スプレー法に対応可能な高い反応性が得られる。
【0029】
さらに、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法によれば、スプレー法、特に多層吹き付け法において、優れた施工性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明のポリエーテルポリオール組成物は、フェノール化合物、N−アルキルアルカノールアミン類、及びホルムアルデヒドを、フェノール化合物:N−アルキルアルカノールアミン類:ホルムアルデヒド=1:1.5〜3:1.5〜3(モル比)で反応させて得られるホルムアルデヒド縮合物に、上記フェノール化合物1モルに対し、1〜20モルのアルキレンオキサイドを付加反応させたポリエーテルポリオール組成物である。
【0031】
そして、本発明のポリエーテルポリオール組成物は、その水酸基価が、通常100〜600mgKOH/g、好ましくは200〜600mgKOH/gの範囲のものであり、その25℃における粘度が、通常100Pa・s以下、好ましくは70Pa・s以下のものである。
【0032】
本発明のポリエーテルポリオール組成物の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)フェノール化合物、N−アルキルアルカノールアミン類、及びホルムアルデヒドを、フェノール化合物:N−アルキルアルカノールアミン類:ホルムアルデヒド=1:1.5〜3:1.5〜3(モル比)で反応させる第一工程、
(2)第一工程で得られたホルムアルデヒド縮合物に、第一工程で用いたフェノール化合物1モルに対し、1〜20モルのアルキレンオキサイドを付加反応させる第二工程。
【0033】
まず、本発明の第一工程について説明する。
【0034】
本発明において、上記のフェノール化合物としては、芳香族環の炭素原子に結合した少なくとも1個のフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられる。
【0035】
上記フェノール化合物は、ホルムアルデヒド縮合物を製造する際の反応時、アルキレンオキサイドの付加反応時、硬質ポリウレタンフォームの製造時等において、反応に影響を与えない置換基によって置換されていてもよい。
【0036】
このような置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、フェノキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。本発明において、好ましい置換基としては、炭素数1〜炭素数18のアルキル基、更に好ましい置換基としては、炭素数1〜炭素数12のアルキル基が挙げられる。
【0037】
上記フェノール化合物としては、具体的には、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、キシレノール、p−tert−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、p−フェニルフェノール、m−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、フロログルシノール、α−ナフトール、β−ナフトール、β−ヒドロキシアントラセン、及びこれらの混合物等が例示される。本発明においては、入手が容易という観点から、フェノール、クレゾール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、及びこれらの混合物が好ましい。
【0038】
また、上記N−アルキルアルカノールアミン類としては、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン、N−エチルイソプロパノールアミン、N−メチル−2−ヒドロキシブチルアミン、N−メチルヘキサノールアミンが挙げられ、本発明のポリエーテルポリオール組成物に高い反応性を付与するという観点から、N−メチルエタノールアミンが好ましい。
【0039】
また、上記ホルムアルデヒドの形態は特に限定されないが、例えば、ホルマリン(37%のホルムアルデヒド水溶液)、ホルムアルデヒドのメタノール溶液、パラホルムアルデヒド等が好適に用いられる。なお、本発明において、上記ホルムアルデヒドをホルマリン、ホルムアルデヒドのメタノール溶液、パラホルムアルデヒド等として使用する場合、その使用量は、ホルムアルデヒド換算のモル数で計算する。
【0040】
本発明において、上記フェノール化合物と上記N−アルキルアルカノールアミン類とのモル比は1:1.5〜3モルの範囲である。フェノール化合物1モルに対してN−アルキルアルカノールアミン類が1.5モル未満であると、得られるポリエーテルポリオール組成物の粘度は低くなるが、平均官能基数が小さくなる。このため、得られるポリエーテルポリオール組成物を硬質ポリウレタンフォームの製造に使用する場合、得られる硬質ポリウレタンフォームは収縮しやすくなるという短所を有している。また、使用するN−アルキルアルカノールアミン類が3モルを超えると、フェノール化合物の縮合可能な反応点を越えるため、N−アルキルアルカノールアミン類が未反応として残存する。このため、得られるポリエーテルポリオール組成物を硬質ポリウレタンフォームの製造に使用する場合、未反応のN−アルキルアルカノールアミン類が触媒として作用して反応性の向上が見込めるが、平均官能基数が小さくなるため、得られた硬質ポリウレタンフォームは収縮しやすくなるという短所を有している。したがって、本発明においては、上記N−アルキルアルカノールアミン類を上記フェノール化合物1モルに対して1.5〜3モル使用し、好ましくは1.7〜3モル使用する。
【0041】
本発明において、上記フェノール化合物と上記ホルムアルデヒドとのモル比は1:1.5〜3モルの範囲である。ホルムアルデヒドの量がフェノール化合物1モルに対して1.5モル未満であると、得られるポリエーテルポリオール組成物の平均官能基数が小さくなり、得られる硬質ポリウレタンフォームは収縮しやすくなる。また、ホルムアルデヒドの量が3モルを超えると、フェノール化合物の縮合可能な反応点を越えるため、ホルムアルデヒドが未反応物として残存したり、フェノール環の間での架橋反応を呈し、ポリエーテルポリオール組成物の粘度が高くなったり、また、得られるポリエーテルポリオール組成物を用いて製造した硬質ポリウレタンフォームでは均一なセルが得られないという短所を有している。したがって、本発明においては、ホルムアルデヒドをフェノール化合物1モルに対して1.5〜3モル使用し、好ましくは1.7〜3モル使用する。
【0042】
本発明において、上記ホルムアルデヒド縮合物は、上記フェノール化合物、上記N−アルキルアルカノールアミン類、及びホルムアルデヒドを、上記した所定のモル比で混合し、反応させることで得られる。これらの原料化合物を添加する順序は、特に限定するものではないが、例えば、所定量のフェノール化合物とN−アルキルアルカノールアミン類とを混合し、攪拌しながら、これにホルムアルデヒドを発熱の制御を行いながら、好ましくは90℃以下の温度で添加する。この際の添加方法としては、連続滴下又は分割投入が好適である。ホルムアルデヒドの添加終了後、通常40〜130℃、好ましくは50〜100℃の温度範囲で、未反応N−アルキルアルカノールアミン類が反応混合物中の5重量%以下になるのに充分な時間加熱する。反応温度が40℃未満の場合には、反応が進みにくく、実用的な時間では未反応のN−アルキルアルカノールアミン類の量が5重量%以下にはなりにくい。また、反応温度が130℃を超えると、フェノール化合物の高分子化や、ホルムアルデヒド縮合物の熱分解等の副反応が起こるおそれがある。なお、反応混合物中の未反応N−アルキルアルカノールアミン類の量は高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0043】
本発明において、上記第一工程では、縮合反応により水が生成する。また、ホルマリン水溶液を使用した場合には、反応生成物中に水が存在する。本発明の製造方法においては適切な方法で反応生成物から水を除去することが好ましい。水を除去する方法としては、例えば、120℃以下、好ましくは100℃以下の温度で加熱して減圧脱水する方法等が挙げられる。
【0044】
次に、本発明の第二工程について説明する。
【0045】
本発明においては、上記した第一工程により得られるホルムアルデヒド縮合物に、上記した所定量のアルキレンオキサイドを付加させることでポリエーテルポリオール組成物を製造する。
【0046】
本発明において、上記アルキレンオキサイドとしては、特に限定するものではないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドからなる群より選ばれた1種又は2種以上のアルキレンオキサイドが好適に用いられる。
【0047】
本発明において、上記ホルムアルデヒド縮合物に付加するアルキレンオキサイドの量は、上記した第一工程で使用したフェノール化合物1モルに対して、1〜20モルの範囲である。アルキレンオキサイドの量が、使用したフェノール化合物1モルに対して1モル未満であると、得られるポリエーテルポリオール組成物の水酸基価、及び粘度が高くなり、このため、得られるポリエーテルポリオール組成物を硬質ポリウレタンフォームの製造に使用する場合、混合性不良を生じる。また、アルキレンオキサイドの量が、使用したフェノール化合物1モルに対して20モルを超えると、得られるポリエーテルポリオール組成物を硬質ポリウレタンフォームの製造に使用した場合に、軟らかく、収縮しやすいポリウレタンフォームしか得られない。したがって、本発明においては、上記アルキレンオキサイドを、上記した第一工程で使用したフェノール化合物1モルに対して1〜20モル使用し、好ましくは1.5〜10モル使用する。
【0048】
上記ホルムアルデヒド縮合物へのアルキレンオキサイドの付加反応において、例えば、種類の異なるアルキレンオキサイドを併用する場合の付加形式は、ブロック付加形式、又はランダム付加形式のいずれでもよい。
【0049】
上記ホルムアルデヒド縮合物にアルキレンオキサイドを付加させる付加反応は、通常60〜160℃、好ましくは80〜130℃の温度範囲で行う。反応温度が60℃未満の場合には、実用的な反応速度が得られにくく、また、160℃を超える反応温度では副反応が起こり、極端な場合には反応器の内部で固化することがあり、所望の性質のポリエーテルポリオール組成物が得られにくい。
【0050】
なお、上記ホルムアルデヒド縮合物へのアルキレンオキサイドの付加反応は、ホルムアルデヒド縮合物自体が触媒作用を有するため、触媒が存在しない状態でも付加反応は起こるが、実用的な反応速度を得るために、触媒を用いてもよい。具体的には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、ジメチルアミノエタノール、1−メチルイミダゾール等の第三級アミン等が例示される。
【0051】
本発明において、付加反応生成物中には、未反応のアルキレンオキサイドが残存するので、ストリッピング等により除去することが好ましい。また、触媒を使用した場合には、定法に従って反応生成物から除去することが好ましい。
【0052】
本発明のポリエーテルポリオール組成物は、硬質ポリウレタンフォーム製造用のポリオールとして好適に使用される。
【0053】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオール類とポリイソシアネート化合物とを発泡剤の存在下で反応させてポリウレタンフォームを製造する方法であって、上記ポリオール類が、上記した本発明のポリエーテルポリオール組成物を含有することをその特徴とする。
【0054】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、ポリオール類として、本発明のポリエーテルポリオール組成物を単独で使用できる。また、他のポリオールと併用することもできる。使用するポリオール類全量に対する本発明のポリエーテルポリオール組成物の割合は、5〜100重量%の範囲が好ましい。
【0055】
本発明のポリエーテルポリオール組成物と併用できる他のポリオールとしては、硬質ポリウレタンフォームの製造方法において一般的に用いられるポリオールでよく、特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール類;これら多価アルコール類にアルキレンオキサイドを付加重合して得られる脂肪族ポリエーテルポリオール類;ハイドロキノン、ビスフェノールA、キシリレングリコール等の芳香族化合物にアルキレンオキサイドを付加重合して得られる芳香族ポリエーテルポリオール類;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、アニリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合して得られるアミン系ポリエーテルポリオール類;テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、平均分子量が150〜500のポリオキシエチレングリコール等のグリコールとの、グリコールに基づく水酸基末端を有する芳香族ポリエステルポリオール類等が挙げられる。
【0056】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法に使用されるポリイソシアネート化合物としては、硬質ポリウレタンフォームの製造方法において一般的に用いられるポリイソシアネートでよく、特に限定するものではないが、例えば、トリレンジンイソシアネート(以下、TDIと略す。)、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す。)、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略す。)、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す。)等の脂肪族イソシアネート類等が挙げられる。これらのうち好ましくはTDIとその誘導体、又はMDIとその誘導体であり、これらは混合して使用しても差し支えない。
【0057】
TDIとその誘導体としては、例えば、2,4−TDIと2,6−TDIの混合物、又はTDIの末端イソシアネートプレポリマー誘導体を挙げることができる。MDIとその誘導体としては、例えば、MDIとその重合体のポリフェニルポリメチレンジイソシアネートの混合体、及び/又は末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体を挙げることができる。
【0058】
これらポリイソシアネート化合物とポリオール類の混合割合としては、特に限定するものではないが、イソシアネートインデックス(=イソシアネート基/イソシアネート基と反応しうる活性水素基)で表すと、一般に60〜400の範囲である。
【0059】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法に用いられる発泡剤としては、水、フロン系化合物、低沸点炭化水素、炭酸ガス等が挙げられ、これらのうち、水が特に好ましい。また、フロン系化合物、低沸点炭化水素、炭酸ガス等と水とを併用してもよい。
【0060】
フロン系化合物としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、ジクロロモノフルオロエタン(HCFC−141b)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)等が挙げられる。これらのうち、オゾン層破壊の問題から、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)が好ましい。
【0061】
低沸点炭化水素としては、通常、沸点が0〜70℃の炭化水素が使用され、具体的にはプロパン、ブタン、ペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0062】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、触媒を用いることができる。触媒としては、ポリウレタンフォームの製造に一般に使用される触媒でよく、特に限定するものではないが、例えば、有機金属触媒や、カルボン酸金属塩触媒、第三級アミン触媒、第四級アンモニウム塩触媒等を挙げることができる。
【0063】
有機金属触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、オクタン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、オクタン酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、オクタン酸ニケッル、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。鉛、錫、水銀等の重金属は毒性問題や環境問題を引き起こすおそれがあるため、使用量は少ない方が望ましい。
【0064】
カルボン酸金属塩触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、カルボン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が挙げられる。カルボン酸としては、特に限定するものではないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、2−エチルへキサン酸、アジピン酸等の脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、安息香酸、フタル酸等の芳香族モノカルボン酸及びジカルボン酸等が挙げられる。また、カルボン酸塩を形成する金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属が好適な例として挙げられる。
【0065】
第三級アミン触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール,1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ジメチルアミノプロピルイミダゾール等の第三級アミン化合物類が挙げられる。
【0066】
第四級アンモニウム塩触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム蟻酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム蟻酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2−エチルへキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類が挙げられる。
【0067】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、必要であれば、整泡剤として界面活性剤を用いることができる。使用される界面活性剤としては、例えば、従来公知の有機シリコーン系界面活性剤が挙げられ、具体的には、有機シロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体、シリコーン−グリース共重合体等の非イオン系界面活性剤、又はこれらの混合物等が挙げられる。それらの使用量は、ポリオール類100重量部に対して通常0.1〜10重量部の範囲である。
【0068】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、必要であれば、難燃剤を用いることができる。使用される難燃剤としては、例えば、リン酸とアルキレンオキシドとの付加反応によって得られるプロポキシル化リン酸、プロポキシル化ジブチルピロリン酸等の含リンポリオールに代表される反応型難燃剤;トリクレジルホスフェート等の第三級リン酸エステル類;トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有第三級リン酸エステル類;ジブロモプロパノール、ジブロモネオペンチルグリコール、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン含有有機化合物;酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等の無機化合物等が挙げられる。それらの使用量は、要求される難燃性に応じて異なるため、特に限定するものではないが、通常ポリオール類100重量部に対して4〜20重量部の範囲である。
【0069】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、必要であれば、架橋剤又は鎖延長剤を用いることができる。架橋剤又は鎖延長剤としては、例えば、従来公知のエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等の低分子量の多価アルコール類;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子量のアミンポリオール類;エチレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンビスオルソクロロアニリン等のポリアミン類を挙げることができる。
【0070】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、必要に応じて、着色剤や、老化防止剤、その他従来公知の添加剤等も使用できる。これらの添加剤の種類、添加量は、使用される添加剤の通常の使用範囲でよい。
【0071】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、上記原料を混合した混合液を急激に混合、攪拌した後、適当な容器又はモールドに注入して発泡成型することにより行われる。混合、攪拌は一般的な攪拌機や専用のポリウレタン発泡機を使用して実施すれば良い。ポリウレタン発泡機としては高圧、低圧及びスプレー式の機器が使用できる。
【0072】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、迅速な反応が求められる施工方法、特にスプレー法に適している。スプレー法は、ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物とからなる原料液を施工対象物に吹き付けながら反応させる発泡方法である。スプレー法としては、種々の方法が知られており、特に限定するものではないが、例えば、ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物とをスプレーガン内部で混合して施工対象物に吹き付けて、発泡、硬化させるエアレススプレー発泡が好適な処方として挙げられる。
【0073】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法により得られる硬質ポリウレタンフォーム製品としては、例えば、スプレー式の硬質ウレタンフォームにて製造される断熱材が好適なものとして挙げられる。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定いて解釈されるものではない。
【0075】
[実施例1]
還流コンデンサーを備え付けた1Lの四つ口フラスコにフェノール94.1g(1.0モル)と、N−メチルエタノールアミン225.3g(3.0モル)を仕込み、窒素雰囲気下、攪拌状態で60℃まで昇温した。続けて、37%のホルムアルデヒド水溶液243.5g(ホルムアルデヒド換算で3.0モル)を内温が90℃以下となるように約1時間かけて滴下し、60℃で10時間熟成反応を行った。
【0076】
反応終了後、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析を行ったところ、原料のフェノールは全て消失し、未反応のN−メチルエタノールアミンの量が2.2重量%であることを確認した。
【0077】
次いで、90℃にて0.13kPaまで減圧脱水し、残存水分量を0.3重量%とした。
さらに、1Lのオートクレーブに得られたホルムアルデヒド縮合物355.5gと、30%の水酸化カリウム水溶液9.0g(ホルムアルデヒド縮合物に対して、水酸化カリウム換算で0.75重量%)を仕込み、反応器内の空気を窒素で置換した後、攪拌状態で90℃まで昇温した。90℃にて0.13kPaまで減圧して水を反応器内から除去した。再度反応器内の窒素置換を行い、攪拌状態で100℃まで昇温した後、プロピレンオキサイド(以下、POと略す。)285.8g(4.9モル)を100℃の温度で、2.0ml/min.の速度で反応器に加え、100℃で4時間熟成反応を行った。
【0078】
反応終了後、得られた触媒を含む粗ポリエーテルポリオールの精製は、水とアルカリ吸着剤「キョーワード600(協和化学工業社製)」を加え、吸着処理、ろ過、乾燥により精製し、ポリエーテルポリオールAを得た。
ポリエーテルポリオールAの分析結果は、水酸基価が431mgKOH/g、25℃における粘度が18.4Pa・sであった。
【0079】
[実施例2〜4]、[比較例1〜2]
各原料の使用量(単位:モル)を表1のとおりにする以外は、実施例1と同様に行い、ポリエーテルポリオールB〜Fを得た。
【0080】
【表1】

なお、表1において、37%のホルムアルデヒド水溶液におけるホルムアルデヒドのモル数を換算したものを「ホルムアルデヒド」の欄に表示した。
【0081】
さらに、「水酸基価」の単位はmgKOH/gであり、「粘度」は25℃における粘度を示し、単位はPa・sである。
【0082】
[実施例5〜8]、[比較例3〜5]硬質ポリウレタンフォームの調製.
ポリオールとして、実施例1〜4で得られたポリオールA〜Dと、芳香族系ポリエステルポリオールとからなるポリオール組成物を用いた例を実施例とし、比較例1、2で得られた各ポリオールE、Fと、芳香族系ポリエステルポリオールとからなるポリオール組成物を用いた例を比較例として、以下に示す。
【0083】
表2に示した原料配合比にてプレミックスAを調合した。
【0084】
【表2】

表2で示す配合の各プレミックスA65gを300mlポリエチレンカップに計量し、20℃に温度調整した。別容器で25℃に温度調整したイソシアネート液を、イソシアネートインデックス[=イソシアネート基/OH基(モル比)×100]が100となるように、プレミックスAのカップの中に入れ、素早く撹拌機にて6000rpmで3秒間撹拌した。混合撹拌した混合液を20℃に温度調節した2Lのポリエチレンカップに移し発泡中の反応性を測定した。
【0085】
混合液を入れた時点から30分後にフォームを脱型し、7cm×7cm×20cmのコアフォームを切り出し、コア密度の測定を行った。さらに、一辺が4.5cmの立方体のフォームを2個切り出し、水平方向と垂直方向の圧縮強度を測定し比較した。結果を表3に示す。各測定項目の測定方法は以下のとおりである。
【0086】
【表3】

(1)測定項目
クリームタイム:フォームが上昇開始する時間を目視にて測定した。
【0087】
ゲルタイム:反応が進行し液状物質より、樹脂状物質に変わる時間を測定した。ゲルタイムが短いほど成形速度が速いと言える。
【0088】
ライズタイム:フォームの上昇が停止する時間を目視にて測定した。
【0089】
コア密度:モールド成型フォームの中心部を7×7×20cmの寸法にカットし、寸法、重量を正確に測定してコア密度を算出した。
【0090】
圧縮強度:フォームのコア密度を測定したフォームから寸法4.5×4.5×4.5cmのフォームを切り出し試験片とし、JIS K 7220に準じて硬さ試験を実施した。すなわち、JIS K 7220に準じて、試験片を試験機の台上に平らに置き、半径10cmの円形加圧板を試験片の上面に載せて、荷重を0.5kgf(4.9N)にした時の厚さを測定し、これを初めの厚さとした。次に円形加圧板を初めの厚さの25%押し込んだ時の圧縮応力を読み取った。
【0091】
フォーム硬度は以下の式を用いて算出し圧縮強度とした。
【0092】
フォーム硬度(N/m
=円形加圧板を用いて得られた圧縮応力(N)÷
円形加圧板に接地したフォーム部分の面積(m)。
【0093】
表3から明らかなように、実施例5〜実施例8と、比較例3、比較例4の反応性を比較すると、実施例5〜実施例8ではゲルタイムが短く、成形速度が速い。また、実施例5〜実施例8と、第三級アミン触媒量を増加した比較例5の反応性とを比較すると、同等のゲルタイムを示した。すなわち、N−メチルエタノールアミンを用いたポリオールA〜Dは、N,N−ジエタノールアミンを用いたポリオールE、Fよりも、第三級アミン触媒の量を低減しても、同等の成形速度が得られることが示唆された。
【0094】
また、表3から明らかなように、実施例5〜実施例8と、比較例3、比較例4のフォーム物性を比較すると、コア密度、圧縮強度(水平)及び圧縮強度(垂直)ともに同等であった。すなわち、N−メチルエタノールアミンを用いたポリオールA〜Dは、N,N−ジエタノールアミンを用いたポリオールE、Fと同等のフォーム物性が得られることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール化合物、N−アルキルアルカノールアミン類、及びホルムアルデヒドを、フェノール化合物:N−アルキルアルカノールアミン類:ホルムアルデヒド=1:1.5〜3:1.5〜3(モル比)で反応させて得られるホルムアルデヒド縮合物に、上記フェノール化合物1モルに対し、1〜20モルのアルキレンオキサイドを付加反応させたポリエーテルポリオール組成物であって、その水酸基価が100〜600mgKOH/gであり、かつその25℃における粘度が100Pa・s以下であるポリエーテルポリオール組成物。
【請求項2】
上記フェノール化合物が、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、キシレノール、p−tert−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、p−フェニルフェノール、m−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、フロログルシノール、α−ナフトール、β−ナフトール、及びβ−ヒドロキシアントラセンからなる群より選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリエーテルポリオール組成物。
【請求項3】
上記N−アルキルアルカノールアミン類が、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン、N−エチルイソプロパノールアミン、N−メチル−2−ヒドロキシブチルアミン、及びN−メチルヘキサノールアミンからなる群より選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリエーテルポリオール組成物。
【請求項4】
上記アルキレンオキサイドが、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドからなる群より選ばれる1種又は2種以上のアルキレンオキサイドであることを特徴とする請求項1及至請求項3のいずれかに記載のポリエーテルポリオール組成物。
【請求項5】
以下の工程を含む請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のポリエーテルポリオール組成物の製造方法。
(1)フェノール化合物、N−アルキルアルカノールアミン類、及びホルムアルデヒドを、フェノール化合物:N−アルキルアルカノールアミン類:ホルムアルデヒド=1:1.5〜3:1.5〜3(モル比)で反応させる第一工程、
(2)第一工程で得られたホルムアルデヒド縮合物に、第一工程で用いたフェノール化合物1モルに対し、1〜20モルのアルキレンオキサイドを付加反応させる第二工程。
【請求項6】
上記第一工程において、フェノール化合物が、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、キシレノール、p−tert−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、p−フェニルフェノール、m−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、フロログルシノール、α−ナフトール、β−ナフトール、及びβ−ヒドロキシアントラセンからなる群より選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項5に記載のポリエーテルポリオール組成物。
【請求項7】
上記第一工程において、N−アルキルアルカノールアミン類が、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン、N−エチルイソプロパノールアミン、N−メチル−2−ヒドロキシブチルアミン、及びN−メチルヘキサノールアミンからなる群より選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のポリエーテルポリオール組成物。
【請求項8】
上記第二工程において、上記第一工程で得られたホルムアルデヒド縮合物に付加反応させるアルキレンオキサイドが、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドからなる群より選ばれる1種又は2種以上のアルキレンオキサイドであることを特徴とする請求項5及至請求項7のいずれかに記載のポリエーテルポリオール組成物。
【請求項9】
ポリオール類とポリイソシアネート化合物とを発泡剤の存在下で反応させてポリウレタンフォームを製造する方法であって、上記ポリオール類が、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のポリエーテルポリオール組成物を含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項10】
使用するポリオール類全量に対する、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のポリエーテルポリオール組成物の割合が、5〜100重量%の範囲であることを特徴とする請求項9に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2010−150419(P2010−150419A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331176(P2008−331176)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】