説明

ポリオキシメチレン及び高構造化カーボンブラックをベースとする導電性樹脂混合物

本発明は、一態様においては、ポリオキシメチレン、ポリエチレングリコール、金属酸化物、高構造化カーボンブラック、及び櫛型ポリマーを含む、複数の特性と10〜10Ω・cmの体積抵抗率との改良されたバランスを示すポリオキシメチレン混合物である。本発明は、より詳しくは、30〜98.7重量%のポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマー、0.1〜10重量%のポリアルキレングリコール、0.1〜10重量%の金属酸化物、1〜15%の高構造化粒子状カーボンブラック、及び0.1〜15重量%の、比較的極性の低い骨格と比較的極性の高い側鎖を含む櫛型ポリマーを含む、ポリオキシメチレン混合物及びそれからの成形物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、導電性熱可塑性材料、特に他の必須成分との向上した配合で有効量の高構造化カーボンブラックを含むポリオキシメチレン混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック内での電気抵抗は通常極めて高いので、静電帯電の危険性があり、幾つかの適用分野においては障害となり得、或いは危険でさえあり得る。ポリマー樹脂の内部電気抵抗を低下させるための従来の試みとしては、金属粉末及び金属繊維、炭素繊維、グラファイト、又はカーボンブラックを加えることが挙げられる。導電性カーボンブラックは、ポリオキシメチレン(ポリオキシメチレン)などの多くの熱可塑性樹脂に対して導電性を付与するための方法として用いられている。導電性ポリオキシメチレン樹脂組成物の例は、米国特許4,391,741及び4,555,357に開示されている。
【0003】
周知のように、カーボンブラックの微粉を熱可塑性樹脂中に加えると、最終成形製品の靱性及び可撓性が大きく低下する。一部の特性が欠如することにより、通常は、劣った伸び及び低い衝撃強さが与えられる。ポリオキシメチレンと共に高構造化カーボンブラックを用いることの欠点は、それらの処理条件に対する感受性、特に混合物に与えられる仕事経歴におけるロット間の相違による一貫性のない体積抵抗率である。ポリオキシメチレン及び導電性カーボンブラックを溶融処理すると、溶融粘度が激しく上昇し、溶融流動が低下し、成形物品、特に導電性に対する厳密な許容限度が必要な射出成形物品を形成するのがより困難になる。一方で、カーボンブラックの分散は十分に良好でなければならず、他方、凝集物を崩壊させるために過剰の剪断をかけることはできない。この理由のために、潤滑添加剤を用いることにおいて、同時に物理特性の損失を避けながら溶融体内の剪断度を制御する挑戦が行われている。
【0004】
米国特許6,262,165においては、少なくとも200mL/100gのDBP吸収を有する導電性炭素粉末1.0〜30重量部、特定の平均繊維長の炭素繊維1.0〜30重量部、及び滑剤0.001〜5重量部を含む導電性ポリオキシメチレンが開示されている。滑剤は限定されていない。脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、エチレンビスステアリルアミドのようなアミド化合物、並びに、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコールのような脂肪族アルコールが具体的に言及されている。
【0005】
Polyplastics Co. Ltd.に与えられた米国特許4,831,073においては、導電性炭素、例えばカーボンブラック、炭素繊維、及び/又はグラファイトを導入添加する前に、ポリオキシメチレンと、熱安定剤、例えばアルカリ金属炭酸塩、又は及びアルキル土類金属炭酸塩の予備ブレンドを形成することによって作られる導電性ポリオキシメチレンが教示されている。
【0006】
米国特許4,828,755においては、ポリエチレングリコール及び非極性ポリエチレンワックスを用いることによって、樹脂マトリクス中にカーボンブラックを含ませることを達成した混合物が記載されている。しかしながら、耐摩耗性、機械特性、及び耐熱性が犠牲になったことが注記されている。
【0007】
米国特許6,790,385においては、主として外部効果、即ち表面活性効果を有する1種類の滑剤、及び主として内部潤滑作用、即ち粘度低下効果を有する滑剤を、主として溶融体内に含む導電性ポリオキシメチレン混合物が教示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
物理特性、特に破断点伸びの損失などの、導電性カーボンブラックを使用した際のポリオキシメチレンに付随する問題のために、カーボンブラックの有効量を減少させるが、10Ω・cm以下の電気抵抗率を維持し、射出成形後に得られる特性の変動を減少させることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要:
一態様においては、本発明は、ポリオキシメチレン、ポリエチレングリコール、金属酸化物、高構造化カーボンブラック、及び櫛型ポリマーを含むポリオキシメチレン混合物である。
【0010】
特定の態様においては、本発明は、30〜98.7重量%のポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマー、0.1〜10重量%のポリアルキレングリコール、0.1〜10重量%の金属酸化物、1%〜15%の高構造化粒子状カーボンブラック、及び0.1〜5重量%の、1つの部分が他の部分よりも極性が比較的高い別々で別個の部分を含む櫛型ポリマーを含むポリオキシメチレン混合物に関する。
【0011】
他の態様においては、本発明は、10〜10Ω・cm。特に10〜10Ω・cmの体積抵抗率を示す上記記載のポリオキシメチレン混合物からの成形物品に関する。この物品は、上記記載の混合物をモールドキャビティ中に射出成形して成形物品を形成した後に一貫した電気抵抗特性を与える。
【0012】
好ましい態様においては、本発明は、30〜95.5重量%のポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマー;0.5〜5重量%、より好ましくは1%〜3%のポリアルキレングリコール;0.5〜5重量%、より好ましくは0.5%〜3%の金属酸化物;2%〜10%の高構造化粒子状カーボンブラック;及び1重量%〜3重量%の、比較的極性の低い骨格を比較的極性の高い側鎖と共に含む櫛型ポリマー;を含むポリオキシメチレン混合物に関する。本発明は、燃料ポンプハウジング、ICVバルブ、燃料配送モジュール、燃料輸送モジュール、及び燃料タンク取り付けバルブなどの燃料システム部品を形成するのに特に適している。
【0013】
詳細な説明:
下記の%の記載は重量基準の%を指す。本発明において用いる高構造化カーボンブラックは、275mL/100g以上の最小ジブチルフタレート吸収を有することを特徴とする。好適な高構造化カーボンブラックとしては、例えば、330mL/100gのDBP吸収を有するKetjenblack Black(登録商標)EC300J、480mL/100gのDBP吸収を有するKetjenblack Black EC-600JD(Akzo Nobel)、370mL/100gのDBP吸収を有するBrintex(登録商標)XE2(Degussa, Inc.)などのような超導電性ファーネスブラックが挙げられる。導電性ポリオキシメチレン樹脂を形成するのに用いる有用で商業的に入手できる高構造化カーボンブラックは、KETJENBLACK(登録商標)EC(Akzo Chemieの製品)である。種々の公知のカーボンブラックの等級、及びそれらの製造元の詳細な議論は、米国特許5,373,046に与えられており、ここで詳しく述べる必要はない。
【0014】
ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン)は広く知られている。米国特許3,027,352;及びAcetal Resins, T.J. Dolce及びJ.A. Grates, Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, 2版, John Wiley and Sons, New York, 1985, vol.1, pp.42-61(米国特許6,790,385を参照)を参照。例えばDE−A−2947490に記載されているようなポリオキシメチレンは、一般には、一般に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のオキシメチレン単位(−CH−O−)を含む非分岐線状ポリマーである。ここでのポリオキシメチレンという用語は、ホルムアルデヒド、又はその環式オリゴマー、例えばトリオキサン又はテトラオキサンのホモポリマー、並びに対応するコポリマー、ターポリマーなどを包含する。
【0015】
ポリオキシメチレンホモポリマーは、従来、無水ホルムアルデヒド又はトリマーであるトリオキサンを重合することによって製造される。本発明において用いるのに好適なMWのポリオキシメチレンは、ルイス酸触媒、例えばフッ化アンチモン、又は三フッ化ホウ素の存在下でトリオキサンを重合することによって製造することができる(米国特許2,989,506を参照)。
【0016】
周知なように、反応器から得られるポリオキシメチレンは、主として末端キャッピング、例えばエステル又はエーテル基を介する末端ヘミアセタールのアセチル化(米国特許2,998,409)か、或いは加水分解(米国特許3,219,623を参照)のいずれかによって安定化させる。
【0017】
繰り返し単位の60〜99.9%の割合がオキシメチレンであり、残りのオキシ(高級アルキレン)基が散在しているポリオキシメチレンコポリマーが、本発明において用いるのに好ましい。オキシ(高級アルキレン)基は、トリオキサンに加えて環内に少なくとも2つの隣接する炭素原子を有する環式エーテル又は環式ホルマールを介して、例えばエチレンオキシド1,3−ジオキソランとトリオキサンを介して導入される。環式エーテルエチレンオキシド、プロピレン−1,2−オキシド、ブチレン−1,2−オキシド、ブチレン−1,2−オキシド、ブチレン−1,3−オキシド、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、及び1,3−ジオキセパン、並びに、線状オリゴ又はポリホルマール、例えばポリジオキソラン又はポリジオキセパンを、コモノマーとして言及することができる。本発明において用いるのに好ましいポリオキシメチレン樹脂は、少なくとも10,000の数平均分子量、及び少なくとも1.0のI.V.(ヘキサフルオロイソプロパノール中の0.2重量%溶液中、25℃において)を有する。好ましいポリオキシメチレンコポリマーは、少なくとも150℃の融点、及び5000〜200,000の範囲の重量平均分子量、好ましくは7000〜150,000の重量平均分子量を有する。鎖の末端部に炭素−炭素結合を有する末端基安定化ポリオキシメチレンポリマーが特に好ましい。有用なポリオキシメチレン樹脂は、結晶質であり、190℃、2.16kgの負荷において3〜55g/10分のメルトインデックスを有し、好ましいグレードとしては、ASTM D1238−82にしたがって190℃、2.16kgの負荷において6〜23g/10分のメルトインデックスを有するCELCON(登録商標)が挙げられる。より好ましいポリオキシメチレンは、190℃、2.16kgの負荷下において14g/10分のメルトインデックスを有するTicona LLCから入手できるものである。
【0018】
ポリオキシメチレン混合物には、式:
O(RO)−(RO)−R
(式中、R及びRは、水素、1〜30個の炭素原子を有するアルキル基、1〜30個の炭素原子を有するアシル基、及び1〜30個の炭素原子を有するアルキルフェニル基を表し;R及びRは、2〜6個の炭素原子を有する同一か又は異なるアルキレン基を表し;n及びmは、1以上であって、n+m<1000の条件を満足する整数を表す)
によって表されるポリアルキレングリコールが含まれる。本発明において用いるのに好適なポリアルキレングリコールは、10,000〜45,000、特に20,000〜40,000の平均数平均分子量を有する。ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロックポリマーは、従来の方法でモノマーとしてアルキレングリコールを重縮合することによって得られる。重合モル数は、好ましくは5〜1,000の範囲、より好ましくは10〜500の範囲である。ポリアルキレングリコールの例としては、ポリエチレングリコールオレイルエーテル(5〜50のエチレンオキシド重合モル数)、ポリエチレングリコールセチルエーテル(5〜20のエチレンオキシド重合モル数)、ポリエチレングリコールステアリルエーテル(5〜30のエチレンオキシド重合モル数)、ポリエチレングリコールラウリルエーテル(5〜30のエチレンオキシド重合モル数)、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル(5〜30のエチレンオキシド重合モル数)、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル(2〜100のエチレンオキシド重合モル数)、及びポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル(4〜50のエチレンオキシド重合モル数)が挙げられる。ポリアルキレングリコールは、個々か又は組み合わせて用いることができる。混合物中のポリアルキレングリコールの量は、好ましくは0.5〜5重量%、特に好ましくは1〜3重量%である。好ましいポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール、特に好ましくはポリエチレングリコールである。
【0019】
混合物中の金属酸化物の割合は、酸化亜鉛を金属酸化物とすると、0.1重量%〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、特に好ましくは0.5〜3重量%の範囲である。金属酸化物としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウムの酸化物、酸化マンガンなどが挙げられる。
【0020】
また、本発明におけるポリオキシメチレン混合物には、その1つが他の部分に対して高い極性を有する2つの別個のタイプの部分を含む櫛型ポリマーが含まれる。ポリマー部分の極性は、炭化水素成分を含む全分子量に対する、極性成分、例えばO、N、S、P原子、及び/又はイオン化基の割合に比例する。幾つかの例としては、アミノアルキル、ホスフィノ、ホスホノ、スルホノ、オキソ、アシル、オキシアルキルなどが挙げられる。これらの部分は、複数の工程で一緒に共有結合する。極性を変化させる別々で別個の部分とは、1つの部分が、全体に対して比較的より高い割合の極性成分を有する他の部分よりも高い極性部分に対する炭化水素の割合を有することを意味する。好ましい態様の櫛型ポリマーにおいては、ポリマー骨格は比較的極性が低い部分であり、比較的極性が高い部分は幾つかの側鎖で構成される。側鎖を反応性骨格部位に結合させることは、櫛型ポリマーを製造するための十分に開発された技術である。櫛型ポリマーとしては、骨格の繰り返し単位中に現れる官能基の数によって、シングルコーム及びダブルコームポリマーが挙げられる。
【0021】
櫛型ポリマーの合成方法は公知である。Applications of Anionic Polymerization Research, R.P. Quirk編, ACS Symp. Ser. 696, 208 (1998);及びPractical Applications of Macromonomer Techniques for the Synthesis of Comb-Shaped Copolymers, 著者S. Roos, A.H.E. Muller, M. Kaufmann, W. Siol, C. Auschraを参照。
【0022】
別個の極性及び非極性部分を含む熱可塑性櫛型ポリマーは、Milkovichらによって開示されている。米国特許4,085,168及び4,085,168中に引用する特許を参照。1つのアプローチにおいては、コポリマーは、比較的より極性の高いエチレン性不飽和モノマーを共重合し、更に共重合可能なエチレン性不飽和鎖末端基を有する比較的より極性の低いマクロモノマーと共重合することによって形成する。末端エチレン性不飽和は、ビニルモノマーの末端ハロゲン又はヒドロキシル基を、ポリ(N=C=O)化合物で置換し、続いてイソシアネート基と共反応性のエチレン性不飽和化合物と反応させることによって好都合に与えることができ、これらの方法は公知である。この態様における極性のより低いマクロモノマーは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定して約2以下、好ましくは1.8未満、より好ましくは1.6以下、更に好ましくは1.5以下、特に1.4以下、最も好ましくは1.3以下の多分散度(Mw/Mn)を有することを特徴とする。GPCは、とりわけポリスチレンカラムを用い、移動相としてとりわけクロロホルム又はテトラヒドロフランを用いて行い、分子量の値はポリスチレン当量の観点で測定する。
【0023】
一態様の櫛型ポリマーにおいては、マクロモノマーポリマー鎖は重合したエチレン性不飽和モノマーを含む。例えば、マクロモノマーの骨格は、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリレート、又はスチレンタイプのポリマーから選択される重合セグメントであってよい。代表的な櫛型ポリマーは、ラジカル重合によってメチルメタクリレート−メタクリル酸−メトキシポリエチレンオキシドメタクリレートマクロモノマーを反応させて、分子あたりその1つの分子末端において重合可能な二重結合含有基を与えることによって製造することができる。その後にマクロモノマーの二重結合を反応させることによって、付加ポリマー又はグラフトポリマーを得ることができる。マクロモノマーは、好ましくは10〜1,000、より好ましくは20〜1,000、最も好ましくは20〜約200の重合度を有していてよい。マクロモノマーを形成する方法は、特に限定されず、遊離基、リビングラジカル重合、原子移動ラジカル重合によって製造することができる。
【0024】
原子移動ラジカル重合を用いることにより、その中心金属が周期律表第7、8、9、10、又は11族の元素である遷移金属コンプレックス、例えば銅、ニッケル、ルテニウム、及び鉄のコンプレックスを用いて、明確な櫛型ポリマーが開発されている。米国特許6,979,716(参照として本明細書中に包含する)を参照。
【0025】
他の態様においは、櫛型ポリマーは、比較的非極性の疎水性炭化水素骨格を、比較的より極性の高い側鎖と共に含み、ポリ−α−オレフィン、及び少量(例えば全モノマー重量の0.1〜5重量%)の酸含有モノマーを含むマクロモノマーを含む。「酸含有」及び「酸官能性」という用語は、互換的に使用され、1以上の酸官能基又は酸を形成することのできる官能基(例えば、無水メタクリル酸のような無水物、又はtert−ブチルメタクリレート)を含む任意のエチレン性不飽和モノマーを意味する。酸含有モノマーの例としては、例えばカルボン酸含有エチレン性不飽和モノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、及びフマル酸;アクリルオキシプロピオン酸及び(メタ)アクリルオキシプロピオン酸;スルホン酸含有モノマー、例えばスチレンスルホン酸、ナトリウムビニルスルホネート、スルホエチルアクリレート、スルホエチルメタクリレート、エチルメタクリレート−2−スルホン酸、又は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸;ホスホエチルメタクリレート;酸含有モノマーの対応する塩;又はこれらの組み合わせが挙げられる。酸含有末端基は、その後、10〜30個の炭素原子を有するアルコール、好ましくはC18〜C24アルコールを用いて部分的か又は完全にエステル化する。
【0026】
マクロモノマーは、別の方法では重合したメルカプト−オレフィンから製造することができる。メルカプト−オレフィン化合物は、Amickの米国特許5,247,000に開示されているようなものである。米国特許5,247,000は、櫛型ポリマーを製造する他の方法を提供する。
【0027】
櫛型ポリマーを形成するための他の方法、例えば、リビングラジカル重合、並びに、原子移動ラジカル重合は公知であり、該原子移動ラジカル重合は、開始剤として有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物など、及びビニルモノマーを重合するための触媒として遷移金属コンプレックスを用い、上記記載の「リビングラジカル重合」の有利な特徴に加えて、官能基転化に対して比較的有利であるハロゲンなどを主鎖末端部に有するポリマーを与え、且つ開始剤及び触媒のデザインにおける自由度が大きく、したがって特定の官能基を有するビニルポリマーを製造する方法としてより好ましいという有利性を有する。原子移動ラジカル重合は、例えば、とりわけ、MatyjaszewskiらのJ. Am. Chem. Soc., 1995, vol.117, p.5614以下;Macromolecules, 1995, vol.28, p.7901以下降;Science, 1996, vol.272, p.866以下;WO−96/30421、WO−97/18247、WO−98/01480、及びWO−98/40415、及びSawamotoらのMacromolecules, 1995, vol.28, p.1721以下;特開平9−208616、及び特開平8−41117に記載されている。
【0028】
本発明において用いる最も好ましい櫛型ポリマーは、C20〜C24−α−オレフィン及び無水マレイン酸からマクロモノマーを形成し、次に懸垂カルボキシル基を、N−、S−、又はO−含有部分でエステル化することによって製造される。酸含有末端基は、好ましくは長鎖アルコールを用いてエステル化する。長鎖という用語は、10〜30個の炭素原子を有するアルコールを意味し、好ましくはC18〜C24アルコールである。最も好ましい櫛型ポリマーは、C20〜C24−α−オレフィン及びコモノマーとして無水マレイン酸からマクロモノマーを形成し、次にC16〜C18アルコールを用いて懸垂カルボキシル基をエステル化することによって製造される。
【0029】
ポリオキシメチレン混合物は、場合によっては、他の添加剤、例えば他の充填剤、強化材、或いは滑剤、可塑剤、顔料、染料、蛍光増白剤、加工補助剤、加工助剤、ホルムアルデヒドスカベンジャー、酸スカベンジャー、酸化防止剤、UV安定剤、カップリング剤、成核剤、及び離型剤からなる群から選択される添加剤を含んでいてもよく、これらの割合は、推奨量として、概して、ポリオキシメチレン100重量部あたり0.005〜5重量部の範囲であってよい。場合によって用いる強化繊維としては、ガラス、炭素繊維、及びアラミド繊維が挙げられる。充填剤としては、チョーク、珪灰石が挙げられる。滑り性増強剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及び超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)が挙げられる。
【0030】
ポリオキシメチレン混合物を構成する成分の配合は、ポリオキシメチレン樹脂の融点よりも高く、分解が起こる温度よりも低い温度における溶融混練を伴う。本発明による混合物は、例えば、良好な混合作用を有する装置、例えば配合装置又は押出機、有利には混練機、例えばBUSS(登録商標)又はPromini(登録商標)タイプ又は二軸押出機内において、成分Aの融点より高い昇温温度、即ち160〜250℃、好ましくは180〜220℃において成分を激しく混合することによって製造される。微粉成分は、通常、まず室温において機械的に混合し、続いて完全に均一化するために溶融する。混合の温度が約160℃よりも低いと、導電性カーボンブラックの構造が生成するのは困難であり、十分な導電性を得ることはできない。温度が240℃よりも高いと、ポリオキシメチレン樹脂の分解速度がより大きく、このため機械強度が低下する。温度はより好ましくは220〜240℃である。添加剤を含ませることは、そのマスターバッチ又は濃縮物を用いることによって行うことができる。また、例えば繊維材料を、連続材料として、混合装置、特に押出機に供給することもできる。
【実施例】
【0031】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシメチレン、ポリアルキレングリコール、金属酸化物、高構造化粒子状カーボンブラック、及び、その1つが他の部分に対してより高い極性を有する2つの別個のタイプの部分を含む櫛型ポリマーを含む熱可塑性成形組成物。
【請求項2】
重量基準で、ポリオキシメチレンのレベルが30〜98.7%であり、ポリアルキレングリコールのレベルが0.1〜10%であり、金属酸化物のレベルが0.1〜10%であり、高構造化粒子状カーボンブラックのレベルが1〜15%であり、櫛型ポリマーのレベルが0.1〜15%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリアルキレングリコールが10,000〜45,000の平均数平均分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
用いるポリアルキレングリコールがポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ポリアルキレングリコールが、20,000〜40,000の平均数平均分子量を有し、0.5〜5重量%の量で存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ポリアルキレングリコールが1〜3重量%の量で存在し、金属酸化物が酸化亜鉛であって0.5〜3重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
0.1〜5重量%の、ホルムアルデヒドスカベンジャー及び安定剤から選択される添加剤を更に含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
金属酸化物が0.5〜5重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
10〜10Ω・cmの体積抵抗率を示す請求項1に記載の組成物からの成形物を含む、燃料システムの射出成形部品。
【請求項10】
自動車燃料に対して向上した抵抗性を有し、導電性の成形物品を製造する方法であって、該方法が、重量基準で、(A)30〜98.7%のポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマー、(B)0.1〜10%のポリアルキレングリコール、(C)0.1〜10%の金属酸化物、(D)1%〜15%の高構造化カーボンブラック、(E)0.1〜15重量%の、疎水性基及び親水性基の両方を含む櫛型ポリマー、並びに場合によっては(F)0〜50%の、充填剤、強化材料、安定剤、滑剤、可塑剤、顔料、染料、蛍光増白剤、加工助剤、及びこれらの混合物から選択される1種類以上の添加剤を含む溶融した混合物を密閉成形型中に射出することを含み、該成形が10〜10Ω・cmの体積抵抗率を示す、上記方法。

【公表番号】特表2009−532522(P2009−532522A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502823(P2009−502823)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/006179
【国際公開番号】WO2007/123603
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(500100822)ティコナ・エルエルシー (19)
【Fターム(参考)】