説明

ポリオルガノシロキサンの変換方法およびその使用

【課題】ポリオルガノシロキサンの変換方法およびその使用を提供する。
【解決手段】本発明の対象は、触媒として第III主族および/または第3亜族の1つもしくは複数の元素化合物の存在下で一般式(I)の化学量論的に過剰の−Si(H)−単位を含有するポリオルガノシロキサンを有するヒドロキシ基含有化合物のそれ自体周知の方法による変換によってSiOC−結合ポリオルガノシロキサンを製造するための方法であって、ヒドロキシ基含有化合物の変換が完全に行われた後、≡Si−H−基がガス定量的に検出できなくなるまで反応が行われることを特徴とする方法、およびこうして製造される化合物およびその使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンに結合された水素原子がアルコラート残基によって置換されるポリオルガノシロキサンの変換方法、かつこの方法によって製造される置換ポリオルガノシロキサンおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオルガノシロキサンは従来技術によりいわゆるクロルシロキサン経路を介して工業的に製造される。クロルシロキサン経路では、シリコンにおいてクロル置換ポリオルガノシロキサンがアルコールによりアルコキシ置換ポリオルガノシロキサンの形成下で変換される。この方法は必然的に大量の塩酸廃棄物をもたらし、これは環境問題および分離に際しての多大な費用の原因となる。
【0003】
アルコキシ置換ポリオルガノシロキサンの生成中にアルコールでポリオルガノシロキサンが構築される化合物、その使用、およびその製造方法がすでに(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)、および(特許文献10)に記載されている。これら文献の内容は、本明細書で引例として導入され、本出願の開示内容の一部とみなされる。
【0004】
(特許文献1)において、≡Si(H)単位を含有するポリオルガノシロキサンの少なくとも1つのアルコールによる変換方法が請求されており、これは方法のステップにおいて、第3主族および/または第3亜族の1つもしくは複数の元素化合物を触媒として使用することにより、ポリオルガノシロキサンの≡Si(H)単位において使用したアルコールのアルコール残基によって現存の水素原子を部分的または完全に置換することを特徴とする。
【0005】
この引例の教示によれば、部分置換されたポリオルガノシロキサンも製造され、これらは置換SiOC単位のほかにまだ変換されていない≡Si(H)単位を有する。さらに、Si(H)基のアルコール基に対する材料分量比は、好ましくは、1:0.1〜1:0.99モル当量の範囲に設定される。
【0006】
過少化学量論的比でのかかる変換によって、残基が未変換のSi(H)官能基において維持されたままとなり、これはその後のステップ、例えば、シリコン−炭素−結合が形成されるヒドロシリル化反応において、変換され、混合生成物を製造しうる。
【0007】
意外にもここで、開示された従来技術を逸脱して、化学量論的に過剰の末端および/または側鎖水素ポリおよび/またはオリゴシロキサンを有するオルガニルヒドロキシ化合物を触媒として第III主族および/または第3亜族の1つもしくは複数の元素化合物の存在下で変換させ、次いで、≡Si−H−基がガス定量的に検出できなくなるまで、オルガニルヒドロキシ成分(アルコール成分)が完全に変換された後に反応が行われると、高分子のSiOC結合オルガニルオキシ置換(アルコキシ置換)ポリオルガノシロキサンへの作用が明らかになることが見出された。ガス定量的≡Si(H)値測定は、確立した方法による試料のアルコール誘導分解によって行われる。
【0008】
当業者には予測不可能に、このようにして、ポリウレタンフォーム(PUフォーム)、具体的にはPU軟質フォームの製造に際しての安定剤として飛躍的に優れた特徴を有する構造が維持される。そのほか、このようにして、ラッカーおよび塗料分野における消泡剤として使用される構造が維持される。
【0009】
【特許文献1】DE103 12 636
【特許文献2】DE10 2004 039 911
【特許文献3】DE103 59 764
【特許文献4】DE10 2004 024 009
【特許文献5】DE10 2004 034 740
【特許文献6】DE10 2005 002 716
【特許文献7】DE10 2006 008 387
【特許文献8】DE10 2005 001 039
【特許文献9】DE103 12 634
【特許文献10】DE10 2005 051 939
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の対象が、化学量論的に過剰の末端および/または側鎖水素ポリおよび/またはオリゴシロキサンを有するオルガニルヒドロキシ化合物を触媒として第III主族および/または第3亜族の1つもしくは複数の元素化合物の存在下で変換させることによるSiOC結合、アルコキシ置換ポリオルガノシロキサンの製造方法であり、これは≡Si−H−基がガス定量的に検出できなくなるまで、オルガニルヒドロキシ成分(アルコール成分)が完全に変換された後に反応が行われることを特徴とする。
【0011】
本発明の別の対象が、上記の方法に従って製造されるSiOC−結合アルコキシ置換ポリオルガノシロキサンである。
【0012】
本発明の別の対象が、例えば、ポリウレタンエーテルフォームなどポリウレタンフォームの製造のための界面活性添加剤として本発明による方法に従って製造される化合物の使用である。
【0013】
本発明の別の対象が、生地の仕上げ加工のためのラッカーおよび塗料分野における消泡剤の製造のための界面活性添加剤として、プラスチック用または建築塗料分野における添加剤として、照射硬化コーティング、具体的にはインクにおける添加剤として、本発明による方法に従って製造される化合物の使用である。
【0014】
本発明の別の対象が特許請求の範囲によって特徴づけられている。
【0015】
したがって、本発明の課題は、第一に、オルガニルヒドロキシ成分との反応において、従来技術の欠点を回避しながら塩素を含まず、場合により溶剤を含まず、かつ化学量論的に過剰の末端および/または側鎖水素ポリおよび/またはオリゴシロキサンを使用しながらオルガニルオキシ基が結合されうる置換ポリオルガノシロキサンの製造方法を提供することであったが、ここで形成された生成物において≡Si−H−基をガス定量的に検出することができない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は、一般式(I)
【化1】

[式中、
少なくとも1つの水素原子がシリコン原子に結合されており、
Rは、1〜20個、具体的には、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分岐型、飽和、単一もしくは多重不飽和アルキル、アリール、アルカリル、もしくはアラルキル残基、1〜20個の炭素原子を有するハロゲンアルキル基、シロキシ基、およびトリオルガノシロキシ基から選択される1つもしくは複数の同じもしくは異なる残基を示し、
R’およびR’’は、互いに独立してHまたはRを示し、
xは、0〜300の整数を、
yは、0〜100の整数を示し、
触媒として第III主族および/または第3亜族の1つもしくは複数の元素化合物の存在下で一般式(I)の化学量論的に過剰の≡Si(H)単位を含有するポリオルガノシロキサンとともに、直鎖状または分岐型、飽和、単一または多重不飽和、芳香族、脂肪族−芳香族モノ−またはポリアルコール、ポリエーテルモノ−またはポリエーテルポリアルコール、アミノアルコール、具体的にはN−アルキル−、アリールアミノ−EO−、−PO−アルコール、N−アルキル−またはアリールアミノアルコール、単一または多重(メタ)アクリル化モノアルコキシレートまたはポリアルコキシレート、ヒドロキシ−アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、ハロゲン化モノ−またはポリアルコール、ポリエステルモノアルコール、ポリエステルポリ−アルコール、フルオロ化またはペルフルオロ化モノアルコキシレートまたはポリアルコキシレートおよびその混合物の群から選択される少なくとも1つのアルコールを有する。]の≡Si(H)単位を含有するポリオルガノシロキサンの変換方法であって、アルコール成分の変換が完全に行われた後、≡Si(H)基がガス定量的に検出できなくなるまで反応が行われることを特徴とする方法によって本発明により解決される。
【0017】
強調すべきは、不飽和アルコールの使用に際して二重結合における≡Si(H)官能基の反応が起こらないことである。このようにして、不飽和SiOC−結合反応性生物が製造されうる。
【0018】
本発明に有効な触媒としては、第III主族のルイス酸元素化合物、具体的には、ボロン含有および/またはアルミニウム含有元素化合物が好ましい。第3亜族のルイス酸元素化合物のうち、具体的には、スカンジウム含有、イットリウム含有、ランタン含有および/またはランタノイド含有ルイス酸が好ましい。本発明によれば、第3主族および/または第3亜族の元素原子は、特に好ましくは、ハロゲン化物、アルキル化合物、フルオロ含有、脂環式および/または複素環化合物として使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、第3主族の元素化合物としてボロン含有触媒を使用し、具体的には、ハロゲン化合物、アルキル化合物、フルオロ含有、脂肪環式および/または複素環化合物を使用することが意図される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、フッ化および/または非フッ化有機ホウ素化合物、具体的には、以下の群から選択されるものが使用される。
【0021】
(C)(CB、(CB、(C)BF、BF(C、B(C、BCl(C)、BCl(C、B(C)(C、B(Ph)(C)、[C(mCFB、[C(pOCFB、(C)B(OH)、(CBOH、(CBH、(C)BH、(C11)B(C、(C14B)(C)、(CB(OC)、(CB−CHCHSi(CH
【化2】

具体的には、トリス(ペルフルオロトリフェニルボラン)[1109−15−5]、三フッ化ホウ素−エーテル[109−63−7]、ボラン−トリフェニルホスフィン錯体[2049−55−0]、トリフェニルボラン[960−71−4]、トリエチルボラン[97−94−9]および三フッ化ホウ素[10294−34−5]、トリス(ペンタフルオロフェニル)−ボロキシン(9Cl)[223440−98−0]、4,4,5,5,−テトラメチル−2−(ペンタフルオロフェニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(9Cl)[325142−81−2]、2−(ペンタフルオロフェニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(9Cl)[336880−93−4]、ビス(ペンタフルオロフェニル)シクロへキシルボラン[245043−30−5]、ジ−2,4−シクロペンタジエン−1−イル(ペンタフルオロフェニル)−ボラン(9Cl)[336881−03−9]、(ヘクサヒドロ−3a(1H)−ペンタレニル)ビス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(9Cl)[336880−98−9]、1,3−[2−[ビス(ペンタフルオロフェニル)ボリル]エチル]テトラメチルジロキサン[336880−99−0]、2,4,6−トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラジン(7Cl、8Cl、9Cl)[1110−39−0]、1,2−ジヒドロ−2−(ペンタフルオロフェニル)−1,2−アザボリン(9Cl)[336880−94−5]、2−(ペンタフルオロフェニル)−1,3,2−ベンゾジオキサボロル(9Cl)[336880−96−7]、トリス(4−トリフルオロメトキシフェニル)ボラン[336880−95−6]、トリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボラン[24455−00−3]、トリス(4−フルオロフェニル)ボラン[47196−74−7]、トリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボラン[146355−09−1]、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン[154735−09−8]、メチリウムトリフェニルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸[136040−19−2]、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンチフルオロフェニル)ホウ酸および前記触媒の混合物。
【0022】
本発明の別の好ましい実施形態は、フッ化および/または非フッ化オルガノアルミニウム化合物、具体的には、下記から選択されるものが使用されることが意図される。
【0023】
AlCl[7446−70−0]、アセチル酢酸アルミニウム[13963−57−0]、AlF[7784−18−1]、トリフルオロメタンスルホン酸アルミニウム[74974−61−1]、ジ−i−塩化ブチルアルミニウム[1779−25−5]、ジ−i−水素化ブチルアルミニウム[1191−15−7]、トリエチルアルミニウム[97−93−8]およびその混合物。
【0024】
本発明の別の好ましい実施形態では、フッ化および/または非フッ化オルガノスカンジウム化合物、具体的には、以下の群から選択されるものが使用されることが意図される。
【0025】
塩化スカンジウム(III)[10361−84−9]、フッ化スカンジウム(III)[13709−47−2]、スカンジウム(III)ヘクサフルオロアセチルアセトネート[18990−42−6]、スカンジウム(III)トリフルオロメタンスルホネート[144026−79−9]、トリス(シクロペンタジエニル)スカンジウム[1298−54−0]およびその混合物。
【0026】
本発明の別の好ましい実施形態では、フッ化および/または非フッ化オルガノイットリウム化合物、具体的には、以下の群から選択されるものが使用されることが意図される。
【0027】
トリス(シクロペンタジエニル)イットリウム[1294−07−1]、塩化イットリウム(III)[10361−92−9]、フッ化イットリウム(III)[13709−49−4]、ヘクサフルオロアセチル酢酸イットリウム(III)[18911−76−7]、ナフテン酸イットリウム(III)[61790−20−3]およびその混合物。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態では、フッ化および/または非フッ化オルガノランタン化合物、具体的には、以下の群から選択されるものが使用されることが意図される。
【0029】
塩化ランタン(III)[10099−58−8]、フッ化ランタン(III)[13709−38−1]、ヨウ化ランタン(III)[13813−22−4]、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン(III)[52093−26−2]、トリス(シクロペンタジエニル)ランタン[1272−23−7]およびその混合物。
【0030】
本発明の別の好ましい実施形態では、フッ化および/または非フッ化オルガノランタノイド化合物、具体的には、以下の群から選択されるものが使用されることが意図される。
【0031】
臭化セリウム(III)[14457−87−5]、塩化セリウム(III)[7790−86−5]、フッ化セリウム(III)[7758−88−5]、フッ化セリウム(IV)[60627−09−0]、トリフルオロアセチル酢酸セリウム(III)[18078−37−0]、トリス(シクロペンタジエニル)セリウム[1298−53−9]、フッ化ユーロピウム(III)[13765−25−8]、塩化ユーロピウム(II)[13769−20−5]、ヘクサフルオロ−アセチル酢酸プレソジーム(Praesodym)(III)[47814−20−0]、フッ化プレソジーム(Praesodym)(III)[13709−46−1]、トリフルオロアセチル酢酸プレソジーム(Praesodym)(III)[59991−56−9]、塩化サマリウム(III)[10361−82−7]、フッ化サマリウム(III)[13765−24−7]、ナフテン酸サマリウム(III)[61790−20−3]、トリフルオロアセチル酢酸サマリウム(III)[23301−82−8]、フッ化イッテルビウム(III)[13760−80−8]、トリフルオロメタンスルホン酸イッテルビウム(III)[54761−04−5]、トリス(シクロペンタジエニル)イッテルビウム[1295−20−1]およびその混合物。
【0032】
この場合、触媒は均質にまたは不均質触媒として使用されうる。同様に、均質化異種もしくは不均質化同種触媒としての構成が本発明において可能である。
【0033】
本発明による方法において、基本的に、モノアルコール、ジオール、トリオール、ポリオール、アミノアルコール、フルオロ化アルコールおよび任意の別の置換アルコール、および例えばヒドロキシ炭酸、およびそのそれぞれの誘導体を含む、ヒドロキシル基を有する各々のアルコール有機化合物が使用されうる。特に好ましくは、例えば、ブチルアルコール、アリルアルコール、またはノニルフェノールで開始されたエタノールおよびプロピレンオキシド、もしくはエチレンオキシド官能化ポリエーテルアルコールのほか、スチロールオキシド含有および/またはブチレンオキシド含有ポリエチレンアルコールである。さらに、アミノアルコールが特に好ましい。さらに、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエーテル−アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、ポリエーテル−アルキルアクリレートが特に好ましい。このアルコールの利点は、それらにより特に実利的な方法が可能となることである。
【0034】
アルコールは、好ましくは、化学量論的に欠損で使用される。特に好ましくは、本発明による方法に際して、SiH基のアルコール基との材料分量比は1:0.1〜1:0.99モル当量の範囲、好ましくは、1:0.5〜1:0.99モル当量の範囲、特に1:0.7〜0.95モル当量の範囲で設定される。
【0035】
本発明による方法において使用されるポリオルガノシロキサンは、純粋に末端であり、すなわち、≡Si(H)基は、ポリシロキサン鎖の頭部基においてのみ存在し、純粋に側鎖であり、すなわち、≡Si(H)基は、内部にのみ存在するが、ポリシロキサン鎖の頭部基には存在せず、または混合的でありうる。
【0036】
同様にして、かつ特に好ましくは、本発明による方法において、一般式(I)の櫛形、α,ω−二置換および混合ポリジメチル水素シロキサンが使用されうる。
【0037】
特に非常に好ましいのは、例えば、次式(II)
M−O−D−D’−M (II)
[式中、
Mは、トリアルキルシリル、具体的には、トリメチルシリルを表し、
は、(ジアルキルシリルオキシ)、具体的には、(ジメチルシリルオキシ)を表し、
D’は、(−O(CH)Si(H)−を表す。]のポリオルガノシロキサンの使用である。
【0038】
同じく特に非常に好ましいのは、例えば、次式(III)
M’−O−D−M’ (III)
[式中、
M’は、ジアルキル(ヒドロゲン)シリル、具体的には、ジメチルヒドロゲンシリルを表し、かつ
は、(ジアルキルシリルオキシ)、具体的には、(ジメチルシリルオキシ)を表す。]のポリオルガノシロキサンの使用である。
【0039】
同じく特に非常に好ましいのは、例えば、次式(IV)
M’−O−D−D’−M(IV)
[式中、
M’は、ジアルキル(ヒドロゲン)シリル、具体的には、ジメチルヒドロゲンシリルを表し、
は、(ジアルキルシリルオキシ)、具体的には、(ジメチルシリルオキシ)を表し、かつ
D’は、(−O(CH)Si(H)−を表す。]のポリオルガノシロキサンの使用である。
【0040】
本発明による方法は溶剤を含まずに実施されうるが、これは特に巨大技術の実現のためのものであり、かつ従来技術の方法に対して経済的および環境的側面で多大な利点を示す。
【0041】
本発明の別の実施形態が、本発明による方法によって得られるポリオルガノシロキサンに関する。
【0042】
従来技術による方法とは対照的に、本発明により、オルガニルオキシ基および/またはアミノ−オルガニルオキシ基で置換されたが、置換反応由来の塩酸、塩化水素、もしくはその中和生成物に対応する塩素で汚染されていないポリオルガノシロキサンが製造可能である。これによりさらなる加工もしくは再加工を大幅に容易になる。例えば、塩化アンモニウムの形態での塩素含有中和生成物の費用のかかるろ過が不要である。前記の中和生成物の回避、およびろ過補助の回避のほか、塩または場合によりろ過補助において付着する生成物による生成物の損失が生じない。
【0043】
したがって、本発明による方法により、直鎖状または分岐型、飽和、単一または多重不飽和、芳香族、脂肪族−芳香族モノ−またはポリアルコール、ヒドロキシアルキル−(メタ)アクリレート、ポリエーテル−アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、ポリエーテル、ポリエーテルアルコールまたはアミノアルコール、具体的にはN−アルキル−、アリールアミノ−EO−、−PO−アルコール、N−アルキル−またはアリールアミノアルコールまたはその混合物から選択され、それらが前記汚染物、特に塩酸、および塩素を含有する中和生成物において残基成分を含まない、末端および/または側鎖SiOC−結合単一または混合残基を含有するポリオルガノシロキサンを提供する方法が見出されている。
【0044】
この場合、残基が、メタノール、エタノール、1H−ペンタデカフルオロ−1−オクタノール等の単純アルコール、およびブチルポリエーテル、アリルポリエーテル、ノニルフェニルポリエーテル、メチルポリエーテル、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、Bisomer PEA 6、モノアクリル化ジカプロラクトン(Sartomer SR 495)、ペンタエリトリトールトリアクリレートおよび/またはアミノポリエーテルから選択されるかかるポリオルガノシロキサンが特に好ましい。
【0045】
本発明によるポリオルガノシロキサンは、生地の仕上げ加工のために好ましい本発明の別の実施形態において、プラスチック用または建築塗料分野における添加剤として、照射硬化コーティング、具体的にはインク、および/またはポリウレタンフォーム安定剤として使用されうる。
【実施例】
【0046】
シロキサン:
シロキサンは、一般に、純粋に末端のシロキサン(例えば、M’−O−D13−M’)または純粋に側鎖のシロキサン(例えば、M−O−D’−D22−M)である。
【0047】
アルコール:
ポリエーテルアルコールは使用前に残留水分の真空下の蒸留によって遊離された。
【0048】
ボロン含有触媒:
触媒は、市販されているように、すなわち、さらなる処理および洗浄なしに使用された。
【0049】
反応実施:
すべての反応は保護ガス下で実施された。反応に際して水素が発生したが、これは気泡器を介して誘導された。3種類の反応実施が区別された。
【0050】
反応実施(A):
ポリエーテル/アルコールの提示、反応温度への加熱、触媒の添加、およびその後の温度管理下のシロキサンの滴下。
【0051】
反応実施(B):
シロキサンの提示、反応温度への加熱、触媒の添加、およびその後の温度管理下のポリエーテル/アルコールの滴下。
【0052】
反応実施(C):
シロキサンおよびポリエーテル/アルコールの提示、反応温度への加熱、触媒の添加、および反応実施。
【0053】
分析:
変換は、ガス定量的水素測定による残留SiH機能の測定[%での変換表示、val/kg試験物質でのSiH値]によって明らかにされた。ヨード数、二重結合との反応によるヨードの消費は、二重結合価の測定のために使用された[I/100g試験物質で表示されるヨード数]。OH数は、フタル酸無水物の遊離ヒドロキシ基との反応によって明らかにされた。遊離酸は塩基溶解によって逆滴定された[KOH/g試験物質で表示されるOH数]。粘度は、落球粘度計で測定された(DIN法53015)。
【0054】
以下、最初に末端水素シロキサンの変換、次いで側鎖シロキサンの反応が記載されている。
【0055】
A)α,ω−水素シロキサンの脱水素ヒドロシリル化の変換
実施例1:
トリス(ペルフルオロトリフェニルボラン)の使用下にブチルポリエーテルの欠損によるM’−O−D13−M’−シロキサンの変換
M’−O−D13−M’−シロキサン(SiH値1.77val/kg)100gを29.5のOH数を有するブチルアルコールで開始された純粋(プロピレンオキシド)PO含有ポリエーテル(1,900g/モルの中程度のモル量)269.3gで変換した。このポリエーテルをSiH値に対して20モル%欠損で使用した。反応実施(A)後、95℃下、SiHに対して0.19モル%に対応する1.17gのトリス(ペルフルオロトリフェニルボラン)を添加した。シロキサン投与の終了後約180分で変換は、SiH値法に対応して、99.8%であった。生成物は446mPasの粘度を有した。
【0056】
実施例2:
トリス(ペルフルオロトリフェニルボラン)の使用下にブチルポリエーテルの欠損によるM’−O−D13−M’−シロキサンの変換
M’−O−D13−M’−シロキサン(SiH値1.77val/kg)100gを29.5のOH数を有するブチルアルコールで開始された純粋PO含有ポリエーテル(1,900g/モルの中程度のモル量)269.3gで変換した。このポリエーテルをSiH値に対して20モル%欠損で使用した。反応実施(C)後、95℃下、SiHに対して0.12モル%に対応する1.11gのトリス(ペルフルオロトリフェニルボラン)を添加した。触媒添加後約60分で変換は、SiH値法に対応して、100%であった。生成物は443mPasの粘度を有した。
【0057】
比較例1:
トリス(ペルフルオロトリフェニルボラン)の使用下にブチルポリエーテルの過剰によるM’−O−D13−M’−シロキサンの変換
M’−O−D13−M’−シロキサン(SiH値1.77val/kg)80gを29.5のOH数を有するブチルアルコールで開始された純粋PO含有ポリエーテル(1,900g/モルの中程度のモル量)296.2gで変換した。このポリエーテルをSiH値に対して10モル%過剰で使用した。反応実施(A)後、95℃下、SiHに対して0.15モル%に対応する0.11gのトリス(ペルフルオロトリフェニルボラン)を添加した。シロキサン投与の終了後約30分で変換は、SiH値法に対応して、100%であった。生成物は389mPasの粘度を有した。
【0058】
B)脱水素ヒドロシリル化における側鎖水素シロキサンの変換
実施例3:
トリス(ペルフルオロトリフェニルボラン)の使用下にアリルポリエーテルの欠損によるM−O−D’5−D22−M−シロキサンの変換
M−O−D’5−D22−M−シロキサン(SiH値2.46val/kg)50gを30.2g I/100gのヨード数もしくは69.3mg KOH/gのOH数を有するアリルアルコールで開始された混合EO/PO含有ポリエーテル(840g/モルの中程度のモル量、PO率は26モル%に達する)82.7gで変換した。このポリエーテルをSiH値に対して20モル%欠損で使用した。反応実施(C)後、90℃下、SiH値に対して0.5モル%に対応する0.31gのトリス(ペルフルオロ−トリフェニルボラン)を添加した。触媒の添加後約120分でSiH値法による変換は約100%であった。生成物は7245mPasの粘度および18.7g I/100gのヨード数(ほぼ完全に存在する二重結合に対応する理論上のヨード数18.8g I/100g)を有した。
【0059】
比較例2:
トリス(ペルフルオロトリフェニルボラン)の使用下にアリルポリエーテルの等モルによるM−O−D’5−D22−M−シロキサンの変換
M−O−D’5−D22−M−シロキサン(SiH値2.46val/kg)50gを30.2g I/100gのヨード数もしくは69.3mg KOH/gのOH数を有するアリルアルコールで開始された混合EO/PO含有ポリエーテル(840g/モルの中程度のモル量、PO率は26モル%に達する)103.4gで変換した。このポリエーテルをSiH値に対して0モル%欠損で使用した。反応実施(C)後、90℃下、SiH値に対して0.5モル%に対応する0.31gのトリス(ペルフルオロ−トリフェニルボラン)を添加した。触媒の添加後約180分でSiH値法による変換は約100%であった。生成物は371mPasの粘度および20.4g I/100gのヨード数(完全に存在する二重結合に対応する理論上のヨード数18.8g I/100g)を有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、
少なくとも1つの水素原子がシリコン原子に結合されており、
Rは、1〜20個、具体的には、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分岐型、飽和、単一もしくは多重不飽和アルキル、アリール、アルカリル、もしくはアラルキル残基、1〜20個の炭素原子を有するハロゲンアルキル基、シロキシ基、およびトリオルガノシロキシ基から選択される1つもしくは複数の同じもしくは異なる残基を示し、
R’およびR’’は、互いに独立してHまたはRを示し、
xは、0〜300の整数を、
yは、0〜100の整数を示し、
触媒として第III主族および/または第3亜族の1つもしくは複数の元素化合物の存在下で一般式(I)の化学量論的に過剰の≡Si(H)単位を含有するポリオルガノシロキサンとともに、直鎖状または分岐型、飽和、単一または多重不飽和、芳香族、脂肪族−芳香族モノ−またはポリアルコール、ポリエーテルモノ−またはポリエーテルポリアルコール、アミノアルコール、具体的にはN−アルキル−、アリールアミノ−EO−、−PO−アルコール、N−アルキル−またはアリールアミノアルコール、単一または多重(メタ)アクリル化モノアルコキシレートまたはポリアルコキシレート、ヒドロキシ−アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、ハロゲン化モノ−またはポリアルコール、ポリエステルモノアルコール、ポリエステルポリ−アルコール、フルオロ化またはペル−フルオロ化モノアルコキシレートまたはポリアルコキシレートおよびその混合物の群から選択される少なくとも1つのアルコールを有する。]の≡Si(H)単位を含有するポリオルガノシロキサンの変換方法において、アルコール成分が完全に変換された後、≡Si−H−基がガス定量的に検出できなくなるまで反応が行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
第III主族の元素化合物として、1つもしくは複数のボロン含有触媒が使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第III主族の元素化合物として、ハロゲン化物、アルキル化合物、フッ素含有、脂環式および/または複素環化合物が使用されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の方法において、
(C)(CB、(CB、(C)BF、BF(C、B(C、BCl(C)、BCl(C、B(C)(C、B(Ph)(C)、[C(mCF)]B、[C(pOCFB、(C)B(OH)、(CBOH、(CBH、(C)BH、(C11)B(C、(C14B)(C)、(CB(OC)、(CB−CHCHSi(CH
【化2】

具体的には、トリス(ペルフルオロトリフェニルボラン)、三フッ化ホウ素−エーテル、ボラン−トリフェニルホスフィン錯体、トリフェニルボラン、トリエチルボランおよび三フッ化ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)−ボロキシン(9Cl)、4,4,5,5,−テトラメチル−2−(ペンタフルオロフェニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(9Cl)、2−(ペンタフルオロフェニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(9Cl)、ビス(ペンタフルオロフェニル)シクロへキシルボラン、ジ−2,4−シクロペンタジエン−1−イル(ペンタフルオロフェニル)−ボラン(9Cl)、(ヘクサヒドロ−3a(1H)−ペンタレニル)ビス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(9Cl)、1,3−[2−[ビス(ペンタフルオロフェニル)ボリル]エチル]テトラメチルジロキサン、2,4,6−トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラジン(7Cl、8Cl、9Cl)、1,2−ジヒドロ−2−(ペンタフルオロフェニル)−1,2−アザボリン(9Cl)、2−(ペンタフルオロフェニル)−1,3,2−ベンゾジオキサボロル(9Cl)、トリス(4−トリフルオロメトキシフェニル)ボラン、トリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(4−フルオロフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、メチリウムトリフェニルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンチフルオロフェニル)ホウ酸およびその混合物
からなる群から選択される触媒を使用することを特徴とする方法。
【請求項5】
メタノール、エタノール、フルオロ化アルコール、ブチルポリエーテルアルコール、アリルポリエーテルアルコールまたはノニルフェノールポリエーテルアルコール、エチレンオキシド含有および/またはプロピレンオキシド含有および/またはスチロールオキシド含有および/またはブチレンオキシド含有ポリエーテルアルコール、アミノアルコール、単一または多重(メタ)アクリル化モノアルコキシレートまたはポリアルコキシレート、ヒドロキシアルキル−(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、ハロゲン化モノ−またはポリアルコール、ポリエステルモノアルコール、ポリエステルポリアルコール、フルオロ化またはペルフルオロ化モノアルコキシレートまたはポリアルコキシレートおよびその混合物の群から選択されるアルコールが使用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
≡SiH基のアルコール基に対する材料分量比は、好ましくは、1:0.1〜1:0.99モル当量の範囲に設定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
一般式(I)の櫛形および/またはα,ω二置換ポリジメチル水素シロキサン群から選択されるポリオルガノシロキサンが使用されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
一般式(II)
M−O−D−D’−M (II)
[式中、
Mは、トリアルキルシリル、具体的には、トリメチルシリルを表し、
は、(ジアルキルシリルオキシ)、具体的には、(ジメチルシリルオキシ)を表し、
D’は、(−O(CH)Si(H)−を表す。]の化合物から選択されるポリオルガノシロキサンが使用されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
一般式(III)
M’−O−D−M’ (III)
[式中、
M’は、ジアルキル(ヒドロゲン)シリル、具体的には、ジメチルヒドロゲンシリルを表し、かつ
は、(ジアルキルシリルオキシ)、具体的には、(ジメチルシリルオキシ)を表す。]の化合物から選択されるポリオルガノシロキサンが使用されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
一般式(IV)
M’−O−D−D’−M (IV)
[式中、
M’は、ジアルキル(ヒドロゲン)シリル、具体的には、ジメチルヒドロゲンシリルを表し、
は、(ジアルキルシリルオキシ)、具体的には、(ジメチルシリルオキシ)を表し、かつ
D’は、(−O(CH)Si(H)−を表す。]の群から選択されるポリオルガノシロキサンが使用されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記変換が溶剤なしに実施されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
直鎖状または分岐型、飽和、単一または多重不飽和、芳香族、脂肪族−芳香族モノ−またはポリアルコール、ポリエーテル、ポリエーテルアルコールまたはアミノアルコール、具体的にはN−アルキル−、アリールアミノ−EO−、−PO−アルコール、N−アルキル−またはアリールアミノアルコール単一または多重(メタ)アクリル化モノアルコキシレートまたはポリアルコキシレート、ヒドロキシアルキル−(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、ハロゲン化モノ−またはポリアルコール、ポリエステルモノアルコール、ポリエステル−ポリアルコール、フルオロ化またはペルフルオロ化モノアルコキシレートまたはポリアルコキシレートまたはその混合物から選択される、末端および/または側鎖SiOC−結合単一または混合残基を含有する請求項7または11に記載の置換ポリオルガノシロキサンであって、それらが塩酸、および塩素を含有する中和生成物において残基成分を含まないことを特徴とする置換ポリオルガノシロキサン。
【請求項13】
前記残基が、エトキシ、ブチルポリエーテル、アリルポリエーテル、およびノニルフェニルポリエーテル、メチルポリエーテル、エチレンオキシド−および/またはプロピレンオキシド−および/またはスチロールオキシド−および/またはブチレンオキシド含有ポリエーテル、アミノアルコール、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、Bisomer PEA 6、モノアクリル化ジプロラクトン(Sartomer SR 495)、ペンタエリトリトールトリアクリレートおよび/またはアミノポリエーテルおよびその混合物から選択されることを特徴とする請求項12に記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法によって得られるポリオルガノシロキサン。
【請求項15】
生地の仕上げ加工のため、プラスチック用または建築塗料分野における添加剤として、照射硬化コーティング、具体的にはインク、および/またはポリウレタンフォーム安定剤として使用される請求項14に記載のポリオルガノシロキサンの使用。

【公開番号】特開2008−156639(P2008−156639A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325007(P2007−325007)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(507375465)エヴォニク ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (100)
【Fターム(参考)】