説明

ポリオレフィン樹脂組成物およびその成形体

【課題】伸びや衝撃性が良好であり、かつ、耐傷つき性が良好な成形体を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂(A)99質量%〜60質量%と、
無機充填材(B)40質量%〜1質量%と、オレフィン系エラストマー及び/又はビニル芳香族化合物系エラストマー(E)0質量%〜30質量%と(但し、前記(A)、(B)、及び(E)の合計を100質量%とする)、下記のオレフィン共重合体変性物(C)を、前記(A)、(B)、及び(E)100質量部に対して0.01質量部〜5質量部と、滑剤(D)を0.01質量部〜1質量部と、を含有するポリオレフィン樹脂組成物を提供するものである。
オレフィン共重合体変性物(C):エチレン、及び、炭素原子数3以上のα−オレフィン化合物、からなる群から選ばれる少なくとも一種のオレフィン化合物と、脂環族ビニル化合物と、の共重合体(a)100質量部と、少なくとも一種の不飽和基(i)及び少なくとも一種の極性基(ii)を有する化合物(b)0.01〜20重量部と、有機過酸化物(c)0.001〜20重量部と、を反応させて得られるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン樹脂組成物及びこの樹脂組成物を用いて製造された成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂組成物は、工業部品分野における各種成形品、例えば自動車用途として、バンパー、インストルメントパネル、ピラー等の部品、家電用途として掃除機、テレビ等の部品に使用されている。
近年、これらの用途において、溶剤規制等による無塗装化の浸透などに伴い、ポリオレフィン樹脂組成物の耐傷付き性が問題点としてクローズアップされてきた。
【0003】
耐傷付き性を改良するために、変性ポリオレフィンを用いる技術が開示されている。例えば特許文献1には、(a)特定の結晶性プロピレン系ブロック共重合体と、(b)特定のポリエチレンと、(c)エラストマーと、(d)無機フィラーと、(e)脂肪酸アミド又はその誘導体と、(f)シリコーン化合物と、(g)不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリオレフィンからなるポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−3692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂組成物では、ポリプロピレンをベースとした変性剤を使用しているため、得られる成形体の耐傷付き性は改善されたものの、成形体の伸びや衝撃強度が低下することがあった。
以上の課題に鑑み、本発明では伸びや耐衝撃性が良好であり、かつ、耐傷付き性が良好な成形体を得ることが可能なポリオレフィン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
ポリオレフィン樹脂(A)99質量%〜60質量%と、
無機充填材(B)40質量%〜1質量%と、
オレフィン系エラストマー及び/又はビニル芳香族化合物系エラストマー(E)0質量%〜30質量%と(但し、前記(A)、(B)、及び(E)の合計を100質量%とする)、
下記のオレフィン共重合体変性物(C)を、前記(A)、(B)、及び(E)100質量部に対して0.01質量部〜5質量部と、
滑剤(D)を0.01質量部〜1質量部と、
を含有するポリオレフィン樹脂組成物を提供するものである。
オレフィン共重合体変性物(C):エチレン、及び、炭素原子数3以上のα−オレフィン化合物、からなる群から選ばれる少なくとも一種のオレフィン化合物と、脂環族ビニル化合物と、の共重合体(a)100質量部と、
少なくとも一種の不飽和基(i)及び少なくとも一種の極性基(ii)を有する化合物(b)0.01〜20重量部と、
有機過酸化物(c)0.001〜20重量部と、
を反応させて得られるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、伸びや耐衝撃性が良好であり、かつ、耐傷付き性が良好な成形体を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)と、無機充填材(B)と、所定のオレフィン共重合体変性物(C)と、滑剤(D)と、を含有する。以下、詳細に説明する。
〔ポリオレフィン樹脂(A)〕
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(A)(以下、成分(A)ともいう)としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂等が挙げられる。これらは単独重合体であっても、他のモノマーとの共重合体であってもよい。共重合体はブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよい。
ポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンと炭素原子数4以上のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと炭素原子数4以上の環状オレフィンとの共重合体、及び、これらの混合物等が挙げられる。
【0009】
ポリプロピレン樹脂としては、プロピレン単独重合体、エチレンとのブロック共重合体、エチレンとのランダム共重合体、プロピレンと炭素原子数4以上のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンと炭素原子数4以上の環状オレフィンとの共重合体、及び、これらの混合物等が挙げられる。
【0010】
以上の中でも、ポリオレフィン樹脂(A)として、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−オクテン共重合体、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体を用いることが特に好ましい。
【0011】
炭素原子数4以上のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、及び1−エイコセン等の直鎖状のα−オレフィン;ならびに、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、及び2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等の分岐状のα−オレフィンが挙げられる。これらは単独又は二種以上組み合わせて用いることが可能である。
【0012】
本発明における環状オレフィンは、脂環族炭化水素化合物であって、脂環内に二重結合を有する化合物をいう。具体的には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、4−メチルシクロペンテン、4,4−ジメチルシクロペンテン、シクロヘキセン、4−メチルシクロヘキセン、4,4−ジメチルシクロヘキセン、1,3−ジメチルシクロヘキセン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、1,3−シクロヘプタジエン、1,3,5−シクロヘプタトリエン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、及び、シクロドデセン等が挙げられる。これらは単独又は二種以上組み合わせて用いることが可能である。
【0013】
ポリオレフィン樹脂(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、1〜4であることが好ましい。なお、本発明における分子量分布は、ポリオレフィン樹脂(A)をo−ジクロロベンゼンに溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法によって測定したポリスチレンの分子量に換算された値として、ポリオレフィン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)より算出した値を用いる。
【0014】
ポリオレフィン樹脂(A)のメルトフローレートは、0.5g/10分〜300g/10分であることが好ましく、1g/10分〜150g/10分であることがより好ましい(JIS−K−6758 230℃で測定)。
【0015】
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物中のポリオレフィン樹脂(A)の含有量は、後述する成分(B)と、成分(E)と、を合わせて100質量%としたときに、99質量〜60質量%であり、90〜65質量%であることが好ましい。含有量が99質量%より多いと成分(B)、成分(E)が少ないため、成形体の耐衝撃性や剛性が低下する可能性がある。また、含有量が60質量%未満では耐傷付き性が低下する可能性がある。
【0016】
ポリオレフィン樹脂(A)の製造方法としては、重合触媒を用いて重合する方法が挙げられる。重合触媒としては、例えば、チーグラー触媒やメタロセン触媒が挙げられる。チーグラー触媒としては、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(b)有機アルミニウム化合物、及び(c)電子供与体成分から形成される触媒系などが挙げられる。これらの触媒の製造方法は、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報、特開平10−212319号公報、特開2004−182876号公報等に開示されている。
また、重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒によるスラリー重合法、溶媒重合法、無溶媒による液相重合法、気相重合法、又はそれらを連続的に行う気相−気相重合法、液相−気相重合法が挙げられる。これらの重合方法は、回分式(バッチ式)であってもよく、連続式であってもよい。また、ポリオレフィン系重合体を一段階で製造する方法であってもよく、二段階以上の多段階で製造する方法であってもよい。
特に、上記プロピレン単独重合体成分と上記エチレン−プロピレンブロック共重合体からなるポリプロピレン系共重合体の製造方法として、好ましくは、前記エチレン−プロピレンブロック共重合体を製造する段階と、前記エチレン−プロピレンブロック共重合体を製造する段階と、の少なくとも二段階の工程を有する多段階の製造方法が挙げられる。
【0017】
〔無機充填材(B)〕
本発明で用いられる無機充填材(B)(以下、成分(B)ともいう)としては、非繊維状無機充填材と繊維状無機充填材が挙げられる。
非繊維状無機充填材としては、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、クレー、アルミナ、シリカ、硫酸カルシウム、けい砂、カーボンブラック、酸化チタン、水酸化マグネシウム、ゼオライト、モリブデン、けいそう土、セリサイト、シラス、水酸化カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸ソーダ、ベントナイト、黒鉛等が挙げられる。良好な衝撃強度を有し、かつ、良好な外観を有する成形体を得るという観点から、タルクを用いることが好ましい。
【0018】
上記非繊維状無機充填材の平均粒子径は、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。本発明における「平均粒子径」とは、遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて水、アルコール等の分散媒中に懸濁させて測定した篩下法の積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50のことを意味する。
上記非繊維状無機充填材は、そのまま使用してもよいが、成分(A)との界面接着性を向上させるために、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、又は界面活性剤等を用いて表面処理を施してから使用してもよい。界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類が挙げられる。
【0019】
繊維状無機充填材としては、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、チタン酸カリウム繊維、水酸化マグネシウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維等が挙げられる。十分な耐衝撃強度を有し、かつ、良好な外観を有する成形体を得るという観点から、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、ケイ酸カルシウム繊維を用いることが好ましく、繊維状マグネシウムオキシサルフェートを用いることがより好ましい。
【0020】
上記繊維状無機充填材の平均繊維長は、3μm以上であることが好ましく、3μm〜20μmであることがより好ましく、8μm〜15μmであることが更に好ましい。また、平均繊維径は、0.2μm〜1.5μmであることが好ましく、0.3μm〜1.0μmであることが更に好ましい。なお、本発明における「平均繊維長」及び「平均繊維径」とは、電子顕微鏡観察によって測定した所定数の測定用繊維の繊維長及び繊維径の平均値のことを意味する。
また、アスペクト比は、10以上であることが好ましく、10〜30であることがより好ましく、12〜25であることが更に好ましい。
【0021】
上記繊維状無機充填材は、そのまま使用してもよいが、成分(A)との界面接着性を向上させるために、シランカップリング剤や高級脂肪酸金属塩等を用いて表面処理を施してから使用してもよい。高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。
繊維状無機充填材の形態としては、粉状、フレーク状、顆粒状などが挙げられ、いずれの形態のものを用いても良い。これらのうち、取り扱いが容易であるという観点から、顆粒状のものを用いることが好ましい。
【0022】
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物中の無機充填材(B)の含有量は、成分(A)と、成分(E)と、を合わせて100質量%としたときに、40質量%〜1質量%であり、30〜2質量%であることが好ましい。含有量が40質量%より多いと、成形体の耐傷付き性が低下する可能性があり、含有量が1質量%未満であると剛性が低下する可能性がある。
【0023】
〔オレフィン共重合体変性物(C)〕
本発明で用いられるオレフィン共重合体変性物(C)(以下、成分(C)ともいう)は、オレフィン共重合体変性物(C)は、所定の共重合体(a)と、所定の化合物(b)と、有機過酸化物(c)とを反応させて得られるものである。
【0024】
<共重合体(a)>
共重合体(a)は、エチレン、及び、炭素数3以上のα−オレフィン化合物、からなる群から選ばれる少なくとも一種のオレフィン化合物と、脂環族ビニル化合物と、の共重合体である。
【0025】
炭素数3以上のα−オレフィン化合物として具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ナノデセン、1−エイコセン等が挙げられる。
これらのうち、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンを第一のオレフィン化合物として用いることが好ましく、エチレン、プロピレンを用いることがより好ましい。これらは単独又は二種以上組み合わせて用いることが可能である。
【0026】
脂環族ビニル化合物とは、ビニル基を有する脂環族炭化水素化合物をいう。脂環族炭化水素化合物が有する脂環式構造は、3員環〜16員環であることが好ましい。具体的には、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環及びシクロオクタン環等の単環の脂環式構造、アダマンタン環、ノルボルネン環、等の多環の脂環式構造が挙げられる。
上記のような脂環式構造を有する化合物としては具体的には、ビニルシクロプロパン、ビニルシクロブタン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン、等が挙げられる。このうち、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン、を用いることがより好ましく、ビニルシクロヘキサン、を用いることが更に好ましい。
【0027】
共重合体(a)中の、オレフィン化合物及び脂環族ビニル化合物の共重合組成は、オレフィン化合物が0.1モル%〜99モル%であることが好ましく、1モル%〜80モル%であることがより好ましい。脂環族ビニル化合物が99.9モル%〜1モル%であることが好ましく、99モル%〜20モル%であることがより好ましい。
【0028】
共重合体(a)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.2〜5であることが好ましく、1.5〜3であることがより好ましい。なお、共重合体(a)の分子量分布は、上記ポリオレフィン樹脂(A)の分子量分布と同様の方法で算出した値を用いる。
共重合体(a)のメルトフローレートは、50g/10分〜500g/10分であることが好ましく、100g/10分〜300g/10分であることがより好ましい(JIS−K−6758 190℃で測定)。
【0029】
共重合体(a)の製造方法としては、重合触媒を用いて製造する方法が挙げられる。重合触媒としては、例えば、チーグラー触媒やメタロセン触媒が挙げられる。チーグラー触媒としては、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(b)有機アルミニウム化合物、及び(c)電子供与体成分から形成される触媒系などが挙げられる。これらの触媒の製造方法は、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報、特開平10−212319号公報、特開2004−182876号公報等に開示されている。
【0030】
<化合物(b)>
化合物(b)は、少なくとも一種の不飽和基(i)及び少なくとも一種の極性基(ii)を有する化合物である。
本発明における不飽和基(i)とは、炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合をいう。そして、極性基(ii)とは、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、アミノ基から誘導されるアンモニウム塩の構造を有する基、アミド基、イミド基、ニトリル基、エポキシ基、水酸基、イソシアナート基、2−オキサ−1,3−ジオキソ−1,3−プロパンジイル基、ジヒドロオキサゾリル基等が挙げられる。
【0031】
このような化合物(b)としては、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸無水物、不飽和エポキシ化合物、不飽和アルコール、不飽和アミン、及び不飽和イソシアナート等が挙げられる。
具体的な化合物(b)として以下のグループ(1)〜(14)の化合物を例示することができる。なお化合物(b)は単独又は二種以上組合せて用いてもよい。
【0032】
〔グループ(1)〕
マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、マレイミド、マレイン酸ヒドラジド、無水メチルナジック酸、無水ジクロロマレイン酸、マレイン酸アミド、イタコン酸、無水イタコン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及びアリルグリシジルエーテル。
【0033】
〔グループ(2)〕
無水マレイン酸とジアミンとの反応物のような、下記構造式で表される化合物(なお、式中、Rは脂肪族基又は芳香族基を表す)。
【0034】
【化1】

【0035】
〔グループ(3)〕
大豆油、キリ油、ヒマシ油、アマニ油、麻実油、綿実油、ゴマ油、菜種油、落花生油、椿油、オリーブ油、ヤシ油、及びイワシ油のような天然油脂。
〔グループ(4)〕
グループ(3)の天然油脂をエポキシ化して得られる化合物。
【0036】
〔グループ(5)〕
アクリル酸、ブテン酸、クロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、ペンテン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸、α−エチルアクリル酸、β−メチルクロトン酸、4−ペンテン酸、2−ヘキセン、2−メチル−2−ペンテン酸、3−メチル−2−ペンテン酸、α−エチルクロトン酸、2,2−ジメチル−3−ブテン酸、2−ヘプテン酸、2−オクテン酸、4−デセン酸、9−ウンデセン酸、10−ウンデセン酸、4−ドデセン酸、5−ドデセン酸、4−テトラデセン酸、9−テトラデセン酸、9−ヘキサデセン酸、2−オクタデセン酸、9−オクタデセン酸、アイコセン酸、ドコセン酸、エルカ酸、テトラコセン酸、ミコリペン酸、2,4−ヘキサジエン酸、ジアリル酢酸、ゲラニウム酸、2,4−デカジエン酸、2,4−ドデカジエン酸、9,12−ヘキサデカジエン酸、9,12−オクタデカジエン酸、ヘキサデカトリエン酸、アイコサジエン酸、アイコサトリエン酸、アイコサテトラエン酸、リシノール酸、エレオステアリン酸、オレイン酸、アイコサペンタエン酸、エルシン酸、ドコサジエン酸、ドコサトリエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、テトラコセン酸、ヘキサコセン酸、ヘキサコジエン酸、オクタコセン酸、及びトラアコンテン酸のような不飽和カルボン酸。
〔グループ(6)〕
上記不飽和カルボン酸の、エステル、アミド又は無水物。
【0037】
〔グループ(7)〕
アリルアルコール、クロチルアルコール、メチルビニルカルビノール、アリルカルビノール、メチルプロピペニルカルビノール、4−ペンテン−1−オール、10−ウンデセン−1−オール、プロパルギルアルコール、1,4−ペンタジエン−3−オール、1,4−ヘキサジエン−3−オール、3,5−ヘキサジエン−2−オール、及び2,4−ヘキサジエン−1−オールのような不飽和アルコール。
〔グループ(8)〕
3−ブテン−1,2−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキセン−2,5−ジオール、1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール、及び2,6−オクタジエン−4,5−ジオールのような不飽和アルコール。
〔グループ(9)〕
上記グループ(7)及び(8)の不飽和アルコールの水酸基がアミノ基に置換された不飽和アミン。
【0038】
〔グループ(10)〕
ブタジエン及びイソプレンのようなジエン化合物の、数平均分子量が約500〜約10,000のような低分子量重合体に、無水マレイン酸又はフェノール類を付加した化合物。
〔グループ(11)〕
ブタジエン及びイソプレンのようなジエン化合物の、数平均分子量が約10,000以上のような高分子量重合体に、無水マレイン酸又はフェノール類を付加した化合物。
〔グループ(12)〕
ブタジエン及びイソプレンのようなジエン化合物の、数平均分子量が約500〜約10,000のような低分子量重合体に、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、又はエポキシ基のような基を導入した化合物。
〔グループ(13)〕
ブタジエン及びイソプレンのようなジエン化合物の、数平均分子量が約10,000以上のような高分子量重合体に、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、又はエポキシ基のような基を導入した化合物。
〔グループ(14)〕
イソシアン酸アリル。
【0039】
これらのうち、化合物(b)として、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、又は2−ヒドロキシエチルメタクリレートを用いることが好ましい。
【0040】
<有機過酸化物(c)>
本発明で用いられる有機過酸化物(c)は、所定温度で分解してラジカルを発生した後、共重合体(a)からプロトンを引き抜く作用を有する有機過酸化物である。共重合体(a)に対する化合物(b)のグラフト率を向上させるという観点や、共重合体(a)の分解を防止するという観点から、半減期が1分となる分解温度が50℃〜210℃の有機過酸化物であることが好ましい。
これらの中でも半減期が1分となる分解温度は、70℃〜200℃であることがより好ましく、90℃〜190℃であることがさらに好ましい。
【0041】
半減期が1分となる分解温度が50℃〜210℃の有機過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、アルキルパーオキシエステル、及びパーオキシカルボネート等が挙げられる。中でも、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、アルキルパーオキシエステル、又はパーオキシカルボネートを用いることが好ましい。
有機過酸化物(c)として具体的には、ジセチルパーオキシジカルボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカルボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカルボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシルパーオキシ)ジカルボネート、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、ジミリスチルパーオキシカルボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカルボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブテン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、ジクミルパーオキサイド、α−α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、及びp−メンタンハイドロパーオキサイド、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。これらは単独又は二種以上組み合わせて用いることが可能である。
【0042】
本発明における共重合体(a)に対する化合物(b)のグラフト率は0.005質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜1質量%であることがより好ましい。グラフト率を0.005質量%以上とすることにより、得られる成形体の耐傷付き性を良好なものとすることが可能となる。また、グラフト率を10質量%以下とすることにより、共重合体(a)の分解や化合物(b)の架橋を抑制し、十分な耐傷付き性を有する成形体を得ることが可能となる。
【0043】
オレフィン共重合体変性物(C)は、有機過酸化物(c)を用いて、上記の共重合体(a)と、上記の化合物(b)とを反応させて得られるものである。各成分の配合割合は、共重合体(a)100質量部に対し、化合物(b)が0.01質量部〜20質量部、好ましくは0.1質量部〜10質量部、有機過酸化物(c)が0.001質量部〜20質量部、好ましくは0.1質量部〜3質量部である。
化合物(b)の配合割合が0.01質量部未満の場合、共重合体(a)に対する化合物(b)のグラフト率が低下するため、得られる成形体の耐傷付き性が低くなることがある。また、配合割合が20質量部を超えると共重合体(a)と未反応の化合物(b)の量が増加するため、成形体の機械物性が低下することがある。
また、有機過酸化物(c)の配合割合が0.001質量部未満の場合、共重合体(a)に対する化合物(b)のグラフト率が低下するため、得られる成形体の耐傷付き性が低くなることがある。また、配合割合が20質量部を超えた場合、共重合体(a)の分解や化合物(b)の架橋が進み、十分な耐傷付き性を有する成形体が得られないことがある。
なお、本発明において、化合物(b)及び/又は有機過酸化物(c)を二種以上用いた場合は、その総量を上記使用量とする。
【0044】
オレフィン共重合体変性物(C)の製造方法としては、下記の方法が挙げられる。
[1]:共重合体(a)、化合物(b)及び有機過酸化物(c)を溶融混練する方法
[2]:共重合体(a)、化合物(b)及び有機過酸化物(c)を有機溶剤に溶解させ、得られた溶液を加熱する方法
[3]:共重合体(a)、化合物(b)及び有機過酸化物(c)を水中に懸濁させ、得られた懸濁液を加熱する方法
このうち上記[1]の方法を用いることが好ましい。また上記の溶融混練で用いられる混練機として、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸押出機、及び二軸押出機のような公知の装置を例示することができる。中でも、連続生産ができ生産性が高いという観点から、一軸押出機又は二軸押出機が好ましい。
【0045】
上記[1]の方法の具体的な手順としては、以下が挙げられる。
(1):共重合体(a)、化合物(b)及び有機過酸化物(c)のそれぞれの全量を一括して溶融混練する方法
(2):共重合体(a)を溶融混練し、得られた混練物に化合物(b)と有機過酸化物(c)とを同時に又は任意の順番に添加して溶融混練する方法
(3):共重合体(a)の一部を溶融混練し、得られた混練物に成分(a)の残りの全量と化合物(b)と有機過酸化物(c)とを同時又は任意の順番に添加して溶融混練する方法;
溶融混練の温度(押出機の場合はシリンダーの温度)は、共重合体(a)に対する化合物(b)のグラフト率を向上させるという観点や、溶融混練中の共重合体(a)の分解を抑えるという観点から、50℃〜300℃であることが好ましく、80℃〜270℃であることがより好ましい。溶融混練の時間は、共重合体(a)に対する化合物(b)のグラフト率を向上させるという観点から、0.1分〜30分であることが好ましく、0.5分〜5分であることがより好ましい。
【0046】
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物中のオレフィン共重合体変性物(C)の含有量は、ポリオレフィン樹脂組成物全体を100質量部に対し、0.01質量部〜5質量部であり、0.1質量部〜3質量部であることが好ましい。含有量が0.01質量部未満である場合は、十分な耐傷付き性を有する成形体が得られない場合があり、含有量が5質量部を超えると、成形体の剛性や耐衝撃性が低下する場合がある。
【0047】
〔滑剤(D)〕
本発明で用いられる滑剤(D)(以下、成分(D)ともいう)として、シラン化合物、ポリオレフィン系ワックス、脂肪酸アミド等が挙げられる。このうち、脂肪酸アミドを用いることが好ましく、炭素原子数6〜22の脂肪酸アミドを用いることが更に好ましい。脂肪酸アミドとしては、具体的にはラウリル酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
【0048】
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物中の滑剤(D)の含有量は、ポリオレフィン樹脂組成物全体を100質量部に対し、0.01質量部〜1質量部であり、0.1質量部〜0.5質量部であることが好ましい。含有量が0.01質量部未満である場合は、十分な耐傷付き性を有する成形体が得られない場合があり、含有量が1質量部を超えると表面に出てくる滑剤が多すぎてフォギング性が悪化する場合がある。
【0049】
〔オレフィン系エラストマー及び/又はビニル芳香族化合物系エラストマー(E)〕
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、オレフィン系エラストマー及び/又はビニル芳香族化合物系エラストマー(E)(以下、成分(E)ともいう)を更に含有していてもよい。
オレフィン系エラストマーとしては、エチレンと炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられ、これらは単独又は二種以上併用してもよい。好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0050】
オレフィン系エラストマーの密度は、ポリオレフィン樹脂(A)への分散性を高めるという観点や、成形体の衝撃強度を高めるという観点から、0.85g/cm〜0.885g/cmであり、好ましくは0.85g/cm〜0.88g/cmであり、より好ましくは0.855g/cm〜0.875g/cmである。また、オレフィン系エラストマーのJIS−K−6758 190℃で測定したメルトフローレートは、成形体の衝撃強度を高めるという観点から、0.1g/10分〜30g/10分であり、好ましくは0.5g/10分〜20g/10分である。
【0051】
オレフィン系エラストマーの製造方法としては、重合触媒を用いて製造する方法が挙げられる。公知の重合触媒としては、例えば、バナジウム化合物、有機アルミニウム化合物及びハロゲン化エステル化合物からなるチーグラー・ナッタ触媒系や、チタン原子、ジルコニウム原子又はハフニウム原子に少なくとも1種のシクロペンタジエニルアニオン骨格を有する基が配位したメタロセン化合物と、アルモキサンあるいはホウ素化合物と、を組み合わせた触媒系や、いわゆるメタロセン触媒系が挙げられる。公知の重合方法としては、例えば、炭化水素化合物のような不活性有機溶媒中でエチレンとα−オレフィンを共重合させる方法や、溶媒を用いずにエチレン及びα−オレフィン中で共重合させる方法が挙げられる。
【0052】
本発明におけるビニル芳香族化合物系エラストマーとは、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体、前記ブロック共重合体の共役ジエン部分の二重結合が水素添加されているブロック重合体をいう。これらのうちブロック共重合体の共役ジエン部分の二重結合が80%以上水素添加されているブロック重合体を用いることが好ましく、二重結合が85%以上水素添加されているブロック重合体を用いることがより好ましい。
具体的には、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン系共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系共重合体(SEPS)、スチレン−ブタジエン系共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン系共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン系共重合体(SIS)等のブロック共重合体又はこれらのブロック共重合体を水添したブロック共重合体等が挙げられる。これらは単独又は二種以上組み合わせて用いることが可能である。
また、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系エラストマー(EPDM)等のオレフィン系共重合体エラストマーとスチレン等のビニル芳香族化合物とを反応させて得られるエラストマーも好適に使用することができる。また、少なくとも二種類のビニル芳香族化合物系エラストマーを併用しても良い。
【0053】
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定される質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)から求められるビニル芳香族化合物系エラストマーの分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2.3以下である。
また、ビニル芳香族化合物系エラストマー中のビニル芳香族化合物の含有量は、好ましくは10質量%〜20質量%であり、より好ましくは12質量%〜19質量%である(ただし、(B−2)ビニル芳香族化合物系エラストマーの全量を100質量%とする)。
【0054】
また、ビニル芳香族化合物系エラストマーの230℃のメルトフローレート(JIS−K−6758)は、成形体の衝撃強度を高めるという観点から、1g/10分〜15g/10分であり、好ましくは2g/10分〜13g/10分である。
【0055】
ビニル芳香族化合物系エラストマーの製造方法としては、オレフィン系共重合体ゴムもしくは共役ジエンゴムに対し、ビニル芳香族化合物を重合、反応等により結合させる方法等が挙げられる。
【0056】
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物中のオレフィン系エラストマー及び/又はビニル芳香族化合物系エラストマー(E)の含有量は、成形体の耐衝撃性の向上という観点から成分(A)と、成分(E)と、を合わせて100質量%としたときに0質量%〜30質量%であり、5質量%〜20質量%であることが好ましい。
【0057】
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤、架橋剤等の添加剤を配合してもよい。
【0058】
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、全ての成分を一括して又は幾つかに分割して混合機によって均一に混合した後、溶融混練することにより得られる。溶融混練に用いる装置は特に限定されるものではないが、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸押出機、及び二軸押出機等を用いることが好ましく、連続生産ができ生産性が高いという観点から、一軸押出機又は二軸押出機を用いることが好ましい。
【0059】
溶融混練の温度(押出機の場合はシリンダーの温度)は、成分(A)の分解や架橋を抑えるという観点から、50℃〜300℃であることが好ましく、80℃〜270℃であることがより好ましい。溶融混練の時間は、成分(A)を充分に分散させるという観点から、0.1分〜30分であることが好ましく、0.5分〜5分であることがより好ましい。
このようにして得られたポリオレフィン樹脂組成物は、バンパー、インストルメントパネル、ピラー等の自動車部品、掃除機、テレビ等の家電用部品、電子製品用部品、建材部品等に使用することができる。
【実施例】
【0060】
本発明を以下の実施例及び比較例によって説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0061】
(1)極限粘度([η]、単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2及び0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法、すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。なお、溶媒にはテトラリンを用い、温度135℃で測定した。
【0062】
(2)グラフト率(質量%)
オレフィン共重合体変性物(C)中の化合物(b)のグラフト率は、下記の方法(〔1〕〜〔7〕の手順)で求めた。
〔1〕オレフィン共重合体変性物(C)1.0gをキシレン10mlに溶解して溶液を調製した。
〔2〕調製した溶液をメタノール300mlに撹拌しながら滴下して、オレフィン共重合体変性物(C)を再沈殿させた。
〔3〕再沈殿されたオレフィン共重合体変性物(C)を回収した。
〔4〕回収したオレフィン共重合体変性物(C)を、80℃で8時間真空乾燥した。
〔5〕乾燥させたオレフィン共重合体変性物(C)を熱プレスして、厚さ100μmのフィルムを作製した。
〔6〕このフィルムの赤外吸収スペクトルを測定し、該スペクトルの1730cm−1付近の吸収から、グラフト率を求めた。
【0063】
(3)アイゾット衝撃強度(IZOD、単位:KJ/m
ポリオレフィン樹脂組成物より製造された成形体の衝撃強度は、JIS−K−7110に規定された方法に従い、測定した。試験片は射出成形によって成形した厚さ3.2mmの試験片を用いた。測定は23℃、10℃、−30℃で行った。
【0064】
(4)破断点伸び(UE)(単位%)
ポリオレフィン樹脂組成物より製造された成形体の破断伸びは、ASTM D638に準拠し、上記と同様の試験片を使用して23℃で引張速度50mm/分で測定した。
【0065】
(5)耐傷付き性試験
ポリオレフィン樹脂組成物より製造された成形体の耐傷付き性は、引っかき試験機(上島製作所社製特殊大型U−F)を用い、先端が半径300μmの傷付き試験用の針に、350gの荷重をのせ、600mm/minの速度で評価した。試験片は100mm×400mm×3mmの平板を用いた。
目視にて傷が確認できない場合には○、傷が確認できる場合には×として評価を行った。
【0066】
<オレフィン共重合体変性物(C)の製造>
[共重合体(a)の製造]
乾燥窒素ガスで置換した約1,500lの撹拌槽中に、ビニルシクロヘキサン39kg、脱水トルエン357kgを投入した。
撹拌槽の温度を47℃に昇温後、水素を0.015MPa、エチレンを0.6MPa仕込んだ後、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液[東ソー・ファインケム(株)製、Al原子換算濃度 20.3質量%]を1.2kg、脱水トルエンを7kg、ジエチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド66mgを脱水トルエン1.7kgに溶解したもの、脱水トルエンを7kg、3gのN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを7kgの脱水トルエンに同伴させたもの、脱水トルエンを7kgを、順に投入して重合を開始した。
反応中は、エチレンを0.6MPaを維持するよう補充しつづけ、温度も54℃程度に制御しつづけた。2時間撹拌した後、エタノール1kg仕込み、重合を停止した。反応液と2質量%塩酸195kgと、1回、撹拌接触させ、水層を除去後、有機層に水194kgを、撹拌接触させ、水層を除去した。同様の操作をもう2回繰り返した後、加熱減圧し、非初成分を蒸発させた結果、揮発分を10質量%含んだエチレン−ビニルシクロヘキサン共重合体30kgを得た。
これから一部分取した該重合体について、分析を行った結果、該重合体のビニルシクロヘキサン単量体単位の含有量は12mol%、[η]は0.54dl/gであった。
【0067】
<オレフィン共重合体変性物(C)の製造>
上記方法により得られた共重合体(a)100質量部に対し、化合物(b)として無水マレイン酸を0.4質量部、有機過酸化物(c)として(1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを0.04質量部(化薬アクゾ株式会社製、商品名パーカドックス14−40C)用いた。押出機の混練部を前半と後半に分けて、前半部の造粒温度を250℃、後半部の混練温度を60℃、スクリュー回転数を260rpmに制御して混練を行った。無水マレイン酸のグラフト率は0.2質量%であった。
【0068】
実施例1、2及び比較例1、2で表1のとおりの各成分を用いた。
(1)成分(A)(BC−1)
プロピレン単独重合体部分の極限粘度([η]P)は1.0dl/gであり、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度([η]EP)は5.0dl/gであり、プロピレン−エチレンブロック共重合体に対するプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の含量は16質量%であり、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン含量は35質量%であり、MFR(230℃)が32g/10分であった。
(2)成分(A)(H−1)
住友化学株式会社製のプロピレン単独重合体(商品名:U501E1)を用いた。このプロピレン単独重合体の230℃のメルトフローレート(MFR)は、120g/10分であった。
(3)成分(B)(T−1)
林化成株式会社製のタルク(商品名:MWHST)を用いた。
(4)成分(C)(M−1)
上記に記載した方法で製造したオレフィン共重合体変性物(C)を使用した。
(5)成分(C)(M−2)
住友化学株式会社製の無水マレイン酸変性ポリプロピレン(商品名:MPA101)を用いた。無水マレイン酸のグラフト率は質量0.4%であった。
(6)成分(D)(E−1)
日本精化株式会社製のエルカ酸アミド(商品名:ニュートロン−S)を使用した。
【0069】
(7)成分(E)(ER−1)
ダウケミカルカンパニー製のエチレン−1−オクテン共重合体ゴム(商品名:ENGAGE8200)を用いた。このエチレン−1−オクテン共重合体ゴムの190℃のメルトフローレートは5g/10分であった。
(8)成分(E)(ER−2)
ダウケミカルカンパニー製のエチレン−1−オクテン共重合体ゴム(商品名:ENGAGE8150)を用いた。このエチレン−1−オクテン共重合体ゴムの190℃のメルトフローレートは0.5g/10分であった。
【0070】
成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)及び成分(E)を、表1記載の組成比で配合した。その際、熱安定剤(住友化学株式会社製、商品名:スミライザーGA−80)を、上記成分の全量100質量部に対して0.05質量部、有機過酸化物(化薬アクゾ株式会社製、商品名:パーカドックス14−40C)を、上記成分の全量100質量部に対して0.032質量部添加した。
これらをヘンシェルミキサー及びタンブラーで均一に予備混合した後、二軸混練押出機(日本製鋼所社製TEX44αII)を用いて、シリンダー温度200℃、押出量50kg/hr、スクリュー回転数200rpm、ベント吸引下で、ポリオレフィン樹脂組成物を製造した。
【0071】
物性評価用試験片は、次の射出成形条件下で作製した。上記で得られたポリオレフィン樹脂組成物を熱風乾燥器で120℃2時間乾燥後、顔料マスターバッチ3部ドライブレンドした後、東芝機械製IS150E−V型射出成形機を用いて、成形温度180℃、金型冷却温度50℃、射出時間15sec、冷却時間30secで射出成形を行った。
【0072】
評価結果を表2に示した。成分(C)を含まない比較例1は、傷付き性が悪く、無水マレイン酸変性ポリプロピレンを添加した比較例2は、傷付き性は改良されるが、伸びとIZOD衝撃強度が低下した。未変性の共重合体(a)を添加した比較例3は、伸びとIZODは良好であるが、傷付き性は悪いことが示された。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂(A)99質量%〜60質量%と、
無機充填材(B)40質量%〜1質量%と、
オレフィン系エラストマー及び/又はビニル芳香族化合物系エラストマー(E)0質量%〜30質量%と(但し、前記(A)、(B)、及び(E)の合計を100質量%とする)、
下記のオレフィン共重合体変性物(C)を、前記(A)、(B)、及び(E)100質量部に対して0.01質量部〜5質量部と、
滑剤(D)を0.01質量部〜1質量部と、
を含有するポリオレフィン樹脂組成物。
オレフィン共重合体変性物(C):エチレン、及び、炭素原子数3以上のα−オレフィン化合物、からなる群から選ばれる少なくとも一種のオレフィン化合物と、脂環族ビニル化合物と、の共重合体(a)100質量部と、
少なくとも一種の不飽和基(i)及び少なくとも一種の極性基(ii)を有する化合物(b)0.01〜20重量部と、
有機過酸化物(c)0.001〜20重量部と、
を反応させて得られるものである。
【請求項2】
前記化合物(b)は、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸無水物、不飽和エポキシ化合物、不飽和アルコール、不飽和アミン、および不飽和イソシアナートからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種である請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリオレフィン樹脂組成物を用いて製造された成形体。

【公開番号】特開2011−52147(P2011−52147A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203534(P2009−203534)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】