説明

ポリオレフィン系多層微多孔膜及びその製造方法

【課題】本発明は、電池用分離膜として使用できるポリオレフィン系多層微多孔膜とその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によるポリオレフィン系多層微多孔膜は、両表面層は溶融温度125℃以上のポリエチレンを95重量%以上含み、中間層は溶融温度160℃以上のポリプロピレン50〜90重量%と溶融温度125℃以上のポリエチレン10〜50重量%を含む湿式法により製造される3層の微多孔膜であって、その特性は、膜厚が9〜50μm、穿孔強度が0.15N/μm以上、透過度が1.5×10−5ダルシー以上、穿孔強度と透過度との乗算が0.4×10−5ダルシー・N/μm以上、120℃で横方向への1時間収縮率が15%以下であり、溶融破断温度が160℃以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れたポリオレフィン系多層微多孔(マイクロポーラス)膜に関する。より詳しくは、ポリエチレンに起因する低い閉温度特性と、ポリプロピレンに起因する高い溶融破断温度特性を同時に有する耐熱性に優れ、強度と品質安定性に優れたポリオレフィン系多層微多孔膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系微多孔膜(microporous film)は、その化学的安定性と優れた物性により、各種電池用分離膜(battery separator)、分離用フィルタ、及び微細濾過用分離膜(membrane)などに広く利用されている。
【0003】
ポリオレフィンから微多孔膜を製造する方法には、ポリオレフィンを高温で希釈剤と混練して単一相をなし、冷却過程でポリオレフィンと希釈剤とを相分離した後、希釈剤を抽出してポリオレフィンに孔隙を作る湿式法がある。湿式法は、薄膜のフィルムを製造でき、強度と透過度に優れており、気孔が均一であるため、リチウムイオン二次電池などに広く使われている。
【0004】
リチウムイオン二次電池は、エネルギ密度が非常に高い優れた電池であるが、短絡の発生時、発火や爆発の危険性があるため、使用される分離膜に対して高い品質水準と安定性が要求されている。近来、ハイブリッド自動車用電池などのように、リチウムイオン二次電池の高容量/高出力の傾向に合わせて、既存の湿式製品の品質安定性に加え、分離膜の熱的安定性がさらに要求されている。分離膜の熱安定性が劣ると、電池過熱により分離膜の溶融破断による爆発の危険性が大きくなるからである。
【0005】
電池の熱安定性は、分離膜の高温収縮率、閉温度、及び溶融破断温度により決定付けられる。
【0006】
分離膜が高温で著しく収縮すると、電極の表面が露出する。このようになると、電池が短絡する虞が高まり、電池の熱安定性を大きく低下させる。
【0007】
閉温度は、短絡などの理由で電池の内部温度が非理想的に増加する時、分離膜の微多孔が閉じ、それ以上電流が流れなくなる温度である。溶融破断温度は、閉温度以上に電池の温度が上がり続ける時、分離膜が溶融破断され、電流が再び流れるようになる温度である。電池の安定性のためには、閉温度は低く、溶融破断温度は高いことが好ましい。特に、溶融破断温度は、電池の爆発を誘発する可能性がある状況で、電流を遮断し続けられる温度であって、電池の安定性に最も密接な関係を有している。
【0008】
分離膜の熱安定性を向上させるための様々な努力が持続的に行われてきた。
米国特許第6,949,315号には、超高分子量ポリエチレンに5〜15重量%のチタニウムオキシドなどの無機物を混練して分離膜の熱安定性を向上させたフィルムが紹介されている。しかしながら、この方法は、無機物の添加による熱安定性の向上効果はあるが、無機物の投入による混練性の低下、混練性の低下による、延伸時のピンホールの発生及び品質不均一などの問題が発生しやすく、無機物と高分子樹脂界面との親和力(Compatibility)の不足により、衝撃強度などのフィルム物性の低下が発生するようになる。このような短所は、無機物を使用する分離膜には、必然的に現れるものである。
【0009】
無機物の代わりに耐熱性に優れた樹脂を混練して製造する分離膜は、米国特許第5,641,565号に示されている。この技術は、ポリエチレンに5〜45重量%のポリプロピレンを混合した樹脂混合物に、30〜75重量%の有機液状化合物と10〜50重量%の無機物を混合した後、有機液状化合物と無機物を抽出して分離膜を製造する技術である。この技術では、たとえ無機物を抽出するとはしても、上述した無機物の混練時の問題点を依然として有しており、前記特許で言及したように、ポリエチレンとの混練性のないポリプロピレンの添加による物性の低下が発生する。なお、この方法は、使用された無機物を抽出、除去するための工程が追加され、工程が複雑になる短所があり、十分な耐熱効果を得るためには、比較的多量のポリプロピレンを必要とし、この場合、分離膜の物性は、さらに低下するようになる。
【0010】
分離膜の熱安定性を増加させるために多層の分離膜を形成する方法の1つとして米国特許第5,691,077号には、閉特性に優れた(溶融温度が低い)ポリエチレンに溶融破断温度が高い(溶融温度が高い)ポリプロピレン樹脂をラミネーションし、3層構造の分離膜を形成する方法が示されている。この分離膜は、熱的特性には優れているが、低温乾式法によるフィルム製造過程における延伸不均一、ピンホール発生、厚さ偏差の増加などの短所がある。また、別途の工程で行われるラミネーション工程の追加による生産性の低下だけでなく、ラミネーション不良によるデラミネーション問題もあって、広く使用されていない。この方法は、優れた耐熱性にもかかわらず、二次電池用分離膜で必要とされる剛性、透過性、品質均一性、及び生産性が劣る問題点を有する。
【0011】
日本特開第2002−321323号には、ポリエチレン膜とポリエチレン/ポリプロピレン配合膜を積層したポリオレフィン系多孔膜が開示されている。しかし、ポリエチレン/ポリプロピレン配合膜のポリプロピレン含量が低いため、十分な溶融破断温度の上昇効果を奏しない。
【0012】
日本特開第2007−088815号と国際公開特許WO2004/089627には、湿式法により製造されるポリエチレン微多孔膜層を主(main)層とし、同様に湿式法により製造されるポリエチレンとポリプロピレンが混合された層を表面層とする多層分離膜が紹介されている。しかし、ポリプロピレンは結晶度が低い特性があるため、希釈剤と共に押出される湿式法により表面層に用いられる時、押出後に希釈剤内にポリプロピレンワックス成分が多量に存在することになり、延伸/抽出などの後工程でワックス析出によるフィルム及びロール表面の汚染問題などが発生して品質安定性が低下する。さらに、熱安定性で最も重要な要素の1つであるフィルムの収縮率を考慮していない。
【0013】
国際公開特許WO2006/038532には、無機粒子を含む多層湿式分離膜が紹介されているが、この分離膜も同様に、無機物の混練による難しい混練工程が必要である。また、表面層に無機物を添加すると、無機物が延伸/抽出/ワインディン/スルリッティングなどの工程で脱離して無機物パウダーによる汚染及び他の表面層のスクラッチなどを引き起こすため、品質安定性が低下する。
【0014】
二次電池用分離膜の必須の特性は、剛性、透過性、及び品質均一性であり、最近はこれらに加えて熱安定性がさらに大きく要求される。しかしながら、上述した従来技術は、品質安定性と剛性/透過性及び高い熱安定性を同時に達成することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは、上述した従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリプロピレンとポリエチレンで構成された多孔膜を別途の内層とし、ポリエチレンからなる多孔膜を両表面層として、適当な熱固定段階を経た3層の多孔膜は、耐熱性に優れたポリプロピレンを含む層の特性とポリエチレン微多孔膜層の品質安定の特性を同時に有する多層分離膜を製造できるということを見出した。結果的に、この分離膜は、剛性、透過性、熱安定性、及び品質安定性が全て非常に優れていることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明によるポリオレフィン多層微多孔膜は、
(a)溶融温度125℃以上のポリエチレンを95重量%以上含む樹脂混合物20〜50重量%と、希釈剤80〜50重量%からなる組成物を溶融混練するステップと、
(b)溶融温度160℃以上のポリプロピレン50〜90重量%と、溶融温度125℃以上のポリエチレン10〜50重量%からなる樹脂混合物20〜50重量%と、希釈剤80〜50重量%からなる組成物を溶融混練するステップと、
(c)前記(a)及び(b)で混練された溶融物を、(a)組成物から製造される層を両表面層とし、(b)組成物から製造される層を中間層とする3層の多層シートに成形するステップと、
(d)前記多層シートを延伸してフィルムに成形するステップと、
(e)前記フィルムから希釈剤を抽出するステップと、
(f)前記フィルムを熱固定するステップと、
で製造される3層の微多孔膜であって、膜厚が9〜50μm、穿孔強度が0.15N/μm以上、透過度が1.5×10−5Darcy(ダルシー)以上、穿孔強度と透過度との乗算が0.4×10−5ダルシー・N/μm以上、120℃で横方向への1時間収縮率が15%以下、溶融破断温度が160℃以上であるポリオレフィン系多層微多孔膜である。
【0017】
本発明で使用されるポリオレフィン多層微多孔膜を製造する基本理論は次の通りである。
【0018】
ポリエチレンから微多孔膜を製造する湿式法は、ポリエチレンとこれに合う希釈剤を混合し押出してシートを製造し、これを延伸してフィルムを製造した後、有機溶媒で希釈剤を抽出し、多孔膜を製造する工程を使用する。しかしながら、ポリエチレンで製造された分離膜は、ポリエチレンの溶融温度が135℃を超えないため、耐熱性の限界を有する。一方、ポリプロピレンは、溶融温度が160℃に至るが、結晶性が劣り、湿式法では高透過のフィルムを製造しにくいだけでなく、高い溶融温度により、閉温度も高くなって、安全性が低下する(閉温度は、電池の内部温度が非理想的に増加する時、分離膜の微多孔が閉じ、それ以上電流が流れなくなる温度であって、低いほど良い)。
【0019】
このような問題を解決するために、ポリエチレンとポリプロピレンを同時に使用した。しかし、ポリエチレンとポリプロピレンは相溶性がないため、混練時に最終多孔膜の物性が低下する現象が発生し、このような物性低下を最小化してポリエチレンとポリプロピレンの特性を極大化するために、ポリエチレン層とポリプロピレン層を別途の層とする多層多孔膜を製造する。このようにして、ポリエチレン層は閉温度を低下させ、ポリプロピレン層は溶融破断温度を上昇させる。
【0020】
ポリプロピレンを単独で使用すると、高透過性を有するフィルムを製造しにくくなるため、ポリプロピレン層にポリエチレンを混合して使用するが、この場合、ポリプロピレン層の結晶度が上がり、延伸過程でポリエチレンとポリプロピレンとの界面拡開が同時に発生するため、透過度が増加する。
【0021】
また、ポリプロピレンは、上述したように、結晶度が低いため、希釈剤とともに押出される湿式法で表面層として用いられる場合、押出後に希釈剤内にポリプロピレンワックス成分が多量に存在し、延伸/抽出などの後工程でワックス析出によるフィルム及びロール表面の汚染問題などが発生して品質安定性が低下する。このような問題点はポリプロピレン層を3層フィルムの内層にすることにより解決する。
【0022】
電池の温度が非正常的に上昇する原因の1つは電池内部の短絡である。電池内部の短絡は分離膜の強度を上昇させ、高温収縮率を低下させることにより、大きく低減することができる。分離膜の強度は延伸工程により調節し、収縮は熱固定工程により最小化することができる。
【0023】
結果的に、このように製造された多孔膜は、ポリエチレンの低い閉温度とポリプロピレンの高い溶融破断温度を同時に有しながらも、物性と品質安定性が同時に優れた分離膜となる。
【0024】
以下、前記ポリオレフィン多層微多孔膜を製造するための本発明の各製造段階についてさらに詳しく説明する。
【0025】
(a)溶融温度125℃以上のポリエチレンを95重量%以上含む樹脂混合物20〜50重量%と、希釈剤80〜50重量%からなる組成物を溶融混練するステップを行うことができる。
【0026】
本発明に使用されるポリエチレンは、溶融温度(Tm)125℃以上の、さらに詳しくは、125℃以上135℃以下の、ポリエチレンホモ(単独)重合体、エチレンと炭素数3〜8であるαオレフィンコモノマーとの組み合わせによる共重合として製造されるポリエチレン共重合体または単独重合体と共重合体または共重合体と共重合体の混合物である。前記炭素数3〜8であるαオレフィンコモノマーの例は、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1などがある。本発明のポリエチレンの分子量は、重量平均分子量が20万以上300万以下であることが好ましく、重量平均分子量が20万未満の場合は、最終多孔膜の物性が弱くなり、重量平均分子量が300万を超える場合は、押出混練性が悪くなり、生産性が低下する。より好ましい重量平均分子量は、20万以上150万以下である。
【0027】
本発明で使用される希釈剤としては、押出加工温度で樹脂と単一相をなすあらゆる有機液状化合物(organic liquid)が可能である。その例としては、ノナン(nonane)、デカン(decane)、デカリン(decalin)、パラフィンオイル(paraffin oil)などの脂肪族(aliphatic)あるいは環状炭化水素(cyclic hydrocarbon)と、ジブチルフタレート(dibutyl phthalate)、ジオクチルフタレート(dioctyl phthalate)などのフタル酸エステル(phthalic acid ester)がある。好ましくは、人体に無害で、沸点(boiling point)が高く、揮発性(volatile)成分の少ないパラフィンオイルが適しており、さらに好ましくは、40℃における動粘度(kinetic viscosity)が20cSt〜200cStであるパラフィンオイルが適当である。パラフィンオイルの動粘度が200cStを超えると、押出工程における動粘度が高くて、負荷上昇、シート及びフィルムの表面不良などの問題が発生することがあり、抽出工程では、抽出が難しくなり、生産性が低下して、残留したオイルによる透過度の減少などの問題が発生することがある。パラフィンオイルの動粘度が20cSt未満の場合は、押出機内で溶融ポリエチレンとの粘度差により、押出加工時、混練が難しくなる。
【0028】
本発明の前記用いられる樹脂混合物は、溶融温度125℃以上のポリエチレンを95重量%以上含む。最も好ましいくは、ポリエチレン単独である。ポリエチレンの低い閉温度特性と気孔構造に影響を及ぼさない範囲で、ポリメチルペンテンなどの他の樹脂が添加されてもよいが、その含量は5重量%以下にしなければならない。その含量が5重量%を超えると(ポリエチレンの含量が95重量%未満であれば)、ポリエチレンの閉温度特性と気孔構造を得ることができなく、相分離により物性も大きく減少する。
【0029】
本発明で使用される溶融温度125℃以上のポリエチレンを95重量%以上含む樹脂混合物と希釈剤の組成は、ポリエチレンを95重量%以上含む樹脂混合物が20〜50重量%であり、希釈剤が80〜50重量%であることが好ましい。前記混合物の含量が50重量%を超えると(すなわち、希釈剤が50重量%未満であれば)、孔隙度が減少し、気孔の大きさが小さくなり、気孔間の相互連結(interconnection)が少なく、透過度が非常に低下する。その反面、前記樹脂混合物の含量が20重量%未満であれば(すなわち、希釈剤が80重量%を超えると)、樹脂混合物と希釈剤の混練性が低下し、樹脂混合物が希釈剤に熱力学的に混練されることなく、ゲル状に押出されて、延伸時、破断及び厚さの不均一などの問題を引き起こす可能性がある。
【0030】
前記組成物には、必要に応じて、酸化安定剤、UV安定剤、帯電防止剤などの、特定機能の向上のための一般添加剤をさらに添加することができる。
【0031】
前記組成物は、希釈剤と樹脂混合物との混練のためにデザインされた二軸コンパウンダー、混練機、あるいはバンバリーミキサーなどを用いて溶融混練させる。溶融混練温度は、180℃以上300℃以下が好ましい。樹脂混合物と希釈剤は、予めブレンディングしてコンパウンダーに投入してもよく、分離された供給機(feeder)からそれぞれ投入してもよい。
【0032】
(b)溶融温度160℃以上のポリプロピレン50〜90重量%と、溶融温度125℃以上のポリエチレン10〜50重量%からなる樹脂混合物20〜50重量%と、希釈剤80〜50重量%からなる組成物を溶融混練するステップを行うことができる。
【0033】
本発明でポリプロピレンはTmが160℃以上の、好ましくは160℃以上180℃以下の、ポリプロピレンホモ(単独)重合体、プロピレンとエチレン及び炭素数4〜8であるαオレフィンの組み合わせで構成されるポリプロピレン共重合体、または前記単独重合体と前記共重合体あるいは前記共重合体と前記共重合体との混合物である。好ましいポリプロピレンの重量平均分子量は5万以上300万以下である。重量平均分子量が5万未満の場合は、希釈剤との混練物の強度が弱くなって延伸が不可能となり、300万を超える場合は、希釈剤及びポリエチレンとの混練性の問題が発生するため好ましくない。
【0034】
ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物において、ポリプロピレンの含量が50重量%未満であれば、それぞれのポリプロピレンが網のように連結されているポリプロピレンマトリックスを形成できなくなり、溶融破断温度の上昇効果があまりない。その反面、ポリプロピレンの含量が90重量%を超えると、ポリプロピレンの低い結晶度により透過度が非常に低下する。
【0035】
前記ポリプロピレンとポリエチレンの樹脂混合物と希釈剤の組成で、樹脂混合物の含量が50重量%を超えると、最終フィルムの孔隙度が減少し、孔隙の大きさが小さくなり、透過度が非常に低下する。その反面、前記樹脂混合物の含量が20重量%未満であれば、樹脂混合物と希釈剤の混練性が低下し、樹脂混合物が希釈剤に熱力学的に混練されることなく、ゲル状に押出されて、延伸時、破断及び厚さ不均一などの問題を引き起こす可能性がある。
【0036】
前記組成物には、必要に応じて、酸化安定剤、UV安定剤、帯電防止剤などの、特定機能の向上のための一般添加剤をさらに添加することができる。
【0037】
前記組成物は、ポリプロピレン、ポリエチレン、及び希釈剤の混練のためにデザインされた二軸コンパウンダー、混練機、あるいはバンバリーミキサーなどを用いて溶融混練させる。溶融混練温度は、180℃以上300℃以下が好ましい。樹脂混合物と希釈剤は、予めブレンディングしてコンパウンダーに投入してもよく、分離された供給機(feeder)からそれぞれ投入してもよい。
【0038】
(c)前記(a)及び(b)で混練された溶融物を、(a)ステップから製造される層を両表面層とし、(b)ステップから製造される層を中間層とする3層の多層シートに成形するステップを行うことができる。
【0039】
溶融物からシート状の成形物を製造する方法には、一般的なキャスティング(casting)あるいはカレンダリング(calendering)方法、いずれも使用できる。好ましいキャスティングあるいはカレンダリングロールの温度は、30℃以上80℃以下である。冷却ロールの温度が30℃未満の場合は、シートの急冷によるシートのシワが発生し、冷却ロールの温度が80℃を超えると、冷却が十分でなく、表面不良などの問題が発生し得る。
【0040】
多層のシートを形成する方法には、一般的な共押出法、熱融着法あるいはコーティング法などが使用できる。共押出法は、シートの成形時、それぞれの押出機から押出される溶融物を、多層Tダイを通じて共押出して多層シートを製造する方法であり、熱融着法は、それぞれの押出機から得られたシートを重ね合って、圧力を加えながら熱融着させる方法であって、コーティング法は、第1に作られたシート上に、他の層を第2に押出して、多層シートを製造する方法である。
【0041】
層構成は、(a)ステップから製造される層を両表面層とし、(b)ステップから製造される層を中間層とする3層構造である。上述したように、(b)ステップから製造される層を表面層とする場合は、ポリプロピレンのワックス成分が延伸/抽出などの後工程で析出され、フィルムの表面及びロールの表面に汚染が発生する。
【0042】
(d)前記多層シートを延伸してフィルムに成形するステップを行うことができる。
【0043】
延伸は、テンタータイプの同時延伸あるいはロールを用いて縦方向の第1延伸を行って、テンターで横方向の第2延伸を行う逐次延伸など、いずれも使用可能である。延伸比は、縦方向及び横方向にそれぞれ4倍以上であり、総延伸比は、25〜60倍であることが好ましい。一方向の延伸比が4倍未満である場合は、一方方向の配向が十分ではなく、且つ縦方向及び横方向間の物性均衡が崩れ、穿孔強度が低下する。また、総延伸比が25倍未満であれば、未延伸が発生し、60倍を超えると、延伸中、破断が発生する可能性が高く、最終フィルムの収縮率が増加する短所がある。
【0044】
延伸温度は、表面層である(a)ステップの組成物により決定される。すなわち、(a)ステップの組成物として用いられたポリエチレンの融点と、希釈剤の濃度及び種類により異なる。最適の延伸温度は、表面層である(a)ステップの組成物のポリエチレンと希釈剤層の結晶部分の30〜80重量%が溶融温度範囲で選択されることが好ましい。温度による結晶部分の溶融程度は、フィルム成形物のDSC(differential scanning calorimeter)分析から得られる。延伸温度が、表面層のポリエチレンと希釈剤層の結晶部分の30重量%が溶融温度よりも低い温度範囲で選択されると、フィルムの軟質性(softness)がないため、延伸性が悪くなり、延伸時に破断が発生する可能性が高く、且つ未延伸も発生する。一方、延伸温度が、前記多層シートの表面層成形物内のポリエチレンと希釈剤層の結晶部分の80重量%が溶融温度よりも高い温度範囲で選択されると、延伸が容易で、未延伸の発生は少ないが、部分的な過延伸により厚さ偏差が発生し、樹脂の配向効果が低く、物性が大きく低下する。前記延伸温度の領域は、ポリプロピレンの溶融温度よりは低い領域であるが、ポリプロピレンの低温延伸は可能な温度である。この延伸を通じて、中間層に用いられたポリプロピレンは、破断することなく延伸され、且つ中間層にポリプロピレンマトリックスを形成して溶融破断温度を上昇させるため、電池の熱安定性を向上させることができる。
【0045】
(e)前記フィルムから希釈剤を抽出するステップを行うことができる。
【0046】
延伸過程を通じて厚さが薄くなったシート、すなわちフィルムは、有機溶媒を使用して抽出及び乾燥する。本発明で使用可能な有機溶媒は、特に限定されず、樹脂押出に使用された希釈剤を抽出できる溶媒であればいずれも使用可能であるが、好ましくは、抽出効率が高く、乾燥が速いメチルエチルケトン、メチレンクロライド、ヘキサンなどが好ましい。抽出方法は、浸漬(immersion)方法、スプレー(solvent spray)方法、超音波(ultrasonic)法などの一般的な溶媒抽出方法をそれぞれあるいは組み合わせて使用できる。抽出時、残留希釈剤の含量は、1重量%以下にしなければならない。
【0047】
残留希釈剤が1重量%を超えると、物性が低下し、且つフィルムの透過度が減少する。残留希釈剤の量は、抽出温度と抽出時間により大きく左右される。抽出温度は、希釈剤と溶媒の溶解度増加のために、高いことが好ましいが、溶媒の沸きによる安全性問題を考慮すると、40℃以下が好ましい。抽出温度が希釈剤の凝固点以下であれば、抽出効率が大きく低下するため、必ず希釈剤の凝固点より高くしなければならない。抽出時間は、生産されるフィルムの厚さにより異なるが、9〜50μm厚さの微多孔膜を生産する場合、2〜5分が好ましい。
【0048】
(f)前記フィルムを熱固定するステップを行うことができる。
【0049】
乾燥されたフィルムは、最後に、残留応力を除去し、最終フィルムの収縮率を減少させるために、熱固定過程を経る。一般的に、熱固定は、フィルムを固定させて熱を加え、収縮しようとするフィルムを強制に固定するか、延伸あるいは収縮させて、残留応力を除去することである。本発明では熱固定を二つの段階に分け、1段階でフィルムを延伸し、2段階でフィルムを再び収縮させる工程を使用する。
【0050】
熱固定温度は、高いほど収縮率を低くし、穿孔強度は高めるに有利であるが、高すぎる場合は、フィルムが部分的に溶けて、形成された微多孔が目詰まって、透過度が低下する。好ましい熱固定温度は、フィルムの結晶部分の10〜30重量%が溶融温度範囲で選択されることが良い。前記熱固定温度が、前記フィルムの結晶部分の10重量%が溶融温度よりも低い温度範囲から選択されると、フィルム内の分子の再配列(reorientation)が十分ではなく、フィルムの残留応力の除去効果が得られなくなり、フィルムの結晶部分の30重量%が溶融温度よりも高い温度範囲で選択されると、部分的溶融により微多孔が目詰まって、透過度が低下する。
【0051】
2段階の延伸と収縮は、テンタータイプの機械を利用して実施する。第1段階では、20〜50%だけ横方向に延伸して透過度を増加させ、引張強度と穿孔強度を向上させる。50%を超えて延伸すると、透過度及び強度が向上する長所はあるが、横方向の配向性が増加して収縮率が大きくなり、気孔の大きさが増加しすぎる短所がある。第2段階では、第1段階で延伸されたフィルムの幅を10〜40%だけ収縮させる。横方向の収縮により応力を緩和させ、樹脂の配向性を緩和させて収縮率を減少させる。この時、40%を超えて製品幅を収縮させると、透過度と強度が低くなりすぎる問題があり、10%未満に収縮させると、応力及び樹脂配向性が緩和できないため、収縮率が大きくなり、電池の安定性を確保することができない。
【0052】
熱固定時間は、熱固定温度が高い場合は、相対的に短くし、熱固定温度が低い場合は、相対的に長くすることができる。好ましくは15秒〜2分程度である。最も好ましくは、フィルムの結晶部分の10〜30重量%が溶融温度範囲では1分〜2分、30〜70重量%が溶融温度範囲では20秒〜1分程度が好適である。
【0053】
上述したように製造される本発明のポリオレフィン多層微多孔膜をより詳しく説明する。
【0054】
本発明による3層の多層微多孔膜は、ポリエチレン95重量%からなる層を両表面層とし、ポリプロピレン50〜90重量%とポリエチレン10〜50重量%からなる層を中間層とする、膜厚が9〜50μm、穿孔強度が0.15N/μm以上、透過度が1.5×10−5ダルシー以上、穿孔強度と透過度との乗算が0.4×10−5ダルシー・N/μm以上、120℃で横方向への1時間収縮率が15%以下、溶融破断温度が160℃以上である微多孔膜である。
【0055】
膜厚が9μm未満である場合は、全体強度が弱くて、二次電池用分離膜として好ましくなく、厚さが50μmを超える場合は、透過度が低くて二次電池用分離膜に好ましくない。より好ましい分離膜の厚さは9〜30μmである。
【0056】
穿孔強度は0.15N/μm以上であることが好ましいが、穿孔強度が0.15N/μm未満の場合は、強度が弱くて、二次電池用分離膜に好適ではない。さらに好ましい穿孔強度は、0.2N/μm以上0.5N/μm以下である。
【0057】
本多層分離膜の気体透過度は、1.5×10−5ダルシー以上である。気体透過度が1.5×10−5ダルシー未満の場合は、透過度が充分ではなく、高容量/高効率電池に好適ではない。さらに好ましい気体透過度は2.5×10−5〜12.0×10−5ダルシーである。
【0058】
本多層分離膜の穿孔強度と透過度との乗算は0.4×10−5ダルシー・N/μm以上である。穿孔強度と透過度が同時に低い場合は、フィルムが弱いとともに気孔率も高いため、フィルムの安定性が低下する。穿孔強度と透過度との乗算が0.4×10−5ダルシー・N/μm未満の場合は、二次電池用分離膜に好適ではない。
【0059】
本発明により製造される多孔膜気孔の平均大きさは、0.01μm〜0.2μmである。気孔の平均大きさが0.01μmを超えない場合は、分離膜としての機能が顕著に劣り、気孔の平均大きさが0.2μmを超えると、フィルム全体の安全性と安定性を損傷させる。より好ましいマイクロ気孔の平均大きさは0.01μm以上0.1μm以下である。
【0060】
本多層分離膜の120℃で横方向への1時間収縮率は、15%以下である。分離膜は、電池内で縦方向には固定されているが、横方向には固定されていないため、横方向への収縮が非常に重要である。また、ポリエチレンが溶ける直前である120℃の収縮率が非常に重要である。電池の高温安定性のためには、分離膜が、120℃で1時間放置後、横方向の収縮率が15%を超えないことが良い。好ましくは、120℃で1時間放置後、横方向の収縮率が10%以下であることが良く、さらに好ましくは5%以下である。
【0061】
本発明による微多孔膜の溶融破断温度は160℃以上である。この温度は、試用されるポリプロピレンの溶融温度により左右される。一般的に、二次電池の耐熱テストは150℃で評価されるため、溶融破断温度は160℃以上であることが好ましい。
【0062】
また、本発明による微多孔膜は、表面層の厚さの和が全体厚さの50%以上であり、中間層の厚さが1μm以上であることが好ましい。前記表面層の厚さの和が全体厚さの50%未満である場合は、穿孔強度と透過度との乗算が小さくなり、中間層の厚さが1μm未満の場合は、耐熱性の向上効果は大きくない。
【0063】
以上のように本発明による多層微多孔膜は、耐熱性に優れたポリプロピレンを含む層の特性と、ポリエチレン微多孔膜層の品質安定性の特性と、を同時に有し、剛性、透過性、熱安定性、及び品質安定性が同時に優れたものである。
【0064】
以下、下記実施例を通じて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範疇がこれらに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0065】
本発明によるポリオレフィン系多層微多孔膜は、ポリエチレンに起因する低い閉温度特性と、ポリプロピレンに起因する高い溶融破断温度特性を同時に有するだけでなく、湿式方式により製造された分離膜の特徴である均一で微細な気孔による品質均一性を有する。さらに、生産性、強度、及び透過度に優れ、高温収縮率が低いため、高容量/高出力の二次電池への使用時、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施例で製造された微多孔膜の溶融破断温度測定のためのフレームを示す図である。
【図2】本発明の一実施例で製造された微多孔膜の溶融破断温度測定のためのフレームに微多孔膜をテープにより固定した形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
ポリエチレン及びポリプロピレンの分子量及び分子量分布の測定は、Polymer Laboratory社の高温GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定した。
【0068】
希釈剤の粘度は、Cannon社のCAV−4自動動粘度計(Automatic Viscometer)で測定した。
【0069】
原料からシート及びフィルムを製造した方法は、次の通りである。
【0070】
※フィルムの製造方法
表面層の樹脂混合物と希釈剤は、φ=46mmの二軸コンパウンダーで均一な相として混練/押出された。混練温度は180〜280℃であった。樹脂混合物は、メインホッパーに投入され、希釈剤は、サイドフィーダを利用して押出機に投入された。
【0071】
中間層の樹脂混合物と希釈剤は、予めφ=30mmの二軸コンパウンダーで均一に混練された後、φ=15mmの二軸コンパウンダーで押出された。混練温度は180〜220℃であった。
【0072】
表面層と中間層の押出機からそれぞれ溶融/押出された組成物は、3層の多層シートの製作が可能である共押出用T字形ダイにより押出され、30℃キャスティングロールにより必要な厚さに成形された。層の構造は、押出機とダイとの間に設置されたフィードブロックを用いて所望の構成に調整され、各層の厚さは各押出機の押出量を調節することにより調整された。
【0073】
成形されたシートの温度による結晶部分の溶ける現象を分析するために、Mettler Toledo社のDSCを用いた。分析条件は、サンプル重量5mg、スキャン速度(scanning rate)10℃/minであり、各層の溶ける現象を別途に分析するために各層を別途の単層として用いた。
【0074】
シートの延伸は、テンタータイプのラップ延伸機により延伸比及び延伸温度を変化させながら同時延伸を行い、延伸温度はDSC結果に基づき、ポリエチレンと希釈剤層の結晶部分が30〜80重量%溶融温度範囲で決定した。
【0075】
希釈剤の抽出はメチレンクロライドを用いて、常温で浸漬方式により行い、抽出時間は5分であった。
【0076】
熱固定は、テンタータイプの連続式オーブンで温度/延伸比/収縮比を変化させながら行った。総熱固定時間は50秒であった。この中、30秒は延伸ステップであり、20秒は収縮ステップであった。
【0077】
各フィルム層の厚さは、SEM(Scanning Electron Mocroscope)を用いて測定した。製造されたフィルムを液体窒素下で20秒間冷却した後、瞬間破壊し、断面を観察して厚さを測定した。
【0078】
製造されたフィルムは、穿孔強度、気体透過度、120℃での収縮率、及び溶融破断温度を測定し、その結果を下記表に示した。
【0079】
※物性測定方法
(1)穿孔強度は、直径1.0mmのピンが120mm/minの速度でフィルムを破断させる時の強度で測定した。
(2)気体透過度は、孔隙測定機(porometer:PMI社のCFP−1500−AEL)で測定した。本発明ではダルシー透過度定数を使用した。ダルシー透過度定数は、下記一般式(1)から得られ、本発明では窒素を用いた。
【0080】
[数1]
C=(8FTV)/(πD(P−1)) (1)
ここで、C=ダルシー透過度定数
F=流速
T=サンプル厚さ
V=気体の粘度(Nについて0.185)
D=サンプル直径
P=圧力
【0081】
本発明では、100〜200psi領域でダルシー透過度定数の平均値を用いた。
【0082】
(3)120℃での収縮率は、分離膜を15cm×15cmに切った後、横方向に10cm毎に長さ表示を5箇所以上表示し、紙の間に挟み、120℃で温度安定化したオーブンに入れて60分間放置した後、横方向への長さ変化の平均を測定して収縮率を算出した。収縮率の算出は下記の式による。
収縮率(%)=100×(初期長さ−120℃放置後の長さ)/初期長さ
【0083】
(4)フィルムの溶融破断温度の測定のために、図1のような(外枠:7.5cm×7.5cm、内径:2.5cm×2.5cm)フレームに、図2のようにフィルム(5cm×5cm)をポリイミドテープで固定した後、所定の温度に維持される熱風オーブン(convection oven)で10分間放置後、フィルムが破断したか否かを観察した。10分が過ぎてもフィルムが破断しない最高の温度を溶融破断温度とした。
【0084】
(実施例1)
表面層1と表面層2には、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられ、2つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。
【0085】
中間層は、樹脂混合物では重量平均分子量が5.7×10で、溶融温度が163℃であるポリプロピレンと、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンが、それぞれ50重量%、50重量%用いられ、希釈剤としては40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられた。中間層の樹脂混合物と希釈剤成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。
【0086】
前記表面層1、表面層2、及び中間層の組成物を用いて、前記フィルムの製造方法に記載した方法により、シートを製造し、製造された3層シートの厚さは1,100μmであった。前記製造されたシートは、119℃で縦方向6倍、横方向6倍に、トータル36倍に延伸された。
【0087】
抽出後の熱固定は125℃で行い、延伸ステップでは横方向に40%延伸し、収縮ステップでは延伸ステップの最終幅に比べて20%収縮した。
【0088】
最終フィルムの厚さは18μmであった。得られた分離膜の物性は下記表1に示した。
【0089】
(実施例2)
表面層1と表面層2には、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられ、2つの成分の含量は、それぞれ25重量%、75重量%であった。
【0090】
中間層は、樹脂混合物では重量平均分子量が5.7×10で、溶融温度が163℃であるポリプロピレンと、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンが、それぞれ70重量%、30重量%用いられ、希釈剤としては40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられた。中間層の樹脂混合物と希釈剤成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。
【0091】
前記表面層1、表面層2、及び中間層の組成物を用いて、前記フィルムの製造方法に記載した方法により、シートを製造し、製造された3層シートの厚さは800μmであった。
【0092】
前記製造されたシートは、117℃で縦方向5倍、横方向6倍に、トータル30倍に延伸された。抽出後の熱固定は125℃で行い、延伸ステップでは横方向に50%延伸し、収縮ステップでは延伸ステップの最終幅に比べて20%収縮した。最終フィルムの厚さは16μmであった。得られた分離膜の物性は下記表1に示した。
【0093】
(実施例3)
表面層1と表面層2には、重量平均分子量が2.7×10で、コモノマーとしてプロピレンが用いられ、溶融温度が130℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられ、2つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。
【0094】
中間層は、樹脂混合物では重量平均分子量が5.7×10で、溶融温度が163℃であるポリプロピレンと、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンが、それぞれ80重量%、20重量%用いられ、希釈剤としては40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられた。中間層の樹脂混合物と希釈剤成分の含量は、それぞれ50重量%、50重量%であった。
【0095】
前記表面層1、表面層2、及び中間層の組成物を用いて、前記フィルムの製造方法に記載した方法により、シートを製造し、製造された3層シートの厚さは850μmであった。
【0096】
前記製造されたシートは、116℃で縦方向6倍、横方向6倍に、トータル36倍に延伸された。抽出後の熱固定は122℃で行い、延伸ステップでは横方向に50%延伸し、収縮ステップでは延伸ステップの最終幅に比べて35%収縮した。最終フィルムの厚さは24μmであった。得られた分離膜の物性は下記表1に示した。
【0097】
(実施例4)
表面層1と表面層2には、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられ、2つの成分の含量はそれぞれ50重量%、50重量%であった。
【0098】
中間層は、樹脂混合物では重量平均分子量が5.7×10で、溶融温度が163℃であるポリプロピレンと、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンが、それぞれ60重量%、40重量%用いられ、希釈剤としては40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられた。中間層の樹脂混合物と希釈剤成分の含量は、それぞれ40重量%、60重量%であった。
【0099】
前記表面層1、表面層2、及び中間層の組成物を用いて、前記フィルムの製造方法に記載した方法により、シートを製造し、製造された3層シートの厚さは550μmであった。
【0100】
前記製造されたシートは、121℃で縦方向6倍、横方向6倍に、トータル36倍に延伸された。抽出後の熱固定は125℃で行い、延伸ステップでは横方向に20%延伸し、収縮ステップでは延伸ステップの最終幅に比べて10%収縮した。最終フィルムの厚さは12μmであった。得られた分離膜の物性は下記表1に示した。
【0101】
(実施例5)
表面層1と表面層2の樹脂混合物としては、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンと、溶融温度が245℃であるポリメチルペンテンが、それぞれ95重量%、5重量%用いられ、希釈剤としては40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられた。中間層の樹脂混合物と希釈剤成分の含量は、それぞれ40重量%、60重量%であった。
【0102】
中間層は、樹脂混合物では重量平均分子量が5.7×10で、溶融温度が163℃であるポリプロピレンと、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンが、それぞれ60重量%、40重量%用いられ、希釈剤としては40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられた。中間層の樹脂混合物と希釈剤成分の含量は、それぞれ40重量%、60重量%であった。
【0103】
前記表面層1、表面層2、及び中間層の組成物を用いて、前記フィルムの製造方法に記載した方法により、シートを製造し、製造された3層シートの厚さは450μmであった。
【0104】
前記製造されたシートは、121℃で縦方向5倍、横方向5倍に、トータル25倍に延伸された。抽出後の熱固定は125℃で行い、延伸ステップでは横方向に30%延伸し、収縮ステップでは延伸ステップの最終幅に比べて20%収縮した。最終フィルムの厚さは16μmであった。得られた分離膜の物性は下記表1に示した。
【0105】
(比較例1)
重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられ、2つの成分の含量は、それぞれ30wt%、70wt%であった。
【0106】
前記のように組成された樹脂混合物と希釈剤は、φ=46mmである二軸コンパウンダーで均一な相として混練/押出された。混練温度は180〜280℃であった。樹脂混合物はメインホッパーに投入され、希釈剤はサイドフィーダを用いて押出機に投入された。前記溶融/押出された組成物は、T字形ダイで押出され、30℃キャスティングロールにより必要な厚さに成形された。層の厚さは、各押出機の押出量を調節することにより調整され、前記単層に製造されたシートの厚さは1,200μmであった。
【0107】
前記製造されたシートは、121℃で縦方向6倍、横方向6倍に、トータル36倍に延伸された。抽出後の熱固定は125℃で行い、延伸ステップでは横方向に40%延伸し、収縮ステップでは延伸ステップの最終幅に比べて5%収縮した。最終フィルムの厚さは20μmであった。得られた分離膜の物性は下記表2に示した。
【0108】
(比較例2)
表面層1と表面層2には、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられ、2つの成分の含量は、それぞれ60重量%、40重量%であった。
【0109】
中間層には、重量平均分子量が5.7×10で、溶融温度が163℃であるポリプロピレンが用いられ、希釈剤としては40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられた。ポリプロピレンと希釈剤成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。
【0110】
前記表面層1、表面層2、及び中間層の組成物を用いて、前記フィルムの製造方法に記載された方法により、シートを製造し、製造された3層シートの厚さは800μmであった。
【0111】
前記製造されたシートは、121℃で縦方向6倍、横方向6倍に、トータル36倍に延伸された。抽出後の熱固定は128℃で行い、延伸ステップでは横方向に40%延伸し、収縮ステップでは延伸ステップの最終幅に比べて30%収縮した。最終フィルムの厚さは19μmであった。得られた分離膜の物性は下記表2に示した。
【0112】
(比較例3]
表面層1には、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられ、2つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。
【0113】
中間層及び表面層2の樹脂混合物としては、重量平均分子量が5.7×10で、溶融温度が163℃であるポリプロピレンと、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンが、それぞれ40重量%、60重量%用いられ、希釈剤としては40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられた。中間層及び表面層2の樹脂混合物と希釈剤成分の含量は、それぞれ40重量%、60重量%であった。
【0114】
前記表面層1、表面層2、及び中間層の組成物を用いて、前記フィルムの製造方法に記載した方法により、シートを製造し、製造されたシートの厚さは800μmであった。
【0115】
前記製造されたシートは、122℃で縦方向6倍、横方向6倍に、トータル36倍に延伸された。抽出後の熱固定は123℃で行い、延伸ステップでは横方向に50%延伸し、収縮ステップでは延伸ステップの最終幅に比べて7%収縮した。最終フィルムの厚さは15μmであった。得られた分離膜の物性は下記表2に示した。製造されたフィルムは、フィルムが片側に巻かれるカーリングがひどくなり、抽出工程の後端ロールにポリプロピレンワックスパウダーが析出された。
【0116】
(比較例4)
表面層1と表面層2には、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられ、2つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。
【0117】
中間層の樹脂混合物としては、重量平均分子量が5.7×10で、溶融温度が163℃であるポリプロピレンと、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンが、それぞれ60重量%、40重量%用いられ、希釈剤としては40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられた。中間層の樹脂混合物と希釈剤成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。
【0118】
前記表面層1、表面層2、及び中間層の組成物を用いて、前記フィルムの製造方法に記載した方法により、シートを製造し、製造された3層シートの厚さは500μmであった。
【0119】
前記製造されたシートは、121℃で縦方向3.5倍、横方向6倍に、トータル21倍に延伸された。抽出後の熱固定は125℃で行い、延伸ステップでは横方向に15%延伸し、収縮ステップでは延伸ステップの最終幅に比べて10%収縮した。最終フィルムの厚さは17μmであった。得られた分離膜の物性は下記表2に示した。
【0120】
(比較例5)
表面層1と表面層2には、重量平均分子量が1.7×10で、コモノマーとしてブテン−1が用いられ、溶融温度が124℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられ、2つの成分の含量は、それぞれ30重量%、70重量%であった。
【0121】
中間層の樹脂混合物としては、重量平均分子量が3.7×10で、コモノマーとしてエチレンが用いられ、溶融温度が145℃であるポリプロピレンと、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンが、それぞれ70重量%、30重量%用いられ、希釈剤としては40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが用いられた。中間層の樹脂混合物と希釈剤成分の含量は、それぞれ60重量%、40重量%であった。
【0122】
前記表面層1、表面層2、及び中間層の組成物を用いて、前記フィルムの製造方法に記載した方法により、シートを製造し、製造された3層シートの厚さは600μmであった。
【0123】
前記製造されたシートは、121℃で縦方向5倍、横方向5倍に、トータル25倍に延伸された。抽出後の熱固定は120℃で行い、延伸ステップでは横方向に50%延伸し、収縮ステップでは延伸ステップの最終幅に比べて45%収縮した。最終フィルムの厚さは23μmであった。得られた分離膜の物性は下記表2に示した。
【0124】
本発明の単純な変形または変更は、全て本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は、添付した特許請求の範囲により明確になる。
【0125】
【表1】

【0126】
【表2】

【符号の説明】
【0127】
1 フレーム
2 微多孔膜
3 テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)溶融温度125℃以上のポリエチレンを95重量%以上含む樹脂混合物20〜50重量%と、希釈剤80〜50重量%からなる組成物を溶融混練するステップと、
(b)溶融温度160℃以上のポリプロピレン50〜90重量%及び溶融温度125℃以上のポリエチレン10〜50重量%からなる樹脂混合物20〜50重量%と、希釈剤80〜50重量%とからなる組成物を溶融混練するステップと、
(c)前記(a)及び(b)で混練された溶融物を、(a)組成物から製造される層を両表面層とし、(b)組成物から製造される層を中間層とする3層の多層シートに成形するステップと、
(d)前記多層シートを延伸してフィルムに成形するステップと、
(e)前記フィルムから希釈剤を抽出するステップと、
(f)前記フィルムを熱固定するステップと、
を含む3層の微多孔膜の製造方法であって、膜厚が9〜50μm、穿孔強度が0.15N/μm以上、透過度が1.5×10−5ダルシー以上、穿孔強度と透過度との乗算が0.4×10−5ダルシー・N/μm以上、120℃で横方向への1時間収縮率が15%以下、溶融破断温度が160℃以上であることを特徴とするポリオレフィン系多層微多孔膜の製造方法。
【請求項2】
前記(a)ステップが、溶融温度125℃以上のポリエチレン20〜50wt%と希釈剤80〜50重量%とからなる組成物を溶融混練するステップであることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系多層微多孔膜の製造方法。
【請求項3】
前記ポリエチレンは、溶融温度(Tm)125℃以上のポリエチレンホモ(単独)重合体、エチレンと炭素数3〜8であるαオレフィンコモノマーとの組み合わせによる共重合で製造されるポリエチレン共重合体またはこれらの混合物であり、ポリプロピレンは、Tmが160℃以上のポリプロピレンホモ(単独)重合体、プロピレンとエチレン及び炭素数4〜8であるαオレフィンの組み合わせで構成されるポリプロピレン共重合体またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリオレフィン系多層微多孔膜の製造方法。
【請求項4】
前記表面層厚さの和が全体厚さの50%以上であり、中間層の厚さが1μm以上であることを特徴とする請求項3に記載のポリオレフィン系多層微多孔膜の製造方法。
【請求項5】
前記膜厚が9〜30μm、穿孔強度が0.2N/μm以上、透過度が2.5×10−5〜12.0×10−5ダルシーであり、120℃で横方向への1時間収縮率が10%以下であることを特徴とする請求項3または4に記載のポリオレフィン系多層微多孔膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のうち何れか1項に記載の製造方法により製造される膜厚が9〜50μm、穿孔強度が0.15N/μm以上、透過度が1.5×10−5ダルシー以上、穿孔強度と透過度との乗算が0.4×10−5ダルシー・N/μm以上、120℃で横方向への1時間収縮率が15%以下、溶融破断温度が160℃以上であることを特徴とするポリオレフィン系多層微多孔膜。
【請求項7】
前記膜厚が9〜30μm、穿孔強度が0.2N/μm以上、透過度が2.5×10−5〜12.0×10−5ダルシーであり、120℃で横方向への1時間収縮率が10%以下であることを特徴とする請求項6に記載のポリオレフィン系多層微多孔膜。
【請求項8】
請求項6または7に記載の多層微多孔膜を含むことを特徴とする微多孔膜。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−524822(P2011−524822A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512374(P2011−512374)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/KR2009/002885
【国際公開番号】WO2009/148239
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(308007044)エスケー エナジー カンパニー リミテッド (53)
【Fターム(参考)】